説明

レーザー加工装置

【課題】ワークへの保護膜形成やワークからの保護膜除去の際に、当該処理に伴い発生する保護膜成分を含む液滴のワーク搬送機構等の可動部への飛散を抑え、可動部の固着を防止すること。
【解決手段】レーザー加工装置1は、上面に開口部27を有する筐体28と、ウェーハWを保持すると共に筐体28内部に収容可能な保護膜形成・除去用テーブル26と、筐体28内部に設けられたウェーハWの被加工面を洗浄する洗浄用ノズル32と、ウェーハWの洗浄の際に開口部27を覆うシャッター機構30とを備える。シャッター機構30は、開口部27を被覆可能なシート部材33と、シート部材33が巻回される巻回ローラ34と、シート部材33の先端部を保持し、筐体28上面に設けられた一対のガイドレール35、35上を、開口部27を開放する開放位置と開口部27を閉塞する閉塞位置との間でスライド可能なシート部材保持部36と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークにレーザービームを照射し、アブレーション加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウェーハ等のワークの表面に格子状にストリート(分割予定ライン)が形成され、ストリートにより区画された領域にIC、LSI等の回路が形成される。そして、半導体ウェーハは、加工装置によりストリートに沿って切削され、個々の半導体チップに分割される。このようにして分割された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
半導体ウェーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置を用いて行われることが多いが、レーザービームの照射によって部材の一部を昇華させ、切断する加工技術も実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
アブレーション加工と呼ばれる上記加工技術においては、レーザービームが照射された加工点に熱エネルギーが集中して加工屑(デブリ)が飛散するため、半導体ウェーハの表面への加工屑の付着を防止する必要が生じる。従来、レーザー加工時に飛散する加工屑から半導体ウェーハを保護するため、加工前に半導体ウェーハに保護膜を形成し、加工後に加工屑と共に半導体ウェーハから保護膜を除去するレーザー加工装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載のレーザー加工装置では、レーザー加工前にスピンナーテーブルで半導体ウェーハを吸着保持し、樹脂供給ノズルから液状樹脂を塗布して保護膜を形成し、搬送手段によって半導体ウェーハをスピンナーテーブルからレーザー加工に供されるチャックテーブルまで搬送する。そして、レーザー加工後に、再び搬送手段によって半導体ウェーハをチャックテーブルからスピンナーテーブルまで搬送し、洗浄水供給ノズルから洗浄水を噴出して半導体ウェーハの被加工面に付着する加工屑を保護膜と共に除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2004−322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載のレーザー加工装置では、半導体ウェーハ(ワーク)に保護膜を形成する際や保護膜を洗浄する際に、保護膜の成分である液状樹脂を含む液滴が保護膜形成・洗浄機構外に飛散し、搬送手段等の可動部に付着してしまう。その結果、付着した液滴が乾燥すると、液滴に含まれる液状樹脂の粘着性により可動部を固着させてしまう虞があった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ワークへの保護膜形成やワークからの保護膜除去の際に、当該処理に伴い発生する保護膜成分を含む液滴のワーク搬送機構等の可動部への飛散を抑え、可動部の固着を防止することができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザー加工装置は、ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射してアブレーション加工を行うレーザー加工手段と、前記レーザー加工手段によって加工される前のワークの被加工面に保護膜を形成するための液状樹脂を塗布する保護膜形成手段と、前記レーザー加工手段によって加工された後のワークの被加工面に洗浄水を供給して前記保護膜を除去する保護膜除去手段と、を備えたレーザー加工装置であって、前記保護膜除去手段は、ワークを保持する保持部と、上面に開口部を有し前記保持部を収容する筐体と、前記筐体内に位置づけられた前記保持部に保持されたワークの被加工面に洗浄水を供給する洗浄ノズルと、前記開口部を覆うシャッター部