説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】MONOS型不揮発性メモリセルの書込特性を改善する。
【解決手段】第1方向に伸び、且つ、半導体基板1を複数の素子領域に分離する素子分離絶縁膜STIと、第1方向と交差する第2方向に伸びる複数のワード線と、素子領域上に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルストリングと、メモリセルストリングの一端に選択ゲートトランジスタを介して接続されたビット線コンタクトと、メモリセルストリングの他端に選択ゲートトランジスタを介して接続されたソース線コンタクトとを備え、メモリセル4は、半導体基板1上に形成されたトンネル絶縁膜41と、トンネル絶縁膜41上に形成され、且つ、絶縁膜を含む電荷蓄積層42と、電荷蓄積層42上に形成され、且つ、ワード線に接続されるゲート電極44とを有し、書込時に、選択ワード線に隣接する第1及び第2隣接ワード線のうち、第1隣接ワード線に、パス電圧より大きい補助電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置に関し、特に、MONOS(Metal−Oxide−Nitride−Oxide−Silicon)型メモリセルを有する不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、MONOS型メモリセルを有する不揮発性半導体記憶装置では、メモリセルのビット線が延びる方向の端部において電界ロスが発生する。そのため、メモリセルの中央部に比べて、メモリセルのビット線が延びる方向の端部にトラップされる電子の量が少なくなる。この現象は、メモリセルトランジスタのゲート長をスケーリングするにつれて顕著になる。
【0003】
近年、微細化技術の発展により、メモリセルトランジスタのゲート長が30nmよりも微細なMONOS型メモリセルの開発が進められている。このような微細なMONOS型メモリセルでは、メモリセルのビット線が延びる方向の端部における電界ロスが顕著になるので、メモリセルの閾値電圧Vthが低下する(特許文献1を参照)。その結果、メモリセルの書込特性が劣化する。特に、メモリセルの書込速度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−324860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、MONOS構造を有する不揮発性半導体記憶装置のメモリセルの書込特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
第1方向に伸び、且つ、半導体基板を複数の素子領域に分離する素子分離絶縁膜と、
前記第1方向と交差する第2方向に伸びる複数のワード線と、
各ワード線と各素子領域とが交差する領域に形成されるメモリセルと、
前記素子領域上に直列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルストリングと、
前記メモリセルストリングの一端に選択ゲートトランジスタを介して接続されたビット線コンタクトと、
前記メモリセルストリングの他端に選択ゲートトランジスタを介して接続されたソース線コンタクトと、を備え、
前記メモリセルは、
前記半導体基板上に形成されたトンネル絶縁膜と、
前記トンネル絶縁膜上に形成され、且つ、絶縁膜を含む電荷蓄積層と、
前記電荷蓄積層上に形成され、且つ、前記ワード線に接続されるゲート電極と、を有し、
書込時に、選択ワード線に隣接する第1及び第2隣接ワード線のうち、前記第1隣接ワード線に、パス電圧より大きい補助電圧が印加されることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、MONOS構造を有する不揮発性半導体記憶装置のメモリセルの書込特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の構造を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図2に示すメモリセル4の構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4の電界分布を示す概略図である。
【図5】一般的な不揮発性半導体記憶装置のページ書込の制御を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のページ書込の制御を示す概略図である。
