説明

基板の処理装置及び処理方法

【課題】この発明は半導体ウエハを高い清浄度で、しかもウオータマークを発生させることなく洗浄することができるようにした処理装置を提供することにある。
【解決手段】上面に半導体ウエハを保持して回転駆動される回転テーブル16と、回転テーブルの上方に半導体ウエハを横切る方向に駆動可能に配置され半導体ウエハに処理液をミスト状にして供給する第1のノズル体46と、半導体ウエハの第1のノズル体から供給されたミスト状の処理液によって処理された部分に処理液を液状の状態で供給する第2のノズル体56と、第2のノズル体よる処理液の供給量或いは回転テーブルの回転数の少なくともどちらか一方を制御して第1のノズル体によって半導体ウエハにミスト状で供給された処理液を半導体ウエハから排出させる制御装置7を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は回転駆動される基板にミスト状の処理液を供給して処理する基板の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば液晶表示装置や半導体装置の製造工程においては、矩形状のガラス基板や半導体ウエハなどの基板に回路パタ−ンを形成するための成膜プロセスやフォトプロセスがある。これらのプロセスでは、スピン方式の処理装置を用いて基板を薬液で処理した後、洗浄作用を有する処理液で洗浄処理し、ついで処理液を除去する乾燥処理が繰り返して行われる。
【0003】
上記処理装置は、周知のように処理槽を有し、この処理槽内にはカップ体が設けられ、このカップ体には駆動源によって回転駆動される回転テーブルが設けられている。この回転テーブルには上記基板が着脱可能に供給保持される。
【0004】
上記基板は板面に洗浄液が供給されながら回転テーブルとともに所定の回転速度で回転駆動されることで洗浄処理される。洗浄処理を所定時間行った後、基板は洗浄時よりも高速度で回転させられる。それによって、基板に付着残留した洗浄液が遠心力によって除去されて基板が乾燥処理されることになる。
【0005】
上記基板を洗浄液によって洗浄処理する際、洗浄効果を高めるために洗浄液をミスト状にして供給するということが行われている。すなわち、洗浄に用いられる洗浄ノズルには洗浄液と高圧気体とが供給される。それによって、洗浄ノズル内で洗浄液と高圧気体が混合し、洗浄液がミスト状になって上記洗浄ノズルから基板に向かって噴射されることになる。
【0006】
洗浄液を洗浄ノズルからミスト状にして噴射すると、洗浄液が基板に形成された微細なパターン間に確実に入り込むから、液状のままで供給する場合に比べて洗浄効果を高めることができるということがある。
【0007】
ミスト状の処理液を用いて基板を洗浄する場合、その洗浄効果をより一層高めるためには、洗浄ノズルから基板に向けて噴射される洗浄液の圧力を高くしてミスト状の処理液の供給量を増大させ、洗浄後の汚れを含む洗浄液の基板上からの排出を確実に行うようにしている。
【0008】
しかしながら、最近では基板に形成されるパターンが微細化する傾向にある。そのため、洗浄ノズルから基板に向けて噴射される洗浄液の圧力を高くしてミスト状の処理液の供給量を増大させて洗浄効果を高めるようにすると、微細なパターンがダメージを受ける虞がある。
【0009】
そこで、従来は洗浄ノズルから基板に向けて噴射されるミスト状の洗浄液の供給量(噴射量)を、基板に形成されたパターンを損傷させることのない圧力(少ない量)で供給することで、基板を洗浄するということが行なわれている。
【0010】
ミスト状の処理液を用いて基板を洗浄する従来技術は特許文献1に示されている。特許文献1では第1の吐出手段によって基板に予め液膜を形成し、ついで第2の吐出手段によって液膜が形成された基板に処理液をミスト状にして供給することで、基板を洗浄処理することが示されている。
【特許文献1】特開2003−209087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板にミスト状の洗浄液を供給する場合、パターンの損傷を防止し、しかも洗浄効果を得るためには基板に噴射されるミストを小さくし、しかも液量を少なくするということが行われている。
