説明

半導体装置およびその製造方法ならびにそれを用いたDC−DCコンバータ

【課題】内蔵ダイオードを有するトレンチMOSFETのしきい値電圧を向上させると共に、ドレインリーク電流の発生を低減させる。
【解決手段】内蔵ダイオードを有するトレンチMOSFETにおいて、コンタクトトレンチ23の下部におけるP型チャネル領域4の厚さを200nm以下とし、バリアメタル9とP型チャネル領域4をショットキー接合させてショットキーバリアダイオードを備えることにより、しきい値電圧を向上させ、ドレインリーク電流の発生を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法ならびにそれを用いたDC−DCコンバータに関し、特に同期用スイッチング素子として使用するトレンチMOSFET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)およびその製造方法ならびにそれを用いたDC−DCコンバータに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信網の拡張や、処理速度を向上したブロードバンド化に伴う情報量の増加などにより、基地局、ルータ等の通信機器やサーバ、およびノートパソコン等での電力需要は増加の一途をたどっている。そして、これらの機器の中核となるCPU(Central Processing Unit)等のLSI(Large Scale Integration)における低動作電圧化と処理速度向上に対応するため、DC−DCコンバータ電源には低電圧化・大電流化、高速応答化と同時に高効率化・小型化が要求されている。
【0003】
この電源供給のためのDC−DCコンバータの同期整流スイッチに用いられるパワーMOSFETとしては、高効率化・小型化のために、主にオン抵抗の低いトレンチ型のMOSFETが使用されている。
【0004】
最近では、このMOSFETにおける跳ね上がり電圧の低減や電源効率の更なる向上のために、内蔵ダイオードの特性改善に対する要求が高まっている。
【0005】
特許文献1(特開2006−12967号公報)には、MOSFETの同一チップ内にショットキーバリアダイオードを備えることで逆回復時のホールの電荷量を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−12967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなショットキーバリアダイオードを備えたMOSFETの高性能化のために、本発明者らが更なる低オン抵抗化技術を検討したところ、以下に説明するような課題が見出された。
【0008】
MOSFETを有する半導体装置にショットキーバリアダイオードを備えるには、同一チップ内にショットキーバリアダイオードの領域を具備する必要があるため、MOSFETのアクティブ領域が減少し、オン抵抗が増加する。MOSFETのオン抵抗が増加すると、電源効率が低下してしまう。また、MOSFETには、誤動作を防止するためにしきい値電圧を向上することや、オフ状態での電力損失を低減するためにドレインリーク電流を抑制することが重要になる。このような原因から、MOSFETのしきい値電圧の向上およびドレインリーク電流の低減化が困難であることが分かった。
【0009】
本発明の目的は、MOSFETを有する半導体装置のしきい値電圧を向上させ、ドレインリーク電流を低減させて高性能化する技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本願の一発明による半導体装置は、
第1導電型の半導体基板の主面に形成されたトレンチゲート型のMOSFETを有する半導体装置であって、
前記半導体基板の主面上に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に形成された第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域を貫いて前記第1半導体領域に達するように形成された第1溝部と、
前記第1溝部の内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2半導体領域上に、前記第1溝部に接して形成された第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域および前記第3半導体領域に接する主電極を有し、
前記第2半導体領域は、前記主電極とショットキー接合しているものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
MOSFETのしきい値電圧を向上させると共に、ドレインリーク電流の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1の効果を示すエネルギーバンド図である。
