基板処理装置および基板処理方法
【課題】雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができ、基板のエッチング量を面内全域で低減できる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置1は、内部空間S1を有するチャンバー2と、チャンバー2内で基板Wを保持して回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック3と、チャンバー2内で基板Wの上面に対向する遮断板4と、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスを供給するガス供給機構5と、基板Wに対して傾いた方向に処理液を吐出することにより、基板Wの上面中央部に斜めに処理液を供給する処理液ノズル29と、処理液ノズル29に供給される処理液から酸素を脱気する脱気手段とを含む。
【解決手段】基板処理装置1は、内部空間S1を有するチャンバー2と、チャンバー2内で基板Wを保持して回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック3と、チャンバー2内で基板Wの上面に対向する遮断板4と、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスを供給するガス供給機構5と、基板Wに対して傾いた方向に処理液を吐出することにより、基板Wの上面中央部に斜めに処理液を供給する処理液ノズル29と、処理液ノズル29に供給される処理液から酸素を脱気する脱気手段とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板から異物を除去する洗浄工程が行われる。たとえば、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが作り込まれた半導体ウエハの表面に多層配線を形成するバックエンドプロセス(BEOL:Back End of the Line)では、ドライエッチングやアッシングによって発生したポリマー残渣を除去するポリマー除去工程が行われる。
【0003】
ポリマー除去工程では、金属配線(たとえば、銅配線)が露出した基板の表面にポリマー除去液が供給される。ところが、酸素濃度の高いポリマー除去液が基板に供給されると、ポリマー除去液中の溶存酸素により基板上の金属配線が酸化され、金属酸化物が形成される。この金属酸化物はポリマー除去液によって腐食(エッチング)されるので、この基板から作成されるデバイスの品質が低下するおそれがある。金属配線のエッチング量は、ポリマー除去液の酸素濃度の増加に伴って増加する。そのため、たとえば特許文献1では、基板に供給される薬液の酸素濃度を低下させることが提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の枚葉式の基板処理装置は、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板の上面に対向する遮断板と、遮断板と基板との間に不活性ガスを供給するガス配管と、ポリマー除去液などの薬液を遮断板の下面中央部から基板の上面中央部に向けて吐出する処理液ノズルと、処理液ノズルに供給される薬液から酸素を脱気する脱気ユニットとを含む。
【0005】
処理液ノズルから吐出された薬液は、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされた状態で、回転状態の基板の上面中央部に供給される。基板に供給される薬液の酸素濃度は、脱気ユニットによって予め低減されている。さらに、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされている状態で薬液が基板に供給されるので、遮断板と基板との間で雰囲気中の酸素が薬液に溶け込んで、薬液の酸素濃度が上昇することが抑制または防止される。これにより、酸素濃度の低い薬液が基板に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−56218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置では、処理液ノズルから基板の上面中央部に向けて基板に対して垂直な方向に薬液が吐出される。基板に対する薬液の入射角が大きい場合(90°付近のとき)、薬液の物理的なエネルギーが薬液の着液位置に集中するので、薬液が着液位置で強制的に撹拌される。そのため、エッチングによって発生した反応生成物が着液位置から除去され、新鮮な薬液(活性の高い薬液)が着液位置に随時供給される。したがって、エッチング量が、基板の上面中央部で局所的に増加してしまう。よって、所定の品質を満たさない半導体装置が基板の上面中央部で製造され、歩留まりが低下してしまう場合がある。
【0008】
基板の上面中央部でのエッチング量を減少させるために、処理液ノズルを移動させることにより、薬液の着液位置を基板の上面中央部と上面周縁部との間で移動させるスキャン処理を行うことが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置では、処理液ノズルの周囲に遮断板が配置されているので、スキャン処理を行う場合には、処理液ノズルだけでなく、遮断板も移動させる必要がある。したがって、遮断板の周囲に十分なスペースが確保されていない場合には、スキャン処理を行うことができない。
【0009】
特許文献1に記載の基板処理装置のように、遮断板を基板に対向させることにより、不活性ガスによって雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができる。これにより、基板上の雰囲気を短時間で置換できる共に、不活性ガスの消費量を低減できる。しかしながら、前述のように、遮断板が設けられている場合には、処理液ノズルから基板への薬液の供給方法が制限されてしまい、スキャン処理を行うことができない。したがって、特許文献1に記載の基板処理装置は、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができるものの、基板のエッチング量を面内全域で低減することができない。
【0010】
そこで、この発明の目的は、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができ、基板のエッチング量を面内全域で低減できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、内部空間(S1)を有するチャンバー(2)と、前記チャンバー内で基板を保持する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に交差する回転軸線(A1)まわりに前記基板を回転させる基板回転手段(3)と、前記チャンバー内に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に対向する対向部材(4、204)と、前記対向部材と前記基板保持手段に保持されている基板との間に不活性ガスを供給するガス供給手段(5、205)と、前記基板保持手段に保持されている基板に対して傾いた方向(D1)に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液ノズル(29、229)と、前記処理液ノズルに供給される処理液から酸素を脱気する脱気手段(45、52)とを含む、基板処理装置(1、201)である。
【0012】
この構成によれば、ガス供給手段からの不活性ガスが、チャンバー内で基板保持手段に保持されている基板と、チャンバー内で基板の主面に対向する対向部材との間に供給される。これにより、遮断板と基板との間の雰囲気が不活性ガスによって置換される。基板回転手段は、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされた状態で、基板保持手段に保持されている基板を回転軸線まわりに回転させる。処理液ノズルは、この状態で、脱気手段によって脱気された処理液を回転状態の基板の主面中央部に向けて吐出する。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の主面中央部に供給された後、基板の回転による遠心力を受けて基板の主面に沿って外方に広がる。これにより、基板の主面全域に処理液が供給される。
【0013】
このように、酸素が脱気された処理液が基板の主面に供給されるので、処理液中の溶存酸素によって基板が酸化されることを抑制または防止できる。さらに、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされるので、雰囲気中の酸素が処理液に溶け込んで、処理液の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。したがって、酸化物を腐食させる薬液が、処理液として用いられている場合でも、基板の主面がエッチングされることを抑制または防止できる。さらに、遮断板を基板の主面に対向させることにより、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができる。しかも、処理液ノズルから吐出された処理液が、基板の主面中央部に斜めに供給されるので、処理液が基板の主面中央部に垂直に供給される場合よりも、基板の上面中央部に供給される処理液の勢いが弱まる。そのため、基板の主面中央部でのエッチング量を減少させることができる。これにより、基板の主面全域でエッチング量を減少させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記対向部材は、前記基板の主面に対向する対向部(15)と、前記基板の周囲を全周に亘って取り囲む筒状部(16)とを含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板の主面が対向部に対向すると共に、基板の周囲が全周に亘って筒状部に取り囲まれる。したがって、対向部材と基板との間の空間が、その周囲の空間から隔離される。そのため、酸素を含む雰囲気が、対向部材と基板との間に進入して、基板に接する雰囲気の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。これにより、基板に既に供給されている処理液や、基板に供給される処理液の酸素濃度の上昇を抑制または防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に対向しており、前記基板の主面中央部に近づくに従って広がる筒状の案内面(22)と、前記案内面の周囲に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に平行に対向する対向面(18)とをさらに含み、前記ガス供給手段は、前記案内面の内側に不活性ガスを供給するガス吐出口(36、39)を含み、前記処理液ノズルは、前記案内面の内側に配置された処理液吐出口(42)を含む、請求項2に記載の基板処理装置である。ガス吐出口は、案内面の内側に配置されていてもよいし、案内面に対して基板とは反対側に配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、ガス吐出口から吐出された不活性ガスが、基板の主面中央部に対向する筒状の案内面の内側に供給される。この不活性ガスは、案内面によって基板の主面側に案内される。案内面が、基板の主面に近づくに従って広がっているから、不活性ガスは、基板の主面に平行な方向に広がりながら、基板の主面に近づく。対向面は、案内面の周囲で基板に平行に対向している。したがって、案内面の内側を流れる不活性ガスは、対向部と基板との間に移動し、基板の主面に沿って外方に流れる。
【0017】
このように、案内面が、基板の主面に近づくに従って広がっているから、不活性ガスが、案内面の内側から対向部と基板との間にスムーズに移動する。そのため、対向部材と基板との間の雰囲気が不活性ガスによって速やかに置換される。さらに、気体の滞留領域の発生が抑制または防止されるから、対向部材と基板との間から酸素が確実に排出され、酸素濃度がさらに低減される。しかも、処理液ノズルの処理液吐出口が、案内面の内側に配置されているから、処理液吐出口が形成された処理液ノズルの一部を対向部材に接触させることなく傾けられる。これにより、処理液ノズルは、基板に対して傾いた方向に処理液を吐出できる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板全体を収容する密閉空間(S201)を形成する密閉チャンバー(204)を含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板保持手段に保持されている基板が、密閉チャンバーによって形成された密閉空間に配置されている。そのため、酸素を含む雰囲気が、密閉チャンバー内に進入して、基板に接する雰囲気の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。これにより、基板に既に供給されている処理液や、基板に供給される処理液の酸素濃度の上昇を抑制または防止できる。
【0019】
処理液ノズルは、処理液吐出口から基板の主面内の狙い位置に向けて処理液を吐出する。処理液ノズルから吐出された処理液は、狙い位置に着液した後、その勢いで基板の主面に沿って広がる。基板の主面の中心が、着液した勢いによって処理液が広がる範囲内に含まれていれば、狙い位置は、基板の主面中央部のいずれの位置であってもよい。たとえば、狙い位置は、基板の主面の中心であってもよいし、中心から離れた基板の主面中央部内の位置であってもよい。すなわち、請求項5に記載の発明のように、前記処理液ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板の主面の中心から離れた狙い位置(P1)に向けて処理液を吐出してもよい。この場合、基板の主面の中心に供給される処理液の勢いがさらに弱まるので、基板の主面の中心でのエッチング量をさらに減少させることができる。これにより、基板の主面全域でエッチング量を減少させることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記ガス供給手段は、前記対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給することにより、前記対向部材と前記基板との間の雰囲気の酸素濃度を1%以下、好ましくは100ppm以下まで低下させ、前記処理液ノズルは、前記基板に対して60°以下、好ましくは30°以下の角度で傾いた方向に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、基板に接する雰囲気の酸素濃度が1%以下に維持された状態で、処理液ノズルから吐出された処理液が、60°以下の角度で基板の主面の中央部に斜めに入射する。後述するように、この条件で基板が処理されることにより、基板の主面全域でエッチング量を確実に減少させることができる。
請求項7に記載の発明は、チャンバー内で基板の主面に対向する対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給する雰囲気置換工程と、前記雰囲気置換工程と並行して、前記基板の主面中央部を通る回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、前記雰囲気置換工程および基板回転工程と並行して、酸素が脱気された処理液を前記基板に対して傾いた方向に吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液供給工程とを含む、基板処理方法である。この構成によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明のように、前記基板は、表面に金属パターンが露出した基板であってもよい。金属パターンは、金属配線であってもよいし、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜の一例としては、銅膜の表面に拡散防止のためのバリアメタル膜を形成した積層膜を挙げることができる。処理対象の基板が、表面に金属パターンが露出した基板である場合、酸素濃度が低減された処理液が基板の表面に供給されるので、金属パターンの酸化を抑制または防止できる。これにより、金属パターンのエッチングを抑制または防止できる。
【0023】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の一部を拡大した模式的な断面図である。
【図3】処理液供給装置の概略構成を示す模式図である。
【図4】基板処理装置によって処理される基板の表面状態の一例を説明するための断面図である。
【図5A】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理例を説明するための工程図である。
【図5B】前記処理例を説明するための工程図である。
【図5C】前記処理例を説明するための工程図である。
【図5D】前記処理例を説明するための工程図である。
【図5E】前記処理例を説明するための工程図である。
【図6】基板の中心からの距離と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
【図7】基板の中心からの距離と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
【図8】基板の中心からの距離と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図10A】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理例を説明するための工程図である。
【図10B】前記処理例を説明するための工程図である。
【図10C】前記処理例を説明するための工程図である。
【図10D】前記処理例を説明するための工程図である。
【図10E】前記処理例を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式図である。図2は、図1の一部を拡大した模式的な断面図である。図3は、処理液供給装置41の概略構成を示す模式図である。後述するように、遮断板4は、処理位置と退避位置との間で上下に移動可能である。図1および図2では、遮断板4が処理位置に配置されている状態が示されている。以下では、遮断板4が処理位置に配置されている状態について説明する。
