説明

増幅素子

【課題】ECMのインピーダンス変換および増幅に、J−FETを入力としバイポーラトランジスタを出力とする増幅素子に、バックゲート構造のJ−FETを用いると、バックゲート−半導体基板間の容量が、増幅素子の入出力間の寄生容量(ミラー容量)となり、増幅素子の入力ロスが増大する問題に対し有効な半導体装置を提供する。
【解決手段】接地されたp型半導体基板11にp型半導体層12を積層し、p型半導体層12にn型チャネル領域22を有するJ−FETと、n型コレクタ領域33bを有するバイポーラトランジスタを設けた増幅素子とする。これにより、増幅素子の入出力間の寄生容量が発生しなくなるため、ミラー容量による入力ロスの増大を防止できる。また、J−FETのチャネル領域は、エミツタ拡散31と同時に形成できるため、IDSSSや、ピンチオフ電圧が安定し、増幅素子としての消費電流のばらつきが低減し、生産性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅素子に係り、特にエレクトレットコンデンサマイクロホンに用いて好適な増幅素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットコンデンサマイクロホン(Electret Condenser Microphone:以下ECM)のインピーダンス変換および増幅を行うために、例えば接合型電界効果トランジスタ(Junction Field Effect Transistor:以下J−FET)や、増幅集積回路素子が用いられている(例えば特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
図9は、従来のECM215とそれに接続する増幅素子210を示す回路図である。ECM215の一端が増幅素子であるJ−FET210のゲートGに接続し、J−FET210の一端が接地され、他端が負荷抵抗RLに接続する。ECM215は出力インピーダンスが高いため、出力された微弱な電流はインピーダンス変換用のJ−FET210のゲートGに蓄積されて入力電圧となり、増幅されて出力インピーダンスの低いドレイン電流が流れる。このドレイン電流の変化と負荷抵抗RLの積が、出力電圧VoutのAC成分として取り出される。ECM215のマイク感度は、出力電圧VoutのAC成分が大きいほど良好となる。
【0004】
また上記のJ−FET210に変わるものとして、C−MOS、Bi−CMOSによる増幅集積回路素子も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
増幅集積回路素子は、回路定数によりゲイン(Gain:利得)を適宜選択でき、一般的にはJ−FETを用いた場合と比較してゲインが高い利点があるが、回路構成が複雑でありコストも高い問題がある。
【0006】
一方、J−FETは高入力インピーダンスで、小信号増幅用として低周波雑音が少なく、高周波特性が良いことが知られている。また上記の増幅集積回路素子に比べて回路構成も単純で安価である。よって、高感度を重視する場合は増幅集積回路素子が必要となるが、J−FETで感度が十分な場合はJ−FETを用いるのが一般的である。
【0007】
しかし、J−FETのみでは出力が十分に増幅されず、ゲインが低い問題がある。ゲインの増加にはJ−FETの面積(セルサイズ)を大きくすることが有効であるが、J−FETの面積増加は、J−FETの入力容量Cinの増加につながる。
【0008】
入力容量Cinを小さくするにはJ−FETの面積を縮小しなければならず、制御できる電流が低減してゲインが小さくなってしまう。つまりゲインと入力容量Cinはトレードオフの関係となり、J−FETを用いた簡便で安価な増幅素子ではゲイン向上に限界があった。
【0009】
そこで出願人は、J−FETのドレイン領域とバイポーラトランジスタのコレクタ領域を接続した1チップのディスクリート素子で、高入力インピーダンスで低出力インピーダンスのECMの増幅素子を開発している(特願2008−86638号明細書)。
【0010】
図10は、当該1チップの増幅素子310を説明する断面概要図である。
【0011】
増幅素子310は、バイポーラトランジスタのコレクタ領域となるn型半導体基板311、312にJ−FET320を集積化してなる。J−FET320は、バックゲート拡散領域321と、チャネル領域322と、バックゲートコンタクト領域323と、トップゲート領域324と、ソース領域325と、ドレイン領域326とからなる。
【0012】
バイポーラトランジスタ330は、基板SB(n+型半導体基板311、n−型半導体層312)をコレクタ領域とし、コレクタ取り出し領域333と、ベース領域331とエミッタ領域332により構成される。