【図11】本発明の実施の形態1の半導体装置のドレイン−ソース間電圧とドレインリーク電流との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の実施の形態1の半導体装置のP型チャネル領域厚と内蔵ダイオード順方向電圧との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態2の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態4の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態5の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態6の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図18】本発明の実施の形態6の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図21】本発明の半導体装置を使用したDC−DCコンバータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係や、各層の厚みの比率などは、以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0018】
また、以下の実施の形態は、本発明の技術的思想を具現化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置、動作電圧等を実施の形態のように特定するものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1のトレンチMOSFETを、図1〜図12を用いて説明する。
【0020】
図1に、本発明の実施の形態1のトレンチMOSFETの構造を示す。
【0021】
本実施の形態1のトレンチMOSFETは、N型基板1上に、N型ドリフト領域2、N型チャネル領域3、P型チャネル領域4、ソース領域5、ゲート電極6、ゲート絶縁膜7、層間絶縁膜8、バリアメタル9などが形成され、表面にソース電極10、裏面にドレイン電極11が設けられている。
【0022】
次に、図2〜図9において、本実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す。
【0023】
まず、図2に示すように、N型基板1上にN型ドリフト領域2とN型チャネル領域3をエピタキシャル成長によりそれぞれ形成する。ここで、N型ドリフト領域2とN型チャネル領域3は同じ不純物濃度であっても、異なる不純物濃度であってもよいが、N型ドリフト領域2の不純物濃度よりもN型チャネル領域3の不純物濃度のほうが低い方が望ましい。
【0024】
次に、図3に示すように、ゲートトレンチ22を形成するためのエッチングを行う。ここでは一例として、熱酸化により形成した表面酸化膜21をホトレジストにより選択的に除去した形状にしたがってエッチングした場合を示している。ゲートトレンチ22の深さは1.0μm〜2.0μm程度である。
【0025】
次に、図4に示すように、熱酸化によってゲートトレンチ22内にゲート絶縁膜7を形成する。ゲート絶縁膜7の厚さは、ゲート−ソース間耐圧を確保するようにし、40nm〜120nm程度である。
【0026】
次に、図5に示すように、P型多結晶シリコンを堆積し、その上部をエッチングすることにより、P型多結晶シリコンからなるゲート電極6を形成する。
【0027】
次に、図6に示すように、イオン打ち込みによりP型チャネル領域4とソース領域5をそれぞれ形成する。P型チャネル領域4は、このあと形成するバリアメタル9とショットキー接合するように、不純物濃度を1017cm−3以下にする。
【0028】
次に、図7に示すように、CVD法によりBPSG膜(Boron Phosphorus Silicon Glass)を堆積し、パターニングすることで層間絶縁膜8を形成する。
【0029】
次に、図8に示すように、層間絶縁膜8の形状にしたがってドライエッチングを行い、ソース領域5を貫いてP型チャネル領域4に達するコンタクトトレンチ23を形成する。このとき、コンタクトトレンチ23底部からN型チャネル領域3の上面までの厚みを200nm以下となるようにコンタクトトレンチ23を形成する。
【0030】
次に、図9に示すように、N型基板1上にバリアメタル9および、アルミからなるソース電極10を順次堆積し、N型基板1の裏面にドレイン電極11を形成する工程を経て本実施の形態1のトレンチMOSFETが完成する。バリアメタル9は、たとえば、チタンタングステン合金膜、または、チタン/窒化チタン積層膜などである。また、バリアメタル9の下にタングステンシリサイドやコバルトシリサイドなどのシリサイド膜を形成してもよい。なお、バリアメタル9がない場合は、ソース電極10が直接にソース領域5とP型チャネル領域4に接触する。
【0031】
本実施の形態1のトレンチMOSFETは、バリアメタル9とP型チャネル領域4とがショットキー接合していることに特徴がある。ソース電極10からバリアメタル9、P型チャネル領域4、N型チャネル領域3、N型ドリフト領域2、N型基板1を経由してドレイン電極11に至る経路がショットキーバリアダイオードになるので、内蔵ダイオードの逆回復特性を改善できる。また、P型チャネル領域4を具備することによりドレインリーク電流を抑制できる。
【0032】
バリアメタル9とショットキー接合をするために、P型チャネル領域4の不純物濃度は、一般のトレンチMOSFETのチャネル領域の不純物濃度よりも低く、1017cm−3以下になる。P型チャネル領域4の不純物濃度が低いと、しきい値電圧が低下してしまうので、本実施の形態1では、ゲート電極6をP型多結晶シリコンとし、また、N型ドリフト領域2とP型チャネル領域4の間に不純物濃度の低いN型チャネル領域3を設けて、ゲート電極6から空乏層を広げてしきい値電圧を向上している。
