説明

排気ガス処理装置

【課題】過給機を備えたディーゼル機関の排ガス中のNOをEGRシステムを用いて除去する場合に、吸気管に循環する排気ガス量を増大可能にしてNO低減効果を向上させると共に、動力消費量を抑制して、省エネ、CO削減を達成する。
【解決手段】舶用ディーゼル機関10Aの排気管16に排気ガスeの一部を吸気集合管13に戻すEGR管路32を設ける。EGR管路32にはEGRバルブ34、EGRスクラバ36、EGRブロア38が介設されている。過給機20の伝達軸26に発電機40が設けられ、発電機40で発生した電力を導電線42を介してEGRブロア38の駆動モータ39に送り、該駆動モータ39を駆動する。タービン22の下流側排気管28にSCR触媒コンバータ28を設け、排気ガスe中のNOを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機を設けたディーゼル機関、特に舶用ディーゼル機関の排気ガス中のNO量低減に適用されて好適な排気ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関は、ガソリン機関よりも燃費に優れていることから、輸送業界などで舶用、自動車用などに広く用いられている。しかし、排気ガス中に含まれている未燃焼燃料などの粒子状物質(PM;Paticulate Matter)や、窒素酸化物として知られているNO(NO、NO等)などが問題になっている。そこで、排気ガスからこのNOを除去するための手段として、尿素水の加水分解によって得られたアンモニアガスにより、排気ガス中に含まれるNOを触媒上で還元して除去する方法が知られている。この方法は、SCR(Selective Catalytic Reduction;選択性還元触媒)システムとして知られている。
【0003】
特許文献1には、このSCRシステムが開示されている。このSCRシステムは、排気経路中の前段側において、ディーゼル機関の排気ガス中のPMと気体状の炭化水素成分とを取り除いた後、排ガス経路の後段側に設けられたSCR触媒上でアンモニアガスとNOとを反応させることによって、NOを還元して窒素と水とに変換するものである。
【0004】
図7に、舶用ディーゼル機関100の吸排気装置を模式的に示す。図7において、シリンダ102のシリンダヘッド102aの内部に排気弁104が設けられ、シリンダヘッド102aには排気管106が接続されている。排気管106には過給機110のタービン112が設けられ、タービン112は、シリンダヘッド102aから排気された排気ガスeにより回転駆動される。過給機110のコンプレッサ114は、タービン112と伝達軸116を介して一体に接続され、タービン112と共に回転する。
【0005】
コンプレッサ114が回転して被圧縮空気aを取り込み、被圧縮空気aを圧縮する。コンプレッサ114で圧縮された空気は、インタクーラ108で冷却された後、吸気集合管113を介してシリンダ12に供給される。シリンダ102には、圧縮空気と共に燃料(例えばC重油など)が噴射され、図示省略のピストンで圧縮されて発生した圧縮熱で着火し、該ピストンを駆動する。なお、図7中の温度値は、排気管106又は118の排気ガス温度を示す。
前記SCRシステムを構成するSCR触媒を内蔵したSCR触媒コンバータは、通常、タービン112の下流側の排気管118に設けられる。
【0006】
SCR触媒コンバータをタービン下流側排気管118に設けた場合、SCR触媒コンバータ28に流入する排気ガスの温度が250℃程度と低く、SCR触媒が正常に触媒機能を発揮できる温度である320℃程度に達しない。そのため、SCR触媒が正常に触媒機能を発揮できないという問題がある。
【0007】
これを解消するため、400℃程度の排気ガス温度を有するタービン上流側の排気管106にSCR触媒コンバータを配置することが考えられる。しかし、SCR触媒コンバータを排気管106に設けた場合、タービン112に供給されるべき熱を熱容量が大きいSCR触媒が奪ってしまうため、舶用ディーゼル機関100の過度特性が悪化するおそれがある。
【0008】
そこで、自動車の内燃機関や船用ディーゼル機関等では、別なNO低減手段として、排ガス再循環(EGR;Exhaust Gas Recirculation)方式が行なわれている。この方法は、排気側から排ガスの一部(EGRガス)を分岐させて吸気側へと戻し、吸気側に戻された排ガスでシリンダ内の燃焼を抑制し、燃焼温度を下げることにより、NOの発生を低減するものである。このEGRシステムでは、排気ガスをシリンダ又は吸気経路に円滑に導入するためには、排気ガス圧をシリンダ内又は吸気経路内の吸気圧より若干高く(昇圧)する必要がある。