と、を有し、前記シャッター部は、可撓性を有し前記開口部を覆うシート部材と、前記シート部材を巻き取って前記開口部を開放する開位置に位置づける巻き取り部と、前記シート部材を前記巻き取り部から引き出して前記開口部を覆う閉位置に位置づける引き出し部と、前記シート部材が前記閉位置から前記開位置に移動する際に、前記シート部材の下面が擦動する洗浄部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、シャッター部のシート部材が開口部を覆うので、ワークから保護膜を洗浄除去する際に発生する保護膜成分(液状樹脂)を含んだ液滴が、保護膜除去手段外部の搬送機構等の可動部に飛散することを抑え、可動部の固着を防止することができる。また、レーザー加工後のワークの被加工面に洗浄水を供給して保護膜を除去するので、保護膜と共にレーザー加工に伴い発生した加工屑を除去することができる。
【発明の効果】
【0011】
ワークへの保護膜形成やワークからの保護膜除去の際に、当該処理に伴い発生する保護膜成分を含む液滴のワーク搬送機構等の可動部への飛散を抑え、可動部の固着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の外観斜視図である。
【図2】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の保護膜形成・除去ユニットの模式図である。
【図3】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、シャッター機構の模式図である。
【図4】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、保護膜形成処理の際のシャッター機構の動作を説明するための動作図である。
【図5】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、保護膜除去処理の際のシャッター機構の動作を説明するための動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1を参照して、レーザー加工装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。図2は、レーザー加工装置の保護膜形成・除去ユニットの模式図である。
【0014】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、半導体ウェーハ(ウェーハ)W等のワークに加工屑(デブリ)の付着を防止するために保護膜を成膜すると共に、成膜後のウェーハWにレーザー加工を施してレーザー加工後のウェーハWから加工屑及び保護膜を除去するように構成されている。このレーザー加工装置1は、レーザービームを照射するレーザー加工ユニット(レーザー加工手段)2とウェーハWを保持する保持テーブル(保持手段)13とを相対移動させて、ウェーハWにレーザー加工を施すように構成されている。ウェーハWは、略円形状に形成されており、表面に格子状に配列された図示しない分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインによって区画された各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成されている。ウェーハWは、貼着テープ51を介して環状フレーム52に支持され、レーザー加工装置1に搬入される。
【0015】
なお、本実施の形態では、ワークとして、シリコンウェーハ(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料等が含まれる。
【0016】
レーザー加工装置1は、直方体状の加工台3と、加工台3の側面に設けられた保護膜形成・除去ユニット4と、加工台3及び保護膜形成・除去ユニット4の後方から上方に立設した支柱部5とを有している。支柱部5の前面には、前方に突出したアーム部6が設けられ、アーム部6の先端側にはレーザー加工ユニット2の加工ヘッド7が設けられている。また、支柱部5の前面には、アーム部6に隣接して、加工台3内のレーザー加工領域と保護膜形成・除去ユニット4内の保護膜形成・除去領域との間でウェーハWを搬送する搬送機構8が設けられている。加工台3の上面には、Y軸方向に延在する一対のガイドレール9、9が設けられている。一対のガイドレール9、9には、加工送り方向となるY軸方向に移動可能に支持されたモーター駆動のY軸テーブル10が配置されている。
【0017】
