説明

半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置

【課題】良好な耐燃性および耐半田性を有し、流動性、硬化性および連続成形性に優れた半導体封止用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】1又は2以上の成分からなるフェノール樹脂であって、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)と、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)と、を含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物、ならびに、その半導体封止用樹脂組成物の硬化物で半導体素子を封止して得られることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高性能化への要求はとどまることが無く、半導体素子(以下、「素子」、「チップ」ともいう。)の高集積化、高密度化は年々進行し、さらには半導体装置(以下、「パッケージ」ともいう。)の実装方式にも、表面実装技術が登場し、普及しつつある。このような半導体装置の周辺技術の進歩によって、半導体素子を封止する樹脂組成物への要求も厳しいものとなってきている。たとえば、表面実装工程では、吸湿した半導体装置が半田処理時に高温にさらされ、急速に気化した水蒸気の爆発的応力によってクラックや内部剥離が発生し、半導体装置の動作信頼性を著しく低下させる。さらには、鉛の使用撤廃の機運から、従来よりも融点の高い無鉛半田へ切り替えられ、実装温度が従来に比べ約20℃高くなり、上述の半田処理時の応力はより深刻となる。このように表面実装技術の普及と無鉛半田への切り替えによって、半導体封止用樹脂組成物にとって、耐半田性は重要な技術課題のひとつとなっている。
【0003】
また、近年の環境問題を背景に、従来用いられてきたブロム化エポキシ樹脂や酸化アンチモン等の難燃剤の使用を撤廃する社会的要請が高まりを見せており、これらの難燃剤を使用せずに、従来と同等の難燃性を付与する技術が必要となってきている。そのような代替難燃化技術として、例えば低粘度の結晶性エポキシ樹脂を適用し、より多くの無機充填剤を配合する手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの手法も、耐半田性と難燃性を十分満たしているとはいいがたい。
【0004】
さらに近年では、1パッケージ内にチップを積層する構造、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置が登場している。このような半導体装置では、従来よりも樹脂封止部分の肉厚が薄くなることで未充填が発生しやすい、あるいは成形中のワイヤ流れが発生しやすいなど、封止工程の歩留まりを低下させる懸念がある。そこで、樹脂組成物の流動特性を向上させるために、低分子量のエポキシ樹脂又はフェノール樹脂硬化剤を用いる手法が容易に想起されるが、同手法によって、樹脂組成物(タブレット)同士の固着による成形工程中の搬送不良、設備停止を起こしやすい(ハンドリング性の低下)、硬化性低下によって耐半田性、耐燃性、成形性のいずれかの特性が損なわれる、などの不具合が発生する場合がある。以上のように、半導体装置の細線化、薄型化によって、樹脂組成物は、従来以上に流動性を向上させつつ、ハンドリング性、耐半田性、耐燃性、成形性を確保し、バランスさせることが重要課題となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−130919号公報
【特許文献2】特開平8−20673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来以上に流動性を向上させつつ、ハンドリング性、耐半田性、耐燃性及び連続成形性のバランスが良好な半導体封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により半導体素子を封止してなる信頼性に優れた半導体装置を経済的に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、1又は2以上の成分からなるフェノール樹脂であって、下記一般式(1):
【化1】

(上記一般式(1)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。)で表される構造単位
及び下記一般式(2):
【化2】

(上記一般式(2)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。R7、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
無機充填剤(C)と、
硬化促進剤(D)と、
グリセリントリ脂肪酸エステル(E)と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、電界脱離質量分析による測定で、前記成分(A1)に該当する重合体の相対強度の合計が、前記フェノール樹脂(A)の合計相対強度に対して10%以上、80%以下含まれるものとすることができる。
【0009】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記フェノール樹脂(A)が、前記一般式(1)で表される構造単位を含み、かつ前記一般式(2)で表される構造単位を含まない重合体からなる成分(A2)をさらに含むものとすることができる。
【0010】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記フェノール樹脂(A)が、前記一般式(2)で表される構造単位を含み、前記一般式(1)で表される構造単位を含まない重合体からなる成分(A3)をさらに含むものとすることができる。
【0011】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記フェノール樹脂(A)全体における前記一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、前記一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比が30/70〜95/5であるものとすることができる。
【0012】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記一般式(2)で表される構造単位におけるR6がメチル基であり、bが1〜3であるものとすることができる。
【0013】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記フェノール樹脂(A)が全硬化剤中に20質量%以上、100質量%以下含まれるものとすることができる。
【0014】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(B)が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、アントラセンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂であるものとすることができる。
【0015】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記無機充填剤(C)の含有量が80質量%以上、93質量%以下であるものとすることができる。
【0016】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むものとすることができる。
【0017】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記半導体封止用樹脂組成物が、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)をさらに含むものとすることができる。
【0018】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記半導体封止用樹脂組成物が、カップリング剤(G)をさらに含むものとすることができる。
【0019】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前記カップリング剤(G)が2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むものとすることができる。
【0020】
本発明の半導体装置は、上述の半導体封止用樹脂組成物の硬化物で半導体素子を封止して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従うと、従来以上に流動性を向上させつつ、ハンドリング性、耐半田性、耐燃性及び連続成形性のバランスが良好な半導体封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により半導体素子を封止してなる信頼性に優れた半導体装置を経済的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る半導体封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図2】本発明に係る半導体封止用樹脂組成物を用いた片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図3】実施例で用いたフェノール樹脂1のGPCチャートである。
【図4】実施例で用いたフェノール樹脂2のGPCチャートである。
【図5】実施例で用いたフェノール樹脂3のGPCチャートである。
【図6】実施例で用いたフェノール樹脂4のGPCチャートである。
【図7】実施例で用いたフェノール樹脂1のFD−MSチャートである。
【図8】実施例で用いたフェノール樹脂2のFD−MSチャートである。
【図9】実施例で用いたフェノール樹脂3のFD−MSチャートである。
【図10】実施例で用いたフェノール樹脂4のFD−MSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、1又は2以上の成分からなるフェノール樹脂であって、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)と、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)と、を含むことを特徴とする。これにより、従来以上に流動性を向上させつつ、ハンドリング性、耐半田性、耐燃性及び連続成形性のバランスに優れる半導体封止用樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の半導体装置は、上述の半導体封止用樹脂組成物の硬化物で半導体素子を封止して得られることを特徴とする。これにより、信頼性に優れた半導体装置を経済的に得ることができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
先ず、半導体封止用樹脂組成物について説明する。本発明の半導体封止用樹脂組成物では、エポキシ樹脂の硬化剤として、1又は2以上の成分からなるフェノール樹脂であって、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)を用いる。
【0025】
【化1】

