説明

単結晶3C−SiC基板の製造方法およびそれによって得られた単結晶3C−SiC基板

【課題】エピタキシャル成長過程において発生する表面欠陥を大幅に減少させることができ、後工程を簡略化しながら半導体デバイスとしての品質を確保できる単結晶3C−SiC基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成させる単結晶3C−SiC基板の製造方法であって、
上記単結晶3C−SiC層を、平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態となるよう形成する第1の成長段階と、
上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層を、脱離律速の領域において表面の上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥を大幅に減少させることができる単結晶3C(立方晶系)−SiC基板の製造方法およびそれによって得られた単結晶3C−SiC基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶SiC(炭化シリコン)は、Siに比べて熱的、化学的安定性に優れ、機械的強度も強く、放射線照射に対しても損傷しにくいという特性から、次世代の半導体デバイス材料として注目を集めている。また、単結晶SiCは、GaNと格子定数が近いことから、GaNを成長させるための下地基板としても使用することができる。
【0003】
従来、単結晶SiCを得る方法として、昇華法によるSiCバルク基板を得る方法や、Si基板やSOI基板上に単結晶3C−SiCをヘテロエピタキシャル成長させる方法が行われている。Si基板やSOI基板上にエピタキシャル成長させる方法は、Si基板やSOI基板を炭化処理して薄膜のSiCに変成させ、シラン系ガスと炭化水素ガスを用いて単結晶3C−SiCを成長することにより、SiCのアモルファス化や多結晶化を抑制する手法が考案されている。
【0004】
単結晶SiCに欠陥が存在すると、半導体デバイスとしたときの性能を低下させ、GaN層の下地基板とした場合にもGaN層の品質を低下させる原因となる。このため、欠陥のできるだけ少ない高品質の単結晶SiC基板が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−212694号公報
【特許文献2】特開2004−039766号公報
【特許文献3】特開2006−228763号公報
【特許文献4】特開2007−284298号公報
【特許文献5】特開2009−256138号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】中嶋一雄(著編),エピタキシャル成長のメカニズム,共立出版株式会社(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エピタキシャル成長により単結晶SiCを成長させる際、エピタキシャル成長の過程で単結晶SiCの表面に欠陥が発生しやすいという問題がある。
【0008】
図1は、一般にエピタキシャル成長反応において、反応ガスの流量や反応圧力を同一の条件としたときに成長速度が温度に依存する関係を表す線図である。なお、図では、横軸を絶対温度の逆数としており、図の右側が低温側、図の左側が高温側である。また、縦軸をエピタキシャル成長速度としており、図の下側が低速側、図の上側が高速側である。
【0009】
この図からわかるように、エピタキシャル成長は、流量および圧力の条件が一定であれば、低温領域において温度上昇に伴って成長速度が急激に速くなる表面反応律速の領域と、表面反応律速の領域よりも高温側で、温度上昇に伴う成長速度の増加が極めて小さい(言い換えれば温度依存性の少ない)輸送律速の領域と、上記輸送律速の領域よりも高温側で、温度上昇に伴って成長速度が急激に減少する脱離律速の領域が存在する(上記非特許文献1)。
【0010】
上述した表面反応律速の領域では、化学反応速度が成長速度を支配する。単結晶3C−SiCを反応律速で成長させた場合には、単結晶3C−SiCの結晶性が悪く、表面状態も極めて粗になり、現実問題として半導体デバイスの製造に適した品質を得ることができなかった。また、脱離律速の領域では、原料分子が基板以外の場所に付着して原料供給効率が低下したり、基板表面に到達した原料分子が結晶化せずに脱離する率が高くなったりする。このため、単結晶3C−SiCを脱離律速で成長させた場合には、表面反応律速の領域よりも結晶性は改善されるものの、結晶核の一部が異常成長して表面に多数の突起が成長してしまい、結果として表面状態が粗となり、やはり半導体デバイスの製造に適した品質を得ることができなかった。
【0011】
したがって、供給ガスの流量条件および成膜圧力を一定とし、成膜温度を上下に調整することで、成膜の律速段階を任意に選択することが可能である。
また、成膜温度および成膜圧力を一定として供給ガスの流量を下げていくと、上記成膜温度を上げていく場合と同様に、律速段階は反応律速から輸送律速へ、さらには脱離律速へと変化することも知られている(上記非特許文献1)。これを利用して、成膜温度および成膜圧力を一定とし、供給ガスの流量を上下に調整することで、成膜の律速段階を任意に選択することも可能である。
さらに、本発明者らは、3C−SiC成長において、成膜温度および供給ガスの流量条件を一定にし、成膜圧力を下げていくと、上記成膜温度を上げていく場合と同様に、律速段階は反応律速から輸送律速へ、さらには脱離律速へと変化することを見出している。これを利用して、成膜温度および供給ガスの流量条件を一定とし、成膜圧力を上下に調整することで、成膜の律速段階を任意に選択することも可能である。
【0012】
一方、中温域の輸送律速の領域では、原料分子が拡散する過程が支配的となって成長が進行し、反応速度が十分に速い一方、成長速度の温度依存性は小さくなる。
【0013】
したがって、半導体デバイスやGaNの下地基板として単結晶3C−SiC基板を製造する場合、エピタキシャル成長の条件としては、これまで、上記輸送律速の領域を用いざるをえなかった。
【0014】
ところが、上記輸送律速の領域では、表面反応律速の領域のように結晶性に起因する表面荒れが生じることはなく、脱離律速の領域のような表面突起も発生しないものの、表面に微小なピット欠陥が多数形成されてしまう問題が避けられなかった。
【0015】
このように、エピタキシャル成長の過程で単結晶3C−SiC層の表面に微小なピット欠陥が生じると、場合によってはそれを除去する研磨工程のような後工程が必要となる。工程が増えれば、その分のコストアップは避けられず、品質への影響要因が増えることとなり、品質安定性や歩留まり等の面でも不利となる。
【0016】
上記各特許文献は、複数段階の温度でエピタキシャル成長をさせることが開示されているものの、いずれも、上述したようなエピタキシャル成長の過程において生じるピットについての言及はなく、ピットによる表面欠陥を十分に防止しうるものではなかった。
【0017】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、エピタキシャル成長過程において発生する表面欠陥を大幅に減少させることができ、後工程を簡略化しながら半導体デバイスとしての品質を確保できる単結晶3C−SiC基板の製造方法およびそれによって得られた単結晶3C−SiC基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の単結晶3C−SiC基板の製造方法は、ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成させる単結晶3C−SiC基板の製造方法であって、
上記単結晶3C−SiC層を、平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態となるよう形成する第1の成長段階と、
