説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】生産コストを抑えながら高いスループットが得られる半導体装置の製造方法と半導体装置とを提供する。
【解決手段】ヨークカバーとなる積層膜として、バリアメタル層、磁性体層およびバリアメタル層が順次形成される。次に、積層膜MLに、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスによる反応性イオンエッチング処理、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスによる反応性イオンエッチング処理、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスによる反応性イオンエッチング処理を施すことにより、ヨークカバーYCが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特に、磁気抵抗素子を備えた半導体装置と、その製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一種に、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)と称される磁気抵抗素子を適用したMRAM(Magnetic Random Access Memory)がある。MRAMでは、磁気抵抗素子は、一方向に延在するディジット線と、これと略直交する方向に延在するビット線とが交差する部分に配置される態様で、アレイ状に形成されている。個々の磁気抵抗素子には、トンネル絶縁膜を間に介在させて2つの磁性層が積層されている。
【0003】
近年、MRAMでは、消費電力を低減し、かつ、磁気抵抗素子に効率よく磁場を集中させるために、ディジット線およびビット線の構造として、クラッド層を含む配線構造が採用されている。クラッド層は、磁場を遮蔽する機能を有している。このため、磁気抵抗素子の下方に位置するディジット線では、クラッド層は、磁気抵抗素子の直下に位置するディジット線の部分の上面を除いて、ディジット線の側面と下面とを覆うように形成される。一方、磁気抵抗素子の上方に位置するビット線では、クラッド層は、磁気抵抗素子の直上に位置するビット線の部分の下面を除いて、ビット線の側面と上面とを覆うように形成される。
【0004】
ビット線を覆うクラッド層のうち、ビット線の上面を覆うクラッド層の形成方法として、たとえば、特許文献1では、ビット線を覆う層間絶縁膜にダマシン法によって形成する方法が提案されている。すなわち、まず、ビット線に沿って層間絶縁膜に形成された溝の底面と側面を覆うように、クラッド層となる層が形成される。次に、溝を充填するように、そのクラッド層となる層の上に他の層間絶縁膜が形成される。次に、他の層間絶縁膜および層間絶縁膜に化学的機械研磨処理を施すことにより、クラッド層となる層のうち、他の層間絶縁膜の上面上の位置する部分と溝の側面上に位置する部分とが除去される。こうして、研磨されずに残された、溝の底面上に位置するクラッド層の部分が、ビット線の上面を覆う蓋状のクラッド層として形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−511956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の半導体装置では、次のような問題点があった。上述したように、ビット線の上面を覆うクラッド層はダマシン法によって形成されるため、スループットを上げにくく、また、生産コストを下げにくいという問題があった。さらに、ウェハ面内において研磨量にばらつきが生じ、この研磨量のばらつきが半導体装置の特性や歩留まりに悪影響を与えるという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、一つの目的は、生産コストを抑えながら高いスループットが得られる半導体装置の製造方法を提供することであり、他の目的は、そのような製造方法によって製造される半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様に係る半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。半導体基板の主表面の上方に磁気抵抗素子を形成する。磁気抵抗素子の直上に距離を隔てて、所定の方向に延在するビット線を形成する。ビット線を覆うように所定の積層膜を形成する。積層膜に加工を施すことにより、ビット線を流れる電流によって生じる磁場を遮蔽するヨークカバーを形成する。積層膜を形成する工程は、以下の工程を備えている。ビット線を覆うように第1接着層を形成する。第1接着層の表面に接触するように、磁場を遮蔽する磁性体層を形成する。磁性体層の表面に接触するように第2接着層を形成する。ヨークカバーを形成する工程は、以下の工程を備えている。ビット線の直上に位置する領域を覆うように、レジストマスクを形成する。レジストマスクをエッチングマスクとして、ハロゲン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施すことにより、第2接着層をパターニングする(第1工程)。パターニングされた第2接着層をエッチングマスクとして、アンモニアおよびアルゴン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施す(第2工程)。パターニングされた第2接着層をエッチングマスクとし、元素として炭素を含んだガスによる反応性イオンエッチング処理を施す(第3工程)。
【0009】
本発明の一実施態様に係る他の半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。半導体基板の主表面の上方に磁気抵抗素子を形成する。磁気抵抗素子の直上に距離を隔てて、所定の方向に延在するビット線を形成する。ビット線の上面に接触するように、ビット線の配線材料が拡散するのを防止する拡散防止膜を形成する。拡散防止膜の表面に接触するように所定の積層膜を形成する。積層膜に加工を施すことにより、ビット線を流れる電流によって生じる磁場を遮蔽するヨークカバーを形成する。拡散防止膜を形成する工程と積層膜を形成する工程との間に、拡散防止膜に金属材料を導入することにより、拡散防止膜の表面から所定の深さにわたり金属材料を含むミキシング層を形成する。積層膜を形成する工程は、以下の工程を備えている。拡散防止膜の表面に接触するように、磁場を遮蔽する磁性体層を形成する。磁性体層の表面に接触するように接着層を形成する。ヨークカバーを形成する工程は、以下の工程を備えている。接着層の表面上における、ビット線の直上に位置する領域を覆うように、レジストマスクを形成する。レジストマスクをエッチングマスクとして、ハロゲン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施すことにより、接着層をパターニングする(第1工程)。パターニングされた接着層をエッチングマスクとして、アンモニアおよびアルゴン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施す(第2工程)。パターニングされた接着層をエッチングマスクとし、元素として炭素を含んだガスによる反応性イオンエッチング処理を施す(第3工程)。
【0010】
本発明の一実施態様に係る半導体装置は、磁気抵抗素子とビット線とヨークカバーとを備えている。磁気抵抗素子は、半導体基板の主表面の上方に形成されている。ビット線は、磁気抵抗素子の直上に距離を隔てられ、所定の方向に延在するように形成されている。ヨークカバーは、ビット線の上面を覆うように形成され、ビット線に流れる電流によって生じる磁場を遮蔽する。そのヨークカバーは、積層端面が順テーパ状の所定の積層膜を備えている。所定の積層膜は、磁性体層と、その磁性体層の上面に接触するように形成された上層接着層とを含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施態様に係る半導体装置の製造方法および他の半導体装置の製造方法のそれぞれによれば、ビット線を覆うヨークカバーを、所定の積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、スループットを上げて生産コストを抑えることができる。
【0012】
本発明の一実施態様に係る半導体装置によれば、ビット線を覆うヨークカバーを、所定の積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、ヨークカバーの積層端面が順テーパ状になる。これにより、ヨークカバをパターニングするレジストマスクを形成する際の露光マージンを下げることなく、ビット線とヨークカバーとのオーバラップマージンが上がり、磁場の漏れを抑制して磁場を閉じ込めておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の各実施の形態に係る半導体装置のメモリセルにおける磁気抵抗素子、ディジット線およびビット線の配置関係を模式的に示す斜視図である。
【図2】各実施の形態において、メモリセルのレイアウトを示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置におけるメモリセルを示す断面図であり、図2に示す断面線IIIa−IIIaにおける断面図と、断面線IIIb−IIIbにおける断面図である。
【図4】同実施の形態において、半導体装置における周辺回路を示す断面図である。
