説明

半導体装置の製造方法

【課題】CVD法でTaSiN系又はTiSiN系膜によるゲート電極を形成することで、成膜時の組成を制御することトランジスタの閾値電圧を制御する半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】Si原料として水素化シリコン、Ta原料としてTaのアミド化合物、イミド化合物又はハロゲン化物から選択される1つと又はTi原料として四塩化チタンを、N原料としてはNHとをそれぞれ供給して、Si堆積膜層が0.2〜2.0nm、TaN又はTiN堆積膜層が0.5〜3.0nmを交互に積層させ、TaSi又はTiSi膜層(ここで、xが0.1〜3.0、yが0.5〜5.0の範囲にする。)を1〜20nmの層厚にする半導体装置の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート電極を有する半導体装置の製造方法及びこれによって製造される半導体装置に関し、特に、仕事関数を制御することができるゲート電極を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の情報化社会の中で、通信機器・情報機器に使用される半導体装置はますます小さくなっている。そのために、半導体装置を製造するための加工技術は、さらに発展し、個々の半導体装置はますます微細化されている。それとともに、トランジスタ構造も微細化され、そのゲート絶縁膜の厚さも、数十nm程度にまでなってきている。この程度にまでゲート絶縁膜が薄くなると、量子効果が顕在化し、トンネル効果によりリーク電流が急増してしまうようになる。その結果、オフ電流が増加して消費電力が増加したり回路動作をしなくなったりするといった問題が生じる。このようなリーク電流を抑制するために、具体的には、誘電率の高い、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化タンタル(Ta)などの高誘電体材料がゲート絶縁膜材料として挙げられている。これら高誘電率ゲート絶縁膜採用の効果を充分に引き出すためには、従来のポリシリコン電極に替わって金属電極を用いる事が望ましい。
【0003】
これらの高誘電体材料のゲート絶縁膜材料に対応する材料として、化学的・熱的に安定なTaN系、TaSiN系膜等の開発が進められている。例えば、非特許文献1では、TaN、TaSiN系膜と高誘電率材料を組み合わせる事で、n型MOSFETに要求される特性が合致していることが開示されている。また、非特許文献2では、TaN、TaSiN系膜をCVD法又はALD法で堆積する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1では、金属ゲート電極として、それぞれ最適な仕事関数を有する材料を用い、低しきい値電圧のMISFETを形成する半導体装置が開示されている。また、特許文献2では、ゲート電極のゲート絶縁膜側から見た仕事関数を、そのゲート電極の材料のもつ特性値とは異なる値に自由に連続的に制御し、それによりVthを連続的に制御するMIS型トランジスタが開示されている。また、特許文献3では、PMOSおよびNMOSゲートで共通の材料が使用でき、同じゲート金属材料を使用して異なる仕事関数が生成できるスタック金属ゲートMOSFETおよびその製造方法が開示されている。特許文献4では、密着性が悪くならない程度の仕事関数を有する金属膜または金属化合物よりなる膜をゲート電極として使用した場合に、しきい値電圧を低く抑制できる半導体装置が開示されている。特許文献5では、ゲート電極をその下のゲート絶縁膜から保護するための方法、および対応するトランジスタ構造が開示されている。
【0005】
しかし、これらのTaSiN系膜をポリシリコンに替えて採用する場合、TaSiN系膜の膜組成を最適化する必要がある。非特許文献1の例を見ても分る通り、TaSiN系は閾値電圧に対する組成依存性は大きい、即ち、TaSiN系は組成によって仕事関数が多く変化するために、このTaSiN系を用いる場合にはその組成を制御しなければならない。一般に、金属膜の膜組成はスパッタ法では比較的容易に調整可能であるが、TaSiN系の膜を形成するCVD法では、膜質が良い成膜条件と望ましい組成の膜が堆積する成膜条件が一致するとは限らない。また、TaSiN系膜の場合には最適の閾値電圧を与える組成はプロセス全体の熱履歴に強く依存する上、その最適組成は、しばしば膜が非常に高抵抗になる領域に存在する。したがって、CVD法でTaSiN系膜を形成するには、最適組成になるように制御しなければならない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−118175号公報
【特許文献2】特開2003−23152号公報
【特許文献3】特開2004−221596号公報
【特許文献4】特開2004−289061号公報
【特許文献5】特開2005−244186号公報
【非特許文献1】Y. Suh, G. Heuss, J. Lee, and V. Misra:“Effect of the Composition on the Electrical Properties of TaSixNy Metal Gate Electrodes”, IEEE Elec. Dev. Lett. 24(2003) p439.