上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層を、上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行うことを要旨とする。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の単結晶3C−SiC基板は、ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層が形成された単結晶3C−SiC基板であって、単結晶3C−SiC層の表面に存在する表面ピットによる欠陥の数が、エピタキシャル成長直後の状態で8×10個/cm以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
すなわち、本発明の単結晶3C−SiC基板の製造方法は、上記単結晶3C−SiC層を、平坦性の高い表面の中に表面ピットが形成された表面状態となるようにエピタキシャル成長させる第1の成長段階と、上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層を、表面の上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行う。このように、第1の成長段階では表面ピットが形成されるものの、表面ピット以外の部分は平坦性を確保した表面性状の単結晶3C−SiC層を形成し、第2の成長段階では、表面の平坦性を維持しながら上記表面ピットを埋めて表面ピットを減少させて表面の平坦な単結晶3C−SiC層を形成する。このようにすることにより、エピタキシャル成長の過程で単結晶3C−SiC層の表面に生じる表面ピットによる欠陥が少なくなるため、後工程を簡略化し、その分コストダウンを図り、品質への影響要因を減らして品質安定性や歩留まり等の面でも有利となり、半導体デバイス等の用途として品質を確保できる。
【0021】
また、本発明の単結晶3C−SiC基板は、単結晶3C−SiC層の表面に存在する表面ピットによる欠陥の数が、エピタキシャル成長直後の状態で8×10個/cm以下である。このため、エピタキシャル成長の過程で単結晶3C−SiC層の表面に生じる表面ピットによる欠陥が少ないため、後工程を簡略化し、その分コストダウンを図り、品質への影響要因を減らして品質安定性や歩留まり等の面でも有利となり、半導体デバイス等の用途として品質を確保できる。
【0022】
本発明において、上記第1の成長段階は輸送律速の領域でエピタキシャル成長させ、
上記第2の成長段階は脱離律速の領域でエピタキシャル成長させる場合には、
輸送律速の領域では、欠陥原因となる結晶核の異常成長を抑え、平坦面の中に表面ピットが散在した表面性状で結晶性のよい単結晶3C−SiC層を高い成長速度で安定的に得ることができる。そして、脱離律速では、従来のように突起が成長する代わりに、輸送律速の成長で形成された表面ピットが埋まるように単結晶3C−SiCが成長するとともに、平坦面の平坦性も維持される。このように、表面ピットを埋めながら平坦性を維持した成長を行うことができ、表面ピットを大幅に減少させて平坦性のよい単結晶3C−SiC層を得ることができる。
【0023】
本発明において、上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、原料ガス流量の引き下げ、成膜圧力の引き下げ、基板温度の引き上げの少なくともいずれかによって行う場合には、
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを原料ガス流量の引き下げによって行なうことにより、設定変更に比較的時間のかかる圧力や温度を変化させず、流量の引き下げだけで速やかに切り替えを行うことができる。
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを成膜圧力の引き下げによって行なうことにより、設定変更に比較的時間のかかる温度を変化させず、圧力の引き下げだけで切り替えを行うことができる。また、原料ガスの流量を変化させないことから、エピタキシャル成長を行う雰囲気がより安定し、単結晶3C−SiC層の成長が安定的に行われる。
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを基板温度の引き上げによって行なうことにより、原料ガスの流量を変化させないことから、エピタキシャル成長を行う雰囲気がより安定し、単結晶3C−SiC層の成長が安定的に行われる。
【0024】
本発明において、少なくとも表層部分がSiを含有する半導体結晶からなるベース基板を用いる場合には、
少なくとも表層部分がSiを含有する半導体結晶からなるベース基板に対し、結晶性がよく、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を形成し、半導体デバイスとしての品質を確保した単結晶3C−SiC基板を安価に製造することができる。
【0025】
本発明において、少なくとも表層部分がSiからなるベース基板を用い、上記ベース基板の表層部のSiを炭化処理してSiC層に変成させ、上記SiC層をシード層として、上記第1の成長段階および第2の成長段階のエピタキシャル成長を行なう場合には、
少なくとも表層部分がSiからなるベース基板に対し、結晶性がよく、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を形成し、半導体デバイスとしての品質を確保した単結晶3C−SiC基板を安価に製造することができる。
【0026】
本発明において、上記第1の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが500nm以上であり、上記第2の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが500nm以上である場合には、
第1の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みが500nm未満であると、平坦面の中に散在するように形成される表面ピットの部分において、十分に3C−SiCが形成されずにベース基板が露出する状態となり、その後の第2の成長段階を経ても3C−SiCで表面ピットを埋めることができなくなる。したがって、上記第1の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みを500nm以上とすることにより、その後の第2の成長段階で表面ピットを埋めて欠陥を消失させ、平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られるようになる。
第2の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みが500nm未満であると、第1の成長段階で平坦面の中に散在するように形成された表面ピットを第2の成長段階で十分に埋めることができなくなる。したがって、上記第2の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みを500nm以上とすることにより、第1の成長段階で形成された表面ピットを埋めて欠陥を消失させ、平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られるようになる。
【0027】
本発明において、上記第1の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが900〜2900nmであり、
上記第2の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが700〜3700nmである場合には、
第1の成長段階において、十分な平坦面の中に、第2の成長段階で消失できる表面ピットが散在するよう単結晶3C−SiC層を形成でき、平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られる。
第2の成長段階において、第1の成長段階で形成された表面ピットを埋めて欠陥を消失させ、平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られる。
