説明

反応装置、化学気相成長反応装置及び有機金属化学気相成長反応装置

【課題】低温成長薄膜の特性を備え、様々な種類の光電素子及び電子素子を改善し、集積回路素子の品質を改善することができる反応装置を提供する。
【解決手段】反応装置500は、第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200を備える。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とが向かい合うように配置して反応領域150を形成し、第1の加熱ユニット100の内側面と第2の加熱ユニット200の内側面とにより角度が形成され、第1の加熱ユニット100の温度と第2の加熱ユニット200の温度とを個別に制御する。第1の加熱ユニット100上に少なくとも1つの基板300を配置し、少なくとも1つの基板300が第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に位置し、第1の加熱ユニット100上の少なくとも1つの基板300上に薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の独立した加熱ユニット(heating unit)を有する反応装置に関し、特に複数の独立した加熱ユニットを有する化学気相成長反応装置に関し、さらに特に有機金属化学気相成長反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、III族−V族半導体材料は、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)、レーザダイオード(laser diode)、薄膜ソーラバッテリ(solar cell)などの半導体光電素子に広く利用されている。産業界で赤外線、可視光線、紫外線などの光電素子を製造する場合、大部分は、例えば、ハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)、クロライド気相成長(Chloride Vapor Phase Epitaxy:ClVPE)、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)などの化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)システムを利用する。CVDシステムは、上述のIII−V族光電素子の形成に応用する以外に、シリコン/シリコン・ゲルマニウム素子、金属層、誘電体層などの素子に必要な薄膜構造にも応用することができる。この薄膜構造は、例えば、SiO、Si、SiON又はポリシリコン、W(tungsten)金属層、Ti金属層、Cu金属層、Al金属層、TiNバリア層、TaNバリア層、BaSrTiO高誘電体材料、SiOF低誘電体材料及びSrBiTaO強誘電体材料などを含む。
【0003】
前述のCVDシステムにおいて、III−V族光電素子の製造に最もよく用いられる薄膜製造システムは、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)システムである。ヘテロ構造のInGaN/GaNの場合、GaNとInNとの合成によるInGaN三元化合物は、適宜に固相組成を調整すると、紫外線、可視光線及び赤外線の範囲を含む340nmから1800nmの発光波長に調整することができる。そのため、一般の窒化物光電素子構造において、異なるInGaN組成を有するダブルヘテロ構造、多重量子井戸又は量子ドットが素子発光層又は吸収層の材料として用い、青色、緑色、赤色の発光ダイオード、ホトディテクター及びソーラバッテリを製造する。近年、高パワー発光ダイオード及びソリッド・ステート照明(solid−state lighting device)の発展により、高電流、発光層が厚いInGaNダブルヘテロ構造の高パワー青色及び緑色の発光ダイオードを開発する方法が産業界及び学術界で盛んに研究されている。
【0004】
InGaN三元化合物MOCVDの混晶成長は、困難度が高い薄膜成長技術である。製造に利用する上述構造の反応物は、トリメチルガリウム(trimethylgallium:TMGa)、トリメチルインジウム(trimethylindium:TMIn)及びアンモニア(ammonia:NH)である。InN薄膜は揮発し易く、NHが分解しにくい特性を備えているため、InGaN薄膜のMOCVD成長は、組成の違いに応じて温度成長が大きく異なる。GaNの熱安定性は好ましく、NHを完全に分解して多くの活性窒素原子が反応するため、GaN材料を950℃以上などの高いエピタキシャル温度で製造すると、好適なエピタキシャル薄膜を得ることができる。相対的に言えば、InN薄膜熱安定性が非常に悪いため、真空の環境下では435℃で分解し始めて627℃で完全に分解される。そのため、InN膜のMOCVD成長は、550〜650℃の低温度の範囲内で成長させなければならない。不都合なことに、この温度範囲では、NHの分解率が約4%しかなく、少量のNHしか分解することができなかった。NHの分解により得られる活性窒素原子は少なく、InN薄膜に大量の窒素空孔又はインジウム空孔が発生するため、InN薄膜の品質はGaN薄膜よりはるかに劣る。三元InGaN化合物の場合、InGaN化合物のMOCVD成長温度は、GaNとInNとの間である。In含量が少ないInGaN薄膜は、成長温度が高く(即ち、約700〜800℃)、成長薄膜は良好な光電性質を得る。Inの揮発を低減させるために、In含量が高いInGaN薄膜は、550℃〜650℃で成長させる。様々な種類のIn組成を含む薄膜は合成することが可能であるが、薄膜の蛍光スペクトル信号が微弱となる。In組成が40〜70%の場合、蛍光信号が全く無い。低温で成長させたMOCVDのInGaN薄膜の品質が低下する原因としては、成長温度が低い他、NHの分解率が低く、活性窒素原子の供給不足が考えられる。
【0005】
従来のCVDシステムでは、前駆反応物の分解率を向上させて、薄膜の成長温度を低減させるために、補助的な方法(例えば、プラズマ、レーザ、発熱抵抗体、紫外線照射など)が多く開示されている。
【0006】
特許文献1で開示しているように、従来、反応ガスを分解するために、反応チャンバの前方に、前処理装置(pretreatment apparatus)が配置されている。この前処理装置は、プラズマ発生装置、触媒装置又は前述の組み合わせを有し、反応チャンバに入る前の前駆体反応ガスに高エネルギのプラズマを当て、反応ガスを解裂させる。
【0007】
非特許文献1で開示しているように、V族ガスがパイプにより反応チャンバに入る前に、加設したプレヒーティング装置を用い、高温方式により前駆反応物の分解率を向上させる。
【0008】
MOCVDシステムは、前処理装置を付加的に設けたり、V族ガスパイプの前端にプレヒーティング装置を加設したりすることにより、エネルギを加えて反応ガスの分解率を向上させることができるが、分解する活性反応分子は、成長基板から所定の距離で離され、温度低下により反応分子の活性が低下する。プレヒーティング装置が加設されたMOCVDシステムは一定の効果を有するが、従来のMOCVDシステムより僅かに性能が優れているだけであり、その効果には限界があった。
【0009】
また、1つの加熱ユニットを有する反応装置は、前駆反応物の分解に用いる以外に、薄膜を製作する成長温度を供給するために用いる。GaNバルクを成長させるMOCVDシステムを例にした場合、NH反応物は600℃以下の解裂効率が約4%以下であるため、活性窒素原子を十分に提供するために、加熱ユニットの高温が必要である。従来、一つだけの加熱ユニットを有するMOCVDシステムは、GaNバルクを成長させる際、エピタキシャル品質を向上させるために、成長温度を950℃以上にする必要がある(例えば、非特許文献2)。また、青色光又は緑色光のInGaNバルク薄膜の場合、青色光(450nm)に必要なInGaNのIn組成は約19%であり、緑色光(520nm)に必要なIn組成は約25%である。一般に発光波長が長いほど、薄膜に必要なIn成分は高くなる。InGaN発光層のエピタキシャル製造は、In揮発性が高く、NHが分解し難いという特性を有するため、高In組成のInGaN材料の成長温度の上限が制限を受ける。一般にエピタキシャル温度を高めた場合、NH反応物の分解率を向上させることができるが、それととともにIn原子に大量の脱着現象が発生し、高いIn組成を合成させ難くなる。反対に、エピタキシャル温度が低いほど、In組成が高くなる。NH反応物の分解率が低い場合、活性窒素原子の供給不足により、窒素空孔(nitrogen vacancy)、インジウム転位(indium dislocation)などの真性欠陥が発生し、薄膜品質を低下させる虞がある。
【0010】