【0012】
しかしながら、基板に供給する処理液の量を少なくすると、基板に供給されたミスト状の洗浄液によって基板の汚れが除去されても、その汚れを含む処理液の量が少ないことで、その処理液が基板の上面から円滑に排出されないということがあり、その結果、基板に汚れが残留したり、基板が部分的に乾燥してウオータマークが発生するということがある。
【0013】
一方、特許文献1に示されているように、基板に予め液膜を形成し、次いで処理液をミスト状にして供給すれば、基板の板面には処理液が十分な量で滞留することになるから、汚れを含む処理液を基板の上面から排出したり、基板が部分的に乾燥してウオータマークが発生するのを防止することができるということがある。
【0014】
しかしながら、基板にミスト状の処理液を供給する前に、基板に予め処理液を供給して液膜を形成しておくと、ミスト状の処理液による洗浄効果が液膜によって損なわれるということがある。そこで、ミスト状の処理液の供給圧力を高くして液膜による洗浄効果の低下を防止するということが考えられるが、その場合、基板に形成されたパターンを損傷させるという虞がある。
【0015】
この発明は、基板にミスト状の処理液を小さなミストで、液量を少なくして供給した場合に、基板に汚れを含む処理液が残留したり、ウオータマークが発生することがないようにした基板の洗浄装置及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、基板を回転させながら処理液によって処理する基板の処理装置であって、
上面に上記基板を保持して回転駆動される回転テーブルと、
この回転テーブルの上方に上記基板を横切る方向に駆動可能に配置され上記基板に上記処理液をミスト状にして供給する第1の処理液供給手段と、
上記基板の上記第1の処理液供給手段から供給されたミスト状の処理液によって処理された部分に処理液を液状の状態で供給する第2の処理液供給手段と、
この第2の処理液供給手段による処理液の供給量或いは上記回転テーブルの回転数の少なくともどちらか一方を制御して上記第1の処理液供給手段によって基板にミスト状で供給された処理液を上記基板上から排出させる制御手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置にある。
【0017】
上記回転テーブルの上方に基端を支点として円弧運動するアーム体が設けられ、このアーム体の先端に上記第1の処理液供給手段及びこの第1の処理液供給手段の移動方向後方に上記処理液を供給する上記第2の処理液供給手段が設けられていることが好ましい。
【0018】
この発明は、基板を回転させながら処理液によって処理する基板の処理方法であって、
上記基板を回転テーブルに供給して回転駆動させる工程と、
回転する基板の上面にミスト状の処理液を供給する工程と、
上記基板の上面の上記ミスト状の処理液によって処理された部分に処理液を液状の状態で供給する工程と、
上記基板に供給する液状の処理液の供給量或いは上記基板の回転数の少なくともどちらか一方を制御して上記基板に供給されたミスト状の処理液を上記基板上から排出させる工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法にある。
【0019】
上記基板に供給する液状の処理液の供給量或いは上記基板の回転数は、液状の処理液が供給される部位の上記基板の周速度に応じて制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、基板のミスト状の処理液によって洗浄された部分に、液状の処理液を供給し、その供給量或いは基板の回転数を制御してミスト状の処理液を基板から排出させる。そのため、基板に形成されたパターンを損傷させるようなことがないよう、ミスト状の処理液の供給量を少なくしても、ミスト状の処理液によって処理された部分に供給される液状の処理液の液膜の厚さを所定の厚さに維持することができる。
【0021】