【0013】
J−FET320のソース領域325とバイポーラトランジスタ330のベース領域334が接続され、J−FET320のドレイン領域326とバイポーラトランジスタ330のコレクタ領域(基板SB)が接続された構成である。従って、ECMから出力された電圧が高インピーダンスのJ−FET320のゲートG(トップゲート領域324、バックゲート拡散領域321)に入力され、この電圧変化でJ−FET320に流れる電流が制御され、J−FET320に流れる電流はバイポーラトランジスタ330に入力され、電流(電力)増幅して出力される。必要なゲインはバイポーラトランジスタ330の増幅率で確保できるので、入力ロスが少なく、高いゲインの増幅素子を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許公開2003−243944号公報
【特許文献2】特許公開平5−167358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図10の増幅素子によれば、J−FET320の出力をバイポーラトランジスタ330によって増幅できるので、J−FET320の面積(セルサイズ)を小さくしても十分な出力が得られる。例えばJ−FET320は最小のセルでよく、セルサイズの縮小により入力容量Cinを小さくできる。
【0016】
しかし、図10の構造では、バックゲート拡散領域321と基板SB間のpn接合による寄生容量がゲート−ドレイン間容量Cgd(寄生容量)に上乗せされる。そして、基板SBが増幅素子の出力(バイポーラトランジスタ330のコレクタ)となるため、増幅素子310の入出力端子間に容量が接続したこととなる。
【0017】
図11は、ECMと増幅素子310を接続した場合の等価回路図である。ECMを、エレクトレット、電極および振動膜で形成される容量(マイク容量)Cmと仮定すると、図11(A)の如く、増幅素子310の入力端子側に容量Cmが接続し、増幅素子310の入出力端子間にJ−FET320のゲート−ドレイン間容量Cgd(寄生容量)が接続したことと等価となる。
【0018】
すなわち、図11(B)の如く、入力側から見た図11(A)の等価回路では、ミラー効果によって、容量Cgdがミラー容量C’(≒増幅率Av×Cgd、但しAv>>1の場合)に置き換わった挙動を示す。
【0019】
ここで、実際に増幅素子310に伝達する入力信号VIN’は以下の式で表される。
【0020】
VIN’=Cm/(Cm+C’)VIN
つまり、ミラー容量C’が存在しないか、マイク容量Cm>>ミラー容量C’であれば、VIN’≒VINとなり、増幅素子の入力ロスが殆どないといえる。
【0021】
ここで、マイク容量Cmは、ECMの振動膜および電極の面積と、両者の距離で設計されるが、これらの面積を大きくすることは、マイクの小型化に逆行することとなり、又、距離を狭くするとECMの歩留まりが悪くなる。つまり、設計変更によりマイク容量Cmを現状以上に大きくすることは困難である。
【0022】
一方、ミラー容量C’は、ゲート−ドレイン間容量Cgdに比例しており、最小セルサイズで構成された図10の構造において、これ以上の寄生容量の低減は、限界がある。
【0023】
このように、図10に示す増幅素子では、ミラー容量によって入力信号の減衰(入力ロスの増大)が著しく、増幅素子全体としてゲインが減衰する問題があった。
【0024】
また、これを回避すべく、設計変更によって増幅素子の増幅率を高めると、減衰された入力信号に対して相対的にノイズが大きくなり、出力されるノイズが増加する為に増幅素子全体としてS/Nも劣化する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明はかかる課題に鑑み成されたものであり、接地されたp型半導体基板と、該p型半導体基板上に設けられ接地されたp型半導体層と、該p型半導体層に設けられ、n型のチャネル領域、ドレイン領域、ソース領域と、p型のゲート領域を有する接合型電界効果トランジスタと、前記p型半導体層に設けられたn型のウェル領域と、該ウェル領域をコレクタ領域とし表面にp型のベース領域およびn型のエミッタ領域とを設けたバイポーラトランジスタと、を具備するエレクトレットコンデンサマイクに接続する増幅素子であって、前記接合型電界効果トランジスタの前記ゲート領域が前記エレクトレットコンデンサマイクの一端に接続され、前記ドレイン領域と前記コレクタ領域が接続され、前記接合型電界効果トランジスタの出力を前記バイポーラトランジスタで増幅接続し、前記エミッタ領域および前記ソース領域は第1の抵抗を介して接地され、前記コレクタ領域から出力電圧を取り出すことにより解決するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、第1に、増幅素子の入出力端子間の寄生容量(ミラー容量)を大幅に低減できるため、ミラー容量による入力ロスの増大を防止できる。