【図5】同実施の形態において、ビット線とその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【図6】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図13】同実施の形態において、図12に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図15】同実施の形態において、図14に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図16】同実施の形態において、図15に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図17】同実施の形態において、図16に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図18】同実施の形態において、図17に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図19】同実施の形態において、図18に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図20】同実施の形態において、図19に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図21】比較例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図22】図21に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図23】図22に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図24】図23に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図25】同実施の形態において、ヨークカバーの膜厚等を説明するための部分拡大断面図である。
【図26】同実施の形態において、ヨークカバーの膜厚を説明するための、アライメント工程を示す部分拡大平面図である。
【図27】同実施の形態において、ヨークカバーの膜厚を説明するための、図26に示す断面線XXVII−XXVIIにおける断面図である。
【図28】同実施の形態において、アライメントのずれ量と積層膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図29】同実施の形態において、磁束密度と、ヨークカバーと配線上面との距離との関係を示すグラフである。
【図30】比較例に係る半導体装置におけるビット線とその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【図31】同実施の形態において、ヨークカバーによる磁場の閉じ込め効果を説明するためのビット線とその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【図32】本発明の実施の形態2に係る半導体装置におけるメモリセルを示す断面図である。
【図33】同実施の形態において、ビット線とその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【図34】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図35】同実施の形態において、図34に示す工程の後に行われる工程に使用されるスパッタチャンバーの構造を示す断面図である。
【図36】同実施の形態において、図35に示すスパッタチャンバーによる処理が施された後のシリコン窒化膜の状態を示す断面図である。
【図37】同実施の形態において、図36に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図38】同実施の形態において、図37に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図39】同実施の形態において、図38に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図40】同実施の形態において、図39に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図41】同実施の形態において、図40に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図42】同実施の形態において、XRR解析結果を示す図である。
【図43】同実施の形態において、ミキシング層等を示す部分拡大断面図である。
【図44】本発明の実施の形態3に係る半導体装置におけるメモリセルを示す断面図である。
【図45】同実施の形態において、ビット線とその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【図46】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図47】同実施の形態において、図46に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図48】同実施の形態において、図47に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図49】同実施の形態において、図48に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図50】同実施の形態において、図49に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図51】同実施の形態において、図50に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図52】同実施の形態において、図51に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図53】本発明の実施の形態4に係る半導体装置におけるメモリセルを示す断面図である。
【図54】同実施の形態において、ビット線とその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【図55】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図56】同実施の形態において、図55に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図57】同実施の形態において、図56に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図58】同実施の形態において、図57に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図59】同実施の形態において、図58に示す工程の後に行なわれる工程を示す断面図である。
【図60】各実施の形態において、変形例に係る半導体装置におけるメモリセルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
はじめに、半導体装置としてのMRAMの全体構成について説明する。図1に示すように、MRAMにおける磁気抵抗素子Mは、一方向に延在するディジット線DLと、これと略直交する方向に延在するビット線BLとが交差する部分に配置される態様で、アレイ状に形成されている。
【0015】
図2および図3に示すように、メモリセル領域RMでは、個々の磁気抵抗素子Mの一端側は、トップヴィア12を介してビット線BLに電気的に接続されている。一方、磁気抵抗素子Mの他端側は、タンタル膜8および読み出し用配線3等を介して素子選択用トランジスタTMのドレイン領域に電気的に接続されている。読み出し用配線3は、銅膜3bにバリアメタル3aを被覆した配線構造とされる。また、個々の磁気抵抗素子Mはシリコン窒化膜10によって覆われている。なお、図3では、図2に示す断面線のうち、断面線IIIa−IIIaに沿った断面構造が、紙面に向かって左側に示され、断面線IIIb−IIIbに沿った断面構造が、紙面に向かって右側に示されている。
【0016】
図4に示すように、周辺回路領域RPでは、メモリセル(磁気抵抗素子)の動作等を制御するトランジスタTP等の半導体素子と、半導体素子を互いに電気的に接続する配線やヴィアが形成されている。なお、この周辺回路領域については、各実施の形態では説明を繰り返さない。
【0017】
個々の磁気抵抗素子Mには、トンネル絶縁膜を間に介在させて2つの磁性層が積層されている。この2つの磁性層における磁化の向きを同じ向きにするか、互いに逆向きにするかによって磁気抵抗素子Mの抵抗値が変化する。磁気抵抗素子Mの磁化の向きは、ビット線BLとディジット線DLに所定の電流を流すことにより生じる磁場によって変えられる。MRAMでは、この抵抗値の違いが「0」または「1」に対応する情報として利用されることになる。
【0018】
ディジット線DLは、配線本体となる銅膜4bに、磁場を遮蔽する機能を有するクラッド層4aを被覆した配線構造とされる。磁気抵抗素子Mの下方に、シリコン窒化膜5およびシリコン酸化膜6を介在させて位置するディジット線DLでは、クラッド層4aは、上方に位置する磁気抵抗素子M以外の領域へ磁気が及ぶのを阻止するように、銅膜4bの底面と側壁を覆うように形成されている。
【0019】
一方、ビット線BLは、銅膜20aに、磁場を遮蔽する機能を有するクラッド層18a等を被覆した配線構造とされる。磁気抵抗素子Mの上方に位置するビット線BLでは、下方に位置する磁気抵抗素子M以外の領域へ磁気が及ぶのを阻止するように、クラッド層18aは銅膜20aの側面を覆うように形成されている。さらに、本半導体装置では、ビット線BLの上面を覆うように、ヨークカバーYCが形成されている。各実施の形態では、このヨークカバーYCの構造とその製造方法について具体的に説明する。
【0020】
実施の形態1
