説明

口腔内測定装置及び口腔内測定システム

【課題】装置のサイズを大きくすることなく、口腔内を高精度に測定することを可能にする口腔内測定装置及び口腔内測定システムを提供する。
【解決手段】口腔内の少なくとも歯を含む被測定物に光を照射する投光部と、前記被測定物で反射された光を集光させるレンズ系部と、前記レンズ系部が集光した光の焦点位置を変化させる焦点位置可変機構と、前記レンズ系部を通過した光を撮像する撮像部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内を直接測定する口腔内測定装置及び口腔内測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インレー、クラウン、ブリッジ等の歯科用補綴物の作製方法としては、ロストワックス法により金属材料やセラミックス材料を鋳造して作製する方法が一般的に採用されている。
【0003】
しかしながら、近年、前記ロストワックス法に代わる歯科用補綴物の作製方法として、光学三次元カメラを用いて歯及び歯肉の口腔内を測定した後、CAD/CAMシステムを用いて歯科用補綴物を設計及び作製するシステムが注目されている。このシステムの代表的な例として、例えば、セレックシステムがある。
【0004】
このシステムにおいては、支台歯や、窩洞を形成した歯牙、隣在歯、対合歯などの形状を、光学三次元カメラを用いて口腔内で直接読み取ることにより、歯及び歯肉の口腔内測定を行う。前記光学三次元カメラには、位相シフト法や空間コード化法に代表される非接触三次元測定を行うカメラが用いられる。この種の光学三次元カメラとしては、例えば、特許文献1(特開2000−74635号公報)に記載されたものがある。
【0005】
図21は、従来の光学三次元カメラの構成を示す説明図である。
図21において、従来の光学三次元カメラは、外装ケース101の内部に、光源102と、パターンマスク103と、絞り104,105と、プリズム106と、CCD等のイメージセンサ107とを備えている。
【0006】
光源102から出た光は、パターンマスク103を通過して縞パターンの光となる。この縞パターン光は、絞り104を通過してその光軸を微調整された後、プリズム106によって屈折されて被測定物108に投影される。被測定物108に投影された縞パターン光は、被測定物108の表面に反射されてプリズム106に入射し、プリズム106によって屈折される。当該屈折された光は、絞り105を通過してイメージセンサ107に受光される。
【0007】
このイメージセンサ107にて受光(撮像)された二次元画像のデータを、三角測量法によって三次元座標のデータに変換することで、CAD/CAMシステムによって歯科用補綴物の設計及び製造を行なうための被測定物108の三次元データを得ることができる。
【0008】
この従来の光学三次元カメラとCAD/CAMシステムとを用いることによって、前記ロストワックス法に比べて、効率良く歯科用補綴物を作製することができると共に、口腔内への適合精度に優れた歯科用補綴物を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−74635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の光学三次元カメラでは三角測量法を利用している。そのため、その測定精度を向上させるには、投光側の光軸と撮像側の光軸との見込み角を大きくする必要がある。見込み角を大きくするには、光学三次元カメラのサイズを大きくする必要があるが、光学三次元カメラは口腔内に挿入するものであるため、そのサイズを大きくするのに限界がある。従って、前記従来の光学三次元カメラにおいて測定精度を向上させることは困難である。
【0011】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、装置のサイズを大きくすることなく、口腔内を高精度に測定することを可能にする口腔内測定装置及び口腔内測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、口腔内の少なくとも歯を含む被測定物に光を照射する投光部と、前記被測定物で反射された光を集光するレンズ系部と、前記レンズ系部が集光させる光の焦点位置を変化させる焦点位置可変機構と、前記レンズ系部を通過した光を撮像する撮像部と、を備える、口腔内測定装置を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記焦点位置可変機構として液体レンズを用いる、第1態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記投光部から予め設定された距離離れた位置で焦点を結ぶガイド光を照射するプレスキャン用投光装置を備える、第1又は第2態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、前記プレスキャン用投光装置は、前記投光部から予め設定された距離離れた位置を通る線状の光を照射する、第3態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記プレスキャン用投光装置から照射され前記被測定物に投影された前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より低い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像せず、前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より高い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像する、画像処理部を備える、第3又は4態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記プレスキャン用投光装置から照射され前記被測定物に投影された前記ガイド光の光量分布と理想的なガイド光の光量分布とのズレ量が予め設定された閾値より低い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像せず、前記ズレ量が予め設定された閾値より高い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像する、画像処理部を備える、第3〜5態様のいずれか1つに記載の口腔内測定装置を提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、前記撮像部が撮像した前記焦点位置が異なる複数の画像を用いて、前記被測定物の三次元座標を算出する、画像処理部を備える、第1〜6態様のいずれか1つに記載の口腔内測定装置を提供する。
