説明

外観検査装置及び外観検査方法

【課題】被検査体の高さを少ない撮像回数で求める。
【解決手段】外観検査装置10は、周期的に明るさが変化する第1縞パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第1投影画像を撮像する。外観検査装置10は、第1縞パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2縞パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第2投影画像を撮像する。外観検査装置10は、第2縞パターンに対応する被検査体の計測点の明るさ変動の位相を、第1投影画像及び第2投影画像における当該計測点の明るさと、第1縞パターン及び第2縞パターンのそれぞれに対応する明るさ変動の既知の関係とに基づいて求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外観検査用画像と高さ測定用画像を用いてハンダの塗布状態の良否を判定する外観検査装置が記載されている。この装置は、クリームハンダの塗布エリアの面積と高さからクリームハンダの体積を求め、適正な塗布量であるかどうかを検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−226316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物体の三次元形状を測定するための方法として、撮像方向とは異なる方向からシート状の光をあてて撮影したときの光のずれ量から高さを求める光切断法が知られている。この方法で高さを求めることができるのは光が当たっている部分だけであるから、物体の全体にわたって高さ分布を求めるには照射位置を変えながら多数回撮影しなければならない。このため、撮影に時間がかかり、物体全体の高さ分布を迅速に得るのは難しい。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、被検査体の高さを少ない撮像回数ですみやかに求めることのできる外観検査装置及び外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の表面の高さに基づいて該被検査体を検査する外観検査装置である。この装置は、被検査体にパターンを投射するための投射部と、該パターンが投射された被検査体を撮像するための撮像部と、撮像された画像に基づいて被検査体の表面の高さを求める高さ測定部と、を備える。前記投射部は、周期的に明るさが変化する第1周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射し、前記撮像部は、第1周期パターンの位相が互いに異なる複数の第1投影画像を撮像する。前記投射部は、第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射し、前記撮像部は、第2周期パターンの位相が互いに異なる複数の第2投影画像を撮像する。前記高さ測定部は、被検査体の高さ計測点の第2周期パターンによる周期的明るさ変動の位相を、第1投影画像及び第2投影画像における当該計測点の明るさと、第1周期パターン及び第2周期パターンのそれぞれに対応する周期的明るさ変動の既知の関係とに基づいて演算する。
【0007】
本発明の別の態様は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の表面の高さに基づいて該被検査体を検査する外観検査方法である。この方法は、周期的に明るさが変化する第1周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第1投影画像を撮像する第1撮像ステップと、前記第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第2投影画像を撮像する第2撮像ステップと、前記第2周期パターンに対応する被検査体の計測点の明るさ変動の位相を、第1投影画像及び第2投影画像における当該計測点の明るさと、前記第1周期パターン及び前記第2周期パターンのそれぞれに対応する明るさ変動の既知の関係とに基づいて求める位相演算ステップと、を含む。
【0008】
本発明の更に別の態様は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の表面の高さに基づいて該被検査体を検査する外観検査装置である。この装置は、第1平均強度を持ち周期的に明るさが変化する第1周期パターンと、前記第1平均強度に関連付けられた第2平均強度を持ち前記第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンと、を被検査体に投射するための投射部と、第1周期パターンを被検査体に投射したときの第1画像と、第1周期パターンを第1撮画像とは異なる位相で被検査体に投射したときの第2画像と、第2周期パターンを被検査体に投射したときの第3画像と、を撮像するための撮像部と、第2周期パターンを第3画像とは異なる位相で被検査体に投射したときの計測点における明るさを、前記第1画像乃至第3画像における当該計測点の明るさと、前記第1平均強度と第2平均強度との関係とに基づいて求める演算部と、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体を検査するために該被検査体の表面の高さを求める方法である。この方法は、第1平均強度を持ち周期的に明るさが変化する第1周期パターンを被検査体に投射し、該被検査体の表面形状により変調された第1変調パターンを第1画像として撮像する第1撮像ステップと、前記第1周期パターンを前記第1撮像ステップとは異なる位相で前記被検査体に投射し、該被検査体の表面形状により変調された第2変調パターンを第2画像として撮像する第2撮像ステップと、前記第1平均強度に関連付けられた第2平均強度を持ち前記第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンを前記被検査体に投射し、該被検査体の表面形状により変調された第3変調パターンを第3画像として撮像する第3撮像ステップと、前記第2周期パターンを前記第3撮像ステップとは異なる位相で前記被検査体に投射したときの計測点における明るさを、前記第1画像乃至第3画像における当該計測点の明るさと、前記第1平均強度と第2平均強度との関係とに基づいて求めるステップと、を含む。
【0010】
