説明

導電膜パターニング方法

【課題】残渣の発生を防止することが出来る導電膜パターニング方法を提供する。
【解決手段】基板P上にアルミニウムを含む導電材料によって導電膜Lを形成する導電膜形成工程と、この導電膜形成工程によって形成された導電膜L上に耐アルカリ性材料によってレジスト膜Rを積層して形成するレジスト膜形成工程と、このレジスト膜形成工程によって形成されたレジスト膜Rに対して露光マスクMを介して露光を行う露光工程と、この露光工程の終了後に、キレート剤が添加されたアルカリ性の現像液によって、レジスト膜Rの現像を行うとともに導電膜Lのエッチングを行う現像およびエッチング工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電膜のパターンニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平面ディスプレイパネルの電極にはアルミニウム(Al)やアルミニウム合金によって形成されるものがあり、例えば、反射型プラズマディスプレイパネル(PDP)においては、背面基板側に配置される電極をアルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成することにより、蛍光体層からの発光を反射してパネル画面の高輝度化を図っているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電極等を形成する導電膜のパターニングは、一般にフォトリソ法と呼ばれるパターニング方法により、導電膜形成工程−レジスト膜形成工程−露光工程−レジスト膜の現像工程−導電膜のエッチング工程−レジスト膜の剥離工程を経ることによって行われる。
【0004】
従来、このようなフォトリソ法によるアルミニウムまたはアルミニウム合金製導電膜のパターニング方法において、レジスト膜の現像液に強アルカリ性溶液である水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:N(CH34OH)を用いて、レジスト膜の現像とアルミニウム製導電膜のエッチングを同時に行うことにより、工程数を減らすことが出来る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、この従来の導電膜パターニング方法は、エッチングによってアルミニウム製導電膜が除去された部分の基板上に、エッチングによって溶解したアルミニウムと現像によって溶解されたレジストとが凝集して出来る残渣が発生してしまうという問題を有している。
【0006】
この残渣は、レジストに含まれる感光剤のインデンカルボン酸アニオンとアルミニウム・イオンとが反応して出来る塩が沈殿したものと考えられる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−22756号公報
【特許文献2】特開平7−130751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記のような従来のアルミニウム製導電膜のパターニング方法における問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明(請求項1に記載の発明)による導電膜パターニング方法は、上記目的を達成するために、基板上にアルミニウムを含む導電材料によって導電膜を形成する導電膜形成工程と、この導電膜形成工程によって形成された導電膜上に耐アルカリ性材料によってレジスト膜を積層して形成するレジスト膜形成工程と、このレジスト膜形成工程によって形成されたレジスト膜に対して露光マスクを介して露光を行う露光工程と、この露光工程の終了後に、キレート剤が添加されたアルカリ性の現像液によって、レジスト膜の現像を行うとともに導電膜のエッチングを行う現像およびエッチング工程とを有していることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明による導電膜パターニング方法は、導電膜形成工程において、アルミニウムを含む導電材料によって基板上に導電膜が形成され、次のレジスト膜形成工程において、耐アルカリ性材料によってレジスト膜が導電膜上に積層して形成され、次の露光工程において、レジスト膜に対して露光マスクを介して露光が行われ、この露光工程の終了後、現像およびエッチング工程において、キレート剤が添加されたアルカリ性の現像液によって、レジスト膜の現像と導電膜のエッチングが並行して行われる導電膜のパターニング方法を最良の実施形態としている。
【0011】
