説明

半導体発光素子

【課題】高効率の半導体発光素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、n形半導体層と、p形半導体層と、発光部と、を備えた半導体発光素子が提供される。発光部は、n形半導体層とp形半導体層との間に設けられ、第1発光層を含む。第1発光層は、第1障壁層と、n形半導体層と第1障壁層との間に設けられた第1井戸層と、第1井戸層と第1障壁層との間に設けられた第1n側中間層と、第1n側中間層と第1障壁層との間に設けられた第1p側中間層と、を含む。第1n側中間層のIn組成比は、n形半導体層からp形半導体層に向かう第1方向に沿って低下する。第1p側中間層のIn組成比は、第1方向に沿って低下する。第1p側中間層のIn組成比の第1方向に沿った平均の変化率は、第1n側中間層のIn組成比の第1方向に沿った平均の変化率よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を用いた半導体発光素子である発光ダイオード(LED)は、例えば、表示装置や照明などに用いられている。また、レーザダイオード(LD)は、例えば、高密度記憶ディスクへの読み書きのための光源などに用いられている。
このような半導体発光素子において、高効率化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、高効率の半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、n形半導体層と、p形半導体層と、発光部と、を備えた半導体発光素子が提供される。前記発光部は、前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられる。前記発光部は、第1発光層を含む。前記第1発光層は、窒化物半導体を含む第1障壁層と、前記n形半導体層と前記第1障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第1井戸層と、前記第1井戸層と前記第1障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第1n側中間層と、前記第1n側中間層と前記第1障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第1p側中間層と、を含む。前記第1n側中間層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう第1方向に沿って低下する。前記第1p側中間層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1方向に沿って低下する。前記第1p側中間層の前記In組成比の前記第1方向に沿った平均の変化率は、前記第1n側中間層の前記In組成比の前記第1方向に沿った平均の変化率よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式図である。
【図2】実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図4】実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図5】実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、参考例の半導体発光素子の一部を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、半導体発光素子の特性のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図8】半導体発光素子の特性のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、半導体発光素子の特性のシミュレーション結果を示す模式図である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(実施の形態)
図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式図である。
図2は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図3は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。 図4は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。 図5は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。 まず、図2を参照しつつ、実施形態に係る半導体発光素子の構成の概要について説明する。
【0009】
図2に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110は、n形半導体層20と、p形半導体層50と、発光部40と、を備える。発光部40は、n形半導体層20とp形半導体層50との間に設けられる。後述するように、発光部40は、発光層(例えば第1発光層)を含む。
【0010】
例えば、n形半導体層20は、n側コンタクト層22を含むことができる。n側コンタクト層22は、例えば、下地層21と発光部40との間に設けられる。下地層21には、例えばGaN層が用いられる。n側コンタクト層22には、n形の不純物を含むGaN層が用いられる。n形不純物として、例えばSi(シリコン)が用いられる。
【0011】
本具体例では、n形半導体層20は、多層積層体23をさらに含む。多層積層体23は、n側コンタクト層22と発光部40との間に設けられる。多層積層体23は必要に応じて設けられ、場合によっては省略できる。多層積層体23については後述する。
【0012】
p形半導体層50は、例えば、第1p形層51、第2p形層52及び第3p形層53を含むことができる。第2p形層52は、第1p形層51と発光部40との間に設けられる。第3p形層53は、第2p形層52と発光部40との間に設けられる。第3p形層53には、例えば、p形AlGaN層が用いられる。第3p形層53は、例えば、電子オーバーフロー抑制層(電子オーバーフロー防止層)として機能することができる。第2p形層52には、Mgをドープしたp形GaN層が用いられる。第1p形層51には、高濃度でMgをドープしたp形GaN層を用いることができる。第1p形層51は、コンタクト層として機能する。p形不純物として、例えばMg(マグネシウム)が用いられる。
【0013】
半導体発光素子110においては、n形半導体層20、発光部40及びp形半導体層50を含む積層構造体10sが設けられている。この例では、積層構造体10sの第1主面10aの側の一部が選択的に除去されている。これにより、第1主面10aの側にn形半導体層20の一部が露出している。この露出している部分にn側電極70が設けられている。n側電極70は、n形半導体層20に接する。実施形態はこれに限らず、n側電極70は、n形半導体層20の第2主面10bの側に設けられても良い。n側電極70としては、例えば、チタン−白金−金(Ti/Pt/Au)の複合膜が用いられる。
【0014】
p側電極80は、p形半導体層50に接する。p側電極80には、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)などが用いられる。また、p側電極80には、ニッケル−金(Ni/Au)などの複合膜を用いることができる。
【0015】
半導体発光素子110は、さらに、基板10と、バッファ層11と、を備えている。基板10及びバッファ層11は、必要に応じて設けられ、省略しても良い。
【0016】
基板10には、例えばサファイアが用いられる。例えば、基板10には、サファイア(0001)基板が用いられる。さらに、基板10には、SiC基板、Si基板またはGaN基板を用いても良い。また、サファイア基板において、(0001)以外の面の基板を用いても良い。基板10の上にバッファ層11が形成される。バッファ層11には、例えばGaN層が用いられる。バッファ層11の上に、n形半導体層20、発光部40及びp形半導体層50が順次形成される。バッファ層11の上に上記の半導体層を形成した後に、基板10を除去しても良い。