【図7】一般的な不揮発性半導体記憶装置のページ消去の制御を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の弱ページ消去の制御を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係るメモリ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】EASB書込方式を用いた場合の本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のシーケンシャル書込の制御を示す概略図である。
【図11】REASB書込方式を用いた場合の本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のページ書込の制御を示す概略図である。
【図12】REASB書込方式を用いた場合の本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の弱ページ消去の制御を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の構造を示す平面図である。なお、図1(A)は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の回路図であり、図1(B)は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の平面図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。図3は、図2に示すメモリセル4の構造を示す断面図である。なお、図3(A)は、メモリセル4のカラム方向の断面図であり、図3(B)は、メモリセル4のロウ方向の断面図である。
【0011】
図1(A)に示すように、不揮発性半導体記憶装置100には、複数のメモリセル4が設けられている。複数のメモリセル4はメモリセルブロックを構成する。複数のメモリセルブロックはメモリセルアレイを構成する。ここで、半導体記憶装置100は、NAND型フラッシュメモリである。
【0012】
図1(A)に示すように、メモリセル4には、センスアンプ(図示せず)に接続されるビット線BL側及びソース線SL側に選択トランジスタSTが設けられている。これらのビット線BL側及びソース線SL側に設けられた選択トランジスタST間に直列接続される複数のメモリセルトランジスタMTが設けられている。ビット線BL乃至BLと、制御線SGD、ワード線WL乃至ワードWL、制御線SGS、及びソース線SLとは互いに交差する。
【0013】
図1(A)に示すように、制御線SGDは、センスアンプ(図示せず)に接続されるビット線BL乃至BL側の選択トランジスタSTのゲートに接続される。ワード線WLは、ビット線BL乃至BLに接続されるm番目のメモリセルトランジスタMTのコントロールゲートに接続されている。例えば、ワード線WLは、ビット線BL乃至BLに接続される制御線SGS側から数えて4番目のメモリセルトランジスタMTのコントロールゲートに接続されている。制御線SGSは、ソース線SLに接続されるビット線BL乃至BL側の選択トランジスタSTのゲートに接続される。
【0014】
図1(B)に示すように、不揮発性半導体記憶装置100では、ソース線SL、制御線SGS、ワード線WL乃至ワード線WL、及び制御線SGDが縦方向(図1(B)のY方向)に互いに離間され並列配置されている。ビット線BL乃至BLが横方向(図1(B)のX方向)に互いに離間され並列配置されている。このビット線BL乃至BLの下には素子領域(図示せず)が形成され、この素子領域間には素子分離領域(図示せず)が設けられている。すなわち、半導体基板は、素子分離領域によって複数の素子領域に分離されている。ソース線SLとビット線BL乃至BLの交差部分には、ソース線コンタクトSLCが設けられている。制御線SGDとセンスアンプ(図示せず)の間には、ビット線コンタクトBLCが設けられている。このビット線コンタクトBLCはビット線BLと接続されている。
【0015】
図1(B)に示すように、ワード線WL乃至ワード線WLとビット線BL乃至BLの交点部分には、メモリセルが配置されている。同様に、制御線SGS、SGDとビット線BL乃至BLの交点部分には、選択トランジスタSTが配置されている。
【0016】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100は、半導体基板(ウエル領域)1に形成された複数の拡散層2と、半導体基板(ウエル領域)1(例えば、シリコン基板)及び拡散層2上に形成されたトンネル絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜)41と、拡散層2間のトンネル絶縁膜41上に形成された複数のメモリセル4と、を備えている。例えば、トンネル絶縁膜41の厚さは4乃至6nmである。