ここでは、第1接着層としてのバリアメタル層、磁性体層およびバ第2接着層としてのバリアメタル層の3層からなるヨークカバーを備えたMRAMについて説明する。
【0021】
図5に示すように、ビット線BLはシリコン酸化膜14に形成された配線溝14a内に形成されている。銅膜20aの側面には、バリアメタル層17aとバリアメタル層19aとの間に挟み込まれる態様でクラッド層18aが形成されている。その銅膜20aの銅が拡散するのを防止する拡散防止膜としてのシリコン窒化膜22が、ビット線BLの上面に接触するように形成されている。
【0022】
ヨークカバーYCは、シリコン窒化膜22の上面に接触する態様でビット線BLの上面を覆うように形成されている。ヨークカバーYCは、たとえば、タンタル(Ta)等の下層の接着層としてのバリアメタル層23a、ニッケル鉄(NiFe)の磁性体層24aおよびタンタル(Ta)等の上層の接着層としてのバリアメタル層25aの積層膜から形成されている。そのヨークカバーYCの表面に接触するように、キャップ層としてのシリコン窒化膜28が形成されている。
【0023】
本半導体装置では、ヨークカバーYCを、積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、化学的機械研磨処理(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を施すことによって形成する場合と比較して、スループットを上げて生産コストを抑えることができる。また、反応性イオンエッチングによりヨークカバーYCを形成することで、ヨークカバーYCをなす積層膜の積層端面は順テーパ状になる。これらについては、後で詳しく説明する。
【0024】
次に、ヨークカバーYCに下層の接着層としてのバリアメタル層23aと上層の接着層としてのバリアメタル層25aとが必要とされる理由について説明する。シリコン窒化膜28は、ヨークカバーYCの磁性体層24aから金属が拡散するのを防止するとともに、磁性体層24aが酸化するのを防止するために必要とされる。
【0025】
一般的に、磁性体層と絶縁膜との接着性は極めて悪いとされる。このため、バリアメタル層25aがなく、磁性体層24aにシリコン窒化膜28が直接形成されている場合には、磁性体層24aとシリコン窒化膜28との界面において剥がれが生じやすくなる。そこで、シリコン窒化膜28が剥がれるのを防止するために、磁性体層24aとシリコン窒化膜28との間に上層の接着層としてのバリアメタル層25aが必要とされる。
【0026】
このバリアメタル層25aには、シリコン窒化膜28と磁性体層24aとの双方に対して接着性が良好であることが求められる。このような接着性を有する層としては、通常、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の高融点金属層(膜)が適しているが、上記接着性を有する層(膜)であれば、高融点金属層に限られない。なお、タンタル(Ta)等の高融点金属層(膜)は、スパッタ法によって形成される。
【0027】
ところが、高融点金属層(膜)は、酸化されると体積が変動し、膜応力が変動することが知られている。たとえば、フォトレジストを除去する際のアッシングによって上層のバリアメタル層が酸化雰囲気に晒されると、そのバリアメタル層が酸化されて膜応力が変動してしまう。このとき、磁性体層24aがシリコン窒化膜22の表面に直接形成されていると、磁性体層と絶縁膜(シリコン窒化膜)とは接着性が悪いうえに、バリアメタル層の膜応力の変動によって、ヨークカバーが剥がれてしまうことがある。そこで、ヨークカバーYCが剥がれるのを防止するために、磁性体層24aとシリコン窒化膜22との間に下層の接着層としてのバリアメタル層23aが必要とされる。
【0028】
本半導体装置では、ヨークカバーYCは、所定のレジストマスクをエッチングマスクとして、積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成される。このレジストマスクを形成する際には、ビット線BLに対する位置合わせ(アライメント)を行う必要がある。
【0029】
ヨークカバーYCとなる積層膜は金属を含む膜であるため、後述するように、積層膜の膜厚が50nmを越えると、光が透過せずアライメントを行うことができなくなる。このため、積層膜は、各層の厚さの和(積層膜の膜厚)が50nm以下となるように形成するのが好ましい。
【0030】
一方、磁性体層によって磁場を閉じ込めるとともに、バリアメタル層とシリコン窒化膜との接着性を確保しつつ、バリアメタル層にエッチングマスクとしての機能を確保するために、積層膜は、薄くても10nm以上になるように形成することが好ましい。
【0031】
また、後述するように、ビット線BLとヨークカバーYCとの間に介在するシリコン窒化膜22については、磁場を閉じ込めて磁気抵抗素子Mに磁場を集中的に作用させるために、約150nm以下になるように形成することが好ましい。
【0032】
次に、上述したMRAMの製造方法について説明する。まず、半導体基板1の表面上に、選択用トランジスタTM、配線およびヴィア等(図3参照)が形成された後、図6に示すように、シリコン酸化膜2が形成される。そのシリコン酸化膜2における所定の領域に配線溝2a,2bが形成される。配線溝2a内には、クラッド層3aと銅膜3bからなる読み出し用配線3が形成される。配線溝2b内には、クラッド層4aと銅膜4bからなるディジット線DLが形成される。
【0033】
次に、ディジット線DLと読み出し用配線3を覆うように、シリコン酸化膜2上にシリコン窒化膜5およびシリコン酸化膜6が形成される。次に、シリコン酸化膜6およびシリコン窒化膜5を貫通して読み出し用配線4を露出する開口部7が形成される。その開口部7の底面および側壁を覆うように、シリコン酸化膜6上に、金属ストラップとなるタンタル(Ta)膜(図示せず)が形成される。
【0034】
次に、タンタル膜12にピン層となる所定の膜(図示せず)が形成される。その所定の膜として、たとえば、プラチナ(Pt)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ボロン(B)を含む積層膜が形成される。次に、ピン層となる所定の膜上にトンネル絶縁膜(図示せず)が形成される。トンネル絶縁膜として、たとえば、酸化アルミニム(AlOx)膜、または、酸化マグネシウム(MgO)膜等が形成される。
【0035】
次に、トンネル絶縁膜上にフリー層となる所定の膜が形成される。その所定の膜として、たとえば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびボロン(B)のうち、少なくとも2つの金属を含む合金膜が形成される。次に、フリー層となる所定の膜上にキャップ層となる所定の膜(図示せず)が形成される。キャップ層となる所定の膜として、たとえば、ルテニウム(Ru)膜が形成される。そのキャップ層となる所定の膜上にタンタル(Ta)膜(図示せず)が形成される。
【0036】
次に、タンタル(Ta)膜上に、磁気抵抗素子をパターニングするためのレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのレジストパターンをマスクとして、タンタル(Ta)膜、キャップ層となる所定の膜、フリー層となる所定の膜、トンネル絶縁膜およびピン層となる所定の膜に所定の条件のもとでエッチングを施すことにより、図6に示すように、磁気抵抗素子Mが形成される。
【0037】
次に、磁気抵抗素子Mを覆うように、ライナー膜としてシリコン窒化膜(図示せず)が形成される。次に、シリコン窒化膜上に、金属ストラップをパターニングするためのレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのレジストパターンをマスクとして、シリコン窒化膜およびタンタル(Ta)膜に所定の条件のもとでエッチングを施すことにより、図6に示すように、金属ストラップとしてのタンタル膜8およびライナー膜としてのシリコン窒化膜10が形成される。
【0038】
次に、磁気抵抗素子Mを覆うように、シリコン酸化膜11が形成される。そのシリコン酸化膜11に、磁気抵抗素子Mの表面を露出する開口部11aが形成され、その開口部11a内にトップヴィア12が形成される。次に、そのトップヴィア11aを覆うように、シリコン酸化膜14が形成される。次に、図7に示すように、シリコン酸化膜14に、ビット線を形成するための配線溝14aが形成される。次に、図8に示すように、スパッタ法により、配線溝14aの底面と側面を覆うように、たとえば、タンタル(Ta)等のバリアメタル層17が形成される。次に、スパッタ法により、バリアメタル層17の上に、磁場を遮蔽するクラッド層として、たとえば、ニッケル鉄(NiFe)の磁性体層18が形成される。
【0039】
次に、磁性体層18およびバリアメタル層17に、エッチングあるいはスパッタエッチングを施すことにより、図9に示すように、配線溝14aの側面上に位置する磁性体層18およびバリアメタル層17のそれぞれの部分(磁性体層18a、バリアメタル層17a)を残して、配線溝14aの底面とシリコン酸化膜14の上面上に位置する磁性体層18およびバリアメタル層17の部分が除去される。なお、このエッチングでは、配線溝14aの底に位置するバリアメタル層の部分が残されてもよいが、磁性体層18の部分を確実に除去する必要がある。
【0040】
次に、図10に示すように、スパッタ法により、配線溝14aの底面等を覆うように、たとえば、タンタル(Ta)等のバリアメタル層19が形成される。次に、図11に示すように、めっきにより、配線溝14aを充填するように銅膜20が形成される。次に、図12に示すように、化学的機械研磨処理を施して、シリコン酸化膜14の上面上に位置するバリアメタル層19および銅膜20の部分を除去することにより、配線溝14a内に残されたバリアメタル層19および銅膜20の部分(バリアメタル層19a、銅膜20a)が、ビット線BLとして形成される。
