説明

不揮発性半導体メモリのスクリーニング方法および書き込み装置

【課題】不揮発性半導体メモリのスクリーニングを、製造工程の生産性に影響を与えることなく、より確実に行えるようにする。
【解決手段】不揮発性半導体メモリの製造工程において、検査の結果良品と判定した後、1以上のフローティングゲートにデータを書き込む第1工程と、製造完了後、良品確認工程において、第1工程においてデータが書き込まれた全てのフローティングゲートから書き込んだデータが読み出せる場合には当該不揮発性半導体メモリを良品と判定する第2工程と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体メモリのスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不揮発性半導体メモリ(EEPROMやフラッシュメモリ)は、電気的にデータを書き換えることができ、電源を切ってもデータが失われず、長期間データを保持することができることから、ワンチップマイコン内部のROMやデータ用外付けROM、パーソナルコンピュータ(PC)の外部記憶媒体など、幅広く使われている。
【0003】
この不揮発性半導体メモリは、電気的に絶縁されたフローティングゲートを有するメモリセルから構成され、フローティングゲートに電荷を蓄積することにより、電源を切ってもデータが失われないという不揮発性メモリの特性を実現している。
【0004】
不揮発性半導体メモリにデータを書き込むとは、フローティングゲートに電荷を注入することであり、データを消去するとはフローティングゲートから電荷を引き抜くことである。このデータが消去された状態をブランク状態という。
【0005】
フローティングゲートを囲んでいる絶縁膜に欠陥があると、フローティングゲートに蓄積された電荷がリークし、長期間データを保持することができない。
【0006】
半導体メモリ製造工程においては、通常、次のような手順で絶縁膜に欠陥のある半導体メモリを排除している。すなわち、データを書き込み、高温に保って一定時間放置し、データを読み出して書き込んだデータと比較し、それが異なるデータだった場合、当該半導体メモリを不良として排除する、という手順である。テストの結果良品と判断された不揮発性半導体メモリは、テストのために書き込まれたデータを消去され、ブランク状態で工場から出荷されることとなる。
【0007】
データを書き込んだ後、高温で一定時間放置するのは、欠陥を有する絶縁膜からフローティングゲートに蓄積された電荷がリークするのを待つためである。温度を高温にするのは、電荷のリークのような物理現象を加速し、リークの有無の確認にかかる時間を短縮するためである。
【0008】
この電荷リークの有無を確認する時間を更に短縮するため、温度を高温に保つことに加えて、コントロールゲートに通常使用時よりも高い電圧を印加する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−10942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された手法では、絶縁膜に欠陥のある不揮発性半導体メモリを排除することが必ずしもできる訳ではない。
【0011】
絶縁膜の欠陥には、例えば、微細な異物の付着による絶縁膜の形成異常であるとか、混入した不純物のイオン化であるとか、膜厚の異常であるとか、さまざまな原因と現象があるが、それら全てに対して、電圧によるリークの加速が等しく生じることはないからである。高温の場合も同様に、絶縁膜のいかなる欠陥に対しても温度によるリークの加速が等しく生じるということはない。
【0012】
従って、短い時間でリークが無いことを確認しただけでは、当該検査をしたときの温度や電圧の条件では十分な加速効果が得られない種類の欠陥があった場合、これを排除できないこととなってしまう。
【0013】
一方、絶縁膜に欠陥のある不揮発性半導体メモリが市場に出た場合、その欠陥は、いわゆる不揮発性半導体メモリの初期故障という形で出現する。初期故障の期間は、一般的に、半年から1年と定義されることが多く、時間の経過とともに故障率は低下する。この半年という期間を、半導体メモリ製造工程における良品のスクリーニングを行う期間に適用することは、半導体メモリ製造工程としては長すぎて生産効率が低下し、経済的に成り立たず現実的ではない。
【0014】