【0017】
ここで、n形半導体層20からp形半導体層50に向かう方向を+Z方向とする。
【0018】
図3は、多層積層体23の構成の例を示している。
図3に表したように、多層積層体23は、+Z方向に沿って交互に積層された複数の厚膜層SAと複数の薄膜層SBとを含む。薄膜層SBは、厚膜層SAの厚さと同じ、または厚膜層SAよりも薄い厚さを有する。薄膜層SBは、厚膜層SAの組成とは異なる組成を有する。
【0019】
例えば、複数の薄膜層SBは、第1薄膜層SB1〜第m薄膜層SBmを含む。ここで、「m」は2以上の整数である。複数の厚膜層SAは、第1厚膜層SA1〜第m厚膜層SAmを含む。複数の厚膜層SAは、第(m+1)厚膜層SA(m+1)をさらに含んでも良い。
【0020】
本具体例では、薄膜層SBの数である「m」は20である。そして、厚膜層SAの数はm+1であり、21である。ただし、実施形態はこれに限らず、「m」は2以上の任意の整数である。
多層積層体23は、例えば超格子構造を有することができる。
【0021】
厚膜層SAの厚さは、例えば、3ナノメートル(nm)以下に設定される。さらに具体的には、厚膜層SAの厚さは、例えば、1nm以上3nm以下である。薄膜層SBの厚さは、例えば、1.5nm未満であり、かつ、厚膜層SAの厚さ以下である。これにより、多層積層体23は、超格子構造を有することができる。
【0022】
多層積層体23は、窒化物半導体を含むことができる。
具体的には、例えば、厚膜層SAはGaNを含む。薄膜層SBは、InGaNを含む。 厚膜層SAには、例えば実質的にInを含まないGaN層が用いられる。薄膜層SBには、例えばIn0.08Ga0.92N層が用いられる。薄膜層SBにおけるIn濃度は、これに限らず、良好な結晶品質が得られる範囲で任意である。
例えば、薄膜層SBのバンドギャップエネルギーは、複数の厚膜層SAのバンドギャップエネルギーよりも小さい。ここで、本願明細書において、各層のバンドギャップエネルギーとは、ひずみや量子効果の影響を受けていない、それぞれの層が持つ組成で決定されるバルク状態におけるバンドギャップエネルギーのことを言う。
【0023】
図4は、発光部40の構成の例を示している。
図4に表したように、半導体発光素子110においては、発光部40は、1つの発光層EL(第1発光層EL1)を含む。第1発光層EL1は、窒化物半導体を含む第1障壁層BL1と、n形半導体層20と第1障壁層BL1との間に設けられ窒化物半導体を含む第1井戸層WL1と、第1井戸層WL1と第1障壁層BL1との間に設けられ窒化物半導体を含む第1n側中間層MN1と、第1n側中間層MN1と第1障壁層BL1との間に設けられ窒化物半導体を含む第1p側中間層MP1と、を含む。
【0024】
なお、第1井戸層WL1とn形半導体層20との間に、n側障壁層BLNが設けられている。n側障壁層BLNは、発光層EL(第1発光層EL1)に含まれることができる。すなわち、第1発光層EL1は、n形半導体層20と第1井戸層WL1との間に設けられ、第1井戸層WL1に接するn側障壁層BLNをさらに含むことができる。
【0025】
この例では、井戸層WLが1つである。このように、発光部40は、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造を有することができる。
【0026】
図5は、実施形態に係る別の半導体発光素子111における発光部40の構成の例を示している。
半導体発光素子111における発光部40以外の構成は、図2に例示した半導体発光素子110の構成と同様なので説明を省略する。
図5に表したように、発光部40は、複数の発光層ELを含む。複数の発光層ELは、例えば、第1発光層EL1、第2発光層EL2、第3発光層EL3及び第4発光層EL4などを含む。すなわち、複数の発光層ELは、第1発光層EL1〜第n発光層ELnを含む。ここで、「n」は2以上の整数である。
【0027】
第i発光層ELiと第(i+1)発光層EL(i+1)とのZ軸方向に沿った関係は任意である。ここで、「i」は1以上の整数である。第(i+1)発光層EL(i+1)は、第i発光層ELiとn形半導体層20との間に設けられても良く、第i発光層ELiとp形半導体層50との間に設けられても良い。また、第i発光層ELiと第(i+1)発光層EL(i+1)との間に第j発光層ELjが設けられても良い。ここで、「j」は、iとは異なり、(i+1)とも異なる1以上の整数である。
【0028】
この例では、発光層ELは4つである。ただし、実施形態はこれに限らない。発光層ELの数は2以上であり、任意である。
【0029】
複数の発光層ELのそれぞれは、障壁層BLと、井戸層WLと、n側中間層MNと、p側中間層MPと、を含む。障壁層BL、井戸層WL、n側中間層MN及びp側中間層MPは、窒化物半導体を含む。
【0030】
第i発光層ELiにおいて、第i井戸層WLiは、n形半導体層20と第i障壁層BLiとの間に設けられる。
【0031】
第i井戸層WLiのバンドギャップエネルギーは、第i障壁層BLiのバンドギャップエネルギーよりも小さい。例えば、第1井戸層WL1のバンドギャップエネルギーは、第1障壁層BL1のバンドギャップエネルギーよりも小さい。第i井戸層WLiのバンドギャップエネルギーは、n側障壁層BLNのバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0032】
第in側中間層MNiは、第i井戸層WLiと第i障壁層BLiとの間に設けられる。第ip側中間層MPiは、第in側中間層MNiと第i障壁層BLiとの間に設けられる。
【0033】
ただし、複数の発光層ELの少なくとも2つが上記の構成を有していれば良い。例えば2つを除く発光層ELにおいては、n側中間層MNまたはp側中間層MPが設けられなくても良い。
【0034】
すなわち、第1発光層EL1は、窒化物半導体を含む第1障壁層BL1と、n形半導体層20と第1障壁層BL1との間に設けられ窒化物半導体を含む第1井戸層WL1と、第1井戸層WL1と第1障壁層BL1との間に設けられ窒化物半導体を含む第1n側中間層MN1と、第1n側中間層MN1と第1障壁層BL1との間に設けられ窒化物半導体を含む第1p側中間層MP1と、を含む。
【0035】
さらに、発光部40は、+Z方向に沿って第1発光層ELと積層された第2発光層EL2をさらに含む。
ここで、本願明細書において、「積層」とは、互いに接触して重ねられる場合の他に、間の他の要素が挟まれた状態で重ねられる場合も含む。
【0036】
第2発光層EL2は、窒化物半導体を含む第2障壁層BL2と、n形半導体層20と第2障壁層BL2との間に設けられ窒化物半導体を含む第2井戸層WL2と、第2井戸層WL2と第2障壁層BL2との間に設けられ窒化物半導体を含む第2n側中間層MN2と、第2n側中間層MN2と第2障壁層BL2との間に設けられ窒化物半導体を含む第2p側中間層MP2と、を含む。
【0037】
図5に示した例では、第1発光層EL1は、4つの発光層ELの中で最もn形半導体層20に近い。そして、第2発光層EL2は、4つの発光層ELの中で2番目にn形半導体層20に近い。ただし、実施形態は、これに限らない。複数の発光層ELのうちで、第1発光層EL1の位置は任意である。また、複数の発光層ELのうちで、第2発光層ELの位置は任意である。
【0038】
以下では、2つ以上の発光層ELが設けられる場合において、第2発光層EL2が第1発光層EL1とp形半導体層50との間に設けられる場合として説明する。
【0039】
なお、複数の発光層ELのうちで、n形半導体層20に最も近い井戸層WLとn形半導体層20との間に、n側障壁層BLNが設けられている。n側障壁層BLNは、発光層ELに含まれることができる。
以上のように、半導体発光素子111の発光部40は、多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0040】
以下、発光部40の構成の例について説明する。
図1(a)は、半導体発光素子110の発光部40の構成を例示している。図1(b)は、半導体発光素子111の発光部40における2つの発光層ELに関して例示している。
【0041】
これらの図は、半導体層のそれぞれのIII族元素中におけるIn組成比を例示している。横軸は、+Z方向の位置である。縦軸は、In組成比CInである。In組成比CInは、III族元素中におけるInの組成比である。
