説明

基板処理装置および基板の製造方法

【課題】熱分解やガスの反応による生成物質が処理室周辺に付着する事を抑制可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置202は、複数のサセプタ(被誘導加熱体)218と該サセプタ上に載置された複数のウェハ200を有し、サセプタ218からの輻射熱によりウェハ200を加熱処理する、インナーチューブ230から形成される処理室201と、インナーチューブ230の外側に設けられ、インナーチューブ230と間隙SPを成して囲うアウターチューブ205と、間隙SPに配置されるガス供給ノズル2321と、アウターチューブ205の外側に設けられ、サセプタ218を誘導加熱する誘導加熱装置と、を備え、インナーチューブ230には、処理室201に配置されるウェハ200の周縁側方に開口部FHが設けられている。また、ガス供給ノズル2321には、開口部FHおよびウェハ200に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置およびその処理技術に関し、処理室内にガスを供給し、基板に成膜する基板処理装置およびその処理技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平3−255619号公報(特許文献1)には、RF(Radio Frequency)コイルに高周波電流を流し、処理室内中央部に配設したウエハを搭載したサセプタの温度を上昇させてウエハを加熱することが記載されている。また、このサセプタの周囲に反応ガスの流れを均一にする分配板を備えた供給ノズルを設け、該供給ノズルの同一水平位置に複数の吹き出し孔を設け、該吹き出し孔からHガスと反応ガスとして例えばSiHガスを吹き出すことが記載されている。
【0003】
特開平10−50613号公報(特許文献2)には、反応炉内に設けたサセプタのウエハ搭載部に抵抗加熱ヒータを内蔵させることが記載されている。また、反応炉内に内管を設け、内管の一対の対向側壁のうち反応ガス供給室側の側壁に反応ガス供給口を、排気室側の側壁に排気口をそれぞれ形成することが記載されている。そして、反応ガス供給口と排気口をサセプタ各段のウエハ搭載部に対応して、多段に、かつ、ウエハ搭載面に平行なスリット状に形成することが記載されている。
【0004】
特公平6−16495号公報(特許文献3)には、外管および内管から成る2重管の反応管が記載されている。また、内管内に配置する基板を、抵抗加熱炉で加熱することが記載されている。また、内管内に設けられ、基板に向って開口している複数の細孔を有するノズルから反応ガスとしてシラン系ガス(SiH、SiHCl、SiHCl、SiCl)とHClガスあるいはClガスとの混合ガスを導入し、内管に形成された複数の細孔から水素ガスを導入することで、前記混合ガスと水素ガスとを別々に供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−255619号公報
【特許文献2】特開平10−50613号公報
【特許文献3】特公平6−16495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板の処理工程においては、基板に成膜処理を施す基板処理装置が広く使用されている。この基板処理装置では、例えば、基板処理装置の処理室内に配置された基板を加熱し、かつ、処理室内に原料ガスを導入することにより、基板上に膜を形成する。
【0007】
しかし、原料ガスが処理室内の基板に到達する前に高温になると、熱分解やガスの反応による生成物質が、処理室周辺に付着するという問題が生じる。
【0008】
そして、処理室周辺に生成物質が付着すると、基板上に膜を安定的に形成することができなくなる原因となる。また、処理室周辺に付着した生成物質に起因して、処理室周辺の部材が破壊されてしまう原因となる。また、処理室周辺に付着した生成物質が剥離して、処理室や処理室内の基板に到達し、異物(パーティクル)となる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱分解やガスの反応による生成物質が、処理室周辺に付着することを抑制する技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明に係る基板処理装置は、被誘導加熱体を有し、該被誘導加熱体からの輻射熱により基板を加熱し、処理する処理室と、該処理室を形成するインナーチューブと、該インナーチューブの外側に設けられ、該インナーチューブと間隙を成して囲うアウターチューブと、前記間隙に配置されるガス供給ノズルと前記アウターチューブの外側に設けられ、前記被誘導加熱体を誘導加熱する誘導加熱装置と、を備えている。前記インナーチューブには、前記処理室に配置される基板の周縁側方に流通口が設けられている。また、前記ガス供給ノズルには、前記流通口および前記基板に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0014】
すなわち、熱分解やガスの反応による生成物質が、処理室周辺に付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】ウェハをサセプタに装填している状態を示す上面図である。
【図3】図2のA−A線で切断した断面図である。
【図4】ウェハをサセプタから分離する様子を示す断面図である。
【図5】ボートの全体構造を示す側面図である。
【図6】ボートにウェハが搭載されたサセプタを装填する様子を示す平面図である。
【図7】図6のB−B線に沿った拡大断面図である。
【図8】実施の形態1における基板処理装置の処理炉と、処理炉周辺の概略構成図である。
【図9】図8に示す処理炉の横方向の断面を示す概略構成図である。
【図10】実施の形態1の基板の処理工程のシーケンスを示す説明図である。
【図11】図8に示す処理炉の要部を模式的に示す要部断面図である。
【図12】図11に示すガス供給ノズルの第一領域周辺の横断面構造を示す拡大断面図である。
【図13】図11に示すガス供給ノズルの第二領域周辺の横断面構造を示す拡大断面図である。
【図14】図11に示す処理炉処理炉の変形例である本発明の実施の形態2における処理炉の要部を模式的に示す要部断面図である。
【図15】図10に示す基板の処理工程の変形例である実施の形態2における基板の処理工程のシーケンスを示す説明図である。
【図16】図9に示す処理炉の変形例である本発明の実施の形態3における処理炉の概略構成を示す横断面図である。
【図17】図16の変形例の概略構成を示す横断面図である。
【図18】図7に示す基板保持構造の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0017】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0018】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0019】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0020】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0021】
(実施の形態1)
本発明を実施するための実施の形態において、基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC等)の製造方法に含まれる様々な処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。以下の説明では、半導体基板(半導体ウェハ)にエピタキシャル成長法による成膜処理、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜処理、あるいは、酸化処理や拡散処理などを行なう縦型の基板処理装置に本発明の技術的思想を適用した場合について述べる。特に、本実施の形態では、複数の基板を一度に処理するバッチ方式の基板処理装置を対象にして説明する。
【0022】
<基板処理装置の構成>
まず、本実施の形態1における基板処理装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態1における基板処理装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態1における基板処理装置101は、シリコン等からなる複数のウェハ(半導体基板)200を収納したウェハキャリアとしてのカセット110を使用するように構成されており、筐体111を備えている。筐体111は、例えば略直方体形状を成す。以下、基板処理装置を構成する各部材について説明するが、筐体111の側面のうち、カセット110の搬入搬出口が配置される側面を正面として説明する。また、筐体111内における各部材の位置について、正面に向かう方向を前方、正面から遠ざかる方向を後方として説明する。筐体111の正面壁111aの下方にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、この正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が筐体111の正面壁111aに設けられている。
【0023】
正面メンテナンス扉104には、カセット搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が筐体111の内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口112はフロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるようになっている。カセット搬入搬出口112の筐体111内側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)114が設置されている。カセット110は、カセットステージ114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつ、カセットステージ114上から搬出されるようになっている。カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウェハ200が垂直姿勢となり、かつ、カセット110のウェハ出し入れ口が上方向を向くように載置されるように構成されている。
【0024】
筐体111内の前後方向の略中央下部には、カセット棚(基板収容器載置棚)105が設置されており、カセット棚105は複数段および複数列で複数個のカセット110を保管し、カセット110内のウェハ200を出し入れすることが可能なように配置されている。このカセット棚105は、スライドステージ(水平移動機構)106上に横行可能なように設置されている。また、カセット棚105の上方にはバッファ棚(基板収容器保管棚)107が設置されており、このバッファ棚107にもカセット110が保管されるようになっている。
【0025】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降することができるカセットエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと、搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収容器搬送機構)118bから構成されている。このカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105およびバッファ棚107との間で、カセット110を搬送することができるようになっている。
【0026】
カセット棚105の後方には、ウェハ移載機構(基板移載機構)125が設置されている。このウェハ移載機構125は、ウェハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウェハ移載装置(基板移載装置)125aおよびウェハ移載装置125aを昇降させるためのウェハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bを備えている。図1に模式的に示すように、ウェハ移載装置エレベータ125bは、筐体111左側端部に設置されている。これらのウェハ移載装置エレベータ125bおよびウェハ移載装置125aの連続動作により、ウェハ移載装置125aにあるツイーザ(基板保持体)125cが、ウェハ200の載置部として機能するサセプタであって、かつ、図示しないサセプタ保持機構にあるサセプタに対して、ウェハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するようになっている。
【0027】
以下に、サセプタ保持機構において、ウェハ200をサセプタに装填している状態と脱装する状態とを示す。図2は、ウェハ200をサセプタ218に装填している状態を示す上面図であり、図3は、図2のA−A線で切断した断面図である。まず、図2に示すように、サセプタ218は、円盤形状をしており、同心円状の周縁部218aと円形状の中央部218bとを有している。そして、サセプタ218の中央部218bに円盤状のウェハ200が搭載されている。つまり、サセプタ218は、ウェハ200よりも大きい円盤状になっており、サセプタ218の中央部218b内にウェハ200が内包されるようになっている。さらに、図3に示すように、サセプタ218の周縁部218aは、サセプタ218の中央部218bよりも高さが高くなっており、サセプタ218には、周縁部218aと中央部218bとの境界領域に段差部218cが形成されている。すなわち、サセプタ218は、周縁部218aから中央部218bが窪んだ形状となっており、この窪んだ中央部218b内にウェハ200が搭載されている。言い換えれば、サセプタ218の周縁部218aの厚みよりも、サセプタ218の中央部218bの厚みが小さく形成されているということもできる。また、図2および図3に示すように、サセプタ218の中央部218bには、複数のピン孔PHが設けられており、このピン孔PHに部材MTが埋め込まれている。このように構成されているサセプタ218は、炭化シリコン(SiC)で表面が被覆された導電性材料(カーボンやカーボングラファイト)から形成されている。好ましくは、サセプタ218は、導電性材料の表面を炭化シリコン(SiC)等のコーティング材で被覆してもよい。これにより、導電性材料から不純物が放出することを抑制することができる。
【0028】
なお、サセプタ218は、ウェハ200を周方向において均一に加熱しやすいため、円盤形状で形成されているほうが望ましいが、サセプタ218の主面が楕円で形成された板形状であっても、サセプタ218の主面が多角形で形成された板形状であってもよい。以上のようにして、ウェハ200がサセプタ218に装填されることがわかる。
【0029】
続いて、サセプタ保持機構において、ウェハ200をサセプタ218から脱装する例について説明する。図4は、ウェハ200をサセプタ218から分離する様子を示す断面図である。図4に示すように、サセプタ保持機構には、ウェハ200を突き上げるための突き上げピンPNと、突き上げピンPNを昇降させる突き上げピン昇降機構UDUが設けられている。まず、サセプタ保持機構により、サセプタ218に形成されているピン孔PHに埋め込まれた部材MTに接触するように、突き上げピンPNの位置決めを行った後、突き上げピン昇降機構UDUによって、突き上げピンPNを上昇させる。すると、図4に示すように、ピン孔PHに埋め込まれていた部材MTとともにウェハ200は、サセプタ218から分離する。このようにして、ウェハ200がサセプタ218から脱装されることがわかる。このことから、ウェハ移載装置125aにあるツイーザ(基板保持体)125cと、サセプタ218との間でウェハ200を装填および脱装することができることがわかる。なお、ウェハ200を突き上げた際に、ウェハ200に対して与えるダメージを低減する観点から、突き上げピンPNの先端に当接させる部材MTは、図3および図4に示すようにフランジ状に形成されていることが望ましい。また、ピン孔PHからの放熱を抑制する観点から、部材MTをフランジ状に形成し、ピン孔PHに埋め込むことが望ましい。
