説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】処理液による基板処理の面内均一性を向上させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】二流体ノズルからの薬液の液滴の噴流が導かれるウエハの表面上の供給位置が、ウエハの回転中心からウエハの周縁部に至る範囲を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。薬液の供給位置がウエハの回転中心から離れるにつれて、二流体ノズルからウエハに供給される薬効成分の濃度が高くされている。その一方で、回転中心から離れているほど、ウエハの表面位置は高速に移動している。その結果、単位面積あたりの薬液の薬効成分の量がウエハの全域においてほぼ等しくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に処理液を供給して当該基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程などでは、基板に処理液を供給する基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置は、たとえば基板を保持して回転するスピンチャックと、このスピンチャックの表面に、処理液を供給する処理液ノズルと、この処理液ノズルを基板上で移動させるノズル移動機構とを備えている。
ノズル移動機構によって処理液ノズルが移動されることによって、基板の表面における処理液の供給位置(処理液が当たる位置)が、基板の回転中心を通る経路に沿って移動される。回転中の基板の中央領域から周縁領域に向けて基板の表面の供給位置が移動されることで、基板の全域に処理液が供給される。
【特許文献1】特開平11−102885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、基板の表面位置は回転中心から離れているほど高速に移動しているので、処理液供給量が一定ならば、処理液の供給位置が回転中心から離れるほど、単位面積あたりの処理液の供給量が少なくなる。処理液ノズルから基板の表面に供給された処理液は、供給位置において最も高い処理力を発揮する。このため、基板の中央領域と周縁領域とで処理効率が異なり、基板の表面内に処理の不均一が生じる。
【0004】
そこで、この発明の目的は、処理液による基板処理の面内均一性を向上させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を回転させる基板回転手段(1)と、前記基板回転手段によって回転される基板の表面に処理液を供給する処理液供給手段(2)と、前記処理液供給手段から基板の表面に供給される処理液の供給位置を移動させるための供給位置移動手段(32,33)と、前記処理液供給手段から供給される処理液の活性度を変更するための活性度変更手段(22:25)と、前記供給位置移動手段によって移動させられる処理液の供給位置に基づいて、前記活性度変更手段を制御する制御手段(35)とを含む、基板処理装置である。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、基板の表面に供給される処理液の活性度が、処理液の供給位置に基づいて変更される。このとき、単位面積あたりの処理量が基板の全域においてほぼ等しくなるように、供給位置ごとの処理液の活性度が変更されれば、基板の全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。これにより、処理液による基板処理の面内均一性を向上させることができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記制御手段は、前記処理液の供給位置が基板の回転中心から離れるにつれて、前記処理液の活性度が高くなるように、前記活性度変更手段を制御する、請求項1記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板の回転中心から離れた位置ほど、基板の表面に供給される処理液の活性度は高い。一方で、回転中心から離れているほど、基板の表面位置は高速に移動している。その結果、単位面積あたりの処理量を基板の全域においてほぼ等しくすることができる。これにより、基板の全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。ゆえに、処理液による基板処理の面内均一性を向上させることができる。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記活性度変更手段は、前記処理液供給手段から供給される処理液の活性成分の濃度を変更する活性成分濃度変更手段(22)を含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。