【0027】
第2に、増幅前の入力信号の減衰も回避でき、増幅素子全体としてS/Nを向上できる。
【0028】
第3に、J−FETのチャネル領域が、半導体層に対する1度の不純物の注入および拡散で形成できるため、製造工程上のばらつきを低減でき、チャネル領域のIDSSおよびピンチオフ電圧Vpを安定させることができる。これにより、増幅素子の消費電流Iddがばらつきにくくなり、生産性が向上する。
【0029】
第4に、J−FETの出力をバイポーラトランジスタによって増幅できるので、J−FETの面積(セルサイズ)を小さくしても十分な出力が得られる。例えばJ−FETは1つのセルでよく、セルサイズの縮小により入力容量Cinを極めて小さくできる。従って、高入力インピーダンスで低出力インピーダンスのECMの増幅素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の増幅素子を説明する回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の増幅素子を説明する断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の増幅素子を説明する回路図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の増幅素子を説明する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の増幅素子を説明する断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の増幅素子を説明する断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の増幅素子を説明する回路図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の増幅素子を説明する断面図である。
【図9】従来の増幅素子を説明する回路図である。
【図10】従来の増幅素子を説明する断面図である。
【図11】従来の増幅素子を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を、図1から図8を参照して説明する。図1は、本実施形態の増幅素子10の接続例を示す回路図である。
【0032】
増幅素子10は、エレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM)15に接続し、インピーダンス変換と増幅を行う素子であり、一導電型半導体基板に接合型電界効果トランジスタ(J−FET)20と、バイポーラトランジスタ30とを集積化したものである。
【0033】
ECM15は、振動膜(振動板)と、これと対向する電極を筐体内に配置したものであり、音による振動膜の動きが振動膜および電極間の静電容量の変化として取り出されるものである。振動膜は例えば高分子材料などにより構成され、エレクトレット効果により振動膜に電荷を持続させたものである。
【0034】
本実施形態の増幅素子10は、J−FET20とバイポーラトランジスタ30を1チップに集積化した搭載したディスクリート(個別半導体)素子であり、ECM15の一端(入力端子IN)とJ−FET20のゲートが接続する。J−FET20の一端(ソースS)は抵抗(ソース帰還抵抗)RSを介してバイポーラトランジスタ30のベースBに接続し、ベースBは、抵抗(ベース帰還抵抗)RBおよび抵抗(増幅素子帰還抵抗)RAを介して接地される。J−FET20の他端(ドレインD)は、バイポーラトランジスタ30のコレクタCに接続する。
【0035】
バイポーラトランジスタ30のコレクタCは、負荷抵抗RLを介して電源VDDに接続する。バイポーラトランジスタ30のエミッタEは、抵抗(エミッタ帰還抵抗)RE、抵抗RAを介して接地される。バイポーラトランジスタ30のベースBは、抵抗RBを介して、抵抗REと抵抗RAの接続点に接続する。J−FET20のゲートGと接地間には抵抗RinとダイオードDiが各々接続する。
【0036】
増幅素子10は、上記の如く、J−FET20の出力をバイポーラトランジスタ20で増幅接続しており、動作は以下の通りである。
【0037】
