説明

メモリデバイス

【課題】書込、読み出し、消去時間を改善した、トンネル障壁構造を有するメモリデバイスを提供する。
【解決手段】メモリデバイスは、制御電極9からトンネル障壁構造2を通り抜けて電荷を書き込むメモリノード1を有する。この蓄積された電荷はソース/ドレイン経路4の伝導性に影響を与え、この経路の伝導性をモニターすることによりデータが読み出せる。電荷障壁構造は多重トンネル障壁構造により構成される。この障壁構造は、メモリノードを形成するシリコンの多結晶層1を被覆する、厚さ3nmのポリシリコン層16と厚さ1nmのSi34層15を交互に積層したものからなる。ショットキ障壁構造、および電気絶縁マトリクス内に分散された、メモリノードとして機能する伝導性のナノスケール伝導島30,36,44を含む他の障壁構造2も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリセルアレイを製作するための大規模集積化が可能なメモリデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体メモリでは、1ビットの情報は、各メモリセル内の静的キャパシタに蓄積された電子群により表わされる。2進数”1”はN個の電子の不足により表わされ、”0”は中立の電荷状態により表わされる。典型的な16Mビットダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)では、その電子数Nは約800,000である。メモリ容量を増加させるためには、個々のメモリセルを小さくする必要があるが、従来のメモリセルのサイズを小さくするだけではこれを達成できない。なぜなら、Nの値に下限があるからである。電子数Nは、セルからの漏れ電流、内部ノイズ、および入射アルファ粒子の影響を受容する必要性から制限される。これらの要因は、メモリセルの面積の低減に比例して低減する訳ではない。16GビットDRAMでは、Nは130,000余りでなければならない(これは、16MビットDRAMでの約6分の1に相当する)と見積もることができる。しかし、16GビットDRAMに必要なセルサイズは、16MビットDRAMに比べて3桁の割合で低減する必要がある。したがって、この低減されたセルサイズは満足できる動作に必要な個数の電子を収容することができない。Nの値を充分に大きく維持する試みとして、溝または堆積構造、および高誘電体キャパシタ膜を有する3次元キャパシタが研究されてきたが、これによって得られる提案された構造および製造工程は極めて複雑になる。しかも、電力消費が著しく増加する。なぜなら、セル内の比較的大きい個数Nの電子が蓄積時間(これはデバイスの規模が縮小されるほど短くなりがちである)内にリフレッシュされる必要があるからである。
【0003】
他の型のメモリデバイスは、不揮発性を示すフラッシュメモリとして知られている。このようなデバイスでは、典型的には10nmのオーダーの厚さを有するSiO2により形成されたトンネル障壁を通って、約10の5乗個の電子がフローティングゲート内に注入される。この蓄積された電荷は、ソースドレイン経路に流れる電流に影響を与える電界を形成する。制御ゲートを介して電界を印加することにより、フローティングゲートに電荷を書き込み、または、フローティングゲートから電荷を消去する。消去および書込サイクル中には比較的高い電界が印加され、その結果、SiO2膜が劣化してメモリの寿命が所定回数の消去/書込サイクル(典型的には10の5乗サイクルのオーダー)に制限される。さらに、典型的な消去/書込時間は数ミリ秒であり、これは従来のDRAMのそれよりも4桁も遅い。このような低い特性により、フラッシュメモリデバイスの用途は制限される。
【0004】
これまでのところ、他の手法を採用して、単電子メモリデバイスとして知られる、少数かつ正確な個数の電子で動作するメモリデバイスが提供されている。単電子メモリデバイスは、本出願人によるPCT/GB93/02581(WO−A−94/15340)に開示されている。印加されるゲート電圧の制御の下で、正確な個数の電子が、多重トンネル接合を通り抜けてメモリノードへ入りまたはメモリノードから出て、そのメモリノードの電子状態がエレクトロメータ(electrometer)により検出される。しかし、このデバイスの欠点は、各メモリノードに相当量の回路が必要となり、かつ、このデバイスは現在、低温(液体ヘリウム温度4.2Kまたはそれ以下)でのみ動作するということである。他の単電子メモリデバイスは、IEEE Transactions on Electron Devices, September1994,Vol.41, No. 9, pp.1628-1638においてK.Yano, T.Ishii, T.Hashimoto,T.Kobayashi, F.MuraiおよびK.Sekiにより、またIEEE International Solid-State Circuits Conference, 1996, FP16.4, P.266において、K.Yano, T.Ishii,T.Sano, T.Mine, F.MuraiおよびK.Sekiにより、提案され、論証されている。このデバイスは、ゲート電圧が印加される、ソースおよびドレイン間に伸びた多結晶膜を用いている。この多結晶シリコン膜の粒状構造の中に少数の電子が蓄積される。このメモリサイズは、前述のPCT/GB93/02581の構造に比べて比較的小さく、室温で動作しうる。しかも、このメモリは従来のメモリに比べていくつかの利点を有する。すなわち、少数個の蓄積電子に起因して消去/書込がより高速になり、かつ、高電界電子注入(high-field electron injection)ではなく低電圧トンネル注入(low-volgate tunnel injection)が用いられるために動作寿命が伸びる。しかし、蓄積された情報を読み出すための時間は比較的長く、数マイクロ秒のオーダーである。その理由は、粒(grains)内での電子の長い蓄積時間を保証するためにはソース・ドレイン間の抵抗を十分に高くする必要があるからである。
【0005】
他の構造は、S.Tiwari, F.Rana, H.Hanafi, A.Hartstein, E.F.CrabbeおよびK.ChanによるApplied Physics Letters, 4 March 1996, Vol 68, No.10,pp.1377-1379において、また、S.Tiwari, F.Rana, K.Chan, L.ShiおよびH.HanafiによるApplied Physics Letters, 26 August 1996, Vol 69, No.9, pp.1232-1234において、さらに、H.I.Hanafi, S.TiwaiおよびI.KhanによるIEEE Transactionson ElectronDevices, 9 September 1996, Vol 43, No.9, pp1553-1558において記載されている。このメモリデバイスは、トランジスタデバイスのゲートの下に位置するシリコン・ナノ結晶(nano-crystals)を用いる。シリコン基板から1.1〜1.8nmのオーダーの厚さの薄いトンネリング酸化物層を通して、シリコン・ナノ結晶(5nmの大きさ)内に電子が注入される。蓄積された電子は、トランジスタの閾値電圧をシフトさせる。蓄積された情報を読み出すための時間は、比較的短く、数十ナノ秒のオーダーである。これは、トランジスタ・チャネルが高電子移動度を有するからである。情報を書き込み、読み出すための耐性(endurance)サイクルは、従来のフラッシュメモリデバイスに比べて、著しく改善される。しかし、その消去時間は許容できないほど長く、数ミリ秒のオーダーである。これは、電子がナノ結晶からバルクシリコンへ通り抜けるほど伝導帯の整合(conduction band alignment)が好ましい状態にないからである。
【0006】
フラッシュメモリの原理に従って動作する他のメモリデバイスが、IEEE Electron Device Letters, Vol. EDL-1, No.9, September 1980, pp.179-181において、D.J.DiMaria, K.M.DeMeyerおよびD.W.DongによるElectrically-Alterable Memory Using a Dual Electron Injector Structureに記載されている。このデバイスにおいては、ゲート電極からトンネリング障壁を通して、フローティングゲートから書き込まれまたは消去される電荷により、ソース/ドレイン経路の伝導性が制御される。しかし、このデバイスの欠点は、書込/消去時間が遅く(ミリ秒のオーダー)、トンネル障壁の寿命が限られていることである。これは、従来のフラッシュメモリの場合と同様にFowler−Nordheim高電界注入が利用されているからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの問題および欠点を克服するために、本発明は、電荷キャリアのための経路と、この経路の伝導性(conductivity)を変化させる電界を生成する電荷を蓄積するノードと、与えられた電圧に応答して当該ノード上に電荷キャリアが蓄積されるように通り抜けるトンネル障壁構造とを有するメモリデバイスを提供する。このトンネル障壁構造は、比較的低い障壁高さを有する寸法的に比較的広い障壁成分と、比較的高い障壁高さを有する少なくとも1つの寸法的に比較的狭い障壁成分とからなるエネルギーバンドプロフィールを呈する。
【0008】
本発明は、メモリデバイスの書込、読み出しおよび消去時間のすべてを最適化することができる。
【0009】