処理液の活性度は、処理液の活性成分の濃度を含む。請求項3記載の構成によれば、基板の表面に供給される処理液の活性成分の濃度が、処理液の供給位置に基づいて変更される。基板の表面に供給される処理液の活性成分の濃度が変更されると、基板の表面と処理液の活性成分との接触確率が変わる。このため、基板の表面の単位面積あたりの処理液の活性成分の量が等しくなるように、供給位置ごとの処理液の活性成分の濃度が変更されれば、基板の全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。これにより、処理液による基板処理の面内均一性を向上させることができる。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記活性度変更手段は、前記処理液供給手段から供給される処理液の温度を変更する処理液温度変更手段(25)を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置である。
処理液の活性度は、処理液の活性成分の濃度を含む。請求項4記載の構成によれば、基板の表面に供給される処理液の温度が、基板の表面の処理液の供給位置に基づいて変更される。そのため、基板の全域で処理液の温度分布を均一とすることが望ましい。
【0010】
基板の表面の単位面積あたりの処理液の供給熱量が等しくなるように、供給位置ごとの処理液の温度が変更されれば、基板の全域で処理液の温度分布を均一とすることができる。これにより、基板の全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。ゆえに、処理液による基板処理の面内均一性を向上させることができる。
請求項5記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記基板回転手段によって回転される基板の表面に、処理液の液滴の噴流を供給する液滴噴流ノズル(2)を備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置である。
【0011】
この構成によれば、処理液の液滴の噴流が基板の表面に処理液の液滴の噴流が供給される。処理液の液滴の噴流は基板の表面に所定の衝撃力で衝突するため、基板の表面に供給された処理液は、基板の表面のうち供給位置において特に高い処理力を発揮する。その反面、その他の位置においては処理液の処理力が低く抑えられる。
この液滴噴流ノズルによって基板に処理液が供給される場合であっても、単位面積あたりの処理液の活性度が基板の全域においてほぼ等しくなるように、供給位置ごとの処理液の活性度が変更されれば、基板の全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。これにより、基板の全域において、高い処理効率でかつ均一に、処理液による処理を施すことができる。
【0012】
請求項6記載の発明は、基板を回転させる回転ステップ(S2)と、この回転ステップ中に、基板の表面に処理液を供給する処理液供給ステップ(S4)と、前記処理液供給ステップと並行して、基板の表面に供給される処理液の供給位置を移動させる供給位置移動ステップ(S5)と、前記処理液供給ステップおよび前記供給位置移動ステップと並行して、処理液の供給位置に基づいて、前記基板に供給される処理液の活性度を変更する活性度変更ステップ(S5)とを含む、基板処理方法である。
【0013】
この方法によれば、請求項1に関連した効果と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の基本的な構成を説明するための斜視図である。この基板処理装置は、基板の一例である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wにおけるデバイス形成領域側の表面(上面)に対して薬液による処理を施すための枝葉型の装置である。薬液としては、洗浄液、エッチング液、レジスト剥離液、ポリマー除去液を例示することができる。このうち、洗浄液として、ウエハWの表面に付着したパーティクルを除去するためのSC−1(アンモニア過酸化水素水)を例示することができる。
【0015】
以下では、このSC−1(アンモニア過酸化水素水)を薬液として用いて、ウエハWに洗浄処理を施す基板処理装置を例にとって説明する。
