内燃機関の制御装置
【課題】EGR装置におけるデポジットの発生を抑制することができ、それにより、商品性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】EGR装置11によりEGR動作が実行される内燃機関3の制御装置1は、要求トルクTRQに応じて、内燃機関3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えた後、通常運転に切り換える(ステップ20〜24)。このパージ運転の実行時間は、リッチ運転の実行時間に応じて決定される(ステップ30〜33,ステップ40,41,45)。
【解決手段】EGR装置11によりEGR動作が実行される内燃機関3の制御装置1は、要求トルクTRQに応じて、内燃機関3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えた後、通常運転に切り換える(ステップ20〜24)。このパージ運転の実行時間は、リッチ運転の実行時間に応じて決定される(ステップ30〜33,ステップ40,41,45)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えた内燃機関において、EGR制御および空燃比制御を実行する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の制御装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この内燃機関は、自動車用のものであり、吸入空気量を変更するスロットル弁と、排気通路内の排ガスの一部を還流ガスとして吸気通路に還流させるEGR装置と、排気通路を流れる排ガスを浄化するNOx浄化触媒などを備えている。このEGR装置は、EGR通路を流れる還流ガス量を変更するEGR弁と、還流ガスを冷却するEGRクーラなどで構成されている。
【0003】
この制御装置では、内燃機関の運転モードをリッチ運転モードからリーン運転モードに切り換える切換処理を実行した場合、それに起因してトルク変動が発生するおそれがあるので、そのようなトルク変動を抑制するために、トルク制御処理が以下のように実行される。まず、運転モードの切換処理が実行されたか否かを判定し(図2参照)、運転モードの切換処理が実行されたときには、エンジン回転数および要求トルクに応じて、スロットル弁およびEGR弁の目標開度が設定され、制御の実行期間を規定する値Nがカウンタの計数値nとしてセットされる(図3参照)。さらに、カウンタの計数値nが値「0」になるまでの間、エンジン回転数および要求トルクに応じて、目標噴射量が算出される(図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−12687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制御装置によれば、内燃機関の運転モードがリッチ運転モードからリーン運転モードに切り換わった場合、トルク変動を抑制することはできるものの、リッチ運転モード中にEGR通路内に溜まっていたリッチ雰囲気の排ガスが、運転モードの切換直後にEGR通路内を流れることで、以下に述べるような問題が発生するおそれがある。すなわち、一般に、内燃機関では、リッチ運転中の場合、排ガスがリッチ雰囲気となることで、排ガス中の未燃燃料濃度すなわちHC濃度がリーン運転中の場合と比べてかなり高い状態となる。そして、そのような高HC濃度の排ガスがEGR通路内を流れた場合、HCが接着剤としての役目を果たすことで、スートとHCの混合物が、デポジットとして、EGR通路の内壁、EGR弁およびEGRクーラに付着してしまうことになる。そのため、特許文献1の制御装置では、以上のようなデポジットの発生に起因して、EGRクーラにおける冷却効率の低下や、EGR弁の動作不良および流路抵抗の上昇によるEGR効率の低下などを引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、EGR装置におけるデポジットの発生を抑制することができ、それにより、商品性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、EGR装置11により、排気通路7内の排ガスの一部を吸気通路6に還流させるEGR動作が実行される内燃機関3の制御装置1であって、EGR装置11によるEGR動作を停止するとともに、内燃機関3に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりも小さくなるように制御する第1制御を実行する第1制御手段(ECU2、ステップ3〜5)と、EGR装置11によるEGR動作を停止するとともに、混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第2制御を実行する第2制御手段(ECU2、ステップ7〜9)と、EGR装置11によるEGR動作を実行するとともに、混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第3制御を実行する第3制御手段(ECU2、ステップ10〜12)と、内燃機関3の運転状態を表す運転状態パラメータ(要求トルクTRQ)に応じて、内燃機関3の制御を第1制御および第3制御の一方から他方に切り換えるとともに、第1制御から第3制御に切り換える際、第1制御の終了後に第2制御を実行した後、第3制御に切り換える制御切換手段(ECU2、ステップ20〜24)と、を備え、第2制御手段は、第1制御の実行時間に応じて、第2制御の実行時間を決定する(ステップ30〜33,40,41,45)ことを特徴とする。
【0008】
この内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の運転状態を表す運転状態パラメータに応じて、内燃機関の制御が第1制御および第3制御の一方から他方に切り換えられるとともに、第1制御から第3制御に切り換える際、第1制御の終了後に第2制御を実行した後、第3制御に切り換えられる。この第1制御では、EGR動作が停止されるとともに、内燃機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりも小さくなるように制御されるので、排気圧力脈動に起因するガス交換と拡散の影響によるガス混合とにより、リッチ雰囲気の排ガスが時間の経過に伴ってEGR装置の内部に流入し、その結果、第1制御の終了時点では、リッチ雰囲気の排ガスがEGR装置の内部に存在することになる。また、第2制御では、EGR装置によるEGR動作が停止されるとともに、混合気の空燃比が理論空燃比以上になるように制御されるので、ストイキ雰囲気またはリーン雰囲気の排ガスが排気通路内を流れることになる。その場合、排気圧力脈動に起因するガス交換と拡散の影響によるガス混合とによって、時間の経過に伴い、ストイキ雰囲気またはリーン雰囲気の排ガスがEGR装置の内部に流入するとともに、リッチ雰囲気の排ガスが排気通路側に排出されることになる。そして、そのようにリッチ雰囲気の排ガスがEGR装置から排出された後、第3制御が実行されることにより、ストイキ雰囲気またはリーン雰囲気の排ガスがEGR装置によって吸気通路に還元されるので、EGR装置におけるデポジットの発生を抑制することができ、それにより、商品性を向上させることができる。
【0009】
さらに、第1制御の実行によってEGR装置内に流れ込む排ガス量は、第1制御の実行時間に依存するとともに、第2制御の実行によって排ガスをEGR装置内から排出するのに要する時間は、EGR装置内に溜まった排ガス量が滞留可能な最大値に達していない状態では、第1制御の実行時間とほぼ等しいことが本出願人の実験によって確かめられている。したがって、第1制御の実行時間に応じて、第2制御の実行時間が決定されるので、第2制御の実行によって、第1制御の実行中にEGR装置内に溜まったと推定される排ガスを適切に排出することができるとともに、第3制御の開始タイミングすなわちEGR動作の開始タイミングを適切に決定することができる。それにより、吸気絞り弁が吸気通路に設けられている場合には、EGR動作の停止中、吸気絞り弁を要因として吸気抵抗が増大した状態になるのを可能な限り回避することができ、その分、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0010】
また、EGR動作の開始タイミングを適切に決定できることによって、内燃機関がディーゼルエンジンタイプの場合には、NOxの発生を抑制することができ、それにより、良好な排ガス特性を確保することができる。さらに、内燃機関がガソリンエンジンタイプの場合には、ノッキングの発生を抑制できることで、点火時期の遅角補正などを行うことなく、適切な点火時期で混合気を燃焼させることができ、それにより、燃費をさらに向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、第2制御手段は、第1制御の実行時間が所定時間(到達時間ΔT・TMmax/DTM)以上のときには、第2制御の実行時間を所定時間に設定し(ステップ32,33,45)、第1制御の実行時間が所定時間よりも短いときには、第2制御の実行時間を第1制御の実行時間に設定する(ステップ32,45)ことを特徴とする。
【0012】
この内燃機関の制御装置によれば、第1制御の実行時間が所定時間以上のときには、第2制御の実行時間が所定時間に設定され、第1制御の実行時間が所定時間よりも短いときには、第2制御の実行時間が第1制御の実行時間に設定される。この場合、EGR装置によるEGR動作が停止されているときには、EGR装置内に溜まる排ガス量の最大値は、EGR装置の構造によって決まるので、所定時間をそのような最大値の排ガスを排出するのに必要な時間に設定することによって、第2制御の実行時間を過不足のない適切な値に設定することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関3の制御装置1において、EGR装置11は、排気通路7および吸気通路6の間に延びるEGR通路12と、EGR通路12を開閉するEGR弁13aと、を備えており、第1制御手段は、第1制御の実行中、EGR弁13aを閉鎖状態に制御し、所定時間(到達時間ΔT・TMmax/DTM)は、第1制御の開始以降、排ガスが排気通路7から閉鎖状態のEGR弁13aに到達すると推定される時間に設定されていることを特徴とする。
【0014】
この内燃機関の制御装置によれば、第1制御の実行中、EGR弁が閉鎖状態に制御されるので、排ガスは、EGR通路における排気通路との接続部からEGR弁に至るまでの部分に溜まることになる。これに対して、所定時間は、第1制御の開始以降、排ガスが排気通路から閉鎖状態のEGR弁に到達すると推定される時間に設定されているので、第2制御の実行時間をそのような所定時間に設定することによって、EGR通路に溜まった排ガスを排出するのに必要な時間だけ、第2制御を過不足なく実行することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関3の制御装置1において、排気通路7には、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒8が設けられており、制御切換手段は、第1制御から第2制御に切り換えたときに、排ガス浄化触媒8の温度Tcatが所定温度(所定の上限値Tlimit)を超えるか否かを判定する判定手段(ECU2、ステップ35)と、第1制御から第2制御に切り換えた場合において、判定手段により、排ガス浄化触媒8の温度が所定温度を超えないと判定されているとき(ステップ35の判別結果がYESのとき)に、第1制御から第2制御への切り換えを実行するとともに、排ガス浄化触媒8の温度が所定温度を超えると判定されているとき(ステップ35の判別結果がNOのとき)に、第1制御を第2制御に切り換えることなく、第1制御を継続して実行する切換実行手段(ECU2、ステップ35〜37,2〜9)と、を有することを特徴とする。
