説明

共通電源を用いた2経路増幅回路

【課題】 共通電源5を使用し、高周波信号と直流電力とを有効に分離可能にして、端末の小型化や軽量化を図った共通電源を用いた2経路増幅回路を提供する。
【解決手段】 DCSの高周波信号を増幅する第1電力増幅回路2と、GSMの高周波信号を増幅する第2電力増幅回路4と、共通電源5を備え、第1電力増幅回路2の出力と共通電源5間に第1の電源供給用ストリップライン6を接続すると共に、第1電力増幅回路2の出力と第2電力増幅回路4の出力間に第2の電源供給用ストリップライン7を接続し、第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7の信号ライン長をそれぞれDCSの高周波信号波長の1/4に選定し、第1の電源供給用ストリップライン6に第2の電源供給用ストリップライン7を合わせた信号ライン長をGSMの高周波信号波長の1/4に選定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通電源を用いた2経路増幅回路に係り、特に、周波数帯域が2倍近く相違している第1周波数帯域の高周波信号と第2周波数帯域の高周波信号を2経路増幅回路で個別に増幅する際に、2経路増幅回路の電源供給を1つの電源を用いて行う共通電源を用いた2経路増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話の需要が大幅に増大するのに伴って、携帯電話の機能が急速に増えつつあり、それによって携帯電話で使用される周波数帯域も必然的に拡大している。特に、最近になると、2つの送受信系の周波数帯域をそれぞれ離れた2つの帯域に割り当てたデュアルバンド携帯電話が利用されるようになり、さらに、デュアルバンド毎に2つまたはそれ以上の送受信系の周波数帯域がそれぞれ割り当てられたデュアルバンド携帯電話も提案されている。
【0003】
かかるデュアルバンド携帯電話における代表的なものの1つにGSM/DCSデュアルバンド携帯電話が知られている。このGSM/DCSデュアルバンド携帯電話は、デュアルバンドの一方のバンドを周波数帯域が900MHz帯のGSMの送受信系に割り当て、他方のバンドを周波数帯域が1.8GHz帯域のDCSの送受信系に割り当てているもので、かかる構成を備えたデュアルバンド携帯電話の一例として、特開2002−171137号公報に開示のものがある。
【0004】
図3は、特開2002−171137号公報に開示されたデュアルバンド携帯電話における高周波用送信モジュール、特に、高周波用送信モジュールにおける送信用電力増幅器を含む送信回路を示す回路構成図である。
【0005】
図3に示されるように、この送信回路は、周波数帯域が1.8GHz帯のDCSの高周波信号が入力される第1信号入力端子31と、DCSの高周波信号を増幅する第1電力増幅回路32と、周波数帯域が900MHz帯のGSMの高周波信号が入力される第2信号入力端子33と、GSMの高周波信号を増幅する第2電力増幅回路34と、第1電源35と、第2電源36と、第1電源供給線37と、第2電源供給線38と、第1整合回路39と、第2整合回路40と、第1ローパスフィルタ41と、第2ローパスフィルタ42と、アンテナスイッチ43と、信号出力端子44とからなっている。
【0006】
この場合、第1電力増幅回路32は、従属接続された3つの増幅段からなり、第2電力増幅回路34は、従属接続された3つの増幅段からなる。第1整合回路39は、直列接続されたストリップライン及びコンデンサと、分路接続された2つのコンデンサとからなり、第2整合回路40は、直列接続されたストリップライン及びコンデンサと分路接続された2つのコンデンサとからなる。第1ローパスフィルタ41は、直列接続されたインダクタと分路接続された2つのコンデンサとからなり、第2ローパスフィルタ42は、直列接続されたインダクタと分路接続された2つのコンデンサとからなる。アンテナスイッチ43は、2つの切替端子と1つの可動端子を持った2回路1接点型のものである。なお、第1電源供給線37は、その信号ライン長がDCSの高周波信号波長の1/4の長さに選定され、第2電源供給線38は、その信号ライン長がGSMの高周波信号波長の1/4の長さに選定されている。
【0007】
そして、第1電力増幅回路32は、入力端が結合コンデンサを通して第1信号入力端子31に接続され、出力端が第1整合回路39の入力端に接続される。第2電力増幅回路34は、入力端が結合コンデンサを通して第2信号入力端子33に接続され、出力端が第2整合回路40の入力端に接続される。第1電源供給線37は、第1電力増幅回路32の出力端と第1電源35との間に接続され、第2電源供給線38は、第2電力増幅回路34の出力端と第2電源36との間に接続される。第1ローパスフィルタ41は、入力端が第1整合回路39の出力端に接続され、出力端がアンテナスイッチ43の一方の切替端子に接続される。第2ローパスフィルタ42は、入力端が第2整合回路40の出力端に接続され、出力端がアンテナスイッチ43の他方の切替端子に接続される。アンテナスイッチ43は、可動端子が信号出力端子44に接続される。