【0019】
本発明の第8態様によれば、前記画像処理部は、前記焦点位置可変機構の応答速度に関連付けられた前記焦点位置が異なる画像を用いて、前記被測定物の三次元座標を算出する、第7態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0020】
本発明の第9態様によれば、前記投光部は、複数の波長の異なる光を前記口腔内に照射する、第1〜8態様のいずれか1つに記載の口腔内測定装置を提供する。
【0021】
本発明の第10態様によれば、前記波長の異なる光は、500〜565nmの波長の光と、625〜740nmの波長の光とを含む、第9態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0022】
本発明の第11態様によれば、前記歯と前記投光部との間の隙間を一定に保持するための隙間保持用部材を備える、第1〜10態様のいずれか1つに記載の口腔内測定装置を提供する。
【0023】
本発明の第12態様によれば、前記隙間保持用部材は、前記歯と接触する側である先端部が柔らかく、装置に固定された側である本体部が前記先端部よりも硬い2層構造を有する、第11態様に記載の口腔内測定装置を提供する。
【0024】
本発明の第13態様によれば、口腔内の少なくとも歯を含む被測定物に光を照射する投光部と、
前記被測定物で反射された光を集光させるレンズ系部と、前記レンズ系部が集光させた光の焦点位置を変化させる焦点位置可変機構と、前記レンズ系部を通過した光を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した前記焦点位置が異なる複数の画像を用いて、前記被測定物の三次元座標を算出する画像処理部と、を備える、口腔内測定システムを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来技術のように三角測量法を利用しないので、装置のサイズを大きくすることなく、口腔内を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるオーラルスキャナを有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図
【図2】図1に示すオーラルスキャナを下方から見た図
【図3】図1に示すオーラルスキャナを用いて患者の奥歯の表面形状を測定する様子を示す模式斜視図
【図4】図1に示すオーラルスキャナを用いて患者の前歯の表面形状を測定する様子を示す模式斜視図
【図5】図1に示す口腔内測定システムのブロック図
【図6A】図1に示すオーラルスキャナに搭載される液体レンズの模式断面図
【図6B】電圧が印加されていない状態の液体レンズと焦点位置との関係を示す断面図
【図6C】電圧が印加された状態の液体レンズと焦点位置との関係を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態1にかかる口腔内測定システムを用いて口腔内を測定するフローチャート
【図8】被測定物の三次元画像を示す図
【図9】本発明の実施の形態1にかかる口腔内測定システムにおける被測定物の画像撮影のフローチャート
【図10A】液体レンズの屈折力(焦点距離の逆数)と印加電圧と関係を示すグラフ
【図10B】液体レンズの焦点距離と応答時間との関係を示すグラフ
【図11】本発明の実施の形態1にかかる口腔内測定システムにおける三次元画像の合成処理方法を示すフローチャート
【図12A】本発明の実施の形態1におけるフォーカス量の算出の説明図
【図12B】本発明の実施の形態1におけるフォーカス量の算出の説明図
【図13】本発明の実施の形態1にかかるフォーカスピーク位置検出の説明図
【図14】座標を合成するイメージを示す説明図
【図15】画像処理部を内蔵したオーラルスキャナの概略構成を示す説明図
【図16】本発明の実施の形態2にかかるオーラルスキャナを有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図
【図17】図16に示すオーラルスキャナの投光部を下方から見た図
【図18】本発明の実施の形態3にかかるオーラルスキャナの概略構成を示す説明図
【図19】ライン光源が照射するガイド光を示す平面図
【図20】本発明の実施の形態4にかかるオーラルスキャナを有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図
【図21】従来例にかかる光学三次元カメラの構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略している。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる口腔内測定装置(以下、オーラルスキャナという)を有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図である。図2は、図1に示すオーラルスキャナを下方から見た模式図である。
【0029】
図1に示すように、オーラルスキャナ1は、患者の口腔内に直接挿入することが可能なサイズの外装ケース11を備えている。オーラルスキャナ1の外形寸法は、例えば、長さ200mm、幅20mm、高さ25mmである。外装ケース11の先端部には、患者の口腔内において、少なくとも歯を含む被測定物2を鮮明に撮影するための光源として、投光部12が取り付けられている。投光部12としては、発光ダイオード(LED)、レーザ、ハロゲンランプなどが用いられる。そして、投光部12は、例えば図2に示すように、複数個の発光ダイオードが環状に配置された構造である。ここでは、投光部12は、歯のエナメル質の表面反射率が高い500〜565nmの波長域の光を照射するものとする。
【0030】