【0041】
次に、図13に示すように、ビット線BLの銅膜20aの銅の拡散を防止する配線材料拡散防止膜としてのシリコン窒化膜22が、ビット線BLの上面に接触するように形成される。次に、ヨークカバーとなる積層膜が順次形成される。まず、図14に示すように、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の膜厚約5nmの下層接着層となるバリアメタル層23が、シリコン窒化膜22の表面に接触するように形成される。次に、図15に示すように、スパッタ法により、磁場を遮蔽するニッケル鉄(NiFe)等の膜厚約15nmの磁性体層24が、バリアメタル層23の表面に接触するように形成される。次に、図16に示すように、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の膜厚約15nmの上層接着層となるバリアメタル層25が、磁性体層24の表面に接触するように形成される。こうして、ヨークカバーとなる積層膜MLが形成される。
【0042】
次に、積層膜ML(23,24,25)をパターニングするための写真製版処理を施す。図17に示すように、バリアメタル層25の表面に、有機系の反射防止膜26が形成される。次に、図18に示すように、反射防止膜26の表面上にフォトレジスト27が塗布される。次に、フォトレジスト27に写真製版処理を施すことにより、図19に示すように、ヨークカバーをパターニングするためのレジストマスク27aが形成される。レジストマスク27aは、ビット線BLに沿ってビット線BLを覆うように形成される。
【0043】
次に、積層膜ML(23,24,25)をパターニングする。まず、レジストマスク27aをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、反射防止膜26およびバリアメタル層25に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、バリアメタル層25のマスク(図示せず)が形成される(ステップ1)。次に、レジストマスク27aを除去し、バリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスの雰囲気のもとで、磁性体層24に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、磁性体層24をパターニングする(ステップ2)。次に、バリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、バリアメタル層23に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、バリアメタル層23をパターニングする(ステップ3)。
【0044】
こうして、積層膜ML(23,24,25)をパターニングすることにより、図20に示すように、バリアメタル層23a、磁性体層24aおよびバリアメタル層25aからなるヨークカバーYCが形成される。その後、ヨークカバーYCの表面に接触するようにシリコン窒化膜28を形成することにより、図5に示すように、MRAMの主要部分が形成される。
【0045】
上述したMRAMの製造方法では、ヨークカバーYCを、磁性体層を含む所定の積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、スループットを上げながら生産コストを抑えることができる。このことについて、比較例を交えて説明する。
【0046】
図21に示すように、ビット線CBLの上面に接触するように拡散防止膜としてのシリコン窒化膜122が形成された後、高密度プラズマ法(HDP:High Density Plasma)により、シリコン酸化膜130が形成される。次に、図22に示すように、そのシリコン酸化膜130に、ビット線CBLに沿ってシリコン窒化膜112の表面を露出する溝130aが形成される。次に、図23に示すように、溝130aの底面および側面を覆うように、シリコン酸化膜130の表面上に、バリアメタル層132、磁性体層133およびバリアメタル層134が順次形成される。こうして、ヨークカバーとなる積層膜CMLが形成される。次に、溝130aを充填するように、積層膜CMLの表面上に、高密度プラズマ法により、シリコン酸化膜135が形成される。
【0047】
次に、化学的機械研磨処理を施すことにより、溝130a内の底面と、底面近傍の側面に位置する積層膜CMLの部分(132a、133a、134a)を残して、他の積層膜CMLの部分およびシリコン酸化膜135の部分が除去される(図24参照)。こうして、図24に示すように、ヨークカバーCYCが形成される。
【0048】
比較例に係る半導体装置では、ヨークカバーCYCを形成するために、高密度プラズマ法によってシリコン酸化膜(シリコン酸化膜130,135)を形成する工程が2工程必要とされ、さらに、ヨークカバーとなる積層膜CMLとシリコン酸化膜135に化学的機械研磨処理を施す工程が必要とされる。このため、上述したMRAMにおけるヨークカバーの形成工程に比べて工程数が多く、生産コストの低減を阻害する要因となる。
【0049】
また、化学的機械研磨処理では、ウェハ(半導体基板)面内における研磨量にばらつきがあるため、このばらつきによる影響を低減するために、シリコン酸化膜として相応の膜厚のシリコン酸化膜を形成する必要があり、また、溝として相応の深さの溝を形成する必要があり、これらは、スループットを低下させてしまう要因となる。
【0050】
これに対して上述したMRAMでは、ヨークカバーYCは、シリコン窒化膜22を形成した後、所定の積層膜MLを形成し、その積層膜MLに反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成される。このため、比較例に比べて工程数が少なく、生産コストの低減に寄与することができる。また、ヨークカバーYCは、反応性イオンエッチングによる積層膜のパターニングによって実質的に形成されるため、ヨークカバーを形成する工程として工程がシンプルであり、スループットの向上を図ることができる。
【0051】
次に、図25に示すように、ヨークカバーYCの膜厚TH、下地のシリコン窒化膜22の膜厚TS、ヨークカバーYCの積層端面の形状(点線枠内)について説明する。まず、ヨークカバーYCの膜厚について説明する。
【0052】
反応性イオンエッチングによって積層膜をパターニングするためには、レジストマスクを形成する必要がある。レジストマスクを形成する際の写真製版処理(図19参照)では、アライメントマークに基づいて下地のパターンとの位置合わせを行う必要がある。このMRAMでは、アライメントマークは、ビット線を形成する際に同時にダマシン法によって形成される。このため、アライメントマークとしては段差がないため、積層膜を形成した後に、光を透過させてアライメントマークを検知することになる。
【0053】
ところが、積層膜はバリアメタル(Ta)層と磁性体層(NiFe)からなり、不透明な膜であるため、積層膜の膜厚が厚くなると、積層膜の下地に形成されているアライメントマークを検知することが困難になることがある。このため、アライメントマークを誤検知するなどして、フォトレジストマスクの写真製版処理を良好に行うことができなくなるおそれがある。
【0054】
そこで、発明者らは、ヨークカバーとなる積層膜の膜厚と、アライメントのずれとの関係について評価を行った。図26および図27に示すように、評価用の試料として、銅膜による矩形状のアライメントマークAMをダイシングライン領域に形成した試料を用意して、積層膜MLの膜厚THを振り分けた。また、積層膜ML上に塗布したフォトレジスト31には、フォーカスを合わせるための矩形状の抜きのパターン31aを形成した。フォトレジスト31にフォーカスを合わせた状態で、積層膜MLの下に位置するアライメントマークAMによる位置合わせを行って、アライメントのずれを評価した。その結果を図28に示す。
【0055】
図28は、アライメントのずれ量(縦軸)と積層膜の膜厚(横軸)との関係を示すグラフである。同グラフに示されるように、積層膜の膜厚が約50nm以下では、アライメントを合わせる光が積層膜を透過することができ、アライメントのずれ量は比較的小さいことがわかった。一方、積層膜の膜厚が約50nmを越えると、光が積層膜を透過することができなくなり、アライメントのずれ量が急激に増加することがわかった。この評価結果から、積層膜の膜厚は50nm以下に設定することが好ましいことが判明した。
【0056】
また、発明者らの評価により、ヨークカバーYCでは、磁性体層24aの膜厚が5nmよりも薄いと磁場を閉じ込め難いことがわかった。このため、MRAMとしての所望の特性を得るには、磁性体層24aの膜厚を5nm以上に設定することが好ましいことが判明した。また、バリアメタル層23aでは、膜厚が1nm以上あれば、下地のシリコン窒化膜との接着性を確保できることがわかった。さらに、バリアメタル層25aでは、反応性イオンエッチングを施す際のエッチングマスクとしての機能を確保するために、磁性体層24aと同程度の膜厚が好ましいことがわかった。この評価結果から、積層膜は、薄くても10nm以上になるように形成することが好ましいことが判明した。
【0057】
以上の評価結果から、積層膜をパターニングすることによって形成されるヨークカバーYCでは、その膜厚THは10nm以上50nm以下になる。
【0058】
次に、シリコン窒化膜22の膜厚TSについて説明する。ビット線BLとヨークカバーYCとの間に介在するシリコン窒化膜22では、その膜厚が薄い方が、ヨークカバーYCをビット線BLの上面に接近させることができて、ビット線BLとヨークカバーYCとの間から漏れる磁場を少なくすることができる。
【0059】