【0008】
前記構成による送信回路は、次のように動作する。
【0009】
第1電力増幅回路32は、その出力端が第1電源供給線37を通して第1電源35に接続され、第1電源35から第1電源供給線37を通して駆動電力が供給されるので、能動状態、すなわち増幅動作可能な状態に設定され、また、第2電力増幅回路34は、その出力端が第2電源供給線38を通して第2電源36に接続され、第2電源36から第2電源供給線38を通して駆動電力が供給されるので、同じように能動状態に選定される。
【0010】
いま、アンテナスイッチ43の可動接点が一方の切替端子側に切替られているとき、第1信号入力端子31にDCSの高周波信号が供給されると、その高周波信号は第1電力増幅回路32で電力増幅され、増幅された高周波信号は、第1整合回路39を通ってインピーダンス整合された状態で第1ローパスフィルタ41に供給され、そこで不要な周波数成分が除去された後、アンテナスイッチ43を通って信号出力端子44に供給され、信号出力端子44に接続されたアンテナから送信される。
【0011】
一方、アンテナスイッチ43の可動接点が他方の切替端子側に切替られているとき、第2号入力端子33にGSMの高周波信号が供給されると、その高周波信号は第2電力増幅回路34で電力増幅され、増幅された高周波信号は、第2整合回路40を通ってインピーダンス整合された状態で第2ローパスフィルタ42に供給され、そこで不要な周波数成分が除去された後、アンテナスイッチ43を通って信号出力端子44に供給され、信号出力端子44に接続されたアンテナから送信される。
【0012】
このような動作が行われる場合に、第1電力増幅回路32の出力端に増幅されたDCSの高周波信号が出力されたとき、第1電力増幅回路32の出力端と第1電源35間に接続されている第1電源供給線37は、DCSの高周波信号波長の1/4の信号ライン長になるように選定されているので、第1電力増幅回路32の出力端から第1電源供給線37側を見たとき、DCSの高周波信号に対する第1電源供給線37のインピーダンスが第1整合回路39の入力インピーダンスに比べてかなり高い値になっている。このため、第1電力増幅回路32の出力端に得られた増幅されたDCSの高周波信号は、第1電源供給線37の接続による信号損失が殆どない状態で第1整合回路39に供給され、高周波信号と直流電力とを有効に分離することが可能になる。
【0013】
かかる機能は第2電力増幅回路34側においても同様で、第2電力増幅回路34の出力端に増幅されたGSMの高周波信号が出力されたとき、第2電力増幅回路34の出力端と第2電源36間に接続されている第2電源供給線38は、GSMの高周波信号波長の1/4の信号ライン長に選定されているので、第2電力増幅回路34の出力端から第2電源供給線38側を見たとき、GSMの高周波信号に対する第2電源供給線38のインピーダンスが第2整合回路40の入力インピーダンスに比べてかなり高い値になっている。このため、第2電力増幅回路34の出力端に得られた増幅されたGSMの高周波信号は、第2電源供給線38の接続による信号損失が殆どない状態で第2整合回路40に供給され、高周波信号と直流電力とを有効に分離することが可能になる。
【特許文献1】特開2002−043977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記特開2003−152588号公報に開示された送信回路は、第1電力増幅回路32の出力端に接続された第1電源供給線37、及び、第2電力増幅回路34の出力端に接続された第2電源供給線38による信号損失を殆どなくすことができ、高周波信号と直流電力とを有効に分離することができるものであるが、第1電力増幅回路32の駆動に電源35を、また、第2電力増幅回路34の駆動に第2電源36をというように2つの電源35、36を用いているので、端末を実装する際に2つの電源35、36の占有領域が必要になるだけでなく、実装状態の設計が複雑になり、結果的に端末の小型化及び軽量化が難しいものである。