また、外装ケース11の先端部には、ゴム取付け部13が設けられており、当該ゴム取付け部13には、隙間保持用部材の一例であるゴム14が着脱可能に取り付けられている。ゴム14は、図2に示すように、投光部12に隣接して配置されている。ゴム14は、投光部12と被測定物2との隙間を一定の距離L(例えば5mm)に保つための使い捨て部材であり、衛生上問題のない材料で構成されている。また、ゴム14は、投光部12と被測定物2との隙間を一定に保持できるように所定の硬度を有するが、その先端部は、口腔内で接触する部分の形状に応じて変形できるように柔らかくなっている。例えば、ゴム14は、本体部と先端部とで材質が異なる2層構造のゴムで構成されている。本実施の形態においては、例えば、ゴム14の本体部の硬さがゴム硬度90以下で、ゴム14の先端部の硬さがゴム硬度70以下のものを用いている。なお、ここでいうゴム硬度とは、JIS K 6253に準拠したデュロメータA型によるショア硬度である。
【0031】
オーラルスキャナ1を用いて患者の奥歯の表面形状を測定する場合には、図3に示すように、ゴム14が被測定物2に隣接する部分(例えば、測定対象である歯の隣の歯)に接触するように、オーラルスキャナ1の位置を調整すればよい。
【0032】
なお、ゴム14の取付け位置及び個数は特に限定されるものではなく、被測定物2に応じて適宜設定すればよい。例えば、オーラルスキャナ1を用いて患者の前歯の表面形状を測定する場合には、図4に示すように、オーラルスキャナ1の先端側ではなく、側面に取り付けることが好適である。なお、図3及び図4では、オーラルスキャナ1の構成を簡略化して示している。
【0033】
外装ケース11の内部には、プリズム15と、レンズ系部16と、撮像部の一例であるCCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサ17とが直列に配置されている。
【0034】
プリズム15は、投光部12から被測定物2に照射され、被測定物2によって反射された光を、レンズ系部16に向けて屈折させる。レンズ系部16は、プリズム15によって屈折された光を、イメージセンサ17に焦点を合わせ結像させる。レンズ系部16は、テレセントリックレンズ系であり、撮像面で撮影される画像の大きさが焦点位置によって変化しないように構成されている。レンズ系部16は、円筒形の液体レンズ18を有している。この液体レンズ18は、印加された電圧に応じて焦点位置を変化させることが可能な、焦点位置可変機構の一例である。液体レンズ18の構成については、後で詳しく説明する。
【0035】
プリズム15とレンズ系部16との間には、プレスキャン用投光装置の一例であるスポット光源19が取り付けられている。スポット光源19は、投光部12の先端から予め設定された距離(例えば10mm)離れた位置で焦点を結ぶ(集束する)ように、プリズム15に向けてガイド光を照射するよう構成されている。
【0036】
イメージセンサ17は、レンズ系部16を通過した光を撮像(受光)する。イメージセンサ17にて撮像された二次元画像のデータは、転送ケーブル20を通じて画像処理部30に転送される。画像処理部30は、パーソナルコンピュータなどの外部機器40に格納されている。画像処理部30は、転送された二次元画像のデータを、三次元座標のデータに変換して、歯科用補綴物の設計及び製造を行なうための被測定物2の三次元データを得る。画像処理部30は、図5に示すように、撮影制御部31と、液体レンズ制御部32と、画像記憶部33と、二次元画像処理部34と、低精度三次元画像変換部35と、三次元画像記憶部36と、三次元画像判定部37と、高精度三次元画像変換部38と、プレスキャンデータ記憶部39とを備えている。画像処理部30の各部の機能については、後で詳しく説明する。
【0037】
次に、図6A〜図6Cを用いて、液体レンズ18の構成及び機能について詳しく説明する。図6Aは、液体レンズの構成を示す断面図である。図6Bは、電圧が印加されていない状態の液体レンズと焦点位置との関係を示す断面図である。図6Cは、電圧が印加された状態の液体レンズと焦点位置との関係を示す断面図である。
【0038】
図6Aに示すように、液体レンズ18は、2枚の保護ガラス51,51と、当該2枚の保護ガラス51,51の間に積層されたオイル層52及び水溶液層53と、これらの周辺部に配置され電圧を印加するための電極部54,55と、電極部54,55間を絶縁する絶縁部57,58とを備えている。電極部54,55には、可変電圧源59が接続されている。
【0039】
液体レンズ18は、可変電圧源59により電極部54,55に印加される電圧が変化することで、オイル層52の曲率半径と厚みが変化し、液体レンズ18を通過した光60の焦点位置を変化させる特性を有している。より具体的には、図6Bの状態において電極部54,55に所定の電圧が印加された時、図6Cに示すようにオイル層52の曲率半径と厚みが大きくなる。これにより、図6B及び図6Cに示すように平行光線61,61が液体レンズ18に入射された時、図6Bに示す焦点距離62に対して、図6Cに示す焦点距離63は短くなる。すなわち、電極部54,55に印加する電圧を大きくすることで、焦点距離を短くすることができる。
【0040】
なお、本実施の形態1において、焦点位置可変機構として液体レンズ18を用いたのは、一般的な液体レンズの外形が電極部を含めても10mm以下と小さく、且つ、電圧を印加してから焦点位置の変化が完了するまでの応答速度が約20msec程度と高速であるためである。
【0041】
次に、図1、図5、及び図7を参照しつつ、本実施の形態1にかかる口腔内測定システムによる口腔内の測定方法について説明する。図7は、本実施の形態1にかかる口腔内測定システムを用いて口腔内を測定するフローチャートを示している。
【0042】
まず、患者の口腔内にオーラルスキャナ1をセット(例えば図3及び図4参照)し、歯科医が外部機器40のビデオ撮影開始ボタン(図示せず)を押すなどすることにより、当該オーラルスキャナ1による口腔内のビデオ撮影を開始する(ステップS1)。この時、ゴム14により被測定物2と投光部12との距離Lが一定(例えば5mm)に保たれる。オーラルスキャナ1によるビデオ撮影は、撮影制御部31の制御により、投光部12から光を照射しながら、被測定物2に反射された光をイメージセンサ17で撮影することにより行われる。オーラルスキャナ1により撮影された映像は、転送ケーブル20を通じて撮影制御部31に転送され、撮影制御部31の制御により外部機器40の表示部41に映し出される。ここでは、オーラルスキャナ1は、通常のビデオカメラと同様の動作を行う。
【0043】