【0026】
基板処理装置1は、薬液やリンス液などの処理液によって半導体ウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。図1に示すように、基板処理装置1は、内部空間S1を有するチャンバー2と、チャンバー2内で基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持手段、基板回転手段)と、チャンバー2内でスピンチャック3の上方に配置された遮断板4(対向部材)と、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスを供給するガス供給機構5(ガス供給手段)と、基板Wに処理液を供給する処理液供給機構6とを備えている。さらに、基板処理装置1は、スピンチャック3などの基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置7を備えている。
【0027】
図1に示すように、スピンチャック3は、たとえば、基板Wを挟持して保持する挟持式のチャックである。スピンチャック3は、水平に配置された円盤状のスピンベース8と、スピンベース8上に配置された複数個の挟持部材9と、スピンベース8の下方で上下方向に延びる筒状のカバー10と、カバー10によって覆われたスピンモータ11とを含む。スピンチャック3は、各挟持部材9を基板Wの周端面に接触させることにより、基板Wを周囲から挟むことができる。さらに、スピンチャック3は、基板Wを保持した状態でスピンモータ11の駆動力をスピンベース8に入力することにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させることができる。スピンチャック3は、挟持式のチャックに限らず、基板Wの下面(裏面)を吸着して保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0028】
図1に示すように、遮断板4は、円板状である。遮断板4の直径は、基板Wの直径よりも大きい。遮断板4は、遮断板4の中心軸線がスピンチャック3の回転軸線A1上に位置するように水平に配置されている。遮断板4の下面は、スピンチャック3に保持されている基板Wの上面に対向している。支軸12は、遮断板4を水平な姿勢で支持している。遮断板昇降機構13および遮断板回転機構14は、支軸12を介して遮断板4に連結されている。遮断板回転機構14は、遮断板4および支軸12を回転軸線A1まわりに回転させる。遮断板昇降機構13は、遮断板4および支軸12を鉛直方向に昇降させる。遮断板昇降機構13は、遮断板4の下面がスピンチャック3に保持されている基板Wの上面に近接する処理位置(図1に示す位置)と、処理位置の上方に設けられた退避位置(図5Aに示す位置)との間で遮断板4を昇降させる。
【0029】
図1に示すように、遮断板4は、水平に配置された円板状の対向部15と、対向部15の外周縁から下方に延びる筒状部16と、対向部15の上面中央部から上方に突出する円板状の被支持部17とを含む。筒状部16は、対向部15の外周縁から外方に向かって斜め下に延びていてもよいし、対向部15の外周縁から鉛直下方に延びていてもよい。対向部15の直径は、基板Wの直径よりも大きい。したがって、筒状部16の内径は、基板Wの直径よりも大きい。筒状部16の下端の内径は、スピンベース8の外径よりも大きい。対向部15の下面18(対向面)は、基板Wの上面に対向している。筒状部16の内周面は、全周に亘って対向部15の下面18に連なっており、対向部15の下面18の外周縁から下方に延びている。基板Wの周端面は、全周に亘って筒状部16に取り囲まれている。
【0030】
また、図2に示すように、遮断板4は、遮断板4の中央部を上下方向に貫通する貫通孔を区画する内周面21、22を含む。遮断板4の内周面は、上下方向に延びる円筒面21と、円筒面21の下端から下向きに広がる円錐状の傾斜面22(案内面)とを含む。傾斜面22は、基板Wの上面中央部に対向している。対向部15の下面18は、傾斜面22の下端の周囲に配置されている。傾斜面22の下端は、全周に亘って対向部15の下面18の内周縁に連なっている。支軸12は、遮断板4の貫通孔に嵌合された内軸23と、内軸23を取り囲む外軸24とを含む。内軸23および外軸24は、いずれも筒状であり、上下方向に延びている。外軸24は、被支持部17の上方に配置された環状の外フランジ25を含む。外フランジ25は、被支持部17に連結されている。また、内軸23は、被支持部17の上方に配置された環状の内フランジ26と、遮断板4の貫通孔に嵌合された下端部27とを含む。内フランジ26は、被支持部17に連結されている。内軸23の下端部27は、内フランジ26の内周部から下方に延びている。内軸23の下端部27は、円筒面21内に配置されている。下端部27の外周面と遮断板4の内周面(円筒面21)との間の隙間は、下端部27の外周部に保持されているOリング28によってシールされている。
【0031】
図2に示すように、処理液供給機構6は、遮断板4の中心軸線(回転軸線A1)に沿って延びる筒状の処理液ノズル29を含む。また、ガス供給機構5は、遮断板4の中心軸線に沿って延びる筒状のガスノズル30を含む。処理液ノズル29およびガスノズル30は、遮断板4の中心軸線に沿って延びる筒状のケース31内に収容されている。処理液ノズル29およびガスノズル30は、ケース31によって保持されている。ケース31は、遮断板4および支軸12と共に昇降する。したがって、処理液ノズル29およびガスノズル30は、遮断板4および支軸12と共に昇降する。また、ケース31は、遮断板回転機構14とは連結されていない。したがって、ケース31、処理液ノズル29、およびガスノズル30は、遮断板4および支軸12が回転軸線A1まわりに回転する際、静止している。ケース31は、内軸23内に挿入されており、ケース31の下端は、内軸23から下方に突出している。ケース31の下端は、遮断板4の貫通孔に達している。同様に、処理液ノズル29およびガスノズル30の下端は、内軸23から下方に突出しており、遮断板4の貫通孔に達している。処理液ノズル29、ガスノズル30、およびケース31は、遮断板4の中心軸線に沿って延びる中心軸ノズル32を構成している。
【0032】
図2に示すように、ケース31は、内軸23の内周面に対して非接触状態で内軸23内に挿入されている。したがって、ケース31の外周面と内軸23の内周面との間には、上下方向に延びる筒状の空間(ガス供給路33)が形成されている。図1に示すように、ガス供給機構5は、ガス供給路33に相当するこの筒状の空間に接続された第1ガス配管34と、第1ガス配管34に介装された第1ガスバルブ35とを含む。第1ガスバルブ35が開かれると、第1ガス配管34を流れる不活性ガスが、ガス供給路33に供給され、内軸23の下端で開口する環状ガス吐出口36(図2参照)から下方に吐出される。ガス供給路33を区画するケース31の外周面および内軸23の内周面が鉛直方向に延びているので、ガス供給路33に供給された不活性ガスは、環状ガス吐出口36から鉛直下方に吐出される。これにより、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスが供給される。
【0033】
また、図1に示すように、ガス供給機構5は、ガスノズル30の上端部に接続された第2ガス配管37と、第2ガス配管37に介装された第2ガスバルブ38とをさらに含む。第2ガスバルブ38が開かれると、第2ガス配管37を流れる不活性ガスが、ガスノズル30に供給され、ガスノズル30の下端で開口するガス吐出口39(図2参照)から吐出される。図2に示すように、ガスノズル30の下端部は、鉛直方向に延びており、ガス吐出口39は、遮断板4の下面(対向部15の下面18)よりも上方に配置されている。ガス吐出口39は、基板Wの上面中央部の上方に配置されている。ガスノズル30の下端部が鉛直方向に延びているので、ガスノズル30は、ガス吐出口39から基板Wの上面中央部に向けて鉛直下方に不活性ガスを吐出する。したがって、ガスノズル30は、基板Wの上面に対して垂直な方向に不活性ガスを吐出する。これにより、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスが供給される。
【0034】
遮断板4と基板Wとの間に供給される不活性ガスは、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、およびアルゴンガスのいずれかであってもよいし、これらの不活性ガスのうちの少なくとも2つを含む混合ガスであってもよい。具体的には、窒素ガス、窒素ガスと水素ガスの混合ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、および窒素ガスとヘリウムガスの混合ガスのうちのいずれかが、不活性ガスとして用いられてもよい。
【0035】
また、図1に示すように、処理液供給機構6は、処理液ノズル29の上端部に接続された処理液配管40と、処理液配管40を介して処理液ノズル29に接続された処理液供給装置41とを含む。後述するように、処理液供給装置41は、処理液ノズル29に薬液およびリンス液を選択的に供給する。処理液ノズル29に供給された処理液(薬液またはリンス液)は、処理液ノズル29の下端で開口する処理液吐出口42(図2参照)から吐出される。図2に示すように、処理液ノズル29の下端部は、ケース31の下端部に形成された切欠き43から斜め下に突出している。処理液ノズル29の下端部は、鉛直方向に対して傾いた方向に延びており、処理液吐出口42は、遮断板4の下面(対向部15の下面18)よりも上方に配置されている。処理液吐出口42は、基板Wの上面中央部の上方に配置されている。処理液ノズル29は、処理液吐出口42から基板Wの上面中央部内の狙い位置P1に向けて処理液を吐出する。狙い位置P1は、処理液吐出口42の真下から離れた位置である。したがって、処理液ノズル29は、基板Wに対して傾いた処理液吐出方向D1に処理液を吐出する。そのため、処理液ノズル29から吐出された処理液は、基板Wの上面に斜めに入射する。
【0036】
処理液ノズル29は、たとえば、合成樹脂などの耐薬性を有する耐薬性材料によって形成されている。処理液ノズル29は、変形可能である。基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の傾き角度や、基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の位置は、処理液ノズル29の形状や位置によって調整される。具体的には、基板Wに対する処理液吐出方向D1の傾き角度は、基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の傾き角度によって調整される。さらに、狙い位置P1は、基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の位置によって調整される。したがって、処理液ノズル29は、中心を含む基板Wの上面中央部内の任意の位置に任意の角度で処理液を入射させることができる。図1および図2では、基板Wの中心から離れた位置に60°の入射角θ(基板Wの上面と処理液吐出方向D1とがなす角。図2参照)で処理液が入射するように処理液ノズル29が設定されている。
【0037】
図3に示すように、処理液供給装置41は、不活性ガス溶存水と薬液原液とを調合する調合ユニット44と、調合ユニット44に不活性ガス溶存水を供給するガス溶存水生成ユニット45(脱気手段)と、調合ユニット44に薬液原液を供給する薬液供給ユニット46とを含む。ガス溶存水生成ユニット45は、ガス溶存水配管47によって調合ユニット44に接続されており、薬液供給ユニット46は、薬液配管48によって調合ユニット44に接続されている。不活性ガス溶存水は、ガス溶存水配管47を介してガス溶存水生成ユニット45から調合ユニット44に供給される。また、薬液原液は、薬液配管48を介して薬液供給ユニット46から調合ユニット44に供給される。
【0038】
ガス溶存水生成ユニット45は、純水供給源から供給された純水(脱イオン水)から酸素を脱気すると共に、不活性ガスの一例である窒素ガスを純水に添加することにより、不活性ガス溶存水を生成する。具体的には、ガス溶存水生成ユニット45は、純水の酸素濃度が、たとえば20ppb以下になるまで酸素を脱気する。さらに、ガス溶存水生成ユニット45は、高純度の窒素ガス(濃度が、たとえば99.999%〜99.999999999%の窒素ガス)を純水中に添加することにより、窒素濃度が、たとえば7ppm〜24ppmの不活性ガス溶存水を生成する。ガス溶存水生成ユニット45は、たとえば、気体透過性および液体不透過性を有する中空糸分離膜によって、純水からの酸素の脱気および純水への不活性ガスの添加を行う。ガス溶存水生成ユニット45の具体的な構成は、たとえば特開2004−22572号公報に示されている。
【0039】
また、図3に示すように、薬液供給ユニット46は、薬液原液を貯留する薬液タンク49と、薬液配管48に介装されたポンプ50、フィルタ51、および脱気ユニット52(脱気手段)と、薬液タンク49に薬液を補充する薬液補充配管53と、薬液タンク49に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク49の内部を加圧する加圧配管55とを含む。薬液タンク49は、内部が密閉された密閉容器である。薬液タンク49内には、薬液原液が貯留されている。「薬液原液」は、不活性ガス溶存水との混合前の薬液を意味する。薬液原液の例としては、フッ酸(HF)、塩酸(HCL)、フッ酸とIPA(イソプロピルアルコール)の混合液、フッ化アンモニウム(NH4F)を例示できる。薬液原液としてフッ酸を用いた場合には、フッ酸と不活性ガス溶存水とが調合ユニット44によって所定の割合で混合(調合)され、希フッ酸(DHF)が生成される。
【0040】
希フッ酸は、ポリマー除去液の一例である。ポリマー除去液としては、有機アルカリ液を含む液体、有機酸を含む液体、無機酸を含む液体、フッ化アンモン系物質を含む液体のうちの少なくとも1つが使用できる。
そのうち、有機アルカリ液を含む液体としては、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヒドロキシルアミン、コリンのうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
【0041】
また、有機酸を含む液体としては、クエン酸、蓚酸、イミノジ酸、および琥珀酸のうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
また、無機酸を含む液体としては、フッ酸および燐酸のうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
その他、ポリマー除去液としては、1−メチル−2ピロリドン、テトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシド、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、2−(2アミノエトキシ)エタノール、カテコール、N−メチルピロリドン、アロマティックジオール、パークレン(テトラクロロエチレン)、フェノールを含む液体などのうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
【0042】
より具体的には、ポリマー除去液としては、1−メチル−2ピロリドンとテトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシドとイソプロパノールアミンとの混合液、ジメチルスルホキシドとモノエタノールアミンとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとヒドロキシアミンとカテコールとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとN−メチルピロリドンとの混合液、モノエタノールアミンと水とアロマティックジオールとの混合液、パークレン(テトラクロロエチレン)とフェノールとの混合液などのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0043】
これら以外のポリマー除去液としては、トリエタノールアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのアミン類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
図3に示すように、薬液配管48の一端部は、薬液タンク49に接続されている。ポンプ50、フィルタ51、および脱気ユニット52は、薬液タンク49側からこの順番で薬液配管48に介装されている。薬液タンク49内の薬液原液は、薬液配管48を介して調合ユニット44に送られる。フィルタ51は、薬液配管48を流れる薬液原液をろ過する。これにより、薬液原液に含まれる異物が除去される。また、脱気ユニット52は、薬液配管48を流れる薬液原液から酸素を脱気する。これにより、調合ユニット44に供給される薬液原液の酸素濃度が低減される。脱気ユニット52は、不活性ガスの添加を行う構成を除き、ガス溶存水生成ユニット45と同様の構成を備えている。
【0044】
図3に示すように、薬液補充配管53は、薬液タンク49に接続されている。薬液補充バルブ54は、薬液補充配管53に介装されている。薬液補充バルブ54が開かれると、薬液原液供給源からの未使用の薬液原液が、薬液補充配管53を介して薬液タンク49に供給される。これにより、薬液原液が薬液タンク49に補充される。薬液タンク49内の液量は、図示しない液量センサによって検出される。制御装置7は、液量センサの検出値に基づいて薬液補充バルブ54を開閉する。これにより、薬液タンク49内の液量が所定量以上に維持される。
【0045】
