説明

位置特定装置、位置特定方法および位置特定プログラム

【課題】車両位置を高精度に算出することを目的とする。
【解決手段】擬似距離測位部210は擬似距離測位により測位位置Aを得る。白線データ取得部221は測位位置Aの周辺に位置する各白線の三次元座標データを取得する。白線データ撮像面投影部222は各白線データをカメラ撮像面に投影する。映像白線抽出部223はカメラ映像から白線を抽出する。特徴量投影部224は各撮像面白線データと映像白線データとの特徴量を算出し、特徴量相関係数算出部225は各撮像面白線データを映像白線データと比較し、相関係数判定部226は映像白線データに対応する撮像面白線データを特定する。車両位置算出部227は、カメラ映像における当該白線の二次元位置に当該白線データが示す三次元座標を当てはめ、焦点距離や画角や設置角などのカメラの特性に基づいて、車両位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に搭載したTVカメラの画像中の特徴点から車両の位置を正確に把握するための車両位置特定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)により車両の位置はある程度の精度で把握可能であるが、GPS衛星からの測位信号(搬送波ともいう)が受信できない条件では、測位情報を得るための何らかの補完手段が必要であった。
【0003】
例えば、この補完技術としてジャイロによる補完と車速パルスによる補完が一般的に用いられ慣性航法やデッドレコニング(推測航法)により測位されている。しかし、このような補完手段により測位精度を確保するには課題がある。例えば、ジャイロの計測結果(方位角、仰角、回転角の角加速度)のドリフトの影響により測位精度は低下するため、できるだけドリフトの影響を抑えるために、高価なジャイロを用いなければ成らない状況であった。
【特許文献1】特開2006−023278号公報
【特許文献2】特開2006−47291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、車両に搭載されたGPS受信機によりGPSの測位信号が受信しにくい場所において、GPSによる測位の補完技術として、方位角、仰角、回転角の角加速度を計測するジャイロや車輪の回転数カウンタなどに基づく車速を算出するための車速パルスを用いた慣性航法やデッドレコニングが行われてきた。この場合、例えば、ジャイロのドリフトが問題となり、GPSの測位信号が長い時間受信できない状況では位置精度が徐々に劣化するという課題があった。
【0005】
また、従来の車両の位置を画像で検出する装置は、レーン内の横方向のどの位置にいるかを画像処理による白線検出等で把握することはできたが、絶対位置(特に、進行方向の絶対位置)は検出していないため、車両の縦方向の位置を詳細に把握することはできなかった。
【0006】
本発明は、例えば、高精度に車両の位置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置特定装置は、自己位置を測位する第一の測位部と、前記第一の測位部が測位した際の特定の方向を撮像するカメラと、前記カメラが撮像した際の撮像面の2次元画像において前記画像に映っている特定の撮像地物をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて特定する画像処理部と、地物の3次元位置と地物の3次元形状とを示す地物情報を記憶する地物データベースと、前記第一の測位部が測位した自己位置に基づいて自己位置周辺に位置する各地物の地物情報を前記地物データベースから取得する地物情報取得部と、前記地物情報取得部の取得した各地物情報が示す各地物の位置と各地物の形状とに基づいて各地物情報が示す各地物を前記カメラの前記撮像面にCPUを用いて投影地物として投影する地物投影部と、前記地物投影部が投影した各投影地物と前記画像処理部が特定した前記特定の地物とを前記撮像面においてCPUを用いて比較して前記特定の撮像地物に対応する投影地物を特定する地物情報特定部と、前記地物情報特定部が特定した投影地物の前記撮像面における2次元位置と前記地物情報特定部が特定した投影地物の地物情報が示す地物の3次元位置とに基づいてCPUを用いて自己位置を測位する第二の測位部と、前記第二の測位部が測位した自己位置を測位結果として出力機器に出力する測位結果出力部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、画像処理部がカメラ映像から白線を特定し、地物情報取得部が白線の現実の3次元座標を地物データベースから取得し、第二の測位部がカメラ映像の白線の位置に地物データベースの示す3次元座標を当てはめることによりカメラの特性に基づいて自己位置を高精度に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における車両位置特定装置200を搭載した車両100の測位に関する機器構成図である。
車両100は測位対象の一例である。例えば、道路を走行する移動体である自動二輪車に車両位置特定装置200を搭載して自動二輪車の走行位置を測位してもよい。
【0010】
図1において、測位対象である車両100は、車両100の前方(車両100の進行方向、方位角方向、また、車両100の後方であってもよい)の道路を撮像するTVカメラ110と、GPS衛星からの測位信号(搬送波)をGPSアンテナ121で受信してGPS観測を行うGPS受信機120と、カーナビゲーションシステムに用いられるような道路情報が記憶されている道路データベース190と、TVカメラ110が撮像した道路映像とGPS受信機120のGPS観測量(例えば、擬似距離、搬送波位相)に基づく測位位置と道路データベース190から取得した周辺の道路情報とに基づいて車両100の位置を高精度に特定する車両位置特定装置200とを備える。
【0011】
TVカメラ110は撮像方向が車両100の長さ方向(進行方向)と一致するように車両100に取り付けられているものとする。つまり、車両100が真北に向かって走行している場合、TVカメラ110は真北を中心としてTVカメラ110の特性・パラメータ(例えば、焦点距離)に対応する画角の範囲に位置する地物を撮像することができる。TVカメラ110が撮像する映像は動画像でもよいし、静止画像でもよい。
【0012】
道路データベース190(地物データベースの一例)は3次元の道路データ(道路情報)を記憶している。