しかし、前述したように、単純に温度又は電圧による加速を行っても、完全に欠陥を排除できる訳ではない、という問題点がある。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、不揮発性半導体メモリのスクリーニングを、不揮発性半導体メモリの製造工程の生産性に影響を与えることなく、より確実に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明の不揮発性半導体メモリのスクリーニング方法は、フローティングゲートに電荷を電気的に注入することによってデータを書き込み、フローティングゲートに注入された電荷を電気的に引き抜くことにより書き込んだデータを消去する不揮発性半導体メモリにおいて、不揮発性半導体メモリの製造工程で、検査の結果良品と判定した後、1以上のフローティングゲートにデータを書き込む第1工程と、不揮発性半導体メモリの製造完了後、当該不揮発性半導体メモリの良品確認工程において、第1工程においてデータが書き込まれた全てのフローティングゲートから書き込んだデータと同じデータが読み出せる場合には当該不揮発性半導体メモリを良品と判定する第2工程と、からなることを特徴とするものである。
【0017】
「不揮発性半導体メモリ」とは、電子部品としてパッケージされた際に、単独で半導体メモリとなるもののみならず、ワンチップマイコンのROM部分も意味する。
【0018】
「検査の結果良品と判定」とは、製造工程において通常行う仕様通りの性能を有することを確認する検査で良品と判定されることを意味する。絶縁膜の欠陥を有するメモリを排除する従来のテストもこの検査に含まれる。
【0019】
「良品確認工程」とは、製造工程とは独立した別の工程であり、不揮発性半導体メモリから読み出されるデータに基づいて良否判定を行う工程を意味する。
製造工程とは独立した別の工程であるので、工場から出荷された後の流通段階に設けても良いし、更にその後の、不揮発性半導体メモリを使用する段階に設けてもよい。
【0020】
第2の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置は、不揮発性半導体メモリにあらかじめ書き込まれたデータとその対応するアドレスを入力する期待データ入力手段と、書き込み対象の不揮発性半導体メモリからデータを読み出し、期待データ入力手段で入力した期待データと比較するデータ比較手段と、書き込み用データを当該不揮発性半導体メモリに書き込むメモリ書き込み手段と、から構成され、期待データ入力手段で入力されたアドレス全てに対して、データ比較手段によりデータが一致したと判断された場合にのみ、メモリ書き込み手段が実行可能となることを特徴とするものである。
【0021】
「アドレス」とは、個々のアドレスのみならず、範囲で示すアドレスも意味する。例えば、0000H番地から1FFFH番地のような表現も含まれる。
【0022】
「期待データ」とは、どのアドレスにどんなデータが格納されているか、すなわち、アドレスとデータの組み合わせとして定義される。アドレスは範囲で示すこともできるので、例えば0000H番地から1FFFH番地のデータはFFHという表現も含まれる。
【0023】
第3の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置は、書き込み対象の不揮発性半導体メモリの種別を入力するメモリ種別入力手段と、メモリ種別入力手段で入力された種別に基づいて、書き込み対象の不揮発性半導体メモリから読み出されるデータの期待値とそのアドレスを決定する期待データ決定手段と、書き込み対象の不揮発性半導体メモリからデータを読み出し、期待データ決定手段で決定した期待データと比較するデータ比較手段と、書き込み用データを当該不揮発性半導体メモリに書き込むメモリ書き込み手段と、から構成され、期待データ決定手段で決定されたアドレス全てに対して、データ比較手段によりデータが一致したと判断された場合にのみ、メモリ書き込み手段が実行可能となることを特徴とするものである。
【0024】
第4の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置は、書き込み対象の不揮発性半導体メモリの全てのアドレスからデータを読み出し、全てのデータが同一であるかを判断するメモリ内容比較手段と、書き込み用データを当該不揮発性半導体メモリに書き込むメモリ書き込み手段と、から構成され、書き込み対象の不揮発性半導体メモリのアドレス全てに対して、メモリ内容比較手段によりデータが一致したと判断された場合にのみ、メモリ書き込み手段が実行可能となることを特徴とするものである。
【0025】