この基板処理装置は、ウエハWをほぼ水平に保持して回転するスピンチャック1と、このスピンチャック1に保持されたウエハWの表面(上面)に薬液の液滴の噴流を供給するための二流体ノズル2と、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面の回転中心36に純水を供給するための純水ノズル3とを備えている。
【0016】
スピンチャック1は、チャック回転駆動機構11によって回転される回転軸12の上端に固定されていて、ほぼ円板形状のスピンベース13と、このスピンベース13の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材14とを備えている。スピンチャック1は、複数個の挟持部材14によってウエハWを挟持した状態で、チャック回転駆動機構11によって回転軸12を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース13とともに回転軸12の中心軸線まわりに回転させることができる。
【0017】
二流体ノズル2には、ミキシングバルブ16から延びる第1薬液供給管17と、窒素ガス供給源からの高圧の窒素ガスが供給される窒素ガス供給管18とが接続されている。
ミキシングバルブ16には、薬液供給源からの薬液が供給される第2薬液供給管19と、純水供給源からの純水(脱イオン化された純水)が供給される純水供給管20とが接続されている。第2薬液供給管19の途中部には、薬液バルブ21と、第2薬液供給管19を流通する薬液の流量を調節するための流量調節バルブ22とが、薬液供給源側からこの順に介装されている。また、純水供給管20の途中部には、第1純水バルブ23が介装されている。第2薬液供給管19に供給されてミキシングバルブ16でミキシングされ、希釈された後の薬液の薬効成分の濃度は、たとえば4.0wt%である。その第2薬液供給管19に供給される薬液と、純水供給管20に供給される純水とは、ともに室温(約25℃)程度の液温を有している。
【0018】
第1薬液供給管17の途中部には、攪拌流通管24と、第1薬液供給管17を流通する薬液を加熱するためのヒータ25とが、ミキシングバルブ16側からこの順に介装されている。攪拌流通管24は、管部材内に、それぞれ液体流通方向を軸にほぼ180度のねじれを加えた長方形板状体からなる複数の撹拌フィンを、液体流通方向に沿う管中心軸まわりの回転角度を90度ずつ交互に異ならせて配置した構成のものであり、たとえば、株式会社ノリタケカンパニーリミテド・アドバンス電気工業株式会社製の商品名「MXシリーズ:インラインミキサー」を用いることができる。また、窒素ガス供給路18の途中部には、窒素ガスバルブ26が介装されている。
【0019】
薬液バルブ21および第1純水バルブ23が開かれると、薬液および純水が、それぞれ第2薬液供給管19および純水供給管20を通ってミキシングバルブ16に流入し、それらがミキシングバルブ16から二流体ノズル2に向けて第1薬液供給管17を流通する。薬液および純水は、第1薬液供給管17を流通する途中で、攪拌流通管24を通過することにより十分に攪拌されて、薬液が純水によって希釈される。このときの濃度は、たとえば4.0wt%である。この希釈された薬液は、ヒータ25によって予め定める制御温度に昇温された後、二流体ノズル2に供給される。
【0020】
また、窒素ガスバルブ26が開かれると、窒素ガスが二流体ノズル2に供給される。
二流体ノズル2に薬液と窒素ガスとが供給されて混合されることにより、薬液の微細な液滴が形成され、この薬液の液滴が噴流となって、二流体ノズル2からスピンチャック1に保持されたウエハWの表面に供給される。
さらに、二流体ノズル2は、ウエハWの表面における薬液の供給位置を変更できるスキャンノズルとしての基本形態を有している。具体的には、スピンチャック1の側方には、アーム支持軸31が鉛直方向にほぼ沿って配置されている。二流体ノズル2は、アーム支持軸31の上端部から略水平に延びたアーム32の先端部に取り付けられている。アーム支持軸31には、アーム支持軸31を中心軸線周りに所定の角度範囲で回動させるアーム揺動駆動機構33が結合されている。アーム支持軸31には、アーム支持軸31の回動角度を検出するための回動角度センサ34が近接して配置されている。アーム揺動駆動機構33からアーム支持軸31に駆動力を入力して、アーム支持軸31を所定の角度範囲内で回動させることにより、スピンチャック1に保持されたウエハWの上方でアーム32を揺動させることができ、これに伴って、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面上で、二流体ノズル2からの薬液の液滴の噴流の供給位置をスキャン(移動)させることができる。
【0021】