Y軸テーブル10の上面には、X軸方向に延在する一対のガイドレール11、11が設けられている。一対のガイドレール11、11には、割出送り方向となるX軸方向に移動可能に支持されたモーター駆動のX軸テーブル12が配置されている。X軸テーブル12の上面には、保持テーブル13が設けられている。Y軸テーブル10及びX軸テーブル12の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にそれぞれボールネジ14、15が螺合されている。ボールネジ14、15の一端部には、駆動モーター16、17がそれぞれ連結され、この駆動モーター16、17によりボールネジ14、15が回転駆動される。
【0018】
保持テーブル13は、X軸テーブル12の上面においてZ軸周りに回転可能なθテーブル18と、θテーブル18の上部に設けられ、ウェーハWを吸着保持するワーク保持部19とを有している。ワーク保持部19は、所定の厚みを有する円板状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。吸着面は、負圧により貼着テープ51を介してウェーハWを吸着する面であり、θテーブル18の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0019】
ワーク保持部19の周囲には、θテーブル18の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部20が設けられている。この4つのクランプ部20は、エアーアクチュエータにより駆動し、ウェーハWの周囲の環状フレーム52を四方から挟持固定する。
【0020】
レーザー加工ユニット2は、アーム部6の先端に設けられ、ウェーハWにレーザービームを照射する加工ヘッド7を有している。図示は省略するが、アーム部6内には、ウェーハWに対してレーザービームを発振する発振器が設けられ、アーム部6内及び加工ヘッド7内には、レーザー光学系が設けられている。加工ヘッド7は、発振器から発振されたレーザービームを集光し、保持テーブル13上に保持されたウェーハWに照射する。
【0021】
搬送機構8は、支柱部5の前面においてX軸方向に延在する上下一対のガイドレール21、21と、一対のガイドレール21、21にスライド可能に係合された搬送用アーム22とを有している。搬送用アーム22には、X軸方向に延在するボールネジ23が螺合されている。ボールネジ23の一端には駆動モーター24が連結されており、この駆動モーター24によりボールネジ23が回転駆動され搬送用アーム22がX軸方向に移動される。搬送用アーム22の下端側には、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム52を吸着保持する吸着保持部25が設けられている。このように構成された搬送機構8は、ウェーハWへの保護膜の成膜後、保護膜形成・除去ユニット4の保護膜形成・除去用テーブル26からウェーハWをピックアップして、保持テーブル13のワーク保持部19上にウェーハWを載置する。そして、搬送機構8は、ウェーハWへのレーザー加工後に、ワーク保持部19からウェーハWをピックアップして保護膜形成・除去ユニット4の保護膜形成・除去用テーブル26に載置する。
【0022】
保護膜形成・除去ユニット4は、ウェーハWを保持する保護膜形成・除去用テーブル(保持部)26と、上面に略円形状の開口部27を有すると共に開口部27内に保護膜形成・除去用テーブル26を収容可能な筐体28とを有している。筐体28の上面の開口部27近傍には、ウェーハWに液状樹脂を供給する樹脂供給ノズル29と、開口部27を開放及び閉塞可能なシャッター機構(シャッター部)30とが設けられている。図2に示すように、筐体28の内部には、ウェーハWに洗浄水を供給する洗浄用ノズル32が設けられている。
【0023】
保護膜形成・除去用テーブル26は、ウェーハWを吸着保持する真空チャック式に構成され、Z軸周りに回転可能に構成されている。保護膜形成・除去用テーブル26は、上面に円板状の吸着面が形成され、周囲に環状フレーム52を保持する4つのクランプ部31が設けられている。吸着面は、負圧により貼着テープ51を介してウェーハWを吸着する面であり、保護膜形成・除去用テーブル26の内部の配管を介して吸引源に接続されている。また、保護膜形成・除去用テーブル26は、筐体28の開口部27と筐体28内部との間で昇降可能に構成されている。ウェーハWに保護膜を成膜する場合には、保護膜形成・除去用テーブル26が樹脂供給ノズル29に対峙する位置まで上昇され、樹脂供給ノズル29から液状樹脂がウェーハWの被加工面に塗布される。そして、保護膜形成・除去用テーブル26が筐体28内部に下降され、高速回転されて液状樹脂がウェーハWの被加工面全体に広がって保護膜が成膜される。一方、ウェーハWから保護膜を除去する場合には、保護膜形成・除去用テーブル26が筐体28内部の洗浄用ノズル32に対峙する位置まで下降され、高速回転されつつ洗浄用ノズル32から洗浄水が噴射されることでウェーハWが洗浄されて加工屑と共に保護膜が除去される。
【0024】