図29は、発明者らによって評価された、磁束密度(保磁力)とシリコン窒化膜の膜厚との関係を示すグラフである。横軸は、シリコン窒化膜の膜厚に相当する、ヨークカバーとビット線の上面との距離を示す。縦軸は、磁気抵抗素子とビット線間の距離を100nmとした場合の磁束密度(保磁力)を示す。グラフに示される規格値は、安定して磁気抵抗素子を磁化(保磁)できる磁束密度(保磁力)の下限値を示す。このグラフから、ヨークカバーとビット線の上面との距離、すなわち、シリコン窒化膜の膜厚が150nm以下であれば、磁場を閉じ込めて、磁気抵抗素子Mに磁場を集中的に作用させることができることがわかった。なお、上述したMRAMでは、シリコン窒化膜22の標準的な膜厚を約60nmとした。
【0060】
次に、ヨークカバーYCの積層膜の積層端面に形状について説明する。上述したMRAMでは、ヨークカバーYCは、積層膜MLに対し、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスによる反応性イオンエッチング(ステップ1)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスによる反応性イオンエッチング(ステップ2)および四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスによる反応性イオンエッチング(ステップ3)の3つのステップのエッチング処理を施すことによって形成される。
【0061】
発明者らの評価によれば、この3つのステップの反応性イオンエッチングによってパターニングされたヨークカバーYCの端面は、順テーパ状になることが確認された。すなわち、図25(点線枠A内)に示すように、積層膜MLの対向する2つの積層端面が、上方に向かって互いに近づく態様で、下地のシリコン窒化膜22の表面に交差するようにヨークカバーYCが形成されることがわかった。一方、比較例に係るMRAMでは、図24に示すように、化学的機械研磨処理によってヨークカバーを形成するため、ヨークカバーの積層端面は、シリコン酸化膜130の上面と同じ面に位置し、下地のシリコン窒化膜122の表面と交差することはない。
【0062】
図25に示すように、ヨークカバーYCの積層端面が順テーパ状になることで、ヨークカバーYCを覆う拡散防止膜としてのシリコン窒化膜28のカバレッジもよくなる。一般に、積層膜のうち、磁性体層はバリアメタル層よりもエッチングされやすい傾向にある。このため、図30に示すように、ヨークカバーCYCの積層端面には、磁性体層124aの端面がバリアメタル層123a,125aの端面よりも後退することによってサイドエッチが発生することがある。ヨークカバーCYCの積層端面にサイドエッチが生じた状態でシリコン窒化膜128が形成されると、シリコン窒化膜によって、互いに隣接するヨークカバーCYCとヨークカバーCYCとの間に位置する領域を良好に埋め込むことができず、ボイド128aが形成されることがある。このため、矢印CJに示すように、磁場が漏れてしまうおそれがある。
【0063】
一方、図31に示すように、積層端面が順テーパ状のヨークカバーYCでは、シリコン窒化膜28によって、互いに隣接するヨークカバーYCとヨークカバーYCとの間に位置する領域(点線枠B)を良好に埋め込むことができ、シリコン窒化膜28にボイドが生じるのを抑制することができる。しかも、積層端面が順テーパ状に形成されることで、レジストマスクを形成する際の露光マージンを下げることなく、ヨークカバーYCの寸法を長くすることができる。すなわち、ビット線が延在する方向と直交する方向(ディジット線が延在する方向)に互いに隣接するレジストマスク間の間隔を狭めることなく、ヨークカバーYCの幅を広げることができる。これにより、ビット線BLとヨークカバーYCとのオーバラップマージンが上がり、矢印Jに示すように、磁場の漏れを効果的に抑制して磁場を閉じ込めておくことができる。
【0064】
実施の形態2
ここでは、磁性体層と上層のバリアメタル層の2層からなるヨークカバーを備えたMRAMについて説明する。図32および図33に示すように、ビット線BLの上面を覆うヨークカバーYCは、たとえば、ニッケル鉄(NiFe)の磁性体層24aおよびタンタル(Ta)等のバリアメタル層25aの積層膜からなる。ヨークカバーYCとビット線BLとの間に介在するシリコン窒化膜22には、リスパッタ法により、表面から所定の深さにわたり、たとえば、タンタル(Ta)を導入することにより、金属材料と絶縁性材料とが混合されたミキシング層41が形成されている。ミキシング層41は、ヨークカバーYCの磁性体層24aのシリコン窒化膜22への接着性を高める機能を有する。なお、これ以外の構成については、図3〜図5に示すMRAMと同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を繰り返さないこととする。
【0065】
次に、上述したMRAMの製造方法について説明する。まず、前述した図6〜図13に示す工程と同様の工程を経て、図34に示すように、ビット線BLの上面に接触するように、配線材料の拡散防止膜としてのシリコン窒化膜22が形成される。次に、所定のスパッタチャンバー内にてシリコン窒化膜22に対しリスパッタ処理を施すことにより、シリコン窒化膜22の表面から所定の深さにわたり、絶縁材料としてのシリコン窒化膜に金属材料を混合させたミキシング層が形成される。
【0066】
図35に示すように、スパッタチャンバー42内の下部には、ステージ46が設けられ、そのステージを取り囲むようにコイル45が配置されている。ステージの46の上方には、金属材料として、たとえば、ニッケル鉄(NiFe)またはタンタル(Ta)のターゲット44が配置されている。そのターゲット44の上方には、マグネット43が配置されている。ステージ46には、交流電源が接続され、コイル45には、高周波電源と直流電源が接続されている。また、ターゲット44には、直流電源が接続されている。
【0067】
ステージ46上に半導体基板(ウェハ)が載置されて、ステージ46には相対的に高いバイアス電圧を印加し、ターゲット44には相対的に低いバアイス電圧を印加する。スパッタチャンバー42内にアルゴンガスを導入してプラズマを生成する。プラズマが生成されることによって、アルゴンは相対的にバイアス電圧の高いステージ46側に引き寄せられ、その引き寄せられたアルゴンによって、ウェハ表面のシリコン窒化膜22がスパッタされる(スパッタエッチ)。
【0068】
一方、相対的に低いバイアス電圧が印加されているターゲット44側にも、一部のアルゴンが引き寄せられて、ニッケル鉄(NiFe)がスパッタされる。スパッタされたニッケル鉄(NiFe)はイオン化しているために、相対的にバイアス電圧の高いステージ46側に引き寄せられて、シリコン窒化膜22にニッケル鉄(NiFe)が打ち込まれる。こうして、図36に示すように、シリコン窒化膜22の表面から所定の深さにわたり、ニッケル鉄(NiFe)が導入されて、シリコン窒化膜22にニッケル鉄が混合されたミキシング層41が形成される。
【0069】
次に、ヨークカバーとなる積層膜が順次形成される。まず、図37に示すように、スパッタ法により、磁場を遮蔽するニッケル鉄(NiFe)等の膜厚約15nmの磁性体層24が、ミキシング層41(シリコン窒化膜22)の表面に接触するように形成される。次に、図38に示すように、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の膜厚約15nmの上層接着層となるバリアメタル層25が、磁性体層24の表面に接触するように形成される。こうして、ヨークカバーとなる積層膜MLが形成される。
【0070】
次に、積層膜ML(24,25)をパターニングするための写真製版処理を施す。図39に示すように、バリアメタル層25の表面に、有機系の反射防止膜26が形成される。次に、反射防止膜26の表面上にフォトレジスト(図示せず)が塗布される。次に、フォトレジストに写真製版処理を施すことにより、図40に示すように、ヨークカバーをパターニングするためのレジストマスク27aが形成される。
【0071】
次に、積層膜ML(24,25)をパターニングする。まず、レジストマスク27aをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、反射防止膜26およびバリアメタル層25に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、バリアメタル層25のマスク(図示せず)が形成される(ステップ1)。次に、レジストマスク27aを除去し、バリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスの雰囲気のもとで反応性イオンエッチング処理(ステップ2)を施し、さらに、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで反応性イオンエッチング処理(ステップ3)を施すことにより、磁性体層24をパターニングする。
【0072】
こうして、積層膜ML(24,25)をパターニングすることにより、図41に示すように、磁性体層24aおよびバリアメタル層25aからなるヨークカバーYCが形成される。その後、ヨークカバーYCの表面に接触するようにシリコン窒化膜28を形成することにより、図32に示すように、MRAMの主要部分が形成される。
【0073】
上述したMRAMでは、ヨークカバーYCは、磁性体層24aとバリアメタル層25aの積層膜からなり、磁性体層24aがシリコン窒化膜22の表面に接触する態様で形成されている。磁性体層をなすニッケル鉄(NiFe)は、一般的に耐食性に優れており、反応性が低く安定な物質であるため、磁性体とは異なる異種の物質、とりわけ、絶縁膜との接着性が悪いとされる。このため、磁性体層が絶縁膜に直接形成された構造では、磁性体層が剥がれやすくなってしまう。
【0074】