【0042】
図1(a)に表したように、半導体発光素子110において、井戸層WL(第1井戸層WL1)は、Inx11Ga1−x11N(0.18≦x11<1)を含む。ここで、x11は、第1井戸層WL1のIII族元素中におけるIn組成比である。
n側中間層MN(第1n側中間層MN1)は、Inx21Ga1−x21N(0<x21≦x11)を含む。ここで、x21は、第1n側中間層MN1のIII族元素中におけるIn組成比である。
p側中間層MP(第1p側中間層MP1)は、Inx31Ga1−x31N(0<x31≦x21)を含む。ここで、x31は、第1p側中間層MP1のIII族元素中におけるIn組成比である。
障壁層BL(第1障壁層BL1)は、Inx41Ga1−x41N(0≦x41≦x31)を含む。ここで、x41は、第1障壁層BL1のIII族元素中におけるIn組成比である。例えば、第1障壁層BL1は、GaN層である。
【0043】
そして、第1n側中間層MN1のIII族元素中におけるIn組成比CIn(x21)は、+Z方向に沿って低下する。そして、第1p側中間層MP1のIII族元素中におけるIn組成比CIn(x31)は、+Z方向に沿って低下する。
【0044】
第1p側中間層MP1のIn組成比CIn(x31)の+Z方向に沿った平均の変化率は、第1n側中間層MN1のIn組成比CIn(x21)の+Z方向に沿った平均の変化率よりも低い。
【0045】
例えば、第1n側中間層MN1の第1井戸層WL1に接する部分のIn組成比CInは、x21aである。第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比CInは、x21bである。第1n側中間層MN1のIn組成比CInは、+Z方向に沿って、x21aからx21bに低下する。
【0046】
第1n側中間層MN1のIn組成比CIn(x21)の+Z方向に沿った平均の変化率は、例えば、x21aとx21bとの差を、第1n側中間層MN1の+Z方向に沿った厚さ(第1n側中間層厚tn1)で割ったものである。すなわち、第1n側中間層MN1におけるIn組成比CIn(x21)の平均の変化率は、(x21a−x21b)/tn1である。
【0047】
同様に、第1p側中間層MP1の第1n側中間層MN1に接する部分のIn組成比CInは、x31aである。第1p側中間層MP1の第1障壁層BL1に接する部分のIn組成比CInは、x31bである。第1p側中間層MP1のIn組成比CInは、+Z方向に沿って、x31aからx31bに低下する。
【0048】
第1p側中間層MP1のIn組成比CIn(x31)の+Z方向に沿った平均の変化率は、例えば、x31aとx31bとの差を、第1p側中間層MP1の+Z方向に沿った厚さ(第1p側中間層厚tp1)で割ったものである。すなわち、第1p側中間層MP1におけるIn組成比CIn(x31)の平均の変化率は、(x31a−x31b)/tp1である。
(x31a−x31b)/tp1は、(x21a−x21b)/tn1よりも低い。
【0049】
このように、本実施形態においては、2つの中間層が設けられ、n側中間層MNにおけるIn組成比の平均の変化率が、p側中間層MPにおけるIn組成比CInの平均の変化率よりも高い。すなわち、n側中間層MNにおいて、In組成比CInは、急激に低下する。そして、p側中間層MPにおいては、In組成比CInは緩やかに低下する。
【0050】
なお、本具体例では、第1n側中間層MN1の第1井戸層WL1に接する部分のIn組成比x21aは、第1井戸層WL1に含まれるIII族元素中におけるIn組成比x11と同じである。そして、第1p側中間層MP1の第1n側中間層MN1に接する部分のIn組成比x31aは、第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比x21bと同じである。このように、本具体例では、In組成比CInは連続的に変化している。
【0051】
なお、n側障壁層BLNは、Inx4NGa1−x4NN(0≦x4N≦x31)を含む。ここで、x4Nは、n側障壁層BLNのIII族元素中におけるIn組成比である。例えば、n側障壁層BLNは、GaN層である。
【0052】
これにより、高効率の半導体発光素子が提供される。半導体発光素子の特性については後述する。
【0053】
このような構成が、複数の発光層ELにおいても適用される。
すなわち、図1(b)に表したように、半導体発光素子111の第1発光層EL1の構成は、半導体発光素子110と同様である。なお、図1(b)における縦横の比率は、図1(a)から変更されている。
【0054】
半導体発光素子111の第2発光層EL2において、第2井戸層WL2は、Inx12Ga1−x12N(0.18≦x12<1)を含む。ここで、x12は、第2井戸層WL2のIII族元素中におけるIn組成比である。
第2n側中間層MN2は、Inx22Ga1−x22N(0<x22≦x12)を含む。ここで、x22は、第2n側中間層MN2のIII族元素中におけるIn組成比である。
第2p側中間層MP2は、Inx32Ga1−x32N(0<x32≦x22)を含む。ここで、x32は、第2p側中間層MP2のIII族元素中におけるIn組成比である。
第2障壁層BL2は、Inx42Ga1−x42N(0≦x42≦x32)を含む。ここで、x42は、第2障壁層BL2のIII族元素中におけるIn組成比である。例えば、第2障壁層BL2は、GaN層である。
【0055】
そして、第2n側中間層MN2のIII族元素中におけるIn組成比CIn(x22)は、+Z方向に沿って低下する。第2p側中間層MP2のIII族元素中におけるIn組成比CIn(x32)は、+Z方向に沿って低下する。
【0056】
第2p側中間層MP2のIn組成比CIn(x32)の+Z方向に沿った平均の変化率は、第2n側中間層MN2のIn組成比CIn(x22)の+Z方向に沿った平均の変化率よりも低い。
【0057】
例えば、第2n側中間層MN2の第2井戸層WL2に接する部分のIn組成比CInは、x22aである。第2n側中間層MN2の第2p側中間層MP2に接する部分のIn組成比CInは、x22bである。第2n側中間層MN2のIn組成比CInは、+Z方向に沿って、x22aからx22bに低下する。
【0058】
第2n側中間層MN2のIn組成比CIn(x22)の+Z方向に沿った平均の変化率は、例えばx22aとx22bとの差を、第2n側中間層MN2の+Z方向に沿った厚さ(第2n側中間層厚tn2)で割ったものである。すなわち、第2n側中間層MN2におけるIn組成比CIn(x22)の平均の変化率は、(x22a−x22b)/tn2である。
【0059】
同様に、第2p側中間層MP2の第2n側中間層MN2に接する部分のIn組成比CInは、x32aである。第2p側中間層MP2の第2障壁層BL2に接する部分のIn組成比CInは、x32bである。第2p側中間層MP2のIn組成比CInは、+Z方向に沿って、x32aからx32bに低下する。
【0060】
第2p側中間層MP2のIn組成比CIn(x32)の+Z方向に沿った平均の変化率は、例えばx32aとx32bとの差を、第2p側中間層MP2の+Z方向に沿った厚さ(第2p側中間層厚tp2)で割ったものである。すなわち、第2p側中間層MP2におけるIn組成比CIn(x32)の平均の変化率は、(x32a−x32b)/tp2である。
(x32a−x32b)/tp2は、(x22a−x22b)/tn2よりも低い。
【0061】
なお、第1井戸層WL1の厚さは、第1井戸層厚tw1である。第2井戸層WL2の厚さは、第2井戸層厚tw2である。第1障壁層BL1の厚さは、第1障壁層厚tb1である。第2障壁層BL2の厚さは、第2障壁層厚tb2である。
【0062】
例えば、第i井戸層WLiは、Inx1iGa1−x1iN(0.18≦x1i<1)を含む。ここで、x1iは、第i井戸層WLのIII族元素中におけるIn組成比である。
第in側中間層MNiは、Inx2iGa1−x2iN(0<x2i≦x1i)を含む。ここで、x2iは、第in側中間層MNiのIII族元素中におけるIn組成比である。
第ip側中間層MPi)は、Inx3iGa1−x3iN(0<x3i≦x2i)を含む。ここで、x3iは、第ip側中間層MPiのIII族元素中におけるIn組成比である。
