説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板処理装置および基板処理方法において、処理不良の基板が発生するのを未然に防止するとともに、無駄な凝固体の形成・解凍除去を抑制して稼動効率を高める。
【解決手段】基板の表面に形成される液膜の膜厚が所定範囲内となっている場合のみ、その基板に対して凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)を実行している。したがって、液膜の膜厚が所定範囲を超えて十分なパーティクル除去率が期待できない場合には、レシピの途中であるが、基板に対する凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)を行うことなく、基板処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための処理の1つとして凍結洗浄技術が知られている。この技術では、基板表面に形成した液膜を凍結させた後、この凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクル等を凍結膜とともに除去している。例えば、特許文献1に記載の技術においては、洗浄液としてのDIW(脱イオン水:deionized water)を基板表面に供給するとともに基板を回転させて液膜を形成した後、冷却ガスを吐出するノズルを基板表面近傍でスキャンさせることにより液膜を凍結させ、再度DIWを供給して凍結膜を解凍除去することによって、基板表面からのパーティクルの除去を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−071875号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、種々の実験の結果、液膜の膜厚とパーティクル除去率との間に一定の相関性があることを見出した。具体的には、高いパーティクル除去率を確保するためには、液膜の膜厚を所定範囲内に調整する必要があり、その範囲よりも薄い場合も、逆に厚い場合も、パーティクル除去率が低下する。したがって、基板表面に形成された液膜の膜厚を考慮することが重要となる。
【0005】
しかしながら、従来技術では、レシピで設定された回転パラメータ(回転数および回転時間)で基板を回転させて液膜を形成しているが、前工程における処理内容に応じて基板の接触角が異なり、その結果、液膜の膜厚が増減することがある。そして、液膜の膜厚が上記した所定範囲から外れたまま、凍結処理(凝固体の形成)および解凍除去処理を行うと、期待したパーティクル除去率が得られず、処理不良の基板が発生してしまうことがある。また、このような基板に対して凍結処理および解凍除去処理を実行することは無駄であり、装置の稼動効率を低下させる主要因のひとつにもなる。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に付着したパーティクル等の汚染物質を除去するための基板処理装置および基板処理方法において、処理不良の基板が発生するのを未然に防止するとともに、無駄な凝固体の形成・解凍除去を抑制して稼動効率を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、表面に凝固対象液の液膜が形成される基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板の表面に形成される液膜の膜厚を計測する膜厚計測手段と、凝固対象液の液膜を冷却して凝固対象液の凝固体を形成する凝固手段と、基板表面に形成された凝固体を解凍除去する解凍除去手段と、膜厚計測手段で計測される液膜の膜厚が所定範囲内であるときには凝固体の形成および凝固体の解凍除去を実行する一方、所定範囲を超えるときには凝固体の形成および凝固体の解凍除去を規制する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる基板処理方法は、基板の表面に形成された凝固対象液の液膜を冷却して凝固対象液の凝固体を形成した後、基板表面に形成された凝固体を解凍除去する基板処理方法であって、上記目的を達成するため、基板の表面に形成される液膜の膜厚を計測し、その計測結果が所定範囲内であるときには凝固体の形成および凝固体の解凍除去を実行する一方、所定範囲を超えるときには凝固体の形成および凝固体の解凍除去を規制することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(基板処理装置および基板処理方法)では、基板の表面に形成された凝固対象液の液膜が冷却されて凝固対象液の凝固体が形成される。そして、この凝固体を解凍除去することで基板表面に付着するパーティクル等が除去される。このパーティクル等の除去率に関して、今回、本願発明者が種々の実験検証から次の知見を得た。その知見とは、液膜の膜厚がパーティクル等の除去率に大きく影響する要因のひとつであるということであり、詳しくは後で述べるが、パーティクル等の除去率を高めるためには、液膜の膜厚を所定範囲内に入れることが重要であり、液膜の膜厚がその範囲を超えるにもかかわらず、そのまま凝固体の形成および凝固体の解凍除去を行うと、除去率が低下して処理不良の基板を発生させてしまう。そこで、本発明では、基板の表面に形成される液膜の膜厚が所定範囲を超えるとき、凝固体の形成および凝固体の解凍除去が規制されて処理不良の発生を未然に防止している。なお、本発明における「液膜の膜厚」とは、冷却されて凍結する前の液膜の厚みおよび該液膜が凍結してなる凝固体の厚みを含むものである。
【0010】
ここで、基板回転手段が設けられ、基板を回転することで液膜を形成する場合、基板回転手段により形成された液膜の膜厚が所定範囲を超えるとき、凝固体の形成および凝固体の解凍除去を規制してもよい。また、例えば基板回転手段による基板の回転数や回転時間などの回転パラメータを相違させた複数のレシピを用意しておき、一のレシピにしたがって形成された液膜が所定範囲を超えるとき、凝固体の形成および解凍除去を規制するが、ユーザやオペレータなどが別のレシピに切り替えて液膜形成をリトライするように構成してもよい。
【0011】
また、膜厚計測手段による計測結果に基づき基板回転手段による基板の回転パラメータ(回転数や回転時間など)を変更して液膜の膜厚を所定範囲内に調整してもよく、これによってレシピ切替を行うことなく、凝固体の形成および解凍除去を実行することが可能となる。
【0012】