特に、道路データベース190は道路の中央線(連続線、断続線)、停止線、横断歩道、減速表示などの路面表示について、現実の三次元上の位置と形状とを示すために、エッジ部分またはエッジの端点の位置を示す三次元座標データを記憶しているものとする。以下、路面表示として白線を例に説明する。また、白線についての三次元座標データを白線データとする。白線データを記憶する道路データベース190は、例えば、特許文献2の技術を利用することにより構築できる。
【0013】
図2は、実施の形態1における車両位置特定装置200のハードウェア資源の一例を示す図である。
図2において、車両位置特定装置200は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920の代わりにその他の記憶装置(例えば、RAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ)を用いてもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶機器、記憶装置あるいは記憶部の一例である。また、入力データが記憶されている記憶機器は入力機器、入力装置あるいは入力部の一例であり、出力データが記憶される記憶機器は出力機器、出力装置あるいは出力部の一例である。
通信ボード915は、入出力機器、入出力装置あるいは入出力部の一例である。
【0014】
通信ボード915は、有線または無線で、LAN(Local Area Network)、インターネット、ISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)、電話回線などの通信網に接続されている。
【0015】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、OS921により実行される。
【0016】
上記プログラム群923には、実施の形態において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0017】
ファイル群924には、実施の形態において、「〜部」の機能を実行した際の「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」などの結果データ、「〜部」の機能を実行するプログラム間で受け渡しするデータ、その他の情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。測位結果、道路データベース190から取得した白線データ、TVカメラ110が撮像したカメラ映像、GPS受信機120が観測した擬似距離や搬送波情報などはファイル群924に含まれるものの一例である。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、実施の形態において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他の記録媒体に記録される。また、データや信号値は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0018】
また、実施の形態において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスクやその他の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、位置特定プログラムは、「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0019】
図3は、実施の形態1における車両位置特定装置200の機能構成図である。
実施の形態1における車両位置特定装置200の機能構成について、図3に基づいて以下に説明する。
【0020】
車両位置特定装置200は、GPS受信機120が観測した擬似距離に基づいて車両100の概略位置(測位位置A)を算出する擬似距離測位部210(第一の測位部の一例)と、擬似距離測位部210の算出した測位位置Aの周辺に位置する白線の白線データ(三次元座標)とTVカメラ110が撮像したカメラ映像に映る白線の映像内での位置とに基づいてカメラ位置に対応する車両100の詳細位置(測位位置B)を算出する画像測位部220と、測位結果(測位位置B)をカーナビゲーションシステム(図示省略)や自動運転制御装置(図示省略)などに出力する測位結果出力部230とを備える。
【0021】
また、画像測位部220は以下の機能構成を備える。
白線データ取得部221(地物情報取得部の一例)は擬似距離測位部210の概略測位結果である測位位置Aを入力し、測位位置Aに基づいて車両100の周辺に位置する白線の三次元座標を示す白線データを道路データベース190から取得する。
白線データ撮像面投影部222(地物投影部の一例)は車両100の周辺に位置する白線の白線データをTVカメラ110の撮像面に投影し、撮像面における白線の二次元位置(例えば、座標や画素位置)を示す撮像面白線データ(投影地物の一例)を算出する。
映像白線抽出部223(画像処理部の一例)はTVカメラ110が撮像したカメラ映像に映っている白線を検出し、(TVカメラ110の撮像面に対応する)カメラ映像における白線の二次元位置を示す映像白線データ(特定の撮像地物の一例)を算出する。
特徴量投影部224は、白線データ撮像面投影部222が算出した撮像面白線データと映像白線抽出部223が算出した映像白線データとについて、TVカメラ110の撮像面における水平方向の特徴量と垂直方向の特徴量とをそれぞれ算出する。水平方向の特徴量と垂直方向の特徴量とを投影特徴量とする。
特徴量相関係数算出部225は、特徴量投影部224が算出した撮像面白線データの特徴量と白線データ撮像面投影部222が算出した映像白線データの特徴量とについて、水平方向および垂直方向でそれぞれ比較し、特徴量の一致度を示す相関係数を算出する。
相関係数判定部226(地物情報特定部の一例)は、特徴量相関係数算出部225が算出した相関係数に基づいて、白線の位置が映像白線データと一致する撮像面白線データを特定する。
車両位置算出部227(第二の測位部の一例)は相関係数判定部226が特定した撮像面白線データの投影前の白線データが示す白線の三次元座標とカメラ映像における当該白線の画素位置との関係に基づいて車両100の詳細位置(測位位置B)を算出する。
【0022】
図4は、実施の形態1における車両位置特定装置200の車両位置特定方法を示すフローチャートである。