ここで、一般式(1)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。
【0026】
【化2】

ここで、一般式(2)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。R7、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。
【0027】
フェノール樹脂(A)中の成分(A1)は、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型フェノール樹脂と類似の骨格構造を有することで良好な硬化性と耐半田性とを示し、さらに一般式(2)で表される構造単位の置換基R6が疎水性であることから、良好な耐湿性を示すことができる。さらにフェノール樹脂(A)中の成分(A1)は、同程度の分子量を有するフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂と比較して、固着が発生しにくく、良好なハンドリング性を示すという特徴も有する。固着の生じにくい理由について、詳細は不明であるが、部分的に置換基R6を含むことで、分子間力(ファンデルワールス力)が局所的に強く、それによって分子の運動が束縛される結果、軟化点が相対的に上昇するため、と推測される。フェノール樹脂(A)を用いた樹脂組成物は、ハンドリング性を損なうことなく優れた流動性と硬化性を示すことができ、かつその硬化物は、耐燃性に優れ、吸水率が低く、耐半田クラック性が向上するという特徴を有している。
【0028】
フェノール樹脂(A)は、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むものであるが、一般式(1)で表される構造単位は含むものの一般式(2)で表される構造単位は含まない重合体からなる成分(A2)や、一般式(2)で表される構造単位は含むものの一般式(1)で表される構造単位は含まない重合体からなる成分(A3)をさらに含むことができる。このようなフェノール樹脂(A)全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比としては、30/70〜95/5であることが好ましく、40/60〜90/10であることがより好ましく、50/50〜85/15であることが特に好ましい。ここで、本明細書における「〜」は、すべてその上下両端を含むものである。両構造単位の繰返し数の平均値での比が上記範囲にあることにより、耐燃性、ハンドリング性、連続成形性及び耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。尚、フェノール樹脂(A)全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比は、電界脱離質量分析(FD−MS)測定により求めることができる。検出質量(m/z)範囲50〜2000にて測定した、FD−MS分析で検出された各ピークについて、検出質量(m/z)から分子量、及び繰り返し数を得ることができ、さらに各ピークの強度比を含有割合(質量)として算術計算することによって、一般式(1)および一般式(2)の各構造単位の含有比を求めることができる。
【0029】
このようなフェノール樹脂(A)の重合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール化合物、下記一般式(3)で表される化合物及び下記一般式(4)で表される化合物を共縮重合することにより得る方法(以下、「第1の製法」ともいう。)、下記一般式(5)で表されるアルキル置換芳香族化合物とアルデヒド類とを反応させた後、下記一般式(3)で表される化合物及びフェノール化合物を加えて共重合することにより得る方法(以下、「第2の製法」ともいう。)、などを挙げることができ、これらの重合方法を適宜組み合わせて重合してもよい。これらの中でも、第2の製法が原材料を安価で入手できるという点で好ましい。
【0030】
【化3】

ここで、一般式(3)において、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。Xは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。R11及びR12は、互いに独立して、炭素数1〜5の炭化水素基又は水素原子である。
【0031】
【化4】

ここで、一般式(4)において、R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。R7、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。Xは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。R13及びR14は、互いに独立して、炭素数1〜5の炭化水素基又は水素原子である。
【0032】
【化5】

ここで、一般式(5)において、R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。
【0033】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、フェニルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、t−ブチルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、ノニルフェノール、メシトール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、フェノール、o−クレゾールが好ましく、さらにフェノールが、エポキシ樹脂との反応性という観点から、より好ましい。フェノール樹脂(A)の製造において、これらのフェノール化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(3)で表される化合物中のR2、R3、R4及びR5における炭素数1〜6の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。
【0035】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(3)で表される化合物中の=CR11R12(アルキリデン基)としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、n−ブチリデン基、イソブチリデン基、t−ブチリデン基、n−ペンチリデン基、2−メチルブチリデン基、3−メチルブチリデン基、t−ペンチリデン基、n−ヘキシリデン、1−メチルペンチリデン基、2−メチルペンチリデン基、3−メチルペンチリデン基、4−メチルペンチリデン基、2,2−ジメチルブチリデン基、2,3−ジメチルブチリデン基、2,4−ジメチルブチリデン基、3,3−ジメチルブチリデン基、3,4−ジメチルブチリデン基、4,4−ジメチルブチリデン基、2−エチルブチリデン基、1−エチルブチリデン基、及びシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0036】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(3)で表される化合物中のXにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(3)で表される化合物中のXにおける炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、t−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、1−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、4−メチルペントキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2,4−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、3,4−ジメチルブトキシ基、4,4−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、及び1−エチルブトキシ基等が挙げられる。
【0037】
フェノール樹脂(A)の製造において、一般式(3)で表される化合物は、一種類を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、p−キシリレングリコールは、比較的低温で合成が可能であり、反応副生成物の留去や取り扱いが容易であるため好ましい。Xがハロゲン原子である場合、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として利用することができる。
【0038】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(4)で表される化合物中のR7、R8、R9、R10及びR6において、炭素数1〜6の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。
【0039】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(4)で表される化合物中の=CR13R14(アルキリデン基)としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、n−ブチリデン基、イソブチリデン基、t−ブチリデン基、n−ペンチリデン基、2−メチルブチリデン基、3−メチルブチリデン基、t−ペンチリデン基、n−ヘキシリデン、1−メチルペンチリデン基、2−メチルペンチリデン基、3−メチルペンチリデン基、4−メチルペンチリデン基、2,2−ジメチルブチリデン基、2,3−ジメチルブチリデン基、2,4−ジメチルブチリデン基、3,3−ジメチルブチリデン基、3,4−ジメチルブチリデン基、4,4−ジメチルブチリデン基、2−エチルブチリデン基、1−エチルブチリデン基、及びシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0040】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(4)で表される化合物中のXにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、t−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、1−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、4−メチルペントキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2,4−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、3,4−ジメチルブトキシ基、4,4−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、及び1−エチルブトキシ基等が挙げられる。
【0041】
フェノール樹脂(A)の製造において、一般式(4)で表される化合物は、一種類を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、樹脂組成物の耐燃性と耐湿性のバランスという観点から、R6はメチル基が、bは1〜3であることが好ましい。Xがメトキシである場合は、反応副生成物の留去や取り扱いが容易であるため好ましく、Xがハロゲン原子である場合、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として利用することができる。
【0042】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられる一般式(5)で表される化合物中のR6において、炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。このようなアルキル置換芳香族化合物としては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,3−トリエチルベンゼン、n−1,2,4−トリエチルベンゼン、クメン、o−シメン、m−シメン、p−シメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、原料価格や樹脂組成物の耐燃性と耐湿性のバランスという観点からトルエン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンが好ましい。フェノール樹脂(A)の製造において、一般式(5)で表される化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
フェノール樹脂(A)の製造に用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも樹脂組成物の硬化性、原料コストの観点からホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0044】
フェノール樹脂(A)の合成方法については特に限定されるものではないが、例えば、第1の製法の場合には、フェノール化合物1モルに対して、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを合計0.1〜0.6モル、蟻酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸、などの酸性触媒0.005〜0.05モルを50〜200℃の温度で、窒素フローにより発生ガス及び水分を系外へ排出しながら、2〜20時間反応させ、反応終了後に残留するモノマーを減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。なお、フェノール樹脂(A)全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と一般式(2)で表される構造単位の合計の数と比率は、使用した原料の比率をほぼ反映し、その配合比率の好ましい範囲としては、モル比で一般式(3)で表される化合物:一般式(4)=20:80〜80:20を挙げることができる。
【0045】
第1の製法により得られるフェノール樹脂(A)は、下記一般式(6)で表され、mが0〜20の整数であり、nが0〜20の整数である重合体の混合物である。
【0046】
【化6】