また、基板表面に凝固対象液を供給する凝固液供給手段を設けてもよく、この凝固液供給手段を有する装置では、変更後の回転パラメータで基板を回転させる前または回転中に凝固液供給手段により基板表面に凝固対象液を供給し、所定範囲内の膜厚を有する液膜を基板表面に形成するように構成することができる。このように構成された装置では、回転パラメータの変更前における液膜の膜厚が所定範囲よりも厚い場合はもちろんのこと、薄い場合であっても、変更後の回転パラメータで基板を回転させる際に基板表面に新たに凝固対象液が供給されるため、液膜を所定範囲内に調整することができる。
【0013】
さらに、基板回転手段が設けられ、基板を回転して基板表面から凝固対象液を振り切って液膜の膜厚を形成する装置では、基板表面からの凝固対象液の振り切りと並行して膜厚計測手段による計測結果を取得し、計測結果が所定範囲内に達すると、凝固対象液の振り切りを停止して液膜の冷却を開始するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板の表面に形成される液膜の膜厚を計測し、その計測結果が所定範囲を超えるとき、凝固体の形成および凝固体の解凍除去を規制しているため、処理不良の基板が発生するのを未然に防止するとともに、無駄な凝固体の形成・解凍除去を抑制して稼動効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】凍結洗浄技術における液膜の膜厚とパーティクル除去率との関係を示すグラフである。
【図2】凍結洗浄技術における液膜温度とパーティクル除去率との関係を示すグラフである。
【図3】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図4】図3の基板処理装置における窒素ガスおよびDIWの供給態様を示す図である。
【図5】図3の基板処理装置におけるアームの動作態様を示す図である。
【図6】図3の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】液膜の形成および凍結処理における液膜の膜厚変化を示すグラフである。
【図8】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図9】基板の回転時間と液膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<液膜の膜厚とパーティクル除去率との関係>
従来の凍結洗浄技術では液膜を凍結させているものの、液膜の膜厚についてはあまり考慮されていなかった。しかしながら、DIWによる液膜を用いた本願発明者らの実験によれば、図1に示すように、液膜の膜厚に応じてパーティクル除去率は変化する。そして、液膜の膜厚が所定範囲内であるときには高いパーティクル除去率が得られる。その一方で、液膜の膜厚が所定範囲を超える(つまり、所定範囲の上限値よりも厚くなる、または所定範囲の下限値よりも薄くなる)と、所望のパーティクル除去率が得られず、その結果、処理不良が生じてしまう。
【0017】
図1は、いわゆる凍結洗浄技術における液膜の膜厚とパーティクル除去率との関係を示すグラフであり、具体的には、次の実験により得られたものである。この実験では、基板の代表例としてベア状態(全くパターンが形成されていない状態)のSiウエハ(ウエハ径:300mm)を選択している。また、パーティクルとしてSi屑(粒径;0.08μm以上)によって基板表面が汚染されている場合について評価を行っている。
【0018】
まず最初に、枚葉式の基板処理装置(大日本スクリーン製造社製、スピンプロセッサSS−3000)を用いてウエハを強制的に汚染させる。具体的には、ウエハを回転させながら、ウエハと対向配置されたノズルよりパーティクル(Si屑)を分散させた分散液をウエハに供給する。ここでは、ウエハ表面に付着するパーティクルの数が約10000個となるように、分散液の液量、ウエハ回転数および処理時間を適宜調整する。その後、ウエハ表面に付着しているパーティクルの数(初期値)を測定する。なお、パーティクル数の測定はKLA−Tencor社製のウエハ検査装置SP1を用いて、ウエハの外周から3mmまでの周縁領域を除去(エッジカット)として残余の領域にて評価を行っている。
【0019】
次に、各ウエハに対してDIWをウエハ表面に供給してウエハ表面に互いに異なる厚みの液膜(水膜)を形成した。より詳しくは、回転しているウエハ表面にDIWを1.5[L/min]で6秒間吐出して供給し、吐出停止から3秒間ウエハを回転させた。この吐出停止後のウエハの回転数をウエハごとに相違させてDIWの膜厚を互いに異ならせた。なお、液膜の膜厚は上記処理前後のウエハ重量から求めており、例えば吐出停止後のウエハ回転数が500rpmでは膜厚10μmとなり、150rpmでは膜厚50μmとなっていた。
【0020】
こうして液膜を形成した後、−190℃の冷却ガスを90[L/min]の流量で吐出するノズルを基板表面に対して20秒間スキャンさせて液膜を凍結させて凍結膜(凝固体)をウエハ表面に形成する。この凍結処理終了直後、当該ウエハを2000rpmで回転させながら、リンス液として80℃のDIWを4.0[L/min]で2秒間供給して凍結膜を解凍除去した。その後、常温のDIWでウエハをリンス処理した後、ウエハを高速回転させてウエハを乾燥(スピンドライ)させる。
【0021】
こうして、一連の洗浄処理を施したウエハの表面に付着しているパーティクル数を測定する。それから、凍結洗浄後のパーティクル数と先に測定した初期(凍結洗浄処理前)のパーティクル数とを対比することで除去率を算出している。こうして得られたデータをプロットしたものが図1に示すグラフである。
【0022】
同図から明らかなように、パーティクル除去率は液膜の膜厚の増大に伴って向上するが、所定膜厚を過ぎると、逆に液膜の膜厚の増大に伴って低下する。つまり、良好なパーティクル除去率を得るためには、液膜の膜厚が所定範囲内に入るように制御するのが望まれる。例えば図1に示す特性を示す場合、パーティクル除去率は膜厚40μmでピークとなり、その前後20%の範囲内の膜厚ではパーティクル除去率をピーク時と同程度に維持することができる。したがって、液膜の膜厚をピーク時の膜厚値を中心に前後20%の値(図1のケースでは32μmないし48μm)に設定することで高いパーティクル除去率が得られることがわかる。
【0023】
このようにパーティクル除去率が所定範囲内で最大化する理由については、以下の2つの側面を考慮する必要がある。まず第1点目に格子定数差に起因する応力の存在である。すなわち、シリコンの格子定数は5.43[オングストローム]であるのに対し、DIWの凝固体、つまり氷の格子定数は4.5〜4.8[オングストローム]であるため、シリコンウエハの表面でDIWが凝固して凍結膜が形成されると、シリコンウエハの表面に形成される凍結膜(凝固体)に対して応力が作用する。そして、凍結膜の形成によりウエハ表面に存在しているパーティクルは凍結膜を構成する凝固体(氷)と密着するため、応力による凝固体の変形がパーティクル除去の原動力のひとつとなる。したがって、凍結膜の膜厚、つまり液膜の厚みが増すにしたがって上記応力も増大し、これがパーティクル除去率の向上に寄与する。