【0033】
ゲート−ソース間電圧にしきい値電圧よりも高い電圧を印加すると、P型チャネル領域4のゲートトレンチ22側面に反転層が、N型チャネル領域3のゲートトレンチ22側面に蓄積層が、それぞれ生じて、ソース電極10とドレイン電極11との間を電子が流れて、ドレイン−ソース間が導通する。
【0034】
図10に本実施の形態1のトレンチMOSFETのコンタクトトレンチ23から深さ方向のエネルギーバンド図を示す。図10において、縦軸はエネルギーの高さを示し、横軸は距離を示す。また、P型チャネル領域4がある場合のバンド図を実線で示し、P型チャネル領域4がない場合のバンド図を破線で示している。ここでは、符号Bの縦軸はバリアメタル9とその下部の半導体領域(P型チャネル領域4またはN型チャネル領域3)との接合面を表わし、符号Fはフェルミレベルの高さを表わしている。
【0035】
型チャネル領域4がない場合は、ショットキー障壁のピークはバリアメタル9と半導体との接合面Bに存在し、バリアメタル9の材料によりショットキー障壁の高さが決まる。本実施の形態のようにP型チャネル領域4が存在すると、ショットキー障壁のピークは半導体内部に存在し、ショットキー障壁の高さは、バリアメタル9の材料により決まるショットキー障壁の高さより高くなる。
【0036】
図11に本実施の形態1のトレンチMOSFETのドレイン−ソース間電圧とドレインリーク電流の関係のシミュレーション結果を示す。P型チャネル領域4がない場合のグラフ(C)のはショットキー障壁が低いのでドレインリーク電流が大きくなってしまうが、本実施の形態のようにP型チャネル領域4がある場合のグラフ(D)では、図10で示したようにショットキー障壁が高くなり、ドレインリーク電流を低減できる。
【0037】
図12に本実施の形態1のトレンチMOSFETのP型チャネル領域4厚と内蔵ダイオードの順方向電圧の関係のシミュレーション結果を示す。ドレイン電流密度は0.2A/mmである。ここでP型チャネル領域4厚は、P型チャネル領域4とバリアメタル9の接合面から、P型チャネル領域4とN型チャネル領域3の境界面までの最小距離とした。また、P型チャネル領域4の不純物濃度を1017cm−3以下の範囲で変化させて計算した。図12における符号4a、4b、4cは、それぞれP型チャネル領域4の不純物濃度を1×1017cm−3、3×1016cm−3、1×1016cm−3としたときのグラフである。
【0038】
型チャネル領域4が厚く(たとえば、P型チャネル領域4厚が200nm以上)なると、図10に示すショットキー障壁の幅が大きくなってしまい、その結果、図12に示すように、内蔵ダイオードの順方向電圧が高くなってしまう。一般にショットキーバリアダイオードのドレイン電流密度0.2A/mmでの順方向電圧は0.4V程度で、PNダイオードのドレイン電流密度0.2A/mmでの順方向電圧は0.7V程度であるが、本実施の形態は、図12に示す範囲で順方向電圧を設計することが可能である。また、ドレイン電流密度0.2A/mmでの順方向電圧を0.5V〜0.6Vの範囲にすることで、跳ね上がり電圧の低減とドレインリーク電流の抑制を両立できる。
【0039】
本実施の形態によれば、以上のようなデバイス構造とその製造方法により、MOSFETのアクティブ領域にショットキーバリアダイオードを内蔵し、かつしきい値電圧を向上し、ドレインリーク電流を抑制することができる。
【0040】
ここで、図21に本実施の形態のトレンチMOSFETを有する同期用パワーMOSFETチップ13を実装したDC−DCコンバータの回路の一例を示す。同期用パワーMOSFETチップ13および制御用パワーMOSFETチップ12を含む2in1パッケージ14が、ドライバIC18、コイル15、コンデンサ16、19、さらに負荷17、入力電源20などと配線で接続されており、非絶縁型DC−DCコンバータ回路を構成している。
【0041】
本実施の形態のトレンチMOSFETを同期整流スイッチとして、図21における同期用パワーMOSFETチップ13に用いることで、DC−DCコンバータの跳ね上がり電圧を低減し、さらに、電源効率を向上することができる。
【0042】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のトレンチMOSFETを、図13を用いて説明する。
【0043】
本実施の形態2のトレンチMOSFETは、本発明の実施の形態1でP型チャネル領域4であった領域が、P型チャネル領域41とコンタクト領域42に置き換わっている点で前記実施の形態1と異なる。コンタクト領域42はP型でもN型でもよい。
【0044】
本実施の形態2のトレンチMOSFETの製造方法としては、本実施の形態1の製造方法において、図8に示すコンタクトトレンチ23を形成した後にイオン打ち込みを行えばよい。ここで、たとえばボロンをイオン打ち込みすれば、コンタクト領域42はP型チャネル領域41よりも不純物濃度の高いP型になるし、たとえばヒ素をイオン打ち込みすれば、コンタクト領域42はN型か、あるいは、P型チャネル領域41よりも不純物濃度の低いP型になる。
【0045】