この実施形態による導電膜パターニング方法によれば、レジスト膜の現像を行うアルカリ性の現像液によってレジスト膜の現像と並行して導電膜のエッチングが行われることによって導電膜のパターニングの工程数が少なくなり、そして、このレジスト膜の現像と導電膜のエッチングが並行して行われる際に、アルカリ性の現像液に添加されたキレート剤によって、エッチングによって溶解したアルミニウムのイオンが封じ込まれて水溶性を維持することにより、レジスト膜に含まれている感光剤やその変成物等とアルミニウム・イオンが凝集して塩等の残渣が生成されるのを防止することが出来る。
【0012】
上記実施形態の導電膜パターニング方法において、導電膜が、アルミニウムの含有率が90molパーセント以上のアルミニウム合金によって形成されるようにするのが好ましく、これによって、導電膜が、エッチング工程におけるアルカリ性の現像液に対する良好な溶解性を有することが出来るようになる。
【0013】
さらに、上記実施形態の導電膜パターニング方法において、現像液に添加されるキレート剤がエチレンジアミン4酢酸4ナトリウムであることが好ましく、これによって、現像およびエッチング工程において残渣が発生するのをより有効に防止することが出来るとともに、導電膜のエッチング終了前にレジスト膜のパターン形成部分が溶解されてしまうのを防止することが出来るようになる。
【0014】
さらに、上記実施形態の導電膜パターニング方法において、現像液に含まれるキレート剤の濃度を0.1wtパーセント以上にするのが好ましく、これによって、残渣の発生と導電膜のエッチング終了前にレジスト膜のパターン形成部分が溶解されてしまうのをより防止することが出来るようになる。
【0015】
さらに、上記実施形態の導電膜パターニング方法において、現像液がpH13〜14のアルカリ溶液であることが好ましく、これによって、現像およびエッチング工程において、現像液によって導電膜のエッチング終了前にレジスト膜のパターン形成部分が溶解されてしまうのをより防止することが出来るようになる。
【0016】
さらに、上記実施形態の導電膜パターニング方法において、レジスト膜を形成するレジスト材料にノボラック樹脂を含ませるようにするのが好ましく、これによって、導電膜のエッチングが完了するまでの間、レジスト膜のパターンを形成する未露光部分が溶解されずにマスク・パターンを保持することが出来るようになる。
【0017】
さらに、上記実施形態の導電膜パターニング方法において、レジスト膜を形成するレジスト材料に含まれるノボラック樹脂の分子量が15000以上になるようにするのが好ましく、これによって、導電膜のエッチングが完了するまでの間、レジスト膜のパターンを形成する未露光部分が溶解されずにマスク・パターンをより完全に保持することが出来るようになる。
【0018】
さらに、上記実施形態の導電膜パターニング方法において、導電膜のパターニングによって平面ディスプレイパネルの電極を形成するようにするのが好ましく、これによって、PDPやLCD等の平面ディスプレイの電極を良好な状態で形成することが出来るようになる。
【実施例】
【0019】
以下、この発明による導電膜パターニング方法の実施形態における一実施例について、図面を参照しながら説明を行う。
【0020】
図1は、この実施例における導電膜パターニング方法の各工程を順に示した工程説明図である。
【0021】
この図1において、この実施例における導電膜パターニング方法は、先ず、導電膜形成工程(a)において、基板P上に、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成技術により、アルミニウムまたはアルミニウム合金材料によって導電膜Lが形成される。
【0022】
このとき、アルミニウム合金材料に含まれるアルミニウムの含有率は、後述する現像工程において使用されるアルカリ性現像液に対する溶解性を考慮して、90molパーセント以上の値になるようにするのが好ましい。
【0023】
このアルミニウム合金材料には、例えばSi、Fe、Cu等の種々の添加金属を含有させることが出来る。
【0024】
次に、レジスト膜形成工程(b)において、耐アルカリ性を有しているが強アルカリ溶液によって現像が可能な液体レジストが、スピンコート法等によって導電膜L上にコーティングされることにより、ポジタイプのレジスト膜Rが導電膜L上に積層して形成される。
【0025】
このレジスト膜Rを形成する液体レジストには、耐アルカリ性を有するために、分子量が15000以上のノボラック樹脂を含む高分子タイプの液体レジストを用いるのが好ましい。
【0026】
なお、この実施例においては、ポジタイプの液体レジストが用いられている。
【0027】
