説明

単極半導体部品と半導体装置の製造方法

本発明は、ドリフト層(16)を有する単極半導体部品の製造方法であって、少なくとも1つの広いバンドギャップ材料を含むドリフト層(16)の材料のエピタキシャル析出を手段として、ドリフト層(16)の成長方向(19)に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピング(n)の濃度を有するドリフト層(16)を形成する工程を含む方法に関する。エピタキシャル析出により形成されるドリフト層(16)に炭化ケイ素を使用することにより、下流工程におけるドープ材原子の拡散による電荷キャリアドーピング(n)の連続的に低下する濃度のその後の変化を抑制する。製造方法は特に、単純なおよび/または費用効果的なやり方で、ドリフト層(16)を含む単極半導体部品であって比較的低い順方向損失と比較的高い逆バイアス電圧との有利な比を有する単極半導体部品を実装するために使用されることができる。単極半導体部品は能動半導体部品または受動半導体部品であることができる。本発明はさらに、半導体装置(10)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドリフト層を含む単極半導体部品の製造方法に関する。本発明はさらに、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品はしばしば、所謂ドリフト層を有する。ドリフト層は半導体部品のオフ状態における降伏電圧を吸収するように構成される。半導体部品の導電動作中、電流はドリフト層を介し流れることができ、この場合電力損失ができるだけ低いと有利である。
【0003】
一般的には、半導体部品のドリフト層はその成長方向に沿った一様かつ一定のドーピングを有する。この代替として、非特許文献“Optimum Doping Profile for Minimum Ohmic Resistance and High−Breakdown Voltage”(IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,VOL.ED−26,NO.3,MARCH 1979)では、基板から離れたところにあるドリフト層の上側界面上の最小値を起点とし上側界面からの距離が離れるとともに無限大となる傾向がある電荷キャリアドーピングを含むシリコンからなるドリフト層を有するショットキーダイオードについて記載している。したがってこの非特許文献の著者は、電荷キャリアドーピングを実際にはほとんど実現可能でないものとして記載している。
【0004】
独国特許出願公開第2 103 389号明細書は、深さの増加とともにほぼ線形にドーピングが上昇する半導体部品のシリコンドリフト層を製造する方法について記載している。ここではエピタキシャル堆積によりドリフト層を形成することが提案されている。しかしながらこのようにして製造されたシリコンドリフト層は、比較的高い伝導損を伴う比較的低い降伏電圧という点で好ましくない性質を有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明はドリフト層を含む改善された半導体部品を提供することを目的とする。
【0006】
この目的は、特許請求項1の特徴を有する単極半導体部品を製造する方法により、および特許請求項11の特徴を有する半導体装置により実現される。
【0007】
本発明は、ドリフト層を有する単極半導体部品の製造方法であって、少なくとも1つの広いバンドギャップ材料を含むドリフト層の材料のエピタキシャル堆積により、ドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有するドリフト層を形成する工程を有する方法を提供する。
【0008】
同様に、基板領域とドリフト層を有する単極半導体部品とを有する半導体装置が提供される。ドリフト層は、基板領域に対向する第1の界面からその反対側の第2の界面への方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有し、少なくとも1つの広いバンドギャップ材料を含む。
【0009】
ドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度は例えば、厳密に単調に低下する電荷キャリアドーピングの濃度であってよい。この場合、ドリフト層は特定のドーピングタイプに限定されない。連続的に低下する濃度はp型ドーピングまたはn型ドーピングであってよい。
【0010】
好ましい(最適)ドーピングプロフィールは、ドリフト層材料のエピタキシャル堆積により、広いバンドギャップ材料(例えば、炭化ケイ素)を含むドリフト層内に直接的にかつ確実に実現されることができる。広いバンドギャップ材料のエピタキシーは通常は高温で行なわれ、結晶格子の原子はシリコンの場合よりも強く結合されるので、例えばドーピング原子の拡散による濃度プロファイルの以降の変更が防止されるが、これはその後の工程が通常はより低い温度で行われるためである。
【0011】
これは、シリコンからなるドリフト層を凌ぐ、広いバンドギャップ材料を含むドリフト層の実質的な利点である。シリコンからなるドリフト層の形成後、後続工程によるドーピング原子の不要な拡散が通常は発生し、好ましいドーピングプロフィールを変更する。本発明では、このドーピング原子の拡散を防止する。ここで、広いバンドギャップ材料は大きなエネルギーギャップを有する材料を意味するように意図されている。
【0012】
本発明により、ドリフト層(所謂勾配エピタキシャル層)の成長方向に沿って有利に連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有するドリフト層を、直接的なやり方で実現することができ、有利な濃度の電荷キャリアドーピングを採用することにより比較的長期間にわたって使用することができる。ドリフト層の空乏層上の所定の/好ましい最大電界と所定の/好ましい降伏電圧とを考慮することにより、勾配エピタキシャル層の有利なドーピングプロフィールを設定し、かつ比較的長期間にわたって維持することができる。したがって本発明は、比較的高い降伏電圧と比較的低い伝導損との有利な組み合わせが保証されるドリフト層を含む半導体部品を可能にする。
【0013】
半導体部品は能動半導体部品(例えば、MOSFET、JFET)であってよい。同様に半導体部品は受動半導体部品(例えばショットキーダイオード)であってよい。特に、半導体部品は高降伏電圧・垂直型単極電力部品として形成されてもよい。
【0014】
製造方法の別の好ましい実施形態では、ドリフト層は広いバンドギャップ材料と電荷キャリアドーピングで形成される。この場合、ドーピング原子の不要な拡散は確実に防止される。
【0015】
ドリフト層(16)は少なくともシリコンのエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する広いバンドギャップ材料で形成されると有利である。広いバンドギャップ材料のエネルギーギャップは少なくとも2eV幅であることが好ましい。これにより上記利点を確実に保証する。
【0016】
好ましくは、ドリフト層は少なくとも炭化ケイ素および/または窒化ガリウムで形成される。炭化ケイ素のエピタキシーが1400℃より高い高温で行なわれ、結晶格子の原子はシリコンの場合よりも強く結合されるので、例えば、ドーピング原子の拡散による濃度プロファイルの以降の変更が防止される。この利点はまた、アニーリングがエピタキシーよりいくぶん高い温度で行なわれる場合にも保証される。
【0017】
この利点はまた、窒化ガリウムを使用する場合にも保証される。窒化ガリウムのエピタキシーは通常1000℃〜1200℃で行なわれる。別のドーピング注入のアニーリングが時にはより高い温度で行なわれるかもしれないが、それにもかかわらず大きな拡散は発生しない。炭化ケイ素および/または窒化ガリウムおよび/または別の広いバンドギャップ材料を介した拡散は、エピタキシー中の温度のためだけでなくまた広いバンドギャップ材料の結晶構造によっても防止されることをさらに指摘しておく。結晶原子は、広いバンドギャップ材料内においてより強く結合され、これにより原子の拡散を困難になる。さらに、アニーリングに続く工程は、エピタキシー温度より低い温度でほぼ例外なく行なわれる。
【0018】
ドリフト層は、ドリフト層の好ましい降伏電圧VBrとドリフト層の好ましい最大電界Emaxを考慮して設定された層厚dEpiで形成されることが好ましい。特にこの場合、次式を適用してよい。
【数1】


