説明

半導体記憶装置

【課題】簡便な方法で書き込みが可能であり、しきい値特性の不安定性に対応した酸化物半導体を用いた半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタが紫外線照射する事でしきい値シフトする特性を有していることを利用して半導体記憶装置とする。読み取り電圧を紫外線未照射のしきい値と照射後のしきい値の間に設定して読み取ることができる。初期特性におけるしきい値特性の制御にはバックゲートを備えることや2個の薄膜トランジスタを用いることで解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶回路に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタは液晶テレビに代表される表示装置に用いられている。薄膜トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてアモルファスシリコンや低温結晶化シリコンなどのシリコン系半導体材料が公知であるが、その他の材料として酸化物半導体が注目をされている。
【0003】
酸化物半導体の材料としては、酸化亜鉛又は酸化亜鉛を成分とするものが知られている。そして、電子キャリア濃度が1018/cm未満である非晶質酸化物(酸化物半導体)なるもので形成された薄膜トランジスタが開示されている(特許文献1乃至特許文献3)。
【0004】
一方、薄膜トランジスタを利用した記憶装置がRFID(Radio Frequency Identification),IDタグ、ICタグ、無線タグ、電子タグ、無線チップなどの様々な名称を有する半導体装置に応用されている。この半導体装置で個々の対象物、製品に個体認識番号(つまり、Identification:ID)を与え、各工程等で無線読み取り装置との間で無線交信する事で、その対象物を特定し、履歴等と照合、生産管理、在庫管理、商品管理等様々な分野に利用するものである。これらの半導体装置の多くは、シリコンなどの半導体基板を用いた回路(IC(Integrated Circuit)チップと記す)とアンテナを有し、当該ICチップは記憶装置、無線回路や制御回路等から構成されている。記憶装置に関しては、生産するICチップ毎の認識番号を生産時に一度だけ書けば良く、後は工程毎にその認識番号と対応する情報を管理システム側に持つ方式と、ICチップは生産時だけでなく、工程毎の情報をICチップ側に書き込む、又は書き直す方式がある。一度だけ書き込む方法に有機メモリを用いた例や、半導体プロセスの露光工程で行うマスクROM(Read Only Memory)の例がある。また酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタに紫外線を照射した時の特性を利用したメモリ素子を利用した例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【特許文献3】特開2006−165529号公報
【特許文献4】特開2005−268774号公報
【特許文献5】特開2007−13116号公報
【特許文献6】特開2009−182194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マスクROMの方式で行って作成しても、比較的製造工程が複雑であり、大きな費用を要する事が多い。マスクROMの場合には、識別に用いる記憶素子部分に使用されるトランジスタや容量部に接続する回路パターンに識別番号に従って接続部と切断部を形成するものである。その為にはICチップの製造工程の段階で特殊なフォトマスクや露光装置を利用しなければならない。例えば、基板上に作成したICチップ回路一つ一つに異なった識別番号を印字するために、電子ビーム露光装置を用い、各チップのデータをホストコンピューターから送り、それに基づいて電子ビームのスキャンパターンを変えなくてはならない。つまりフォトマスクを製造する時の工程を行う必要があり、高価な装置を必要とすると共に非常に加工時間を要するスループットの悪い工程となっている。この他には、電子ビーム露光装置を使わない方法としてフォトマスク上に識別番号毎のパターンを予め作成しておくものである。基板は、スリットでフォトマスクにおける所望の識別番号の部分のみを開口したスリットから露光され、ICチップパターンが形成される。次のICチップパターンには、それに対応する次の識別番号のフォトマスク部分に移動し露光する。つまり、ICチップパターンの数だけマスク移動、露光を繰り返さなければならない。他にレーザを用いて行う方法もあるが、いずれにしろ、複雑な工程と高価な装置を要するものであった。
【0007】
一方、有機メモリは、有機薄膜を上部電極と下部電極で挟む事で形成される。ICチップの製造工程終了後に有機メモリの回路パターンに電界を印加し、有機薄膜を電気的に短絡させて、電極間の接続を形成するものである。絶縁部と導通部のパターンから識別番号を形成するものである。識別番号の形成には電極と接触する特殊なプローバーが必要となる。
【0008】
また、マスクROMの方式や有機メモリのいずれの方式でも、ICチップ毎に識別番号の製造時の問題があるだけではなく、商品として生産管理、在庫管理、商品管理等に使用された後、ICチップの残された情報の消去が難しかった。マスクROMで作成したときには、既に回路パターンとしてフォトリソ工程で形成されているので、それを消去する手段はなかった。有機メモリにしても書き込みのための特殊なプローバーなどの装置が必要であり、使用者が簡単に消去の作業ができるものではなかった。
【0009】
一方、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを用いた場合には、紫外線を照射する事で薄膜トランジスタの特性がマイナス側に容易に移動する事を記憶装置に利用するものである。しかしながら、薄膜トランジスタの照射前の電気特性においてもゲート電圧が0ボルトにおいてソースとドレイン間に電流が容易に生じる、いわゆるノーマリーオンの特性になりやすかった。このような特性では、紫外線照射において更にしきい値のマイナスシフトが生じたとしても記憶装置として使うのは困難であった。
【0010】
このような問題に鑑み本発明の一形態は、半導体記憶装置をより少ないプロセスで安価に製造することができる。使用後においては、半導体記憶装置内に残る記憶を容易に消去することができる薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の一つは、
薄膜トランジスタと、
第1の方向に延在するワード線と、
第2の方向に延在するビット線とからなり、
前記薄膜トランジスタは、第1のゲート電極層、第1の絶縁層、チャネル層、ソース電極層、ドレイン電極層を有し、前記チャネル層は酸化物半導体からなり、
前記チャネル層には第2の絶縁層が接して設けられ、
前記第2絶縁層には第2のゲート電極層が接して設けられており、
前記ワード線は前記第1のゲート電極層と接続し、
前記ビット線は前記ソース電極層と接続し、
読み取り電圧を前記ワード線に印加した時に、
前記薄膜トランジスタは前記ソース電極層と前記ドレイン電極層間において第1の抵抗値を有し、
紫外線書き込みを受けた前記薄膜トランジスタは前記ソース電極層と前記ドレイン電極層間における第2の抵抗値を有し、
前記第1の抵抗値が前記第2の抵抗値より大きい事が特徴とする半導体記憶装置である。
【0012】
上記の発明において、
前記ワード線は行デコーダーと接続し、
前記ビット線は列デコーダー、読み取り回路と接続している事を特徴とする半導体記憶装置である。
【0013】
上記の発明において、
前記読み取り回路は、
電源と
第2の薄膜トランジスタとからなり、
前記第2の薄膜トランジスタの第1のソース電極層は電源と接続し、
前記第2の薄膜トランジスタの第2のドレイン電極層は前記ソース電極層と接続しており、
前記読み取り回路は、第2のドレイン電極層と前記ソース電極層の間の電位を測定する手段を有している事を特徴とする半導体記憶装置である。
【0014】
上記の発明において、
前記薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第1のしきい値と、
前記紫外線書き込みのある前記薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第2のしきい値において、
前記読み取り電圧は、前記第2のしきい値より大きく、前記第1のしきい値より小さい事を特徴とする半導体記憶装置である。
【0015】
発明の一つは、
第1の薄膜トランジスタと、
第2の薄膜トランジスタと、
第1の方向に延在するビット線と、
第2の方向に延在するワード線とからなり、
前記第2の薄膜トランジスタは酸化物半導体層からなる第2のチャネル層、第2のゲート電極層、第2のソース電極層、第2のドレイン電極層からなり、
前記第1の薄膜トランジスタは第1のチャネル層、第1の絶縁層、第1のゲート電極層、第1のソース電極層、第1のドレイン電極層を有し、
前記第1のゲート電極層と前記第2のゲート電極層は前記ワード線と接続し、
前記第1のソース電極層は前記ビット線と接続し、前記第1のドレイン電極層は前記第2のソース電極層と接続し、
読み取り電圧を前記ワード線に印加した時に、
前記第2の薄膜トランジスタは、前記第2のソース電極層と第2のドレイン電極層間において第1の抵抗値を有し、
紫外線書き込みのある前記第2の薄膜トランジスタは前記第2のソース電極層と前記第2のドレイン電極層間において第2の抵抗値を有し、
前記第1の抵抗値が前記第2の抵抗値電流より大きい事が特徴とする半導体記憶装置である。
【0016】
上記発明において、
前記ワード線は行デコーダーと接続し、
前記ビット線は列デコーダー、読み取り回路と接続している事を特徴とする半導体記憶装置である。
【0017】
上記発明において、
前記読み取り回路は、
電源と、
第3の薄膜トランジスタとからなり、
前記第3の薄膜トランジスタの第3のソース電極層は電源と接続し、
第3のドレイン電極層は前記第1のソース電極層と接続しており、
前記読み取り回路は、第3のドレイン電極層と前記第1のソース電極層の間の電位を測定する手段を有する事を特徴とする半導体記憶装置である。
【0018】
上記の発明において、
前記第2薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第1のしきい値と、
前記紫外線書き込みのある前記第2の薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第2のしきい値と、
前記第1の薄膜トランジスタが有するId−Vg特性
において、
前記読み取り電圧は、前記第3のしきい値及び前記第2のしきい値より大きく、前記第1のしきい値より小さい事を特徴とする半導体記憶装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、以下のような効果を期待できる。第1に、フォトリソ工程によりコンタクトの形成を行ったMROMよりも早い書き込みが可能であり、小面積化が期待できる。酸化物半導体を活性層に用いた基板に対して、所望部分に簡単な設備で紫外線を照射してデータの書き込みができるので簡便な工程での書き込みが可能である。第2には、MROM製造の際には、書き込みにフォトマスクを利用したフォトレジスト工程を経たが、紫外線を利用した本発明は安価な製造になる。第3に使用現場での追加のデータ書き込みが可能である。第4に、最終的にはデータの一括消去が可能であるので、本発明を用いたICチップを破棄する段階で、書き込みデータを持ったまま処分される事がない。MROMよりもセキュリィティの面で安全性が高い。第5に、書き込み回路が不要であるために小面積な製品の製造が可能である。
【0020】
酸化物半導体を活性層に用いた薄膜トランジスタに本発明では、活性層に接して更に電極を設ける事で、しきい値の安定した特性が得られるようになった。更に酸化物半導体層を有した薄膜トランジスタのソース部と極性の反対の薄膜トランジスタのドレイン部を接続することで、酸化物半導体層を有した薄膜トランジスタのしきい値が不安定であるという弱点を十分に補うデバイスができ、信頼性の確保が必須な半導体記憶装置を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一態様である薄膜トランジスタとその作製方法を説明する図
【図2】本発明の一態様である記憶セルアレイ
【図3】本発明の一態様である記憶セルアレイへのデータ書き込み方法を説明する図
【図4】本発明の一態様である薄膜トランジスタの電気特性を説明する図
【図5】本発明の一態様である記憶セルアレイのデータを説明する図
【図6】本発明の一態様である周辺回路付きの記憶セルアレイにてデータ読み出しについて説明する図
【図7】本発明の一態様の記憶セルアレイのデータ消去方法を説明する図
【図8】本発明の一態様の記憶セルアレイの消去データを説明する図
【図9】本発明の一様態の薄膜トランジスタとその作製方法を説明する図
【図10】本発明の一態様の記憶セルアレイ
