説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明は、スパッタ装置の処理能力を損なうことなく、スパッタに異常がないときは金属薄膜の反射率を面内で均一にすることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明にかかる半導体装置の製造方法は、シリコン基板にスパッタ成長により金属膜を形成する第1スパッタ工程と、該第1スパッタ工程の後に該第1スパッタ工程よりも高いDCパワーでさらに金属膜をスパッタ成長させる第2スパッタ工程と、該第1スパッタ工程と該第2スパッタ工程の後に、該第1スパッタ工程および該第2スパッタ工程で形成された金属膜の反射率の均一性を測定する検査工程とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタにより金属薄膜を成膜した後に当該金属薄膜の反射率を測定する検査工程を行なう半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧用途で広く用いられているIGBTはシリコン基板の表面にp型のチャネル領域、n型のエミッタ領域、エミッタ電極が形成される。シリコン基板の裏面にはp型コレクタ層とコレクタ電極が形成される。p型コレクタ層はシリコン基板の裏面にイオンを注入することで形成される。コレクタ電極は、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、モリブデン、チタン、バナジウム、ニッケル、白金、金、銀の中から選択された複数の金属薄膜からなる積層構造を有している。IGBTでは、p型コレクタ層と接する金属薄膜にアルミニウムやアルミニウム合金が用いられる。アルミニウムやアルミニウム合金を用いることで、チタンなどと比較して、p型コレクタ層(p型半導体層)に対するバリアハイトを低減できる。そのため飽和電圧を低減できて好適である。
【0003】
特許文献1には金属薄膜の平坦性を向上させるために薄膜のグレインサイズを制御する方法などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−334875号公報
【特許文献2】特開昭63−296216号公報
【特許文献3】特開平03−188625号公報
【特許文献4】特開平05−275369号公報
【特許文献5】特開平06−151815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコン基板と接する金属薄膜には主に以下の三つの特性が要求される。第1にシリコン基板との接触抵抗が低いことである。第2にスパッタ装置の処理能力向上のために高い成膜レートで形成できることである。第3に薄膜反射率の測定値に基づいて金属薄膜の均一性が検査できることである。第3の要求は、スパッタ時の異常放電などに起因する金属薄膜の膜厚均一性低下を検出するために必要となる。すなわち、スパッタに異常がないときはシリコン基板の面内で金属薄膜の反射率が一定であることが要求される。
【0006】
第1の要求は適切な金属薄膜材料の選択により満たすことができる。シリコン基板の表面がp型層であるときは金属薄膜としてアルミニウムもしくはアルミニウム合金を用いればよい。第2の要求はスパッタ装置のDCパワーを高くすることで満たすことができる。ところが、スパッタ装置のDCパワーを高くしてアルミニウムなどをスパッタすると、成膜前のシリコン基板の面荒れや化学的終端の面内ばらつきなどが成膜後の金属薄膜表面の反射率分布に顕著に反映される。つまり実際はスパッタに異常がないにもかかわらず、シリコン基板の面内における当該反射率のばらつきが大きくなり第3の要求を満たせない問題があった。よって金属薄膜の均一性を適切に検査することができなくなる問題があった。
【0007】
そうすると、金属薄膜の均一性を検査する工程が機能せず、その後の工程で不良率が高まることが懸念される問題があった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、スパッタ装置の処理能力を損なうことなく、スパッタに異常がないときは金属薄膜の反射率を面内で均一にすることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明にかかる半導体装置の製造方法は、シリコン基板にスパッタ成長により金属膜を形成する第1スパッタ工程と、該第1スパッタ工程の後に該第1スパッタ工程よりも高いDCパワーでさらに金属膜をスパッタ成長させる第2スパッタ工程と、該第1スパッタ工程と該第2スパッタ工程の後に、該第1スパッタ工程および該第2スパッタ工程で形成された金属膜の反射率の均一性を測定する検査工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スパッタ装置の処理能力を損なうことなく、スパッタに異常がないときは金属薄膜の反射率を面内で均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。
【図2】シリコン基板の裏面を説明する図である。
【図3】初期の第1スパッタ工程を説明する図である。
【図4】第1スパッタ工程により形成された第1金属薄膜について説明する図である。
