説明

半導体装置

【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【解決手段】酸化物半導体膜を含むトランジスタにおいて、酸化物半導体膜の上面部及び下面部に、酸化物半導体膜と同種の成分でなる金属酸化物膜を積層され、さらに、金属酸化物膜において酸化物半導体膜と接する面と対向する面には、金属酸化物膜及び酸化物半導体膜とは異なる成分でなる絶縁膜が接して設けられているトランジスタを提供する。また、トランジスタの活性層に用いる酸化物半導体膜は、熱処理によって、水素、水分、水酸基または水素化物などの不純物を酸化物半導体より排除し、かつ不純物の排除工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、高純度化及び電気的にi型(真性)化されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、アモルファスシリコンを用いたトランジスタよりも動作速度が速く、多結晶シリコンを用いたトランジスタよりも製造が容易であるものの、電気的特性が変動しやすく信頼性が低いという問題点が知られている。例えば、光BT試験前後において、トランジスタのしきい値電圧は変動してしまう。これに対して、特許文献2及び特許文献3では、酸化物半導体を用いたトランジスタのしきい値電圧のシフトを抑制するために、酸化物半導体層の上部面または下部面の少なくとも一面に設けた界面安定化層によって酸化物半導体層の界面における電荷トラップを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【特許文献2】特開2010−16347号公報
【特許文献3】特開2010−16348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2または特許文献3で開示されたトランジスタは、界面安定化層として、ゲート絶縁層及び保護層と同質性を有する層を用いており、活性層との界面の状態を良好に保つことができないため、活性層と界面安定化層との界面における電荷トラップを抑制することが困難である。特に、界面安定化層と活性層が同等のバンドギャップを有する場合には、電荷の蓄積が容易に起こりえる。
【0008】
したがって、酸化物半導体を用いたトランジスタは、未だ十分な信頼性を有しているとは言えない。
【0009】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示する発明の一態様は、ゲート絶縁膜または保護絶縁膜等の絶縁膜と、活性層としての酸化物半導体膜が直接的に接するのではなく、これらの間に、これらと接して金属酸化物膜が存在し、且つ該金属酸化物膜は酸化物半導体膜と同種の成分でなることを技術的思想とするものである。つまり、開示する発明の一態様は、金属酸化物膜及び酸化物半導体膜とは異なる成分でなる絶縁膜と、金属酸化物膜と、酸化物半導体膜と、が積層された構造を備えている。ここで、「酸化物半導体膜と同種の成分」とは、酸化物半導体膜の構成元素から選択される一または複数の金属元素を含むことを意味する。
【0011】
このような積層構造を備えることにより、半導体装置の動作などに起因して生じうる電荷などが、上述の絶縁膜と酸化物半導体膜との界面に捕獲されることを十分に抑制することができるのである。この効果は、酸化物半導体膜と相性の良い材料によって構成された金属酸化物膜を酸化物半導体膜と接する態様で存在させることで、半導体装置の動作などに起因して生じうる電荷などが酸化物半導体膜と金属酸化物膜との界面に捕獲されることを抑制し、さらに、界面に電荷の捕獲中心が形成されうる材料を用いて構成された絶縁膜を金属酸化物膜と接する態様で存在させることにより、金属酸化物膜と絶縁膜との界面に上述の電荷を捕獲させることができるというメカニズムによるものである。
【0012】
すなわち、金属酸化物膜のみでは、電荷が多量に生じる状況において酸化物半導体膜との界面における電荷の捕獲を抑制するのが困難になるところ、金属酸化物膜と接する態様の絶縁膜を設けることにより、金属酸化物膜と絶縁膜との界面に優先的に電荷を捕獲し、酸化物半導体膜と金属酸化物膜との界面における電荷の捕獲を抑制することができるのである。このように、開示する発明の一態様に係る効果は、絶縁膜と、金属酸化物膜と、酸化物半導体膜と、が積層された構造に起因するものであって、金属酸化物膜と、酸化物半導体膜と、の積層構造が生ずる効果とは異質のものであるということができる。
【0013】
そして、酸化物半導体膜の界面における電荷の捕獲を抑制し、電荷の捕獲中心を酸化物半導体膜から遠ざけることができるという上述の効果により、半導体装置の動作不具合を抑制し、半導体装置の信頼性を向上させることができるのである。
【0014】
なお、上述のメカニズムから、金属酸化物膜は十分な厚みを有していることが望ましい。金属酸化物膜が薄い場合には、金属酸化物膜と絶縁膜との界面に捕獲される電荷の影響が大きくなる場合があるためである。例えば、金属酸化物膜は、酸化物半導体膜よりも厚くするのが好適である。
【0015】
また、絶縁性を有する金属酸化物膜は、ソース電極及びドレイン電極と酸化物半導体膜との接続を妨げない態様で形成されるので、ソース電極またはドレイン電極と、酸化物半導体膜との間に金属酸化物膜が存在する場合と比較して抵抗の増大を防ぐことができる。よって、トランジスタの電気的特性の低下を抑制することができる。
【0016】
なお、酸化物半導体は薄膜形成工程において、酸素の過不足などによる化学量論的組成からのずれや、電子供与体を形成する水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化してしまう。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。したがって、水素、水分、水酸基または水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体より意図的に排除し、かつ不純物の排除工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体膜を高純度化及び電気的にi型(真性)化する。
【0017】
i型(真性)の酸化物半導体とは、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することによりi型(真性)の酸化物半導体、またはi型(真性)に限りなく近い酸化物半導体としたものである。
【0018】
なお、酸化物半導体膜をi型化する工程において、酸化物半導体膜と同種の成分でなる金属酸化物膜も同時にi型化することも可能である。開示する発明の一態様において、酸化物半導体膜の上部面及び下部面に設けられた金属酸化物膜は、水分や水素等の不純物が十分に低減され、電気的にi型化した金属酸化物膜であるのが望ましい。
【0019】
高純度化された酸化物半導体膜を有するトランジスタは、しきい値電圧やオン電流などの電気的特性に温度依存性がほとんど見られない。また、光劣化によるトランジスタ特性の変動も少ない。
【0020】
本発明の一態様の半導体装置は、ゲート電極と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜に接して設けられた第1の金属酸化物膜と、第1の金属酸化物膜と接し、ゲート電極と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と接するソース電極及びドレイン電極と、酸化物半導体膜と接する第2の金属酸化物膜と、第2の金属酸化物膜を覆う絶縁膜と、を有する半導体装置である。
【0021】
また、上記の半導体装置において第2の金属酸化物膜は、ソース電極及びドレイン電極を覆い、且つ第1の金属酸化物膜と接して設けられるのが好ましく、酸化物半導体膜は、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜に囲まれるのがより好ましい。
【0022】
また、上記の半導体装置において、少なくとも酸化物半導体膜の上面の一部が、ソース電極及びドレイン電極と接していてもよく、この場合において、酸化物半導体膜のチャネル長方向の側端部と、第1の金属酸化物膜のチャネル長方向の側端部と、が一致していてもよい。
【0023】
または、上記の半導体装置において、少なくともソース電極及びドレイン電極の上面の一部が、酸化物半導体膜と接していてもよく、この場合において、酸化物半導体膜のチャネル長方向の側端部と、第2の金属酸化物膜のチャネル長方向の側端部と、が一致していてもよい。
【0024】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜は、酸化物半導体膜の成分元素を含んで構成されるのが好ましい。
【0025】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜のエネルギーギャップは、酸化物半導体膜のエネルギーギャップより大きいのが好ましい。
【0026】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜の伝導帯の下端のエネルギーは、酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギーより高いのが好ましい。
【0027】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜は、酸化ガリウムを含んで構成されるのが好ましく、第1の金属酸化物膜の構成元素の比率と第2の金属酸化物膜の構成元素の比率が等しいのがより好ましい。