上記エネルギーバンドプロフィールの比較的広い障壁成分は、ノード上に電荷を長時間蓄積するための障壁として働く。比較的狭い障壁成分を通り抜けて電荷がノードに書き込まれまたはノードから消去されるように、広い障壁成分は選択的にその高さを上げたり下げたりすることができる。
【0010】
比較的高い障壁高さを有するエネルギーバンドプロフィールの成分は、3nmまたはそれ以下の幅のエレメントによりもたらされる。複数の比較的高い障壁成分を有してもよく、これは好都合には多重トンネル接合構造を形成する。
【0011】
この障壁構造は、種々の異なる方法により製造することができる。これは、比較的高い電気伝導性の材料と絶縁性の材料の交互の層を含んでもよい。これらの層は総体的に、エネルギーバンドプロフィールの、比較的広く低い障壁高さの成分をもたらし、かつ、個々の絶縁層は比較的高い障壁成分をもたらす。この交互の層は、それぞれポリシリコンと窒化シリコンにより構成することができるが、他の材料を用いることもできる。
【0012】
この代わりに、障壁構造は、電気的な伝導材料と半導体材料の交互の層を有するショットキ障壁により構成してもよい。
【0013】
電荷蓄積ノードは、障壁構造と経路との間の電気的伝導材料の層により構成できる。このノードは、複数の導電性の島(islands)により構成してもよい。これらの代替構成として、島を障壁構造内に散在させ、それらの荷電エネルギーにより、エネルギーバンドプロフィールの上記比較的低い障壁成分をもたらすこともできる。これらの島は5nmまたはそれ以下の直径を有する。これらの島は、絶縁材料により分離された複数の層内に配置されてもよい。
【0014】
島は、いくつかの異なる方法により形成することができる。島は、ナノ結晶の半導体材料により構成できる。この代わりに、島は、絶縁金属酸化物内に散在するように、例えばスパッタリングにより、金属で形成することもできる。さらには、金属または半導体粒子のコロイド液(colloidal solution)から析出された粒子により構成することもできる。
【0015】
トンネル障壁構造は上記経路と制御電極との間に配置し、この制御電極の電圧を変化させることにより、電荷蓄積ノードへ通り抜ける電荷量を制御できるようにする。本発明の他の構成では、ゲート電極を設け、これによって電荷障壁構造に付加的な電界を印加することによりノードへ通り抜ける電荷を制御する。
【0016】
ノードに蓄積されうる電荷の量は、クーロンブロッケード効果(Coulomb blockade effect)により、離散的な個数の電子に制限される。
【0017】
使用時、トンネル障壁構造は、ノードへ通り抜ける電荷キャリアが阻止される阻止電圧範囲を呈し、ノード内に蓄積される電荷量を制御するために当該阻止電圧範囲を増減させるための制御手段が設けられる。ノードに蓄積されうる電荷量は複数の別個の電子状態に制限される。制御手段は、阻止電圧範囲を増減させるように動作することにより、それらの状態のうちの選択された1つのみが当該ノードに存在するようにする。
【0018】
代わりに、制御手段は電圧阻止範囲の幅を変化させるよう動作してもよい。
【0019】
本発明によるメモリデバイスは、慣用の基板に行(ロウ)および列(コラム)からなるアレイとして製造するのに適している。
【0020】
データは個々のセルから選択的に読み出すことができ、そのセルに新たなデータを書き込み、またはその蓄積データをリフレッシュすることができる。本メモリセルアレイは、メモリセルのそれぞれの列の経路内を流れる電流を検出するセンスラインと、ワードラインと、それぞれの列のメモリセルの障壁構造を制御するデータラインと、センスラインをプリチャージするプリチャージ回路とを有し、前記センスラインは、対応するワードラインに印加されたリード電圧に応答して読み出された、当該列内のセルの特定の1セルの電荷蓄積ノードに蓄積された電荷に依存する電荷レベルを取り込み、本メモリセルアレイは、さらに、当該センスラインの電圧レベルを当該列の対応するワードラインに転送するリード/ライト回路と、当該データラインの電圧レベルに応答して当該リードセル内に蓄積されたデータに対応する出力データを生成するデータ出力と、当該リードセルのワードラインにライト電圧を印加することにより当該データライン上の電圧レベルに対応するデータが先のリードセルに書き戻されるようにするデータリフレッシュ手段とを有する。このアレイは、また、セル内に書き込まれるべき入力データに応答して、リード/ライト回路の動作の後、データライン上の電圧レベルを変化させることにより、その入力データを当該セル内に書き込む手段を有してもよい。
【0021】
このアレイの周辺回路は当該メモリセルとともに共通の基板上に形成することができ、その周辺回路内のトランジスタのソースおよびドレインは、本アレイのセル内のソースおよびドレイン領域の形成に用いたと同じプロセスステップにより形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明をより充分理解できるように、以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態を一例として説明する。
【0023】
以下の説明において、本発明によるメモリデバイスの実施の形態は3つの異なる型(タイプ)に分類しうる。
【0024】
タイプ1
図1に、本発明による第1のタイプのメモリデバイスの概略構成を示す。メモリノード1と障壁構造2は、ソース接続Sおよびドレイン接続Yならびに制御電極接続Xを有する電界効果トランジスタの制御電極内に集積化される。情報を蓄積する際、電荷キャリアは障壁構造2を通り抜けてメモリノード1に達し、本デバイスは蓄積キャパシタとして働く。その結果、電荷がノード1に保持される。情報を読み出すには、ソース/ドレイン経路S,Yの伝導性がモニターされる。この伝導性は、メモリノード1に蓄積された電荷のレベルに依存して、比較的高い伝導状態と低い伝導状態の間を変化する。
【0025】
図2に、障壁構造2の電流−電圧特性を示す。ここに、Vはメモリノード電圧である。接続Xから障壁構造を通過する電子流Iは、上下の閾値電圧±VCの間の阻止範囲VBにおいて強く抑止される。しかし、この阻止電圧範囲の外側では、接続Xに印加されるバイアス電圧Vxの極性に依存して、メモリノード1へまたはメモリノード1から電荷キャリアが障壁構造を通り抜けることができる。障壁構造は、2個以上のトンネル接合が直列に接続された多重トンネル接合とみなすことができる。
【0026】
図1に示したメモリデバイスは、図3に、関連するワードラインX1,X2等およびビットラインS1,Y1等;S2,Y2等とともに示したような、行列状に配置した、メモリデバイスのアレイ内の1メモリセルとして用いることができる。すなわち、このアレイは、メモリセルMmnを有する。ここに、mおよびnはそれぞれ、行および列の個数を表わす。
【0027】
第1の実施の形態
メモリセルMmnの第1の実施の形態の構造について、図4、図5、図6により説明する。図4は、メモリセルの平面図であり、図5、図6はそれぞれ図4のA‐A’線およびB‐B’線に沿ったセルM11の断面図である。
【0028】
図5に示すように、本デバイスは基板3上に形成される。この例では、基板3はp型の半導体基板からなり、伝導経路4はn+ソース5とドレイン6との間に延在する。SiO2絶縁領域7は、当該セルをアレイ内の隣のセルから分離する。基板は、絶縁SiO2層8により被覆される。メモリノード1および被覆トンネル障壁構造2は、層8により囲まれた領域内に形成される。伝導制御電極9はトンネル障壁構造2を被覆する。この制御電極9は、アレイの行に沿って伸びるワードラインX1を形成する。ソース領域5およびドレイン領域6は、図4に示したアレイの列に沿って伸びるビット線S1,Y1を形成する。アレイ内の他のセルも、対応するワードラインおよびビットラインを有することが理解されよう。
【0029】
メモリノード1は、障壁構造2を介して充電することにより蓄積されうる(その結果、ノードの横方向に、均一な電界をもたらす)電子の個数を制限するナノメータースケールのドットまたは粒からなる。
【0030】
以下、図7、図8を参照して、メモリセルM11について選択的にデータを書き込み読み出すプロセスを説明する。このプロセスにおいて、メモリセルM11に関連するワードラインX1およびビットラインS1,Y1は能動化されるとともに、他のワードラインおよびビットラインは接地される。情報がM11に書き込まれるとき、正のピークVx(w)と負のピーク−Vx(w)を有する電圧パルス波形がワード線X1に印加される。”0”が書き込まれるときには、高さVY(w)の正の電圧パルスがビットラインY1,S1に印加される。一方、”1”が書き込まれるときには、ピーク電圧−VY(w)の電圧パルスがビット線Y1,S1に印加される。これらのパルスは、時間ΔTの期間、オーバーラップする必要がある。例えば、Vx(w)=1.2V,VY(w)=1.8V,およびΔT=10n秒である。
【0031】
図8において、メモリノード1に存在しうる電子の個数は、トンネル障壁構造2の電圧阻止領域の大きさにより制限される。すなわち、ノードの電圧は±Vcを超えることができない。図8(a)において、2進データビット”1”はメモリノード1上の正に荷電された状態11(電子の欠乏)により表わされ、”0”はノード1上の負に荷電された状態12(電子の過剰)により表わされる。この例では、”1”および”0”状態におけるメモリノード電圧はそれぞれ+0.4Vおよび−0.4Vである。ノード1に”0”を書き込むプロセスを、図8(a)〜(d)により説明する。ここに、VSY=VS=VYであり、黒ドットは、各ステップで生じる最終電子状態を表わす。図8(a)に示すように、正の電圧VY(w)(1.8V)がビットラインS1,Y1に印加されるとき、2つの状態11および12は、次の式のように、当該メモリノード上の一定電子数の線に沿って、それぞれ点13(1.6V)および点14(0.8V)へ移動する。
