回転機の制御装置
【課題】車載主機としてモータジェネレータ10を備えるものにあって、車両の接近に注意を促すことが困難なこと。
【解決手段】操作状態決定部34の評価関数Jは、電圧ベクトルVi(i=0〜7)のそれぞれに対応する予測電流ide,iqeと指令電流idr,iqrとの差が小さいほど、該当する電圧ベクトルを高く評価する。評価関数Jの評価が最も高い電圧ベクトルが次回の操作状態に設定される。車両の低速度走行時において、操作状態の更新可能周期を低下させることで、モータジェネレータ10やインバータIVの生じるノイズを低周波側にシフトさせる。
【解決手段】操作状態決定部34の評価関数Jは、電圧ベクトルVi(i=0〜7)のそれぞれに対応する予測電流ide,iqeと指令電流idr,iqrとの差が小さいほど、該当する電圧ベクトルを高く評価する。評価関数Jの評価が最も高い電圧ベクトルが次回の操作状態に設定される。車両の低速度走行時において、操作状態の更新可能周期を低下させることで、モータジェネレータ10やインバータIVの生じるノイズを低周波側にシフトさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と車載主機としての回転機の端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作対象とし、前記電力変換回路の操作状態を設定した場合についての前記回転機の制御量を前記回転機のモデルに基づき予測する予測手段と、前記予測された制御量と該制御量の指令値とに基づき、前記電力変換回路の実際の操作状態を決定し、該決定された操作状態となるように前記電力変換回路を操作する操作手段とを備えてモデル予測制御によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載主機として電動機が搭載された車両が実用化され、普及しつつある。電動機を車載主機とする場合、電動機自体やこれに接続されるインバータから生じるノイズは、インバータのスイッチング周波数等によって変化する。そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、キャリアと指令電圧との大小比較に基づきインバータを操作するに際し、キャリアの周波数を切り替えることで、上記ノイズを抑制することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−303288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように電動機は、内燃機関と比較してノイズを制御によって低減しやすいため、一般に内燃機関のみを搭載した車両と比較して電動機を搭載する車両は静音性が高いというメリットを有する反面、こうしたメリットが新たな問題を生じさせている。すなわち、停車状態からの発進時や低速走行時において、自動車が接近していることが歩行者に気づかれにくいという問題を生じさせている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車載主機として回転機を備えるものにあって、車両の接近に注意を促すことのできる回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と車載主機としての回転機の端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作対象とし、前記電力変換回路の操作状態を設定した場合についての前記回転機の制御量を前記回転機のモデルに基づき予測する予測手段と、前記予測された制御量と該制御量の指令値とに基づき、前記電力変換回路の実際の操作状態を決定し、該決定された操作状態となるように前記電力変換回路を操作する操作手段とを備えてモデル予測制御によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、車両の走行速度が規定速度以下となることを条件に、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を強制的に低下させる低下手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記モデル予測制御の制御性を十分に確保する上で実現されるスイッチング状態の切り替え周波数は、人に感知されやすい周波数よりも高くなる傾向がある。この点、上記発明では、低下手段を備えることで、車両の走行速度が規定速度以下となることで車輪と路面との摩擦音が小さくなる状況下、回転機や電力変換回路の生じる音が人に感知されやすいものとなるようにすることができる。このため、車両の接近に注意を促すことができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低下手段は、前記電力変換回路の操作に起因して生じる音圧についての0.5〜8kHzの周波数領域における最大値が該領域に隣接する高周波領域における値と比較して大きくなるようにするものであることを特徴とする。
【0010】
「0.5〜8kHz」の周波数領域の音波は、人に特に感知されやすい。上記発明では、この点に鑑み、上記設定とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記操作状態の更新可能周期の伸長操作とする伸長操作手段を備えることを特徴とする。
【0012】
スイッチング状態の切り替え周波数は、更新可能周期の逆数に比例する。このため、更新可能周波数を伸長させることで、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記操作手段は、前記予測された制御量と該制御量の指令値との偏差が閾値以下となることを条件に、現在のスイッチング状態を維持する維持手段を備え、前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記閾値の増加操作とする増加操作手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上記維持手段を備える場合、閾値が小さいほど上記偏差が閾値を上回るまでに要する時間が短くなると考えられる。このため、閾値を大きくすることで、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の発明において、前記低下手段は、前記強制的な低下のための操作量の変更量を変動させる変動手段を備えることを特徴とする。
【0016】
特定の周波数の音圧のみが大きくなる場合、人にとって不快感を伴いやすいことが知られている。上記発明では、この点に鑑み、操作量の変更量を変動させることで、音圧が極大値となる周波数を変動させることなどができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記モデル予測制御における前記制御量の指令値は、前記回転機を流れる電流を含み、前記低下手段による低下制御時において、前記電流の指令値を、前記回転機の効率が低下するように変更する効率低下手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
音圧の大きさは、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅が大きいほど大きくなる。上記発明では、この点に鑑み、効率低下手段を備えることで、回転機のトルクを過度に大きくすることなく電流のリプルの振幅を増大させることができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記効率低下手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする。
【0020】
回転機のトルクが小さいほど、回転機を流れる電流が小さいことからスイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の重量が小さいほど要求されるトルクが小さくなることから、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の走行状況は、回転機のトルクと相関を有する。上記発明では、この点に鑑み、電流のリプルの振幅の大小に起因した音圧の大小を把握しつつ効率の低下量を可変設定する。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記回転機および前記電力変換回路の少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記効率低下手段は、前記温度検出手段によって検出される温度が規定温度以上となる場合に前記効率の低下を制限することを特徴とする。
【0022】
効率が低下すると、電力変換回路や回転機において熱の発生量が増加する。上記発明では、この点に鑑み、温度が上昇することで効率の低下を制限する。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記複数の電圧印加手段は、電池を備えて構成されており、前記電池の残存容量が少ない場合、前記効率の低下を制限する容量確保手段を備えることを特徴とする。
【0024】
効率が低下するほど、電池の残存容量の減少速度が大きくなる。上記発明では、この点に鑑み、残存容量が少ない場合に効率の低下を制限する。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項8または9記載の発明において、前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備え、前記変動トルク設定手段は、前記効率の低下が制限される状況下、前記トルクの指令値を周期的に変化させる処理を行うことを特徴とする。
【0026】
トルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を要求トルクとする場合、トルクの指令値は要求トルクよりも大きくなることがあり、そのときの電流のリプルの振幅はトルクを周期的に変化させない場合と比較して大きくなる。このため、効率を低下させることなく、音圧を大きくすることができる。
【0027】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0028】
トルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を要求トルクとする場合、トルクの指令値は要求トルクよりも大きくなることがあり、そのときの電流のリプルの振幅はトルクを周期的に変化させない場合と比較して大きくなる。このため、音圧を大きくすることができる。
【0029】
請求項12記載の発明は、請求項10または11記載の発明において、前記変動トルク設定手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする。
【0030】
回転機のトルクが小さいほど、回転機を流れる電流が小さいことからスイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の重量が小さいほど要求されるトルクが小さくなることから、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の走行状況は、回転機のトルクと相関を有する。上記発明では、この点に鑑み、電流のリプルの振幅の大小に起因した音圧の大小を把握しつつトルクの周期的な変化量を可変設定する。
【0031】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、前記低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記スイッチング状態の切り替え周波数の低下量を可変設定することを特徴とする。
【0032】
上記発明では、検出結果に基づき低下量を可変設定することで、外部の音圧の極大値とスイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧の極大値との周波数を相違させる制御や、外部の音圧よりもスイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧の方が大きくなる制御をすることができる。
【0033】
請求項14記載の発明は、請求項6〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、前記効率低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする。
【0034】
上記発明では、検出結果に基づき効率の低下量を可変設定することで、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
【0035】
請求項15記載の発明は、請求項10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、前記変動トルク設定手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする。
【0036】
上記発明では、検出結果に基づきトルクの周期的な変化量を可変設定することで、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
【0037】
請求項16記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路は、直流電源の正極および負極のそれぞれに前記回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備えるものであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】インバータの操作状態を表現する電圧ベクトルを示す図。
【図3】上記実施形態にかかる規範スイッチング遷移を示す図。
【図4】同実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す流れ図。
【図5】上記モデル予測制御における電流の予測処理の手順を示す流れ図。
【図6】上記モデル予測制御における電圧ベクトルの変更検討処理の手順を示す流れ図。
【図7】モデル予測制御の制御周期と音圧分布との関係の計測結果を示す図。
【図8】同実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図9】第2の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図10】第3の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図11】トルクと音圧分布との関係の計測結果を示す図。
【図12】第4の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図13】第5の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図14】第6の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図15】第7の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図16】第8の実施形態にかかる効率の低下処理の制限処理の手順を示す流れ図。
【図17】第9の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図18】第10の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を車載主機としての回転機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。モータジェネレータ10は、車載主機であり、その回転軸は、駆動輪に機械的に連結されている。
【0041】
モータジェネレータ10は、インバータIVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
【0042】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の回転角度(電気角θ)を検出する回転角度センサ14を備えている。また、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16を備えている。更に、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ18を備えている。
【0043】
上記各種センサの検出値は、図示しないインターフェースを介して低電圧システムを構成する制御装置20に取り込まれる。制御装置20では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作する信号が、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnである。
【0044】
以下では、制御装置20によって行なわれる処理について、「1.モデル予測制御を用いた制御量の制御」、「2.音圧制御」の順に説明する。
「1.モデル予測制御を用いた制御量の制御」
上記制御装置20は、モータジェネレータ10のトルクを要求トルクTrに制御すべく、インバータIVを操作する。詳しくは、要求トルクTrを実現するための指令電流となるようにインバータIVを操作する。すなわち、本実施形態では、モータジェネレータ10のトルクが最終的な制御量となるものであるが、トルクを制御すべく、モータジェネレータ10を流れる電流を直接の制御量としてこれを指令電流に制御する。特に、本実施形態では、モータジェネレータ10を流れる電流を指令電流に制御すべく、インバータIVの操作状態を仮設定した場合についてのモータジェネレータ10を流れる電流を予測し、予測電流と指令電流との差に基づきインバータIVの実際の操作状態を決定するモデル予測制御を行う。