【非特許文献2】H. Kim:“Atomic layer deposition of metal and nitride thin films: Current research efforts and applications for semiconductor device processing”, J. Vac. Sci. Technol.B21 (2003) p2231.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、半導体装置のゲート電極は、絶縁膜に対するダメージの少ないCVD法で形成することが望ましい。しかし、上記のようにCVD法でゲート電極の膜組成を自由に制御することは容易ではない。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、CVD法でTaSiN系又はTiSiN系膜によるゲート電極を形成し、成膜時に組成を制御することで所望の閾値電圧を有する半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明の半導体装置の製造方法では、半導体基板上にCVD法で形成されるTaSiN系又はTiSiN系(以下、単に「TaSiN系等」と記す。)のゲート電極を形成する際に、Si堆積膜層とTaN堆積膜層又はTiN堆積膜を交互に積層して形成する。本発明では、TaSiN系膜の組成を制御するのに、特に、従来のように原料ガス、流量比等のみを制御するのではない。本発明の発明者は、高抵抗化したTaSiN系膜の膜組成と膜中金属の化学状態を調べ、特に、膜中のSi原子が典型的な絶縁膜であるSi膜のSi原子と同程度に窒化されていることを見出した。これは、成膜中にNとSiとの反応が充分進んだ結果である。CVD法等の成膜法を採用する限り、この反応は避けられない。そこで、本発明では、Si原料を熱分解して極薄いSi層を堆積させる工程とTa原料又はTi原料とN原料のNHを反応させ極薄いTaN系又はTiN系膜を堆積させる工程とを交互に行うことで、各々の成膜する厚さの比を調整して、所望の組成を有するTaSiN系膜を形成させるようにした。
従来のように原料ガスの組成比を制御して堆積させた膜では、NとSiとが反応して化学量論組成のSi膜中と同程度にSiが窒化して電気抵抗が大きく上昇する。しかし、本発明における半導体装置の製造方法では、堆積したTaSiN系膜は、従来とは異なり、膜中Siは完全には窒化されないため(SiN、x<4/3)、膜抵抗の大幅な上昇が起ることがなく、良好な電極を形成することができる。
【0009】
また、さらに、半導体基板と、半導体基板のチャネル領域上にゲート絶縁膜を介して形成された金属膜を有するゲート電極と、半導体基板上のゲート電極の両側に形成された一対の拡散領域とよりなり、半導体基板上にCVD法で形成されるゲート電極を備える半導体装置であって、ゲート電極は、TaSi又はTiSi膜層と低抵抗金属膜との間に、TaSi又はTiSi膜層(ここで、xは0.1〜3.0、yは0.5〜5.0の範囲にする。)とTaN層又はTiN層(ここで、zは0.8〜1.3の範囲にする。)とを備える半導体装置を提供することができる。この半導体装置は、ゲート絶縁膜と直接接するゲート電極の上部に低抵抗の金属層を更に堆積した多層構造のゲート電極を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法では、上記手段を用いる事で、ゲート絶縁膜上に設けるTaSiN系等膜層の組成を制御でき、その結果閾値電圧を制御した半導体装置を製造することができた。
また、半導体装置では、ゲート電極を低抵抗金属との多層構造とする事でゲート電極の抵抗を低くすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0012】
ここで、本発明の半導体装置の製造方法によって製造されるゲート電極30は、電界効果型(FET)のMOSトランジスタに用いられる。
図1は、本発明の半導体装置の製造方法を説明するために示す模式図である。
図1(1)に示すように、半導体基板10に素子活性領域11を画定する。半導体基板10は、シリコン単結晶シリコン基板を用いる。
具体的には、半導体基板10の素子分離領域11になる溝を形成し、この溝を埋め込む膜厚に絶縁物(SiO2等)を堆積した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により半導体基板10上に溝を絶縁物で充填されたSTI(Shallow Trench Isolation)素子分離領域11を形成する。