電源VDDから電源が供給されると、負荷抵抗RLを経由してJ−FET20のドレインD−ソースS間に電流iが流れる。ECM15の容量変化(電圧変化)がゲート電圧としてJ−FET20のゲートGに印加され、容量の変化量に応じてJ−FET20に流れる電流iが制御される。容量変化に応じた電流iはJ−FET20のソースからバイポーラトランジスタ30のベースBに流れ、バイポーラトランジスタ30に電流が供給されてコレクタC−エミッタE間の電流増幅率β(=ΔIc/ΔIB=hfe)により増幅される。電流増幅の結果は負荷抵抗RLによって電圧変換され、バイポーラトランジスタ30のコレクタCから出力電圧VoutのAC成分として出力端子OUTから取り出すことができる。
【0038】
一般的にJ−FET20は高入力インピーダンスであり、ECM15の容量変化による電荷の流れ(電流)が微弱であっても電圧変化として取り出すことができる。
【0039】
これに加えて本実施形態では、J−FET20はセルサイズを小さくしており、J−FET20の入力容量Cinは十分小さいものとなっている。
【0040】
従って、ECM15から出力された容量変化に対してJ−FET20での入力ロスを大幅に低減することができる。
【0041】
一方でJ−FET20のセルサイズが小さいとゲインが低くなる問題があるが、本実施形態では、バイポーラトランジスタ30によりJ−FET20の出力電流を増幅できる。バイポーラトランジスタ30の電流増幅率βを十分大きくすることにより、抵抗値の設計によって、所望のゲイン(≒RL/RA)を確保することができる。
【0042】
このように、本実施形態の増幅素子10は、J−FET20による高入力インピーダンスとバイポーラトランジスタ30による低出力インピーダンスを兼ね備えることができる。
【0043】
図2を参照して増幅素子10の構造について説明する。図2は増幅素子10の断面概要図である。
【0044】
増幅素子10は、p型の基板SBにJ−FET20とバイポーラトランジスタ30を集積化したディスクリート素子である。
【0045】
基板SBは、接地された高濃度のp型半導体基板11上にp型半導体層12を積層してなり、J−FET20のバックゲート領域となる。
【0046】
J−FET20は、チャネル領域22と、ゲート領域24と、ソース領域25と、ドレイン領域26とからなる。チャネル領域22は、バックゲート領域となるp型半導体層12表面に設けられたn型不純物領域である。チャネル領域22表面には、高濃度のp型不純物領域であるゲート領域24と、その両側に高濃度のn型不純物領域であるソース領域25およびドレイン領域26が設けられる。
【0047】
基板SB内部には、n型不純物を高濃度に拡散した高濃度n型不純物領域(n+型埋め込み領域)33aが設けられ、その上には、これと接するn型ウェル領域33bが設けられる。n型ウェル領域33bもn型不純物の拡散領域である。
【0048】
バイポーラトランジスタ30は、n+型埋め込み領域33aとn型ウェル領域33bをコレクタ33領域とし、高濃度のn型のコレクタ引き出し領域37とその表面に設けたコレクタコンタクト領域36および、ベース領域31とエミッタ領域32を有する。
【0049】
ベース領域31は、n型ウェル領域33b表面に設けられたp型不純物領域であり、エミッタ領域32はベース領域31表面に設けられたn型不純物領域である。エミッタ領域32表面には高濃度のn型不純物領域であるエミッタコンタクト領域35が設けられる。またベース領域31表面には高濃度のp型不純物領域であるベースコンタクト領域34が設けられる。
【0050】
コレクタコンタクト領域36およびコレクタ引き出し領域37はベース領域31と離間してn型ウェル領域33b表面に設けられたn型不純物領域であり、コレクタ領域33aの電流を引き出すためにn型ウェル領域33bより高い不純物濃度で設けられる。
【0051】
基板SB(p−型半導体層12)表面には、絶縁膜13が設けられ、絶縁膜13上に第1電極層40によりゲート電極(G)42が設けられ、絶縁膜13の開口部を介してゲート領域24に接続する。
【0052】
また、基板SB(p−型半導体層12)表面にエミッタ電極(E)51が設けられエミッタコンタクト領域35に接続する。
【0053】
更に基板SB(p−型半導体層12)表面には、第1配線層60によりJ−FET20のドレイン電極(D)61とバイポーラトランジスタ30のコレクタ電極(C)62およびコレクタ配線63が設けられ、それぞれドレイン領域26、コレクタコンタクト領域36と接続する。
【0054】
また基板SB表面にJ−FET20のソース電極(S)71とバイポーラトランジスタ30のベース電極(B)72が設けられ、それぞれソース領域25、ベースコンタクト領域34と接続する。基板SB裏面は、接地される。すなわち、J−FET20のソース電極71、ゲート電極42、ドレイン電極61と、バイポーラトランジスタ30のコレクタ電極62、ベース電極72、エミッタ電極51は、全て基板SBの一主面側に設けられる。
【0055】