【0045】
詳しくは、電流センサ16によって検出された相電流iu,iv,iwは、dq変換部22において、回転座標系の実電流id,iqに変換される。また、回転角度センサ14によって検出される電気角θは、速度算出部23の入力となり、これにより、回転速度(電気角速度ω)が算出される。一方、指令電流設定部24は、要求トルクTrを入力とし、dq座標系での指令電流idr,iqrを出力する。ここでは、最小の電流で最大のトルクを生成できる指令電流idr,iqrを設定する。これら指令電流idr,iqr、実電流id,iq、および電気角θは、モデル予測制御部30の入力となる。モデル予測制御部30では、これら入力パラメータに基づき、インバータIVの操作状態を規定する電圧ベクトルViを決定し、操作部26に入力する。操作部26では、入力された電圧ベクトルViに基づき、上記操作信号を生成してインバータIVに出力する。
【0046】
ここで、インバータIVの操作状態を表現する電圧ベクトルは、図2に示す8つの電圧ベクトルとなる。例えば、低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnがオン状態となる操作状態(図中、「下」と表記)を表現する電圧ベクトルが電圧ベクトルV0であり、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpがオン状態となる操作状態(図中、「上」と表記)を表現する電圧ベクトルが電圧ベクトルV7である。これら電圧ベクトルV0,V7は、モータジェネレータ10の全相を短絡させるものであり、インバータIVからモータジェネレータ10に印加される電圧がゼロとなるものであるため、ゼロ電圧ベクトルと呼ばれている。これに対し、残りの6つの電圧ベクトルV1〜V6は、上側アーム及び下側アームの双方にオン状態となるスイッチング素子が存在する操作状態によって規定されるものであり、有効電圧ベクトルと呼ばれている。なお、ゼロ電圧ベクトルV0,V7を原点として有効電圧ベクトルV1〜V6を固定2次元座標系に変換したものが図2(b)である。図示されるように、電圧ベクトルV1、V3,V5のそれぞれがU相、V相、W相の正側にそれぞれ対応している。
【0047】
次に、モデル予測制御部30の処理の詳細について説明する。先の図1に示す操作状態設定部31では、インバータIVの操作状態を設定する。ここでは、先の図2に示した電圧ベクトルV0〜V7をインバータIVの操作状態として設定する。dq変換部32では、操作状態設定部31によって設定された電圧ベクトルをdq変換することで、dq座標系の電圧ベクトルVdq=(vd,vq)を算出する。こうした変換を行うべく、操作状態設定部31における電圧ベクトルV0〜V7を、例えば、先の図2において、「上」を「VDC/2」として且つ「下」を「−VDC/2」とすることで表現すればよい。この場合、例えば、電圧ベクトルV0は、(−VDC/2、−VDC/2、−VDC/2)となり、電圧ベクトルV1は、(VDC/2、−VDC/2、−VDC/2)となる。
【0048】
予測部33では、電圧ベクトル(vd、vq)と、実電流id,iqと、電気角速度ωとに基づき、インバータIVの操作状態を操作状態設定部31によって設定される状態とした場合の電流id,iqを予測する。ここでは、下記(c1)、(c2)にて表現される電圧方程式を、電流の微分項について解いた下記の状態方程式(式(c3)、(c4))を離散化し、1ステップ先の電流を予測する。
vd=(R+pLd)id −ωLqiq …(c1)
vq=ωLdid (R+pLq)iq +ωφ …(c2)
pid
=−(R/Ld)id +ω(Lq/Ld)iq +vd/Ld …(c3)
piq
=−ω(Ld/Lq)id−(Rd/Lq)iq+vq/Lq−ωφ/Lq…(c4)
ちなみに、上記の式(c1)、(c2)において、抵抗R、微分演算子p、d軸インダクタンスLd,q軸インダクタンスLq及び電機子鎖交磁束定数φを用いた。
【0049】
一方、操作状態決定部34では、予測部33によって予測された電流ide,iqeと、指令電流idr,iqrとを入力として、インバータIVの操作状態を決定する。この決定処理の1つでは、評価関数Jを用いる。すなわち、操作状態設定部31によって設定された操作状態のそれぞれを評価関数Jによって評価し、評価のもっとも高かった操作状態を選択する。この評価関数Jとして、本実施形態では、評価が低いほど値が大きくなるものを採用する。具体的には、評価関数Jを、指令電流ベクトルIdqr=(idr,iqr)と、予測電流ベクトルIdqe=(ide,iqe)との差の内積値に基づき算出する。これは、指令電流ベクトルIdqrと予測電流ベクトルIdqeとの各成分の偏差が正、負の双方の値となりうることに鑑み、値が大きいほど評価が低いことを表現するための一手法である。これにより、指令電流ベクトルIdqrと予測電流ベクトルIdqeとの各成分の差が大きいほど、評価が低くなる評価関数Jを構築することができる。
【0050】
上記評価関数Jを用いるなら、都度の制御周期Tcにおいて、予測電流ベクトルIdqeと指令電流ベクトルIdqrとの差が最も小さくなる操作状態を選択することができる一方、局所的なタイムスケールにおける最適解が選択されることに起因して、スイッチング状態の切り替え頻度が大きくなるおそれがある。
【0051】
そこで本発明者は、次回の制御周期Tcにおける操作状態の決定に際し、平均電圧ベクトルVaを参照することを考えた。ここで、平均電圧ベクトルVaとは、インバータIVの出力電圧のうち電気角周波数を有する基本波成分のことである。すなわち、インバータIVは、1電気角周期よりも短い時間間隔でスイッチング状態を切り替えることで、その出力電圧が、電気角周波数成分を有する正弦波形状の電圧を模擬したものとなっている。インバータIVの模擬する上記正弦波形状の電圧が平均電圧ベクトルVaである。ちなみに、この平均電圧ベクトルVaのノルムは、変調率や電圧利用率と比例関係にある物理量である。ここで、変調率は、インバータIVの出力電圧についての基本波成分のフーリエ係数のことである。なお、このフーリエ係数の算出に際しては、基本波の振幅中心とインバータIVの出力電圧の変動幅の中央値とを一致させる。
【0052】
上記平均電圧ベクトルVaは、モータジェネレータ10を流れる実際の電流を指令電流idr,iqrとするうえで適切なものであると考えられる。このため、平均電圧ベクトルVaを参照するなら、予測期間を伸長させることなく制御周期Tcよりも長いタイムスケールにおける最適な操作状態の選択をモデル予測制御によって実現することができるとの考えに基づき、平均電圧ベクトルVaを利用する。詳しくは、本実施形態では、平均電圧ベクトルVaを利用して、図3に示す三角波PWM制御のスイッチング状態の切替パターンを規範として、スイッチング状態の切り替えを行う。
【0053】
図3は、本実施形態におけるモデル予測制御によって優先される操作状態の推移を示す。図示されるように、電流誤差が許容範囲から外れる(誤差ベクトルedqのノルムが閾値ethよりも大きくなる)点P1において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度の小さい一対の有効電圧ベクトルのうちの一方(図では、V3)が選択される。その後、点P2において一対の有効電圧ベクトルのうちの他方(図では、V4)が選択される。そして、電流誤差が許容範囲から再度外れる(誤差ベクトルedqのノルムが閾値ethよりも大きくなる)点P3において、ゼロ電圧ベクトル(図では、V7)が選択される。これにより、三角波比較PWM処理と同様、ゼロ電圧ベクトルにて表現される操作状態とされる期間を長くすることができ、スイッチング状態の切り替え数を低減することができる。
【0054】
図4に、本実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、制御周期Tcで繰り返し実行される。
【0055】
この一連の処理では、まずステップS10において、制御周期Tc毎に訪れる更新タイミングのうち次回の更新タイミングにおける操作状態を表現する電圧ベクトルV(n+1)として、現在(今回)の操作状態を表現する電圧ベクトルV(n)を仮設定する。続くステップS12においては、次回の更新タイミングにおいて電圧ベクトルV(n+1)にて表現される操作状態が採用された場合のそれから1制御周期Tc先の予測電流ベクトルIdqe(n+2)を予測する処理を行なう。
【0056】
図5に、この処理の詳細を示す。
【0057】
この一連の処理では、まずステップS12aにおいて、電気角θ(n)と、実電流id(n),iq(n)とを検出するとともに、前回の制御周期Tcで決定された電圧ベクトルV(n)を出力する。続くステップS12bにおいては、1制御周期先における電流(ide(n+1),iqe(n+1))を予測する。これは、上記ステップS12aによって出力された電圧ベクトルV(n)によって、1制御周期先の電流がどうなるかを予測する処理である。ここでは、上記の式(c3)、(c4)にて表現されたモデルを前進差分法にて制御周期Tcで離散化したものを用いて、電流ide(n+1)、iqe(n+1)を算出する。この際、電流の初期値として、上記ステップS12aにおいて検出された実電流id(n),iq(n)を用いるとともに、dq軸上の電圧ベクトルとして、固定座標系上の電圧ベクトルV(n)を、「θ(n)+ωTc/2」によってdq変換したものを用いる。ちなみに、このdq変換は、前進差分法によるものと相違するが、これは前進差分法による離散化誤差を抑制するための設定である。
【0058】
続くステップS12cでは、次回の更新タイミングにおける電圧ベクトルV(n+1)を設定した場合について、2制御周期先の電流を予測する処理を行う。すなわち、上記ステップS12bと同様にして予測電流ide(n+2)、iqe(n+2)を算出する。ただし、ここでは、電流の初期値として、上記ステップS12bにおいて算出された予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を用いるとともに、dq軸上の電圧ベクトルとして、固定座標系上の電圧ベクトルV(n+1)を、「θ(n)+3ωTc/2」によってdq変換したものを用いる。ステップS12cの処理が完了する場合、先の図4の処理に戻る。
【0059】
図4のステップS14では、指令電流ベクトルIdqrから予測電流ベクトルIdqe(n+2)を減算した誤差ベクトルedqを算出する。続くステップS16では、平均電圧ベクトルVaを算出する。ここでは、上記の式(c1)、(c2)において微分演算子pを除去したものに、指令電流ベクトルIdqrを入力することで平均電圧ベクトルVaを算出する。すなわち、スイッチング状態の切り替えによる電流のリプルを除けばモータジェネレータ10に流れる平均的な電流が指令電流idr,iqrであることに鑑み、モータジェネレータ10に指令電流idr,iqrが定常的に流れる場合にこれに印加される電圧として平均電圧ベクトルVaを算出する。
【0060】
続くステップS18では、電流の誤差が許容範囲内にあるか否か(誤差ベクトルedqのノルム|edq|が閾値eth以下であるか否か)を判断する。ここで閾値ethは、モータジェネレータ10の状態量(電流の振幅、電気角速度ω等)によって可変設定することが望ましい。そして、許容範囲内にあると判断される場合、ステップS20において、指令電流ベクトルIdqrのノルム|Idqr|と予測電流ベクトルIdqeのノルム|Idqe|との大小関係が反転したか否かを判断する。この処理は、先の図3の点P2となるタイミングを判断するためのものである。そして、反転した場合には、状態遷移許可フラグFを「1」とする。ただし、状態遷移許可フラグFを「1」とする条件には、現在の電圧ベクトルV(n)が、平均電圧ベクトルVaとのなす角度の小さい一対の有効電圧ベクトルのうちのいずれか一方である旨の条件をさらに加える。すなわち、状態遷移許可フラグFは、現在の電圧ベクトルV(n)が、上記いずれか一方である旨の条件と上記反転した旨の条件との論理積が真である場合に「1」とされる。
【0061】
上記ステップS18において否定判断される場合や、ステップS20において肯定判断される場合には、ステップS22に移行し、次回の更新タイミングにおける電圧ベクトルV(n+1)の変更を検討する処理を行なう。これに対し、ステップS22の処理が完了する場合や、ステップS20において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0062】
図6に、上記ステップS22の処理の詳細を示す。
【0063】
この一連の処理では、まずステップS30において、状態遷移許可フラグFが「1」であるか否かを判断する。そして状態遷移許可フラグFが「1」であると判断される場合、ステップS32において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度が小さい一対の有効電圧ベクトルのうち現在の電圧ベクトルV(n)ではないもの(図中、実線)にて表現される操作状態の優先度が最も高いとして、これを検討対象とする。
【0064】
これに対し、ステップS30において否定判断される場合、ステップS34において、現在の電圧ベクトルV(n)が有効電圧ベクトルであるか否かを判断する。この処理は、先の図3における点P1において特定の有効電圧ベクトルを優先するためのものである。すなわち、ステップS34において否定判断される場合、ステップS36において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度が小さい一対の有効電圧ベクトルのうちの現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え相数が「1」以下となる方にて表現される操作状態の優先度が最も高いとして、これを検討対象とする。例えば一対の有効電圧ベクトルが有効電圧ベクトルV3、V4であって且つ現在の電圧ベクトルがゼロ電圧ベクトルV0である場合、有効電圧ベクトルV3への切り替え相数は「1」である一方、有効電圧ベクトルV4への切り替え相数は「2」であるため、有効電圧ベクトルV3が検討対象とされる。
【0065】
これに対し、ステップS34において肯定判断される場合、ステップS38において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度がA(≦20°)以下となる有効電圧ベクトルViが存在することと、現在の電圧ベクトルV(n)へ切り替える直前における電圧ベクトルが有効電圧ベクトルであることとの論理和が真であるか否かを判断する。ここで、第2の条件は、先の図3の点P3においてゼロ電圧ベクトルを優先するためのものである。また、第1の条件は、平均電圧ベクトルVaとのなす角度が小さい有効電圧ベクトルViがある場合、平均電圧ベクトルVaを生成する上で有効電圧ベクトルViはほとんど寄与しないことに鑑みてゼロ電圧ベクトルを優先するためのものである。上記論理和が真である場合、ステップS40において、現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え相数が「1」以下となるゼロ電圧ベクトルにて表現される操作状態の優先度が最も高いとして、これを検討対象とする。例えば、現在の電圧ベクトルV(n)がV4である場合、ゼロ電圧ベクトルV7にて表現される操作状態が検討対象とされ、現在の電圧ベクトルV(n)がV3である場合、ゼロ電圧ベクトルV0にて表現される操作状態が検討対象とされる。
【0066】
上記ステップS32、S36,S40の処理が完了する場合、ステップS42に移行する。ステップS42においては、検討対象とされた電圧ベクトルにて表現される操作状態を仮に設定した場合についての予測電流ベクトルIdqe(n+2)を算出し、これについての誤差ベクトルedqのノルム|edq|が閾値eth以下であるか否かを判断する。そして、閾値eth以下であると判断される場合、ステップS46において検討対象とされた電圧ベクトルを採用する。
【0067】
これに対し、ステップS42や上記ステップS38において否定判断される場合には、ステップS44において、現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え相数が「1」以下となるもの全てのうち、評価関数Jによる評価が最も高いものを採用する。例えば現在の電圧ベクトルV(n)が有効電圧ベクトルV3である場合、有効電圧ベクトルV2,V3,V4とゼロ電圧ベクトルV0とのうちの評価関数Jによる評価が最も高いものを採用する。
【0068】
なお、上記ステップS46,S44の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
「2.音圧制御」
本実施形態では、車両の低速度走行時において、モータジェネレータ10やインバータIVによって生じるノイズを、人に感知されやすい周波数帯域において特に大きくなるようにすることを考える。これは、低速度走行時においては、駆動輪と路面との摩擦音等が小さいために、摩擦音等によっては、車両の周囲に車両が接近していることを気づかせるには十分でないためである。上記ノイズのうち人に感知されやすい周波数帯域を大きくする制御は、上記モデル予測制御における操作状態の更新可能周期(制御周期Tc)を操作することで行うことができる。
【0069】