【0024】
また、考慮すべき第2点目は液膜温度とパーティクル除去率との関係である。従来の凍結洗浄技術では液膜を凍結させているものの、凍結後の液膜温度についてはあまり考慮されていなかった。しかしながら、DIWによる液膜を用いた本願発明者らの実験によれば、図2に示すように、単に液膜を凍結させるだけではなく、凍結後の液膜の到達温度が低くなるほどパーティクル除去率が高まることが明らかとなった。なお、ここでは、凍結前の液膜の温度および該液膜が凍結してなる凝固体の温度を総称して「液膜の温度」と称している。
【0025】
図2は、いわゆる凍結洗浄技術における液膜の温度とパーティクル除去効率との関係を示すグラフであり、具体的には、次の実験により得られたものである。この実験では、基板の代表例としてベア状態(全くパターンが形成されていない状態)のSiウエハ(ウエハ径:300mm)を選択している。また、パーティクルとしてSi屑(粒径;0.08μm以上)によって基板表面が汚染されている場合について評価を行っている。
【0026】
まず最初に、枚葉式の基板処理装置(大日本スクリーン製造社製、スピンプロセッサSS−3000)を用いてウエハを強制的に汚染させる。具体的には、ウエハを回転させながら、ウエハと対向配置されたノズルよりパーティクル(Si屑)を分散させた分散液をウエハに供給する。ここでは、ウエハ表面に付着するパーティクルの数が約10000個となるように、分散液の液量、ウエハ回転数および処理時間を適宜調整する。その後、ウエハ表面に付着しているパーティクルの数(初期値)を測定する。なお、パーティクル数の測定はKLA−Tencor社製のウエハ検査装置SP1を用いて、ウエハの外周から3mmまでの周縁領域を除去(エッジカット)として残余の領域にて評価を行っている。
【0027】
次に、各ウエハに対して以下の洗浄処理を行う。まず、150rpmで回転するウエハに、0.5℃に温度調整されたDIWを6秒間吐出してウエハを冷却する。その後、DIWの吐出を停止して2秒間その回転数を維持し、余剰のDIWを振りきって液膜を形成する。液膜形成後、ウエハ回転数を50rpmに減速し、その回転数を維持しながらスキャンノズルにより温度−190℃の窒素ガスを流量90[L/min]でウエハ表面に対し吐出する。ノズルのスキャンはウエハの中心とウエハの端を20秒で往復させて行う。図2の黒四角はスキャン回数に対応し、図2中左からスキャン1回、2回の順でスキャン5回までの結果が表示されている。このように、スキャン回数を変更することで液膜の凍結後の温度を変更している。
【0028】
上記の冷却が終了した後、ウエハの回転数を2000rpmとし、80℃に温度調整されたDIWを4.0[L/min]の流量で2秒間吐出した後、ウエハの回転数を500rpmとし、リンス液として常温のDIWを1.5[L/min]の流量で30秒間供給し、ウエハのリンス処理を行う。その後ウエハを高速回転してスピンドライする。
【0029】
こうして、一連の洗浄処理を施したウエハの表面に付着しているパーティクル数を測定する。それから、凍結洗浄後のパーティクル数と先に測定した初期(凍結洗浄処理前)のパーティクル数とを対比することで除去率を算出している。こうして得られたデータをプロットしたものが図2に示すグラフである。
【0030】
同図から明らかなように、単に液膜を凍結させるだけではなく、凍結後の液膜の到達温度が低くなるほどパーティクル除去率が高まる。したがって、一定時間だけ冷却ガスを液膜に供給して液膜を凍結する場合、膜厚が薄くなるにしたがって液膜の温度は低下してパーティクル除去率が高まるのに対し、膜厚の増大にしたがって液膜の温度は低下し難くなり、パーティクル除去率も低下する。
【0031】
このようにパーティクル除去率は格子定数差に起因する応力量と液膜温度との影響を受けており、これらが相互に影響し合ってパーティクル除去率が所定範囲内で最大化すると考えられる。
【0032】
そこで、上記知見に鑑み、以下の実施形態では基板の表面に形成される液膜の膜厚を計測し、その液膜の膜厚に応じて装置各部を制御して上記目的を達成している。以下、実施形態について図面を参照しつつ詳述する。
【0033】
<実施形態>
図3はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図4は図3の基板処理装置における窒素ガスおよびDIWの供給態様を示す図である。さらに、図5は図3の基板処理装置におけるアームの動作態様を示す図である。この装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための基板洗浄処理を実行可能な枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfについて、その表面Wfに液膜を形成してそれを凍結させ、該凍結膜を除去することで凍結膜とともにパーティクル等を基板表面から除去する凍結洗浄処理を実行する基板処理装置である。凍結洗浄技術については上記特許文献1を始めとして多くの公知文献があるので、この明細書では詳しい説明を省略する。
【0034】
この基板処理装置は処理チャンバ1を有しており、当該処理チャンバ1内部において基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるためのスピンチャック2を有している。このスピンチャック2の中心軸21の上端部には、図4に示すように、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心AOを中心に回転する。
【0035】
また、スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0036】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0037】
また、上記のように構成されたスピンチャック2の上方には遮断部材9が配置されている。この遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。また、遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。この遮断部材9は支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転・昇降機構93が接続されている。
【0038】