ここで、図3を参照して、レーザー加工装置1のシャッター機構30について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置1のシャッター機構30の模式図であり、図3(a)はシャッター機構30が開口部27を閉塞した状態を示し、図3(b)はシャッター機構30が開口部27を開放した状態を示している。図3(a)及び(b)において、上図はシャッター機構30の平面図であり、下図はシャッター機構30の側面図である。なお、図3(a)及び(b)の上図では、シャッター機構30のカバー部39を省略している。
【0025】
図3に示すように、シャッター機構30は、可撓性を有するシート部材33と、筐体28上面のY軸方向における一端側に設けられ、シート部材33が巻回される巻回ローラ(巻き取り部)34と、筐体28上面外縁部をY軸方向に延在する一対のガイドレール35、35と、一対のガイドレール35、35にスライド可能に構成され、シート部材33の先端側を保持するシート部材保持部(引き出し部)36とを有している。シート部材33は、開口部27全体を被覆可能な大きさに形成されている。シート部材保持部36は、開口部27を跨いで一対のガイドレール35、35に架け渡されるように設けられ、図示しないシリンダ又は駆動モーターにより駆動するように構成されている。巻回ローラ34は、開口部27側にシート部材33の排出口38が形成されたカバー部39に覆われ、カバー部39の内壁に回転可能に支持されている。また、カバー部39内部の排出口38側には、シート部材33の搬送経路上に、シート部材33を洗浄する洗浄ユニット40が設けられている。このように構成されたシャッター機構30では、シート部材保持部36が開放位置となる先端側まで移動(往動)することにより、巻回ローラ34からシート部材33が引き出されて開口部27全体が覆われ、シート部材保持部36が閉塞位置となる巻回ローラ34に近接する位置まで移動(復動)することにより、巻回ローラ34にシート部材33が巻回されて開口部27全体が露出される。
【0026】
洗浄ユニット40は、ウェーハWの保護膜成膜後又は保護膜除去後にシート部材33の下面に付着した保護膜成分を含む液滴を洗浄するものであり、シート部材33の搬送経路を挟んで洗浄用ローラ(洗浄部)41と付勢ローラ42とが対向配置されている。付勢ローラ42は、カバー部39の内壁に回転可能に支持され、図示しないバネにより洗浄用ローラ41に付勢力を付与するように構成されている。
【0027】
洗浄用ローラ41は、筐体28に形成された収容部45の内壁に回転可能に支持され、吸水性を有するスポンジ等の樹脂材料で構成されている。洗浄用ローラ41は、付勢ローラ42との間で挟み込んだシート部材33を介して付勢ローラ42から付勢力を受け、シート部材33の出し引きに応じて回転するように構成されている。収容部45内部には、洗浄用ローラ41に洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル43と、シート部材33下面にエアーを噴き出すエアーブロアーノズル44とが設けられている。収容部45の下部は、図示しないドレインに連通されている。洗浄水供給ノズル43は、シート部材33の巻き取り時において、洗浄用ローラ41の表面に対して連続的に洗浄水を供給するように構成されている。エアーブロアーノズル44は、シート部材33の繰り出し(引き出し)時において、シート部材33下面に残留した液滴が収容部45内部に落ちるように、ノズル先端を収容部45側に向けてエアーを噴き出すように構成されている。
【0028】
このように構成された洗浄ユニット40は、シート部材33を巻き取る場合には、洗浄用ローラ41が洗浄水供給ノズル43から洗浄水を連続的に受けながら、付勢ローラ42からの付勢力を受けてシート部材33の下面が洗浄用ローラ41外周面に押しつけられた状態で洗浄用ローラ41が回転する。そして、シート部材33の下面に付着した保護膜成分(液状樹脂)を含む液滴は洗浄用ローラ41に吸収され、洗浄用ローラ41の回転に伴い下方に位置した際に、吸収された液滴はその自重により収容部45に連通するドレインに排出される。このように洗浄ユニット40によって保護膜成分を含む水滴が除去された状態でシート部材33が巻回ローラ34に巻き取られるので、巻回ローラ34が保護膜成分の粘着性により固着することが無い。一方、シート部材33を繰り出す場合には、付勢ローラ42からの付勢力を受けてシート部材33の下面が洗浄用ローラ41外周面に押しつけられた状態で洗浄用ローラ41が回転し、排出口38の直前で、エアーブロアーノズル44からシート部材33の繰り出し方向と反対側の斜め上方に向けて噴出されるエアーを受ける。このため、シート部材33の下面に残った残留液滴は収容部45側に吹き飛ばされ、残留液滴が除去されたシート部材33が排出口38から排出される。これによりエアーブロアーノズル44のブローによってシート部材33下面に付着した液滴が除去されるので、ウェーハWの被加工面に液滴が落下することが無くなる。