また、図3に示すように、加圧配管55は、薬液タンク49に接続されている。加圧バルブ56は、加圧配管55に介装されている。加圧バルブ56は、常時開のバルブである。したがって、ガス供給手段源からの不活性ガスは、加圧配管55を介して、常時、薬液タンク49内に供給されている。不活性ガスが薬液タンク49内に供給されることにより、薬液タンク49内の空気が排出される。これにより、薬液タンク49内の空気に含まれる酸素が、薬液タンク49内の薬液原液に溶け込んで、薬液原液中の溶存酸素量が増加することを抑制または防止できる。さらに、不活性ガスが薬液タンク49内に供給されることにより、薬液タンク49内が加圧される。これにより、薬液タンク49内の薬液原液が薬液配管48に圧送される。すなわち、薬液タンク49内の薬液原液は、ポンプ50の吸引力と不活性ガスによる圧力とによって薬液配管48に送られる。これにより、薬液タンク49内の薬液原液が調合ユニット44に送られる。
【0046】
図3に示すように、調合ユニット44は、不活性ガス溶存水と薬液原液とを混合する混合配管57と、ガス溶存水配管47に介装されたガス溶存水バルブ58およびガス溶存水流量調整バルブ59と、薬液配管48に介装された薬液バルブ60および薬液流量調整バルブ61とを備えている。処理液配管40、ガス溶存水配管47、および薬液配管48は、混合配管57に接続されている。ガス溶存水バルブ58が開かれると、ガス溶存水流量調整バルブ59の開度に対応する所定流量の不活性ガス溶存水が混合配管57に供給される。また、薬液バルブ60が開かれると、薬液流量調整バルブ61の開度に対応する所定流量の薬液原液が混合配管57に供給される。混合配管57に供給された処理液は、処理液配管40を介して処理液ノズル29に供給される。
【0047】
ガス溶存水バルブ58が開かれている状態で、薬液バルブ60が開かれると、混合配管57内を流通している不活性ガス溶存水に薬液原液が注入(インジェクション)され、薬液原液と不活性ガス溶存水とが混合される。そのため、制御装置7は、混合配管57に対する薬液原液の供給流量と不活性ガス溶存水の供給流量とを調整することにより、所定割合に調合された薬液を調合ユニット44によって生成させることができる。また、薬液バルブ60が閉じられ、ガス溶存水バルブ58が開かれると、不活性ガス溶存水だけが、混合配管57に供給される。そのため、不活性ガス溶存水だけがリンス液として処理液配管40に供給される。
【0048】
図4は、基板処理装置1によって処理される基板Wの表面状態の一例を説明するための断面図である。
以下に説明するように、基板処理装置1に搬入される基板Wは、たとえば、表面にポリマー残渣(ドライエッチングやアッシング後の残渣)が付着しており、金属パターンが露出した半導体ウエハである。金属パターンは、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜は、たとえば、銅膜と、この銅膜上に積層されたCoWP(cobalt-tungsten- phosphorus)膜とを含む積層膜であってもよい。CoWP膜は、拡散防止のためのキャップ膜である。
【0049】
図4に示すように、基板Wの表面上には、層間絶縁膜62が形成されている。層間絶縁膜62には、下配線溝63がその上面から掘り下げて形成されている。下配線溝63には、銅配線64が埋設されている。層間絶縁膜62上には、エッチストッパ膜65を介して、被加工膜の一例としての低誘電率絶縁膜66が積層されている。低誘電率絶縁膜66には、上配線溝67がその上面から掘り下げて形成されている。さらに、低誘電率絶縁膜66には、上配線溝67の底面から銅配線64の表面に達するヴィアホール68が形成されている。上配線溝67およびヴィアホール68には、銅が一括して埋め込まれる。
【0050】
上配線溝67およびヴィアホール68は、低誘電率絶縁膜66上にハードマスクが形成された後、ドライエッチング処理が行われ、低誘電率絶縁膜66におけるハードマスクから露出した部分が除去されることにより形成される。上配線溝67およびヴィアホール68が形成された後、アッシング処理が行われ、低誘電率絶縁膜66上から不要となったハードマスクが除去される。ドライエッチング時およびアッシング時には、低誘電率絶縁膜66やハードマスクの成分を含む反応生成物(ポリマー残渣)が、低誘電率絶縁膜66の表面(上配線溝67およびヴィアホール68の内面を含む。)などに付着する。そのため、アッシング後には、基板Wの表面にポリマー除去液を供給して、低誘電率絶縁膜66の表面からポリマー残渣を除去するポリマー除去工程が行われる。以下では、このような基板Wの表面からポリマー残渣を除去する処理例について説明する。
【0051】
図5A〜図5Eは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1による基板Wの処理例を説明するための工程図である。以下では、図1を参照する。図5A〜図5Eについては適宜参照する。
基板Wが処理されるときには、制御装置7が、遮断板昇降機構13を制御することにより、遮断板4を退避位置に移動させる。図5Aに示すように、制御装置7は、この状態で、基板Wを搬送する搬送ロボットR1のハンドH1をチャンバー2内に進入させることにより、表面が上に向けられた基板Wをチャンバー2内に搬入させる。そして、制御装置7は、搬送ロボットR1によって、表面が上に向けられた基板Wをスピンチャック3上に載置させる。その後、制御装置7は、チャンバー2内から搬送ロボットR1を退避させる。制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、複数の挟持部材9を基板Wの周端面に接触させることにより、スピンチャック3によって基板Wを水平に保持させる。さらに、制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、遮断板昇降機構13を制御することにより、遮断板4を処理位置に移動させる。これにより、遮断板4の下面(対向部15の下面18)が基板Wの上面に近接すると共に、基板Wの周囲が遮断板4の下面(筒状部16の内周面)によって取り囲まれる。
【0052】
次に、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスを供給することにより、基板W上の雰囲気を置換する雰囲気置換工程が行われる。具体的には、図5Bに示すように、制御装置7は、第1ガスバルブ35を開いて、ガス供給路33から下方に不活性ガス(たとえば、窒素ガス)を吐出させる。さらに、図5Bに示すように、制御装置7は、第2ガスバルブ38を開いて、ガスノズル30から下方に不活性ガスを吐出させる。ガス供給路33およびガスノズル30から吐出された不活性ガスは、傾斜面22によって基板Wの上面中央部に案内された後、遮断板4の下面(対向部15の下面18)と基板Wの上面との間を外方に流れる。そのため、遮断板4と基板Wとの間の雰囲気は、不活性ガスによって外方に押し流され、遮断板4と基板Wとの間から排出される。これにより、酸素を含む雰囲気が遮断板4と基板Wとの間から排出され、遮断板4と基板Wとの間が不活性ガスで満たされる。そのため、基板W上の酸素濃度が低減される。ガス供給路33およびガスノズル30からの不活性ガスの吐出は、後述する乾燥工程が終了するまで継続される。不活性ガスの吐出は、遮断板4および基板Wの少なくとも一方が回転している状態で行われてもよいし、遮断板4および基板Wが回転していない状態で行われてもよい。
【0053】
次に、薬液およびポリマー除去液の一例である希フッ酸を基板Wに供給する薬液工程(ポリマー除去工程)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、遮断板4が基板Wに近接している状態で、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる。このとき、制御装置7は、遮断板回転機構14によって遮断板4を回転軸線A1まわりに回転させてもよいし、回転させなくてもよい。図5Cに示すように、制御装置7は、この状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル29に希フッ酸を供給させて、処理液ノズル29から斜め下に希フッ酸を吐出させる。処理液ノズル29から吐出された希フッ酸は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された希フッ酸は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない希フッ酸が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上のポリマー残渣が除去される。制御装置7は、処理液ノズル29からの希フッ酸の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル29からの希フッ酸の吐出を停止させる。
【0054】
次に、リンス液の一例である純水(不活性ガス溶存水)を基板Wに供給するリンス工程が行われる。具体的には、図5Dに示すように、制御装置7は、遮断板4が基板Wに近接しており、基板Wが回転している状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル29に純水を供給させて、処理液ノズル29から斜め下に純水を吐出させる。このとき、制御装置7は、遮断板回転機構14によって遮断板4を回転軸線A1まわりに回転させてもよいし、回転させなくてもよい。処理液ノズル29から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない純水が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上の希フッ酸が洗い流される。制御装置7は、処理液ノズル29からの純水の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル29からの純水の吐出を停止させる。
【0055】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、遮断板4が基板Wに近接している状態で、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。このとき、制御装置7は、遮断板回転機構14によって遮断板4を回転軸線A1まわりに回転させてもよいし、回転させなくてもよい。図5Eに示すように、基板Wに付着している純水は、基板Wの高速回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。制御装置7は、基板Wの高速回転が所定時間にわたって行われた後、スピンチャック3を制御することにより、スピンチャック3による基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置7は、第1ガスバルブ35および第2ガスバルブ38を閉じて、不活性ガスの吐出を停止させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットR1によってチャンバー2内から搬出される。
【0056】
図6〜図8は、基板Wの中心からの距離(半径)と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。図6は、基板W上の酸素濃度を変化させたときの測定値を示しており、図7は、基板Wに対する薬液の入射角θ(図2参照)を変化させたときの測定値を示している。また、図8は、基板Wの上面の中心から狙い位置P1(図2参照)までの距離(オフセット量)を変化させたときの測定値を示している。
【0057】
図6において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、前述の処理例で説明した一連の処理(雰囲気置換工程から乾燥工程)が行われた基板Wの測定値である。ただし、基板Wに対する薬液(希フッ酸)の入射角θ(図2参照)は、90°であり、狙い位置P1は、基板Wの上面の中心である。図6に示す3つの測定値の処理条件は、基板W上の酸素濃度を除き、同一である。すなわち、図6において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、それぞれ、基板W上の酸素濃度が20%、1%、および100ppmのときの測定値である。図6に示す3つの測定値は、いずれも比較例である。
【0058】
同様に、図7において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、前述の処理例で説明した一連の処理が行われた基板Wの測定値である。図7に示す3つの測定値は、基板W上の酸素濃度が100ppmのときの測定値である。図7に示す3つの測定値の処理条件は、基板Wに対する薬液の入射角θを除き、同一である。すなわち、図7において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、それぞれ、基板Wに対する薬液の入射角θが90°、60°、および30°のときの測定値である。狙い位置P1は、いずれの測定においても基板Wの上面の中心である。図7において太線で示す測定値は、比較例であり、図7において破線および細線で示す測定値は、実施例である。
【0059】
同様に、図8において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、前述の処理例で説明した一連の処理が行われた基板Wの測定値である。図8に示す3つの測定値は、基板W上の酸素濃度が100ppmであり、基板Wに対する薬液の入射角θが60°のときの測定値である。図8に示す3つの測定値の処理条件は、オフセット量を除き、同一である。すなわち、図8において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、それぞれ、オフセット量が0mm、10mm、20mmのときの測定値である。図8に示す3つの測定値は、いずれも実施例である。
【0060】
図6において白色の矢印で示すように、基板Wの上面周縁部(中心からの距離の絶対値が100以上の領域)でのエッチング量は、酸素濃度の低下に伴って大幅に減少している。これに対して、基板Wの上面中央部(中心からの距離の絶対値が50以下の領域)でのエッチング量は、酸素濃度の低下に伴って減少しているものの、その減少幅は、周縁部よりも小さい。そのため、エッチング量の最大値と最小値との差、すなわち、エッチングの均一性は、酸素濃度が低下しても、大幅に向上していない。
【0061】
一方、図7に示すように、基板Wの上面中央部でのエッチング量は、基板Wに対する薬液の入射角θの減少に伴って減少している。また、基板Wの上面周縁部でのエッチング量は、基板Wに対する薬液の入射角θが変化しても、殆ど変化していない。そのため、エッチングの均一性は、基板Wに対する薬液の入射角θの減少に伴って向上している。特に、基板Wに対する薬液の入射角θが30°のときには、基板Wの上面中央部でのエッチング量が、基板Wの上面周縁部でのエッチング量とほぼ等しくなっており、エッチングの均一性が大幅に向上している。
【0062】
また、図8に示すように、オフセット量が10mmの場合、オフセット量が0mmの場合よりも、エッチング量の最大値が、僅かに減少しており(中心からの距離の絶対値が10以下の領域を参照)、エッチング量の最小値が、僅かに増加している(中心からの距離が約−80の領域を参照)。そのため、オフセット量が0mmの場合よりもエッチングの均一性が向上している。また、オフセット量が20mmの場合、オフセット量が0mmの場合よりも、エッチング量の最大値が大幅に減少している(中心からの距離の絶対値が10以下の領域を参照)。その一方で、中央部以外の基板Wの上面内の領域でのエッチング量は、オフセット量が0mmの場合と殆ど変らない。そのため、エッチングの均一性は、オフセット量の増加に伴って向上している。特に、オフセット量が20mmの場合には、基板Wの上面中央部でのエッチング量が、基板Wの上面周縁部でのエッチング量とほぼ等しくなっており、エッチングの均一性が大幅に向上している。
【0063】
このように、基板Wに接する雰囲気の酸素濃度を低下させることにより、基板Wの上面周縁部でのエッチング量を減少させることができる。さらに、基板Wに対する薬液の入射角θを減少させることにより、基板Wの上面中央部でのエッチング量を減少させることができる。すなわち、基板Wに対する薬液の入射角θが大きい場合(90°付近のとき)には、薬液の物理的なエネルギーが薬液の狙い位置P1に集中するので、薬液が狙い位置P1で強制的に撹拌される。その一方で、基板Wに対する薬液の入射角θを減少させると、基板Wの上面中央部に供給される薬液の勢いが弱まるので、基板W上での薬液の撹拌が弱まる。
【0064】
同様に、狙い位置P1を基板Wの上面の中心からオフセットさせると、基板Wの上面の中心に供給される薬液の勢いが弱まるので、中心での薬液の撹拌が弱まる。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチング量が減少し、基板Wの上面中央部でのエッチング量と基板Wの上面周縁部でのエッチング量との差が減少する。したがって、基板Wに接する雰囲気の酸素濃度を低下させると共に、基板Wに対して斜めに薬液を入射させることにより、エッチングの均一性を向上させることができる。また、酸素濃度の低下と薬液の斜め供給とに加えて、狙い位置P1を基板Wの上面の中心からオフセットさせることにより、エッチングの均一性をさらに向上させることができる。
【0065】
以上のように第1実施形態では、酸素が脱気された処理液(薬液およびリンス液)が基板Wの上面に供給されるので、処理液中の溶存酸素によって基板Wが酸化されることを抑制または防止できる。さらに、遮断板4と基板Wとの間が不活性ガスによって満たされている状態で、処理液が基板Wの上面に供給されるので、雰囲気中の酸素が処理液に溶け込んで、処理液の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。したがって、基板Wの上面が薬液によってエッチングされることを抑制または防止できる。さらに、遮断板4を基板Wの上面に対向させることにより、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができる。しかも、処理液ノズル29から吐出された処理液が、基板Wの上面中央部に斜めに供給されるので、処理液が基板Wの上面中央部に垂直に供給される場合よりも、基板Wの上面中央部に供給される処理液の勢いが弱まる。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチング量を減少させることができる。これにより、基板Wの上面全域でエッチング量を減少させることができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、遮断板4に代えて、密閉チャンバー204が設けられていることである。
