説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】撮像対象との距離を表す距離画像を生成する際に、撮像対象の光反射やその光沢などの外乱、測定原理等に起因する距離の誤差の低減を実現する。
【解決手段】撮像対象との距離を計測するための画像を撮像する第1の撮像手段110と、第1の撮像手段110で撮像された画像に基づくデータを用いて撮像対象までの距離を算出する距離算出手段130と、偏光成分を計測するための画像を撮像する第2の撮像手段122と、第2の撮像手段122で撮像された画像に基づくデータを用いて偏光状態の解析処理を行う偏光解析手段140と、距離算出手段130で算出された距離に係る距離情報103及び偏光解析手段140で解析処理された偏光状態に係る偏光解析情報105に基づいて、撮像対象の距離画像106を生成する距離画像生成手段150を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像対象の距離画像を生成する撮像装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の説明においては、撮像対象までの距離を画素の値として構成される画像のことを「距離画像」と呼ぶ。従来、この距離画像を計測する撮像装置の方式として、複数の方式が知られているが、ここでは計測の際に走査動作を必要とせず、1回の撮影で距離画像を取得する撮像装置とその方式について説明する。
【0003】
距離画像を取得するための撮像装置として様々な方式が提案されており、例えば、照射した光線が撮像対象で反射して戻るまでの飛行時間(Time of flight:TOF)を用いる方式や、複数枚の画像からステレオ法で奥行きを求める方式がある。更には、変調波などのパターン光を投影して奥行きを求める方式や、主光学系によって集光された光を副光学系によって分離して2つの像を結像させ、それぞれの視差から合焦状態を検出する測距センサと呼ばれる方式などがある。この測距センサの方式では、焦点面を基準として相対的な奥行きの情報が取得される。
【0004】
また、偏光とは、光の振動方向が特定の方向に偏った状態を指す。そして、特定の振動方向の光のみを透過させる偏光光学系を用いることで、光の偏光成分を測定することができる。また、偏光の情報を元に物体(撮像対象)までの距離情報を直接推定することはできないが、偏光状態を解析して偏光方位角を求めることにより物体表面の法線の方位を知ることができる。また、偏光度を求めれば、法線の傾きを推定することができる。また、偏光成分と無偏光成分とを区別して反射光成分を取り除き、距離画像の測定精度を向上させることも可能である。
【0005】
このような偏光解析によって観測対象の形状を推定する手法は、「Shape from polarization」と呼ばれ、その関連手法が複数提案されている。例えば、下記の非特許文献1では、光沢の多い金属表面に対して偏光解析を行って形状を推定する技術を開示している。また、偏光解析を行うためには、従来は、非特許文献1に示す方法のように、結像光学系の前に線偏光フィルタを配置し、偏光の方向を機械的に回転させて特定の偏光成分のみを透過させ、画像を複数枚撮影する必要があった。また、別の先行技術では液晶偏光フィルタも使われており、この場合は、電気的に偏光の方向を変化させている。これらの方式は、いずれにしても、複数の撮像動作が必要であり、リアルタイム性の点で他の光学測定方式と複合的に利用することが難しい。
【0006】
これらに対して、下記の特許文献1には、1回の撮影画像のみから偏光解析を行うことができる装置が開示されている。特許文献1に記載の撮像装置は、例えば後述する図3に示すように、受光素子123と、受光素子123の画素数と同数のアレイ状の偏光子301からなる偏光光学系122が備わっている。この偏光光学系122には、偏光方向が相異なる偏光子(301a〜301d)が規則的に配置されている(図3では、偏光子のうちの一部のみを図示している)。また、偏光子301a〜301dに対応する受光素子123の画素302a〜302dにおいては、それぞれ異なった偏光成分の光が記録されることになる(図3では、受光素子のうちの一部のみを図示している)。このような撮像装置で撮像を行い、所定の画素のみから情報を読み出して画像を再構成すれば、4方向のうちの任意の偏光成分の画像を得ることができる。そして、このような構成を用いることにより、偏光解析に必要な複数方向の偏光成分のデータを1回の撮像で取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−86720号公報
【特許文献2】特開2006−46960号公報
【特許文献3】特開昭55−155331号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】O. Morel, F. Meriaudeau, C. Stolz and P. Gorria, Polarization imaging applied to 3D inspection of specular metallic surfaces, Machine Vision Applications in Industrial Inspection XIII, Proceedings of SPIE, vol. 5679, pp. 178-186, 2005.