遮断部材回転・昇降機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材回転・昇降機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。また、遮断部材回転・昇降機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材回転・昇降機構93の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図3に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0039】
図4に示すように、遮断部材9の支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の下面(基板対向面)で開口するガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は乾燥ガス供給ユニット61に接続されている。この乾燥ガス供給ユニット61は、窒素ガス供給源(図示省略)から供給される窒素ガスを基板Wに供給するもので、マスフローコントローラ(MFC)611と、開閉バルブ612とを有している。このマスフローコントローラ611は制御ユニット4からの流量指令に応じて窒素ガスの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ612は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉してマスフローコントローラ611で流量調整された窒素ガスの供給/停止を切り替える。このため、制御ユニット4が乾燥ガス供給ユニット61を制御することで、流量調整された窒素ガスが基板Wを乾燥させるための乾燥ガスとして適当なタイミングで遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から供給される。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給ユニット61からの乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを供給するようにしてもよい。
【0040】
ガス供給管95の内部には、液体供給管96が挿通されている。この液体供給管96の下方端部は遮断部材9の下面で開口しており、その先端に液体吐出ノズル97が設けられている。一方、液体供給管96の他方端部はDIW供給ユニット62に接続されている。このDIW供給ユニット62はDIW供給源(図示省略)から供給される常温のDIWをリンス液として基板Wに供給し、また80℃程度まで昇温した高温DIWを解凍除去処理用として基板Wに供給するもので、以下のように構成されている。ここでは、DIW供給源に対して2系統の配管経路が設けられている。そのうちの一つである、リンス処理用の配管経路には、流量調整弁621と開閉バルブ622とが介挿されている。この流量調整弁621は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整可能となっている。また、開閉バルブ622は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉して流量調整弁621で流量調整された常温DIWの供給/停止を切り替える。
【0041】
また、もう一方の解凍除去処理用配管経路には、流量調整弁623、加熱器624および開閉バルブ625が介挿されている。この流量調整弁623は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整して加熱器624に送り込む。そして、加熱器624は送り込まれた常温DIWを80℃程度に加熱し、その加熱されたDIW(以下「高温DIW」という)を開閉バルブ625を介して送り出す。なお、開閉バルブ625は制御ユニット4からの開閉指令に応じて開閉して高温DIWの供給/停止を切り替える。こうして、DIW供給ユニット62から送り出される常温DIWや高温DIWは適当なタイミングで基板Wの表面Wfに向けて液体吐出ノズル97から吐出される。
【0042】
また、スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbにリンス液を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の中央部に向けてリンス液を吐出する液吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記したDIW供給ユニット62に接続されており、基板Wの裏面Wbに向けてDIWをリンス液として供給する。
【0043】
また、中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は乾燥ガス供給ユニット61に接続されており、乾燥ガス供給ユニット61からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガスが供給される。
【0044】
また、図3に示すように、この実施形態では、スピンチャック2の周囲にスプラッシュガード51が、スピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック2の回転軸に対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード51は回転軸に対して略回転対称な形状を有している。そして、ガード昇降機構52の駆動によりスプラッシュガード51を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する液膜形成用DIW、リンス液やその他の用途のために基板Wに供給される処理液などを分別して処理チャンバ1内から図示を省略する排液処理ユニットへ排出することが可能となっている。
【0045】
また、この処理チャンバ1の底面部には複数の排気口11が設けられ、これらの排気口11を介して処理チャンバ1の内部空間は排気ユニット63に接続されている。この排気ユニット63は排気ダンパーと排気ポンプとを有しており、排気ダンパーの開閉度合いに応じて排気ユニット63による排気量を調整可能となっている。このため、制御ユニット4は排気ダンパーの開閉量に関する指令を排気ユニット63に与えることで処理チャンバ1からの排気量が調整されて内部空間における温度や湿度などを制御可能となっている。
【0046】