【0030】
また、本実施の形態1における基板処理装置101には、サセプタ保持機構の他に、サセプタ移動機構(図示せず)も備えている。このサセプタ移動機構は、サセプタ保持機構とボート217(基板保持具)との間でサセプタ218を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0031】
次に、図1に示すように、バッファ棚107の後方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを基板処理装置101内へ供給するために、供給ファンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134aが設けられており、このクリーンユニット134aは、クリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。また、ウェハ移載装置エレベータ125b側と反対側である右側端部には、クリーンエアを供給するように、供給ファンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。そして、このクリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウェハ移載装置125aを流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部へ排気されるようになっている。
【0032】
ウェハ移載装置(基板移載装置)125aの後側には、大気圧未満の圧力(以下、負圧という。)を維持することが可能な機密性能を有する耐圧筐体140が設置されている。この耐圧筐体140により、ボート217を収容可能な容積を有するロードロック方式の待機室であるロードロック室(移載室)141が形成されている。
【0033】
耐圧筐体140の正面壁140aにはウェハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)142が開設されており、ウェハ搬入搬出口142はゲートバルブ(基板搬入搬出口開閉機構)143によって開閉されるようになっている。耐圧筐体140の一対の側壁にはロードロック室141へ窒素ガス等の不活性ガスを給気するためのガス供給管144と、ロードロック室141を負圧に排気するためのガス排気管(図示せず)とがそれぞれ接続されている。
【0034】
ロードロック室141の上方には、処理炉(反応炉)202が設けられている。処理炉202の下端部は炉口シャッタ(炉口ゲートバルブ)(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0035】
図1に模式的に示すように、ロードロック室141には、ボート217を昇降させるためのボートエレベータ(支持体保持体昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115に連結された連結具としてのアーム(図示せず)には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0036】
ボート217は複数本の支柱(保持部材)を備えており、複数枚(例えば、50枚〜100枚程度)のサセプタ218をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持することができるように構成されている。基板処理装置101を構成する各部は、コントローラ240と電気的に接続されており、コントローラ240は、基板処理装置101を構成する各部の動作を制御するように構成されている。
【0037】
<基板処理装置の動作>
本実施の形態1における基板処理装置101は上記のように概略構成されており、以下にその動作について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作は、コントローラ240により制御される。
【0038】
図1に示すように、カセット110がカセットステージ114に供給されるのに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110はカセット搬入搬出口112から搬入され、カセットステージ114上に載置される。このとき、カセットステージ114上に載置されるウェハ200は垂直姿勢になっており、かつ、カセット110のウェハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。
【0039】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセットステージ114から取り上げられるとともに、カセット110内のウェハ200が水平姿勢となり、かつ、カセット110のウェハ出し入れ口が筐体111の後方を向くように、筐体111の後方に右周り縦方向へ90°回転させられる。続いて、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105あるいはバッファ棚107の指定された位置へ自動的に搬送され、受け渡される。つまり、カセット110は、バッファ棚107に一時的に保管された後、カセット搬送装置118によってカセット棚105に移載されるか、あるいは、直接、カセット棚105に搬送される。
【0040】
その後、スライドステージ106は、カセット棚105を水平移動させ、移載の対象となるカセット110をウェハ移載装置125aに対峙するように位置決めする。ウェハ200は、カセット110からウェハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウェハ出し入れ口を通じてピックアップされる。このとき、サセプタ保持機構では、突き上げピン昇降機構UDU(図4参照)により突き上げピンPN(図4参照)が上昇される。続いて、ウェハ移載装置125aにより、突き上げピンPN(図4参照)上にウェハ200が載置される。そして、突き上げピン昇降機構UDU(図4参照)により、ウェハ200が載置された突き上げピンPN(図4参照)を下降させることにより、図3に示すようにウェハ200がサセプタ218上に搭載される。その後、ウェハ移載装置125aはカセット110へ戻り、次のウェハ200をサセプタ保持機構に装填する。
【0041】
次に、予め内部が大気圧状態とされていたロードロック室141のウェハ搬入搬出口142がゲートバルブ143の動作により開放されると、サセプタ移動機構により、サセプタ保持機構からウェハ200が載置されたサセプタ218(図3参照)が脱装される。そして、サセプタ移動機構により、脱装されたサセプタ218(図3参照)は、ウェハ搬入搬出口142を通じてロードロック室141に搬入され、ボート217へサセプタ218が装填される。
【0042】
ここで、ボート217にウェハ200が搭載されたサセプタ218を装填する構成について説明する。図5は、ボート217の全体構造を示す側面図である。また、図6は、ボート217にウェハ200が搭載されたサセプタ218を装填する様子を示す平面図である。
【0043】
まず、図5に示すようにボート217は、サセプタ218を保持する保持体として機能し、ボート217は、円盤状の底板217aと、円盤状の天板217bと、底板217aと天板217bとを連結する石英からなる3本あるいは4本の支柱PRから構成されている。また、図6に示すように、複数の支柱PRのそれぞれには、ウェハ200を搭載する支持体としてのサセプタ218を保持する保持部HU1が形成されている。この保持部HU1は、支柱PRのそれぞれからボート217の中心軸側に向けて突き出すように形成されている。
【0044】
次に、ウェハ200が搭載されたサセプタ218をボート217に装填する側面方向から見た構成について説明する。図7は、図6のB−B線に沿った拡大断面図である。図7に示すように、ボート217は、ボート217の延在方向(図7の上下方向)に延在する複数の支柱PRと、複数の支柱PRのそれぞれに対して、延在方向に等間隔で設けられた複数の保持部HU1を有している。そして、この保持部HU1は、複数の支柱PRで互いに同じ高さに設けられており、互いに同じ高さに設けられた、例えば3つの保持部HU1でサセプタ218の3つの端部を保持している。したがって、3つの保持部HU1で保持されたサセプタ218は、水平状態を維持するように配置される。具体的に、図7に示すように、ボート217には、延在方向に所定間隔で配置された保持部HU1のそれぞれにサセプタ218が搭載される。したがって、ボート217には、複数のサセプタ218が、ボート217の延在方向に所定間隔を置いて積層配置されていることになる。このようにサセプタ218は、支柱PRとは独立して設けられており、ボート217へのサセプタ218の装填、および、ボート217からのサセプタ218の脱装が可能なように構成されている。
【0045】
サセプタ218をボート217に充填した後、サセプタ移動機構は、サセプタ保持機構に戻り、次のウェハ200が載置されたサセプタ218(図3参照)をボート217に装填する。
【0046】
予め指定された枚数のサセプタ218(図3参照)がボート217に装填されると、ウェハ搬入搬出口142がゲートバルブ143によって閉じられる。その後、処理炉202の下端部が炉口シャッタ(炉口ゲートバルブ147)によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇し、シールキャップ219に支持されたボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0047】
ローディング後は、処理炉202においてウェハ200に任意の処理が実施される。ウェハ200の処理後、ボートエレベータ115によりボート217が引き出される。さらに、ゲートバルブ143が開かれる。その後は、概ね上述した動作と逆の動作により、処理済みのウェハ200およびカセット110が筐体111の外部へ払い出される。以上のようにして、本実施の形態1における基板処理装置101が動作する。
【0048】
<処理炉の構成>
次に、本実施の形態1における基板処理装置101の処理炉202について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態1における基板処理装置101の処理炉202と、処理炉202周辺の概略構成図であり、縦断面図として示している。また、図9は、図8に示す処理炉の概略構成図であり、横断面図として示している。
【0049】
図8に示すように、処理炉202は高周波電流を印加することにより加熱するための誘導加熱装置206を有する。この誘導加熱装置206は円筒状に形成されており、誘導加熱部としてのRFコイル2061と壁体2062と冷却壁2063により構成されている。RFコイル2061は高周波電源(図示せず)に接続されており、この高周波電源により、RFコイル2061には高周波電流が流れるようになっている。
【0050】
壁体2062は、ステンレス材等の金属から構成されている。この壁体2062は、円筒形状であり、内壁側にRFコイル2061が設けられている。RFコイル2061は、コイル支持部(図示せず)で支持される。コイル支持部は、RFコイル2061と壁体2062との間において、半径方向に所定の隙間を持って、壁体2062に支持される。
【0051】
壁体2062の外壁側には、この壁体2062と同心円状に、冷却壁2063が設けられている。壁体2062の上端には、その中央に開口部2066が形成されている。開口部2066の下流側には、ダクトが接続されており、このダクトの下流側には冷却装置としてのラジエータ2064と、排気装置としてのブロア2065が接続されている。
【0052】
冷却壁2063には、内部に冷却媒体として、例えば、冷却水が流通可能なように冷却壁2063のほぼ全域に冷却媒体流路が形成されている。冷却壁2063には、冷却媒体(図示せず)を供給する冷却媒体供給部と冷却媒体を排出する冷却媒体排出部とが接続されている。冷却媒体供給部から冷却媒体流路に冷却媒体を供給し、冷却媒体排出部から排出することにより、冷却壁2063が冷却され、熱伝導により、壁体2062および壁体2062の内部が冷却される。
【0053】
RFコイル2061の内側には、誘導加熱装置206と同心円状に反応容器を構成する反応管としてのアウターチューブ205が設けられている。アウターチューブ205は、耐熱材料としての石英(SiO)材で構成されており、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状をしている。
【0054】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えば、石英(SiO)若しくはステンレス等からなり、上端および下端が開口した円筒形状をしている。このマニホールド209はアウターチューブ205を支持するように設けられている。なお、マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング309が設けられている。このマニホールド209が保持体(図示せず)に支持されることにより、アウターチューブ205は垂直に据え付けられた状態となっている。このようにアウターチューブ205とマニホールド209により反応容器が形成される。ここで、マニホールド209は、特に、アウターチューブ205と別体で設ける場合に限定されず、アウターチューブ205と一体として、個別にマニホールド209を設けないようにしても良い。
【0055】
図9に示すように、アウターチューブ205の内側には、アウターチューブ205と間隙SPを成してインナーチューブ230が設けられている。換言すれば、アウターチューブ205は、インナーチューブ230の外側に、インナーチューブ230と間隙SPを介して囲うように設けられている。また、例えば、インナーチューブ230は、アウターチューブ205と同心筒状に形成されている。インナーチューブ230は、処理室201を形成する。つまり、インナーチューブ230の内側に処理室201が形成されている。インナーチューブ230とアウターチューブ205の間の間隙SPは、インナーチューブ230の側壁230aおよび上端側の蓋部を囲む、環状の中空空間となっている。インナーチューブ230は、耐熱材料としての石英(SiO)材で構成されており、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状をしている。
【0056】
また、インナーチューブ230の側壁230aには、インナーチューブ230内の処理室201と、インナーチューブ230外の間隙SPとを連通する開口部FHが形成されている。この開口部FHは、後述する基板の処理工程において、例えば原料ガスなどの処理ガスを間隙SP側から処理室201内に流通させる流通口である。また、図8に示すようにインナーチューブ230の下端は、アウターチューブ205の内壁と密着している。例えば、図8に示すように、ガス排気口2311の上方において、アウターチューブ205の内壁に接合されている。このため、間隙SPと処理室201の間は、流通口である開口部FH以外の領域は、密封されている。