以下の図9〜図10Eにおいて、前述の図1〜図8に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201の概略構成を示す模式図である。後述するように、蓋部材274は、閉位置と開位置との間で移動可能であり、スピンチャック3は、処理位置と受渡位置との間で移動可能である。図9では、蓋部材274が閉位置に配置されており、スピンチャック3が処理位置に配置されている状態が示されている。以下では、蓋部材274が閉位置に配置されており、スピンチャック3が処理位置に配置されている状態について説明する。
【0068】
基板処理装置201は、チャンバー2と、スピンチャック3と、制御装置7とを含む。さらに、基板処理装置201は、スピンチャック3に保持されている基板Wを収容する密閉チャンバー204(対向部材)と、密閉チャンバー204とスピンチャック3との間をシールするシール機構270と、スピンチャック3を昇降させるチャック昇降機構271と、密閉チャンバー204の内部に不活性ガスを供給するガス供給機構205(ガス供給手段)と、スピンチャック3に保持されている基板Wに処理液を供給する処理液供給機構206とを含む。
【0069】
密閉チャンバー204は、密閉空間S201(密閉チャンバー204の内部空間)を形成している。密閉チャンバー204は、基板Wを収容する筒状の本体272と、本体272の上部に設けられた開口部273を塞ぐ蓋部材274とを含む。本体272は、スピンチャック3の周囲を取り囲む筒状の周壁275と、周壁275の下端部から内方に延びる環状の底壁276とを含む。底壁276は、スピンチャック3の一部(カバー10)を取り囲んでいる。スピンベース8は、底壁276と開口部273との間の高さに配置されている。本体272の開口部273は、周壁275の上端部に設けられている。蓋部材274は、周壁275の上方に配置されている。蓋部材274は、基板Wの上面に対向している。蓋部材274の下面と周壁275の上面との間の隙間は、図示しないシール機構によって密閉されている。蓋部材274は、蓋昇降機構277によって支持されている。蓋昇降機構277は、開口部273が閉じられる閉位置と、開口部273が開かれる開位置との間で蓋部材274を昇降させる。
【0070】
シール機構270は、底壁276の内周部とカバー10との間に配置されている。シール構造は、たとえば、ウォータシールである。シール機構270は、純水を貯留する環状の貯水部材278と、貯水部材278に貯留されている純水に浸水している筒状の浸水部材279とを含む。貯水部材278は、底壁276の内周部に連結されており、浸水部材279は、スピンチャック3に連結されている。貯水部材278は、上向きに開いた環状の貯水溝280を形成している。浸水部材279は、上下方向に延びる円筒部279aと、円筒部279aの上端部から内方に延びる環状部279bとを含む。円筒部279aは、貯水部材278の上方に配置されており、円筒部279aの一部は、貯水部材278に貯留されている純水に浸水している。これにより、底壁276の内周部とカバー10との間が水封されている。
【0071】
チャック昇降機構271は、スピンチャック3に連結されている。チャック昇降機構271は、スピンベース8が本体272の内部に位置する処理位置と、スピンベース8が本体272の上方に位置する受渡位置(図10A参照)との間で昇降させる。処理位置は、基板Wの処理が行われる位置であり、受渡位置は、搬送ロボットR1(図10A参照)とスピンチャック3との間での基板Wの受け渡しが行われる位置である。受渡位置は、処理位置の上方の位置である。制御装置7は、スピンチャック3を受渡位置に移動させる前に、蓋昇降機構277によって蓋部材274を開位置に移動させる。そして、制御装置7は、チャック昇降機構271を制御することにより、開口部273が開かれている状態でスピンチャック3を上昇させる。これにより、スピンベース8が開口部273を通過し、本体272の上方に移動する。
【0072】
シール機構270の浸水部材279は、スピンチャック3と共に上下方向に移動する。貯水部材278および浸水部材279は、貯水部材278および浸水部材279の間が水封された状態で、上下方向に相対移動可能である。貯水部材278および浸水部材279は、スピンチャック3が処理位置と受渡位置との間の何れの位置に位置している状態でも、浸水部材279が、貯水部材278に貯留されている純水に浸水するように設定されている。したがって、スピンチャック3が処理位置と受渡位置との間の何れの位置に位置している状態でも、本体272の底壁276とスピンチャック3との間が密閉されている状態が維持される。これにより、密閉チャンバー204の密閉性が高められている。
【0073】
ガス供給機構205は、蓋部材274を上下方向に貫通するガス供給路233に接続された第1ガス配管234と、第1ガス配管234に介装された第1ガスバルブ235とを含む。蓋部材274が閉位置に位置している状態で第1ガスバルブ235が開かれると、第1ガス配管234を流れる不活性ガスが、ガス供給路233に供給され、蓋部材274の下面で開口するガス吐出口239から密閉チャンバー204の内部に不活性ガスが供給される。密閉チャンバー204内の空気は、不活性ガスが密閉チャンバー204の内部に供給されることにより、底壁276で開口するガス排出口281から排出される。これにより、酸素を含む雰囲気が密閉チャンバー204の内部から排出され、密閉チャンバー204の内部が不活性ガスで満たされる。そのため、密閉チャンバー204内の酸素濃度が低減される。
【0074】
処理液供給機構206は、スピンチャック3に保持されている基板Wの上面に向けて処理液を吐出する処理液ノズル229と、処理液ノズル229に接続された処理液配管40、処理液配管40を介して処理液ノズル229に接続された処理液供給装置41とを含む。処理液ノズル229は、密閉チャンバー204の内部に配置されている。処理液ノズル229は、スピンチャック3の周囲で周壁275に取り付けられている。処理液ノズル229は、処理液供給装置41から供給された処理液(薬液またはリンス液)を処理液吐出口42から基板Wの上面中央部内の狙い位置P1に向けて吐出する。処理液ノズル229の処理液吐出口42は、スピンチャック3の周囲に配置されている。したがって、処理液ノズル229は、基板Wに対して傾いた処理液吐出方向D1に処理液を吐出する。基板Wに対する処理液の入射角θおよび狙い位置P1は、処理液ノズル229の角度を変更することにより調整可能である。
【0075】
図10A〜図10Eは、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201による基板Wの処理例を説明するための工程図である。以下では、金属パターンが形成された基板Wの表面からポリマー残渣を除去するときの処理例について説明する。以下では、図9を参照する。図10A〜図10Eについては適宜参照する。
基板Wが処理されるときには、制御装置7が、蓋昇降機構277を制御することにより、蓋部材274を開位置に移動させる。さらに、制御装置7は、チャック昇降機構271を制御することにより、スピンチャック3を受渡位置に移動させる。図10Aに示すように、制御装置7は、この状態で、搬送ロボットR1のハンドH1をチャンバー2内に進入させることにより、表面が上に向けられた基板Wをチャンバー2内に搬入させる。そして、制御装置7は、搬送ロボットR1によって、表面が上に向けられた基板Wをスピンチャック3上に載置させる。その後、制御装置7は、チャンバー2内から搬送ロボットR1を退避させる。制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、複数の挟持部材9を基板Wの周端面に接触させることにより、スピンチャック3によって基板Wを水平に保持させる。さらに、制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、チャック昇降機構271を制御することにより、スピンチャック3を処理位置に移動させる。その後、制御装置7は、蓋昇降機構277を制御することにより、蓋部材274を閉位置に移動させる。これにより、蓋部材274と本体272とが密着し、密閉チャンバー204の内部が密閉される。
【0076】
次に、密閉チャンバー204の内部に不活性ガスを供給することにより、基板W上の雰囲気を置換する雰囲気置換工程が行われる。具体的には、図10Bに示すように、制御装置7は、第1ガスバルブ235を開いて、密閉チャンバー204の内部が密閉されている状態でガス吐出口239から下方に不活性ガスを吐出させる。これにより、密閉チャンバー204の内部に不活性ガスが供給される。密閉チャンバー204内の空気は、不活性ガスが密閉チャンバー204の内部に供給されることにより、底壁276で開口するガス排出口281から排出される。これにより、酸素を含む雰囲気が密閉チャンバー204の内部から排出され、密閉チャンバー204の内部が不活性ガスで満たされる。そのため、基板W上の酸素濃度が低減される。ガス吐出口239からの不活性ガスの吐出は、後述する乾燥工程が終了するまで継続される。不活性ガスの吐出は、基板Wが回転している状態で行われてもよいし、基板Wが回転していない状態で行われてもよい。
【0077】
次に、薬液およびポリマー除去液の一例である希フッ酸を基板Wに供給する薬液工程が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、密閉チャンバー204の内部が密閉されている状態で、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる。図10Cに示すように、制御装置7は、この状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル229に希フッ酸を供給させて、処理液ノズル229から斜め下に希フッ酸を吐出させる。処理液ノズル229から吐出された希フッ酸は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された希フッ酸は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない希フッ酸が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上のポリマー残渣が除去される。制御装置7は、処理液ノズル229からの希フッ酸の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル229からの希フッ酸の吐出を停止させる。
【0078】
次に、リンス液の一例である純水(不活性ガス溶存水)を基板Wに供給するリンス工程が行われる。具体的には、図10Dに示すように、制御装置7は、密閉チャンバー204の内部が密閉されており、基板Wが回転している状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル229に純水を供給させて、処理液ノズル229から斜め下に純水を吐出させる。処理液ノズル229から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない純水が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上の希フッ酸が洗い流される。制御装置7は、処理液ノズル229からの純水の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル229からの純水の吐出を停止させる。
【0079】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、密閉チャンバー204の内部が密閉されている状態で、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、図10Eに示すように、基板Wに付着している純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。制御装置7は、基板Wの高速回転が所定時間にわたって行われた後、スピンチャック3を制御することにより、スピンチャック3による基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置7は、第1ガスバルブ235を閉じて、ガス吐出口239からの不活性ガスの吐出を停止させる。続いて、制御装置7は、蓋部材274を開位置に移動させ、スピンチャック3を受渡位置に移動させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットR1によってチャンバー2内から搬出される。
【0080】
以上のように第2実施形態では、第1実施形態と同様に、酸素が脱気された処理液が基板Wの上面中央部に斜めに供給される。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチング量を減少させることができる。さらに、基板Wを収容する密閉チャンバー204内が不活性ガスによって満たされている状態で、基板Wに処理液が供給されるので、雰囲気中の酸素が処理液に溶け込んで、処理液の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。しかも、密閉チャンバー204がチャンバー2内で空間を区画しているので、チャンバー2の内部空間S1全域に不活性ガスを充填させる場合よりも、雰囲気が置換される空間の体積が小さい。そのため、基板W上の雰囲気を短時間で置換できる共に、不活性ガスの消費量を低減できる。
【0081】
この発明の実施形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1および第2実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1および第2実施形態では、共通のノズル(処理液ノズル29、229)から基板Wに薬液およびリンス液を供給する場合について説明して、薬液およびリンス液が別々のノズルから基板Wにされてもよい。すなわち、基板Wに薬液を供給する薬液ノズルと、基板Wにリンス液を供給するリンス液ノズルとが設けられていてもよい。
【0082】
また、前述の第1および第2実施形態では、基板処理装置1、201が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1、201は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 :基板処理装置
2 :チャンバー
3 :スピンチャック(基板保持手段、基板回転手段)
4 :遮断板(対向部材)
5 :ガス供給機構(ガス供給手段)
15 :対向部
16 :筒状部
18 :下面(対向面)
22 :傾斜面(案内面)
29 :処理液ノズル
36 :環状ガス吐出口
39 :ガス吐出口
42 :処理液吐出口
45 :ガス溶存水生成ユニット(脱気手段)
52 :脱気ユニット(脱気手段)
201 :基板処理装置
204 :密閉チャンバー(対向部材)
205 :ガス供給機構(ガス供給手段)
229 :処理液ノズル
A1 :回転軸線
D1 :処理液吐出方向
P1 :狙い位置
S1 :内部空間
S201 :密閉空間
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板から異物を除去する洗浄工程が行われる。たとえば、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが作り込まれた半導体ウエハの表面に多層配線を形成するバックエンドプロセス(BEOL:Back End of the Line)では、ドライエッチングやアッシングによって発生したポリマー残渣を除去するポリマー除去工程が行われる。
【0003】
ポリマー除去工程では、金属配線(たとえば、銅配線)が露出した基板の表面にポリマー除去液が供給される。ところが、酸素濃度の高いポリマー除去液が基板に供給されると、ポリマー除去液中の溶存酸素により基板上の金属配線が酸化され、金属酸化物が形成される。この金属酸化物はポリマー除去液によって腐食(エッチング)されるので、この基板から作成されるデバイスの品質が低下するおそれがある。金属配線のエッチング量は、ポリマー除去液の酸素濃度の増加に伴って増加する。そのため、たとえば特許文献1では、基板に供給される薬液の酸素濃度を低下させることが提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の枚葉式の基板処理装置は、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板の上面に対向する遮断板と、遮断板と基板との間に不活性ガスを供給するガス配管と、ポリマー除去液などの薬液を遮断板の下面中央部から基板の上面中央部に向けて吐出する処理液ノズルと、処理液ノズルに供給される薬液から酸素を脱気する脱気ユニットとを含む。
【0005】
処理液ノズルから吐出された薬液は、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされた状態で、回転状態の基板の上面中央部に供給される。基板に供給される薬液の酸素濃度は、脱気ユニットによって予め低減されている。さらに、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされている状態で薬液が基板に供給されるので、遮断板と基板との間で雰囲気中の酸素が薬液に溶け込んで、薬液の酸素濃度が上昇することが抑制または防止される。これにより、酸素濃度の低い薬液が基板に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−56218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置では、処理液ノズルから基板の上面中央部に向けて基板に対して垂直な方向に薬液が吐出される。基板に対する薬液の入射角が大きい場合(90°付近のとき)、薬液の物理的なエネルギーが薬液の着液位置に集中するので、薬液が着液位置で強制的に撹拌される。そのため、エッチングによって発生した反応生成物が着液位置から除去され、新鮮な薬液(活性の高い薬液)が着液位置に随時供給される。したがって、エッチング量が、基板の上面中央部で局所的に増加してしまう。よって、所定の品質を満たさない半導体装置が基板の上面中央部で製造され、歩留まりが低下してしまう場合がある。