【0015】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、その目的は、共通電源を使用し、かつ、高周波信号と直流電力とを有効に分離可能にした構成にして、端末の小型化や軽量化を図ることができる共通電源を用いた2経路増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明による共通電源を用いた2経路増幅回路は、第1周波数帯域の高周波信号を増幅する第1電力増幅回路と、第1周波数帯域の約1/2の周波数の第2周波数帯域の高周波信号を増幅する第2電力増幅回路と、共通電源とを備え、第1電力増幅回路の出力と共通電源の出力間に第1の電源供給用ストリップラインを接続するとともに、第1電力増幅回路の出力と第2電力増幅回路の出力間に第2の電源供給用ストリップラインを接続し、第1の電源供給用ストリップライン及び第2の電源供給用ストリップラインの信号ライン長をそれぞれ第1周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定し、第1の電源供給用ストリップラインに第2の電源供給用ストリップラインを合わせた信号ライン長を第2周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定した手段を具備する。
【0017】
前記手段において、第1電力増幅回路及び前記第2電力増幅回路は、それぞれ複数個の半導体電力増幅素子を並列接続した出力段を備える構成にすることが好ましい。
【0018】
前記手段において、第1周波数帯域の高周波信号は、周波数1.8GHz帯のDCSの高周波信号であり、第2周波数帯域の高周波信号は、周波数900MHz帯のGSMの高周波信号である構成にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明による共通電源を用いた2経路増幅回路によれば、第1周波数帯域の高周波信号を増幅する第1電力増幅回路の出力と共通電源の出力間に第1の電源供給用ストリップラインを、第1電力増幅回路の出力と第2周波数帯域の高周波信号を増幅する第2電力増幅回路の出力間に第2の電源供給用ストリップラインをそれぞれ接続し、その際に第1の電源供給用ストリップライン及び第2の電源供給用ストリップラインの信号ライン長をそれぞれ第1周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定し、第1の電源供給用ストリップラインに第2の電源供給用ストリップラインを合わせた信号ライン長を第2周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定したことにより、前記共通電源を使用したにも係わらず、第1の電源供給用ストリップライン及び第2の電源供給用ストリップラインの高周波信号に対する信号損失をなくし、高周波信号と直流電力とを有効に分離することが可能になるもので、それによって端末の小型化や軽量化を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明による共通電源を用いた2経路増幅回路の一つの実施の形態に係わるもので、その要部構成を示す回路構成図である。
【0022】
図1に示されるように、この実施の形態による共通電源を用いた2経路増幅回路は、第1周波数帯域である1.8GHz帯のDCSの高周波信号が入力される第1信号入力端子1と、DCSの高周波信号を増幅する第1電力増幅回路2と、第2周波数帯域である900MHz帯のGSMの高周波信号が入力される第2信号入力端子3と、GSMの高周波信号を増幅する第2電力増幅回路4と、共通電源5と、第1の電源供給用ストリップライン6と、第2の電源供給用ストリップライン7と、第1整合回路8と、第2整合回路9と、第1ローパスフィルタ10と、第2ローパスフィルタ11と、アンテナスイッチ12と、信号出力端子13とからなり、この他に、第1結合コンデンサ14と、第2結合コンデンサ15と、バイパスコンデンサ16とを備えている。
【0023】
この場合、第1電力増幅回路2は、従属接続された3つの増幅段21 、22 、23 からなっており、第2電力増幅回路4は、従属接続された3つの増幅段41 、42 、43 からなっている。第1整合回路8は、直列接続されたストリップライン81 及びコンデンサ82 と、分路接続された2つのコンデンサ83 、84 とからなっており、第2整合回路9は、直列接続されたストリップライン91 及びコンデンサ92 と、分路接続された2つのコンデンサ93 、94 とからなっている。第1ローパスフィルタ10は、直列接続されたインダクタ101 と分路接続された2つのコンデンサ102 、103 とからなっており、第2ローパスフィルタ11は、直列接続されたインダクタ111 と分路接続された2つのコンデンサ112 、113 とからなっている。また、アンテナスイッチ12は、2つの切替端子121 、122 と1つの可動端子123 を持つ2回路1接点型のものである。