なお、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検査体の高さを少ない撮像回数で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る投射ユニットを模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る投射パターン補正を模式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る被検査体画像の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る高さマップの一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る検査処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の好ましい一実施例に係る各計測点の初期位相を求める方法を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る高さ測定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置10を模式的に示す図である。外観検査装置10は、被検査体12を撮像して得られる被検査体画像を使用して被検査体12を検査する。被検査体12は例えば、多数の電子部品が実装されている電子回路基板である。外観検査装置10は、電子部品の実装状態の良否を被検査体画像に基づいて判定する。この検査は通常、各部品に対し複数の検査項目について行われる。検査項目とはすなわち良否判定を要する項目である。検査項目には例えば、部品そのものの欠品や位置ずれ、極性反転などの部品配置についての検査項目と、ハンダ付け状態や部品のリードピンの浮きなどの部品と基板との接続部についての検査項目とが含まれる。
【0014】
外観検査装置10は、被検査体12を保持するための検査テーブル14と、被検査体を照明し撮像する撮像ユニット16と、検査テーブル14に対し撮像ユニット16を移動させるXYステージ18と、撮像ユニット16及びXYステージ18を制御するための制御ユニット20と、を含んで構成される。なお説明の便宜上、図1に示すように、検査テーブル14の被検査体配置面をXY平面とし、その配置面に垂直な方向(すなわち撮像ユニット16による撮像方向)をZ方向とする。
【0015】
撮像ユニット16は、XYステージ18の移動テーブル(図示せず)に取り付けられており、XYステージ18によりX方向及びY方向のそれぞれに移動可能である。XYステージ18は例えばいわゆるH型のXYステージである。よってXYステージ18は、Y方向に延びるY方向ガイドに沿って移動テーブルをY方向に移動させるYリニアモータと、Y方向ガイドをその両端で支持しかつ移動テーブルとY方向ガイドとをX方向に移動可能に構成されている2本のX方向ガイドとXリニアモータと、を備える。なおXYステージ18は、撮像ユニット16をZ方向に移動させるZ移動機構をさらに備えてもよいし、撮像ユニット16を回転させる回転機構をさらに備えてもよい。外観検査装置10は、検査テーブル14を移動可能とするXYステージをさらに備えてもよく、この場合、撮像ユニット16を移動させるXYステージ18は省略されてもよい。
【0016】
撮像ユニット16は、カメラユニット22と、照明ユニット24と、投射ユニット26と、を含んで構成される。一実施例においては、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26は一体の撮像ユニット16として構成されていてもよい。この一体の撮像ユニット16において、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26の相対位置は固定されていてもよいし、各ユニットが相対移動可能に構成されていてもよい。また、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26は別体とされ、別々に移動可能に構成されていてもよい。
【0017】
カメラユニット22は、対象物の2次元画像を生成する撮像素子と、その撮像素子に画像を結像させるための光学系(例えばレンズ)とを含む。カメラユニット22は例えばCCDカメラである。カメラユニット22の最大視野は、検査テーブル14の被検査体載置区域よりも小さくてもよい。この場合、カメラユニット22は、複数の部分画像に分割して被検査体12の全体を撮像する。制御ユニット20は、カメラユニット22が部分画像を撮像するたびに次の撮像位置へとカメラユニット22が移動されるようXYステージ18を制御する。制御ユニット20は、部分画像を合成して被検査体12の全体画像を生成する。
【0018】
なお、カメラユニット22は、2次元の撮像素子に代えて、1次元画像を生成する撮像素子を備えてもよい。この場合、カメラユニット22により被検査体12を走査することにより、被検査体12の全体画像を取得することができる。
【0019】
照明ユニット24は、カメラユニット22による撮像のための照明光を被検査体12の表面に投光するよう構成されている。照明ユニット24は、カメラユニット22の撮像素子により検出可能である波長域から選択された波長または波長域の光を発する1つまたは複数の光源を備える。照明光は可視光には限られず、紫外光やX線等を用いてもよい。光源が複数設けられている場合には、各光源は異なる波長の光(例えば、赤色、青色、及び緑色)を異なる投光角度で被検査体12の表面に投光するよう構成される。
【0020】
一実施例においては、照明ユニット24は、被検査体12の検査面(すなわち撮像ユニット16に対向する面)に垂直に照明光を投射する落射照明源24aと、被検査体12の検査面に対し斜め方向から照明光を投射する側方照明源24bと、を備えてもよい。落射照明源24a及び側方照明源24bはそれぞれリング照明源であってもよい。すなわち、落射照明源24aは、カメラユニット22の光軸を包囲するリング照明源であり、被検査体12の検査面に対し実質的に垂直に照明光を投射するようカメラユニット22の近傍に配置されている。側方照明源24bは、カメラユニット22の光軸を包囲するリング照明源であり、被検査体12の検査面に対し斜めに照明光を投射するよう落射照明源24aよりも外側に配置されている。
【0021】
図1に示されるように、落射照明源24aは1つのリング照明源を含み、側方照明源24bは複数(図においては2つ)のリング照明源を含んでもよい。例えば、落射照明源24aは青色照明源であり、側方照明源24bは緑色照明源及び赤色照明源であってもよい。なお、これとは異なり、落射照明源24aが複数の照明源を含み、側方照明源24bが1つの照明源を含んでもよい。あるいは、落射照明源24a及び側方照明源24bのそれぞれが赤色照明源、青色照明源、及び緑色照明源を含んでもよい。
【0022】
図1においては参考のため、落射照明源24aから投射され被検査体12の検査面で反射してカメラユニット22に投影される光束を破線の矢印で示している。また、側方照明源24b及び投射ユニット26からの投射も同様に破線の矢印で示している。なお、図示される実施例においては落射照明源24aと側方照明源24bとの間に投射ユニット26が設けられているが、投射ユニット26の配置はこれに限られず、例えば側方照明源24bの外側に投射ユニット26が設けられてもよい。
【0023】
投射ユニット26は、被検査体12の検査面にパターンを投射する。パターンが投射された被検査体12は、カメラユニット22により撮像される。外観検査装置10は、撮像された被検査体12のパターン画像に基づいて被検査体の検査面の高さマップを作成する。制御ユニット20は、投射パターンに対するパターン画像の局所的な不一致を検出し、その局所的な不一致に基づいてその部位の高さを求める。つまり、投射パターンに対する撮像パターンの変化が、検査面上の高さ変化に対応する。