第i障壁層BLiは、Inx4iGa1−x4iN(0≦x4i≦x3i)を含む。ここで、x4iは、第i障壁層BLiのIII族元素中におけるIn組成比である。
【0063】
そして、第in側中間層MNiのIII族元素中におけるIn組成比CIn(x2i)は、+Z方向に沿って低下する。そして、第ip側中間層MPiのIII族元素中におけるIn組成比CIn(x3i)は、+Z方向に沿って低下する。
【0064】
第ip側中間層MPiのIn組成比CIn(x3i)の+Z方向に沿った平均の変化率は、第in側中間層MNiのIn組成比CIn(x2i)の+Z方向に沿った平均の変化率よりも低い。
【0065】
例えば、第in側中間層MNiの第i井戸層WLiに接する部分のIn組成比CInは、x2iaである。第in側中間層MNiの第ip側中間層MPiに接する部分のIn組成比CInは、x2ibである。第in側中間層MNiのIn組成比CInは、+Z方向に沿って、x2iaからx2ibに低下する。そして、第in側中間層MNiの+Z方向に沿った厚さを第in側中間層厚tniとする。
【0066】
第ip側中間層MPiの第in側中間層MNiに接する部分のIn組成比CInは、x3iaである。第ip側中間層MPiの第i障壁層BLiに接する部分のIn組成比CInは、x3ibである。第ip側中間層MPiのIn組成比CInは、+Z方向に沿って、x3iaからx3ibに低下する。第ip側中間層MPiの+Z方向に沿った厚さを第ip側中間層厚tpiとする。
このとき、(x3ia−x3ib)/tpiは、(x2ia−x2ib)/tniよりも低い。
これにより、高効率の半導体発光素子が提供される。
【0067】
以下、本実施形態に係る半導体発光素子110及び111について、参考例の半導体発光素子と比較しつつ説明する。
【0068】
図6(a)及び図6(b)は、参考例の半導体発光素子の一部の構成を例示する模式図である。
図6(a)に表したように、第1参考例の半導体発光素子118においては、n側中間層及びp側中間層が設けられていない。この図では、1つの井戸層WL(第1井戸層WL1)のみを例示しているが、半導体発光素子118において、MQW構造が適用された場合も、n側中間層及びp側中間層が設けられていない。
【0069】
図6(b)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119においては、n側中間層及びp側中間層が設けられていない。そして、井戸層WL(この例では第1井戸層WL1)におけるIn組成比CInが変化している。すなわち、第1井戸層WL1のn側の障壁層BL(n側障壁層BLN)に接する部分のIn組成比CInは、x11aである。第1井戸層WL1のp側の障壁層BL(第1障壁層BL1)に接する部分のIn組成比CInは、x11bである。第2参考例において、x11bがx11aよりも低い場合と、x11bがx11aよりも高い場合とがある。この図では、1つの井戸層WLのみを例示しているが、半導体発光素子119において、MQW構造が適用された場合も、n側中間層及びp側中間層が設けられず、井戸層WLにおけるIn組成比CInが変化している。
【0070】
ここで、第1参考例の半導体発光素子118は、8つの井戸層WLを有するとする。そして、半導体発光素子118において、井戸層WLの厚さを変えて、発光波長が異なる4種類の半導体発光素子の発光強度をシミュレーションした。
【0071】
このシミュレーションにおいては、以下の条件を用いた。障壁層BL(n側障壁層BLN、第1障壁層BL1〜第8障壁層BL8)は、Inを含まないGaN層であるとした。井戸層WL及び障壁層BLの合計の厚さは、14.5nmとした。井戸層WL(第1井戸層WL1〜第8井戸層WL8)は、In0.24Ga0.76N層とした。すなわち、In組成比CInは、0.24で一定である。井戸層WLの厚さは、2.0nm、2.25nm、2.5nm及び3nmとした。これらの、井戸層WLの厚さが異なる半導体発光素子を、それぞれ半導体発光素子118a〜118dとする。
【0072】
同様に、第2参考例の半導体発光素子119は、8つの井戸層WLを有するとする。そして、半導体発光素子119において、In組成比を変えて、発光波長が異なる3種類の半導体発光素子の発光強度をシミュレーションした。
【0073】
このシミュレーションにおいては、以下の条件を用いた。障壁層BL(n側障壁層BLN、第1障壁層BL1〜第8障壁層BL8)は、Inを含まないGaN層であるとした。障壁層BLの厚さは、12.5nmとした。井戸層WL(第1井戸層WL1〜第8井戸層WL8)のn形半導体層20の側のIn組成比x11aは、0.24とした。そして、井戸層WLのp形半導体層50の側のIn組成比x11bは、0.26または0.28とした。そして、In組成比は、x11aからx11bに直線的に増加するとした。これらの、井戸層WLのp形半導体層50の側のIn組成比x11bが異なる半導体発光素子を、それぞれ半導体発光素子119a(x11b=0.26)及び119c(x11b=0.28)とする。また、n形半導体層20の側のIn組成比x11aを0.26とし、井戸層WLのp形半導体層50の側のIn組成比x11bを0.24とし、In組成比が、x11aからx11bに直線的に低下するとした。これを半導体発光素子119bとする。
【0074】
一方、本実施形態に係る半導体発光素子111は、8つの井戸層WLを有するとする。そして、半導体発光素子111において、n側中間層MN(第1n側中間層MN1〜第8n側中間層MN8)の厚さを変えて、発光波長が異なる3種類の半導体発光素子の発光強度をシミュレーションした。
【0075】
このシミュレーションにおいては、以下の条件を用いた。障壁層BL(n側障壁層BLN、第1障壁層BL1〜第8障壁層BL8)は、Inを含まないGaN層であるとした。井戸層WL、n側中間層MN、p側中間層MP及び障壁層BLの合計の厚さは、14.5nmとした。井戸層WL(第1井戸層WL1〜第8井戸層WL8)は、In0.24Ga0.76N層とした。すなわち、In組成比CInは、0.24で一定である。井戸層WLの厚さは、2nmとした。
【0076】
p側中間層MP(第1p側中間層MP1〜第8p側中間層MP8)のIn組成比CInは、x3iaからx3ibに低下する。In組成比CInの変化は、+Z方向に対して直線的であるとした。x3iaは、0.02とした。x3ibは、0とした。p側中間層MPの厚さ(tp1〜tp8)は、3nmとした。
【0077】
n側中間層MN(第1n側中間層MN1〜第8n側中間層MN8)のIn組成比CInは、x2iaからx2ibに低下する。In組成比CInの変化は、+Z方向に対して直線的であるとした。x2iaは、0.24とした。x2ibは、0.02とした。n側中間層MNの厚さ(tn1〜tn8)を、1.0nm、2.0nmまたは3nmとした。これらの、n側中間層MNの厚さ(tn1〜tn8)厚さが異なる3種類の半導体発光素子を、それぞれ半導体発光素子111a〜111cする。
【0078】
なお、半導体発光素子111a〜111cのいずれかおいても、p側中間層MPのIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率は、n側中間層MNのIn組成比の+Z方向に沿った平均の変化率よりも低い。
【0079】
図7(a)〜図7(c)は、半導体発光素子の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。
これらの図は、上記の半導体発光素子の発光特性のシミュレーション結果を示している。図7(a)は、半導体発光素子111a〜111cに対応する。図7(b)は、半導体発光素子118a〜118dに対応する。図7(c)は、半導体発光素子119a〜119cに対応する。横軸は、波長λ(nm)である。縦軸は、発光強度EI(任意目盛)である。
【0080】
図7(b)に表したように、第1参考例の半導体発光素子118aのピーク波長は約525nmである。このときの発光強度EIは比較的高い。第1参考例において、半導体発光素子118b〜118dのようにピーク波長が長くなるにつれて、発光強度EIは急激に低下する。ここで、半導体発光素子118a〜118dにおいて、それぞれのピーク波長のときの発光強度EIの点を繋げると、ピーク発光強度曲線PEF8が得られる。