また、純水ノズル3には、第2純水バルブ28を介して純水が供給されるようになっている。
この基板処理装置はさらに、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置35を備えている。
制御装置35には、チャック回転駆動機構11、アーム揺動駆動機構33、ヒータ25、薬液バルブ21、第1純水バルブ23、窒素ガスバルブ26、第2純水バルブ28および流量調節バルブ22などが制御対象として接続されている。
【0022】
制御装置35は、予め定められたプログラムに従って、チャック回転駆動機構11およびアーム揺動駆動機構33の動作を制御する。また、制御装置35は、薬液バルブ21、第1純水バルブ23、窒素ガスバルブ26および第2純水バルブ28の開閉を制御する。
さらに、制御装置35は、流量調節バルブ22の開度を制御する。流量調節バルブ22の開度が制御されて、二流体ノズル2から吐出される薬液の薬効成分(NH4OHおよびH22)の濃度を、たとえば0〜4.0wt%の範囲で変更することができる。
【0023】
また、制御装置35は、第1薬液供給管17を流通する薬液(希釈された薬液)を所定の制御温度に昇温させるように、ヒータ25を駆動する。ヒータ25の制御温度が変更されることによって、二流体ノズル2から吐出される薬液の温度が変更される。
さらにまた、制御装置35には、回動角度センサ34が接続されており、回動角度センサ34から出力された計測値が制御装置35に入力されるようになっている。
【0024】
図2は、二流体ノズル2の構成を示す図解的な断面図である。二流体ノズル2は、たとえば、いわゆる外部混合型二流体ノズルの構成を有している。
すなわち、二流体ノズル2は、ケーシング42を備え、このケーシング42の先端に、薬液を外部空間43に向けて吐出するための薬液吐出口44と、この薬液吐出口44を取り囲む環状に形成され、窒素ガスを外部空間43に向けて吐出するための窒素ガス吐出口45とを有している。
【0025】
より具体的に説明すると、ケーシング42は、内側流通管46と、内側流通管46の周囲を取り囲み、その内側流通管46を内挿状態で同軸に保持する外側保持体47とによって構成されている。
内側流通管46は、その内部に薬液流路48を有している。この薬液流路48の先端(下端)が、薬液吐出口44として開口し、その反対側の上端は、流体を導入するための薬液導入ポート49を形成している。また、内側流通管46は、先端部(下端部)50およびその反対側の上端部51がそれぞれ外方に張り出した鍔形状に形成されており、これらの鍔形状の先端部50および上端部51が外側保持体47の内面に当接して、先端部50および上端部51の間において、内側流通管46の外面と外側保持体47の内面との間に空間52が形成されている。そして、内側流通管46の先端部50には、空間52と外部空間43とを連通させる窒素ガス流路53が形成され、この窒素ガス流路53の先端が窒素ガス吐出口45として開口している。窒素ガス流路53は、先端側ほど内側流通管46の中心軸線に近づくように傾斜する断面形状を有している。
【0026】
外側保持体47は、その側面に窒素ガス導入ポート54を有している。この窒素ガス導入ポート54は、内側流通管46の外面と外側保持体47の内面との間に形成された空間52に連通している。
薬液導入ポート49に第1薬液供給管17が接続され、窒素ガス導入ポート54に窒素ガス供給管18が接続される。そして、第1薬液供給管17から薬液流路48に薬液が供給されるとともに、窒素ガス供給管18から空間52に窒素ガスが供給されると、薬液吐出口44から外部空間43に薬液が吐出されるとともに、窒素ガス吐出口45から外部空間43に窒素ガスが吐出される。すると、外部空間43において、薬液と窒素ガスとが衝突して混合され、薬液の微細な液滴の噴流が形成される。
【0027】
なお、二流体ノズル2は、外部混合型二流体ノズルの構成に限らず、いわゆる内部混合型二流体ノズルの構成を有していてもよい。
図3は、二流体ノズル2の配置を説明するための図解的な平面図である。二流体ノズル2は、アーム32の揺動に伴って、アーム支持軸31を中心として円弧軌道に沿って等速で移動する。それに伴い、二流体ノズル2からウエハWの表面に供給される薬液の供給位置が、ウエハWの回転中心36を通る円弧状のスキャン経路37に沿って移動するように、二流体ノズル2がアーム32に取り付けられている。
【0028】
この実施形態では、二流体ノズル2がウエハWの上方を回転中心36から周縁部まで移動するときにだけ、二流体ノズル2からウエハWの表面に薬液が供給される。つまり、スピンチャック11に保持されたウエハWの表面上で、薬液の供給位置の一方向スキャン(移動)が実現される。このとき、薬液の供給位置がウエハWの回転中心36からウエハWの周縁部まで移動するのにたとえば約8秒間要する。図3では、ウエハWの半径をL、薬液の供給位置のウエハWの回転中心からの距離をrで表している。