【図11】本発明の記憶セルアレイへのデータ書き込み方法を説明する図
【図12】本発明の一態様である薄膜トランジスタの電気特性を説明する図
【図13】本発明の一態様である周辺回路付きの記憶セルアレイにてデータ読み出しについて説明する図
【図14】本発明の一態様である記憶セルアレイの動作を説明する図
【図15】記憶セルアレイを適用した記憶モジュールの図
【図16】RFIDタグを説明する図
【図17】RFIDタグを説明する図
【図18】RFIDタグの使用例を説明する図
【図19】しきい値変化を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、図面を参照して以下に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解されるからである。したがって、本発明は以下に示す実施の形態および実施例の記載内容のみに限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて本発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
【0023】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0024】
なお、本明細書にて用いる第1、第2、第3といった序数を用いた用語は、構成要素を識別するために便宜上付したものであり、その数を限定するものではない。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態は、本発明の一態様である半導体記憶装置について説明する。
【0026】
図1の薄膜トランジスタで説明するならば、絶縁性の表面を有する基板上にゲート電極層11を形成し、その上にゲート絶縁層12を形成する。その上に酸化物半導体層14を形成し、その酸化物半導体層のソース部にソース電極層15a、ドレイン部にドレイン電極層15bを形成する。次に酸化物絶縁層16を形成した後にバックゲート電極層19を形成する。つまり、ゲート絶縁層、ゲート電極層を形成する反対側の半導体層の面に酸化物絶縁層とバックゲート電極層を形成するものである。ゲート電極層が半導体層に対して電界を与えて半導体層のスイッチングを司るのに対して、バックゲート電極層では、その裏面の保護と共に不安定なしきい値の制御を行う為のものとして利用される。酸化物半導体を活性層に用いた薄膜トランジスタは、水分、ヒドロキシル基、又は水素などが不純物として働き、しきい値シフトなどを起こしやすい。それを防止するためにバックゲート電極層を設けている。
【0027】
ここで、薄膜トランジスタにおけるソース電極層とドレイン電極層は、いずれも半導体層に接続するものであり、ゲート電極層に電圧が印加された時にソース電極層とドレイン電極層の間に電位差に応じて電流を流す。ここでは、薄膜トランジスタの構造を説明する場合に、ソース電極層とドレイン電極層と呼称する。薄膜トランジスタの駆動の中では、ソース電極層とドレイン電極層の呼称は他との接続関係のみを示しており、電流の向きを特定するものではない。ソース電極層及びドレイン電極層の一方と他方と呼称する方法もあるが、こうした呼称の仕方による意味の差は特にない。
【0028】
従ってバックゲート電極層付きの薄膜トランジスタは、図1ではボトムゲート型の薄膜トランジスタによる場合の図面を示しているが、これに限らずトップゲート型薄膜トランジスタに対しても同様の技術は適用可能である。その時には基板側より、バックゲート電極層)、酸化物絶縁層、チャネル層、ゲート絶縁層、ゲート電極層、ソース電極層及びドレイン電極層の順に構成される。ここで、ゲート電極層11がバックゲートの機能を有し、バックゲート電極層19が酸化物半導体層14に電界を与え半導体層のスィッチングを制御しても構わない。ゲート電極層11及びバックゲート電極層19の双方が酸化物半導体層14に電界を与え, 半導体層のスィッチングを制御しても構わない。
【0029】
図1を用いてプロセスの順を追ってバックゲート電極層付きの酸化物半導体を有する薄膜トランジスタについて説明する。
絶縁表面を有する基板10に使用することができる基板に大きな制限はないが、少な
くとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウム
ホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0030】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が630℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。酸化ホウ素(B2O3)と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。
【0031】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0032】
図1(A)には記されていないが、下地層となる絶縁層を基板10とゲート電極層11との間に設けてもよい。下地層は、基板10からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素層、酸化珪素層、窒化酸化珪素層、又は酸化窒化珪素層から選ばれた一又は複数の層による積層構造により形成することができる。
【0033】
また、ゲート電極層11の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層又は積層して形成することができる。2層の積層構造としては、例えば、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層を積層した2層の積層構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層を積層した2層の積層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層の積層構造、又は窒化タングステン層とタングステン層との2層の積層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層または窒化タングステン層と、アルミニウムと珪素の合金層またはアルミニウムとチタンの合金層と、窒化チタン層またはチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。
【0034】
次いで、ゲート電極層11上にゲート絶縁層12を形成する。
【0035】
ゲート絶縁層12は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化珪素層、窒化珪素層、酸化窒化珪素層、窒化酸化珪素層、又は酸化アルミニウム層から選ばれた層を単層で又は一種または複数種の層を積層して形成することができる。例えば、成膜ガスとして、SiH4、酸素、窒素又は窒素酸化物を用いてプラズマCVD法により酸化窒化珪素層を形成すればよい。ゲート絶縁層12の膜厚は、10nm以上300nm以下とし、積層の場合は、例えば、膜厚5nm以上150nm以下の第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶縁層上に膜厚5nm以上150nm以下の第2のゲート絶縁層の積層とする。
【0036】
本実施の形態では、ゲート絶縁層12としてプラズマCVD法により膜厚100nm
以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0037】
次いで、ゲート絶縁層12上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体層13を形成する。
【0038】
なお、酸化物半導体層13をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層12の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、酸素雰囲気などを用いてもよい。
【0039】
酸化物半導体層13は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体層を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体層13としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体層13は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiO2を2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0040】
酸化物半導体層13をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲット(組成比として、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol]、In:Ga:Zn=1:1:0.5[atom])を用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲットとして、In:Ga:Zn=1:1:1[atom]、又はIn:Ga:Zn=1:1:2[atom]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。酸化物半導体ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い酸化物半導体ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層は緻密な膜となる。
【0041】
酸化物半導体層13を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度ppm程度、濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0042】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体層に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板上に酸化物半導体層を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプに液体窒素、液体水素などを用いたコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0043】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0044】
次いで、酸化物半導体層13を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。また、島状の酸化物半導体層を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0045】
次いで、酸化物半導体層に第1の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層14を得る。
【0046】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0047】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0048】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0049】
また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層は結晶化し、微結晶層または多結晶層となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または80%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体層となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる場合もある。
【0050】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体層13に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0051】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極を積層させた後、ソース電極及びドレイン電極上に保護絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0052】
また、ゲート絶縁層12にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体層13に脱水化または脱水素化処理を行う前でも行った後に行ってもよい。