【0009】
特許文献2には、このEGRガスを吸気管に向けて良好に再循環させるための手段が開示されている。特許文献2に開示された手段は、過給機とEGRシステムを備えた自動車の内燃機関等において、過給機に該過給機のタービンと回転軸を共有する発電機を付設したものである。この発電機の作動が抵抗となって該回転軸にブレーキ(制動トルク)がかかる。これによりタービン側での排気ガス通気抵抗を増大させるので、タービン上流側の排気マニホールドにおける排気圧を高め、吸気管への排気ガスの再循環を良好にしようとするものである。
【0010】
特許文献3には、EGRシステムを備えた過給機付き内燃機関において、EGRガスを吸気管に循環する循環管に気体圧縮機等の送風手段を設け、該送風手段により循環路を流れるEGRガスを圧送して、EGRガスの循環量を増大させるようにした手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−209896号公報
【特許文献2】特開2002−266649号公報
【特許文献3】特開2005−188359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に開示されたEGRシステムでは、発電機によるブレーキ(制動トルク)効果に頼っているので、吸気管へ循環する排気ガスの圧力増大はあまり期待できない。また、発電機のブレーキ効果が排気ガスによるタービンの駆動効率を低下させるという問題がある。
特許文献3に開示されたEGRシステムは、気体圧縮機等の送風手段を駆動する動力を必要とし、省エネ及びCO削減が求められている昨今の趨勢に逆行する。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、過給機を備えたディーゼル機関の排ガス中のNOをEGRシステムを用いて除去する場合に、吸気管に循環する排気ガス量を増大可能にしてNO低減効果を向上させると共に、動力消費量を抑制して、省エネ、CO削減を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するため、本発明の排気ガス処理装置は、過給機が設けられたディーゼル機関の排気ガスの一部を吸気経路に循環させる循環路を備え、該循環路を介して排気ガスの一部を吸気経路に循環させ、燃焼温度を低減してNOの発生を抑制するようにした排気ガス処理装置において、前記循環路に介設された送風機と、コンプレッサとタービンとを連結した過給機の動力伝達軸に接続され該動力伝達軸から動力を得る動力取出し装置と、を備え、該動力取出し装置で取り出した動力で前記送風機を駆動して前記吸気経路に供給される排気ガスの圧力を吸気圧より高くするように構成したものである。
【0015】
本発明装置では、排気ガスの一部を吸気経路に循環する循環路に送風機を設け、前記動力取出し装置で該送風機を駆動するようにしているため、吸気経路に供給する排気ガスの圧力を容易に高くできる。そのため、排気ガスを設定量だけ確実に吸気経路に供給できるので、EGRシステムによるNO低減を確実に達成できる。
また、該送風機を駆動する動力を過給機から得るようにしているので、該送風機を駆動するための特別の駆動装置を必要としない。そのため、省エネ及びCO削減に寄与できる。
【0016】
本発明装置において、動力取出し装置が発電機であり、該発電機で得た電力により送風機を駆動するようにするとよい。これによって、該発電機で得た電力を導電線により送風機の駆動モータに供給できるので、動力伝達手段を簡素化かつ低コストにできると共に、伝達途中での動力損失を低減できる。
【0017】
本発明装置において、動力取出し装置が、過給機の動力伝達軸の回転を送風機の駆動軸に伝達して該駆動軸を駆動する機械的動力伝達機構であるとよい。このように、動力伝達軸の回転を、例えば歯車や回転軸等の機械的動力伝達機構を用いて送風機に伝達することで、動力伝達軸の回転を確実に送風機の駆動軸に伝達できる。また、機械的動力伝達機構に増速装置や減速装置を介在させて、送風機を増速又は減速するのが容易になるので、排ガス経路に戻す排ガス量の調整が容易になる。
【0018】
本発明装置において、ディーゼル機関の負荷と、該負荷に対応して必要な排気ガス循環量と、該排気ガス循環量に対応した送風機駆動速度との相関を示す相関マップを予め作成しておき、該相関マップに基づいて送風機駆動速度を制御するコントローラを備えるようにするとよい。これによって、ディーゼル機関の負荷に対応して、排気ガス中のNO量低減のために最適の送風機駆動速度を選択できる。
【0019】