次いで、表示部41に被測定物2が正確に映し出されるようにオーラルスキャナ1を移動させ、映し出された被測定物2の映像が良好であるか否かを確認する(ステップS2)。例えば、投光部12として出力3WのLED光源を用い、256階調で輝度値を表現した場合には、被測定物2(例えば歯肉)の平均階調が40階調以上であれば良好と判断する。なお、この判断は、歯科医がしてもよいし、画像処理部30で自動的に行うようにしてもよい。被測定物2の映像が良好でなければ、良好となるように各種設定や測定位置を調整する。被測定物2の映像が良好であれば、被測定物2の画像を撮影する(ステップS3)。この撮影は、例えば、診療台に設けられたフットスイッチを歯科医が踏むことでできるようにするとよい。
【0044】
被測定物2の画像データ(二次元静止画像)を1つ得た後、液体レンズ制御部32の制御により液体レンズ18に印加する電圧を変更して、液体レンズ18を通過した光の焦点位置を変化させる。その後、撮影制御部31の制御により被測定物2の画像を撮影する。この動作を繰り返して、被測定物2の画像データを複数得る。この被測定物2の画像の連続撮影は、後で詳しく説明するように、撮影制御部31の制御により自動的に行われる。得られた被測定物2の画像データは、焦点位置と関連付けられて画像記憶部33に保存される。なお、ここで得られる画像は、焦点位置がイメージセンサ17の撮像面と一致しているもの以外は、いわゆる画像ぼけを生じる。
【0045】
次いで、以下のようにして、前記得られた被測定物2の複数の画像データを合成する。
まず、二次元画像処理部34が、画像記憶部33に保存された前記画像データに対して、階調補正やノイズ除去、アナログ信号からデジタル信号への変換などの二次元画像処理を行う(ステップS4)。
【0046】
次いで、低精度三次元画像変換部35が、前記二次元画像処理後の複数の画像のデータのうちの例えば10%〜50%のデータを、DFD(Depth from Defocus)法により三次元座標に変換したのち合成する。これにより、低精度の三次元画像が得られる(ステップS5)。この低精度三次元画像は、三次元画像記憶部36に保存される。前記三次元画像の合成処理方法については、後で詳しく説明する。
【0047】
次いで、三次元画像判定部37が、前記低精度三次元画像が良好であるか否かを判定する(ステップS6)。
三次元画像判定部37が、前記低精度三次元画像が良好でないと判定したとき、前記ステップS1に戻る。一方、三次元画像判定部37が、前記低精度三次元画像が良好であると判定したとき、高精度三次元画像変換部38が、前記二次元画像処理後の全ての画像データを、DFD法により三次元座標に変換したのち合成する。これにより、図8に示すような高精度の三次元画像が得られる(ステップS7)。得られた高精度三次元画像は、三次元画像記憶部36に保存されるとともに、表示部41に表示される(ステップS8)。
【0048】
なお、前記ステップS6,S7は、得られた三次元画像が撮影不良などに起因して被測定物2の表面形状と異なり、当該三次元画像を得るまでにかかる時間が無駄になる場合があるために行うものであり、必ずしも必要な工程ではない。
また、上記ステップS7の低精度三次元画像の良否の判定は、表示部41に低精度三次元画像を表示して歯科医が行うようにしてもよい。すなわち、この場合、歯科医は、自分の目で見た被測定物2の形状と、低精度三次元画像の被測定物2の形状とを見比べることで、低精度三次元画像の良否の判定を行う。
【0049】
次に、図1、図5、及び図9を参照しつつ、被測定物2の画像撮影のフローについて説明する。図9は、本実施の形態1にかかる口腔内測定システムにおける被測定物の画像撮影のフローチャートである。なお、被測定物2の画像撮影は、特に断りの無い限り撮影制御部31の制御の下に行われる。
【0050】
まず、表示部41に被測定物2が正確に映し出されるように、オーラルスキャナ1を移動させる。そして、映し出された被測定物2の映像が良好(ステップS2)となった時、歯科医が被測定物2の映像を参照しながら、プレスキャンする位置(XY座標)を設定する。このプレスキャン位置の設定は、特に限定されないが、例えば、表示部41をタッチパネル式とし、当該表示部41に映し出された被測定物2の所望の位置を歯科医が押圧することに行うことができる。前記設定したプレスキャン位置(XY座標)に向けてスポット光源19からガイド光を照射して、被測定物2の概略位置(XYZ座標)を測定する(ステップS11)。
【0051】
ガイド光は、前述したように、プリズム15により屈折され、投光部12から所定の深さ(Z方向位置)で焦点を結ぶ(集束する)ように照射される。ここでは、所定の深さを投光部12から10mmとする。前記のように照射されたガイド光は、被測定物2のガイド光反射点で反射されてプリズム15に入射し、当該プリズム15により屈折され、液体レンズ18を通過してイメージセンサ17にて撮影される。このイメージセンサ17にて撮影された被測定物2の画像ぼけ量に基づいて、前記ガイド光反射面の深さを求める。この動作を、ここではプレスキャンという。被測定物2の画像ぼけ量と前記所定の深さとの関係は、プレスキャンデータ記憶部39に予め記憶されている
【0052】
なお、被測定物2の画像ぼけ量は、被測定物2のガイド光反射面(プレスキャン表面)とガイド光の焦点との距離で決まる。このため、例えば、被測定物2のガイド光反射面が、投光部12から深さ9mmに位置する場合でも、深さ11mmに位置する場合でも同じ画像ぼけ量となる。この被測定物2のガイド光反射面が深さ9mmに位置するか深さ11mmに位置するかの判定は、例えば、前記焦点位置を変化させることで可能である。前記焦点位置を変化させることで、ガイド光反射面が深さ9mmに位置する場合と深さ11mmに位置する場合とで、イメージセンサ17に撮影される画像ぼけ量に違いが生じる。従って、この画像ぼけ量の違いを調べることで、被測定物2のガイド光反射面の位置(深さ)を知ることができる。また、この被測定物2のガイド光反射面の位置(深さ)が分かることで、これから測定する被測定物2の凹みの大きさの概略を知ることができる。これにより、焦点位置を変化させるために液体レンズ18に印加する電圧の範囲を狭めることができ、撮影時間を短縮することができる。
【0053】
なお、ガイド光のスポット径(焦点の径)が大きい場合、被測定物2のプレスキャン表面の形状に影響を受けて、プレスキャンの測定精度が低下するおそれがある。例えば、ガイド光のスポット径が2.0mmであり、プレスキャン表面がガイド光に対して45度傾斜している場合には、プレスキャンの測定精度が2.0mm程度低下することになる。また、オーラルスキャナ1の位置合わせは歯科医が行うので、ガイド光の照射方向に対してプレスキャン表面が常に直交するようにオーラルスキャナ1を保持することは困難である。このため、ガイド光のスポット径は、できる限り小さく(例えば1.0mm以下)することが好ましい。なお、ガイド光のスポット径を小さくすることには、物理的に限界がある。この場合、以下のように処理することが効果的であると考えられる。