CVD薄膜の製造では、高温の副反応が発生する前に温度を高くすれば、高品質の薄膜を合成させることができる。青色光のInGaNのIn組成が低いため(19%)、従来の1つの加熱ユニットのMOCVD技術を利用すると、800℃のエピタキシャル温度により、高品質である青色光の発光材料を得ることができる。発光層の波長を緑色光(520nm)まで伸ばすには、In組成を約25%まで増大させる必要がある。Inは、高温で揮発し易い特性を備えているため、薄膜を製造するエピタキシャル温度を750℃まで下げる必要がある。しかし、緑色光薄膜の発光強度は、青色光の材料より明らかに低下し、青色光の発光材料より薄膜品質の品質が大幅に低減する。つまり、これは緑色光の発光ダイオードの内部量子の変換効率が常に低い主な原因の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0121193号明細書
【非特許文献1】論文Current Applied Physics 3 351 (2003)、J. Cryst. Growth 247 55 (2003)
【非特許文献2】Jpn. J. Appl. Phys. 36 L598 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来、1つの加熱ユニットを有する反応装置は、加熱ユニットを元素の前駆反応物を分解するのに用いる以外に、薄膜を製造する成長温度を供給するが、両者が互いに牽制し合う状況下で、特に前駆反応物の熱分解温度が高くて、製造する薄膜材料が低温で分解し易い状況下では高品質の薄膜を成長させることが容易でなかった。
【0013】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その第1の目的は、高品質の薄膜を成長させることができる反応装置を提供することにある。即ち、薄膜を製造する際、前駆反応物の熱分解と、薄膜の成長温度を個別に制御することにより、第2の加熱ユニットの温度を上げ、前駆反応物の熱分解効率を向上させたり、前駆反応物を完全に熱分解したりする。そのため、第1の加熱ユニットの温度が低い状態でも高品質の薄膜、特に揮発性が高く、熱安定性が低くて熱的に不安定な材料を成長させることができるとともに、高温で高品質の薄膜を成長させることを妨げない。
【0014】
本発明の第2の目的は、中間組成領域の多元化合物薄膜、特にエピタキシィ溶解度ギャップ(miscibility gap)の薄膜で、合成が容易でない組成薄膜を形成する反応装置を提供することにある。即ち、少なくとも2つの加熱ユニットを有する反応装置を利用することにより、前駆反応物の熱分解と薄膜成長の温度とを個別に制御し、加熱ユニットの温度が低い状態で、高品質で異なる組成の薄膜(特に、中間組成領域の多元化合物薄膜)を成長させることができる。
【0015】
本発明の第3の目的は、良好な低温薄膜成長能力を備えた反応装置を提供することにある。低温下でヘテロ構造の半導体素子を製造することができる。例えば、p/nインタフェース、ホモ構造、ダブルヘテロ構造、多重量子井戸構造、マグネティック・スピン・トランジスタ及び半導体光電素子(例えば、発光ダイオード、レーザダイオード及び単電子トランジスタ)の製造以外に、現在、シリコンを主な材料として使用している半導体産業において、先進の工程を組み合わせて先進の半導体素子を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、少なくとも1つの基板上に薄膜を形成する反応装置であって、第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを備え、前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとが向かい合うように配置して反応領域を形成し、前記第1の加熱ユニットの内側面と前記第2の加熱ユニットの内側面とにより角度が形成され、前記第1の加熱ユニットの温度と前記第2の加熱ユニットの温度とを個別に制御し、前記第1の加熱ユニット上に前記少なくとも1つの基板を配置し、前記少なくとも1つの基板が前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとの間に位置し、前記第1の加熱ユニット上の前記少なくとも1つの基板上に薄膜を形成することを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとからなる角度は調整可能なことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとの間の最小距離は数μm〜300mmであることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットは、接触式加熱方式又は非接触式加熱方式により温度を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットは、液冷方式又は空冷方式を含む冷却方式により温度を制御することを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明では、請求項1の発明において、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットは、感熱抵抗線加熱、高周波感応加熱、紫外線ランプ加熱、可視光線ランプ加熱又は遠赤外線ランプ加熱により温度を制御することを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明では、請求項1の発明において、前記基板は、ガラス基板、窒化ガリウム基板、酸化アルミニウム基板、炭化珪素基板、ガリウム砒素基板、リン化インジウム基板及びシリコン基板からなる群から選ばれることを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明では、請求項1の発明において、前記薄膜は、IA、IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA族の元素で組成される1つの元素薄膜又は2元以上の薄膜からなることを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明では、請求項1の発明において、前記薄膜には、p型元素、n型元素又は同価電性元素がドーピングされていることを特徴とする。
【0025】
請求項10の発明では、請求項1の発明において、前記少なくとも1つの基板は回転することを特徴とする。
【0026】
請求項11の発明では、請求項1の発明において、個別に温度を制御する複数の第1の加熱ユニット及び複数の第2の加熱ユニットをさらに備えることを特徴とする。
【0027】
請求項12の発明では、請求項1の発明において、前記反応装置に反応物を入れるガス導入構造をさらに備えることを特徴とする。
【0028】
請求項13の発明では、請求項12の発明において、前記反応物は、前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとの隙間から前記反応領域に入れられることを特徴とする。
【0029】
請求項14の発明では、請求項12の発明において、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットのうちの少なくとも何れか1つは、その中に形成された少なくとも1つのガスチャネルを含み、少なくとも一部又は全部の前記反応物が、前記少なくとも1つのガスチャネルを介して前記反応領域に入れられることを特徴とする。
【0030】
請求項15の発明では、請求項14の発明において、前記少なくとも1つのガスチャネルは、前記少なくとも一部の前記反応物がそれぞれ分かれて前記反応領域に入る複数のガスチャネルであることを特徴とする。
【0031】
請求項16の発明では、請求項1の発明において、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットに反応物が接触しないように、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットに配置される保護板構造をさらに備えることを特徴とする。
【0032】
請求項17の発明では、請求項1の発明において、前記第2の加熱ユニットの温度は、前記第1の加熱ユニットの温度より高いことを特徴とする。
【0033】
請求項18の発明では、請求項1の発明において、前記反応装置は化学気相成長反応装置であることを特徴とする。
【0034】