【0053】
なお、ここでの酸化物半導体層のエッチングは、ウェットエッチングに限定されずドライエッチングを用いてもよい。
【0054】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0055】
次いで、ゲート絶縁層12、及び酸化物半導体層13上に、導電層を形成する。導電層をスパッタ法や真空蒸着法で形成すればよい。導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金層等が挙げられる。導電層には、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一または複数から選択された材料を含んでもよい。また、導電層は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム層上にチタン層を積層する2層構造、Ti層と、そのTi層上に重ねてアルミニウム層を積層し、さらにその上にTi層を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、Nd(ネオジム)、Sc(スカンジウム)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた層、合金層、もしくは窒化層を用いてもよい。
【0056】
導電層形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電層に持たせることが好ましい。
【0057】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電層上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層15a、ドレイン電極層15bを形成した後、レジストマスクを除去する。
【0058】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層14上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることができる。
【0059】
なお、導電層のエッチングの際に、酸化物半導体層14は除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0060】
本実施の形態では、導電層としてTi層を用いて、酸化物半導体層14にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとして過水アンモニア水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0061】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層14は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層15a、ドレイン電極層15bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0062】
また、酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層の間に、酸化物導電層を形成してもよい。酸化物導電層とソース電極層及びドレイン電極層を形成するための金属層は、連続成膜が可能である。酸化物導電層はソース領域及びドレイン領域として機能しうる。
【0063】
ソース領域及びドレイン領域として、酸化物導電層を酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層との間に設けることで、ソース領域及びドレイン領域の低抵抗化を図ることができ、トランジスタの高速動作をすることができる。
【0064】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0065】
次いで、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0066】
プラズマ処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁層となる酸化物絶縁層16を形成する。
【0067】
酸化物絶縁層16は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、酸化物絶縁層16に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層16に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体層へ侵入し、又は水素が酸化物半導体層中の酸素を引き抜き、酸化物半導体層の酸化物絶縁層16と接する部分(バックチャネル)が低抵抗化(nチャネル型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、酸化物絶縁層16はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0068】
本実施の形態では、酸化物絶縁層16として膜厚200nmの酸化珪素層をスパッタ法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素層のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層16には、水分や、水素イオンや、OH−などの不純物が含まれず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁層が用いられる。代表的には酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などが用いられる。
【0069】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層16を成膜することが好ましい。酸化物半導体層13及び酸化物絶縁層16に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0070】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室では、例えば、水素原子や、水(H2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物絶縁層16に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0071】
酸化物絶縁層16を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度ppm程度、濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0072】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層16と接した状態で加熱される。
【0073】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体層に対して脱水化または脱水素化のための加熱処理を行って低抵抗化した後、酸化物半導体層の一部を選択的に酸素過剰な状態とする。その結果、ゲート電極層11と重なるチャネル形成領域17はI型となり、ソース電極層15aに重なる高抵抗ソース領域18aと、ドレイン電極層15bに重なる高抵抗ドレイン領域18bとが自己整合的に形成される。以上の工程で薄膜トランジスタが形成される(図1(D)参照)。
【0074】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなる薄膜トランジスタを得ることができる。また、酸化物絶縁層に欠陥を多く含む酸化シリコン層を用いると、この加熱処理によって、酸化物半導体層中に含まれる該不純物をより低減させる効果を奏する。
【0075】
なお、ドレイン電極層15b(及びソース電極層15a)と重畳した酸化物半導体層において高抵抗ドレイン領域18b(又は高抵抗ソース領域18a)を形成することにより、薄膜トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、高抵抗ドレイン領域18bを形成することで、ドレイン電極層15bから高抵抗ドレイン領域18b、チャネル形成領域17にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、ドレイン電極層15bに高電源電位VDDを供給する配線に接続して動作させる場合、ゲート電極層11とドレイン電極層15bとの間に高電界が印加されても高抵抗ドレイン領域がバッファとなり局所的な高電界が印加されず、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0076】
また、酸化物半導体層における高抵抗ソース領域又は高抵抗ドレイン領域は、酸化物半導体層の膜厚が15nm以下と薄い場合は膜厚方向全体にわたって形成されるが、酸化物半導体層の膜厚が30nm以上50nm以下とより厚い場合は、酸化物半導体層の一部、ソース電極層又はドレイン電極層と接する領域及びその近傍が低抵抗化し高抵抗ソース領域又は高抵抗ドレイン領域が形成され、酸化物半導体層においてゲート絶縁層に近い領域はI型とすることもできる。
【0077】
酸化物絶縁層16上にさらに保護絶縁層を形成してもよい。例えば、RFスパッタ法を用いて窒化珪素層を形成する。RFスパッタ法は、量産性がよいため、保護絶縁層の成膜方法として好ましい。保護絶縁層は、水分や、水素イオンや、OH−などの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁層を用い、窒化シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化酸化シリコン層、窒化酸化アルミニウム層などを用いる。
【0078】
次いで、図1(C)に示すように、酸化物絶縁層16上に、水分、ヒドロキシ基、或いは水素を、吸蔵または吸着しやすい特性を有する金属を1つまたは複数用いて導電層を形成した後、導電層をパターニングすることで、酸化物半導体層14と重なる位置にバックゲート電極層19を形成する。本発明の一形態では、活性層に対して紫外線照射を行いデータの書き込みを行う為に、紫外線を透過するITO(Indium−Tin−Oxide)を用いている。バックゲート電極層には、これだけに限らず、一般的な金属薄層の一部をエッチング除去した開口部を設けてもよい。開口部は酸化物半導体層のチャンネル部に対応する位置に設ける必要がある。但し、チャンネル部の全て開口する必要はない。そうすればバックゲートとしての機能を保ちつつ、開口部から紫外線を透過する事ができるために、酸化物半導体層にバックゲート越しに紫外線照射が可能となる。
【0079】
次いで、バックゲート電極層19を形成した後、該バックゲート電極層19が露出した状態で、減圧雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において加熱処理を行うことで、バックゲート電極層19の表面や内部に吸着されている水分や酸素などを取り除く活性化処理を行う。
【0080】
上記活性化処理を行うことで、酸化物半導体層14内、ゲート絶縁層12内、酸化物半導体層14とゲート絶縁層12の界面とその近傍、或いは、酸化物半導体層14と酸化物絶縁層16の界面とその近傍、などに存在する、水分、ヒドロキシ基、または水素などの不純物が、活性化されたバックゲート電極19に吸蔵或いは吸着されるため、上記不純物がトランジスタの特性の劣化に繋がるのを防ぐことができる。また、水分、ヒドロキシ基、水素などの脱離により、酸化物半導体層14のキャリア濃度を増加させ、ホール移動度を高めることが出来る。
【0081】
また、半導体装置の置かれている雰囲気中に含まれる水分、水素などの不純物が、酸化物半導体層14内に取り込まれるのを防ぐことが出来る。本実施の形態では、ターボ分子ポンプなどの排気手段により処理室内を5×10−3Pa以下、好ましくは10−5Pa以下の真空度となるような減圧雰囲気に保ち、温度を400℃、基板温度が上記温度に達した状態で10分間、加熱処理を行う。
【0082】
なお、活性化のための加熱処理は、酸化物半導体層14が酸化物絶縁層16と接した状態で行われる。そのため、酸化物半導体層14の酸化物絶縁層16と接する領域が、均一に高抵抗化するため、薄膜トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。
【0083】
なお、図1(E)では、バックゲート電極層19が酸化物半導体層14一致している場合を例示しているが、本発明はこの構成に限定されない。バックゲート電極層19が酸化物半導体層14全体を完全に覆うことで、酸化物半導体層14中の不純物を低減するという効果は高くなる。しかし、酸化物半導体層14の少なくともチャネル形成領域となる部分全体、或いはその一部が、バックゲート電極層19と重なることでも、上記効果は得られる。
