説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】従来に比べて製造工程を簡易化することができ、かつ、絶縁膜が損傷を受けることを防止することができ、製造コストの低減と信頼性の向上を図ることのできる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】P型半導体層11上に、下側から順に第1ゲート絶縁膜2a、第2ゲート絶縁膜2b、第1金属膜3a、第2金属膜3b、第3金属膜3cが形成されたNチャンネルMISトランジスタ21、及び、N型半導体層10上に、下側から順に第1ゲート絶縁膜2a、第2ゲート絶縁膜2b、第1金属膜3a、第3金属膜3cが形成されたPチャンネルMISトランジスタ20を具備した半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に係り、特にNチャンネルMISトランジスタ及びPチャンネルMISトランジスタを備えたCMIS型の半導体装置及び半導体装置の製造方法特に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置として、NチャンネルMISトランジスタ及びPチャンネルMISトランジスタを備えたCMISFET(Complementary Metal Insulator Field Effect Transistor)が用いられている。
【0003】
また、このような半導体装置の分野では、高集積化のための微細化、高速化、低消費電力化等の要求があり、このような要求に応じるため、ロジックゲート及びDRAMゲートに、高誘電率膜と金属を積層させたHigh−k/Metalゲートスタックの導入、実用化が検討されている。なお、上記の高誘電率膜としては、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物等が知られている。
【0004】
上記のようなHigh−k/Metalゲートスタックにおける閾値電圧制御方法としては、NチャンネルMISトランジスタ用とPチャンネルMISトランジスタ用の2種のメタル材料を用いるデュアルメタル方式が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、NチャンネルMISトランジスタ用とPチャンネルMISトランジスタ用の2種のHigh−k材料を用いるデュアルHigh−k方式が知られている。
【特許文献1】特開2006−245324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来の技術のうちデュアルメタル方式では、メタルを剥離するメタル剥離工程を必要とするため、このメタル剥離工程において絶縁膜(High−k膜)が損傷を受ける可能性があり、歩留まりの低下による製造コストの増大や装置の信頼性の低下を招くという問題がある。また、デュアルHigh−k方式では、製造工程が複雑になり製造コストの増大を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、従来に比べて製造工程を簡易化することができ、かつ、絶縁膜が損傷を受けることを防止することができ、製造コストの低減と信頼性の向上を図ることのできる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、P型半導体層と、前記P型半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜と、この第1ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート絶縁膜と、この第2ゲート絶縁膜上に形成された第1金属膜と、この第1金属膜上に形成された第3金属膜とを有するNチャンネルMISトランジスタ、及び、N型半導体層と、このN型半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜と、この第1ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート絶縁膜と、この第2ゲート絶縁膜上に形成された第1金属膜と、この第1金属膜上に形成された第3金属膜とを有するPチャンネルMISトランジスタとを具備し、前記NチャンネルMISトランジスタにおける前記第1金属膜と前記第3金属膜との間に第2金属膜を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の半導体装置であって、前記第2金属膜は、前記第1金属膜及び前記第3金属膜より仕事関数の小さな金属からなることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の半導体装置であって、前記第1金属膜及び前記第3金属膜は、Ru、Ir、Ni、Co、Ptのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記第2金属膜は、Al、Ti、Taのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の半導体装置であって、前記第2ゲート絶縁膜が前記第1ゲート絶縁膜より誘電率の高い膜からなることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4記載の半導体装置であって、前記第2ゲート絶縁膜が、HfO2、HfSiON、HfAlO、Al23のいずれかからなることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、NチャンネルMISトランジスタ及びPチャンネルMISトランジスタを備えた半導体装置の製造方法において、P型半導体層上及びN型半導体層上に第1ゲート絶縁膜を形成する工程と、この第1ゲート絶縁膜上に第2ゲート絶縁膜を形成する工程と、この第2ゲート絶縁膜上に第1金属膜を形成する工程と、この第1金属膜上に第2金属膜を形成する工程と、前記PチャンネルMISトランジスタの形成領域に形成された前記第2金属膜を剥離する工程と、前記PチャンネルMISトランジスタの形成領域の第1金属膜上及び前記NチャンネルMISトランジスタの形成領域の第2金属膜上に第3金属膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記7の発明は、請求項6記載の半導体装置の製造方法であって、前記第2金属膜は、前記第1金属膜及び前記第3金属膜より仕事関数の小さな金属からなることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の半導体装置の製造方法であって、前記第1金属膜及び前記第3金属膜は、Ru、Ir、Ni、Co、Ptのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記第2金属膜は、Al、Ti、Taのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項6〜8いずれか1項記載の半導体装置の製造方法であって、前記第2ゲート絶縁膜が前記第1ゲート絶縁膜より誘電率の高い膜からなることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、前記第2ゲート絶縁膜が、HfO2、HfSiON、HfAlO、Al23のいずれかからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来に比べて製造工程を簡易化することができ、かつ、絶縁膜が損傷を受けることを防止することができ、製造コストの低減と信頼性の向上を図ることのできる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法の詳細を、図面を参照して一実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置として、CMISFETの要部概略構成を拡大して模式的に示すものである。同図において、1はシリコン基板であり、このシリコン基板1には、PチャンネルMISトランジスタ20を形成するためのN型半導体層(PMIS形成領域)10と、NチャンネルMISトランジスタ21を形成するためのP型半導体層(NMIS形成領域)11が形成されており、これらは素子分離層12によって分離されている。なお、図1において、13はPチャンネルMISトランジスタ20のソース・ドレイン領域、14はNチャンネルMISトランジスタ21のソース・ドレイン領域を示している。
【0020】
PチャンネルMISトランジスタ20及びNチャンネルMISトランジスタ21は、ゲート絶縁膜2とゲート電極3とを積層させた構造を有している。ゲート絶縁膜2は、第1ゲート絶縁膜としてのSi界面SiO2膜2aと、第2ゲート絶縁膜としての高誘電率膜(High−k膜)2bとを積層させて構成されている。高誘電率膜2bは、本実施形態では、ハフニウム酸化物であるHfO2膜から構成されている。この絶縁膜2bとしては、HfO2膜の他、例えば、HfSiON、HfAlO、Al23等を用いることができる。
【0021】
また、ゲート電極3は、PチャンネルMISトランジスタ20では、第1金属膜3aと第3金属膜3cとを積層した構造となっており、NチャンネルMISトランジスタ21では、第1金属膜3aと第2金属膜3bと第3金属膜3cとを積層した構造となっている。このような構造のゲート電極3を構成する第1金属膜3a、第2金属膜3b、第3金属膜3cのうち、第1金属膜3aと第3金属膜3cは、仕事関数の大きい金属から構成されている。ここで、仕事関数の大きい金属とは、例えば、Ru、Ir、Ni、Co、Pt等を例示することができる。また、第2金属膜3bは、上記の第1金属膜3a、第3金属膜3cと比べて仕事関数の小さい金属から構成されている。ここで、仕事関数の小さい金属とは、例えば、Al、Ti、Ta等を例示することができる。
【0022】
上記のように、本実施形態では、ゲート絶縁膜2と直接接触していない第2金属膜3bを設けることによって、閾値電圧の制御を行っている。これによって、ゲート絶縁膜2上に直接形成した膜を、ゲート絶縁膜2上から剥離する工程を行うことなく閾値電圧の制御を行うことができ、ゲート絶縁膜2に損傷を与える可能性がない。したがって、歩留まりの低下による製造コストの増大や装置の信頼性の低下を招くことがない。また、デュアルHigh−k方式のように製造工程が複雑になり製造コストの増大を招くこともない。
【0023】
次に、上記構成の半導体装置の製造方法について説明する。図2に示すように、N型半導体層(PMIS形成領域)10と、P型半導体層(NMIS形成領域)11、及び素子分離層12が形成されたシリコン基板上に、まず、Si界面SiO2膜2aと高誘電率膜(High−k膜)2bとを順次積層させて形成する。これらのSi界面SiO2膜2a、高誘電率膜2bは、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって形成することができる。
【0024】
次に、図3に示すように、上記高誘電率膜2b上に、第1金属膜3aを形成する。この第1金属膜3aは、例えば、スパッタ法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって形成することができる。
【0025】
次に、図4に示すように、上記第1金属膜3a上に、第2金属膜3bを形成し、N型半導体層(PMIS形成領域)10の部分の第2金属膜3bを剥離する。なお、第2金属膜3bは、例えば、スパッタ法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって形成することができる。
【0026】
上記工程における第2金属膜3bの剥離には、例えば、予めN型半導体層(PMIS形成領域)10の部分の第1金属膜3a上にパターニングしたマスクを形成しておいて、マスクの上に第2金属膜3bを形成し、マスクとともに第2金属膜3bを剥離する方法を使用することができる。また、第2金属膜3bを形成した後にP型半導体層(NMIS形成領域)11の部分の第2金属膜3b上にマスクを形成して、露出しているN型半導体層(PMIS形成領域)10の部分の第2金属膜3bを剥離する方法も使用することができる。いずれの方法を用いた場合でも、ゲート絶縁膜2の上に第1金属膜3aが形成された状態で、第2金属膜3bの剥離行程を行うため、この剥離行程によってゲート絶縁膜2に損傷を与えることはない。
【0027】
次に、図5に示すように、上記第2金属膜3b上に、第3金属膜3cを形成する。この第3金属膜3cは、例えば、スパッタ法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって形成することができる。
【0028】