【0057】
処理室201には、半導体基板としてのウェハ200がボート217および被誘導体としてのサセプタ218によって、水平姿勢で垂直方向にインナーチューブの長手方向に沿って多段に整列した状態で収納されている。
【0058】
アウターチューブ205とインナーチューブ230の間の間隙SPには、処理室201内に配置されているそれぞれのウェハ200に側方からガスを供給するために、石英(SiO)材で形成されたガス供給ノズル2321が配置されている。また、アウターチューブ205の下方には、処理室201内に配置されているそれぞれのウェハ200を通過したガスを側方から排気する石英(SiO)材で形成された排気部としてのガス排気口2311が形成されている。
【0059】
ガス供給ノズル2321は、上端が閉塞し、側壁には、開口部FHを介してウェハ200に向けてガスを吹き出す、吹出し口としてのガス供給口2322が設けられている。ガス供給口2322は、処理室201内に配置されるウェハ200の中心に向かって形成されている。本実施の形態では、図8に示すようにボート217には、複数段のウェハ200が載置されている。このため、複数のウェハ200のそれぞれに対して均一にガスを供給することができるように、ガス供給ノズル2321には、複数のガス供給口2322を形成している。また、複数のガス供給口2322は、それぞれ、各段のウェハ200間の高さ位置に、配置することが好ましい。
【0060】
アウターチューブ205の下方の側壁の外側には、ガス排気口2311と連通する排気部としてのガス排気管231と、ガス供給ノズル2321と連通するガス供給管232とが設けられている。ガス供給管232は、ガス供給ノズル2321にガスを供給するガス供給部である。なお、ガス排気口2311およびガス排気管231はアウターチューブ205の下方の側壁でなくても、例えば、マニホールド209の側壁に設けてもよい。ただし、高温の排気ガスが、回転機構254などの駆動部付近に廻り込むことを回避する観点からは、本実施の形態のように、アウターチューブ205の下方の側壁に設けることが好ましい。また、ガス供給ノズル2321とガス供給管232の連通部はアウターチューブ205の下方の側壁でなくても、例えば、マニホールド209の側壁に設けてもよい。
【0061】
ガス供給管232は、上流側で例えば、3つに分かれており、バルブ177、178、179とガス流量制御装置としてのMFC(Mass Flow Controller)183、184、185を介して第1のガス供給源180、第2のガス供給源181、第3のガス供給源182にそれぞれ接続されている。MFC183、184、185およびバルブ177、178、179には、ガス流量制御部235が電気的に接続されており、このガス流量制御部235によって、供給するガスの流量が所望の流量となるよう所望のタイミングにて制御されるようになっている。また、ガス供給管232は、上流側でさらに分岐され、バルブ(図示せず)と不活性ガス流量制御装置としてのMFCを介して、不活性ガス供給源(図示せず)に接続される。
【0062】
ガス排気管231の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ(図示せず)および圧力調整器としてのAPC(Automatic Pressure Control)バルブ242を介して真空ポンプ等の真空排気装置246が接続されている。圧力センサおよびAPCバルブ242には、圧力制御部236が電気的に接続されており、圧力制御部236は、圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ242の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所望の圧力となるよう所望のタイミングにて制御するよう構成されている。
【0063】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞するための炉口蓋体として、シールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えば、ステンレス等の金属で構成されており、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング301が設けられている。
【0064】
このシールキャップ219には、回転機構254が設けられている。回転機構254の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。
【0065】
シールキャップ219は、処理炉202の外側に設けられた昇降機構としての昇降モータ248によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0066】
ボート217の下部には、例えば、耐熱性材料としての石英(SiO)で構成される円筒形状の断熱筒216が配置されており、この断熱筒216により、誘導加熱装置206による誘導加熱で生じた熱がマニホールド209側に伝わりにくくなるように構成されている。この断熱筒216は、ボート217と別体として設けずに、ボート217と一体として設けてもよい。また、断熱筒216に代えて、あるいは、断熱筒216に加えて、ボート217の下部、あるいは断熱筒216の下部に複数枚の断熱板を設けるように構成してもよい。
【0067】
ボート217は、処理室201内でのウェハ200上への成膜処理時における膜中への不純物の混入を抑制するために、高純度で汚染物を放出しない材料であることが望ましい。また、ボート217の材料として、熱伝導率の高い材料を用いた場合、ボート217の下部にある石英製の断熱筒216を熱劣化させてしまうため、熱伝導率の低い材料であることが望ましい。また、サセプタ218に載置されるウェハ200へのボート217からの熱影響は抑制したほうがよいので、誘導加熱装置206により誘導加熱されない材料であることが望ましい。これらの条件を満足するように、ボート217の材料として石英材を使用している。
【0068】
回転機構254および昇降モータ248には、駆動制御部237が電気的に接続されており、駆動制御部237は、回転機構254および昇降モータ248が所望の動作をするように所望のタイミングにて制御するようになっている。
【0069】
誘導加熱装置206には、螺旋状に形成されたRFコイル2061が上下複数の領域(ゾーン)に分割されて設けられている。例えば、図8に示すように、下方側のゾーンから、RFコイルL、RFコイルCL、RFコイルC、RFコイルCU、RFコイルUというように5つのゾーンに区分けして設けられている。これらの5つのゾーンに区分けされたRFコイルは独立して制御されるようになっている。
【0070】
誘導加熱装置206の近傍には、処理室201内の温度を検出する温度検出体としての放射温度計263が、例えば、4箇所に設置されている。この放射温度計263は、少なくとも一つ設置されていればよいが、複数個の放射温度計263を設置することで温度制御性を向上させることができる。
【0071】
誘導加熱装置206および放射温度計263には、電気的に温度制御部238が接続されており、放射温度計263により検出された温度情報に基づいて、誘導加熱装置206への通電状態を調節することができるようになっている。そして、温度制御部238によって、処理室201内の温度が所望の温度分布となるよう所望のタイミングにて制御されるようになっている。
【0072】
また、ブロア2065は、温度制御部238が電気的に接続されている。温度制御部238は、予め設定された操作レシピに従って、ブロア2065の動作を制御するように構成されている。ブロア2065が動作することにより、壁体2062とアウターチューブ205との間隙にある雰囲気を開口部2066から排出する。開口部2066から雰囲気を排出した後、ラジエータ2064を通して冷却し、ブロア2065の下流側で設備に排出される。すなわち、温度制御部238による制御に基づいて、ブロア2065が動作することにより、誘導加熱装置206およびアウターチューブ205を冷却することができる。
【0073】
冷却壁2063に接続されている冷却媒体供給部と冷却媒体排気部は、冷却壁2063への冷却媒体の流量を所望の冷却具合となるように所定のタイミングにてコントローラ240にて制御されるように構成されている。なお、冷却壁2063を設けたほうが、処理炉202外部への放熱を抑制しやすくなり、アウターチューブ205がより一層冷却しやすくなるため、より望ましいが、ブロア2065の冷却による冷却具合が、所望の冷却具合として制御可能であれば、冷却壁2063は設けなくてもよい。
【0074】
また、壁体2062の上端には、開口部2066とは別に、爆発放散口と、この爆発放散口を開閉する爆発放散口開閉装置2067が設けられている。壁体2062内で水素ガスと酸素ガスとが混合して爆発が生じた際、壁体2062に所定の大きな圧力が加わることになる。このため、比較的強度の弱い箇所、例えば、壁体2062を形成するボルトやネジ、パネル等が破壊や飛散することになり、被害が増大してしまう。この被害を最小限に留めるべく、爆発放散口開閉装置2067は、壁体2062内で爆発が生じた際の所定の圧力以上で、爆発放散口を開き、内部圧力を放散するように構成されている。
【0075】
<処理炉周辺の構成>
続いて、本実施の形態1における処理炉202周辺の構成について、図8を参照しながら説明する。予備室としてのロードロック室141の外面に下基板245が設けられる。下基板245には昇降台249と嵌合するガイドシャフト264および昇降台249と螺合するボール螺子244が設けられる。下基板245に立設したガイドシャフト264およびボール螺子244の上端に上基板247が設けられる。ボール螺子244は上基板247に設けられた昇降モータ248により回転される。ボール螺子244が回転することにより昇降台249が昇降するように構成されている。
【0076】
昇降台249には中空の昇降シャフト250が垂直方向に設置され、昇降台249と昇降シャフト250の連結部は気密となっている。昇降シャフト250は昇降台249と共に昇降するようになっている。昇降シャフト250はロードロック室141の天板251を貫通する。昇降シャフト250が貫通する天板251の貫通穴は昇降シャフト250に対して接触することがないように充分な余裕がある。ロードロック室141と昇降台249との間には昇降シャフト250の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてのベローズ265がロードロック室141を気密に保つために設けられている。ベローズ265は昇降台249の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、ベローズ265の内径は昇降シャフト250の外形に比べ充分に大きく、ベローズ265の伸縮で接触することがないように構成されている。
【0077】
昇降シャフト250の下端には昇降基板252が水平に固着される。昇降基板252の下面にはOリング等のシール部材を介して駆動部カバー253が気密状態で取付けられている。昇降基板252と駆動部カバー253とで駆動部収納ケース256が構成されている。この構成により、駆動部収納ケース256の内部はロードロック室141内の雰囲気と隔離される。
【0078】
また、駆動部収納ケース256の内部にはボート217の回転機構254が設けられており、回転機構254の周辺部は、冷却機構257により冷却される。また、電力供給ケーブル258が昇降シャフト250の上端から昇降シャフト250の中空部を通って回転機構254に導かれて接続されている。そして、冷却機構257およびシールキャップ219には冷却流路259が形成されており、冷却流路259には冷却水を供給する冷却水配管260が接続され、昇降シャフト250の上端から昇降シャフト250の中空部を通っている。
【0079】
昇降モータ248を駆動してボール螺子244が回転することにより、昇降台249および昇降シャフト250を介して駆動部収納ケース256が昇降する。
【0080】
駆動部収納ケース256が上昇することにより、昇降基板252に気密に設けられるシールキャップ219が処理炉202の開口部である炉口161を閉塞し、ウェハ処理が可能な状態となる。駆動部収納ケース256が下降することにより、シールキャップ219とともにボート217が降下されて、ウェハ200を外部に搬出できる状態となる。
【0081】
ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、および、温度制御部238は、操作部や入出力部を構成し、基板処理装置101全体を制御する主制御部239に電気的に接続されている。これら、ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238、および、主制御部239は、コントローラ240として構成されている。以上のようにして、本実施の形態1における基板処理装置101の処理炉202と、処理炉202周辺の構造体が構成されている。
【0082】
<基板の処理工程>
次に、本実施の形態1における基板処理装置を使用した基板の製造方法における、基板の処理工程について、図8および図10を参照しながら説明する。本実施の形態1では、基板の処理工程の一工程として、ウェハ200などの基板上に、エピタキシャル成長法を使用してシリコン(Si)などの半導体膜を形成する方法(半導体装置の製造方法)について説明する。なお、本実施の形態1では、半導体装置の製造方法を例に取り上げて説明するが、本実施の形態1で開示される基板の製造方法は、半導体装置の製造方法に限定されるものではない。例えば、第1導電型(例えばp型)の半導体基板であるウェハ200などの基板上に第1導電型とは反対導電型の第2導電型(例えばn型)のエピタキシャル成長法を使用してシリコン(Si)などの半導体膜を成膜し、pn接合を形成する、太陽電池の製造方法に適用することもできる。
【0083】
図10は、基板の処理工程のシーケンスを示す説明図であり、図10の破線は処理室201内の温度を示しており、図10の実線は処理室201内の圧力を示している。なお、以下の説明において、本実施の形態1における基板処理装置101を構成する各部の動作は、コントローラ240により制御される。
【0084】
まず、図8に示す処理室201内にボート217を搬入する前、処理室201はスタンバイ状態となっている(図10のスタンバイ工程)。スタンバイ状態とは、ボート217が処理室201の真下にあるロードロック室141に配置されて、このボート217にウェハ200が載置された複数枚のサセプタ218を装填している状態を指している。
【0085】
そして、ウェハ200が載置された複数枚のサセプタ218がボート217に装填されると、図8に示すように、複数枚のサセプタ218を保持したボート217は、昇降モータ248による昇降台249および昇降シャフト250の昇降動作により処理室201内に搬入(ボートローディング)される(図10のボートロード工程)。この状態で、シールキャップ219はOリングを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このとき、処理室201の内部の圧力は、例えば、760Torr(=760×133.3Pa)となっている。
【0086】
続いて、処理室201内に不活性ガスとして、例えば、Nガスが供給され、処理室201を含む処理炉202内を不活性ガスで置換される(図10のNパージ1工程)。なお、不活性ガスは、ガス供給管232に接続される不活性ガス供給源(図示せず)から、ガス供給ノズル2321の複数のガス供給口2322を介して供給される。