【0084】
また、バックゲート電極層19は、電気的に絶縁しているフローティングの状態であっても良いし、電位が与えられる状態であっても良い。後者の場合、バックゲート電極層19には、ゲート電極層11と同じ高さの電位が与えられていても良いし、グランドなどの固定電位が与えられていても良い。バックゲート電極層19に与える電位の高さを制御することで、薄膜トランジスタの閾値電圧を制御することができる。このようにバックゲートを設ける事により、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタのしきい値を初期状態(紫外線照射前)おいてマイナス側にシフトすることなく、ゲート電圧0ボルトにおいてオフ状態を安定に維持することができる。
【0085】
このようなバックゲート付きの酸化物半導体を活性層に持つ薄膜トランジスタを使って図2に示したような記憶セルアレイを作成する。図2には4ビットの例を示すが、記憶セルアレイはこれに限らず、大ビット数のものであって構わない。一方向(図2における左右方向)に延在する第1ワード線101,第2ワード線102と、他の方向(図2における上下方向)に延在する第1ビット線105,第2ビット線106から成り立ち、ワード線とビット線はゲート絶縁層を間に挟み直交している。第1ワード線101と第1ビット線105により決められた部分を第1ビット114、第1ワード線101と第2ビット線106により決められた場所を第2ビット115、第2ワード線102と第1ビット線105により決まる場所を第3ビット116、第2ワード線102と第2ビット線106により決まる場所を第4ビット117と呼び4ビットの記憶セルアレイのデータの書き込み、読み出しなどを説明する際に用いる事にする。第1ビット114には第1薄膜トランジスタ110が配置している。第1薄膜トランジスタ110のゲート電極は、第1ワード線101と電気的に接続し、ソース電極は第1ビット線105と電気的に接続している。また第2ビット115の第2薄膜トランジスタ111のゲート電極層は第1ワード線101と電気的に接続し、ソース電極は第2ビット線106と接続している。なお、第1薄膜トランジスタのドレイン部は図2ではグランド120に接続されている。この部分の接続に関してはこれに限らず、薄膜トランジスタの特性により、接続関係は異なり、所定の電位や信号を持つ場合もある。記憶セルアレイは、異なる方向を持つワード線とビット線がこのように直交し、その交点に薄膜トランジスタを配置する形体をとなる。
【0086】
記憶セルアレイに紫外線照射してのデータの書き込みについて図3を用いて説明する。図2で説明した部分については図2と同様の番号を配している。紫外線によるデータの書き込みを第1ビットの第1薄膜トランジスタ110と第4ビットの第4薄膜トランジスタ113について行う。その時に第2ビットの第2薄膜トランジスタ111には第1マスク200が配置されている。同様に第2ワード線102と第1ビット線105と接続している第3ビットの第3薄膜トランジスタ112には第2マスク201が配置されている。マスクには、紫外線を透過しない材料が用いられている。クロム、酸化クロムの金属薄膜の積層物が遮光体として設けられたフォトマスクガラスを記憶セルアレイの上に置くことで薄膜トランジスタを遮光することができる。金属薄膜としては、その他にアルミニウム、金、チタン、タングステンなどを用いることができる。それだけでなく、スクリーン印刷やインクジェットを用いて、所望の薄膜トランジスタの上に黒色インク、銀ペースト、金ペースト、カーボンペーストなど有機物や無機顔料などを用いる事ができる。マスク材料は400nm以下の波長の紫外線を5%以下、望ましくは0.5%以下の透過率まで遮光することが望ましい。材料によっても必要とする厚さは異なるが、金属薄膜であれば200nmあれば十分であり、印刷法であれば10〜50ミクロンが十分な厚さとなる。また、マスクの形状については図2には正方形となっているが、それに限らず丸型でも三角でもよい。少なくとも薄膜トランジスタのチャネル部、通常であれば半導体層全体を遮光することが望ましい。
【0087】
マスクが所望の薄膜トランジスタに形成されたら記憶セルアレイに紫外線210、211の照射を行う。図3には2個の矢印で記したが、これに限らず、紫外線照射は記憶セルアレイに対して全面に均等に行う。その時には第1マスク200、第2マスク201の上面にも紫外線照射される。但し、マスク形成が前記の如くに十分に行われていればマスク下の薄膜トランジスタ111、112には紫外線は照射されない。また紫外線をガラスファイバーなどで導入する時にはビーム径を1〜10mm、場合によっては20〜50mmにすることができるために、ガラスファイバーを手に持って作業することができるので大変便利である。または、紫外線レーザを光源として光学顕微鏡から導入することができる時には、光学レンズで集光できるために、マスク無しで目的とする薄膜トランジスタだけに直接照射することができる。
【0088】
紫外線照射装置としては低圧水銀ランプや高圧水銀ランプを用いる。低圧水銀ランプの主波長は184.9nmと253.7nmである。高圧水銀ランプは365nmに主波長を有する紫外線を発する。書き込みに必要な照度は0.2〜20mW/cm2、又は20〜200mW/cm2である。その時のエネルギーは5〜200mJ/cm2である。ただそれに限らず200〜2000mJ/cm2と十分なエネルギーを与えても良い。また、図3には薄膜トランジスタの上方より紫外線照射が行われているように示されているが、紫外線照射の方向はアレイのデバイス構造によって変わる。ボトムゲートTFTの場合にはゲート電極の上に活性層となる半導体層が形成される為に、その上部にマスクを設け、上方より紫外線を薄膜トランジスタに照射する。するとチャネル部に紫外線が照射され半導体層での励起が容易に起きる。また、トップゲートTFT構造の時には、半導体層の上方にゲート絶縁層、ゲート電極が形成される為に、アレイ上方からはチャネル部に紫外線を効率よく照射することができない。この場合には、基板裏面(薄膜トランジスタが形成された面とは反対の面)にマスク層を形成し、裏面より紫外線照射を行う。この場合には基板は、ガラス、石英など紫外線を十分に透過する材料が用いられるのが望ましい。
【0089】
このように所望のデータを書き込んだ記憶セルアレイについては、一般光、外部光、太陽光など紫外線を含む波長での長時間暴露により、データ書き込みと同様の効果が心配される為に、シールやコーティングを行い、紫外線暴露を防ぐ事が望ましい。
【0090】
図4にバックゲート電極層を形成した薄膜トランジスタのId−Vg特性の一例を示す。紫外線照射により書き込み前の薄膜トランジスタのId−Vg特性401はソース部をグランド、ドレイン部に10Vを印加した状態で、ゲート電圧を−20〜+20Vを印加した時にドレイン−ソース間の電流を測定したものである。ゲート電圧がマイナスの時には電流値は1x10−12〜1x10−13Aで安定であり、ゲート電圧がプラスになる頃に電流値は急激に増大して10−3〜10−2Aとなる。その時の電流変化が最大になる時の電圧をしきい値(Vth1ボルトとして表す)という。この時のしきい値Vth1は1.5〜4ボルトとなり、ゲート電圧0ボルトにおいて10−12A以下の電流となり、完全にノーマリーオフ状態となる。
【0091】
紫外線を照射した薄膜トランジスタのId−Vg特性402を説明する。全体の測定曲線の形は書き込み前とあまり差はないが、書き込み後のしきい値(Vth2ボルトで表す)は−3〜1ボルトであり、照射前のしきい値に比して2〜4Vマイナス側にシフトしている。従ってより小さなゲート電圧でドレイン−ソース間の電流が流れる。このしきい値シフトはVth1まで経時変化で戻る事はなく、シフトしたままで保持される。
【0092】
酸化物半導体層130は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体層を用いる。これらの材料は、従来は透明電極として用いられていたものであり、エネルギーギャップが3eV程度である。例えばIn−Ga−Zn−O系非単結晶薄膜のエネルギーギャップは3.15eVであり、390nmの波長のエネルギーの光に相当する。従って、半導体層にこうした酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタは紫外線照射による励起を受けやすく、半導体層の中にドナー準位を作りしきい値シフトを起こしやすい。薄膜トランジスタはシフト後も安定した状態を続けるため、それをデバイスの特性を活かした記憶装置である。
【0093】
こうした紫外線でデータ書き込みをした薄膜トランジスタと書き込み無しの薄膜トランジスタでは、それぞれのしきい値が異なる為に、双方のしきい値Vth1とVth2の間の電圧Vr(この電圧を読み取り電圧Vrと呼ぶことにする)を選択してゲート電圧に印加すると、書き込み無しの薄膜トランジスタ特性401ではソース電極層とドレイン電極層間の抵抗値が高くオフ状態となり、薄膜トランジスタ特性402ではソース電極層とドレイン電極層間の抵抗値が低くなり、オン状態が得られる。オン状態とオフ状態の抵抗値の差が大きいほど記憶装置としての精度は上がる。書き込み電圧を印加した時に、それぞれの抵抗値は6桁オーム以上の開きを有している事が望ましいが、2〜3桁オームほどの開きでも十分に記憶装置として機能する。これを記憶装置として利用することができる。
【0094】
図5は記憶セルアレイにデータの書き込み状況を示している。マスクを施し紫外線照射が行われなかった第2ビット115、第3ビット116には”0”データ301,302のままであるが、紫外線照射した第1ビット114,第4ビット117に ”1” データ300,303の書き込みが行われている。このようにして4ビットの記憶セルアレイには”1001”のデータ書き込みが行われる。紫外線照射による書き込みはデバイスの概観上の変化は無いが、この4ビットの記憶セルアレイには”1001”の書き込みが行われ、それを揮発して消滅することなくこのデータを保持することができているので本発明のデバイスが達成する事になる。
【0095】
このように所望のデータを書き込んだ記憶セルアレイについては、一般光、外部光、太陽光など紫外線を含む波長での長時間暴露により、データ書き込みと同様の効果が心配される為に、シールやコーティングを行い、紫外線暴露を防ぐ事が望ましい。
【0096】
図6に周辺回路を配置した記憶セルアレイを示す。データが書き込まれた記憶セルアレイからデータをどのように読み出すかに関して説明をする。既に図2,3,5において説明したように、ここには酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタからなる記憶セルアレイには既にデータが書き込まれている。図6は図2,3,5に周辺回路を含めた図面と考えてもらえばよい。記憶素子回路の簡略化のため、4ビットの記憶回路としているが4ビットに限定されるものではない。図6に示す記憶素子回路は列デコーダー601、行デコーダー602、アンプ615、酸化物半導体を活性層に持つ薄膜トランジスタ603、604、605、606、ビット線(データ線)621、622、ワード線631、632、電源であるVDD600、列スイッチ611,612,出力配線617、電位測定の為に固定の抵抗として役割を果たす薄膜トランジスタ614、出力端子616によって構成される。第1薄膜トランジスタ603はゲート電極がワード線631に、ソース電極がビット線621に接続されている。ドレイン電極は本図面ではグランド624に接続されているが、それに限らず特定の電位を持たせる事もある。他の薄膜トランジスタ604、605、606のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の接続も同様の接続方法により各配線に接続されている。第1ワード線631と第1ビット線621により決められた部分を第1ビット635、第1ワード線631と第2ビット線622により決められた場所を第2ビット636、第2ワード線632と第1ビット線621により決まる場所を第3ビット637、第2ワード線632と第2ビット線622により決まる場所を第4ビット638と呼び、4ビット記憶セルアレイのデータの書き込み、読み出しなどを説明する際に用いる事にする。
【0097】
記憶セルアレイには図3で説明したように既に”1001”のデータが書き込まれており、第1ビット635と第4ビット638は紫外線によるデータ”1”を有している。マスクが形成されており紫外線が照射されなかった第2ビット636と第3ビット637はデータ”0”を有している。記憶情報を書き込んだ記憶セルアレイから、どのように記憶情報をどのように読み出すかに関して説明する。
【0098】