実施の形態1における車両位置特定装置200が実行する車両位置特定方法について、図4に基づいて以下に説明する。
車両位置特定装置200の各部は以下に説明する処理をCPUを用いて実行する。
【0023】
<S110:画像処理、撮像処理>
まず、映像白線抽出部223はカメラ映像から白線部分を抽出する。
このとき、映像白線抽出部223はGPS受信機120が測位信号を受信した際に撮像されたカメラ映像をTVカメラ110から入力し、入力したカメラ映像に映っている白線を検出し、カメラ映像における白線の二次元位置(例えば、画素位置や撮像面における二次元座標)を示す映像白線データを生成する。例えば、映像白線抽出部223は二値化したカメラ映像やカメラ映像の各画素の色情報などに基づいて白線のエッジ部分や特徴点を抽出し、そのカメラ画像内での位置を特定する。
【0024】
ここで、TVカメラ110が撮像したカメラ映像と道路面上の実際の白線の位置との関係について図5、図6および図7に基づいて説明する。
図5、図6および図7は、実施の形態1における車両100のTVカメラ110が撮像する道路面上の白線の位置と撮像面上の白線の位置との関係を示す図である。
図5において、TVカメラ110は設置角θ(仰角θ、方位角θ、回転角θ)をもって車両100に設置され、車両100の進行方向(車両100の方位角方向)に位置する道路面を画角φ(縦方向φ、横方向φ)の範囲で撮像する。
例えば、図5において、TVカメラ110は道路面に標示された停止線の2つの特徴点A,Cおよび道路面に表示された白線の特徴点Bをレンズ中心Oから焦点距離F離れた撮像面Tに投影した際の撮像面Tの2次元の画像データをカメラ映像として得る。
図6においてL1地点、L2地点、L3地点で撮像した道路面は、カメラの特性やパラメータ(例えば、焦点距離F、画角φ、設置角θ)に応じて、それぞれ、図7に示すカメラ映像(L1)、カメラ映像(L2)、カメラ映像(L3)として映し出される。例えば、図6に示すL1地点で撮像された道路面の白線の特徴点Bは、図7に示すカメラ映像(L1)において特徴点bとして映し出される。また例えば、図6に示すL2地点で撮像された道路面の停止線の特徴点A、Cおよび道路面の白線の特徴点Bは、図7に示すカメラ映像(L2)において特徴点a、cおよびbとして映し出される。また例えば、図6に示すL3地点で撮像された道路面の停止線の特徴点Aは、図7に示すカメラ映像(L3)において特徴点aとして映し出される。また、図7において、点線部分は、TVカメラ110の画角φ外に位置する道路面であり、カメラ映像に映し出されていない部分の道路面を示している。
【0025】
カメラ映像は現実の3次元空間が焦点距離Fや画角φや設置角θなどのTVカメラ110の特性やパラメータ(以下、特性とする)に応じて2次元の撮像面Tに投影されたものである。このため、カメラ映像における地物の位置や長さや幅や傾きに対してTVカメラ110の特性に応じて3次元空間への逆投影を行うことでカメラ映像に映っている地物について現実の3次元空間におけるTVカメラ110に対する相対位置などを算出することができる。言い換えると、カメラ映像に映っている地物に対するTVカメラ110の相対位置を算出することができる。つまり、カメラに映っている地物の絶対位置(現実の三次元座標)が特定できれば、TVカメラ110の絶対位置を算出することができる。
そこで、実施の形態1における車両位置特定装置200は、カメラ映像に映っている白線に対応する白線データを特定し、白線を形成する3つの特徴点について、カメラ映像における二次元位置と白線データが示す現実の三次元座標値とに基づいて、TVカメラ110の特性に応じて、三角測量の原理でTVカメラ110(車両100)の絶対位置(現実の三次元座標)を算出する。ここで、車両100に固定して設置されたTVカメラ110の位置は車両100の位置を示すものとする。
【0026】
図4において、車両位置特定方法についての説明を続ける。
【0027】
<S120:第一の測位処理>
擬似距離測位部210は擬似距離に基づいて測位位置Aを算出する。
このとき、擬似距離測位部210はTVカメラ110がカメラ映像を撮像した際に観測された擬似距離をGPS受信機120から入力し、入力した擬似距離に基づいてGPSの航法測位を行い、擬似距離に基づく測位結果である測位位置Aを算出する。GPS受信機120は4機以上のGPS衛星から測位信号を受信し、各測位信号について、GPS衛星が測位信号を発信してからGPS受信機120が受信するまでの時間(測位信号の伝搬時間)に光速を乗じて擬似距離を算出する。擬似距離はGPS受信機120についてGPS衛星からの距離を示す。そこで、擬似距離測位部210は、4つの擬似距離を用いて、各GPS衛星を原点として擬似距離を半径とする4つの球面の方程式を生成し、生成した4つの方程式を用いて4つの球面の交点を擬似距離測位部210の三次元座標として算出する。ここで、車両100に固定して設置されたGPS受信機120の位置は車両100の位置を示すものとする。
【0028】
<S130:地物情報取得処理>
次に、白線データ取得部221は道路データベース190から測位位置A周辺の白線データを取得する。
このとき、白線データ取得部221は、擬似距離に基づく測位結果である測位位置Aを擬似距離測位部210から入力し、測位位置Aを基点として、車両100の進行方向(方位角方向)における所定の範囲に位置すると共に車両100の横方向(車両100の幅方向)における所定の範囲に位置する白線について白線の三次元座標を示す白線データを道路データベース190から取得する。例えば、白線データ取得部221はGPS受信機120の観測精度に応じた範囲や車両100の走行中の車線を所定の範囲として白線データを取得する。例えば、GPS受信機120の擬似距離に基づく測位精度が±数mの場合に、白線データ取得部221は車両100が走行している車線について車両100の前後10m内に標示されている白線の白線データを道路データベース190から取得する。このとき、車両100は道路の直線部分を走行しているものとする。また、白線データ取得部221はジャイロ(図示省略)や走行中の道路の方位角などから車両100の方位角を得る。
【0029】
<S140:地物投影取得処理>
次に、白線データ撮像面投影部222は白線データをTVカメラ110の撮像面に投影する。