あるいは、次式を適用してもよい。
【数2】


ここで、
【数3】


λは10〜1000の範囲である。
【0019】
したがって成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有するドリフト層は比較的小さな層厚dEpiを有することができる。ここで層厚dEpiは、一定の基準ドーピングで使用されてよい基準ドリフト層の基準層厚以下である。これにより、降伏電圧と伝導損の有利な値に適合するとともに連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有するドリフト層の経済的な製造を可能にする。これの効果は、層厚dEpiを有するドリフト層(勾配エピタキシャル層)がドーピングパラメータ(例えば、厚さ)のばらつきにそれほど敏感ではないということである。
【0020】
この代替案としてあるいはこれに加えて、ドリフト層の界面は、ドリフト層の好ましい降伏電圧VBr、ドリフト層の好ましい最大電界Emaxおよび勾配パラメータλを考慮して設定された最大ドーピングNで形成されてもよい。勾配パラメータは、最大ドーピング濃度と界面の反対側のドリフト層の別の界面における最小ドーピング濃度との差を決定する。好ましくは、最大ドーピングNは次式となるように設定される。
【数4】

【0021】
このような最大ドーピングは、降伏電圧と最大電界との有利な関係を保証する。
【0022】
上記段落に説明された利点は次の場合に保証される。
【数5】


ここで、
【数6】


λは10〜1000の範囲である。
【0023】
代替案としてあるいは追加として、ドリフト層は、ドリフト層の層厚dEpi、ドリフト層の界面の最大ドーピングNおよび勾配パラメータλを考慮して設定されたドリフト層の成長方向zに沿った濃度N(z)の電荷キャリアドーピングで形成されてもよい。有利には、
【数7】