【0008】
基板の上面中央部でのエッチング量を減少させるために、処理液ノズルを移動させることにより、薬液の着液位置を基板の上面中央部と上面周縁部との間で移動させるスキャン処理を行うことが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置では、処理液ノズルの周囲に遮断板が配置されているので、スキャン処理を行う場合には、処理液ノズルだけでなく、遮断板も移動させる必要がある。したがって、遮断板の周囲に十分なスペースが確保されていない場合には、スキャン処理を行うことができない。
【0009】
特許文献1に記載の基板処理装置のように、遮断板を基板に対向させることにより、不活性ガスによって雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができる。これにより、基板上の雰囲気を短時間で置換できる共に、不活性ガスの消費量を低減できる。しかしながら、前述のように、遮断板が設けられている場合には、処理液ノズルから基板への薬液の供給方法が制限されてしまい、スキャン処理を行うことができない。したがって、特許文献1に記載の基板処理装置は、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができるものの、基板のエッチング量を面内全域で低減することができない。
【0010】
そこで、この発明の目的は、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができ、基板のエッチング量を面内全域で低減できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、内部空間(S1)を有するチャンバー(2)と、前記チャンバー内で基板を保持する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に交差する回転軸線(A1)まわりに前記基板を回転させる基板回転手段(3)と、前記チャンバー内に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に対向する対向部材(4、204)と、前記対向部材と前記基板保持手段に保持されている基板との間に不活性ガスを供給するガス供給手段(5、205)と、前記基板保持手段に保持されている基板に対して傾いた方向(D1)に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液ノズル(29、229)と、前記処理液ノズルに供給される処理液から酸素を脱気する脱気手段(45、52)とを含む、基板処理装置(1、201)である。
【0012】
この構成によれば、ガス供給手段からの不活性ガスが、チャンバー内で基板保持手段に保持されている基板と、チャンバー内で基板の主面に対向する対向部材との間に供給される。これにより、遮断板と基板との間の雰囲気が不活性ガスによって置換される。基板回転手段は、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされた状態で、基板保持手段に保持されている基板を回転軸線まわりに回転させる。処理液ノズルは、この状態で、脱気手段によって脱気された処理液を回転状態の基板の主面中央部に向けて吐出する。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の主面中央部に供給された後、基板の回転による遠心力を受けて基板の主面に沿って外方に広がる。これにより、基板の主面全域に処理液が供給される。
【0013】
このように、酸素が脱気された処理液が基板の主面に供給されるので、処理液中の溶存酸素によって基板が酸化されることを抑制または防止できる。さらに、遮断板と基板との間が不活性ガスによって満たされるので、雰囲気中の酸素が処理液に溶け込んで、処理液の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。したがって、酸化物を腐食させる薬液が、処理液として用いられている場合でも、基板の主面がエッチングされることを抑制または防止できる。さらに、遮断板を基板の主面に対向させることにより、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができる。しかも、処理液ノズルから吐出された処理液が、基板の主面中央部に斜めに供給されるので、処理液が基板の主面中央部に垂直に供給される場合よりも、基板の上面中央部に供給される処理液の勢いが弱まる。そのため、基板の主面中央部でのエッチング量を減少させることができる。これにより、基板の主面全域でエッチング量を減少させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記対向部材は、前記基板の主面に対向する対向部(15)と、前記基板の周囲を全周に亘って取り囲む筒状部(16)とを含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板の主面が対向部に対向すると共に、基板の周囲が全周に亘って筒状部に取り囲まれる。したがって、対向部材と基板との間の空間が、その周囲の空間から隔離される。そのため、酸素を含む雰囲気が、対向部材と基板との間に進入して、基板に接する雰囲気の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。これにより、基板に既に供給されている処理液や、基板に供給される処理液の酸素濃度の上昇を抑制または防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に対向しており、前記基板の主面中央部に近づくに従って広がる筒状の案内面(22)と、前記案内面の周囲に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に平行に対向する対向面(18)とをさらに含み、前記ガス供給手段は、前記案内面の内側に不活性ガスを供給するガス吐出口(36、39)を含み、前記処理液ノズルは、前記案内面の内側に配置された処理液吐出口(42)を含む、請求項2に記載の基板処理装置である。ガス吐出口は、案内面の内側に配置されていてもよいし、案内面に対して基板とは反対側に配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、ガス吐出口から吐出された不活性ガスが、基板の主面中央部に対向する筒状の案内面の内側に供給される。この不活性ガスは、案内面によって基板の主面側に案内される。案内面が、基板の主面に近づくに従って広がっているから、不活性ガスは、基板の主面に平行な方向に広がりながら、基板の主面に近づく。対向面は、案内面の周囲で基板に平行に対向している。したがって、案内面の内側を流れる不活性ガスは、対向部と基板との間に移動し、基板の主面に沿って外方に流れる。
【0017】
このように、案内面が、基板の主面に近づくに従って広がっているから、不活性ガスが、案内面の内側から対向部と基板との間にスムーズに移動する。そのため、対向部材と基板との間の雰囲気が不活性ガスによって速やかに置換される。さらに、気体の滞留領域の発生が抑制または防止されるから、対向部材と基板との間から酸素が確実に排出され、酸素濃度がさらに低減される。しかも、処理液ノズルの処理液吐出口が、案内面の内側に配置されているから、処理液吐出口が形成された処理液ノズルの一部を対向部材に接触させることなく傾けられる。これにより、処理液ノズルは、基板に対して傾いた方向に処理液を吐出できる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板全体を収容する密閉空間(S201)を形成する密閉チャンバー(204)を含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板保持手段に保持されている基板が、密閉チャンバーによって形成された密閉空間に配置されている。そのため、酸素を含む雰囲気が、密閉チャンバー内に進入して、基板に接する雰囲気の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。これにより、基板に既に供給されている処理液や、基板に供給される処理液の酸素濃度の上昇を抑制または防止できる。
【0019】
処理液ノズルは、処理液吐出口から基板の主面内の狙い位置に向けて処理液を吐出する。処理液ノズルから吐出された処理液は、狙い位置に着液した後、その勢いで基板の主面に沿って広がる。基板の主面の中心が、着液した勢いによって処理液が広がる範囲内に含まれていれば、狙い位置は、基板の主面中央部のいずれの位置であってもよい。たとえば、狙い位置は、基板の主面の中心であってもよいし、中心から離れた基板の主面中央部内の位置であってもよい。すなわち、請求項5に記載の発明のように、前記処理液ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板の主面の中心から離れた狙い位置(P1)に向けて処理液を吐出してもよい。この場合、基板の主面の中心に供給される処理液の勢いがさらに弱まるので、基板の主面の中心でのエッチング量をさらに減少させることができる。これにより、基板の主面全域でエッチング量を減少させることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記ガス供給手段は、前記対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給することにより、前記対向部材と前記基板との間の雰囲気の酸素濃度を1%以下、好ましくは100ppm以下まで低下させ、前記処理液ノズルは、前記基板に対して60°以下、好ましくは30°以下の角度で傾いた方向に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、基板に接する雰囲気の酸素濃度が1%以下に維持された状態で、処理液ノズルから吐出された処理液が、60°以下の角度で基板の主面の中央部に斜めに入射する。後述するように、この条件で基板が処理されることにより、基板の主面全域でエッチング量を確実に減少させることができる。
請求項7に記載の発明は、チャンバー内で基板の主面に対向する対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給する雰囲気置換工程と、前記雰囲気置換工程と並行して、前記基板の主面中央部を通る回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、前記雰囲気置換工程および基板回転工程と並行して、酸素が脱気された処理液を前記基板に対して傾いた方向に吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液供給工程とを含む、基板処理方法である。この構成によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明のように、前記基板は、表面に金属パターンが露出した基板であってもよい。金属パターンは、金属配線であってもよいし、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜の一例としては、銅膜の表面に拡散防止のためのバリアメタル膜を形成した積層膜を挙げることができる。処理対象の基板が、表面に金属パターンが露出した基板である場合、酸素濃度が低減された処理液が基板の表面に供給されるので、金属パターンの酸化を抑制または防止できる。これにより、金属パターンのエッチングを抑制または防止できる。
【0023】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の一部を拡大した模式的な断面図である。
【図3】処理液供給装置の概略構成を示す模式図である。
【図4】基板処理装置によって処理される基板の表面状態の一例を説明するための断面図である。
【図5A】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の処理例を説明するための工程図である。
【図5B】前記処理例を説明するための工程図である。
【図5C】前記処理例を説明するための工程図である。
【図5D】前記処理例を説明するための工程図である。
【図5E】前記処理例を説明するための工程図である。
【図6】基板の中心からの距離と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
【図7】基板の中心からの距離と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
【図8】基板の中心からの距離と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図10A】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の処理例を説明するための工程図である。
【図10B】前記処理例を説明するための工程図である。
【図10C】前記処理例を説明するための工程図である。
【図10D】前記処理例を説明するための工程図である。
【図10E】前記処理例を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式図である。図2は、図1の一部を拡大した模式的な断面図である。図3は、処理液供給装置41の概略構成を示す模式図である。後述するように、遮断板4は、処理位置と退避位置との間で上下に移動可能である。図1および図2では、遮断板4が処理位置に配置されている状態が示されている。以下では、遮断板4が処理位置に配置されている状態について説明する。
【0026】
基板処理装置1は、薬液やリンス液などの処理液によって半導体ウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。図1に示すように、基板処理装置1は、内部空間S1を有するチャンバー2と、チャンバー2内で基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持手段、基板回転手段)と、チャンバー2内でスピンチャック3の上方に配置された遮断板4(対向部材)と、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスを供給するガス供給機構5(ガス供給手段)と、基板Wに処理液を供給する処理液供給機構6とを備えている。さらに、基板処理装置1は、スピンチャック3などの基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置7を備えている。
【0027】
図1に示すように、スピンチャック3は、たとえば、基板Wを挟持して保持する挟持式のチャックである。スピンチャック3は、水平に配置された円盤状のスピンベース8と、スピンベース8上に配置された複数個の挟持部材9と、スピンベース8の下方で上下方向に延びる筒状のカバー10と、カバー10によって覆われたスピンモータ11とを含む。スピンチャック3は、各挟持部材9を基板Wの周端面に接触させることにより、基板Wを周囲から挟むことができる。さらに、スピンチャック3は、基板Wを保持した状態でスピンモータ11の駆動力をスピンベース8に入力することにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させることができる。スピンチャック3は、挟持式のチャックに限らず、基板Wの下面(裏面)を吸着して保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0028】
図1に示すように、遮断板4は、円板状である。遮断板4の直径は、基板Wの直径よりも大きい。遮断板4は、遮断板4の中心軸線がスピンチャック3の回転軸線A1上に位置するように水平に配置されている。遮断板4の下面は、スピンチャック3に保持されている基板Wの上面に対向している。支軸12は、遮断板4を水平な姿勢で支持している。遮断板昇降機構13および遮断板回転機構14は、支軸12を介して遮断板4に連結されている。遮断板回転機構14は、遮断板4および支軸12を回転軸線A1まわりに回転させる。遮断板昇降機構13は、遮断板4および支軸12を鉛直方向に昇降させる。遮断板昇降機構13は、遮断板4の下面がスピンチャック3に保持されている基板Wの上面に近接する処理位置(図1に示す位置)と、処理位置の上方に設けられた退避位置(図5Aに示す位置)との間で遮断板4を昇降させる。
【0029】
図1に示すように、遮断板4は、水平に配置された円板状の対向部15と、対向部15の外周縁から下方に延びる筒状部16と、対向部15の上面中央部から上方に突出する円板状の被支持部17とを含む。筒状部16は、対向部15の外周縁から外方に向かって斜め下に延びていてもよいし、対向部15の外周縁から鉛直下方に延びていてもよい。対向部15の直径は、基板Wの直径よりも大きい。したがって、筒状部16の内径は、基板Wの直径よりも大きい。筒状部16の下端の内径は、スピンベース8の外径よりも大きい。対向部15の下面18(対向面)は、基板Wの上面に対向している。筒状部16の内周面は、全周に亘って対向部15の下面18に連なっており、対向部15の下面18の外周縁から下方に延びている。基板Wの周端面は、全周に亘って筒状部16に取り囲まれている。
【0030】