ここで、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。分子の末端は、水素原子又は置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基である。
【0047】
一般式(6)で表され、mが0〜20の整数であり、nが0〜20の整数である重合体の混合物におけるm及びnの値を平均値で記載すると、mの平均値は1〜7、より好ましくは1.2〜2.5であり、nの平均値は0.2〜2、より好ましくは0.4〜1である。mの平均値が上記下限値未満の場合、得られる樹脂組成物のハンドリング性や樹脂組成物の硬化性が低下する恐れがある。また、mの平均値が上記上限値を超えた場合、フェノール樹脂自体の粘度が高いため、得られる樹脂組成物の流動性が低下する恐れがある。また、nの平均値が上記下限値未満の場合、得られる樹脂組成物の耐半田性及び搬送性が低下する恐れがある。また、nの平均値が上記上限値を超えた場合、樹脂組成物の流動性と硬化性が低下し、成形性は低下する恐れがある。なお、m及びnの値は、FD−MS分析法により求めることができる。一般式(6)の化合物のFD−MS分析法により測定される分子量は、300以上、1500以下であり、好ましくは500以上、900以下である。フェノール樹脂(A)自身でのハンドリングの容易性、樹脂組成物としての流動性、硬化性、耐燃性及び耐半田性のバランスを考慮すると、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)は、第1の製法により得られるフェノール樹脂(A)の全量を基準として10質量%以上、80質量%以下、より好ましくは15質量%以上、70質量%以下、特に好ましくは20質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。
【0048】
第1の製法で得られるフェノール樹脂(A)中に含まれる成分(A1)を調整する方法として、例えば、一般式(4)で表される化合物の配合量を増やす、あるいは、一般式(3)で表される化合物を反応系に徐々に添加するなどの方法を採ることによって、成分(A1)の含有割合を高めることができる。
【0049】
また、フェノール樹脂(A)の合成方法のうち、第2の製法の場合には、一般式(5)で表されるアルキル置換芳香族化合物1モルに対して、アルデヒド類を1〜2.5モル、 触媒として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属触媒、またはパラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、硫酸などの強酸を0.1〜2.5モル加えて、アルカリ金属触媒の場合には5〜80℃の温度で、酸性触媒の場合には100〜150℃の温度で、0.5〜5時間反応して反応中間体を得る。次いで、一般式(3)で表される化合物0.2〜5モル及びフェノール化合物1〜20モル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸などの酸性触媒0.005〜0.05モルを加えて50〜200℃の温度にて窒素フローにより発生ガスを系外へ排出しながら、2〜20時間共縮合反応させ、反応終了後に残留するモノマー及び水分を減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。一般式(3)においてXがハロゲン原子である場合、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として用いることができる。
【0050】
第2の製法により得られるフェノール樹脂(A)は、下記一般式(7)で表され、iが0〜20の整数であり、jが0〜20の整数であり、kが0〜20の整数である重合体の混合物である。
【0051】
【化7】