【0024】
投射パターンは、明線と暗線とが交互に周期的に繰り返される1次元の縞パターンであることが好ましい。投射ユニット26は、被検査体12の検査面に対し斜め方向から縞パターンを投影するよう配置されている。被検査体の検査面における高さの非連続は、縞パターン画像においてパターンのずれとして表れる。よって、パターンのずれ量から高さ差を求めることができる。一実施例においては、サインカーブに従って明るさが変化する縞パターンを用いるPMP(Phase Measurement Profilometry)法により制御ユニット20は高さマップを作成する。PMP法においては縞パターンのずれ量がサインカーブの位相差に相当する。
【0025】
投射ユニット26は、パターン形成装置と、パターン形成装置を照明するための光源と、パターンを被検査体12の検査面に投影するための光学系と、を含んで構成される。パターン形成装置は例えば、液晶ディスプレイ等のように所望のパターンを動的に生成しうる可変パターニング装置であってもよいし、ガラスプレート等の基板上にパターンが固定的に形成されている固定パターニング装置であってもよい。パターン形成装置が固定パターニング装置である場合には、固定パターニング装置を移動させる移動機構を設けるか、あるいはパターン投影用の光学系に調整機構を設けることにより、パターンの投影位置を可変とすることが好ましい。また、投射ユニット26は、異なるパターンをもつ複数の固定パターニング装置を切替可能に構成されていてもよい。
【0026】
投射ユニット26は、カメラユニット22の周囲に複数設けられていてもよい。複数の投射ユニット26は、それぞれ異なる投射方向から被検査体12にパターンを投影するよう配置されている。このようにすれば、検査面における高さ差によって影となりパターンが投影されない領域を小さくすることができる。
【0027】
一実施例においては3つの投射ユニット26がカメラユニット22の周囲に設けられてもよい。例えば、図示されるように第1投射ユニット26aに対向して第2投射ユニット26bが配置され、第1投射ユニット26aと第2投射ユニット26bとの中間にカメラユニット22が配置される。第3投影ユニット(図示せず)は、第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bの配置面(図1の紙面)の面外に配置される。例えば第3投影ユニットは、第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bの配置面に垂直でカメラユニット22の光軸を含む面に沿って配置される。各投射ユニットはカメラユニット22から等距離に配置される。
【0028】
第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bが南北方向から被検査体12にパターンを投影するとしたら、第3投影ユニットは東(または西)から被検査体12にパターンを投影するということである。このように少なくとも3つの投射ユニット26を配置することにより、基板に実装された電子部品による死角を実質的になくすことができる。第3投影ユニットは、基板表面からの高さが所定値を超える実装部品がある場合に被検査体12を撮像するようにしてもよい。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る投射ユニット26の構成を模式的に示す図である。投射ユニット26は、光源42、パターン形成装置44、及び投影光学系46を含んで構成される。光源42は例えば白色のLED光源である。パターン形成装置44は反射型の液晶ディスプレイである。パターン形成装置44は透過型のデバイスであってもよい。投影光学系46は少なくとも1つの投影レンズを含み、パターン形成装置44に形成されたパターンを被検査体12に結像させる。
【0030】
光源42から出射された照明ビーム48は、パターン形成装置44によりパターンが付与される。パターンが付与された照明ビームは投影光学系46により投影ビーム50として被検査体12に投射される。投影ビーム50は例えば、パターン形成装置44に形成された正弦波状の反射率分布を持つ縞パターンに対応する照度分布をもつ縞パターンを有する。図示されるように投影ビーム50は、明線52と暗線54とが周期的に繰り返され、明るさすなわち照度が正弦波状の分布をもつ1次元の縞パターンである。パターン形成装置44は表示する縞パターンを制御ユニット20により制御可能である。例えば、縞パターンの縞ピッチ、及び被検査体12における投影位置が制御される。つまり正弦波状パターンの周期及び位相が制御される。
【0031】
なお投射ユニット26は、パターン形成装置44によりグレイスケールで縞パターンを直接形成して被検査体の表面に結像させる方式には限られない。例えば、白黒の二値的な格子パターンを照明して得られる投影ビームに敢えて焦点ボケを与えたり、あるいは格子パターンによる回折効果を利用することで擬似的に正弦波状の縞パターンを得るというような古典的な方法を用いてもよい。
【0032】
パターン形成装置44は、投射ユニット26の光学特性に起因する照明ビーム48または投影ビーム50の断面における照度の不均一性を補正するようにしてもよい。パターン形成装置44は、被検査体12に投射されるべき縞パターンに、不均一性を補正するための補正パターンを重ね合わせて得られる補正済縞パターンを形成するようにしてもよい。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係る投射パターンの補正を模式的に示す図である。図3の右側に投射ユニット26の光学特性の不均一性56を示し、中央に補正済縞パターン58を示し、左側に補正済の投影ビーム60を示す。投射ユニット26の不均一性56は例えば、パターン形成装置44にパターンを形成しないときの投影ビーム50の照度分布である。図示される一例においては、中心部が相対的に明るく、周辺部が相対的に暗い分布である。よって、この不均一性を打ち消すように、中心部が相対的に暗く、周辺部が相対的に明るい補正済縞パターン58をパターン形成装置44に形成する。このようにすれば、照度分布の不均一性が補正され局所的な平均照度が全体的に均一化された規則的な縞パターン60を得ることができる。
【0034】
パターン形成装置44は例えば、基板上に直接液晶素子が形成されているいわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)型の反射デバイスであってもよい。LCOS型のデバイスは液晶素子の背後に必要な配線やスイッチ等が作り込まれており液晶素子が密に配列されている。このため高解像度のパターンを投影することが可能となり好ましい。
【0035】
この場合、パターン形成装置44は、各反射要素が投影ビーム50にもたらす明るさが互いに逆位相となる1組の縞パターンを交互にまたは所定のタイミングで形成することが好ましい。逆位相の縞パターンは各反射要素の制御量が互いに逆向きで等しい。よって、逆位相の縞パターンを同程度の頻度で形成することにより、経時的に制御量の平均を概ねゼロとし一方向への偏りをなくすことができる。