【0054】
すなわち、ガイド光の照射方向に対してプレスキャン表面が直交している場合、被測定物2に投影されたガイド光の形状は真円になる。一方、ガイド光の照射方向に対してプレスキャン表面が傾斜している場合、前記ガイド光の形状は例えば楕円になる。すなわち、前記ガイド光の真円度が低いことは、ガイド光の照射方向に対するプレスキャン表面の傾斜角度が大きいことを意味する。このため、歯科医がオーラルスキャナ1の位置を微調整して、前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より高くなるまで、プレスキャンを継続することが好ましい。すなわち、この場合、前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より低い時はイメージセンサ17にて被測定物2を撮影せず、前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より高くなった時にイメージセンサ17にて被測定物2を撮影する。このようにして撮影された被測定物2の画像ぼけ量に基づいて前記深さを調べることで、プレスキャンの測定精度を向上させることができる。なお、本実施の形態1においては、ゴム14が口腔内で接触する部分の形状に応じて変形できるように柔らかくなっているので、歯科医によるオーラルスキャナ1の位置の微調整が容易である。
【0055】
また、被測定物2は歯など複雑な形状の物であるので、ガイド光のスポット径の範囲内でプレスキャン表面が凹凸(Z方向)を有している場合が有り得る。この場合、被測定物2で反射されたガイド光の光量分布は、プレスキャン表面に凹凸が無い場合と異なる。このため、歯科医がオーラルスキャナ1の位置を微調整して、被測定物2に反射されたガイド光の光量分布と理想的なガイド光の光量分布(例えば、プレスキャン表面に凹凸が全くない場合のガイド光の光量分布)とのズレ量が予め設定された閾値より低くなるまで、プレスキャンを継続することが好ましい。すなわち、この場合、前記ズレ量が予め設定された閾値より小さい時にはイメージセンサ17にて被測定物2を撮影せず、前記ズレ量が予め設定された閾値より大きくなった時にイメージセンサ17にて被測定物2を撮影する。このようにして撮影された被測定物2の画像ぼけ量に基づいて前記深さを調べることで、プレスキャンの測定精度を向上させることができる。なお、前記閾値は、例えば、理想的なガイド光の光量分布に対する前記ズレ量の割合が20%以下となるように設定されることが好ましい。これは、前記割合が20%を超えると、処理が複雑になるためである。
【0056】
前記プレスキャン(ステップS11)の終了後、変数T=1をセットし(ステップS12)、液体レンズ制御部32の制御により、液体レンズ18に電圧Vを印加する(ステップS13)。電圧Vと変数Tとは一次関数(V=aT+b(a,bは定数))の関係にある。従って、変数Tの変化に比例してVが変化する。なお、ここでは、V=−2T+53とする。すなわち、変数T=1のとき、液体レンズ18に印加する電圧Vは51Vとなる。液体レンズ18に印加した電圧Vは、画像記憶部33に保存される(ステップS14)。
【0057】
次いで、液体レンズ18に電圧が印加されてから、t0,t1,t2,t3,t4の5つの時間において、液体レンズ18を通過した光をイメージセンサ17にて連続撮影する(ステップS15)。
【0058】
図10Aは、液体レンズ18の屈折力(焦点距離の逆数)と印加電圧との関係を示すグラフであり、図10Bは、液体レンズ18の焦点距離と応答時間との関係を示すグラフである。図10Aに示すように、液体レンズ18の屈折力は、印加電圧と比例関係にある。また、図10Bに示すように、焦点位置が遠く(深く)なる程、液体レンズ18に電圧を印加してから焦点位置の変化が完了するまでの応答時間は長くなる。
【0059】
従って、一定時間間隔で被測定物2を撮影したのでは、焦点距離の間隔が異なることになり、三次元座標への変換に適した画像が得にくい。このため、本実施の形態1においては、図10Bに示すように、焦点距離の間隔が一定になるように撮影タイミングを制御しながら、焦点距離f0,f1,f2,f3,f4の5つの位置に対応したt0,t1,t2,t3,t4の時間で被測定物2を撮影する。t0,t1,t2,t3,t4は、T=1での撮影時間STとして画像記憶部33に保存される(ステップS16)。
【0060】
この撮影動作をT≧i(iは正の整数)となるまで繰り返す(ステップS17,S18)。なお、iは、前記プレスキャンにより得られたデータに基づいて自動的に設定される。例えば、被測定物2のガイド光反射面が投光部12から10mm未満の位置(深さ)に位置する場合、i=3と設定すればよい。この場合、液晶レンズ18に印加する電圧の範囲は47〜51Vとなる。また、被測定物2のガイド光反射面が投光部12から10mm以上の位置(深さ)に位置する場合、i=5に設定すればよい。この場合、液晶レンズ18に印加する電圧の範囲は43〜51Vとなる。
【0061】
T≧iになったとき、撮影された複数の画像nと撮影時間とを互いに関連付けて画像記憶部33に保存させる(ステップS19)。これにより、被測定物2の撮影が完了する。
【0062】
なお、撮影する画像nの数が多いほど、高精度の三次元画像を合成できる。ただし、一般的なCCDのフレームレートと撮影時の手振れを考慮した場合、1秒以内で撮影を完了することが好ましい。このため、イメージセンサ17としてより高速な撮影が可能なCMOSセンサを使用したり、高精度な画像合成が可能なアルゴリズムを用いたりすることが好ましい。
【0063】
次に、図1、図5、及び図11を参照しつつ、三次元画像の合成処理方法について説明する。図11は、本実施の形態1にかかる口腔内測定システムにおける三次元画像の合成処理方法を示すフローチャートである。ここでは一例として、イメージセンサ17として640×480pixelsのCCDを使用するものとして説明する。
【0064】
まず、二次元画像処理部34が画像記憶部33に保存された画像データを取り込む(ステップS21)。