【図5】第2スパッタ工程により形成された第2金属薄膜について説明する図である。
【図6】実施の形態の半導体装置による反射率のばらつき低減効果を説明する図である。
【図7】変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態
本実施の形態は図1ないし図7を参照して説明する。なお、同一又は対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。本実施の形態の半導体装置はIGBTである。このIGBTはn型シリコン基板の表面にp型のチャネル領域、n型のエミッタ領域、エミッタ電極を備えている。裏面(表面と逆の面)にはシリコン基板に形成されたp型コレクタ層とコレクタ電極が形成されている。
【0014】
以後図1に沿って本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。まず、ステップ50において、前述した表面の構造が形成されたシリコン基板の裏面にp型コレクタ層が形成される。その結果得られる構造を図2に示す。すなわち、シリコン基板10の裏面にp型コレクタ層12が形成された状態を示している。
【0015】
ステップ50を終えるとステップ52へと処理が進められる。ステップ52ではコレクタ電極をスパッタする前に、シリコン基板の裏面に前処理が施される。ステップ52では以下の3種類の中の前処理から適当な前処理が選択される。第1の前処理はシリコン基板裏面に、加工を加えずに希フッ酸などの処理を施すものである。第2の前処理はシリコン基板裏面に、研削加工後に希フッ酸などの処理を施すものである。第3の処理はシリコン基板裏面をCMP処理やウェットエッチングなどでミラー面に加工した後、その面に希フッ酸などの処理を施すものである。
【0016】
ステップ52を終えるとステップ54へと処理が進められる。ステップ54は第1スパッタ工程である。コレクタ電極の成膜はこの第1スパッタ工程と後述の第2スパッタ工程により行われる。本実施の形態ではコレクタ電極としてアルミニウムを1μm成膜する。第1スパッタ工程ではこのうち20nmのアルミニウムがp型コレクタ層12に成膜される。また、第1スパッタ工程ではスパッタのDCパワーは2kWである。第1スパッタ工程の初期には図3に示すようにp型コレクタ層12の表面に結晶核14が形成される。第1スパッタ工程では、さらにスパッタが継続される。その結果、図4に示すようにシリコン基板10を被覆するように第1金属薄膜16が形成される。第1金属薄膜16が形成された時点で、第1スパッタ工程が終了される。
【0017】
ステップ54を終えるとステップ56へと処理が進められる。ステップ56は第2スパッタ工程である。第2スパッタ工程では真空状態の下で980nmのアルミニウムが第1金属薄膜16上に形成される。また、第2スパッタ工程ではスパッタのDCパワーは4kWにまで高められる。第2スパッタ工程では図5に示すように、第1金属薄膜16上に多結晶の第2金属薄膜18が形成される。第1金属薄膜16と第2金属薄膜18がコレクタ電極となる。
【0018】
ステップ56を終えるとステップ58へと処理が進められる。ステップ58は金属薄膜の膜厚均一性を検査する検査工程である。この検査工程では、第1スパッタ工程および第2スパッタ工程で形成された膜の反射率の面内分布が検査される。本実施の形態のIGBTの製造方法は上述のとおりである。
【0019】
ステップ52で行った前処理では、第1の処理から第3の処理までのいずれの場合であっても、前処理に起因してシリコン基板裏面で面荒れが生じることがある。また、シリコンの化学的な終端が同裏面の場所ごとに相違する場合もある。特に第3の処理を行った場合にはミラー面の領域が正常な面となる為、局所的に面荒れが発生する場合がある。なお、他の薬液処理などに起因して面荒れなどが発生することもある。
【0020】
このようなシリコン基板の裏面に対して、成膜レートを高めるためにスパッタのDCパワーを高くして成膜を行うと、金属薄膜表面の反射率がばらつくことがある。つまり、コレクタ電極成膜前のシリコン基板の面荒れや化学的終端の面内ばらつきなどがコレクタ電極成膜後のコレクタ電極の反射率分布に顕著に反映される。面荒れなどが発生している領域は発生していない領域(ミラー面)よりも金属薄膜表面の反射率が大きくなる。面荒れなどにより反射率が高い領域は、密着性などの諸特性は他の領域と同等であるので検査工程でスクリーニングされる必要はない。それにもかかわらず、反射率の面内分布が大きいため、検査工程で不良と判断される問題があった。その結果、検査工程の本来の機能である膜厚均一性低下の検出が困難となる問題があった。
【0021】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、上述の問題を解消できる。本実施の形態ではコレクタ電極の形成を第1スパッタ工程と第2スパッタ工程に分割している。そして、第1スパッタ工程ではスパッタのDCパワーを低減している。よって第1スパッタ工程ではスパッタレートが低い。そのため、シリコン基板裏面における面荒れの分布や異なる化学的終端の分布が金属薄膜表面の反射率分布に反映されない。このように、面荒れや化学的終端の分布による悪影響をなくした上で、第2スパッタ工程でスパッタレートの高い成膜を行う。よって、スパッタ装置の処理能力を損なうことなく、金属薄膜の反射率を面内で均一にすることができる。故に検査工程の本来の機能であるコレクタ電極の膜厚均一性低下の検出が可能となる。