【0024】
そして、第1電力増幅回路2は、入力端が第1結合コンデンサ14を通して第1信号入力端子1に接続され、出力端が第1整合回路8の入力端に接続される。第2電力増幅回路4は、入力端が結合コンデンサ15を通して第2信号入力端子3に接続され、出力端が第2整合回路9の入力端に接続される。第1の電源供給用ストリップライン6は、第1電力増幅回路2の出力端と共通電源5の出力端子との間に接続され、第2の電源供給用ストリップライン7は、第1電力増幅回路2の出力端と第2電力増幅回路4の出力端との間に接続される。共通電源5は、接地端子が接地点に接続され、その出力端子と接地端子との間にバイパスコンデンサ16が接続される。第1ローパスフィルタ10は、入力端が第1整合回路8の出力端に接続され、出力端がアンテナスイッチ12の一方の切替端子121 に接続される。第2ローパスフィルタ11は、入力端が第2整合回路9の出力端に接続され、出力端がアンテナスイッチ12の他方の切替端子122 に接続される。アンテナスイッチ12は、可動端子123 が信号出力端子13に接続される。
【0025】
この場合、第1電力増幅回路2の最終増幅段23 及び第2電力増幅回路4の最終増幅段43 は、図1に図示の丸枠内に示されているように、それぞれ、並列接続された複数(n)個のエミッタ接地トランジスタからなる出力増幅段を備えた増幅回路が用いられ、最終増幅段23 側の並列接続された複数個のトランジスタのコレクタに第1電力増幅回路2の出力端が接続され、最終増幅段43 側の第2電力増幅回路2の出力端が接続された構成になっている。
【0026】
また、図2は、図1に図示された第1電力増幅回路2及び第2電力増幅回路4の各出力端部分の回路構成の詳細を示す回路図である。
【0027】
図2において、17は第1電力増幅回路2の出力端と接地点間に形成される浮遊容量を示す第1浮遊コンデンサ、18は第2電力増幅回路4の出力端と接地点間に形成される浮遊容量を示す第2浮遊コンデンサであり、その他、図1に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0028】
図2に示されるように、第1電力増幅回路2の出力端と共通電源5の出力端子との間に第1の電源供給用ストリップライン6が接続され、また、第1電力増幅回路2の出力端と第2電力増幅回路4の出力端との間に第2の電源供給用ストリップライン7が接続されている。このとき、第1電力増幅回路2で増幅されるDCSの高周波信号に対し、第1の電源供給用ストリップライン6及び第2の電源供給用ストリップライン7の信号ライン長をDCSの高周波信号波長の1/4になるように選定しており、それと同時に、第2電力増幅回路4で増幅されるGSMの高周波信号に対し、第1の電源供給用ストリップライン6と第2の電源供給用ストリップライン7とを合わせた信号ライン長を波長の1/4になるように選定している。
【0029】
このとき、DCSの高周波信号については、第1の電源供給用ストリップライン8及び第2の電源供給用ストリップライン7の各一端が第1電力増幅回路2の出力端に接続され、第1の電源供給用ストリップライン6の他端がバイパスコンデンサ16を通して、また、第2の電源供給用ストリップライン7の他端が第2浮遊コンデンサ18を通してそれぞれ接地接続されているので、第1の電源供給用ストリップライン6及び第2の電源供給用ストリップライン7は、その物理ライン長と信号ライン長とが対応しており、それらの物理ライン長をそれぞれDCSの高周波信号波長の1/4になるように選定する。
【0030】
一方、GSMの高周波信号については、直列接続された第1の電源供給用ストリップライン6と第2の電源供給用ストリップライン7からなる直列回路の一端が第2電力増幅回路4の出力端に接続され、この直列回路の他端が第2浮遊コンデンサ18を通して接続されているが、第1の電源供給用ストリップライン6と第2の電源供給用ストリップライン7との接続部分となる第1電力増幅回路2の出力端と接地点との間に第1浮遊コンデンサ17が接続されており、この第1浮遊コンデンサ18が第1の電源供給用ストリップライン6に並列接続されることになる。この場合、前述のように第1の電源供給用ストリップライン6をDCSの高周波信号波長の1/4になるように選定し、かつ、第1の電源供給用ストリップライン6と第2の電源供給用ストリップライン7とを合わせた物理ライン長をGSMの高周波信号波長の1/4になるように選定するが、このような選定をした場合、第1の電源供給用ストリップライン6のGSMの高周波信号に対する信号ライン長がその物理ライン長よりも若干短くなるが、動作上、GSMの高周波信号への影響は殆どない。