請求項19の発明では、請求項1の発明において、前記反応装置は有機金属化学気相成長反応装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の反応装置は、低温成長薄膜の特性を備え、様々な種類の光電素子及び電子素子(例えば、発光ダイオード、レーザダイオード、ホトディテクター、ソリッド・ステート光源、薄膜ソーラバッテリなどを含む)を改善し、シリコン、シリコン・ゲルマニウム、ポリシリコン(LTPS)などの集積回路素子の品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図1B】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図1C】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図2A】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図2B】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図2C】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図2D】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図3A】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図3B】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図3C】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図3D】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図4A】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図4B】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図4C】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図4D】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図5A】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図5B】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図5C】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図5D】本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置を示す模式図である。
【図6】低温(14K)で蛍光スペクトルを測定した際の(a)好ましいGaN薄膜と、(b)好ましくないGaN薄膜のスペクトル図である。
【図7】本発明及び従来技術のGaN薄膜の蛍光スペクトル積分強度(integrated photoluminescence intensity)とエピタキシャル温度との変化を曲線で示すグラフであり、右下の挿入図は、半値幅値とエピタキシャル温度との変化を曲線で示すグラフである。
【図8】本発明及び従来技術のInGaN薄膜のIn組成と発光波長との変化を曲線で示すグラフである。
【図9】本発明及び従来技術のInGaN薄膜の相対的な発光強度と発光波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0038】
本発明の反応装置は、少なくとも1つの基板上に薄膜が形成され、この薄膜は、第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを含む。第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとは向かい合うように配置されている。第1の加熱ユニットの温度と第2の加熱ユニットの温度とは個別に制御することができる。第1の加熱ユニットは、少なくとも1つの基板に配置されている。基板は、第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとの間に位置する。第2の加熱ユニットは、反応装置に入った反応物を加熱分解し、第1の加熱ユニット上の少なくとも1つの基板表面に薄膜を形成し、薄膜は、固定した化学計量割合を有する1種以上の成分組成からなる。第1の加熱ユニットの内側面と第2の加熱ユニットの内側面とで形成される角度は調整することができる。
【0039】
上述の基板は回転可能である。この回転は、例えば、ステッピングモータによる回転方式又は気体浮上式の回転方式で行い、第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとの間隔を、好適には数μm〜300mmに調整する。
【0040】
上述の第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットは、接触加熱方式(例えば、感熱抵抗線)を利用したり、非接触加熱方式(例えば、電磁波感応加熱又は電磁波輻射加熱)を利用して温度制御を行う。電磁波感応加熱は高周波感応加熱でもよい。電磁波輻射加熱は、紫外線ランプ加熱、可視光線ランプ加熱、遠赤外線ランプ加熱などの方式により加熱するが、これらは本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内である。反応装置は、冷却方式(例えば、液冷方式又は空冷方式)を利用し、前述の加熱方式と組み合わせて第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを制御し、製造工程で必要な温度を得て、第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとの温度差を広げる。
【0041】
上述の基板は、ガラス基板、窒化ガリウム基板、酸化アルミニウム基板、炭化珪素基板、ガリウム砒素基板、リン化インジウム基板及びシリコン基板からなる群から選んでもよい。反応物は、IA、IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA族の元素の前駆反応物からなる群から選んでもよい。
【0042】
反応物は、第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとの隙間から反応領域に入って反応を行う。或いは、第1の加熱ユニット及び/又は第2の加熱ユニットには、第1の加熱ユニット及び/又は第2の加熱ユニットのガスチャネルから反応領域に反応物を入れて反応を行うために、中央ガスチャネル及び/又は複数のガスチャネルが形成されている。或いは、一部の反応物が第1の加熱ユニット及び/又は第2の加熱ユニットのガスチャネルを介して反応領域に入り、残りの反応物が第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとの間の隙間から反応領域に入って反応を行うが、これも本発明の主旨及び範囲内である。
【0043】
また、本発明の他の実施形態による化学気相成長反応装置は、少なくとも1つの基板上に薄膜を形成し、上述の第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを含む。
【0044】
また、本発明の他の実施形態による有機金属化学気相成長反応装置は、少なくとも1つの基板上に薄膜を形成し、上述の第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを含む。
【0045】
そのため、本発明の反応装置は、第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを含み、独立した温度制御を行う加熱ユニットにより、基板上に薄膜構造を成長させ、この構造は、単層薄膜及び多層薄膜構造、ホモ構造、ダブルヘテロ構造、多重量子井戸構造、ナノ構造(例えば、量子効率を有する量子ドット)などの構造でもよく、その構造中の薄膜層又はナノ構造は、少なくとも1種の固定された化学計量割合の成分組成の一元、二元、三元、四元又は多元化合物からなり、IA、IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA族の元素を含む。
【0046】
従来技術では1つの加熱ユニットを有する反応装置は、加熱ユニットの温度を、薄膜製造の成長温度として用いる以外に、前駆反応物の熱分解の温度としても用いるため、前駆反応物の熱分解温度が高い場合、製造する薄膜材料は低温で分解し易く、互いの温度制限により、低温度で薄膜をエピタキシャル製造する必要があった。しかし、熱分解温度が低すぎるため、前駆反応物の熱分解が不完全な場合、薄膜品質が低下し、高性能な電子又は光電素子の薄膜を製造することはできない。