【0036】
制御ユニット20は、この1組の縞パターンのうち一方のみをカメラユニット22で撮像し、他方は撮像しないように撮像ユニット16を制御してもよい。制御ユニット20は、撮像されないほうの縞パターンをパターン形成装置44に形成しているときに、次の部分画像を撮像するための撮像位置に撮像ユニット16に対し被検査体12を相対移動するよう撮像ユニット16及びXYステージ18を制御してもよい。また、制御ユニット20は、撮像されないほうの縞パターンをパターン形成装置44に形成しているときに、検査制御部28または高さ測定部32での演算処理を実行するようにしてもよい。このようにすれば、LCOS型デバイスを用いることによる制御上の要求と、検査スループットの向上との両立を図ることができる。
【0037】
図1に示す制御ユニット20は、本装置全体を統括的に制御するもので、ハードウエアとしては、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現され、ソフトウエアとしてはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
図1には、制御ユニット20の構成の一例が示されている。制御ユニット20は、検査制御部28とメモリ30とを含んで構成される。検査制御部28は、高さ測定部32と検査データ処理部34と検査部36とを含んで構成される。また、外観検査装置10は、ユーザまたは他の装置からの入力を受け付けるための入力部38と、検査に関連する情報を出力するための出力部40とを備えており、入力部38及び出力部40はそれぞれ制御ユニット20に接続されている。入力部38は例えば、ユーザからの入力を受け付けるためのマウスやキーボード等の入力手段や、他の装置との通信をするための通信手段を含む。出力部40は、ディスプレイやプリンタ等の公知の出力手段を含む。
【0039】
検査制御部28は、入力部38からの入力及びメモリ30に記憶されている検査関連情報に基づいて、検査のための各種制御処理を実行するよう構成されている。検査関連情報には、被検査体12の2次元画像、被検査体12の高さマップ、及び基板検査データが含まれる。検査に先立って、検査データ処理部34は、すべての検査項目に合格することが保証されている被検査体12の2次元画像及び高さマップを使用して基板検査データを作成する。検査部36は、作成済みの基板検査データと、検査されるべき被検査体12の2次元画像及び高さマップとに基づいて検査を実行する。
【0040】
基板検査データは基板の品種ごとに作成される検査データである。基板検査データはいわば、その基板に実装された部品ごとの検査データの集合体である。各部品の検査データは、その部品に必要な検査項目、各検査項目についての画像上の検査区域である検査ウインドウ、及び各検査項目について良否判定の基準となる検査基準を含む。検査ウインドウは各検査項目について1つまたは複数設定される。例えば部品のハンダ付けの良否を判定する検査項目においては通常、その部品のハンダ付け領域の数と同数の検査ウィンドウがハンダ付け領域の配置に対応する配置で設定される。また、被検査体画像に所定の画像処理をした画像を使用する検査項目については、その画像処理の内容も検査データに含まれる。
【0041】
検査データ処理部34は、基板検査データ作成処理として、その基板に合わせて検査データの各項目を設定する。例えば検査データ処理部34は、その基板の部品レイアウトに適合するように各検査ウインドウの位置及び大きさを各検査項目について自動的に設定する。検査データ処理部34は、検査データのうち一部の項目についてユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。例えば、検査データ処理部34は、ユーザによる検査基準のチューニングを受け入れるようにしてもよい。検査基準は高さ情報を用いて設定されてもよい。
【0042】
検査制御部28は、基板検査データ作成の前処理として被検査体12の撮像処理を実行する。この被検査体12はすべての検査項目に合格しているものが用いられる。撮像処理は上述のように、照明ユニット24により被検査体12を照明しつつ撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12の部分画像を順次撮影することにより行われる。被検査体12の全体がカバーされるように複数の部分画像が撮影される。検査制御部28は、これら複数の部分画像を合成し、被検査体12の検査面全体を含む基板全面画像を生成する。検査制御部28は、メモリ30に基板全面画像を記憶する。
【0043】
また、検査制御部28は、高さマップ作成のための前処理として、投射ユニット26により被検査体12にパターンを投射しつつ撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12のパターン画像を分割して順次撮影する。投射されるパターンは好ましくは、PMP法に基づきサインカーブに従って明るさが変化する縞パターンである。検査制御部28は、撮影した分割画像を合成し、被検査体12の検査面全体のパターン画像を生成する。検査制御部28は、メモリ30にパターン画像を記憶する。なお、全体ではなく検査面の一部についてパターン画像を生成するようにしてもよい。
【0044】
高さ測定部32は、撮像パターン画像上のパターンに基づいて被検査体12の検査面全体の高さマップを作成する。高さ測定部32はまず、撮像パターン画像と基準パターン画像との局所的な位相差を画像全体について求めることにより、被検査体12の検査面の位相差マップを求める。基準パターン画像とは、投射ユニット26により投射されたパターン画像(つまり投射ユニット26に内蔵されているパターン形成装置が生成した画像)である。高さ測定部32は、高さ測定の基準となる基準面と位相差マップとに基づいて被検査体12の高さマップを作成する。基準面は例えば、検査される電子回路基板の基板表面である。基準面は必ずしも平面ではなくてもよく、基板の反り等の変形が反映された曲面であってもよい。
【0045】
高さ測定部32は、具体的には、撮像パターン画像の各画素と、当該画素に対応する基準パターン画像の画素とで縞パターンの位相差を求める。高さ測定部32は、位相差を高さに換算する。高さへの換算は、当該画素近傍における局所的な縞幅を用いて行われる。撮像パターン画像上の縞幅が場所により異なるのを補償するためである。検査面上での位置により投射ユニット26からの距離が異なるために、基準パターンの縞幅が一定であっても、検査面のパターン投影領域の一端から他端へと線形に縞幅が変化してしまうからである。高さ測定部32は、換算された高さと基準面とに基づいて基準面からの高さを求め、被検査体12の高さマップを作成する。
【0046】
検査制御部28は、被検査体12の高さマップが有する高さ情報を被検査体12の2次元画像の各画素に対応づけることにより、高さ分布を有する被検査体画像を作成してもよい。検査制御部28は、高さ分布付き被検査体画像に基づいて被検査体12の3次元モデリング表示を行うようにしてもよい。また、検査制御部28は、2次元の被検査体画像に高さ分布を重ね合わせて出力部40に表示してもよい。例えば、被検査体画像を高さ分布により色分け表示するようにしてもよい。図4は、被検査体画像の一例であり、図5は、図4に示される被検査体画像の高さ分布をグレースケールで表示したものである。