したがって、ミスト状の処理液によって処理された汚れを、つぎに供給される処理液によって基板から確実に洗い流すことが可能となるから、洗浄効果を向上させたり、ウオータマークの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1はスピン処理装置を示し、このスピン処理装置は処理槽1を備えている。この処理槽1内にはカップ体2が配置されている。このカップ体2は、上記処理槽1の底板上に設けられた下カップ3と、この下カップ3に対して図示しない上下駆動機構により上下動可能に設けられた上カップ4とからなる。
【0023】
上記下カップ3の底壁には周方向に所定間隔で複数の排出管5が接続されている。これら排出管5は排気ポンプ6に連通している。この排気ポンプ6は制御装置7によって発停及び回転数が制御されるようになっている。
【0024】
上記カップ体2の下面側にはベース板8が配置されている。このベース板8には、上記下カップ3と対応する位置に取付け孔9が形成されている。この取付け孔9には駆動手段を構成する制御モータ11の固定子12の上端部が嵌入固定されている。制御モータ11は上記制御装置7によって発停及び回転数が制御されるようになっている。
【0025】
上記固定子12は筒状をなしていて、その内部には同じく筒状の回転子13が回転自在に嵌挿されている。この回転子13の上端面には筒状の連結体14が下端面を接触させて一体的に固定されている。この連結体14の下端には上記固定子12の内径寸法よりも大径な鍔部15が形成されている。この鍔部15は上記固定子12の上端面に摺動自在に接触しており、それによって回転子13の回転を阻止することなくこの回転子13が固定子12から抜け落ちるのを防止している。
【0026】
上記下カップ3には上記回転子13と対応する部分に通孔3aが形成され、上記連結体14は上記通孔3aからカップ体2内に突出している。この連結体14の上端には回転テーブル16が取付けられている。この回転テーブル16の周辺部には周方向に所定間隔、この実施の形態では60度間隔で6本(2本のみ図示)の円柱状の保持部材17が図示しない駆動機構によって回転可能に設けられている。
【0027】
上記保持部材17の上端面には、この保持部材17の回転中心から偏心した位置にテーパ面を有する支持ピン18が設けられている。回転テーブル16には、基板としての半導体ウエハWが周縁部の下面を上記支持ピン18のテーパ面に当接するよう供給される。その状態で上記保持部材17を回転させれば、支持ピン18が偏心回転するから、回転テーブル16に供給された半導体ウエハWは、上記支持ピン18によって保持される。
【0028】
上記回転テーブル16は乱流防止カバー21によって覆われている。この乱流防止カバー21は上記回転テーブル16の外周面を覆う外周壁22と、上面を覆う上面壁23とを有し、上記外周壁22は上側が小径部22a、下側が大径部22bに形成されている。回転テーブル16を回転させたときに、この乱流防止カバー21によって回転テーブル16の上面で乱流が発生するのが防止される。上記上カップ4の上面は開口していて、その内周面にはリング状部材25が設けられている。
【0029】
上記回転テーブル16に未処理の半導体ウエハWを供給したり、乾燥処理された半導体ウエハWを取り出すときには、上記上カップ4が後述するごとく下降させられる。
【0030】
上記処理槽1の上部壁には開口部31が形成されている。この開口部31にはULPAやHEPAなどのファン・フィルタユニット32が設けられている。このファン・フィルタユニット32はクリーンルーム内の空気をさらに清浄化して処理槽1内に導入するもので、その清浄空気の導入量は上記ファン・フィルタユニット32の駆動部33を上記制御装置7によって制御して行うようになっている。つまり、上記駆動部33により、ファン・フィルタユニット32のファン(図示せず)の回転数を制御することで、処理槽1内への清浄空気の供給量を制御できるようになっている。
【0031】
上記処理槽1の一側には出し入れ口34が開口形成されている。この出し入れ口34は、処理槽1の一側に上下方向にスライド可能に設けられたシャッタ35によって開閉される。このシャッタ35は圧縮空気で作動するシリンダ36によって駆動される。つまり、上記シリンダ36には圧縮空気の流れを制御する制御弁37が設けられ、この制御弁37を上記制御装置7によって切換え制御することで、上記シャッタ35を上下動させることができるようになっている。