【0029】
図4は、基板処理装置におけるウエハWの処理の一例を示すフローチャートである。
ウエハWの処理に際して、まず、図示しない搬送ロボットによって未処理のウエハWがスピンチャック1に受け渡される(ステップS1)。このとき、二流体ノズル2は、スピンチャック1の側方の退避位置に退避させられている。また、薬液バルブ21および第1純水バルブ23は、いずれも閉状態に制御されている。
【0030】
ウエハWがスピンチャック1へ受け渡された後、制御装置35は、チャック回転駆動機構11を駆動して、スピンチャック1を所定の液処理回転速度で等速回転させる(ステップS2)。また、制御装置35は、アーム揺動駆動機構33を駆動し、アーム32を揺動させて、二流体バルブ2を、回転状態にあるウエハWの回転中心36の上方へと導く(ステップS3)。
【0031】
その後、制御装置35は、薬液バルブ21、第1純水バルブ23および窒素ガスバルブ26を開いて、二流体ノズル2から薬液と窒素ガスとが混合されて生成された液滴の噴流を吐出する(ステップS4)。
一方で、制御装置35は、アーム揺動駆動機構33を制御し、アーム32を等速で揺動させて、二流体バルブ2をウエハWの周縁部に向けて導く(ステップS5)。このため、二流体ノズル2からの薬液の液滴の噴流が導かれるウエハWの表面上の供給位置が、等速回転中のウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲を、円弧状の軌跡を描きつつ等速で移動する。これによって、ウエハWの表面の全域に薬液の液滴の噴流が供給される。
【0032】
アーム32の揺動によって、薬液の供給位置がウエハWの周縁部に到達すると(ステップS6でYES)、制御装置35は、薬液バルブ21、第1純水バルブ23および窒素ガスバルブ26を閉じるとともに、アーム揺動駆動機構33を駆動し、アーム32を揺動させて、二流体バルブ2をウエハWの回転中心36の上方へと導く。
その後、処理時間が経過するまで(ステップS9でYES)、薬液の供給位置の一方向スキャンが繰り返し行われる。あるいは、薬液の供給位置がウエハWの周縁部に到達した後、薬液バルブ21、第1純水バルブ23および窒素ガスバルブ26を開けた状態を継続しつつ、アーム32をウエハWの回転中心36方向にリターンさせて、二流体バルブ2からの薬液の供給位置をウエハWの回転中心36へと戻す往復スキャンを行ってもよい。
【0033】
この薬液の供給位置のスキャンでは、制御装置35は、薬液の供給位置がウエハWの回転中心36から離れるにつれて、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の濃度が高くなるように、流量調整バルブ22の開度を制御する(ステップS5)。
以下、具体的に説明する。
制御装置35は、回動角度センサ34からの計測値に基づいて、ウエハW上における二流体ノズル2の位置を把握することができ、そのため、ウエハWの表面上における薬液の供給位置を把握することができる。
【0034】
図5は、ウエハW上の薬液の供給位置の変化に伴う薬液濃度の変化を示すグラフである。横軸は、回転中心36からの距離r(図3参照)を示している。
図5に示すように、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の濃度(x)は次の(1)式で表すことができる。
x=x0+(xs−x0)・r/L (x0:ウエハの中央部に供給される薬液の濃度、xs:ウエハの周縁部に供給される薬液の濃度、r:ウエハの回転中心から供給位置までの距離、L:ウエハの半径) ・・・(1)
二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の薬効成分の濃度は、薬液の供給位置のウエハWの回転中心36からの距離に比例して高くなる。ウエハWの回転中心に供給される薬液(SC−1)は、その濃度が1.0wt%(NH4OH:H22:DIW=1:1:200)であり、ウエハWの周縁部において二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の濃度はたとえば約4.0wt%(NH4OH:H22:DIW=1:1:50)とされる。このように、薬液の薬効成分の濃度が低い範囲で変更されるので、薬液の供給位置のスキャンの過程で、二流体ノズル2から吐出される薬液の吐出量は実質上一定である。
【0035】