本実施の形態によれば、以上のようなデバイス構造とその製造方法により、前記実施の形態1と同様の効果に加えて、しきい値電圧とショットキー接合の障壁の高さを別々に設計することができる。
【0046】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3のトレンチMOSFETを、図14を用いて説明する。
【0047】
本実施の形態3のトレンチMOSFETは、ゲート電極6の下に埋込絶縁膜55を介して埋込電極53を具備している点で前記実施の形態1と異なる。なお、埋込電極53は、ソース電極10と同電位になるように配線されている。
【0048】
本実施の形態3のトレンチMOSFETの製造方法としては、本実施の形態1の製造方法において、図4に示すゲート絶縁膜7の形成後に埋込絶縁膜54および埋込電極53を形成し、その後熱酸化により埋込電極53の上面に絶縁膜55を形成した後、実施の形態1と同様の工程でゲート電極6を形成すればよい。埋込電極53の部材としては、多結晶シリコンなどを使用できる。
【0049】
本実施の形態によれば、以上のようなデバイス構造により、前記実施の形態1と同様の効果に加えて、帰還容量を低減することができる。
【0050】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4のトレンチMOSFETを、図15を用いて説明する。
【0051】
本実施の形態4のトレンチMOSFETは、ゲートトレンチ22と同形状のソーストレンチ24を備え、ソーストレンチ24内に埋込絶縁膜64を介して埋込電極63を具備する点で前記実施の形態1と異なる。図15では、ゲートトレンチ22とソーストレンチ24が交互に配置されており、埋込電極63はソース電極10と同電位になるように配線されている。
【0052】
本実施の形態によれば、以上のようなデバイス構造により、前記実施の形態1と同様の効果に加えて、帰還容量を低減することができる。
【0053】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5のトレンチMOSFETを、図16を用いて説明する。
【0054】
本実施の形態5のトレンチMOSFETは、ゲートトレンチ22とN型チャネル領域3の間に、N型チャネル領域3よりも不純物濃度が低いN型であるか、あるいは、P型であるトレンチ隣接領域71を備えている点で前記実施の形態1と異なる。
【0055】
本実施の形態5のトレンチMOSFETの製造方法としては、本実施の形態1の製造方法において、図3でゲートトレンチ22を形成した後にボロンのイオン打ち込みを行うか、または、図5のゲート電極6の形成後にP型多結晶シリコンであるゲート電極6からボロンを拡散させればよい。
【0056】
本実施の形態によれば、以上のようなデバイス構造とその製造方法により、前記実施の形態1と同様の効果に加えて、しきい値電圧をさらに向上させることができる。
【0057】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6のトレンチMOSFETを、図17〜図20を用いて説明する。
【0058】
図17に、本発明の実施の形態6のトレンチMOSFETを示す。
【0059】
本実施の形態6のトレンチMOSFETは、実施の形態1におけるN型ドリフト領域2が、N型ドリフト領域2およびP型ドリフト領域82に置き換わった、いわゆるスーパージャンクション構造である点で前記実施の形態1と異なる。また、コンタクトトレンチ23の下部にP型コンタクト領域85を具備し、P型コンタクト領域85はバリアメタル9とショットキー接合しており、P型ドリフト領域82と接続している。
【0060】
次に、図18〜図20において、本実施の形態6の半導体装置の製造方法を示す。
【0061】
まず、図18に示すように、N型基板1上にP型ドリフト領域82およびN型チャネル領域3をエピタキシャル成長により形成する。
【0062】
次に、図19に示すように、N型チャネル領域3上に表面酸化膜21を形成し、エッチングによりゲートトレンチ22を形成した後、表面酸化膜21をマスクにしたイオン打ち込みによりP型ドリフト領域82中にN型ドリフト領域2を形成する。
【0063】
次に、図20に示すように、図4〜図7に示した本実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様の工程でゲート絶縁膜7、ゲート電極6、P型チャネル領域4、ソース領域5、層間絶縁膜8を形成する。その後、ドライエッチングによりコンタクトトレンチ23を形成し、層間絶縁膜8をマスクにしたイオン打ち込みによってP型コンタクト領域85を形成する。この後のバリアメタル9とソース電極10、ドレイン電極11を形成する工程は図示しないが、図9に示した本実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様の工程で形成でき、これにより本実施の形態のトレンチMOSFETを完成する。
【0064】
本実施の形態によれば、以上のようなデバイス構造とその製造方法により、前記実施の形態1と同様の効果に加えて、オン抵抗のうちのドリフト抵抗を低減できる。また、一般にスーパージャンクション構造を持つMOSFETでは、内蔵ダイオードの特性悪化が懸念されるが、前記実施の形態1と同様の効果によって内蔵ダイオードの特性が改善できる。さらに、P型ドリフト領域82は、P型コンタクト領域85およびバリアメタル9を介してソース電極10と電気的に接続されるのでフローティングにならず、スイッチング特性の悪化が起こらない。