図7に、制御周期Tcが長い場合(実線)と短い場合(一点鎖線)とのそれぞれにおける音圧レベル(dB)と周波数(Hz)との関係を示す。
【0070】
図示されるように、制御周期Tcを長くすることで音圧が極大値となる周波数が低下する。ここで、図示した制御周期Tcが長い場合と短い場合とのいずれも、「0.5〜8kHz」において音圧が極大値を取る。この周波数帯域は、人に特に感知されやすい周波数帯域である。このため、制御周期Tcが図1に一点鎖線にて示した例よりも短い場合には、制御周期Tcを伸長操作することで、人に感知されやすい音を発生させることができることとなる。ここで、制御周期Tcを伸長操作することで音圧が極大となる周波数が低下するのは、スイッチング状態の切り替え周波数が低下するためであると考えられる。特に、図中実線にて示した制御周期Tcが長い場合にあっては、「1〜5kHz」において音圧が極大値を取る(代表的な可聴周波数「1〜12kHz」において最大値となってもいる)。ここで、「1〜5kHz」の周波数帯域は、人に特に感知されやすくて且つ不快感を生じることが少ない周波数帯域である。
【0071】
上記に鑑み、本実施形態では、車両の走行速度が低い場合に制御周期Tcを伸長操作する。ここで、「0.5〜8kHz」(望ましくは「1〜5kHz」)において音圧が極大値を取るように制御周期Tcを常時設定しないのは、制御精度や必要性等に鑑みたものである。すなわち、一般に車両の走行速度が大きいほどモータジェネレータ10の回転速度が大きくなり、この場合、モデル予測制御の離散化誤差が大きくなりやすい。また、走行速度が大きい場合には、主機として内燃機関のみを搭載する車両においても車両の発生する音として駆動輪と路面との摩擦音等が支配的になるため、原動機等の生じる音を周囲に車両が接近したことを感知させる目的で使用する要求に乏しい。特にこの場合、原動機等に生じる音は外部に対して車両の接近を知らせるのに効果的なものとならない反面、搭乗者にとってノイズとはなることに鑑みれば、静音性を高めることが望ましい。
【0072】
図8に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
この一連の処理では、まずステップS50において車両の走行速度Vvが閾値速度Vth以下であるか否かを判断する。ここで、閾値速度Vthは、周囲に車両の接近を感知させるうえでモータジェネレータ10やインバータIVによって生じるノイズを利用することが所望される速度の上限値に設定される。この速度は、例えば「20〜30km/h(望ましくは20km/h)」とすればよい。そして閾値速度Vth以下であると判断される場合、ステップS52において、制御周期Tcを伸長させる処理を行う。ここで、制御周期Tcの変更後の値は、「0.5〜8kHz」(望ましくは「1〜5kHz」)において音圧が極大値を取るように予め実験等によって求めておけばよい。
【0074】
なお、上記ステップS52の処理が完了する場合や、ステップS50において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0075】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0076】
(1)車両の低速度走行時において、インバータIVの操作状態の更新可能周期(制御周期Tc)を伸長操作した。これにより、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができ、ひいては、人に感知されやすい周波数帯域に音圧の極大値を移行させることができる。
【0077】
(2)音圧についての0.5〜8kHz(望ましくは「1〜5kHz」)の周波数領域における最大値が、これに隣接する高周波領域における値と比較して大きくなるようにした。これにより、人に特に感知されやすい周波数の音を大きくすることができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0078】
本実施形態では、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させる処理として、上記閾値ethを増加させる処理を行う。すなわち、閾値ethを増加させると、先の図4のステップS18において肯定判断されるまでに要する時間が伸長するため、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができる。
【0079】
図9に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図9において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0080】
この一連の処理では、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS52aにおいて、閾値ethを増加させる操作を行う。ここで、閾値ethは、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプル周波数を低下させることで、人に感知されやすい周波数帯域に音圧の極大値を移行させることができる値に設定される。この設定は、予め実験等に基づき行うことができる。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0082】
(3)車両の低速度走行時において、閾値ethを増加操作した。これにより、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができ、ひいては、人に感知されやすい周波数帯域に音圧の極大値を移行させることができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0083】
図10に本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図10において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0084】
この一連の処理では、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS52cにおいて、制御周期Tcを伸長操作して且つ、伸長操作された周波数を周期的に変動させる処理を行う。ここで、伸長された周波数を周期的に変動させるのは、特定の周波数の音圧が常時大きい場合、人に不快感を与えやすい一方、音圧の極大値が変動する場合、人によるフィーリングが良好となりやすいとの知見による。
【0085】
上記周期的な変動処理は、これによって生じる音圧の極大値が、0.5〜8kHz(望ましくは「1〜5kHz」)の周波数領域内で変動するようにする。具体的には、この変動処理は、伸長された制御周期Tcを、M系列信号とすることなどで行えばよい。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0087】
(4)制御周期Tcを伸長操作するに際し、制御周期Tcを周期的に変動させた。これにより、音圧が極大値となる周波数を変動させることなどができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0088】
本実施形態では、制御周期Tcを伸長操作するに際し、所定の条件下、モータジェネレータ10の効率(モータジェネレータ10の入力電力に対する出力電力の比)を低下させる処理を行う。これは、音圧を大きくするためのものである。図11に、モータジェネレータ10のトルクが大きい場合(実線)と小さい場合(一点鎖線)とのそれぞれについて、音圧の分布を示す。図示されるように、モータジェネレータ10のトルクが小さい場合には大きい場合と比較して音圧が小さくなる。これは、トルクが小さい場合、モータジェネレータ10に流れる電流が小さいため、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅が小さくなるためであると考えられる。このため、上記制御周期Tcの伸長操作によって、人が感知しやすい周波数帯域に音圧の極大値が入るようにしたとしても、その絶対値が小さくなることで、音圧が不十分となるおそれがある。特に低速度運転時において路面が平らである場合等においてはモータジェネレータ10に要求されるトルクも小さくなりやすいため、音圧が不十分となるおそれは深刻である。
【0089】
そこで本実施形態では、音圧が十分とならないと想定される状況下、モータジェネレータ10の効率を低下させる。これにより、モータジェネレータ10の生成するトルクの割りに電流を増加させることができることから、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅を大きくすることができ、ひいては音圧を大きくすることができる。
【0090】
図12に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図12において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0091】
この一連の処理では、上記ステップS52の処理が完了する場合、ステップS54において、要求トルクTrに基づきモータジェネレータ10の効率を算出する。ここで、要求トルクTrは、制御量(トルク)の制御のためにモータジェネレータ10を流れる電流を把握するためのパラメータである。換言すれば、制御量を制御する上で生じる音圧の大きさを把握するためのパラメータである。本実施形態では、要求トルクTrが小さいほど制御量の制御のための電流量が小さくなることに鑑み、要求トルクTrが小さいほど効率の低下量(最小電流最大トルク制御時の効率からの低下量)を大きくする。
【0092】
続くステップS56においては、算出された効率に基づき指令電流を変更する処理を行う。これにより、モータジェネレータ10に生じるトルクを要求トルクTrに制御しつつも、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅を大きくすることができる。
【0093】
なお、上記ステップS56の処理が完了する場合や、ステップS50において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0094】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0095】
(5)制御周期Tcの伸長操作時において、モータジェネレータ10の効率を低下させた。これにより、モータジェネレータ10のトルクの制御性を低下させることなく、電流のリプルの振幅を増大させることができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図13に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図13において、先の図12に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0097】
この一連の処理では、ステップS52の処理の後、ステップS54aにおいて、車両の総重量Vmtや、車両が現在走行している路面が登坂路であるか否かの情報に基づきモータジェネレータ10の効率を算出する。ここで、総重量Vmtや登坂路の有無に関する情報は、モータジェネレータ10の制御量を制御する上でモータジェネレータ10に流れる電流を把握するための情報である。すなわち、総重量Vmtが大きいほどモータジェネレータ10に要求されるトルクが大きくなりやすいため、モータジェネレータ10を流れる電流が大きくなりやすい。また、登坂路においては、モータジェネレータ10に要求されるトルクが大きくなるため、モータジェネレータ10を流れる電流が大きくなる。このため、車両総重量Vmtが小さいほど、効率の低下量を大きくし、登坂路においては効率を高くする。
【0098】
なお、総重量Vmtは、車両重量Vmと搭乗員等の重量との和として算出すればよい。ここで、車両重量Vmは、仕様情報として、制御装置20に予め記憶しておけばよい。また、搭乗員等の重量は、例えば座席に搭載されたセンサの出力に基づき搭乗員数を検出し、これに所定重量を乗算することで算出すればよい。もっとも、これに代えて、重量センサを備えて搭乗員等の重量を直接検出してもよい。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
本実施形態では、モータジェネレータ10の効率を低下させる代わりに、モータジェネレータ10の実際のトルクを周期的に変動させつつその平均値を要求トルクTrに制御する。この場合、モータジェネレータ10の実際のトルクは、微視的なタイムスケールでは要求トルクTrを上回るため、モータジェネレータ10を流れる電流を微視的なタイムスケールで大きくすることができる。このため、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅の最大値(極大値)を大きくすることができ、ひいては音圧を大きくすることができる。
【0100】
図14に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図14において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0101】
この一連の処理では、ステップS52の処理の後、ステップS60において、要求トルクTrに基づきモータジェネレータ10のトルクの振幅値Taを算出する。ここで、要求トルクTrは、制御量(トルク)の制御のためにモータジェネレータ10を流れる電流を把握するためのパラメータである。本実施形態では、要求トルクTrが小さいほど制御量の制御のための電流量が小さくなることに鑑み、要求トルクTrが小さいほど振幅値Taを大きくする。
【0102】
続くステップS62においては、モータジェネレータ10の実際のトルクを、上記振幅値Taを有して変動するように制御する。これは、指令電流設定部24の入力パラメータ(Tr1)を、振幅値Taの正弦波関数によって要求トルクTrを補正したものとすることで行うことができる。本実施形態では、この正弦波関数を、電気角θの一周期を周期とするものとした。
【0103】
なお、上記ステップS50において否定判断される場合や、ステップS62の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0104】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0105】
(6)制御周期Tcの伸長操作に際し、モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値(Tr1)を周期的に変化させつつその平均値を要求トルクTrとした。これにより、モータジェネレータ10の実際のトルクを局所的なタイムスケールで要求トルクTrよりも大きくすることができ、そのときの電流のリプルの振幅をトルクを周期的に変化させない場合と比較して大きくすることができる。このため、音圧の極大値を大きくすることができる。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第6の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0106】
図15に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図15において、先の図14に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0107】
この一連の処理では、ステップS60aにおいて、車両の総重量Vmtや、車両が現在走行している路面が登坂路であるか否かの情報に基づきトルクの振幅値Taを算出する。なお、これら振幅値Taの算出のためのパラメータの技術的意義は、先の図13のステップS54aに示したものと同様である。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0108】
本実施形態では、所定の条件下、モータジェネレータ10の効率を低下させる処理を制限する処理を行う。
【0109】
図16に、上記モータジェネレータ10の効率低下処理の制限処理の手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0110】
この一連の処理では、まずステップS70において、制御周期Tcの伸長操作がなされているか否かを判断する。そして伸長操作がなされている場合、ステップS72において、主機系統の温度Tを取得する。ここで主機系統の温度Tとは、インバータIVのスイッチング素子の温度や、モータジェネレータ10の温度のことである。続くステップS74においては、高電圧バッテリ12の残存容量SOCを取得する。そして、ステップS76においては、温度Tが閾値温度Tth以上であることと、残存容量SOCが閾値容量Sth以下であることとの論理和が真であるか否かを判断する。この処理は、モータジェネレータ10の効率を低下させる処理を制限する処理の実行条件が成立したか否かを判断するためのものである。ここで、温度Tが高い場合には、主機系統の信頼性の低下を招くおそれがある。また、残存容量SOCが小さい場合には、高電圧バッテリ12の信頼性の低下を招いたり、走行可能距離が過度に短くなったりするおそれがある。このため、こうした事態となった場合には、効率の低下を制限することとする。
【0111】
すなわち、ステップS76において肯定判断される場合、ステップS78において、効率の低下を制限することで、温度Tの更なる上昇を抑制したり、残存容量SOCの更なる低下を抑制したりする。この効率の低下を制限することに伴うリプル電流の減少を、本実施形態では、上記第7の実施形態の要領でトルクを変動させることで行う。