この基板処理装置では、冷却ガス吐出ノズル7がスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜凍結用冷却ガスを吐出可能に設けられている。すなわち、冷却ガス吐出ノズル7は次のように構成された冷却ガス供給ユニット64に接続されている。この冷却ガス供給ユニット64は、図4に示すように、熱交換器641を有している。この熱交換器641の容器642は内部に液体窒素を貯留するタンク状となっており、液体窒素温度に耐えうる材料、例えば、ガラス、石英またはHDPE(高密度ポリエチレン:High Density Polyethylene)により形成されている。なお、容器642を断熱容器で覆う二重構造を採用してもよい。この場合、外部容器は、処理チャンバ外部の雰囲気と容器642との間での熱移動を抑制するために、断熱性の高い材料、例えば発泡性樹脂やPVC(ポリ塩化ビニル樹脂:polyvinyl chloride)などにより形成するのが好適である。
【0047】
容器642には、液体窒素を取り入れる液体窒素導入口643が設けられている。この液体窒素導入口643は開閉バルブ644を介して液体窒素供給源(図示省略)と接続されており、制御ユニット4からの開指令に応じて開閉バルブ644が開くと、液体窒素供給源から送出される液体窒素が容器642内に導入される。また、容器642内には液面センサ(図示省略)が設けられており、この液面センサによる検出結果が制御ユニット4に入力され、制御ユニット4によるフィードバック制御により開閉バルブ644の開閉が制御されて容器642内の液体窒素の液面レベルを高精度に制御可能となっている。なお、この第1実施形態では、液体窒素の液面レベルが一定となるようにフィードバック制御している。
【0048】
また、容器642の内部には、ステンレス、銅などの金属管で形成されたコイル状の熱交換パイプ645がガス通送路として設けられている。熱交換パイプ645は容器642に貯留された液体窒素に浸漬されており、その一方端がマスフローコントローラ(MFC)646を介して窒素ガス供給源(図示省略)と接続されており、窒素ガス供給源から窒素ガスが供給される。これにより、窒素ガスが熱交換器641内で液体窒素によりDIWの凝固点よりも低い温度に冷やされて冷却ガスとして熱交換パイプ645の他方端から開閉バルブ647を介して冷却ガス吐出ノズル7に送出される。
【0049】
こうして冷却ガスが送り出される冷却ガス吐出ノズル7は、図3に示すように、水平に延設された第1アーム71の先端部に取り付けられている。この第1アーム71は、処理チャンバ1の天井部より垂下する回転軸72により後端部が回転中心軸J1周りに回転自在に支持されている。そして、回転軸72に対して第1アーム昇降・回転機構73が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸72が回転中心軸J1周りに回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、第1アーム71の先端部に取り付けられた冷却ガス吐出ノズル7が以下のように基板表面Wfの上方側で移動する。
【0050】
また本実施形態では、冷却ガス吐出ノズル7と同様にして、冷水吐出ノズル8が基板表面Wfの上方側で移動可能に構成されている。この冷水吐出ノズル8は、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を構成する液体(本発明の「凝固対象液」に相当)として常温よりも低い、例えば0〜2℃、好ましくは0.5℃程度にまで冷却されたDIWを供給するものである。すなわち、冷水吐出ノズル8は冷水供給ユニット65に接続され、冷水供給ユニット65によって常温のDIWを0.5℃程度にまで冷却した上で冷水吐出ノズル8に送り出す。なお、この冷水供給ユニット65は、図4に示すように、流量調整弁651、冷却器652および開閉バルブ653を有している。この流量調整弁651は制御ユニット4からの流量指令に応じて常温DIWの流量を高精度に調整して冷却器652に送り込む。そして、冷却器652は送り込まれた常温DIWを0.5℃程度にまで冷却し、その冷水(冷却されたDIW)を開閉バルブ653を介して送り出す。
【0051】
このように冷水供給を受けるノズル8を回転中心軸J2周りに回転し、また上下方向に昇降移動させるために、水平に延設された第2アーム81の後端部が回転軸82により回転中心軸J2周りに回転自在に支持されている。一方、第2アーム81の先端部には、冷水吐出ノズル8が下方に吐出口(図示省略)を向けた状態で取り付けられている。さらに、回転軸82に対して第2アーム昇降・回転機構83が連結されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転軸82が回転中心軸J2周りに回転駆動され、また上下方向に昇降駆動され、その結果、第2アーム81の先端部に取り付けられた冷水吐出ノズル8が以下のように基板表面Wfの上方側で移動する。
【0052】
冷却ガス吐出ノズル7および冷水吐出ノズル8はそれぞれ独立して基板Wに対して相対的に移動する。すなわち、制御ユニット4からの動作指令に基づき第1アーム昇降・回転機構73が駆動されて第1アーム71が回転中心軸J1周りに揺動すると、第1アーム71に取り付けられた冷却ガス吐出ノズル7は、スピンベース23の回転中心上に相当する回転中心位置Pcと基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Ps1との間を移動軌跡T1に沿って水平移動する。すなわち、第1アーム昇降・回転機構73は、冷却ガス吐出ノズル7を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
【0053】
また、制御ユニット4からの動作指令に基づき第2アーム昇降・回転機構83が駆動されて第2アーム81が回転中心軸J2周りに揺動すると、第2アーム81に取り付けられた冷水吐出ノズル8は第1アーム71の待機位置Ps1と異なる別の待機位置Ps2と、回転中心位置Pcとの間を移動軌跡T2に沿って水平移動する。すなわち、第2アーム昇降・回転機構83は、冷水吐出ノズル8を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。
【0054】
さらに、本実施形態では、上記のように冷水吐出ノズル8が取り付けられた第2アーム81に対してレーザー変位計5が取り付けられている。より詳しくは、図5に示すように、第2アーム81の待機位置Ps2側(同図の右手側)の先端側面にレーザー変位計5が固定されており、上記のようにして第2アーム81が移動することに伴い、移動軌跡T2とほぼ同一の軌跡に沿って移動して位置決めされる。例えば、同図の点線で示すように、第2アーム81が回転中心位置Pcに移動して位置決めされると、レーザー変位計5もほぼスピンベース23の回転中心上に位置し、後述するように基板表面Wfに形成される凝固対象液(本実施形態ではDIW)の液膜および凝固体の表面中央部の膜厚を非接触で計測可能となる。また、第2アーム81の揺動に伴いレーザー変位計5は基板表面Wfの中央部から距離Dだけ離間し、その離間部の上方に位置して凝固対象液の液膜(液膜を凍結してなる凝固体を含む)のうち当該離間部上に位置する部位の膜厚を非接触で計測可能となる。なお、この明細書では、レーザー変位計5による計測位置を特定するために、基板表面Wfの中央部に相当する位置を「P(0)」と称するとともに、基板表面Wfの中央部から距離Dだけ離間した位置を「P(D)」と称する。例えば、直径300mmの基板Wを処理対象とする装置では、距離Dの最大値は150mmであり、その位置P(150)での液膜の膜厚を計測可能となっている。