【0087】
続いて、処理室201内が所望の圧力となるように真空排気装置246によって排気され、処理室201内が減圧される(図10の真空排気1工程)。
【0088】
続いて、処理室201内の圧力が、圧力センサで測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ(圧力調節器)242がフィードバック制御される(図10の圧力制御工程)。この時、ガス供給管232に接続される不活性ガス供給源(図示せず)から、不活性ガスとして、例えばNガスが、ガス供給ノズル2321の複数のガス供給口2322を介して供給される。この圧力制御工程によって、処理室201の内部の圧力は、16000Pa以上、93310Pa以下で選択される処理圧力のうち、一定の圧力に調整される。例えば、200Torr〜700Torr(200×133.3Pa〜700×133.3Pa)となる。なお、処理室201内の圧力制御は、この圧力制御工程以降、図10に示す真空排気2工程まで一定の圧力を維持するように制御する。
【0089】
そして、ブロア2065が動作され、誘導加熱装置206とアウターチューブ205との間でガス若しくはエアが流通し、アウターチューブ205の側壁、ガス供給ノズル2321、ガス供給口2322、および、ガス排気口2311が冷却される。ラジエータ2064、冷却壁2063には、冷却媒体として冷却水が流通し、壁体2062を介して、誘導加熱装置206内が冷却される。また、ウェハ200が所望の温度となるように誘導加熱装置206に高周波電流を印加し、サセプタ218に誘導電流(渦電流)を生じさせる。
【0090】
詳しくは、誘導加熱装置206にて処理炉202内の少なくともボート217に保持された複数枚のサセプタ218を誘導加熱して、サセプタ218に収納されたウェハ200を加熱する(図10の昇温工程)。つまり、誘導加熱装置206に高周波電流を流すと、処理炉202の内部に高周波電磁界が発生し、この高周波電磁界によって、被誘導体であるサセプタ218に渦電流が発生する。このサセプタ218では、渦電流によって誘導加熱が起こり、サセプタ218が加熱される。具体的に、渦電流は、被誘導体であるサセプタ218の周縁部で生じ、誘導加熱装置206による誘導加熱では、主にサセプタ218の周縁部が加熱される。そして、周縁部が加熱されたサセプタ218では、輻射熱が発生し、この輻射熱により、サセプタ218に搭載されているウェハ200が加熱される。また、周縁部が加熱されたサセプタ218では、熱伝導によってサセプタ218の周縁部からサセプタ218の中央部へ熱が流れ、サセプタ218の全体(周縁部と中央部)が加熱される。このため、サセプタ218が加熱されると、サセプタ218に搭載されているウェハ200に熱伝導で熱が伝わり、ウェハ200が加熱される。
【0091】
このように本実施の形態1における基板処理装置101では、誘導加熱方式でウェハ200を加熱する方式を採用している。このとき、誘導加熱装置206に高周波電流を流すことによって発生する高周波電磁界によって、ウェハ200を直接誘導加熱しても加熱量が足りないことが多い。したがって、本誘導加熱方式では、効率的に誘導加熱で加熱できるように被誘導体であるサセプタ218を使用している。つまり、誘導加熱方式の基板処理装置101では、効率的に誘導加熱によって加熱されるようにサセプタ218を使用している。そして、このサセプタ218を効率的に誘導加熱で加熱処理した後、加熱されたサセプタ218上のウェハ200を、サセプタ218からの熱伝導によって加熱しているのである。このことから、サセプタ218は、ウェハ200を搭載する機能を有しているとともに、その重要な機能として、高周波電磁界によって誘導加熱され、ウェハ200を加熱する加熱源としての機能を有している。
【0092】
この際、処理室201内が所望の温度分布となるように放射温度計263が検出した温度情報に基づき誘導加熱装置206への通電具合がフィードバック制御される。なお、この際、ブロア2065は、アウターチューブ205の外壁の温度がウェハ200上で膜成長させる温度より遥かに低い例えば600℃以下に冷却されるように予め設定された制御量で制御される。ウェハ200は、700℃〜1200℃内で選択される処理温度のうち、一定の温度で加熱される。例えば、ウェハ200は、1100〜1200℃に加熱される。また、例えば、原料ガスとしてSiHCl(トリクロロシラン)、キャリアガスとして、水素(H)を用いる場合には、サセプタ218が、1150℃以上となるように誘導加熱される。
【0093】
また、ウェハ200は、700℃〜1200℃内で選択される処理温度のうち、一定の温度で加熱されるが、その際、いずれの処理温度においても、ブロア2065は、アウターチューブ205の外壁の温度がウェハ200上で膜成長させる温度より遥かに低い、例えば600℃以下に冷却されるように予め設定された制御量にて制御される。
【0094】
続いて、回転機構254により、ボート217が回転することで、サセプタ218、および、このサセプタ218に載置されているウェハ200が回転する。
【0095】
次に、第1のガス供給源180、第2のガス供給源181、第3のガス供給源182には、Si系およびSiGe(シリコンゲルマニウム)系の原料ガス(処理ガス)として、SiHCl(ジクロロシラン)、SiHCl(トリクロロシラン)等と、ドーピングガス(処理ガス)としては、B(ジボラン)、BCl(三塩化ホウ素)、PH(ホスフィン)等と、キャリアガス(処理ガス)として、水素(H)がそれぞれ封入されている。ウェハ200の温度が安定したところで、第1のガス供給源180、第2のガス供給源181、第3のガス供給源182からそれぞれの処理ガスが供給される。そして、所望の流量となるようにMFC183、184、185の開度が調節された後、バルブ177、178、179が開かれる。これにより、それぞれの処理ガスがガス供給管232を流通して、ガス供給ノズル2321に流入される。ガス供給ノズル2321に流す流量は、一回の基板の処理工程で処理する基板の枚数によって異なるが、例えば、26.25slm〜262.5slmとしている。なお、流量の単位として[slm]を用いているが、この[slm]は標準状態(大気圧:101325Pa、0℃)で1分間当たりの流量をリットルで表わしている。したがって、標準状態のガスに換算すると、1slmは、1.67×10−6/secとして表わすことができる。以下で、ガスの流量について説明するときは、この[slm]を用いて説明する。
【0096】
ガス供給ノズル2321の流路断面積は、複数あるガス供給口2322の開口面積に比べて十分に大きいため、処理室201より大きい圧力となり、それぞれのガス供給口2322から噴出されるガスが均一な流量、流速で処理室201に供給される。例えば、本実施の形態では、ガス供給口2322は、開口径がφ1.5mmとしているのに対し、ガス供給ノズル2321の主流路(各ガス供給口2322に接続される流路)はφ35mm以上としている。このように主流路の断面積を十分に大きくすることにより、ガス供給ノズル2321を流れる処理ガスの流量を、例えば、100slm以上に増加させても、ガス供給ノズル2321内の圧力損失を低減できるので、複数のガス供給口2322から吹き出される処理ガスの流量を均一化することができる。処理室201に供給されたガスは、処理室201内を通り、ガス排気口2311に排出され、その後、ガス排気口2311からガス排気管231へ排気される。処理ガスは、サセプタ218間の間隙を通過する際に上下に隣接するそれぞれのサセプタ218から加熱されるとともに、加熱されたウェハ200と接触し、ウェハ200の表面上にエピタシャル成長によってシリコン(Si)などの半導体膜が形成される(図10の成膜工程)。
【0097】
予め設定された時間が経過すると、処理室201の温度を低下させる(図10の降温)。そして、処理室201内が所望の圧力となるように真空排気装置246によって排気され、処理室201内が減圧される(図10の真空排気2工程)。続いて、そして、不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスとして、例えば、Nガスが供給され、処理室201内が不活性ガスで置換されると共に、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(図10のNパージ2工程)。
【0098】
その後、昇降モータ248によりシールキャップ219が下降して、マニホールド209の下端が開口されると共に、処理済のウェハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端からアウターチューブ205の外部に搬出(ボートアンローディング)される(図10のボートアンロード工程)。その後、処理済のウェハ200は、ボート217より取出される(ウェハディスチャージ)。以上のようにして、ウェハ200上に半導体膜を形成することができる。
【0099】
<成膜工程の詳細>
ここで、図10に示す成膜の工程において、ガス供給ノズル2321を流れるガスの温度が高温に加熱されると、ウェハ200に到達する前に、熱分解やガスの反応による生成物質が、処理室周辺に付着する。
【0100】
例えば、塩素原子を化学式に有する化合物を原料ガスに使用して、基板上に膜を形成する場合、原料ガスが熱分解されるとともに重合化(高分子化)が起こり、塩化シランポリマーなどの副生成物が生成される。また、例えば、原料ガスとしてSiHCl(トリクロロシラン)、キャリアガスとして、水素(H)を用い、これらの混合ガスをガス供給ノズル2321から供給する場合、混合ガスの温度が900°以上になると、ガスの反応による生成物質が形成され、処理炉202内のウェハ200以外の部材に成膜される。つまり、生成物質が、処理室周辺の部材に付着する。
【0101】
このような生成物質が、例えば、ガス供給ノズル2321に形成された複数のガス供給口2322に付着すると、ガス供給口2322の開口面積が狭くなるので、ガス供給口2322からのガスの供給量が安定しない。このため、各段に配置されるウェハ200の膜質や膜厚にバラツキが生じる原因となる。また、ガス供給口2322に生成物質が厚く堆積すると、ガス供給口2322が閉塞してしまう場合もある。この場合、ガス供給ノズル2321内の圧力が過加圧となり、ガス供給ノズル2321が破壊する原因となる。また、ガス供給口2322に生成物質が成膜された状態で、上記した基板の処理工程を繰り返し行うと、温度サイクルに起因するストレスにより、成膜された生成物質が破壊し、これに伴って、ガス供給口2322が破壊する場合がある。また、ガス供給口2322の破壊にまでは至らなくても、付着した生成物質が剥離して処理室201や処理室201内の基板であるウェハ200に到達し、異物(パーティクル)となる。
【0102】
また、例えば、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322よりも上流側に生成物質が形成されると、ガス供給ノズル2321の流路が狭くなるので、この場合にも、ガス供給口2322からのガスの供給量が安定しない。このため、各段に配置されるウェハ200の膜質や膜厚にバラツキが生じる原因となる。また、前記したガス供給口2322に生成物質が付着した場合と同様に、ガス供給ノズル2321の上流側が閉塞すると、ガス供給ノズル2321が破壊する原因となる。また、ガス供給ノズル2321の内壁に生成物質が成膜されると、温度サイクルに起因するストレスにより、成膜された生成物質が破壊し、ガス供給ノズル2321の破壊や、処理室201内に異物が生じることとなる。
【0103】
そこで、本願発明者は、熱分解やガスの反応による生成物質が、処理室周辺に付着することを抑制する技術について検討を行い、本実施の形態1の構成を見出した。図11は図8に示す処理炉202の要部を模式的に示す要部断面図である。また、図12は、図11に示すガス供給ノズル2321の第一領域2321a周辺の横断面構造を示す拡大断面図である。また、図13は図11に示すガス供給ノズル2321の第二領域2321b周辺の横断面構造を示す拡大断面図である。
【0104】
まず、本実施の形態1では、前記したように誘導加熱方式を用い、被誘導加熱体であるサセプタ218を誘導加熱することにより、被処理基板であるウェハ200を加熱している。基板の加熱方式には、本実施の形態1のような誘導加熱方式の他、抵抗加熱方式がある。抵抗加熱方式の基板処理装置では、例えば、円筒形の処理炉の外周に沿って抵抗線をコイル状に敷設し、敷設した抵抗線に電流を流すことにより発生するジュール熱で処理炉全体を加熱するように構成されている。このように構成されている抵抗加熱方式の基板処理装置では、処理炉の内部に配置されている基板だけでなく、反応炉自体も加熱される。このため、抵抗加熱方式では、処理炉内のガス供給経路も高温となり、ガス供給経路などを構成する部材に、前記した生成物質が付着しやすい。一方、本実施の形態1では、誘導加熱方式を用いているので、処理室201内に配置されたサセプタ218およびウェハ200を誘導加熱しても、処理室201を形成するインナーチューブ230やガス供給ノズル2321、およびアウターチューブ205が誘導加熱されない、あるいは、誘導加熱され難い。このため、ガス供給ノズル2321内に流れる処理ガスの温度上昇を抑制することができる。つまり、前記した熱分解やガスの反応による生成物質が、ガス供給ノズル2321内で形成されることを抑制することができる。
【0105】
しかし、誘導加熱方式を適用した場合であっても、被誘導加熱体であるサセプタ218が、例えば、1000℃を超える高温に誘導加熱されれば、サセプタ218から輻射熱が発生する。そして該輻射熱がガス供給ノズル2321に到達すると、ガス供給ノズル2321の温度が上昇する。この結果、ガス供給ノズル2321内で前記した熱分解やガスの反応による生成物質が形成されてしまう。
【0106】
そこで、本実施の形態1では、図11に示すように、処理室201内をインナーチューブ230で覆い、インナーチューブ230の外側にガス供給ノズル2321を配置している。詳しくは、ガス供給ノズル2321は、インナーチューブ230とアウターチューブ205の間の間隙SPに配置されている。換言すれば、ガス供給ノズル2321と処理室201の間にはインナーチューブ230が配置されている。このため、誘導加熱されたサセプタ218から発生する輻射熱を、例えば、石英材から成るインナーチューブ230の側壁230aにより減衰させることができる。つまり、本実施の形態1では、インナーチューブ230の側壁230aを、被誘導加熱体であるサセプタ218からの輻射熱がガス供給ノズル2321に輻射されるのを抑制する輻射抑止部として機能させている。また、インナーチューブ230の側壁230aとガス供給ノズル2321は、離間して配置されているので、輻射熱を吸収することにより加熱されたインナーチューブ230から伝達される熱量を低減することができる。このため、サセプタ218で発生する輻射熱によるガス供給ノズル2321の温度上昇を抑制することができる。
【0107】
ところで、ガス供給ノズル2321は、前記したように、例えば、原料ガス、ドーピングガス、およびキャリアガスの混合ガスである処理ガスを、処理室201内に配置された基板であるウェハ200に供給するために配置されている。このため、インナーチューブ230の側壁230aには、ガス供給ノズル2321から吹き出される処理ガスを処理室201に流通させる流通口としての開口部FHが形成されている。本実施の形態1では、ウェハ200の周縁側方から処理ガスを供給するので、開口部FHは、処理室201内に配置されるウェハ200の周縁側方に設けられている。また、処理ガスの吹出し口である複数のガス供給口2322と開口部FHは、互いに対向するように配置されているので、ガス供給口2322から吹出された処理ガスは、流通口としての開口部FHを通過して、処理室201内に配置されたウェハ200に到達する。