【0017】
図2に示すように、各メモリセル4n−1乃至4n+2は、両端が各拡散層2の上方に位置するように形成されている。また、各メモリセル4n−1乃至4n+2は、複数のワード線WLn−1乃至WLn+2(図示せず)と接続されている。
【0018】
図3(A)及び(B)に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4は、MONOS型メモリセルである。本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4は、半導体基板(ウエル領域)1上に形成されたトンネル絶縁膜41上に形成され、且つ、所定の絶縁膜(例えば、シリコン窒化膜)を含む電荷蓄積層42と、半導体基板(ウエル領域)1及び素子分離絶縁膜STI上に電荷蓄積層42を覆うように形成されたブロック膜43(例えば、アルミナ)と、ブロック膜43を介して電荷蓄積層42上に形成され、且つ、後述するワード線WLに接続されるゲート電極44と、を備えている。例えば、電荷蓄積層42の厚さは4乃至8nmであり、ブロック膜43の厚さは10乃至17nmである。例えば、メモリセル4のカラム方向の断面におけるゲート電極44の幅(メモリセルトランジスタのゲート長)をLとし、素子分離絶縁膜STIの幅をSとする。
【0019】
図3(A)に示すように、ゲート電極44は、ブロック層43上に形成され、且つ、n型ポリシリコンの仕事関数より高い仕事関数を有する金属層44a(例えば、タングステン(W)、タンタルナイトライド(TaN)等)と、金属層44a上に形成されたポリシリコン層44bと、ポリシリコン層44b上に形成されたシリサイド層44c(例えば、タングステンシリサイド(WSix)、コバルトシリサイド(CoSi)、ニッケルシリサイド(NiSi)等)と、を備えている。また、メモリセル4を覆うように層間絶縁膜5が形成されている。ここで、層間絶縁膜5の誘電率はブロック膜43の誘電率よりも低い材料(例えば、シリコン酸化膜)である。
【0020】
図3(B)に示すように、素子分離絶縁膜STI及び電荷蓄積層42上には、ブロック膜43が連続して形成されている。金属層44a、ポリシリコン層44b、及びシリサイド層44cは、ブロック膜43の上方に、図3(B)のY方向において連続して形成されている。金属層44aは、ブロック層43上に形成されている。素子分離絶縁膜STIの上面は、電荷蓄積層42の上面と下面の間に位置している。ブロック層43は、図3(B)のY方向において、電荷蓄積層42及び素子分離絶縁膜STI上に連続して形成され、電荷蓄積層42の上面及び上部側面と接している。すなわち、ブロック層43の上面は、電荷蓄積層42及び素子分離絶縁膜STIの上面に対応する凸凹になっている。金属層44aの最下面は、ブロック層43の上面よりも低くなっている。ただし、ブロック層43を厚く堆積することにより、金属層44aの下面は平らになる場合がある。
【0021】
本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4の特性について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセルの電界分布を示す概略図である。なお、図4(A)は、カラム方向(図2のX方向)及びロウ方向(図2のY方向)の電界分布を示し、図4(B)は、電界とカラム方向のメモリセル4の位置との関係を示し、図4(C)は、電界とロウ方向のメモリセル4の位置との関係を示している。
【0022】
図4(A)に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4では、カラム方向について、端部で低電界Eが分布し、ロウ方向について、端部で高電界Eが分布する。
【0023】
図4(B)に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4では、カラム方向について、メモリセル4の中心で電界が最も高くなり、メモリセル4の中心から端部に向かって電界が低くなる。これは、カラム方向において、電荷蓄積層42の端部側面が誘電率の低い層間絶縁膜5と接しているからである。
【0024】
一方、図4(C)に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のメモリセル4では、ロウ方向について、メモリセル4の両端で最も電界が高くなり、メモリセル4の端部から中心に向かって電界が低くなる。ロウ方向について、メモリセル4の中心では、メモリセル4の端部より電界が低くなる。これは、ロウ方向において、電荷蓄積層42が誘電率の高いブロック膜43に覆われているからである。
【0025】