【0028】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、酸化物膜上に、導電膜を有していてもよい。
【0029】
なお、上記において、ソース電極とドレイン電極の間隔によって決定されるトランジスタのチャネル長Lは、10nm以上10μm以下、例えば、0.1μm〜0.5μmとすることができる。もちろん、チャネル長Lは、1μm以上であっても構わない。また、チャネル幅Wについても、10nm以上とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一形態は、安定した電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0031】
また、本発明の一形態は、電気特性が良好で信頼性の高いトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
【図2】酸化物半導体膜及び金属酸化物膜を有するトランジスタにおけるバンド図。
【図3】半導体装置の一態様を示す図。
【図4】半導体装置の作製工程の一例を示す図。
【図5】半導体装置の作製工程の一例を示す図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置の一形態を説明する図。
【図8】半導体装置の一形態を説明する図。
【図9】半導体装置の一形態を説明する図。
【図10】電子機器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図5を用いて説明する。
【0036】
〈半導体装置の構成例〉
図1に、半導体装置の例として、ボトムゲート型のトランジスタの断面図及び平面図を示す。図1(A)は平面図であり、図1(B)及び図1(C)は、図1(A)におけるA−B断面及びC−D断面に係る断面図である。なお、図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ310の構成要素の一部(例えば、第2の金属酸化物膜407など)を省略している。
【0037】
図1に示すトランジスタ310は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極401、ゲート絶縁膜402、第1の金属酸化物膜404、酸化物半導体膜403、ソース電極405a、ドレイン電極405b、第2の金属酸化物膜407、及び絶縁膜409を含む。
【0038】
図1に示すトランジスタ310において、第2の金属酸化物膜407は、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、且つ第1の金属酸化物膜404及び酸化物半導体膜403と接して設けられている。また、図1(B)及び図1(C)に示すように、第2の金属酸化物膜407と第1の金属酸化物膜404とは、酸化物半導体膜403が存在しない領域において接している。つまり、酸化物半導体膜403は、第1の金属酸化物膜404及び第2の金属酸化物膜407に囲まれて設けられている。
【0039】
ここで、第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407には、酸化物半導体膜403と同種の成分でなる酸化物を用いるのが望ましい。具体的には、酸化物半導体膜の構成元素から選択される一または複数の金属元素の酸化物を含む膜を用いるのが好ましい。このような材料は酸化物半導体膜403との相性が良く、これを第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407に用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができるからである。つまり、上述の材料を第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407に用いることで、酸化物半導体膜とこれに接する金属酸化物膜の界面(ここでは、第1の金属酸化物膜404と酸化物半導体膜403との界面、または、第2の金属酸化物膜407と酸化物半導体膜403との界面)における電荷の捕獲を抑制することができる。
【0040】
なお、第1の金属酸化物膜404と第2の金属酸化物膜407とは、共に酸化物半導体膜403と同種の成分でなる膜であるから、酸化物半導体膜403が存在しない領域において接する構成とする場合、その密着性を向上させることができる。また、第1の金属酸化物膜404の構成元素の比率と第2の金属酸化物膜407の構成元素の比率が等しくするのがより好ましい。
【0041】
なお、酸化物半導体膜403を活性層として用いる関係上、第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407のエネルギーギャップは、酸化物半導体膜403のエネルギーギャップより大きいことが求められる。また、第1の金属酸化物膜404と酸化物半導体膜403の間、または、第2の金属酸化物膜407と酸化物半導体膜403の間には、少なくとも、室温(20℃)において、酸化物半導体膜403からキャリアが流出しない程度のエネルギー障壁の形成が求められる。例えば、第1の金属酸化物膜404または第2の金属酸化物膜407の伝導帯の下端と、酸化物半導体膜403の伝導帯の下端とのエネルギー差、あるいは、第1の金属酸化物膜404または第2の金属酸化物膜407の価電子帯の上端と、酸化物半導体膜403の価電子帯の上端とのエネルギー差は0.5eV以上であるのが望ましく、0.7eV以上であるとより望ましい。また、1.5eV以下であると望ましい。
【0042】
具体的には、例えば、酸化物半導体膜403にIn−Ga−Zn−O系の材料を用いる場合には、酸化ガリウムを含む材料などを用いて第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407を形成すればよい。なお、酸化ガリウムとIn−Ga−Zn−O系の材料を接触させた場合のエネルギー障壁は、伝導帯側で約0.8eVとなり、価電子帯側で約0.9eVとなる。
【0043】
なお、酸化ガリウムは、GaOxとも表記され、酸素が化学量論比よりも過剰となるようxの値を設定するのが好ましい。例えば、xの値を1.4以上2.0以下とするのが好ましく、xの値を1.5以上1.8以下とするのがより好ましい。ただし、酸化ガリウム膜中に、イットリウムなどの3族元素、ハフニウムなどの4族元素、アルミニウムなどの13族元素、シリコンなどの14族元素、窒素、などの水素以外の不純物元素を含ませることで、酸化ガリウムのエネルギーギャップを拡大させて絶縁性を高めても良い。不純物を含まない酸化ガリウム膜のエネルギーギャップは4.9eVであるが、上述の不純物を、例えば0を超えて20原子%以下程度含ませることで、そのエネルギーギャップを6eV程度まで拡大することができる。
【0044】
なお、電荷の発生源や捕獲中心を低減するという観点からは、金属酸化物膜における水素や水などの不純物は十分に低減されたものであるのが望ましい。この思想は、酸化物半導体膜における不純物低減の思想と共通するものである。
【0045】
また、ゲート絶縁膜402や絶縁膜409には、第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407と接触させることによって、その界面に電荷の捕獲中心が形成されうる材料を用いるのが望ましい。このような材料をゲート絶縁膜402や絶縁膜409に用いることで、電荷はゲート絶縁膜402と第1の金属酸化物膜404との界面、または、絶縁膜409と第2の金属酸化物膜407との界面に捕獲されるため、第1の金属酸化物膜404と酸化物半導体膜403の界面での電荷捕獲、または、第2の金属酸化物膜407と酸化物半導体膜403の界面での電荷捕獲を十分に抑制することができるようになる。
【0046】
具体的には、ゲート絶縁膜402や絶縁膜409には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、これらの混合材料、などを単層でまたは積層して用いればよい。例えば、第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407に酸化ガリウムを含む材料を用いる場合には、ゲート絶縁膜402や絶縁膜409には、酸化シリコンや窒化シリコンなどを用いるのが好適である。また、第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407と接する関係上、ゲート絶縁膜402や絶縁膜409のエネルギーギャップは、第1の金属酸化物膜404や第2の金属酸化物膜407のエネルギーギャップより大きいことが望ましい。
【0047】
なお、ゲート絶縁膜402と第1の金属酸化物膜404との界面、または、絶縁膜409と第2の金属酸化物膜407との界面に電荷の捕獲中心を形成することができるのであれば、ゲート絶縁膜402や絶縁膜409の材料を上述のものに限定する必要はない。また、ゲート絶縁膜402と第1の金属酸化物膜404との界面、または、絶縁膜409と第2の金属酸化物膜407との界面に、電荷の捕獲中心が形成される処理を行っても良い。このような処理としては、例えば、プラズマ処理や元素の添加処理(イオン注入など)がある。
【0048】
トランジスタ310上には、さらに絶縁物が設けられていても良い。また、ソース電極405aやドレイン電極405bと配線とを電気的に接続させるために、ゲート絶縁膜402、第1の金属酸化物膜404、第2の金属酸化物膜407、絶縁膜409、などには開口が形成されていても良い。また、酸化物半導体膜403の上方に、さらに、第2のゲート電極を有していても良い。なお、酸化物半導体膜403は島状に加工されていることが望ましいが、島状に加工されていなくても良い。