【0047】
図6は、本発明の一実施形態に係る検査処理を説明するためのフローチャートである。外観検査装置10は、作成済みの基板検査データを用いて検査対象の電子回路基板の検査を行う。まず外観検査装置10は、基板全面画像を作成する(S10)。基板全面画像は、上述のように基板検査データ作成の前処理として説明した方法と同様にして作成される。すなわち、外観検査装置10は、撮像ユニット16により電子回路基板を分割して撮影し、得られた画像を合成する。このようにして、外観検査装置10は、撮像ユニット16に対向する電子基板の全面の2次元画像である基板全面画像を作成する。基板全面画像は図4に示される画像と同様の画像である。
【0048】
次に、外観検査装置10は、基板全面高さマップを作成する(S11)。基板全面高さマップは、上述の方法と同様にして作成される。すなわち、外観検査装置10は、撮像ユニット16により電子回路基板にパターンを投射しつつ分割して撮影する。得られた分割画像から基板全体のパターン画像を合成する。外観検査装置10は、撮像ユニット16に対向する電子回路基板の全面の高さマップをパターン画像に基づいて作成する。基板全面高さマップは、例えば図5に示される形式で外観検査装置10の表示部に表示される。
【0049】
外観検査装置10は、基板全面画像に基板検査データを適用してその基板の検査を実行する(S12)。外観検査装置10は、基板全面画像に基板検査データを適用することにより、各検査項目に必要な検査ウインドウを基板全面画像上に設定する。検査項目によっては、基板全面画像に画像処理をして得られる専用の画像を用いて検査する場合もある。この場合、外観検査装置10は、基板検査データに基づいてその専用画像上に検査ウインドウを設定する。外観検査装置10は、検査ウインドウごとに検査基準に従って各検査項目の良否を判定する。
【0050】
検査基準は高さについてのしきい値であってもよい。すなわち外観検査装置10は、基板全面高さマップから得られる検査ウインドウ内の高さ分布に基づいて良否を判定してもよい。高さ情報を検査基準に用いることにより、2次元画像からは判定が必ずしも容易ではない検査項目について精度よく判定し得る。例えば、電子部品のリードの浮きを簡単なアルゴリズムで精度よく判定することができる。リードピンが基板表面に接続されずに上方に浮いているか否かを上方から撮像した2次元画像により識別することは必ずしも容易ではない。本実施形態によればリードピン背面の高さを測定することができるので、浮きの有無を精度よく判別することができる。外観検査装置10は、検査結果を出力して処理を終了する。
【0051】
なお、基板全面画像を作成してから基板全面高さマップを作成する代わりに、基板全面高さマップを先に作成するようにしてもよい。また、外観検査装置10は、基板全面画像と基板全面高さマップとを並行して作成してもよい。この場合、被検査体12のある部分領域に対し照明ユニット24及び投射ユニット26の照明及びパターン投射のもとで順次撮像したうえで次の部分領域の撮像のための撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動がなされるように、撮像ユニット16及びXYステージ18が制御されてもよい。また、外観検査装置10は、被検査体12の全体ではなく一部の領域について2次元画像及び高さマップを作成し、その領域について検査をするようにしてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態に係る高さ測定方法について更に詳しく説明する。縞パターン投射領域の1つの計測点に着目すると、空間的に位相をずらしながら縞パターンを投射したときに(言い換えれば、縞の反復する方向に縞パターンを走査したときに)、その計測点の明るさは周期的に変動する。色や反射率等の計測点の表面特性に応じて計測点ごとに平均の明るさは異なるものの、どの計測点においても縞パターンに対応する周期的な明るさ変動が生じる。よって、計測点を例えば最も明るくするときの縞パターンの位相がその計測点の高さ情報を表すことになる。一般化すれば、周期的明るさ変動の初期位相が各計測点の高さ情報を与えると言える。
【0053】
本発明の一実施形態に係る高さ測定方法は、周期の異なる少なくとも2種のパターンを使用して高さを求める。長周期(つまり太い縞)の第1パターンにより大まかな高さを求め、短周期(細い縞)の第2パターンで精密な高さを求める。上述のようにPMP法は位相に基づき高さを求めるので、高さ差が大きく縞が1周期以上ずれてしまうと高さを一意に特定することができない。第1縞パターンを併用して高さを求めておくことにより、第2縞パターンを投射したときに縞が1周期以上ずれている場合にも高さを一意に特定することが可能となる。
【0054】
ところが、このように複数の異なるパターンでそれぞれ高さを測定しそれらの結果を総合して高さマップを求める場合には、一般にパターンごとに個別的に投射し撮像することになると考えられる。PMP法では原理的に1種の縞パターンについて位相をずらして少なくとも3回、典型的には4回の撮像が必要とされている。縞パターンが正弦波であることに対応して各計測点の明るさ変動も正弦波となる。縞のピッチは既知であるから、明るさの平均値、振幅、及び初期位相が明らかとなれば明るさ変動を表す正弦波が特定される。
【0055】
少なくとも3枚の撮像画像から計測点の明るさ測定値を得ることにより、明るさの平均値、振幅、及び初期位相の3つの変数を決定することができる。また、1つの縞パターンを90度ずつ位相をずらして4回撮像したときのある画素の輝度をそれぞれl乃至lとすると、その画素にあたる計測点の初期位相φはtan(φ)=(l−l)/(l−l)で表されることが知られている。縞パターンのピッチをPとすると縞パターンのずれ量はP*(φ/2π)で求められる。パターンの投射角度を用いてパターンずれ量からその位置の高さを求めることができる。
【0056】
2種のパターンを用いれば少なくとも6回または8回の撮像をすることになる。1つの被検査体12を検査するために、複数の部分領域を撮像して全体画像を得るようにしている。また、1つの部分領域は複数の投射ユニット26のそれぞれで撮像される。例えば10個の部分領域をそれぞれ3つの投射ユニットで撮像するとしたら、10*3*6(または8)=180(または240)回の撮像を要することになる。こうして、1回の検査に要する撮像回数は多くなりがちである。撮像回数が検査所要時間に与える影響は大きい。
【0057】
そこで、本発明の一実施形態においては、あるパターンを用いて高さを求める際に、そのパターンで少なくとも3回撮像する代わりに、少なくとも1枚の画像を他のパターンを投射したときの画像を利用して推定する。あるパターンを用いて高さを求める際に他のパターンを投射したときの画像のもつ輝度情報を共用することにより撮像回数を低減する。
【0058】