【0016】
この内燃機関の制御装置によれば、第1制御から第2制御に切り換えた場合において、排ガス浄化触媒の温度が所定温度を超えないと判定されているときには、第1制御から第2制御への切り換えが実行されるので、この所定温度を適切に設定することによって、第1制御から第2制御に切り換えたときでも、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避できる。これに加えて、排ガス浄化触媒の温度が所定温度を超えると判定されているときには、第1制御を第2制御に切り換えることなく、第1制御が継続して実行されるので、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避できる。以上により、排ガス浄化触媒の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置およびこれを適用した内燃機関の構成を模式的に示す図である。
【図2】エンジン制御処理を示すフローチャートである。
【図3】要求トルクTRQの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図4】実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図5】リッチ運転中の実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図6】第1トルク判定値TJUD1の算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図7】パージ運転中の実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図8】通常運転中の実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図9】第2トルク判定値TJUD2の算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図10】内燃機関のリッチ運転、パージ運転および通常運転をそれぞれ実行したときの、排ガス浄化触媒の温度Tcatとエンジン回転数NEとの関係を示す図である。
【図11】本発明の制御装置による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図1に示すように、この制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、内燃機関(以下「エンジン」という)3の運転状態に応じて、エンジン制御処理などの各種の制御処理を実行する。
【0019】
このエンジン3は、4組の気筒3aおよびピストン3b(1組のみ図示)を有する直列4気筒ガソリンエンジンであり、図示しない車両に搭載されている。また、エンジン3には、燃料噴射弁4および点火プラグ5(いずれも1つのみ図示)が気筒3aごとに設けられている。
【0020】
この燃料噴射弁4は、ECU2に電気的に接続されており、ECU2により、後述するように、開弁時間および開弁タイミングが制御される。また、点火プラグ5も、ECU2に電気的に接続されており、ECU2により、気筒3a内の混合気を燃焼させるように、放電状態が制御される。
【0021】
一方、エンジン3の吸気通路6には、スロットル弁機構10が設けられており、このスロットル弁機構10は、スロットル弁10aおよびこれを開閉駆動するTHアクチュエータ10bなどを備えている。THアクチュエータ10bは、ECU2に接続されたモータにギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2からの制御入力信号によって駆動されることにより、スロットル弁10aの開度(以下「スロットル弁開度」という)THを変化させる。それにより、スロットル弁10aを通過する新気の流量が変更される。
【0022】
また、エンジン3の排気通路7の集合部よりも下流側には、排ガス浄化触媒8が設けられている。この排ガス浄化触媒8は、三元触媒タイプのもので構成されている。
【0023】
さらに、エンジン3には、EGR装置11が設けられている。このEGR装置11は、排気通路7内の排ガスの一部を還流ガスとして吸気通路6側に還流させるものであり、EGR通路12、EGR弁機構13およびEGRクーラ14などを備えている。EGR通路12は、吸気通路6および排気通路7の間に接続されており、その一端は、排気通路7の排ガス浄化触媒8よりも下流側の部分に開口し、他端は、吸気通路6のスロットル弁10aよりも下流側の部分に開口している。
【0024】
また、EGR弁機構13は、EGR弁13aおよびEGRアクチュエータ13bなどで構成されている。EGRアクチュエータ13bは、ECU2に接続されており、ECU2からの制御入力信号によって駆動されることにより、EGR弁13aの開度を変化させる。それにより、EGR弁13aを通過する還流ガス量が変更される。
【0025】
さらに、EGRクーラ14は、EGR通路12のEGR弁13aよりも上流側に設けられている。このEGRクーラ14は、エンジン3の冷却水を冷媒として用いる水冷式のものであり、還流ガスは、EGRクーラ14内を通過する際、冷却水との熱交換により冷却される。
【0026】
また、ECU2には、クランク角センサ20、アクセル開度センサ21およびLAFセンサ22が電気的に接続されている。このクランク角センサ20は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば1゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、アクセル開度センサ21は、図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0027】
さらに、LAFセンサ22は、排気通路7の集合部(図示せず)付近に配置され、ジルコニアおよび白金電極などで構成されているとともに、理論空燃比よりもリッチなリッチ領域から極リーン領域までの広範囲な空燃比の領域において、排気通路7内を流れる排ガス中の酸素濃度をリニアに検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、このLAFセンサ22の検出信号の値に基づき、排ガス中の当量比を表す検出当量比KACTを算出する。
【0028】
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜22の検出信号などに応じて、後述するように、エンジン制御処理などの制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2が、第1〜第3制御手段、制御切換手段、判定手段および切換実行手段に相当する。
【0029】
以下、図2を参照しながら、ECU2によって実行されるエンジン制御処理について説明する。この制御処理は、以下に述べるように、EGR制御および空燃比制御を実行することによって、エンジン3をリッチ運転、パージ運転および通常運転のいずかで運転するためのものであり、所定の制御周期で実行される。なお、以下の説明において算出される各種の値は、ECU2のRAM内に記憶されるものとする。
【0030】
同図に示すように、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図3に示すマップを検索することにより、運転状態パラメータとしての要求トルクTRQを算出する。同図3中のi,jは正の整数である。
【0031】
次に、ステップ2に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTが「1」であるか否かを判別する。このリッチ運転条件フラグF_WOTは、リッチ運転の実行条件が成立しているか否かを表すものであり、その値は後述する実行条件判定処理において設定される。
【0032】
ステップ2の判別結果がYESで、リッチ運転の実行条件が成立しているときには、エンジン3のリッチ運転を実行すべきであると判定して、ステップ3に進み、リッチ運転用の燃料制御処理(第1制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQや検出当量比KACTなどに応じて、混合気の空燃比がリッチ側の値になるように、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングが制御される。
【0033】
ステップ3に続くステップ4で、リッチ運転用のEGR制御処理(第1制御)を実行する。この制御処理では、EGR弁13aが全閉状態に保持され、それにより、EGR動作が停止される。
【0034】
次に、ステップ5に進み、リッチ運転用のTH制御処理(第1制御)を実行する。この制御処理では、混合気の空燃比がリッチ側の値になるように、スロットル弁開度THが制御される。以上のように、ステップ5を実行した後、本処理を終了する。
【0035】
一方、ステップ2の判別結果がNOのときには、ステップ6に進み、排気還流条件フラグF_EGRが「1」であるか否かを判別する。この排気還流条件フラグF_EGRは、EGR動作の実行条件が成立しているか否かを表すものであり、その値は後述する実行条件判定処理において設定される。
【0036】
このステップ6の判別結果がNOで、F_WOT=0およびF_EGR=0のときには、EGR通路12内に溜まった排ガスを排気通路7に排出するために、エンジン3のパージ運転を実行すべきであると判定して、ステップ7に進み、パージ運転用の燃料制御処理(第2制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQや検出当量比KACTなどに応じて、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングが制御される。
【0037】
ステップ7に続くステップ8で、パージ運転用のEGR制御処理(第2制御)を実行する。この制御処理では、EGR弁13aが全閉状態に保持され、それにより、EGR動作が停止される。
【0038】
次に、ステップ9に進み、パージ運転用のTH制御処理(第2制御)を実行する。この制御処理では、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、スロットル弁開度THが制御される。以上のように、ステップ9を実行した後、本処理を終了する。
【0039】
一方、ステップ6の判別結果がYESで、F_WOT=0およびF_EGR=1のときには、エンジン3の通常運転を実行すべきであると判定して、ステップ10に進み、通常運転用の燃料制御処理(第3制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQや検出当量比KACTなどに応じて、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングが制御される。
【0040】
ステップ10に続くステップ11で、通常運転用のEGR制御処理(第3制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQに応じて、EGR弁13aの開度が制御され、それにより、EGR動作が実行される。
【0041】
次いで、ステップ12に進み、通常運転用のTH制御処理(第3制御)を実行する。この制御処理では、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、スロットル弁開度THが制御される。以上のように、ステップ12を実行した後、本処理を終了する。
【0042】