本発明装置において、ディーゼル機関が舶用ディーゼル機関であり、該舶用ディーゼル機関を搭載した船舶の航行位置を計測する位置計測装置と、該位置計測装置により該船舶が排ガス規制海域に入ったことを検知した時に、前記コントローラで送風機駆動速度を制御するように構成するとよい。
これによって、船舶が排ガス規制海域を航行するときに、排ガス規制海域の排ガス規制値を満たす運転を行なうことができる。
【0020】
本発明装置において、過給機のタービン下流側排ガス経路に選択性還元触媒を内蔵した触媒コンバータを設け、該下流側排ガス経路を通る排気ガス中のNO除去を行なうようにするとよい。このように、EGRシステムとSCRシステムとを併用することにより、排気ガス中のNO排出量を極く微量に低減できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明装置によれば、過給機が設けられたディーゼル機関の排気ガスの一部を吸気経路に循環させる循環路を備え、該循環路を介して排気ガスの一部を吸気経路に循環させ、燃焼温度を低減してNOの発生を抑制するようにした排気ガス処理装置において、循環路に介設された送風機と、コンプレッサとタービンとを連結した過給機の動力伝達軸に接続され該動力伝達軸から動力を得る動力取出し装置と、を備え、該動力取出し装置で取り出した動力で送風機を駆動して吸気経路に供給される排気ガスの圧力を吸気圧より高くするように構成したので、吸気経路に供給する排気ガスの圧力を容易に高くでき、そのため、排気ガスを確実に吸気経路に供給できるので、EGRシステムによるNO低減を確実に達成できる。
また、該送風機を駆動する動力を過給機から得るようにしているので、該送風機を駆動するための特別の駆動装置を必要とせず、そのため、省エネ及びCO削減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係る舶用ディーゼル機関の排気系統を示す系統図である。
【図2】本発明装置の第2実施形態に係る舶用ディーゼル機関の排気系統を示す系統図である。
【図3】本発明装置の第3実施形態に係る舶用ディーゼル機関の排気系統を示す系統図である。
【図4】前記第3実施形態の操作手順を示すフローチャートである。
【図5】前記第3実施形態で、予め作成された機関負荷とEGR率との相関を示す相関マップである。
【図6】前記第3実施形態で、予め作成された機関負荷とブロア必要電力との相関を示す相関マップである。
【図7】舶用ディーゼル機関の排ガス系統を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0024】
(実施形態1)
本発明を舶用ディーゼル機関に適用した第1実施形態を図1により説明する。図1に示す本実施形態の舶用ディーゼル機関10Aにおいて、シリンダ12のシリンダヘッド12aの内側に排気弁14が設けられ、シリンダヘッド12aには排気管16が接続されている。排気管16には過給機20を構成するタービン22が設けられている。タービン22は、シリンダヘッド12aから排気された排気ガスeにより回転駆動される。過給機20のコンプレッサ24は、タービン22と伝達軸26を介して一体に接続され、タービン22と共に回転する。
【0025】
排気ガスeによりタービン22が回転すると、コンプレッサ24が回転して被圧縮空気aを取り込み、被圧縮空気aを圧縮する。コンプレッサ24で圧縮された空気は、インタクーラ18で冷却された後、吸気集合管13を介してシリンダ12に供給される。シリンダ12には、圧縮空気と共に燃料(例えばC重油など)が噴射される。噴射された圧縮空気と燃料とは、図示省略のピストンで圧縮されて発生した圧縮熱で着火し、該ピストンを駆動する。タービン22の下流側排気管28には、SCR触媒を内蔵したSCR触媒コンバータ30が設けられている。
【0026】
シリンダヘッド12aには、排気ガスeの一部を排気管16から分岐してシリンダ12に戻すEGR管路32が設けられている。EGR管路32には、排気ガスeから一部分岐した排気ガス(EGRガスE)が流れる。EGR管路32には、EGRバルブ34と、EGRガスEからPMを除去するEGRスクラバ36と、排気ガスEを強制的にシリンダ12に圧送するEGRブロア38とが、上流側から順に設けられている。EGRスクラバ36は従来公知の構造を有している。
【0027】
過給機20で、タービン22とコンプレッサ24とを一体に連結する伝達軸26には、発電機40が接続され、伝達軸26の回転により発電機40で電力が発生する。発生した電力は、導電線42を介してブロア36の駆動モータ39に送られ、該駆動モータ39を駆動する。
【0028】
かかる構成において、EGR管路32に分岐したEGRガスEは、EGRスクラバ36で混入しているPMを除去され、EGRブロア38で圧送されて、シリンダ12内に戻される。これによって、シリンダ12内の燃焼を抑制し、燃焼温度を下げることができ、NOの発生を低減できる。