J−FET20のソース領域25とバイポーラトランジスタ30のベース領域31は抵抗RSを介して電気的に接続される。また、バイポーラトランジスタ30のエミッタ領域32は抵抗REおよび抵抗RAを介して接地される。バイポーラトランジスタ30のベースBは、抵抗RBを介して、抵抗REと抵抗RAの接続点に接続する。そしてJ−FET20のドレイン領域26とバイポーラトランジスタ30のコレクタ領域(コレクタコンタクト領域36)が電気的に接続された、1チップの増幅素子10が構成される。
【0056】
本実施形態では、バックゲート領域となるp型の基板SBが接地されており、基板SBとドレイン領域26の間でゲート−ドレイン間容量Cgdが発生せず、ゲート領域24とドレイン領域26間の容量だけとなる。。従って、図11において、増幅素子の入出力端子間に接続していたゲート−ドレイン間容量Cgdを大幅に低減できる。つまり、ミラー容量によって増幅前に入力信号が減衰することを大幅に改善でき、増幅素子全体としての入力ロスの増大を低減できる。
【0057】
これにより、増幅前の入力信号の減衰を回避できるので、増幅素子全体としてS/Nを向上できる。
【0058】
更に、J−FET20のチャネル領域22は、p型半導体層12に対して1度のn型不純物の注入および拡散で形成できる。図10に示す従来構造では、n−型半導体層312にp型不純物のイオン注入及び拡散を行ってバックゲート領域321を形成した後、n型不純物の注入及び拡散を行ってチャネル領域322を形成する必要があった。このため、製造工程上のばらつきが生じ、チャネル領域322のIDSSおよびピンチオフ電圧Vpを安定させることが困難であった。
【0059】
本実施形態では、製造工程上のばらつきを低減できるので、チャネル領域22のIDSSおよびピンチオフ電圧Vpを安定させ、増幅素子の消費電流Iddがばらつきにくくなり、生産性が向上する。
【0060】
尚、J−FET20のバックゲート領域となる基板SBが接地されているため、J−FETのgmは低減する可能性がある。しかしその場合であっても、バイポーラトランジスタ30のhFEを大きくすることで、増幅素子としての必要な特性(ゲイン)を確保することができる。
【0061】
図3から図6を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態のバイポーラトランジスタ30にダーリントン接続する他のバイポーラトランジスタを設けるものである。
【0062】
図3は、増幅素子の回路図の一例を示す図である。第1の実施形態のバイポーラトランジスタ(以下npnトランジスタ)30に、導電型を逆にした他のバイポーラトランジスタ(以下pnpトランジスタ)130をダーリントン接続する。
【0063】
すなわち、pnpトランジスタ130のエミッタEがnpnトランジスタ30のコレクタCと接続し、pnpトランジスタ130のコレクタCがnpnトランジスタ30のベースBと接続する。pnpトランジスタ130のベースBは、J−FET20のドレインDと接続し、J−FET20のドレインDは抵抗RBを介してpnpトランジスタ130のエミッタEおよびnpnトランジスタ30のコレクタCに接続する。また、pnpトランジスタ130のベースBとエミッタ領域Eは、抵抗RBにより接続する。J−FET20のソースSは、抵抗RSを介して、抵抗REと抵抗RAの接続点に接続する。ソースSは、抵抗RSおよび抵抗RAを介して接地され、npnトランジスタ30のエミッタEは、抵抗REおよび抵抗RAを介して接地される。npnトランジスタ30のエミッタEはJ−FET20のソースSに接続し、npnトランジスタ30のコレクタCとpnpトランジスタ130のエミッタEが接続される。これ以外の構成は、第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0064】
図4は、pnpトランジスタ130の構造を説明する断面概要図である。pnpトランジスタ130は、基板SB(p型半導体層12)に、p+型半導体基板11と分離して設けられたp型のコレクタ領域133を有する縦型pnpトランジスタである。すなわち、pnpトランジスタ130のコレクタ領域133は、n型ウェル領域33b内に設けられ、これによってp+型半導体基板11と分離される。
【0065】
コレクタ領域133表面にn型ベース領域131が設けられる。ベース領域131表面に高濃度のベースコンタクト領域135とp型のエミッタ領域132が設けられる。
【0066】
図4では、バイポーラトランジスタ(npnトランジスタ)30が設けられるn型ウェル領域33bに、他のバイポーラトランジスタ(pnpトランジスタ)130のコレクタ領域133を設ける。すなわち、pnpトランジスタ130のコレクタ領域133は、npnトランジスタ30のベース領域31と共用もしくは2つの拡散層を接続する。