【0032】
V=(Cg/CΣ)VSY+V0 (1)
ここに、CΣはメモリノードの総容量、Cgはメモリノードと端子Y1およびS1との間の容量、V0はVSY=0のときのメモリノード電圧である(−CΣ0/qはメモリノード上の過剰電子の個数である。ここにqは素電荷である。)本実施の形態では、CΣ/Cg=1.5である。
【0033】
図8(b)に示すように、負の電圧−Vx(w)(−1.2V)がワード線X1に印加されると、阻止領域VBが図示のようにシフトする。かつ、状態13は状態14へ移行する。なぜなら、状態13は阻止領域の外側に出るが、ここには存在できないからである。
【0034】
図8(c)に示すように、正の電圧Vx(w)(1.2V)がワード線X1に印加されると、この状態は維持される。その後、図8(d)に示すようにワード線とビット線が接地され、状態14がメモリノード1上の一定電子数の線に沿って”0”状態12に移行する。
【0035】
”0”状態11と”1”状態12の間の任意の電子状態は、”0”状態になる当該プロセスによってリフレッシュされることに留意されたい。”1”状態11を書き込むための対応するプロセスは、図8(e)〜(h)に示す。このシーケンスにおいて、”0”状態11と”1”状態12の間の任意の電子状態は、リフレッシュされた”1”状態に変えられる。
【0036】
このライトプロセスは、特定のメモリセルに関連するビットラインおよびワードラインに同時に書込み波形が印加されることを必要とするということが理解されよう。メモリセルは個別にアドレスすることができる。書込プロセスの期間中、ノードの電子状態に選択的に”1”または”0”値をとらせるように、阻止領域を順次上下にシフトさせる。ただし、書込み信号をワードラインX1に印加してビットラインS1およびY1に印加しない場合、あるいは書込み信号をビットラインに印加してワードラインに印加しない場合、書込は起こらず、ノード1上の現在の状態が維持される。
【0037】
蓄積された情報を読み出すには、正のゲート電圧Vx(r)がワード線X1に印加され、S1とY1との間の電流ISYが検出される。図9に示したように、トランジスタの閾値電圧は、メモリノード1が負に荷電される(”0”)とき、VTで与えられ、メモリノードが正に荷電される(”1”)とき、VT−ΔVTにより与えられる。これらの閾値電圧VTおよびVT−ΔVTは正であるので、選択されていないメモリセル(Vx=0)においては、そのSとYとの間には電流は流れない。選択されたワードラインのゲート電圧Vx(r)は、VTとVT−ΔVTとの間に選定される。よって”1”に対しては、ISY>0となり、”0”に対しては、ISY=0となる。よって、ワードラインV1にゲート電圧Vx(r)が印加されるとき、ビットラインS1,Y1(およびアレイ内の他の対応するビットライン対)間を流れる電流を検出するために電流検出器(図示せず)を用いることができる。全体のメモリアレイからデータを読み出すためには、アレイの他のワードラインXについてこのプロセスが順次繰り返される。本実施の形態では、Vx(r)=0.8V、VT−ΔVT=0.4V、およびVT=1.2Vである。
【0038】
本発明によれば、トンネル障壁構造2により蓄積時間およびリード/ライト性能が改善される。ノード1の蓄積時間は、図2に示した電流−電圧特性の阻止領域VBに流れる電流をトンネル障壁構造2が抑止する能力により決定される。この蓄積時間tsはおおよそ次のように与えられる。
【0039】
ts=tw exp(−qVc/kT) (2)
ここに、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは基本電荷、twは書込時間である。もし、tsを10年、twを10ナノ秒として設計するならば、Vcは、室温で動作するためには1Vより大きくなければならない。単電子荷電効果を用いる場合、これは、障壁構造2が1nmより小さいサイズの金属粒子により構成されることを必要とする。このサイズは今日の製造技術では容易に達成することができない。
【0040】
阻止電圧Vcを増大できる他の方法は、電荷障壁構造2に対するバンド屈曲効果(band bending effect)を用いることである。この効果は、K.NakazatoおよびH.AhmedによるApplied Physics Letters, 5 June 1995, Vol.66, No.23,pp.3170-3172において多重トンネル接合について論述されている。蓄積(ストア)サイクルおよび書込み(ライト)サイクルのためにトンネル接合に必要とされる特性は、別々に考察することができる。トンネル接合の高さおよび幅は、ストアサイクルではそれぞれφsおよびdsで表わすことができ、ライトサイクルではφwおよびdwで表わすことができる。蓄積された情報を10年以上保持するためには、障壁高さφsは、熱的に発生するPool−Frenkelエミッション電流を抑制するために1.8eVより大きくなければならず、かつ、トンネル障壁厚さdsは、トンネル漏れ電流を制御するために8nm x {φs (eV)}-1/2より厚くなければならない。しかし、約10ナノ秒の短時間書込時間を得るためには、トンネル障壁の幅φwは2nm x{φw (eV)}-1/2より薄くなければならない。ここで、φwはライトサイクルのための障壁高さである。
【0041】
これらの基準を満足することができる障壁構造2を図10に示す。これは、それぞれ絶縁材料および非絶縁材料の層15,16からなる。この例では、絶縁層15は1〜3nm(望ましくは1nmであるが、1〜3nmでも可能)の厚さのSi34からなり、非絶縁層16は3〜10nm(望ましくは3nmであるが、3〜10nmでも可能)nmの厚さのポリシリコンからなる。
【0042】
図10に示した障壁構造2について得られた伝導エネルギーバンド図を図11に示す。これは、障壁構造2を形成する層15,16のすべてを組み合わせた厚さに対応する幅Bw1の第1の比較的広い障壁成分17を有する。さらに、各絶縁層15は、使用時にポリシリコン層16内に形成される空乏領域に起因して、互いに離隔した各々幅Bw2の比較的狭い障壁成分18a,b等をもたらす。比較的広い幅の障壁成分17は比較的狭い障壁高さBh1を有するが、障壁成分18a,b等はさらに高い障壁Bh1a,Bh2bをもたらす。
【0043】
障壁のこれら2つの成分17,18は、異なる役割を果たす。狭く高い障壁19は、協同トンネリング(co-tunnelling)効果(すなわち、量子力学的効果による2個以上のトンネル障壁に対する自然発生的なトンネリング)を抑制するトンネル障壁として機能する。その結果、電子は一度に1つの障壁18のみを通過し、その間、ある時間その領域に留まる。この停留時に、広い障壁成分17のエネルギーにより支配される局所平衡状態に向かって電子が非弾性的に(inelastically)散乱する。このようにして、電子の移動は、広い障壁成分17による強い影響を受ける。高く狭い障壁成分の幅および高さは外部バイアスによっては変化させることができない。この理由は、それらが、障壁構造2を形成する材料により決定されるからである。しかしながら、広く低い障壁成分は、外部バイアスによって変調することができる。
【0044】
図11(a)は、電圧Vxが印加されない場合のバンド図を示す。制御電極9に電圧が印加されないとき、電荷蓄積ノード1からの漏れが生じるためにはノード1上の電子20は比較的広い障壁成分17の幅全体を通り抜ける必要があり、その結果、電荷漏れは強く抑止されるということが分かる。しかし、電極9に電圧が印加されると、障壁2の伝導エネルギーバンド図は図11(b)に示すような状態に変化する。この図から、次のことが分かる。すなわち、電圧が印加されることにより、比較的広い障壁成分17が電荷蓄積ノード1に向かって下方へ傾いた傾斜を形成し、その結果、蓄積ノードへ達するためには比較的狭い障壁成分18を通り抜けるのみでよい。このように、本障壁構造は、ノード1上に長時間電子を蓄える比較的広い障壁成分17をもたらす。ライトプロセス中、電子をノード1へ通り抜けさせるために電極9に極端に高い電圧を印加する必要はない。
【0045】
層16において、ポリシリコンの粒子は、その厚さとほぼ同じ大きさの直径を有する。メモリノード1内の粒子サイズは層16のサイズより大きくなり得、その結果、電子はメモリノード1上に安定に蓄積され高信頼性の動作をする。図10の構成では、メモリノード1は5〜30nm(望ましくは5nmであるが、5〜30nmでも可能)nmの厚さを有し、ポリシリコンから形成される。変形例として、ノード1には、ノードにおける電子状態の安定性を改善するために、ドーピングしてもよい。以上から、情報を蓄積するときには、ポリシリコン層17が空乏領域を形成してdsを増加させる。一方、ライトプロセスでは、層16は障壁として機能せず、本構成は、電子を電極9からノード1へ向かって加速させるポテンシャルの傾斜をもたらす。これは、電子をノード上への高速の書込を促進させる。
【0046】
以下、図12を参照して、本デバイスの製造方法を詳細に説明する。抵抗率10ΩcmのP型シリコンウェハを用いる。例えば、厚さ500nmのSiO2の分離(isolation)領域7を形成した後、p型シリコン基板3の頂面に、熱酸化により、5nmのゲート酸化膜21を成長させる。次に、メモリノード1を形成する層を蒸着(deposite)する。層1は、5〜10nm(望ましくは5nmであるが、10nmまでの厚さでも可能)の厚さまで被着されたn型のSiからなり、その表面は望ましくは900℃の温度のNH3の雰囲気内で窒化シリコンに変化させられる。このようにして形成された窒化シリコンの厚さは1〜2nm(望ましくは1nmであるが、2nmの厚さまで可能)に自己制限される。これは、図10に示した窒化層15aに対応する。その後、被覆層16a(図10)を形成するために非ドープシリコンが3〜5nm(望ましくは3nmであるが、5nmの厚さまで可能)nmの厚さまで成長される。この層はさらに、次の1〜2nm(望ましくは1nmであるが、2nmの厚さまで可能)の厚さの窒化シリコン層15bを形成するために窒化(nitridation)される。このプロセスを複数回繰り返して障壁構造2が造られる。