また、図2に示すように、遮断板4は、遮断板4の中央部を上下方向に貫通する貫通孔を区画する内周面21、22を含む。遮断板4の内周面は、上下方向に延びる円筒面21と、円筒面21の下端から下向きに広がる円錐状の傾斜面22(案内面)とを含む。傾斜面22は、基板Wの上面中央部に対向している。対向部15の下面18は、傾斜面22の下端の周囲に配置されている。傾斜面22の下端は、全周に亘って対向部15の下面18の内周縁に連なっている。支軸12は、遮断板4の貫通孔に嵌合された内軸23と、内軸23を取り囲む外軸24とを含む。内軸23および外軸24は、いずれも筒状であり、上下方向に延びている。外軸24は、被支持部17の上方に配置された環状の外フランジ25を含む。外フランジ25は、被支持部17に連結されている。また、内軸23は、被支持部17の上方に配置された環状の内フランジ26と、遮断板4の貫通孔に嵌合された下端部27とを含む。内フランジ26は、被支持部17に連結されている。内軸23の下端部27は、内フランジ26の内周部から下方に延びている。内軸23の下端部27は、円筒面21内に配置されている。下端部27の外周面と遮断板4の内周面(円筒面21)との間の隙間は、下端部27の外周部に保持されているOリング28によってシールされている。
【0031】
図2に示すように、処理液供給機構6は、遮断板4の中心軸線(回転軸線A1)に沿って延びる筒状の処理液ノズル29を含む。また、ガス供給機構5は、遮断板4の中心軸線に沿って延びる筒状のガスノズル30を含む。処理液ノズル29およびガスノズル30は、遮断板4の中心軸線に沿って延びる筒状のケース31内に収容されている。処理液ノズル29およびガスノズル30は、ケース31によって保持されている。ケース31は、遮断板4および支軸12と共に昇降する。したがって、処理液ノズル29およびガスノズル30は、遮断板4および支軸12と共に昇降する。また、ケース31は、遮断板回転機構14とは連結されていない。したがって、ケース31、処理液ノズル29、およびガスノズル30は、遮断板4および支軸12が回転軸線A1まわりに回転する際、静止している。ケース31は、内軸23内に挿入されており、ケース31の下端は、内軸23から下方に突出している。ケース31の下端は、遮断板4の貫通孔に達している。同様に、処理液ノズル29およびガスノズル30の下端は、内軸23から下方に突出しており、遮断板4の貫通孔に達している。処理液ノズル29、ガスノズル30、およびケース31は、遮断板4の中心軸線に沿って延びる中心軸ノズル32を構成している。
【0032】
図2に示すように、ケース31は、内軸23の内周面に対して非接触状態で内軸23内に挿入されている。したがって、ケース31の外周面と内軸23の内周面との間には、上下方向に延びる筒状の空間(ガス供給路33)が形成されている。図1に示すように、ガス供給機構5は、ガス供給路33に相当するこの筒状の空間に接続された第1ガス配管34と、第1ガス配管34に介装された第1ガスバルブ35とを含む。第1ガスバルブ35が開かれると、第1ガス配管34を流れる不活性ガスが、ガス供給路33に供給され、内軸23の下端で開口する環状ガス吐出口36(図2参照)から下方に吐出される。ガス供給路33を区画するケース31の外周面および内軸23の内周面が鉛直方向に延びているので、ガス供給路33に供給された不活性ガスは、環状ガス吐出口36から鉛直下方に吐出される。これにより、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスが供給される。
【0033】
また、図1に示すように、ガス供給機構5は、ガスノズル30の上端部に接続された第2ガス配管37と、第2ガス配管37に介装された第2ガスバルブ38とをさらに含む。第2ガスバルブ38が開かれると、第2ガス配管37を流れる不活性ガスが、ガスノズル30に供給され、ガスノズル30の下端で開口するガス吐出口39(図2参照)から吐出される。図2に示すように、ガスノズル30の下端部は、鉛直方向に延びており、ガス吐出口39は、遮断板4の下面(対向部15の下面18)よりも上方に配置されている。ガス吐出口39は、基板Wの上面中央部の上方に配置されている。ガスノズル30の下端部が鉛直方向に延びているので、ガスノズル30は、ガス吐出口39から基板Wの上面中央部に向けて鉛直下方に不活性ガスを吐出する。したがって、ガスノズル30は、基板Wの上面に対して垂直な方向に不活性ガスを吐出する。これにより、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスが供給される。
【0034】
遮断板4と基板Wとの間に供給される不活性ガスは、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、およびアルゴンガスのいずれかであってもよいし、これらの不活性ガスのうちの少なくとも2つを含む混合ガスであってもよい。具体的には、窒素ガス、窒素ガスと水素ガスの混合ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、および窒素ガスとヘリウムガスの混合ガスのうちのいずれかが、不活性ガスとして用いられてもよい。
【0035】
また、図1に示すように、処理液供給機構6は、処理液ノズル29の上端部に接続された処理液配管40と、処理液配管40を介して処理液ノズル29に接続された処理液供給装置41とを含む。後述するように、処理液供給装置41は、処理液ノズル29に薬液およびリンス液を選択的に供給する。処理液ノズル29に供給された処理液(薬液またはリンス液)は、処理液ノズル29の下端で開口する処理液吐出口42(図2参照)から吐出される。図2に示すように、処理液ノズル29の下端部は、ケース31の下端部に形成された切欠き43から斜め下に突出している。処理液ノズル29の下端部は、鉛直方向に対して傾いた方向に延びており、処理液吐出口42は、遮断板4の下面(対向部15の下面18)よりも上方に配置されている。処理液吐出口42は、基板Wの上面中央部の上方に配置されている。処理液ノズル29は、処理液吐出口42から基板Wの上面中央部内の狙い位置P1に向けて処理液を吐出する。狙い位置P1は、処理液吐出口42の真下から離れた位置である。したがって、処理液ノズル29は、基板Wに対して傾いた処理液吐出方向D1に処理液を吐出する。そのため、処理液ノズル29から吐出された処理液は、基板Wの上面に斜めに入射する。
【0036】
処理液ノズル29は、たとえば、合成樹脂などの耐薬性を有する耐薬性材料によって形成されている。処理液ノズル29は、変形可能である。基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の傾き角度や、基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の位置は、処理液ノズル29の形状や位置によって調整される。具体的には、基板Wに対する処理液吐出方向D1の傾き角度は、基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の傾き角度によって調整される。さらに、狙い位置P1は、基板Wに対する処理液ノズル29の下端部の位置によって調整される。したがって、処理液ノズル29は、中心を含む基板Wの上面中央部内の任意の位置に任意の角度で処理液を入射させることができる。図1および図2では、基板Wの中心から離れた位置に60°の入射角θ(基板Wの上面と処理液吐出方向D1とがなす角。図2参照)で処理液が入射するように処理液ノズル29が設定されている。
【0037】
図3に示すように、処理液供給装置41は、不活性ガス溶存水と薬液原液とを調合する調合ユニット44と、調合ユニット44に不活性ガス溶存水を供給するガス溶存水生成ユニット45(脱気手段)と、調合ユニット44に薬液原液を供給する薬液供給ユニット46とを含む。ガス溶存水生成ユニット45は、ガス溶存水配管47によって調合ユニット44に接続されており、薬液供給ユニット46は、薬液配管48によって調合ユニット44に接続されている。不活性ガス溶存水は、ガス溶存水配管47を介してガス溶存水生成ユニット45から調合ユニット44に供給される。また、薬液原液は、薬液配管48を介して薬液供給ユニット46から調合ユニット44に供給される。
【0038】
ガス溶存水生成ユニット45は、純水供給源から供給された純水(脱イオン水)から酸素を脱気すると共に、不活性ガスの一例である窒素ガスを純水に添加することにより、不活性ガス溶存水を生成する。具体的には、ガス溶存水生成ユニット45は、純水の酸素濃度が、たとえば20ppb以下になるまで酸素を脱気する。さらに、ガス溶存水生成ユニット45は、高純度の窒素ガス(濃度が、たとえば99.999%〜99.999999999%の窒素ガス)を純水中に添加することにより、窒素濃度が、たとえば7ppm〜24ppmの不活性ガス溶存水を生成する。ガス溶存水生成ユニット45は、たとえば、気体透過性および液体不透過性を有する中空糸分離膜によって、純水からの酸素の脱気および純水への不活性ガスの添加を行う。ガス溶存水生成ユニット45の具体的な構成は、たとえば特開2004−22572号公報に示されている。
【0039】
また、図3に示すように、薬液供給ユニット46は、薬液原液を貯留する薬液タンク49と、薬液配管48に介装されたポンプ50、フィルタ51、および脱気ユニット52(脱気手段)と、薬液タンク49に薬液を補充する薬液補充配管53と、薬液タンク49に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク49の内部を加圧する加圧配管55とを含む。薬液タンク49は、内部が密閉された密閉容器である。薬液タンク49内には、薬液原液が貯留されている。「薬液原液」は、不活性ガス溶存水との混合前の薬液を意味する。薬液原液の例としては、フッ酸(HF)、塩酸(HCL)、フッ酸とIPA(イソプロピルアルコール)の混合液、フッ化アンモニウム(NH4F)を例示できる。薬液原液としてフッ酸を用いた場合には、フッ酸と不活性ガス溶存水とが調合ユニット44によって所定の割合で混合(調合)され、希フッ酸(DHF)が生成される。
【0040】
希フッ酸は、ポリマー除去液の一例である。ポリマー除去液としては、有機アルカリ液を含む液体、有機酸を含む液体、無機酸を含む液体、フッ化アンモン系物質を含む液体のうちの少なくとも1つが使用できる。
そのうち、有機アルカリ液を含む液体としては、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヒドロキシルアミン、コリンのうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
【0041】
また、有機酸を含む液体としては、クエン酸、蓚酸、イミノジ酸、および琥珀酸のうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
また、無機酸を含む液体としては、フッ酸および燐酸のうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
その他、ポリマー除去液としては、1−メチル−2ピロリドン、テトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシド、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、2−(2アミノエトキシ)エタノール、カテコール、N−メチルピロリドン、アロマティックジオール、パークレン(テトラクロロエチレン)、フェノールを含む液体などのうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
【0042】
より具体的には、ポリマー除去液としては、1−メチル−2ピロリドンとテトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシドとイソプロパノールアミンとの混合液、ジメチルスルホキシドとモノエタノールアミンとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとヒドロキシアミンとカテコールとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとN−メチルピロリドンとの混合液、モノエタノールアミンと水とアロマティックジオールとの混合液、パークレン(テトラクロロエチレン)とフェノールとの混合液などのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0043】
これら以外のポリマー除去液としては、トリエタノールアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのアミン類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのうちの少なくとも1つを含む液体が挙げられる。
図3に示すように、薬液配管48の一端部は、薬液タンク49に接続されている。ポンプ50、フィルタ51、および脱気ユニット52は、薬液タンク49側からこの順番で薬液配管48に介装されている。薬液タンク49内の薬液原液は、薬液配管48を介して調合ユニット44に送られる。フィルタ51は、薬液配管48を流れる薬液原液をろ過する。これにより、薬液原液に含まれる異物が除去される。また、脱気ユニット52は、薬液配管48を流れる薬液原液から酸素を脱気する。これにより、調合ユニット44に供給される薬液原液の酸素濃度が低減される。脱気ユニット52は、不活性ガスの添加を行う構成を除き、ガス溶存水生成ユニット45と同様の構成を備えている。
【0044】
図3に示すように、薬液補充配管53は、薬液タンク49に接続されている。薬液補充バルブ54は、薬液補充配管53に介装されている。薬液補充バルブ54が開かれると、薬液原液供給源からの未使用の薬液原液が、薬液補充配管53を介して薬液タンク49に供給される。これにより、薬液原液が薬液タンク49に補充される。薬液タンク49内の液量は、図示しない液量センサによって検出される。制御装置7は、液量センサの検出値に基づいて薬液補充バルブ54を開閉する。これにより、薬液タンク49内の液量が所定量以上に維持される。
【0045】
また、図3に示すように、加圧配管55は、薬液タンク49に接続されている。加圧バルブ56は、加圧配管55に介装されている。加圧バルブ56は、常時開のバルブである。したがって、ガス供給手段源からの不活性ガスは、加圧配管55を介して、常時、薬液タンク49内に供給されている。不活性ガスが薬液タンク49内に供給されることにより、薬液タンク49内の空気が排出される。これにより、薬液タンク49内の空気に含まれる酸素が、薬液タンク49内の薬液原液に溶け込んで、薬液原液中の溶存酸素量が増加することを抑制または防止できる。さらに、不活性ガスが薬液タンク49内に供給されることにより、薬液タンク49内が加圧される。これにより、薬液タンク49内の薬液原液が薬液配管48に圧送される。すなわち、薬液タンク49内の薬液原液は、ポンプ50の吸引力と不活性ガスによる圧力とによって薬液配管48に送られる。これにより、薬液タンク49内の薬液原液が調合ユニット44に送られる。
【0046】
図3に示すように、調合ユニット44は、不活性ガス溶存水と薬液原液とを混合する混合配管57と、ガス溶存水配管47に介装されたガス溶存水バルブ58およびガス溶存水流量調整バルブ59と、薬液配管48に介装された薬液バルブ60および薬液流量調整バルブ61とを備えている。処理液配管40、ガス溶存水配管47、および薬液配管48は、混合配管57に接続されている。ガス溶存水バルブ58が開かれると、ガス溶存水流量調整バルブ59の開度に対応する所定流量の不活性ガス溶存水が混合配管57に供給される。また、薬液バルブ60が開かれると、薬液流量調整バルブ61の開度に対応する所定流量の薬液原液が混合配管57に供給される。混合配管57に供給された処理液は、処理液配管40を介して処理液ノズル29に供給される。
【0047】
ガス溶存水バルブ58が開かれている状態で、薬液バルブ60が開かれると、混合配管57内を流通している不活性ガス溶存水に薬液原液が注入(インジェクション)され、薬液原液と不活性ガス溶存水とが混合される。そのため、制御装置7は、混合配管57に対する薬液原液の供給流量と不活性ガス溶存水の供給流量とを調整することにより、所定割合に調合された薬液を調合ユニット44によって生成させることができる。また、薬液バルブ60が閉じられ、ガス溶存水バルブ58が開かれると、不活性ガス溶存水だけが、混合配管57に供給される。そのため、不活性ガス溶存水だけがリンス液として処理液配管40に供給される。
【0048】
図4は、基板処理装置1によって処理される基板Wの表面状態の一例を説明するための断面図である。
以下に説明するように、基板処理装置1に搬入される基板Wは、たとえば、表面にポリマー残渣(ドライエッチングやアッシング後の残渣)が付着しており、金属パターンが露出した半導体ウエハである。金属パターンは、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜は、たとえば、銅膜と、この銅膜上に積層されたCoWP(cobalt-tungsten- phosphorus)膜とを含む積層膜であってもよい。CoWP膜は、拡散防止のためのキャップ膜である。
【0049】
図4に示すように、基板Wの表面上には、層間絶縁膜62が形成されている。層間絶縁膜62には、下配線溝63がその上面から掘り下げて形成されている。下配線溝63には、銅配線64が埋設されている。層間絶縁膜62上には、エッチストッパ膜65を介して、被加工膜の一例としての低誘電率絶縁膜66が積層されている。低誘電率絶縁膜66には、上配線溝67がその上面から掘り下げて形成されている。さらに、低誘電率絶縁膜66には、上配線溝67の底面から銅配線64の表面に達するヴィアホール68が形成されている。上配線溝67およびヴィアホール68には、銅が一括して埋め込まれる。
【0050】
上配線溝67およびヴィアホール68は、低誘電率絶縁膜66上にハードマスクが形成された後、ドライエッチング処理が行われ、低誘電率絶縁膜66におけるハードマスクから露出した部分が除去されることにより形成される。上配線溝67およびヴィアホール68が形成された後、アッシング処理が行われ、低誘電率絶縁膜66上から不要となったハードマスクが除去される。ドライエッチング時およびアッシング時には、低誘電率絶縁膜66やハードマスクの成分を含む反応生成物(ポリマー残渣)が、低誘電率絶縁膜66の表面(上配線溝67およびヴィアホール68の内面を含む。)などに付着する。そのため、アッシング後には、基板Wの表面にポリマー除去液を供給して、低誘電率絶縁膜66の表面からポリマー残渣を除去するポリマー除去工程が行われる。以下では、このような基板Wの表面からポリマー残渣を除去する処理例について説明する。
【0051】