【0108】
ここで、図11に示すように、ガス供給ノズル2321は、複数のガス供給口2322が形成された第一領域2321aと、第一領域2321aのガスの上流側に位置する第二領域2321bとを有している。そして、インナーチューブ230の第一領域2321aと対向する領域には、図12に示すように開口部FHが形成されているが、第二領域2321bと対向する領域には、図13に示すようにインナーチューブ230に開口部が形成されていない。換言すれば、第二領域2321bに対向するインナーチューブ230の側壁230aは、被誘導加熱体であるサセプタ218からの輻射熱がガス供給ノズル2321の第二領域2321bに輻射されるのを抑制する輻射抑止部として機能させている。したがって、第二領域2321bでは、サセプタ218で発生する輻射熱をインナーチューブ230の側壁230aにより吸収し、アウターチューブ205の側壁205aとの間に設けられた間隙SPに到達する熱量を半分以下とすることができる。例えば、石英材から成るインナーチューブ230の側壁230aの厚さを約5mmとした場合、約60%の輻射熱を遮ることができる。なお、詳細には、インナーチューブ230に対する輻射熱の透過率は、輻射熱の波長帯によって異なるが、全波長帯の平均として約60%の輻射熱を遮ることができる。
【0109】
このように、第二領域2321bにおいて、間隙SPと処理室201の間にインナーチューブ230の側壁230aを配置することにより、ガス供給ノズル2321の第二領域2321bの温度上昇を抑制することができる。例えば、サセプタ218を1150℃以上まで誘導加熱した場合であっても、ガス供給ノズル2321の第二領域2321bの温度を900℃未満とすることができる。このため、第二領域2321bにおいて、前記した生成物質が形成されることを防止ないしは抑制することができる。
【0110】
また、第二領域2321bにおける温度上昇を抑制することにより、第二領域2321bよりも処理ガスの下流側に位置する第一領域2321aに送られる処理ガスの初期温度を下げることができる。このため、第一領域2321aにおける処理ガスの温度上昇を抑制することができる。このように、第一領域2321aにおける処理ガスの温度上昇を抑制することにより、第一領域2321aにおいて、前記した生成物質が形成されることを抑制することができる。つまり、第一領域2321aに形成された複数のガス供給口2322に生成物質が付着することを抑制することができる。
【0111】
また、第一領域2321aにおけるガス供給ノズル2321の温度上昇を抑制する観点からは、図12に示すように、インナーチューブ230に形成される流通口としての開口部FHの開口幅W1は、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおけるノズル幅W2よりも狭くすることが好ましい。例えば、本実施の形態では、第一領域2321aにおけるガス供給ノズル2321のノズル幅W2が35〜45mm程度であるのに対して開口部FHの開口幅W1は、1.5mm程度である。つまり、開口部FHは、ガス供給ノズル2321よりも小さい幅で形成されていることが好ましい。これにより、図11に示すサセプタ218で発生した輻射熱は、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aに到達する前にインナーチューブ230の側壁230aにより減衰させ易くなる。つまり、輻射熱がガス供給ノズル2321の第一領域2321aに到達し難くなる。この結果、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおける、輻射熱による処理ガスの温度上昇を抑制することができる。そして、第一領域2321aにおける処理ガスの温度上昇を抑制することで、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aの内壁や、ガス供給口2322に前記した生成物質が付着することを抑制することができる。
【0112】
また、第一領域2321aにおけるガス供給ノズル2321の温度上昇を抑制する観点から、図12に示すように流通口としての開口部FHの開口幅W1は、インナーチューブ230の側壁230aの板厚よりも小さく形成することが好ましい。例えば本実施の形態1では、インナーチューブ230の側壁230aの板厚T1は、約5mmとしている。これにより、これにより、図11に示すサセプタ218で発生し、ガス供給ノズル2321に向かう輻射熱は、インナーチューブ230の側壁230aで減衰され易くなる。
【0113】
また、開口部FHの開口幅W1が、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322の開口幅W3以下になっていれば、ガス供給口2322周辺の温度上昇も抑制することができる。
【0114】
ただし、開口部FHの開口幅W1を狭くすると、ガス供給口2322から吹出された処理ガスが、開口部FHを通過し難くなる。そこで、本実施の形態1では、図11に示すように、流通口としての開口部FHの開口形状は、ガス供給ノズル2321の延在方向に沿って長い、スリット状に形成されている。換言すれば、流通口としての開口部FHの開口形状は、幅方向と交差する高さ方向の開口高さL1が開口幅W1(図12参照)よりも長くなるように、スリット状に形成されている。本実施の形態1では、ガス供給ノズル2321に複数のガス供給口2322が配列されているが、開口部FHの開口高さL1を長くすることで、開口部FHが複数のガス供給口2322と対向するように配置されている。このように、開口部FHの開口高さL1が長くなるように、スリット状に形成されているので、開口部FHが、ガス供給口2322よりも小さい幅で形成されていても、ガス供給口2322から吹き出された処理ガスを効率よく処理室201内に供給し、ウェハ200に到達させることができる。
【0115】
また、ガス供給口2322から吹き出された処理ガスを効率よく処理室201内に供給し、ウェハ200に到達させる観点から、図10に示す成膜工程における、処理炉202内の圧力分布は、間隙SP内の圧力が、処理室201内の圧力よりも高くなっていることが好ましい。処理室201内の圧力が間隙SP内の圧力よりも低くなっていれば、例えば、開口部FHが、ガス供給口2322よりも小さい幅で形成されていても、処理ガスを通過させ易いからである。
【0116】
本実施の形態1では、アウターチューブ205およびインナーチューブ230は、それぞれ有天筒状に形成され、アウターチューブ205の内部を減圧維持可能に形成されている。詳しく説明すると、図11に示すようにアウターチューブ205の上端には、側壁205aを気密に密封する蓋部205bが形成されている。また、インナーチューブ230の上端には、側壁230aを気密に密封する蓋部230bが形成されている。また、アウターチューブ205の下方には、排気部としてのガス排気口2311が形成されており、排気部としてのガス排気管231(図8参照)に接続されている。このガス排気口2311およびガス排気管231(図8参照)はインナーチューブ230内の処理室201と連通している。このため、ガス排気口2311から処理室201内のガスを排気すると、処理室201内が減圧される。そして、間隙SP内と処理室201内の圧力差が大きくなると、開口部FHを介して間隙SP内のガスが処理室201内に流入し、間隙SP内が減圧される。
【0117】
また、図8に示すようにガス排気管231の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ(図示せず)および圧力調整器としてのAPCバルブ242を介して真空ポンプ等の真空排気装置246が接続されている。圧力センサおよびAPCバルブ242には、圧力制御部236が電気的に接続されており、圧力制御部236は、圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ242の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所望の圧力となるよう所望のタイミングにて制御するよう構成されている。
【0118】
また、図8に示すように、ガス供給ノズル2321と接続されるガス供給管232は、上流側で例えば、3つに分かれており、バルブ177、178、179とガス流量制御装置としてのMFC183、184、185を介して第1のガス供給源180、第2のガス供給源181、第3のガス供給源182にそれぞれ接続されている。MFC183、184、185およびバルブ177、178、179には、ガス流量制御部235が電気的に接続されており、このガス流量制御部235によって、ガス供給ノズル2321に供給するガスの流量が所望の流量となるよう所望のタイミングにて制御されるようになっている。
【0119】
このように、処理炉202は、アウターチューブ205内部の間隙SP内および処理室201内を減圧状態で制御することができるように形成されている。このため、間隙SPと処理室201の間のガスの流通を制御し易くすることができる。
【0120】
<本実施の形態1の代表的効果>
以上、本実施の形態1で説明した技術的思想によれば、少なくとも、以下に記載する複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0121】
(1)本実施の形態1によれば、ガス供給ノズル2321の吹出し口としてのガス供給口2322から、流通口としての開口部FH、および被処理対象物である基板としてのウェハ200へ向けて処理ガスを吹き出すことができる。また、被誘導加熱体としてのサセプタ218からの輻射熱により、ウェハ200を加熱することができるので、良好な基板の処理が可能となる。
【0122】
(2)また、本実施の形態1によれば、被誘導加熱体としてのサセプタ218を基板の加熱源として用いているので、処理室201内に配置されたサセプタ218を誘導加熱しても、処理室201を形成するインナーチューブ230やガス供給ノズル2321、およびアウターチューブ205が誘導加熱されない、あるいは、誘導加熱され難い。このため、ガス供給ノズル2321内に流れる処理ガスの温度上昇を抑制することができる。
【0123】
(3)また、本実施の形態1によれば、詳しくは、ガス供給ノズル2321は、インナーチューブ230とアウターチューブ205の間の間隙SPに配置されている。このため、誘導加熱されたサセプタ218から発生する輻射熱を、例えば、石英材から成るインナーチューブ230の側壁230aにより減衰させることができる。このため、サセプタ218で発生する輻射熱によるガス供給ノズル2321の温度上昇を抑制することができる。
【0124】
(4)特に、本実施の形態1では、ガス供給ノズル2321は、複数のガス供給口2322が形成された第一領域2321aと、第一領域2321aのガスの上流側に位置する第二領域2321bとを有している。そして、インナーチューブ230の第一領域2321aと対向する領域には、開口部FHが形成されているが、第二領域2321bと対向する領域には、インナーチューブ230に開口部が形成されていない。換言すれば、第二領域2321bに対向するインナーチューブ230の側壁230aは、被誘導加熱体であるサセプタ218からの輻射熱がガス供給ノズル2321の第二領域2321bに輻射されるのを抑制する輻射抑止部として機能させている。このため、第二領域2321bでは、サセプタ218で発生する輻射熱をインナーチューブ230の側壁230aにより吸収し、間隙SPに到達する輻射熱を低減することができる。
【0125】
(5)また、ガス供給ノズル2321の第二領域2321bにおいて、ガス供給ノズル2321内を流れる処理ガスの温度上昇を抑制することができるので、第二領域2321b内で、熱分解やガスの反応により、生成物質が形成されることを抑制することができる。
【0126】
(6)また、第二領域2321b内で、生成物質が形成されることを抑制することにより、ガス供給ノズル2321の第二領域2321bにおいて、処理ガスの流通経路が閉塞することを抑制することができる。
【0127】
(7)また、前記生成物質が、ガス供給ノズル2321の第二領域2321bからガス供給口2322、および開口部FHを通過して処理室201、あるいは処理室201内に配置された被処理対象物である基板としてのウェハ200に到達し、パーティクルとなることを抑制することができる。
【0128】
(8)また、本実施の形態1によれば、インナーチューブ230に形成される流通口としての開口部FHの開口幅W1は、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおけるノズル幅W2よりも狭くなっている。このため、被誘電加熱体としてのサセプタ218で発生した輻射熱が、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aに到達し難くなる。この結果、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおける、輻射熱による処理ガスの温度上昇を抑制することができる。
【0129】
(9)流通口としての開口部FHの開口幅W1は、インナーチューブ230の側壁230aの板厚T1よりも小さく形成している。これにより、これにより、図11に示すサセプタ218で発生し、ガス供給ノズル2321に向かう輻射熱は、インナーチューブ230の側壁230aで減衰され易くなる。この結果、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおける、輻射熱による処理ガスの温度上昇を抑制することができる。
【0130】
(10)このように、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおいて、ガス供給ノズル2321内を流れる処理ガスの温度上昇を抑制することができるので、第一領域2321a内で、熱分解やガスの反応により、生成物質が形成されることを抑制することができる。
【0131】
(11)また、第一領域2321a内で、生成物質が形成されることを抑制することにより、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aにおいて、処理ガスの流通経路が閉塞することを抑制することができる。
【0132】
(12)また、前記生成物質が、ガス供給ノズル2321の第一領域2321aから開口部FHを通過して処理室201、あるいは処理室201内に配置された被処理対象物である基板としてのウェハ200に到達し、パーティクルとなることを抑制することができる。
【0133】
(13)また、本実施の形態1によれば、流通口としての開口部FHの開口形状は、幅方向と交差する高さ方向の開口高さL1が開口幅W1よりも長くなるように、スリット状に形成されている。このように、開口部FHの開口高さL1が長くなるように、スリット状に形成されているので、開口部FHが、ガス供給口2322よりも小さい幅で形成されていても、ガス供給口2322から吹き出された処理ガスを効率よく処理室201内に供給し、ウェハ200に到達させることができる。
【0134】
(14)また、本実施の形態1によれば、アウターチューブ205およびインナーチューブ230は、それぞれ有天筒状に形成され、アウターチューブ205の内部を減圧維持可能に形成されている。このため、間隙SPと処理室201の間のガスの流通を制御し易くすることができる。