【0047】
ついで、厚さ20nmのn型ドープシリコン膜22が障壁構造層2の上に蒸着される。この膜22の上には、化学蒸着法(CVD)により、SiO2膜23が20nmまで成長される。
【0048】
シリコン膜の種々の層はアモルファス状態で成長されるが、CVD被着されたSiO2層23の窒化および緻密化(densifying)プロセス中に、多結晶シリコンに変化させられる。ついで、最頂部のSiO2膜23は、CHF3及びアルゴンの雰囲気内で従来のリソグラフィー技術およびリアクティブイオンエッチングによりパターン化される。
【0049】
その後、このパターン化されたSiO2層23をマスクとして使用することにより、ポリシリコンおよび窒化シリコン層22,2および1は、図12(b)に示したようなゲート構造24を生成するために、CF3を用いたリアクティブイオンエッチングによりエッチングされる。このゲート構造24の典型的な長さlは0.15μmである。
【0050】
図12(c)に示すように、このウエハは、ついで、30nmの厚さの熱SiO2の外側層25を形成するために酸化される。その後、ソース領域5およびドレイン6が、砒素イオンによるイオン打ち込みにより形成される。
【0051】
ついで、図13(d)に示すように、100nmのSiO2膜26が蒸着される。この膜は、平坦な上面を得るために十分な厚さ、本例では1500nmの厚さの光学フォトレジスト27の層により被覆される。フォトレジスト27はついでその表面からSiO2層26が突出するまでエッチングされる。このエッチングは,O2雰囲気の中でスパッタリングにより行われる。これによって得られた構造を図13(e)に示す。
【0052】
SiO2膜26の頂部26aは、図13(f)に示すように、ポリシリコン膜22の頂部が露出するまで、WF6ガスの雰囲気内でリアクティブイオンエッチングにより除去される。
【0053】
光学フォトレジスト27を除去した後、現れた表面上に金属を被着し、従来のリソグラフィ技術によりパターン化する。これにより、前述したワードラインX1を形成する制御電極9を設ける。
【0054】
本メモリデバイスは、種々の方法で変形することができることが理解されよう。例えば、電気伝導層15の厚さは上述した5nm(望ましくは3nmであるが、5nmまでの厚さまで可能)の値でなくてもよく、概していえば、10nmまたはそれ以下の厚さであれば足りる。絶縁層16の厚さは、前述の2nm(望ましくは1nmであるが、2nmまでの厚さまで可能)の値ではなく3nmまたはこれ以下の範囲であれば足り、これにより、満足できる狭く高い障壁成分18を生成できる。但し、上述した製造プロセスは各層16の厚さを、2nm(望ましくは1nmであるが、2nmまでの厚さまで可能)のオーダーとなるように厳密に制御する必要がある。また、層15,16の組の個数は、障壁構造2内に満足のいく広く低い障壁成分17を得るに足る個数であれば上記例の”7”と異なってもよい。
【0055】
第2の実施の形態
変形例として、図10に示した障壁構造2は図13に示したようなショットキ障壁構造に置き換えることができる。この場合、絶縁窒化シリコン層15を用いる代わりに、金属層18を用いて積層したショットキダイオードの多重構造を形成する。金属層28はWにより、あるいはCoSi2のようなケイ化膜により、非ドープ多結晶膜16間に形成される。
【0056】
次に、本発明によるメモリデバイスのさらに他の実施の形態について説明する。この実施の形態では、トンネル障壁構造2が電気絶縁材料のマトリクス(matrix)中に分散されたナノメータスケールの複数の島から構成される。以下の例では、ナノスケールの島は5nmまたはそれ以下の直径を有し、マトリクス中の電気絶縁材料のナノスケールの厚さ(例えば3nmまたはそれ以下)により隔離される。これによって、トンネル障壁構造の狭く高い障壁成分が得られる。電荷蓄積ノードは、前述したような独立した層1ではなく、障壁構造全体に分散するように、複数の伝導島により形成される。以下に説明するように、このような多重トンネル障壁構造を形成するには、幾つかの異なる製造プロセスを用いることができる。
【0057】
第3の実施の形態
図15は、本発明によるメモリデバイスの他の実施の形態の概略断面図を示す。この実施の形態では、メモリノード1および障壁構造2は、取り囲むSiO2マトリクス内に分散されたナノスケールの結晶からなる複合体により実現される。図15において、基板3にソースおよびドレイン領域5,6およびこれらの間の経路4を設ける。この経路4をゲート酸化物層29が被覆する。この層29は、5nmの厚さを有し、基板の熱酸化プロセスにより形成される。その後、電子ビーム蒸発またはCVDにより6nm厚のシリコン層を蒸着する。さらに、この層に対して急速熱酸化および結晶化(crystallisation)が行われる。このプロセスは、E.H.NicollianおよびR.TsuによるJ. Appl. Phys. vol. 74, 1993,pp.4020-4025、ならびに、M.Fukuda, K.Nakagawa, S.MiyazakiおよびM.HiroseによるExtended abstracts of 1996 International Conference on Solid State Devicesand Materials, Yokohama, 1996, pp.175-178に記載されている。これは、層30として構成された、3nmの平均直径のSiナノ結晶の形の島を形成し、この層30を2nm厚のトンネリング酸化物層31が被覆する。3nmSi結晶の自己容量は約100meVの帯電エネルギーをもたらす。このエネルギーは、室温で各ナノ結晶内部の電子の個数をクーロンブロッケードにより制限するのに十分である。層29の被着に続く急速熱酸化および結晶化を何回か繰り返して、十分な厚さの複合層を作り上げる。この実施の形態では、このプロセスを5回繰り返して20nmの厚さの複合体層を形成する。この厚み内に5個のナノ結晶層30が内包される。その後、n型シリコンのコンタクト層32を頂部表面に形成する。このようにして出来上がったゲート構造は、図12、図13で前述したメモリデバイス製造プロセス内に組み込むことができることが理解されよう。但し、メモリノード1は独立した層として設けられるのではなく、各層30としてのナノ結晶が絶縁酸化物層29,31内に分散した電子蓄積場所をもたらす。
【0058】
第4の実施の形態
図16は、本メモリデバイスの他の実施の形態を形成するためのプロセスステップを示す。この実施の形態では、多孔性のSi膜を用いることにより、シリコンナノ結晶とこれを取り囲むSiO2層の複合体(composite)が形成される。図16(a)に示すように、20nmの厚さの多孔性Si膜33は、p型Siを陽極酸化することにより形成される。この陽極処理は、エタノールにより希釈された25%水性フッ化水素酸溶液内で、5秒間10mA/cm2の直流陽極電流により実行される。その結果、SiO2マトリクス内に4〜5nmのナノ結晶Siが埋め込まれた複合体膜が形成される。この方法自体は公知であり、Y.Kanemith等によるPhys.Rev. vol.B48, 1993, p2827に詳細に記載されている。
【0059】
ついで、図16(b)に示すように、多孔性シリコン膜33を熱酸化して5nm厚のゲート酸化膜34を形成すると共に、約7nm厚の頂部酸化層35を形成する。このプロセスは、また、アニーリングにより多孔性Si膜中の各ナノ結晶の直径を収縮させるとともに、多孔層33自体の厚さも収縮させる。このアニーリングプロセスのあと、多孔性Si層33は、14〜16nmの厚さとなり、平均粒子直径は約3nmにまで減少する。このナノ結晶シリコン粒子に対応する帯電エネルギーは約100meVであり、これは前述したように、クーロンブロッケードによりノードに入れる電子の個数を制限する。このようにして得られた膜は、図16(b)に参照番号36として示し、その厚さ方向に約3ないし4個のナノ結晶粒子を含む。これによってこの層に対する垂直方向の電子の移動を考察する場合の多重トンネル接合(MTJ)が得られる。
【0060】
その後、頂部酸化層35を除去し、ポリシリコン材料のゲート32を前述のように被着する。このポリシリコンゲート32をマスクとして用いて、従来のエッチング技術により複合体膜36およびこの下のゲート酸化物34を除去する。その後、図12を参照して説明したような方法によりソースおよびドレイン領域5,6を打ち込む。この方法は、図15で説明した方法に比べて次のような利点を有する。すなわち、多重トンネル接合が単一の陽極処理プロセスにより形成され、必要なSi蒸着および酸化の工程数を減少させることができる。
【0061】
第5の実施の形態
ナノ結晶およびこれを取り囲むマトリクスは、別の材料を用いて他の方法により形成することができる。その一例は、E.Bar-Sadeh等によるPhysical Review vol. B50, No.12, 1994, pp8961-8964に記載されている。この方法では、図16に示した多孔性シリコン層に代わるものとして、Al23マトリクス中にAu粒子を含む層を用いることができる。30nmの厚さのAuおよびAl23の複合体膜は、基板3の熱酸化により形成された厚さ5nmの酸化シリコン層上に金およびアルミを同時スパッタリング(co-suputtering)することにより形成することができる。その後のデバイス製造工程は、第4の実施の形態と同じである。複合体膜形成のスパッタリング条件は、金の分量比を0.4とするよう選定する。この条件下では、3〜5nmのオーダーの直径の孤立したAu粒子が複合体膜中に得られる。したがって、30nm膜は、その厚さ方向に5〜10個のAu粒子を包含し、これが垂直MTJを構成する。これを用いて、図16の多孔性シリコン層の代わりとすることができることが理解されよう。