発明者らは、種々の評価を行うことによって、ヨークカバーとなる磁性体層を形成する前に、絶縁膜であるシリコン窒化膜22の表面にリスパッタ処理を施すことで、ヨークカバーYCとシリコン窒化膜22との接着性を向上することができることを見出した。
【0075】
ここで、発明者らが行ったX線反射率測定(XRR:X-Ray Reflectivity)による評価について説明する。試料として、まず、膜厚約100nmのシリコン酸化膜を形成したウェハ(半導体基板)を用意した。次に、そのウェハをスパッタチャンバー内のステージに載置し、シリコン酸化膜にリスパッタ処理を約5秒間施した。ターゲットの材料として、タンタル(Ta)とニッケル鉄(NiFe)との2種類を用いた。その結果を図42に示す。
【0076】
図42に示すように、ターゲットの材料として、タンタル(Ta)を適用した場合では、シリコン酸化膜の表面から約6.8nmの深さにまで、タンタル(Ta)が打ち込まれていることが判明した。一方、ターゲットの材料として、ニッケル鉄(NiFe)を適用した場合では、シリコン酸化膜の表面から約4.6nmの深さにまで、ニッケル鉄(NiFe)が打ち込まれていることが判明した。
【0077】
また、タンタルが打ち込まれたシリコン酸化膜の密度(膜厚平均)は、3.8g/cm3となり、また、ニッケル鉄が打ち込まれたシリコン酸化膜の密度(膜厚平均)は約2.88g/cm3となり、リスパッタ処理が施されたシリコン酸化膜では、シリコン酸化膜の密度とは異なる密度の領域が形成されていることが実証された。この領域では、絶縁膜をなす絶縁材料と、打ち込まれたニッケル鉄(NiFe)等の金属材料とが混合しており、発明者らは、この領域を「ミキシング層」と称した。
【0078】
上述したMRAMでは、図43に示すように、シリコン窒化膜22の表面から所定の深さTSMにわたりミキシング層41が形成されて、このミキシング層41が、ヨークカバーYCの磁性体層24aをシリコン窒化膜22に接着させる接着層としての機能を有していると、発明者らは考えた。このような接着層としての機能を持たせる金属材料としては、ニッケル鉄(NiFe)あるいはタンタル(Ta)の他に、不活性な金属(Au等)以外の金属が望ましいと考えられる。
【0079】
なお、上述したMRAMでは、図3等に示されるMRAMと同様に、磁性体層を含む所定の積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、スループットを上げながら生産コストを抑えることができる。また、レジストマスクを形成する際のアライメントのずれを抑制するとともに、磁場を効果的に閉じ込めておくために、ヨークカバーYCの膜厚(磁性体層+バリアメタル層)THは、10nm以上50nm以下であることが望ましい(図43参照)。
【0080】
さらに、反応性イオンエッチングによってパターニングされるヨークカバーYCの端面(積層端面)が順テーパ状になることで、レジストマスクを形成する際の露光マージンを下げることなく、ビット線BLとヨークカバーYCとのオーバラップマージンが上がり、磁場の漏れを抑制して磁場を閉じ込めておくことができる。また、ヨークカバーYCを覆う拡散防止膜としてのシリコン窒化膜28のカバレッジもよくなる。
【0081】
実施の形態3
ここでは、比較的厚い磁性体層を含むヨークカバーを備えたMRAMについて説明する。図3等に示されるMRAMでは、ヨークカバーYCをなす積層膜のうち、磁性体層24aの膜厚が約15nmである場合を例に挙げた。MRAMのスペックによっては、膜厚が約25nm以上の磁性体層が要求される場合がある。
【0082】
この場合、上層のバリアメタル層25aと磁性体層24aを同程度の膜厚にすることを考慮すると、下層のバリアメタル層23aの膜厚を1nmとしても、上層のバリアメタル層25aの膜厚は24nmが上限値となって、上層のバリアメタル層25aの膜厚(最大膜厚24nm)を磁性体層24aの膜厚(25nm以上)と同じ膜厚にすることができなくなる。
【0083】
本実施の形態に係るMRAMでは、そのような場合を想定して、上層のバリアメタル層の膜厚を補完させるハードマスク絶縁膜が形成されている。図44および図45に示すように、ヨークカバーYCのバリアメタル層25aの表面に接触するように、反射防止膜を兼ねたハードマスクとしてのシリコン窒化膜51aが形成されている。バリアメタル層25aとシリコン窒化膜51aとを合わせた膜厚が、磁性体層24aの膜厚とほぼ同じ膜厚になる。なお、これ以外の構成については、図3〜図5に示すMRAMと同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を繰り返さないこととする。
【0084】
次に、上述したMRAMの製造方法について説明する。まず、前述した図6〜図13に示す工程と同様の工程を経て、図46に示すように、ビット線BLの上面に接触するように、配線材料の拡散防止膜としてのシリコン窒化膜22が形成される。
【0085】
次に、ヨークカバーとなる積層膜が順次形成される。まず、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の膜厚約1nmの下層接着層となるバリアメタル層23が、シリコン窒化膜22の表面に接触するように形成される。次に、図47に示すように、スパッタ法により、磁場を遮蔽するニッケル鉄(NiFe)等の膜厚約25nm以上の磁性体層24が、バリアメタル層23の表面に接触するように形成される。次に、図48に示すように、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の膜厚約15nmの上層接着層となるバリアメタル層25が、磁性体層24の表面に接触するように形成される。こうして、ヨークカバーとなる積層膜MLが形成される。
【0086】
次に、図49に示すように、バリアメタル層25の表面に接触するように、反射防止膜を兼ねたハードマスクとなるシリコン窒化膜51が形成される。シリコン窒化膜51の膜厚は、シリコン窒化膜51とバリアメタル層25とを合わせた膜厚が、磁性体層24の膜厚と同程度になるような膜厚とされる。
【0087】
次に、積層膜ML(23,24,25)をパターニングするための写真製版処理を施す。まず、図50に示すように、反射防止膜としてのシリコン窒化膜51の表面上にフォトレジスト27が塗布される。次に、フォトレジスト27に写真製版処理を施すことにより、図51に示すように、ヨークカバーをパターニングするためのレジストマスク27aが形成される。
【0088】
次に、積層膜ML(23,24,25)をパターニングする。まず、レジストマスク27aをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、シリコン窒化膜51およびバリアメタル層25に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、シリコン窒化膜51とバリアメタル層25のマスク(図示せず)が形成される(ステップ1)。次に、レジストマスク27aを除去し、反射防止膜26とバリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスの雰囲気のもとで、磁性体層24に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、磁性体層24をパターニングする(ステップ2)。次に、バリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、バリアメタル層23に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、バリアメタル層23をパターニングする(ステップ3)。
【0089】
こうして、反応性イオンエッチングによって積層膜ML(23,24,25)をパターニングすることにより、図52に示すように、バリアメタル層23a、磁性体層24aおよびバリアメタル層25aからなるヨークカバーYCが形成される。そのヨークカバーYCのバリアメタル層25aの表面上には、ハードマスクとしてのシリコン窒化膜51aが残されている。その後、ヨークカバーYCの積層端面およびシリコン窒化膜51aの表面に接触するようにシリコン窒化膜28を形成することにより、図45に示すように、MRAMの主要部分が形成される。
【0090】
上述したMRAMでは、次のような効果が得られる。まず、MRAMでは、磁場を外部に漏らさないようにするために、MRAMのスペックによってはヨークカバーYCの磁性体層24aとして、約25nm以上の比較的厚い膜厚が要求される場合がある。一方、すでに説明したように、アライメントのずれを抑制する観点からヨークカバーYCの膜厚THには上限値(約50nm)がある。また、上層のバリアメタル層25には、反応性イオンエッチングを施す際のエッチングマスクとしての機能を確保するために、磁性体層24と同程度の膜厚が要求される。
【0091】
そうすると、ヨークカバーYCの膜厚の上限値の制約から、バリアメタル層25の膜厚を磁性体層24の膜厚と同程度に厚くすることができず、バリアメタル層25だけではハードマスクとしての膜厚を確保できないような場合が想定される。上述したMRAMでは、ハードマスクとして不足する膜厚分のシリコン窒化膜51をバリアメタル層25の表面に形成することで、ハードマスクとしての膜厚が確保されて、ヨークカバーYCを確実にパターニングすることができる。
【0092】
また、シリコン窒化膜51は透明であるため、シリコン窒化膜51によってアライメントに支障を来たすこともない。さらに、シリコン窒化膜51は、反射防止膜としての機能を備えていることで、有機系の反射防止膜を形成する工程を省くことができる。
【0093】
また、上層のバリアメタル層25はシリコン窒化膜51によって覆われるため、反応性イオンエッチング処理を施す際に、バリアメタル層が酸化されて応力が変動するのを防止することができる。このため、ヨークカバーYCとシリコン窒化膜22との接着性を確保するための下層のバリアメタル層を省くことも可能になる。