【0028】
本発明において、上記ベース基板上に、エピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成する際の原料ガスの主成分がモノメチルシランである場合には、
モノメチルシランは、爆発などの危険性が少ないガスであり、成膜中にガス供給バルブの操作、排気バルブの操作、あるいはヒータ出力の操作を行う際にも危険性が少ない点で極めて優れている。
【0029】
本発明において、上記第1の成長段階において、基板温度が970℃以上1120℃以下、上記原料ガス中に含めるウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が1.0sccm以上30.0sccm以下、成膜圧力が9×10−6Torrを超え4×10−1Torr以下であり、
上記第2の成長段階において、上記原料ガス中に含めるウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が6.0sccm以下、基板温度が1100℃以上ベース基板の融点未満、成膜圧力が1×10−7Torr以上、6×10−5Torr以下である場合には、
エピタキシャル成長の成長効率を確保し、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を生産性よく製造することができる。また、第1の成長段階における成膜圧力を上記のように4×10−1Torr以下とすることで、成長室を加熱する抵抗型ヒータの放電劣化を抑制できる。
【0030】
本発明において、上記ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成する際に供給する原料ガスがモノメチルシランのみであり、
上記第1の成長段階において、基板温度が990℃以上1100℃以下、ウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が2.0sccm以上10.0sccm以下、成膜圧力が3×10−5Torr以上1×10−1Torr以下であり、
上記第2の成長段階において、ウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が3.0sccm以下である場合には、
エピタキシャル成長の成長効率を確保し、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を生産性よく製造することができる。
【0031】
本発明において、上記第1の成長段階において、成膜圧力が1×10−4Torr以下であり、
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、原料ガス流量の引き下げ、基板温度の引き上げの少なくともいずれかによって行う場合には、
エピタキシャル成長の成長効率を確保し、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を生産性よく製造することができる。
【0032】
本発明において、上記第1の成長段階において、成膜圧力が1×10−1Torr以上であり、
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、少なくとも成膜圧力の引き下げによって行う場合には、
エピタキシャル成長の成長効率を確保し、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を生産性よく製造することができる。
【0033】
本発明において、ベース基板上にエピタキシャル成長によって形成された単結晶3C−SiC層の主面方位が(111)である場合には、
主面方位が(111)面で平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層を得ることができ、半導体デバイスとしての品質を確保した単結晶3C−SiC基板を安価に製造することができる。
【0034】
ここで、本発明ならびにその説明において、「輸送律速」「脱離律速」「反応律速」は、それぞれつぎのように定義する。
輸送律速:原料ガス、雰囲気、流量、圧力の条件を同一としたエピタキシャル成長において得られる最大成膜速度の90%以上の成膜速度が得られる基板温度領域。
脱離律速:原料ガス、雰囲気、流量、圧力の条件を同一としたエピタキシャル成長において得られる最大成膜速度の90%未満の成膜速度が得られる基板温度領域のうち、輸送律速よりも高温側の基板温度領域。
反応律速:原料ガス、雰囲気、流量、圧力の条件を同一としたエピタキシャル成長において得られる最大成膜速度の90%未満の成膜速度が得られる基板温度領域のうち、輸送律速よりも低温側の基板温度領域。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】エピタキシャル成長反応における成長速度の温度依存関係を表す線図である。
【図2】本発明の単結晶3C−SiC基板の製造方法を示す工程図である。
【図3】ベース基板の調整工程の一例を説明する図である。
【図4】実施例1 表面、断面SEM写真。
【図5】実施例2 表面、断面SEM写真。
【図6】実施例3 表面、断面SEM写真。
【図7】実施例4 表面、断面SEM写真。
【図8】実施例5 表面、断面SEM写真。
【図9】実施例6 表面、断面SEM写真。
【図10】実施例7 表面、断面SEM写真。
【図11】比較例8 表面、断面SEM写真。
【図12】比較例9 表面、断面SEM写真。
【図13】比較例10 表面、断面SEM写真。
【図14】比較例11 表面、断面SEM写真。
【図15】比較例12 表面、断面SEM写真。
【図16】比較例13 表面、断面SEM写真。
【図17】比較例14 表面、断面SEM写真。
【図18】比較例15 表面、断面SEM写真。
【図19】比較例16 表面、断面SEM写真。
【図20】比較例17 表面、断面SEM写真。
【図21】実施例18 表面、断面SEM写真。
【図22】実施例19 表面、断面SEM写真。
【図23】実施例20 表面、断面SEM写真。
【図24】原料ガス流量に対する処理チャンバー圧力の変化を示す校正曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0037】
図2は、本発明の単結晶3C−SiC基板の製造方法の一実施の形態を示す工程図である。
【0038】
本発明の方法は、まず、エピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成するためのベースとなるベース基板を調整し、上記ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成させる単結晶3C−SiC基板の製造方法である。
【0039】
そして、上記エピタキシャル成長は、単結晶3C−SiC層を、平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態となるようにエピタキシャル成長させる第1の成長段階と、
上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層を、表面の上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行う。
【0040】
ベース基板としては、エピタキシャル成長によって3C−SiC層を形成させうるものであれば特に限定するものではなく、各種のものを用いることができる。本発明においては、ベース基板として、単結晶Si基板、SOI基板を用いた場合に、特に大きな効果を得ることができる。また、ベース基板としてMgO基板、昇華法による六方晶SiCバルク基板、BP基板、サファイア基板、3C−SiC自立基板、GaN基板、GaAs基板、AlN基板、InN基板、SiGe基板、SiGe on Insulator基板等を用いた場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0041】