【0049】
図2は、上述のトランジスタ310、すなわち、ゲート電極GE側からゲート絶縁膜I1、第1の金属酸化物膜MO1、酸化物半導体膜OS、第2の金属酸化物膜MO2及び絶縁膜I2を接合した構造、におけるエネルギーバンド図(模式図)である。図2では、絶縁膜、金属酸化物膜、酸化物半導体膜のいずれもが真性であるという理想的な状況を仮定し、ゲート絶縁膜I1及び絶縁膜I2として酸化シリコン(バンドギャップEg8eV〜9eV)を、第1の金属酸化物膜MO1及び第2の金属酸化物膜MO2として酸化ガリウム(バンドギャップEg4.9eV)を、酸化物半導体膜OSとしてIn−Ga−Zn−O系非単結晶膜(バンドギャップEg3.15eV)を用いた場合について示している。なお、酸化シリコンの真空準位と伝導帯の下端のエネルギー差は0.95eVであり、酸化ガリウムの真空準位と伝導帯の下端のエネルギー差は3.5eVであり、In−Ga−Zn−O系非単結晶膜の真空準位と伝導帯の下端のエネルギー差は4.3eVである。
【0050】
図2に示すように、酸化物半導体膜OSのゲート電極GE側(チャネル側)には、酸化物半導体と金属酸化物との界面に約0.8eV及び約0.95eVのエネルギー障壁が存在する。同様に、酸化物半導体膜OSのバックチャネル側(ゲート電極GEとは反対側)にも、酸化物半導体と金属酸化物との界面に約0.8eV及び約0.95eVのエネルギー障壁が存在する。酸化物半導体と金属酸化物との界面において、このようなエネルギー障壁が存在することにより、その界面におけるキャリアの移動は妨げられるため、キャリアは酸化物半導体から金属酸化物に移動することなく、酸化物半導体中を移動する。図2に示すように、酸化物半導体膜OS、金属酸化物膜、及び絶縁膜を、酸化物半導体膜が酸化物半導体よりもバンドギャップが段階的に大きくなる材料(金属酸化物膜よりも絶縁膜のバンドギャップの方が大きい)で挟まれるように設けた場合に、そういった有益な結果が得られる。
【0051】
図3(A)乃至図3(G)に、図1とは異なるトランジスタの構成例を示す。
【0052】
図3(A)に示すトランジスタ320は、基板400上に、ゲート電極401、ゲート絶縁膜402、第1の金属酸化物膜404、酸化物半導体膜403、ソース電極405a、ドレイン電極405b、第2の金属酸化物膜407、及び絶縁膜409を含む点で図1に示すトランジスタ310と共通している。図3(A)に示すトランジスタ320と、図1に示すトランジスタ310との相違は、ソース電極405a及びドレイン電極405bと、酸化物半導体膜403と、が接続する位置である。すなわち、トランジスタ310は、酸化物半導体膜403を形成後に、ソース電極405a及びドレイン電極405bを形成することで、少なくとも酸化物半導体膜403の上面の一部が、ソース電極405a及びドレイン電極405bと接しているのに対して、トランジスタ320は、ソース電極405a及びドレイン電極405bを形成後に、酸化物半導体膜403を形成することで、少なくともソース電極405a及びドレイン電極405bの上面の一部が、酸化物半導体膜403と接している。その他の構成要素については、図1と同様である。詳細は、図1に関する記載を参酌することができる。
【0053】
図3(B)に示すトランジスタ330は、基板400上に、ゲート電極401、ゲート絶縁膜402、第1の金属酸化物膜404、酸化物半導体膜403、ソース電極405a、ドレイン電極405b、第2の金属酸化物膜407、及び絶縁膜409を含む点で図1に示すトランジスタ310と共通している。図3(B)に示すトランジスタ330においては、第1の金属酸化物膜404が島状に加工されている点において図1に示すトランジスタ310と相違する。
【0054】
トランジスタ330において、第2の金属酸化物膜407は、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、且つ酸化物半導体膜403及びゲート絶縁膜402と接して設けられている。その他の構成要素については、図1と同様である。詳細は、図1に関する記載を参酌することができる。
【0055】
図3(C)に示すトランジスタ340は、第2の金属酸化物膜407が島状に加工されている点において、図3(A)に示すトランジスタ320と相違し、その他の構成要素については、図3(A)と同様である。トランジスタ340において、第2の金属酸化物膜407は、酸化物半導体膜403と接して設けられている。
【0056】
図3(D)乃至図3(G)に示すトランジスタ350、360、370、380は、上述のトランジスタ310、320、330、340の構成に対して、それぞれ、絶縁膜409上であって酸化物半導体膜403のチャネル形成領域と重畳する領域に導電膜410を設けた構成である。その他の構成要素については、図1または図3(A)乃至図3(C)と同様である。
【0057】
〈トランジスタの作製工程の例〉
以下、図4または図5を用いて、図1または図3(A)に示すトランジスタの作製工程の例について説明する。
【0058】
〈トランジスタ310の作製工程〉
図4(A)乃至図4(E)を用いて、図1に示すトランジスタ310の作製工程の一例について説明する。
【0059】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極401を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0060】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの基板を用いることができる。また、絶縁表面を有していれば、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられていてもよい。
【0061】
また、基板400として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に酸化物半導体膜403を含むトランジスタを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体膜403を含むトランジスタを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜403を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0062】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜から選ばれた一または複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0063】
また、ゲート電極401は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でまたは積層して形成することができる。
【0064】
次いで、ゲート電極401上にゲート絶縁膜402を形成する(図4(A))。ゲート絶縁膜402には、第1の金属酸化物膜404と接触させることによって、その界面に電荷の捕獲中心が形成されうる材料を用いるのが望ましい。このような材料をゲート絶縁膜402に用いることで、電荷はゲート絶縁膜402と第1の金属酸化物膜404との界面に捕獲されるため、第1の金属酸化物膜404と酸化物半導体膜403の界面での電荷捕獲を十分に抑制することができるようになる。
【0065】
具体的には、ゲート絶縁膜402としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、または酸化ハフニウム膜等を単層でまたは積層して形成することができ、酸化物半導体膜403または第1の金属酸化物膜404とは異なる成分でなる膜とする。なお、後の酸化物半導体膜403への熱処理工程において、第1の金属酸化物膜404からも水素や水分等の不純物を効率よく除去するためには、ゲート絶縁膜402を酸化シリコン膜とするのが好ましい。また、第1の金属酸化物膜404と接する関係上、ゲート絶縁膜402のエネルギーギャップは、第1の金属酸化物膜404のエネルギーギャップより大きいことが望ましい。
【0066】
なお、ゲート絶縁膜402と第1の金属酸化物膜404との界面に電荷の捕獲中心を形成することができるのであれば、ゲート絶縁膜402の材料を上述のものに限定する必要はない。また、ゲート絶縁膜402と第1の金属酸化物膜404との界面に、電荷の捕獲中心が形成される処理を行っても良い。このような処理としては、例えば、プラズマ処理や元素の添加処理(イオン注入など)がある。
【0067】
ゲート絶縁膜402の作製方法に特に限定はないが、例えば、プラズマCVD法やスパッタリング法などの成膜方法を用いてゲート絶縁膜402を作製することができる。
【0068】
次いで、ゲート絶縁膜402上に、第1の金属酸化物膜404を形成する(図4(B))。第1の金属酸化物膜404は、酸化物半導体膜403と同種の成分でなる酸化物を用いるのが望ましい。このような材料は酸化物半導体膜403との相性が良く、これを第1の金属酸化物膜404に用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができるからである。つまり、上述の材料を第1の金属酸化物膜404に用いることで、第1の金属酸化物膜404と酸化物半導体膜403との界面における電荷の捕獲を抑制することができるのである。
【0069】
なお、第1の金属酸化物膜404のエネルギーギャップは、酸化物半導体膜403のエネルギーギャップより大きいことが求められる。また、第1の金属酸化物膜404と酸化物半導体膜403の間には、少なくとも、室温(20℃)において、酸化物半導体膜403からキャリアが流出しない程度のエネルギー障壁の形成が求められる。