次いで、二次元画像処理部34は、取り込んだ画像データに対して、階調補正やノイズ除去等の前処理を施す(ステップS22)。
次いで、二次元画像処理部34は、前記前処理した信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する(ステップS23)。
次いで、二次元画像処理部34は、前記デジタル信号に変換した画像データを信号画像として画像記憶部33に保存する(ステップS24)。
【0065】
次いで、三次元画像変換部35又は38が、前記信号画像から、焦点位置の算出に用いるための輝度情報(輝度値)を抽出する(ステップS25)。なお、ここでは、焦点位置の算出に用いる情報として輝度情報を例に挙げたが、輝度情報に代わって特定の色情報であってもよい。また、焦点位置の算出に用いる情報として、これらの輝度情報又は色情報の最大値や最小値などを用いても良い。
【0066】
次いで、三次元画像変換部35又は38が、被測定物2の画像撮影のフロー(ステップS19)において保存された1番目の画像(n=1)を選択する(ステップS26)。
次いで、三次元画像変換部35又は38が、画像内のx、y座標を指定するi、jをi=1、j=1にセットする(ステップS27,S28)。
次いで、三次元画像変換部35又は38が、n、i、jで指定された注目画素dn(xi,yj)の輝度を検出する(ステップS29)。
【0067】
次いで、前記注目画素におけるフォーカス量FCn(xi,yj)を算出する(ステップS30)。
図12A及び図12Bは、本実施の形態1におけるフォーカス量の算出の説明図である。n=1の画像における注目画素d1(xi,yj)のフォーカス量FC1(xi,yj)は、当該注目画素に隣接する4つの画素d1(xi,yj+1)、d1(xi−1,yj)、d1(xi,yj−1)、d1(xi−1,yj)を用いて、次式により算出することができる。
【0068】
(数1)
FC1(xi,yj)=d1(xi,yj)−〔d1(xi,yj+1)+d1(xi−1,yj)+d1(xi,yj−1)+d1(xi−1,yj)〕/4
【0069】
前記フォーカス量の算出を、n,i,jの値を変化させ、n≧25,i≧640,j≧480となるまで行う(ステップS31〜S36)。
三次元画像変換部35又は38は、前記算出した各注目画素のフォーカス量を三次元画像記憶部36に保存する(ステップS37)。
【0070】
次いで、三次元画像変換部35又は38は、各画像に関連付けられた焦点距離と前記算出されたフォーカス量とにより、画素毎にフォーカスピーク位置を検出する(ステップS38)。
【0071】
図13は、本実施の形態1におけるフォーカスピーク位置検出の説明図であり、1つの注目画素において、各画像に関連付けられた焦点距離と前記算出したフォーカス量とをプロットした図である。注目画素毎に、図13に示すようにフォーカス量がピークになる位置70がある。三次元画像変換部38又は39は、当該ピーク位置70を検出し、当該ピーク位置70に対応する焦点距離をその注目画素のz座標として三次元画像記憶部36に保存する。すなわち、三次元座標が三次元画像記憶部36に保存される(ステップS39)。
【0072】
次いで、三次元画像記憶部37に保存された三次元座標を合成する(ステップS40)。図14は、座標を合成するイメージを示す説明図である。
以上のステップS21〜S40のフローを行うことにより、図8に示すような三次元画像を得ることができる。
【0073】
本実施の形態1にかかるオーラルスキャナ1を備える口腔内測定システムによれば、液体レンズ18により焦点位置を変化させてイメージセンサ17で撮像することによって、焦点位置が異なる複数の画像を得ることができる。このようにして得た複数の画像は、DFD法により三次元座標に変換することができる。従って、本実施の形態1にかかる口腔内測定システムによれば、従来技術のように三角測量法を利用しないので、装置のサイズを大きくすることなく、口腔内を高精度に測定することができる。なお、本発明の口腔内測定システムにおいて、口腔内を高精度に測定するには、焦点位置が異なる画像を多く撮像すればよい。
【0074】
なお、本発明は本実施の形態1に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本実施の形態1においては、画像処理部30が外部機器40に格納された口腔内測定システムについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像処理部30を、図15に示すようにオーラルスキャナ1Aに内蔵するように構成してもよい。この場合、図15に示すように、オーラルスキャナ1Aが測定した被測定物2の3次元座標のデータを外部に取り出すためのデータ取出機構81をオーラルスキャナ1Aに設ければよい。データ取出機構81は、例えば、ケーブルのコネクタ、無線通信の受発信部、SDメモリのスロットである。また、図15に示すように、オーラルスキャナ1Aに角度を可変可能な小型の表示部82を設けると、表示部41を備える外部機器40にオーラルスキャナ1Aを接続する必要性を無くすことができ、利便性をさらに向上させることができる。
【0075】
また、本実施の形態1においては、プリズム15を設けたが、プリズム15は必ずしも設ける必要はない。
【0076】
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2にかかるオーラルスキャナ1Bを有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図である。図17は、図16に示すオーラルスキャナの投光部を下方から見た模式図である。本実施の形態2にかかる口腔内測定システムが、前記実施の形態1にかかる口腔内測定システムと異なる点は、投光部12に代えて、波長の異なる2種類の光源を有する投光部12Aを備え、画像処理部30内に撮影制御部31に接続された波長制御部(図示せず)を備えている点である。
【0077】
口腔内の形状は、患者1人1人異なるものである。また、虫歯の状態や、歯を構成するエナメル質と象牙質、歯肉の組成の違いなどにより、各組織の光の表面反射率は異なる。このため、1種類の波長の光源では、鮮明な画像を撮像することができず、正確な被測定物2(歯及び歯肉)の形状測定ができない場合がある。この課題を解決するため、従来技術として前述したセレックシステムにおいては、酸化チタンなどのパウダーを口腔内に噴霧して、口腔内の反射率を均一にするようにしている。