次に、露光工程(c)において、導電膜L上に形成する所要のレジスト・パターンに対応した開口部Maを有する露光マスクMを介して、レジスト膜Rの露光が行われる。
【0028】
この露光工程によって、露光マスクMの開口部Maに対向している部分のレジスト膜Rが軟化され、後述するように、レジスト膜Rの未露光部分によって、所要のレジスト・パターンが形成される。
【0029】
次に、現像およびエッチング工程(d)において、強アルカリ溶液からなる現像液によってレジスト膜Rの現像が行われ、さらに、この現像液によって、パターニングされてゆくレジスト膜Rを介して導電膜Lのエッチングが行われる。
【0030】
すなわち、露光によってレジスト膜Rの軟化している部分が強アルカリ性の現像液によって除去されて、このレジスト膜Rのパターニングが行われ、同時に、現像によってレジスト膜Rの露光部分が除去されて開口された部分に対向する部分の導電膜Lに対して、現像液によりエッチングが行われる。
【0031】
これによって、導電膜Lが、レジスト膜Rの現像と並行して、同じ現像液により、露光マスクMの開口部Maのパターンに対応してパターニングされる。
【0032】
このように、レジスト膜Rの現像液によって導電膜Lのエッチングを同時に行うことが可能になったのは、導電膜Lに含有されるアルミニウムが、耐アルカリ性が低く強アルカリ溶液である現像液に溶解する性質を有していることによる。
【0033】
この現像液は、キレート剤が、例えば0.1〜0.2wtパーセントの濃度で含まれている。
【0034】
このキレート剤によって、エッチングにより溶解したアルミニウムのイオンが封じ込まれて水溶性を維持することにより、レジスト膜Rに含まれている感光剤やその変成物等とアルミニウム・イオンとによる凝集体や塩等の残渣の生成が抑制される。
【0035】
この現像液のペーハ(pH)は、12≦pH≦13に設定するのが好ましい。
すなわち、この現像液がpH<12の場合には、導電膜Lのエッチング時間が長くなってリードタイムが長くなり、また、pH>13の場合には、レジスト膜Rの未露光部分まで溶解してレジスト膜Rに対して所要のパターニングを行うことが出来なくなるためである。
【0036】
このように、現像液が12≦pH≦13に設定されることによって、レジスト膜Rの未露光部分の溶解が始まる前に導電膜Lのエッチング、すなわちパターニングを完了することが出来る。
【0037】
導電膜Lのエッチングが完了した時点で、この現像およびエッチング工程は終了する。
【0038】
この後、次の剥離工程(e)において、有機溶剤からなる剥離液が、パターニング後のレジスト膜Rに浸漬されて、このレジスト膜Rが導電膜Lから剥離される。
【0039】
以上のようにして、基板P上に、導電膜Lによって、露光マスクMに設定された所要のパターンに対応するパターンの例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金製電極が形成される。
【0040】
次に、上記のパターニング方法によって形成される導電膜の検証実験の結果について、説明を行う。
【0041】
図2には、従来のアルミニウム製導電膜のパターニング方法において生じていた残渣のメカニズムを検証するための実験において設定された各条件が示されている。
【0042】
この図2において、検証実験(1)〜(3)に使用される試験片Aは、ガラス基板上に、アルミニウム含有率が98molパーセントのアルミニウム合金により、スパッタリング法によって厚さ650nmの導電膜が形成され、さらに、この導電膜上に、レジスト材として粘度が11CPSで分子量が約12500のノボラック樹脂を含む東京応化工業(株)製の製品名TFR−Hがスピンコート法によってコーティングされることによって、レジスト膜が形成されており、それぞれ、露光マスクを介して露光が行われている。
【0043】
検証実験(4)に使用される試験片Bは、アルミニウム製導電膜が形成されておらず、ガラス基板上に検証実験(1)〜(3)に使用される試験片Aと同じ材料によって、レジスト膜が形成されている。
【0044】
検証実験(1)〜(4)は、それぞれ試験片A,Bを強アルカリ性現像液に浸すことによって、残渣が発生するか否かを確認することによって行われた。
【0045】
すなわち、この検証実験(1)は、試験片Aが濃度0.3wtパーセントの水酸化ナトリウム(NaOH)に浸されることにより行われた。
【0046】
検証実験(2)は、試験片Aが濃度0.3wtパーセントの水酸化カリウム(KOH)に浸されることにより行われた。
【0047】
検証実験(3)は、試験片Aが濃度0.3wtパーセントの水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:N(CH34OH)に浸されることにより行われた。