【非特許文献2】M. Bass edit., Handbook of optics Vol.II, Optical Society of America, McGraw-Hill, New York, 1995.
【非特許文献3】B. K. P. Horn and M. J. Brooks, edit., Shape from Shading, The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 1989.
【非特許文献4】S. Geman and D. Geman, Stochastic relaxation, Gibbs distribution, and the Bayesian restoration of images, IEEE Trans. on PAMI, Vol.6, No.6, pp.721-741, 1985.
【非特許文献5】Y. Boykov and G. Funka-Lea. Graph Cuts and Efficient N-D Image Segmentation. International Journal of Computer Vision, vol. 70, no. 2, pp. 109-131, 2006.
【非特許文献6】C. Tomasi and R. Manduchi, "Bilateral Filtering for Gray and Color Images", Proceedings of the 1998 IEEE International Conference on Computer Vision, Bombay, India, 1998.
【非特許文献7】P. J. Rousseeuw and A. M. Leroy. Robust Regression and Outlier Detection. John Wiley & Sons, New York, 1987.
【非特許文献8】R.J. Rousseeuw, Least median of squares regression, J. American Stat. Assoc., Vol.79, pp.871-880, 1984.
【非特許文献9】de Bruijn, N. G. "A Combinatorial Problem." Koninklijke Nederlandse Akademie v. Wetenschappen vol. 49, pp. 758-764, 1946.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のいくつかの距離画像の撮影方式においては、計測原理に起因する理由により、特定の条件下で計測精度が低下することがある。
【0010】
例えば、TOFを用いる方式では、照射光に近赤外光などが多く用いられるが、拡散反射や多重反射のために、空間解像度が低下することがある。特に、測定対象と床面などとの多重反射によって精度が低下することがあり、この現象は、測定対象に近接して測定したときに顕著に生じる。また、環境中の外光の混入や映り込みも外乱要因となる。
【0011】
また、ステレオ法は、画像間の相関の高い領域や対応点を求めて三角測量の原理で距離を求める方式である。このため、対応の手掛かりとなる点や線が存在する領域についてしか距離を計測することができず、輝度分布の変化がないか、もしくは緩やかに変化しているような領域では距離を計測できない。また、物体の凹凸面に視差によって遮蔽が生じる場合があるが、このように遮蔽された領域の距離も計測できない。ステレオ法では、このような原因で測定値が欠落することがあり、欠落の生じた領域は何らかの方法で補完する必要がある。
【0012】
また、パターン光を用いる方式では、ステレオ法と同様に三角測量を原理とするため、パターン光の陰となる領域では距離を計測できない。また、パターン光として空間的に強度を変化させた変調波を使う方式があるが、パターン光に対する反射率が異なる模様などが物体表面に存在する場合、この方式では計測精度が下がる恐れがある。
【0013】
また、測距センサを用いる方式においては、その特性はステレオ法の方式に準じ、コントラストの低い領域での測定精度が低い。
【0014】
また、上記の4つのいずれの方式にも共通する特性として、金属面や光沢面などの0次反射光成分のある面の計測は困難であることが挙げられる。
【0015】
上述したような精度の低下を補うために、複数の距離計測方式で撮影を行い、測定結果を補完して相補的に精度を向上させることが可能である。しかしながら、0次反射光成分に対して精度が低下する点などは各方式間で共通しているため、各方式の組み合わせによる装置の大型化や煩雑さといった短所が増す割に、効果的に外乱を除去できない可能性がある。
【0016】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、撮像対象との距離を表す距離画像を生成する際に、撮像対象の光反射やその光沢などの外乱、測定原理等に起因する距離の誤差の低減を実現する撮像装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の撮像装置は、撮像対象との距離を計測するための画像を撮像する第1の撮像手段と、前記第1の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、前記撮像対象までの距離を算出する距離算出手段と、偏光成分を計測するための画像を撮像する第2の撮像手段と、前記第2の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、偏光状態の解析処理を行う偏光解析手段と、前記距離算出手段で算出された距離に係る距離情報と、前記偏光解析手段で解析処理された偏光状態に係る偏光解析情報とに基づいて、前記撮像対象の距離画像を生成する距離画像生成手段とを有する。
【0018】