【0065】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
たとえば、前期実施の形態のレイアウトは、トレンチゲートをストライプ状に配置してもよいし、メッシュ状に配置してもよい。
【0067】
また、前記実施の形態ではNチャネル型のMOSFETについて説明したが、Pチャネル型のMOSFETでもよい。半導体材料はシリコンでもシリコンカーバイドでもよく、本発明の半導体装置は、他の半導体装置にも広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の半導体装置の製造方法は、トレンチMOSFETに係わり、特に、内蔵ダイオードを有するパワーMOSFETに幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 N型基板
2 N型ドリフト領域
3 N型チャネル領域
4、41 P型チャネル領域
5 ソース領域
6 ゲート電極
7 ゲート絶縁膜
8 層間絶縁膜
9 バリアメタル
10 ソース電極
11 ドレイン電極
12 制御用パワーMOSFETチップ
13 同期用パワーMOSFETチップ
14 2in1パッケージ
15 コイル
16、19 コンデンサ
17 負荷
18 ドライバIC
20 入力電源
21 表面酸化膜
22 ゲートトレンチ
23 コンタクトトレンチ
24 ソーストレンチ
42 コンタクト領域
53、63 埋込電極
54、55、64 埋込絶縁膜
71 トレンチ隣接領域
82 P型ドリフト領域
85 P型コンタクト領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の主面に形成されたトレンチゲート型のMOSFETを有する半導体装置であって、
前記半導体基板の主面上に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に形成された第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域を貫いて前記第1半導体領域に達するように形成された第1溝部と、
前記第1溝部の内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2半導体領域上に、前記第1溝部に接して形成された第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域および前記第3半導体領域に接する主電極を有し、
前記第2半導体領域は、前記主電極とショットキー接合していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記主電極との接触面における前記第2半導体領域の不純物濃度が1017cm−3以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記主電極と前記第2半導体領域との接触面と、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との接触面との最小距離が200nm以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間に、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が低い第1導電型の第4半導体領域を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極は、第2導電型の多結晶シリコンを主体とする導体であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第3半導体領域を貫いて前記第2半導体領域に達するように形成された第2溝部を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記主電極と前記半導体基板の主面との間に、前記主電極と異なる金属からなるバリアメタルを有し、
前記バリアメタルが前記第2半導体領域とショットキー接合していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記主電極と前記半導体基板の主面との間にシリサイド膜を有し、
前記シリサイド膜が前記第2半導体領域とショットキー接合していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2半導体領域の不純物濃度が、前記主電極との接触面と、前記第1溝部の接触面とで異なることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1溝部の内部の、前記ゲート電極の下に、埋込絶縁膜を介して形成された埋込電極を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記埋込電極は、前記主電極と電気的に接続していることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極の一部はソース電極と電気的に接続していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1溝部に接して、前記第3半導体領域と異なる不純物濃度の第1導電型か、もしくは第2導電型の第5半導体領域を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項14】