【0029】
次に、図4及び図5を参照して、保護膜形成・除去ユニット4の保護膜形成・除去処理の際のシャッター機構30の動作について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る保護膜形成・除去ユニット4の保護膜形成処理の際のシャッター機構30の動作を説明するための動作図である。図5は、本発明の実施の形態に係る保護膜形成・除去ユニット4の保護膜除去処理の際のシャッター機構30の動作を説明するための動作図である。
【0030】
まず、図4を用いて、保護膜形成処理の際のシャッター機構30の動作について説明する。図4(a)に示すように、保護膜形成処理の際には、シャッター機構30のシート部材33は巻回ローラ34に巻き取られ、筐体28の開口部27全体が開放される開放位置にシート部材保持部36が位置される。そして、樹脂供給ノズル29に対峙する位置まで保護膜形成・除去用テーブル26を上昇させ、ウェーハWの被加工面に樹脂供給ノズル29から液状樹脂が塗布される。
【0031】
ウェーハWに液状樹脂が塗布されると、図4(b)に示すように、保護膜形成・除去用テーブル26を下降させた後、シート部材33が開口部27全体を覆う閉塞位置までシート部材保持部36を移動させる。このとき、シート部材33は、付勢ローラ42により洗浄用ローラ41に押しつけられた状態で繰り出され、エアーブロアーノズル44から噴出されるエアーを受けながら排出口38から排出されるため、シート部材33の下面に付着した残留液滴は収容部45内部で適切に除去され、筺体28内のウェーハWに液滴が落下することが無い。そして、シート部材33が開口部27を完全に覆った状態で、保護膜形成・除去用テーブル26が高速回転されて液状樹脂がウェーハWの被加工面全体に広がって保護膜が成膜される。このとき、シート部材33が開口部27全体を覆っているため、保護膜形成処理に伴って液状樹脂が飛散した場合でも、飛散した液状樹脂はシート部材33の下面に付着して、筐体28外部の搬送機構8等の可動部に付着する虞がない。
【0032】
ウェーハWに保護膜が形成されると、図4(c)に示すように、シート部材33が開口部27を開放する開放位置までシート部材保持部36が移動される。このとき、付勢ローラ42の付勢により、シート部材33の下面が、洗浄水供給ノズル43から供給される洗浄水を吸収した洗浄用ローラ41側に押圧された状態で引き戻されるため、回転する洗浄用ローラ41外周面に、シート部材33の下面に付着した液状樹脂成分を含む液滴が吸収除去される。洗浄用ローラ41に吸水された液状樹脂成分を含む液滴は、洗浄用ローラ41が回転して下方に位置した際に、その自重により収容部45に連通するドレインに排出される。このように、ウェーハWへの保護膜形成の際に発生する液状樹脂(保護膜)成分を含む液滴を、保護膜形成・除去ユニット4内部で除去し、搬送機構8等の可動部への飛散を抑えて可動部の固着を防止することができる。
【0033】
次に、図5を用いて、保護膜除去処理の際のシャッター機構30の動作について説明する。図5(a)に示すように、保護膜除去処理の際には、シャッター機構30のシート部材33は巻回ローラ34に巻き取られ、筐体28の開口部27全体が開放される開放位置にシート部材保持部36が位置される。そして、搬送機構8により搬送されたレーザー加工後のウェーハWが保護膜形成・除去用テーブル26の吸着面に保持される。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、保護膜形成・除去用テーブル26を洗浄用ノズル32に対峙する位置まで下降させ、シート部材33が開口部27全体を覆う閉塞位置までシート部材保持部36を移動させる。このとき、シート部材33は、付勢ローラ42により洗浄用ローラ41側に押圧された状態で繰り出され、エアーブロアーノズル44から噴出されるエアーを受けながら排出口38から排出されるため、シート部材33の下面に付着した残留液滴は収容部45内部で適切に除去され、筺体28内のウェーハWに液滴が落下することが無い。そして、シート部材33が開口部27を完全に覆った状態で、保護膜形成・除去用テーブル26が高速回転されつつ、洗浄用ノズル32から洗浄水が噴射され、ウェーハWが洗浄されて加工屑と共に保護膜が除去される。このとき、シート部材33が開口部27全体を覆っているため、洗浄水の噴出に伴って液状樹脂成分を含む液滴が飛散した場合でも、飛散した液滴はシート部材33の下面に付着して、筐体28外部の搬送機構8等の可動部に付着すること虞が無い。
【0035】