本発明の撮像装置の制御方法は、撮像対象との距離を計測するための画像を撮像する第1の撮像手段と、偏光成分を計測するための画像を撮像する第2の撮像手段を備える撮像装置の制御方法であって、前記第1の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、前記撮像対象までの距離を算出する距離算出ステップと、前記第2の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、偏光状態の解析処理を行う偏光解析ステップと、前記距離算出ステップで算出された距離に係る距離情報と、前記偏光解析ステップで解析処理された偏光状態に係る偏光解析情報とに基づいて、前記撮像対象の距離画像を生成する距離画像生成ステップとを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮像対象との距離を表す距離画像を生成する際に、撮像対象の光反射やその光沢などの外乱、測定原理等に起因する距離の誤差の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の概要を示し、三次元画像撮像装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る三次元画像撮像装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図3】図2に示す第2の撮像手段の内部の偏光光学系及び第2の受光素子の詳細な構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る三次元画像撮像装置の概略構成の他の例を示す模式図である。
【図5】図4に示す第1の撮像手段及び第2の撮像手段の内部の偏光光学系及び受光素子の詳細な構成の一例を示す模式図である。
【図6】撮像対象の物体表面の法線の方位角及び傾きの一例を示す模式図である。
【図7】三次元物体について偏光方位角と偏光度の観測例を示す模式図である。
【図8】計測された距離情報と偏光解析情報とに基づいて、距離画像を生成した結果の一例を示す模式図である。
【図9】撮像対象の物体表面の法線の傾きの一例を示す模式図である。
【図10】(5)式において、n=1.6、k=5としたときの偏光度ρと物体表面の法線の傾きφとの関係の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の第1の実施形態を示し、偏光解析手段による偏光解析処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第1の実施形態を示し、領域分割処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第1の実施形態を示し、距離画像生成手段による距離情報と表面形状情報との統合処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第1の実施形態を示し、距離画像生成手段による距離情報と表面形状情報との統合処理の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る三次元画像撮像装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図16】本発明の第2の実施形態を示し、距離算出手段において、パターン光による三角測量の距離算出の原理を説明する模式図である。
【図17】本発明の第2の実施形態を示し、距離算出手段において、パターン光による距離算出の際の欠落領域の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の第2の実施形態を示し、距離画像生成手段による距離情報と表面形状情報との統合処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る三次元画像撮像装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図20】本発明の第3の実施形態を示し、測距センサの原理の一例を示す模式図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る三次元画像撮像装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る三次元画像撮像装置の概略構成の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(実施形態)について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る撮像装置として、例えば、三次元の距離計測を行うための距離画像を生成する三次元画像撮像装置を適用した例を説明する。
【0022】
−本発明の概要−
まず、本発明の具体的な各実施形態を説明する前に、本発明の概要について説明する。
【0023】
図1は、本発明の概要を示し、三次元画像撮像装置100の概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示す三次元画像撮像装置100は、第1の撮像手段110と、第2の撮像手段120と、距離算出手段130と、偏光解析手段140と、距離画像生成手段150を有して構成されている。
【0024】
第1の撮像手段110は、撮像対象からの入力光101aを結像させる第1の結像光学系111と、測距用光学系112と、第1の受光素子113を有して構成され、距離計測のための画像を撮像するものである。
【0025】
第2の撮像手段120は、撮像対象からの入力光101bを結像させる第2の結像光学系121と、偏光光学系122と、第2の受光素子123を有して構成され、偏光成分計測のための画像を撮像するものである。
【0026】
距離算出手段130は、第1の撮像手段110で撮像された画像から得られる計測データ102から撮像対象との距離に係る距離情報103を算出する。
【0027】