【0070】
なお、電荷の発生源や捕獲中心を低減するという観点からは、金属酸化物膜における水素や水などの不純物は十分に低減されたものであるのが望ましい。この思想は、酸化物半導体膜における不純物低減の思想と共通するものである。
【0071】
なお、電荷の捕獲中心を酸化物半導体膜403から遠ざけるためには、第1の金属酸化物膜404は十分な膜厚を有しているのが好ましい。具体的には、第1の金属酸化物膜として10nmを超える膜厚で、100nm以下とするのが好ましい。
【0072】
第1の金属酸化物膜404の作製方法に特に限定はない。例えば、プラズマCVD法やスパッタリング法などの成膜方法を用いて第1の金属酸化物膜404を作製することができる。なお、水素や水などが混入しにくいという点では、スパッタリング法などが適当である。一方で、膜の品質を高めるという点では、プラズマCVD法などが適当である。
【0073】
次いで、第1の金属酸化物膜404上に、膜厚3nm以上30nm以下の酸化物半導体膜403をスパッタリング法で形成する。酸化物半導体膜403の膜厚を大きくしすぎると(例えば、膜厚を50nm以上)、トランジスタがノーマリーオンとなってしまうおそれがあるため、上述の膜厚とするのが好ましい。なお、ゲート絶縁膜402、第1の金属酸化物膜404及び酸化物半導体膜403は、大気に触れさせることなく連続して成膜するのが好ましい。
【0074】
なお、酸化物半導体膜403をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、第1の金属酸化物膜404の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することが好ましい。逆スパッタとは、基板に電圧を印加し、基板近傍にプラズマを形成して、基板側の表面を改質する方法である。なお、アルゴンに代えて、窒素、ヘリウム、酸素などのガスを用いてもよい。
【0075】
酸化物半導体膜403に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、単元系金属酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その化学量論比はとくに問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0076】
また、酸化物半導体膜403は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0077】
本実施の形態では、酸化物半導体膜403としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体膜成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜403は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0078】
酸化物半導体膜403としてIn−Ga−Zn−O膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物半導体膜成膜用ターゲットを用いることができる。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の酸化物半導体膜成膜用ターゲットを用いてもよい。
【0079】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0080】
また、酸化物半導体膜成膜用ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い酸化物半導体膜成膜用ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜403は緻密な膜とすることができる。
【0081】
酸化物半導体膜403を成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0082】
酸化物半導体膜403の成膜は、減圧状態に保持された成膜室内に基板400を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下として行う。基板400を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜403に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に酸化物半導体膜403を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段は、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜403に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0083】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ごみともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0084】
その後、酸化物半導体膜403に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。この第1の熱処理によって酸化物半導体膜403中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、酸化物半導体膜403の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。さらに、この第1の熱処理によって、第1の金属酸化物膜404中の過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することも可能である。第1の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0085】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体膜403は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0086】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0087】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0088】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0089】
いずれにしても、第1の熱処理によって不純物を低減し、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜403を形成することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現することができる。
【0090】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、例えば、酸化物半導体膜403を島状に加工した後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0091】
次いで、酸化物半導体膜403を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体膜403に加工するのが好ましい(図4(C))。また、島状の酸化物半導体膜403を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。ここでの酸化物半導体膜403のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0092】
なお、第2のフォトリソグラフィ工程において、酸化物半導体膜403に加えて第1の金属酸化物膜404のパターン形成を行うことで、図3(B)に図示したトランジスタ330とすることができる。トランジスタ330においては、酸化物半導体膜403のパターン形成と第1の金属酸化物膜404のパターン形成を同じマスクを用いて行うことにより酸化物半導体膜403のチャネル長方向の側端部と、第1の金属酸化物膜404のチャネル長方向の側端部と、が一致する。
【0093】
次いで、第1の金属酸化物膜404及び酸化物半導体膜403上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成する。ソース電極及びドレイン電極に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側または上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極及びドレイン電極に用いる導電膜は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0094】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極405a、ドレイン電極405bを形成した後、レジストマスクを除去する。第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。酸化物半導体膜403上で隣り合うソース電極405aの下端部とドレイン電極405bの下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、例えば、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを微細化することが可能であり、回路の動作速度を高速化できる。