このとき、白線データ撮像面投影部222は白線データ取得部221が取得した車両100周辺の白線の白線データを白線データ取得部221から入力し、車両100(測位位置A)周辺にTVカメラ110の撮像位置を仮定し、TVカメラ110の焦点距離Fや画角φや設置角θなどの特性および仮定したTVカメラ110の撮像位置に基づいて、白線データが示す白線をTVカメラ110の撮像面Tに投影(射影)した撮像面白線データを生成する。つまり、白線データ撮像面投影部222は仮定したTVカメラ110の位置から白線を撮像した場合に撮像面Tに映し出されるはずのカメラ映像(撮像面白線データ)をTVカメラ110の特性に応じて白線データに基づいて生成する。
【0030】
ここで、L2地点(図6参照)において実際に撮像されTVカメラ110の撮像面Tに投影(射影)され画像として映し出されたカメラ映像を図9に撮像面T(L2)として示す。そして、白線データ撮像面投影部222はL1地点(図6参照)をTVカメラ110の撮像地点と仮定してTVカメラ110の撮像面Tに白線データを投影したものとする。このとき、白線データ撮像面投影部222が白線データを投影した撮像面Tと図9のカメラ映像を示す撮像面T(L2)とを重畳表示させた撮像面Tは図10に示すようになる。ここで、図9や図10および後述する図11〜図15では、カメラ映像と白線データ撮像面投影部222が白線データを投影した撮像面とを区別するために、カメラ映像に映っている白線(映像白線データ)を点線で示し、白線データが示す白線(撮像面白線データ)を実線で示している。
【0031】
また、白線データ撮像面投影部222は、例えば、白線データ取得部221がS130において白線データを取得する対象とした所定の範囲を所定の間隔で碁盤の目のように区切った際の各区画の頂点(プロット、交点)の座標をTVカメラ110の撮像地点と仮定して白線データを撮像面Tに投影した撮像面白線データを生成する。例えば、白線データ取得部221は図6に示すL1地点をTVカメラ110の仮定撮像地点とする他、図6に示すL2地点やL3地点をTVカメラ110の仮定撮像地点として、撮像面白線データを仮定撮像地点毎に生成する。
【0032】
<S150:相関判定処理(地物情報特定処理)>
次に、特徴量投影部224、特徴量相関係数算出部225および相関係数判定部226は、映像白線抽出部223の生成した映像白線データが示す白線と白線データ撮像面投影部222の生成した仮定撮像地点毎の撮像面白線データが示す白線との相関度(類似度、一致度)を判定し、映像白線データとの相関度が高い撮像面白線データを特定する。
【0033】
図8は、実施の形態1における相関判定処理(S150)の流れを示すフローチャートである。
特徴量投影部224、特徴量相関係数算出部225および相関係数判定部226が実行する相関判定処理(S150)について、図8に基づいて以下に説明する。
特徴量投影部224、特徴量相関係数算出部225および相関係数判定部226は図8に基づいて説明する以下の処理をCPUを用いて実行する。
【0034】
<S210、S220>
まず、特徴量投影部224は、撮像面白線データと映像白線データとのそれぞれについて、撮像面Tにおける白線の水平方向(車両車両100の進行方向に対して直交する幅方向)の特徴量を算出する。例えば、道路面において横方向にひかれている停止線の部分は水平方向の特徴量が大きく、縦方向にひかれている白線の部分は水平方向の特徴量が小さく、白線(停止線を含む)がひかれていない部分は水平方向の特徴量がほぼ0である。
ここで、特徴量投影部224は白線データ撮像面投影部222が算出した複数の撮像面白線データから一つの撮像面白線データを選択し、選択した撮像面白線データについて水平方向の特徴量を算出する。
特徴量投影部224は特徴量を白線のエッジ、屈曲点、方向ベクトルなどに基づいて算出してもよいし、各種特徴量の組み合わせ(線形和など)を特徴量として算出してもよい。
【0035】
<S230>
次に、特徴量相関係数算出部225は、特徴量投影部224が算出した水平方向の特徴量に基づいて、撮像面白線データが示す白線と映像白線データが示す白線との水平方向の類似度(一致度)を示す相関係数を算出する。
【0036】
ここで、特徴量の相関係数について、図9〜図12に基づいて説明する。
図9は、実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)の一例を示す図である。
図10、図11および図12は、実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との水平方向の相関度を示す図である。
以下の説明では、TVカメラ110が図6に示すL2地点で撮像を行ったものとする。そして、映像白線抽出部223がL2地点で撮像されたカメラ映像から白線を抽出して生成した映像白線データは、図9に示す撮像面T(L2)を示すものとする。
図6に示すL2地点で撮像された白線(停止線)の特徴点A、BおよびCはそれぞれ図9に示す撮像面T(L2)における特徴点a、bおよびcに対応する。また、白線の特徴点A、BおよびCに対応する撮像面白線データの示す白線の特徴点をそれぞれa’、b’およびc’とする。
図9〜図12は、カメラ映像から生成された映像白線データが示す白線と白線データから生成された撮像面白線データが示す白線とを区別するために映像白線データの白線を点線で示し、撮像面白線データの白線を実線で示している。また、図10および図12において、各撮像面白線データにより示される白線の連続性を表すために、各撮像面白線データが示す撮像面Tの範囲外に位置する白線についても一部、鎖線で示している。
【0037】
例えば、図6に示すL1地点の近辺に位置する地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データを特徴量投影部224が選択して特徴量を算出した場合、撮像面白線データが示す白線と映像白線データが示す白線とは図10に示す撮像面Tのような関係となる。つまり、映像白線データは撮像面Tに停止線の特徴点a,cおよび白線の特徴点a,bを示すのに対し、撮像面白線データは撮像面Tに白線の特徴点b’のみ示す(停止線の特徴点a’,c’は撮像面Tの枠外となる)。
この関係において特徴量相関係数算出部225が水平方向の相関度(相関量、類似度、一致度)を算出した場合、相関度は図10に示すようなグラフで表される。図10に示す相関度のグラフは、撮像面Tを水平方向(横方向)に走査したとき、撮像面白線データの特徴点b’が位置する部分の相関度が低く、映像白線データの特徴点aおよびcが位置する部分の相関度が非常に低く、映像白線データの特徴点bが位置する部分の相関度が高いことを示している。