以上のように、エンジン制御処理が実行されることにより、エンジン3では、リッチ運転中、EGR動作を停止した状態で、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側に制御されるとともに、パージ運転中、EGR動作を停止した状態で、混合気の空燃比が理論空燃比になるように制御される。さらに、通常運転中、EGR動作を実行した状態で、混合気の空燃比が理論空燃比になるように制御される。
【0043】
次に、図4を参照しながら、ECU2によって実行される実行条件判定処理について説明する。この処理は、前述したリッチ運転、パージ運転および通常運転のいずれの実行条件が成立しているかを判定するとともに、その判定結果に基づいて前述した2つのフラグF_WOT,F_EGRの値を設定するものであり、所定の制御周期ΔT(例えば10msec)で実行される。
【0044】
同図に示すように、まず、ステップ20で、前述したリッチ運転条件フラグF_WOTが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、エンジン3のリッチ運転を実行中であるときには、ステップ21に進み、リッチ運転中の実行条件判定処理を実行する。この処理は、具体的には図5に示すように実行される。
【0045】
同図に示すように、まず、ステップ30で、RAM内に記憶されているリッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzとして設定する。このリッチ運転タイマは、リッチ運転の実行時間を計時するものである。
【0046】
次いで、ステップ31に進み、リッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzと所定値DTMの和(TMz+DTM)に設定する。すなわち、リッチ運転タイマの計数値TMを所定値DTM分、インクリメントする。この所定値DTMは、正値に設定されている。
【0047】
ステップ31に続くステップ32で、リッチ運転タイマの計数値TMが所定の最大値TMmax以上であるか否かを判別する。この所定の最大値TMmaxは、リッチ運転の開始後、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達するのに要する時間(以下「到達時間」という)を表すものであり、本実施形態の場合、値ΔT・TMmax/DTMが到達時間に相当する。
【0048】
このステップ32の判別結果がNOのときには、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達していないと判定して、後述するステップ34に進む。一方、ステップ32の判別結果がYESのときには、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達していると判定して、ステップ33に進み、リッチ運転タイマの計数値TMを所定の最大値TMmaxに設定する。
【0049】
以上のステップ32または33に続くステップ34で、エンジン回転数NEに応じて、図6に示すマップを検索することにより、第1トルク判定値TJUD1を算出する。同図において、太い実線で示すデータが第1トルク判定値TJUD1を表しており、太い破線で示すデータは、リッチ運転中のエンジン3が発生可能な最大トルクTRQmaxを表している。この第1トルク判定値TJUD1は、後述するように、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3の運転状態として、パージ運転およびリッチ運転のいずれを実行すべきであるかという観点に基づいて設定されている。そのため、図6においては、第1トルク判定値TJUD1と最大トルクTRQmaxとの間の領域が、リッチ運転を実行すべき領域に設定され、第1トルク判定値TJUD1よりも下側の領域が、パージ運転を実行すべき領域に設定されている。
【0050】
次に、ステップ35に進み、TRQ≦TJUD1−αが成立しているか否かを判別する。この所定値αは、制御のハンチングの防止を目的として、第1トルク判定値TJUD1にヒステリシスを付与するためのものであり、所定の正値に設定されている。
【0051】
このステップ35の判別結果がNOのときには、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3のリッチ運転を継続すべきであると判定して、それを表すために、ステップ36に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「1」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0052】
一方、ステップ35の判別結果がYESで、TRQ≦TJUD1−αが成立しているときには、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えても、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避できる状況にあり、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ37に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTおよび排気還流条件フラグF_EGRをいずれも「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0053】
図4に戻り、ステップ21で、リッチ運転中の実行条件判定処理を以上のように実行した後、実行条件判定処理を終了する。
【0054】
一方、前述したステップ20の判別結果がNOで、エンジン3をリッチ運転中でないときには、ステップ22に進み、排気還流条件フラグF_EGRが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、エンジン3をパージ運転中であるときには、ステップ23に進み、パージ運転中の実行条件判定処理を実行する。この処理は、具体的には図7に示すように実行される。
【0055】
同図に示すように、まず、ステップ40で、RAM内に記憶されているリッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzとして設定する。
【0056】
次いで、ステップ41に進み、リッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzと所定値DTMの差分(TMz−DTM)に設定する。すなわち、リッチ運転タイマの計数値TMを所定値DTM分、デクリメントする。
【0057】
ステップ41に続くステップ42で、前述したステップ34と同様に、エンジン回転数NEに応じて、図6に示すマップを検索することにより、第1トルク判定値TJUD1を算出する。
【0058】
次に、ステップ43に進み、TRQ≧TJUD1+αが成立しているか否かを判別する。このステップ43の判別結果がYESのときには、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3の運転状態をパージ運転からリッチ運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ44に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「1」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0059】
一方、ステップ43の判別結果がNOで、TRQ<TJUD1+αのとき、すなわち、エンジン3のパージ運転を継続した場合でも、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避できると推定されるときには、ステップ45に進み、リッチ運転タイマの計数値TMが値0以下であるか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、パージ運転の実行時間がリッチ運転の実行時間よりも短いことで、リッチ雰囲気の排ガスがまだEGR通路12内に残留しており、それを排出するためにエンジン3のパージ運転を継続すべきであると判定して、それを表すために、ステップ46に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTおよび排気還流条件フラグF_EGRをいずれも「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0060】
一方、ステップ45の判別結果がYESのときには、パージ運転がリッチ運転の実行時間以上に実行されたことで、リッチ雰囲気の排ガスがすべてEGR通路12から排出されたと推定され、エンジン3の運転状態をパージ運転から通常運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ47に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「0」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0061】
図4に戻り、ステップ23で、パージ運転中の実行条件判定処理を以上のように実行した後、実行条件判定処理を終了する。
【0062】
一方、前述したステップ22の判別結果がYESのとき、すなわちエンジン3を通常運転中であるときには、ステップ24に進み、通常運転中の実行条件判定処理を実行する。この処理は、具体的には図8に示すように実行される。同図に示すように、まず、ステップ50で、リッチ運転タイマの計数値TMを値0に設定する。
【0063】
次いで、ステップ51に進み、エンジン回転数NEに応じて、図9に示すマップを検索することにより、第2トルク判定値TJUD2を算出する。同図において、太い実線で示すデータが第2トルク判定値TJUD2を表しており、この第2トルク判定値TJUD2は、後述するように、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3の運転状態として、通常運転およびリッチ運転のいずれを実行すべきであるかという観点に基づいて設定されている。そのため、図9においては、第2トルク判定値TJUD2と最大トルクTRQmaxとの間の領域が、リッチ運転を実行すべき領域に設定されており、第2トルク判定値TJUD2よりも下側の領域が、通常運転を実行すべき領域に設定されている。
【0064】
次に、ステップ52に進み、TRQ≧TJUD2が成立しているか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、エンジン3の通常運転を継続した場合でも、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避でき、エンジン3の通常運転を継続すべきであると判定して、それを表すために、ステップ53に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「0」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0065】
一方、ステップ52の判別結果がYESで、TRQ≧TJUD2のときには、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避ために、エンジン3の運転状態を通常運転からリッチ運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ54に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「1」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0066】