図5A〜図5Eは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1による基板Wの処理例を説明するための工程図である。以下では、図1を参照する。図5A〜図5Eについては適宜参照する。
基板Wが処理されるときには、制御装置7が、遮断板昇降機構13を制御することにより、遮断板4を退避位置に移動させる。図5Aに示すように、制御装置7は、この状態で、基板Wを搬送する搬送ロボットR1のハンドH1をチャンバー2内に進入させることにより、表面が上に向けられた基板Wをチャンバー2内に搬入させる。そして、制御装置7は、搬送ロボットR1によって、表面が上に向けられた基板Wをスピンチャック3上に載置させる。その後、制御装置7は、チャンバー2内から搬送ロボットR1を退避させる。制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、複数の挟持部材9を基板Wの周端面に接触させることにより、スピンチャック3によって基板Wを水平に保持させる。さらに、制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、遮断板昇降機構13を制御することにより、遮断板4を処理位置に移動させる。これにより、遮断板4の下面(対向部15の下面18)が基板Wの上面に近接すると共に、基板Wの周囲が遮断板4の下面(筒状部16の内周面)によって取り囲まれる。
【0052】
次に、遮断板4と基板Wとの間に不活性ガスを供給することにより、基板W上の雰囲気を置換する雰囲気置換工程が行われる。具体的には、図5Bに示すように、制御装置7は、第1ガスバルブ35を開いて、ガス供給路33から下方に不活性ガス(たとえば、窒素ガス)を吐出させる。さらに、図5Bに示すように、制御装置7は、第2ガスバルブ38を開いて、ガスノズル30から下方に不活性ガスを吐出させる。ガス供給路33およびガスノズル30から吐出された不活性ガスは、傾斜面22によって基板Wの上面中央部に案内された後、遮断板4の下面(対向部15の下面18)と基板Wの上面との間を外方に流れる。そのため、遮断板4と基板Wとの間の雰囲気は、不活性ガスによって外方に押し流され、遮断板4と基板Wとの間から排出される。これにより、酸素を含む雰囲気が遮断板4と基板Wとの間から排出され、遮断板4と基板Wとの間が不活性ガスで満たされる。そのため、基板W上の酸素濃度が低減される。ガス供給路33およびガスノズル30からの不活性ガスの吐出は、後述する乾燥工程が終了するまで継続される。不活性ガスの吐出は、遮断板4および基板Wの少なくとも一方が回転している状態で行われてもよいし、遮断板4および基板Wが回転していない状態で行われてもよい。
【0053】
次に、薬液およびポリマー除去液の一例である希フッ酸を基板Wに供給する薬液工程(ポリマー除去工程)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、遮断板4が基板Wに近接している状態で、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる。このとき、制御装置7は、遮断板回転機構14によって遮断板4を回転軸線A1まわりに回転させてもよいし、回転させなくてもよい。図5Cに示すように、制御装置7は、この状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル29に希フッ酸を供給させて、処理液ノズル29から斜め下に希フッ酸を吐出させる。処理液ノズル29から吐出された希フッ酸は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された希フッ酸は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない希フッ酸が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上のポリマー残渣が除去される。制御装置7は、処理液ノズル29からの希フッ酸の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル29からの希フッ酸の吐出を停止させる。
【0054】
次に、リンス液の一例である純水(不活性ガス溶存水)を基板Wに供給するリンス工程が行われる。具体的には、図5Dに示すように、制御装置7は、遮断板4が基板Wに近接しており、基板Wが回転している状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル29に純水を供給させて、処理液ノズル29から斜め下に純水を吐出させる。このとき、制御装置7は、遮断板回転機構14によって遮断板4を回転軸線A1まわりに回転させてもよいし、回転させなくてもよい。処理液ノズル29から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない純水が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上の希フッ酸が洗い流される。制御装置7は、処理液ノズル29からの純水の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル29からの純水の吐出を停止させる。
【0055】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、遮断板4が基板Wに近接している状態で、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。このとき、制御装置7は、遮断板回転機構14によって遮断板4を回転軸線A1まわりに回転させてもよいし、回転させなくてもよい。図5Eに示すように、基板Wに付着している純水は、基板Wの高速回転による遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。制御装置7は、基板Wの高速回転が所定時間にわたって行われた後、スピンチャック3を制御することにより、スピンチャック3による基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置7は、第1ガスバルブ35および第2ガスバルブ38を閉じて、不活性ガスの吐出を停止させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットR1によってチャンバー2内から搬出される。
【0056】
図6〜図8は、基板Wの中心からの距離(半径)と銅膜のエッチング量との関係を示すグラフである。図6は、基板W上の酸素濃度を変化させたときの測定値を示しており、図7は、基板Wに対する薬液の入射角θ(図2参照)を変化させたときの測定値を示している。また、図8は、基板Wの上面の中心から狙い位置P1(図2参照)までの距離(オフセット量)を変化させたときの測定値を示している。
【0057】
図6において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、前述の処理例で説明した一連の処理(雰囲気置換工程から乾燥工程)が行われた基板Wの測定値である。ただし、基板Wに対する薬液(希フッ酸)の入射角θ(図2参照)は、90°であり、狙い位置P1は、基板Wの上面の中心である。図6に示す3つの測定値の処理条件は、基板W上の酸素濃度を除き、同一である。すなわち、図6において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、それぞれ、基板W上の酸素濃度が20%、1%、および100ppmのときの測定値である。図6に示す3つの測定値は、いずれも比較例である。
【0058】
同様に、図7において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、前述の処理例で説明した一連の処理が行われた基板Wの測定値である。図7に示す3つの測定値は、基板W上の酸素濃度が100ppmのときの測定値である。図7に示す3つの測定値の処理条件は、基板Wに対する薬液の入射角θを除き、同一である。すなわち、図7において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、それぞれ、基板Wに対する薬液の入射角θが90°、60°、および30°のときの測定値である。狙い位置P1は、いずれの測定においても基板Wの上面の中心である。図7において太線で示す測定値は、比較例であり、図7において破線および細線で示す測定値は、実施例である。
【0059】
同様に、図8において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、前述の処理例で説明した一連の処理が行われた基板Wの測定値である。図8に示す3つの測定値は、基板W上の酸素濃度が100ppmであり、基板Wに対する薬液の入射角θが60°のときの測定値である。図8に示す3つの測定値の処理条件は、オフセット量を除き、同一である。すなわち、図8において太線、破線、および細線で示す3つの測定値は、それぞれ、オフセット量が0mm、10mm、20mmのときの測定値である。図8に示す3つの測定値は、いずれも実施例である。
【0060】
図6において白色の矢印で示すように、基板Wの上面周縁部(中心からの距離の絶対値が100以上の領域)でのエッチング量は、酸素濃度の低下に伴って大幅に減少している。これに対して、基板Wの上面中央部(中心からの距離の絶対値が50以下の領域)でのエッチング量は、酸素濃度の低下に伴って減少しているものの、その減少幅は、周縁部よりも小さい。そのため、エッチング量の最大値と最小値との差、すなわち、エッチングの均一性は、酸素濃度が低下しても、大幅に向上していない。
【0061】
一方、図7に示すように、基板Wの上面中央部でのエッチング量は、基板Wに対する薬液の入射角θの減少に伴って減少している。また、基板Wの上面周縁部でのエッチング量は、基板Wに対する薬液の入射角θが変化しても、殆ど変化していない。そのため、エッチングの均一性は、基板Wに対する薬液の入射角θの減少に伴って向上している。特に、基板Wに対する薬液の入射角θが30°のときには、基板Wの上面中央部でのエッチング量が、基板Wの上面周縁部でのエッチング量とほぼ等しくなっており、エッチングの均一性が大幅に向上している。
【0062】
また、図8に示すように、オフセット量が10mmの場合、オフセット量が0mmの場合よりも、エッチング量の最大値が、僅かに減少しており(中心からの距離の絶対値が10以下の領域を参照)、エッチング量の最小値が、僅かに増加している(中心からの距離が約−80の領域を参照)。そのため、オフセット量が0mmの場合よりもエッチングの均一性が向上している。また、オフセット量が20mmの場合、オフセット量が0mmの場合よりも、エッチング量の最大値が大幅に減少している(中心からの距離の絶対値が10以下の領域を参照)。その一方で、中央部以外の基板Wの上面内の領域でのエッチング量は、オフセット量が0mmの場合と殆ど変らない。そのため、エッチングの均一性は、オフセット量の増加に伴って向上している。特に、オフセット量が20mmの場合には、基板Wの上面中央部でのエッチング量が、基板Wの上面周縁部でのエッチング量とほぼ等しくなっており、エッチングの均一性が大幅に向上している。
【0063】
このように、基板Wに接する雰囲気の酸素濃度を低下させることにより、基板Wの上面周縁部でのエッチング量を減少させることができる。さらに、基板Wに対する薬液の入射角θを減少させることにより、基板Wの上面中央部でのエッチング量を減少させることができる。すなわち、基板Wに対する薬液の入射角θが大きい場合(90°付近のとき)には、薬液の物理的なエネルギーが薬液の狙い位置P1に集中するので、薬液が狙い位置P1で強制的に撹拌される。その一方で、基板Wに対する薬液の入射角θを減少させると、基板Wの上面中央部に供給される薬液の勢いが弱まるので、基板W上での薬液の撹拌が弱まる。
【0064】
同様に、狙い位置P1を基板Wの上面の中心からオフセットさせると、基板Wの上面の中心に供給される薬液の勢いが弱まるので、中心での薬液の撹拌が弱まる。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチング量が減少し、基板Wの上面中央部でのエッチング量と基板Wの上面周縁部でのエッチング量との差が減少する。したがって、基板Wに接する雰囲気の酸素濃度を低下させると共に、基板Wに対して斜めに薬液を入射させることにより、エッチングの均一性を向上させることができる。また、酸素濃度の低下と薬液の斜め供給とに加えて、狙い位置P1を基板Wの上面の中心からオフセットさせることにより、エッチングの均一性をさらに向上させることができる。
【0065】
以上のように第1実施形態では、酸素が脱気された処理液(薬液およびリンス液)が基板Wの上面に供給されるので、処理液中の溶存酸素によって基板Wが酸化されることを抑制または防止できる。さらに、遮断板4と基板Wとの間が不活性ガスによって満たされている状態で、処理液が基板Wの上面に供給されるので、雰囲気中の酸素が処理液に溶け込んで、処理液の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。したがって、基板Wの上面が薬液によってエッチングされることを抑制または防止できる。さらに、遮断板4を基板Wの上面に対向させることにより、雰囲気が置換される空間の体積を減少させることができる。しかも、処理液ノズル29から吐出された処理液が、基板Wの上面中央部に斜めに供給されるので、処理液が基板Wの上面中央部に垂直に供給される場合よりも、基板Wの上面中央部に供給される処理液の勢いが弱まる。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチング量を減少させることができる。これにより、基板Wの上面全域でエッチング量を減少させることができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、遮断板4に代えて、密閉チャンバー204が設けられていることである。
以下の図9〜図10Eにおいて、前述の図1〜図8に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201の概略構成を示す模式図である。後述するように、蓋部材274は、閉位置と開位置との間で移動可能であり、スピンチャック3は、処理位置と受渡位置との間で移動可能である。図9では、蓋部材274が閉位置に配置されており、スピンチャック3が処理位置に配置されている状態が示されている。以下では、蓋部材274が閉位置に配置されており、スピンチャック3が処理位置に配置されている状態について説明する。
【0068】
基板処理装置201は、チャンバー2と、スピンチャック3と、制御装置7とを含む。さらに、基板処理装置201は、スピンチャック3に保持されている基板Wを収容する密閉チャンバー204(対向部材)と、密閉チャンバー204とスピンチャック3との間をシールするシール機構270と、スピンチャック3を昇降させるチャック昇降機構271と、密閉チャンバー204の内部に不活性ガスを供給するガス供給機構205(ガス供給手段)と、スピンチャック3に保持されている基板Wに処理液を供給する処理液供給機構206とを含む。
【0069】
密閉チャンバー204は、密閉空間S201(密閉チャンバー204の内部空間)を形成している。密閉チャンバー204は、基板Wを収容する筒状の本体272と、本体272の上部に設けられた開口部273を塞ぐ蓋部材274とを含む。本体272は、スピンチャック3の周囲を取り囲む筒状の周壁275と、周壁275の下端部から内方に延びる環状の底壁276とを含む。底壁276は、スピンチャック3の一部(カバー10)を取り囲んでいる。スピンベース8は、底壁276と開口部273との間の高さに配置されている。本体272の開口部273は、周壁275の上端部に設けられている。蓋部材274は、周壁275の上方に配置されている。蓋部材274は、基板Wの上面に対向している。蓋部材274の下面と周壁275の上面との間の隙間は、図示しないシール機構によって密閉されている。蓋部材274は、蓋昇降機構277によって支持されている。蓋昇降機構277は、開口部273が閉じられる閉位置と、開口部273が開かれる開位置との間で蓋部材274を昇降させる。
【0070】
シール機構270は、底壁276の内周部とカバー10との間に配置されている。シール構造は、たとえば、ウォータシールである。シール機構270は、純水を貯留する環状の貯水部材278と、貯水部材278に貯留されている純水に浸水している筒状の浸水部材279とを含む。貯水部材278は、底壁276の内周部に連結されており、浸水部材279は、スピンチャック3に連結されている。貯水部材278は、上向きに開いた環状の貯水溝280を形成している。浸水部材279は、上下方向に延びる円筒部279aと、円筒部279aの上端部から内方に延びる環状部279bとを含む。円筒部279aは、貯水部材278の上方に配置されており、円筒部279aの一部は、貯水部材278に貯留されている純水に浸水している。これにより、底壁276の内周部とカバー10との間が水封されている。
【0071】
チャック昇降機構271は、スピンチャック3に連結されている。チャック昇降機構271は、スピンベース8が本体272の内部に位置する処理位置と、スピンベース8が本体272の上方に位置する受渡位置(図10A参照)との間で昇降させる。処理位置は、基板Wの処理が行われる位置であり、受渡位置は、搬送ロボットR1(図10A参照)とスピンチャック3との間での基板Wの受け渡しが行われる位置である。受渡位置は、処理位置の上方の位置である。制御装置7は、スピンチャック3を受渡位置に移動させる前に、蓋昇降機構277によって蓋部材274を開位置に移動させる。そして、制御装置7は、チャック昇降機構271を制御することにより、開口部273が開かれている状態でスピンチャック3を上昇させる。これにより、スピンベース8が開口部273を通過し、本体272の上方に移動する。
【0072】
シール機構270の浸水部材279は、スピンチャック3と共に上下方向に移動する。貯水部材278および浸水部材279は、貯水部材278および浸水部材279の間が水封された状態で、上下方向に相対移動可能である。貯水部材278および浸水部材279は、スピンチャック3が処理位置と受渡位置との間の何れの位置に位置している状態でも、浸水部材279が、貯水部材278に貯留されている純水に浸水するように設定されている。したがって、スピンチャック3が処理位置と受渡位置との間の何れの位置に位置している状態でも、本体272の底壁276とスピンチャック3との間が密閉されている状態が維持される。これにより、密閉チャンバー204の密閉性が高められている。