次に、(2)に示すように、半導体基板10上に絶縁膜20を形成する。半導体基板10表面に形成された自然酸化膜を除去した後、半導体基板10上に、CVD法により絶縁膜20として膜厚数nm程度の高誘電率材料による薄膜を形成する。
次に、(3)に示すように、CVD法でゲート電極30を形成するTaSiN系膜層31を堆積し、さらに、低抵抗金属層32を形成して、これをパターニングすることにより、ゲート絶縁膜21上にゲート電極30を形成する。さらに、半導体基板10中にゲート電極30を自己整合マスクにn型あるいはp型不純物元素のイオン注入を行ない、半導体基板10中に、ゲート電極30の両側にn型あるいはp型のソースエクステンション領域41又はドレインエクステンション領域51を形成する。
【0013】
さらに、(4)に示すように、半導体基板10上にSiO膜などの絶縁膜をCVD法によりゲート電極30を覆うように形成し、さらにこれをエッチバックすることにより、ゲート電極30の両側壁面上に側壁絶縁膜33を形成する。また、リソグラフィー及びこれに続くRIE(Reactive Ion Etching)によりによりパターニングして、ゲート絶縁膜21が形成される。
さらに、(5)に示すように、ゲート電極30および側壁絶縁膜33をマスクに、半導体基板10中にn型あるいはp型不純物元素のイオン注入を行ない、半導体基板10中、前記側壁絶縁膜33の外側にn型あるいはp型のソースあるいはドレイン拡散領域41、51を形成する。
また、絶縁膜20を形成する工程で、高誘電率の酸化膜、窒化膜あるいは酸窒化膜とを単独又は積層させて形成することも可能である。特に、高誘電体率の絶縁膜20によるゲート絶縁膜21を設けることで、リーク電流を小さくして、さらに、ゲート長をさらに減少させ、半導体装置1の動作速度を向上させることが可能になる。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法における工程の中で形成されるゲート電極30が、TaSi又はTiSi膜層(ここで、xが0.1〜3.0、yが0.5〜5.0の範囲にする。)の電極層で形成されている。
ここで、膜層を形成する手段は、真空蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などの物理的方法や、ゾルゲル法、溶液法、熱CVD法、プラズマCVD法、ALD法などのCVD法による化学的方法があるが、本発明ではCVD法を用いる。
CVD法は、加熱部を備えるプレート上に支持された半導体基板10に、ガスを供給して、半導体基板10上で反応させて薄膜を形成する。ガスとしては、原料となるガスの他に、搬送するためのキャリアガス、内部に残留する原料ガスを外部に排出するパージガスを供給する。
【0015】
Siの原料ガスとしては、SiH、Si、Si等、または、SiH2Cl2、SiCl4、SiHCl3等の水素化シリコン又はハロゲン化シリコンを用いる。とくに、水素化シリコンが分解しやすく、また、H等は残留しにくいので有利である。Tiの原料には四塩化Tiを用いる。Taの原料ガスとしては、Taのアミド化合物、イミド化合物又はハロゲン化物から選択される。具体的には、Taのアミド化合物として、PDMAT(Pentakis-dimethylamino-tantalum)、Taのイミド化合物としては、TAIMATA(Tertiary-amylimido -tris- dimethylamido -tantalum)、TBTDET(Tertiary-butylimido-tris-dietylamido-tantalum)、ハロゲン化物としては、TaF、TaCl、TaBr等を挙げることができる。N原料ガスとしては、NHが用いられる。
キャリアガスとして、例えば、He、Ar、N等の不活性ガス及び/又はHが用いられる。これらの不活性ガスは、半導体装置1を構成する物質と反応しないものである。また、キャリアガスに半導体装置1を構成する物質中の酸素と反応しない程度の微量の還元性ガスを添加してもよい。例えば、Heガスに微量の水素Hを添加してもよい。
【0016】