【0112】
なお、上記ステップS70,S76において否定判断される場合や、ステップS78の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0113】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0114】
(7)主機系統の温度Tが高い場合、モータジェネレータ10の効率の低下処理を制限した。これにより、温度Tの更なる上昇を抑制することができる。
【0115】
(8)高電圧バッテリ12の残存容量SOCが少ない場合、モータジェネレータ10の効率の低下処理を制限した。これにより、残存容量SOCのさらなる低下を抑制することができる。
【0116】
(9)効率の低下処理が制限される状況下、モータジェネレータ10の実際のトルクを周期的に変動させつつその平均値を要求トルクTrに制御した。これにより、モータジェネレータ10の効率の低下処理の制限による音圧の制限を緩和することができる。
<第9の実施形態>
以下、第9の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0117】
本実施形態では、車両の外部の音をフィードバック制御する。
【0118】
図17に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図17において、先の12に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0119】
この一連の処理では、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS80において、外部の音圧分布を検出する。これは、車両の外部に突出したマイクを設けるなどすることで行うことができる。そして、ステップS80の処理が完了する場合、外部の音圧分布の検出結果に基づき制御周期Tcを伸長操作する。すなわち、車両の外部の音圧分布から、人に感知されやすい周波数帯域(「0.5〜8kHz」、望ましくは「1〜5kHz」)において音圧が高くないところに、モータジェネレータ10やインバータIVの音圧の極大値がくるように、制御周期Tcを設定する。
【0120】
続くステップS54aにおいては、音圧分布の検出結果と要求トルクTrとに基づきモータジェネレータ10の効率を算出する。ここで、要求トルクTrの技術的意義は、先の図12のステップS54と同様である。本実施形態で音圧分布の検出結果に基づき効率を算出するのは、外部の音に打ち消されないだけの音圧を確保することが可能な効率を把握するためである。ステップS54aの処理が完了する場合、ステップS56において効率に基づき指令電流を変更する処理を行う。
【0121】
なお、上記ステップS50において否定判断される場合や、ステップS56の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0122】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)等の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0123】
(10)音圧分布の検出結果に基づき、制御周期Tcを可変設定した。これにより、外部の音圧の極大値とスイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧の極大値との周波数を相違させることができる。
【0124】
(11)音圧分布の検出結果に基づき、効率を可変設定した。これにより、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
<第10の実施形態>
以下、第10の実施形態について、先の第9の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0125】
図18に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図18において、先の図17に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0126】
この一連の処理では、ステップS52dの処理の後、ステップS60aにおいて、音圧分布の検出結果と要求トルクTrとに基づきトルクの振幅値Taを算出する。ここで、要求トルクTrの技術的意義は、先の図14のステップS60と同様である。本実施形態で音圧分布の検出結果に基づき振幅値Taを算出するのは、外部の音に打ち消されないだけの音圧を確保することが可能な振幅値Taを把握するためである。ステップS60aの処理が完了する場合、ステップS62において振幅値Taに基づきトルクを変動させる処理を行う。
【0127】
なお、上記ステップS50において否定判断される場合や、ステップS62の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0128】
以上説明した本実施形態によれば、先の第9の実施形態における上記(10)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0129】
(12)音圧分布の検出結果に基づき、トルクの振幅値Taを可変設定した。これにより、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
「変動手段について」
制御周期Tcを変動させる手段としては、制御周期Tcを周期的に変動させるものに限らない。例えば一度の低下処理期間において変動させる数よりも多い数の制御周期Tcの値が記憶された手段を用いて非周期的に変動させるものであってもよい。
「効率低下手段について」
効率の低下手法としては、トルクを要求トルクTrに維持しつつ効率を低下させるものに限らない。例えば、指令電流idr,iqrの位相をずらすことで効率を低下させる手段であってもよい。
【0130】
効率の低下量を可変設定するに際し、要求トルクTrに代えて、q軸電流を用いてもよい。これは、q軸電流が小さい場合、電流のリプルが小さくなり、ひいては音圧が低下すると考えられることによる。
【0131】
車両の走行状況および車両総重量の双方に基づき効率を可変設定する代わりに、これらのいずれか一方に基づき可変設定してもよい。また、車両総重量に代えて、搭乗員数や、搭乗員を無視した車両の重量に基づき効率を可変設定してもよい。さらに、車両の走行状況としては、登坂路であるか否かに限らず、例えば向かい風の風速等を加味してもよい。
「効率低下の制限時の処理について」
効率低下の制限時の処理としては、トルクを変動させる処理に限らない。例えば、低速度領域において制御周期Tcを伸長させる場合において、効率低下の制限時に閾値ethを増加させる処理を行ってもよい。これにより、スイッチング周波数がさらに低下するため、電流のリプルが大きくなり、ひいては音圧を大きくすることができる。同様に、低速度領域において閾値ethを増加させる処理を行う場合において、効率低下の制限時に制御周期Tcを伸長させる処理を行ってもよい。
「変動トルク設定手段について」
トルクの振幅値Taを可変設定するに際し、要求トルクTrに代えて、q軸電流を用いてもよい。これは、q軸電流が小さい場合、電流のリプルが小さくなり、ひいては音圧が低下すると考えられることによる。
【0132】
車両の走行状況および車両総重量の双方に基づきトルクの振幅値Taを可変設定する代わりに、これらのいずれか一方に基づき可変設定してもよい。また、車両総重量に代えて、搭乗員数や、搭乗員を無視した車両の重量に基づき効率を可変設定してもよい。さらに、車両の走行状況としては、登坂路であるか否かに限らず、例えば向かい風の風速等を加味してもよい。
「スイッチング状態の切り替え周波数の強制的な低下条件について」
上記各実施形態では、車両の走行速度が規定速度以下である場合に強制的な低下処理を行ったが、これに限らない。例えば、内燃機関を搭載している車両においては、車両の走行速度が規定速度以下である旨の条件と内燃機関が停止状態にある旨の条件との論理積が真である場合に強制的な低下処理を行ってもよい。
「低下手段について」
低下処理としては、「0.5〜8kHz」の領域の音圧がこれに隣接する高周波領域の音圧よりも大きくなると想定されるものに開ループ制御するものに限らない。例えば、モータジェネレータ10やインバータIVからの音を検出する手段を備え、音圧のフィードバック制御を行うものであってもよい。
【0133】
また、音圧の制御としては、「0.5〜8kHz」の領域の音圧がこれに隣接する高周波領域の音圧よりも大きくなる制御にも限らない。
「維持手段について」
維持手段としては、先の図4に示す処理を行うものに限らない。例えば、誤差ベクトルedqのノルム|edq|が閾値eth以下である場合に現在のスイッチング状態を維持して且つ、閾値ethを上回る場合には全ての操作状態(電圧ベクトルV0〜V7)の中から評価関数Jの評価が最も高いものを選択する処理であってもよい。
「評価関数について」
評価関数としては、入力パラメータとしての制御量とその指令値との差の各成分の2乗の和にも限らない。例えば制御量とその指令値との差の絶対値であってもよい。要は、入力パラメータとしての制御量とその指令値との差が大きいほど評価が低いことを定量化するものであればよい。
「予測手段について」
・上記各実施形態では、インバータIVの操作状態についての次の更新タイミング(1制御周期先のタイミング)におけるインバータIVの操作による制御量を予測したがこれに限らない。例えば数制御周期先の更新タイミングにおけるインバータIVの操作による制御量まで順次予測することで、1制御周期先の更新タイミングにおける操作状態を決定してもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、電流の検出タイミングをインバータIVの操作状態の更新タイミングに同期させたがこれに限らない。例えば、時系列的に隣接する各一対の更新タイミング間の中央のタイミングにおいて電流を検出するようにしてもよい。この場合であっても、次回の更新タイミングにおける操作状態の設定に伴う電流の予測の初期値として、次回の更新タイミングにおける電流を上記検出された電流に基づき予測することは有効である。
【0135】
・上記各実施形態では、インバータIVの操作状態の更新タイミングから1制御周期先の制御量を予測したがこれに限らない。例えば、操作状態の更新タイミングから1制御周期経過するまでの期間内の中間の時点における制御量を予測してもよい。
【0136】
・電流を予測するために用いるモデルとしては、鉄損を無視したモデルに限らず、これを考慮したモデルであってもよい。
【0137】
・電流の予測としては、モデルを用いるものに限らず、入力パラメータについての離散的な値に対応した出力パラメータの値が記憶された記憶手段(マップ)を用いるものであってもよい。
「電力変換回路について」
互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と回転機の各端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路としては、インバータIVに限らない。例えば、3つ以上の互いに相違する値の電圧を印加する電圧印加手段と回転機の各端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備えるものであってもよい。なお、回転機の各端子に3つ以上の互いに相違する値の電圧を印加するための電力変換回路としては、例えば特開2006−174697号公報に例示されているものがある。
「その他」
・回転機としては、埋め込み磁石同期機に限らず、表面磁石同期機や、界磁巻線型同期機等、任意の同期機であってよい。更に、同期機にも限らず、誘導モータ等、誘導回転機であってもよい。
【0138】
・回転機のエネルギ源としては、2次電池に限らず、例えば燃料電池であってもよい。
【0139】
・直流電源としては、高電圧バッテリ12に限らず、例えば高電圧バッテリ12の電圧を昇圧するコンバータの出力端子であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
10…モータジェネレータ、20…制御装置、IV…インバータ、Swp,Swn…スイッチング素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と車載主機としての回転機の端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作対象とし、前記電力変換回路の操作状態を設定した場合についての前記回転機の制御量を前記回転機のモデルに基づき予測する予測手段と、前記予測された制御量と該制御量の指令値とに基づき、前記電力変換回路の実際の操作状態を決定し、該決定された操作状態となるように前記電力変換回路を操作する操作手段とを備えてモデル予測制御によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載主機として電動機が搭載された車両が実用化され、普及しつつある。電動機を車載主機とする場合、電動機自体やこれに接続されるインバータから生じるノイズは、インバータのスイッチング周波数等によって変化する。そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、キャリアと指令電圧との大小比較に基づきインバータを操作するに際し、キャリアの周波数を切り替えることで、上記ノイズを抑制することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−303288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように電動機は、内燃機関と比較してノイズを制御によって低減しやすいため、一般に内燃機関のみを搭載した車両と比較して電動機を搭載する車両は静音性が高いというメリットを有する反面、こうしたメリットが新たな問題を生じさせている。すなわち、停車状態からの発進時や低速走行時において、自動車が接近していることが歩行者に気づかれにくいという問題を生じさせている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車載主機として回転機を備えるものにあって、車両の接近に注意を促すことのできる回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と車載主機としての回転機の端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作対象とし、前記電力変換回路の操作状態を設定した場合についての前記回転機の制御量を前記回転機のモデルに基づき予測する予測手段と、前記予測された制御量と該制御量の指令値とに基づき、前記電力変換回路の実際の操作状態を決定し、該決定された操作状態となるように前記電力変換回路を操作する操作手段とを備えてモデル予測制御によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、車両の走行速度が規定速度以下となることを条件に、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を強制的に低下させる低下手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記モデル予測制御の制御性を十分に確保する上で実現されるスイッチング状態の切り替え周波数は、人に感知されやすい周波数よりも高くなる傾向がある。この点、上記発明では、低下手段を備えることで、車両の走行速度が規定速度以下となることで車輪と路面との摩擦音が小さくなる状況下、回転機や電力変換回路の生じる音が人に感知されやすいものとなるようにすることができる。このため、車両の接近に注意を促すことができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低下手段は、前記電力変換回路の操作に起因して生じる音圧についての0.5〜8kHzの周波数領域における最大値が該領域に隣接する高周波領域における値と比較して大きくなるようにするものであることを特徴とする。
【0010】
「0.5〜8kHz」の周波数領域の音波は、人に特に感知されやすい。上記発明では、この点に鑑み、上記設定とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記操作状態の更新可能周期の伸長操作とする伸長操作手段を備えることを特徴とする。
【0012】
スイッチング状態の切り替え周波数は、更新可能周期の逆数に比例する。このため、更新可能周波数を伸長させることで、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記操作手段は、前記予測された制御量と該制御量の指令値との偏差が閾値以下となることを条件に、現在のスイッチング状態を維持する維持手段を備え、前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記閾値の増加操作とする増加操作手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上記維持手段を備える場合、閾値が小さいほど上記偏差が閾値を上回るまでに要する時間が短くなると考えられる。このため、閾値を大きくすることで、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の発明において、前記低下手段は、前記強制的な低下のための操作量の変更量を変動させる変動手段を備えることを特徴とする。