【0094】
下層のバリアメタル層を省く場合においては、酸素を含んだガスを使用してシリコン窒化膜を形成しようとすると、上層のバリアメタル層25が酸化されて応力変動を引き起こし、シリコン窒化膜22と磁性体層24との界面において剥離が生じることがある。このため、下層のバリアメタル層を省く場合には、このような剥離を避けるために、酸素を含まない雰囲気のもとでシリコン窒化膜51を形成することが必須条件となる。このため、シリコン窒化膜51は、たとえば、モノシラン(SiH4)とアンモニア(NH3)ガスとを反応させることによって形成することが望ましい。
【0095】
なお、上述したMRAMでは、図3等に示されるMRAMと同様に、磁性体層を含む所定の積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、スループットを上げながら生産コストを抑えることができる。また、レジストマスクを形成する際のアライメントのずれを抑制するとともに、磁場を効果的に閉じ込めておくために、ヨークカバーYCの膜厚(バリアメタル層23a+磁性体層24a+バリアメタル層25a)THは、10nm以上50nm以下であることが望ましい。
【0096】
さらに、反応性イオンエッチングによってパターニングされるヨークカバーの端面(積層端面)が順テーパ状になることで、レジストマスクを形成する際の露光マージンを下げることなく、ビット線BLとヨークカバーYCとのオーバラップマージンが上がり、磁場の漏れを抑制して磁場を閉じ込めておくことができる。また、ヨークカバーYCを覆う拡散防止膜としてのシリコン窒化膜28のカバレッジもよくなる。
【0097】
実施の形態4
前述した各MRAMでは、ビット線BLの材料が拡散するのを防止するために、ヨークカバーYCとビット線BLとの間に拡散防止膜としてのシリコン窒化膜が形成された場合を例に挙げて説明した。ここでは、ヨークカバーYCとビット線BLとの間に拡散防止膜を介在させていないMRAMについて説明する。
【0098】
図53および図54に示すように、ヨークカバーYCの下層のバリアメタル層23aは、ビット線BLの上面に接触するように形成されている。なお、これ以外の構成については、図3〜図5に示すMRAMと同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を繰り返さないこととする。
【0099】
次に、上述したMRAMの製造方法について説明する。まず、前述した図6〜図12に示す工程と同様の工程を経て、図55に示すように、ビット線BLが形成される。次に、ヨークカバーとなる積層膜が順次形成される。まず、図56に示すように、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の下層接着層となる膜厚約1nmのバリアメタル層23が、ビット線BLの上面に接触するように形成される。
【0100】
次に、スパッタ法により、磁場を遮蔽するニッケル鉄(NiFe)等の磁性体層24が、バリアメタル層23の表面に接触するように形成される。次に、スパッタ法により、たとえば、タンタル(Ta)等の上層接着層となるバリアメタル層25が、磁性体層24の表面に接触するように形成される。こうして、ヨークカバーとなる積層膜MLが形成される。
【0101】
次に、積層膜ML(23,24,25)をパターニングするための写真製版処理を施す。まず、図57に示すように、バリアメタル層25の表面に接触するように、有機系の反射防止膜26が形成される。次に、反射防止膜26の表面上にフォトレジスト(図示せず)が塗布される。次に、フォトレジストに写真製版処理を施すことにより、図58に示すように、ヨークカバーをパターニングするためのレジストマスク27aが形成される。
【0102】
次に、積層膜ML(23,24,25)をパターニングする。まず、レジストマスク27aをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、反射防止膜26およびバリアメタル層25に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、バリアメタル層25のマスク(図示せず)が形成される(ステップ1)。次に、レジストマスク27aを除去し、バリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスの雰囲気のもとで、磁性体層24に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、磁性体層24をパターニングする(ステップ2)。次に、バリアメタル層25のマスクをエッチングマスクとして、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスの雰囲気のもとで、バリアメタル層23に反応性イオンエッチング処理を施すことにより、バリアメタル層23をパターニングする(ステップ3)。
【0103】
こうして、積層膜ML(23,24,25)をパターニングすることにより、図59に示すように、バリアメタル層23a、磁性体層24aおよびバリアメタル層25aからなるヨークカバーYCが形成される。その後、ヨークカバーYCの表面に接触するようにシリコン窒化膜28を形成することにより、図54に示すように、MRAMの主要部分が形成される。
【0104】
上述したMRAMでは、ヨークカバーYCは、ビット線BLの表面に接触する態様でビット線BLを覆うように形成されている。発明者らは、種々の評価を行うことによって、ヨークカバーYCのバリアメタル層23aの膜厚が約1nm以上あれば、バリアメタル層23aによってビット線BLの配線材料が拡散するのを防止することができることを見出した。拡散防止膜としてのシリコン窒化膜を省くことで、生産コストの削減に寄与することができる。
【0105】
なお、上述したMRAMでは、図3等に示されるMRAMと同様に、磁性体層を含む所定の積層膜に反応性イオンエッチング処理を施すことによって形成することで、スループットを上げながら生産コストを抑えることができる。また、レジストマスクを形成する際のアライメントのずれを抑制するとともに、磁場を効果的に閉じ込めておくために、ヨークカバーYCの膜厚(バリアメタル層23a+磁性体層24a+バリアメタル層25a)THは、10nm以上50nm以下であることが望ましい。
【0106】
さらに、反応性イオンエッチングによってパターニングされるヨークカバーの端面(積層端面)が順テーパ状になることで、レジストマスクを形成する際の露光マージンを下げることなく、ビット線BLとヨークカバーYCとのオーバラップマージンが上がり、磁場の漏れを抑制して磁場を閉じ込めておくことができる。また、ヨークカバーYCを覆う拡散防止膜としてのシリコン窒化膜28のカバレッジもよくなる。
【0107】
各実施の形態に係る半導体装置(MRAM)では、ヨークカバーYCは、所定の積層膜に3ステップの反応性イオンエッチング処理を施すことによってパターニングされる点に特徴がある。その第1ステップにおけるガス種として、四フッ化炭素(CF4)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを例に挙げたが、ガス種としてはこれに限られず、ハロゲン系のガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを用いることができる。
【0108】
また、第2ステップにおけるガス種として、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを例に挙げたが、ガス種としてはこれに限られず、たとえば、トリフルオロメタン(CHF3)ガス、アンモニア(NH3)ガスおよび酸素(O2)の混合ガスでもよく、また、塩素(Cl2)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスでもよい。
【0109】
さらに、第3ステップにおけるガス種として、四フッ化炭素(CF4)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを例に挙げたが、ガス種としてはこれに限られず、たとえば、C(x=1〜6、y=1〜8(x=1、y=4を除く))ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガス、トリフルオロメタン(CHF3)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガス、ジフルオロメタン(CH22)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガス、一酸化炭素(CO)およびアルゴン(Ar)ガスの混合ガス等の、元素として炭素を含むガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスを用いることができる。また、アンモニア(NH3)とアルゴンガス(Ar)との混合ガスも、第3ステップのエッチングに適用することが可能である。
【0110】
また、ビット線の配線材料の拡散を防止する膜として、シリコン窒化膜を例に挙げて説明したが、拡散防止効果のある絶縁膜であればよく、たとえば、シリコン炭化窒化(SiCN)膜、あるいは、シリコン酸窒化(SiON)膜等も適用することができる。下層の接着層として、タンタル(Ta)膜を例に挙げて説明したが、下方の絶縁膜と上方の磁性体膜の双方と密着性がある材料であればよく、たとえば、タンタルナイトライド(TaN)膜、チタン(Ti)膜、チタンナイトライド(TiN)膜、ニッケル(Ni)膜、鉄(Fe)膜、タングステン(W)膜等も適用することができる。上層の接着層として、タンタル(Ta)膜を例に挙げて説明したが、ハードマスクとしても適用可能な膜であればよく、タンタルナイトライド(TaN)膜、チタンナイトライド(TiN)膜、あるいは、チタン(Ti)膜等を適用することができる。