第5の発明の記憶媒体のスクリーニング方法は、不揮発性半導体メモリを使用した記憶媒体の製造工程において、検査の結果良品と判定した後、1以上のフローティングゲートにデータを書き込む第1工程と、当該記憶媒体の良品確認工程において、第1工程においてデータが書き込まれた全てのフローティングゲートから書き込んだデータと同じデータが読み出せる場合には当該記憶媒体を良品と判定する第2工程と、からなることを特徴とするものである。
【0026】
「不揮発性半導体メモリを使用した記憶媒体」とは、不揮発性半導体メモリをインターフェース回路とともに組み込んだモジュールで、具体的には、USBメモリ、メモリカード、などの製品として知られるものである。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明では、第1工程は、不揮発性半導体メモリの製造工程において、検査の結果良品と判定した後、1以上のフローティングゲートにデータを書き込む工程であり、第2工程は、製造工程とは別の独立した工程である良品確認工程において、第1工程で書き込んだデータが正しく読み出せるかどうか確認する工程である。
【0028】
第1工程と第2工程の時間的間隔は、第2工程をいつ実施するかにより、任意に設定することができ、しかも、この時間間隔をどれだけ長期間に設定したとしても、不揮発性半導体メモリ製造工程の生産性に影響を与えることはない。第2工程の属する良品確認工程は不揮発性半導体メモリ製造工程には含まれないからである。
【0029】
第1工程と第2工程の時間間隔を長く設定すれば、それだけフローティングゲートからの電荷のリークの有無をより確実に検出することができる。
【0030】
従って、本発明によれば、不揮発性半導体メモリのスクリーニングを、不揮発性半導体メモリ製造工程の生産性に影響を与えることなく、より確実に行えるようにすることができる。
【0031】
なお、従来技術では、不揮発性半導体メモリ製造工程において検査のために書き込んだテストデータを消去しているので、フローティングゲートとしては電荷が蓄積されていない状態となる。フローティングゲートに電荷が蓄積されていないと、絶縁膜を隔てた周囲の導体又は半導体との間に電位差が生じないので、たとえ絶縁膜に欠陥があったとしても電荷のリークは発生しない。従って、従来技術では、長い時間間隔を設けても電荷のリークの有無を検出することはできなかった。
【0032】
第2の発明の、不揮発性半導体メモリ書き込み装置では、期待データ入力手段を設けたことにより、書き込み対象の不揮発性半導体メモリにあらかじめ書き込まれているデータを入力することができるので、フローティングゲートの電荷リークの有無、すなわち、良品の確認を容易にすることができる。
【0033】
そして、良品を確認できた場合にのみ、データ書き込みが可能となるので、絶縁膜に欠陥を持つ不揮発性半導体メモリは不良品としてデータを書き込んでしまうことがない。
【0034】
また、第3の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置では、期待データ入力手段の代わりにメモリ種別入力手段と期待データ決定手段を設けたことにより、不揮発性半導体メモリにあらかじめ書き込まれているデータの設定を容易に行うことができる。メモリ種別によって、書き込み対象の不揮発性半導体メモリからどんなデータが読み出せるかあらかじめ分かっていることだからである。
【0035】
また、第4の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置では、期待データを入力する代わりに、不揮発性半導体メモリから読み出されたデータが全て一致しているか否により良品確認をするので、期待データを入力したり、メモリ種別に基づいて期待データを決定したりする手間をかける必要がない。これは一般に、不揮発性半導体メモリの個々のフローティングゲートは同じ構造をしており、絶縁膜に欠陥があった場合、その欠陥が原因で電荷がリークするという仕組みはどのフローティングゲートでも同様であることから、スクリーニングを最も効果的に行うのは、全てのフローティングゲートに同じテストデータを書き込むことだからである。
【0036】
また、第4の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置では、従来技術のようなブランク状態の不揮発性半導体メモリと、本発明による不揮発性半導体メモリを混在させて良品確認をすることが可能となり、操作性が大幅に向上する。これはブランク状態の不揮発性半導体メモリでは全てのアドレスから読み出されるデータは同じ値だからである。
【0037】