ベース基板の調整工程の際、後述の変成工程、アニール工程、エピタキシャル工程の前には、必要に応じ、例えばベース基板に対してアンモニア過水洗浄、塩酸過水洗浄、硫酸過水洗浄、希釈HF洗浄、超音波アセトン洗浄、超音波メタノール洗浄等の公知の洗浄を適宜組み合わせて行ない、基板表面を清浄化する。また、表層部分に、Siを含有するベース基板については、表面酸化膜を除去する。ベース基板としてMgO基板、サファイア基板、BP基板、GaN基板、GaAs基板、AlN基板、InN基板等を用いる場合は、通常は上記のような洗浄工程は不要であるが、必要に応じて行ってもよい。
【0042】
ベース基板として、昇華法による六方晶SiCバルク基板や3C−SiC自立基板を用いる場合、ベース基板の調整工程においては、例えば、ベース基板をエピタキシャル成長炉内において基板温度1000℃以上、圧力1Torr未満の真空雰囲気で10分程度アニールする。あるいは、例えば、基板温度1000℃以上、常圧または減圧下の水素雰囲気中で10分程度アニールする。これにより、ベース基板の調整工程は完了し、引き続きエピタキシャル成長炉内において第1の成膜工程が行われる。
【0043】
ベース基板としてMgO基板、サファイア基板、BP基板、GaN基板、GaAs基板、AlN基板、InN基板等を用いる場合、ベース基板の調整工程においては、例えば、まず、ベース基板をエピタキシャル成長炉内において基板温度1000℃以上、圧力1Torr未満の真空雰囲気で10分程度アニールする。あるいは、例えば、基板温度1100℃以上、常圧または減圧下の水素雰囲気中で10分程度アニールする。ここで、ベース基板の調整工程を終了し、引き続きエピタキシャル成長炉内において第1の成膜工程を行ってもよい。あるいは、例えば引き続き、基板温度700℃以上、ベース基板融点未満、常圧または減圧下にてシラン系ガス雰囲気、あるいはシラン系ガスと水素の混合雰囲気中で、ベース基板表面に6〜40nm厚程度の単結晶シリコン層を成長させる。引き続き、後述のSOI基板を用いた場合と同様の工程によって、基板表面に形成した単結晶シリコン層を、単結晶3C−SiC層に変成させる。ここでベース基板の調整工程を終了し、引き続きエピタキシャル成長炉内において第1の成膜工程を行う。
【0044】
例えば、上記ベース基板として、Si基板、SOI基板、SiGe基板、SiGe on Insulator基板等の少なくとも表層部分がSiからなる、あるいはSiを主成分とする半導体基板を用いる場合、上記ベース基板の表層部のSiあるいはSiを主成分とする半導体結晶を炭化処理して3C−SiC層に変成させ、上記3C−SiC層をシード層として、上記第1の成長段階および第2の成長段階のエピタキシャル成長を行なうようにすることができる。このようにすることにより、少なくとも表層部分がSiからなるベース基板に対し、結晶性がよく、表面欠陥を大幅に減少した単結晶3C−SiC層を形成し、半導体デバイスとしての品質を確保した単結晶3C−SiC基板を安価に製造することができる。
【0045】
より具体的には、少なくとも表層部分がSiからなるベース基板としてSi基板またはSOI基板を用いることができる。
【0046】
図3は、ベース基板としてSOI基板を用いたときのベース基板の調整工程について説明する図である。
【0047】
まず、所定厚さの表面Si層3と埋め込み絶縁層4とを有するSOI基板1を準備する。ついで、目標とする基板構造に応じ、上記SOI基板1の表面Si層3の厚みを6nm以上の所定厚みまで薄膜化する。なお、この薄膜化工程は行わなくてもよい。つぎに、上記SOI基板1を炭化水素系ガス雰囲気中で加熱して上記表面Si層3を単結晶3C−SiC層5に変成させる。そして、上記単結晶3C−SiC層5をシード層5として、エピタキシャル成長工程を行う。
【0048】
上記SOI基板1は、Si母材2の表面近傍に、埋め込み絶縁層4として所定厚みのSiO層が形成され、表面に所定厚さの表面Si層3が形成されたものである。上記埋め込み絶縁層4の厚みは、約1〜200nm程度の厚みになるよう設定されている。
【0049】
ついで、目標とする基板構造に応じ、上記SOI基板1の表面Si層3の厚みを6nm以上の所定の膜厚まで薄膜化する。この薄膜化は、例えば、SOI基板1を酸化雰囲気で加熱処理することにより、埋め込み絶縁層4との界面近傍に所望厚みのSi層を残存させるよう、表面Si層3の表面から所定深さを酸化させたのち、表面に生成した酸化物層をフッ化水素酸等でエッチングして除去することにより行われる。なお、この薄膜化工程は行わなくてもよい。
【0050】
このとき、薄膜化した表面Si層3の厚みは、6nm以上にするのが好ましい。これは、2インチ口径以上のベース基板全面にわたって上記薄膜化した表面Si層3の厚みを6nm未満とすることが現実的に困難であり、基板の一部で表面Si層3の欠損をまねくことが多いからである。
【0051】
ついで、SOI基板1を、炭化水素系ガス雰囲気中で加熱して上記表面Si層3を単結晶3C−SiC層5に変成させる。
【0052】
上記変成工程は、例えば、雰囲気制御が可能な加熱炉において、加熱炉内に導入される雰囲気ガス(水素ガスおよび炭化水素ガス)を切り換えながら温度調節することにより行うことができる。
【0053】
上記のような装置により、上記SOI基板1を加熱炉内に設置し、上記加熱炉内に水素ガスと炭化水素系ガスとの混合ガスを供給しながら、加熱炉内の雰囲気温度を上昇させて、上記SOI基板1の表面Si層3を単結晶3C−SiC層5に変成させることが行われる。
【0054】
具体的には、上記SOI基板1を加熱炉内に設置して、加熱炉内に水素ガスに対して炭化水素系ガスを1体積%の割合で混合した混合ガスを供給する。また、この混合ガスの供給と同じくして、加熱炉内の雰囲気温度を1100〜1405℃に加熱する。より好ましくは1150〜1300℃に加熱する。この加熱によって、SOI基板1の表面Si層3を単結晶3C−SiC層5に変成させる。
【0055】
ここで、前記水素ガスはキャリアガスであり、炭化水素ガスとしては例えばプロパンガスを使用することができる。例えば、水素ガスのボンベからの供給量が1000cc/分であったならば、炭化水素ガスのボンベからの供給量を10cc/分とする。
【0056】
上記変成工程によって形成される単結晶3C−SiC層5の厚みは、同層の欠損欠陥の低減ならびに3次元成長による結晶性の劣化を抑制するため、3nm〜20nm程度に設定するのが好ましく、より好ましいのは、4〜10nmであり、さらに好ましいのは5nm〜7nm程度である。
【0057】
変成された単結晶3C−SiC層5の厚みが、20nmを超えると、単結晶3C−SiC層5の上部が局所的に核成長を起こして粒塊が形成され、表面状態が荒れて好ましくない状態となる。従って、上記表面荒れの影響により、変成処理後のエピタキシャル成長による単結晶3C−SiC膜の品質が劣化するのを防ぐために、単結晶3C−SiC層5の厚みは、20nm以下に設定するのが必須となり、より好ましいのは10nm以下であり、さらに好ましいのは7nm以下である。
【0058】
一方、変成された単結晶3C−SiC層5の厚みを3nmに設定すると、変成処理後の単結晶SiC層5のエピタキシャル成長の初期に単結晶3C−SiC層5を昇華して好ましくない状況となる。従って、上記昇華の影響により、変成処理後のエピタキシャル成長による単結晶3C−SiC膜の品質が劣化するのを防ぐために、単結晶3C−SiC層5の厚みは、3nm以上に設定するのが必須となり、より好ましいのは4nm以上であり、さらに好ましいのは5nm以上である。
【0059】
上記炭化処理を行ったSOI基板1に対し、上記単結晶3C−SiC層5をシード層としてエピタキシャル成長させることにより、上記シード層の上に単結晶3C−SiC層を成長させる。
【0060】
また、ベース基板としてSOI基板ではなくSi基板を使用し、上述したような炭化処理を行うことにより、その表層部にシード層となる単結晶3C−SiC層を形成し、上記シード層の上にエピタキシャル成長により単結晶3C−SiC層を成長させるようにすることもできる。
【0061】