【0048】
検証実験(4)は、試験片Bが濃度0.3wtパーセントの水酸化ナトリウム(NaOH)に浸されることにより行われた。
【0049】
そして、各検証実験(1)〜(4)において、各試験片A,Bが現像液に浸された後、純水によって10秒間洗浄された。
【0050】
この各検証実験の結果、図2に示されるように、検証実験(1)〜(3)については、何れも、試験片Aの強アルカリ性現像液によってアルミニウム製導電膜が溶解した部分に黄色い残渣が目視によって確認されたが、検証実験(4)については、試験片Bに残渣は確認されなかった。
【0051】
この各検証実験から、強アルカリ性現像液によって溶解された導電膜のアルミニウム成分が残渣の生成に影響を及ぼしていることが分かった。
【0052】
次に、上記の検証実験(2)において、試験片Aから析出された残渣に対して、FTIR法によって分析が行われ、カルボン酸アニオンと思われるピークが計測された。
【0053】
この分析結果から、残渣は、アルミニウム・イオンとレジスト膜を形成するレジスト材に含まれる感光剤のインデンカルボン酸アニオンが反応して出来る塩の沈殿物であることが推測された。
【0054】
図3は、現像液に添加されたキレート剤の効果についての検証実験の結果を示している。
【0055】
この各検証実験(5)〜(12)に使用された試験片Cは、ガラス基板上に、アルミニウム含有率が98molパーセントのアルミニウム合金により、スパッタリング法によって厚さ650nmの導電膜が形成され、さらに、この導電膜上に、レジスト材料として粘度が11CPSで分子量が約12500のノボラック樹脂を含む東京応化工業(株)製の製品名TFR−Hをスピンコート法(400rpm)によってコーティングすることによって、膜厚1.5μmのレジスト膜が形成されていて、それぞれ露光マスクを介して露光が行われている。
【0056】
検証実験(5)〜(11)は、それぞれ、試験片Cが各種キレート剤を含む温度45℃の強アルカリ性現像液に浸され、検証実験(12)は、試験片Cがキレート剤を含まない温度45℃の強アルカリ性現像液に浸されることによって行われた。
【0057】
すなわち、検証実験(5)は、試験片Cが、キレート剤として濃度0.1wtパーセントのエチレンジアミン4酢酸4ナトリウム(EDTA)を含む濃度0.3wtパーセントの水酸化ナトリウム(NaOH)現像液に浸されることにより行われた。
【0058】
検証実験(6)は、試験片Cが、濃度0.14wtパーセントのEDTAを含む濃度0.41wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0059】
検証実験(7)は、試験片Cが、濃度0.17wtパーセントのヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)を含む濃度0.5wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0060】
検証実験(8)は、試験片Cが、濃度0.17wtパーセントのクエン酸を含む濃度0.5wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0061】
検証実験(9)は、試験片Cが、濃度0.17wtパーセントのリンゴ酸を含む濃度0.51wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0062】
検証実験(10)は、試験片Cが、濃度0.01wtパーセントのグルコン酸ソーダを含む濃度0.3wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0063】
検証実験(11)は、試験片Cが、濃度0.1wtパーセントのグルコン酸ソーダを含む濃度0.3wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0064】
検証実験(12)は、試験片Cが、キレート剤を含まない濃度0.3wtパーセントのNaOH現像液に浸されることにより行われた。
【0065】
そして、この各検証実験(5)〜(12)において、強アルカリ性現像液に浸された後の試験片Cがそれぞれ純水によって10秒間洗浄され、その後に、各試験片Cに対して、残渣が生成されているか否かの確認が行われた。
【0066】
この各試験片Cに対する残渣の生成の有無の確認は、目視と波長400〜450nmの光の透過率の検出によって行われた。
【0067】