【0062】
Ag,Ptのような他の貴金属をSiO2またはCr23のような他の金属酸化物マトリクスと組み合わせた複合体膜はこの同時スパッタリングにより形成することができる。
【0063】
金属島−酸化物マトリクス複合体膜は、プリカーサー(precursor)金属酸化物の熱分解によっても形成することができる。例えば、L. Maya等によるJ.Vac.Sci.Tchnol. Vol. B14, 1996, pp.15-21に記載のように、プリカーサー金属酸化物である金酸化物は酸素プラズマ内でAu−Si合金ターゲットのリアクティブスパッタリングにより形成することができる。
【0064】
第6の実施の形態
図17は、化学被着法により、コロイド液から、複合体のナノ結晶・絶縁トンネル障壁を形成する方法を示す。図17(a)に示すように、p型基板3上に熱酸化プロセスにより、厚さ5nmの酸化層21を形成する。ついで、M.J.Lercel等によるJ. Vac. Sci. Technol vol. B11, 1993, pp. 2823-2828により詳細に記載されているように、SiO2層21上に、オクタデシルトリクロロシラン(octadecyltrichlorosilane: OTS)の単層37を生成する。さらに詳細には、SiO2層21付きの基板3をOTSの1mMヘキサデカン溶液内に12時間以上浸す。これによって、OTS単層37が自発形成される。OTS分子は、60kV電子ビームを照射することによりSiO2表面から取り除くことができる。このようにして、従来の電子ビーム理祖グラフィーにより、単層37上でOTSに窓パターンが形成される。OTSに窓を形成した後、フッ化水素酸の1%水溶液内に30秒浸して、電子ビームが照射されたOTSの残滓を濯ぎ流して窓38を残す。この窓のエッジ領域を、破線枠39内について拡大して示す。OTS分子40の一例を図に示す。これは、一端にシロキサン結合(siloxane bond)を有し、他端にメチル基(methyl group)を有する。拡大領域39に示すように、分子40は、SiO2層21とシロキサン結合を形成し、高密度に詰め込まれた共有結合網を形成する。上端のメチル基は実質的に不活性であり、そのため、基板処理の間の化学的攻撃に対して高い抵抗性を示す。
【0065】
続いて、パターン化したOTS単層37を有する基板を、10分間、環流条件下で(例えば約110°Cに加熱して)、3メルカトプロピル(3-Mercatopropyl)トリメトキシシラン(trimethoxysilane)の希釈(0.05%)ドライトルエン溶液内に置く。その後、この基板を30分間、105°Cのオーブン内においてシロキサン結合をキュア(cure)する。その結果を図17(b)に示す。この手順により、窓38の領域内のSiO2層21上にアルカンチオール(alkane thiol)の単層41が生成される。このアルカンチオール単層を形成する個々の分子42の構造は、アルカン鎖の一端にシロキサン結合を有し、他端にメルカプタン基を有するものである。このプロセスは、A.Doron等によるLangmuir, Vol. II, 1995,pp.1313-1317により詳細に記載されている。OTS分子は、影響を受けることなく窓領域38の外側に残る。分子37、42の配列は、破線枠43内に示した窓のエッジの拡大図からより明瞭に理解される。原理的には、この表面変化は、一端がアルコキシシラン(alkoxy silane)((CH3O)3Si−または(C25O)3Si−)で終端された他のアルカンチオールによっても行える。
【0066】
ついで、少なくとも5時間、室温で金コロイド溶液内に基板を浸すことにより、コロイド金粒子44の単層が窓領域38に析出する。この減少は、表面がメルカプタン基(ーSH)により終端された窓領域内においてのみ起こる。これは、金に対する硫黄の強い親和性による。金コロイド粒子の平均直径は2nmである。
【0067】
典型的には10%の標準偏差の良好なサイズ分布の金のコロイド粒子が化学的に用意できることは周知である。このようなナノ粒子は、基板上の硫黄原子と金コロイド粒子表面上の金原子との間で共有結合を成して、メルカプタン基終端表面上に析出される。この粒子析出は、層がほぼ単層となったときに自動的に停止する。これは、金コロイド粒子状の吸着質(adsorbates)のイオン化により生じる、金粒子の表面電荷による静電力が、基板の表面上の既に被着した粒子の上に(または近接した位置に)それ以上のコロイド粒子が付着するのを阻止するからである。より詳細な説明については、1996年2月6日出願の本発明者等のEP96300779.4を参照されたい。このような粒子のコロイド懸濁液は市販されており、所定の平均粒子サイズおよび直径範囲分布のものが、米国NY11790-3350、stony Brook, 25E Loop Road Ste 124にあるNanoprobes Incで入手できる。この粒子は水性懸濁液に入った状態で提供される。吸収されたクエン酸塩イオンはAu粒子に対して負の電荷を与える。
【0068】
前述したコロイド溶液からの金粒子の析出後、ジチオール(dithior すなわち1,6-hexaneditiol)の5mMエタノール溶液に基板を浸す。ジチオールの2個の硫黄原子の一方は、金粒子の表面吸着質をジチオールに置換して、金コロイド表面とAu−S結合を形成する。同時に、ジチオールの当該硫黄原子の他端は自由メルカプタン基の形で金表面から外へ向く。この構成は、ジチオール分子を参照番号45として図18(d)に示す。その後、金粒子表面を、メルカプタン基コート表面に変換する。このメルカプタン基で被覆された表面はさらなる金粒子の層を受容することができる。
【0069】
次に、ジチオール処理した表面を金コロイド溶液中に浸して、再度さらなる層を被着させる。このプロセスを5回繰り返すことにより、2nmの金粒子の層を5層形成する。これらはジチオールのアルカン鎖により接続される。図18(d)の拡大部48に2つの金層46、47を示す。このようにして出来上がった5層の金構造は、図18(d)に参照番号49で示され、10nmのオーダーの厚さを有する。
【0070】
その後、図19(e)に示すように、より大径(例えば40nm)の金粒子を含む金コロイド溶液で金被着プロセスをさらに5回繰り返す。この処理により、層49上に、150nmの厚さの40nm金粒子複合体層50が形成される。この層50を形成する粒子はより大径のものであるので、1neVオーダーの無視できるほど小さい帯電エネルギーを呈し、その結果、この複合体層50の電子伝導はオーミック特性(ohmic character)を示す。これは、クーロンブロッケード効果により支配される伝導特性を示す層49を形成するより小径の粒子の場合と異なる。したがって、大径金複合体層50は通常の金層として働き、そのため、例えば前述した実施の形態におけるポリシリコンゲート22と同様のゲートとして機能する。
【0071】
その後、金複合体層50をマスクとして用いて、OTS層37およびゲート酸化層21をドライエッチングする。これにより、従来のイオンビーム技術により基板3にソースおよびドレイン領域5,6を打ち込めるようにする。
【0072】
タイプ2
図20に、本発明によるメモリデバイスの他のタイプの概略構成を示す。このデバイスは、図1に示したものと類似し、同様の部品には同じ参照番号を付してある。図17のデバイスは、さらに制御ゲート51を有する。これは、障壁構造2に対して選択的に電界を印加することにより、そのトンネル障壁特性を変化させるものである。すなわち、端子Yに電圧を印加する際、端子Xの電圧を変化させることによりゲート51の電界を変化させることができ、その結果、その電界が障壁2のトンネル障壁特性を変化させる。ゲート51により印加される電界の効果は、図21のグラフから理解することができる。それぞれ図21(a)(b)に示すように、ゲート51上の電圧を用いて本デバイスを”ON”状態と”OFF”状態の間でスイッチングさせることができる。ゲート51に印加される電圧は阻止(blocking)電圧VBの幅を変化させる。図21(a)に示すように、ゲート51に“ON”電圧Vxを印加すると、阻止電圧は比較的小さく、場合によっては存在しなくなる。図21(a)では、阻止電圧VBは−VCLから+VCLの範囲にある。これに対して、ゲート51に他の”OFF”に電圧がある場合には、阻止領域はそのより広い領域である−VCHから+VCHとなる。したがって、本デバイスが”ON”状態に切り替えられると、メモリノード1へ電荷が通り抜けることができ、”OFF”状態の間、蓄積される。”OFF”状態の間は、実質的にK.NakazatoおよびH. AhmedによるApplied Physics Letters, 5 June 1995,Vol.66, No. 23, pp.3170-3172に記載のように、VCHを増加させるためにゲートゲート51にバイアス電圧を印加してもよい。ワードライン51に印加される電圧Vxにより生成される電界は、トンネル障壁構造2に対して横から与えられ、これにより、図21(a)(b)を比較すると分かるように、非伝導領域を圧迫(squeeze)する。
【0073】