【0047】
そのため、本発明の反応装置は、それぞれ個別に温度制御を行うことが可能な2つの加熱ユニットを利用し、第2の加熱ユニットと第1の加熱ユニットとを互いに向き合うように配置し、第1の加熱ユニットの温度を薄膜の成長温度として用い、第2の加熱ユニットの温度を主に元素の前駆反応物の熱分解を増進するために用いる。つまり、本発明の反応装置を利用すると、様々な種類の高品質薄膜を成長させることができる。このように、前駆反応物の熱分解と薄膜成長温度とを別々に制御することができるため、同一の反応チャンバ内で、一般の低い反応物の熱分解温度及び高い薄膜成長温度の薄膜とを成長させることができるだけでなく、高い反応物の熱分解温度及び低い薄膜成長温度の薄膜とを製造することもできる。第2の加熱ユニットの配置により、本発明が開示する反応装置は、前駆反応物の熱分解をより完全に行うことができるため、高温での高品質の薄膜成長を妨げない上、低い成長温度で高品質の薄膜を形成することもできる。
【0048】
そのため、本発明の反応装置は、低温成長薄膜の特性を備え、様々な種類の光電素子及び電子素子(例えば、発光ダイオード、レーザダイオード、ホトディテクター、ソリッド・ステート光源、薄膜ソーラバッテリなどを含む)を改善し、シリコン、シリコン・ゲルマニウム、ポリシリコン(LTPS)などの集積回路素子の品質を改善することができる。
【0049】
本発明の一実施形態による複数の独立した加熱ユニットを有する反応装置は、前駆反応物の熱分解及び薄膜成長の温度を個別に制御することにより、所定の温度で所望の高品質の薄膜を成長させることができる。
【0050】
図1A〜図1Cを参照する。図1A〜図1Cに示すように、反応装置500の内部には、個別に加熱させる第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは互いに向かい合うように配置されている。例えば、第1の加熱ユニット100を下方に配置し、第2の加熱ユニット200を上方に配置し、水平になるように配置したり、第1の加熱ユニット100を上方に配置し、第2の加熱ユニット200を下方に配置したりしてもよい(図1Bに示す)。第1の加熱ユニット100の内側面には、1つ又は複数の基板300が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との最小距離は、例えば、数μm〜300μmであり、好ましくは5〜50mmであり、さらに好ましくは10〜20mmに調整してもよい。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに向かい合うように配置され、それぞれ垂直に配置されてもよい(図1Cに示す)。
【0051】
或いは、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに対向した内側面が所定角度に形成されるように配置されてもよい。この所定角度は、例えば0〜60度であり、好ましくは0〜20度であり、さらに好ましくは0〜10度であり、何れも本発明の主旨と範囲を脱しない。
【0052】
薄膜を製造する際、複数の反応物は、ガス導入構造400から反応装置500に入れられ、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けられた隙間から、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に形成された反応領域150に入る。その後、水平に基板300を均一に流れて反応し、基板300の表面に薄膜が形成される。
【0053】
図2A〜図2Dを参照する。図2A〜図2Dに示すように、反応装置500の内部には、それぞれ個別に加熱を行う第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに向かい合うように配置されている(例えば、水平になるように配置されている)。第1の加熱ユニット100は下方に配置され、第2の加熱ユニット200は上方に配置され、第1の加熱ユニット100の内側面には、1つ又は複数の基板300が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間の最小距離は、例えば、数μm〜300mm、好ましくは5mm〜50mm、さらに好ましくは10mm〜20mmに調整することが可能である。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との互いに対向した内側面は所定の角度(例えば、0度〜60度、好ましくは0度〜20度、さらに好ましくは0度〜10度など)になるように配置され、何れも本発明の主旨と範囲を脱しない。
【0054】
第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200のうちの少なくとも何れか1つは、反応装置500へ反応物を入れるために用いるガスチャネル700を有し、加熱ユニットのガスチャネル700は、加熱ユニットの中央チャネル又は複数のガスチャネルを通る。ガスチャネル700は、反応物のガス導入構造400に接続され、ガス導入構造400の一部を構成する。複数の反応物は、ガス導入構造400及びガスチャネル700から反応装置500に入って反応領域150に入る。
【0055】
図2A〜図2Dを参照する。図2A〜図2Dに示すように、水平反応装置は、下方に配置された第1の加熱ユニット100と、上方に配置された第2の加熱ユニット200とを有する。図2A及び図2Bに示すように、ガスチャネル700は、上方に配置された第2の加熱ユニット200内に設けられている。ガスチャネル700は、第2の加熱ユニット200の中央チャネル又は複数のガスチャネルを通る。複数の反応物は、中央チャネルを有する第2の加熱ユニット200(図2Aに示す)又は複数のガスチャネルを有する第2の加熱ユニット200(図2Bに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入ってから基板300の表面を均一に流れる。
【0056】
図2C及び図2Dを参照する。図2C及び図2Dに示すように、水平反応装置は、下方に配置された第1の加熱ユニット100と、上方に配置された第2の加熱ユニット200とを有する。図2C及び図2Dに示すように、ガスチャネル700は、下方の第1の加熱ユニット100の中に設けられている。ガスチャネル700は、第1の加熱ユニット100の中央チャネル又は複数のガスチャネルを通る。複数の反応物は、中央チャネルを有する第1の加熱ユニット100(図2Cに示す)又は複数のガスチャネル700を有する第1の加熱ユニット100(図2Dに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けられた反応領域150に入り、好適には均一な気流方式により基板300の表面を流れる。
【0057】
図2A〜図2Dを参照する。図2A〜図2Dに示すように、水平反応装置は、ガスが渦流に形成されないように、第1の加熱ユニット100の内側面に複数の基板300が、中心から所定距離で離れるように外側に配置されているため、基板300の表面を反応物が均一に流れる。図2A〜図2Dに示すように、ガスチャネル700は、複数のチャネル、多孔性のチャネル又は1つのチャネルでもよい。本発明の図面は、説明の便宜上示されているだけであり本発明を何ら制限するわけではなく、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じて変更することができる。
【0058】
図3A〜図3Dを参照する。図3A〜図3Dに示すように、反応装置500の内部には、個別に加熱を行う第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200がそれぞれ配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに向かい合うように配置されている(例えば、水平になるように配置されている)。第1の加熱ユニット100は上方に配置され、第2の加熱ユニット200は下方に配置されている。第1の加熱ユニット100の内側面には、1つ又は複数の基板300が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間の最小距離は、例えば、数μm〜300mmであり、好ましくは5mm〜50mmであり、さらに好ましくは10mm〜20mmに調整することが可能である。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに対向した内側面が所定の角度になるように配置されてもよい。この所定の角度は、例えば0〜60度であり、好ましくは0〜20度であり、さらに好ましくは0〜10度であるが、何れも本発明の主旨と範囲を脱しない。