一実施例においては、外観検査装置10は、被検査体12の高さ計測点を含む投射領域に、空間的に周期的に明るさが変化する第1周期パターンを投射し、その計測点の明るさを測定する第1測定ステップと、第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンをその投射領域に投射し、高さ計測点の明るさを測定する第2測定ステップと、を実行する。
【0059】
外観検査装置10は、第1及び第2の周期パターンの少なくとも一方に対応する計測点明るさ変動の位相を、第1測定ステップ及び第2測定ステップの測定結果と、第1及び第2の周期パターンのそれぞれに対応する明るさ変動の既知の関係とに基づいて求める位相演算ステップを実行する。外観検査装置10は、各計測点の明るさ変動の位相に基づいて各計測点の高さ情報を求める高さ情報演算ステップを実行する。既知の関係を用いることにより、第1及び第2の周期パターンの一方を投射したときの位相演算に他方の周期パターンによる測定結果を共用することが可能となる。
【0060】
なお必要に応じて、外観検査装置10は、第1及び第2の周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第3周期パターンを投射領域に投射し、高さ計測点の明るさを測定する第3測定ステップを実行してもよい。同様にして、各周期パターンに対応する明るさ変動の既知の関係から1つの周期パターンを投射したときの位相演算に他の周期パターンによる測定結果を共用するようにしてもよい。
【0061】
高さ計測点の明るさ測定は例えば、パターン投射領域を撮像することにより行う。第1測定ステップは、第1周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第1投影画像を撮像する第1撮像ステップを含んでもよい。第2測定ステップは、第2周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第2投影画像を撮像する第2撮像ステップを含んでもよい。周期パターンは例えば90度ずつまたは120度ずつというように等しい量ずつ位相をずらして(すなわち例えば1/4周期ずつまたは1/3周期ずつパターンの反復する方向にパターンを空間的に移動させて)被検査体12に投射してもよい。以降の演算処理で適宜調整することとすれば、必ずしも等しい量ずつずらさなくてもよい。
【0062】
一実施例においては、第1及び第2の周期パターンは、共通の周期関数で表されるパターンであってもよい。その周期関数のパラメタを異ならせることにより、第1周期パターンと第2周期パターンとを異ならせてもよい。2つの周期パターンは少なくとも互いに周期を異ならせてもよく、例えば一方の周期は他方の周期の少なくとも2倍より大きくてもよく、好ましくは例えば10倍より大きくてもよい。2つの周期パターンはさらに明るさの振幅及び平均値の少なくとも一方が互いに異なっていてもよい。
【0063】
第1周期パターンの周期が第2周期パターンの周期よりも大きい場合には、外観検査装置10は、被検査体12の高さ計測点の第1周期パターンによる周期的明るさ変動の位相を、第1撮像ステップで得られた複数の第1投影画像における当該計測点の明るさに基づき演算してもよい。この場合、外観検査装置10は、第2周期パターンによる周期的明るさ変動の位相については上述のように既知の関係を利用して第1投影画像及び第2投影画像から求めてもよい。こうして、外観検査装置10は、第1周期パターンによる周期的明るさ変動の位相と第2周期パターンによる周期的明るさ変動の位相とに基づいて当該計測点の高さを求めてもよい。
【0064】
一実施例においては、第1周期パターンに対応する各計測点の明るさ変動と第2周期パターンに対応する明るさ変動との既知の関係は、第1周期パターンの平均強度と第2周期パターンの平均強度とが関連付けられていることを含んでもよい。2つのパターンの平均強度が関連付けられていることにより、それぞれのパターンを投射したときの計測点の明るさを関係づけることができる。
【0065】
好ましくは、第1周期パターンの平均強度と第2周期パターンの平均強度とが実質的に等しくてもよい。そのために、外観検査装置10は、少なくともパターンの周期を変更可能である可変パターン形成装置を含む投射ユニットを備えることが好ましく、この投射ユニットは、各パターンに対し共通の光源及び光学系を有することが好ましい。可変パターン形成装置は、縞パターンの縞ピッチを変更可能に構成されていることが好ましい。この構成により、縞パターンの縞ピッチのみを変更し同一の投射条件でパターンを投射することができる。こうして、パターンの周期を変更したときに少なくとも明るさの平均値は維持されると考えられる。図1及び図2に示す投射ユニット26及びパターン形成装置44は、このように構成された投射ユニット及び可変パターン形成装置の一例である。
【0066】
また、上述の既知の関係は、第1周期パターンが投射されたときの計測点の明るさの振幅と第2周期パターンのそれとが関連付けられていることを含んでもよい。好ましくは、第1周期パターンと第2周期パターンとで各計測点の明るさの振幅が実質的に等しくてもよい。例えば投射ユニット及び可変パターン形成装置によって、2つのパターンが投射されたときの明るさの振幅についても2つのパターンで等しくなるように各パターンの周期を調整することも可能である。
【0067】
図7は、本発明の好ましい一実施例に係る各計測点の初期位相を求める方法を説明するための図である。図7の左側には縞幅の大きい第1縞パターンを位相をずらしつつ投射したときのある計測点(x,y)における周期的な明るさ変動l(x,y)を示し、図7の右側には縞幅の小さい第2縞パターンについての同一計測点(x,y)の明るさ変動m(x,y)を示している。第1縞パターン及び第2縞パターンはともに図2に示す正弦波の縞パターンであり、縞幅のみが異なる。投射ユニット26の光学性能により、図7に示されるように、被検査体12に投射されたときの明るさの振幅は、縞幅の小さい第2縞パターンのほうが小さくなっている。
【0068】
この実施例では90度ずつ(つまり1/4周期ずつ)縞パターンを被検査体12に相対的に移動させてパターン投射領域を順次撮像する。こうして得られた複数の画像それぞれにおける計測点(x,y)に相当する画素の輝度を計測点(x,y)の明るさとする。上述のように第1縞パターンについての各計測点の位相φ(x,y)は、tan(φ)=(l−l)/(l−l)により求めることが可能である。l、l、l、lはそれぞれ第1縞パターンを0度、90度、180度、270度の位相で投射したときの各計測点に相当する画素の輝度である。同様にして、第2縞パターンについての各計測点の位相θ(x,y)は、tan(θ)=(m−m)/(m−m)により求めることが可能である。m、m、m、mはそれぞれ第2縞パターンを0度、90度、180度、270度の位相で投射したときの各計測点に相当する画素の輝度である。
【0069】
第1縞パターン及び第2縞パターンのそれぞれについて明るさの平均値が一定であり、かつ第1縞パターンと第2縞パターンとで明るさの平均値が等しいことから、
(l+l)/2=(l+l)/2=(m+m)/2=(m+m)/2
なる関係が成立する。よって、
=l−l+l
=l+l−m
=l+l−m