第5の発明の記憶媒体のスクリーニング方法では、不揮発性半導体メモリを使用した記憶媒体の製造工程において、テストデータを書き込む第1工程を設け、記憶媒体の製造工程とは独立して良品確認工程である第2工程を設けることにより、記憶媒体のスクリーニングを、記憶媒体の製造工程の生産性に影響を与えることなく、より確実に行えるようにすることができる。第2工程は製造工程に含まれないので第1工程との時間間隔を長くしても記憶媒体の生産性に影響を与えることがなく、第1工程と第2工程の時間間隔を長く設定すれば、それだけフローティングゲートからの電荷のリークの有無をより確実に検出することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るスクリーニング方法を示す工程図
【図2】本発明に係る不揮発性半導体メモリ書き込み装置の概略構成図
【図3】期待データ入力手段における処理の流れを示すフローチャート
【図4】データ比較手段における処理の流れを示すフローチャート
【図5】メモリ書き込み手段における処理の流れを示すフローチャート
【図6】メモリ種別入力手段における処理の流れを示すフローチャート
【図7】期待データ決定手段における処理の流れを示すフローチャート
【図8】メモリ内容比較手段における処理の流れを示すフローチャート
【図9】本発明に係る記憶媒体のスクリーニング方法を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明に係るスクリーニング方法を示す工程図である。不揮発性半導体メモリの製造工程において、製造したメモリについて所定の性能を満たしていることを機能テストで確認しているが、この機能テストで絶縁膜の欠陥を有するメモリを排除する従来のテストが行われる。そして、この機能テストの後、出荷する前に、本発明に係る第1工程であるテストデータ書き込み工程1を設ける。
【0041】
通常、フローティングゲートに注入する電荷は電子であり、電子を注入されたフローティングゲート、すなわち、メモリセルからデータを読み出すと、そのデータは「0」となる。一方、フローティングゲートから電子を引き抜くと、そのメモリセルから読み出せるデータは「1」である。従って、このテストデータ書き込み工程1は各メモリセルに「0」を書き込む工程である。
【0042】
なお、従来の工程では、不揮発性半導体メモリを出荷する前に、各メモリセルのデータを消去していた。すなわち、従来の工程から出荷される不揮発性半導体メモリデータを読み込むと、「1」であった。
【0043】
前述したように、不揮発性半導体メモリの個々のフローティングゲートは同じ構造をしているのが一般的なので、スクリーニングを最も効果的に行うためには、全てのフローティングゲートに「0」を書き込むことが合理的である。それでも、例えばメモリの構造上1つ置きに電荷が蓄積されていた方がリークを生じ易いなどの特段の事情があれば、それに合ったデータを書き込むこととなる。1語8ビット構成のメモリの場合、55H(01010101B)又はAAH(10101010B)というデータになる。
【0044】
また、テストデータを書き込むアドレスについても、同様に、全てのアドレスにテストデータを書き込むことが合理的であるが、用途によってはある特定の範囲だけ信頼性が高ければ十分という場合もあり得るので、その場合は、その特定の範囲だけテストデータを書き込むこととなる。
【0045】
出荷された不揮発性半導体メモリは、流通過程に置かれる。具体的には、部品メーカや商社の倉庫である。
【0046】
その後、不揮発性半導体メモリを材料とする製品の製造メーカに流通し、最終的には当該製品の動作を目的としたデータが書き込まれる。
【0047】
この目的データの書き込みの前に、本発明に係る第2工程である良品確認工程2がある。
【0048】
不揮発性半導体メモリの製造時期はロット番号、ウィークリーコードなど不揮発性半導体メモリに付与されている情報により容易に分かるので、製品製造メーカは、この良品確認工程2を実施するタイミングを調整することで、フローティングゲートからの電荷リークを確認する期間を任意に設定することができる。
【0049】
良品確認工程2で行うことは、テストデータ書き込み工程1で「0」を書き込んだメモリセルからデータを読み、それが「0」であることを確認することである。
【0050】
図2は、本発明に係る不揮発性半導体メモリ書き込み装置の構成を示す概略ブロック図である。この書き込み装置は、前述した第2工程である良品確認工程2に使用される機材として適している。
【0051】