【0135】
(15)また、本実施の形態1で説明した基板処理装置101を基板の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、基板の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0136】
(16)また、本実施の形態1で説明した基板処理装置101を半導体装置の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、半導体装置の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0137】
(17)また、本実施の形態1で説明した基板処理装置101を太陽電池の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、太陽電池の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0138】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前記実施の形態1で説明した間隙SPに、ガス供給ノズル2321とは別にパージガス供給部を配置して、間隙SP内および処理室201内の圧力を制御し易くする実施態様について説明する。
【0139】
図14は、図11に示す処理炉処理炉の変形例である本実施の形態2における処理炉の要部を模式的に示す要部断面図である。また、図15は、図10に示す基板の処理工程の変形例である実施の形態2における基板の処理工程のシーケンスを示す説明図である。
【0140】
前記実施の形態1では、アウターチューブ205とインナーチューブ230の間の間隙SPにガス供給ノズル2321を配置して、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322から処理室201内に配置されたウェハ200に向かって、処理ガスを吹き出す構成について説明した。また、吹き出された処理ガスは、インナーチューブ230に形成された流通口である開口部FHを通過して、処理室201内に配置されたウェハ200に到達することを説明した。
【0141】
ここで、ガス供給口2322から吹き出された処理ガスの一部が、インナーチューブ230の開口部FHを通過しなかった場合、間隙SP内に滞留してしまう場合がある。間隙SPの内側には、インナーチューブ230の側壁230aが配置されるため、前記実施の形態1で説明した、熱分解やガスの反応による生成物質は、間隙SP内では形成され難くなっている。しかしインナーチューブ230は、被誘導加熱体としてのサセプタ218の輻射熱により加熱されるので、処理ガスが滞留すると、インナーチューブ230の側壁230aの外側や、間隙SPの底面に、徐々に熱分解やガスの反応による生成物質が形成され、付着する。
【0142】
そして、生成物質が、インナーチューブ230の側壁230aの外側や、間隙SPの底面に生成物質が成膜された状態で、前記実施の形態1で説明した基板の処理工程を繰り返し行うと、温度サイクルに起因するストレスにより、成膜された生成物質が破壊し、これに伴って、インナーチューブ230などが破壊する場合がある。
【0143】
また、間隙SP内に滞留した処理ガスが、ウェハ200上への成膜処理に寄与しないので、処理ガスの使用効率を向上させる観点からも、間隙SP内に滞留する処理ガスを低減することが好ましい。
【0144】
そこで、本願発明者は、ガス供給口2322から吹き出された処理ガスの一部が、間隙SP内に滞留することを抑制する技術について検討を行い、本実施の形態2の構成を見出した。なお、前記実施の形態1で説明した技術と、本実施の形態2の技術の相違点は、以下で説明する点であり、その他は前記実施の形態1と同様である。したがって、本実施の形態2では、前記実施の形態1との相違点について説明し、重複する説明は省略する。
【0145】
図14に示す基板処理装置101aと、図11に示す基板処理装置101の相違点は、間隙SP内に、パージガスを供給するパージガス供給部をさらに設けた点である。また、図15に示す基板の処理工程と、図10に示す基板の処理工程の相違点は、成膜工程の前後に、間隙SP内にパージガスを供給する工程が追加されている点である。
【0146】
図14および図15を用いて詳細に説明すると、本実施の形態2の基板の製造方法(半導体装置の製造方法、太陽電池の製造方法)の基板の処理工程では、成膜工程(図15参照)の前に、間隙SP内に配置したパージガス供給部としてのパージガス供給ノズル2331から、パージガスを間隙SP内に供給する工程(図15のHパージ1工程)を有している。詳しくは、図15に示すように、昇温工程の前に、パージガスを供給する。このように、昇温工程の前に、間隙SP内にパージガスを供給することにより、例えば、直近の基板の処理工程において、間隙SP内に処理ガスが残留していた場合でも、これをパージガスで置換することができる。このため、間隙SP内に残留する処理ガスを昇温前に取り除き、前記した熱分解やガスの反応により生成物質が形成されることを抑制することができる。
【0147】
ここで、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換する観点から以下の構成が好ましい。
【0148】
まず、間隙SP内全域に亘って、パージガスと置換する観点から、図14に示すように、パージガス供給部としてのパージガス供給ノズル2331は、インナーチューブ230の開口部FHが形成された位置の反対側に形成することが好ましい。換言すれば、ガス供給ノズル2321とパージガス供給ノズル2331は、インナーチューブ230を介して反対側に設けられていることが好ましい。インナーチューブ230の開口部FH周辺の間隙SPは、ガス供給ノズル2321からガスが吹き出されるので、ガスの対流が発生しやすい。一方、開口部FHの反対側の間隙SPでは、ガスが滞留し易い。したがって、パージガス供給ノズル2331を開口部FHが形成された位置の反対側に設けることにより、ガスの滞留を抑制し、間隙SP内全域に亘って、パージガスを至らせることができる。この結果、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換することができる。
【0149】
また、本実施の形態では、パージガスとして、前記実施の形態1で説明した原料ガス(例えば、SiHCl(トリクロロシラン))よりも比重が軽いHガスを用いている。このように、原料ガスよりも比重の低いガスをパージガスとして用いる場合には、パージガスを間隙SPの低い位置に供給した方が、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換する。そこで、図14に示すように、本実施の形態2では、パージガス供給ノズル2331の高さは、ガス供給ノズル2321の高さよりも低くなっている。また、パージガス供給ノズル2331に形成されたパージガス供給口2332は、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322よりも低い位置に形成されている。これにより、パージガス供給ノズル2331から吹き出されたパージガスとしてのHガスで、間隙SPの下方に滞留するガスを効率的に上方に運ぶことができる。上方に運びあげられたガスは、開口部FHから処理室201内に流入する。これにより、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換することができる。なお、本実施の形態2では、パージガス供給ノズル2331を配置する構成を例示して説明したが、この構成に限定されない。例えば、パージガス供給ノズル2331を設けず、間隙SPと対向するアウターチューブ205の側壁205aにおいて、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322よりも低い位置に形成され、間隙SPと接続されたパージガス供給部233から、間隙SP内にパージガスを供給することができる。
【0150】
なお、この時、ガス供給ノズル2321に接続されるガス供給管232からも、パージガスとしてのHガスを供給することもできる。この場合、間隙SP内の複数箇所からパージガスを供給することとなるので、間隙SP内のガスを、より確実にパージガスと置換することができる。
【0151】
また、本実施の形態2によれば、間隙SP内にパージガスを供給するパージガス供給部を設けることで、間隙SP内の圧力と処理室201内の圧力を前記実施の形態1よりも、さらに高精度で制御することができる。詳しくは、パージガス供給ノズル2331は、間隙SPと対向するアウターチューブ205の側壁205aに形成されたパージガス供給部233と接続されている。
【0152】
また、パージガス供給部233は、上流側にバルブ186とガス流量制御装置としてのMFC(Mass Flow Controller)187を介してパージガス供給源188に接続されている。MFC187およびバルブ186には、パージガス流量制御部235aが電気的に接続されており、このパージガス流量制御部235aによって、供給するパージガスの流量が所望の流量となるよう所望のタイミングにて制御されるようになっている。また、パージガス供給部233は、上流側で分岐され、バルブ(図示せず)と不活性ガス流量制御装置としてのMFCを介して、不活性ガス供給源(図示せず)に接続される。
【0153】
つまり、本実施の形態2の基板処理装置101aは、ガス供給ノズル2321へ処理ガスを供給するガス供給部としてのガス供給管232と、処理室201内を排気する排気部としてのガス排気管231を有している。そして、ガス供給部のガスの流量を制御するガス流量制御部235、排気部の圧力を制御する圧力制御部236、およびパージガス供給部233のガスの流量を制御するパージガス流量制御部235aを有している。このため、間隙SP内の圧力が処理室201の圧力よりも高くなるように、容易に制御することができる。これにより、パージガスによって間隙SPの上方に運ばれたガスを効率的に処理室201内に流すことができる。
【0154】
図15に示すHパージ1工程に引き続き、前記実施の形態1で説明した通り、昇温工程を行う。この昇温工程およびこれに続く成膜工程では、図14に示す、パージガス供給部233から、引き続きパージガスとしてのHガスが供給される。そして、パージガス流量制御部235aおよび圧力制御部236がパージガスの流量および排気部の圧力をそれぞれ制御することにより、間隙SP内の圧力が、処理室201内の圧力よりも高い状態で維持される。この状態で、図15に示す成膜工程として、ガス供給部としてのガス供給管232から前記実施の形態で説明した処理ガスを供給する。つまり、成膜工程の前に、間隙SP内に予めパージガスを供給し、間隙SP内の圧力が処理室201内の圧力よりも高い状態で、ガス供給部から処理ガスを供給する。また、成膜工程中も間隙SP内の圧力が処理室201内の圧力よりも高い状態を維持する。
【0155】
このように、処理ガスがガス供給ノズル2321のガス供給口2322から吹き出す際には、間隙SP内の圧力が処理室201内の圧力よりも高くなっているので、処理ガスの一部が間隙SP内に漏れることを抑制することができる。供給するパージガスの流量は、一回の基板の処理工程で処理する基板の枚数によって異なるが、例えば、2slm〜10slm程度の流量で供給する。なお、パージガスの流量を4slm以上とすれば、1回の基板の処理工程中において、間隙SP内に生成物質が付着することをほぼ防止することができる。
【0156】
図15に示す成膜工程が終了し、ウェハ200上に半導体膜が形成された後は、ガス供給部としてのガス供給管232から供給される処理ガスのうち、少なくとも原料ガスおよびドーピングガスの供給を停止する。一方、パージガス供給部233からは、引き続きパージガスとしてのHガスが間隙SP内に供給される。これにより、間隙SP内に残留する原料ガスやドーピングガスをパージガスと置換することができるので、引き続き行う降温工程(図15参照)において、間隙SP内に生成物質が形成されることを抑制することができる。
【0157】
なお、この時、ガス供給ノズル2321に接続されるガス供給管232からも、パージガスとしてのHガスを供給することもできる。パージガスとしてのHガスの供給源は、例えば、図8に示すキャリアガスの供給源である第3のガス供給源182を兼用することができる。この場合、間隙SP内の複数箇所からパージガスを供給することとなるので、間隙SP内のガスを、より確実にパージガスと置換することができる。
【0158】
以降の工程は、前記実施の形態1と同様なので、重複する説明は省略する。なお、本実施の形態2では、ガス供給管232に加え、パージガス供給部233も有しているので、図15に示すNパージ1工程およびNパージ2工程では、ガス供給管232およびパージガス供給部233から処理炉202内に不活性ガスとしてのNガスを供給する。
【0159】
<本実施の形態2の代表的効果>
以上、本実施の形態2で説明した技術的思想によれば、前記実施の形態1で説明した効果に加え、少なくとも、以下に記載する複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0160】
(1)本実施の形態2によれば、間隙SP内にパージガスを供給するパージガス供給部を接続することにより、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換することができる。
【0161】
(2)特に、間隙SP内に残留する、原料ガスをパージガスと置換することにより、間隙SP内で熱分解やガスの反応による生成物質が形成され、間隙SPを構成するインナーチューブ230の側壁230aや間隙SPの底面に付着することを防止ないしは抑制することができる。
【0162】
(3)また、インナーチューブ230の側壁230aや間隙SPの底面に生成物質が付着することを防止ないしは抑制することにより、温度サイクルに起因するストレスにより、成膜された生成物質が破壊し、これに伴って、インナーチューブ230などが破壊することを防止ないは抑制することができる。
【0163】
(4)また、また、インナーチューブ230の側壁230aや間隙SPの底面に生成物質が付着することを防止ないしは抑制することにより、インナーチューブ230やアウターチューブ205を洗浄したり、交換したりするメンテナンスサイクルを長期化、若しくはメンテナンスフリーにすることができる。
【0164】
(5)また、本実施の形態2によれば、間隙SP内にパージガスを供給するパージガス供給部を接続することにより、間隙SP内の圧力が処理室201内の圧力よりも高い状態で制御することが容易になる。
【0165】
(6)このため、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322から吹き出されたガスが、間隙SP内に流れることを抑制することができる。また、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322から吹き出されたガスを処理室201内のウェハ200に効率的に到達させることができるので、例えば複数のウェハ200を1回で処理する場合でも、各ウェハ200の処理の均一性を向上させることができる。
【0166】
(7)また、パージガス供給部としてのパージガス供給ノズル2331は、インナーチューブ230の開口部FHが形成された位置の反対側に形成することで、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換することができる。