紫外線照射無しの第2ビット636における第2薄膜トランジスタ604は、しきい値Vth1を有しているため、読み取り電圧Vrをゲート電極に印加するとソース−ドレイン間電流は小さくオフ状態となる。行デコーダー602よりワード線631が選択され、薄膜トランジスタ604のゲート電極に読み取り電圧として例えば3Vがかかる。次に列デコーダー601より列スイッチ612がビット線622を選択し、VDDの電源電位が出力配線617から薄膜トランジスタ604のソース線に入る。紫外線照射無しの薄膜トランジスタ604では、しきい値Vth1を有しているため、読み取り電圧Vrをゲート電極に印加してもソース−ドレイン間電流は小さく、この部分の抵抗値は大きい。よって、電源であるVDD600とグランド625との間で、第1の薄膜トランジスタ614と第2の薄膜トランジスタのある時点での抵抗に応じた電圧分割を考えれば良い。第2薄膜トランジスタ604に占める電圧は大きく、薄膜トランジスタ614に印加される電圧は小さい。よって、グランド625を基準に見ると、アンプはHighを出力する。
【0099】
データ書き込みされた第1ビット635における第1薄膜トランジスタ603を考える。前記同様に第1ワード線631が行デコーダーで選択されている。第2薄膜トランジスタの第2列スイッチ612がオフになり、次に第1列スイッチ611がオンとなり、第1ビット線621が選択される。VDDの電位が第1薄膜トランジスタのソース部に入る。ゲート部には読み取り電圧Vrが印加される。第一薄膜トランジスタのしきい値はVth2であり、それより大きな読み取り電圧Vrが入っている為にソース−ドレイン間に電流がグランド624側に流れる。つまり第1薄膜トランジスタ603における抵抗値は小さい。よって第1の薄膜トランジスタにソース−ドレイン間の印加される電圧は小さく、薄膜トランジスタ614に大きな電圧がかかる。第1ビット635側の電位は低くなる。その時にアンプ615はLowを出力する。同様にして第2ワード線632が選択されてVDDがソース線に印加された時に書き込みのない第3ビットからはHigh、書き込みのある第4ビットからはLowが出力される。
【0100】
一方、ワード線が選択されていない時を考える。選択されていない時にはワード線は0ボルトなど読み取り電圧Vrより小さな電圧となる。データ書き込みされた第4ビット638の第4薄膜トランジスタ606について考える。第2ワード線632が非選択の状態で列スイッチ612が接続されVDDがソース側に入る。非選択のゲート電極には0ボルトが印加される。このゲート電圧における第4薄膜トランジスタはソース−ドレイン間に電流は流れず、この部分の抵抗は高い。よって第4ビットにおける電位は大きく、アンプはHighを出力する。
【0101】
データ書き込みのない第3ビット637における第3薄膜トランジスタ605の非選択時の動作について考える。第2ワード線632が非選択の状態では、電圧0ボルトが第3薄膜トランジスタ605のゲート電極に入る。列スイッチ611が接続され、第1ビット線621よりVDDがソース線に入る。ゲート電極の非選択時はゲート電極に0ボルトが印加される。このゲート電圧では第3薄膜トランジスタはソース電極とドレイン電極の間に電流は流れず、この部分の抵抗は高い。よって、第3ビットにおける電位は高くなり、アンプはHighを出力する。同様に、第1ワード線が非選択になった時にも同様に第1ビット635、第2ビット636はHighを出力する。
【0102】
このようにして、第1ビットから第4ビットの記憶セルアレイに書き込みをした”1001”データは、”Low,High,High、Low”として読み出され、アンプより出力される。また、ワード線が選択されていない時には書き込みの有無によらず、Highを出力する。つまり、書き込みのあるビットをワード線が選択して読み取る時にはLowを出力し、書き込みの無いビットの読み取る時及びワード線が非選択の時には書き込みデータによらずHighを出力する。それが成立する事で、複数のワード線と複数のビット線がマトリクスを形成した記憶セルアレイを形成した時に読み取りが正確に行う事ができる。
【0103】
“1001”のデータが保持された記憶セルアレイが破棄されるときには、”1001”のデータが残されたままでは、秘密情報漏洩の観点からは心配な状況になる。従って記憶セルアレイを破棄するときには、記録されたデータを一括で消去することが望ましい。図7にはマスク無しで全面に均等に紫外線210,211を照射し、どのビットにもデータの書き込みをすることでデータの消去することができる。その結果図8に示したように、”1111”のデータの書き込みが行われ、それまであった”1001”のデータは完全に消去された。薄膜トランジスタ110、113には2度の書き込みが行われた事になるが、その履歴は特に残らずに、”1111”のデータのみが記憶セルアレイには残る。
【0104】
(実施の形態2)
ビット内に酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタに加えて別の薄膜トランジスタを備えた実施形態に関して説明する。酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタがnチャネル型の電気特性を有しているのであればその反対の極性であるpチャネル型の電気特性を有する薄膜トランジスタを用いる。pチャネル型の電気特性というのは、ゲート電極層にプラスの電圧を印加した時にはソース−ドレイン間に流れる電流は小さく、マイナスの電圧を印加した時には電流が大きくなる特性を持つものである。つまりプラス電圧を印加した時にはオフ状態ではあるが、マイナス電圧でオン状態になるスイッチング特性を有する。つまりマイナス電圧でオフ状態、プラス電圧を印加した時にはオン状態となるnチャネル型の薄膜トランジスタとは反対の動作をするものである。酸化物半導体を有した薄膜トランジスタがnチャネル型であるならばpチャネル型の薄膜トランジスタを本実施形態では適用する。pチャネル型の薄膜トランジスタは酸化物半導体を有した薄膜トランジスタのしきい値特性の制御が難しい時の解決策として適用される。但し、実施形態の1で示したバックゲート電極層を備えてしきい値制御ができている酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタに対して本実施形態を適用しても問題はない。
【0105】
図9に素子の断面構造を示した。これを用いて説明する際に、pチャネル型の薄膜トランジスタを第1の薄膜トランジスタ、酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタを第2の薄膜トランジスタと呼ぶ。また、第1の薄膜トランジスタのゲート電極層42は、第1のゲート電極層と称して、第2の薄膜トランジスタのゲート電極層である第2のゲート電極層55と区別する。
【0106】
第1の薄膜トランジスタ64は第1のチャネル40を有するシリコン層37、第1のゲート絶縁層41、第1のゲート電極層42、第1のソース電極層45及び第1のドレイン電極層46を有する。38は第1のソース領域及び第1のドレイン領域の一方であり、39は第1のソース領域及び第1のドレイン領域の他方である。
【0107】
第1の薄膜トランジスタ64は、下地膜となる絶縁層36上に設けられる。絶縁層36は基板35に含まれる金属イオンなどの不純物が第1の薄膜トランジスタ64、第2の薄膜トランジスタ68に侵入するのを防止する。絶縁層36の上にはシリコン層37が設けられる。シリコン層37の上には第1のゲート絶縁層41が設けられる。第1のゲート絶縁層41の上には第1のゲート電極層42が設けられる。第1のソース電極層45、及び第1のドレイン電極層46は、シリコン層37の上に、それぞれ第1のソース領域及び第1のドレイン領域38,39に接するように設けられる。なおここでは第1の薄膜トランジスタ64としてトップゲート型の薄膜トランジスタを示したが、ボトムゲート型の薄膜トランジスタでもよい。また、第1の薄膜トランジスタは1個に限らず、複数のものを第1薄膜トランジスタとして用いても良い。
【0108】
第1のゲート電極層42はワード線に電気的に接続される(図示しない)。また第1のゲート電極層42はワード線の一部であってもよい。
【0109】
第1のソース電極層45は第1のビット線に電気的に接続される(図示しない)。また第1のドレイン電極層46は第2の薄膜トランジスタの第2のソース電極層53と電気的に接続している。
【0110】
第2の薄膜トランジスタ68に関して説明する。第2の薄膜トランジスタ68は第2のゲート電極層55、第2のゲート絶縁層51、酸化物半導体層52、第2のソース電極層53及び第2のドレイン電極層54を有する。
【0111】
第2の薄膜トランジスタ68は層間絶縁層49上に設けられる。第2のゲート電極層55は層間絶縁層49の上に設けられる。第2のゲート電極層55の上には第2のゲート絶縁層51が設けられている。第2のゲート絶縁層51の上には酸化物半導体層52が設けられる。酸化物半導体層52の上に接して第2のソース電極層53、及び第2のドレイン電極層54が設けられる。第2のソース電極層53、及び第2のドレイン電極層54、酸化物半導体層52及び第2のゲート絶縁層51の上にはパッシベーション膜として層間絶縁層56が設けられる。また、第2のゲート電極層55を第1のゲート電極層42と同時に形成しても良いし、第1のソース電極層45、ドレイン電極層46と同時に形成しても良い。そうすれば工程数の削減につながる。なおここでは第2の薄膜トランジスタ68としてボトムゲート型のトランジスタを示したが、トップゲート型のトランジスタでもよい。
【0112】
第2のゲート電極層55はワード線に電気的に接続される。また第2のゲート電極層55はワード線の一部であってもよい(図示しない)。
【0113】
第2のソース電極層53は第1の薄膜トランジスタ64の第1のドレイン電極層46と電気的に接続される。また、第2のドレイン電極層54は特定の電位に接続される。(図示しない)。
【0114】
基板35は、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する。基板35としては、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いる。また基板35は、セラミック基板、石英基板、サファイア基板、結晶化ガラス基板などの絶縁体でなる基板でもよい。後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムなどを用いる。
【0115】
絶縁層36は酸化珪素層、窒化珪素層、酸化窒化珪素層などを用いる。絶縁層36は10〜200nmの厚さを有すればよい。
【0116】
シリコン層37は単結晶シリコン層又は結晶性シリコン層である。シリコン層37は2nm以上200nm以下の厚さを有すればよい。シリコン層37はチャネル型の不純物元素を含み、当該不純物元素を含む領域が第1のソース領域、第1のドレイン領域38、39となる。第1のソース領域及び第1のドレイン領域38、39の間がチャネル40となる。シリコン層37は必要に応じてLDD領域を有していてもよい。シリコン層の他、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、炭化珪素等からなる層を用いてもよい。
【0117】
第1のゲート絶縁層41は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、Y層又はHfO層を単層でまたは積層して形成する。第1のゲート絶縁層41は10〜500nmの厚さを有すればよい。
【0118】
第1のゲート電極層42はモリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でまたは積層して形成する。第1のゲート電極層42は10〜200nmの厚さを有すればよい。
【0119】
第1のソース電極層45、第1のドレイン電極層46はモリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でまたは積層して形成する。第1のソース電極層45、第1のドレイン電極層46は100〜500nmの厚さを有すればよい。
【0120】
層間絶縁層43は例えば酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、Y層又はHfO層を単層でまたは積層して形成する。層間絶縁層43は10−200nmの厚さを有すればよい。
【0121】
層間絶縁層44、49は酸化珪素層、窒化珪素層、酸化窒化珪素層などを用いる。層間絶縁層44、49には水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。層間絶縁層44、49は10nm〜1μmの厚さを有すればよい。第2のゲート絶縁層51は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、ハフニウムシリケート(HfSiO)層、窒素が添加されたハフニウムシリケイト(HfSiO(x>0,y>0))層、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlO(x>0,y>0))層、酸化ハフニウム層、酸化イットリウム層を単層でまたは積層して形成する。ハフニウムシリケート(HfSiO)層、窒素が添加されたハフニウムシリケイト(HfSiOy)層、窒素が添加ハフニウムアルミネート(HfAlO)層、酸化ハフニウム層、酸化イットリウム層などのhigh−k材料を用いることでゲートリークを低減できる。第2のゲート絶縁層51には水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。第2のゲート絶縁層51は10〜500nmの厚さを有すればよい。