【0024】
したがって本発明は、広いバンドギャップ材料(例えば、炭化ケイ素、および/または窒化ガリウム)を使用することによるエピタキシャル堆積工程により直接的にかつ確実に実現することができるドリフト層(勾配エピタキシャル層)の最適ドーピングプロフィールを提供する。ドリフト層の最適ドーピングプロフィールのおかげで、半導体部品の伝導損を同じ降伏電圧で最大25%まで低減することができる。これは一定ドープドリフト層を凌ぐ大きな利点である。
【0025】
単極電力部品(例えば、スイッチまたはダイオード)の所与の降伏電圧等級に対し、勾配エピタキシャル層を使用することによりオン抵抗を最大25%まで低減することができる。これは、ドリフト層のブロッキング性能の低減を伴うことなく実現することができる。
【0026】
好ましい実施形態では、勾配パラメータは10〜1000の範囲である。特に、勾配パラメータは50〜200の範囲であってもよい。以下にさらに詳細に述べられるように、このような勾配パラメータの値を有するドリフト層は、直接的に製造することができ、高い割合で、無限大勾配パラメータという利点を提供する。
【0027】
例えば、ドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度は、ドリフト層の材料のエピタキシャル堆積中に電荷キャリアドーピングの少なくとも1つのドープ材のガス流を変更することにより形成される。このようにして、ドーピング原子の取り込みは、エピタキシー工程中に制御されたやり方で変更することができる。
【0028】
ドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度はさらに、ドリフト層(16)の材料のエピタキシャル堆積中に、広いバンドギャップ材料を含む第1のガス流と第2のガス流の比を変更することにより形成されてもよい。例えば連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度はエピタキシャル堆積中に炭素とシリコンの比を変更することにより形成される。このような製造方法はまた、直接的なやり方で行なうことができる。
【0029】
上記段落に説明された製造方法の利点はまた、対応する半導体装置においても保証される。
【0030】
本発明について、添付図面の概略図において示される例示的実施形態を用いさらに詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A−1D】単極半導体部品の製造方法の第1の実施形態を説明する4つの座標系を示す。
【図2】単極半導体部品の製造方法の第2の実施形態を示すフローチャートを示す。
【図3】半導体装置の第1の実施形態の概略図を示す。
【図4】半導体装置の第2の実施形態の概略図を示す。
【図5A−5B】半導体装置の第3の実施形態の概略図を示す。
【図6】半導体装置の第4の実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付図面において、特に明記しない限り同一または類似の部品に関する部品には同じ参照符号を付す。
【0033】
図1A〜1Dには、単極半導体部品の製造方法の第1の実施形態を説明する4つの座標系を示す。
【0034】
製造方法を説明するために、製造される半導体部品のドリフト層の有利なドーピングプロフィールの計算規則が、ドリフト層の所定の/好ましい最大電界Emaxと所定の/好ましい降伏電圧VBrを考慮し/それに適合して規定される。ここで有利なドーピングプロフィールは、ドリフト層が可能な限り高い降伏電圧VBrと共に比較的低い層抵抗ρを有するという効果をもつドーピングプロフィールを意味するように意図されている。
【0035】
以下に説明される製造方法は、少なくとも1つの広いバンドギャップ材料と電荷キャリアドーピングを含むドリフト層の材料のエピタキシャル堆積を含む。好適な広いバンドギャップ材料は、例えば炭化ケイ素および/または窒化ガリウムである。ドリフト層の成長方向はz軸に沿って延び、好ましくは基板の隣に存在するドリフト層の下側界面が、製造されるドリフト層の層厚dEpiに対しz=dEpiのxy面に平行に配向された状態である。下側界面の反対側の上側界面は同様に、z=0のxy面に対し平行に配向される。用語「下側界面」と「上側界面」はこの場合、上側界面が形成される前に下側界面が形成されるドリフト層の製造方法を言う。しかしながら本明細書に記載される製造方法はまた、上から下方への成長方向を有するドリフト層の製造に適応されてもよい。
【0036】
成長方向に沿ったドーピングプロフィールN(z)とは別に、式(式1)〜(式3)は、電界E(z)、電位V(z)および層抵抗ρに適用される。ここでeは基本電荷、εは真空誘電率、εは比誘電率、μは電荷キャリア移動度を表す。
【数8】

【0037】
以下の製造方法は、ドリフト層のパンチスルー設計を出発点とすることができるという発見に基づく。したがってドリフト層はオフ状態において電荷キャリアが完全に空乏化されると仮定してよい。さらにz=dEpiにおける下側界面上の電界E(z)が0まで低下したと仮定してもよい。製造方法の開発はまた、広いバンドギャップ材料内のドーピング原子の不完全なイオン化と移動度のドーピング濃度への依存性とを無視できるという発見に基づく。
【0038】
最大電界(以下では最大電界Emaxと呼ぶ)と降伏電圧VBrはz=0の式(式1)と(式2)により次のように与えられる。
【数9】

【0039】
以下の製造方法により、降伏電圧VBrが最大化され同時に層抵抗ρが最小化されるドーピングプロフィールN(z)がドリフト層内に得られる。製造方法は、ラグランジュ乗数を掛けることにより有利なドーピングプロフィールN(z)を導出することができるという発見に基づく。その関数は次式により与えられる。
【数10】


ここでαは所謂ラグランジュ乗数である。
【0040】
式(式6)内の括弧でくくった項
【数11】


は次のオイラーラグランジュ微分方程式(式7)を満足することが好ましい。
【数12】

【0041】
方程式(式7)を解くために、式(式8)が共に使用される。
【数13】

【0042】
これにより微分方程式(式9)を得る。
【数14】


これは、変数を分離することにより積分可能である。これにより式(式10)を得る。
【数15】

【0043】
式(式10)内には、式(式11)により定義される勾配パラメータλが存在する。
【数16】


ここでNはz=dEpiにおける最大表面ドーピング(下側界面のドーピング)を表す。
【0044】
勾配パラメータλの定義については、ドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングN(z)の濃度が想定されるが、これは本明細書で説明される製造方法によりドリフト層内に実現することができる。勾配パラメータλは、ドーピングプロフィールがどれくらい変化するかを決定する。勾配パラメータλが大きいほど、成長方向に沿ったドーピング濃度の変化が大きい。極端な場合λ−>0では、一定ドープの開始エピタキシャル層が再生される。
【0045】
式(式10)に示すようにドーピングプロフィールN(z)の関数関係を式(式3)〜(式5)に代入することができる。これにより式(式12)〜(式14)を得る。
【数17】

【0046】
式(式12)〜(式14)は、製造されるドリフト層(勾配エピタキシャル層)の関数関係を記述する。しかしながら、所定値EmaxとVBrに加え、層厚dEpi、最大表面ドーピングNおよび勾配パラメータλというパラメータがまた式(式12)〜(式14)に生じる。
【0047】
所定の/好ましい最大電界Emaxと所与の層厚dEpiに対し、最大表面ドーピングNは式(式13)から導出されることができる。
【数18】

【0048】
降伏電圧VBrに対し、式(式14)から次の式(式16)を得る。
【数19】

【0049】
式(式17)内のドリフト層の層厚dEpiに対し、次式を得る。
【数20】

【0050】
次に、式(式17)による層厚dEpiを式(式15)に代入することができる。これにより次式を得る。
【数21】

【0051】
したがって、所定の/好ましい最大電界Emaxと所定の/好ましい降伏電圧VBrに対して、ドリフト層のパラメータを勾配パラメータλの関数として導出することができる。層抵抗ρに対して、次式を得る。
【数22】