【0078】
しかしながら、パウダーを口腔内に均一に噴霧することは困難であり、例えできたとしても、唾液などの影響により、パウダーを口腔内に均一に噴霧した状態を保ち続けることは困難である。また、口腔内の測定後は、前記噴霧したパウダーを洗い流す必要があり、手間がかかる。
【0079】
【表1】

【0080】
前記表1は、投光部から照射される光の波長が500nm〜565nmである場合と、625nm〜740nmである場合において、撮像された被測定物2としてのエナメル質、象牙質、歯肉の画像が鮮明(良好)であったか否かを示すものである。表1においては、○が鮮明であった場合を示し、△がやや不鮮明であった場合を示し、×が不鮮明であった場合を示している。表1に示されるように、500nm〜565nmの波長の光が照射された時、エナメル質は鮮明であったが、象牙質はやや不鮮明であり、歯肉は不鮮明であった。また、625nm〜740nmの波長の光が照射された時、エナメル質は不鮮明であったが、象牙質と歯肉は鮮明であった。すなわち、エナメル質は、500nm〜565nmの波長の光に対して表面反射率が高く、象牙質と歯肉は625nm〜740nmの波長の光に対して表面反射率が高い。
【0081】
このため、本実施の形態2においては、500nm〜565nmの波長の光を投光する第1光源91と、625nm〜740nmの波長の光を投光する第2光源92とで投光部12Aを構成している。これにより、エナメル質、象牙質、歯肉の全てにおいて鮮明な画像を得ることができる。
【0082】
このように構成された投光部12Aを用いて、エナメル質、象牙質、及び歯肉を撮像する場合には、前記ステップS11〜S19(図9)の画像撮影動作を、工程Aと工程Bの2回繰り返して行なえばよい。ここで、工程Aは、第1光源91から光を照射した場合の前記ステップS11〜S19(図9)の工程であり、工程Bは、第2光源92から光を照射した場合の前記ステップS11〜S19(図9)の工程である。
【0083】
また、画像の合成については、例えば、歯の部分と歯肉の部分とを分け、歯の部分には第1光源91から光を照射して撮像した画像を用いて画像合成処理を行い、歯肉の部分には第2光源92から光を照射して撮像した画像を用いて画像合成処理を行えばよい。
【0084】
なお、投光部12Aは、複数(2つ以上)の異なる波長の光を照射できるものであればよい。例えば、投光部12Aは、波長の異なる複数のLEDで構成されてもよい。また、投光部12Aは、離れた位置にあるレーザ光源の光を複数のファイバーで分岐して、当該ファイバーを通じることで波長の異なる光を照射できるように構成されてもよい。また、前記実施の形態1の投光部12に、波長を変位させるフィルタを被せて、複数の異なる波長の光を照射できるようにしてもよい。
【0085】
(実施の形態3)
図18は、本発明の実施の形態3にかかるオーラルスキャナ1Cを有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図である。本実施の形態3にかかる口腔内測定システムが、前記実施の形態1にかかる口腔内測定システムと異なる点は、スポット光源19に代えて、プレスキャン用投光装置の一例であるプレスキャン用光源71と、ミラー72,73と、ラインセンサ74と、を備えている点である。
【0086】
前述したように、オーラルスキャナ1Cの位置合わせは歯科医が行うので、プレスキャン表面は、ガイド光の照射方向に対して通常傾斜することになる。前記実施の形態1においては、ガイド光の真円度等を調べることで、ガイド光の照射方向に対するプレスキャン表面の傾斜角度を調べるようにしている。具体的には、以下のように構成している。
【0087】
プレスキャン用光源71は、スポット光源とライン光源の両方の機能を備えている。すなわち、プレスキャン用光源71は、図19に示すように、投光部12の先端から予め設定された離れた位置で焦点を結ぶようにガイド光71aをプリズム15に向けて照射するとともに、前記位置を通る線状の光71bをプリズム15に向けて照射するよう構成されている。ガイド光71aは、被測定物2で反射されてプリズム15に入射し、当該プリズム15により屈折され、液体レンズ18を通過してイメージセンサ17にて撮影される。線状の光71bは、被測定物2で反射されてプリズム15に入射し、当該プリズム15、ミラー72,73により屈折されてラインセンサ74に受光される。イメージセンサ17にて撮影した画像及びラインセンサ74で受光された光71bの情報は、転送ケーブル20を通じて画像処理部30に送られる。
【0088】
ガイド光71aの照射方向に対してプレスキャン表面が傾斜している状態で線状の光71bが被測定物2に投影されると、線状の光71bは、直線状ではなく、屈曲した線状になる。プレスキャンデータ記憶部39には、被測定物2に投影された光71bの形状とガイド光71aの照射方向に対するプレスキャン表面の傾斜角度との関係が予め記憶されている。画像処理部30は、イメージセンサ17に撮影された被測定物2の画像ぼけ量に基づいて、ガイド光71aの反射点の深さを調べると共に、被測定物2に投影された光71bの形状に基づいて、ガイド光71aの照射方向に対するプレスキャン表面の傾斜角度を調べる。これにより、プレスキャンの測定精度を向上させることができる。
【0089】
なお、線状の光71bの幅W1は、ガイド光71aのスポット径と同様に、できるだけ小さくすること(例えば、1.0mm以下)が好ましい。また、線状の光71bの長さL1が短いとその形状の変化が分かり難いので、例えば20mm以上となるように設定することが好ましい。
【0090】
なお、本実施の形態3において、スポット光源とライン光源とを切り換えるために、透過型の液晶をプレスキャン用光源71とプリズム15との間に配置してもよい。
【0091】
なお、本実施の形態3においては、ガイド光71aの反射点の深さを調べるため、プレスキャン用光源71がスポット光源とライン光源の両方の機能を備えるように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、線状(帯状)ではなく三角柱状の光を照射するライン光源の機能をプレスキャン用光源71が備えることでも、ガイド光71aの反射面の深さを調べることができる。
【0092】
(実施の形態4)
図20は、本発明の実施の形態4にかかるオーラルスキャナ1Dを有する口腔内測定システムの概略構成を示す説明図である。本実施の形態4にかかる口腔内測定システムが前記実施の形態1にかかる口腔内測定システムと異なる点は、投光部12a,12bと、ゴム14a,14bとを、図の上下方向にどちらも備えている点である。