【0081】
図7(c)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119a〜119cにおいても、ピーク波長が長くなるにつれて、発光強度EIは低下する。半導体発光素子119a〜119cにおいて、それぞれのピーク波長のときの発光強度EIの点を繋げると、ピーク発光強度曲線PEF9が得られる。
【0082】
図7(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111a〜111cにおいても、ピーク波長が長くなるにつれて発光強度EIは低下する。しかし、発光強度の低下の程度は小さい。半導体発光素子111a〜111cにおいて、それぞれのピーク波長のときの発光強度EIの点を繋げると、ピーク発光強度曲線PEF1が得られる。
【0083】
図8は、半導体発光素子の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。
この図は、図7(a)〜図7(c)に例示した結果に基づいて作成されている。横軸は、波長λ(nm)である。縦軸は、上記の半導体発光素子のそれぞれにおけるピーク波長のときの発光強度EI(ピーク発光強度PEI)である。同図には、ピーク発光強度曲線PEF1、PEF8及びPEF9が描かれている。
【0084】
図8に表したように、第1参考例のピーク発光強度曲線PEF8は図中の最も下に位置する。第2参考例のピーク発光強度曲線PEF9は、ピーク発光強度曲線PEF8よりも上に位置する。実施形態に係るピーク発光強度曲線PEF1は、図中で最も上に位置する。すなわち、実施形態におけるピーク発光強度PEIは最も高い。
【0085】
すなわち、第1参考例の半導体発光素子118a〜118dにおいては、ピーク波長が長くなるにつれて、ピーク発光強度PEIは急激に低下する。第2参考例の半導体発光素子119a〜119cにおいては、ピーク発光強度PEIは第1参考例よりも高くなる。しかし、ピーク発光強度PEIの向上の程度は小さい。
【0086】
これに対し、実施形態に係る半導体発光素子111a〜111cにおいては、ピーク発光強度PEIは、第1参考例よりも高く、第2参考例よりもさらに高い。
このように、n側中間層MN及びp側中間層MPを設けることにより、高い発光強度が得られる。すなわち、実施形態によれば、高効率の半導体発光素子が提供される。この発光効率の向上の効果は、特に500nm以上の波長において高い。さらに具体的には、図8に例示したように、例えば、発光のピーク波長が530nm以上において、発光効率の向上の効果が顕著に表れる。
【0087】
発明者は、第1参考例において、波長が長くなると発光強度EIが低下する原因を追求した。これによると、電圧を印加した時に、ピエゾ分極が発光特性に与える悪影響が大きくなると考えられる。すなわち、ピエゾ電界に起因した量子閉じ込めシュタルク効果によって発光強度が低下している。この現象の程度は、波長が長くなると非常に大きくなる。このため、例えば500nm以上の長波長(緑、黄及び赤など)の発光においては、発光効率が指数関数的に低下する。
【0088】
発明者は、電圧を印加した状態における量子井戸ポテンシャル分布に対する、量子閉じ込めシュタルク効果の影響を検討した。これにより、高い発光効率が得られる特殊な構成を見出した。この構成による発光効率の向上は、特に500nm以上の長波長の場合に特に大きく発揮される。
すなわち、第1井戸層WL1のIII族元素中におけるIn組成比は、0.18以上である。このときに、発光部40から放出される光のピーク波長は500nm以上となる。このときに、発光効率の向上の効果が大きくなる。
【0089】
図9(a)〜図9(c)は、半導体発光素子の特性のシミュレーション結果を例示する模式図である。
これらの図は、発光層ELにおけるバンドギャップエネルギー特性(価電子帯VB及び伝導帯CB)及び、波動関数(電子の波動関数WFE及び正孔の波動関数WFH)を例示している。図9(a)は、実施形態に係る半導体発光素子111(111a〜111c)及び110に対応する。図9(b)は、第1参考例の半導体発光素子118(118a〜118d)に対応する。図9(c)は、第2参考例の半導体発光素子119(119a〜119c)に対応する。これらの図においては、1つの井戸層WLに関する部分を例示しているが、複数の井戸層WLが設けられる場合も同様である。
【0090】
図9(b)に表したように、第1参考例において、電圧印加時においては、量子井戸内において、電子の波動関数WFEと正孔の波動関数WFHとが、空間的に分離している。すなわち、電子の波動関数WFEと正孔の波動関数WFHとの重なりの積分値は小さい。このため、発光再結合確率は低い。その結果、高効率な発光を得るのが難しい。この現象は、例えば、500nm以上の長波長の場合に特に顕著になる。
【0091】
図9(c)に表したように、第2参考例においては、電子の波動関数WFEと正孔の波動関数WFHとの距離が、第1参考例よりも近づく。これにより、図8に例示したように、第2参考例においては、第1参考例よりも高いピーク発光強度PEIが得られるものと考えられる。しかしながら、図9(c)に例示したように、第2参考例における電子の波動関数WFEと正孔の波動関数WFHの重なりは、十分に大きくない。
【0092】
これに対し、図9(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子においては、電子の波動関数WFEと正孔の波動関数WFHとが近接している。すなわち、電子の波動関数WFEと正孔の波動関数WFHとの重なりの積分値が大きい。このため、図8に例示したように、実施形態において非常に高いピーク発光強度PEIが得られたと考えられる。
【0093】
この特性は、n側中間層MN及びp側中間層MPが、井戸層WLとp側の障壁層BLとの間に設けられている構成によって得られる。
【0094】
図9(a)に例示したように、実施形態において、井戸層WLにおける伝導帯CBは、+Z方向に沿って低下している。そして、n側中間層MNにおける伝導帯CBは、+Z方向に沿って上昇している。このように、実施形態においては、+Z方向に沿った伝導帯CBの対称性が高い。
【0095】
さらに、実施形態においては、+Z方向に沿った価電子帯VBの対称性も高い。すなわち、井戸層WLとn側の障壁層BL(例えばn側障壁層BLN)との境界におけるエネルギーP1は、n側中間層MNとp側中間層MPとの境界におけるエネルギーP2と実質的に同じである。そして、n側の障壁層BL(例えばn側障壁層BLN)におけるエネルギーの傾きQ1は、p側中間層MP(例えば第1p側中間層MP1など)におけるエネルギーの傾きQ2と実質的に同じである。
【0096】
このように、実施形態においては、電圧が印加された状態において、n側中間層MNによって、伝導帯CBに対称性の高い量子井戸構造が提供される。そして、p側中間層MPによって、価電子帯VBに対称性の高い量子井戸構造が提供される。このような量子井戸構造により、電子と正孔の分布の空間的な重なりが拡大する。これにより、高効率な発光が得られる。
【0097】
なお、発光部40とp形半導体層50との間に、In組成比CInが変化する層を設ける構成が考えられる。この構成においては、例えば、キャリア注入効率が向上する可能性がある。しかし、この構成においては、発光部40の内部の発光層ELにおける、電子と正孔の分布の空間的な重なりを制御することは困難である。このため、この機構による発光効率の向上は困難である。
これに対し、本実施形態においては、電子と正孔の分布の空間的な重なりを制御し、量子閉じ込めシュタルク効果を抑制する。これにより、発光効率を向上する。
【0098】
種々の検討により、本実施形態に係る構成において、第1p側中間層MP1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率を、第1n側中間層MN1のIn組成比の+Z方向に沿った平均の変化率よりも低くすることで、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性を特に向上させることが分かった。
【0099】