【0059】
第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200のうちの少なくとも何れか1つは、反応装置500へ反応物を入れるために用いるガスチャネル700を有し、加熱ユニットに貫設されたガスチャネル700は、加熱ユニットの中央チャネル又は複数のガスチャネルを通る。ガスチャネル700は、反応物のガス導入構造400に接続され、ガス導入構造400の一部を構成する。複数の反応物は、ガス導入構造400及びガスチャネル700から反応装置500に入ってから反応領域150に入る。
【0060】
図3A〜図3Dを参照する。図3A〜図3Dに示すように、水平反応装置は、上方に配置された第1の加熱ユニット100と、下方に配置された第2の加熱ユニット200とを有する。図3A及び図3Bに示すように、ガスチャネル700は、上方の第1の加熱ユニット100の中に設けられている。ガスチャネル700は、第1の加熱ユニット100の中央チャネル又は複数のガスチャネルを通る。複数の反応物は、中央チャネルを有する第1の加熱ユニット100(図3Aに示す)又は複数のガスチャネル700を有する第1の加熱ユニット100(図3Bに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入り、好ましくは基板300の表面を均一に流れる。
【0061】
図3C及び図3Dを参照する。図3C及び図3Dに示すように、水平反応装置は、上方に配置された第1の加熱ユニット100と、下方に配置された第2の加熱ユニット200とを有する。図3C及び図3Dに示すように、ガスチャネル700は、下方の第2の加熱ユニット200内に設けられている。ガスチャネル700は、第2の加熱ユニット200の中央チャネル又は複数のガスチャネルを通る。複数の反応物は、中央チャネルを有する第2の加熱ユニット200(図3Cに示す)又は複数のガスチャネル700を有する第2の加熱ユニット200(図3Dに示す)を介し、完全に第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入り、基板300の表面を流れ、好ましくは均一な気流方式により基板300の表面を流れる。
【0062】
図3A〜図3Dを参照する。図3A〜図3Dに示すように、水平反応装置は、ガスが渦流に形成されないように、第1の加熱ユニット100の内側面に複数の基板300が、中心から所定距離で離れるように外側に配置され、基板300の表面に反応物が均一に流れるようにする。図3A〜図3Dに示すように、ガスチャネル700は、複数のチャネル、多孔性のチャネル又は1つのチャネルでもよい。本発明の図面は、説明の便宜上示されているだけであり本発明を何ら制限するわけではなく、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じて変更することができる。
【0063】
図4A〜図4Dを参照する。図4A〜図4Dに示すように、反応装置500の内部には、個別に加熱を行う第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに向かい合うように配置されている(例えば、水平になるように配置されている)。第1の加熱ユニット100は下方に配置され、第2の加熱ユニット200は上方に配置され、第1の加熱ユニット100の内側面には、1つ又は複数の基板300が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との最小距離は、例えば、数μm〜300mm、好ましくは5mm〜50mm、さらに好ましくは10mm〜20mmに調整することが可能である。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、例えば、0〜60度、好ましくは0〜20度、さらに好ましくは0〜10度となるように、互いに対向した内側面が所定の角度となるように配置され、何れも本発明の主旨と範囲を脱しない。
【0064】
第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200のそれぞれは、反応装置500へ反応物を入れるために用いるガスチャネル700を有する。このガスチャネル700は、中央チャネル又は複数のガスチャネル構造でもよい。ガスチャネル700は、反応物のガス導入構造400に接続され、ガス導入構造400の一部を構成してもよい。複数の反応物は、ガス導入構造400及びガスチャネル700から反応装置500に入ってから反応領域150に入る。
【0065】
図4A〜図4Dを参照する。図4A〜図4Dに示すように、水平反応装置は、ガスチャネル700をそれぞれ有する第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200を含む。ガスチャネル700は、中央チャネル又は複数のガスチャネルでもよい。図4A及び図4Bに示すように、複数の反応物は、一部に中央チャネルが設けられた第2の加熱ユニット200を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けられた反応領域150に入り、残りの複数の反応物が中央チャネルを有する第1の加熱ユニット100(図4Aに示す)又は複数のガスチャネルを有する第1の加熱ユニット100(図4Bに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けられた反応領域150に入り、基板300の表面を好ましくは均一の気流方式により流れる。
【0066】
図4C及び図4Dを参照する。図4C及び図4Dに示すように、複数の反応物は、一部が複数のガスチャネルを有する第2の加熱ユニット200を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入り、残りの複数の反応物が中央チャネルを有する第1の加熱ユニット100(図4Cに示す)又は複数のガスチャネルを有する第1の加熱ユニット100(図4Dに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入り、好ましくは基板300の表面を均一に流れる。
【0067】
図4A〜図4Dを参照する。図4A〜図4Dに示すように、水平反応装置は、ガスが渦流に形成されないように、第1の加熱ユニット100の内側面上に複数の基板300が、中心から所定距離で離れるように外側に配置され、反応物が基板300の表面を均一に流れる。図4A〜図4Dに示すように、ガスチャネル700は、複数のチャネル、多孔性のチャネル又は1つのチャネルでもよい。本発明の図面は、説明の便宜上示されているが、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じて変更してもよい。
【0068】
図5A〜図5Dを参照する。図5A〜図5Dに示すように、反応装置500の内部には、個別に加熱を行う第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは互いに向かい合うように配置されている(例えば、水平になるように配置されている)。第1の加熱ユニット100は上方に配置され、第2の加熱ユニット200は下方に配置されている。第1の加熱ユニット100の内側面には、1つ又は複数の基板300が配置されている。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間の最小距離は、例えば、数μm〜300mm、好ましくは5mm〜50mm、さらに好ましくは10mm〜20mmに調整することが可能である。第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200とは、互いに対向した内側面が所定の角度(例えば、0度〜60度であり、好ましくは0度〜20度であり、さらに好ましくは0度〜10度)で配置され、何れも本発明の主旨と範囲を脱しない。
【0069】
第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200のそれぞれは、反応装置500へ反応物を入れるために用いるガスチャネル700を有する。このガスチャネル700は、中央チャネル又は複数のガスチャネル構造でもよい。ガスチャネル700は、反応物のガス導入構造400に接続され、ガス導入構造400の一部を構成してもよい。複数の反応物は、ガス導入構造400及びガスチャネル700から反応装置500に入ってから反応領域150に入る。
【0070】