CVD法による処理は、Arガスをキャリアガスとして用いた条件下で行う。このときに、これらの原料ガス等を同時に供給して反応させるのではなく、Si原料ガスと、Ta原料ガス又はTi原料ガス及びN原料ガスとをそれぞれ別個に供給して、CVD法でそれぞれの薄膜を形成する。Si原料ガスを単独で供給することで、Si膜層を、Ta原料ガス又はTi原料ガス及びN原料ガスを同時に供給することで、CVD法の装置内で原料ガスを反応させTaN膜層又はTiN膜層を形成する。Si膜厚を0.2〜2.0nm、TaN又はTiN膜層の堆積膜厚を0.5〜3.0nmにし、これらの薄い膜層を交互に積層させる。これらの薄い膜層を交互に堆積させると、薄い膜層であることによりSiとTaN又はTiNとが混合又は反応して化合物を形成してTaSi又はTiSi膜層31を形成する。このときに、Siの堆積膜厚が0.2nm未満、TaNの堆積膜厚が0.5nm未満では薄くなりすぎて一様な膜層を形成することができない。Siの堆積膜厚が2.0nm、TaN又はTiNの堆積膜厚が3.0nmを越えると、各層構成が明確になり、単一の膜層にならない。
【0017】
また、一体になったTaSi又はTiSi膜層31の組成としては、xが0.1〜3.0、yが0.5〜5.0の範囲にする。TaSiN系では、その組成によって仕事関数を制御することができ、半導体装置1を駆動させる閾値を調整することができる。仕事関数は、x、が増加するにつれて小さくなる。具体的には、仕事関数は、xが0.5、yが2.0でほぼ一定の値4.3eVになり、xが0.1、yが2.0で4.6eVになる。
このときに、TaSi又はTiSi膜層31は層厚を1〜20nmにする。層厚が1nm未満では、境界で不具合が発生しやすく、動作電圧が上昇する傾向がある。さらにフォノン散乱によって電子の移動度に劣化が見られる。また、層厚が20nmを越えると、ゲート抵抗が大きくなり高速動作に不利である。
【0018】
また、ゲート電極30の下部には、SiO、HfO、ZrO、Al、La、HfAlOおよびHfAlONを含む高い酸化物又は窒化物ならびに酸窒化物を含む群より選択される高い誘電率の材料でゲート絶縁膜21を形成する。具体的には、HfAl、HfSi、HfSi、HfO又はHfO(ここで、lは、0.8〜1.2、mは1〜4、nは0.8〜4.0の範囲にする。)の中から選択される1つによるゲート絶縁膜21を設ける。これらの酸化物及び酸窒化物は、高い電気的絶縁性と誘電率を有し、リーク電流を減少させることができる。また、誘電率が高いことで、一定の絶縁性を得るのにゲート絶縁膜21を薄くすることができる。また、これらの酸化物及び酸窒化物は、結晶化温度が高く、熱的安定性がある。
【0019】
また、ゲート電極30では、電極層31の上に低抵抗金属層32としてMo又はW、或は多結晶シリコンを用いる。これまでは、多結晶シリコンが単独に用いられていたが、この材料は半導体であるためゲート電極30表面が僅かに空乏化し、素子の高速動作に不利に働く。これに対応して、多結晶シリコンからニッケルシリサイド、チタンシリサイド等がトランジスタの電流端子電極材料として検討されている。例えば、代表的な化合物としては、NiSiがあるが、閾値電圧が高く、トランジスタの低電圧動作が難しい。そこで、その他の金属を用いる事が検討されている。例えば、仕事関数の大きな金属、例えば、Ni、Coを用いると閾値がp型MOSでは小さくなるが、n型MOSでは大きくなる。一方、Hf、Zr等の仕事関数の小さな金属では、閾値がn型MOSでは小さくなるが、p型MOSでは大きくなる。本発明で着目するTaSixy又はTiSixyは仕事関数の小さな金属に相当する。
【0020】
また、ゲート電極30には、低抵抗金属膜32とTaSi又はTiSi膜層31の間に、TaN層34(ここで、zは0.8〜1.3の範囲にする。)を設ける事が出来る。電極層のTaSi膜層31は厚く堆積させると膜組成が変化したり熱処理により相分離が生じる場合がある。そこで、TaN層34を設けることで、一定の実効膜厚を薄く保ちつつ、結晶化したTaN層膜は一般に柱状構造を取る傾向を持つが、上部と下部にTaSi膜層31を設けることで、柱状構造の欠点も補える。したがって、単に、化学的な安定性のみではなく、トランジスタの性能・信頼性向上を図る上で必要なプロセス上の改良・変更に対して幅広く適用出来る。TaN層は、zは0.8〜1.3の範囲にする。zが0.8未満及びzが1.2を越えると、緻密性に欠き酸素Oの拡散等を防止することができない。
【0021】