【0073】
ガス供給機構205は、蓋部材274を上下方向に貫通するガス供給路233に接続された第1ガス配管234と、第1ガス配管234に介装された第1ガスバルブ235とを含む。蓋部材274が閉位置に位置している状態で第1ガスバルブ235が開かれると、第1ガス配管234を流れる不活性ガスが、ガス供給路233に供給され、蓋部材274の下面で開口するガス吐出口239から密閉チャンバー204の内部に不活性ガスが供給される。密閉チャンバー204内の空気は、不活性ガスが密閉チャンバー204の内部に供給されることにより、底壁276で開口するガス排出口281から排出される。これにより、酸素を含む雰囲気が密閉チャンバー204の内部から排出され、密閉チャンバー204の内部が不活性ガスで満たされる。そのため、密閉チャンバー204内の酸素濃度が低減される。
【0074】
処理液供給機構206は、スピンチャック3に保持されている基板Wの上面に向けて処理液を吐出する処理液ノズル229と、処理液ノズル229に接続された処理液配管40、処理液配管40を介して処理液ノズル229に接続された処理液供給装置41とを含む。処理液ノズル229は、密閉チャンバー204の内部に配置されている。処理液ノズル229は、スピンチャック3の周囲で周壁275に取り付けられている。処理液ノズル229は、処理液供給装置41から供給された処理液(薬液またはリンス液)を処理液吐出口42から基板Wの上面中央部内の狙い位置P1に向けて吐出する。処理液ノズル229の処理液吐出口42は、スピンチャック3の周囲に配置されている。したがって、処理液ノズル229は、基板Wに対して傾いた処理液吐出方向D1に処理液を吐出する。基板Wに対する処理液の入射角θおよび狙い位置P1は、処理液ノズル229の角度を変更することにより調整可能である。
【0075】
図10A〜図10Eは、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201による基板Wの処理例を説明するための工程図である。以下では、金属パターンが形成された基板Wの表面からポリマー残渣を除去するときの処理例について説明する。以下では、図9を参照する。図10A〜図10Eについては適宜参照する。
基板Wが処理されるときには、制御装置7が、蓋昇降機構277を制御することにより、蓋部材274を開位置に移動させる。さらに、制御装置7は、チャック昇降機構271を制御することにより、スピンチャック3を受渡位置に移動させる。図10Aに示すように、制御装置7は、この状態で、搬送ロボットR1のハンドH1をチャンバー2内に進入させることにより、表面が上に向けられた基板Wをチャンバー2内に搬入させる。そして、制御装置7は、搬送ロボットR1によって、表面が上に向けられた基板Wをスピンチャック3上に載置させる。その後、制御装置7は、チャンバー2内から搬送ロボットR1を退避させる。制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、複数の挟持部材9を基板Wの周端面に接触させることにより、スピンチャック3によって基板Wを水平に保持させる。さらに、制御装置7は、スピンチャック3上に基板Wが載置された後、チャック昇降機構271を制御することにより、スピンチャック3を処理位置に移動させる。その後、制御装置7は、蓋昇降機構277を制御することにより、蓋部材274を閉位置に移動させる。これにより、蓋部材274と本体272とが密着し、密閉チャンバー204の内部が密閉される。
【0076】
次に、密閉チャンバー204の内部に不活性ガスを供給することにより、基板W上の雰囲気を置換する雰囲気置換工程が行われる。具体的には、図10Bに示すように、制御装置7は、第1ガスバルブ235を開いて、密閉チャンバー204の内部が密閉されている状態でガス吐出口239から下方に不活性ガスを吐出させる。これにより、密閉チャンバー204の内部に不活性ガスが供給される。密閉チャンバー204内の空気は、不活性ガスが密閉チャンバー204の内部に供給されることにより、底壁276で開口するガス排出口281から排出される。これにより、酸素を含む雰囲気が密閉チャンバー204の内部から排出され、密閉チャンバー204の内部が不活性ガスで満たされる。そのため、基板W上の酸素濃度が低減される。ガス吐出口239からの不活性ガスの吐出は、後述する乾燥工程が終了するまで継続される。不活性ガスの吐出は、基板Wが回転している状態で行われてもよいし、基板Wが回転していない状態で行われてもよい。
【0077】
次に、薬液およびポリマー除去液の一例である希フッ酸を基板Wに供給する薬液工程が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、密閉チャンバー204の内部が密閉されている状態で、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる。図10Cに示すように、制御装置7は、この状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル229に希フッ酸を供給させて、処理液ノズル229から斜め下に希フッ酸を吐出させる。処理液ノズル229から吐出された希フッ酸は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された希フッ酸は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない希フッ酸が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上のポリマー残渣が除去される。制御装置7は、処理液ノズル229からの希フッ酸の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル229からの希フッ酸の吐出を停止させる。
【0078】
次に、リンス液の一例である純水(不活性ガス溶存水)を基板Wに供給するリンス工程が行われる。具体的には、図10Dに示すように、制御装置7は、密閉チャンバー204の内部が密閉されており、基板Wが回転している状態で、処理液供給装置41から処理液ノズル229に純水を供給させて、処理液ノズル229から斜め下に純水を吐出させる。処理液ノズル229から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に斜めに入射し、基板W上で広がる。そして、基板Wの上面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、酸素の含有量が極めて少ない純水が、基板W上の酸素濃度が極めて低い状態で基板Wの上面全域に供給され、基板W上の希フッ酸が洗い流される。制御装置7は、処理液ノズル229からの純水の吐出が所定時間に亘って行われた後、処理液ノズル229からの純水の吐出を停止させる。
【0079】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック3を制御することにより、密閉チャンバー204の内部が密閉されている状態で、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、図10Eに示すように、基板Wに付着している純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。制御装置7は、基板Wの高速回転が所定時間にわたって行われた後、スピンチャック3を制御することにより、スピンチャック3による基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置7は、第1ガスバルブ235を閉じて、ガス吐出口239からの不活性ガスの吐出を停止させる。続いて、制御装置7は、蓋部材274を開位置に移動させ、スピンチャック3を受渡位置に移動させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットR1によってチャンバー2内から搬出される。
【0080】
以上のように第2実施形態では、第1実施形態と同様に、酸素が脱気された処理液が基板Wの上面中央部に斜めに供給される。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチング量を減少させることができる。さらに、基板Wを収容する密閉チャンバー204内が不活性ガスによって満たされている状態で、基板Wに処理液が供給されるので、雰囲気中の酸素が処理液に溶け込んで、処理液の酸素濃度が上昇することを抑制または防止できる。しかも、密閉チャンバー204がチャンバー2内で空間を区画しているので、チャンバー2の内部空間S1全域に不活性ガスを充填させる場合よりも、雰囲気が置換される空間の体積が小さい。そのため、基板W上の雰囲気を短時間で置換できる共に、不活性ガスの消費量を低減できる。
【0081】
この発明の実施形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1および第2実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1および第2実施形態では、共通のノズル(処理液ノズル29、229)から基板Wに薬液およびリンス液を供給する場合について説明して、薬液およびリンス液が別々のノズルから基板Wにされてもよい。すなわち、基板Wに薬液を供給する薬液ノズルと、基板Wにリンス液を供給するリンス液ノズルとが設けられていてもよい。
【0082】
また、前述の第1および第2実施形態では、基板処理装置1、201が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1、201は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 :基板処理装置
2 :チャンバー
3 :スピンチャック(基板保持手段、基板回転手段)
4 :遮断板(対向部材)
5 :ガス供給機構(ガス供給手段)
15 :対向部
16 :筒状部
18 :下面(対向面)
22 :傾斜面(案内面)
29 :処理液ノズル
36 :環状ガス吐出口
39 :ガス吐出口
42 :処理液吐出口
45 :ガス溶存水生成ユニット(脱気手段)
52 :脱気ユニット(脱気手段)
201 :基板処理装置
204 :密閉チャンバー(対向部材)
205 :ガス供給機構(ガス供給手段)
229 :処理液ノズル
A1 :回転軸線
D1 :処理液吐出方向
P1 :狙い位置
S1 :内部空間
S201 :密閉空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するチャンバーと、
前記チャンバー内で基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に交差する回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転手段と、
前記チャンバー内に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に対向する対向部材と、
前記対向部材と前記基板保持手段に保持されている基板との間に不活性ガスを供給するガス供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板に対して傾いた方向に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液ノズルと、
前記処理液ノズルに供給される処理液から酸素を脱気する脱気手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記対向部材は、前記基板の主面に対向する対向部と、前記基板の周囲を全周に亘って取り囲む筒状部とを含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に対向しており、前記基板の主面中央部に近づくに従って広がる筒状の案内面と、前記案内面の周囲に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に平行に対向する対向面とをさらに含み、
前記ガス供給手段は、前記案内面の内側に不活性ガスを供給するガス吐出口を含み、
前記処理液ノズルは、前記案内面の内側に配置された処理液吐出口を含む、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板全体を収容する密閉空間を形成する密閉チャンバーを含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板の主面の中心から離れた狙い位置に向けて処理液を吐出する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ガス供給手段は、前記対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給することにより、前記対向部材と前記基板との間の雰囲気の酸素濃度を1%以下まで低下させ、
前記処理液ノズルは、前記基板に対して60°以下の角度で傾いた方向に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
チャンバー内で基板の主面に対向する対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給する雰囲気置換工程と、
前記雰囲気置換工程と並行して、前記基板の主面中央部を通る回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、
前記雰囲気置換工程および基板回転工程と並行して、酸素が脱気された処理液を前記基板に対して傾いた方向に吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項8】
前記基板は、表面に金属パターンが露出した基板である、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項1】
内部空間を有するチャンバーと、
前記チャンバー内で基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に交差する回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転手段と、
前記チャンバー内に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に対向する対向部材と、
前記対向部材と前記基板保持手段に保持されている基板との間に不活性ガスを供給するガス供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板に対して傾いた方向に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液ノズルと、
前記処理液ノズルに供給される処理液から酸素を脱気する脱気手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記対向部材は、前記基板の主面に対向する対向部と、前記基板の周囲を全周に亘って取り囲む筒状部とを含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板の主面中央部に対向しており、前記基板の主面中央部に近づくに従って広がる筒状の案内面と、前記案内面の周囲に配置されており、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に平行に対向する対向面とをさらに含み、
前記ガス供給手段は、前記案内面の内側に不活性ガスを供給するガス吐出口を含み、
前記処理液ノズルは、前記案内面の内側に配置された処理液吐出口を含む、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記対向部材は、前記基板保持手段に保持されている基板全体を収容する密閉空間を形成する密閉チャンバーを含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液ノズルは、前記基板保持手段に保持されている基板の主面の中心から離れた狙い位置に向けて処理液を吐出する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ガス供給手段は、前記対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給することにより、前記対向部材と前記基板との間の雰囲気の酸素濃度を1%以下まで低下させ、
前記処理液ノズルは、前記基板に対して60°以下の角度で傾いた方向に処理液を吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
チャンバー内で基板の主面に対向する対向部材と前記基板との間に不活性ガスを供給する雰囲気置換工程と、
前記雰囲気置換工程と並行して、前記基板の主面中央部を通る回転軸線まわりに基板を回転させる基板回転工程と、
前記雰囲気置換工程および基板回転工程と並行して、酸素が脱気された処理液を前記基板に対して傾いた方向に吐出することにより、前記基板の主面中央部に斜めに処理液を供給する処理液供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項8】
前記基板は、表面に金属パターンが露出した基板である、請求項7に記載の基板処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【公開番号】特開2013−77595(P2013−77595A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214933(P2011−214933)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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