【0022】
本実施の形態の第1スパッタ工程および第2スパッタ工程で1μmの厚さの成膜を行うのに要した時間は51.5秒である。一方、常に高いDCパワー(4kW)でスパッタを行い1μmの厚さの成膜を行う(この成膜方法を従来方法という)のに要する時間は50秒であった。第1スパッタ工程は、シリコン基板10を被覆する程度で終えるため要する時間が非常に短い。よって、実用上スパッタ装置の処理能力を損なうことはない。
【0023】
図6は本発明によりコレクタ電極の反射率の面内分布が均一化されたことを説明する図である。図6の左側には、従来方法でコレクタ電極が形成された3枚の基板の反射率面内分布が記載されている。一方、図6の右側には、本発明の方法によってコレクタ電極が形成された3枚の基板の反射率面内分布が記載される。この比較により、本発明の方法によれば、反射率の面内分布を効果的に抑制できることが分かる。
【0024】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は最初に成膜レートの遅い成膜を行い、その後に成膜レートの早い成膜を行うことが特徴である。この特徴により反射率を面内で均一にすることができるため、金属薄膜の均一性を適切に検査することができる。本発明の特徴を失わない限りにおいて様々な変形が可能であるのでその一部を以下に説明する。
【0025】
たとえば、本発明はMOSFETやダイオードなどにも応用できる。MOSFETの場合はn型シリコン基板の表面にp型のチャネル領域、n型のソース領域、ソース電極を形成する。そして裏面にはn型のドレイン層およびドレイン電極を形成する。図7はこの例を説明する図である。シリコン基板100の裏面に形成されたn型ドレイン層102と接するようにドレイン電極108が形成される。ドレイン電極108は第1金属薄膜104と第2金属薄膜106を備える。ドレイン電極108として、たとえばチタンを第1スパッタ工程、第2スパッタ工程に分けてスパッタして本発明の効果を得ることができる。ダイオードの場合はn型シリコン基板の表面にp型アノード領域とアノード電極を形成する。そして裏面にはn型のカソードとカソード電極が形成される。カソード電極にはチタンなどが使用される。カソード電極についても同様に第1スパッタ工程、第2スパッタ工程を行えばよい。
【0026】
MOSFETのドレイン電極もダイオードのカソード電極も、たとえば、DCパワー1kWで20nmを成膜し、その後DCパワーを3kWにして280nmを成膜することにより形成される。この場合、成膜には32秒を要する。そして、DCパワーを3kWに維持して300nmの成膜を行うのに要した時間は30秒である。よって実用上スパッタ装置の処理能力を損なうことはない。
【0027】
たとえば、IGBTのコレクタ電極として、アルミニウムに代えてアルミニウムにシリコンあるいは銅を0.1%〜3%添加したアルミニウム合金を使用してもよい。その他、密着性やバリアハイトなどの諸特性を考慮してスパッタする材料を選択してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 シリコン基板、 12 p型コレクタ層、 16 第1金属薄膜、 18 第2金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板にスパッタ成長により金属膜を形成する第1スパッタ工程と、
前記第1スパッタ工程の後に前記第1スパッタ工程よりも高いDCパワーでさらに金属膜をスパッタ成長させる第2スパッタ工程と、
前記第1スパッタ工程と前記第2スパッタ工程の後に、前記第1スパッタ工程および前記第2スパッタ工程で形成された金属膜の反射率の均一性を測定する検査工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1スパッタ工程はスパッタ成長により形成された金属膜が前記シリコン基板を被覆した時点で終了されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン基板の裏面にはp型の層が形成され、
前記第1スパッタ工程と前記第2スパッタ工程では前記シリコン基板の裏面に対してスパッタ成長のための処理が施され、
前記第1スパッタ工程と前記第2スパッタ工程ではアルミニウムまたはアルミニウム合金が形成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン基板の裏面にはn型の層が形成され、
前記第1スパッタ工程と前記第2スパッタ工程では前記シリコン基板の裏面に対してスパッタ成長のための処理が施され、
前記第1スパッタ工程と前記第2スパッタ工程ではチタンが形成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−198896(P2011−198896A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62201(P2010−62201)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】