制御部は、CPU、ROM、RAMで構成され、書き込み装置全体を制御する部分である。記憶部は、不揮発性記憶装置で、CPUとの間で不揮発性半導体メモリの種類や期待データなどの情報をやりとりする。入力部はキーやスイッチなど入力操作をする部分であり、表示部は液晶やLEDなど情報を表示する部分であり、いずれも人とのインターフェースである。書き込み用ソケットは、これから書き込もうとする対象の不揮発性半導体メモリを挿入するソケットである。マスター用ソケットは、書き込むデータが格納されたメモリを挿入するソケットである。なお、書き込むデータをマスター用ソケットに実装されたメモリから取得する以外に、ネットワークを介してコンピュータから取得したり、メモリカードのような記憶媒体から取得したりすることも可能である。
【0052】
本実施形態においては、各手段は制御部のソフトウェアにより実現されているので、以下、各手段における処理の流れをフローチャートにより説明する。
【0053】
図3は、第2の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置における期待データ入力手段の処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
期待データとは、どのアドレスにどんなデータが格納されているか、すなわち、アドレスとデータの組み合わせとして定義されるものなので、ここは、アドレスとデータを入力する処理である。
【0055】
ステップS1では、アドレス入力を促す旨表示部に表示し、入力部から入力された数値をアドレスとして記憶する。ステップS2も同様に、データ入力を促す旨表示部に表示し、入力部から入力された数値をデータとして記憶する。ステップS3は、期待データ入力を終了するか継続するかの選択を表示部に表示し、入力部からどちらが選択されたかを読み取る。そして、上記ステップS1とS2を繰り返すことにより期待データであるアドレスとデータの組み合わせを全て入力するものである。
【0056】
なお、期待データ入力手段としては、入力部の操作でアドレスとデータを入力する代わりに、記憶部にあらかじめアドレスとデータの組み合わせを格納しておき、これを入力部の操作により読み出す方法も可能である。
【0057】
図4は、第2及び第3の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置におけるデータ比較手段の処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
ステップS4では、書き込み用ソケットに挿入した不揮発性半導体メモリに、期待データに定義されたアドレスを指定し、データを読み込む。そしてそのデータを、ステップS5で期待データに定義されたデータと比較し、一致しなかった場合、この処理はエラー終了する。一致した場合は、ステップS6で期待データに定義された全てのアドレスについて処理を行ったと判断するまでステップS4とS5を繰り返す。ステップS6で、全てのアドレスについて処理を行ったと判断したときは、ステップS5で1回も不一致の結果が出なかったことになるので、不揮発性半導体メモリからは期待データに定義された通りのデータが読み出せたこととなる。
【0059】
このようにして、全てのアドレスについて期待データと一致していることが確認できた場合に、ステップS7でメモリ書き込み手段を書き込み可能状態とする。このことは、すなわち、良品確認工程2において、当該不揮発性半導体メモリを良品と判断することに該当する。
【0060】
図5は、第2から第4の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置におけるメモリ書き込み手段の処理の流れを示すフローチャートである。なお不揮発性半導体メモリ書き込み装置においては書き込み手段を実施しないことで、不揮発性半導体メモリの良否判定を行なうことが一般的でありこの場合は本フローチャートの処理は実施されない。
【0061】
データ比較手段、あるいは、メモリ内容比較手段において、不揮発性半導体メモリから読み出されるデータが、テストデータ書き込み工程1で書き込まれたテストデータと一致していると判断した場合、すなわち、当該不揮発性半導体メモリを良品と判定した場合に、メモリ書き込み手段を書き込み可能状態としているが、具体的には、書き込み可能フラグをセットすることにより行っている。
【0062】
ステップS8では、その書き込み可能フラグをチェックし、書き込み可能状態でなければ、不揮発性半導体メモリにデータを書き込むことなく、処理を終了してしまう。そして、書き込み可能状態のときに、ステップS9に進み、マスターデータを不揮発性半導体メモリに書き込んでいる。すなわち、当該不揮発性半導体メモリが良品である場合に、データを書き込むのである。
【0063】