【0032】
上記制御モータ11の回転子13内には筒状の固定軸41が挿通されている。この固定軸41の上端には、上記回転テーブル16に形成された通孔42から上記回転テーブル16の上面側に突出したノズルヘッド43が設けられている。このノズルヘッド43には上記回転テーブル16に保持された半導体ウエハWの下面に向けて処理液としての薬液及び純水を噴射する一対のノズル44が設けられている。
【0033】
上記乱流防止カバー21の上面壁23には上記ノズルヘッド43と対向して開口部45が形成され、この開口部45によって上記ノズルから噴射された処理液が半導体ウエハWの下面に到達可能となっている。
【0034】
回転テーブル16に保持された半導体ウエハWの上方には、洗浄処理時に半導体ウエハWの上面に処理液を供給する第1の処理液供給手段としての第1のノズル体46が配置されている。この第1のノズル体46はアーム体である水平アーム47の先端に設けられた取付け部材48に取付けられている。
【0035】
上記水平アーム47の基端は軸線を垂直にして配置された回転軸49の上端部に連結されている。この回転軸49の下端は回転駆動源51の出力軸52に連結されている。回転駆動源51は上記制御装置7によって回転角度が制御される。それによって、上記水平アーム47の先端に設けられた第1のノズル体46は図4に矢印Rで示すように半導体ウエハWの中心Oを通過して上記回転テーブル16に保持され半導体ウエハWを径方向に横切る方向に駆動されるようになっている。
【0036】
図3に示すように、上記第1のノズル体46には液体としての純水と、気体としての不活性ガス、たとえば窒素ガスがそれぞれ給液管53及び給気管54を通じて供給される。給液管53及び給気管54には上記制御装置7によって開閉制御される開閉弁53a,54aが設けられている。それによって、上記第1のノズル体46からは、上記回転テーブル16に保持された半導体ウエハWに向けて純水が窒素ガスによってミスト化された洗浄液が噴射されるようになっている。
【0037】
図2に示すように、上記取付け部材48の両側、つまり第1のノズル体46の両側には第2の処理液供給手段としての一対の第2のノズル体56a,56bが設けられている。一対の第2のノズル体56a,56bには給液管57から分岐された分岐管58が接続されている。各分岐管58には上記制御装置7によって開閉制御される開閉弁58aがそれぞれ設けられている。
【0038】
上記水平アーム47を半導体ウエハWの径方向に沿って駆動しながら第1のノズル体46からミスト状の処理液を上記半導体ウエハWに供給するとき、一対の第2のノズル体56a,56bのうち、上記第1のノズル体46の移動方向後方に位置する一方の第2のノズル体56a又は56bから半導体ウエハWに洗浄液が液状の状態で供給されるようになっている。つまり、半導体ウエハWのミスト状の処理液によって処理された部分に液状の処理液が供給されるようになっている。
【0039】
上記給液管57には流量制御弁61が設けられている。この流量制御弁61は上記制御装置7によって開度が制御される。それによって、供給管57を通じて上記一対の第2のノズル体56に供給される処理液の量が制御できるようになっている。
【0040】
つぎに、上記構成の処理装置によって半導体ウエハWを洗浄処理する場合について説明する。
半導体ウエハWを回転テーブル16に保持し、この回転テーブル16を所定の回転数で回転させたならば、第1のノズル体46からミスト状の処理液を半導体ウエハWに向けて噴射する。それと同時に、回転駆動源51を作動させて水平アーム47を半導体ウエハWの径方向に沿って回転させ、水平アーム47の先端の取付け部材48に設けられた一対の第2のノズル体56a,56bのうちの、第1のノズル体46の移動方向後方に位置する一方の第2のノズル体56a又は56bから液状の処理液を半導体ウエハWに向けて供給する。
【0041】
なお、第1のノズル体46からは、半導体ウエハWに形成された微細なパターンを損傷させることのない小さなミストが、半導体ウエハWの上面に後述するように0.01〜数μmの微小な厚さの液膜を形成するわずかな量で供給される。
【0042】