本発明の実施形態に係るページ書込の制御について説明する。図5は、一般的な不揮発性半導体記憶装置のページ書込の制御を示す概略図である。図6は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のページ書込の制御を示す概略図である。
【0026】
図5に示すように、一般的な不揮発性半導体記憶装置では、ページ書込時において、半導体基板(ウエル領域)1’に0[V]が印加され、選択ワード線WLに書込電圧Vpgmが印加され、選択ワード線以外のワード線(以下、「非選択ワード線」という)WLn+1、WLn+2、及びWLn−1にパス電圧Vpassが印加される。このとき、選択ワード線WLに接続されるメモリセル4’のカラム方向(図5のX方向)について、電荷蓄積層42の端部で電界ロスが発生する(図3(B)を参照)。
【0027】
これに対して、図6に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100では、ページ書込時において、半導体基板(ウエル領域)1に0[V]が印加され、選択ワード線WLに書込電圧Vpgmが印加され、選択ワード線WLに対してビット線コンタクト側に隣接する第1隣接ワード線WLn+1に補助電圧Vassistが印加され、第1隣接ワード線WLn+1を除く非選択ワード線(選択ワード線WLに対してソース線コンタクト側に隣接する第2隣接ワード線)WLn−1及びその他のワード線WLn+2にパス電圧Vpassが印加される。
【0028】
補助電圧Vassistは、パス電圧Vpassより大きく、且つ、書込電圧Vpgmより小さい。例えば、書込電圧Vpgmは20[V]であり、補助電圧Vassistは[12V]であり、パスVpassは8[V]である。このとき、第1隣接ワード線WLn+1に印加されたパス電圧Vpassより大きい補助電圧Vassistの影響により、選択ワード線WLに接続されるメモリセル4のカラム方向について、電荷蓄積層42の端部での電界ロスが抑えられる。なお、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100では、ソース線コンタクト側に設けられたワード線WLに接続されるメモリセル4から順にページ書込が行われる。例えば、メモリセル4のページ書込が行われた後は、メモリセル4n+1のページ書込が行われる。
【0029】
本発明の実施形態に係るページ消去の制御について説明する。図7は、一般的な不揮発性半導体記憶装置のチップ消去又はブロック消去の制御を示す概略図である。図8は、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の弱ページ消去の制御を示す概略図である。
【0030】
ここで、図6に示す本発明の実施形態に係るページ書込の制御に従ってページ書込が行われていた場合には、選択ワード線WLに隣接するワード線WLn+1に接続されるメモリセル4n+1は、補助電圧Vassistの影響により、誤りビットを記憶した状態になっている可能性がある。例えば、メモリセル4n+1が電荷を蓄積しない状態(“0データ”書き込み)にしたい場合であるにも関わらず、補助電圧Vassistの影響により電荷を蓄積する状態(“1データ”書き込み)になっている可能性がある。
【0031】
そこで、図8に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100では、図6に示す本発明の実施形態に係るページ書込の制御が行われた後に、半導体基板(ウエル領域)1に第1消去電圧Vera(1)が印加され、第1隣接ワード線WLn+1に第2消去電圧Vera(2)が印加され、選択ワード線及び第2隣接ワード線WLn−1、並びにその他のワード線WLn+2に第3消去電圧Vera(3)が印加される。第3消去電圧Vera(3)は、第2消去電圧Vera(2)より大きく、且つ、第1消去電圧Vera(1)以下である。例えば、第1消去電圧Vera(1)は15[V]程度であり、第2消去電圧Vera(2)は、0[V]であり、第3消去電圧Vera(3)は第1消去電圧Vera(1)と等しい電圧である。このとき、第1隣接ワード線WLn+1に接続されたメモリセル4n+1では、第1消去電圧Vera(1)と第2消去電圧Vera(2)との電位差により、電荷蓄積層42にホールが注入されるので、メモリセル4n+1に記憶されていた誤りビット(“1データ”)が確実に消去される。
【0032】