ウェーハWから加工屑及び保護膜が除去されると、図5(c)に示すように、シート部材33が開口部27を開放する開放位置までシート部材保持部36が移動される。このとき、付勢ローラ42の付勢により、シート部材33の下面が、洗浄水供給ノズル43から供給される洗浄水を吸収した洗浄用ローラ41側に押圧された状態で引き戻されるため、回転する洗浄用ローラ41の外周面に、シート部材33の下面に付着した液状樹脂成分を含む液滴が吸収除去される。洗浄用ローラ41に吸水された液状樹脂成分を含む液滴は、洗浄用ローラ41が回転して下方に位置した際に、その自重により収容部45に連通するドレインに排出される。このように、ウェーハWへの保護膜除去の際に発生する液状樹脂成分を含む液滴を、保護膜形成・除去ユニット4内部で除去し、液滴が除去された状態でシート部材33が巻回ローラ34に巻き取られるので、巻回ローラ34が保護膜成分の粘着性により固着することが無い。
【0036】
次に、ウェーハWの分割方法の全体的な流れについて説明する。なお、保護膜形成及び保護膜除去処理の際のシャッター機構30の動作については上述したため、詳細な説明を省略する。
【0037】
まず、保護膜形成・除去用テーブル26にウェーハWが載置されると、樹脂供給ノズル29から液状樹脂がウェーハWの被加工面に塗布される。次に、保護膜形成・除去用テーブル26を下降させ、シート部材33が開口部27全体を覆う閉塞位置までシート部材保持部36を移動させる。そして、シート部材33が開口部27を完全に覆った状態で、保護膜形成・除去用テーブル26が高速回転されて、液状樹脂がウェーハWの被加工面全体に広がって保護膜が成膜される。このとき、シート部材33が開口部27全体を覆っているため、保護膜形成・除去用テーブル26の高速回転に伴って液状樹脂成分を含む液滴が飛散した場合でも、飛散した液滴はシート部材33の下面に付着して、筐体28外部の搬送機構8等の可動部に付着しない。ウェーハWに保護膜が形成されると、シート部材33が開口部27を開放する開放位置までシート部材保持部36を移動させ、保護膜形成・除去用テーブル26を開口部27まで上昇させる。シート部材33の下面に付着した液滴は、洗浄水を吸収した洗浄用ローラ41に吸収除去され、収容部45に連通するドレインに排出される。そして、搬送機構8により保護膜が成膜されたウェーハWが保持テーブル13まで搬送される。
【0038】
保持テーブル13にウェーハWが載置されると、保持テーブル13が加工ヘッド7の加工位置に移動される。次に、加工ヘッド7の出射口がウェーハWの分割予定ラインに位置合わせされると共に、集光器によりレーザービームの焦点がウェーハWの加工点に調整され、アブレーション加工処理が開始される。
【0039】
この場合、保持テーブル13がウェーハWを保持した状態でY軸方向に加工送りされ、分割予定ラインに沿ってウェーハWが分割される。続いて、保持テーブル13が数ピッチ分だけX軸方向に移動され、加工ヘッド7の出射口が隣接する分割予定ラインに位置合わせされる。そして、保持テーブル13がウェーハWを保持した状態でY軸方向に加工送りされ、分割予定ラインに沿ってウェーハWが分割される。この動作が繰り返されてウェーハWのY軸方向の全ての分割予定ラインに沿ってウェーハWが加工される。次に、θテーブル18が90度回転され、同様な動作により、ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ラインに沿ってウェーハWが加工される。すべてのアブレーション加工処理が完了すると、搬送機構8によりウェーハWは保持テーブル13から取り外され、保護膜形成・除去用テーブル26まで搬送される。
【0040】
レーザー加工後のウェーハWが保護膜形成・除去用テーブル26に載置されると、保護膜形成・除去用テーブル26を洗浄用ノズル32に対峙する位置まで下降させると共に、シート部材33が開口部27全体を覆う閉塞位置までシート部材保持部36を移動させる。次に、シート部材33が開口部27を完全に覆った状態で、保護膜形成・除去用テーブル26が高速回転されつつ、洗浄用ノズル32から洗浄水が噴射されることでウェーハWが洗浄されて加工屑と共に保護膜が除去される。このとき、シート部材33が開口部27全体を覆っているため、洗浄水の噴出に伴って液状樹脂成分が含まれる液滴が飛散した場合でも、飛散した液滴はシート部材33の下面に付着して、筐体28外部の搬送機構8等の可動部に付着しない。そして、ウェーハWから加工屑及び保護膜が除去されると、シート部材33が開口部27を開放する開放位置までシート部材保持部36を移動させ、保護膜形成・除去ユニット4を開口部27まで上昇させる。シート部材33の下面に付着した液滴は、洗浄水を吸収した洗浄用ローラ41に吸収除去され、収容部45に連通するドレインに排出される。
【0041】