【0016】
特定の周波数の音圧のみが大きくなる場合、人にとって不快感を伴いやすいことが知られている。上記発明では、この点に鑑み、操作量の変更量を変動させることで、音圧が極大値となる周波数を変動させることなどができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記モデル予測制御における前記制御量の指令値は、前記回転機を流れる電流を含み、前記低下手段による低下制御時において、前記電流の指令値を、前記回転機の効率が低下するように変更する効率低下手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
音圧の大きさは、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅が大きいほど大きくなる。上記発明では、この点に鑑み、効率低下手段を備えることで、回転機のトルクを過度に大きくすることなく電流のリプルの振幅を増大させることができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記効率低下手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする。
【0020】
回転機のトルクが小さいほど、回転機を流れる電流が小さいことからスイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の重量が小さいほど要求されるトルクが小さくなることから、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の走行状況は、回転機のトルクと相関を有する。上記発明では、この点に鑑み、電流のリプルの振幅の大小に起因した音圧の大小を把握しつつ効率の低下量を可変設定する。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記回転機および前記電力変換回路の少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記効率低下手段は、前記温度検出手段によって検出される温度が規定温度以上となる場合に前記効率の低下を制限することを特徴とする。
【0022】
効率が低下すると、電力変換回路や回転機において熱の発生量が増加する。上記発明では、この点に鑑み、温度が上昇することで効率の低下を制限する。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記複数の電圧印加手段は、電池を備えて構成されており、前記電池の残存容量が少ない場合、前記効率の低下を制限する容量確保手段を備えることを特徴とする。
【0024】
効率が低下するほど、電池の残存容量の減少速度が大きくなる。上記発明では、この点に鑑み、残存容量が少ない場合に効率の低下を制限する。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項8または9記載の発明において、前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備え、前記変動トルク設定手段は、前記効率の低下が制限される状況下、前記トルクの指令値を周期的に変化させる処理を行うことを特徴とする。
【0026】
トルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を要求トルクとする場合、トルクの指令値は要求トルクよりも大きくなることがあり、そのときの電流のリプルの振幅はトルクを周期的に変化させない場合と比較して大きくなる。このため、効率を低下させることなく、音圧を大きくすることができる。
【0027】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0028】
トルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を要求トルクとする場合、トルクの指令値は要求トルクよりも大きくなることがあり、そのときの電流のリプルの振幅はトルクを周期的に変化させない場合と比較して大きくなる。このため、音圧を大きくすることができる。
【0029】
請求項12記載の発明は、請求項10または11記載の発明において、前記変動トルク設定手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする。
【0030】
回転機のトルクが小さいほど、回転機を流れる電流が小さいことからスイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の重量が小さいほど要求されるトルクが小さくなることから、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプルの振幅も小さくなる。また、車両の走行状況は、回転機のトルクと相関を有する。上記発明では、この点に鑑み、電流のリプルの振幅の大小に起因した音圧の大小を把握しつつトルクの周期的な変化量を可変設定する。
【0031】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、前記低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記スイッチング状態の切り替え周波数の低下量を可変設定することを特徴とする。
【0032】
上記発明では、検出結果に基づき低下量を可変設定することで、外部の音圧の極大値とスイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧の極大値との周波数を相違させる制御や、外部の音圧よりもスイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧の方が大きくなる制御をすることができる。
【0033】
請求項14記載の発明は、請求項6〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、前記効率低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする。
【0034】
上記発明では、検出結果に基づき効率の低下量を可変設定することで、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
【0035】
請求項15記載の発明は、請求項10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、前記変動トルク設定手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする。
【0036】
上記発明では、検出結果に基づきトルクの周期的な変化量を可変設定することで、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
【0037】
請求項16記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路は、直流電源の正極および負極のそれぞれに前記回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備えるものであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】インバータの操作状態を表現する電圧ベクトルを示す図。
【図3】上記実施形態にかかる規範スイッチング遷移を示す図。
【図4】同実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す流れ図。
【図5】上記モデル予測制御における電流の予測処理の手順を示す流れ図。
【図6】上記モデル予測制御における電圧ベクトルの変更検討処理の手順を示す流れ図。
【図7】モデル予測制御の制御周期と音圧分布との関係の計測結果を示す図。
【図8】同実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図9】第2の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図10】第3の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図11】トルクと音圧分布との関係の計測結果を示す図。
【図12】第4の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図13】第5の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図14】第6の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図15】第7の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図16】第8の実施形態にかかる効率の低下処理の制限処理の手順を示す流れ図。
【図17】第9の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【図18】第10の実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を車載主機としての回転機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。モータジェネレータ10は、車載主機であり、その回転軸は、駆動輪に機械的に連結されている。
【0041】
モータジェネレータ10は、インバータIVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
【0042】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の回転角度(電気角θ)を検出する回転角度センサ14を備えている。また、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16を備えている。更に、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ18を備えている。
【0043】
上記各種センサの検出値は、図示しないインターフェースを介して低電圧システムを構成する制御装置20に取り込まれる。制御装置20では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作する信号が、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnである。
【0044】
以下では、制御装置20によって行なわれる処理について、「1.モデル予測制御を用いた制御量の制御」、「2.音圧制御」の順に説明する。
「1.モデル予測制御を用いた制御量の制御」
上記制御装置20は、モータジェネレータ10のトルクを要求トルクTrに制御すべく、インバータIVを操作する。詳しくは、要求トルクTrを実現するための指令電流となるようにインバータIVを操作する。すなわち、本実施形態では、モータジェネレータ10のトルクが最終的な制御量となるものであるが、トルクを制御すべく、モータジェネレータ10を流れる電流を直接の制御量としてこれを指令電流に制御する。特に、本実施形態では、モータジェネレータ10を流れる電流を指令電流に制御すべく、インバータIVの操作状態を仮設定した場合についてのモータジェネレータ10を流れる電流を予測し、予測電流と指令電流との差に基づきインバータIVの実際の操作状態を決定するモデル予測制御を行う。
【0045】
詳しくは、電流センサ16によって検出された相電流iu,iv,iwは、dq変換部22において、回転座標系の実電流id,iqに変換される。また、回転角度センサ14によって検出される電気角θは、速度算出部23の入力となり、これにより、回転速度(電気角速度ω)が算出される。一方、指令電流設定部24は、要求トルクTrを入力とし、dq座標系での指令電流idr,iqrを出力する。ここでは、最小の電流で最大のトルクを生成できる指令電流idr,iqrを設定する。これら指令電流idr,iqr、実電流id,iq、および電気角θは、モデル予測制御部30の入力となる。モデル予測制御部30では、これら入力パラメータに基づき、インバータIVの操作状態を規定する電圧ベクトルViを決定し、操作部26に入力する。操作部26では、入力された電圧ベクトルViに基づき、上記操作信号を生成してインバータIVに出力する。
【0046】
ここで、インバータIVの操作状態を表現する電圧ベクトルは、図2に示す8つの電圧ベクトルとなる。例えば、低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnがオン状態となる操作状態(図中、「下」と表記)を表現する電圧ベクトルが電圧ベクトルV0であり、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpがオン状態となる操作状態(図中、「上」と表記)を表現する電圧ベクトルが電圧ベクトルV7である。これら電圧ベクトルV0,V7は、モータジェネレータ10の全相を短絡させるものであり、インバータIVからモータジェネレータ10に印加される電圧がゼロとなるものであるため、ゼロ電圧ベクトルと呼ばれている。これに対し、残りの6つの電圧ベクトルV1〜V6は、上側アーム及び下側アームの双方にオン状態となるスイッチング素子が存在する操作状態によって規定されるものであり、有効電圧ベクトルと呼ばれている。なお、ゼロ電圧ベクトルV0,V7を原点として有効電圧ベクトルV1〜V6を固定2次元座標系に変換したものが図2(b)である。図示されるように、電圧ベクトルV1、V3,V5のそれぞれがU相、V相、W相の正側にそれぞれ対応している。
【0047】
次に、モデル予測制御部30の処理の詳細について説明する。先の図1に示す操作状態設定部31では、インバータIVの操作状態を設定する。ここでは、先の図2に示した電圧ベクトルV0〜V7をインバータIVの操作状態として設定する。dq変換部32では、操作状態設定部31によって設定された電圧ベクトルをdq変換することで、dq座標系の電圧ベクトルVdq=(vd,vq)を算出する。こうした変換を行うべく、操作状態設定部31における電圧ベクトルV0〜V7を、例えば、先の図2において、「上」を「VDC/2」として且つ「下」を「−VDC/2」とすることで表現すればよい。この場合、例えば、電圧ベクトルV0は、(−VDC/2、−VDC/2、−VDC/2)となり、電圧ベクトルV1は、(VDC/2、−VDC/2、−VDC/2)となる。
【0048】
予測部33では、電圧ベクトル(vd、vq)と、実電流id,iqと、電気角速度ωとに基づき、インバータIVの操作状態を操作状態設定部31によって設定される状態とした場合の電流id,iqを予測する。ここでは、下記(c1)、(c2)にて表現される電圧方程式を、電流の微分項について解いた下記の状態方程式(式(c3)、(c4))を離散化し、1ステップ先の電流を予測する。
vd=(R+pLd)id −ωLqiq …(c1)
vq=ωLdid (R+pLq)iq +ωφ …(c2)
pid
=−(R/Ld)id +ω(Lq/Ld)iq +vd/Ld …(c3)
piq
=−ω(Ld/Lq)id−(Rd/Lq)iq+vq/Lq−ωφ/Lq…(c4)
ちなみに、上記の式(c1)、(c2)において、抵抗R、微分演算子p、d軸インダクタンスLd,q軸インダクタンスLq及び電機子鎖交磁束定数φを用いた。
【0049】
一方、操作状態決定部34では、予測部33によって予測された電流ide,iqeと、指令電流idr,iqrとを入力として、インバータIVの操作状態を決定する。この決定処理の1つでは、評価関数Jを用いる。すなわち、操作状態設定部31によって設定された操作状態のそれぞれを評価関数Jによって評価し、評価のもっとも高かった操作状態を選択する。この評価関数Jとして、本実施形態では、評価が低いほど値が大きくなるものを採用する。具体的には、評価関数Jを、指令電流ベクトルIdqr=(idr,iqr)と、予測電流ベクトルIdqe=(ide,iqe)との差の内積値に基づき算出する。これは、指令電流ベクトルIdqrと予測電流ベクトルIdqeとの各成分の偏差が正、負の双方の値となりうることに鑑み、値が大きいほど評価が低いことを表現するための一手法である。これにより、指令電流ベクトルIdqrと予測電流ベクトルIdqeとの各成分の差が大きいほど、評価が低くなる評価関数Jを構築することができる。
【0050】
上記評価関数Jを用いるなら、都度の制御周期Tcにおいて、予測電流ベクトルIdqeと指令電流ベクトルIdqrとの差が最も小さくなる操作状態を選択することができる一方、局所的なタイムスケールにおける最適解が選択されることに起因して、スイッチング状態の切り替え頻度が大きくなるおそれがある。
【0051】
そこで本発明者は、次回の制御周期Tcにおける操作状態の決定に際し、平均電圧ベクトルVaを参照することを考えた。ここで、平均電圧ベクトルVaとは、インバータIVの出力電圧のうち電気角周波数を有する基本波成分のことである。すなわち、インバータIVは、1電気角周期よりも短い時間間隔でスイッチング状態を切り替えることで、その出力電圧が、電気角周波数成分を有する正弦波形状の電圧を模擬したものとなっている。インバータIVの模擬する上記正弦波形状の電圧が平均電圧ベクトルVaである。ちなみに、この平均電圧ベクトルVaのノルムは、変調率や電圧利用率と比例関係にある物理量である。ここで、変調率は、インバータIVの出力電圧についての基本波成分のフーリエ係数のことである。なお、このフーリエ係数の算出に際しては、基本波の振幅中心とインバータIVの出力電圧の変動幅の中央値とを一致させる。