【0095】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0096】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体膜403がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体膜403を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体膜403は一部のみがエッチングされ、例えば、酸化物半導体膜403の膜厚の5乃至50%がエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体膜403となることもある。
【0097】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸化物半導体膜403の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。プラズマ処理を行った場合、当該プラズマ処理に続けて大気に触れることなく、酸化物半導体膜403に接する第2の金属酸化物膜407を形成することが望ましい。
【0098】
次いで、ソース電極405a、及びドレイン電極405bを覆い、且つ酸化物半導体膜403の一部と接する第2の金属酸化物膜407を形成する(図4(D))。
【0099】
第2の金属酸化物膜407は、酸化物半導体膜403と同種の成分でなる膜とし、酸化物半導体膜403の主成分材料を含む酸化物を用いるのが望ましい。このような材料は酸化物半導体膜403との相性が良く、これを第2の金属酸化物膜407に用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができるからである。つまり、上述の材料を第2の金属酸化物膜407に用いることで、第2の金属酸化物膜407と酸化物半導体膜403との界面における電荷の捕獲を抑制することができるのである。
【0100】
第2の金属酸化物膜407のエネルギーギャップは、酸化物半導体膜403のエネルギーギャップより大きいことが求められる。また、第2の金属酸化物膜407と酸化物半導体膜403の間には、少なくとも、室温(20℃)において、酸化物半導体膜403からキャリアが流出しない程度のエネルギー障壁の形成が求められる。
【0101】
第2の金属酸化物膜407は、水、水素等の不純物を混入させない方法を用いて成膜することが好ましい。第2の金属酸化物膜407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜403への侵入、または水素による酸化物半導体膜403中の酸素の引き抜き、が生じ酸化物半導体膜403のバックチャネルが低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、第2の金属酸化物膜407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0102】
よって、第2の金属酸化物膜407は、スパッタリング法によって成膜するのが好ましく、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0103】
また、電荷の捕獲中心を酸化物半導体膜403から遠ざけるためには、第2の金属酸化物膜407は十分な膜厚を有しているのが好ましい。具体的には、第2の金属酸化物膜407として10nmを超える膜厚で、100nm以下とするのが好ましい。
【0104】
次に、第2の金属酸化物膜407上に絶縁膜409を形成する(図4(E))。絶縁膜409としては、無機絶縁膜を用い、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜などの酸化絶縁膜、または窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜などの窒化絶縁膜の単層、或いは積層を用いればよい。例えば、スパッタリング法を用いて、第2の金属酸化物膜407側から順に酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の積層を形成する。
【0105】
次に酸化物半導体膜403に、第2の金属酸化物膜407と一部(チャネル形成領域)が接した状態で第2の熱処理を行うのが好ましい。第2の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0106】
第2の熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0107】
第2の熱処理においては、酸化物半導体膜403と、第2の金属酸化物膜407と、が接した状態で加熱される。したがって、上述の脱水化(または脱水素化)処理によって同時に減少してしまう可能性のある酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を、酸素を含む第2の金属酸化物膜407より酸化物半導体膜403へ供給することができる。これによって、酸化物半導体膜403中の電荷捕獲中心を低減することができる。以上の工程で高純度化し、電気的にi型(真性)化された酸化物半導体膜403を形成することができる。また、この加熱処理によって、第1の金属酸化物膜404または第2の金属酸化物膜407も同時に不純物が除去され、高純度化されうる。
【0108】
なお、本実施の形態では、絶縁膜409の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングは第2の金属酸化物膜407の形成後であればこれに特に限定されない。例えば、第2の金属酸化物膜407の形成後に第2の熱処理を行っても良い。または、絶縁膜409を、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を積層させて構成する場合に、第2の金属酸化物膜407上に酸化シリコン膜を形成後第2の熱処理を行い、その後、窒化シリコン膜を形成してもよい。または、第1の熱処理に続けて第2の熱処理を行っても良いし、第1の熱処理に第2の熱処理を兼ねさせても良いし、第2の熱処理に第1の熱処理を兼ねさせても良い。
【0109】
上述のように、第1の熱処理と第2の熱処理の少なくとも一方を適用することで、酸化物半導体膜403を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。高純度化された酸化物半導体膜403中にはドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満である。
【0110】
以上の工程でトランジスタ310が形成される(図4(E))。トランジスタ310は、水素、水分、水酸基または水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体膜403より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体膜403を含むトランジスタである。よって、トランジスタ310は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0111】
なお、絶縁膜409を形成後、さらに絶縁膜409上に導電膜410を設けることで、図3(D)に示すトランジスタ350を形成することができる。導電膜410は、ゲート電極401と同様の材料、同様の工程で形成することができる。導電膜410を酸化物半導体膜403のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、トランジスタ350の信頼性を調べるためのバイアス−熱ストレス試験(以下、BT試験という)において、BT試験前後におけるトランジスタ350のしきい値電圧の変化量をより低減することができる。なお、導電膜410は、電位がゲート電極401と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極として機能させることもできる。また、導電膜410の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0112】
なお、図示しないが、トランジスタ350を覆うようにさらに保護絶縁膜を形成しても良い。保護絶縁膜としては、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、または窒化アルミニウムなどを用いることができる。
【0113】
また、トランジスタ310、350上に平坦化絶縁膜を設けても良い。平坦化絶縁膜としては、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させてもよい。
【0114】
〈トランジスタ320の作製工程〉
図5(A)乃至図5(C)を用いて、図3(A)に示すトランジスタ320の作製工程の一例について説明する。
【0115】
図4(A)に示した工程と同様に、基板400上にゲート電極401と、ゲート電極401を覆うゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402に接して設けられた第1の金属酸化物膜404とを形成後、第1の金属酸化物膜404上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成する。第2のフォトリソグラフィ工程により該導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極405a、ドレイン電極405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図5(A))。