ここで、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。分子の末端は、水素原子、置換もしくは無置換のヒドロキシフェニル基又は炭素数1〜6の炭化水素基が1〜4個置換したフェニル基である。
【0052】
一般式(7)で表され、iが0〜20の整数であり、jが0〜20の整数であり、kが0〜20の整数である重合体の混合物におけるi、j及びkの値を平均値で記載すると、iの平均値は0.5〜7、より好ましくは1〜4であり、jの平均値は0.2〜3、より好ましくは0.4〜2であり、kの平均値は0以上、5以下、より好ましくは0以上、3以下である。iが上記下限値未満の場合、得られる樹脂組成物の硬化性が低下する恐れがある。iが上記上限値を超えた場合、フェノール樹脂自体の粘度が高いため、得られる樹脂組成物の流動性が低下する恐れがある。また、jが上記下限値未満の場合、得られるフェノール樹脂は固着しやすく、得られる樹脂組成物の耐半田クラック性が低下する恐れがある。jが上記上限値を超えた場合、樹脂組成物の流動性と硬化性が低下する恐れがある。また、kが上記上限値を超えた場合、樹脂組成物の耐燃性が低下する恐れがある。なお、i、j及びkの値は、FD−MS分析法により求めることができる。一般式(7)の化合物のFD−MS分析法により測定される分子量は、350以上、1200以下であり、好ましくは400以上、900以下である。フェノール樹脂(A)自身でのハンドリングの容易性、樹脂組成物としての流動性、硬化性、耐燃性及び耐半田性のバランスを考慮すると、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)は、第2の製法により得られるフェノール樹脂(A)の全量を基準として10質量%以上、80質量%以下、より好ましくは15質量%以上、70質量%以下、特に好ましくは20質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。
【0053】
ここで、第2の製法で得られるフェノール樹脂(A)中に、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)の含有割合を高める手法としては、例えば、一般式(3)で表される化合物について、配合量を低減する、または、反応系に徐々に添加するなどの方法を挙げることができる。
【0054】
第2の製法で得られるフェノール樹脂(A)中には、一般式(1)で表される構造単位を含まず、かつ一般式(2)で表される構造単位を含まない重合体(一般式(7)でi=0、j=0である成分)を副生成物として含み得るが、フェノール樹脂(A)としてのハンドリング性や樹脂組成物の硬化性、流動性及び耐燃性を損なわない範囲でこれらの副生成物を含んでもよい。また、上述の副生成物の含有量を低減させる手法としては、ホルムアルデヒド配合量を低減、又は反応中間体中に残留する未反応のアルデヒド類を再結晶又は減圧などの公知の方法で除去する方法、などが挙げられる。
【0055】
第2の製法で得られるフェノール樹脂(A)中には2核体成分(フェニレン骨格を有するフェノールアラルキルの2核体、フェニレン骨格の水素原子の一部が炭素数1〜6の炭化水素基で置換されたフェニレン骨格を有するフェノールアラルキルの2核体、又はフェノールノボラックの2核体)が含まれることがある。これらの含有割合について、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)の面積法により求められる含有量は20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下である。2核体量が上記上限値を超えた場合、フェノール樹脂のブロッキングが生じやすく、また樹脂組成物の硬化性が低下する。上述の2核体を低減する方法としては、フェノールの反応後に、水蒸気蒸留あるいは減圧蒸留において、減圧度を高める、あるいは処理時間を長くするなどにより、2核体成分を低減することができる。
【0056】
ここで、より低粘度のフェノール樹脂を得るためには、フェノール化合物の配合量を増やす、ホルムアルデヒド成分を減らす、酸触媒の配合量を減らす、ハロゲン化水素ガスが発生する場合にはこれを窒素気流などで速やかに系外に排出する、共縮合温度を下げる、などの手法によって高分子量成分の生成を低減させる方法が使用できる。この場合、反応の進行は、一般式(3)、(4)、反応中間体とフェノールとの反応で副生成する水、ハロゲン化水素、アルコールのガスの発生状況や、あるいは反応途中の生成物をサンプリングしてゲルパーミエーションクロマトグラフ法により分子量で確認することもできる。
【0057】
本発明で用いられるフェノール樹脂(A)は、1又は2以上の成分からなるフェノール樹脂であって、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂であり、具体的には、下記1)又は2)の成分を必須成分とし、下記3)〜6)の成分を含むことができる。
1)フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂とフェニレン骨格の水素原子の一部が炭素数1〜6の炭化水素基で置換されたフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂との共重合体
2)フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂とフェニレン骨格の水素原子の一部が炭素数1〜6の炭化水素基で置換されたフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂とフェノールノボラック型樹脂の共重合体
3)フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂又はフェニレン骨格の水素原子の一部が炭素数1〜6の炭化水素基で置換されたフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂
4)フェノールノボラック型樹脂
5)フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂又はフェニレン骨格の水素原子の一部が炭素数1〜6の炭化水素基で置換されたフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂とフェノールノボラック型樹脂の共重合体
6)上記の1)〜5)のフェノール樹脂で、分子の末端部又はヒドロキシフェニル基の置換基に、炭素数1〜6の炭化水素基が1〜4個置換したフェニル基が、直接、またはパラキシリレン基を介して結合した重合体
【0058】
上述の複数の構造の重合体を含むことにより、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂よりも、低粘度でありながらも固着し難いことでハンドリング性が良好であり、かつ硬化性を損なうことなく、耐半田性、耐燃性に優れ、良好な連続成形性をも発現することができる。とりわけ第2の製法の場合には、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂よりも原料コストが安く、低コストで製造することができる。
【0059】
一般式(6)のm、nの値及び一般式(7)のi、j、kの値は、FD−MS測定により求めることができる。検出質量(m/z)範囲50〜2000にて測定した、FD−MS分析で検出された各ピークについて、検出質量(m/z)からは分子量、及び繰り返し数(m、n及びi、j、k)の値を得ることができ、さらに各ピークの強度比を含有割合(質量)として算術計算することによってm、nの各平均値及びi、j、kの各平均値を求めることができる。
【0060】
フェノール樹脂(A)がフェノールノボラック型樹脂を含む場合、フェノール樹脂(A)中のフェノールノボラック型樹脂の含有量は、フェノール樹脂(A)全量に対して、5〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。上述の範囲とすることによって、良好な硬化性と耐燃性を得ることができる。
【0061】
本発明の半導体封止用樹脂組成物におけるフェノール樹脂(A)の配合量は、半導体封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、半導体封止用樹脂組成物中のフェノール樹脂の量は、半導体封止樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%であり、さらに好ましくは8質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性と硬化性を有する。
【0062】
本発明の半導体封止用樹脂組成物では、上記フェノール樹脂(A)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他の硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0063】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0064】
縮合型の硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0065】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0066】
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール樹脂(A)の配合割合の下限値としては、全硬化剤に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。
【0067】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0068】
本発明の半導体封止用樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、アントラセンジオール型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、得られる半導体封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンを極力含まないことが好ましい。また、半導体樹脂組成物の硬化性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq以上、500g/eq以下であることが好ましい。
【0069】
さらにその中でも、流動性の観点ではビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂等が好ましく、耐半田性の観点ではフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂等が好ましい。また、片面封止型の半導体装置における低反り性の観点ではトリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセンジオール型エポキシ樹脂等が好ましい。このようなエポキシ樹脂であれば、後述する実施例で示すように、本発明のフェノール樹脂(A)と組み合わせて用いることにより、流動性を向上させつつ、ハンドリング性、耐半田性、耐燃性及び連続成形性のバランスが安定的に良好となる作用効果が得られる。
【0070】
半導体封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(B)の量は、半導体封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、半導体封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、半導体封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性を有する。
【0071】
なお、フェノール樹脂とエポキシ樹脂とは、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。
【0072】
本発明の半導体封止用樹脂組成物に用いられる無機充填剤(C)としては、当該分野で一般的に用いられる無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機充填剤の粒径は、金型キャビティへの充填性の観点から、0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。
【0073】
半導体封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の量は、半導体封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは83質量%以上であり、さらに好ましくは86質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下が低減でき、したがって良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。また、半導体封止用樹脂組成物中の無機充填剤の量は、半導体封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0074】
なお、後述する、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填剤の合計量を上記範囲内とすることが望ましい。
【0075】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、硬化促進剤(D)を含む。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂の水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に使用される硬化促進剤(D)を用いることができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する触媒がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また耐半田性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。また、連続成形性の観点では、テトラ置換ホスホニウム化合物が好ましい。
【0076】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0077】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0078】
【化8】

一般式(8)において、Pはリン原子を表し、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立して芳香族基又はアルキル基を表し、Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表し、AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表し、x及びyは1〜3の整数であり、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。
【0079】
一般式(8)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(8)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(8)で表される化合物において、合成時の収得率と硬化促進効果のバランスに優れるという観点では、リン原子に結合するR17、R18、R19及びR20がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール化合物であり、かつAは該フェノール化合物のアニオンであるのが好ましい。
【0080】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0081】
【化9】

一般式(9)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Y1はヒドロキシル基を表し、fは0〜5の整数であり、gは0〜4の整数である。
【0082】
一般式(9)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0083】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(10)で表される化合物等が挙げられる。
【0084】
【化10】

一般式(10)において、Pはリン原子を表し、R21、R22及びR23は、互いに独立して、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R24、R25及びR26は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R24とR25は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0085】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0086】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0087】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0088】
一般式(10)で表される化合物において、リン原子に結合するR21、R22及びR23がフェニル基であり、かつR24、R25及びR26が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0089】
本発明の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記式(11)で表される化合物等が挙げられる。
【0090】
【化11】