【0052】
上記平均電圧ベクトルVaは、モータジェネレータ10を流れる実際の電流を指令電流idr,iqrとするうえで適切なものであると考えられる。このため、平均電圧ベクトルVaを参照するなら、予測期間を伸長させることなく制御周期Tcよりも長いタイムスケールにおける最適な操作状態の選択をモデル予測制御によって実現することができるとの考えに基づき、平均電圧ベクトルVaを利用する。詳しくは、本実施形態では、平均電圧ベクトルVaを利用して、図3に示す三角波PWM制御のスイッチング状態の切替パターンを規範として、スイッチング状態の切り替えを行う。
【0053】
図3は、本実施形態におけるモデル予測制御によって優先される操作状態の推移を示す。図示されるように、電流誤差が許容範囲から外れる(誤差ベクトルedqのノルムが閾値ethよりも大きくなる)点P1において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度の小さい一対の有効電圧ベクトルのうちの一方(図では、V3)が選択される。その後、点P2において一対の有効電圧ベクトルのうちの他方(図では、V4)が選択される。そして、電流誤差が許容範囲から再度外れる(誤差ベクトルedqのノルムが閾値ethよりも大きくなる)点P3において、ゼロ電圧ベクトル(図では、V7)が選択される。これにより、三角波比較PWM処理と同様、ゼロ電圧ベクトルにて表現される操作状態とされる期間を長くすることができ、スイッチング状態の切り替え数を低減することができる。
【0054】
図4に、本実施形態にかかるモデル予測制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、制御周期Tcで繰り返し実行される。
【0055】
この一連の処理では、まずステップS10において、制御周期Tc毎に訪れる更新タイミングのうち次回の更新タイミングにおける操作状態を表現する電圧ベクトルV(n+1)として、現在(今回)の操作状態を表現する電圧ベクトルV(n)を仮設定する。続くステップS12においては、次回の更新タイミングにおいて電圧ベクトルV(n+1)にて表現される操作状態が採用された場合のそれから1制御周期Tc先の予測電流ベクトルIdqe(n+2)を予測する処理を行なう。
【0056】
図5に、この処理の詳細を示す。
【0057】
この一連の処理では、まずステップS12aにおいて、電気角θ(n)と、実電流id(n),iq(n)とを検出するとともに、前回の制御周期Tcで決定された電圧ベクトルV(n)を出力する。続くステップS12bにおいては、1制御周期先における電流(ide(n+1),iqe(n+1))を予測する。これは、上記ステップS12aによって出力された電圧ベクトルV(n)によって、1制御周期先の電流がどうなるかを予測する処理である。ここでは、上記の式(c3)、(c4)にて表現されたモデルを前進差分法にて制御周期Tcで離散化したものを用いて、電流ide(n+1)、iqe(n+1)を算出する。この際、電流の初期値として、上記ステップS12aにおいて検出された実電流id(n),iq(n)を用いるとともに、dq軸上の電圧ベクトルとして、固定座標系上の電圧ベクトルV(n)を、「θ(n)+ωTc/2」によってdq変換したものを用いる。ちなみに、このdq変換は、前進差分法によるものと相違するが、これは前進差分法による離散化誤差を抑制するための設定である。
【0058】
続くステップS12cでは、次回の更新タイミングにおける電圧ベクトルV(n+1)を設定した場合について、2制御周期先の電流を予測する処理を行う。すなわち、上記ステップS12bと同様にして予測電流ide(n+2)、iqe(n+2)を算出する。ただし、ここでは、電流の初期値として、上記ステップS12bにおいて算出された予測電流ide(n+1),iqe(n+1)を用いるとともに、dq軸上の電圧ベクトルとして、固定座標系上の電圧ベクトルV(n+1)を、「θ(n)+3ωTc/2」によってdq変換したものを用いる。ステップS12cの処理が完了する場合、先の図4の処理に戻る。
【0059】
図4のステップS14では、指令電流ベクトルIdqrから予測電流ベクトルIdqe(n+2)を減算した誤差ベクトルedqを算出する。続くステップS16では、平均電圧ベクトルVaを算出する。ここでは、上記の式(c1)、(c2)において微分演算子pを除去したものに、指令電流ベクトルIdqrを入力することで平均電圧ベクトルVaを算出する。すなわち、スイッチング状態の切り替えによる電流のリプルを除けばモータジェネレータ10に流れる平均的な電流が指令電流idr,iqrであることに鑑み、モータジェネレータ10に指令電流idr,iqrが定常的に流れる場合にこれに印加される電圧として平均電圧ベクトルVaを算出する。
【0060】
続くステップS18では、電流の誤差が許容範囲内にあるか否か(誤差ベクトルedqのノルム|edq|が閾値eth以下であるか否か)を判断する。ここで閾値ethは、モータジェネレータ10の状態量(電流の振幅、電気角速度ω等)によって可変設定することが望ましい。そして、許容範囲内にあると判断される場合、ステップS20において、指令電流ベクトルIdqrのノルム|Idqr|と予測電流ベクトルIdqeのノルム|Idqe|との大小関係が反転したか否かを判断する。この処理は、先の図3の点P2となるタイミングを判断するためのものである。そして、反転した場合には、状態遷移許可フラグFを「1」とする。ただし、状態遷移許可フラグFを「1」とする条件には、現在の電圧ベクトルV(n)が、平均電圧ベクトルVaとのなす角度の小さい一対の有効電圧ベクトルのうちのいずれか一方である旨の条件をさらに加える。すなわち、状態遷移許可フラグFは、現在の電圧ベクトルV(n)が、上記いずれか一方である旨の条件と上記反転した旨の条件との論理積が真である場合に「1」とされる。
【0061】
上記ステップS18において否定判断される場合や、ステップS20において肯定判断される場合には、ステップS22に移行し、次回の更新タイミングにおける電圧ベクトルV(n+1)の変更を検討する処理を行なう。これに対し、ステップS22の処理が完了する場合や、ステップS20において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0062】
図6に、上記ステップS22の処理の詳細を示す。
【0063】
この一連の処理では、まずステップS30において、状態遷移許可フラグFが「1」であるか否かを判断する。そして状態遷移許可フラグFが「1」であると判断される場合、ステップS32において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度が小さい一対の有効電圧ベクトルのうち現在の電圧ベクトルV(n)ではないもの(図中、実線)にて表現される操作状態の優先度が最も高いとして、これを検討対象とする。
【0064】
これに対し、ステップS30において否定判断される場合、ステップS34において、現在の電圧ベクトルV(n)が有効電圧ベクトルであるか否かを判断する。この処理は、先の図3における点P1において特定の有効電圧ベクトルを優先するためのものである。すなわち、ステップS34において否定判断される場合、ステップS36において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度が小さい一対の有効電圧ベクトルのうちの現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え相数が「1」以下となる方にて表現される操作状態の優先度が最も高いとして、これを検討対象とする。例えば一対の有効電圧ベクトルが有効電圧ベクトルV3、V4であって且つ現在の電圧ベクトルがゼロ電圧ベクトルV0である場合、有効電圧ベクトルV3への切り替え相数は「1」である一方、有効電圧ベクトルV4への切り替え相数は「2」であるため、有効電圧ベクトルV3が検討対象とされる。
【0065】
これに対し、ステップS34において肯定判断される場合、ステップS38において、平均電圧ベクトルVaとのなす角度がA(≦20°)以下となる有効電圧ベクトルViが存在することと、現在の電圧ベクトルV(n)へ切り替える直前における電圧ベクトルが有効電圧ベクトルであることとの論理和が真であるか否かを判断する。ここで、第2の条件は、先の図3の点P3においてゼロ電圧ベクトルを優先するためのものである。また、第1の条件は、平均電圧ベクトルVaとのなす角度が小さい有効電圧ベクトルViがある場合、平均電圧ベクトルVaを生成する上で有効電圧ベクトルViはほとんど寄与しないことに鑑みてゼロ電圧ベクトルを優先するためのものである。上記論理和が真である場合、ステップS40において、現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え相数が「1」以下となるゼロ電圧ベクトルにて表現される操作状態の優先度が最も高いとして、これを検討対象とする。例えば、現在の電圧ベクトルV(n)がV4である場合、ゼロ電圧ベクトルV7にて表現される操作状態が検討対象とされ、現在の電圧ベクトルV(n)がV3である場合、ゼロ電圧ベクトルV0にて表現される操作状態が検討対象とされる。
【0066】
上記ステップS32、S36,S40の処理が完了する場合、ステップS42に移行する。ステップS42においては、検討対象とされた電圧ベクトルにて表現される操作状態を仮に設定した場合についての予測電流ベクトルIdqe(n+2)を算出し、これについての誤差ベクトルedqのノルム|edq|が閾値eth以下であるか否かを判断する。そして、閾値eth以下であると判断される場合、ステップS46において検討対象とされた電圧ベクトルを採用する。
【0067】
これに対し、ステップS42や上記ステップS38において否定判断される場合には、ステップS44において、現在の電圧ベクトルV(n)からのスイッチング状態の切り替え相数が「1」以下となるもの全てのうち、評価関数Jによる評価が最も高いものを採用する。例えば現在の電圧ベクトルV(n)が有効電圧ベクトルV3である場合、有効電圧ベクトルV2,V3,V4とゼロ電圧ベクトルV0とのうちの評価関数Jによる評価が最も高いものを採用する。
【0068】
なお、上記ステップS46,S44の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
「2.音圧制御」
本実施形態では、車両の低速度走行時において、モータジェネレータ10やインバータIVによって生じるノイズを、人に感知されやすい周波数帯域において特に大きくなるようにすることを考える。これは、低速度走行時においては、駆動輪と路面との摩擦音等が小さいために、摩擦音等によっては、車両の周囲に車両が接近していることを気づかせるには十分でないためである。上記ノイズのうち人に感知されやすい周波数帯域を大きくする制御は、上記モデル予測制御における操作状態の更新可能周期(制御周期Tc)を操作することで行うことができる。
【0069】
図7に、制御周期Tcが長い場合(実線)と短い場合(一点鎖線)とのそれぞれにおける音圧レベル(dB)と周波数(Hz)との関係を示す。
【0070】
図示されるように、制御周期Tcを長くすることで音圧が極大値となる周波数が低下する。ここで、図示した制御周期Tcが長い場合と短い場合とのいずれも、「0.5〜8kHz」において音圧が極大値を取る。この周波数帯域は、人に特に感知されやすい周波数帯域である。このため、制御周期Tcが図1に一点鎖線にて示した例よりも短い場合には、制御周期Tcを伸長操作することで、人に感知されやすい音を発生させることができることとなる。ここで、制御周期Tcを伸長操作することで音圧が極大となる周波数が低下するのは、スイッチング状態の切り替え周波数が低下するためであると考えられる。特に、図中実線にて示した制御周期Tcが長い場合にあっては、「1〜5kHz」において音圧が極大値を取る(代表的な可聴周波数「1〜12kHz」において最大値となってもいる)。ここで、「1〜5kHz」の周波数帯域は、人に特に感知されやすくて且つ不快感を生じることが少ない周波数帯域である。
【0071】
上記に鑑み、本実施形態では、車両の走行速度が低い場合に制御周期Tcを伸長操作する。ここで、「0.5〜8kHz」(望ましくは「1〜5kHz」)において音圧が極大値を取るように制御周期Tcを常時設定しないのは、制御精度や必要性等に鑑みたものである。すなわち、一般に車両の走行速度が大きいほどモータジェネレータ10の回転速度が大きくなり、この場合、モデル予測制御の離散化誤差が大きくなりやすい。また、走行速度が大きい場合には、主機として内燃機関のみを搭載する車両においても車両の発生する音として駆動輪と路面との摩擦音等が支配的になるため、原動機等の生じる音を周囲に車両が接近したことを感知させる目的で使用する要求に乏しい。特にこの場合、原動機等に生じる音は外部に対して車両の接近を知らせるのに効果的なものとならない反面、搭乗者にとってノイズとはなることに鑑みれば、静音性を高めることが望ましい。
【0072】
図8に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
この一連の処理では、まずステップS50において車両の走行速度Vvが閾値速度Vth以下であるか否かを判断する。ここで、閾値速度Vthは、周囲に車両の接近を感知させるうえでモータジェネレータ10やインバータIVによって生じるノイズを利用することが所望される速度の上限値に設定される。この速度は、例えば「20〜30km/h(望ましくは20km/h)」とすればよい。そして閾値速度Vth以下であると判断される場合、ステップS52において、制御周期Tcを伸長させる処理を行う。ここで、制御周期Tcの変更後の値は、「0.5〜8kHz」(望ましくは「1〜5kHz」)において音圧が極大値を取るように予め実験等によって求めておけばよい。
【0074】
なお、上記ステップS52の処理が完了する場合や、ステップS50において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0075】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0076】
(1)車両の低速度走行時において、インバータIVの操作状態の更新可能周期(制御周期Tc)を伸長操作した。これにより、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができ、ひいては、人に感知されやすい周波数帯域に音圧の極大値を移行させることができる。
【0077】
(2)音圧についての0.5〜8kHz(望ましくは「1〜5kHz」)の周波数領域における最大値が、これに隣接する高周波領域における値と比較して大きくなるようにした。これにより、人に特に感知されやすい周波数の音を大きくすることができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0078】
本実施形態では、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させる処理として、上記閾値ethを増加させる処理を行う。すなわち、閾値ethを増加させると、先の図4のステップS18において肯定判断されるまでに要する時間が伸長するため、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができる。
【0079】
図9に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図9において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0080】
この一連の処理では、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS52aにおいて、閾値ethを増加させる操作を行う。ここで、閾値ethは、スイッチング状態の切り替えに伴う電流のリプル周波数を低下させることで、人に感知されやすい周波数帯域に音圧の極大値を移行させることができる値に設定される。この設定は、予め実験等に基づき行うことができる。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0082】
(3)車両の低速度走行時において、閾値ethを増加操作した。これにより、スイッチング状態の切り替え周波数を低下させることができ、ひいては、人に感知されやすい周波数帯域に音圧の極大値を移行させることができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0083】
図10に本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図10において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0084】
この一連の処理では、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS52cにおいて、制御周期Tcを伸長操作して且つ、伸長操作された周波数を周期的に変動させる処理を行う。ここで、伸長された周波数を周期的に変動させるのは、特定の周波数の音圧が常時大きい場合、人に不快感を与えやすい一方、音圧の極大値が変動する場合、人によるフィーリングが良好となりやすいとの知見による。
【0085】