【0029】
シリンダ12から出た排気ガスeは、排気管28に達する。排気管28では、尿素水溶液又はアンモニア水溶液等の還元剤水溶液rが噴霧される。これらの還元剤水溶液rは、排気ガスeの保有熱で蒸発し、このうち尿素水溶液はアンモニアガスに加水分解される。SCR触媒コンバータ30に到達した排気ガスeは、SCR触媒コンバータ30に内蔵されたSCR触媒上でアンモニアガスと反応して還元され、窒素と水に変換される。こうして、NOを除去された排気ガスeは、外部に排出される。
【0030】
本実施形態によれば、EGR管路32に分岐したEGRガスEをEGRブロア38でシリンダ12に圧送するようにしているので、EGRガスEの圧力をシリンダ12内の圧力より高くできる。そのため、EGRガスEを設定した量だけ確実にシリンダ12内に供給でき、これによって、シリンダ12内の燃焼温度を低下させ、NOの発生を低減できる。
また、EGRブロア38の駆動モータ39を発電機40で発生させた電力で駆動するようにしているので、特別な駆動装置を必要としない。そのため、省エネを達成でき、COの発生を抑制できる。
【0031】
また、発電機40で得た電力を駆動モータ39に伝達する手段が、導電線42を用いただけの簡単な構成で可能になるので、動力伝達手段を簡素化かつ低コストにできると共に、伝達途中での動力損失を低減できる。
【0032】
(実施形態2)
次に、本発明装置の第2実施形態を図2により説明する。図2に示す本実施形態の舶用ディーゼル機関10Bにおいて、本実施形態では、伝達軸26の回転を、歯車や回転軸等を用いた機械的動力伝達機構44を用いてEGRブロア38の図示省略の駆動軸に伝達するようにしている。本実施形態のその他の構成は、前記第1実施形態と同一である。
【0033】
本実施形態によれば、機械的動力伝達機構44を用いたことにより、伝達軸26の回転を確実にブロア38の駆動軸に伝達できる。また、機械的動力伝達機構44に増速装置や減速装置を介在させるのが容易であり、EGRブロア38の増速制御又は減速制御が容易になる。そのため、EGRガスEのシリンダ12内への供給量の調整が容易になり、NO低減に最適な供給量とすることができる。
【0034】
(実施形態3)
次に、本発明装置の第3実施形態を図3〜図6により説明する。本実施形態の舶用ディーゼル機関10C及びその排気ガス処理装置の構成は、前記第1実施形態の舶用ディーゼル機関10Aと同一であり、該舶用ディーゼル機関10Aと同一構成のEGRシステム及びSCRシステムを備えている。
図3において、本実施形態の舶用ディーゼル機関10Cは、コントローラ50及び舶用ディーゼル機関10Cを搭載した船舶の位置を計測するGPS等の位置計測装置52を備えている。また、予め、目標EGR率マップ54及びブロア必要電力マップ56が作成され、これらのマップがコントローラ50の記憶装置に収納されている。
【0035】
図5に示すように、目標EGR率マップ54は、機関負荷の値と必要EGR率(全排気ガス量に対するEGRガス量の割合)との相関を示すマップである。該必要EGR率は、各機関負荷値に対応して設定され、排気ガスe中のNO量を低減できる最適なEGRガス量に対応したEGR率である。
【0036】
図6に示すように、ブロア必要電力マップ56は、機関負荷の値とEGRブロア38の必要駆動速度(必要電力)との相関を示すマップである。必要駆動速度(必要電力)は、各機関負荷値に対応して設定され、排気ガスe中のNO量を低減できるEGRブロア38の最適な必要駆動速度(必要電力)である。
【0037】
かかる構成において、まず、コントローラ50に機関負荷信号58が入力されると共に、コントローラ50では、入力された該機関負荷値に対応して、前記マップから得られる最適なEGR率及びブロア必要電力を選択する。コントローラ50で、これら選択されたEGR率及びブロア必要電力となるように、EGRバルブ34の開度と駆動モータ39を制御する。
【0038】
次に、図4により本実施形態の操作手順を説明する。図4において、まず、GPS等の位置計測装置52で船舶の位置を検出する(ステップ1)。この検出結果により船舶が排気ガス規制の特に厳しい特定海域に近づいているときには、EGRブロア38を駆動する。特定海域でないときは、通常運航を行なう(ステップ2)。特定海域に近づいているときは、さらにEGRバルブ34を開放する(ステップ3)。
【0039】