【0116】
次いで、第1の金属酸化物膜404、ソース電極405a及びドレイン電極405b上に、膜厚3nm以上30nm以下の酸化物半導体膜403をスパッタリング法で形成する。
【0117】
なお、酸化物半導体膜403をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、第1の金属酸化物膜404、ソース電極405aまたはドレイン電極405bの表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することが好ましい。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0118】
その後、酸化物半導体膜403に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。この第1の熱処理によって酸化物半導体膜403中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、酸化物半導体膜403の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。さらに、この第1の熱処理によって、第1の金属酸化物膜404中の過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することも可能である。第1の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0119】
次いで、酸化物半導体膜403を第3のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体膜403に加工する(図5(B))。また、島状の酸化物半導体膜403を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。なお、酸化物半導体膜403への第1の熱処理は、酸化物半導体膜403のパターン形成後に行うことも可能である。ただし、酸化物半導体膜403は必ずしもパターン形成しなくとも良い。
【0120】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸化物半導体膜403の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。プラズマ処理を行った場合、当該プラズマ処理に続けて大気に触れることなく、酸化物半導体膜403に接する第2の金属酸化物膜407を形成することが望ましい。
【0121】
次いで、ソース電極405a、及びドレイン電極405bを覆い、且つ酸化物半導体膜403と接する第2の金属酸化物膜407を形成する。その後、第2の金属酸化物膜407上に絶縁膜409を形成する。
【0122】
次に酸化物半導体膜403に、第2の金属酸化物膜407と接した状態で第2の熱処理を行うのが好ましい。第2の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0123】
第2の熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0124】
第2の熱処理においては、酸化物半導体膜403と、第2の金属酸化物膜407と、が接した状態で加熱される。したがって、上述の脱水化(または脱水素化)処理によって同時に減少してしまう可能性のある酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を、酸素を含む第2の金属酸化物膜407より酸化物半導体膜403へ供給することができる。これによって、酸化物半導体膜403中の電荷捕獲中心を低減することができる。以上の工程で高純度化し、電気的にi型(真性)化された酸化物半導体膜403を形成することができる。また、この加熱処理によって、第1の金属酸化物膜404または第2の金属酸化物膜407も同時に不純物が除去され、高純度化されうる。
【0125】
以上の工程でトランジスタ320が形成される(図5(C))。トランジスタ320は、水素、水分、水酸基または水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体膜403を含むトランジスタである。よって、トランジスタ320は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0126】
なお、本実施の形態では、絶縁膜409の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングは第2の金属酸化物膜407の形成後であればこれに特に限定されない。
【0127】
また、酸化物半導体膜403を形成後、該酸化物半導体膜403をパターン形成せずに第2の金属酸化物膜407を形成し、第2の金属酸化物膜407と酸化物半導体膜403とを同じマスクを用いてパターン形成することで、図3(C)に示すトランジスタ340を形成することができる。トランジスタ340においては、酸化物半導体膜403のパターン形成と第2の金属酸化物膜407のパターン形成を同じマスクを用いて行うことにより酸化物半導体膜403のチャネル長方向の側端部と、第2の金属酸化物膜407のチャネル長方向の側端部と、が一致する。なお、この場合、第1の熱処理は第2の金属酸化物膜407の成膜前に行ってもよいし、酸化物半導体膜403と第2の金属酸化物膜407を連続して成膜後に第1の熱処理を行っても良い。または、第1の熱処理に続けて第2の熱処理を行っても良いし、第1の熱処理に第2の熱処理を兼ねさせても良いし、第2の熱処理に第1の熱処理を兼ねさせても良い。
【0128】
上述のように、第1の熱処理と第2の熱処理の少なくとも一方を適用することで、酸化物半導体膜403を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。高純度化された酸化物半導体膜403中にはドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満である。
【0129】
なお、図5(C)において絶縁膜409を形成後、さらに絶縁膜409上に導電膜410を設けることで、図3(E)に示すトランジスタ360を形成することができる。導電膜410は、ゲート電極401と同様の材料、同様の工程で形成することができる。
【0130】
以上示したように、本実施の形態に係るトランジスタは、酸化物半導体膜の上面部及び下面部に、酸化物半導体膜と同種の成分でなる金属酸化物膜が積層され、さらに、金属酸化物膜において酸化物半導体膜と接する面と対向する面には、金属酸化物膜及び酸化物半導体膜とは異なる成分でなる絶縁膜が接して設けられている。このように酸化物半導体膜と相性の良い材料によって構成された金属酸化物膜を酸化物半導体膜と接する態様で存在させることで、半導体装置の動作などに起因して生じうる電荷などが酸化物半導体膜と金属酸化物膜との界面に捕獲されることを抑制し、さらに、界面に電荷の捕獲中心が形成されうる材料を用いて構成された絶縁物を金属酸化物膜と接する態様で存在させることにより、金属酸化物膜と絶縁物との界面に上述の電荷を捕獲させることができる。これによって、酸化物半導体膜への電荷の影響を緩和することができるため、酸化物半導体膜界面への電荷トラップに起因するトランジスタのしきい値変動を抑制することができる。
【0131】
また、トランジスタの活性層に用いる酸化物半導体膜は、熱処理によって、水素、水分、水酸基または水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体より排除し、かつ不純物の排除工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、高純度化及び電気的にi型(真性)化されたものである。このように高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0132】
なお、酸化物半導体膜の界面に電荷がトラップされると、トランジスタのしきい値電圧はシフトする(例えば、バックチャネル側に正電荷がトラップされると、トランジスタのしきい値電圧は負方向にシフトする)が、このような電荷捕獲の要因の一つとして、陽イオン(またはその原因たる原子)の移動及びトラップのモデルを仮定することができる。そして、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、このような陽イオン源として、水素原子が考えられる。開示する発明では、高純度化した酸化物半導体を用い、また、これが金属酸化物膜と絶縁膜との積層構造に接する構成を採用しているため、上述のモデルにおいて想定される水素に起因する電荷捕獲さえも抑制できるのである。なお、上述のモデルは、水素のイオン化率が例えば10%程度で成立しうると考えられている。
【0133】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0134】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0135】
(実施の形態2)
実施の形態1で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0136】