ここで、図8に示す本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の弱ページ消去と、図7に示す一般的な不揮発性半導体記憶装置のチップ消去又はブロック消去との違いを説明する。図7に示すように、一般的な不揮発性半導体記憶装置では、チップ消去又はブロック消去時において、半導体基板(ウエル領域)1’に消去電圧Veraが印加され、全てのワード線WLn−1乃至WLn+2に0[V]が印加される。すなわち、メモリセル4’n−1乃至メモリセル4’n+2に記憶された“1データ”が全て消去されてしまう。換言すると、メモリセル4’n−1に記憶された誤りビット(“1データ”)のみを消去することはできず、メモリセル4’に記憶された“1データ”まで消去されてしまう。
【0033】
一方、図8に示すように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100では、半導体基板(ウエル領域)1に第1消去電圧Vera(1)が印加され、第1隣接ワード線WLn+1に第2消去電圧Vera(2)が印加され、選択ワード線WL及び第2隣接ワード線WWLn−1、並びにその他のワード線WLn+2に第3消去電圧Vera(3)が印加される。その結果、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の弱ページ消去では、メモリセル4及びメモリセル4n−1に記憶された“1データ”は消去されず、メモリセル4n+1に記憶された誤りビット(“1データ”)のみが消去される。
【0034】
本発明の実施形態に係るメモリ制御処理について説明する。図9は、本発明の実施形態に係るメモリ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0035】
<ページ書込工程(図9:S901)> データ書込要求があった後に、図6に示すページ書込の制御が行われる。その結果、所定のメモリセル4にデータが書き込まれる。このとき、メモリセル4n+1は、補助電圧Vassistの影響により、誤りビットを記憶した状態となっている。
【0036】
<弱ページ消去工程(図9:S902)> 図8に示す弱ページ消去の制御が行われる。その結果、メモリセル4n+1に記憶された誤りビットが確実に消去される。
【0037】
<データ保持工程(図9:S903)> メモリセル4は、データ読出要求又はデータ消去要求があるまで、書き込まれたデータを保持した状態を維持する。データ読出要求があった場合には、メモリセル4に記憶されたデータが不揮発性半導体記憶装置100の外部に出力される。一方、データ消去要求があった場合には、メモリセル4に記憶されたデータが消去される。なお、データ読出要求があった場合の処理及びデータ消去要求があった場合の処理は、一般的な方法を用いて行われる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、MONOS構造型メモリセル4を備える不揮発性半導体記憶装置100において、ページ書込時に、選択ワード線WLに隣接する第1及び第2隣接ワード線WLn+1及びWLn−1のうち一方に、パス電圧Vpass(6[V]程度)より大きい補助電圧Vassist(6〜14[V])が印加される。この場合には、選択ワード線WLに接続されるメモリセル4では、補助電圧補助電圧Vassistの影響により、カラム方向について、電界ロスが抑えられる。すなわち、メモリセル4の電荷蓄積層42の端部における電界ロス領域が抑えられ、書込可能領域が広がる。その結果、書込特性が改善する。
【0039】
また、本発明の実施形態によれば、ページ書込が完了した後に、メモリセル4の半導体基板(ウエル領域)1に第1消去電圧Vera(1)が印加され、第1隣接ワード線WLn+1に第2消去電圧Vera(2)が印加され、選択ワード線WL及び第2隣接ワード線WLn−1に第2消去電圧Vera(2)より大きい第3消去電圧Vera(3)が印加される。この場合には、第1隣接ワード線WLn+1に接続されたメモリセル4n+1では、第2消去電圧Vera(2)の影響により、電荷蓄積層42にホールが注入される。その結果、メモリセル4n+1に記憶されていた誤りビットが確実に消去される。
【0040】
また、本発明の実施形態によれば、第3消去電圧Vera(3)は、第1消去電圧Vera(1)と等しくても良い。
【0041】
本発明の実施形態において、第1乃至第3消去電圧Vera(1)乃至Vera(3)は、図7に示す一般的な不揮発性半導体記憶装置のチップ消去又はブロック消去に用いられる消去電圧Veraよりも低く設定できる。なぜなら、一般的な不揮発性半導体記憶装置では、高い閾値のビットを完全に消去する必要があるのに対して、本発明の実施形態では、高い閾値のビットを完全に消去する必要がないためである。第1乃至第3消去電圧を下げることによって、ウエル領域を充電する時間が短縮できるため、その結果、ページ消去の処理時間が短縮する。
【0042】