このようにすることで、半導体ウエハWは、まず、第1のノズル体46から供給されるミスト状の処理液によって洗浄される。ついで、半導体ウエハWのミスト状の処理液によって洗浄された部分に液状の処理液が供給される。
【0043】
それによって、その部分にはミスト状の処理液と液状の処理液とが混合して液膜が所定の厚さで形成されるから、その液膜は回転テーブル16の回転によって生じる遠心力で半導体ウエハWの上面から排出されることになる。
【0044】
半導体ウエハWにミスト状の処理液を供給して洗浄する場合、そのときの洗浄効果であるパーティクルの除去率は図5に示すように半導体ウエハWの上面に形成される液膜の厚さに関係することが実験によって確認されている。すなわち、液膜の厚さを0.01〜数μmの微小な厚さの範囲になるよう制御することで、パーティクルの除去率が向上することが確認されている。
【0045】
そのため、第1のノズル体46から半導体ウエハWに供給するミスト状の処理液の供給を液膜が0.01〜数μmとなるよう、その供給量を少なくすることで、パーティクルの除去率を向上させることができ、しかも供給量を少なくするとともにミストを小さくすることで、半導体ウエハWに形成された微細なパターンが損傷するのを防止することもできる。
【0046】
その反面、半導体ウエハWのミスト状の処理液が供給された部分の液膜は0.01〜数μm0.01〜数μmと薄いため、半導体ウエハWから除去されたパーティクルを含むミスト状の処理液の流動性が低下し、半導体ウエハWの上面から遠心力によって排出され難いということがあるばかりか、部分的に乾燥し、ウオータマークの発生を招くということがある。
【0047】
しかしながら、この実施の形態においては、第1のノズル体46の両側に一対の第2のノズル体56を設け、第1のノズル体46の移動方向後方に位置する一方の第2のノズル体56a又は56bから上記第1のノズル体46によってミスト状の処理液が供給された部分に、液状の処理液を供給するようにしている。
【0048】
そのため、半導体ウエハWの液膜が0.01〜数μmの厚さとなる供給量でミスト状の処理液が供給されて処理された部分には、ミスト状の処理液によって処理された後、直ちに第2のノズル体56から液状の処理液が供給されることで、その液状の処理液がミスト状の処理液に混合し、液膜がたとえば数mm程度に厚くなって処理液の流動性が確保される。
【0049】
それによって、半導体ウエハWのミスト状の処理液によって処理された部分が乾燥してウオータマークが発生するのが防止されるとともに、パーティクルを含むミスト状の処理液が第2のノズル体56から供給された処理液とともに半導体ウエハWの上面から確実に排出されることになるから、洗浄効果を確実に向上させることができる。
【0050】
図6は半導体ウエハWの回転数と、半導体ウエハWの上面に形成される液膜の厚さとの関係を示している。同図中曲線Aは第1のノズル体46から供給される処理液の量がXのときであり、曲線BはYのときであって、処理液の供給量はX<Yの関係にある。
この図から分かるように、曲線A,Bのいずれの場合であっても、回転数が高くなればなる程、半導体ウエハWの上面に形成される膜厚が薄くなる。
【0051】
半導体ウエハWの上面からのパーティクルの除去率を高めるため、図5に示すように液膜の厚さを0.01〜数μmにした場合、上述したように第1のノズル体46から半導体ウエハWに供給するミスト状の処理液の供給量が少なくなるため、半導体ウエハWから除去された汚れがその上面から排出され難いということが生じる。
【0052】
そのため、第1のノズル体46から半導体ウエハWにミスト状の処理液を供給してから、第2のノズル体56a,56bから半導体ウエハWに液状の処理液を供給するようにしているが、処理液を供給するとき、その供給量と回転テーブル16の回転数のうち、少なくともどちらか一方を制御装置7によって制御する。
【0053】
それによって、ミスト状の処理液によって汚れが除去された半導体ウエハWの上面に形成される処理液の厚さがミスト状の処理液の乾燥を防止して流動性が確保される状態に維持することができるから、汚れを含む処理液を半導体ウエハWの上面から良好に排出することが可能となる。
【0054】