【0055】
図6は図3の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4はユーザやオペレータにより選択されたレシピをメモリ(図示省略)から読出して設定し(ステップS1)、そのレシピで規定された各種制御データ(基板の回転数や回転時間の回転パラメータ、冷却されたDIWの流量、冷却ガスの流量など)に基づき装置各部を制御して該基板Wに対して一連の洗浄処理を実行する。ここでは、予め基板Wが表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバ1内に搬入されてスピンチャック2に保持される一方、図3に示すように遮断部材9がその下面を対向させたままアーム71、81と干渉しない上方位置まで待避配置している。
【0056】
基板Wの搬入後、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決めする。これによって、冷水吐出ノズル8は図6(a)に示すように基板表面Wfの中央部の上方に位置するとともに、レーザー変位計5の計測位置は位置P(0)となっている。そして、制御ユニット4は冷水供給ユニット65の開閉バルブ653を開いて冷水吐出ノズル8から低温のDIW、つまり冷水を吐出して基板表面Wfに供給する(ステップS2)。基板表面Wfに供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に均一な厚みを有する液膜(水膜)が形成される(ステップS3)。
【0057】
こうして、液膜形成が終了すると、制御ユニット4は第2アーム昇降・回転機構83を駆動させて第2アーム81を待機位置Ps2側に移動してレーザー変位計5を基板中央部から距離120mmだけ離れた位置P(120)に位置決めする。これによりレーザー変位計5によって位置P(120)での液膜の膜厚が非接触で計測され、その膜厚に関連する情報を制御ユニット4に出力する。そして、この膜厚情報を受け取った制御ユニット4は、レーザー変位計5により計測された膜厚が許容範囲内に入っているか否かを判定する(ステップS4)。この「許容範囲」とは、上記したようにパーティクル除去率が最大化する範囲、例えば図1に示す範囲Rを意味している。
【0058】
そして、ステップS4で液膜の膜厚が許容範囲内であることを確認すると、従来技術と同様に、凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)が実行される。すなわち、制御ユニット4は第1アーム昇降・回転機構73を駆動させて第1アーム81を回転中心位置Pcに移動して位置決めする。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル7から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル7を徐々に基板Wの端縁位置に向けて移動させていく(ステップS5)。これにより、基板表面Wfに形成された液膜全体が凍結されて凍結膜(凝固体)が形成される。それに続いて、遮断部材9を基板表面Wfに近接配置し、さらに遮断部材9に設けられたノズル97から基板表面Wfの凍結した液膜に向けて80℃程度に昇温された高温DIWを供給して凍結膜(凝固体)を解凍除去し、さらにリンス液として常温のDIWを基板表面Wに供給し、基板Wのリンス処理を行う(ステップS6)。
【0059】
この解凍除去処理(リンス処理)が完了すると、基板WへのDIWの供給を停止し、基板Wを高速回転により乾燥させるスピン乾燥処理を行う(ステップS7)。すなわち、遮断部材9に設けられたノズル97およびスピンベース23に設けられた下面ノズル27から乾燥ガス供給ユニット61により供給される乾燥用の窒素ガスを吐出させながら基板Wを高速度で回転させることにより、基板Wに残留するDIWを振り切り基板Wを乾燥させる。こうして乾燥処理が終了すると、処理済みの基板Wを搬出することによって1枚の基板に対する処理が完了する。
【0060】
一方、ステップS4で、液膜の膜厚が許容範囲を超える、つまり膜厚が上記許容範囲Rの上限値FTmaxよりも厚い、または許容範囲Rの下限値FTminよりも薄いことを制御ユニット4が確認すると、液晶ディスプレイ等の表示部(図示省略)や表示ランプなどの報知部材により、所望の液膜が基板表面Wfに形成されていない旨のアラームを報知し(ステップS8)、ユーザやオペレータに知らせる。また、それと並行してレシピを強制終了する(ステップS9)。これにより、当該基板Wに対する凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)の実行を規制する。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、基板Wの表面Wfに形成される液膜の膜厚が所定範囲R内となっている場合のみ、その基板Wに対して凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)を実行している。したがって、液膜の膜厚が所定範囲Rを超えて十分なパーティクル除去率が期待できない場合には、レシピの途中であるが、基板Wに対する凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)を行うことなく、基板処理を終了する。したがって、処理不良が発生するのを未然に防止することができる。また、無駄な凍結膜(凝固体)の形成・解凍除去を抑制して稼動効率を高めることができる。
【0062】
このように、第1実施形態では、凍結膜が本発明の「凝固体」に相当し、スピンチャック2が本発明の「基板保持手段」に相当し、レーザー変位計5が本発明の「膜厚計測手段」に相当し、制御ユニット4が本発明の「制御手段」に相当している。また、冷却ガス吐出ノズル7および冷却ガス供給ユニット64が本発明の「凝固手段」として機能している。さらに、ノズル97およびDIW供給ユニット62が本発明の「解凍除去手段」として機能している。
【0063】