【0111】
反射防止膜として、シリコン窒化膜を例に挙げて説明したが、BARC(Bottom Anti Reflective Coating)、あるいは、シリコン酸窒化(SiON)膜等を適用することができる。磁性体層としてニッケル鉄(NiFe)を例に挙げて説明したが、鉄(Fe)を含む磁性体合金であればよく、たとえば、コバルト鉄(CoFe)等でもよい。ビット線としては、ダマシン法によって形成される銅配線を例に挙げて説明したが、アルミニウム(Al)配線でもよい。
【0112】
また、上述した各MRAMでは、図3等に示されるように、磁気抵抗素子Mとビット線BLとがトップヴィア12を介して電気的に接続されている構造を例に挙げて説明したが、図60に示すように、トップヴィアを備えずに、磁気抵抗素子Mにビット線BLが直接接続されているMRAMにおいても、上述したヨークカバーYCを適用することができる。なお、図60では、図3に示す構造と同一部材については、同一符号を付している。
【0113】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、記憶素子として磁気抵抗素子を備えたMRAMに有効に利用される。
【符号の説明】
【0115】
1 半導体基板、2 シリコン酸化膜、2a,2b 配線溝、3 読み出し用配線、3a クラッド層、3b 銅膜、DL ディジット線、4a クラッド層、4b 銅膜、5 シリコン窒化膜、6 シリコン酸化膜、7 開口部、8 タンタル膜、M 磁気抵抗素子、10 シリコン窒化膜、11 シリコン酸化膜、11a 開口部、12 トップヴィア、14 シリコン酸化膜、14a 配線溝、17,17a バリアメタル層、18,18a クラッド層、19,19a バリアメタル層、20,20a 銅膜、BL ビット線、22 シリコン窒化膜、23,23a バリアメタル層、24,24a 磁性体層、25,25a バリアメタル層、ML 積層膜、YC ヨークカバー、26 反射防止膜、27 フォトレジスト、27a フォトレジストマスク、28 シリコン窒化膜、AM 銅アライメントマーク、31 フォトレジスト、31a 開口部、41 ミキシング層、42 チャンバー、43 マグネット、44 ニッケル鉄ターゲット、45 コイル、46 ステージ、51 シリコン窒化膜、51a シリコン窒化膜、TM 素子選択用トランジスタ、TP トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主表面の上方に磁気抵抗素子を形成する工程と、
前記磁気抵抗素子の直上に距離を隔てて、所定の方向に延在するビット線を形成する工程と、
前記ビット線を覆うように所定の積層膜を形成する工程と、
前記積層膜に加工を施すことにより、前記ビット線を流れる電流によって生じる磁場を遮蔽するヨークカバーを形成する工程と
を有し、
前記積層膜を形成する工程は、
前記ビット線を覆うように第1接着層を形成する工程と、
前記第1接着層の表面に接触するように、磁場を遮蔽する磁性体層を形成する工程と、
前記磁性体層の表面に接触するように第2接着層を形成する工程と
を備え、
前記ヨークカバーを形成する工程は、
前記ビット線の直上に位置する領域を覆うように、レジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクとして、ハロゲン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施すことにより、前記第2接着層をパターニングする第1工程と、
パターニングされた前記第2接着層をエッチングマスクとして、アンモニアおよびアルゴン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施す第2工程と、
パターニングされた前記第2接着層をエッチングマスクとし、元素として炭素を含んだガスによる反応性イオンエッチング処理を施す第3工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記積層膜を形成する工程の前に、前記ビット線の上面に接触するように、前記ビット線の配線材料が拡散するのを防止する拡散防止膜を形成する工程を備え、
前記積層膜を形成する工程では、前記第1接着層は前記拡散防止膜の表面に接触するように形成される、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記積層膜を形成する工程の後、前記第2接着層の表面に接触するように絶縁膜を形成する工程を備え、
前記ヨークカバーを形成する工程における前記第1工程では、前記絶縁膜および前記第2接着層がパターニングされ、
前記ヨークカバーを形成する工程における前記第2工程および前記第3工程のそれぞれでは、パターニングされた前記絶縁膜および前記第2接着層がエッチングマスクとされる、請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記積層膜を形成する工程では、前記第1接着層は、前記ビット線の上面に接触するように形成される、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板の主表面の上方に磁気抵抗素子を形成する工程と、
前記磁気抵抗素子の直上に距離を隔てて、所定の方向に延在するビット線を形成する工程と、
前記ビット線の上面に接触するように、前記ビット線の配線材料が拡散するのを防止する拡散防止膜を形成する工程と、
前記拡散防止膜の表面に接触するように所定の積層膜を形成する工程と、
前記積層膜に加工を施すことにより、前記ビット線を流れる電流によって生じる磁場を遮蔽するヨークカバーを形成する工程と
を有し、
前記拡散防止膜を形成する工程と前記積層膜を形成する工程との間に、前記拡散防止膜に金属材料を導入することにより、前記拡散防止膜の表面から所定の深さにわたり前記金属材料を含むミキシング層を形成する工程を備え、
前記積層膜を形成する工程は、
前記拡散防止膜の表面に接触するように、磁場を遮蔽する磁性体層を形成する工程と、
前記磁性体層の表面に接触するように接着層を形成する工程と
を備え、
前記ヨークカバーを形成する工程は、
前記接着層の表面上における、前記ビット線の直上に位置する領域を覆うように、レジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクとして、ハロゲン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施すことにより、前記接着層をパターニングする第1工程と、
パターニングされた前記接着層をエッチングマスクとして、アンモニアおよびアルゴン系ガスによる反応性イオンエッチング処理を施す第2工程と、
パターニングされた前記接着層をエッチングマスクとし、元素として炭素を含んだガスによる反応性イオンエッチング処理を施す第3工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ミキシング層を形成する工程では、リスパッタ法により前記金属材料が導入される、請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の主表面の上方に形成された磁気抵抗素子と、
前記磁気抵抗素子の直上に距離を隔てられ、所定の方向に延在するように形成されたビット線と、
前記ビット線の上面を覆うように形成され、前記ビット線に流れる電流によって生じる磁場を遮蔽するヨークカバーと
を備え、
前記ヨークカバーは、積層端面が順テーパ状の所定の積層膜を備え、
所定の前記積層膜は、
磁性体層と、
前記磁性体層の上面に接触するように形成された上層接着層と
を含む、半導体装置。
【請求項8】
前記ヨークカバーは、所定の前記積層膜として、前記磁性体層の下面に接触するように形成された下層接着層をさらに含む、請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記下層接着層の下面に接触するとともに、前記ビット線の上面に接触するように形成され、前記ビット線の配線材料の拡散を防止する拡散防止膜を備えた、請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記上層接着層の表面に接触するように形成された絶縁膜を備え、
前記絶縁膜の端面は、順テーパ状の前記積層端面に繋がるように順テーパ状にされた、請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記下層接着層は前記ビット線の上面に接触するように形成された、請求項8記載の半導体装置。
【請求項12】
前記磁性体層の下面に接触するとともに、前記ビット線の上面に接触するように形成され、前記ビット線の配線材料の拡散を阻止する拡散防止膜を備え、
前記拡散防止膜は、表面から所定の深さにわたり、前記ヨークカバーを接着するための金属材料を含んだミキシング層を備えた、請求項7記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ヨークカバーの厚みは10nm以上50nm以下である、請求項7〜12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ヨークカバーの表面に接触するように形成されたキャップ層を備えた、請求項7〜13のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【公開番号】特開2011−253985(P2011−253985A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127766(P2010−127766)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】