説明

半導体製造装置

【課題】シャワーヘッドへの膜成長を抑制する。
【解決手段】アノード電極3とカソード電極17間に高周波電力を印加してプラズマを発生させて、アノード電極3とカソード電極17間に第一ガスと第二ガスを供給し、アノード電極3上に保持した基板4に成膜するPECVDにおいて、下側室54と上側室55とを形成したシャワーヘッド本体50にカソード電極17を設け、下側室54には第一ガス供給ライン51を接続し、上側室55には第二ガス供給ライン52を接続する。カソード電極17には処理室にガスを吹き出す第一ガス供給孔58と第二ガス供給孔59を複数本ずつ開設し、第一ガス供給孔58は下側室54に連通させ、第二ガス供給孔59は上側室55に連通させる。カソード電極17下面には突起60を各第一ガス供給孔58に対向する位置に突設し、凹部61を各第二ガス供給孔59に対向する位置に没設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に関する。
詳しくは、半導体製造工程に用いるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一例であるプラズマ処理装置は、エッチングや薄膜堆積等、プラズマ固有の性質を生かした加工技術の実現により、今や産業界に不可欠な半導体基盤技術としてその重要度が増している。
中でも種々の基板上に電子材料の層を堆積するプラズマ促進化学気相堆積法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition :PECVD)を用いたプラズマ処理装置は、半導体デバイスの製造に広く用いられている。
【0003】
PECVDを用いたプラズマ処理装置としては、ホローカソード現象を利用して高密度プラズマを得るとともに、メンテナンスサイクルを延ばし、電極のフッ化減少を改善したものが知られている。
従来のこの種のプラズマ処理装置として、平行平板のプラズマ電極シャワーヘッドやシャワーヘッドに突起や穴を有し、高電位のプラズマを印加するホローカソード電極タイププラズマ処理装置、が提案されている。例えば、特許文献1参照。
【0004】
【特許文献1】特開2004−200345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したホローカソード電極タイププラズマ処理装置においては、プレミックス供給であるために、シャワーヘッド自体に膜が成長し、膜剥がれによる異物が発生するという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、シャワーヘッドへの膜成長を抑制することができる半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)対向する一対の平板電極間にガスを供給し、一対の平板電極の少なくとも一方の平板電極に高周波電力を印加してプラズマを発生させて基板にプラズマ処理を行う半導体製造装置において、
前記一対の平板電極の少なくとも一方には、第一ガスおよび第二ガスをそれぞれ供給する供給ラインが設けられ、前記第一ガスの供給孔と前記第二ガスの供給孔との高さが異なることを特徴とする半導体製造装置。
(2)前記第二ガスは、凹部から供給されることを特徴とする前記(1)に記載の半導体製造装置。
【発明の効果】
【0008】
この半導体製造装置によれば、シャワーヘッドへの膜成長を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】
まず、図1を用いて、PECVDを用いて成膜処理を行うプラズマ処理装置の全体構成を説明する。
図1に示すように、プラズマ処理装置の処理室1は、インナケース18とアウタケース31とからなる減圧可能な二槽構造となっている。密閉されたアウタケース31の内部にインナケース18が設けられる。インナケース18はアウタケース31の天井に取り付けられて上部が閉じ底部が開口したケース本体と、底部開口を塞ぐケース外蓋としてのアノードサセプタ13とから構成される。
【0011】
処理室1内には一対の平行平板電極が設けられる。一方はアノード電極3、他方はカソード電極17を構成する。一方のアノード電極3は、アノードサセプタ13上に支持される。アノード電極3上に基板4が載置され、基板4の外周には絶縁リング16が設けられる。アノード電極3は、アノード電極3を支持するアノードサセプタ13を通して接地される。
【0012】
他方のカソード電極17は、上部全面をインナケース18のケース本体内に設けられた絶縁ケース8で覆われる。カソード電極17の下部外周は絶縁リング20により支持されることで、接地されている処理室1のインナケース18およびアウタケース31とは絶縁されている。