図4に矢印Rで示すように、水平アーム47を回転させて第1のノズル体46を半導体ウエハWの径方向一端からその中心を通って他端へ円弧状に移動させる場合、半導体ウエハWの径方向の周辺部と中心部とでは周速度に差がある。
【0055】
そのため、回転テーブル16の回転数によって第1のノズル体46から半導体ウエハWに供給される処理液の供給量によって形成される液膜の厚さを制御する場合、第1のノズル体46が半導体ウエハWの径方向のどの位置で処理液を供給しているかに応じて第2のノズル体56a,56bからの処理液の供給量を制御する。
【0056】
それによって、半導体ウエハWの径方向全体にわたって処理液の厚さが同じになるよう制御できるから、半導体ウエハWの上面全面から汚れを含む処理液を均一に排出することができる。つまり、半導体ウエハWの上面全体をほぼ均一な清浄度で洗浄することが可能となる。
【0057】
具体的には、回転数を一定にして処理液の供給量を制御する場合、半導体ウエハWの径方向の周辺部で処理液の供給量を多くし、中心部にゆくにつれて減少させる。それによって、半導体ウエハWの径方向全体にわたって処理液の厚さがほぼ一定に維持できるから、半導体ウエハWの上面全体からほぼ均一に汚れを除去したり、部分的な乾燥の発生を防止することができる。
【0058】
一方、処理液の供給量を一定にして半導体ウエハWの回転数を制御する場合、回転する半導体ウエハWに発生する遠心力は径方向の周辺部が中心部よりも大きくなるから、液状の処理液を周辺部に供給するときには、中心部に供給するときよりも半導体ウエハWの回転数を低下させる。
【0059】
それによって、半導体ウエハWの上面に形成される液膜の厚さがほぼ同じになって処理液の排出速度も径方向全長にわたってほぼ同じになるから、半導体ウエハWの上面全体からほぼ均一に汚れを排出することができるばかりか、部分的な乾燥の発生も防止することができる。
【0060】
なお、半導体ウエハWの上面に形成される液膜の厚さを一定に維持するために、処理液の供給量或いは半導体ウエハWの回転数の少なくとも一方を制御する代わりに、先端に第1、第2のノズル体46,56a,56bが設けられた水平アーム47の旋回速度を制御するようにしてもよい。
【0061】
すなわち、第1、第2のノズル体46,56a,56bが半導体ウエハWの周辺部に処理液を供給するときには中心部に処理液を供給するときよりも水平アーム47の旋回速度を遅くする。つまり、水平アーム47の旋回速度は、半導体ウエハWの径方向周辺部から中心部に向かって旋回させるとき、旋回速度を上記半導体ウエハWの周速度の変化(減少)に応じて徐々に速くする。
【0062】
それによって、半導体ウエハWの上面に形成される液膜の厚さを、処理液の供給量或いは半導体ウエハWの回転数を制御する場合と同様、一定に維持することができる。すなわち、液膜の厚さを一定に維持するためには、処理液の供給量、半導体ウエハWの回転数或いは水平アーム47の旋回速度のうちの少なくとも1つを制御すればよい。
【0063】
上記水平アーム47は図4に矢印Rで示す方向だけでなく、その逆方向である−Rの方向或いは往復方向に回転させて半導体ウエハWに第1のノズル体46から洗浄液を供給することがある。その場合、水平アーム47を矢印Rで示す方向に回転させたときに、一方の第2のノズル体56aから処理液を供給したとするならば、−Rの方向に回転させたときには他方の第2のノズル体56bから処理液を供給する。
すなわち、第1のノズル体46の移動方向後方に位置する第2のノズル体56a或いは56bから処理液を供給することで、半導体ウエハWの洗浄効果を向上させたり、乾燥を防止することができる。
【0064】
なお、上記一実施の形態では基板として半導体ウエハを例に挙げて説明したが、基板としては液晶表示装置に用いられる矩形状のガラス板であってもよく、要は清浄に洗浄することが要求される板状のものであれば、この発明を適用することができる。
【0065】
図7(a),(b)はこの発明の他の実施の形態を示す。この実施の形態は水平アーム47の先端に取付けられる第1のノズル体46と、一対の第2のノズル体56a,56bの取付け構造の変形例である。この実施の形態では水平アーム47の先端に、ロッド状の取付け部材48aを、長手方向を水平アーム47の長手方向に沿わせて取付ける。