一般式(11)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R27、R28、R29及びR30は、互いに独立して、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0091】
一般式(11)において、R27、R28、R29及びR30としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0092】
また、一般式(11)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(11)中の−Y2−X2−Y3−、及びY4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さと硬化促進効果のバランスという観点では、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0093】
また、一般式(11)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0094】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0095】
本発明の半導体封止用樹脂組成物に用いる硬化促進剤(D)の配合割合の下限値は、全樹脂組成物中0.1質量%以上であることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤(D)の配合割合の上限値は、全樹脂組成物中1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
【0096】
本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)は、グリセリンと飽和脂肪酸より得られるトリエステルであり、離型剤として作用する。本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)としては、特に限定するものではないが、例えば、グリセリントリカプロン酸エステル、グリセリントリカプリル酸エステル、グリセリントリカプリン酸エステル、グリセリントリラウリン酸エステル、グリセリントリミリスチン酸エステル、グリセリントリパルミチン酸エステル、グリセリントリステアリン酸エステル、グリセリントリアラキン酸エステル、グリセリントリベヘン酸エステル、グリセリントリリグノセリン酸エステル、グリセリントリセロチン酸エステル、グリセリントリモンタン酸エステル、グリセリントリメリシン酸エステル等が挙げられる。中でも炭素数22以上、36以下の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルが好ましい。さらにグリセリントリモンタン酸エステルがより好ましい。これらのグリセリントリ脂肪酸エステルは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。尚、本発明中の飽和脂肪酸の炭素数とは飽和脂肪酸中のアルキル基とカルボキシル基の炭素数を合計したものを指す。
【0097】
本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)の滴点は、70℃以上、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上、110℃以下である。滴点は、ASTM D127に準拠した方法により測定することができる。具体的には、金属ニップルを用いて、溶融したワックスが金属ニップルから最初に滴下するときの温度として測定される。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。グリセリントリ脂肪酸エステル(E)の滴点が上記範囲内であると、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)は熱安定性に優れ、連続成形時にグリセリントリ脂肪酸エステル(E)が焼き付きにくい。そのため、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れるとともに、連続成形性にも優れる。さらに、上記範囲内であると、樹脂組成物を硬化させる際、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)が十分に溶融する。これにより、樹脂硬化物中にグリセリントリ脂肪酸エステル(E)が略均一に分散する。そのため、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)の樹脂硬化物表面への偏析が抑制され、金型汚れや樹脂硬化物外観の悪化を低減することができる。
【0098】
本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)の酸価は、10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である。酸価は樹脂硬化物との相溶性に影響を及ぼす。酸価は、JIS K 3504に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ワックス類1g中に含有する遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数として測定される。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。酸価が上記範囲内にあると、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)は、樹脂硬化物中において、エポキシ樹脂マトリックスと好ましい相溶状態となる。これにより、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)と、エポキシ樹脂マトリックスとが、相分離を起こすことがない。そのため、樹脂硬化物表面におけるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)の偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を低減することができる。さらに、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)が樹脂硬化物表面に存在するため、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れる。一方、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が高すぎると、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)が樹脂硬化物表面に染み出すことができず、十分な離型性を確保することができない場合がある。
【0099】
本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)の配合割合は、樹脂組成物中に、0.01重量%以上、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.03重量%以上0.5重量%以下である。上記範囲内であると、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れる。また、上記範囲内であると、樹脂硬化物とリードフレーム部材との密着性が損なわれることがなく、半田処理時における樹脂硬化物とリードフレーム部材との剥離を抑制することができる。また、上記範囲内であると、金型汚れや樹脂硬化物外観の悪化を抑制することもできる。
【0100】
本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)の製法については、特に限定するものではないが、例えば、原料化合物としてグリセリン、脂肪酸を用い、公知の方法に従ってエステル反応させる方法などにより得ることができる。また、本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)は、クラリアントジャパン(株)製、リコルブWE4等、市販のものを入手し、必要により回転円板型ミル(ピンミル)、スクリーンミル(ハンマーミル)、遠心分離型ミル(ターボミル)、ジェットミル等の粉砕機を用い、粉砕し粒度調整して使用することができる。
【0101】
本発明で用いられるグリセリントリ脂肪酸エステル(E)を用いることによる効果を損なわない範囲で他の離型剤を併用することもできる。併用できる離型剤としては、例えばカルナバワックス等の天然ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられる。
【0102】
本発明では、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)(以下、単に「化合物(F)」とも称する)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)は、これを用いることにより、フェノール樹脂とエポキシ樹脂との架橋反応を促進させる硬化促進剤(D)として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、樹脂組成物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(F)は、樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(F)としては、下記一般式(12)で表される単環式化合物、又は下記一般式(13)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0103】
【化12】

一般式(12)において、R31及びR35のいずれか一方が水酸基であり、一方が水酸基の場合、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基であり、R32、R33及びR34は、水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。
【0104】
【化13】