上記エピタキシャル成長工程は、例えば、単結晶3C−SiC層5が形成されたベース基板を処理チャンバー内に配置し、上記処理チャンバー内にモノメチルシランガスを含む原料ガスを所定の流量(例えば約1sccm程度)のガス流量で供給しながら、所定の成長温度で処理することにより、上記単結晶3C−SiC層5をシード層として単結晶3C−SiCをエピタキシャル成長させる。なお、シランガスおよびプロパンなどの原料ガスを供給した場合、あるいは更に水素などをキャリアガスとして加えた場合にも全く同様に本発明の効果を得ることができる。
【0062】
このとき、本発明では、上記エピタキシャル成長を、成長する単結晶3C−SiC層が、平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態となるようにエピタキシャル成長させる第1の成長段階と、上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層における上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行う。
【0063】
ここで、上記平坦性の高い表面とは、エピタキシャル成長で得られる単結晶3C−SiC層の表面のうち表面ピットを除く滑らかな表面であり、基板表面の最小二乗平面に対して10°以下の緩やかな傾斜によって構成されるうねりを含んでもよい趣旨である。上記最小二乗平面は、単結晶3C−SiC表面をAFM(atomic force microscope)測定し、得られた面の形状データを最小二乗フィッティングして得られる基準平面とする。AFM測定は、1〜50μm角の範囲で行うこととする。
【0064】
上記第1の成長段階により、シード層5の上に第1の単結晶3C−SiC層6を形成し、上記第2の成長段階でさらに第2の単結晶3C−SiC層7を形成する。
【0065】
具体的には、上記第1の成長段階は、エピタキシャル成長における輸送律速の領域でエピタキシャル成長させ、上記第2の成長段階は、エピタキシャル成長における脱離律速の領域でエピタキシャル成長させる。
【0066】
より詳しく説明すると、図1で説明したように、一般にエピタキシャル成長反応において、反応ガスの流量や反応圧力を同一の条件としたときに、成長速度は温度に依存する関係を示す。
【0067】
すなわち、エピタキシャル成長は、流量および圧力の条件が一定であれば、低温領域において温度上昇に伴って成長速度が急激に速くなる表面反応律速の領域と、表面反応律速の領域よりも高温側で、温度上昇に伴う成長速度の増加が極めて小さい(言い換えれば温度依存性の少ない)輸送律速の領域と、上記輸送律速の領域よりも高温側で、温度上昇に伴って成長速度が急激に減少する脱離律速の領域が存在する。
【0068】
上述した表面反応律速の領域では、化学反応速度が成長速度を支配する。単結晶3C−SiCを反応律速で成長させた場合には、単結晶3C−SiCの結晶性が悪く、表面状態も極めて粗になり、現実問題として半導体デバイスの製造に適した品質を得ることができなかった。また、脱離律速の領域では、原料分子が基板以外の場所に付着して原料供給効率が低下したり、基板表面に到達した原料分子が結晶化せずに脱離する率が高くなったりする。このため、単結晶3C−SiCを脱離律速で成長させた場合には、表面反応律速の領域よりも結晶性は改善されるものの、結晶核の一部が異常成長して表面に多数の突起が成長してしまい、結果として表面状態が粗となり、やはり半導体デバイスの製造に適した品質を得ることができなかった。
【0069】
したがって、上述したように、従来は、半導体デバイスやGaNの下地基板として単結晶3C−SiC基板を製造する場合、エピタキシャル成長の条件としては、上記輸送律速の領域のみを用いざるをえなかった。
【0070】
ところが、上記輸送律速の領域では、表面反応律速の領域のように結晶性に起因する表面粗れが生じることはなく、脱離律速の領域のような表面突起も発生しないものの、表面に微小な表面ピットが多数形成されてしまい、表面ピットによる表面欠陥が避けられなかった。
【0071】
本発明者らは、従来行われていた単純に低温から高温に段階的に基板温度を上げるだけでは、表面ピットを減少させるようにエピタキシャル成長させることが十分にできないことを確認した。そして、単結晶3C−SiC層成長の過程で表面に生じる表面ピットを減少させるようなエピタキシャル成長の特別な条件設定が存在するのではないかと鋭意研究を重ねた。その過程で、従来、輸送律速の領域だけで行われていたエピタキシャル成長を、他の律速領域におけるエピタキシャル成長と複合することによって表面ピットの減少が図れるのではないかという着想に基づき、繰り返し試験を実施した。
【0072】
その結果、第1段階としてエピタキシャル成長における輸送律速の領域でエピタキシャル成長させ、単結晶3C−SiC層の表面が、上述した平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態とし、その後、第2段階として、エピタキシャル成長における脱離律速の領域を利用することにより、上記表面ピットを埋めるよう単結晶3C−SiCがさらにエピタキシャル成長し、その結果、表面が平坦でかつ表面ピットが少なく、しかも結晶性のよい単結晶3C−SiC層が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0073】
ここで、第1の成長段階で形成される表面ピットの平面形状は、成長させる単結晶3C−SiC層の結晶構造と、表面に配置する結晶面(すなわち結晶の方位)との関係で決定する。例えば、成長させる単結晶3C−SiCの主面方位が(111)である場合、平面視三角形状の表面ピットが形成される。あるいは、例えば、成長させる単結晶3C−SiCの主面方位が(100)である場合、平面視四角形状の表面ピットが形成される。
【0074】
また、上記第1の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みは500nm以上とするのが好ましく、上記第2の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みを500nm以上とすのが好ましい。
【0075】
すなわち、第1の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みが500nm未満であると、平坦性の高い面の中に散在するように形成される表面ピットの部分において、十分に3C−SiCが形成されずにベース基板が露出する状態となり、その後の第2の成長段階を経ても3C−SiCで表面ピットを埋めることができなくなる。したがって、上記第1の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みを500nm以上とすることにより、その後の第2の成長段階で表面ピットを埋めて欠陥を消失させ、平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られるようになる。
【0076】
また、第2の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みが500nm未満であると、第1の成長段階で平坦性の高い面の中に散在するように形成された表面ピットを第2の成長段階で十分に埋めることができなくなる。したがって、上記第2の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みを500nm以上とすることにより、第1の成長段階で形成された表面ピットを埋めて欠陥を消失させ、平坦性を確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られるようになる。
【0077】
特に、成長させる単結晶3C−SiCの主面方位が(111)である場合、平面視三角形状の表面ピットが形成され、500nm未満の厚みで十分に表面平坦性のよい3C−SiC層が形成されず、第2の成長段階で表面ピットを十分に埋めることができなくなる傾向がある。
【0078】