図4に戻り、ステップ24で、通常運転中の実行条件判定処理を以上のように実行した後、実行条件判定処理を終了する。
【0067】
本実施形態の制御装置1では、以上の制御手法によって、エンジン3が、リッチ運転、パージ運転および通常運転の間で切り換えて運転される。以下、その理由を、図10を参照しながら説明する。同図は、リッチ運転、パージ運転および通常運転をそれぞれ実行したときの触媒温度Tcatと、エンジン回転数NEとの関係を表しており、図中の実線で示すデータは、TRQ=TJUD2の状態で通常運転を実行したときのものを表している。
【0068】
また、図中の破線で示すデータは、TRQ=TJUD1の状態でパージ運転を実行したときのものを表しており、図中の2点鎖線で示すデータは、TRQ=TRQmaxの状態でリッチ運転を実行したときのものを表している。さらに、Tlimitは、所定の上限値であり、触媒温度Tcatがこの上限値Tlimit以下であれば、排ガス浄化触媒8での過昇温状態の発生を回避できるような所定温度に設定されている。
【0069】
同図の3つのデータを比較すると明らかなように、エンジン3のリッチ運転を実行した場合には、要求トルクTRQが最大値TRQmaxのときすなわちエンジン負荷が最も高い状態のときでも、高回転域において、触媒温度Tcatは、上限値Tlimitをかなり下回っており、触媒温度Tcatの上限値Tlimitに対する余裕が大きいことが判る。
【0070】
これに対して、TRQ=TJUD1の状態でパージ運転を実行した場合や、TRQ=TJUD2の状態で通常運転を実行した場合には、高回転域において、触媒温度Tcatは、上限値Tlimitに接近しており、触媒温度Tcatの上限値Tlimitに対する余裕が小さいことが判る。そのため、排ガス浄化触媒8の過昇温状態を回避するには、エンジンの通常運転中またはパージ運転中において、その時点の要求トルクTRQおよびエンジン回転数NEに対応する触媒温度Tcatが、上限値Tlimitに対して余裕がないと推定されるときには、エンジン3の運転状態を、触媒温度Tcatが上限値Tlimitに対する余裕が大きいリッチ運転状態に切り換える必要がある。以上の理由により、本実施形態では、排ガス浄化触媒8の過昇温状態を回避できるような要求トルクTRQのしきい値として、前述した2つのトルク判定値TJUD1,TJUD2を用い、これらの値TJUD1,TJUD2と要求トルクTRQとを比較することによって、エンジン3の運転状態が決定される。
【0071】
次に、図11を参照しながら、本実施形態の制御装置1による制御結果について説明する。同図は、リッチ運転中、要求トルクTRQが時間の経過に伴って低下したときのものである。同図の触媒温度Tcatのデータにおいて、太い実線で示すデータが、制御結果を表しており、細い実線で示す3つのデータは、パージ運転、通常運転およびリッチ運転をそれぞれ継続したときの触媒温度Tcatを参考のために表したものである。
【0072】
同図に示すように、リッチ運転中、要求トルクTRQが低下し、時刻t1で、TRQ≦TJUD2が成立した場合、この第2トルク判定値TJUD2は、TJUD2>TJUD1−αが成立する値であり、前述したステップ35の判別結果がNOとなる。そのため、それ以降も、リッチ運転が継続される。なお、例えば、この時刻t1のタイミングで、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えた場合、同図の破線で示すデータのように、触媒温度Tcatが上限値Tlimitを超えてしまうことになる。
【0073】
そして、リッチ運転中、時間の経過に伴い、時刻t2で、TRQ≦TJUD1−αが成立すると、ステップ35の判別結果がYESとなり、ステップ37で、2つのフラグF_WOT,F_EGRがいずれも「0」に設定される。それにより、エンジン3の運転状態がリッチ運転からパージ運転に切り換えられることで、それ以降、EGR通路12内の排ガスが排気通路7側に排出される。この場合、パージ運転の開始に伴って、触媒温度Tcatが時刻t2から時刻t3の間で一時的に上昇するものの、上限値Tlimitを超えない状態に保持されることが判る。
【0074】
その後、TM≦0が成立し、EGR通路12内の排ガスがすべて排気通路7側に排出されたと推定されるタイミング(時刻t3)で、ステップ45の判別結果がYESとなり、ステップ47で、リッチ運転条件フラグF_WOTが「0」に、排気還流条件フラグF_EGRが「1」にそれぞれ設定される。それにより、エンジン3の運転状態がパージ運転から通常運転に切り換えられる。
【0075】
以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、リッチ運転中、TRQ≦TJUD1−αが成立したときに、EGR通路12内に溜まったリッチ雰囲気の排ガスを排気通路7側に排出するために、エンジン3の運転状態がリッチ運転からパージ運転に切り換えられる。そして、TM≦0が成立するまでの間、すなわちリッチ運転の実行時間に等しい時間が経過するまでの間、パージ運転が実行される。この場合、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達していない状態では、パージ運転を実行したときにEGR通路12内に溜った排ガスを排気通路7側に排出するのに要する時間は、リッチ運転の実行時間とほぼ等しいことが本出願人の実験によって確認されている。
【0076】
したがって、リッチ運転タイマの計数値TMが値0以下になるまでの間、パージ運転を実行することによって、EGR通路12内に溜まったリッチ雰囲気の排ガスを、排気通路7に適切に排出することができる。その結果、TM≦0の成立以降、通常運転を実行したときに、ストイキ雰囲気の排ガスがEGR通路12を介して吸気通路6に還流されることによって、EGR通路12におけるデポジットの発生を抑制することができ、商品性を向上させることができる。特に、本実施形態のEGR装置11のように、EGRクーラ14を備えている場合には、EGRクーラ14におけるデポジットの発生を抑制することによって、冷却効率を良好な状態に保持することができ、その分、商品性をさらに高めることができる。
【0077】
また、TM≧TMmax以上が成立したときには、リッチ運転タイマの計数値TMが所定の最大値TMmaxに設定されるので、リッチ運転の実際の実行時間が、前述した到達時間ΔT・TMmax/DTMを上回っているときでも、パージ運転の実行時間がこの到達時間ΔT・TMmax/DTMに設定されることになる。このように、パージ運転の実行時間が過不足なく適切に設定されることによって、通常運転の開始タイミングすなわちEGR動作の開始タイミングを適切に決定することができる。それにより、EGR通路12におけるデポジットの発生を抑制しながら、スロットル弁10aが吸気抵抗となる時間を可能な限り短縮することができ、その分、エンジン3の燃費を向上させることができる。
【0078】
さらに、リッチ運転中、TRQ≦TJUD1−αが成立し、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えた場合でも、触媒温度Tcatが前述した所定の上限値Tlimitを超えないと推定されるときに、リッチ運転からパージ運転への切り換えが実行されるので、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避でき、それにより、排ガス浄化触媒8の劣化を抑制することができる。
【0079】
なお、実施形態では、エンジン3の通常運転中、混合気の空燃比を理論空燃比になるように制御したが、エンジン3の通常運転中、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側の値になるように制御してもよい。
【0080】
また、実施形態は、内燃機関として、ガソリンエンジンタイプのものを用いた例であるが、本発明の内燃機関はこれに限らず、EGR装置を備え、第1〜第3制御を切り換えて実行可能なものであればよい。例えば、内燃機関として、ディーゼルエンジンタイプのものを用いてもよい。
【0081】
さらに、実施形態は、本発明の制御装置を車両用の内燃機関に適用した例であるが、本発明の制御装置は、これに限らず、船舶用の内燃機関や、他の産業機器用の内燃機関にも適用可能であることは言うまでもない。
【0082】
また、実施形態は、運転状態パラメータとして、要求トルクTRQを用いた例であるが、本発明の運転状態パラメータはこれに限らず、内燃機関の運転状態を表すものであればよい。例えば、運転状態パラメータとして、アクセル開度APを用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 制御装置
2 ECU(第1〜第3制御手段、制御切換手段、判定手段、切換実行手段)
3 内燃機関
6 吸気通路
7 排気通路
8 排ガス浄化触媒
11 EGR装置
12 EGR通路
13a EGR弁
TRQ 要求トルク(運転状態パラメータ)
Tcat 排ガス浄化触媒の温度
Tlimit 所定の上限値(所定温度)
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えた内燃機関において、EGR制御および空燃比制御を実行する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の制御装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この内燃機関は、自動車用のものであり、吸入空気量を変更するスロットル弁と、排気通路内の排ガスの一部を還流ガスとして吸気通路に還流させるEGR装置と、排気通路を流れる排ガスを浄化するNOx浄化触媒などを備えている。このEGR装置は、EGR通路を流れる還流ガス量を変更するEGR弁と、還流ガスを冷却するEGRクーラなどで構成されている。
【0003】
この制御装置では、内燃機関の運転モードをリッチ運転モードからリーン運転モードに切り換える切換処理を実行した場合、それに起因してトルク変動が発生するおそれがあるので、そのようなトルク変動を抑制するために、トルク制御処理が以下のように実行される。まず、運転モードの切換処理が実行されたか否かを判定し(図2参照)、運転モードの切換処理が実行されたときには、エンジン回転数および要求トルクに応じて、スロットル弁およびEGR弁の目標開度が設定され、制御の実行期間を規定する値Nがカウンタの計数値nとしてセットされる(図3参照)。さらに、カウンタの計数値nが値「0」になるまでの間、エンジン回転数および要求トルクに応じて、目標噴射量が算出される(図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−12687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制御装置によれば、内燃機関の運転モードがリッチ運転モードからリーン運転モードに切り換わった場合、トルク変動を抑制することはできるものの、リッチ運転モード中にEGR通路内に溜まっていたリッチ雰囲気の排ガスが、運転モードの切換直後にEGR通路内を流れることで、以下に述べるような問題が発生するおそれがある。すなわち、一般に、内燃機関では、リッチ運転中の場合、排ガスがリッチ雰囲気となることで、排ガス中の未燃燃料濃度すなわちHC濃度がリーン運転中の場合と比べてかなり高い状態となる。そして、そのような高HC濃度の排ガスがEGR通路内を流れた場合、HCが接着剤としての役目を果たすことで、スートとHCの混合物が、デポジットとして、EGR通路の内壁、EGR弁およびEGRクーラに付着してしまうことになる。