【0052】
無限大となる傾向のある勾配パラメータλの場合、式(式10)の分子は無限大となる傾向がある。したがってドーピングプロフィールN(z)が有限のままであるように、無限に高い最大表面ドーピングN(下側界面内の)が有利であろう。
【0053】
無限大となる傾向のある勾配パラメータλに対し、以下の近似(式20)〜(式22)を関数f(λ)、g(λ)およびh(λ)に対し導出することができる。
【数23】

【0054】
近似(式20)〜(式22)は、無限大となる傾向のある勾配パラメータλに対して、層厚dEpi、最大表面ドーピングNおよび層抵抗ρの以下の極限値を与える。
【数24】


ここで、基準層厚depi.const、基準面ドーピングN0.constおよび基準層抵抗ρconstはそれぞれ、成長方向に沿って一定の電荷キャリアドーピングを有する対応する基準ドリフト層(E(z=dEpi)=0によるパンチスルー設計の)、同じ最大電界Emaxおよび同じ降伏電圧VBrのパラメータに関係する。
【0055】
式(式24)を式(式10)に代入し極限値を取ることにより、次式を得る。
【数25】

【0056】
ここで、上側界面上のドーピング濃度N(z)は、一定ドープ基準ドリフト層の濃度の2/3である。しかしながらドリフト層(勾配エピタキシャル層)の下側界面上では、ドーピング濃度N(z)は無限大に発散する。したがって無限大となる傾向のある勾配パラメータλを有するこの極端な場合は実現可能ではない。
【0057】
しかしながら以下の方法は、有限でありかつ容易に実現可能な勾配パラメータλを使用することにより上の段落で述べた(無限大となる傾向のある勾配パラメータλを有する)極端な場合の利点をほぼ完全に保証するドリフト層を可能にする。
【0058】
0となる傾向の有る勾配パラメータλを有する第1の極端な場合と無限大となる傾向のある勾配パラメータλを有する第2の極端な場合との間で、式(式17)〜(式19)は連続微分可能な遷移を示す。
【0059】
本明細書に記載の製造方法は、勾配パラメータλの特定の範囲の値に対して、無限大となる傾向のあるλを有する第2の極端な場合の利点を高い割合で実現することができ、同時にエピタキシャル堆積工程中にドーピングプロフィールを直接的なやり方で連続的に変化させることができるという発見に基づく。これを実現するために、エピタキシー装置内のガス流および/またはガス比を勾配パラメータλの好適な値に応じて連続的に単に変化させる。
【0060】
この方法の利点を表すために、以下の添付図面を参照する。
【0061】
図1A〜1Dに、製造方法の第1の実施形態により形成されたドリフト層の勾配パラメータ、層厚、層抵抗、最大表面ドーピング、最大電界、および降伏電圧間の関係について説明する4つの座標系を示す。
【0062】
図1Aは、所定の/好ましい最大電界Emaxと所定の/好ましい降伏電圧VBrを保証するために6×1015cm−3の基準面ドーピングN0.constと14μmの基準層厚depi.constの代わりに使用することができる勾配パラメータλと層厚dEpiとの関係を示す。ここで横座標は勾配パラメータλであり、縦座標は関連層厚dEpi(マイクロメートル)である。
【0063】
10−1〜10の値範囲の間に、大きな負の勾配を有する遷移領域を見ることができる。したがって、10−1〜10のこの値範囲の勾配パラメータλは、一定ドープ基準ドリフト層の14μmの基準層厚depi.constと比較して既に有利な薄いドリフト層を保証している。本明細書に記載の製造方法により形成されるドリフト層のより薄い構成のおかげで、例えば製造コストを低減することができる。
【0064】
図1Bに、勾配パラメータλと関連層抵抗ρとの関係を例示する。横座標は勾配パラメータλである。縦座標は関連層抵抗ρ(mΩcm)である。再生される数値は、前述の6×1015cm−3の基準面ドーピングN0.constの値と14μmの基準層厚depi.constとを参照する。
【0065】
層抵抗ρの遷移領域はまた、10−1〜10の値範囲の勾配パラメータλの図1Bに見られる。この遷移領域では、層抵抗ρは強い勾配プロフィールを有する。したがって、10−1より大きな勾配パラメータλは、低い層抵抗ρを有するドリフト層に有利である。
【0066】
100の勾配パラメータλを超えると、層抵抗ρはそれ以上ほとんど低下しない。これはまた、層抵抗ρが、100の勾配パラメータλを有するその最適値にほぼ既に達したことを意味すると解釈することができる。したがって10−1〜10の値範囲の勾配パラメータλを有するドリフト層を形成するのに十分である。10を超える勾配パラメータλのさらなる増加は、10−1〜10の値範囲の勾配パラメータλと比較し、いかなる重要な利点とも関連付けられない。
【0067】
したがって、本明細書に記載の製造方法では、10−1〜10の値範囲、好ましくは50〜200の範囲、特には100の勾配パラメータλが好ましくは使用される。このような勾配パラメータλに関し、平方根依存性のおかげで、下側界面上の最大ドーピングと上側界面上の最小ドーピング間には約1桁の大きさのドーピングバンド幅が存在する。このドーピングバンド幅は、ドリフト層の材料のエピタキシャル堆積により直接的に実現することができる。
【0068】
図1Cに、勾配パラメータλの関数としての下側界面上の最大表面ドーピングNmaxと上側界面上の最小値表面ドーピングNminを示す。縦座標上に示された数値は、6×1015cm−3の基準面ドーピングN0.constと14μmの基準層厚depi.constを参照する。
【0069】
図1Dに、勾配パラメータλ、最大電界Emaxおよび降伏電圧VBrとの関係を示す。縦座標の最大電界Emaxと降伏電圧VBrのそれぞれの数値は、6×1015cm−3の基準面ドーピングN0.constと14μmの基準層厚depi.constを参照する。
【0070】
図1Dでわかるように、ここで検討される勾配パラメータλ、所定の/好ましい最大電界Emaxおよび所定の/好ましい降伏電圧のすべての数値に対し、VBrは一定に保たれる。所定の/好ましい最大電界Emaxは約1500kV/cmである。所定の/好ましい降伏電圧VBrは約1100Vである。
【0071】
本明細書に記載の製造方法では、ドリフト層は、ドリフト層の所定の/好ましい降伏電圧VBrと所定の/好ましい最大電界Emaxを考慮して設定された層厚dEpiで形成されることが好ましい。特に、次式を適用してよい。
【数26】