さらに、上記第1の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みは900〜2900nmとするのが好ましく、上記第2の成長段階で形成する単結晶3C−SiC層の厚みを700〜3700nmとするのが好ましい。
【0079】
すなわち、第1の成長段階において、十分な平坦性の高い面の中に、第2の成長段階で消失できる表面ピットが散在するよう単結晶3C−SiC層を形成でき、平坦性の高さを確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られる。
【0080】
また、第2の成長段階において、第1の成長段階で形成された表面ピットを埋めて欠陥を消失させ、平坦性の高さを確保しながら欠陥の少ない単結晶3C−SiC層が得られる。
【0081】
ここで、第1の成長段階は、上述した輸送律速の領域でエピタキシャル成長させることができればよい。第1の成長段階として輸送律速の領域でエピタキシャル成長させるには、原料ガス、雰囲気、流量、圧力、温度をはじめとする諸条件を限定する趣旨ではないが、おおむね下記の条件下での処理を採用することができる。
雰囲気 :主成分がモノメチルシランである原料ガス
基板温度:970〜1120℃
流量 :1.0〜30.0sccm(上記原料ガスに含めるウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量)
圧力 :1×10−4〜4×10−1Torr
後述する図24による校正後の圧力条件は、下記の値となる。
圧力 :9×10−6〜4×10−1Torr
【0082】
また、第2の成長段階も、上述した脱離律速の領域でエピタキシャル成長させることができれば、原料ガス、雰囲気、流量、圧力、温度をはじめとする諸条件を限定する趣旨ではないが、第2の成長段階として脱離律速の領域でエピタキシャル成長させるには、おおむね下記の条件下での処理を採用することができる。
雰囲気 :主成分がモノメチルシランである原料ガス
基板温度:1100℃以上ベース基板の融点未満
流量 :0.1〜6.0sccm(上記原料ガスに含めるウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量)
圧力 :1×10−5〜5×10−4Torr
後述する図24による校正後の圧力条件は、下記の値となる。
圧力 :1×10−7〜6×10−5Torr
【0083】
なお、第1の成長段階における成膜圧力を上記のように4×10−1Torr以下とすることで、成長室を加熱する抵抗型ヒータの放電劣化を抑制できる。しかしながら、誘導加熱など他の加熱方式を採用する場合は、この制約は取り除くことが可能であり、さらに成膜圧力を上げ、かつ輸送律速の領域で成膜した場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0084】
ここで、上記成膜圧力の下限値である1×10−5Torr(後述する校正後は1×10−7Torrである)は、実験に使用した成長室排気用のターボ分子ポンプの最大能力を記しただけであり、さらに成膜圧力を下げた脱離律速の領域で成膜した場合にも、本発明の効果を得ることができる。
ここで、モノメチルシランは、爆発などの危険性が少ないガスであり、特に本発明のように、成膜中にガス供給バルブの操作、排気バルブの操作、あるいはヒータ出力の操作を必要とする成膜においては、危険性が少ない点で極めて優れている。しかしながら、本発明のSiC品質改善効果自体は、シランガスおよびプロパンガスなどの他の原料ガスを使用した場合にも、同様に得ることができる。
【0085】
第1の成長段階および第2の成長段階において、それぞれエピタキシャル成長させる単結晶3C−SiCの厚みは、処理時間の長短によって調節することができる。
【0086】
第1成長段階から第2成長段階への切り換えは、原料ガス流量の引き下げ、成膜圧力の引き下げ、基板温度の引き上げの少なくともいずれかによって行うことができ、従来技術のように、単純に低温成長から高温成長に切り換えるものではない。
【0087】
すなわち、原料ガスの組成または原料ガスとキャリアガスの組成と混合比率、圧力、温度を一定にしておき、原料ガスの流量を引き下げることで、第1成長段階の輸送律速から第2成長段階の脱離律速へ切り換えることができる。
このように、上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを原料ガス流量の引き下げによって行なうことにより、設定変更に比較的時間のかかる圧力や温度を変化させず、流量の引き下げだけで速やかに切り替えを行うことができる。
【0088】
また、原料ガスの組成または原料ガスとキャリアガスの組成と混合比率、流量、温度を一定にしておき、成膜圧力を引き下げることで、第1成長段階の輸送律速から第2成長段階の脱離律速へ切り換えることもできる。
このように、上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを成膜圧力の引き下げによって行なうことにより、設定変更に比較的時間のかかる温度を変化させず、圧力の引き下げだけで切り替えを行うことができる。また、原料ガスの流量を変化させないことから、エピタキシャル成長を行う雰囲気がより安定し、単結晶3C−SiC層の成長が安定的に行われる。
【0089】
また、原料ガスの組成または原料ガスとキャリアガスの組成と混合比率、流量、圧力を一定にしておき、基板温度を引き上げることで、第1成長段階の輸送律速から第2成長段階の脱離律速へ切り換えることもできる。
このように、上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを基板温度の引き上げによって行なうことにより、原料ガスの流量を変化させないことから、エピタキシャル成長を行う雰囲気がより安定し、単結晶3C−SiC層の成長が安定的に行われる。なお、第1段階の輸送律速から第2段階の脱離律速への切り替えを、上記原料ガスの流量変更、成膜圧力の変更、基板温度の変更を組み合わせることによって行ってもよい。
【0090】
このようにして得られた単結晶3C−SiC基板は、ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層が形成され、単結晶3C−SiC層の表面に存在する表面ピット欠陥の数を、エピタキシャル成長直後の状態で8×10個/cm以下とすることができる。
【0091】
このため、エピタキシャル成長の過程で単結晶3C−SiC層の表面に生じる表面ピット欠陥が少ないため、後工程を簡略化し、その分コストダウンを図り、品質への影響要因を減らして品質安定性や歩留まり等の面でも有利となり、半導体デバイス等の用途として品質を確保できる。
【0092】
そして、必要に応じて、エピタキシャル成長によって形成された単結晶3C−SiC層の上に、さらにエピタキシャル成長によりGaN層等の他の半導体膜を形成させることが行われる。すなわち、例えば、エピタキシャル成長で得られた単結晶3C−SiC基板を処理チャンバー内に配置し、上記処理チャンバー内にアンモニアガスを100〜10000sccm程度のガス流量で供給し、トリエチルガリウムやトリメチルガリウム等の有機Ga系ガス、あるいは有機Al系ガスを約1sccm程度のガス流量で供給しながら、温度800〜1405℃で処理することにより、上記単結晶3C−SiC層の上にAlN層、GaN層、AlGaN層等のいずれかもしくはそれらの積層構造の窒化物半導体層を形成させることができる。
【0093】
以上のように、本実施形態の単結晶3C−SiC基板の製造方法は、上記単結晶3C−SiC層を、平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態となるよう形成する第1の成長段階と、上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層を、上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行う。このように、第1の成長段階では表面ピットが形成されるものの、表面ピット以外の部分は平坦性を確保した表面性状の単結晶3C−SiC層を形成し、第2の成長段階では、表面の平坦性を維持しながら上記表面ピットを埋めて表面ピットを減少させて表面の平坦な単結晶3C−SiC層を形成する。このようにすることにより、エピタキシャル成長の過程で単結晶3C−SiC層の表面に生じる表面ピットによる欠陥が少なくなるため、後工程を簡略化し、その分コストダウンを図り、品質への影響要因を減らして品質安定性や歩留まり等の面でも有利となり、半導体デバイス等の用途として品質を確保できる。