【0093】
すなわち、本実施の形態4のオーラルスキャナ1Dは、歯の噛み合せを考慮するために、上下の歯の形状を測定できる構成となっている。具体的な構成としては、プリズム15が軸15aを回転軸として回転可能な構成となっており、図20に示す状態で下歯側の投光部12bを用いた下歯の測定が可能であり、プリズム15が回転した状態で上歯側の投光部12aを用いた上歯の測定が可能である。
【0094】
また、オーラルスキャナ1の上下方向どちらにもゴム14a,14bを備えているので、上歯と下歯でゴム14a,14bを噛み合せることで、歯の噛み合せ状態となる位置でオーラルスキャナ1を固定する事ができる。そのため、歯の噛み合せ状態における上歯と下歯の形状を測定できる。
【0095】
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、装置のサイズを大きくすることなく、口腔内を高精度に測定することが可能であるので、特に、歯科用補綴物を設計及び作製するシステムに有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 オーラルスキャナ(口腔内測定装置)
2 被測定物
11 外装ケース
12 投光部
13 ゴム取付け部
14 ゴム
15 プリズム
16 レンズ系部
17 イメージセンサ(撮像部)
18 液体レンズ(焦点位置可変機構)
19 スポット光源(プレスキャン用投光装置)
20 転送ケーブル
30 画像処理部
31 撮影制御部
32 液体レンズ制御部
33 画像記憶部
34 二次元画像処理部
35 低精度三次元画像変換部
36 三次元画像記憶部
37 三次元画像判定部
38 高精度三次元画像変換部
39 プレスキャンデータ記憶部
40 外部機器
41,82 表示部
71 プレスキャン用投光装置
81 データ取り出し機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内の少なくとも歯を含む被測定物に光を照射する投光部と、
前記被測定物で反射された光を集光するレンズ系部と、
前記レンズ系部が集光させる光の焦点位置を変化させる焦点位置可変機構と、
前記レンズ系部を通過した光を撮像する撮像部と、
を備える、口腔内測定装置。
【請求項2】
前記焦点位置可変機構として液体レンズを用いる、請求項1に記載の口腔内測定装置。
【請求項3】
前記投光部から予め設定された距離離れた位置で焦点を結ぶガイド光を照射するプレスキャン用投光装置を備える、請求項1または2に記載の口腔内測定装置。
【請求項4】
前記プレスキャン用投光装置は、前記投光部から予め設定された距離離れた位置を通る線状の光を照射する、請求項3に記載の口腔内測定装置。
【請求項5】
前記プレスキャン用投光装置から照射され前記被測定物に投影された前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より低い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像せず、前記ガイド光の真円度が予め設定された閾値より高い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像する、画像処理部を備える、請求項3又は4に記載の口腔内測定装置。
【請求項6】
前記プレスキャン用投光装置から照射され前記被測定物に投影された前記ガイド光の光量分布と理想的なガイド光の光量分布とのズレ量が予め設定された閾値より低い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像せず、前記ズレ量が予め設定された閾値より高い時、前記レンズ系部を通過した光を前記撮像部により撮像する、画像処理部を備える、請求項3〜5のいずれか1つに記載の口腔内測定装置。
【請求項7】
前記撮像部が撮像した前記焦点位置が異なる複数の画像を用いて、前記被測定物の三次元座標を算出する、画像処理部を備える、請求項1〜6のいずれか1つに記載の口腔内測定装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記焦点位置可変機構の応答速度に関連付けられた前記焦点位置が異なる画像を用いて、前記被測定物の三次元座標を算出する、請求項7に記載の口腔内測定装置。
【請求項9】
前記投光部は、複数の波長の異なる光を前記口腔内に照射する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の口腔内測定装置。
【請求項10】
前記波長の異なる光は、500〜565nmの波長の光と、625〜740nmの波長の光とを含む、請求項9記載の口腔内測定装置。
【請求項11】
前記歯と前記投光部との間の隙間を一定に保持するための隙間保持用部材を備える、請求項1〜10のいずれか1つに記載の口腔内測定装置。
【請求項12】
前記隙間保持用部材は、前記歯と接触する側である先端部が柔らかく、装置に固定された側である本体部が前記先端部よりも硬い2層構造を有する、請求項11に記載の口腔内測定装置。
【請求項13】
口腔内の少なくとも歯を含む被測定物に光を照射する投光部と、前記被測定物で反射された光を集光させるレンズ系部と、前記レンズ系部が集光させた光の焦点位置を変化させる焦点位置可変機構と、前記レンズ系部を通過した光を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記焦点位置が異なる複数の画像を用いて、前記被測定物の三次元座標を算出する画像処理部と、
を備える、口腔内測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図8】
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【図12A】
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【公開番号】特開2010−194296(P2010−194296A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254104(P2009−254104)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】