【0066】
上記取付け部材48aの長手方向中途部には軸線を垂直にして上記第1のノズル体46を取付け、この第1のノズル体46の前方と後方に一方の第2のノズル体56aと他方の第2のノズル体56bを、それぞれこれらの軸線を水平アーム47の回転方向に対して互いに逆方向に傾斜させて取付ける。図7(b)に一方の第2のノズル体56aの傾斜角度をθ1、他方の第2のノズル体56bの傾斜角度をθ2で示す。
【0067】
このような構成であっても、水平アーム47を回転させたとき、半導体ウエハWの第1のノズル体46によってミスト状の処理液が供給された部分、つまり水平アーム47の回転方向後方の部分に、上記アーム体47の回転方向に応じて一方の第2のノズル体56a或いは他方の第2のノズル体56bから液状の処理液を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の一実施の形態を示す基板の洗浄装置の概略的構成図。
【図2】水平アームの先端に設けられた第1、第2のノズル体を示す正面図。
【図3】第1、第2のノズル体の配管系統図。
【図4】半導体ウエハ上の第1のノズル体の軌跡を示す説明図。
【図5】半導体ウエハ上の液膜の厚さとパーティクルの除去率との関係を示す図。
【図6】半導体ウエハの回転数と液膜厚さとの関係を示す図。
【図7】(a)はこの発明のほかの実施の形態を示す水平アームの先端部分の平面図、(b)は取付け部材が取付けられた水平アームの正面図。
【符号の説明】
【0069】
7…制御装置、16…回転テーブル、46…第1のノズル体(第1の処理液供給手段)、47…水平アーム(アーム体)、56…第2のノズル体(第2の処理液供給手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させながら処理液によって処理する基板の処理装置であって、
上面に上記基板を保持して回転駆動される回転テーブルと、
この回転テーブルの上方に上記基板を横切る方向に駆動可能に配置され上記基板に上記処理液をミスト状にして供給する第1の処理液供給手段と、
上記基板の上記第1の処理液供給手段から供給されたミスト状の処理液によって処理された部分に処理液を液状の状態で供給する第2の処理液供給手段と、
この第2の処理液供給手段による処理液の供給量或いは上記回転テーブルの回転数の少なくともどちらか一方を制御して上記第1の処理液供給手段によって基板にミスト状で供給された処理液を上記基板上から排出させる制御手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記回転テーブルの上方に基端を支点として円弧運動するアーム体が設けられ、このアーム体の先端に上記第1の処理液供給手段及びこの第1の処理液供給手段の移動方向後方に上記処理液を供給する上記第2の処理液供給手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
基板を回転させながら処理液によって処理する基板の処理方法であって、
上記基板を回転テーブルに供給して回転駆動させる工程と、
回転する基板の上面にミスト状の処理液を供給する工程と、
上記基板の上面の上記ミスト状の処理液によって処理された部分に処理液を液状の状態で供給する工程と、
上記基板に供給する液状の処理液の供給量或いは上記基板の回転数の少なくともどちらか一方を制御して上記基板に供給されたミスト状の処理液を上記基板上から排出させる工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項4】
上記基板に供給する液状の処理液の供給量或いは上記基板の回転数は、液状の処理液が供給される部位の上記基板の周速度に応じて制御されることを特徴とする請求項3記載の基板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−246308(P2009−246308A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94357(P2008−94357)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】