特に、図4に示すように、上述したカラム方向の電荷蓄積層42の端部における電界ロスは、MONOS構造のメモリセルにおいて問題となる。例えば、ポリシリコン等の導電体または半導体を電荷蓄積層42に用いる場合には、電荷蓄積層42内を電荷が自由に移動できる。すなわち、電荷蓄積層42には、ロウ方向における強電界のみにより、電荷蓄積層42のカラム方向の端部にまで電荷を蓄積される。その結果、電荷蓄積層42は、データを記憶するのに十分な電荷を蓄積することができるようになる。
【0043】
一方、絶縁膜を電荷蓄積層42に用いるMONOS構造のメモリセルの場合には、電荷蓄積層42内を電荷が自由に移動できない。すなわち、ロウ方向における強電界により、電荷をトラップしてもカラム方向まで電荷が移動しない。すなわち、電荷蓄積層42には、ロウ方向における強電界によっても、電荷蓄積層42のカラム方向の端部にまで電荷が蓄積されない。その結果、電荷蓄積層42はデータを記憶するのに十分な電荷を蓄積することができなくなる。
【0044】
そこで、本発明の実施形態では、パス電圧Vpassよりも高い補助電圧Vassistを選択メモリセルのカラム方向に隣接するメモリセルに加えることにより、絶縁膜を電荷蓄積層42に用いるMONOS構造のメモリセルにおいても、電化蓄積層42がデータを記憶するのに十分な電荷を蓄積するこができるようになる。さらに、弱ページ消去により、補助電圧Vassistによるカラム方向に隣接するメモリセルの誤りビットも消去することができる。
【0045】
また、本発明の実施形態によれば、第1隣接ワード線WLn+1は、選択ワード線WLに対してビット線コンタクト側に設けられ、第2隣接ワード線WLn−1は、選択ワード線WLに対してソース線コンタクト側に設けられても良い。例えば、図10に示す、EASB(Erase Area Self Boost)書込方式を用いた場合には、図1(B)に示すソース線コンタクトSLC側のメモリセルトランジスタMTから順番に書込を行うシーケンシャル書込を前提としている。すなわち、ソース線側に隣接する第2隣接ワード線WLn−1には既に“1データ”又は“0データ”が書き込まれた状態である。ここで、第2隣接ワード線WLn−1に印加されているのはパス電圧Vpassよりも低い、カットオフ電圧Vss(例えば、0[V])である。その結果、メモリセル4n−1よりもソース線側のメモリセルに書き込まれたデータの破壊を効果的に防止することができる。
【0046】
さらに、第2隣接ワード線WLn−1にカットオフ電圧Vss(例えば、0[V])が印加される。その結果、ブーストされる領域は、メモリセル4n−1よりもビット線コンタクト側に位置するメモリセルに限定される。そして、上述のシーケンシャル書込により、ブーストされる領域のこれらのメモリセル4n+1、4n+2・・・は全て消去状態になっているので、高いチャネル電圧が得られる。
【0047】
また、本発明の実施形態では、ページ書込時に、ソース線側に隣接する第2隣接ワード線WLn−1にパス電圧Vpass又はカットオフ電圧Vssが印加されているが、本発明の範囲はこれに限られるものではない。例えば、図11に示すように、REASB(Revised Erase Area Self Boost)書込方式を用いた場合には、選択ワード線Lの両側に隣接する第1及び第2隣接ワード線WLn−1、WLn+1に補助電圧Vassistを印加することも可能である。この場合には、第1及ワード線WLn−1のソース線コンタクト側に隣接する第3ワード線WLn−2には、例えば、0[V]のカットオフ電圧Vssが印加される。
【0048】
その結果、選択メモリセル4に隣接する、第1及び第2ワード線WLn−1及びWLn+1にパス電圧Vpassよりも高い補助電圧Vassistが印加されるので、カラム方向におけるメモリセル4の電荷蓄積層42の両端部における電界ロス領域が抑えられ、書込可能領域が広がる。その結果、メモリセル4の書込特性が改善する。
【0049】
さらに、第3隣接ワード線WLn−1にカットオフ電圧Vssが印加される。その結果、ブーストされる領域は、第2隣接ワード線WLn−1よりもビット線コンタクト側に位置するメモリセル(図示せず)に限定される。そして、上述のシーケンシャル書込により、ブーストされる領域のこれらのメモリセル4n+1、4n+2・・・は全て消去状態になっているので、高いチャネル電圧が得られる。
【0050】
なお、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100では、ソース線コンタクト側に設けられたワード線WLに接続されるメモリセル4から順にページ書込が行われるので、第2隣接ワード線WLn−1は、既に“1データ”又は“0データ”が書き込まれた状態である。ここで、第2隣接ワード線WLn−1に、メモリセル4n−1にデータが書き込まれない程度の第2補助電圧Vassist2(すなわち、補助電圧Vassistよりも低くパス電圧Vpassよりも高い電圧)を印加することも可能である。その結果、メモリセル4n−1のデータ変動を効果的に防止することができる。