また、本実施形態では、レーザー変位計5を基板中央部から距離120mmだけ離れた位置P(120)に位置決めして液膜の膜厚を計測しているため、膜厚計測を高精度に行うことができ、液膜の膜厚が所定範囲R内となっている否かの判断を適切に行うことができる。その理由について、図7を参照しつつ説明する。
【0064】
図7は液膜の形成および凍結処理における液膜の膜厚変化を示すグラフであり、レーザー変位計5をそれぞれ位置P(120)、P(140)に位置決めして計測した結果を示している。
この実施形態では、液膜形成のために基板表面からDIWを振り切っており、この振り切り処理(液膜の形成)が完了した後、凍結処理に移行する際に基板Wの回転数を150rpmから50rpmに減速している。この回転数の切替により、基板Wのエッジに追いやられていたDIWが減速によって内側に戻ってくる。その結果、例えば図7の位置P(140)の実験結果に示すように、基板中央部から距離140mmだけ離れた位置、つまり基板Wのエッジ近傍では膜厚が急激に増大する。このDIWの戻りによる影響はエッジ近傍から離れる、つまり基板中央側に近づくにしたがって弱まり、同図の位置P(120)の実験結果に示すように、基板中央部から距離120mmだけ離れた位置では上記影響を受けることなく、液膜の膜厚を安定して計測することが可能となっている。そこで、上記実施形態では、レーザー変位計5を位置P(120)に位置決めして膜厚計測の精度を高めている。もちろん、レーザー変位計5の位置はこれに限定されるものではなく、基板中央部から距離120mmまでの範囲、つまり位置P(0)〜P(120)のいずれかにレーザー変位計5を位置決めして液膜の膜厚を計測すればよい。
【0065】
図8はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態の動作を示すフローチャートである。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、液膜の膜厚が許容範囲Rを超えるときの処理であり、液膜を形成するまでの動作(ステップS1〜S3)および液膜の膜厚が許容範囲R内であるときの液膜の形成以降の動作(ステップS5〜S7)はいずれも第1実施形態と同一である。したがって、同一動作に関する説明を省略し、液膜の膜厚が許容範囲Rを超えるときの処理(ステップS10〜S12)について説明する。
【0066】
ステップS4で液膜の膜厚FTが許容範囲を超える(FTmin>FT、あるいはFT>FTmax)と判断した制御ユニット4は、さらに計測した膜厚FTが許容範囲Rの上限値FTmaxよりも厚いか否かを判断する(ステップS10)。そして、膜厚FTが許容範囲Rの上限値FTmaxよりも厚いときには、前回の液膜形成時の基板Wの回転数を50rpmだけ増加させ、これを新たな液膜形成時の基板Wの回転数として設定する(ステップS11)。逆に、ステップS9で「NO」、つまり膜厚FTが許容範囲Rの下限値FTminよりも薄いときには、前回の液膜形成時の基板Wの回転数を50rpmだけ減少させ、これを新たな液膜形成時の基板Wの回転数として設定する(ステップS12)。
【0067】
こうして液膜形成時の基板Wの回転数を再設定した後、ステップS2に戻って液膜形成を再度行う(ステップS2〜S4)。そして、液膜を形成する毎に液膜の膜厚FTが許容範囲内か否かを判断し(ステップS4)、ステップS4で「YES」と判断されるまで上記処理が繰り返される。
【0068】
以上のように、第2実施形態では、基板Wの表面Wfに形成される液膜の膜厚が所定範囲内となるまで、基板Wに対する凍結処理(ステップS5)、凍結膜の解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)の実行を規制しながら液膜形成時の基板Wの回転数を増減させ、最終的に液膜の膜厚が所定範囲R内となった時点で上記規制を解除して凍結処理(ステップS5)、解凍除去(ステップS6)および基板乾燥(ステップS7)を実行している。したがって、第1実施形態と同様に、十分なパーティクル除去率が期待できない段階で、凍結処理(ステップS5)に移行するのを防止しており、第1実施形態と同様に、処理不良が発生するのを未然に防止するとともに、無駄な凍結膜(凝固体)の形成・解凍除去を抑制して稼動効率を高めることができる。
【0069】
また、第1実施形態では、アラーム報知してレシピを強制終了させた後、ユーザーやオペレータが別のレシピを選択して設定する、あるいはレシピの内容を書き換える必要があり、ユーザーやオペレータを拘束してしまう。これに対し、第2実施形態では、基板Wの表面Wfに形成される液膜の膜厚が所定範囲R内となるまで回転数が自動的に更新されるため、ユーザーやオペレータを拘束させることなく処理不良を防止することができる。
【0070】
なお、第2実施形態では、液膜の膜厚を変更するための回転パラメータとして基板Wの回転数を変更しているが、この回転パラメータとして例えば基板Wの回転時間を用いてもよい。というのも、基板の回転数を一定に維持した場合であっても、例えば図9に示すように、液膜形成(振切処理)を開始してからの経過時間(以下、「基板の回転時間」という)にしたがって液膜の膜厚は減少する。したがって、液膜形成時の基板Wの回転数に代えて、あるいは当該回転数とともに基板の回転時間を回転パラメータとして用いてもよい。
【0071】
また、図9に示すように基板の回転時間に応じて液膜の膜厚が連続的に減少することから、液膜形成中に膜厚をレーザー変位計5で連続的あるいは断続的に計測し、その計測結果が許容範囲Rに入った時点で基板Wの回転数を落として基板表面WfからのDIW(凝固対象液)の振り切りを停止し、凍結処理(ステップS5)に進むように構成してもよい。この第3実施形態によれば、液膜の膜厚が所定範囲R内となるまで凍結処理(ステップS5)の開始が規制されるものの、1回の液膜形成で膜厚が所定範囲R内となるため、膜厚が所定範囲R内となるまで回転パラメータを変更しながら冷水の吐出(ステップS2)および液膜形成(ステップS3)を繰り返す場合に比べて処理時間を短縮することができる。
【0072】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、基板Wの上方に近接配置される遮断部材9を有しているが、本発明は遮断部材を有しない装置にも適用可能である。この装置では、基板Wの上方位置にレーザー変位計5を固定配置することができる。
【0073】
また、基板Wの側方周囲にレーザー変位計5を固定配置するとともに、第1アーム71や第2アーム81の先端部に折り返しミラーを取り付けてもよく、次のようにして液膜の膜厚を計測してもよい。すなわち、折り返しミラーが取り付けられたアームの先端部を計測位置の上方に位置決めし、その状態でレーザー変位計5のレーザー光路を当該アームの先端部に取り付けられた折り返しミラーで基板表面W側に折り返すように構成してもよい。これにより遮断部材9を有さない装置はもちろんのこと、図3に示すように遮断部材9を有する装置において、レーザー変位計5を固定しながら液膜の膜厚を計測可能となる。