一般式(13)において、R36及びR42のいずれか一方が水酸基であり、一方が水酸基の場合、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基であり、R37、R38、R39、R40及びR41は、水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。
【0105】
一般式(12)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(13)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(F)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(F)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0106】
かかる化合物(F)の配合割合の下限値は、全樹脂組成物中に0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。化合物(F)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(F)の配合割合の上限値は、全樹脂組成物中に1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。化合物(F)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0107】
本発明の半導体封止用樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と無機充填剤との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等のカップリング剤(G)を添加することができる。その例としては特に限定されるものではないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応し、エポキシ樹脂と無機充填剤の界面強度を向上させるものであればよい。また、シランカップリング剤は、前述の化合物(F)と併用することで、樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(F)の効果を高めることもできるものである。
【0108】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトンまたはアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0109】
本発明の場合、耐半田性と連続成型性のバランスという観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、アミノシランが好ましく、シリコンチップ表面のポリイミドや基板表面のソルダーレジストなどの有機部材への密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0110】
本発明の半導体封止用樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤(G)の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤(G)の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(G)の配合割合の上限値としては、全樹脂組成物中1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤(G)の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(G)の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0111】
本発明の半導体封止用樹脂組成物においては、難燃性を向上させるために難燃剤を添加することができる。なかでも燃焼時に脱水、吸熱することによって燃焼反応を阻害する金属水酸化物、または複合金属水酸化物が燃焼時間の短縮することができる点で好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニアを挙げることができる。複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛から選ばれる金属元素であればよく、そのような複合金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が市販品で入手が容易である。なかでも、耐半田性と連続成型性のバランスの観点からは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が好ましい。上記の難燃剤は、単独で用いても、2種以上用いてもよい。また、連続成型性への影響を低減する目的から、シランカップリング剤などの珪素化合物やワックスなどの脂肪族系化合物などで表面処理を行って用いてもよい。
【0112】
本発明の半導体封止用樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤を適宜配合してもよい。
【0113】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び無機充填剤、ならびに上述のその他の添加剤等を、例えば、ミキサー等を用いて常温で均一に混合し、その後、必要に応じて、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融混練し、続いて必要に応じて冷却、粉砕することにより、所望の分散度や流動性等に調整することができる。
【0114】
次に、本発明の半導体装置について説明する。本発明の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体装置を製造する方法としては、例えば、半導体素子を搭載したリードフレーム又は回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、半導体封止用樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形、硬化させることにより、この半導体素子を封止する方法が挙げられる。
【0115】
封止される半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
得られる半導体装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
半導体封止用樹脂組成物のトランスファーモールドなどの成形方法により半導体素子が封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけてこの樹脂組成物を完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0118】
図1は、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間はワイヤ4によって接続されている。半導体素子1は、半導体封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0119】
図2は、本発明に係る樹脂組成物を用いた片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。基板8上にダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドと基板8上の電極パッドとの間はワイヤ4によって接続されている。封止用樹脂組成物の硬化体6によって、基板8の半導体素子1が搭載された片面側のみが封止されている。基板8上の電極パッドは基板8上の非封止面側の半田ボール9と内部で接合されている。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を、実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。以下に記載の各成分の配合量は、特に記載しない限り、質量部とする。
【0121】
(硬化剤)
硬化剤として、以下のフェノール樹脂1〜7を使用した。
フェノール樹脂1:セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、m−キシレン(関東化学(株)製特級試薬、m−キシレン、沸点139℃、分子量106、純度99.4%)100質量部、20質量%水酸化ナトリウム198質量部を秤量した後、窒素置換しながら加熱を開始した。系内の温度が50〜60℃の温度範囲を維持しながら30分間攪拌し、10℃に冷却した後、パラホルムアルデヒド(関東化学(株)製特級試薬、パラホルムアルデヒド、分子量106、純度90%、粒状に粉砕したもの)47.2質量部を一気に加え、攪拌しながら2時間反応させた後、38質量%塩酸水溶液100質量部を徐々に添加することにより系内を中和し、メチロール化物を含む中間体を得た。なお、反応開始から中和終了まで、系内の温度は10〜15℃の範囲となるよう温度制御操作を行った。この中間体にさらに、フェノール(関東化学(株)製特級試薬、フェノール、融点40.9℃、分子量94、純度99.3%)847質量部、α,α´−ジクロロ−p−キシレン(東京化成工業(株)製試薬、融点100℃、分子量175、純度98%)343質量部を加え、窒素置換及び攪拌を行いながら加熱し、系内温度を110〜120℃の範囲に維持しながら5時間反応させた。上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、150℃2mmHgの減圧条件で未反応成分と水分を留去した。ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記式(14)で表されるフェノール樹脂1(式(14)におけるpが0〜20の整数、qが0〜20の整数、rが0〜20の整数である重合体の混合物であって、p、q、rの平均値は、それぞれ1.7、0.3、0.6である。水酸基当量175、軟化点64℃、150℃におけるICI粘度0.47dPa・s。)を得た。得られたフェノール樹脂1のGPCチャートを図3に、FD−MSチャートを図7に示す。たとえば、図7のFD−MS分析のm/z=514は、式(14)の(p,q,r)=(1,1,0)、左末端が水素原子、右末端がヒドロキシフェニル基である成分に、m/z=526は、式(14)の(p,q,r)=(1,1,0)、左末端が水素原子、右末端がm−キシレンである成分にそれぞれ相当し、フェノール樹脂1は一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むものであることが確認できた。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、2核体量は6.8%、FD−MSの相対強度比による測定で、成分(A1)に該当する重合体の合計量、成分(A2)に該当する重合体の合計量、成分(A3)に該当する重合体の合計量は、相対強度比でそれぞれ、28%、66%、6%であった。また、フェノール樹脂1全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比は、85/15であった。
【0122】
フェノール樹脂2:セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、ホルムアルデヒド37%水溶液(和光純薬工業製ホルマリン37%)116.3質量部、98質量%硫酸37.7質量部、m−キシレン(関東化学製特級試薬、m−キシレン、沸点139℃、分子量106、純度99.4%)100質量部を秤量した後、窒素置換しながら加熱を開始した。系内の温度が90〜100℃の温度範囲を維持しながら6時間攪拌し、室温まで冷却した後、20質量%水酸化ナトリウム150重量部を徐々に添加することにより系内を中和した。この反応系、フェノール839質量部、α,α´−ジクロロ−p−キシレン338質量部を加え、窒素置換及び攪拌を行いながら加熱し、系内温度を110〜120℃の範囲に維持しながら5時間反応させた。上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、150℃2mmHgの減圧条件で未反応成分と水分を留去した。ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記式(14)で表されるフェノール樹脂2(式(14)におけるpが0〜20の整数、qが0〜20の整数、rが0〜20の整数である重合体の混合物であって、p、q、rの平均値は、それぞれ1.8、0.3、0.6である。水酸基当量180、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度0.60dPa・s。)を得た。得られたフェノール樹脂2のGPCチャートを図4に、FD−MSチャートを図8に示す。たとえば、図8のFD−MS分析のm/z=514は、式(14)の(p,q,r)=(1,1,0)、左末端が水素原子、右末端がヒドロキシフェニル基である成分に、m/z=526は、式(14)の(p,q,r)=(1,1,0)、左末端が水素原子、右末端がm−キシレンである成分に相当し、フェノール樹脂2は一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むものであることが確認できた。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、2核体量は6.6%、FD−MSの相対強度比による測定で、成分(A1)に該当する重合体の合計量、成分(A2)に該当する重合体の合計量、成分(A3)に該当する重合体の合計量は、相対強度比でそれぞれ、30%、64%、6%であった。また、フェノール樹脂1全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比は、85/15であった。
【0123】
【化14】

【0124】
フェノール樹脂3:フェノール(関東化学(株)製特級試薬、フェノール、融点40.9℃、分子量94、純度99.3%)100質量部、α,α´−ジクロロ−p−キシレン(東京化成工業(株)製試薬、融点100℃、分子量175、純度98%)65.2質量部、2,5−ビス−(クロロメチル)−p−キシレン(シグマ・アルドリッチ社製試薬、融点133℃、分子量203、純度98%)32.4質量部をセパラブルフラスコに秤量し、撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、窒素バブリングしながら加熱し、溶融の開始に併せて攪拌を開始し、系内の温度を110℃〜120℃の範囲に維持しながら5時間反応させた。反応開始から終了までの間、反応によって系内に発生する塩化水素ガスについては、窒素気流によって速やかに系外へ排出した。反応終了後の操作はフェノール樹脂1と同様の操作を行い、下記式(15)で表されるフェノール樹脂3(式(15)におけるsが0〜20の整数、tが0〜20の整数である重合体の混合物であって、s、tの平均値は、それぞれ1.6、0.6である。水酸基当量174、軟化点68℃、150℃におけるICI粘度0.65dPa・s。)を得た。GPCチャートを図5に、FD−MSチャートを図9に示す。たとえば、図9のFD−MS分析のm/z=514は、式(15)の(s,t)=(1,1)、左末端が水素原子、右末端がヒドロキシフェニル基である成分に相当し、フェノール樹脂3は一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むものであることが確認できた。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、2核体は検出されず、FD−MSの相対強度比による測定で、成分(A1)に該当する重合体の合計量、成分(A2)に該当する重合体の合計量、成分(A3)に該当する重合体の合計量は、相対強度比でそれぞれ、36.5%、48.5%、15.0%であった。また、フェノール樹脂2全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比は、72/28であった。
【0125】
【化15】