このように、ウエハWの回転中心36から離れた位置ほど、ウエハWの表面に供給される薬液の薬効成分の濃度が高い。その一方で、回転中心36から離れているほど、ウエハWの表面位置は高速に移動している。その結果、単位面積あたりの薬液の薬効成分の量がウエハWの全域においてほぼ等しくなる。
薬液による処理を所定時間だけ行った後(ステップS9でYES)、制御装置35は、薬液バルブ21および第1純水バルブ23を閉じ、二流体ノズル2からの薬液の吐出を停止させる。また、制御装置35は、アーム揺動駆動機構33を駆動して、アーム32を揺動させ、二流体ノズル2をスピンチャック1の側方の退避位置に退避させる(ステップS10)。
【0036】
次に、制御装置35は、第2純水バルブ28を開いて、純水ノズル3から、回転状態のウエハWの表面の回転中心36に純水を供給する(ステップS11)。これにより、ウエハW上の薬液が洗い流されて、ウエハWにリンス処理が施される。
このリンス処理を所定時間行った後に(ステップS12でYES)、制御装置35は、第2純水バルブ28を閉じてリンス処理を終了させる(ステップS13)。制御装置35は、さらにチャック回転駆動機構11を制御して、スピンチャック1の回転速度を所定の乾燥回転速度に加速する。これによって、ウエハWの表面の水分が遠心力によって振り切られ、ウエハWが乾燥処理される(ステップS14)。
【0037】
乾燥処理を所定時間行った後(ステップS15でYES)、制御装置35は、チャック回転駆動機構11を制御して、スピンチャックの回転を停止させる(ステップS16)。その後、処理済みのウエハWが基板搬送ロボットによって搬送される(ステップS17)。
以上により、この実施形態によれば、ウエハWの回転中心36から離れた位置ほど、ウエハWの表面に供給される薬液の薬効成分の濃度が高い。一方で、回転中心36から離れているほど、ウエハWの表面位置は高速に移動している。その結果、単位面積あたりの薬液の薬効成分の量がウエハWの全域においてほぼ等しくなる。これにより、ウエハWの全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。ゆえに、ウエハ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、前述した形態以外の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、薬液の供給位置に応じて二流体ノズル2から吐出される薬液の薬効成分の濃度が変更される構成としたが、これに代えて、薬液の供給位置に応じて二流体ノズル2から供給される薬液の温度が変更される構成であってもよい。
【0039】
図6は、ウエハW上の薬液の供給位置の変化に伴う薬液温度の変化を示すグラフである。横軸は、回転中心36からの距離r(図3参照)を示している。
薬液の供給位置のスキャンにおいては、制御装置35は、薬液の供給位置がウエハWの回転中心36から離れるにつれて、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の温度が高くなるように、ヒータ25の制御温度を変更する。このとき、薬液の供給位置のスキャンの過程で、二流体ノズル2から吐出される薬液の吐出量は一定とする。
【0040】
図6に示すように、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の温度(T)は次の(2)式で表すことができる。
T=T0+(Ts−T0)・r/L(T0:ウエハの中央部の温度、Ts:ウエハの周縁部に供給される薬液の温度、r:ウエハの回転中心から供給位置までの距離、L:ウエハの半径) ・・・(2)
このように、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の温度は、薬液の供給位置のウエハWの回転中心36からの距離に比例して高くなる。ウエハWの回転中心に供給される薬液(SC−1)の温度は、たとえば室温(約25℃)であり、ウエハWの周縁部に供給される薬液の温度は約40℃とされる。
【0041】
このように、ウエハWの回転中心36から離れた位置ほど、ウエハWの表面に供給される薬液の温度が高い。一方で、回転中心36から離れているほど、ウエハWの表面位置は高速に移動している。その結果、単位面積あたりの薬液の供給熱量がウエハWの全域においてほぼ等しくなり、ウエハの全域で薬液の温度分布が均一となる。これにより、ウエハWの全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。ゆえに、薬液によるウエハWの処理の面内均一性を向上させることができる。
【0042】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