そのため、特許文献1の制御装置では、以上のようなデポジットの発生に起因して、EGRクーラにおける冷却効率の低下や、EGR弁の動作不良および流路抵抗の上昇によるEGR効率の低下などを引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、EGR装置におけるデポジットの発生を抑制することができ、それにより、商品性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、EGR装置11により、排気通路7内の排ガスの一部を吸気通路6に還流させるEGR動作が実行される内燃機関3の制御装置1であって、EGR装置11によるEGR動作を停止するとともに、内燃機関3に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりも小さくなるように制御する第1制御を実行する第1制御手段(ECU2、ステップ3〜5)と、EGR装置11によるEGR動作を停止するとともに、混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第2制御を実行する第2制御手段(ECU2、ステップ7〜9)と、EGR装置11によるEGR動作を実行するとともに、混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第3制御を実行する第3制御手段(ECU2、ステップ10〜12)と、内燃機関3の運転状態を表す運転状態パラメータ(要求トルクTRQ)に応じて、内燃機関3の制御を第1制御および第3制御の一方から他方に切り換えるとともに、第1制御から第3制御に切り換える際、第1制御の終了後に第2制御を実行した後、第3制御に切り換える制御切換手段(ECU2、ステップ20〜24)と、を備え、第2制御手段は、第1制御の実行時間に応じて、第2制御の実行時間を決定する(ステップ30〜33,40,41,45)ことを特徴とする。
【0008】
この内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の運転状態を表す運転状態パラメータに応じて、内燃機関の制御が第1制御および第3制御の一方から他方に切り換えられるとともに、第1制御から第3制御に切り換える際、第1制御の終了後に第2制御を実行した後、第3制御に切り換えられる。この第1制御では、EGR動作が停止されるとともに、内燃機関に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりも小さくなるように制御されるので、排気圧力脈動に起因するガス交換と拡散の影響によるガス混合とにより、リッチ雰囲気の排ガスが時間の経過に伴ってEGR装置の内部に流入し、その結果、第1制御の終了時点では、リッチ雰囲気の排ガスがEGR装置の内部に存在することになる。また、第2制御では、EGR装置によるEGR動作が停止されるとともに、混合気の空燃比が理論空燃比以上になるように制御されるので、ストイキ雰囲気またはリーン雰囲気の排ガスが排気通路内を流れることになる。その場合、排気圧力脈動に起因するガス交換と拡散の影響によるガス混合とによって、時間の経過に伴い、ストイキ雰囲気またはリーン雰囲気の排ガスがEGR装置の内部に流入するとともに、リッチ雰囲気の排ガスが排気通路側に排出されることになる。そして、そのようにリッチ雰囲気の排ガスがEGR装置から排出された後、第3制御が実行されることにより、ストイキ雰囲気またはリーン雰囲気の排ガスがEGR装置によって吸気通路に還元されるので、EGR装置におけるデポジットの発生を抑制することができ、それにより、商品性を向上させることができる。
【0009】
さらに、第1制御の実行によってEGR装置内に流れ込む排ガス量は、第1制御の実行時間に依存するとともに、第2制御の実行によって排ガスをEGR装置内から排出するのに要する時間は、EGR装置内に溜まった排ガス量が滞留可能な最大値に達していない状態では、第1制御の実行時間とほぼ等しいことが本出願人の実験によって確かめられている。したがって、第1制御の実行時間に応じて、第2制御の実行時間が決定されるので、第2制御の実行によって、第1制御の実行中にEGR装置内に溜まったと推定される排ガスを適切に排出することができるとともに、第3制御の開始タイミングすなわちEGR動作の開始タイミングを適切に決定することができる。それにより、吸気絞り弁が吸気通路に設けられている場合には、EGR動作の停止中、吸気絞り弁を要因として吸気抵抗が増大した状態になるのを可能な限り回避することができ、その分、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0010】
また、EGR動作の開始タイミングを適切に決定できることによって、内燃機関がディーゼルエンジンタイプの場合には、NOxの発生を抑制することができ、それにより、良好な排ガス特性を確保することができる。さらに、内燃機関がガソリンエンジンタイプの場合には、ノッキングの発生を抑制できることで、点火時期の遅角補正などを行うことなく、適切な点火時期で混合気を燃焼させることができ、それにより、燃費をさらに向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、第2制御手段は、第1制御の実行時間が所定時間(到達時間ΔT・TMmax/DTM)以上のときには、第2制御の実行時間を所定時間に設定し(ステップ32,33,45)、第1制御の実行時間が所定時間よりも短いときには、第2制御の実行時間を第1制御の実行時間に設定する(ステップ32,45)ことを特徴とする。
【0012】
この内燃機関の制御装置によれば、第1制御の実行時間が所定時間以上のときには、第2制御の実行時間が所定時間に設定され、第1制御の実行時間が所定時間よりも短いときには、第2制御の実行時間が第1制御の実行時間に設定される。この場合、EGR装置によるEGR動作が停止されているときには、EGR装置内に溜まる排ガス量の最大値は、EGR装置の構造によって決まるので、所定時間をそのような最大値の排ガスを排出するのに必要な時間に設定することによって、第2制御の実行時間を過不足のない適切な値に設定することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関3の制御装置1において、EGR装置11は、排気通路7および吸気通路6の間に延びるEGR通路12と、EGR通路12を開閉するEGR弁13aと、を備えており、第1制御手段は、第1制御の実行中、EGR弁13aを閉鎖状態に制御し、所定時間(到達時間ΔT・TMmax/DTM)は、第1制御の開始以降、排ガスが排気通路7から閉鎖状態のEGR弁13aに到達すると推定される時間に設定されていることを特徴とする。
【0014】
この内燃機関の制御装置によれば、第1制御の実行中、EGR弁が閉鎖状態に制御されるので、排ガスは、EGR通路における排気通路との接続部からEGR弁に至るまでの部分に溜まることになる。これに対して、所定時間は、第1制御の開始以降、排ガスが排気通路から閉鎖状態のEGR弁に到達すると推定される時間に設定されているので、第2制御の実行時間をそのような所定時間に設定することによって、EGR通路に溜まった排ガスを排出するのに必要な時間だけ、第2制御を過不足なく実行することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関3の制御装置1において、排気通路7には、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒8が設けられており、制御切換手段は、第1制御から第2制御に切り換えたときに、排ガス浄化触媒8の温度Tcatが所定温度(所定の上限値Tlimit)を超えるか否かを判定する判定手段(ECU2、ステップ35)と、第1制御から第2制御に切り換えた場合において、判定手段により、排ガス浄化触媒8の温度が所定温度を超えないと判定されているとき(ステップ35の判別結果がYESのとき)に、第1制御から第2制御への切り換えを実行するとともに、排ガス浄化触媒8の温度が所定温度を超えると判定されているとき(ステップ35の判別結果がNOのとき)に、第1制御を第2制御に切り換えることなく、第1制御を継続して実行する切換実行手段(ECU2、ステップ35〜37,2〜9)と、を有することを特徴とする。
【0016】
この内燃機関の制御装置によれば、第1制御から第2制御に切り換えた場合において、排ガス浄化触媒の温度が所定温度を超えないと判定されているときには、第1制御から第2制御への切り換えが実行されるので、この所定温度を適切に設定することによって、第1制御から第2制御に切り換えたときでも、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避できる。これに加えて、排ガス浄化触媒の温度が所定温度を超えると判定されているときには、第1制御を第2制御に切り換えることなく、第1制御が継続して実行されるので、排ガス浄化触媒が過昇温状態になるのを回避できる。以上により、排ガス浄化触媒の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置およびこれを適用した内燃機関の構成を模式的に示す図である。
【図2】エンジン制御処理を示すフローチャートである。
【図3】要求トルクTRQの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図4】実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図5】リッチ運転中の実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図6】第1トルク判定値TJUD1の算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図7】パージ運転中の実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図8】通常運転中の実行条件判定処理を示すフローチャートである。
【図9】第2トルク判定値TJUD2の算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図10】内燃機関のリッチ運転、パージ運転および通常運転をそれぞれ実行したときの、排ガス浄化触媒の温度Tcatとエンジン回転数NEとの関係を示す図である。
【図11】本発明の制御装置による制御結果の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図1に示すように、この制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、内燃機関(以下「エンジン」という)3の運転状態に応じて、エンジン制御処理などの各種の制御処理を実行する。
【0019】
このエンジン3は、4組の気筒3aおよびピストン3b(1組のみ図示)を有する直列4気筒ガソリンエンジンであり、図示しない車両に搭載されている。また、エンジン3には、燃料噴射弁4および点火プラグ5(いずれも1つのみ図示)が気筒3aごとに設けられている。
【0020】
この燃料噴射弁4は、ECU2に電気的に接続されており、ECU2により、後述するように、開弁時間および開弁タイミングが制御される。また、点火プラグ5も、ECU2に電気的に接続されており、ECU2により、気筒3a内の混合気を燃焼させるように、放電状態が制御される。
【0021】
一方、エンジン3の吸気通路6には、スロットル弁機構10が設けられており、このスロットル弁機構10は、スロットル弁10aおよびこれを開閉駆動するTHアクチュエータ10bなどを備えている。THアクチュエータ10bは、ECU2に接続されたモータにギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2からの制御入力信号によって駆動されることにより、スロットル弁10aの開度(以下「スロットル弁開度」という)THを変化させる。それにより、スロットル弁10aを通過する新気の流量が変更される。