例えば、第i井戸層WLiと第i障壁層BLiとの間に1つの中間層だけが設けられ、そのIn組成比CInの変化が一定のときは、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性が向上し難い。
【0100】
これに対して、中間層として、In組成比CInの変化率が高い部分を井戸層WL(第i井戸層WLi)に接して設け、In組成比CInの変化率が低い部分をp側の障壁層BL(第i障壁層BLi)に接して設けることで、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性の向上の効果が大きくなる。
【0101】
なお、図9(c)に表したように、井戸層WLのIn組成比CInを傾斜させている第2参考例においては、例えば、井戸層WLにおける価電子帯VBのエネルギーを水平にすると、井戸層WLの伝導帯CBのエネルギーは大きく傾く。このように、第2参考例においては、量子井戸構造の対称性は低い。このため第2参考例による発光効率の向上には限界がある。
【0102】
実施形態においては、井戸層WLとp側の障壁層BLとの間にn側中間層MN及びp側中間層MPを設ける新規な構成を有している。これにより発光効率を向上している。この構成は、井戸層WLが1つのSQW構成に適用でき、発光効率が向上する。そして、この構成は、井戸層WLが複数のMQW構成に適用できる。MQW構成によれば、複数の井戸層WLにおいて上記の効果が得られるため、さらに発光効率が高まる。
【0103】
本実施形態において、In組成比は、例えばエネルギー分散X線分光法(energy dispersive X-ray spectrometry:EDX)などの手法によって測定できる。また、二次イオン質量分析法(Secondary ion-microprobe mass spectrometer:SIMS)や、X線回折装置を用いたomega-2theta scanによる構造解析手法も用いることができる。
【0104】
図10(a)〜図10(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式図である。
なお、これらの図は、1つの発光層ELとして、第1発光層EL1を例示している。以下では第1発光層EL1に関して説明するが、第1発光層EL1の構成は、任意の発光層ELに適用できる。
【0105】
図10(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子121においては、第1n側中間層MN1の第1井戸層WL1に接する部分のIn組成比x21aは、第1井戸層に含まれるIII族元素中におけるIn組成比x11よりも低い。そして、第1p側中間層MP1の第1n側中間層MN1に接する部分のIn組成比x31aは、第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比x21bよりも低い。このように、In組成比CInは階段状で変化しても良い。
【0106】
このように、第1n側中間層MN1の第1井戸層WL1に接する部分のIn組成比x21aは、第1井戸層WL1に含まれるIII族元素中におけるIn組成比x11以下であり、第1p側中間層MP1の第1n側中間層MN1に接する部分のIn組成比x31aは、第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比x21b以下である。これにより、In組成比CInが単調に低下する。これにより、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性を向上し易くなる。
【0107】
また、第1p側中間層MN1の第1障壁層BL1に接する部分のIn組成比x31bは、第1障壁層BL1のIII族元素中におけるIn組成比x41以上である。これにより、In組成比CInが単調に低下する。これにより、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性を向上し易くなる。
【0108】
図10(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子122においては、In組成比CInが曲線的に変化している。この場合も、発光効率を向上できる。In組成比CInが曲線的に変化する場合は、例えば、In組成比CInの変化の程度が変化する部分を、n側中間層MNとp側中間層MPとの境界と見なすことができる。
【0109】
実施形態において、2つの中間層におけるIn組成比CInの平均の変化率を制御するだけでなく、2つの中間層の中央部におけるIn組成比CInの変化率を制御しても良い。
【0110】
例えば、第1p側中間層MP1の+Z方向に沿った中央部分におけるIn組成比CInの+Z方向に沿った変化率を、第1n側中間層MN1の+Z方向に沿った中央部分におけるIn組成比CInの+Z方向に沿った変化率よりも低く設定できる。これにより、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性を向上できる。
【0111】
図10(c)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子123においては、第1n側中間層MN1の第1井戸層WL1に接する部分のIn組成比x21aは、第1井戸層に含まれるIII族元素中におけるIn組成比x11よりも高い。ただし、x21aとx11との差は小さい。また、第1n側中間層MN1においてIn組成比CInがx11よりも高い部分の厚さは薄い。そして、第1p側中間層MP1の第1n側中間層MN1に接する部分のIn組成比x31aは、第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比x21bよりも高い。ただし、x31aとx21bとの差は小さい。また、第1p側中間層MP1においてIn組成比CInがx21bよりも高い部分の厚さは薄い。
【0112】
第in側中間層MNi及び第ip側中間層MPiにおいて、In組成比CInが局所的に高い部分や低い部分が設けられる場合においても、それらの部分が全体に対して十分に小さい場合は、これらの部分は実質的に無視できる。その場合には、全体のIn組成比CInは、第1井戸層WL1から第1障壁層BL1に向けて低下していると見なせる。そして、この場合も、第1p側中間層MP1における変化率は、第1n側中間層MN1における変化率よりも低い。このような構成においても、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性を向上でき、発光効率を向上できる。
【0113】
図11(a)及び図11(b)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式図である。
なお、これらの図は、1つの発光層ELとして、第1発光層EL1を例示している。以下では第1発光層EL1に関して説明するが、第1発光層EL1の構成は、任意の発光層ELに適用できる。
【0114】
図11(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子124においては、第1n側中間層MN1におけるIn組成比CInが階段状で変化している。この場合も、第1n側中間層MN1のIn組成比CInは、+Z方向に沿って低下している。
【0115】
図11(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子125においては、第1p側中間層MP1におけるIn組成比CInが階段状で変化している。この場合も、第1p側中間層MP1のIn組成比CInは、+Z方向に沿って低下している。
半導体発光素子124及び125においても、高効率の半導体発光素子が得られる。
【0116】
なお、図1(b)に表したように、複数の発光層ELが設けられ、第2発光層EL2が、第1発光層EL1とp形半導体層50との間に設けられるとする。このとき、第1障壁層BL1は、第2井戸層WL2に接することが望ましい。すなわち、例えば、第1障壁層BL1と第2井戸層WL2との間には、中間層を設けない。これにより、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性が向上し易い。
【0117】
例えば、第1井戸層WL1は、n側障壁層BLNと接することが望ましい。