図6(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図6(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜または多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0137】
図6(B)及び図6(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図6(B)及び図6(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜または多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図6(B)及び図6(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0138】
また図6(B)及び図6(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0139】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図6(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図6(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図6(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0140】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0141】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0142】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0143】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0144】
半導体装置の一形態について、図7乃至図9を用いて説明する。図7乃至図9は、図6(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0145】
図7乃至図9で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0146】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、トランジスタ4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0147】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図7乃至図9では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
【0148】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ4010、トランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図7乃至図9で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0149】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことがでれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0150】
図7に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図7において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0151】
また、スペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られ、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお本実施の形態においては、柱状のスペーサ4035を設ける例を示すが、球状のスペーサを用いても良い。
【0152】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0153】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0154】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0155】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0156】
本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0157】
また、本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0158】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0159】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0160】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0161】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0162】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0163】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0164】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子及び正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子及び正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0165】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0166】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0167】
図8に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0168】
隔壁4510は、有機絶縁材料、または無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0169】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0170】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0171】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0172】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、または円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0173】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0174】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0175】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0176】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0177】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子及び第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0178】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0179】
図9に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図9の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。
【0180】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0181】
なお、図7乃至図9において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0182】
絶縁層4021は、無機絶縁材料または有機絶縁材料を用いて形成することができる。なお、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いると、平坦化絶縁膜として好適である。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0183】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いることができる。
【0184】