前述の説明では、薬液としてSC−1が用いられる場合を例にとって説明したが、薬液としてSC−2(塩酸過酸化水素水)が用いられていてもよい。この場合、第1実施形態のように薬液の薬効成分(HCLおよびH22)の濃度を変更するときのウエハWの周縁部に供給される薬液の濃度xsは、たとえば約11wt%(HCL:H22:DIW=1:1:10)である。また、第2実施形態のように薬液の温度を変更するとき、ウエハWの周縁部に供給される薬液の温度Tsはたとえば約50℃であり、ウエハWの回転中心36に供給される薬液の温度T0はたとえば約25℃である。
【0043】
また、薬液としてHFが用いられる場合には、第1実施形態のように薬液の濃度を変更するときのウエハWの周縁部に供給される薬液の薬効成分の濃度xsは、約1.0wt%(HF:DIW=1:100)である。また、第2実施形態のように薬液の温度を変更するとき、ウエハWの周縁部に供給される薬液の温度Tsはたとえば約30℃であり、ウエハWの回転中心36に供給される薬液の温度T0はたとえば約25℃である。
【0044】
さらに、薬液として、SPM(硫酸過酸化水素水)が用いられる場合には、ウエハWの周縁部に供給されるSPMの温度Tsはたとえば約110℃であり、ウエハWの回転中心36に供給されるSPMの温度T0はたとえば約90℃である。
前述の第2の実施形態では、第1薬液供給管17を流通する過程で薬液が昇温される構成について説明したが、二流体ノズル2において高温の窒素ガスを薬液に混合することによって、二流体ノズル2から吐出される薬液の温度を昇温させることもできる。この場合、窒素ガス供給管18にヒータが介装されていることが好ましい。
【0045】
前述の2つの実施形態では、薬液の供給位置のスキャンの過程で、二流体ノズル2から吐出される薬液の吐出量は、実質上一定であると説明したが、ウエハWの周縁部に近づくにつれて、二流体ノズル2から吐出される薬液の吐出量を減少させてもよい。逆に、ウエハWの周縁部に近づくにつれて、二流体ノズル2から吐出される薬液の吐出量を増加させてもよい。
【0046】
薬液の供給位置がウエハWの周縁部に近づくにつれて、二流体ノズル2から吐出される薬液の吐出量を減少させる場合であっても、薬液の濃度を、薬液の供給位置がウエハWの周縁部に近づくにつれて高くすれば、薬液の処理力をウエハWの周縁部に近づくにつれて高くすることも可能である。すなわち、薬液の吐出量と濃度の両方を同時に変化させることで、ウエハWの全域で処理効率をほぼ均一とすることもできる。
【0047】
また、前述の2つの実施形態では、薬液の供給位置のスキャンの際に、二流体ノズル2を一定の移動速度で移動させるとして説明したが、二流体ノズル2の移動速度を薬液の供給位置に基づいて変更させてもよい。この場合、二流体ノズル2の移動速度を変更させることによって、ウエハWの表面に供給される薬液の量が増減される。このため、単位面積あたりの薬液の薬効成分の量または単位面積あたりの薬液の供給熱量が、ウエハWの全域においてほぼ等しくなるように、二流体ノズル2の移動速度を変更されてもよい。
【0048】
さらに、二流体ノズル2から吐出される薬液の薬効成分の濃度または薬液の温度は、薬液の供給位置に基づいて、連続的に変化せずに不連続的に変更させる構成であってもよい。
前述の説明では、アーム支持軸31の回動角度を検出する回動角度センサ34によって二流体ノズル2の位置が検出される構成を説明したが、アーム揺動駆動機構33がステッピングモータを含むときには、そのステッピングモータのステップ数に基づいて、二流体ノズル2の位置が検出されていてもよい。
【0049】
また、前述の2つの実施形態では、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の薬効成分の濃度と、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の温度とのうちいずれか一方を変更する構成について説明したが、二流体ノズル2からウエハWに供給される薬液の濃度と温度との双方が変更される構成であってもよい。
さらに、二流体ノズル2から吐出される薬液の薬効成分の濃度や薬液の温度を変更させる構成に代えて、二流体ノズル2から吐出される薬液の液滴の噴流の速度を変更させてもよい。この場合、単位面積あたりの薬液の衝撃力がウエハWの全域においてほぼ等しくなるように、薬液の液滴の噴流の速度が変更されれば、ウエハWの全域で処理効率をほぼ均一とすることができる。
【0050】