図6は、第3の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置におけるメモリ種別入力手段の処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
ステップS10では、後に説明するメモリ種別と期待データの対応関係が登録されている不揮発性半導体メモリを表示部に一覧表示し、入力部によりそのなかから該当する不揮発性半導体メモリを選択する。
【0065】
図7は、第3の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置における期待データ決定手段の処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
市場に投入する前に、メモリメーカが不揮発性半導体メモリにテストデータを書き込むのであるが、市場での混乱を避けるためには、1のメモリ種別には1のテストデータが対応した方がよい。この対応関係を規定するのがメモリ種別と期待データの対応関係定義である。期待データとは、すなわちテストデータである。
【0067】
ステップS11では、入力された不揮発性半導体メモリの種別を記憶部にある対応関係定義から検索する。対応関係定義には不揮発性半導体メモリに対応した期待データが定義されているので、次のステップS12で、検索した不揮発性半導体メモリの種別に関連した期待データを決定する。
【0068】
なお、従来技術に係る不揮発性半導体メモリは、市場に出荷されるときにはブランク状態である。このようなメモリであっても、対応関係定義に、「0000Hから7FFFH(全アドレス)に対するデータはFFHである」と定義しておけば、この不揮発性半導体メモリ書き込み装置のデータ比較手段における処理は、従来のブランクチェックの処理と同一となるので便利である。
【0069】
図8は、第4の発明の不揮発性半導体メモリ書き込み装置におけるメモリ内容比較手段の処理の流れを示すフローチャートである。
【0070】
前述したように、特段の事情がなければ、全てのメモリセルにテストデータとして「0」を書き込むことが合理的である。また、1ビットおきにデータを書き込むとしても、全てのアドレスに、55H又はAAHを書き込むことが合理的である。このような場合、期待データを決定しなくても、「全てのアドレスのデータが同じ値である」ことが確認できれば同じ結果を得ることができる。このような処理を行うのがメモリ内容比較手段である。
【0071】
このようにしても、従来技術におけるブランク状態の不揮発性半導体メモリに対して同じ処理を行えば、全てのアドレスでFFHが読み出せるのであるから、従来のブランクチェックの処理と同一となり、便利である。
【0072】
ステップS13では、不揮発性半導体メモリの先頭アドレスのデータを読み込んでいる。ステップS14では、最後に読み込んだアドレスの次のアドレスのデータを読み込んでいる。そして、そのデータをステップS13で読み込んだ先頭アドレスのデータと比較しているのがステップS15である。データが一致しなかった場合、この処理はエラー終了する。一致した場合は、ステップS16で全てのアドレスについて処理を行ったと判断するまでステップS14とS15を繰り返す。ステップS16で、全てのアドレスについて処理を行ったと判断したときは、ステップS15で1回も不一致の結果が出なかったことになるので、不揮発性半導体メモリの全てのアドレスのデータが同じ値であることが確認できたこととなる。
【0073】
このようにして、全てのアドレスのデータが同じ値であることが確認できた場合に、ステップS17でメモリ書き込み手段を書き込み可能状態とする。このことは、すなわち、良品確認工程2において、当該不揮発性半導体メモリを良品と判断することに該当する。
【0074】
図9は、第5の発明の記憶媒体のスクリーニング方法を示す工程図である。
【0075】
記憶媒体の製造工程において、製造した記憶媒体について所定の性能を満たしていることを機能テストで確認した後、出荷する前に、記憶媒体のテストデータ書き込み工程3を設ける。前述したように、通常、記憶媒体のテストデータ書き込み工程3は各モリセルに「0」を書き込む工程である。
【0076】
その後、出荷された記憶媒体は、流通過程に置かれる。具体的には、商社や販売店の倉庫である。
【0077】
その後、記憶媒体の使用者に流通し、使用に先立ち、記憶媒体のフォーマットが行われる。このフォーマットの前に、記憶媒体の不良セクタ確認工程4がある。
【0078】