特徴量相関係数算出部225が算出する相関係数は、例えば、図10に示す相関度のグラフの積分値(相関度の合計値)に相当する。
【0038】
また例えば、図6に示すL2地点の近辺に位置する地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データを特徴量投影部224が選択した場合、映像白線データと撮像面白線データとは、図11に示すように、特徴点a、bおよびcと特徴点a’、b’およびc’とが水平方向においておおよそ同じ位置を示す関係にある。そして、図11に示すように、特徴点a、c、a’およびc’が位置する部分の相関度が非常に高く、特徴点bおよびb’が位置する部分の相関度も高いため、特徴量相関係数算出部225が算出する相関係数は大きな値となる。
【0039】
同様に、図6に示すL3地点の近辺に位置する地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データを特徴量投影部224が選択した場合、図12において、特徴点aおよびcが位置する部分と特徴点a’およびc’が位置する部分とで相関度が非常に低くなるため、特徴量相関係数算出部225が算出する相関係数は小さな値となる。
【0040】
図8において、相関判定処理(S150)についての説明を続ける。
【0041】
<S240>
そして、図8において、相関係数判定部226は特徴量相関係数算出部225が算出した相関係数を所定の閾値TH1と比較する。つまり、相関係数判定部226は映像白線データが示す白線と撮像面白線データが示す白線との水平方向(撮像面Tの横方向)における類似度(相関度、相関量)を所定値と比較する。
【0042】
S240において相関係数がTH1以下の場合、特徴量投影部224は、前回選択した撮像面白線データの仮定撮像地点に対して車両100の進行方向における前方または後方に位置する地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データを選択し、撮像面白線データが示す白線の水平方向の特徴量を算出する(S210)。例えば、特徴量投影部224は、図6に示すL2地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データを選択した際の相関係数がTH1以下だった場合、図6においてL2地点の後方に位置するL1地点やL2地点の前方に位置するL3地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データについて白線の水平方向の特徴量を算出する。
そして、特徴量相関係数算出部225は特徴量投影部224が新たに算出した水平方向の特徴量に基づいて相関係数を算出し(S230)、相関係数判定部226は相関係数の判定を行う(S240)。
【0043】
<S250〜S280>
S240において相関係数がTH1より大きい場合、特徴量投影部224、特徴量相関係数算出部225および相関係数判定部226は、S210〜S240による水平方向の相関係数の判定と同様に、映像白線データと撮像面白線データとの垂直方向の特徴量を算出し(S250、S260)、算出した特徴量の相関係数を算出し(S270)、映像白線データと撮像面白線データとの垂直方向の相関係数について判定を行い(S280)、映像白線データに対して水平方向でも垂直方向でも高い相関性を持つ撮像面白線データを特定する。
【0044】
図13、図14および図15は、実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との垂直方向の相関度を示す図である。
【0045】
映像白線データに対して図13や図15の撮像面Tに示すような位置関係となる撮像面白線データについて特徴量投影部224がS250において垂直方向の特徴量を算出した場合、特徴量相関係数算出部225がS270において算出する垂直方向の特徴量の相関係数は低くなる。また、映像白線データに対して図14の撮像面Tに示すような位置関係となる撮像面白線データについて特徴量投影部224がS250において垂直方向の特徴量を算出した場合、特徴量相関係数算出部225がS270において算出する垂直方向の特徴量の相関係数は高くなる。
【0046】
S280において、相関係数判定部226は特徴量相関係数算出部225がS270において算出した相関係数を所定の閾値TH2と比較する。つまり、相関係数判定部226は映像白線データが示す白線と撮像面白線データが示す白線との垂直方向(撮像面Tの縦方向)における類似度(相関度、相関量)を所定値と比較する。
S280において相関係数がTH2以下の場合、特徴量投影部224は、S250において前回選択した撮像面白線データの仮定撮像地点に対して車両100の幅方向を示す左右方向に位置する地点を仮定撮像地点とする撮像面白線データを選択し、撮像面白線データが示す白線の垂直方向の特徴量を算出する(S250)。そして、特徴量相関係数算出部225は特徴量投影部224が新たに算出した垂直方向の特徴量に基づいて相関係数を算出し(S270)、相関係数判定部226は相関係数の判定を行う(S280)。
【0047】
S280において相関係数がTH2より大きい場合、TH2より大きい相関係数を得た撮像面白線データが映像白線データに対して水平方向でも垂直方向でも高い相関性を持つ撮像面白線データとなる。
【0048】
図8に示す相関判定処理(S150)では、相関度が所定値より高い撮像面白線データを特定しているが、S130において白線データ取得部221が道路データベース190から取得してS140において白線データ撮像面投影部222が生成した全ての撮像面白線データについて相関係数を算出して最も相関度が高い撮像面白線データを特定してもよい。
【0049】
図4において、車両位置特定方法についての説明を続ける。
【0050】
<S160>
次に、車両位置算出部227は、カメラ映像との相関度が高い白線データが示す白線のカメラ映像上の位置を特定する。
このとき、車両位置算出部227は、相関判定処理(S150)において特定された撮像面白線データが示す白線の3点以上の特徴点について、特徴点に対応するカメラ映像における二次元位置を特定する。
例えば、図14において、車両位置算出部227は、撮像面白線データの白線の特徴点a’、b’およびc’に対応するカメラ映像における二次元位置として、映像白線データの白線の特徴点a、bおよびcについて撮像面Tにおける画素位置や撮像面Tにおける二次元座標値を特定する。