【0022】
また、エンジン3の排気通路7の集合部よりも下流側には、排ガス浄化触媒8が設けられている。この排ガス浄化触媒8は、三元触媒タイプのもので構成されている。
【0023】
さらに、エンジン3には、EGR装置11が設けられている。このEGR装置11は、排気通路7内の排ガスの一部を還流ガスとして吸気通路6側に還流させるものであり、EGR通路12、EGR弁機構13およびEGRクーラ14などを備えている。EGR通路12は、吸気通路6および排気通路7の間に接続されており、その一端は、排気通路7の排ガス浄化触媒8よりも下流側の部分に開口し、他端は、吸気通路6のスロットル弁10aよりも下流側の部分に開口している。
【0024】
また、EGR弁機構13は、EGR弁13aおよびEGRアクチュエータ13bなどで構成されている。EGRアクチュエータ13bは、ECU2に接続されており、ECU2からの制御入力信号によって駆動されることにより、EGR弁13aの開度を変化させる。それにより、EGR弁13aを通過する還流ガス量が変更される。
【0025】
さらに、EGRクーラ14は、EGR通路12のEGR弁13aよりも上流側に設けられている。このEGRクーラ14は、エンジン3の冷却水を冷媒として用いる水冷式のものであり、還流ガスは、EGRクーラ14内を通過する際、冷却水との熱交換により冷却される。
【0026】
また、ECU2には、クランク角センサ20、アクセル開度センサ21およびLAFセンサ22が電気的に接続されている。このクランク角センサ20は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば1゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、アクセル開度センサ21は、図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0027】
さらに、LAFセンサ22は、排気通路7の集合部(図示せず)付近に配置され、ジルコニアおよび白金電極などで構成されているとともに、理論空燃比よりもリッチなリッチ領域から極リーン領域までの広範囲な空燃比の領域において、排気通路7内を流れる排ガス中の酸素濃度をリニアに検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、このLAFセンサ22の検出信号の値に基づき、排ガス中の当量比を表す検出当量比KACTを算出する。
【0028】
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜22の検出信号などに応じて、後述するように、エンジン制御処理などの制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2が、第1〜第3制御手段、制御切換手段、判定手段および切換実行手段に相当する。
【0029】
以下、図2を参照しながら、ECU2によって実行されるエンジン制御処理について説明する。この制御処理は、以下に述べるように、EGR制御および空燃比制御を実行することによって、エンジン3をリッチ運転、パージ運転および通常運転のいずかで運転するためのものであり、所定の制御周期で実行される。なお、以下の説明において算出される各種の値は、ECU2のRAM内に記憶されるものとする。
【0030】
同図に示すように、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図3に示すマップを検索することにより、運転状態パラメータとしての要求トルクTRQを算出する。同図3中のi,jは正の整数である。
【0031】
次に、ステップ2に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTが「1」であるか否かを判別する。このリッチ運転条件フラグF_WOTは、リッチ運転の実行条件が成立しているか否かを表すものであり、その値は後述する実行条件判定処理において設定される。
【0032】
ステップ2の判別結果がYESで、リッチ運転の実行条件が成立しているときには、エンジン3のリッチ運転を実行すべきであると判定して、ステップ3に進み、リッチ運転用の燃料制御処理(第1制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQや検出当量比KACTなどに応じて、混合気の空燃比がリッチ側の値になるように、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングが制御される。
【0033】
ステップ3に続くステップ4で、リッチ運転用のEGR制御処理(第1制御)を実行する。この制御処理では、EGR弁13aが全閉状態に保持され、それにより、EGR動作が停止される。
【0034】
次に、ステップ5に進み、リッチ運転用のTH制御処理(第1制御)を実行する。この制御処理では、混合気の空燃比がリッチ側の値になるように、スロットル弁開度THが制御される。以上のように、ステップ5を実行した後、本処理を終了する。
【0035】
一方、ステップ2の判別結果がNOのときには、ステップ6に進み、排気還流条件フラグF_EGRが「1」であるか否かを判別する。この排気還流条件フラグF_EGRは、EGR動作の実行条件が成立しているか否かを表すものであり、その値は後述する実行条件判定処理において設定される。
【0036】
このステップ6の判別結果がNOで、F_WOT=0およびF_EGR=0のときには、EGR通路12内に溜まった排ガスを排気通路7に排出するために、エンジン3のパージ運転を実行すべきであると判定して、ステップ7に進み、パージ運転用の燃料制御処理(第2制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQや検出当量比KACTなどに応じて、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングが制御される。
【0037】
ステップ7に続くステップ8で、パージ運転用のEGR制御処理(第2制御)を実行する。この制御処理では、EGR弁13aが全閉状態に保持され、それにより、EGR動作が停止される。
【0038】
次に、ステップ9に進み、パージ運転用のTH制御処理(第2制御)を実行する。この制御処理では、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、スロットル弁開度THが制御される。以上のように、ステップ9を実行した後、本処理を終了する。
【0039】
一方、ステップ6の判別結果がYESで、F_WOT=0およびF_EGR=1のときには、エンジン3の通常運転を実行すべきであると判定して、ステップ10に進み、通常運転用の燃料制御処理(第3制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQや検出当量比KACTなどに応じて、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射弁4の開弁時間および開弁タイミングが制御される。
【0040】
ステップ10に続くステップ11で、通常運転用のEGR制御処理(第3制御)を実行する。この制御処理では、要求トルクTRQに応じて、EGR弁13aの開度が制御され、それにより、EGR動作が実行される。
【0041】
次いで、ステップ12に進み、通常運転用のTH制御処理(第3制御)を実行する。この制御処理では、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、スロットル弁開度THが制御される。以上のように、ステップ12を実行した後、本処理を終了する。
【0042】
以上のように、エンジン制御処理が実行されることにより、エンジン3では、リッチ運転中、EGR動作を停止した状態で、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側に制御されるとともに、パージ運転中、EGR動作を停止した状態で、混合気の空燃比が理論空燃比になるように制御される。さらに、通常運転中、EGR動作を実行した状態で、混合気の空燃比が理論空燃比になるように制御される。
【0043】
次に、図4を参照しながら、ECU2によって実行される実行条件判定処理について説明する。この処理は、前述したリッチ運転、パージ運転および通常運転のいずれの実行条件が成立しているかを判定するとともに、その判定結果に基づいて前述した2つのフラグF_WOT,F_EGRの値を設定するものであり、所定の制御周期ΔT(例えば10msec)で実行される。
【0044】
同図に示すように、まず、ステップ20で、前述したリッチ運転条件フラグF_WOTが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、エンジン3のリッチ運転を実行中であるときには、ステップ21に進み、リッチ運転中の実行条件判定処理を実行する。この処理は、具体的には図5に示すように実行される。
【0045】
同図に示すように、まず、ステップ30で、RAM内に記憶されているリッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzとして設定する。このリッチ運転タイマは、リッチ運転の実行時間を計時するものである。
【0046】
次いで、ステップ31に進み、リッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzと所定値DTMの和(TMz+DTM)に設定する。すなわち、リッチ運転タイマの計数値TMを所定値DTM分、インクリメントする。この所定値DTMは、正値に設定されている。
【0047】
ステップ31に続くステップ32で、リッチ運転タイマの計数値TMが所定の最大値TMmax以上であるか否かを判別する。この所定の最大値TMmaxは、リッチ運転の開始後、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達するのに要する時間(以下「到達時間」という)を表すものであり、本実施形態の場合、値ΔT・TMmax/DTMが到達時間に相当する。
【0048】
このステップ32の判別結果がNOのときには、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達していないと判定して、後述するステップ34に進む。一方、ステップ32の判別結果がYESのときには、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達していると判定して、ステップ33に進み、リッチ運転タイマの計数値TMを所定の最大値TMmaxに設定する。
【0049】
以上のステップ32または33に続くステップ34で、エンジン回転数NEに応じて、図6に示すマップを検索することにより、第1トルク判定値TJUD1を算出する。同図において、太い実線で示すデータが第1トルク判定値TJUD1を表しており、太い破線で示すデータは、リッチ運転中のエンジン3が発生可能な最大トルクTRQmaxを表している。この第1トルク判定値TJUD1は、後述するように、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3の運転状態として、パージ運転およびリッチ運転のいずれを実行すべきであるかという観点に基づいて設定されている。そのため、図6においては、第1トルク判定値TJUD1と最大トルクTRQmaxとの間の領域が、リッチ運転を実行すべき領域に設定され、第1トルク判定値TJUD1よりも下側の領域が、パージ運転を実行すべき領域に設定されている。
【0050】
次に、ステップ35に進み、TRQ≦TJUD1−αが成立しているか否かを判別する。この所定値αは、制御のハンチングの防止を目的として、第1トルク判定値TJUD1にヒステリシスを付与するためのものであり、所定の正値に設定されている。