【0167】
(8)また、パージガスとして、原料ガスよりも比重が軽いガスを用い、パージガス供給部233をガス供給ノズル2321のガス供給口2322よりも低い位置に接続することで、間隙SP内のガスを効率的にパージガスと置換することができる。
【0168】
(9)また、本実施の形態2で説明した基板処理装置101aを基板の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、基板の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0169】
(10)また、本実施の形態2で説明した基板処理装置101aを半導体装置の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、半導体装置の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0170】
(11)また、本実施の形態2で説明した基板処理装置101aを太陽電池の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、太陽電池の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0171】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、前記実施の形態1で説明した処理ガスを供給するガス供給ノズルを間隙SP内に複数配置して、基板に形成される膜の膜厚を均一化する実施態様について説明する。
【0172】
図16は、図9に示す処理炉の変形例である本実施の形態3における処理炉の概略構成を示す横断面図である。また、図17は、図16の変形例の概略構成を示す横断面図である。
【0173】
前記実施の形態1では、アウターチューブ205とインナーチューブ230の間の間隙SPにガス供給ノズル2321を配置して、ガス供給ノズル2321のガス供給口2322から処理室201内に配置されたウェハ200に向かって、処理ガスを吹き出す構成について説明した。また、吹き出された処理ガスは、インナーチューブ230に形成された流通口である開口部FHを通過して、処理室201内に配置されたウェハ200に到達することを説明した。
【0174】
ここで、ガス供給口2322とウェハ200の間にインナーチューブ230の側壁230aを介在させる場合、ウェハ200とガス供給口2322の距離が離れる。例えば、前記実施の形態1で説明した態様では、50mm〜60mm程度となる。このように、ウェハ200とガス供給口2322の距離が離れると、ガス供給口2322から吹き出される処理ガスの流速によっては、ガス供給口2322とウェハ200の間で急激に減速し、複数段に配置されたウェハ200の間に入る処理ガスの量が低下する。そして処理ガスの量が低下した状態で、前記実施の形態1で説明したように、ウェハ200を回転させながら成膜工程を行うと、ウェハ200の周縁部の膜厚は厚く、周縁部よりも内側の中央部の膜厚は、周縁部よりも薄くなる。つまり、ウェハ200の中央部が周縁部に対して窪んだ、凹型の膜がウェハ200上に形成される。一方、ガス供給口2322に供給される処理ガスの流量とガス供給口の開口面積を調整することにより、ガス供給口2322から吹き出される処理ガスの流速を向上させることができる。例えば、前記実施の形態1で説明したように、開口径がφ1.5mmのガス供給口2322のそれぞれに、キャリアガスとしてのHガスを5slm、原料ガスとしてのSiHCl(トリクロロシラン)ガスを0.25slmの流量で供給すると、マッハ数に換算して、0.5程度、1000℃の条件下でのHガスに換算すると1500m/sec程度の流速で処理ガスを吹き出すことができる。この場合、ウェハ200の中心部においても数十m/secとすることができ、前記実施の形態1で説明したように、ウェハ200を回転させながら成膜工程を行うと、ウェハ200の中央部の膜厚は厚く、中央部よりも外側の周縁部の膜厚は、中央部よりも薄くなる。つまり、ウェハ200の周縁部が中央部に対して窪んだ、凸型の膜がウェハ200上に形成される。このように、1本のガス供給ノズルから処理ガスを供給する場合、凹型、あるいは凸型の膜が形成され易く、ウェハ200に形成される膜の膜厚を均一化するには、極めて高精度な流量制御が必要となる。
【0175】
そこで、本願発明者は、ウェハ200に形成される膜の膜厚を容易に均一化する技術について検討を行い、本実施の形態3の構成を見出した。なお、前記実施の形態1で説明した技術と、本実施の形態3の技術の相違点は、以下で説明する点であり、その他は前記実施の形態1と同様である。したがって、本実施の形態3では、前記実施の形態2との相違点について説明し、重複する説明は省略する。また、本実施の形態3で説明する技術は、前記実施の形態2で説明した技術と組み合わせて適用することもできる。この場合、前記実施の形態2で説明した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。しかし、繰り返しの説明を避けるため、前記実施の形態1で説明した技術の変形例として適用した実施態様を例示的に説明する。
【0176】
図16に示す基板処理装置101bと、図11に示す基板処理装置101の相違点は、間隙SP内に、複数のガス供給ノズル2321を設けた点である。換言すれば、本実施の形態3の基板処理装置101bは、インナーチューブ230とアウターチューブ205の間の間隙SPに、第1のガス供給ノズルとしてのガス供給ノズル2321cと、第2のガス供給ノズルとしてのガス供給ノズル2321dが配置されている。
【0177】
ガス供給ノズル2321cは、前記実施の形態1で説明したガス供給ノズル2321と同様であり、例えば、開口径がφ1.5mmからなるガス供給口2322が処理室201内に配置されるウェハ200の中心に向かって形成されている。一方、ガス供給ノズル2321dは、ガス供給口2322が、処理室201内に配置されるウェハ200の中心以外の領域、例えば、ウェハ200の周縁部に向かって形成されている。ガス供給ノズル2321dのその他の構成は、前記実施の形態1で説明したガス供給ノズル2321と同様である。
【0178】
また、インナーチューブ230の側壁230aには、複数のガス供給ノズル2321にそれぞれ形成されたガス供給口2322と対向する領域に、ガス供給口2322から吹き出されたガスを処理室201内のウェハ200に向かって供給するための流通口である開口部FHがそれぞれ形成されている。詳しくは、インナーチューブ230の側壁230aの、ガス供給ノズル2321cと対向する領域には、第1の流通口としての開口部FHaが形成されている。また、インナーチューブ230の側壁230aの、ガス供給ノズル2321dと対向する領域には、第2の流通口としての開口部FHbが形成されている。また、開口部FHaは、処理室201内に配置されるウェハ200の中心に向かって形成されている。一方、開口部FHbは、処理室201内に配置されるウェハ200の中心以外の領域、例えば、ウェハ200の周縁部に向かって形成されている。開口部FHa、FHbのその他の構成は、前記実施の形態1で説明した開口部FHと同様である。
【0179】
そして、各ガス供給ノズル2321c、2321dには、それぞれ同じ流量の処理ガスを供給する。例えば、ガス供給口2322のそれぞれに、キャリアガスとしてのHガスを5slm、原料ガスとしてのSiHCl(トリクロロシラン)ガスを0.25slmの流量で供給する。この状態で前記実施の形態1で説明したように、ウェハ200を回転させながら成膜工程を行うと、ガス供給ノズル2321cのガス供給口2322から吹き出された処理ガスは、ウェハ200の中央部の膜を厚く形成する。一方、ガス供給ノズル2321dのガス供給口2322から吹き出された処理ガスは、ウェハ200周縁部の膜を厚く形成する。この結果、ウェハ200上に形成される膜全体の厚さとしては、略均一化される。このように図16に示す本実施の形態3の一例によれば、複数のガス供給ノズル2321を配置し、ガス供給口2322の向きを調整することにより、ウェハ200に形成される膜の膜厚を容易に均一化することができる。
【0180】
なお、図16に示す、開口部FHa、FHbを一体化させて、開口幅を広くすることも考えられる。しかし、前記実施の形態1で説明したように、サセプタ218で発生した輻射熱を減衰させる観点から、図16に示すように、開口部FHa、FHbをそれぞれ独立して形成することが好ましい。
【0181】
次に、図16に示す実施態様の変形例として、図17に示す構成について説明する。図17に示す基板処理装置101cと、図11に示す基板処理装置101の相違点は、間隙SP内に、複数のガス供給ノズル2321を設けた点である。換言すれば、本実施の形態3の基板処理装置101cは、インナーチューブ230とアウターチューブ205の間の間隙SPに、第1のガス供給ノズルとしてのガス供給ノズル2321cと、第2のガス供給ノズルとしてのガス供給ノズル2321eが配置されている。
【0182】
ガス供給ノズル2321cは、図16に示すガス供給ノズル2321cと同様であり、例えば、開口径がφ1.5mmからなるガス供給口2322aが処理室201内に配置されるウェハ200の中心に向かって形成されている。一方、ガス供給ノズル2321eは、ガス供給口2322bが、処理室201内に配置されるウェハ200の中心に向かって形成されているが、開口径(開口幅)がガス供給口2322aよりも広くなっている。ガス供給ノズル2321eのその他の構成は、前記実施の形態1で説明したガス供給ノズル2321と同様である。
【0183】
また、インナーチューブ230の側壁230aには、複数のガス供給ノズル2321にそれぞれ形成されたガス供給口2322と対向する領域に、ガス供給口2322から吹き出されたガスを処理室201内のウェハ200に向かって供給するための流通口である開口部FHがそれぞれ形成されている。
【0184】
そして、各ガス供給ノズル2321c、2321eには、それぞれ同じ流量の処理ガスを供給する。例えば、ガス供給口2322のそれぞれに、キャリアガスとしてのHガスを5slm、原料ガスとしてのSiHCl(トリクロロシラン)ガスを0.25slmの流量で供給する。この状態で前記実施の形態1で説明したように、ウェハ200を回転させながら成膜工程を行うと、ガス供給ノズル2321cのガス供給口2322aから吹き出された処理ガスは、ウェハ200の中央部の膜を厚く形成する。一方、ガス供給ノズル2321eのガス供給口2322bから吹き出された処理ガスは、ガス供給口2322bの開口径が広いことにより、ウェハ200の中央部まで到達せず、ウェハ200周縁部の膜を厚く形成する。この結果、ウェハ200上に形成される膜全体の厚さとしては、略均一化される。このように図17に示す本実施の形態3の別の例によれば、複数のガス供給ノズル2321を配置し、それぞれに異なる開口径(開口面積)のガス供給口2322a、2322bを形成することにより、ウェハ200に形成される膜の膜厚を容易に均一化することができる。
【0185】
<本実施の形態3の代表的効果>
以上、本実施の形態3で説明した技術的思想によれば、前記実施の形態1で説明した効果に加え、少なくとも、以下に記載する複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0186】
(1)本実施の形態3によれば、間隙SP内に複数のガス供給ノズル2321を配置することで、ガス供給口2322とウェハ200の距離を離しても、ウェハ200に形成される膜の膜厚を容易に均一化することができる。
【0187】
(2)このため、ガス供給口2322とウェハ200の距離を離すことができるので、サセプタ218で発生する輻射熱を減衰させることができるので、ガス供給口2322の温度上昇を抑制することができる。
【0188】
(3)また、ガス供給ノズルに形成されるガス供給口の向き、あるいは開口径を調整することにより、複数のガス供給ノズル2321に同じ流量の処理ガスを供給しても、ウェハ200に形成される膜の膜厚を容易に均一化することができる。
【0189】
(4)また、本実施の形態3で説明した基板処理装置101b、101cを基板の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、基板の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0190】
(5)また、本実施の形態3で説明した基板処理装置101b、101cを半導体装置の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、半導体装置の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0191】
(6)また、本実施の形態3で説明した基板処理装置101b、101cを太陽電池の製造方法における基板の処理工程において用いることにより、太陽電池の製造方法において、上記した複数の効果のうち、1つ以上の効果を奏する。
【0192】
(7)また、本実施の形態3で説明した基板処理装置101b、101cを、前記実施の形態2で説明した技術と組み合わせて適用することにより、前記実施の形態2で説明した複数の効果のうち、1つ以上の効果をさらに奏する。
【0193】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0194】
例えば、前記実施の形態ではエピタキシャル装置を例示して説明したが、CVD装置、ALD装置、酸化装置、拡散装置、あるいは、アニール装置などその他の基板処理装置においても本発明における技術的思想を適用することができる。
【0195】
また、例えば、前記実施の形態2では、ガス供給部であるガス供給管232から、パージガスとしてのHガスを供給する態様について説明したが、これを前記実施の形態1に適用することもできる。この場合、前記実施の形態1で説明した態様において、前記実施の形態2で説明した図15に示すシーケンスで基板の処理工程を行うことができるので、昇温工程および成膜工程の前に、間隙SP内の圧力を確実に処理室201内の圧力よりも高くし、これを維持することができる。
【0196】
また、例えば前記実施の形態1〜前記実施の形態3で説明した実施態様に以下の変形例を適用することができる。
【0197】
<変形例>
図18は、図7に示す基板の保持構造の第1の変形例を示す拡大断面図である。前記実施の形態1では、サセプタ218を保持する保持部HU1を、支柱PRから突き出してサセプタ218上に配置されたウェハ200をサセプタ218と伴に保持する形態について説明した。しかし基板の保持構造はこれに限定されない。例えば、図18に示すように、支柱PRのそれぞれに溝DITを形成することにより、サセプタ218を保持するように構成してもよい。すなわち、支柱PRの延在方向に等間隔で並ぶように複数の溝DITを形成する。この溝DITは、複数の支柱PRで互いに同じ高さに設けられており、互いに同じ高さに設けられた、例えば3つの溝DITでサセプタ218の両端を保持するように構成することができる。この場合、3つの溝DITで保持されたサセプタ218は、水平状態を維持するように配置される。具体的に、図7に示すように、ボート217には、延在方向に所定間隔で配置された溝DITのそれぞれにサセプタ218が搭載されている。したがって、支柱PRに溝DITを形成する場合も、複数のサセプタ218が、ボート217の延在方向に所定間隔を置いて積層配置されるようにボート217を構成することができる。
【0198】