【0072】
代替案として、(式17)がまた利点を保証するために適用されてもよい。
【0073】
層厚dEpi、最大電界Emaxおよび降伏電圧VBr間のこのタイプの有利な関係は、勾配パラメータλが10〜1000の値範囲である場合、直接的に実現することができる。したがって本明細書に記載の製造方法では、層厚dEpiを、一定ドープ基準ドリフト層の基準層厚depi.constと比較して、最大25%まで低減することができる。したがって層抵抗ρを、一定ドープ基準ドリフト層の基準層抵抗の75%程度まで低下させることができる。これにより上記利点を保証する。
【0074】
さらに本製造方法では、ドリフト層の下側界面は、ドリフト層の好ましい降伏電圧VBr、好ましい最大電界Emaxおよび10〜1000の範囲の勾配パラメータλを考慮して設定された最大表面ドーピングNで形成されてよい。式(式18)を特には適用してよい、あるいは下記式(式28)を適用してもよい。
【数27】

【0075】
さらに、ドリフト層は、ドリフト層の下側界面の最大表面ドーピングNの層厚dEpiおよび10〜1000の範囲の勾配パラメータλを考慮して設定された成長方向に沿ったドーピングN(z)で形成されてもよい。好ましくは、次の式(式29)を適用する。
【数28】