記憶媒体の製造時期は容易に分かるので、使用者は、この記憶媒体の不良セクタ確認工程4を実施するタイミングを調整することで、フローティングゲートからの電荷リークを確認する期間を任意に設定することができる。
【0079】
記憶媒体のデータ構造は、セクタという区画に分割して管理することが一般的であるので、フォーマットの際に、記憶媒体の不良セクタ確認工程4で電荷リークが確認されたメモリセルを含むセクタを不良セクタとして使用禁止に設定することができる。
【0080】
これにより、記憶媒体で使用するセクタを全て正常なセクタとすることが出来るので、記憶媒体の使用開始後におけるデータの破損等を防止でき、信頼性の高い記憶媒体を使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 テストデータ書き込み工程
2 良品確認工程
3 記憶媒体のテストデータ書き込み工程
4 記憶媒体の不良セクタ確認工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローティングゲートに電荷を電気的に注入することによってデータを書き込み、フローティングゲートに注入された電荷を電気的に引き抜くことにより書き込んだデータを消去する不揮発性半導体メモリにおいて、
不揮発性半導体メモリの製造工程で、検査の結果良品と判定した後、1以上のフローティングゲートにデータを書き込む第1工程と、
不揮発性半導体メモリの製造完了後、当該不揮発性半導体メモリの良品確認工程において、第1工程においてデータが書き込まれた全てのフローティングゲートから書き込んだデータと同じデータが読み出せる場合には当該不揮発性半導体メモリを良品と判定する第2工程と、
からなることを特徴とする、不揮発性半導体メモリのスクリーニング方法。
【請求項2】
不揮発性半導体メモリにあらかじめ書き込まれたデータとその対応するアドレスを入力する期待データ入力手段と、
書き込み対象の不揮発性半導体メモリからデータを読み出し、期待データ入力手段で入力した期待データと比較するデータ比較手段と、
書き込み用データを当該不揮発性半導体メモリに書き込むメモリ書き込み手段と、
から構成され、
期待データ入力手段で入力されたアドレス全てに対して、データ比較手段によりデータが一致したと判断された場合にのみ、メモリ書き込み手段が実行可能となることを特徴とした不揮発性半導体メモリ書き込み装置。
【請求項3】
書き込み対象の不揮発性半導体メモリの種別を入力するメモリ種別入力手段と、
メモリ種別入力手段で入力された種別に基づいて、書き込み対象の不揮発性半導体メモリから読み出されるデータの期待値とそのアドレスを決定する期待データ決定手段と、
書き込み対象の不揮発性半導体メモリからデータを読み出し、期待データ決定手段で決定した期待データと比較するデータ比較手段と、
書き込み用データを当該不揮発性半導体メモリに書き込むメモリ書き込み手段と、
から構成され、
期待データ決定手段で決定されたアドレス全てに対して、データ比較手段によりデータが一致したと判断された場合にのみ、メモリ書き込み手段が実行可能となることを特徴とした不揮発性半導体メモリ書き込み装置。
【請求項4】
書き込み対象の不揮発性半導体メモリの全てのアドレスからデータを読み出し、全てのデータが同一であるかを判断するメモリ内容比較手段と、
書き込み用データを当該不揮発性半導体メモリに書き込むメモリ書き込み手段と、
から構成され、
書き込み対象の不揮発性半導体メモリのアドレス全てに対して、メモリ内容比較手段によりデータが一致したと判断された場合にのみ、メモリ書き込み手段が実行可能となることを特徴とした不揮発性半導体メモリ書き込み装置。
【請求項5】
不揮発性半導体メモリを使用した記憶媒体の製造工程において、検査の結果良品と判定した後、1以上のフローティングゲートにデータを書き込む第1工程と、
当該記憶媒体の良品確認工程において、第1工程においてデータが書き込まれた全てのフローティングゲートから書き込んだデータと同じデータが読み出せる場合には当該記憶媒体を良品と判定する第2工程と、
からなることを特徴とする、記憶媒体のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−38403(P2012−38403A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180423(P2010−180423)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(598044464)株式会社ピーエーネット技術研究所 (51)
【出願人】(504228634)株式会社ナック企画 (6)
【Fターム(参考)】