第1導電型の半導体基板の主面に形成されたトレンチゲート型のMOSFETを有する半導体装置であって、
前記半導体基板の主面に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に形成された第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域を貫いて前記第1半導体領域に達するように形成された第1溝部と、
前記第1溝部の内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第1半導体領域内に、前記第2半導体領域に隣接して形成された第2導電型の第6半導体領域と、
前記第2半導体領域上に、前記第1溝部に接して形成された第1導電型の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域を貫いて前記第6半導体領域に達するように形成された第2溝部と、
前記第3半導体領域に接する主電極を有し、
前記第6半導体領域は、前記主電極とショットキー接合していることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
前記主電極との接触面における前記第6半導体領域の不純物濃度が1017cm−3以下であることを特徴とする請求項14記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ゲート電極は、第2導電型の多結晶シリコンを主体とする導体であることを特徴とする請求項14記載の半導体装置。
【請求項17】
第1導電型の半導体基板の主面に形成されたトレンチゲート型のMOSFETを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体基板の主面に第1導電型の第1半導体領域を形成する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記第1半導体領域上に、前記第1半導体領域と異なる不純物濃度の第1導電型の第4半導体領域を形成する工程と、
(c)前記(b)工程の後、前記半導体基板の主面から深さ方向に向かって、前記第1半導体領域の途中まで達するように第1溝部を形成する工程と、
(d)前記(c)工程の後、前記第1溝部の内部に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
(e)前記(d)工程の後、前記第1半導体領域上に、イオン注入を施すことで、第2導電型の第2半導体領域を形成する工程と、
(f)前記(e)工程の後、前記第2半導体領域上に、イオン注入を施すことで、第1導電型の第3半導体領域を形成する工程と、
(g)前記(f)工程の後、前記半導体基板の主面から深さ方向に向かって、前記第2半導体領域の途中まで達する第2溝部を形成する工程と、
(h)前記(g)工程の後、前記第2半導体領域および前記第3半導体領域に接する主電極を形成する工程と、
を有し、
前記主電極との接触面における前記第2半導体領域の不純物濃度が1017cm−3以下であって、前記第2半導体領域と前記主電極とがショットキー接合するように形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
半導体基板の主面上に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に形成された第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域を貫いて前記第1半導体領域に達するように形成された第1溝部と、
前記第1溝部の内部に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2半導体領域上に、前記第1溝部に接して形成された第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域および前記第3半導体領域に接する主電極を有し、
前記第2半導体領域は、前記主電極とショットキー接合している半導体装置を、同期整流スイッチに用いたDC−DCコンバータにおいて、
前記同期整流スイッチは、前記ゲート電極と前記主電極の電位差が0Vの条件で、前記主電極から前記半導体基板の裏面に流れる主電流の電流密度が0.2A/mmのときに、前記主電流の経路における電圧降下が0.5V以上0.6V以下の範囲にある電界効果トランジスタのセル構造を有する半導体装置の同期整流スイッチであることを特徴とするDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−9387(P2011−9387A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150352(P2009−150352)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】