上記周期的な変動処理は、これによって生じる音圧の極大値が、0.5〜8kHz(望ましくは「1〜5kHz」)の周波数領域内で変動するようにする。具体的には、この変動処理は、伸長された制御周期Tcを、M系列信号とすることなどで行えばよい。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0087】
(4)制御周期Tcを伸長操作するに際し、制御周期Tcを周期的に変動させた。これにより、音圧が極大値となる周波数を変動させることなどができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0088】
本実施形態では、制御周期Tcを伸長操作するに際し、所定の条件下、モータジェネレータ10の効率(モータジェネレータ10の入力電力に対する出力電力の比)を低下させる処理を行う。これは、音圧を大きくするためのものである。図11に、モータジェネレータ10のトルクが大きい場合(実線)と小さい場合(一点鎖線)とのそれぞれについて、音圧の分布を示す。図示されるように、モータジェネレータ10のトルクが小さい場合には大きい場合と比較して音圧が小さくなる。これは、トルクが小さい場合、モータジェネレータ10に流れる電流が小さいため、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅が小さくなるためであると考えられる。このため、上記制御周期Tcの伸長操作によって、人が感知しやすい周波数帯域に音圧の極大値が入るようにしたとしても、その絶対値が小さくなることで、音圧が不十分となるおそれがある。特に低速度運転時において路面が平らである場合等においてはモータジェネレータ10に要求されるトルクも小さくなりやすいため、音圧が不十分となるおそれは深刻である。
【0089】
そこで本実施形態では、音圧が十分とならないと想定される状況下、モータジェネレータ10の効率を低下させる。これにより、モータジェネレータ10の生成するトルクの割りに電流を増加させることができることから、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅を大きくすることができ、ひいては音圧を大きくすることができる。
【0090】
図12に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図12において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0091】
この一連の処理では、上記ステップS52の処理が完了する場合、ステップS54において、要求トルクTrに基づきモータジェネレータ10の効率を算出する。ここで、要求トルクTrは、制御量(トルク)の制御のためにモータジェネレータ10を流れる電流を把握するためのパラメータである。換言すれば、制御量を制御する上で生じる音圧の大きさを把握するためのパラメータである。本実施形態では、要求トルクTrが小さいほど制御量の制御のための電流量が小さくなることに鑑み、要求トルクTrが小さいほど効率の低下量(最小電流最大トルク制御時の効率からの低下量)を大きくする。
【0092】
続くステップS56においては、算出された効率に基づき指令電流を変更する処理を行う。これにより、モータジェネレータ10に生じるトルクを要求トルクTrに制御しつつも、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅を大きくすることができる。
【0093】
なお、上記ステップS56の処理が完了する場合や、ステップS50において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0094】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0095】
(5)制御周期Tcの伸長操作時において、モータジェネレータ10の効率を低下させた。これにより、モータジェネレータ10のトルクの制御性を低下させることなく、電流のリプルの振幅を増大させることができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図13に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図13において、先の図12に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0097】
この一連の処理では、ステップS52の処理の後、ステップS54aにおいて、車両の総重量Vmtや、車両が現在走行している路面が登坂路であるか否かの情報に基づきモータジェネレータ10の効率を算出する。ここで、総重量Vmtや登坂路の有無に関する情報は、モータジェネレータ10の制御量を制御する上でモータジェネレータ10に流れる電流を把握するための情報である。すなわち、総重量Vmtが大きいほどモータジェネレータ10に要求されるトルクが大きくなりやすいため、モータジェネレータ10を流れる電流が大きくなりやすい。また、登坂路においては、モータジェネレータ10に要求されるトルクが大きくなるため、モータジェネレータ10を流れる電流が大きくなる。このため、車両総重量Vmtが小さいほど、効率の低下量を大きくし、登坂路においては効率を高くする。
【0098】
なお、総重量Vmtは、車両重量Vmと搭乗員等の重量との和として算出すればよい。ここで、車両重量Vmは、仕様情報として、制御装置20に予め記憶しておけばよい。また、搭乗員等の重量は、例えば座席に搭載されたセンサの出力に基づき搭乗員数を検出し、これに所定重量を乗算することで算出すればよい。もっとも、これに代えて、重量センサを備えて搭乗員等の重量を直接検出してもよい。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
本実施形態では、モータジェネレータ10の効率を低下させる代わりに、モータジェネレータ10の実際のトルクを周期的に変動させつつその平均値を要求トルクTrに制御する。この場合、モータジェネレータ10の実際のトルクは、微視的なタイムスケールでは要求トルクTrを上回るため、モータジェネレータ10を流れる電流を微視的なタイムスケールで大きくすることができる。このため、インバータIVのスイッチング状態の切り替えに伴うリプル電流の振幅の最大値(極大値)を大きくすることができ、ひいては音圧を大きくすることができる。
【0100】
図14に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図14において、先の図8に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0101】
この一連の処理では、ステップS52の処理の後、ステップS60において、要求トルクTrに基づきモータジェネレータ10のトルクの振幅値Taを算出する。ここで、要求トルクTrは、制御量(トルク)の制御のためにモータジェネレータ10を流れる電流を把握するためのパラメータである。本実施形態では、要求トルクTrが小さいほど制御量の制御のための電流量が小さくなることに鑑み、要求トルクTrが小さいほど振幅値Taを大きくする。
【0102】
続くステップS62においては、モータジェネレータ10の実際のトルクを、上記振幅値Taを有して変動するように制御する。これは、指令電流設定部24の入力パラメータ(Tr1)を、振幅値Taの正弦波関数によって要求トルクTrを補正したものとすることで行うことができる。本実施形態では、この正弦波関数を、電気角θの一周期を周期とするものとした。
【0103】
なお、上記ステップS50において否定判断される場合や、ステップS62の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0104】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0105】
(6)制御周期Tcの伸長操作に際し、モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値(Tr1)を周期的に変化させつつその平均値を要求トルクTrとした。これにより、モータジェネレータ10の実際のトルクを局所的なタイムスケールで要求トルクTrよりも大きくすることができ、そのときの電流のリプルの振幅をトルクを周期的に変化させない場合と比較して大きくすることができる。このため、音圧の極大値を大きくすることができる。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第6の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0106】
図15に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図15において、先の図14に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0107】
この一連の処理では、ステップS60aにおいて、車両の総重量Vmtや、車両が現在走行している路面が登坂路であるか否かの情報に基づきトルクの振幅値Taを算出する。なお、これら振幅値Taの算出のためのパラメータの技術的意義は、先の図13のステップS54aに示したものと同様である。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0108】
本実施形態では、所定の条件下、モータジェネレータ10の効率を低下させる処理を制限する処理を行う。
【0109】
図16に、上記モータジェネレータ10の効率低下処理の制限処理の手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0110】
この一連の処理では、まずステップS70において、制御周期Tcの伸長操作がなされているか否かを判断する。そして伸長操作がなされている場合、ステップS72において、主機系統の温度Tを取得する。ここで主機系統の温度Tとは、インバータIVのスイッチング素子の温度や、モータジェネレータ10の温度のことである。続くステップS74においては、高電圧バッテリ12の残存容量SOCを取得する。そして、ステップS76においては、温度Tが閾値温度Tth以上であることと、残存容量SOCが閾値容量Sth以下であることとの論理和が真であるか否かを判断する。この処理は、モータジェネレータ10の効率を低下させる処理を制限する処理の実行条件が成立したか否かを判断するためのものである。ここで、温度Tが高い場合には、主機系統の信頼性の低下を招くおそれがある。また、残存容量SOCが小さい場合には、高電圧バッテリ12の信頼性の低下を招いたり、走行可能距離が過度に短くなったりするおそれがある。このため、こうした事態となった場合には、効率の低下を制限することとする。
【0111】
すなわち、ステップS76において肯定判断される場合、ステップS78において、効率の低下を制限することで、温度Tの更なる上昇を抑制したり、残存容量SOCの更なる低下を抑制したりする。この効率の低下を制限することに伴うリプル電流の減少を、本実施形態では、上記第7の実施形態の要領でトルクを変動させることで行う。
【0112】
なお、上記ステップS70,S76において否定判断される場合や、ステップS78の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0113】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0114】
(7)主機系統の温度Tが高い場合、モータジェネレータ10の効率の低下処理を制限した。これにより、温度Tの更なる上昇を抑制することができる。
【0115】
(8)高電圧バッテリ12の残存容量SOCが少ない場合、モータジェネレータ10の効率の低下処理を制限した。これにより、残存容量SOCのさらなる低下を抑制することができる。
【0116】
(9)効率の低下処理が制限される状況下、モータジェネレータ10の実際のトルクを周期的に変動させつつその平均値を要求トルクTrに制御した。これにより、モータジェネレータ10の効率の低下処理の制限による音圧の制限を緩和することができる。
<第9の実施形態>
以下、第9の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0117】
本実施形態では、車両の外部の音をフィードバック制御する。
【0118】
図17に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図17において、先の12に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0119】
この一連の処理では、ステップS50において肯定判断される場合、ステップS80において、外部の音圧分布を検出する。これは、車両の外部に突出したマイクを設けるなどすることで行うことができる。そして、ステップS80の処理が完了する場合、外部の音圧分布の検出結果に基づき制御周期Tcを伸長操作する。すなわち、車両の外部の音圧分布から、人に感知されやすい周波数帯域(「0.5〜8kHz」、望ましくは「1〜5kHz」)において音圧が高くないところに、モータジェネレータ10やインバータIVの音圧の極大値がくるように、制御周期Tcを設定する。
【0120】
続くステップS54aにおいては、音圧分布の検出結果と要求トルクTrとに基づきモータジェネレータ10の効率を算出する。ここで、要求トルクTrの技術的意義は、先の図12のステップS54と同様である。本実施形態で音圧分布の検出結果に基づき効率を算出するのは、外部の音に打ち消されないだけの音圧を確保することが可能な効率を把握するためである。ステップS54aの処理が完了する場合、ステップS56において効率に基づき指令電流を変更する処理を行う。
【0121】
なお、上記ステップS50において否定判断される場合や、ステップS56の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0122】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態における上記(1)、(2)等の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0123】
(10)音圧分布の検出結果に基づき、制御周期Tcを可変設定した。これにより、外部の音圧の極大値とスイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧の極大値との周波数を相違させることができる。
【0124】
(11)音圧分布の検出結果に基づき、効率を可変設定した。これにより、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
<第10の実施形態>
以下、第10の実施形態について、先の第9の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0125】
図18に、本実施形態にかかる音圧制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置20によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図18において、先の図17に示した処理に対応する処理には、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0126】
この一連の処理では、ステップS52dの処理の後、ステップS60aにおいて、音圧分布の検出結果と要求トルクTrとに基づきトルクの振幅値Taを算出する。ここで、要求トルクTrの技術的意義は、先の図14のステップS60と同様である。本実施形態で音圧分布の検出結果に基づき振幅値Taを算出するのは、外部の音に打ち消されないだけの音圧を確保することが可能な振幅値Taを把握するためである。ステップS60aの処理が完了する場合、ステップS62において振幅値Taに基づきトルクを変動させる処理を行う。
【0127】
なお、上記ステップS50において否定判断される場合や、ステップS62の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0128】
以上説明した本実施形態によれば、先の第9の実施形態における上記(10)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0129】
(12)音圧分布の検出結果に基づき、トルクの振幅値Taを可変設定した。これにより、スイッチング状態の切り替えによって発生させる音圧が外部の音圧によって打ち消されないようにすることができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
「変動手段について」
制御周期Tcを変動させる手段としては、制御周期Tcを周期的に変動させるものに限らない。例えば一度の低下処理期間において変動させる数よりも多い数の制御周期Tcの値が記憶された手段を用いて非周期的に変動させるものであってもよい。
「効率低下手段について」
効率の低下手法としては、トルクを要求トルクTrに維持しつつ効率を低下させるものに限らない。例えば、指令電流idr,iqrの位相をずらすことで効率を低下させる手段であってもよい。
【0130】
効率の低下量を可変設定するに際し、要求トルクTrに代えて、q軸電流を用いてもよい。これは、q軸電流が小さい場合、電流のリプルが小さくなり、ひいては音圧が低下すると考えられることによる。
【0131】