図5A〜図5Dを参照する。図5A〜図5Dに示すように、水平反応装置は、ガスチャネル700をそれぞれ有する第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200を含む。ガスチャネル700は、中央チャネル又は複数のガスチャネルでもよい。図5A及び図5Bに示すように、複数の反応物は、一部が中央チャネルを有する第1の加熱ユニット100を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入り、中央チャネルを有する第2の加熱ユニット200(図5Aに示す)又は複数のガスチャネルを有する第2の加熱ユニット200(図5Bに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に残りの複数の反応物が入って、好ましくは均一の気流方式により基板300の表面を流れる。
【0071】
図5C及び図5Dを参照する。図5C及び図5Dに示すように、複数の反応物は、一部が複数のガスチャネルを有する第1の加熱ユニット100を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入り、中央チャネルを有する第2の加熱ユニット200(図5Cに示す)又は複数のガスチャネルを有する第2の加熱ユニット200(図5Dに示す)を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に残りの複数の反応物が入り、好ましくは均一の気流方式により基板300の表面を流れる。
【0072】
図5A〜図5Dを参照する。図5A〜図5Dに示すように、水平反応装置は、ガスが渦流に形成されないように、第1の加熱ユニット100の内側面上に複数の基板300が、中心から所定距離で離れるように外側に配置され、反応物が基板300の表面を均一に流れるようにする。図5A〜図5Dに示すように、ガスチャネル700は、複数のチャネル、多孔性のチャネル又は1つのチャネルでもよい。本発明の図面は、単なる説明のために示されているが、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じてその構造を変えてもよい。
【0073】
図5A〜図5Dを参照する。図5A〜図5Dに示すように、反応装置は、複数の反応物が第1の加熱ユニット100のガスチャネル700を介し、第2の加熱ユニット200のガスチャネル700を介し、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に残りの部分の複数の反応物が入り、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間の隙間から反応領域150に入るが、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じてその構造を変更してもよい。
【0074】
上述したことから分かるように、本発明の反応装置は、反応物が完全に第1の加熱ユニット100のガスチャネル700からか、完全に第2の加熱ユニット200のガスチャネル700から、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間に設けた反応領域150に入ったり、完全に第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間の隙間から反応領域150に入ったりする。反応物は、第1の加熱ユニット100のガスチャネル700を介したり、第2の加熱ユニット200のガスチャネル700を介したり、第1の加熱ユニット100と第2の加熱ユニット200との間の隙間を介したりし、少なくとも2つ以上のガス導入方式により反応領域150に入る。そのうち少なくとも1つのガスチャネルは、少なくとも一部の反応物が互いに分かれて反応装置に入る複数のガスチャネルである。上述のガス導入方式及びガスチャネル構造は、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じてその構造を変えてもよい。
【0075】
図1A〜図1C、図2A〜図2D、図3A〜図3D、図4A〜図4D及び図5A〜図5Dを参照する。図1A〜図1C、図2A〜図2D、図3A〜図3D、図4A〜図4D及び図5A〜図5Dに示すように、各加熱ユニットは個別に所望の温度を制御する。第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200の温度制御は、接触加熱方式(例えば、感熱抵抗線)を利用したり、非接触加熱方式により電磁波感応加熱又は電磁波輻射加熱を行う。温度制御方式は、好適には液冷方式又は空冷方式を含む冷却方式を利用し、2つの加熱ユニット間の温度差を広げ、反応物の解裂効率を向上させ、低温で高品質の薄膜を成長させるとともに、高温で高品質の薄膜を成長させることができる。第1の加熱ユニット100は、複数の加熱ユニットを含む構造でもよく、複数の加熱ユニット構造は、温度を個別又は同時に制御してもよい。また、第2の加熱ユニット200は、複数の加熱ユニット構造でもよい。この複数の加熱ユニット構造は、温度を個別又は同時に制御してもよく、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じてその構造を変えてもよい。
【0076】
また、第1の加熱ユニット100及び第2の加熱ユニット200は、反応ガスの接触面又は全表面を保護板構造800で覆うことにより、加熱ユニットと保護板構造800との間の熱接触を良好にし、反応ガスが加熱ユニットと直接に接触しないようにし、加熱ユニットの材料を保護して加熱ユニットの使用寿命を延ばしてもよい。好適には、保護板構造800は、反応物と反応しにくい材料(例えば、石英ガラス、サファイア基板、白金シート、モリブデン金属板など)からなる。さらに好ましくは、保護板材料が熱放射効果を下げるために、低い放射率(emissivity)材料からなってもよい。好ましくは、保護板構造800を交換可能にし、定期的に交換することにより、その上に成長させる堆積物を許容範囲内に維持する。その構造は、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じて変えてもよい。
【0077】
そのため、上述の反応装置500は、上方、下方及び/又は側部に設けたガス導入構造及びガスチャネルを利用して反応物を入れ、均一な気流方式により、第1の加熱ユニットと第2の加熱ユニットとの間に反応物を流動させ、所望の薄膜を形成する。
【0078】
1つの加熱ユニットを有する従来のMOCVDエピタキシャルシステムは、その加熱ユニットを元素の前駆反応物の分解に用いる以外に、薄膜の製作に必要な成長温度を提供する。本発明は、2つ以上の独立した加熱ユニットの装置を有し、第1の加熱ユニットが供給する温度により薄膜材料を成長させる。第2の加熱ユニットの温度は、第1の加熱ユニットの温度より高いため、前駆反応物の熱分解効率を向上させることができる。
【0079】
(GaNバルク成長の実施例)
図6は、低温(14K)でGaN材料の蛍光スペクトルを測定したスペクトル図である。GaNのバンドギャップエネルギは直接バンドギャップエネルギである。このバンドギャップエネルギの値は3.4eVであるため、365nm付近の発光スペクトルはGaN材料のニア・バンド・エッジ・エミッション(near−band−edge emission)の発光波長に属し、GaN材料の好適な蛍光スペクトルは、ニア・バンド・エッジ・エミッションの発光波長のピーク値が約3.4eVである(図6(A)に示す)。GaNは、一般にヘテロ基板材料(例えば、サファイア(Al)基板)上に成長される。GaN及びサファイア基板のC軸格子定数は、それぞれ0.51nm、0.13nmであり、格子ミスマッチ度は16%に達する。適宜なエピタキシャル条件下で成長させない場合(例えば、850℃以下のエピタキシャル温度)、GaN薄膜の品質は一般に好ましくない。図6(a)及び図6(b)から分かるように、ニア・バンド・エッジ・エミッションは発光強度が急激に下がり、蛍光スペクトルは分布範囲が広く、フォトルミネセンス強度は強い黄色スペクトル(yellow emission)であり、ピーク値は約2.2eVであり、半値幅は380meVである(図6(b)に示す)。
【0080】
本発明の一実施例では、MOCVDにより成長したGaN薄膜を例に、従来の1つの加熱ユニットの反応装置と、本発明による2つの独立した加熱ユニットを有する反応装置との違いを説明する。図7に示すように、反応装置の中に前駆反応物であるトリメチルガリウム(trimethylgallium:TMGa)、アンモニア(ammonia:NH)を導入し、基板の成長温度(即ち、従来の反応装置の1つの加熱ユニットの温度及び本発明の第1の加熱ユニットの温度)を、700℃から1130℃に変化させ、2つのシリーズでGaN薄膜成長を行う。2つのシリーズの唯一異なる点は、2つの加熱ユニットを有する反応装置がGaN薄膜を成長させる際、前駆反応物の熱分解効率を向上させるために、第2の加熱ユニットを第1の加熱ユニットより常に高い温度(例えば、850℃〜1130℃)に維持する点である。