【実施例】
【0094】
つぎに、本発明の単結晶3C−SiC基板の製法の実施例について説明する。
【0095】
ベース基板としてSOI基板およびSi基板を準備し、それぞれ下記の条件で処理を行ってベース基板の調整を行った。
◆SOI基板
基板厚み:725μm
表面Si層厚み:11〜25μm
埋め込み絶縁層厚み:100〜200nm
炭化処理条件:雰囲気ガス プロパン、水素(キャリアガス)
温度 1200〜1405℃、時間 10〜30分
単結晶3C−SiCシード層厚み:5〜7nm
◆Si基板
基板厚み:500〜1000μm
炭化処理条件:雰囲気ガス プロパン、水素(キャリアガス)
プロパン:水素=1:100
温度 1200〜1405℃、時間 10〜30分
単結晶3C−SiCシード層厚み:5〜7nm
【0096】
引き続き、上記のようにして調整したベース基板にエピタキシャル成長により単結晶3C−SiC層を成長させた。本実施例では、上記エピタキシャル成長において、1回の処理につきベース基板を1枚エピタキシャル成長できる装置を用いた。ただし、本発明は、このような枚葉タイプのエピタキシャル装置に限るものではない。
下記の表1は、上記のようにして調整したベース基板について、エピタキシャル成長により単結晶3C−SiC層を成長させた処理条件の一覧である。
【0097】
実施例1〜3は、SOI基板をベース基板とし、圧力条件およびウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を一定にし、温度条件を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
実施例4は、SOI基板をベース基板とし、圧力条件を一定にし、温度条件およびウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
実施例5〜6は、Si基板をベース基板とし、圧力条件およびウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を一定にし、温度条件を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
実施例7は、Si基板をベース基板とし、圧力条件を一定にし、温度条件およびウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
実施例18は、SOI基板をベース基板とし、温度条件は一定、圧力条件は5×10−4〜9×10−4Torr(後述する校正後は3×10−5〜1×10−4Torrである)とほぼ一定にし、ウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
実施例19は、SOI基板をベース基板とし、温度条件を一定にし、圧力およびウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
実施例20は、Si基板をベースとし、圧力条件を2×10−4〜5×10−4Torr(後述する校正後は1×10−5〜3×10−5Torrである)とほぼ一定にし、温度条件およびウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量を変化させることで第1成長段階(輸送律速)→第2成長段階(脱離律速)の切り替えを行ってそれぞれエピタキシャル成長させたものである。
すなわち、上記第1の成長段階において、成膜圧力が9×10−4Torr(後述する校正後は1×10−4Torrである)以下であり、上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、原料ガス流量の引き下げ、基板温度の引き上げの少なくともいずれかによって行った。
また、上記第1の成長段階において、成膜圧力が1×10−1Torr以上であり、上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、少なくとも成膜圧力の引き下げによって行った。
【0098】
なお、律速段階はつぎのようにして決定した。
すなわち、3C−SiCシード層上に、原料ガス、雰囲気、流量、圧力、温度を固定して約1μm厚の3C−SiCエピタキシャル層を成長させた。この際、原料ガス、雰囲気、流量、圧力は、実施例および比較例に記載の第1成長段階および第2成長段階で使用した各々の条件とし、10〜50℃刻みの様々な基板温度で成長を行った。
ついで、各々の成膜条件について、SiC層の厚みを保持時間で割ることにより平均成長速度を算出した。基板温度については、あらかじめ熱電対つきの基板などを用いて基板温度とヒーター温度の校正曲線を取得し、成長時のヒーター温度から上記校正曲線を用いて各々の成長条件について求めた。得られた平均成長速度と基板温度のデータから、図1に示すような律速段階を判定する曲線を作成した。作成した曲線と実施例および比較例に記載の第1成長段階および第2成長段階の条件を比較し、「発明の効果」の項で述べた律速判定条件により、各々の成長条件の律速段階を決定した。
【0099】
比較例は、いずれもSOI基板をベース基板としたものである。
比較例8は、輸送律速の第1段階のみでエピタキシャル成長を行ったものである。
比較例9は、脱離律速の第1段階のみでエピタキシャル成長を行ったものである。
比較例10は、第1段階を反応律速で、第2段階を脱離律速でエピタキシャル成長したものである。
比較例11は、第1段階を輸送律速で、第2段階を脱離律速でエピタキシャル成長したものであるが、第1段階終了後の単結晶3C−SiC層の厚みを500nm未満にしたものである。
比較例12は、第1段階を輸送律速でエピタキシャル成長した後、モノメチルシランの流量を変化させて第2段階も輸送律速でエピタキシャル成長したものである。
比較例13は、第1段階を脱離律速で、第2段階は輸送律速でエピタキシャル成長し、第1段階終了後の単結晶3C−SiC層の厚みを500nm未満にしたものである。
比較例14は、輸送律速の第1段階のみを高圧力条件でエピタキシャル成長を行ったものである。
比較例15は、第1段階を脱離律速で、第2段階は輸送律速でエピタキシャル成長し、第1段階終了後の単結晶3C−SiC層の厚みを500nm未満にしたものである。
比較例16、比較例17は、脱離律速のみでエピタキシャル成長したものである。
【0100】
【表1】

【0101】
ここで、上記表1の成膜圧力については、バラトロン真空計による読み取り値であり、精度的な信頼度がそれほど高くないと思われ、特に低圧側においてその傾向が強いと思われた。そこで、成膜圧力について校正曲線を取得し、値の校正を行った。
【0102】
校正曲線は、測定値の信頼性が高い熱陰極真空計を併用し、950℃〜1100℃の所定温度において、処理チャンバー内に各流量で原料ガスを供給したときの処理チャンバー出口の圧力を計測し、各温度を基板温度として、原料ガスの流量に対する圧力変化をプロットすることにより取得した。
【0103】
図24は、上記のようにして得た構成曲線である。
【0104】
このようにして得られた校正曲線から、表1の成膜圧力について必要な校正を行ったものが下記の表2である。
【0105】
【表2】

【0106】
図4〜図10は、それぞれ実施例1、2、3、4、5、6、7で得られた単結晶3C−SiC基板の表面状態および表層部の3C−SiC層の断面SEM写真を示す。
図11〜20は、それぞれ比較例8、9、10、11、12、13、14、15、16、17で得られた単結晶3C−SiC基板の表面状態および表層部の3C−SiC層の断面SEM写真を示す。
図21〜23は、実施例18〜20で得られた単結晶3C−SiC基板の表面状態および表層部の3C−SiC層の断面SEM写真を示す。