例えば、第(i+1)発光層EL(i+1)が、第i発光層ELiとp形半導体層50との間に設けられる場合、第i障壁層BLiは、第(i+1)井戸層WL(i+1)に接することが望ましい。
【0118】
また、第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比x21bは、第1井戸層WL1のIII族元素中におけるIn組成比x11の1/4以下とすることが望ましい。例えば、第1井戸層WL1のIII族元素中におけるIn組成比x11が0.18以上である場合に、第1n側中間層MN1の第1p側中間層MP1に接する部分のIn組成比x21bは、0.045以下にすることができる。さらに、このとき、In組成比x21bは、0.03以下にすることができる。
【0119】
これにより、第1n側中間層MN1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率を十分高くできる。これにより、第1p側中間層MP1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率を、第1n側中間層MN1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率よりも低くし易くなる。これにより、発光効率を安定して向上できる。
【0120】
第1p側中間層MP1の厚さ(第1p側中間層厚tp1)は、第1n側中間層MN1の厚さ(第1n側中間層厚tn1)以上であることが望ましい。また、第1p側中間層MP1の厚さ(第1p側中間層厚tp1)は、第1井戸層WL1の厚さ(第1井戸層厚tw1)以上であることが望ましい。これにより、第1p側中間層MP1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率を、第1n側中間層MN1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率よりも低くし易くなる。
【0121】
一方、第1n側中間層MN1の厚さ(第1n側中間層厚tn1)は、第1井戸層WL1の厚さ(第1井戸層厚tw1)と同程度とすることができる。より具体的には、第1n側中間層厚tn1は、第1井戸層厚tw1の1/2以上、2倍以下とすることができる。これにより、第1p側中間層MP1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率を、第1n側中間層MN1のIn組成比CInの+Z方向に沿った平均の変化率よりも低くし易くなる。
【0122】
第1井戸層WL1(第i井戸層WLi)の厚さは、例えば1nm以上5nm未満とすることができる。より好ましくは、第1井戸層WL1(第i井戸層WLi)の厚さは、1nm以上3.5nm以下である。第i井戸層WLiの厚さが1nmより薄いと、500nm以上の長波長の発光を得ることが難しい。第i井戸層WLiの厚さが5nmよりも厚いと結晶品質が劣化し易い。さらに、第i井戸層WLiの厚さが5nmよりも厚いと、電子と正孔の波動関数の空間的分離が大きくなり、発光強度が弱くなる傾向がある。
【0123】
第1n側中間層MN1(第in側中間層MNi)の厚さは、例えば1nm以上5nm未満とすることができる。
【0124】
一方、第1p側中間層MP1(第ip側中間層MPi)の厚さは、例えば3nm以上8nm以下とすることができる。
【0125】
例えば、第1障壁層BL1(第i障壁層BLi)は、実質的にp形不純物を含まない。例えば、第1障壁層BL1(第i障壁層BLi)におけるp形不純物の濃度は、p形半導体層50に含まれるp形不純物の濃度よりも低い。
【0126】
また、実施形態において、第1井戸層WL1(第i井戸層WLi)は、III族元素中におけるInの濃度が+Z方向に沿って一定である部分を有することができる。このような井戸層WLとn側中間層MNとp側中間層MPとを組み合わせることで、伝導帯CB及び価電子帯VBの対称性が向上し易い。
【0127】
以下、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の例について説明する。
まず、基板10を、例えば1100℃のサセプタ温度でサーマルクリーニングを行う。
【0128】
次に、サセプタ温度を例えば500℃に下げ、基板10上に、バッファ層11を形成する。バッファ層11には、例えばGaN層が用いられる。
【0129】
次に、サセプタ温度を例えば1120℃まで上げ、下地層21を形成する。下地層21には、例えばn形GaN層が用いられる。続いて、n側コンタクト層22を形成する。n側コンタクト層には、例えばSiをドープしたGaN層が用いられる。
キャリアガスをHからNに変え、サセプタ温度を810℃まで下げ、多層積層体23を形成する。薄膜層SBには、例えば、In0.08Ga0.02N層が用いられる。薄膜層SBの厚さは、例えば1nmとされる。厚膜層SAには、例えばGaN層が用いられる。厚膜層SAの厚さは、例えば3nmとされる。これらの薄膜層SB及び厚膜層SAを交互に形成する。薄膜層SBの数は、例えば20とされる、厚膜層SAの数は、例えば21とされる。薄膜層SBにおけるIn組成比CInは、井戸層WLにおけるIn組成比CInよりも低いことが望ましい。
【0130】
続いて、n側障壁層BLNを形成する。n側障壁層BLNの厚さは、例えば3nm以上20nm以下が望ましい。n側障壁層BLNの形成の際のサセプタ温度は多層積層体23の成長時に用いたサセプタ温度以上であることが好ましい。例えば、950℃とすることができる。n側障壁層BLNの厚さが厚いと、平坦性が良好になる。ただし、n側障壁層BLNの厚さが20nmよりも厚いときは、多層積層体23が発光層ELに与える影響が小さくなる。n側障壁層BLNの厚さが3nmより薄いと、表面の平坦性が十分でない。n側障壁層BLNの形成において、サセプタ温度が1000℃以下の場合は、キャリアガスにはNを用いることが望ましい。ただし、キャリアガスには、NとHとの混合ガスを用いても良い。このとき、Hガスの流量がガスの総流量の半分以下であることが望ましい。
【0131】
その後、サセプタ温度を700℃以上800℃以下に下げる。そして、井戸層WLを形成する。その後、n側中間層MNを形成する。n側中間層MNの形成は、例えば、井戸層WLの形成と連続して行われる。n側中間層MNの形成においては、時間とともにIn元素の原料ガスの流量を減らす。さらに、p側中間層MPを形成する。井戸層WL、n側中間層MN及びp側中間層MPの形成においては、In元素の原料ガスの流量が例えば自動制御される。これにより、In組成比CInの変化率、及び、各層の厚さが適切に制御される。また、n側中間層MN及びp側中間層MPの形成においては、サセプタ温度や圧力を変化させることで、結晶表面へのIn元素の取り込みを変化させることもできる。例えば、p側中間層MPの形成において、In元素の原料ガスの流量は一定としながら、サセプタ温度を障壁層BLの成長温度まで昇温する。サセプタ温度が高いほどIn元素の結晶表面への取り込みは減少するので、サセプタ温度が上昇する組成が傾斜されたp側中間層MPが形成される。
引き続いて、障壁層BLを形成する。障壁層BLには、例えばGaN層が用いられる。障壁層BLの形成の温度は、井戸層WLの形成の温度以上であることが望ましい。このとき、障壁層BLの形成の温度と、井戸層WLの形成の温度と、の差は、200℃以下とされる。障壁層BLの形成の温度が井戸層WLの形成の温度と同じときは、障壁層BLにピットが発生し易い。このため、障壁層BLの形成の温度は、井戸層WLの形成の温度よりも高いことが望ましい。障壁層BLの形成の温度と井戸層WLの形成の温度との差が200℃よりも大きいと、井戸層WLが劣化する場合がある。
また、昇温時に結晶の成長を中断することで、固層のInを拡散させ、中間層を形成することもできる。
【0132】
上記の井戸層WL、n側中間層MN、p側中間層MP及び障壁層BLの形成を繰り返す。これにより発光部40が形成される。
【0133】
発光部40の上に、第3p形層53、第2p形層52及び第1p形層51を順次形成する。これにより、p形半導体層50が形成される。
これにより、積層構造体10sが形成される。
【0134】
この後、積層構造体10sを加工し、n側電極70及びp側電極80を形成する。これにより、実施形態に係る半導体発光素子が得られる。