次に、コントローラ50に機関負荷信号を入力し、この機関負荷信号に対応した目標EGR率及びブロア必要電力となるように、コントローラ50でEGRバルブ34の開度及びEGRブロア38の駆動速度を制御する(ステップ4)。この状態で特定海域を運航する(ステップ5)。次に、ステップ1に戻り、船舶が特定海域から脱すれば、通常運航に戻る。
【0040】
本実施形態によれば、排気ガス規制値の異なる海域に対応して排気ガス処理装置を運転でき、夫々の異なる排気ガス規制値を満たすことができる。
船舶が特に排気ガス規制が厳しい特定海域を運航する場合でも、予め作成された目標EGR率マップ54及びブロア必要電力マップ56に基づいて、排気ガス中のNO量を低減できるEGRガス量に制御できるので、特定海域の排気ガス規制基準を満たすことができる。また、この制御を、機関運転手に頼ることなく、自動化して行なうことができる。
【0041】
なお、前記実施形態はいずれも本発明を舶用ディーゼル機関に適用したものであるが、本発明の用途は、舶用ディーゼル機関に限定されるものではなく、例えば、自動車等に搭載されたディーゼル機関にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、過給機を設けたディーゼル機関において、排ガス中のNO低減を達成できると共に、省エネ及びCO削減を同時に実現できる。
【符号の説明】
【0043】
10A,10B、10C、100 舶用ディーゼル機関
12,102 シリンダ
12a、102a シリンダヘッド
13,103 吸気集合管
14,104 排気弁
16、28、106,118 排気管
18,108 インタクーラ
20、110 過給機
22、112 タービン
24、114 コンプレッサ
26,116 伝達軸(動力伝達軸)
30 SCR触媒コンバータ
32 EGR管路
34 EGRバルブ
36 EGRスクラバ
38 EGRブロア
40 発電機(動力取出し装置)
42 導電線
44 機械的動力伝達機構(動力取出し装置)
50 コントローラ
52 位置計測装置
54 目標EGR率マップ
56 ブロア必要電力マップ
E EGRガス
a 被圧縮空気
e 排ガス
r 還元剤水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機が設けられたディーゼル機関の排気ガスの一部を吸気経路に循環させる循環路を備え、該循環路を介して排気ガスの一部を吸気経路に循環させ、燃焼温度を低減してNOの発生を抑制するようにした排気ガス処理装置において、
前記循環路に介設された送風機と、コンプレッサとタービンとを連結した過給機の動力伝達軸に接続され該動力伝達軸から動力を得る動力取出し装置と、を備え、
該動力取出し装置で取り出した動力で前記送風機を駆動して前記吸気経路に供給される排気ガスの圧力を吸気圧より高くするように構成したことを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項2】
前記動力取出し装置が発電機であり、該発電機で得た電力により送風機を駆動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項3】
前記動力取出し装置が、過給機の動力伝達軸の回転を送風機の駆動軸に伝達して該駆動軸を駆動する機械的動力伝達機構であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項4】
ディーゼル機関の負荷と、該負荷に対応して必要な排気ガス循環量と、該排気ガス循環量に対応した送風機駆動速度との相関を示す予め作成された相関マップと、
該相関マップに基づいて送風機駆動速度を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の排気ガス処理装置。
【請求項5】
前記ディーゼル機関が舶用ディーゼル機関であり、該舶用ディーゼル機関を搭載した船舶の航行位置を計測する位置計測装置と、該位置計測装置により該船舶が排ガス規制海域に入ったことを検知した時に、前記コントローラで送風機駆動速度を制御するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の排気ガス処理装置。
【請求項6】
過給機のタービン下流側排ガス経路に選択性還元触媒を内蔵した触媒コンバータを設け、該下流側排ガス経路を通る排気ガス中のNO除去を行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112006(P2011−112006A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270762(P2009−270762)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】