車両の走行状況および車両総重量の双方に基づき効率を可変設定する代わりに、これらのいずれか一方に基づき可変設定してもよい。また、車両総重量に代えて、搭乗員数や、搭乗員を無視した車両の重量に基づき効率を可変設定してもよい。さらに、車両の走行状況としては、登坂路であるか否かに限らず、例えば向かい風の風速等を加味してもよい。
「効率低下の制限時の処理について」
効率低下の制限時の処理としては、トルクを変動させる処理に限らない。例えば、低速度領域において制御周期Tcを伸長させる場合において、効率低下の制限時に閾値ethを増加させる処理を行ってもよい。これにより、スイッチング周波数がさらに低下するため、電流のリプルが大きくなり、ひいては音圧を大きくすることができる。同様に、低速度領域において閾値ethを増加させる処理を行う場合において、効率低下の制限時に制御周期Tcを伸長させる処理を行ってもよい。
「変動トルク設定手段について」
トルクの振幅値Taを可変設定するに際し、要求トルクTrに代えて、q軸電流を用いてもよい。これは、q軸電流が小さい場合、電流のリプルが小さくなり、ひいては音圧が低下すると考えられることによる。
【0132】
車両の走行状況および車両総重量の双方に基づきトルクの振幅値Taを可変設定する代わりに、これらのいずれか一方に基づき可変設定してもよい。また、車両総重量に代えて、搭乗員数や、搭乗員を無視した車両の重量に基づき効率を可変設定してもよい。さらに、車両の走行状況としては、登坂路であるか否かに限らず、例えば向かい風の風速等を加味してもよい。
「スイッチング状態の切り替え周波数の強制的な低下条件について」
上記各実施形態では、車両の走行速度が規定速度以下である場合に強制的な低下処理を行ったが、これに限らない。例えば、内燃機関を搭載している車両においては、車両の走行速度が規定速度以下である旨の条件と内燃機関が停止状態にある旨の条件との論理積が真である場合に強制的な低下処理を行ってもよい。
「低下手段について」
低下処理としては、「0.5〜8kHz」の領域の音圧がこれに隣接する高周波領域の音圧よりも大きくなると想定されるものに開ループ制御するものに限らない。例えば、モータジェネレータ10やインバータIVからの音を検出する手段を備え、音圧のフィードバック制御を行うものであってもよい。
【0133】
また、音圧の制御としては、「0.5〜8kHz」の領域の音圧がこれに隣接する高周波領域の音圧よりも大きくなる制御にも限らない。
「維持手段について」
維持手段としては、先の図4に示す処理を行うものに限らない。例えば、誤差ベクトルedqのノルム|edq|が閾値eth以下である場合に現在のスイッチング状態を維持して且つ、閾値ethを上回る場合には全ての操作状態(電圧ベクトルV0〜V7)の中から評価関数Jの評価が最も高いものを選択する処理であってもよい。
「評価関数について」
評価関数としては、入力パラメータとしての制御量とその指令値との差の各成分の2乗の和にも限らない。例えば制御量とその指令値との差の絶対値であってもよい。要は、入力パラメータとしての制御量とその指令値との差が大きいほど評価が低いことを定量化するものであればよい。
「予測手段について」
・上記各実施形態では、インバータIVの操作状態についての次の更新タイミング(1制御周期先のタイミング)におけるインバータIVの操作による制御量を予測したがこれに限らない。例えば数制御周期先の更新タイミングにおけるインバータIVの操作による制御量まで順次予測することで、1制御周期先の更新タイミングにおける操作状態を決定してもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、電流の検出タイミングをインバータIVの操作状態の更新タイミングに同期させたがこれに限らない。例えば、時系列的に隣接する各一対の更新タイミング間の中央のタイミングにおいて電流を検出するようにしてもよい。この場合であっても、次回の更新タイミングにおける操作状態の設定に伴う電流の予測の初期値として、次回の更新タイミングにおける電流を上記検出された電流に基づき予測することは有効である。
【0135】
・上記各実施形態では、インバータIVの操作状態の更新タイミングから1制御周期先の制御量を予測したがこれに限らない。例えば、操作状態の更新タイミングから1制御周期経過するまでの期間内の中間の時点における制御量を予測してもよい。
【0136】
・電流を予測するために用いるモデルとしては、鉄損を無視したモデルに限らず、これを考慮したモデルであってもよい。
【0137】
・電流の予測としては、モデルを用いるものに限らず、入力パラメータについての離散的な値に対応した出力パラメータの値が記憶された記憶手段(マップ)を用いるものであってもよい。
「電力変換回路について」
互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と回転機の各端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路としては、インバータIVに限らない。例えば、3つ以上の互いに相違する値の電圧を印加する電圧印加手段と回転機の各端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備えるものであってもよい。なお、回転機の各端子に3つ以上の互いに相違する値の電圧を印加するための電力変換回路としては、例えば特開2006−174697号公報に例示されているものがある。
「その他」
・回転機としては、埋め込み磁石同期機に限らず、表面磁石同期機や、界磁巻線型同期機等、任意の同期機であってよい。更に、同期機にも限らず、誘導モータ等、誘導回転機であってもよい。
【0138】
・回転機のエネルギ源としては、2次電池に限らず、例えば燃料電池であってもよい。
【0139】
・直流電源としては、高電圧バッテリ12に限らず、例えば高電圧バッテリ12の電圧を昇圧するコンバータの出力端子であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
10…モータジェネレータ、20…制御装置、IV…インバータ、Swp,Swn…スイッチング素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と車載主機としての回転機の端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作対象とし、前記電力変換回路の操作状態を設定した場合についての前記回転機の制御量を前記回転機のモデルに基づき予測する予測手段と、前記予測された制御量と該制御量の指令値とに基づき、前記電力変換回路の実際の操作状態を決定し、該決定された操作状態となるように前記電力変換回路を操作する操作手段とを備えてモデル予測制御によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、
車両の走行速度が規定速度以下となることを条件に、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を強制的に低下させる低下手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記低下手段は、前記電力変換回路の操作に起因して生じる音圧についての0.5〜8kHzの周波数領域における最大値が該領域に隣接する高周波領域における値と比較して大きくなるようにするものであることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記操作状態の更新可能周期の伸長操作とする伸長操作手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記操作手段は、前記予測された制御量と該制御量の指令値との偏差が閾値以下となることを条件に、現在のスイッチング状態を維持する維持手段を備え、
前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記閾値の増加操作とする増加操作手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記低下手段は、前記強制的な低下のための操作量の変更量を変動させる変動手段を備えることを特徴とする請求項3または4記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記モデル予測制御における前記制御量の指令値は、前記回転機を流れる電流を含み、
前記低下手段による低下制御時において、前記電流の指令値を、前記回転機の効率が低下するように変更する効率低下手段をさらに備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記効率低下手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記回転機および前記電力変換回路の少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記効率低下手段は、前記温度検出手段によって検出される温度が規定温度以上となる場合に前記効率の低下を制限することを特徴とする請求項6または7記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記複数の電圧印加手段は、電池を備えて構成されており、
前記電池の残存容量が少ない場合、前記効率の低下を制限する容量確保手段を備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、
前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備え、
前記変動トルク設定手段は、前記効率の低下が制限される状況下、前記トルクの指令値を周期的に変化させる処理を行うことを特徴とする請求項8または9記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、
前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記変動トルク設定手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする請求項10または11記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、
前記低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記スイッチング状態の切り替え周波数の低下量を可変設定することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、
前記効率低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項15】
前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、
前記変動トルク設定手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
前記電力変換回路は、直流電源の正極および負極のそれぞれに前記回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備えるものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項1】
互いに相違する値を有する電圧を印加する複数の電圧印加手段と車載主機としての回転機の端子とを選択的に開閉するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作対象とし、前記電力変換回路の操作状態を設定した場合についての前記回転機の制御量を前記回転機のモデルに基づき予測する予測手段と、前記予測された制御量と該制御量の指令値とに基づき、前記電力変換回路の実際の操作状態を決定し、該決定された操作状態となるように前記電力変換回路を操作する操作手段とを備えてモデル予測制御によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、
車両の走行速度が規定速度以下となることを条件に、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を強制的に低下させる低下手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記低下手段は、前記電力変換回路の操作に起因して生じる音圧についての0.5〜8kHzの周波数領域における最大値が該領域に隣接する高周波領域における値と比較して大きくなるようにするものであることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記操作状態の更新可能周期の伸長操作とする伸長操作手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記操作手段は、前記予測された制御量と該制御量の指令値との偏差が閾値以下となることを条件に、現在のスイッチング状態を維持する維持手段を備え、
前記低下手段は、前記スイッチング素子のスイッチング状態の切り替え周波数を低下制御するための操作を、前記閾値の増加操作とする増加操作手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記低下手段は、前記強制的な低下のための操作量の変更量を変動させる変動手段を備えることを特徴とする請求項3または4記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記モデル予測制御における前記制御量の指令値は、前記回転機を流れる電流を含み、
前記低下手段による低下制御時において、前記電流の指令値を、前記回転機の効率が低下するように変更する効率低下手段をさらに備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記効率低下手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする請求項6記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記回転機および前記電力変換回路の少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記効率低下手段は、前記温度検出手段によって検出される温度が規定温度以上となる場合に前記効率の低下を制限することを特徴とする請求項6または7記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記複数の電圧印加手段は、電池を備えて構成されており、
前記電池の残存容量が少ない場合、前記効率の低下を制限する容量確保手段を備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、
前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備え、
前記変動トルク設定手段は、前記効率の低下が制限される状況下、前記トルクの指令値を周期的に変化させる処理を行うことを特徴とする請求項8または9記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記モデル予測制御は、前記回転機のトルクを要求トルクに制御するものであり、
前記低下手段による低下制御時、前記モデル予測制御に対する入力パラメータとしてのトルクの指令値を周期的に変化させつつその平均値を前記要求トルクとする変動トルク設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記変動トルク設定手段は、前記回転機のトルク、前記車両の重量、前記車両の走行状況の少なくとも1つに応じて前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする請求項10または11記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、
前記低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記スイッチング状態の切り替え周波数の低下量を可変設定することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、
前記効率低下手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記効率の低下量を可変設定することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項15】
前記車両の外部の音圧分布を検出する音圧分布検出手段をさらに備え、
前記変動トルク設定手段は、前記音圧分布検出手段による検出結果に基づき、前記トルクの指令値の周期的な変化量を可変設定することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
前記電力変換回路は、直流電源の正極および負極のそれぞれに前記回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備えるものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−34523(P2012−34523A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173276(P2010−173276)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]