【0031】
前記構成による共通電源を用いた2経路増幅回路の動作について説明する。
【0032】
第1電力増幅回路2は、その出力端が第1の電源供給用ストリップライン6を通して共通電源5に接続され、共通電源5から第1の電源供給用ストリップライン6を通して駆動電力が供給されるので、能動状態、すなわち増幅動作可能な状態に設定され、また、第2電力増幅回路4は、その出力端が第2の電源供給用ストリップライン7及び第1の電源供給用ストリップライン6を通して共通電源5に接続され、共通電源5から第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7を通して駆動電力が供給されるので、同様に能動状態に設定される。
【0033】
ここで、アンテナスイッチ12の可動接点が一方の切替端子121 側に切替られているとき、第1信号入力端子1にDCSの高周波信号が供給されると、その高周波信号は第1電力増幅回路2で電力増幅され、増幅された高周波信号は、第1整合回路8を通ってインピーダンス整合された状態で第1ローパスフィルタ10に供給され、そこで不要な周波数成分が除去された後、切替られているアンテナスイッチ12を通って信号出力端子13に供給され、信号出力端子13に接続されたアンテナから送信される。
【0034】
一方、アンテナスイッチ43の可動接点が他方の切替端子122 側に切替られているとき、第2号入力端子3にGSMの高周波信号が供給されると、その高周波信号は第2電力増幅回路4で電力増幅され、増幅された高周波信号は、第2整合回路9を通ってインピーダンス整合された状態で第2ローパスフィルタ11に供給され、そこで不要な周波数成分が除去された後、切替られているアンテナスイッチ12を通って信号出力端子13に供給され、信号出力端子13に接続されたアンテナから送信される。
【0035】
このような動作が行われる際に、第1電力増幅回路2の出力端に増幅されたDCSの高周波信号が出力されたとき、第1電力増幅回路2の出力端と共通電源5間に接続されている第1の電源供給用ストリップライン6は、DCSの高周波信号波長の1/4の信号ライン長になるように選定され、また、同じく第1電力増幅回路2の出力端と第2電力増幅回路4の出力端間に接続されている第2の電源供給用ストリップライン7は、DCSの高周波信号波長の1/4の信号ライン長になるように選定されているので、第1電力増幅回路2の出力端から第1の電源供給用ストリップライン6側及び第2の電源供給用ストリップライン7側を見たとき、DCSの高周波信号に対する第1の電源供給用ストリップライン6及び第2の電源供給用ストリップライン7のインピーダンスのいずれも第1整合回路8の入力インピーダンスに比べてかなり高い値になっている。このため、第1電力増幅回路2の出力端に得られた増幅されたDCSの高周波信号は、第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7の接続による信号損失が殆どない状態で第1整合回路8に供給され、第1電力増幅回路2の出力端において高周波信号と直流電力とを有効に分離することが可能になる。
【0036】
前記機能は第2電力増幅回路4側においても同様に発揮されるもので、第2電力増幅回路4の出力端に増幅されたGSMの高周波信号が出力されたとき、第2電力増幅回路4の出力端と共通電源5間に直列接続されている第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7の長さは、GSMの高周波信号波長の1/4の信号ライン長に選定されているので、第2電力増幅回路4の出力端から直列接続されている第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7側を見たとき、GSMの高周波信号に対する直列接続されている第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7のインピーダンスが第2整合回路9の入力インピーダンスに比べてかなり高い値になっている。このため、第2電力増幅回路4の出力端に得られた増幅されたGSMの高周波信号は、直列接続されている第1及び第2の電源供給用ストリップライン6、7の接続による信号損失が殆どない状態で第2整合回路9に供給され、第2電力増幅回路4の出力端において高周波信号と直流電力とを有効に分離することが可能になる。
【0037】