【0122】
第2のゲート絶縁層51にハロゲン元素(例えば、フッ素または塩素)を5×1018atoms/cm〜1×1020atoms/cm程度含ませてもよい。ハロゲン元素により酸化物半導体層52、または第2のゲート絶縁層51と酸化物半導体層52との界面に存在しうる、水素、水分、水酸基又は水素化物などの不純物を排除することができる。例えば第2のゲート絶縁層51として、窒化シリコン層と酸化シリコン層の積層膜にする場合は、酸化物半導体層52に接する側を、上記濃度でハロゲン元素を含む酸化シリコン層とするとよい。窒化シリコン層が水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物が酸化シリコン層に侵入することを防止する。
【0123】
酸化物半導体層52は非晶質酸化物半導体層又は結晶性酸化物半導体層であり、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体層である。酸化物半導体層52は2nm以上200nm以下の厚さを有ればよい。酸化物半導体層52の種類、組成によりしきい値電圧を調整することができる。
【0124】
酸化物半導体層52には水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。具体的には水素が5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1016/cm未満である。また、キャリア濃度は1×1012/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満である。即ち、酸化物半導体層のキャリア濃度は、限りなく0に近い。また、エネルギーギャップは2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。なお、酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で行えばよい。キャリア濃度測定はホール効果測定を行えばよい。
【0125】
酸化物半導体において水素はドナーであり、酸化物半導体をnチャネル型化する一つの要因であることが知られている。したがって水素を酸化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することにより真性(i型)とすることができる。不純物を添加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去して、高純度化されたi型(真性半導体)酸化物半導体またはそれに近づけることが好ましい。不純物を除去した酸化物半導体のフェルミ準位(Ef)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0126】
上記酸化物半導体層52を有する第2のトランジスタ68では、第2のゲート電極にマイナスの電圧(逆バイアス)が印加しても、オフ電流は小さい。キャリア濃度が低いため、オフ電流に寄与する少数キャリア濃度(ホール濃度)が小さいからである。
【0127】
例えば第2のトランジスタ68のチャネル幅Wが1×10μmでチャネル長が3μmの素子であっても、オフ電流が10−13A以下であり、S値が0.1V/dec.(第2のゲート絶縁層51の厚さ100nm)が得られる。
【0128】
酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することにより、第2のトランジスタ68の動作を良好なものとすることができる。特に、オフ電流を低減することができる。
【0129】
また酸化物半導体のバンドギャップ(Eg)が3.15eVである場合、電子親和力(χ)は4.3eVと言われている。例えば第2のソース電極及び第2のドレイン電極53、54にチタン(Ti)を用いると、Tiの仕事関数は、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属(Ti)−酸化物半導体界面において、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。すなわち酸化物半導体層52にnチャネル型の不純物を添加しなくてもTiから酸化物半導体層52に電子が注入される。
【0130】
第2のソース電極層53、第2のドレイン電極層54はモリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でまたは積層して形成する。第2のソース電極層、第2のドレイン電極層53、54には水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。第2のソース電極層、第2のドレイン電極層53、54は10−500nmの厚さを有すればよい。
【0131】
絶縁層56は酸化物絶縁層であり、例えば酸化シリコン層を用いる。絶縁層56には水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。絶縁層56は10−200nmの厚さを有すればよい。なお酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0132】
絶縁層56にハロゲン元素(例えば、フッ素または塩素)を5×1018atoms/cm〜1×1020atoms/cm程度含ませてもよい。ハロゲン元素により酸化物半導体層52、またはゲート絶縁層56と酸化物半導体層52との界面に存在しうる、水素、水分、水酸基又は水素化物などの不純物を排除することができる。
【0133】
第1の薄膜トランジスタと第2の薄膜トランジスタを記憶セルアレイに関して図10を用いて説明する。
【0134】
第1ワード線1131,第2ワード線1132が一方向に延在し、第1ビット線1121,第2ビット線1122が他方に延在してマトリクスを形成している。第1ワード線1131と第1ビット線1121が交差する第1ビット1103には第1薄膜トランジスタ1141と第2薄膜トランジスタ1142が配置している。第1薄膜トランジスタ1141のゲート電極層と第2薄膜トランジスタ1142のゲート電極層は共に第1ワード線1131に接続している。第1薄膜トランジスタ1141のソース電極層は第1ビット線1121と接続しており、第1薄膜トランジスタ1141のドレイン電極層が第2薄膜トランジスタ1142のソース電極層と接続しており、第2薄膜トランジスタ1142のドレイン電極層は電位VDD1143と接続している。
【0135】
第1ワード線1131と第2ビット線1122が交差する第2ビット1104には第1薄膜トランジスタ1144と第2薄膜トランジスタ1145が配置している。第1薄膜トランジスタ1144のゲート電極層及び第2薄膜トランジスタ1145のゲート電極層はいずれも第1ワード線1131と接続している。第1薄膜トランジスタ1144のソース電極層は第2ビット線1122と接続しており、第1薄膜トランジスタ1144のドレイン電極層は第2薄膜トランジスタ1145のソース電極層と接続し、第2薄膜トランジスタ1145のドレイン電極層は電位VDD1146と接続している。
【0136】
第2ワード線1132と第1ビット線1121が交差する第3ビット1105には、第1薄膜トランジスタ1147、第2薄膜トランジスタ1148が配置され、第2ワード線と第1ビット線に同様の接続をしている。
【0137】
第2ワード線1132と第2ビット線1122が交差する第4ビット1106には第1薄膜トランジスタ1150、第2薄膜トランジスタ1151が配置され、第2ワード線と第2ビット線に対して同様の接続をしている。
【0138】
記憶セルアレイに紫外線照射してのデータの書き込みについて図11を用いて説明する。図10で説明した部分については図10と同様の番号を配している。紫外線によるデータの書き込みを第1ビット1103と第4ビット1106について行う。第2ビット1104と第3ビット1105には第1マスク1300、第2マスク1301が配置されている。マスクには、紫外線を透過しない材料が用いられている。クロム、酸化クロムの金属薄膜の積層物が遮光体として設けられたフォトマスクガラスを記憶セルアレイの上に置くことで薄膜トランジスタを遮光することができる。金属薄膜としては、その他にアルミニウム、金、チタン、タングステンなどを用いることができる。それだけでなく、スクリーン印刷やインクジェットを用いて、所望の薄膜トランジスタの上に黒色インク、銀ペースト、金ペースト、カーボンペーストなど有機物や無機顔料などを用いる事ができる。マスク材料は400nm以下の波長の紫外線を5%以下、望ましくは0.5%以下の透過率まで遮光することが望ましい。材料によっても必要とする厚さは異なるが、金属薄膜であれば200nmあれば十分であり、印刷法であれば10〜50ミクロンが十分な厚さとなる。また、マスクの形状については図11には正方形となっているが、それに限らず丸型でも三角でもよい。マスクとしては第2薄膜トランジスタだけではなく、第1薄膜トランジスタに対しても覆っているが、紫外線に対して感度を持たない第1薄膜トランジスタに関しては覆わなくてもよい。マスクとしては少なくとも紫外線に対して感度を有する酸化物半導体層の備えた第2薄膜トランジスタ1142,1151のチャネル部、通常であれば半導体層全体を遮光することが望ましい。
【0139】
マスクが所望の薄膜トランジスタに形成されたら記憶セルアレイに紫外線の照射を行う。図11には2個の矢印1302,1303で記したが、これに限らず、紫外線照射は記憶セルアレイに対して全面に均等に行う。その時には第1マスク1300、第2マスク1301の上面にも紫外線照射される。但し、マスク形成が前記の如くに十分に行われていればマスク下の薄膜トランジスタ1145、1148には紫外線は照射されない。また紫外線をガラスファイバーなどで導入する時にはビーム径を1〜10mm、場合によっては20〜50mmにすることができるために、ガラスファイバーを手に持って作業することができるので大変便利である。または、紫外線レーザを光源として光学顕微鏡から導入することができる時には、光学レンズで集光できるために、マスク無しで目的とする薄膜トランジスタだけに直接照射することができる。
【0140】
紫外線の波長は高圧水銀ランプを用いると主波長が365nmとなり、低圧水銀ランプを用いると253.7nmが主波長となる。また、図11には薄膜トランジスタの上方より紫外線照射を行っているように図示されているが、紫外線照射の方向はアレイのデバイス構造によって変わる。ボトムゲートTFTの場合にはゲート電極の上に活性層となる半導体層が形成される為に、その上部にマスクを設け、上方より紫外線を薄膜トランジスタに照射する。するとチャネル部に紫外線が照射され半導体層での励起が容易に起きる。また、トップゲートTFT構造の時には、半導体層の上方にゲート絶縁層、ゲート電極が形成される為に、アレイ上方からはチャネル部に紫外線を効率よく照射することができない。この場合には、基板裏面(薄膜トランジスタが形成された面とは反対の面)にマスク層を形成し、裏面より紫外線照射を行う。この場合には基板は、ガラス、石英など紫外線を十分に透過する材料が用いられるのが望ましい。
【0141】
このように所望のデータを書き込んだ記憶セルアレイについては、一般光、外部光、太陽光など紫外線を含む波長での長時間暴露により、データ書き込みと同様の効果が心配される為に、シールやコーティングを行い、紫外線暴露を防ぐ事が望ましい。
【0142】
各薄膜トランジスタの電気特性の一例を図12により説明する。図12(a)は酸化物半導体を活性層に用いた薄膜トランジスタの紫外線未照射でのId−Vg特性である。Id−Vgカーブ1201のしきい値Vth1は−2V〜1Vである。紫外線照射した薄膜トランジスタのId−Vg特性を図12(b)に示す。しきい値Vth2は−6V〜−1Vである。シリコン層を用いたpチャネル型薄膜トランジスタのId−Vg特性を図12(c)に示す。それは、nチャネル型薄膜トランジスタとは逆の特性を有し、ゲート電圧がプラスの時に電流は1x10−12A〜1x10−13Aであり、ほとんど流れないが、ゲート電圧がマイナスに変わるとソース−ドレイン間の電流は増大する。そのしきい値電圧Vth3は−3V〜−1Vである。つまり、ゲート電圧がマイナスの時に薄膜トランジスタはON状態となる。このような3種類の薄膜トランジスタに読み出し電圧Vrを各薄膜トランジスタに共通のゲート電圧として印加すると未照射の酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(a)はオフ状態、紫外線照射した薄膜トランジスタ(b)はオン状態、pチャネル型薄膜トランジスタはオン状態となる。この時の読み取り電圧Vrとしては、Vth2<Vr<Vth3、Vth1を満たす電圧であれば良い。酸化物半導体を持つ薄膜トランジスタに関してはしきい値制御が困難な場合も多いが、読み出し電圧Vrが上記の関係を満たせば良いので、本発明においてはノーマリーオンの特性の薄膜トランジスタであって記憶装置の読み出しに用いる事ができる。