【0051】
このステップ35の判別結果がNOのときには、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3のリッチ運転を継続すべきであると判定して、それを表すために、ステップ36に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「1」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0052】
一方、ステップ35の判別結果がYESで、TRQ≦TJUD1−αが成立しているときには、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えても、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避できる状況にあり、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ37に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTおよび排気還流条件フラグF_EGRをいずれも「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0053】
図4に戻り、ステップ21で、リッチ運転中の実行条件判定処理を以上のように実行した後、実行条件判定処理を終了する。
【0054】
一方、前述したステップ20の判別結果がNOで、エンジン3をリッチ運転中でないときには、ステップ22に進み、排気還流条件フラグF_EGRが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、エンジン3をパージ運転中であるときには、ステップ23に進み、パージ運転中の実行条件判定処理を実行する。この処理は、具体的には図7に示すように実行される。
【0055】
同図に示すように、まず、ステップ40で、RAM内に記憶されているリッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzとして設定する。
【0056】
次いで、ステップ41に進み、リッチ運転タイマの計数値TMをその前回値TMzと所定値DTMの差分(TMz−DTM)に設定する。すなわち、リッチ運転タイマの計数値TMを所定値DTM分、デクリメントする。
【0057】
ステップ41に続くステップ42で、前述したステップ34と同様に、エンジン回転数NEに応じて、図6に示すマップを検索することにより、第1トルク判定値TJUD1を算出する。
【0058】
次に、ステップ43に進み、TRQ≧TJUD1+αが成立しているか否かを判別する。このステップ43の判別結果がYESのときには、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3の運転状態をパージ運転からリッチ運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ44に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「1」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0059】
一方、ステップ43の判別結果がNOで、TRQ<TJUD1+αのとき、すなわち、エンジン3のパージ運転を継続した場合でも、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避できると推定されるときには、ステップ45に進み、リッチ運転タイマの計数値TMが値0以下であるか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、パージ運転の実行時間がリッチ運転の実行時間よりも短いことで、リッチ雰囲気の排ガスがまだEGR通路12内に残留しており、それを排出するためにエンジン3のパージ運転を継続すべきであると判定して、それを表すために、ステップ46に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTおよび排気還流条件フラグF_EGRをいずれも「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0060】
一方、ステップ45の判別結果がYESのときには、パージ運転がリッチ運転の実行時間以上に実行されたことで、リッチ雰囲気の排ガスがすべてEGR通路12から排出されたと推定され、エンジン3の運転状態をパージ運転から通常運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ47に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「0」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0061】
図4に戻り、ステップ23で、パージ運転中の実行条件判定処理を以上のように実行した後、実行条件判定処理を終了する。
【0062】
一方、前述したステップ22の判別結果がYESのとき、すなわちエンジン3を通常運転中であるときには、ステップ24に進み、通常運転中の実行条件判定処理を実行する。この処理は、具体的には図8に示すように実行される。同図に示すように、まず、ステップ50で、リッチ運転タイマの計数値TMを値0に設定する。
【0063】
次いで、ステップ51に進み、エンジン回転数NEに応じて、図9に示すマップを検索することにより、第2トルク判定値TJUD2を算出する。同図において、太い実線で示すデータが第2トルク判定値TJUD2を表しており、この第2トルク判定値TJUD2は、後述するように、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避するために、エンジン3の運転状態として、通常運転およびリッチ運転のいずれを実行すべきであるかという観点に基づいて設定されている。そのため、図9においては、第2トルク判定値TJUD2と最大トルクTRQmaxとの間の領域が、リッチ運転を実行すべき領域に設定されており、第2トルク判定値TJUD2よりも下側の領域が、通常運転を実行すべき領域に設定されている。
【0064】
次に、ステップ52に進み、TRQ≧TJUD2が成立しているか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、エンジン3の通常運転を継続した場合でも、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避でき、エンジン3の通常運転を継続すべきであると判定して、それを表すために、ステップ53に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「0」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0065】
一方、ステップ52の判別結果がYESで、TRQ≧TJUD2のときには、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避ために、エンジン3の運転状態を通常運転からリッチ運転に切り換えるべきであると判定して、それを表すために、ステップ54に進み、リッチ運転条件フラグF_WOTを「1」に設定するとともに、排気還流条件フラグF_EGRを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0066】
図4に戻り、ステップ24で、通常運転中の実行条件判定処理を以上のように実行した後、実行条件判定処理を終了する。
【0067】
本実施形態の制御装置1では、以上の制御手法によって、エンジン3が、リッチ運転、パージ運転および通常運転の間で切り換えて運転される。以下、その理由を、図10を参照しながら説明する。同図は、リッチ運転、パージ運転および通常運転をそれぞれ実行したときの触媒温度Tcatと、エンジン回転数NEとの関係を表しており、図中の実線で示すデータは、TRQ=TJUD2の状態で通常運転を実行したときのものを表している。
【0068】
また、図中の破線で示すデータは、TRQ=TJUD1の状態でパージ運転を実行したときのものを表しており、図中の2点鎖線で示すデータは、TRQ=TRQmaxの状態でリッチ運転を実行したときのものを表している。さらに、Tlimitは、所定の上限値であり、触媒温度Tcatがこの上限値Tlimit以下であれば、排ガス浄化触媒8での過昇温状態の発生を回避できるような所定温度に設定されている。
【0069】
同図の3つのデータを比較すると明らかなように、エンジン3のリッチ運転を実行した場合には、要求トルクTRQが最大値TRQmaxのときすなわちエンジン負荷が最も高い状態のときでも、高回転域において、触媒温度Tcatは、上限値Tlimitをかなり下回っており、触媒温度Tcatの上限値Tlimitに対する余裕が大きいことが判る。
【0070】
これに対して、TRQ=TJUD1の状態でパージ運転を実行した場合や、TRQ=TJUD2の状態で通常運転を実行した場合には、高回転域において、触媒温度Tcatは、上限値Tlimitに接近しており、触媒温度Tcatの上限値Tlimitに対する余裕が小さいことが判る。そのため、排ガス浄化触媒8の過昇温状態を回避するには、エンジンの通常運転中またはパージ運転中において、その時点の要求トルクTRQおよびエンジン回転数NEに対応する触媒温度Tcatが、上限値Tlimitに対して余裕がないと推定されるときには、エンジン3の運転状態を、触媒温度Tcatが上限値Tlimitに対する余裕が大きいリッチ運転状態に切り換える必要がある。以上の理由により、本実施形態では、排ガス浄化触媒8の過昇温状態を回避できるような要求トルクTRQのしきい値として、前述した2つのトルク判定値TJUD1,TJUD2を用い、これらの値TJUD1,TJUD2と要求トルクTRQとを比較することによって、エンジン3の運転状態が決定される。
【0071】
次に、図11を参照しながら、本実施形態の制御装置1による制御結果について説明する。同図は、リッチ運転中、要求トルクTRQが時間の経過に伴って低下したときのものである。同図の触媒温度Tcatのデータにおいて、太い実線で示すデータが、制御結果を表しており、細い実線で示す3つのデータは、パージ運転、通常運転およびリッチ運転をそれぞれ継続したときの触媒温度Tcatを参考のために表したものである。
【0072】
同図に示すように、リッチ運転中、要求トルクTRQが低下し、時刻t1で、TRQ≦TJUD2が成立した場合、この第2トルク判定値TJUD2は、TJUD2>TJUD1−αが成立する値であり、前述したステップ35の判別結果がNOとなる。そのため、それ以降も、リッチ運転が継続される。なお、例えば、この時刻t1のタイミングで、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えた場合、同図の破線で示すデータのように、触媒温度Tcatが上限値Tlimitを超えてしまうことになる。
【0073】
そして、リッチ運転中、時間の経過に伴い、時刻t2で、TRQ≦TJUD1−αが成立すると、ステップ35の判別結果がYESとなり、ステップ37で、2つのフラグF_WOT,F_EGRがいずれも「0」に設定される。それにより、エンジン3の運転状態がリッチ運転からパージ運転に切り換えられることで、それ以降、EGR通路12内の排ガスが排気通路7側に排出される。この場合、パージ運転の開始に伴って、触媒温度Tcatが時刻t2から時刻t3の間で一時的に上昇するものの、上限値Tlimitを超えない状態に保持されることが判る。