【0135】
実施形態に係る半導体発光素子における各半導体層の成長方法には、例えば、有機金属気相堆積(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、及び、有機金属気相成長(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy:MOPVE)法などを用いることができる。
【0136】
各半導体層の形成の際の原料には、以下を用いることができる。
Gaの原料として、例えば、TMGa(トリメチルガリウム)及びTEGa(トリエチルガリウム)などを用いることができる。Inの原料として、例えば、TMIn(トリメチルインジウム)及びTEIn(トリエチルインジウム)などを用いることができる。Alの原料として、例えば、TMAl(トリメチルアルミニウム)などを用いることができる。Nの原料として、例えば、NH(アンモニア)、MMHy(モノメチルヒドラジン)及びDMHy(ジメチルヒドラジン)などを用いることができる。Siの原料として、例えば、SiH(モノシラン)などを用いることができる。Mgの原料として、例えば、CpMg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)などを用いることができる。
【0137】
実施形態によれば、高効率の半導体発光素子が提供される。
【0138】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0139】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0140】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれるn形半導体層、p形半導体層、発光部、発光層、井戸層、障壁層、中間層及び電極などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0141】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0142】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0144】
10…基板、 10a…第1主面、 10b…第2主面、 10s…積層構造体、 11…バッファ層、 20…n形半導体層、 21…下地層、 22…n側コンタクト層、 23…多層構造体、 40…発光部、 50…p形半導体層、 51…第1p形層、 52…第2p形層、 53…第3p形層、 70…n側電極、 80…p側電極、 110、111、111a〜111c、118、118a〜118d、119、119a〜119c、121〜125…半導体発光素子、 BL1〜BLi…第1〜第i障壁層、 BLN…n側障壁層、 CB…伝導帯、 CIn…In組成比、 EL…発光強度、 EL…発光層、 EL1〜ELi、ELn…第1〜第i発光層、第n発光層、 MN…n側中間層、 MN1〜MNi…第1〜第in側中間層、 MP…p側中間層、 MP1〜MPi…第1〜第ip側中間層、 P1、P2…エネルギー、 PEF1、PEF8、PEF9…ピーク発光強度曲線、 PEI…ピーク発光強度、 Q1、Q2…傾き、 SA…厚膜層、 SA1〜SAi、SAm、SA(m+1)、SAi…第1〜第i厚膜層、第m厚膜層、第(m+1)厚膜層、 SB…薄膜層、 SB1〜SBi、SBm…第1〜第i薄膜層、第m薄膜層、 VB…価電子帯、 WFE、WFH…波動関数、 WL…井戸層、 WL1〜WLi…第1〜第i井戸層、 tb1、tb2…第1、第2障壁層厚、 tn1、tn2…第1、第2n側中間層厚、 tp1、tp2…第1、第2p側中間層厚、 tw1、tw2…第1、第2井戸層厚、 x11、x11a、x11b、x21、x21a、x21b、x31、x31a、x31b、x41、x12、x22、x22a、x22b、x32、x32a、x32b、x42、x4N…III族元素中におけるIn組成比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n形半導体層と、
p形半導体層と、
前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、第1発光層を含む発光部と、
を備え、
前記第1発光層は、
窒化物半導体を含む第1障壁層と、
前記n形半導体層と前記第1障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第1井戸層と、
前記第1井戸層と前記第1障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第1n側中間層と、
前記第1n側中間層と前記第1障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第1p側中間層と、
を含み、
前記第1n側中間層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう第1方向に沿って低下し、
前記第1p側中間層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1方向に沿って低下し、
前記第1p側中間層の前記In組成比の前記第1方向に沿った平均の変化率は、前記第1n側中間層の前記In組成比の前記第1方向に沿った平均の変化率よりも低いことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記発光部は、前記第1方向に沿って前記第1発光層と積層された第2発光層をさらに含み、
前記第2発光層は、
窒化物半導体を含む第2障壁層と、
前記n形半導体層と前記第2障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第2井戸層と、
前記第2井戸層と前記第2障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第2n側中間層と、
前記第2n側中間層と前記第2障壁層との間に設けられ窒化物半導体を含む第2p側中間層と、
を含み、
前記第2n側中間層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう第1方向に沿って低下し、
前記第2p側中間層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1方向に沿って低下し、
前記第2p側中間層の前記In組成比の前記第1方向に沿った平均の変化率は、前記第2n側中間層の前記In組成比の前記第1方向に沿った平均の変化率よりも低いことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2発光層は、前記第1発光層と前記p形半導体層との間に設けられ、
前記第1障壁層は、前記第2井戸層に接することを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1n側中間層の前記第1井戸層に接する部分の前記In組成比は、前記第1井戸層に含まれるIII族元素中におけるIn組成比以下であり、
前記第1p側中間層の前記第1n側中間層に接する部分の前記In組成比は、前記第1n側中間層の前記第1p側中間層に接する部分の前記In組成比以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1井戸層のIII族元素中におけるIn組成比は、0.18以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1n側中間層の前記第1p側中間層に接する部分の前記In組成比は、前記第1井戸層のIII族元素中におけるIn組成比の1/4以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−119560(P2012−119560A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269169(P2010−269169)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】