また、別の変形例として、ウェハ200をサセプタ218にて保持せず、基板保持体としてのボート(図示は省略)に直接ウェハ200を複数段(多段)に配置して、被誘導加熱体としてのサセプタ218を設けずに、別の形態にて、インナーチューブ230内に被誘導加熱体を設けるようにすることもできる。
【0199】
本発明は少なくとも以下の実施の形態を含む。
【0200】
〔付記1〕
被誘導加熱体を有し、該被誘導加熱体からの輻射熱により基板を加熱し、処理する処理室と、
該処理室を形成するインナーチューブであって、前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に流通口が設けられるインナーチューブと、
該インナーチューブの外側に設けられ、該インナーチューブと間隙を成して囲うアウターチューブと、
前記間隙に配置されるガス供給ノズルであって、前記流通口および前記基板に向けてガスを吹き出す、吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域のガスの上流側に位置する第二領域とを有するガス供給ノズルと、
前記アウターチューブの外側に設けられ、前記被誘導加熱体を誘導加熱する誘導加熱装置と、
を備える基板処理装置。
【0201】
〔付記2〕
前記間隙にパージガスを供給するパージガス供給部をさらに有する付記1記載の基板処理装置。
【0202】
〔付記3〕
前記ガス供給ノズルへガスを供給するガス供給部と、
前記インナーチューブ内を排気する排気部と、
該ガス供給部、前記パージガス供給部、および前記排気部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記インナーチューブ内の圧力よりも前記間隙の圧力のほうが高くなるように前記ガス供給部および前記パージガス供給部、前記排気部を制御する付記2記載の基板処理装置。
【0203】
〔付記4〕
前記パージガス供給部は、前記流通口が設けられる位置とは、前記インナーチューブを介在させた反対側の前記間隙へ前記パージガスを供給する付記2記載の基板処理装置。
【0204】
〔付記5〕
アウターチューブの外側に設けられた誘導加熱装置にて、インナーチューブにより形成された処理室に設けられた被誘導加熱体を誘導加熱して基板を加熱し、
前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間の間隙に設けられたガス供給ノズルであって、前記インナーチューブ内の前記基板に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域よりもガスの上流側に位置する第二領域とを有するガス供給ノズルの前記第一領域に設けられた前記吹出し口からガスを吹き出し、
該ガスが前記インナーチューブの前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に設けられた流通口を介して前記基板に到達し、前記基板を処理する基板の製造方法。
【0205】
〔付記6〕
アウターチューブの外側に設けられた誘導加熱装置にて、インナーチューブにより形成された処理室に設けられた被誘導加熱体を誘導加熱して基板を加熱し、
前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間の間隙に設けられたガス供給ノズルであって、
前記インナーチューブ内の前記基板に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域よりもガスの上流側に位置する第二領域と、を有するガス供給ノズルの前記第一領域に設けられた前記吹出し口からガスを吹き出し、
該ガスが前記インナーチューブの前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に設けられた流通口を介して前記基板に到達し、前記基板を処理する半導体装置の製造方法。
【0206】
〔付記7〕
アウターチューブの外側に設けられた誘導加熱装置にて、インナーチューブにより形成された処理室に設けられた被誘導加熱体を誘導加熱して基板を加熱し、
前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間の間隙に設けられたガス供給ノズルであって、
前記インナーチューブ内の前記基板に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域よりもガスの上流側に位置する第二領域と、を有するガス供給ノズルの前記第一領域に設けられた前記吹出し口からガスを吹き出し、
該ガスが前記インナーチューブの前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に設けられた流通口を介して前記基板に到達し、前記基板を処理する太陽電池の製造方法。
【0207】
〔付記8〕
前記アウターチューブおよび前記インナーチューブは有天筒状に形成されており、前記アウターチューブは内部を減圧維持可能に形成されている付記1記載の基板処理装置。
【0208】
〔付記9〕
前記ガス供給ノズルの前記第二領域に対向する前記インナーチューブの側壁が、前記被誘導加熱体からの輻射熱が前記第二領域に輻射されるのを抑制する輻射抑制部である付記1記載の基板処理装置。
【0209】
〔付記10〕
前記流通口は、前記ガス供給ノズルの延在方向に長いスリット状に形成されており、かつ、前記ガス供給ノズルの第一領域におけるノズル幅より小さい幅で形成されている付記1記載の基板処理装置。
【0210】
〔付記11〕
内部を減圧維持可能な筒状に形成されたアウターチューブと、
前記アウターチューブの内部に前記アウターチューブと間隙を介して同心筒状に設けられるインナーチューブと、
前記インナーチューブの内部に設けられる被誘導加熱体と、
前記インナーチューブの内部で、長手方向に複数段、基板を保持する基板保持体と、
前記アウターチューブの外部に設けられ、少なくとも前記被誘導加熱体を誘導加熱する誘導加熱装置と、
前記間隙の、下方から少なくとも前記基板保持体に保持された前記基板に対向する位置まで延在し、前記基板に向けてガスを吹出し可能な吹出し口を有するガス供給ノズルと、を有し、
前記インナーチューブには、前記第一ガス供給ノズルの前記吹出し口と対向する位置であって、前記基板保持体に保持された複数の基板の周縁側方の位置に、該吹出し口から前記基板に向けて供給されたガスを流通させる流通口が形成されている基板処理装置。
【0211】
〔付記12〕
前記ガス供給ノズルは前記ガスとしてトリクロロシラン(SiHCl)ガスと水素(H)ガスとの混合ガスを供給するよう構成されている付記1記載の基板処理装置。
【0212】
〔付記13〕
前記パージガスは、水素(H)ガスである付記2記載の基板処理装置。
【0213】
〔付記14〕
アウターチューブの外側に設けられた誘導加熱装置にて、インナーチューブにより形成された処理室に設けられた被誘導加熱体を1150℃以上に誘導加熱して基板を加熱し、
前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間の間隙に設けられたガス供給ノズルであって、前記インナーチューブ内の前記基板に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域よりもガスの上流側に位置する第二領域とを有するガス供給ノズルの前記第一領域に設けられた前記吹出し口からトリクロロシラン(SiHCl)ガスと水素(H)ガスを吹き出し、
該ガスが前記インナーチューブの前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に設けられた流通口を介して前記基板に到達させるとともに、前記被誘導加熱体からの輻射熱を前記インナーチューブの側壁にて遮ることで、前記ガス供給ノズルの前記第二領域が900℃未満にして、基板を処理する基板の製造方法。
【0214】
〔付記15〕
被誘導加熱体を有し、該被誘導加熱体からの輻射熱により基板を加熱し、処理する処理室と、
該処理室を形成するインナーチューブであって、前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に流通口が設けられるインナーチューブと、
該インナーチューブの外側に設けられ、該インナーチューブと間隙を成して囲うアウターチューブと、
前記間隙に配置される第1および第2のガス供給ノズルと、
前記アウターチューブの外側に設けられ、前記被誘導加熱体を誘導加熱する誘導加熱装置と、
を備え、
前記第1および第2のガス供給ノズルには、それぞれ、前記流通口および前記基板に向けてガスを吹き出す、吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域のガスの上流側に位置する第二領域とを有する基板処理装置。
【0215】
〔付記16〕
前記第1のガス供給ノズルは、前記処理室内に配置される前記基板の中心に向かって前記吹出し口が形成され、
前記第2のガス供給ノズルは、前記処理室内に配置される前記基板の中心以外の領域に向かって前記吹出し口が形成される付記15記載の基板処理装置。
【0216】
〔付記17〕
前記吹出し口のうち、
前記第1のガス供給ノズルには、第1の開口径を有する第1の吹出し口が形成され、
前記第2のガス供給ノズルには、前記第1の開口径よりも大きい第2の開口径を有する第2の吹出し口が形成される、付記15記載の基板処理装置。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明は、半導体装置や太陽電池などを製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0218】
101、101a、101b、101c 基板処理装置
103 正面メンテナンス口
104 正面メンテナンス扉
105 カセット棚
106 スライドステージ
107 バッファ棚
110 カセット
111 筐体
111a 正面壁
112 カセット搬入搬出口
113 フロントシャッタ
114 カセットステージ
115 ボートエレベータ
118 カセット搬送装置
118a カセットエレベータ
118b カセット搬送機構
125 ウェハ移載機構
125a ウェハ移載装置
125b ウェハ移載装置エレベータ
125c ツイーザ
134a クリーンユニット
140 耐圧筐体
140a 正面壁
141 ロードロック室
142 ウェハ搬入搬出口
143 ゲートバルブ
144 ガス供給管
147 炉口ゲートバルブ
161 炉口
177、178、179、186 バルブ
180 第1のガス供給源
181 第2のガス供給源
182 第3のガス供給源
183、184、185、187 MFC(Mass Flow Controller)
188 パージガス供給源
200 ウェハ
201 処理室
202 処理炉
205 アウターチューブ
205a 側壁
205b 蓋部
206 誘導加熱装置
209 マニホールド
216 断熱筒
217 ボート
217a 底板
217b 天板
218 サセプタ
218a 周縁部
218b 中央部
218c 段差部
219 シールキャップ
230 インナーチューブ
230a 側壁
230b 蓋部
231 ガス排気管
232 ガス供給管
233 パージガス供給部
235 ガス流量制御部
235a パージガス流量制御部
236 圧力制御部
237 駆動制御部
238 温度制御部
239 主制御部
240 コントローラ
242 APCバルブ
244 ボール螺子
245 下基板
246 真空排気装置
247 上基板
248 昇降モータ
249 昇降台
250 昇降シャフト
251 天板
252 昇降基板
253 駆動部カバー
254 回転機構
255 回転軸
256 駆動部収納ケース
257 冷却機構
258 電力供給ケーブル
259 冷却流路
260 冷却水配管
263 放射温度計
264 ガイドシャフト
265 ベローズ
301、309 Oリング
2061 RFコイル
2062 壁体
2063 冷却壁
2064 ラジエータ
2065 ブロア
2066 開口部
2067 爆発放散口開閉装置
2311 ガス排気口
2321、2321c、2321d、2321e ガス供給ノズル
2321a 第一領域
2321b 第二領域
2322、2322a、2322b ガス供給口
2331 パージガス供給ノズル
2332 パージガス供給口
C、CL、CU、L、U RFコイル
DIT 溝
FH、FHa、FHb 開口部
HU1 保持部
MT 部材
PF パージガス供給部
PH ピン孔
PN 突き上げピン
PR 支柱
SP 間隙
T1 板厚
UDU 突き上げピン昇降機構
W1、W2、W3 開口幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被誘導加熱体を有し、該被誘導加熱体からの輻射熱により基板を加熱し、処理する処理室と、
該処理室を形成するインナーチューブであって、前記処理室に配置される前記基板の周縁側方に流通口が設けられるインナーチューブと、
該インナーチューブの外側に設けられ、該インナーチューブと間隙を成して囲うアウターチューブと、
前記間隙に配置されるガス供給ノズルであって、前記流通口および前記基板に向けてガスを吹き出す、吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域のガスの上流側に位置する第二領域とを有するガス供給ノズルと、
前記アウターチューブの外側に設けられ、前記被誘導加熱体を誘導加熱する誘導加熱装置と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記間隙にパージガスを供給するパージガス供給部をさらに有する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給ノズルへガスを供給するガス供給部と、
前記インナーチューブ内を排気する排気部と、
該ガス供給部、前記パージガス供給部、および前記排気部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記インナーチューブ内の圧力よりも前記間隙の圧力のほうが高くなるように前記ガス供給部および前記パージガス供給部、前記排気部を制御する請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記パージガス供給部は、前記流通口が設けられる位置とは、前記インナーチューブを介在させた反対側の前記間隙へ前記パージガスを供給する請求項2記載の基板処理装置。
【請求項5】
アウターチューブの外側に設けられた誘導加熱装置にて、インナーチューブにより形成された処理室に設けられた被誘導加熱体を誘導加熱して基板を加熱し、
前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間の間隙に設けられたガス供給ノズルであって、前記インナーチューブ内の前記基板に向けてガスを吹き出す吹出し口が設けられている第一領域と、該第一領域よりもガスの上流側に位置する第二領域とを有するガス供給ノズルの前記第一領域に設けられた前記吹出し口からガスを吹き出し、
該ガスが前記インナーチューブの前記処理室に配置される基板の周縁側方に設けられた流通口を介して前記基板に到達し、前記基板を処理する基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−23073(P2012−23073A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157558(P2010−157558)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】