【0081】
蛍光スペクトルの積分強度は、通常、光電材料の発光効率(即ち、電子を光子の内部量子効率(internal quantum efficiency)に変換する)と直接の関連性がある。図7は、GaN薄膜の蛍光スペクトル積分強度(integrated photoluminescence intensity)とエピタキシャル温度との変化を曲線で表すグラフである。図7に示すように、900℃以上で高温成長させる場合、従来技術及び本実施形態の反応装置により成長させるGaNバルクの蛍光スペクトル(photoluminescence)発光強度は略同じであり、成長温度による影響がほとんど無い。しかし、成長温度が900℃より低くなると、両者の違いは明らかになる。従来技術により成長させるGaN薄膜の蛍光信号は、成長温度が900℃より低い場合、急激に低下する。750℃の薄膜の発光強度は、高温1130℃の薄膜の一万分の一の信号強度である。成長温度が700℃まで下がると、成長させるGaN薄膜は蛍光信号が全く無い。反対に、本発明が2つの加熱ユニットの反応装置を利用して成長させたGaN薄膜の場合、第1の加熱ユニットの温度が高温の1130℃から700℃に下げて成長させた薄膜の蛍光強度は、高い強度に常に維持され、変化が全く無い。ここで、低温の700℃で成長させた薄膜の発光強度は、1130℃の薄膜に略等しく、現在のところ光学品質が最も優れたMOCVD GaN薄膜を得ることができる。
【0082】
また、発光強度以外に、蛍光スペクトルのニア・バンド・エッジ・エミッションの半値幅も薄膜材料の光学品質を表す重要な参考指標である。半値幅が狭いほど、薄膜トランジスタの構造が好ましくなり、不純物の濃度が低くなるほど、空孔欠陥、転位欠陥、線欠陥などの真性欠陥も少なくなる。
【0083】
図7の右下の挿入図に示すように、従来技術では1130℃で成長させたGaN薄膜の蛍光スペクトルは、ニア・バンド・エッジ・エミッションの半値幅が約11meVであり、エピタキシャル温度が下がるに伴い、半値幅が増大し、900℃で22meVに増大すると、750℃で40meVまで上がり、700℃では光学信号が無いため、半値幅の値が得られない。図7の右下の挿入図に示すように、本発明は2つの加熱ユニットにより成長したGaN薄膜を利用し、成長温度が1130℃から800℃に下がるときに、PLスペクトルの半値幅が12meVから30meVへ僅かに増大し、温度が800℃以下になるとその半値幅が次第に下がり、700℃では約14meVとなり、発光品質が高温で成長させた薄膜に略等しい。本発明の反応装置は、所望の薄膜を成長させることができる。前駆反応物の熱分解及び薄膜成長温度を個別に制御することができるため、前駆反応物の熱分解をより完全に行うことができる。そのため、高温で高品質の薄膜成長を妨げない上、低い成長温度下でも高品質の薄膜を成長させることができる。
【0084】
(InGaN薄膜成長の実施例)
本発明の別の実施例では、InGaN薄膜の成長を例に説明する。InGaN材料は、GaN光電素子の発光層の材料であるため、GaN素子の発光波長に大きな影響を与える。理論上、InGaN発光層中のIn組成を変えることにより、発光素子の発光波長を紫外線の365nmから赤外線の1800nmに調整する。GaN発光素子の発光波長及び内部量子効率は、主にInGaN発光層の薄膜光電の品質により決定される。そのため、InGaN材料は、GaN光電素子の中で最も重要な材料である。
【0085】
InGaN薄膜組成は、材料自体の特性限界及び成長技術の条件の違いにより、一般に低In組成領域(<40%)、高In組成領域(>80%)及び中間In組成領域(40〜80%)の3つの領域に分けられる。従来のMOCVDの技術限界(例えば、高In揮発特性及び低NHの分解率の限界)により、良好な光学品質の低In組成のInGaN薄膜は、通常700〜800℃の高温のみで成長されるが、薄膜が高温成長されるため、高In組成のInGaN薄膜の成長が容易でなく、一般にIn組成が40%より低い。高In組成のInGaN薄膜は、In含量が高いため、低温の550℃〜650℃で成長させなければならず、成長薄膜の光学品質は良好であるが、全体的に高InのInGaN薄膜光学品質は、低In組成のInGaN薄膜より遥かに低く、素子の量産に必要な薄膜品質に達しない。InGaN中間組成の薄膜は、上述の薄膜成長の制限要素以外に、混和性が低い問題も考慮しなければならない。InGaNは、成長温度が高いほど、中間組成の薄膜を合成させることが困難となる。しかし、エピタキシャル温度を低減させた場合、中間組成のInGaN薄膜を合成させることができるが、所望の光学性質を得ることができない。
【0086】
図8は、本発明の実施例による2つの加熱ユニットを有する反応装置によりInGaN薄膜のIn組成と、発光波長の変化とを示すグラフである。従来技術により成長させたInGaN薄膜と比較するため、特に現在の所、文献データで探すことが可能な優秀なInGaN研究チームであるカンサス・ユニバーシティー(Kansas University)のH.X.Jiang教授の研究データも図面に収録している。図8は、各サンプルのエピタキシャル温度を示す。初歩の実験データでは、従来技術と本発明の反応装置により成長させるInGaNの組成範囲が類似している(約10%〜40%)ことを表しているが、本発明が成長させる高In組成のInGaN薄膜の発光波長は、680nmの赤色光まで伸ばしたり、さらには740nmの近赤外線波長まで伸ばすこともできる。現在の従来技術で成長させることができるInGaN薄膜の波長は約650nmまでしか達成できないことから分かるように、本発明の反応装置が成長することができる波長帯域は、従来技術の問題点を克服することができる。
【0087】
InGaN材料の発光波長及びそれが対応する発光強度は、光電メーカにとって関心があり、上述の本発明と、H.X.Jiang教授が研究した従来技術により成長させたInGaNシリーズ薄膜の相対的な発光強度と発光波長との変化曲線のグラフを図9に示す。従来技術を利用して成長させたInGaN薄膜は、1つの加熱ユニットを有し、HNの分解率が低いため、それが成長させるInGaN薄膜の発光強度は、発光波長の増加に伴い、インデックス型に低減する。発光波長が590nmである発光強度は僅かに370nmの2千分の1であり、様々なInGaN薄膜組成を成長させることができるが、波長が650nmより大きな光学信号を形成することは容易でない。一方、本発明は、2つの独立した加熱ユニットにより成長させたInGaN薄膜の発光強度は大幅に変化しない。ここで、発光波長が420nm〜740nmに増大すると、発光強度が元の5分の1程度にまで低下する。特に従来技術では、発光性質を有し、650nmより高い発光波長のInGaN薄膜を成長させることはできないが、本発明が成長させるInGaN薄膜は、発光波長を少なくとも740nmまで伸ばすため、発光強度が急激に下がる虞がない。
【0088】
前述したように、発光強度以外に、蛍光スペクトルの半値幅も光学品質の優劣を判断するのに重要な指標である。図9の右下の挿入図に示すように、従来技術により成長させるInGaN薄膜蛍光スペクトルの半値幅値は、発光波長の増加に伴い大幅に増加する。例えば、発光波長420nmの半値幅140nmから発光波長590nmの半値幅300nmに増加する。しかし、本発明が成長させるInGaN薄膜の半値幅は、僅かにゆっくり増加するだけであり、発光波長740nmの半値幅は僅か180nmである。
【0089】
そのため、本発明が開示する反応装置は、独立した温度制御の加熱ユニットにより、基板上に薄膜構造を成長させ、この構造は、単層薄膜及び多層薄膜構造、ホモ構造、ダブルヘテロ構造、多重量子井戸構造、ナノ構造(例えば、量子効率を有する量子ドット)などの構造でもよく、その構造中の薄膜層又はナノ構造は、少なくとも1種の固定された化学計量割合の成分組成の一元、二元、三元、四元又は多元化合物からなり、IA、IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA族の元素を含み、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、AlP、AlSb、AlN、GaP、GaAs、GaN、GaS、GaSb、InN、InP、InAs、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、PbSe、PbTe、CuO、AlGaAs、AlGaN、AlGaP、AlInN、InGaN、InGaAs、GaAsP、GaAlAs、GaAsN、InGaAsP、InAlGaAs、AlGaAsP又はAlInGaPから構成される薄膜を含む。この薄膜は、ドーピングp型元素、n型元素又は同価電性元素(electro−equivalent element)でもよく、本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で、実際の必要に応じてその構造を変えることができる。