表示装置は光源または表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0185】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0186】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0187】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、またはその合金、若しくはその窒化物から一つ、または複数種を用いて形成することができる。
【0188】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0189】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0190】
以上のように実施の形態1で例示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。なお、実施の形態1で例示したトランジスタは上述の表示機能を有する半導体装置のみでなく、電源回路に搭載されるパワーデバイス、LSI等の半導体集積回路、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置など様々な機能を有する半導体装置に適用することが可能である。
【0191】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0192】
(実施の形態3)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0193】
図10(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0194】
図10(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また、操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0195】
図10(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701及び筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701及び筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0196】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705及び表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図10(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図10(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い電子書籍2700とすることができる。
【0197】
また、図10(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0198】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0199】
図10(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0200】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図10(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0201】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図10(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0202】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0203】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0204】
図10(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0205】
図10(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる。
【0206】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0207】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0208】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0209】
310 トランジスタ
320 トランジスタ
330 トランジスタ
340 トランジスタ
350 トランジスタ
360 トランジスタ
400 基板
401 ゲート電極
402 ゲート絶縁膜
403 酸化物半導体膜
404 第1の金属酸化物膜
405a ソース電極
405b ドレイン電極
407 第2の金属酸化物膜
409 絶縁膜
410 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜に接して設けられた第1の金属酸化物膜と、
前記第1の金属酸化物膜と接し、前記ゲート電極と重畳する領域に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と接するソース電極及びドレイン電極と、
前記酸化物半導体膜と接する第2の金属酸化物膜と、
前記第2の金属酸化物膜を覆う絶縁膜と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第2の金属酸化物膜は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極を覆い、且つ前記第1の金属酸化物膜と接して設けられる請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記酸化物半導体膜は、前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜に囲まれた請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
少なくとも前記酸化物半導体膜の上面の一部が、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と接する請求項1乃至3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項5】
少なくとも前記酸化物半導体膜の上面の一部が、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と接し、
前記酸化物半導体膜のチャネル長方向の側端部と、前記第1の金属酸化物膜のチャネル長方向の側端部と、が一致する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
少なくとも前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上面の一部が、前記酸化物半導体膜と接する請求項1乃至3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項7】
少なくとも前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上面の一部が、前記酸化物半導体膜と接し、
前記酸化物半導体膜のチャネル長方向の側端部と、前記第2の金属酸化物膜のチャネル長方向の側端部と、が一致する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜は、前記酸化物半導体膜の構成元素から選択される一または複数の金属元素の酸化物を含んで構成される請求項1乃至7のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜のエネルギーギャップは、前記酸化物半導体膜のエネルギーギャップより大きい請求項1乃至8のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜の伝導帯の下端のエネルギーは、前記酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギーより高い請求項1乃至9のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜は、酸化ガリウムを含んで構成される請求項1乃至10のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1の金属酸化物膜の構成元素の比率と前記第2の金属酸化物膜の構成元素の比率が等しい請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁膜上に、導電膜を有する請求項1乃至12のいずれか一に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−228689(P2011−228689A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77735(P2011−77735)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】