次に、図22および図23を参照して、ゲート51によるトンネル障壁2の電圧阻止領域の変調について詳細に説明する。図22は、メモリノード1、トンネル障壁構造2、および接続部Yの断面図を示す。ゲート51は図21では省略しているが、後述する。トンネル障壁構造は、図10で前述した方法により形成された、厚さ3〜10nm(望ましくは3nmであるが、3〜10nmでも可能)の非ドープポリシリコンと、厚さ1〜3nm(望ましくは1nmであるが、1〜3nmでも可能)の窒化シリコンの交互の層15,16からなる。メモリノード1は、厚さ5〜30nm(望ましくは5nmであるが、5〜30nmでも可能)のn型ドープポリシリコン層からなり、30nmの厚さの非ドープポリシリコン層52により被覆される。対応する非ドープ層53が障壁構造の他面側において厚さ30nmのn型非ドープポリシリコン層54の下に被着される。
【0074】
図23のエネルギーバンド図から分かるように、7つの絶縁窒化シリコン層15により、図11で説明したと同様の方法により、対応する比較的狭く比較的高い障壁成分18とともに、比較的広いが低い障壁成分17をもたらす。ゲート51に電圧を印加する効果は、障壁成分17を選択的に高くまたは低くするとともに、障壁成分18もこれに従って上下に引きずるものである。
【0075】
ライトプロセスでは、端子X(図20)に印加される電圧Vxがライト電圧Vw(0V)に設定され、その結果、障壁成分17の高さ(これは実質的に障壁構造における内部電位に相当する)がこの例では比較的小さい値である0.2Vのオーダーとなる。よって、電子は狭い障壁成分18を通り抜けることができ、低く広い障壁成分17aにより阻害されない。その結果、電子は端子Yからメモリノード1へ通り抜ける。
【0076】
ノードに蓄積された電荷は、電圧Vxを待機(スタンバイ)電圧VSB(この例では−5V)まで上げることにより、保持することができる。これによって、比較的広い障壁成分17の全体の高さをレベル17b(この例では3Vのオーダー)まで上昇させる。この上昇された障壁成分17の高さは、電荷キャリアがメモリノード1から外へトンネリングすることを阻止し、これにより、10年にも及ぶ長期間にわたりノード上に情報を保持することが可能になる。
【0077】
情報を読み出すためには、電圧Vxをリード電圧VR(この例では−4Vのオーダー)に設定する。後述するように、これによって、メモリノード1に蓄積されている電荷を保持するとともに、比較的短いリードサイクル(〜110ns)中に本デバイスのソース/ドレイン経路から情報を読み出すことを許容する。障壁成分17は図23に示すように、形状17cのようになる。
【0078】
第7の実施の形態
以上のようなデバイスのアレイのより詳細な構成について、以下、図24により説明する。図24は4つのセルからなる長方形のアレイの平面図を示す。図25、図26は、それぞれ、図24のA−A’線およびB−B’線に沿った1つのセルの断面図である。図25に示すように、各メモリセルの概略構成は図5に示した第1のタイプのものと同様であるが、ゲート51が追加されている。同じ部品には同じ参照番号を付してある。図25において、p型基板3はソース領域5およびドレイン領域6の間に伝導経路4を有し、隣のセルと分離するために絶縁領域7を有する。本デバイスは、メモリノード1および図22に示したように形成された被覆障壁構造2、さらに、被覆非ドープポリシリコン層53、およびn型ドープポリシリコン層54からなるビットラインを有する。このビットライン54は、以下に詳述するように、電気絶縁性のCVDSiO255およびSiO2壁56により覆われる。このセルのサイドゲート51は、厚さ100nmのnドープポリシリコン層からなり、この層は、ビットラインを横断して伸び、障壁構造2のサイドエッジを覆う。
【0079】
再び図24を参照するに、ある行の隣接するメモリセルのドレイン6はドレイン領域6を共有し、これによりメモリセルサイズを低減していることが分かる。
【0080】
あるセル、例えば図24のメモリセルM11に対して、ワードラインX1(51)にライト電圧Vwを印加するとともに、ビットラインY1(54)に2進コード”0”または”1”に応じた適当な電圧を印加することにより、情報を書き込むことができる。これによって、ビットラインY1の電圧に応じた2進値”0”または”1”に対応して、メモリセルM11のメモリノード1に電荷が書き込まれる。このデータは、そのコラム内の他のメモリセルには書き込まれない。なぜなら、他のセルは、そのワードラインX2等に待機電圧VSBを受けるからである。その後、セルM11のノード1のデータを保持するために、ワードラインX1に待機電圧VSBが印加する。ビットラインには電圧を印加する必要はない。セルM11から蓄積データを読み出したい場合、待機電圧VSBより低いリード電圧VRをワードラインX1に印加する。周辺回路(図示せず)が、ラインS1およびG(ライン5,6)間に流れる電流を検出することにより、このセルM11のソース/ドレイン伝導性を検出する。コラム内の他のメモリセルはそれらのワードラインX2等にスタンバイ電圧VSBが印加されることにより、オフにバイアスされるので、これらのセルはM11の読み出しによってアドレス(指定)されることはない。
【0081】
さらに、従来のDRAMに採用されている通常の方法と類似した、本回路を動作させる他の方法を用いることができる。これは、蓄積した情報を周辺回路へ転送して、これを各メモリノードに書き込まれる新たな情報と置き換えるものである。この方法は、電圧阻止領域VBの設計値に広い許容範囲をもたらし、これによってセル毎に生じるVCLおよびVCHの値の大幅な変化を許容するという利点を有する。2進値”1”はメモリノード電圧VHにより表わされ、2進値”0”はメモリノード電圧VLにより表わされる。回路に必要なことは、単に、VCHをVHより大きくし、VCLをVLより小さくする(すなわち、VCH>VH>VL>VCL)のみである。実際には、これらの値を指定する必要はない。この広い設計許容範囲によって、1チップ内に多数個のメモリセルを集積化することが可能になる。
【0082】
この動作方法の詳細について、図27から図29により以下に説明する。図27は、図24に対応するメモリセルアレイの概略回路図であり、メモリセルアレイと同じ基板3上に組み込まれる周辺回路も一緒に示してある。各メモリセルM11〜Mmnは、前述した第2のタイプのメモリデバイスに対応する。但し、この回路は、2個のトランジスタQR、Qwからなる等価回路で示してある。メモリノード1はNで示してある。図27ではこれらの構成をメモリセルM11について示してある。このチップはコラムデコーダ・ドライバ58、ロウデコーダ・ドライバ59、オンチップ電圧コンバータVCを有する。この電圧コンバータVCは、この例では5V電源である外部電圧源Vccから、後述する幾つかの制御電圧を生成する。メモリセルアレイの各コラムは、関連したプリチャージ回路60(PC)およびリード(読み出し)/リライト(再書込)回路61(RWC)を有する。PC60およびRWC61は、メモリセルアレイのコラムn=1について詳細に示し、コラムnの対応する回路については破線枠で示してある。
【0083】
データ入出力回路62は、以下に詳述する方法で、外部信号源からのデータを受け付けるとともに、メモリアレイから外部へデータを出力する。
【0084】
図27、図28、図29において使用される種々の信号、ライン、部品の記号を次に纏めて示す。
【0085】
表項目 名称
M11〜Mmn メモリセル
m メモリセルアレイのロウ
n メモリセルアレイのコラム
S1〜Sn センスライン
Y1〜Yn データ入力ライン
X1〜Xm ワードライン
φy1〜φyn コラム選択信号
I/O コラムデータ入力/出力
PC プリチャージ回路
φp プリチャージ信号
RWC リード/ライト回路
φrw リード/ライト信号
xi ロウアドレス信号
yi コラムアドレス信号
CE チップイネーブル信号
Din データ入力
Dout データ出力
WE ライトイネーブル信号
VC オンチップ電圧コンバータ
R リード電源電圧
Vw ライト電源電圧
Vp プリチャージ電源電圧
SB 待機電源電圧
Vcc 外部印加電圧
IOC データ入力/出力回路
チップイネーブル信号CEが電圧Vcc(以下、”高”という)であるとき、チップは非動作状態(inactive)にある。この状態では、プリチャージ信号φpが”高”であり、PC60のトランジスタが”オン”状態にあるので、S1・・・Sn、Y1・・・YnおよびI/Oは電圧Vpにプリチャージされる。CEが”高”から0電圧(以下、”低”という)に変化すると、このチップは動作状態(active)となる。ついで、φpが”低”になり、PC60のトランジスタを”オフ”にする。このときラインS1・・・Sn、Y1…Ynの電圧はフローティング状態になり、電圧値Vpを維持する。ワードラインは、ロウドライバ59にロウアドレス信号(axi)を印加することにより選択される。リード電圧VRをX1に印加すると、第1のロウのメモリセルM11〜M1nの情報が読み出され、対応するセンスラインS1〜Sn上に出力信号が現れる。例えばメモリセルM11を例に考えると、メモリノードNの電圧がVpであるとき、トランジスタQRが”オン”状態となり、対応するセンスラインS1が0Vへ放電される。逆に、当該メモリノードの電圧が0Vであるとき、トランジスタQRが”オフ”状態にあるので、S1はVpに維持される。S1の電圧が0VまたはVpに落ちついた後、リード/ライト信号φrwが”高”となり、S1の情報がRWC61を経由してY1へ転送される。すなわち、S1が0Vであるとき、Y1はVpVに維持される。なぜなら、QDが”オフ”状態にあるからである。しかし、S1がVpであるときには、Y1は0Vへ放電される。なぜなら、両トランジスタQD,QTとも”オン”状態にあるからである。ついで、印加されたコラムアドレス信号(ayi)に従ってφy1が選択的に高になり、その結果、QY1が”オン”になる。したがって、Y1の電圧変化は、入力/出力ラインI/OおよびIOC62を経由してデータ出力Doutに転送される。Y1が0VまたはVpに落ちついた後、ワードラインX1の電圧がライト電圧Vwに変えられる。その結果、トランジスタQwが”オン”になり、Y1の電圧がメモリノードNに復帰する。このようにして、たとえリード動作中にメモリノード電圧に何らかの変動があったとしても、情報は0VまたはVpにリフレッシュされる。このリードおよびリライト動作は、同じロウの他のセルM12…M1nに対しても実行されるが、セルM11の場合のように読み出された情報がI/Oラインへ転送されることはない。リードおよびリライト動作が終了すると、CEが高となり、X1が待機電圧VSBに設定され、さらにφpが高となる。