【0143】
紫外線でデータの書き込みを行った記憶素子アレイからデータを読み出す時の方法について図13を用いて説明する。
【0144】
行デコーダー1102から第1ワード線1131、第2ワード線1132が延び、列デコーダー1101から第1ビット線1121、第2ビット線1122が延びて4ビットのマトリクスを形成している。第1ビットには第1薄膜トランジスタ1141と第2薄膜トランジスタ1142が配置されている。
【0145】
第1ビット線1121、第2ビット線1122は供給線1117と接続している。一方、固定の抵抗値を有した抵抗として役割を持っている薄膜トランジスタ1114のソース部をグランド1118に接続し、ドレイン部を供給線1117と共にアンプ1115と接続し、アンプはその部分の電位を出力部1116より出力する。薄膜トランジスタ1114はグランド1118と接続しているが、グランドである必要はなくVDDより低い電位が取れるのであればそれに限らない。
【0146】
各薄膜トランジスタの電気特性を踏まえた読み取り動作に関して説明する。非選択の時のワード線にはVDDが印加されている。行デコーダー1102より第1ワード線1131が選択され第1ワード線1131にグランド状態が与えられ、第2ワード線1132には非選択状態が継続し、VDDが印加されている。第1ビット1103の第1薄膜トランジスタ(pチャネル型薄膜トランジスタ)1141、第2薄膜トランジスタ(酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ)1142のゲート電極層はグランド状態となる。ドレイン側にはVDD1143が接続している。一方、列デコーダー1101は列スイッチ1111がオンして第1ビット線1121を選択する。この場合、ドレイン部のVDD1143の電位を基準にするとゲート電極層とソース電極層の電位は−VDDと見なされる。従って、−VDDをゲート電極層の読み取り電圧として用いればよい。つまり、トランジスタは、図12でのゲート電圧が読み取り電圧Vrにおける各薄膜トランジスタの電気特性に従って動作することになる。第1ビット1103の第1薄膜トランジスタ1141はオン状態、紫外線書き込みした酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ1142はオン状態となる。つまり各トランジスタが直列となっている両薄膜トランジスタ間でもオン状態となり、この部分での抵抗は低くなる。この時にVDDとグランド1118における電位差のほとんどは、薄膜トランジスタ1114に印加される。第1薄膜トランジスタ1141と接続している第1ビット線1121側の電位は大きく、ほぼVDDに近いものとなる。グランド1118を基準に見ると、出力配線信号はアンプ1115よりHighが出力される。
【0147】
第2ビット1104について考える。このビットには書き込みはなされていない。同様に第1ワード線1131と第2ビット線1122に接続している第1薄膜トランジスタ1144、第2薄膜トランジスタ1145には第1ワード線がグランド状態になることで選択される。VDDが接続されている第2薄膜トランジスタのドレイン側の電位を基準に考えるとゲート電極の電位は−VDDと見なされ、第1薄膜トランジスタ1144はオン状態、紫外線書き込みのない酸化物半導体を用いた第2薄膜トランジスタ1145はオフ状態となる(図12(b)参照)。双方の第2薄膜トランジスタのソース部と第1薄膜トランジスタのドレイン部は接続されているため、第1薄膜トランジスタがオン状態、第2薄膜トランジスタがオフ状態であれば第2ビットにおいてはオフ状態であり、この部分の抵抗値は高く、高い電圧が印加される。第2ビット線1122側の電位はグランド1118と近くなる。つまり、アンプ1115はLowを出力する。同様に、第2ワード線が選択された時には書き込みの無い第3ビット1105ではLow,第4ビット1106ではHighが出力される。
【0148】
第3ビット1105では行デコーダー1102から非選択の第2ワード線1132にはVDDが印加されている。ここには第1薄膜トランジスタ1147と第2薄膜トランジスタ1148(紫外線書き込み無し)が接続されている。第2薄膜トランジスタ1148のドレイン部及びゲート電極層はVDDが印加されている事からVDD1149の電位を基準に考えるとゲート部とドレイン部は同電位であり、ゲート電極層に0ボルト印加時のスィッチング特性が適用される。第1薄膜トランジスタはオフ状態となる(図12(c)参照)。第3ビット1105はオフ状態であり、この部分の抵抗は大きい。つまり第3ビット1105において第1ビット線1121側の電位は下がりグランド側に近くなる。よって出力配線信号はアンプ1115よりlowが出力される。この時に書き込み無しの第2薄膜トランジスタがゲート電極0ボルトにおけるスイッチング状態は、上記のようにオフ状態であっても良い。ある程度のしきい値がマイナス側にシフトし、オン状態になっていたとしても、第1薄膜トランジスタがオフ状態となっている限り、本ビットとしてはオフ状態となっている事に変化はなく、未書き込みデータの読み出しにエラーが生じる事はない。
【0149】
書き込みがある第4ビット1106における第2ワード線1132が非選択の状況を説明する。第2ワード線、つまり各薄膜トランジスタのゲート電極層にはVDDが印加され、第2薄膜トランジスタのドレイン側に持つVDD1152の電位との差が無く、ドレイン側を基準とすればゲート電極層には0ボルトが印加された時のスィッチング状況となる。つまり第1薄膜トランジスタはオフ状態、第2薄膜トランジスタはオン状態となり、2つの薄膜トランジスタの特性とすればオフ状態である。第2ビット線1122側の電位はグランド1118側に近く、出力配線信号はアンプ1115よりlowが出力される。このようにして、4ビットの記憶セルアレイに書き込まれた”1001”のデータは、”High,Low,Low,High”として出力される。図6で読み取られたデータ”Low,High,High,Low”となっており、この読み取り結果と反対になっている。電源VDDとグランドの位置が反対になっているからであり、読み取り結果に差はない。
【0150】
図14にこの実施例の真理値表を示した。読み取り方法についてまとめる。つまり、書き込みのあるビットからワード線が選択状態ではHighが検出された一方、ワード線が非選択の状態ではLowしか検出されない。書き込み無しのビットからはワード線が選択状態であっても非選択の状態であってもLowしか検出されない。つまり書き込みのあるビットだけの検出がなされる。書き込み通りの読み出しを行う事ができる。オン状態を出力する一方、書き込み有りであってもワード線で非選択の場合や、書き込まれていないビットであればオフ状態を出力する。また、未書き込みの薄膜トランジスタId−Vg特性1201はゲート電圧0ボルトで十分にオフ状態となっておらず、しきい値がマイナスシフトしている。つまり、仮にゲート電圧が0ボルト状態においてオン状態であっても第1薄膜トランジスタがオフ状態であるので出力としてはオフ状態を維持できる。つまり酸化物半導体のId−Vg特性にしきい値シフトがあっても図14における真理値表は変更無く維持できる。記憶セルアレイの中には酸化物半導体を有した薄膜トランジスタに加え、pチャネル型薄膜トランジスタが加わり、2倍の素子密度にはなるが、こうした書き込みに使用される薄膜トランジスタ特性のばらつきがあったとしても、記憶セルアレイは書き込みの有無に対して真理値表に従って正しく機能する。
【0151】
また、図14は、第1の薄膜トランジスタと第2の薄膜トランジスタのオン状態、オフ状態の組み合わせにより真理値が成立している。つまり、第1の薄膜トランジスタと第2の薄膜トランジスタの順列位置関係は問われない。図11では、第1薄膜トランジスタ1114がビット線1121と接続し、第2薄膜トランジスタ1142が第1薄膜トランジスタ1141のドレイン電極層と接続しているが、反対順列の接続でも構わない。ビット線に酸化物半導体層を含む第2薄膜トランジスタのソース電極層が接続し、そのドレイン電極層が第1の薄膜トランジスタのソース電極層と接続しても良い。すると第1の薄膜トランジスタのドレイン電極層はVDDと接続する事になる。このような配置になったとしても図14の真理値は、変更無く適用される。
【0152】
(実施の形態3)
本実施形態は実施形態1〜2のいずれかを適用したメモリモジュール1500を示す(図15)。メモリモジュール1500は第1のメモリセル領域1501、インターフェース1503、行デコーダー1504、列デコーダー1506を有する。
【0153】
第1のメモリセル領域1501には上記実施形態にて示した記憶セルアレイが複数設けられる。第2のメモリセル領域1502には上記実施形態にて示した記憶セルアレイにも複数設けられる(図15)。
【0154】
行デコーダー1504は例えば実施の形態1に示した行デコーダー602を示し、ワード線1507で第1のメモリセル領域1501に接続される。また行デコーダー1505は例えば実施の形態1に示した行デコーダー602を示し、ワード線1508で第2のメモリセル領域1502に接続される。
【0155】
列デコーダー1506は例えば実施の形態1に示した列デコーダー601に該当し、読み出し回路を有し、ビット線1509で第1のメモリセル領域1501及び第2のメモリセル領域1502に接続される。
【0156】
行デコーダー1504、行デコーダー1505、列デコーダー1506はそれぞれインターフェース1503に接続される。
【0157】
本発明では当該トランジスタに紫外線を照射して当該トランジスタのしきい値電圧を変化させる。したがって当該領域は通常、紫外線を遮光する遮光物で覆われて遮光されていることが好ましい。当該領域へのアクセスが許可された者は遮光物を除去した後、当該トランジスタに紫外線を照射する。遮光物で当該領域を覆うことにより、第三者は当該領域にアクセスできない。
【0158】
(実施の形態4)
本実施形態は上記実施の形態で示したメモリモジュールを有するRFIDタグ1520を示す(図16)。
【0159】
RFIDタグ1520は、アンテナ回路1521及び信号処理回路1522を有する。信号処理回路1522は、整流回路1523、電源回路1524、復調回路1525、発振回路1526、論理回路1527、メモリコントロール回路1528、メモリ回路1529、論理回路1530、アンプ1531、変調回路1532を有する。メモリ回路1529は上記実施形態のメモリモジュールを有する。
【0160】
アンテナ回路1521によって受信された通信信号は復調回路1525に入力される。受信される通信信号、すなわちアンテナ回路1521とリーダ/ライタ間で送受信される信号の周波数は極超短波帯においては13.56MHz、915MHz、2.45GHzなどがあり、それぞれISO規格などで規定される。もちろん、アンテナ回路1521とリーダ/ライタ間で送受信される信号の周波数はこれに限定されず、例えばサブミリ波である300GHz〜3THz、ミリ波である30GHz〜300GHz、マイクロ波である3GHz〜30GHz、極超短波である300MHz〜3GHz、超短波である30MHz〜300MHzのいずれの周波数も用いることができる。また、アンテナ回路1521とリーダ/ライタ間で送受信される信号は、搬送波を変調した信号である。搬送波の変調方式は、アナログ変調またはデジタル変調であり、振幅変調、位相変調、周波数変調及びスペクトラム拡散のいずれかでよい。好ましくは、振幅変調または周波数変調である。
【0161】
発振回路1526から出力された発振信号は、クロック信号として論理回路1527に供給される。また、変調された搬送波は復調回路1525で復調される。復調後の信号も論理回路1527に送られ解析される。論理回路1527で解析された信号はメモリコントロール回路1528に送られる。メモリコントロール回路1528はメモリ回路1529を制御し、メモリ回路1529に記憶されたデータを取り出し、論理回路1530に送る。論理回路1530に送られた信号は論理回路1530でエンコード処理されたのちアンプ1531で増幅され、その信号によって変調回路1532は搬送波に変調をかける。この変調された搬送波によりリーダ/ライタがRFIDタグ1520からの信号を認識する。
【0162】
整流回路1523に入った搬送波は整流された後、電源回路1524に入力される。このようにして得られた電源電圧を電源回路1524より復調回路1525、発振回路1526、論理回路1527、メモリコントロール回路1528、メモリ回路1529、論理回路1530、アンプ1531、変調回路1532などに供給する。
【0163】
信号処理回路1522とアンテナ回路1521におけるアンテナとの接続については特に限定されない。例えばアンテナと信号処理回路1522をワイヤボンディング接続やバンプ接続を用いて接続する、あるいはチップ化した信号処理回路1522の一面を電極にしてアンテナに貼り付ける。信号処理回路1522とアンテナとの貼り付けにはACF(anisotropic conductive film;異方性導電性フィルム)を用いることができる。