【0051】
<S170:第二の測位処理>
次に、車両位置算出部227は、カメラ映像上の白線の位置と白線データが示す実座標とに基づいて測位位置Bを算出する。
このとき、車両位置算出部227は、カメラ映像における二次元位置を特定した3点について、相関判定処理(S150)で特定した撮像面白線データの生成(S140)に使用された白線データから、道路面における三次元座標値を取得する。次に、車両位置算出部227は取得した三次元座標値をS160において特定したカメラ映像における二次元位置に割り付ける。そして、車両位置算出部227は、焦点距離Fや画角φや設置角θなどのTVカメラ110の特性とカメラ映像内の3点の三次元座標値とに基づいて、TVカメラ110の三次元座標、つまり、車両100の三次元座標を測位位置Bとして算出する。前述の通り、TVカメラ110の特性とカメラ映像内の3点の三次元座標値とに基づいて、三角測量により自己位置を算出することができる。
【0052】
<S180:測位結果出力処理>
そして、測位結果出力部230は車両位置算出部227が算出した測位位置Bをカーナビゲーションシステムや自動運転制御装置などに出力する。
これにより、擬似距離に基づく測位位置Aより精度が高い測位位置Bに基づいて、カーナビゲーションシステムは運転者に現在位置および目的地までの経路を高い精度で知らせることができる。また、精度の良い測位位置Bが得られることにより、自己位置と道路データとに基づいて目的地まで自動運転するような制御も実現可能となる。
【0053】
上記実施の形態1において、車両100周辺に位置する白線の白線データを取得するための概略の測位結果である測位位置Aを擬似距離に基づいて算出しているが、ジャイロや車速パルスを用いた慣性航法やデッドレコニングにより測位位置Aを算出してもよい。さらに、GPS受信機120がGPS観測を行えた場合には擬似距離に基づいて測位位置Aを算出し、車両100がトンネル内を走行中であるなどの理由によりGPS受信機120がGPS観測を行えなかった場合には慣性航法やデッドレコニングにより測位位置Aを算出するようにしてもよい。また、擬似距離に基づく航法測位や慣性航法やデッドレコニング以外の測位方法により測位位置Aを算出してもよい。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態2では、測位位置Aを得た測位方法および測位位置Bを得た測位方法と異なる測位方法により得られた測位位置Cを測位位置Bと比較し、測位結果として出力する車両100の位置についての信頼度を比較結果に基づいて判定し、測位位置Bと測位位置Cとの少なくともいずれかに基づく車両100の位置と判定した車両100の位置の信頼度とを測位結果として出力する形態について説明する。
上記実施の形態1と異なる事項について説明し、説明を省略する事項は上記実施の形態1と同様であるものとする。
【0055】
図16は、実施の形態2における車両位置特定装置200の機能構成図である。
実施の形態2における車両位置特定装置200の機能構成について、図16に基づいて以下に説明する。
【0056】
実施の形態2における車両位置特定装置200は、上記実施の形態1における車両位置特定装置200に対して、搬送波位相測位部240を備える点を特徴とする。
【0057】
搬送波位相測位部240(第三の測位部の一例)は、GPS受信機120が観測した搬送波の位相情報に基づいて車両100の詳細位置(測位位置C)を算出する。例えば、搬送波位相測位部240はRTK−GPS(リアルタイムキネマティックGPS)またはCDGPS(搬送波位相ディファレンシャルGPS)と呼ばれる方法により搬送波位相に基づいて高精度な測位を行う。また例えば、搬送波位相測位部240はRTK−GPS以外の干渉測位方法により測位する。
【0058】
図17は、実施の形態2における車両位置特定装置200の車両位置特定方法を示すフローチャートである。
実施の形態2における車両位置特定装置200が実行する車両位置特定方法について、図17に基づいて以下に説明する。
【0059】
実施の形態2における車両位置特定方法は、上記実施の形態1における車両位置特定方法に対して、第三の測位処理(S121)を実行する点を特徴とする。
【0060】
<S121:第三の測位処理>
搬送波位相測位部240は搬送波位相に基づいて測位位置Cを算出する。
このとき、搬送波位相測位部240はTVカメラ110がカメラ映像を撮像した際に観測された測位信号を搬送した搬送波の位相情報(搬送波情報)をGPS受信機120から入力し、搬送波位相に基づいてGPSの航法測位を行い、搬送波位相に基づく測位結果である測位位置Cを算出する。前記実施の形態1で説明したように、擬似距離測位部210は測位信号の伝搬時間に光速を乗じて測距されたGPS衛星とGPS受信機120との擬似距離に基づいて測位しているが、搬送波位相測位部240はGPS受信機120に到達時の搬送波の位相に基づいてGPS衛星とGPS受信機120との距離を測距して測位を行う。
搬送波位相に基づいて測距されたGPS衛星とGPS受信機120との距離は擬似距離に比べて精度が高く、搬送波位相に基づく測位結果も擬似距離に基づく測位結果に比べて高い精度になる。しかし、搬送波位相に基づく測位方法は擬似距離に基づく測位方法に比べて測位結果を得るまでに時間がかかる。そこで、実施の形態2では擬似距離に基づく第一の測位処理(S120)〜白線データに基づく第二の測位処理(S170)と並行して搬送波位相に基づく第三の測位処理(S121)を実行して白線データに基づく高精度な測位結果である測位位置Bと搬送波位相に基づく高精度な測位結果である測位位置Cとを得る。
【0061】
<S180:測位結果出力処理>
そして、測位結果出力部230は測位位置Bと測位位置Cとを比較して出力する車両100の位置の精度を判定し、車両100の位置と車両100の位置の信頼度とを測位結果として出力する。
【0062】
図18は、実施の形態2における測位結果出力処理(S180)の流れを示すフローチャートである。
例えば、測位結果出力部230は、図18に示すように、測位位置Bと測位位置Cとを比較し(S310)、測位位置Bと測位位置Cとが一致する場合(測位位置Bが示す地点と測位位置Cが示す地点とが所定の範囲内に位置する場合)には正確な測位結果として測位位置Cを出力し、測位位置Bと測位位置Cとが一致しない場合(測位位置Bが示す地点と測位位置Cが示す地点とが所定の範囲内に位置しない場合)には不正確な測位結果(正確でない可能性が有る測位結果)として測位位置Cを出力する。つまり、測位結果出力部230は正確か不正確かの測位位置Cの信頼度と測位位置Cとを出力する。