以上、この構成によれば、可撓性を有し開口部27を被覆可能なシート部材33と、シート部材33が巻回される巻回ローラ34と、シート部材33の先端部を保持し、筐体28上面に設けられた一対のガイドレール35、35上を、開口部27を開放する開放位置と開口部27を閉塞する閉塞位置との間でスライド可能なシート部材保持部36とを設けたので、ウェーハWへの保護膜除去の際に発生する液状樹脂成分を含む液滴をシート部材33の下面に付着させ、筐体28外部の搬送機構8等の可動部への飛散を抑えて可動部の固着を防止することができる。
【0042】
なお、上記した実施の形態においては、筐体28の上面に液滴樹脂を供給する樹脂供給ノズル29を設ける構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、筐体28内部に洗浄用ノズル32と共に樹脂供給ノズル29を設ける構成にしてもよい。この場合には、保護膜形成・除去用テーブル26を樹脂供給ノズル29に対峙する位置まで下降させ、開口部27全体をシート部材33で閉塞した状態で、ウェーハWの被加工面に液滴樹脂を塗布する。
【0043】
また、上記した実施の形態においては、スピンコートタイプの樹脂供給ノズル29によりウェーハWに保護膜を形成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、筐体28内部に、洗浄水供給ノズル31と共にスプレーノズルタイプの樹脂供給ノズル29を設け、このスプレーノズルタイプの樹脂供給ノズル29により保護膜を形成してもよい。この場合も上記同様に、保護膜形成・除去用テーブル26を樹脂供給ノズル29に対峙する位置まで下降させ、開口部27全体をシート部材33で閉塞した状態で、ウェーハWの被加工面に液滴樹脂を噴出する。
【0044】
また、上記した実施の形態においては、レーザー加工装置1に保護膜形成・除去ユニット4を一体的に構成したが、この構成に限定されるものではなく、レーザー加工装置1と保護膜形成・除去ユニット4とを別体で構成してもよい。さらに、上記した実施の形態においては、保護膜形成処理及び保護膜除去処理を単一の装置(保護膜形成・除去ユニット4)で構成したが、保護膜形成処理と保護膜除去処理とを別々の装置で構成してもよい。
【0045】
また、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明は、ワークへの保護膜形成やワークからの保護膜除去の際に、当該処理に伴い発生する保護膜成分を含む液滴のワーク搬送機構等の可動部への飛散を抑え、可動部の固着を防止することができるという効果を有し、特に、半導体ウェーハ等のワークに対してレーザービームを照射し、アブレーション加工を施すレーザー加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザー加工装置
2 レーザー加工ユニット(レーザー加工手段)
4 保護膜形成・除去ユニット(保護膜形成手段、保護膜除去手段)
13 保持テーブル(保持手段)
26 保護膜形成・除去用テーブル(保持部)
27 開口部
28 筐体
29 樹脂供給ノズル
30 シャッター機構(シャッター部)
32 洗浄用ノズル
33 シート部材
34 巻回ローラ(巻き取り部)
36 シート部材保持部(引き出し部)
40 洗浄ユニット
41 洗浄用ローラ(洗浄部)
42 付勢ローラ
43 洗浄水供給ノズル
44 エアーブロアーノズル
W ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射してアブレーション加工を行うレーザー加工手段と、前記レーザー加工手段によって加工される前のワークの被加工面に保護膜を形成するための液状樹脂を塗布する保護膜形成手段と、前記レーザー加工手段によって加工された後のワークの被加工面に洗浄水を供給して前記保護膜を除去する保護膜除去手段と、を備えたレーザー加工装置であって、
前記保護膜除去手段は、
ワークを保持する保持部と、
上面に開口部を有し前記保持部を収容する筐体と、
前記筐体内に位置づけられた前記保持部に保持されたワークの被加工面に洗浄水を供給する洗浄ノズルと、
前記開口部を覆うシャッター部と、を有し、
前記シャッター部は、
可撓性を有し前記開口部を覆うシート部材と、
前記シート部材を巻き取って前記開口部を開放する開位置に位置づける巻き取り部と、
前記シート部材を前記巻き取り部から引き出して前記開口部を覆う閉位置に位置づける引き出し部と、
前記シート部材が前記閉位置から前記開位置に移動する際に、前記シート部材の下面が擦動する洗浄部とを有することを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40571(P2012−40571A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181193(P2010−181193)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】