【0074】
また、上記実施形態では第2アーム81の先端部にレーザー変位計5を配置しているが、レーザー変位計5の配設位置はこれに限定されるものではなく、例えば第2アーム81の待機位置Ps2側(図4の右手側)の後端側面に固定してもよい。また、第1アーム71にノズル7、8を並設した基板処理装置では、遮断部材9に設けられたノズルの代わりに、第2アームに常温DIW(あるいは高温DIW)を吐出するノズルを取り付けることがあるが、このような装置ではレーザー変位計5を第1アームの待機位置Ps1側(図4の左手側)の先端側面に取り付けてもよいし、あるいは第2アームの待機位置Ps2側(図4の右手側)の側面に取り付けてもよい。なお、上記実施形態において、常温DIWあるいは高温DIWを吐出するノズルを第2アーム81に取り付けてもよく、この場合も、第2アームの待機位置Ps2側(図4の右手側)の側面に取り付けてもよい。
【0075】
また、DIWによって本発明の「液膜」を形成しているが、液膜を構成する液体はこれに限定されない。例えば、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水、希薄濃度の塩酸などを用いたり、DIWに少量の界面活性剤を加えたものを用いてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、同一の窒素ガス供給源から乾燥ガス供給ユニット61および冷却ガス供給ユニット64に乾燥ガス(窒素ガス)を供給しているが、これらは窒素ガスに限定されない。例えば、乾燥ガスと冷却ガスとを異なるガス種としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態の基板処理装置は、窒素ガス供給源、DIW供給源および液体窒素供給源をいずれも装置内部に内蔵しているが、これらの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設の供給源を利用するようにしてもよい。また、これらを冷却するための既設設備がある場合には、該設備によって冷却された液体やガスを利用するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態の基板処理装置は、基板Wをその周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。
【0079】
また、上記実施形態では、レーザー変位計5により液膜の膜厚を計測しているが、その他の膜厚計測機器により液膜の膜厚を非接触で計測してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された液膜を凍結させる基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
2…スピンチャック(基板保持手段)
4…制御ユニット(制御手段)
5…レーザー変位計(膜厚計測手段)
7…冷却ガス吐出ノズル(凝固手段)
62…DIW供給ユニット(解凍除去手段)
64…冷却ガス供給ユニット(凝固手段)
97…ノズル(解凍除去手段)
W…基板
Wf…基板表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凝固対象液の液膜が形成される基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された前記基板の表面に形成される液膜の膜厚を計測する膜厚計測手段と、
前記凝固対象液の前記液膜を冷却して前記凝固対象液の凝固体を形成する凝固手段と、
前記基板表面に形成された前記凝固体を解凍除去する解凍除去手段と、
前記膜厚計測手段で計測される前記液膜の膜厚が所定範囲内であるときには前記凝固体の形成および前記凝固体の解凍除去を実行する一方、前記所定範囲を超えるときには前記凝固体の形成および前記凝固体の解凍除去を規制する制御手段と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板を回転して前記液膜を形成する基板回転手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記基板回転手段により形成された前記液膜の膜厚が前記所定範囲外であるとき、前記膜厚計測手段による計測結果に基づき前記基板回転手段による前記基板の回転パラメータを変更して前記液膜の膜厚を前記所定範囲内に調整する基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記基板表面に前記凝固対象液を供給する凝固液供給手段をさらに備え、
前記制御手段は、変更後の回転パラメータで前記基板を回転させる前または回転中に前記凝固液供給手段により前記基板表面に前記凝固対象液を供給し、前記所定範囲内の膜厚を有する液膜を前記基板表面に形成する基板処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板処理装置であって、
前記回転パラメータは前記基板の回転数および回転時間のうちの少なくとも一方である基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板を回転して前記基板表面から前記凝固対象液を振り切って前記液膜を形成する基板回転手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記基板表面から前記凝固対象液を振り切りながら前記膜厚計測手段による計測結果を取得し、前記計測結果が前記所定範囲内に達すると、前記凝固対象液の振り切りを停止して前記液膜の冷却を開始する基板処理装置。
【請求項6】
基板の表面に形成された凝固対象液の液膜を冷却して前記凝固対象液の凝固体を形成した後、前記基板表面に形成された前記凝固体を解凍除去する基板処理方法において、
前記基板の表面に形成される液膜の膜厚を計測し、その計測結果が所定範囲内であるときには前記凝固体の形成および前記凝固体の解凍除去を実行する一方、前記所定範囲を超えるときには前記凝固体の形成および前記凝固体の解凍除去を規制することを特徴とする基板処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−74554(P2012−74554A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218470(P2010−218470)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】