【0013】
カソード電極17は、ガス供給ヘッド35の一部を構成する。すなわち、ガス供給ヘッド35は、絶縁ケース8から引き出されて成膜ガスを処理室1内に導入するガス導入口15と、ガス導入口15から導入されたガスを分散する分散板12と、高周波電力を印加されるカソード電極17とから構成される。このカソード電極17は、ガス導入口15から分散板12を介して導入される成膜ガスを一対の電極3、17間に供給する複数のガス供給孔40を有する。
【0014】
RF高周波電源9はマッチングボックス37および結合コンデンサ19を介してガス導入口15からカソード電極17に接続される。アノード電極3を支持するアノードサセプタ13の接地は、インナケース18およびアウタケース31を介してなされる。
【0015】
成膜ガスは、ガス導入口15を通って処理室1内へ供給され、カソード電極17に設けた分散板12、ガス供給孔40を経由して電極3、17間へと導かれる。
カソード電極17に設けられた上ヒータ10と、アノード電極3に設けられた下ヒータ11は、基板4を一定の温度に均一に加熱するために設けられている。
【0016】
基板4を載置するアノードサセプタ13は昇降移動するようになっている。アノードサセプタ13は、上昇時、インナケース18の下部開口を閉じて内槽を形成し、その内槽内に基板4を閉じ込める。下降時、内槽を開いて、基板4を外槽となるアウタケース31へ取り出す。
【0017】
成膜時は、アノードサセプタ13を上昇して内槽を形成する。カソード電極17とアノード電極3間に導入された成膜ガスに、RF高周波電源9の高周波電力を印加してプラズマを発生させ、基板4上に所定の成膜を行う。プラズマにより処理された成膜ガスの残留ガスは、処理室1に連通する排気管7を通り、図示しない排気処理系へと処理される。
なお、図中、ガス供給系、基板搬送系、排気処理系は省略してある。
【0018】
図2はガス供給ヘッド(以下、シャワーヘッドという)35を示す縦断面図である。
図2に示されているように、シャワーヘッド35は下端面開口の短尺円筒形状に形成された本体50を備えており、本体50には第一ガス供給ライン51および第二ガス供給ライン52が配管されている。
本体50内には仕切板53が本体50内を下側室54と上側室55とに仕切るように設けられており、仕切板53には第一ガス供給ライン51が下側室54に連通するように接続されている。第二ガス供給ライン52は本体50に上側室55に連通するように接続されている。仕切板53には上側室55と下側室54とを連通する連通孔56が複数本、全面にわたって均一に配置されて開設されている。仕切板53下面には複数本の連通管57が各連通孔56にそれぞれ対向して突設されている。
本体50の下端にはカソード電極17が開口を閉塞するように固着されている。カソード電極17には下側室54と処理室1とをそれぞれ連通する第一ガス供給孔58および第二ガス供給孔59が複数本ずつ、全面にわたって均一に配置されてそれぞれ開設されている。各第一ガス供給孔58は下側室54にそれぞれ連通されている。各第二ガス供給孔59は各連通孔56にそれぞれ対向されており、各第二ガス供給孔59は上側室55に各連通孔56によってそれぞれ連通されている。
【0019】
カソード電極17の下面には先端(アノード電極3側)に行くに従って径が小さくなるテーパ形状に形成された突起60が複数個、各第一ガス供給孔58に対向する位置にそれぞれ突設されており、各第一ガス供給孔58は各突起60の下面においてそれぞれ開口している。カソード電極17の下面における各第二ガス供給孔59に対向する位置には、各凹部61がそれぞれ相対的に没設されており、各第一ガス供給孔58は各凹部61の底面においてそれぞれ開口している。したがって、第一ガス供給孔58と第二ガス供給孔59とは吹き出し高さ位置が互いに異なっている。すなわち、第一ガス供給孔58の吹出口は、第二ガス供給孔59の吹出口よりもアノード電極3に近い。
【0020】
突起60は先端(アノード電極3側)に行くに従って径が小さくなるテーパ形状に形成されていることにより、突起60の先端に行くほど電界強度が高くなる電界勾配が形成されるために、突起60内に設けた第一ガス供給孔58を通過するガス分子は、電界勾配によって加速される。
したがって、電界勾配を形成するための突起60からガスを供給することにより、ガスの分子および電子による衝突が増えるので、電子密度が高くなり、その結果、プラズマ生成効率を向上でき、必要とする高周波電力をより低減することができる。
突起60の間に形成された凹部61はホローカソード現象によるプラズマ密度を増加することができる。
【0021】
以上の構成に係るPECVDを用いて基板4にシリコン窒化膜を形成する場合の作用および効果を説明する。