【0074】
その後、TM≦0が成立し、EGR通路12内の排ガスがすべて排気通路7側に排出されたと推定されるタイミング(時刻t3)で、ステップ45の判別結果がYESとなり、ステップ47で、リッチ運転条件フラグF_WOTが「0」に、排気還流条件フラグF_EGRが「1」にそれぞれ設定される。それにより、エンジン3の運転状態がパージ運転から通常運転に切り換えられる。
【0075】
以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、リッチ運転中、TRQ≦TJUD1−αが成立したときに、EGR通路12内に溜まったリッチ雰囲気の排ガスを排気通路7側に排出するために、エンジン3の運転状態がリッチ運転からパージ運転に切り換えられる。そして、TM≦0が成立するまでの間、すなわちリッチ運転の実行時間に等しい時間が経過するまでの間、パージ運転が実行される。この場合、排ガスが閉鎖状態のEGR弁13aまで到達していない状態では、パージ運転を実行したときにEGR通路12内に溜った排ガスを排気通路7側に排出するのに要する時間は、リッチ運転の実行時間とほぼ等しいことが本出願人の実験によって確認されている。
【0076】
したがって、リッチ運転タイマの計数値TMが値0以下になるまでの間、パージ運転を実行することによって、EGR通路12内に溜まったリッチ雰囲気の排ガスを、排気通路7に適切に排出することができる。その結果、TM≦0の成立以降、通常運転を実行したときに、ストイキ雰囲気の排ガスがEGR通路12を介して吸気通路6に還流されることによって、EGR通路12におけるデポジットの発生を抑制することができ、商品性を向上させることができる。特に、本実施形態のEGR装置11のように、EGRクーラ14を備えている場合には、EGRクーラ14におけるデポジットの発生を抑制することによって、冷却効率を良好な状態に保持することができ、その分、商品性をさらに高めることができる。
【0077】
また、TM≧TMmax以上が成立したときには、リッチ運転タイマの計数値TMが所定の最大値TMmaxに設定されるので、リッチ運転の実際の実行時間が、前述した到達時間ΔT・TMmax/DTMを上回っているときでも、パージ運転の実行時間がこの到達時間ΔT・TMmax/DTMに設定されることになる。このように、パージ運転の実行時間が過不足なく適切に設定されることによって、通常運転の開始タイミングすなわちEGR動作の開始タイミングを適切に決定することができる。それにより、EGR通路12におけるデポジットの発生を抑制しながら、スロットル弁10aが吸気抵抗となる時間を可能な限り短縮することができ、その分、エンジン3の燃費を向上させることができる。
【0078】
さらに、リッチ運転中、TRQ≦TJUD1−αが成立し、エンジン3の運転状態をリッチ運転からパージ運転に切り換えた場合でも、触媒温度Tcatが前述した所定の上限値Tlimitを超えないと推定されるときに、リッチ運転からパージ運転への切り換えが実行されるので、排ガス浄化触媒8が過昇温状態になるのを回避でき、それにより、排ガス浄化触媒8の劣化を抑制することができる。
【0079】
なお、実施形態では、エンジン3の通常運転中、混合気の空燃比を理論空燃比になるように制御したが、エンジン3の通常運転中、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側の値になるように制御してもよい。
【0080】
また、実施形態は、内燃機関として、ガソリンエンジンタイプのものを用いた例であるが、本発明の内燃機関はこれに限らず、EGR装置を備え、第1〜第3制御を切り換えて実行可能なものであればよい。例えば、内燃機関として、ディーゼルエンジンタイプのものを用いてもよい。
【0081】
さらに、実施形態は、本発明の制御装置を車両用の内燃機関に適用した例であるが、本発明の制御装置は、これに限らず、船舶用の内燃機関や、他の産業機器用の内燃機関にも適用可能であることは言うまでもない。
【0082】
また、実施形態は、運転状態パラメータとして、要求トルクTRQを用いた例であるが、本発明の運転状態パラメータはこれに限らず、内燃機関の運転状態を表すものであればよい。例えば、運転状態パラメータとして、アクセル開度APを用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 制御装置
2 ECU(第1〜第3制御手段、制御切換手段、判定手段、切換実行手段)
3 内燃機関
6 吸気通路
7 排気通路
8 排ガス浄化触媒
11 EGR装置
12 EGR通路
13a EGR弁
TRQ 要求トルク(運転状態パラメータ)
Tcat 排ガス浄化触媒の温度
Tlimit 所定の上限値(所定温度)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGR装置により、排気通路内の排ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR動作が実行される内燃機関の制御装置であって、
前記EGR装置による前記EGR動作を停止するとともに、前記内燃機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりも小さくなるように制御する第1制御を実行する第1制御手段と、
前記EGR装置による前記EGR動作を停止するとともに、前記混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第2制御を実行する第2制御手段と、
前記EGR装置による前記EGR動作を実行するとともに、前記混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第3制御を実行する第3制御手段と、
前記内燃機関の運転状態を表す運転状態パラメータに応じて、前記内燃機関の制御を前記第1制御および前記第3制御の一方から他方に切り換えるとともに、前記第1制御から前記第3制御に切り換える際、前記第1制御の終了後に前記第2制御を実行した後、前記第3制御に切り換える制御切換手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、前記第1制御の実行時間に応じて、前記第2制御の実行時間を決定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、前記第1制御の実行時間が所定時間以上のときには、前記第2制御の実行時間を当該所定時間に設定し、前記第1制御の実行時間が当該所定時間よりも短いときには、前記第2制御の実行時間を前記第1制御の実行時間に設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記EGR装置は、前記排気通路および前記吸気通路の間に延びるEGR通路と、当該EGR通路を開閉するEGR弁と、を備えており、
前記第1制御手段は、前記第1制御の実行中、前記EGR弁を閉鎖状態に制御し、
前記所定時間は、前記第1制御の開始以降、排ガスが前記排気通路から閉鎖状態の前記EGR弁に到達すると推定される時間に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記排気通路には、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒が設けられており、
前記制御切換手段は、
前記第1制御から前記第2制御に切り換えたときに、前記排ガス浄化触媒の温度が所定温度を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記第1制御から前記第2制御に切り換えた場合において、前記判定手段により、前記排ガス浄化触媒の温度が前記所定温度を超えないと判定されているときに、前記第1制御から前記第2制御への切り換えを実行するとともに、前記排ガス浄化触媒の温度が前記所定温度を超えると判定されているときに、前記第1制御を前記第2制御に切り換えることなく、前記第1制御を継続して実行する切換実行手段と、
を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
EGR装置により、排気通路内の排ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR動作が実行される内燃機関の制御装置であって、
前記EGR装置による前記EGR動作を停止するとともに、前記内燃機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりも小さくなるように制御する第1制御を実行する第1制御手段と、
前記EGR装置による前記EGR動作を停止するとともに、前記混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第2制御を実行する第2制御手段と、
前記EGR装置による前記EGR動作を実行するとともに、前記混合気の空燃比を理論空燃比以上になるように制御する第3制御を実行する第3制御手段と、
前記内燃機関の運転状態を表す運転状態パラメータに応じて、前記内燃機関の制御を前記第1制御および前記第3制御の一方から他方に切り換えるとともに、前記第1制御から前記第3制御に切り換える際、前記第1制御の終了後に前記第2制御を実行した後、前記第3制御に切り換える制御切換手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、前記第1制御の実行時間に応じて、前記第2制御の実行時間を決定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、前記第1制御の実行時間が所定時間以上のときには、前記第2制御の実行時間を当該所定時間に設定し、前記第1制御の実行時間が当該所定時間よりも短いときには、前記第2制御の実行時間を前記第1制御の実行時間に設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記EGR装置は、前記排気通路および前記吸気通路の間に延びるEGR通路と、当該EGR通路を開閉するEGR弁と、を備えており、
前記第1制御手段は、前記第1制御の実行中、前記EGR弁を閉鎖状態に制御し、
前記所定時間は、前記第1制御の開始以降、排ガスが前記排気通路から閉鎖状態の前記EGR弁に到達すると推定される時間に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記排気通路には、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒が設けられており、
前記制御切換手段は、
前記第1制御から前記第2制御に切り換えたときに、前記排ガス浄化触媒の温度が所定温度を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記第1制御から前記第2制御に切り換えた場合において、前記判定手段により、前記排ガス浄化触媒の温度が前記所定温度を超えないと判定されているときに、前記第1制御から前記第2制御への切り換えを実行するとともに、前記排ガス浄化触媒の温度が前記所定温度を超えると判定されているときに、前記第1制御を前記第2制御に切り換えることなく、前記第1制御を継続して実行する切換実行手段と、
を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−104300(P2013−104300A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246367(P2011−246367)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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