【0076】
このようなドーピングプロフィールN(z)は、少なくとも1つの広いバンドギャップ材料と電荷キャリアドーピングを含む材料のエピタキシャル堆積によりドリフト層を形成すると直接的にかつ確実に実現することができる。特に、ドリフト層は広いバンドギャップ材料と電荷キャリアドーピングで形成されてもよい。好ましくは、勾配パラメータλは50〜200の範囲である。有利な実施形態では、炭化ケイ素および/または窒化ガリウムが広いバンドギャップ材料として堆積される。このようにして、既に上に説明した利点が得られる。
【0077】
例えば、ドリフト層の形成は、6×1015cm−3の基準面ドーピングN0.const、14μmの基準層厚dEpi.constおよび約1.75mΩcmの基準層抵抗ρconstに基づいてよい。ドリフト層は、100の勾配パラメータλ、4.2×1016cm−3の最大表面ドーピングN、4.2×1015cm−3の上側界面の最小値表面のドーピング、11μmの層厚dEpi、および約1.33mΩcmの層抵抗ρで形成されてよい。このようなドリフト層は半導体部品の多くの実施形態に有利である。
【0078】
本明細書に記載の製造方法により製造されるドリフト層(勾配エピタキシャル層)は、一定ドープのエピタキシャル層のオン抵抗より低いオン抵抗を有する。これは、半導体部品特にはスイッチング部品の電気的性質がドリフト層だけにより規定されないものの有利である。
【0079】
下側界面上のより濃いドーピングのおかげで、電界はこの領域内でより大きく増加する。ドリフト層内部では、この場合の電界は一定ドーピングを有する対応する基準ドリフト層よりもいくぶん高い。しかしながらλ≠0を有するドリフト層の電界はより緩やかに増加するので、表面上で最大電界Emax(最大電界強度)を超えない。例示的に言うと、下側界面上の一定基準ドリフト層内で直接吸収されるポテンシャルは、10〜1000のλを有するドリフト層内のドリフト層の体積内に移動される。
【0080】
いくつかの考察で示したように、本明細書に記載の技術により得られるドリフト層を有する半導体部品を有効に使用することができる。
【0081】
図2は、単極半導体部品の製造方法の第2の実施形態を表すフローチャートを示す。
【0082】
製造方法の随意的な方法工程S1では、ドリフト層の材料のエピタキシャル堆積に使用される処理室が排気および/または洗浄される。同時にまたはその前後に行なわれる方法工程S2では、処理室はドリフト層の成長温度まで加熱される。エピタキシャル堆積により処理室内で製造されるドリフト層は広いバンドギャップ材料を含むので、処理室は、比較的高い成長温度まで前もって加熱されることが好ましい。炭化ケイ素が広いバンドギャップ材料として堆積される場合、処理室は少なくとも1400℃の成長温度まで加熱されてよい。
【0083】
ドリフト層の材料のエピタキシャル堆積を開始する前に、処理室内の圧力および/またはキャリヤガスのガス流は随意的な方法工程S3において調整されてよい。同様に、別の随意的な方法工程S4では、ドリフト層がエピタキシャル堆積により形成される表面はエッチングされてもよい。しかしながら方法工程S1〜S4に関連する言及は、本方法工程を行なうための時間系列を指示するものではない。
【0084】
ドリフト層のエピタキシャル堆積を開始するために、エピタキシャル堆積に使用される反応性ガスは方法工程S5においてスイッチオンされる。ドリフト層が炭化ケイ素と電荷キャリアドーピングを含む材料から形成される場合、SiH、Cおよびドーピングガスが反応性ガスとして使用されることが好ましい。従来技術で知られたドーピングガスが、電荷キャリアドーピングのドーピングガスとして使用されてもよい。ドリフト層がまた、炭化ケイ素と電荷キャリアドーピングに加えて追加の材料を含むように意図される場合、材料に使用可能なドーピングガスが同様にスイッチオンされる。
【0085】
方法工程S5後、方法工程S6において、ドリフト層のエピタキシャル堆積が成長期中行なわれる。使用される反応性ガスの少なくとも1つのガス流を時間の関数として変化させることにより、ドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有するドリフト層を成長期中に堆積する。
【0086】
例えば、時間tとドーピングガス流Aの座標系において表される関係が採用される。ここで、座標系の横座標は時間tに対応する。縦座標は連続的に(厳密に単調に)低下するドーピングガス流Aを示す。特に、ドーピングガス流は指数関数的に低下してもよい。
【0087】
成長期すなわち方法工程S6の期間は、ドリフト層が式(式17)または(式27)に従う層厚で形成されるように選択されてもよい。したがって式(式17)または(式27)に従うドリフト層の層厚は、一定ドープ基準ドリフト層の基準層厚の約75%だけである。式(式17)または(式27)に従う低減された層厚を有するドリフト層を形成することにより、ドリフト層の製造がより好都合になる。これは特に炭化ケイ素を使用する場合に有利である。成長方向に沿って連続的に低下するドーピング濃度と共に、低減された層厚は、ドーピングおよび/または層厚のばらつきが製造されるドリフト層の降伏電圧に余り影響を与えないという付加的効果を有する。
【0088】
方法工程S6の始めに、基板に対向するドリフト層の下側界面は式(式18)または(式28)に従う最大表面ドーピングで形成されてもよい。さらに、式(式29)に従う成長方向に沿った濃度の電荷キャリアドーピングは時間tとドーピングガス流Aとの好適な関係により形成されてもよい。勾配パラメータはこの場合10〜1000の範囲であることが好ましい。勾配パラメータは特には50〜200の範囲であってよい。
【0089】
式(式29)に従う濃度の電荷キャリアドーピングを有するドリフト層は比較的高い降伏電圧と共に同時に比較的低い伝導損という利点を有する。したがって本明細書に記載の製造方法により形成されるドリフト層は特に半導体部品に好適である。
【0090】
式(式29)に従う有利な濃度の電荷キャリアドーピングは比較的高い温度の広いバンドギャップ材料(例えば、炭化ケイ素および/または窒化ガリウム)のエピタキシャル堆積により設定されるので、ドープ材の拡散による濃度プロファイルの以降の変更が防止される。これは、従来のシリコンからなるドリフト層を凌ぐ、広いバンドギャップ材料を含むドリフト層の実質的な利点である。従来のシリコンからなるドリフト層では、電荷キャリアドーピングの濃度プロファイルは通常、後続工程による電荷キャリアドーピングの拡散のためにシリコンドリフト層の製造の後に変更される。したがってシリコンドリフト層の場合、好ましい濃度プロファイルの電荷キャリアドーピングを長期間にわたって使用することはほとんど可能ではない。この問題は本明細書に記載の製造方法により解決され得る。
【0091】
本明細書に記載の製造方法は、ドリフト層の材料のエピタキシャル堆積中に電荷キャリアドーピングの少なくとも1つのドーピングガス流Aのガス流Aを変えることによりドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を設定することに限定されない。ドーピングガス流Aを変えることの代替案としてあるいはそれの追加として、本製造方法はまた、第1の広いバンドギャップ材料と第2の広いバンドギャップ材料の追加により、そうでなければそれらの比の排他的変化によりドリフト層の成長方向に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度が形成される方法工程を含んでもよい。例えば、連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度は、ドリフト層の材料のエピタキシャル堆積中に炭素とシリコンの比を変えることにより形成されてもよい。
【0092】
ドリフト層のエピタキシャル堆積すなわち成長期は、方法工程S7の反応性ガスをスイッチオフすることにより終了される。随意的な方法工程S8では、処理室を冷却する処理が行なわれてもよい。その後、処理室は別の任意選択的な方法工程S9において不活性ガスで洗浄されてもよい。同様に、標準圧が方法工程S9における処理室において設定されてもよい。
【0093】
図3に、半導体装置の第1の実施形態の概略図を示す。
【0094】
図3に概略的に示された半導体装置10は基板12とタイプ1のVJFETとして形成された半導体部品とを含む。基板12は比較的濃いn型ドーピングを含む。ドレインコンタクト14は基板12の下側に形成される。VJFETのドリフト層16は下側の反対側の基板12の上側に形成される。
【0095】
ドリフト層16は、基板12に対向する第1の界面18から第1の界面18の反対側の第2の界面20への方向19に沿って連続的に低下するn型電荷キャリアドーピングの濃度を有する。ドリフト層16のn型電荷キャリアドーピングの平均濃度は基板12のn型ドーピングの平均濃度より低いことが好ましい。
【0096】
ドリフト層16は少なくとも1つの広いバンドギャップ材料とn型電荷キャリアドーピングとを含む。好ましくは、ドリフト層16は広いバンドギャップ材料とn型電荷キャリアドーピングで形成される。好ましい広いバンドギャップ材料は炭化ケイ素および/または窒化ガリウムである。ドリフト層16に炭化ケイ素を使用することにより、好ましい電荷キャリアドーピングが直接的に行われ、また半導体装置10の動作中に確実に維持されることができる。
【0097】
好ましい一実施形態では、ドリフト層16の平均層厚は式(式17)に対応する。ドリフト層16の平均層厚が式(式27)に対応することもまた有利である。こうしてドリフト層16を比較的薄い平均層厚で製造することができる。これによりドリフト層16の製造のコストを低減する。