【0107】
上記表1および表2には、上記各条件による実施例1〜7、実施例18〜20、比較例8〜17について、第1段階による単結晶3C−SiC層の膜厚(X)、第2段階による単結晶3C−SiC層の膜厚(Y)、それらの合計膜厚(X+Y)、表面の三角形状欠陥(表面ピット)の密度(個/cm)、単結晶3C−SiC基板の表面状態を品質判定した結果を示している。
なお、単結晶3C−SiC層の膜厚は、断面SEM写真から計測して求めた。単結晶3C−SiC層の表面ピット密度は、表面SEM写真から単位面積当たりのピット数を計測して求めた。
【0108】
実施例1〜7、18〜20の結果をみると、ベース基板としてSOI基板を使用した場合も、Si基板を使用した場合も、いずれも表面ピット数、表面ピット密度が少なく、結晶性のよい十分な膜厚の単結晶3C−SiC層が得られていることがわかる。
【0109】
これに対し、比較例8〜17の結果をみると、いずれも表面に多くの表面ピットや突起が存在して表面状態が明らかに悪く、結晶性も悪いSiC層であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、大規模集積回路等に用いる半導体基板の製造等に適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 SOI基板
2 Si母材
3 表面Si層
4 埋め込み絶縁層(酸化物層)
5 シード層(単結晶3C−SiC層)
6 一次単結晶3C−SiC層
7 二次単結晶3C−SiC層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成させる単結晶3C−SiC基板の製造方法であって、
上記単結晶3C−SiC層を、平坦性の高い表面とその中に点在する表面ピットからなる表面状態となるよう形成する第1の成長段階と、
上記第1の成長段階で得られた単結晶3C−SiC層を、上記表面ピットを埋めるようさらにエピタキシャル成長させる第2の成長段階とを行うことを特徴とする単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項2】
上記第1の成長段階は輸送律速の領域でエピタキシャル成長させ、
上記第2の成長段階は脱離律速の領域でエピタキシャル成長させる請求項1記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項3】
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、原料ガス流量の引き下げ、成膜圧力の引き下げ、基板温度の引き上げの少なくともいずれかによって行う請求項1または2記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項4】
少なくとも表層部分がSiを含有する半導体結晶からなるベース基板を用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項5】
少なくとも表層部分がSiからなるベース基板を用い、上記ベース基板の表層部のSiを炭化処理してSiC層に変成させ、上記SiC層をシード層として、上記第1の成長段階および第2の成長段階のエピタキシャル成長を行なう請求項1〜4のいずれか一項に記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項6】
上記第1の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが500nm以上であり、
上記第2の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが500nm以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項7】
上記第1の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが900〜2900nmであり、
上記第2の成長段階で形成される単結晶3C−SiC層の厚みが700〜3700nmである請求項6記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項8】
上記ベース基板上に、エピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成する際の原料ガスの主成分がモノメチルシランである請求項1〜7のいずれか一項に記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項9】
上記第1の成長段階において、基板温度が970℃以上1120℃以下、上記原料ガス中に含めるウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が1.0sccm以上30.0sccm以下、成膜圧力が9×10−6Torrを超え4×10−1Torr以下であり、
上記第2の成長段階において、上記原料ガス中に含めるウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が6.0sccm以下、基板温度が1100℃以上ベース基板の融点未満、成膜圧力が1×10−7Torr以上、6×10−5Torr以下である請求項8記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項10】
上記ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層を形成する際に供給する原料ガスがモノメチルシランのみであり、
上記第1の成長段階において、基板温度が990℃以上1100℃以下、ウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が2.0sccm以上10.0sccm以下、成膜圧力が3×10−5Torr以上1×10−1Torr以下であり、
上記第2の成長段階において、ウエハ1枚あたりのモノメチルシランの流量が3.0sccm以下である請求項9記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項11】
上記第1の成長段階において、成膜圧力が1×10−4Torr以下であり、
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、原料ガス流量の引き下げ、基板温度の引き上げの少なくともいずれかによって行う請求項9または10記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項12】
上記第1の成長段階において、成膜圧力が1×10−1Torr以上であり、
上記第1の成長段階から第2の成長段階への切り替えを、少なくとも成膜圧力の引き下げによって行う請求項9または10記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項13】
ベース基板上にエピタキシャル成長によって形成された単結晶3C−SiC層の主面方位が(111)である請求項1〜12のいずれか一項に記載の単結晶3C−SiC基板の製造方法。
【請求項14】
ベース基板上にエピタキシャル成長によって単結晶3C−SiC層が形成された単結晶3C−SiC基板であって、単結晶3C−SiC層の表面に存在する表面ピットによる欠陥の数が、エピタキシャル成長直後の状態で8×10個/cm以下であることを特徴とする単結晶3C−SiC基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図24】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−225421(P2011−225421A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286949(P2010−286949)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】