以上のように、本発明の半導体装置の製造方法では、ゲート絶縁膜21に高誘電率の酸化物又は酸窒化物を用い、さらに、電極層としてTaSiN系又はTaTiN系のナイトライド化合物をCVD法で堆積させて、その上に低抵抗金属層を形成した半導体を製造した。電極層のTaSiN系又はTaTiN系のナイトライド化合物では、閾値を調整するために、従来はCVD法で形成することが困難であった組成制御を用意に行うことができるようになった。
また、半導体装置1では、ゲート絶縁膜21の直上にTaSi又はTiSi膜層31(ここで、xは0.1〜3.0、yは0.5〜5.0の範囲にする。)を有する電極層を設けた。この電極層にWもしくはMo或は多結晶シリコンを積層させることで、ゲート電極30を薄層化することができ、さらに、ゲート抵抗の上昇を抑えて、安定した動作を確保できた。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の半導体装置の製造方法を、更に、具体的に説明する。
(実施例1)
1:まず、初めに、n型MOS−FETのチャネルとなる半導体基板10として、p型の単結晶シリコンを半導体基板10に用いる。この半導体基板10上に、ゲート絶縁膜21として、HfSi(lは1、mは2、nは2にする。)を2〜5nmの厚さにCVD法で形成する。
2:次に、CVD装置に導入する。Si原料ガスとしてSiH、Si、SiをキャリアガスのArと一緒に供給してCVD処理を行う。このときのCVD装置の条件は、400〜600℃の温度、13〜133Paのチャンバ真空度、500〜2000sccm流量のArガスを用いた条件下で30〜120秒の間行う。これで、ほぼ厚さが1nmのSi堆積層を得た。
3:次に、供給するガスをTa原料ガスとしてTaアミド化合物PDMATとN原料ガスとしてNHに切り替えて同時に供給した。このときのCVD装置の条件は、400〜600℃の温度、13〜133Paのチャンバ真空度、500〜2000sccm流量のArガスを用いた条件下で20〜100秒の間行う。これで、ほぼ厚さが3nmのTaN堆積層を得た。
4:これを交互に繰り返して、Si膜層3nmとTaN膜層9nmを合計で12nmに積層させて、12nmの厚さを有するxは0.5で、yは2.0の組成を有するTaSi膜層31を形成することができた。組成がSi層とTaN層の単純な平均にならないのは、膜を交互に堆積する際に表面で反応が生じるためである。図2は、実施例1で形成したゲート電極30の構造を示す概略図である。
5:その次に、ゲート抵抗を下げるため、更に低抵抗なワイヤリングメタルとして50〜100nmの厚さでタングステンWを堆積させた低抵抗金属層32を設ける。その後、ゲート加工を施し、MIS構造を有する半導体装置1を製造した。
これによって、従来のCVD法では、原料ガスを同時に供給して、最初から所望の組成を有するTaSiN系膜31を製造することができなかったが、Si膜層とTaN膜層の層厚を制御することで、TaSiN系膜31の組成制御が容易に行うことができた。
【0023】
(実施例2)
1:まず、初めに、n型MOS−FETのチャネルとなる半導体基板10として、p型の単結晶シリコンを半導体基板10に用いる。この半導体基板10上に、ゲート絶縁膜21として、HfSi(lは1、mは2、nは2にする。)を2〜5nmの厚さにCVD法で形成する。
2:次に、CVD装置に導入する。Si原料ガスとしてSiH、Si、SiをキャリアガスのArガスと一緒に供給してCVD処理を行う。このときのCVD装置の条件は、400〜600℃の温度、13〜133Paのチャンバ真空度、500〜2000sccm流量のArガスを用いた条件下で30〜120秒の間行う。これで、ほぼ厚さが0.5nmのSi堆積層を得た。
3:次に、供給するガスをTa原料ガスとしてTaアミド化合物PDMATとN原料ガスとしてNHに切り替えて同時に供給した。このときのCVD装置の条件は、400〜600℃の温度、13〜133Paのチャンバ真空度、500〜2000sccm流量のArガスを用いた条件下で20〜100秒の間行う。これで、ほぼ厚さが1.5nmのTaN堆積層を得た。
4:これを交互に繰り返して、Si膜層1nmとTaN膜層3nmを合計で4nmに積層させて、8nmの厚さを有するxが0.5で、yが2.0の組成を有するTaSi膜層を形成することができた。