【0098】
ドリフト層16の第1の界面18上の最大表面ドーピングは式(式18)に従ってよい。別の有利な実施形態では、最大表面ドーピングは式(式28)に対応してもよい。したがってドリフト層16は、電荷キャリアドーピングの連続的に低下する濃度として式(式29)に従う濃度を有してもよい。式(式17)、(式18)、(式28)および(式29)に発生する勾配パラメータλは10〜1000の範囲であってよい。好ましくは、勾配パラメータは50〜200の範囲である。
【0099】
ドリフト層16は上記実施形態による製造方法により形成されてもよい。この状況では、個々の実施形態の方法工程はまた、製造方法の別の実施形態を形成するために組み合わされてもよい。
【0100】
基板12に対向するドリフト層16の側に、pドープ領域22とnドープ領域24が形成される。pドープ領域22は関連ゲートコンタクト26によりそれぞれ接触されてもよい。それに応じて、nドープ領域24がソースコンタクト28によりそれぞれ接触されてもよい。部品22〜28を製造する方法と半導体装置10の機能性は従来技術から知られているので、ここではこれらについて詳しく検討しない。しかしながら、ドリフト層を形成するための製造方法は部品12〜16と22〜28からなる半導体装置10を製造するための全方法に直接的に取り込まれてもよいということが指摘される。
【0101】
図4に、半導体装置の第2の実施形態の概略図を示す。
【0102】
示された半導体装置30はタイプ2のVJFETとして形成された半導体部品を含む。半導体装置30の基板12は好ましくは4H−SiCを含む。ドリフト層16もまたこの材料(4H−SiC)を含んでよい。特に、ドリフト層16は広いバンドギャップ材料(例えば、炭化ケイ素および/すなわち窒化ガリウム)とn型電荷キャリアドーピングを含む。ドリフト層は、基板領域に対向する第1の界面18から第1の界面18の反対側の第2の界面20への方向19に沿って連続的に低下するn型電荷キャリアドーピングの濃度を有する。好ましい一実施形態ではドリフト層16は式(式17)、(式18)および(式29)に従う特性を有する。有利には、ドリフト層16はまた、式(式27)、(式28)および(式29)に対応してもよい。式(式17)、(式18)、(式28)および(式29)に発生する勾配パラメータλは10〜1000の範囲であってよい。
【0103】
したがって半導体装置30を、従来のタイプ2のVJFETと比較してより経済的に製造することができる。より有利な層抵抗はまた、この場合、費用優位性に寄与すると考えられる。アクティブ領域は、この有利な層抵抗のためにより小さくなるように選択でき、これにより部品当たりのコストを低減する。
【0104】
半導体装置30は同様に、ドリフト層16の所定の/好ましい最大電界とドリフト層16の所定の/好ましい降伏電圧が保証されるように直接的に製造されることができる。
【0105】
半導体装置30のさらなる部品12と22〜24は既に説明された図3の実施形態に対応する。したがってここでは重複する説明を省略する。
【0106】
nドープドリフト層16を有する半導体装置10と30の代替として、pドープドリフト層を有する対応する実施形態が製造されてもよい。
【0107】
図5Aと5Bに半導体装置の第3の実施形態の概略図を示す。
【0108】
図5Aと5BはそれぞれMOSFETの1/2セルを示す。図5AにDMOSとして形成された1/2セル40を示す。図5BにUMOSとして形成された1/2セル42を示す。2つの1/2セル40と42はそれぞれ、少なくとも広いバンドギャップ材料とn型電荷キャリアドーピングで形成されるドリフト層16を有する。好ましくは、広いバンドギャップ材料は炭化ケイ素および/または窒化ガリウムである。2つのドリフト層16はそれぞれ、基板12に対向する第1の界面18から第2の界面20への方向19に沿って連続的に低下するn型電荷キャリアドーピングの濃度を有する。それぞれのドリフト層16のパラメータは式(式17)、(式18)および(式29)に従って設定されてよい。有利な一実施形態では、それぞれのドリフト層16のパラメータはまた、式(式27)、(式28)および(式29)に対応してもよい。式(式17)、(式18)、(式28)および(式29)に発生する勾配パラメータλは10〜1000の範囲であってよい。
【0109】
1/2セル40および/または42を製造するために、上述の製造方法の実施形態の1つあるいはそれらの組み合わせが使用されてもよい。それぞれのドリフト層16を製造するための方法工程は、ドリフト層16に加えて、コンタクト14、26、28、pドープ層44、46、nドープ層48および絶縁層50が形成される全製造方法において直接的に適用されてもよい。したがって2つの1/2セル40または42の少なくとも1つを製造するための可能な全製造方法は、ここではさらに詳しく検討されない。pドープドリフト層を有する1/2セルはさらに、対応する全製造方法により形成されてもよい。
【0110】
図6に半導体装置の第4の実施形態の概略図を示す。
【0111】
示された半導体装置60はショットキーダイオードとして形成される。半田付け可能な裏側コンタクト62は基板12の下側に配置される。基板12の上側は、フィールドストップ層64により少なくとも部分的に覆われる。広いバンドギャップ材料(例えば、炭化ケイ素および/または窒化ガリウム)とn型電荷キャリアドーピングからなるnドープドリフト層16はフィールドストップ層64上に形成される。ドリフト層16はまた、広いバンドギャップ材料とn型電荷キャリアドーピングに加えて少なくとも1つの別の材料を含んでもよい。
【0112】
ドリフト層16は、第1の界面18から第2の界面20への方向19に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピングの濃度を有する。ドリフト層16のパラメータは、式(式17)、(式18)および(式29)の少なくとも1つを満足することが好ましい。別の有利な実施形態では、各ドリフト層16のパラメータはまた、式(式27)、(式28)および(式29)に対応してもよい。勾配パラメータは10〜1000であってよい。勾配パラメータは好ましくは50〜200の範囲である。
【0113】
ショットキー接触66とJTE領域68はフィールドストップ層64からドリフト層16の反対側に形成される。アルミニウム層70により覆われたショットキー接触66は2つのJTE領域68を互いに接続する。部品66と70により覆われないJTE領域68のこれらの表面はパッシベーション72により覆われる。したがってショットキー接触66はボンディング可能な正面側コンタクトとして形成される。
【0114】
ドリフト層16を製造する方法は、図6に示された半導体装置60を製造する方法に直接的に取り込むことができる。既に上に説明した利点はこの場合ショットキーダイオードに対して得られる。したがってショットキーダイオードの機能性についてここでは詳しく検討しない。有利なpドープドリフト層を有するショットキーダイオードは同様に、それに応じて修正される製造方法により製造されてよい。
【符号の説明】
【0115】
A:ドーピングガス流
Epi:層厚
max:最大電界λ
λ:勾配パラメータ
max:最大表面ドーピング
min:最小表面ドーピング
ρ:層抵抗
S1〜S9:方法工程
t:時間
Br:降伏電圧
10:半導体装置
12:基板
14:ドレインコンタクト
16:ドリフト層
18,20:界面
19:方向
22:pドープ領域
24:nドープ領域
26:ゲートコンタクト
28:ソースコンタクト
30:半導体装置
40、42:1/2セル
44、46:pドープ層
48:nドープ層
50:絶縁層
60:半導体装置
62:裏側コンタクト
64:フィールドストップ層
66:ショットキー接触
68:JTE領域
70:アルミニウム層
72:パッシベーション
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリフト層(16)を有する単極半導体部品の製造方法であって、
少なくとも1つの広いバンドギャップ材料を含む前記ドリフト層(16)の材料のエピタキシャル堆積により、前記ドリフト層(16)の成長方向(z,19)に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピング(n)の濃度(N(z))を有する前記ドリフト層(16)を形成する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記ドリフト層(16)は前記広いバンドギャップ材料と前記電荷キャリアドーピング(n)で形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ドリフト層(16)は少なくともシリコンのエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する広いバンドギャップ材料で形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ドリフト層(16)は少なくとも炭化ケイ素および/または窒化ガリウムで形成される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ドリフト層(16)は、前記ドリフト層(16)の好ましい降伏電圧(VBr)と前記ドリフト層(16)の好ましい最大電界(Emax)を考慮して設定された層厚(dEpi)で形成され、ここで、
【数1】


であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ドリフト層(16)の界面(18)は、前記ドリフト層(16)の前記好ましい降伏電圧(VBr)、前記ドリフト層(16)の前記好ましい最大電界(Emax)および勾配パラメータ(λ)を考慮して設定された最大ドーピング(N)で形成され、ここで、
【数2】


および、前記勾配パラメータ(λ)は10〜1000の範囲である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ドリフト層(16)は、前記ドリフト層(16)の前記層厚(dEpi)、前記ドリフト層(16)の前記界面(18)の前記最大ドーピング(N)および前記勾配パラメータ(λ)を考慮して設定された前記ドリフト層(16)の前記成長方向(z、19)に沿った前記電荷キャリアドーピング(n)の濃度(N(z))で形成され、ここで、
【数3】


および前記勾配パラメータ(λ)は10〜1000の範囲である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記勾配パラメータ(λ)は50〜200の範囲である、ことを特徴とする請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ドリフト層(16)の前記成長方向(z、19)に沿って前記連続的に低下する前記電荷キャリアドーピング(n)の濃度(N(z))は、前記ドリフト層(16)の材料の前記エピタキシャル堆積中に前記電荷キャリアドーピング(n)の少なくとも1つのドープ材(A)のガス流を変えることにより形成される、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ドリフト層(16)の前記成長方向(z、19)に沿った前記連続的に低下する前記電荷キャリアドーピング(n)の濃度(N(z))は、前記ドリフト層(16)の前記材料の前記エピタキシャル堆積中に、前記広いバンドギャップ材料を含む第1のガス流と第2のガス流の比を変えることにより形成される、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
基板領域(12)とドリフト層(16)を有する単極半導体部品とを有する半導体装置(10、30、40、42、60)であって、前記ドリフト層(16)は、前記基板領域(12)に対向する第1の界面(18)から前記第1の界面(18)の反対側の第2の界面(20)への方向(z、19)に沿って連続的に低下する電荷キャリアドーピング(n)の濃度(N(z))を有し、かつ少なくとも1つの広いバンドギャップ材料を含む、半導体装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533184(P2012−533184A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519991(P2012−519991)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059976
【国際公開番号】WO2011/006866
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アーゲー (331)
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
【Fターム(参考)】