このように、この実施の形態による共通電源を用いた2経路増幅回路によれば、DCSの高周波信号を増幅する第1電力増幅回路2の出力と共通電源5の出力間に第1の電源供給用ストリップライン6を、第1電力増幅回路2の出力と第2周波数帯域の高周波信号を増幅する第2電力増幅回路4の出力間に第2の電源供給用ストリップライン7をそれぞれ接続し、その際に第1の電源供給用ストリップライン6及び第2の電源供給用ストリップライン7の信号ライン長をそれぞれ第1周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定し、第1の電源供給用ストリップライン6に第2の電源供給用ストリップライン7を合わせた信号ライン長を第2周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定したことにより、共通電源5を使用したにも係わらず、第1の電源供給用ストリップライン6及び第2の電源供給用ストリップラインの高周波信号に対する信号損失をなくし、高周波信号と直流電力とを有効に分離することが可能になり、それにより端末の小型化や軽量化を図ることができる。
【0038】
なお、前記実施の形態においては、第1周波数帯域の高周波信号が周波数1.8GHz帯のDCSの高周波信号であり、第2周波数帯域の高周波信号が周波数900MHz帯のGSMの高周波信号である例を挙げて説明したが、本発明に適用される第1及び第2周波数帯域の高周波信号は、このような高周波信号に限られるものではなく、周波数帯域の関係がDCSの高周波信号及びGSMの高周波信号に類似している2つの周波数帯域の高周波信号であれば、他の高周波信号に対しても同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による共通電源を用いた2経路増幅回路の一つの実施の形態に係わるもので、その要部構成を示す回路構成図である。
【図2】図1に図示された第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路の各出力端部分の回路構成の詳細を示す回路図である。
【図3】既知のデュアルバンド携帯電話における高周波用送信モジュール、特に、当該モジュールにおける送信用電力増幅器を含む送信回路を示す回路構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1 第1信号入力端子
2 第1電力増幅回路
3 第2信号入力端子
4 第2電力増幅回路
5 共通電源
6 第1の電源供給用ストリップライン
7 第2の電源供給用ストリップライン
8 第1整合回路
9 第2整合回路
10 第1ローパスフィルタ
11 第2ローパスフィルタ
12 アンテナスイッチ
13 信号出力端子
14 第1結合コンデンサ
15 第2結合コンデンサ
16 バイパスコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数帯域の高周波信号を増幅する第1電力増幅回路と、前記第1周波数帯域の約1/2の周波数の第2周波数帯域の高周波信号を増幅する第2電力増幅回路と、共通電源とを備え、前記第1電力増幅回路の出力と前記共通電源の出力間に第1の電源供給用ストリップラインを接続するとともに、前記第1電力増幅回路の出力と前記第2電力増幅回路の出力間に第2の電源供給用ストリップラインを接続し、前記第1の電源供給用ストリップライン及び前記第2の電源供給用ストリップラインの信号ライン長をそれぞれ前記第1周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定し、前記第1の電源供給用ストリップラインに前記第2の電源供給用ストリップラインを合わせた信号ライン長を前記第2周波数帯域の高周波信号波長の1/4になるように選定したことを特徴とする共通電源を用いた2経路増幅回路。
【請求項2】
前記第1電力増幅回路及び前記第2電力増幅回路は、それぞれ複数個の半導体電力増幅素子を並列接続した出力段を備えることを特徴とする請求項1に記載の共通電源を用いた2経路増幅回路。
【請求項3】
前記第1周波数帯域の高周波信号は、周波数1.8GHz帯のDCSの高周波信号であり、前記第2周波数帯域の高周波信号は、周波数900MHz帯のGSMの高周波信号であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の共通電源を用いた2経路増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−339838(P2006−339838A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159880(P2005−159880)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】