5:次に、供給するガスをTa原料ガスとしてTaアミド化合物PDMATとN原料ガスとしてNHに切り替えて同時に供給した。このときのCVD装置の条件は、400〜600℃の温度、13〜133Paのチャンバ真空度、500〜2000sccm流量のArガスを用いた条件下で120〜240秒の間行う。これで、ほぼ厚さが10nmのTaN堆積層34を得た。
【0024】
6:次に、上記2、3、4と同様に工程を繰り返して、TaN膜層34の上に4nmの厚さを有するxが0.5で、yが2.0の組成を有するTaSi膜層31を形成することができた。このときに、中間にあるTaN膜層34の厚さが厚いことで、高温処理を行っても相分離することなく存在させることができる。図3は、実施例2で形成したゲート電極30の構造を示す概略図である。
7:その次に、ゲート抵抗を下げるため、更に低抵抗なワイヤリングメタルとして50〜100nmの厚さでタングステンWを堆積させた低抵抗金属層32を設ける。その後、ゲート加工を施し、MIS構造を有する半導体装置1を製造した。
これによって、従来のCVD法では、原料ガスを同時に供給して、最初から所望の組成を有するTaSiN系膜を製造することができなかったが、Si膜層とTaN膜層の層厚を制御することで、TaSiN系膜31の組成制御が容易に行うことができた。さらに、TaN膜層34を設けることで、TaSiN系膜31の安定性を向上させ、製造時における酸素等の拡散を防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法を説明するために示す模式図である。
【図2】実施例1で形成したゲート電極の構造を示す概略図である。
【図3】実施例2で形成したゲート電極の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1 半導体装置
10 半導体基板
11 STI素子分離領域
20 絶縁膜
21 ゲート絶縁膜
30 ゲート電極
31 TaSi又はTiSi膜層
32 低抵抗金属層
33 側壁絶縁膜
34 TaN
40 ソースエクステンション領域
41 ソース拡散領域
50 ドレインエクステンション領域
51 ドレイン拡散領域
60 チャネル領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にCVD法でゲート電極が形成される半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極は、TaSi又はTiSi膜層(ここで、xは0.1〜3.0、yは0.5〜5.0の範囲にする。)を有し、
該TaSi又はTiSi膜層が、
Si原料として水素化シリコン、Ti原料として四塩化チタン又はTa原料としてTaのアミド化合物、イミド化合物又はハロゲン化物から選択される1つと、N原料としてNHとをそれぞれ供給して、
Si堆積膜層と、TiN堆積膜層又はTaN堆積膜層とを積層して形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記TaSi又はTiSi膜層は、
Si堆積膜層が0.2〜2.0nm、TaN又はTiN堆積膜層が0.5〜3.0nmを交互に積層させ、
1〜20nmの層厚に形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート絶縁膜が、HfAl、HfSi、HfSi、HfOとHfO(ここで、lは、0.8〜1.2、mは1〜4、nは0.8〜4の範囲にする。)の中から選択される1つにより形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1及び2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極上部にW又はMoによる低抵抗金属膜又は多結晶シリコン層が積層形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極は、TaSi又はTiSi膜層と低抵抗金属膜との間にTaN層又はTiN層(ここで、zは0.8〜1.3の範囲にする。)が形成される
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−266376(P2007−266376A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90420(P2006−90420)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】