が導かれる。
【0070】
したがって、tan(φ)及びtan(θ)はそれぞれ、
tan(φ)=(l+l−2l)/(l−l
tan(θ)=(l+l−2m)/(l+l−2m
により求めることができる。すなわち、図7において実線の丸で示すようにl、l、l、m、mの5つの測定値から第1縞パターン及び第2縞パターンのそれぞれについての位相φ、θを求めることができる。破線の丸で示すl、m、mは測定の必要がない。合計8回の撮像でl、l、l、l、m、m、m、mのすべてを測定する代わりに、5回の撮像で2つのパターンの両方について位相を求めることができる。これは、従来考え得る最小の撮像回数である6回より更に少ない回数である。さらに第1縞パターン及び第2縞パターンの明るさ振幅が等しければ、mを省略してl、l、l、mの4回の撮像で2つの位相を求めることも可能であろう。
【0071】
ここで、撮像する画像は、縞パターンの位相が互いに逆位相である1組の画像を含むことが好ましい。つまり、縞パターンを半周期ずらして撮像した画像を含むことが好ましい。このようにすれば、上記の関係式のように明るさの平均値を2つの測定輝度の単純平均で簡単に表すことができる。
【0072】
また、第1縞パターンの縞ピッチは被検査体12に想定される部品高さの最大値よりも大きく設定されることが好ましい。このようにすれば、被検査体12の最大の高さの実装部品によって生じる縞パターンのずれ量を1周期以内に収めることができる。よって、tan(φ)から位相φを一意に決定することができる。
【0073】
縞パターンは必ずしも正弦波状に変化する縞パターンでなくてもよい。位相を異ならせて複数回撮像して得られた計測点の明るさに基づいて明るさ変動の周期関数が決定される周期パターンであればよい。周期の異なる少なくとも2つの周期パターンについて明るさ変動の既知の関係を利用することにより、上記の好ましい実施例と同様にして合計の撮像回数を少なくすることが可能である。
【0074】
図8は、本発明の一実施形態に係る高さ測定処理を説明するためのフローチャートである。外観検査装置10の投射ユニット26は、第1平均強度を持ち周期的に明るさが変化する第1縞パターンを被検査体12の投射領域に投射する。カメラユニット22は、被検査体12の表面形状(例えば実装部品による基板面との段差)により変調された第1変調パターンを第1画像Lとして撮像する(S30)。画像Lの各画素の輝度が対応する計測点(x,y)の明るさl(x,y)を表す。画像Lは制御ユニット20のメモリ30に記憶される。
【0075】
投射ユニット26は第1縞パターンを第1画像Lとは異なる位相で被検査体12に投射する。投射ユニット26は例えば、第1画像Lとは90度位相をずらして同一の投射領域に第1縞パターンを投射する。カメラユニット22は被検査体12の表面形状により変調された第2変調パターンを第2画像Lとして撮像する(S32)。画像Lの各画素の輝度が対応する計測点(x,y)の明るさl(x,y)を表す。画像Lはメモリ30に記憶される。
【0076】
投射ユニット26は第1縞パターンを第1画像L及び第2画像Lとは異なる位相で被検査体12に投射する。投射ユニット26は第2画像Lからさらに90度位相をずらして同一の投射領域に第1縞パターンを投射する。カメラユニット22は被検査体12の表面形状により変調された第3変調パターンを第3画像Lとして撮像する(S34)。画像Lの各画素の輝度が対応する計測点(x,y)の明るさl(x,y)を表す。画像Lはメモリ30に記憶される。
【0077】
投射ユニット26は、第1縞パターンよりも狭い縞ピッチをもつ第2縞パターンを第1縞パターンと同一の投射条件で同一の投射領域に投射する。カメラユニット22は被検査体12の表面形状により変調された第4変調パターンを第4画像Mとして撮像する(S36)。画像Mの各画素の輝度が対応する計測点(x,y)の明るさm(x,y)を表す。画像Mはメモリ30に記憶される。
【0078】
投射ユニット26は第2縞パターンを第4画像Mとは異なる位相で被検査体12に投射する。投射ユニット26は第4画像Mとは90度位相をずらして同一の投射領域に第2縞パターンを投射する。カメラユニット22は被検査体12の表面形状により変調された第5変調パターンを第5画像Mとして撮像する(S38)。画像Mの各画素の輝度が対応する計測点(x,y)の明るさm(x,y)を表す。画像Mはメモリ30に記憶される。
【0079】
制御ユニット20はすべての投射ユニット26によりその投射領域が撮像されたか否かを判定する(S40)。まだその領域がすべての投射ユニット26を用いて撮像されていない場合には(S40のN)、次の投射ユニット26を使用して第1画像L乃至第5画像Mの撮像を繰り返す。なお、本実施例では南北方向の2つの投射ユニット26a、26bを使用して撮像し、もう1つの投射ユニットは必要に応じて使用するようにしてもよい。
【0080】
使用すべきすべての投射ユニット26を用いた撮像が完了した場合には(S40のY)、制御ユニット20は被検査体12の全体の撮影が完了したか否かを判定する(S42)。まだ撮影されていない領域がある場合には(S42のN)、次の投射領域について上記のように撮像を繰り返す。次の投射領域への移動中に、画像L、画像M、画像Mのうち少なくとも1つの逆位相のパターンをパターン形成装置に形成してもよい。この逆位相のパターンは撮像されない。
【0081】
被検査体12の全体の撮影が完了した場合には(S42のY)、制御ユニット20の高さ測定部32は第1画像L乃至第5画像Mに基づいて被検査体12の高さマップを作成する(S44)。高さマップ作成処理は、第2縞パターンを第4画像M及び第5画像Mとは異なる位相で被検査体12に投射したときの計測点における明るさを、第1画像L乃至第5画像Mにおける当該計測点の明るさから求めることを含む。また、高さマップ作成処理は、第1縞パターンを第1画像L乃至第3画像Lとは異なる位相で被検査体12に投射したときの計測点における明るさを、第1画像L乃至第3画像Lにおける当該計測点の明るさから求めることを含む。
【0082】
例えば上述のように、第4画像Mとは逆位相で第2縞パターンを投射したときの計測点の明るさを、第1縞パターンと第2縞パターンとで平均強度が等しいことを利用して第1画像L、第3画像L、第4画像Mから求める。第5画像Mと逆位相で第2縞パターンを投射したときの計測点の明るさを、第1縞パターンと第2縞パターンとで平均強度が等しいことを利用して第1画像L、第3画像L、第5画像Mから求める。また、第2画像Lと逆位相で第1縞パターンを投射したときの計測点の明るさを、第1画像L、第2画像L、第3画像Lから求める。
【0083】
高さ測定部32は、第1縞パターンによる第1位相マップと、第2縞パターンによる第2位相マップとを第1画像L乃至第5画像Mに基づいて求める。これらの位相マップは各計測点の位相情報からなる。この位相情報は各計測点の相対的な高さ情報を表す。上述のように高さ測定部32は、基板の表面位置の高さと各計測点の相対高さとから基板表面に対する各計測点の高さを求める。
【0084】