すなわち、図3において、先ず目視によって残渣の生成が確認された試験片Cについては「有」と表示され、目視では残渣の生成が確認されなかったが、導電膜が溶解されて除去された部分におけるガラス基板の波長400〜450nmの光の透過率が88パーセント未満である試験片Cについては「若干有」と表示され、目視によって確認されす波長400〜450nmの光の透過率も88パーセント以上の試験片Cについては「無」と表示されている。
【0068】
なお、このときの各試験片Cのガラス基板の透過率は、88.77パーセントであった。
【0069】
上記検証実験の結果、残渣を残さなかった現像液に含まれていたキレート剤は、EDTAとHEDP,グルコン酸ソーダであり、その含有量はそれぞれ0.1wtパーセント以上であることが分かった。
【0070】
この図3には、さらに、各検証実験(5)〜(12)において計測されたレジスト膜の現像および導電膜のエッチングの完了時間と、レジスト膜の未露光部分の溶解時間が記載され、さらに、各現像液ごとのレジスト膜の現像および導電膜のエッチングの完了時間とレジスト膜の未露光部分の溶解時間との比較によって、レジスト膜の未露光部分が溶解されるまでに、レジスト膜の現像および導電膜のエッチングの完了するか否かのコントラスト評価の結果が記載されている。
【0071】
これは、現像液によってレジスト膜の未露光部分が溶解されてしまう前に導電膜のエッチングが完了しない場合には、レジスト膜が、その未露光部分の溶解によってレジスト・マスクとしての機能を果たすことが出来なくなり、これによって、残留させるべき導電膜のパターン形成部分が溶解されてしまう虞があるためである。
【0072】
このコントラスト評価によって、キレート剤がEDTAである場合には、現像液によってレジスト膜の未露光部分が溶解されてしまう前に導電膜のエッチングが完了するが、キレート剤がグルコン酸ソーダである場合には、導電膜のエッチングが完了する前にレジスト膜の未露光部分が溶解されてしまう虞があることが分かる。
【0073】
以上のことから、EDTAが、残渣を発生させることがなく、さらに、レジスト膜の未露光部分が溶解されてしまう前に導電膜のエッチングが完了するため、アルカリ現像液に添加されるキレート剤として最適であることが分かった。
【0074】
図4は、レジスト膜を形成する数種類のレジスト材について行われたコントラスト評価実験の結果を示したものである。
【0075】
このコントラスト評価実験において使用された試験片D,E,Fは、何れも、ガラス基板上に厚さ650nmの導電膜が、スパッタリング法によって、アルミニウム含有率98molパーセントのアルミニウム合金により形成されている。
【0076】
そして、試験片Dには、上記の導電膜上に、分子量6000のノボラック樹脂を含有する東京応化工業(株)社製の製品名「TFR6000」がスピンコート法(400rpm)によってコーティングされることにより、厚さは1.5μmのレジスト膜が形成されている。
【0077】
試験片Eには、上記の導電膜上に、分子量10000のノボラック樹脂を含有する東京応化工業(株)社製の製品名「TFR1070S4」がスピンコート法(400rpm)によってコーティングされることにより、厚さは1.5μmのレジスト膜が形成されている。
【0078】
試験片Fには、上記の導電膜上に、分子量15000のノボラック樹脂を含有する東京応化工業(株)社製の製品名「OFPR800」がスピンコート法(400rpm)によってコーティングされることにより、厚さは1.5μmのレジスト膜が形成されている。
【0079】
このコントラスト評価実験に使用された現像液は、キレート剤として濃度が1.0wtパーセントのEDTAを含んだ濃度が0.8wtパーセントの水酸化カリウム(KOH)溶液である。
【0080】
そして、このコントラスト評価実験は、この強アルカリ性現像液に各試験片D,E,Fを浸して、レジスト膜の現像および導電膜のエッチングの完了時間T1と、レジスト膜の未露光部分の溶解時間T2とを測定することにより行われた。
【0081】
図4には、各試験片D,E,F毎に、レジスト膜の現像および導電膜のエッチングの完了時間T1に対するレジスト膜の未露光部分の溶解時間T2の比(コントラスト値)T2/T1が記載されていて、試験片Dのコントラスト評価値は1.35であり、試験片Eのコントラスト評価値は2.13であり、試験片Fのコントラスト値は7.61になっている。
【0082】
この図4において、レジスト膜を形成するレジスト材に含有されるノボラック樹脂の分子量の増加率に比べて、試験片Fのコントラスト値が飛躍的に大きくなっている。
【0083】
現像液に添加されるキレート剤はアルカリビルダ(助剤)として作用するため、試験片DやEのようにコントラスト値が2程度かそれ以下である場合は、レジスト膜や導電膜の形成条件のばらつきによって、レジスト膜の未露光部の溶解が進んで導電膜のパターン形成部分もエッチングされてしまう虞がある。