【0051】
また、REASB書込方式を用いた場合の弱ページ消去では、例えば、図12に示すように、半導体基板(ウエル領域)1に第1消去電圧Vera(1)が印加され、第1隣接ワード線WLn+1に第2消去電圧Vera(2)が印加され、選択ワード線及び第2隣接ワード線WL及びWLn−1、並びにその他のワード線WLn+2に第3消去電圧Vera(3)が印加される。このとき、第2隣接ワード線WLn−1に接続されたメモリセル4n−1には、データが書き込まれている場合があるので、第2消去電圧Vera(3)を加えることにより、電荷蓄積層42にホールが注入されるのを防止することができる。これは、メモリセル4n−1にデータが書き込まれない程度の第2補助電圧Vassist2が印加された場合に有効である。
【0052】
なお、本発明の実施形態では、図1(B)に示すように、ソース線コンタクトSLC側に設けられたワード線WLに接続されるメモリセル4から順にページ書込が行われる例について説明したが、本発明の範囲はこれに限られるものではない。本発明は、ビット線コンタクトBLC側に設けられたワード線WLに接続されるメモリセル4から順にページ書込が行われる場合にも適用可能である。この場合には、ソース線コンタクトSLC側に隣接するワード線WLが第1隣接ワード線WLn+1となり、ビット線コンタクトBLC側に隣接するワード線WLが第2隣接ワード線WLn−1となる。
【0053】
上述した実施形態は、いずれも一例であって限定的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
100 不揮発性半導体記憶装置
BL ビット線
SL ソース線
WL ワード線
SGD,SGS 制御線
BLC ビット線コンタクト
SLC ソース線コンタクト
MT メモリセルトランジスタ
ST 選択トランジスタ
1 半導体基板(ウエル領域)
2 拡散層
4 メモリセル
5 層間絶縁膜
41 トンネル絶縁膜
42 電荷蓄積層
43 ブロック膜
44 ゲート電極
44a 金属層
44b ポリシリコン層
44c シリサイド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に伸び、且つ、半導体基板を複数の素子領域に分離する素子分離絶縁膜と、
前記第1方向と交差する第2方向に伸びる複数のワード線と、
各ワード線と各素子領域とが交差する領域に形成されるメモリセルと、
前記素子領域上に直列に接続された複数のメモリセルを含むメモリセルストリングと、
前記メモリセルストリングの一端に選択ゲートトランジスタを介して接続されたビット線コンタクトと、
前記メモリセルストリングの他端に選択ゲートトランジスタを介して接続されたソース線コンタクトと、を備え、
前記メモリセルは、
前記半導体基板上に形成されたトンネル絶縁膜と、
前記トンネル絶縁膜上に形成され、且つ、絶縁膜を含む電荷蓄積層と、
前記電荷蓄積層上に形成され、且つ、前記ワード線に接続されるゲート電極と、を有し、
書込時に、選択ワード線に隣接する第1及び第2隣接ワード線のうち、前記第1隣接ワード線に、パス電圧より大きい補助電圧が印加されることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
書込が完了した後に、
前記メモリセルのウエル領域に第1消去電圧が印加され、
前記第1隣接ワード線に、第2消去電圧が印加され、
前記選択ワード線及び前記第2隣接ワード線に、前記第2消去電圧より大きい第3消去電圧が印加される請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第3消去電圧は、前記第1消去電圧と等しいことを特徴とする請求項2に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
書込時に、前記第2隣接ワード線に、前記パス電圧が印加される請求項1乃至3の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1隣接ワード線は、前記選択ワード線に対して前記ビット線コンタクト側に設けられ、
前記第2隣接ワード線は、前記選択ワード線に対して前記ソース線コンタクト側に設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−14182(P2011−14182A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155472(P2009−155472)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】