また例えば、測位結果出力部230は、測位結果として、測位位置Bを出力してもよいし、測位位置Bと測位位置Cとの中間の位置を出力してもよいし、所定の重み付けに基づく測位位置Bと測位位置Cとの間の位置を出力してもよい。例えば、測位位置Bより測位位置Cをより重く重み付けする場合、測位結果出力部230は測位位置Bより測位位置Cに近い地点を示す座標を出力する。また例えば、測位結果出力部230は測位位置の信頼度として測位位置Bと測位位置Cとの差に応じた値を出力してもよい。例えば、測位結果出力部230は測位位置Bと測位位置Cとの距離が0の場合を信頼度100%とし、測位位置Bと測位位置Cとの距離が大きくなるにつれて低い信頼度(最小値0%)を算出する。
【0063】
これにより、測位結果出力部230から測位結果として測位された自己位置(例えば、測位位置C)と自己位置の信頼度(例えば、正確or不正確)とを出力されたカーナビゲーションシステムや自動運転制御装置では、運転者にナビゲーションの精度が良い状態であるか否かを知らせたり、自動運転モードから運転者による手動運転モードに切り換えたりすることができる。
【0064】
実施の形態3.
実施の形態3では、GPS受信機120のGPS観測結果に基づいて測位結果として出力する車両100の位置の信頼度を判定する形態について説明する。
上記実施の形態2と異なる事項について説明し、説明を省略する事項は上記実施の形態2と同様であるものとする。
【0065】
図19は、実施の形態3における車両位置特定装置200の機能構成図である。
実施の形態3における車両位置特定装置200の機能構成について、図19に基づいて以下に説明する。
【0066】
実施の形態3における車両位置特定装置200は、上記実施の形態2における車両位置特定装置200に対して、GPS測位信頼度判定部250を備える点を特徴とする。
【0067】
GPS測位信頼度判定部250は、GPS受信機120のGPS観測結果に基づいて、搬送波位相測位部240が測位した測位位置Cの信頼度(精度)を判定する。
ここで、GPS受信機120のGPS観測結果は、GPS受信機120が測位信号を受信したGPS衛星の数、DOP(精度低下率)、測位結果(測位位置C)の連続性などを示す。
例えば、GPS測位信頼度判定部250はGPS受信機120が受信した各測位信号について当該測位信号を発信したGPS衛星の数と所定値とを比較し、GPS受信機120が測位信号を受信したGPS衛星の数が所定値より少ない場合に測位位置Cの信頼度が低いと判定し、GPS受信機120が測位信号を受信したGPS衛星の数が所定値以上の場合に測位位置Cの信頼度が高いと判定する。
また例えば、GPS測位信頼度判定部250は測位信号が示す衛星軌道パラメータに基づいてGPS受信機120とGPS衛星との幾何学的位置関係に応じた精度の低下率(DOP)を算出し、DOPが所定値以下の場合に測位位置Cの信頼度が低いと判定し、DOPが所定値より大きい場合に測位位置Cの信頼度が高いと判定する。
また例えば、GPS測位信頼度判定部250は前回の測位位置Cと今回の測位位置Cとを比較して、前回と今回との測位位置Cの差が所定値(例えば、車速パルスが示す車両100の車速に対応する所定値)より大きい場合に測位位置Cの信頼度が低いと判定し、前回と今回との測位位置Cの差が所定値以下の場合に測位位置Cの信頼度が高いと判定する。
【0068】
図20は、実施の形態3における測位結果出力処理(S180)の流れを示すフローチャートである。
測位結果出力処理(S180)において、測位結果出力部230は、図20に示すように、測位位置Bと測位位置Cとを比較し(S310)、測位位置Bと測位位置Cとが一致する場合には正確な測位結果として測位位置Cを出力する。また、測位結果出力部230は、測位位置Bと測位位置Cとが一致しない場合にはGPS測位信頼度判定部250の判定結果を参照し(S320)、GPS測位信頼度判定部250の判定結果が測位結果Cの信頼度が高いことを示す場合には正確な測位結果として測位位置Cを出力し、GPS測位信頼度判定部250の判定結果が測位結果Cの信頼度が低いことを示す場合には不正確な測位結果として測位結果Bを出力する。
【0069】
これにより、測位結果出力部230は測位位置Bと測位位置Cとのうち、より信頼度が高いと思われる方を測位結果として出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態1における車両位置特定装置200を搭載した車両100の測位に関する機器構成図。
【図2】実施の形態1における車両位置特定装置200のハードウェア資源の一例を示す図。
【図3】実施の形態1における車両位置特定装置200の機能構成図。
【図4】実施の形態1における車両位置特定装置200の車両位置特定方法を示すフローチャート。
【図5】実施の形態1における車両100のTVカメラ110が撮像する道路面上の白線の位置と撮像面上の白線の位置との関係を示す図。
【図6】実施の形態1における車両100のTVカメラ110が撮像する道路面上の白線の位置と撮像面上の白線の位置との関係を示す図。
【図7】実施の形態1における車両100のTVカメラ110が撮像する道路面上の白線の位置と撮像面上の白線の位置との関係を示す図。
【図8】実施の形態1における相関判定処理(S150)の流れを示すフローチャート。
【図9】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)の一例を示す図。
【図10】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との水平方向の相関度を示す図。
【図11】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との水平方向の相関度を示す図。
【図12】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との水平方向の相関度を示す図。
【図13】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との垂直方向の相関度を示す図。
【図14】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との垂直方向の相関度を示す図。