【0084】
一方、試験片Fのようにコントラスト値が7以上である場合は、レジスト膜や導電膜の形成条件のばらつきを考慮した場合でも、導電膜のパターン部分がエッチングされる虞は無くなる。
【0085】
従って、図4の結果から、キレート剤を含有するアルカリ現像液を用いてレジスト膜の現像と導電膜のエッチングを並行して行う場合には、レジスト膜を形成するレジスト材に含有されるノボラック樹脂の好適な分子量は、15000以上であることが分かった。
【0086】
上記実施例における導電膜パターニング方法は、導電膜形成工程において、アルミニウムを含む導電材料によって基板上に導電膜が形成され、次のレジスト膜形成工程において、耐アルカリ性材料によってレジスト膜が導電膜上に積層して形成され、次の露光工程において、レジスト膜に対して露光マスクを介して露光が行われ、この露光工程の終了後、現像およびエッチング工程において、キレート剤が添加されたアルカリ性の現像液によって、レジスト膜の現像と導電膜のエッチングが並行して行われる実施形態の導電膜のパターニング方法を、その上位概念の導電膜のパターニング方法としている。
【0087】
この上位概念の実施形態を構成する導電膜パターニング方法によれば、レジスト膜の現像を行うアルカリ性の現像液によってレジスト膜の現像と並行して導電膜のエッチングが行われることによって導電膜のパターニングの工程数が少なくなり、そして、このレジスト膜の現像と導電膜のエッチングを並行して行う際に、アルカリ性の現像液に添加されたキレート剤によって、エッチングによって溶解したアルミニウムのイオンが封じ込まれて水溶性を維持することにより、レジスト膜に含まれている感光剤やその変成物等とアルミニウム・イオンが凝集して塩等の残渣が生成されるのを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の実施例における工程説明図であり、(a)は導電膜の形成工程,(b)はレジスト膜の形成工程,(c)は露光工程,(d)は現像およびエッチング工程,(e)は剥離工程をそれぞれ示している。
【図2】残渣メカニズム検証実験の結果を示す表図である。
【図3】コントラスト評価実験の結果を示す表図である。
【図4】キレート剤効果の検証実験の結果を示す表図である。
【符号の説明】
【0089】
P …基板
R …レジスト膜
L …導電膜
M …露光マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にアルミニウムを含む導電材料によって導電膜を形成する導電膜形成工程と、
この導電膜形成工程によって形成された導電膜上に耐アルカリ性材料によってレジスト膜を積層して形成するレジスト膜形成工程と、
このレジスト膜形成工程によって形成されたレジスト膜に対して露光マスクを介して露光を行う露光工程と、
この露光工程の終了後に、キレート剤が添加されたアルカリ性の現像液によって、レジスト膜の現像を行うとともに導電膜のエッチングを行う現像およびエッチング工程と、
を有していることを特徴とする導電膜パターニング方法。
【請求項2】
前記導電膜が、アルミニウムの含有率が90molパーセント以上のアルミニウム合金によって形成されている請求項1に記載の導電膜パターニング方法。
【請求項3】
前記キレート剤が、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウムである請求項1に記載の導電膜パターニング方法。
【請求項4】
前記現像液に含まれるキレート剤の濃度が、0.1wtパーセント以上である請求項1に記載の導電膜パターニング方法。
【請求項5】
前記現像液が、pH12〜13のアルカリ溶液である請求項1に記載の導電膜パターニング方法。
【請求項6】
前記レジスト膜を形成するレジスト材料にノボラック樹脂が含まれている請求項1に記載の導電膜パターニング方法。
【請求項7】
前記ノボラック樹脂の分子量が15000以上である請求項1に記載の導電膜パターニング方法。
【請求項8】
前記導電膜のパターニングによって平面ディスプレイパネルの電極が形成される請求項1に記載の導電膜パターニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−233233(P2007−233233A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57503(P2006−57503)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】