【0086】
次に、ライト動作を説明する。一例として、メモリセルM11へのライト動作を図29に示す。リード動作で説明したと同じ動作により、M11の蓄積情報がS1およびY1へ転送される。その後、入力データDinに対応する電圧がI/Oに印加され、Y1のリード情報がこの電圧により置換される。これは、その後、ワードラインX1にライト電圧Vwを印加することによりメモリノードNに蓄積される。同じロウの他のセルM12…M1nは、同じ動作中にリフレッシュすることができる。メモリアレイのすべてのセルにデータを書き込むためには、ロウ毎に順次このプロセスが繰り返されることが理解されよう。
【0087】
図24から図26に示した実施の形態によるメモリセルを製造する方法を、以下、図30により説明する。
【0088】
図30(a)に示すように、10Ωcmのp型シリコン基板ウエハ3を熱酸化して厚さ5nmのSiO2層21を形成する。ついで、メモリノードを形成する厚さ5〜10nm(望ましくは5nmであるが10nmまでの厚さでも可能)のn型ドープシリコン膜1を層21上に被着する。これは、厚さ30nmの非ドープシリコン膜52により被覆される。膜52の表面は望ましくは温度700℃のNH3環境で厚さ1nmの窒化シリコン層に変化させ、図22に示した層15の第1層を形成する。この窒化シリコン層の厚さは、1000℃での2.5nmから700℃での1nmまで成長温度により変化させることができる。続いて、非ドープシリコン層16を被着し、窒化して、厚さ1nmの他の窒化シリコン層15を形成する。このプロセスを順次6回繰り返して、図22に詳細に示した7組の被覆層15,16からなる多重トンネル接合2を形成する。ついで、厚さ30nmの非ドープシリコン膜53を被着する。これはさらに厚さ20nmのSi34膜63で被覆される。この膜63はマスク目的のために被着され、リソグラフィーおよびCHF3およびアルゴンガス中でのエッチングによりパターン化される。シリコン層および窒化シリコン層53,15,16,52は、次に、それ自体周知のドライエッチング法を用いてエッチング除去される。
【0089】
図30(b)において、Si34膜63をマスクとして用いて、障壁構造2の垂直側面のサイドエッジ64aとともにウエハの表面を酸化することにより、例えば、30nmの厚さのSiO264を形成する。ソースおよびドレイン領域5,6には砒素イオンを打ち込む。
【0090】
次いで、図30(c)に示すように、Si34膜63を除去して、従来のCVDプロセスにより、厚さ30nmのn型ドープシリコン膜54を被着し、さらに厚さ50nmのSiO2膜55を被着する。次に、層55を従来のリソグラフィー法およびドライエッチング法により、パターン化する。ビットラインの幅、即ち、図24に示したラインY1(54)の幅は、60nmに選定される。これによって、本デバイスの内部電位の良好な制御が行える。ビットラインY1の種々の層の厚さは、メモリセルアレイのサイズに応じて選定することができる。これらの層は、広いビットラインほど厚くすべきである。レジストおよびSiO2膜55をマスクとして用いて、トンネル障壁構造2の最初の窒化シリコン層が現れるまでCl2ガスの雰囲気中で層54,55を選択的にエッチングする。
【0091】
図30(d)において、厚さ30nmのCVD SiO2層を被着してCHF3およびアルゴンガスの雰囲気中でドライエッチングすることにより、側壁56を形成する。
【0092】
図30(e)において、その後、多結晶シリコン層51を被着してこれを従来のリソグラフィー法およびドライエッチング法によりパターン化することにより、ワードラインを形成する。
【0093】
図27に示したような周辺回路60,61に使用されるn型およびp型MOSトランジスタは、従来の方法により同じ基板3上に形成することができる。n型のMOSトランジスタのソースおよびドレイン領域は、図30(b)で説明したメモリセルMmnのソースおよびドレイン領域5,6の形成と同時に形成することができる。
【0094】
本実施の形態において、個々のメモリノード1に蓄積情報を維持するためには、ワードライン上にスタンバイ電圧VSBを印加する必要がある。これは、デバイスがオフされるときに、外部電池またはキャパシタを用いることにより実現することができる。無視できるほど小さい漏れ電流を除いて、有意な電流は流れないので、不揮発特性を効果的に得ることができる。後述する変形例として、全ての電圧を+5Vだけ正方向にシフトさせることにより、外部電池またはキャパシタを省略することができる。この場合、スタンバイ電圧は0Vとなるので外部電池は不要となる。
【0095】
第8の実施の形態
図31に、待機電圧をシフトする1つの方法を示す。この場合、p型ドープ領域65をワードラインのコンタクト領域下に形成する。この構造は、図25に示したものの変形例と考えることができる。図30(d)に示したプロセスステップの後、SiO255、56をマスクとして用いて、硼素イオンを打ち込むことによりp型ドープ領域65を形成する。ワードラインの電圧は室温で1V程度シフトする。この構造では、内部電位すなわち伝導エネルギーバンドエッジをより効果的に制御できるという他の利点を有する。打ち込まれた硼素イオンが横方向に広がる効果およびこれにより形成された打ち込みp−i接合のビルトイン電位(built-in potential)の効果により、実効的なビットライン幅を現実のビットライン幅より十分狭くすることができる。その結果、第7の実施の形態における0.06μmのビットライン幅ではなく、1μmビットライン幅でも本メモリデバイスを実現するには十分である。この構造では、VSB=−4V、VR=−3V、Vw=1Vである。
【0096】
第9の実施の形態
さらに、図32に示すように障壁構造の内部に薄いp型ドープ層66を形成することができ、これによって、より大きなビルトイン電位が得られる。図32の構造は、図31に示したものの変形例と考えることができる。このようなp型層66は、p型シリコン膜を蒸着することにより、または障壁構造を形成する中間段階で硼素イオンを打ち込むことにより容易に形成することができる。この層は、繰り返し蒸着法により形成できるからである。硼素の拡散を低減するには、p型ドープ層66を図22のような薄いトンネル障壁15により挟み込む。この場合、ワードライン電圧が内部電位ひいては伝導エネルギーバンドエッジを直接的に制御する。これによって、スタンバイサイクルとライトサイクルの間のワードラインの電圧差を低減できる。この構造では、VSB=−2V、VR=−1V、Vw=1Vである。
【0097】
第10の実施の形態
この実施の形態では、図33に示すように、5nmのオーダーの、より厚いトンネル障壁を用いる。図33の構造は図22に示したものの変形例と考えることができる。この障壁構造は、図24〜図26で説明したデバイスに組み込むことができる。図33のメモリノード1は、厚さ30nmの非ドープポリシリコン層52により被覆される。また、この層52自体はSi34の材料からなる単一障壁層67により被覆される。このSi34膜は、300〜500Wの高周波電力による温度550℃でのプラズマ窒化法により形成することができる。この層はさらに、図22を参照して説明した厚さ30nmの非ドープSi層53により被覆される。これによって形成された障壁構造の伝導エネルギーバンド図を図34に示す。この伝導エネルギーバンド図は、比較的低い障壁高さで比較的広い障壁成分17と、層67により生成される、比較的高い障壁高さの比較的狭い障壁成分18とを有する。本例では、この障壁高さは、2ボルトのオーダーであり、絶縁Si34の厚さ5nmの層により生成される。ライト動作中、ライト電圧が図33のサイドゲート51(図示せず)に印加される。この例では、ライト電圧Vw=5Vにより、比較的広い障壁成分が図34の成分17aとなるように、過渡状態において障壁構造が引き下げられる。データを読み出すためには、障壁が17bとなるように電圧VRがゲート51に印加される。この構成では、メモリデバイスからデータを読み出すことができる。情報を蓄積するためには、ワードラインXに0Vを印加して、構造17cがメモリノード1から電荷が漏れるのを積極的に阻止するように、スタンバイ電圧VSB=0Vとする。
【0098】
タイプ3
第11の実施の形態
図35に、本発明によるメモリデバイスの他のタイプを示す。このデバイスは、概して、図4および図5で説明した実施の形態に類似し、同様の要素には同じ参照番号を付してある。図35の実施の形態において、障壁構造は水平面内のドット(lateral dots)68により構成される。これらのドットは、W. Chen, H.AhmedおよびK. NakazatoによるApplied Physics Letters, 12 June 1995, Vol.66,No. 24, pp.3383-3384に記載されたようなイオン化ビーム被着法のような種々の異なる方法により、または、H. AhmedによるThird International Symposium onNew Phenomena in Mesoscopic Structures, December 1995に記載された単原子リソグラフィーにより形成することができる。さらに、水平面内のドット68は、前述のYano等に記載されたような多結晶シリコン膜内の粒子により、また、前記第3、第4、第5の実施の形態の方法で説明したようなナノ結晶により、さらには、前記第6の実施の形態の方法で説明したようなコロイド粒子により、置換することができる。