【図15】実施の形態1におけるカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)とを重畳表示させた撮像面Tの一例およびそのカメラ映像(映像白線データ)と白線データ(撮像面白線データ)との垂直方向の相関度を示す図。
【図16】実施の形態2における車両位置特定装置200の機能構成図。
【図17】実施の形態2における車両位置特定装置200の車両位置特定方法を示すフローチャート。
【図18】実施の形態2における測位結果出力処理(S180)の流れを示すフローチャート。
【図19】実施の形態3における車両位置特定装置200の機能構成図。
【図20】実施の形態3における測位結果出力処理(S180)の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0071】
100 車両、110 TVカメラ、120 GPS受信機、121 GPSアンテナ、190 道路データベース、200 車両位置特定装置、210 擬似距離測位部、220 画像測位部、221 白線データ取得部、222 白線データ撮像面投影部、223 映像白線抽出部、224 特徴量投影部、225 特徴量相関係数算出部、226 相関係数判定部、227 車両位置算出部、230 測位結果出力部、240 搬送波位相測位部、250 GPS測位信頼度判定部、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己位置を測位する第一の測位部と、
前記第一の測位部が測位した際の特定の方向を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した際の撮像面の2次元画像において前記画像に映っている特定の撮像地物をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて特定する画像処理部と、
地物の3次元位置と地物の3次元形状とを示す地物情報を記憶する地物データベースと、
前記第一の測位部が測位した自己位置に基づいて自己位置周辺に位置する各地物の地物情報を前記地物データベースから取得する地物情報取得部と、
前記地物情報取得部の取得した各地物情報が示す各地物の位置と各地物の形状とに基づいて各地物情報が示す各地物を前記カメラの前記撮像面にCPUを用いて投影地物として投影する地物投影部と、
前記地物投影部が投影した各投影地物と前記画像処理部が特定した前記特定の地物とを前記撮像面においてCPUを用いて比較して前記特定の撮像地物に対応する投影地物を特定する地物情報特定部と、
前記地物情報特定部が特定した投影地物の前記撮像面における2次元位置と前記地物情報特定部が特定した投影地物の地物情報が示す地物の3次元位置とに基づいてCPUを用いて自己位置を測位する第二の測位部と、
前記第二の測位部が測位した自己位置を測位結果として出力機器に出力する測位結果出力部と
を備えたことを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
前記位置特定装置は、さらに、
前記第一の測位部の測位方法および前記第二の測位部の測位方法と異なる測位方法により自己位置を測位する第三の測位部を備え、
前記測位結果出力部は、
前記第二の測位部が測位した自己位置Bと前記第三の測位部が測位した自己位置Cとを比較し、測位結果として出力する自己位置についての信頼度を比較結果に基づいて判定し、前記自己位置Bと前記自己位置Cとの少なくともいずれかに基づく自己位置と判定した自己位置の信頼度とを測位結果として出力する
ことを特徴とする請求項1記載の位置特定装置。
【請求項3】
前記位置特定装置は、さらに、
GPS(Global Positioning System)観測を行うGPS受信機を備え、
前記第一の測位部は前記GPS受信機が観測した擬似距離に基づいて自己位置を概略測位し、
前記第三の測位部は、前記第一の測位部による測位処理から前記第二の測位部による測位処理までの処理と並行して、前記GPS受信機が観測した搬送波位相に基づいて自己位置を詳細測位する
ことを特徴とする請求項2記載の位置特定装置。
【請求項4】
前記測位結果出力部は、
前記GPS受信機のGPS観測結果に基づいて測位結果として出力する自己位置の信頼度を判定する
ことを特徴とする請求項3記載の位置特定装置。
【請求項5】
第一の測位部が自己位置を測位する第一の測位処理を行い、
カメラが記第一の測位部が測位した際の特定の方向を撮像する撮像処理を行い、
画像処理部が前記カメラが撮像した際の撮像面の2次元画像において前記画像に映っている特定の撮像地物をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて特定する画像処理を行い、
地物情報取得部が前記第一の測位部の測位した自己位置に基づいて自己位置周辺に位置する各地物の地物情報を地物の3次元位置と地物の3次元形状とを示す地物情報を記憶する地物データベースから取得する地物情報取得処理を行い、
地物投影部が前記地物情報取得部の取得した各地物情報が示す各地物の位置と各地物の形状とに基づいて各地物情報が示す各地物を前記カメラの前記撮像面にCPUを用いて投影地物として投影する地物投影処理を行い、
地物情報特定部が前記地物投影部の投影した各投影地物と前記画像処理部の特定した前記特定の地物とを前記撮像面においてCPUを用いて比較して前記特定の撮像地物に対応する投影地物を特定する地物情報特定処理を行い、
第二の測位部が前記地物情報特定部の特定した投影地物の前記撮像面における2次元位置と前記地物情報特定部の特定した投影地物の地物情報が示す地物の3次元位置とに基づいてCPUを用いて自己位置を測位する第二の測位処理を行い、
測位結果出力部が前記第二の測位部の測位した自己位置を測位結果として出力機器に出力する測位結果出力処理を行う
ことを特徴とする位置特定方法。
【請求項6】
請求項5記載の位置特定方法をコンピュータに実行させる位置特定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−249555(P2008−249555A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92479(P2007−92479)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】