【0126】
フェノール樹脂4:フェノール樹脂1の合成において、m−キシレンに替わり、1,3,5−トリメチルベンゼン(東京化成工業(株)製鹿特級試薬、沸点165℃、分子量120、純度99%)100重量部、20質量%水酸化ナトリウムの配合量を175質量部パラホルムアルデヒドの配合量を66.7質量部、フェノールの配合量を1372質量部、α,α´−ジクロロ−p−キシレンの配合量を620質量部、に変更した以外は、フェノール樹脂1と同様の合成操作を行い、下記式(16)で表されるフェノール樹脂4(式(16)におけるuが0〜20の整数、vが0〜20の整数、wが0〜20の整数である重合体の混合物であって、u、v、wの平均値は、それぞれ1.9、0.1、0.9である。水酸基当量164、軟化点68℃、150℃におけるICI粘度0.65dPa・s。)を得た。得られたフェノール樹脂2のGPCチャートを図6に、FD−MSチャートを図10に示す。たとえば、図10のFD−MS分析のm/z=528は、式(14)の(u,v,w)=(1,1,0)、左末端が水素原子、右末端がヒドロキシフェニル基である成分に相当し、フェノール樹脂4は一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むものであることが確認できた。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフの面積法による測定で、2核体量は11%、FD−MSの相対強度比による測定で、成分(A1)に該当する重合体の合計量、成分(A2)に該当する重合体の合計量、成分(A3)に該当する重合体の合計量、(A1〜A3)に該当しない(u=v=0)成分の合計量は、相対強度比でそれぞれ、12%、86%、1%、1%であった。また、フェノール樹脂2全体における一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比は、94/6であった。
【0127】
【化16】

【0128】
フェノール樹脂5:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、XLC−4L。水酸基当量168、軟化点62℃、150℃におけるICI粘度0.76dPa・s。)
【0129】
フェノール樹脂6:フェノール(関東化学(株)製特級試薬、フェノール、融点40.9℃、分子量94、純度99.3%)100質量部、キシレンホルムアルデヒド樹脂(フドー(株)製、ニカノールLLL、平均分子量分子量340)67.7質量部、p−トルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業(株)製p−トルエンスルホン酸・分子量190、純度99%)0.03質量部とをセパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、溶融の開始に併せて攪拌を開始する。系内が110℃に達したのを確認してから1時間反応させた後に、ホルムアルデヒド37%水溶液(和光純薬工業(株)製ホルマリン37%)48.8質量部と蓚酸0.5質量部を30分かけて添加した。ついで系内の温度を100℃〜110℃の範囲を維持しながら120分間反応させた。反応終了までの間、反応によって系内に発生、又は、ホルマリン添加に伴い系内に混入した水分については、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、160℃2mmHgの減圧条件で未反応成分を留去し、ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記式(17)で表されるフェノール樹脂6(水酸基当量167、軟化点86℃、150℃におけるICI粘度2.1dPa・s)を得た。
【0130】
【化17】

(xは1〜10の整数、yは0〜10の整数)
フェノール樹脂7:下記式(18)で表されるフェノール樹脂(フドー(株)製、ザイスターGP−90。水酸基当量197、軟化点86℃、150℃におけるICI粘度3.1dPa・s。)
【0131】
【化18】

【0132】
フェノール樹脂1〜7の軟化点及びICI粘度を、以下の表1にまとめて示した。さらに、これらのフェノール樹脂のブロッキングについて評価した。結果を表1に記載する。
【0133】
なお、フェノール樹脂のブロッキング評価は、以下のようにして行った。内径29mm、高さ10cmのポリプロピレン製の円筒容器内に、予め5℃に冷却した顆粒状のフェノール樹脂を20g入れ、円筒容器内に外形29mm、質量200gのピストンを挿入し、所定温度に設定した恒温槽内で所定時間垂直に立てた状態でフェノール樹脂に荷重を与え、その後に円筒容器を逆さまにしてフェノール樹脂を取り出したとき、もとの顆粒状で容器から容易に取り出すことができたものを◎、ピストンの内部形状を保つが手で容易にほぐれる場合は○、ピストンの内部形状のまま手でほぐれない場合は×、樹脂が溶融して取り出すことができない場合を××とした。
【0134】
【表1】

【0135】
一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)に相当するフェノール樹脂1〜4は、一般式(1)で表される構造単位のみを含むフェノール樹脂5(三井化学(株)製XLC−4L)や一般式(2)で表される構造単位のみを含むフェノール樹脂6、7と比較して低粘度で、かつブロッキング性にも優れる結果であった。
【0136】
(エポキシ樹脂)
以下のエポキシ樹脂1〜4を使用した。
【0137】
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000P。エポキシ当量275、軟化点60℃、150℃におけるICI粘度1.1dPa・s。)
【0138】
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)、YX−4000HK。エポキシ当量191、軟化点105℃、150℃におけるICI粘度0.03dPa・s。)
【0139】
エポキシ樹脂3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YSLV−80XY。エポキシ当量190、軟化点80℃、150℃におけるICI粘度0.03dPa・s。)
【0140】
エポキシ樹脂4:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(三井化学(株)製、E−XLC−3L。エポキシ当量238、軟化点52℃、150℃におけるICI粘度1.2dPa・s。)
【0141】
(無機充填剤)
無機充填剤としては、電気化学工業(株)製溶融球状シリカFB560(平均粒径30μm)80質量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C2(平均粒径0.5μm)10質量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C5(平均粒径1.5μm)10質量部のブレンドを使用した。
【0142】
(硬化促進剤(D))
以下の硬化促進剤1〜5を使用した。
【0143】
硬化促進剤1:下記式(20)で表される硬化促進剤
【0144】
【化20】