【0067】
本実施形態では、図3の如くnpnトランジスタ30のベースBと、pnpトランジスタ130のコレクタCを接続させており、外部に導出する必要がない。従って、図4の如くnpnトランジスタ30のベース領域31とpnpトランジスタ130のコレクタ領域131を共用し、内部結線することで、装置の小型化が実現する。
【0068】
J−FET20のドレイン領域26はpnpトランジスタ130のベース領域131と接続し、ソース領域25が抵抗RSに接続し、抵抗RSおよび抵抗RAを介して接地される。バイポーラトランジスタ30のコレクタ領域(n型ウェル領域33b)は、出力端子OUTに接続し、エミッタ領域32は、抵抗REに接続し、抵抗REおよび抵抗RAを介して接地される。pnpトランジスタ130のコレクタ領域133は、npnトランジスタ30のベース領域31と接続する。J−FET20およびnpnトランジスタ30の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
これにより、J−FET20のgmが低下した場合であっても、増幅素子として所望のゲインを確保できる。
【0070】
図5は、pnpトランジスタ130の他の構造を説明する断面概要図である。pnpトランジスタ130は、基板SBに、他のn+型埋め込み領域134aと他のn型ウェル領域134bを設け、他のn型ウェル領域134bの中にp型のコレクタ領域133を設け、p型のコレクタ領域133の中に、高濃度のp型のコレクタコンタクト領域136およびn型のベース領域131を設け、n型のベース領域131の中にエミッタ領域132および高濃度のベースコンタクト領域135を設けた、縦型pnpトランジスタである。このように、npnトランジスタ30とpnpトランジスタ130をそれぞれ独立に、離間したn型ウェル領域の中に設けてもよい。これ以外の構成は、図4と同様である。
【0071】
図6は、pnpトランジスタの他の構造を示す図であり、pnpトランジスタ130’は、他のn+型埋め込み領域134a上の他のn型ウェル領域134b内にp+型コレクタ領域133、p+型エミッタ領域132、n+型ベース領域131を設けた、いわゆるラテラル型pnpトランジスタであってもよい。
【0072】
図7および図8を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0073】
第3の実施形態は、第1の実施形態および、第2の実施形態において、出力端子OUT−接地間に保護ダイオードを接続するものである。
【0074】
図7が回路図であり、図7(A)が第1の実施形態の場合であり、図7(B)が第2の実施形態の場合である。また、図8は保護ダイオードの構造を示す断面概要図である。
【0075】
図7および図8を参照して、増幅素子の出力端子OUT−接地間に、保護ダイオード150を接続する。保護ダイオード150は、ベースBとエミッタEをショートさせて出力端子OUTに接続したpnpバイポーラトランジスタである。
【0076】
すなわち、p+型半導体基板11上にp型半導体層12を設けた基板153の、p型半導体層12上に、n型ベース領域151を設け、その表面にp+型エミッタ領域152とn+型ベースコンタクト領域154を設ける。表面の電極155でエミッタ領域152とベース領域151を短絡し、出力端子OUTに接続する。基板153の裏面がコレクタとなり、基板153が接地されているので、増幅素子の出力端子OUT−接地間に保護ダイオード150を接続できる。
【0077】
保護ダイオード150は、増幅素子のJ−FET20、npnトランジスタ30、pnpトランジスタ130と比較して、サイズが大きい。また、保護ダイオード150のコレクタ領域153と、J−FET20のチャネル領域22、npnトランジスタ30のコレクタ領域33、pnpトランジスタ130のコレクタ領域133はそれぞれ独立しているので、耐圧を特性に応じて個別に設計できる。これにより、増幅素子をESD破壊から防止することができる。
【0078】
尚、保護ダイオード150は、ベースBとエミッタEをショートさせたnpnバイポーラトランジスタであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 増幅素子
11 p+型半導体基板
12 p型半導体層
13 絶縁膜
15 ECM
20 J−FET
22 チャネル領域
24 ゲート領域
25 ソース領域
26 ドレイン領域
30 バイポーラトランジスタ(npnトランジスタ)
31 ベース領域
32 エミッタ領域
33 コレクタ領域
34 ベースコンタクト領域
35 エミッタコンタクト領域
36 コレクタコンタクト領域