【0164】
アンテナは、信号処理回路1522と共に同じ基板上に積層して設けるか、外付けのアンテナを用いる。もちろん、信号処理回路の上部もしくは下部にアンテナが設けられる。整流回路503は、アンテナ回路1521が受信する搬送波により誘導される交流信号を直流信号に変換する。
【0165】
RFIDタグ1520はバッテリー1581を有してもよい(図17)。整流回路1523から出力される電源電圧が、信号処理回路1522を動作させるのに十分でないときには、バッテリー1581からも信号処理回路1522を構成する各回路、例えば復調回路1525、発振回路1526、論理回路1527、メモリコントロール回路1528、メモリ回路1529、論理回路1530、アンプ1531、変調回路1532などに電源電圧を供給する。
【0166】
整流回路1523から出力される電源電圧のうちの余剰分をバッテリー1581に充電すれば良い。RFIDタグにアンテナ回路1521及び整流回路1523とは別にさらにアンテナ回路及び整流回路を設けることにより、無作為に生じている電磁波等からバッテリー1581に蓄えるエネルギーを得ることができる。
【0167】
バッテリーに充電することで連続的に使用できる。バッテリーはシート状に形成された電池を用いる。例えばゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池や、リチウムイオン電池、リチウム2次電池等を用いると、バッテリーの小型化が可能である。例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが挙げられる。または大容量のコンデンサーなどを用いる。
【0168】
(実施の形態5)
本実施形態では、上記実施形態で示したRFIDタグ1520の使用例を示す(図18)。
【0169】
RFIDタグ1520の用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図18(A))、包装用容器類(包装紙やボトル等、図18(C))、記録媒体(DVDソフトやビデオテープ等、図18(B))、乗り物類(自転車等、図18(D))、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、または電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話)等の物品、若しくは各物品に取り付ける荷札(図18(E)、図18(F))等に設けて使用することができる。
【0170】
RFIDタグ1520は、プリント基板に実装、表面に貼る、または埋め込むことにより、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込む、または有機樹脂からなるパッケージであれば当該有機樹脂に埋め込み、各物品に固定される。RFIDタグ1520は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等にRFIDタグ1520を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の半導体装置を取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、RFIDタグ1520を取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
【実施例】
【0171】
チャネル部が酸化物半導体層を用いて作製した薄膜トランジスタのId−Vg特性を測定した一例を図19に示す。図19(A)は紫外線照射前の薄膜トランジスタのId−Vg特性である。図19(B)は紫外線照射した薄膜トランジスタのId−Vg特性である。図中のVDSはソース−ドレイン間電圧を示す。紫外線の波長は254nm、紫外線強度は0.06mW/cm、照射時間は3分である。チャネルにはIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用いた。TFTの構造は図9に示した酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタのボトムゲート型である。紫外線はチャネルの上方からチャネルに向けて照射している。
【0172】
TFTに紫外線を照射すると、照射前のしきい値電圧−0.54V, S値0.064が紫外線照射後のしきい値−2.16V、S値0.18に変化している。この現象を用いてチャネルが酸化物半導体からなるトランジスタを駆動させる。
【符号の説明】
【0173】
10 基板
11 ゲート電極層
12 ゲート絶縁層
13 酸化物半導体層
14 酸化物半導体層
15a ソース電極層
15b ドレイン電極層
16 酸化物絶縁層
17 チャネル形成領域
18a 高抵抗ソース領域
18b 高抵抗ドレイン領域
19 バックゲート電極層
35 基板
36 絶縁層
38 ドレイン領域
37 シリコン層
38 ドレイン領域
40 チャネル
41 ゲート絶縁層
42 ゲート電極層
43 層間絶縁層
44 層間絶縁層
45 ソース電極層
46 ドレイン電極層
49 層間絶縁層
51 ゲート絶縁層
52 酸化物半導体層
53 ソース電極層
54 ドレイン電極層
55 ゲート電極層
101 ワード線
102 ワード線
105 ビット線
106 ビット線
110 薄膜トランジスタ
111 薄膜トランジスタ
112 薄膜トランジスタ
113 薄膜トランジスタ
114 ビット
115 ビット
116 ビット
117 ビット
120 グランド
130 酸化物半導体層
200 マスク
201 マスク
401 Id−Vg特性
401 薄膜トランジスタ特性
402 Id−Vg特性
402 薄膜トランジスタ特性
450 窒素雰囲気下
503 整流回路
600 VDD
601 列デコーダー
602 行デコーダー
603 薄膜トランジスタ
604 薄膜トランジスタ
605 薄膜トランジスタ
606 薄膜トランジスタ
611 列スイッチ
612 列スイッチ
614 薄膜トランジスタ
615 アンプ
616 出力端子
617 出力配線
621 ビット線(データ線)
622 ビット線
624 グランド
625 グランド
631 ワード線
632 ワード線
635 ビット
636 ビット
637 ビット
638 ビット
1101 列デコーダー
1102 行デコーダー
1103 ビット
1104 ビット
1105 ビット
1106 ビット
1111 列スイッチ
1114 薄膜トランジスタ
1115 アンプ
1116 出力部
1117 供給線
1118 グランド
1121 ビット線
1122 ビット線
1131 ワード線
1132 ワード線
1141 薄膜トランジスタ
1142 薄膜トランジスタ
1143 電位VDD
1144 薄膜トランジスタ
1145 薄膜トランジスタ
1146 電位VDD
1147 薄膜トランジスタ
1148 薄膜トランジスタ
1150 薄膜トランジスタ
1151 薄膜トランジスタ
1152 VDD
1201 Id−Vgカーブ
1300 マスク
1301 マスク
1302 矢印
1500 メモリモジュール
1501 メモリセル領域
1502 メモリセル領域
1503 インターフェース
1504 行デコーダー
1505 行デコーダー
1506 列デコーダー
1507 ワード線
1509 ビット線
1520 RFIDタグ
1521 アンテナ回路
1522 信号処理回路
1523 整流回路
1524 電源回路
1525 復調回路
1526 発振回路
1527 論理回路
1528 メモリコントロール回路
1529 メモリ回路
1530 論理回路
1531 アンプ
1532 変調回路
1581 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタと、
第1の方向に延在するワード線と、
第2の方向に延在するビット線とからなり、
前記薄膜トランジスタは、第1のゲート電極層、第1の絶縁層、チャネル層、ソース電極層、ドレイン電極層を有し、前記チャネル層は酸化物半導体からなり、
前記チャネル層には第2の絶縁層が接して設けられ、
前記第2の絶縁層には第2のゲート電極層が接して設けられ、
前記ワード線は前記第1のゲート電極層と接続し、
前記ビット線は前記ソース電極層と接続しており、
読み取り電圧を前記ワード線に印加した時に、
前記薄膜トランジスタは前記ソース電極層と前記ドレイン電極層間において第1の抵抗値を有し、
紫外線書き込みのある前記薄膜トランジスタは前記ソース電極層と前記ドレイン電極層間における第2の抵抗値を有し、
前記第1の抵抗値が前記第2の抵抗値より大きい事が特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ワード線は行デコーダーと接続し、
前記ビット線は列デコーダー、読み取り回路と接続している事を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記読み取り回路は、
電源と
第2の薄膜トランジスタとからなり、
前記第2の薄膜トランジスタの第1のソース電極層は電源と接続し、
第2の薄膜トランジスタの第2のドレイン電極層は前記ソース電極層と接続しており、
前記読み取り回路は、前記第2のドレイン電極層と前記ソース電極層の間の電位を測定する手段を有している事を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第1のしきい値と、
前記紫外線書き込みのある前記薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第2のしきい値とがあり、
前記読み取り電圧は、前記第2のしきい値より大きく、前記第1のしきい値より小さい事を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項5】
第1の薄膜トランジスタと、
第2の薄膜トランジスタと、
第1の方向に延在するビット線と、
第2の方向に延在するワード線とからなり、
前記第2の薄膜トランジスタは酸化物半導体層からなる第2のチャネル層、第2のゲート電極層、第2のソース電極層、第2のドレイン電極層からなり、
前記第1の薄膜トランジスタは第1のチャネル層、第1の絶縁層、第1のゲート電極層、第1のソース電極層、第1のドレイン電極層からなり、
前記第1のゲート電極層と前記第2のゲート電極層は前記ワード線と接続し、
前記第1のソース電極層は前記ビット線と接続し、前記第1のドレイン電極層は前記第2のソース電極層と接続し、
読み取り電圧を前記ワード線に印加した時に、
前記第2の薄膜トランジスタは、前記第2のソース電極層と第2のドレイン電極層間において第1の抵抗値を有し、
紫外線書き込みのある前記第2の薄膜トランジスタは前記第2のソース電極層と前記第2のドレイン電極層間において第2の抵抗値を有し、
前記第1の抵抗値が前記第2の抵抗値電流より大きい事が特徴とする半導体記憶装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記ワード線は行デコーダーと接続し、
前記ビット線は列デコーダー、読み取り回路と接続している事を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記読み取り回路は、
電源と、
第3の薄膜トランジスタとからなり、
前記第3の薄膜トランジスタの第3のソース電極層は電源と接続し、
第3のドレイン電極層は前記第1のソース電極層と接続しており、
前記読み取り回路は、前記第3のドレイン電極層と前記第1のソース電極層の間の電位を測定する手段を有する事を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記第2薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第1のしきい値と、
前記紫外線書き込みのある前記第2の薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第2のしきい値と、
前記第1の薄膜トランジスタが有するId−Vg特性における第3のしきい値とがあり、
前記読み取り電圧は、前記第2のしきい値より大きく、前記第1のしきい値及び前記第3のしきい値より小さい事を特徴とする半導体記憶装置。
【請求項9】
請求項5において、前記第1の薄膜トランジスタが有する電気特性のチャネルタイプは、前記第2の薄膜トランジスタが有する電気特性のチャネルタイプの反対である事を特徴とする半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−139052(P2011−139052A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268648(P2010−268648)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】