本実施例では複数の投射ユニット26を使用して同一の計測点の撮像をしているから、高さ測定部32は、位相マップを作成する際にいずれかの投射ユニットによる測定値を最も適切な値として計測点ごとに選択してもよい。例えば、ある投射ユニットを使用したときの画像においてその計測点を表す画素の輝度が飽和している場合には、その飽和画素を他の投射ユニットを使用したときの画像における対応画素に置き換えてもよい。また、その計測点付近の局所的な平均の明るさ及び振幅が投射パターンから基準を超えて乖離している場合にも、その計測点を表す画素を他の投射ユニットを使用したときの対応画素に置き換えてもよい。
【0085】
また、高さ測定部32は、いずれの投射ユニットによる測定値が適切であるか判別することができない場合には、周囲の計測点の測定値に基づいてその計測点の測定値を補間するようにしてもよい。例えば、複数の投射ユニットを使用したときの測定値のばらつきが大きい場合には、高さ測定部32は、いずれの投射ユニットによる測定値も適切でないと判定してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 外観検査装置、 12 被検査体、 14 検査テーブル、 16 撮像ユニット、 18 XYステージ、 20 制御ユニット、 22 カメラユニット、 24 照明ユニット、 26 投射ユニット、 28 検査制御部、 30 メモリ、 32 高さ測定部、 34 検査データ処理部、 36 検査部、 38 入力部、 40 出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の表面の高さに基づいて該被検査体を検査する外観検査装置であって、
被検査体にパターンを投射するための投射部と、該パターンが投射された被検査体を撮像するための撮像部と、撮像された画像に基づいて被検査体の表面の高さを求める高さ測定部と、を備え、
前記投射部は、周期的に明るさが変化する第1周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射し、前記撮像部は、第1周期パターンの位相が互いに異なる複数の第1投影画像を撮像し、
前記投射部は、第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射し、前記撮像部は、第2周期パターンの位相が互いに異なる複数の第2投影画像を撮像し、
前記高さ測定部は、被検査体の高さ計測点の第2周期パターンによる周期的明るさ変動の位相を、第1投影画像及び第2投影画像における当該計測点の明るさと、第1周期パターン及び第2周期パターンのそれぞれに対応する周期的明るさ変動の既知の関係とに基づいて演算することを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記既知の関係は、第1周期パターンの平均強度と第2周期パターンの平均強度とが等しいことを含むことを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記複数の第1投影画像は、第1周期パターンの位相が互いに逆位相である1組の画像を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記第1周期パターンの周期は前記第2周期パターンの周期よりも大きく、
前記高さ測定部は、被検査体の高さ計測点の第1周期パターンによる周期的明るさ変動の位相を前記複数の第1投影画像における当該計測点の明るさに基づき演算し、第1周期パターンによる周期的明るさ変動の位相と第2周期パターンによる周期的明るさ変動の位相とに基づいて当該計測点の高さを求めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の表面の高さに基づいて該被検査体を検査する外観検査方法であって、
周期的に明るさが変化する第1周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第1投影画像を撮像する第1撮像ステップと、
前記第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンを異なる複数の位相で被検査体に投射して複数の第2投影画像を撮像する第2撮像ステップと、
前記第2周期パターンに対応する被検査体の計測点の明るさ変動の位相を、第1投影画像及び第2投影画像における当該計測点の明るさと、前記第1周期パターン及び前記第2周期パターンのそれぞれに対応する明るさ変動の既知の関係とに基づいて求める位相演算ステップと、を含むことを特徴とする外観検査方法。
【請求項6】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体の表面の高さに基づいて該被検査体を検査する外観検査装置であって、
第1平均強度を持ち周期的に明るさが変化する第1周期パターンと、前記第1平均強度に関連付けられた第2平均強度を持ち前記第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンと、を被検査体に投射するための投射部と、
第1周期パターンを被検査体に投射したときの第1画像と、第1周期パターンを第1撮画像とは異なる位相で被検査体に投射したときの第2画像と、第2周期パターンを被検査体に投射したときの第3画像と、を撮像するための撮像部と、
第2周期パターンを第3画像とは異なる位相で被検査体に投射したときの計測点における明るさを、前記第1画像乃至第3画像における当該計測点の明るさと、前記第1平均強度と第2平均強度との関係とに基づいて求める演算部と、を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項7】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体を検査するために該被検査体の表面の高さを求める方法であって、
第1平均強度を持ち周期的に明るさが変化する第1周期パターンを被検査体に投射し、該被検査体の表面形状により変調された第1変調パターンを第1画像として撮像する第1撮像ステップと、
前記第1周期パターンを前記第1撮像ステップとは異なる位相で前記被検査体に投射し、該被検査体の表面形状により変調された第2変調パターンを第2画像として撮像する第2撮像ステップと、
前記第1平均強度に関連付けられた第2平均強度を持ち前記第1周期パターンとは異なる周期で明るさが変化する第2周期パターンを前記被検査体に投射し、該被検査体の表面形状により変調された第3変調パターンを第3画像として撮像する第3撮像ステップと、
前記第2周期パターンを前記第3撮像ステップとは異なる位相で前記被検査体に投射したときの計測点における明るさを、前記第1画像乃至第3画像における当該計測点の明るさと、前記第1平均強度と第2平均強度との関係とに基づいて求めるステップと、を含むことを特徴とする高さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53015(P2012−53015A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197946(P2010−197946)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】