37 コレクタ引き出し領域
40 第1電極層
42 ゲート電極
51 エミッタ電極
60 第1配線層
61 ドレイン電極
62 コレクタ電極
70 第2配線層
71 ソース電極
72 ベース電極
SB 基板
130、130’ pnpトランジスタ
131 ベース領域
132 エミッタ領域
133 コレクタ領域
134a 他のn+型埋め込み領域
134b 他のn型ウェル領域
135 ベースコンタクト領域
136 コレクタコンタクト領域
150 保護ダイオード
151 ベース領域
152 エミッタ領域
153 コレクタ領域
154 ベースコンタクト領域
155 電極
210 増幅素子(J−FET)
215 ECM
310 増幅素子
311 n+型半導体基板
312 n−型半導体層
320 J−FET
321 バックゲート拡散領域
322 チャネル領域
324 トップゲート領域
325 ソース領域
326 ドレイン領域
330 バイポーラトランジスタ
331 ベース領域
332 エミッタ領域
333 コレクタ取り出し領域
335 エミッタコンタクト領域
336 コレクタ取り出しコンタクト領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトレットコンデンサマイクに接続する増幅素子であって、
接地されたp型半導体基板と、
該p型半導体基板上に設けられ接地されたp型半導体層と、
該p型半導体層に設けられ、n型のチャネル領域、ドレイン領域、ソース領域と、p型のゲート領域を有する接合型電界効果トランジスタと、
前記p型半導体層に設けられたn型のウェル領域と、該ウェル領域をコレクタ領域とし表面にp型のベース領域およびn型のエミッタ領域とを設けたバイポーラトランジスタとを具備し、
前記接合型電界効果トランジスタの前記ゲート領域が前記エレクトレットコンデンサマイクの一端に接続され、
前記ドレイン領域と前記コレクタ領域が接続され、
前記接合型電界効果トランジスタの出力を前記バイポーラトランジスタで増幅接続し、
前記エミッタ領域および前記ソース領域は第1の抵抗を介して接地され、
前記コレクタ領域から出力電圧を取り出すことを特徴とする増幅素子。
【請求項2】
前記ソース領域と前記ベース領域が接続され、
前記ベース領域は第2の抵抗および前記第1の抵抗を介して接地されることを特徴とする請求項1に記載の増幅素子。
【請求項3】
前記接合型電界効果トランジスタのソース領域は第3の抵抗を介して前記バイポーラトランジスタのベース領域と接続し、該ベース領域と前記バイポーラトランジスタのエミッタ領域は前記第2の抵抗および第4の抵抗を介して接続され、前記エミッタ領域は前記第4の抵抗を介して前記第1の抵抗に接続されることを特徴とする請求項2に記載の増幅素子。
【請求項4】
前記ウェル領域に、p型のコレクタ領域およびエミッタ領域と、n型のベース領域を設けた他のバイポーラトランジスタを具備し、
前記接合型電界効果トランジスタの前記ドレイン領域と前記他のバイポーラトランジスタの前記ベース領域が接続され、
前記他のバイポーラトランジスタの前記ベース領域と前記エミッタ領域は前記第2の抵抗により接続され、
前記他のバイポーラトランジスタの前記コレクタ領域が前記バイポーラトランジスタの前記ベース領域に接続され、
前記バイポーラトランジスタのエミッタ領域が前記接合型電界効果トランジスタの前記ソース領域に接続され、
前記バイポーラトランジスタの前記コレクタ領域と前記他のバイポーラトランジスタの前記エミッタ領域が接続されることを特徴とする請求項1に記載の増幅素子。
【請求項5】
前記接合型電界効果トランジスタのソース領域と前記第1の抵抗の間に前記第3の抵抗が接続され、前記バイポーラトランジスタのエミッタ領域と前記第1の抵抗の間に前記第4の抵抗が接続されることを特徴とする請求項4に記載の増幅素子。
【請求項6】
前記他のバイポーラトランジスタの前記コレクタ領域は、前記バイポーラトランジスタの前記ベース領域と共用されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の増幅素子。
【請求項7】
前記バイポーラトランジスタの前記ウェル領域の下方に、該ウェル領域および、前記p型半導体基板と接する高濃度n型不純物領域を設けることを特徴とする請求項1から請求項6に記載の増幅素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−283065(P2010−283065A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134118(P2009−134118)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】