【0145】
硬化促進剤2:下記式(21)で表される硬化促進剤
【0146】
【化21】

【0147】
硬化促進剤3:下記式(22)で表される硬化促進剤
【0148】
【化22】

【0149】
硬化促進剤4:下記式(23)で表される硬化促進剤
【0150】
【化23】

【0151】
硬化促進剤5:トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製、TPP)
【0152】
離型剤は、以下の離型剤1〜5を使用した。
離型剤1:グリセリントリモンタン酸エステル(クラリアントジャパン(株)製、リコルブ(登録商標)WE4、滴点82℃、酸価25mgKOH/g。)
離型剤2:前述の方法により作成したグリセリントリメリシン酸エステル(滴点95℃、酸価30mgKOH/g。)
離型剤3:前述の方法により作成したグリセリントリベヘン酸エステル(滴点80℃、酸価15mgKOH/g。)
離型剤4:グリセリンモノステアリン酸エステル(理研ビタミン(株)製、リケマール(登録商標)S−100、滴点65℃、酸価2mgKOH/g。)
離型剤5:カルナバワックス(日興ファイン(株)製、ニッコウカルナバ、融点83℃、酸価7mgKOH/g。)
【0153】
(化合物F)
化合物Fとして、下記式(24)で表される化合物(東京化成工業(株)製、2,3−ナフタレンジオール、純度98%)を使用した。
【0154】
【化24】

【0155】
(シランカップリング剤)
以下のシランカップリング剤1〜3を使用した。
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−803)。
シランカップリング剤2:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−573。)
【0156】
(着色剤)
着色剤として、三菱化学工業(株)製のカーボンブラック(MA600)を使用した。
【0157】
(実施例1)
以下の成分をミキサーを用いて、常温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、その後冷却し、次いで粉砕して、半導体封止用樹脂組成物を得た。
フェノール樹脂1 4.58質量部
エポキシ樹脂1 7.92質量部
無機充填剤1 86.5質量部
硬化促進剤1 0.4質量部
離型剤1 0.2質量部
シランカップリング剤1 0.1質量部
シランカップリング剤2 0.1質量部
着色剤 0.2質量部
得られた半導体封止用樹脂組成物を、以下の項目について評価した。評価結果を表2に示す。
【0158】
(評価項目)
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0159】
耐燃性:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入時間15秒、硬化時間120秒、注入圧力9.8MPaの条件で、エポキシ樹脂組成物を注入成形して、3.2mm厚の耐燃試験片を作製した。得られた試験片について、UL94垂直法の規格に則り耐燃試験を行った。表には、耐燃ランクを示した。
【0160】
連続成形性:低圧トランスファー自動成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間70秒の条件で、エポキシ樹脂組成物によりシリコンチップ等を封止成形して、80ピンQFP(プリプレーティングフレーム:ニッケル/パラジウム合金に金メッキしたもの、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×350μm厚)を得る成形を、連続で500ショットまで行った。判定基準は未充填、離型不良等の問題が全く発生せずに500ショットまで連続成形できたものを◎、300ショットまで連続成形できたものを○、それ以外を×とした。
【0161】
パッケージ外観及び金型汚れ性:上記連続成形性の評価において、300ショット経過後及び500ショット経過後のパッケージ及び金型について、目視で汚れを評価した。パッケージ外観及び金型汚れ性の判定基準は、300ショットまでに汚れが発生したものを×、300ショットまで汚れていないものを○、500ショットまで汚れていないものを◎で表す。また、上記連続成形性において、500ショットまで問題なく成形できなかったものについては、連続成形を断念した時点でのパッケージ外観及び金型汚れ状況で判断した。
【0162】
耐半田性:上記連続成形性の評価において成形したパッケージを175℃、8時間で後硬化し、得られたパッケージを85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ20個について、半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の密着状態を超音波探傷装置により観察し、剥離発生率[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を算出した。単位は%。耐半田性の判断基準は、剥離が発生しなかったものは○、剥離発生率が20%未満のものは△、剥離発生率が20%以上のものは×とした。
【0163】
実施例2〜15、比較例1〜6
表2の配合に従い、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示した。
【0164】
【表2】

【0165】
実施例1〜15は、式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)と、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)とを含む組成物であり、フェノール樹脂(A)の構造単位の配合割合を変更したもの、エポキシ樹脂(B)の種類を変更したもの、硬化促進剤(D)の種類を変更したもの、或いは、グリセリントリ脂肪酸エステル(E)の種類を変更したものを含むものであるが、いずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、耐燃性、連続成形性、パッケージ外観、金型汚れ性、耐半田性のバランスに優れた結果が得られた。
【0166】
一方、比較例1〜6においては、流動性(スパイラルフロー)、耐燃性、連続成形性、パッケージ外観、金型汚れ性、耐半田性のいずれかの項目が十分でなく、バランスが劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明に従うと、良好な耐燃性および耐半田性を有するとともに、流動性と硬化性に優れ、さらに連続成形性に優れる半導体封止用樹脂組成物を得ることができるため、半導体装置、とりわけ、1パッケージ内にチップを積層する構造、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置の封止用として好適である。
【符号の説明】
【0168】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 ワイヤ
5 リードフレーム
6 封止用樹脂組成物の硬化体
7 ソルダーレジスト
8 基板
9 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の成分からなるフェノール樹脂であって、下記一般式(1):
【化1】

(上記一般式(1)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。)
で表される構造単位及び下記一般式(2):
【化2】

(上記一般式(2)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは0〜3の整数である。R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、bは1〜4の整数である。R7、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。)
で表される構造単位とを含む重合体からなる成分(A1)を含むフェノール樹脂(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
無機充填剤(C)と、
硬化促進剤(D)と、
グリセリントリ脂肪酸エステル(E)と、
を含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
電界脱離質量分析による測定で、前記成分(A1)に該当する重合体の相対強度の合計が、前記フェノール樹脂(A)の合計相対強度に対して10%以上、80%以下含まれることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール樹脂(A)が、前記一般式(1)で表される構造単位を含み、かつ前記一般式(2)で表される構造単位を含まない重合体からなる成分(A2)をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂(A)が、前記一般式(2)で表される構造単位を含み、前記一般式(1)で表される構造単位を含まない重合体からなる成分(A3)をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記フェノール樹脂(A)全体における前記一般式(1)で表される構造単位の合計の数と、前記一般式(2)で表される構造単位の合計の数との比が30/70〜95/5であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(2)で表される構造単位におけるR6がメチル基であり、bが1〜3であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記フェノール樹脂(A)が全硬化剤中に20質量%以上、100質量%以下含まれることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(B)が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、アントラセンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機充填剤(C)の含有量が80質量%以上、93質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項11】
前記半導体封止用樹脂組成物が、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項12】
前記半導体封止用樹脂組成物が、カップリング剤(G)をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項13】
前記カップリング剤(G)が2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項12に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物で半導体素子を封止して得られることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−178923(P2011−178923A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45577(P2010−45577)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】