【0099】
多くの変形、変更は本発明の範囲に包含される。例えば、n型およびp型材料の種々の領域を互いに交換して、前述したものと相補的な伝導特性を有するデバイスを生成することができる。異なる厚さの伝導材料や絶縁材料を混合して、トンネル障壁構成を形成することができる。また、異なる絶縁材料を用いることもできる。例えば、トンネル障壁として窒化シリコンの代わりにシリコン酸化物を用いることができる。さらに、絶縁体上シリコン(silicon on insulator)、SiGe、Ge,GaAs、その他当業者に周知のもの等の異なる基礎基板について、他の半導体製造システムを用いることができる。また、本発明の第1のタイプのメモリデバイスに用いるものとして説明した、障壁構造の種々の異なる実施の形態およびその変形例は、サイドゲート51を有する第2のタイプの実施の形態においても利用することができる。この第2のタイプによる実施の形態は、第1のタイプの原理に従って動作するように、サイドゲート無しで、あるいはサイドゲートに固定電圧を印加して用いるよう変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明による第1の型のメモリデバイスの概略構成図である。
【図2】図1に示した障壁構造2の電流対電圧特性のグラフである。
【図3】図1に示したメモリデバイスのアレイを示す概略回路図である。
【図4】図3に示したメモリアレイ回路の構造を示す概略平面図である。
【図5】図4に沿ったメモリセルM11の断面図である。
【図6】図4のB‐B’線に沿ったメモリセルM11の断面図である。
【図7】メモリアレイの個々のセルに対してデータを書き込み読み出す方法の説明図である。
【図8】2進値”0”((a)〜(d))の書込、および2進値”1”((e)〜(h))の書込の期間中のデバイスのソースおよびドレインにおいて、電圧VSYに対してプロットされたメモリデバイスのメモリノード1の電圧Vのグラフである。
【図9】メモリノード1に蓄積された2進値”1”および”0”について、制御ゲート電圧Vxに対してプロットされたドレイン・ソース電流ISYのグラフである。
【図10】本メモリデバイスの障壁構造2をより詳細に示した断面図である。
【図11】メモリノード1に電荷キャリアが蓄積されるときの障壁構造2の伝導エネルギーバンド図(a)と、制御電極端子Xからのトンネリングにより電荷キャリアがノード1に書き込まれるときの対応するエネルギーバンド図(b)である。
【図12】本メモリデバイスを製造するための種々の製造工程を示す、図4のA−A’線に対応する断面図である。
【図13】図12に続く、本メモリデバイスを製造するための種々の製造工程を示す、図4のA−A’線に対応する断面図である。
【図14】本メモリデバイスに代替的に使用できるショットキ障壁構造の概略断面図である。
【図15】本発明によるメモリデバイスの第3の実施の形態についての、ナノメータースケールの伝導島を有する代替的な障壁構造の概略断面図である。
【図16】ナノメータースケールのシリコン結晶がSiO2全体に分散された本発明によるメモリデバイスを製造するための一連の製造工程を示す図である。
【図17】障壁構造がコロイダル溶液から析出されたナノメータースケールの金分子を含む他の実施の形態を構成するためのプロセス工程図である。
【図18】図17に続くプロセス工程図である。
【図19】図18に続くプロセス工程図である。
【図20】本発明による第2の型のメモリデバイスの概略構成図である。
【図21】端子Xへ印加される電圧がある場合(”ON”状態)と、そのような電圧がない場合(”OFF”状態)において、端子Yに印加される電圧VYの関数としての、図20の障壁構造を流れる電流のグラフである。
【図22】図20に示した障壁構造の拡大された概略断面図である。
【図23】図22に示した障壁構造の伝導バンドエネルギー図を示す。
【図24】図20に示した第2の型のメモリデバイスを内蔵したメモリセルアレイの概略平面図である。
【図25】図24のA‐A’線に沿った断面図である。
【図26】図24B‐B’線に沿った断面図である。
【図27】オンチップドライバおよび他の周辺デバイスとともに示した、図24、図25、図26のメモリセル構造の概略回路図である。
【図28】メモリセルM11から情報を読み出すプロセスを説明するための波形図である。
【図29】メモリセルM11にデータを書き込むプロセスを説明するための波形図である。
【図30】図24〜図26に示したメモリデバイスを製造するプロセス工程の説明図である。
【図31】本メモリデバイスの変形例の概略断面図である。
【図32】本デバイスのさらに他の変形例の概略断面図である。
【図33】本発明による第2の型のメモリデバイスに用いるための他の障壁構成の概略断面図である。
【図34】図33に示した障壁構造に対応する伝導エネルギーバンド図である。
【図35】本発明による第3の型のメモリデバイスの概略断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1…メモリノード、2…障壁、3…基板、4…伝導経路、5…ソース領域、6…ドレイン領域、7…SiO2絶縁領域、8…絶縁SiO2層、9…伝導制御電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース領域、ドレイン領域、および制御電極を有するメモリデバイスであって、
半導体基板に形成された前記ソース領域と前記ドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に延在する伝導経路と、
前記基板を被覆する絶縁層上に設けられ、前記ソース領域と前記ドレイン領域間の電荷キャリアのための前記伝導経路の伝導性を変化させる電界を生成する電荷を蓄積するためのメモリノードと、
前記メモリノードと前記制御電極との間に設けられ、前記制御電極に印加される電圧の極性に依存して、前記制御電極から前記メモリノードへ、あるいは前記メモリノードから前記制御電極へ移動するように、前記電荷が通り抜ける多重トンネル接合構造であるトンネル障壁構造とを、有し、
前記トンネル障壁構造は、
電気絶縁材料と前記電気絶縁材料中に分散された複数の伝導性島とから構成され、前記伝導性島の直径が5nm以下であり、前記各伝導性島の間の前記電気絶縁材料の厚さが3nm以下であり、前記複数の伝導性島が分散された前記電気絶縁材料全体の厚さに対応する比較的広い幅の第1の障壁成分と、前記各伝導性島間の電気絶縁材料の厚さに対応する、互いに前記伝導性島により離隔した各々比較的狭い幅の前記第1の障壁成分よりも高い障壁であり、協同トンネリング効果を抑制するトンネル障壁として機能する第2の障壁成分と、を有するエネルギーバンドプロフィールを呈すること
を特徴とするメモリデバイス。
【請求項2】
ソース領域、ドレイン領域、および制御電極を有するメモリデバイスであって、
半導体基板に形成された前記ソース領域と前記ドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に延在する伝導経路と、
前記基板を被覆する絶縁層上に設けられ、前記ソース領域と前記ドレイン領域間の電荷キャリアのための前記伝導経路の伝導性を変化させる電界を生成する電荷を蓄積するためのメモリノードと、
前記メモリノードと前記制御電極との間に設けられ、前記制御電極に印加される電圧の極性に依存して、前記制御電極から前記メモリノードへ、あるいは前記メモリノードから前記制御電極へ移動するように、前記電荷が通り抜ける多重トンネル接合構造であるトンネル障壁構造とを、有し、
前記トンネル障壁構造は、
前記電気絶縁材料からなる層と前記複数の伝導性島が形成された層の交互の層を有し、前記電気絶縁材料からなる層の厚さが3nm以下であり、前記電気絶縁材料からなる層と前記複数の伝導性島が形成された層の交互の層のすべてを組合せた厚さに対応する比較的広い幅の第1の障壁成分と、個々の前記電気絶縁材料からなる層に対応する、互いに離隔した各々比較的狭い幅の前記第1の障壁成分よりも高い障壁であり、協同トンネリング効果を抑制するトンネル障壁として機能する第2の障壁成分と、を有するエネルギーバンドプロフィールを呈すること
を特徴とするメモリデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメモリデバイスであって、
前記伝導性島は、ナノ結晶の半導体材料により構成されていること
を特徴とするメモリデバイス。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のメモリデバイスであって、
前記伝導性島は、金属により構成されていること
を特徴とするメモリデバイス。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のメモリデバイスであって、
前記電気絶縁材料がSiO又はAlであること
を特徴とするメモリデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−211251(P2008−211251A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130515(P2008−130515)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【分割の表示】特願平9−313309の分割
【原出願日】平成9年11月14日(1997.11.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】