さらにまた、SPMが薬液として用いられる場合、SPMの供給位置に基づいて、二流体ノズル2から吐出されるSPMの攪拌率(硫酸と過酸化水素水との攪拌率)を変更させ、SPMの活性度を変化させてもよい。この場合、供給位置がウエハWの中央部であるときには、二流体ノズル2に攪拌流通管24を通っていないSPMが供給され、供給位置がウエハWの周縁部であるときには、二流体ノズル2に攪拌流通管24を通ったSPMが供給されるようにすると、ウエハWの中央部には比較的攪拌率の低いSPMが供給され、ウエハWの周縁部には比較的攪拌率の高いSPMが供給される。また、SPMの活性度を連続的に変化させたい場合には、SPMの供給位置に基づいて攪拌流通管24の長さを変更させてもよい。
【0051】
また、ウエハWの処理に、薬液以外のたとえばオゾン水その他の電解イオン水が用いられる場合には、ウエハWに供給されるオゾン水(電解イオン水)の供給位置に基づいて、そのオゾン濃度(イオン濃度)が変更されてもよい。
また、前述の実施形態では、二流体ノズル2を例にとって説明したが、ストレートノズルであってもよい。さらに、そのノズルに超音波振動子が設けられていて、ノズルから超音波振動が付与された薬液が供給されるようになっていてもよい。
【0052】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の基本的な構成を説明するための斜視図である。
【図2】二流体ノズルの構成を示す図解的な断面図である。
【図3】二流体ノズルの配置を説明するための図解的な平面図である。
【図4】基板処理装置におけるウエハの処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】ウエハ上の薬液の供給位置の変化に伴う薬液濃度の変化を示すグラフである。
【図6】第2の実施形態にかかる基板処理装置におけるウエハの薬液の供給位置の変化に伴う薬液濃度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 スピンチャック(基板回転手段)
2 二流体ノズル(液滴噴流ノズル)
22 流量調節バルブ(活性成分濃度変更手段)
25 ヒータ(処理液温度変更手段)
32 アーム(供給位置移動手段)
33 アーム揺動駆動機構(供給位置移動手段)
35 制御装置
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させる基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板の表面に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記処理液供給手段から基板の表面に供給される処理液の供給位置を移動させるための供給位置移動手段と、
前記処理液供給手段から供給される処理液の活性度を変更するための活性度変更手段と、
前記供給位置移動手段によって移動させられる処理液の供給位置に基づいて、前記活性度変更手段を制御する制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記処理液の供給位置が基板の回転中心から離れるにつれて、前記処理液の活性度が高くなるように、前記活性度変更手段を制御する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記活性度変更手段は、前記処理液供給手段から供給される処理液の活性成分の濃度を変更する活性成分濃度変更手段を含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記活性度変更手段は、前記処理液供給手段から供給される処理液の温度を変更する処理液温度変更手段を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液供給手段は、前記基板回転手段によって回転される基板の表面に、処理液の液滴の噴流を供給する液滴噴流ノズルを備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を回転させる回転ステップと、
この回転ステップ中に、基板の表面に処理液を供給する処理液供給ステップと、
前記処理液供給ステップと並行して、基板の表面に供給される処理液の供給位置を移動させる供給位置移動ステップと、
前記処理液供給ステップおよび前記供給位置移動ステップと並行して、処理液の供給位置に基づいて、前記基板に供給される処理液の活性度を変更する活性度変更ステップとを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−246319(P2008−246319A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88731(P2007−88731)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】