【0090】
従来技術では1つの加熱ユニットを有する反応装置は、加熱ユニットの温度を、薄膜製造の成長温度として用いる以外に、前駆反応物の熱分解の温度としても用いるため、前駆反応物の熱分解温度が高い場合、製造する薄膜材料は低温で分解し易く、互いの温度制限により、低温で薄膜をエピタキシャル製造する必要があった。しかし、熱分解温度が低すぎるため、前駆反応物の熱分解が不完全となった結果、薄膜品質が低下し、高性能な電子又は光電素子の薄膜を製造することができなかった。
【0091】
そのため、本発明が開示する反応装置は、それぞれ個別に温度制御を行うことが可能な2つの加熱ユニットを利用し、第2の加熱ユニットと第1の加熱ユニットとを互いに向き合うように配置し、第1の加熱ユニットの温度を薄膜の成長温度として用い、第2の加熱ユニットの温度を主に元素の前駆反応物の熱分解を増進するために用いる。そのため、本発明が開示する反応装置を利用した場合、様々な種類の高品質の薄膜を成長させることができる。このように、前駆反応物の熱分解と薄膜成長温度とを別々に制御することができるため、一般の低い反応物の熱分解温度及び高い薄膜成長温度の薄膜とを成長させることができるだけでなく、高い反応物の熱分解温度及び低い薄膜成長温度の薄膜とを成長させることもできる。第2の加熱ユニットの設置は、本発明が開示する反応装置により、前駆反応物の熱分解をより完全に行うことができるため、高温で高品質の薄膜を成長させるのを妨げない上、低い成長温度で高品質の薄膜を形成することもできる。
【0092】
そのため、本発明の反応装置は、低温成長薄膜の特性を備え、様々な種類の光電素子及び電子素子(例えば、発光ダイオード、レーザダイオード、ホトディテクター、ソリッド・ステート光源、薄膜ソーラバッテリなどを含む)を改善し、シリコン、シリコン・ゲルマニウム、ポリシリコン(LTPS)などの集積回路素子の品質を改善することができる。
【0093】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と範囲を脱しない範囲内で変更や修正を加えることができる。従って、本発明による特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0094】
100 第1の加熱ユニット
150 反応領域
200 第2の加熱ユニット
300 基板
400 ガス導入構造
500 反応装置
700 ガスチャネル
800 保護板構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板上に薄膜を形成する反応装置であって、
第1の加熱ユニット及び第2の加熱ユニットを備え、
前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとが向かい合うように配置して反応領域を形成し、前記第1の加熱ユニットの内側面と前記第2の加熱ユニットの内側面とにより角度が形成され、前記第1の加熱ユニットの温度と前記第2の加熱ユニットの温度とを個別に制御し、
前記第1の加熱ユニット上に前記少なくとも1つの基板を配置し、前記少なくとも1つの基板が前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとの間に位置し、前記第1の加熱ユニット上の前記少なくとも1つの基板上に薄膜を形成することを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとからなる角度は調整可能なことを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとの間の最小距離は数μm〜300mmであることを特徴とする請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットは、接触式加熱方式又は非接触式加熱方式により温度を制御することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットは、液冷方式又は空冷方式を含む冷却方式により温度を制御することを特徴とする請求項4に記載の反応装置。
【請求項6】
前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットは、感熱抵抗線加熱、高周波感応加熱、紫外線ランプ加熱、可視光線ランプ加熱又は遠赤外線ランプ加熱により温度を制御することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記基板は、ガラス基板、窒化ガリウム基板、酸化アルミニウム基板、炭化珪素基板、ガリウム砒素基板、リン化インジウム基板及びシリコン基板からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記薄膜は、IA、IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB、IIB、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA族の元素で組成される1つの元素薄膜又は2元以上の薄膜からなることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記薄膜には、p型元素、n型元素又は同価電性元素がドーピングされていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの基板は回転することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項11】
個別に温度を制御する複数の第1の加熱ユニット及び複数の第2の加熱ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記反応装置に反応物を入れるガス導入構造をさらに備えることを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記反応物は、前記第1の加熱ユニットと前記第2の加熱ユニットとの隙間から前記反応領域に入れられることを特徴とする請求項12に記載の反応装置。
【請求項14】
前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットのうちの少なくとも何れか1つは、その中に形成された少なくとも1つのガスチャネルを含み、少なくとも一部又は全部の前記反応物が、前記少なくとも1つのガスチャネルを介して前記反応領域に入れられることを特徴とする請求項12に記載の反応装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのガスチャネルは、前記少なくとも一部の前記反応物がそれぞれ分かれて前記反応領域に入る複数のガスチャネルであることを特徴とする請求項14に記載の反応装置。
【請求項16】
前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットに反応物が接触しないように、前記第1の加熱ユニット及び前記第2の加熱ユニットに配置される保護板構造をさらに備えることを特徴とする請求項1から15の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項17】
前記第2の加熱ユニットの温度は、前記第1の加熱ユニットの温度より高いことを特徴とする請求項1から16の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項18】
前記反応装置は化学気相成長反応装置であることを特徴とする請求項1から17の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項19】
前記反応装置は有機金属化学気相成長反応装置であることを特徴とする請求項1から18の何れか1項に記載の反応装置。
【請求項20】
前記薄膜は、GaN、InN、Aln、GaInN、AlGaN、AlInN、AlGaInN又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1から19の何れか1項に記載の反応装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−139012(P2011−139012A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115601(P2010−115601)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】