次に、図6に示すように、第3金属膜3cの上に所定形状のマスク30を形成して、第3金属膜3c、第2金属膜3b、第1金属膜3a、高誘電率膜2b、Si界面SiO2膜2aを順次エッチングする。そして、この後、マスク30の除去及びPチャンネルMISトランジスタ20のソース・ドレイン領域13、NチャンネルMISトランジスタ21のソース・ドレイン領域14の形成を行って、図1に示したPチャンネルMISトランジスタ20と、NチャンネルMISトランジスタ21を形成する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、ゲート絶縁膜2上に直接形成した膜を、ゲート絶縁膜2上から剥離する工程を行うことなく閾値電圧の制御を行うことができ、ゲート絶縁膜2に損傷を与える可能性がない。したがって、歩留まりの低下による製造コストの増大や装置の信頼性の低下を招くことがない。また、デュアルHigh−k方式のように製造工程が複雑になり製造コストの増大を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の半導体装置の要部構造を説明するため図。
【図2】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法を説明するため図。
【図3】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法を説明するため図。
【図4】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法を説明するため図。
【図5】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法を説明するため図。
【図6】本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法を説明するため図。
【符号の説明】
【0031】
1……シリコン基板、2……ゲート絶縁膜、2a……Si界面SiO2膜(第1ゲート絶縁膜)、2b……高誘電率膜(第2ゲート絶縁膜)、3……ゲート電極、3a……第1金属膜、3b……第2金属膜、3c……第3金属膜、10……N型半導体層(PMIS形成領域)、11……P型半導体層(NMIS形成領域)、12……素子分離層、13……ソース・ドレイン領域、14……ソース・ドレイン領域、20……PチャンネルMISトランジスタ、21……NチャンネルMISトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型半導体層と、前記P型半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜と、この第1ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート絶縁膜と、この第2ゲート絶縁膜上に形成された第1金属膜と、この第1金属膜上に形成された第3金属膜とを有するNチャンネルMISトランジスタ、及び、
N型半導体層と、このN型半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜と、この第1ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート絶縁膜と、この第2ゲート絶縁膜上に形成された第1金属膜と、この第1金属膜上に形成された第3金属膜とを有するPチャンネルMISトランジスタとを具備し、
前記NチャンネルMISトランジスタにおける前記第1金属膜と前記第3金属膜との間に第2金属膜を形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第2金属膜は、前記第1金属膜及び前記第3金属膜より仕事関数の小さな金属からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置であって、
前記第1金属膜及び前記第3金属膜は、Ru、Ir、Ni、Co、Ptのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記第2金属膜は、Al、Ti、Taのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の半導体装置であって、
前記第2ゲート絶縁膜が前記第1ゲート絶縁膜より誘電率の高い膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置であって、
前記第2ゲート絶縁膜が、HfO2、HfSiON、HfAlO、Al23のいずれかからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
NチャンネルMISトランジスタ及びPチャンネルMISトランジスタを備えた半導体装置の製造方法において、
P型半導体層上及びN型半導体層上に第1ゲート絶縁膜を形成する工程と、
この第1ゲート絶縁膜上に第2ゲート絶縁膜を形成する工程と、
この第2ゲート絶縁膜上に第1金属膜を形成する工程と、
この第1金属膜上に第2金属膜を形成する工程と、
前記PチャンネルMISトランジスタの形成領域に形成された前記第2金属膜を剥離する工程と、
前記PチャンネルMISトランジスタの形成領域の第1金属膜上及び前記NチャンネルMISトランジスタの形成領域の第2金属膜上に第3金属膜を形成する工程と
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2金属膜は、前記第1金属膜及び前記第3金属膜より仕事関数の小さな金属からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1金属膜及び前記第3金属膜は、Ru、Ir、Ni、Co、Ptのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記第2金属膜は、Al、Ti、Taのいずれか又は少なくともいずれか1種を含む合金からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8いずれか1項記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2ゲート絶縁膜が前記第1ゲート絶縁膜より誘電率の高い膜からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2ゲート絶縁膜が、HfO2、HfSiON、HfAlO、Al23のいずれかからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−27716(P2010−27716A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184787(P2008−184787)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】