【0022】
図2に示されているように、基板4がアノード電極3に保持され、アノード電極3とカソード電極17との間に高周波電力が印加された状態で、第二ガスとしての窒素(N2 )ガス72が第二ガス供給ライン52から供給されると、窒素ガス72は上側室55において拡散し、各連通孔56をそれぞれ通って、各第二ガス供給孔59から各凹部61内にそれぞれ吹き出すために、各凹部61の開口部付近において高密度プラズマ73がそれぞれ形成される。
第二ガス供給孔59から凹部61内に窒素ガス72を直接流すことにより、エネルギーの拡散を強めてホローカソード現象を促進することができるため、電子密度を高くすることができる。
【0023】
第一ガスとしてのモノシラン(SiH4 )ガス71が第一ガス供給ライン51からシャワーヘッド35の下側室54へ供給されると、モノシランガス71は下側室54において拡散し、各第一ガス供給孔58からそれぞれ吹き出す。各第一ガス供給孔58の吹出口は各第二ガス吹出口よりもアノード電極3に近いので、第一ガス供給孔58から供給されたモノシランガス71の分子が凹部61内に滞留することなく、凹部61以外のカソード電極17とアノード電極3との間に吹き出す。
これにより、凹部61内にガスの分子が滞留する場合に比して、凹部61以外のカソード電極17とアノード電極3との間にモノシランガス71の分子が多く存在するので、衝突が起こりやすくなり、より電子密度を高くすることができる。
【0024】
ちなみに、カソード電極17の凹部61の底面に第一ガス供給孔58を設けた場合には、凹部61内の表面上にパーティクルがたまりやすい。しかし、凹部61の底面に窒素ガス72を吹き出す第二ガス供給孔59を設けた場合には、第二ガス供給孔59からの窒素ガス72の供給により、パーティクルを除去することができるので、パーティクルの集積も防ぐことができる。
【0025】
以上のようにして、第一ガス供給孔58から吹き出されたモノシランガス71と、第二ガス供給孔59から吹き出された窒素ガス72とのプラズマ反応によって、アノード電極3に保持された基板4には窒化シリコン膜(図示せず)が形成される。
【0026】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0027】
例えば、前記実施形態においては、モノシランガスと窒素ガスとを使用して窒化シリコン膜を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他のガス種を使用して、酸化シリコン膜や他の膜を形成するのに適用することができる。
【0028】
また、前記実施形態においては、PECVDについて説明したが、本発明はこれに限らず、基板にプラズマ処理を施す半導体製造装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態であるPECVDを示す全体構成図である。
【図2】そのシャワーヘッドを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 処理室
3 アノード電極
4 基板
7 排気管
9 RF高周波電源
15 ガス導入口
17 カソード電極
35 シャワーヘッド(ガス供給ヘッド)
50 本体
51 第一ガス供給ライン
52 第二ガス供給ライン
53 仕切板
54 下側室
55 上側室
56 連通孔
57 連通管
58 第一ガス供給孔
59 第二ガス供給孔
60 突起
61 凹部
71 モノシランガス(第一ガス)
72 窒素ガス(第二ガス)
73 高密度プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の平板電極間にガスを供給し、一対の平板電極の少なくとも一方の平板電極に高周波電力を印加してプラズマを発生させて基板にプラズマ処理を行う半導体製造装置において、
前記一対の平板電極の少なくとも一方には、第一ガスおよび第二ガスをそれぞれ供給する供給ラインが設けられ、前記第一ガスの供給孔と前記第二ガスの供給孔との高さが異なることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記第二ガスは、凹部から供給されることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−153531(P2010−153531A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329058(P2008−329058)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】