偏光解析手段140は、第2の撮像手段120で撮像された画像から得られる偏光成分データ104を解析し、解析結果を偏光解析情報105として出力する。ここで、偏光成分データ104とは、偏光子(例えば、後述する図3の301)を通過させて得られる特定の方向に偏光された画像データを指す。また、偏光解析情報105とは、偏光成分データ104を解析して得られる偏光度や偏光方位角といった偏光に係る二次的な情報を指す。
【0028】
距離画像生成手段150は、距離算出手段130で算出された距離情報103と、偏光解析手段140から出力された偏光解析情報105に基づいて、撮像対象との距離を表す距離画像106を生成する。
【0029】
また、本明細書では、便宜的に、従来の距離計測手段によって得られる情報を距離情報と呼び、距離情報と偏光解析情報を統合し、推定して得られる情報のことを距離画像と呼んで区別する。
【0030】
このように、本発明に係る三次元画像撮像装置100では、第1の撮像手段110で撮像された距離計測のための画像から得られた距離情報103と、第2の撮像手段120で撮像された偏光成分計測のための画像から得られた偏光解析情報105を用いる。即ち、本発明では、距離情報103と偏光解析情報105という、光学的な特性の異なる2つの情報を統合することにより、測定値の欠落した欠落領域や外乱による誤差が生じている領域を他方の情報で補完するようにするものである。これにより、本発明に係る三次元画像撮像装置100では、撮像対象の光沢面の測定精度が向上するなど、従来の距離測定方式の測定誤差を低減した距離画像を生成することができる。
【0031】
即ち、本発明に係る三次元画像撮像装置100によれば、撮像対象との距離を表す距離画像を生成する際に、撮像対象の光反射やその光沢などの外乱、測定原理等に起因する距離の誤差の低減を実現することができる。
【0032】
また、第1の撮像手段110としては、例えば、光線の飛行時間(TOF)を利用した画像を撮像するもの、或いは、パターン光を用いる方式やステレオ方式による距離情報に係る画像を撮像するもの等を適用することができる。なお、第1の撮像手段110としては、この様態に限定されるものではなく、距離計測のための画像を撮像するものであればどのような方式のものでも適用可能である。また、第1の撮像手段110は、受動的な計測方式でもよく、能動的な計測方式でもよい。
【0033】
また、第1の受光素子113と第2の受光素子123を、1つの受光素子のパネルの上に混在させて形成することも可能である。また、一種類の受光素子を用いて距離計測と偏光成分計測とを交互に行うことも可能である。さらに、一種類の受光素子を用いて距離計測と偏光成分計測を同時に行うことも可能である。
【0034】
また、偏光解析情報105としては、例えば、直線偏光の偏光方位角と偏光度の情報を用いることができる。なお、偏光解析情報105としては、この直線偏光の情報に限るものではなく、例えば、円偏光成分の情報を用いる態様でもよい。また、本発明に係る三次元画像撮像装置100では、偏光方位角が撮像対象の物体表面の法線の方位と一致し、偏光度が撮像対象の物体表面の法線の傾きに依存することを利用し、2つの属性から撮像対象の表面形状を復元するようにする。そして、撮像対象の表面形状の復元の際に、例えば距離情報を用いることによって、偏光方位角の曖昧性を排して偏光方位角を一意に決定することを可能とする。
【0035】
また、偏光解析情報105として、偏光成分と無偏光成分の情報を利用し、2つの成分を分離することによって撮像対象の表面の映り込みや反射光成分を取り除く。また、例えば距離画像生成手段150は、距離情報103と、偏光成分データ104を解析して得られる偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)とを比較する。そして、例えば距離画像生成手段150は、距離情報103と偏光解析情報105のどちらか一方に分布の不連続性を生じさせ、他方には影響を及ぼさないような成分を外乱成分として除去する。
【0036】
また、例えば距離画像生成手段150は、距離情報103の欠落部分(例えば、図17に示す欠落領域1701)を、偏光成分データ104を解析して得られる偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)を用いて補完する。
【0037】
また、例えば距離画像生成手段150は、距離情報103と、偏光成分データ104を解析して得られる偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)を用いて、距離画像106を生成する。この際、例えば、距離情報103及び偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)の連続性を正則項として、エネルギー関数を最小化することにより、距離画像106を生成する。
【0038】
また、例えば距離画像生成手段150は、偏光成分データ104を解析して得られる偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)が、距離情報103に適合するように、撮像対象の相対的な高さの推定を行う。また、この際、例えば、偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)を用いて、画像を複数の領域に分割して、領域ごとに距離情報103に当該表面形状情報が適合するように撮像対象の相対的な高さの推定を行う。
【0039】
また、距離画像生成手段150は、距離情報103と、偏光成分データ104を解析して得られる偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)とについて、信頼度の重み付けを行って統合することにより距離画像106を生成する。さらに、距離画像生成手段150は、距離情報103と、偏光成分データ104を解析して得られる偏光解析情報105(例えば撮像対象の表面形状情報)に基づいて、撮像対象の屈折率を推定する処理も行う。
【0040】
さらに、本発明に係る三次元画像撮像装置100では、図1には不図示であるが、距離画像生成手段150による計測結果である距離画像106を動画として記録する記録手段を有して構成されている。
【0041】
−本発明の概要を踏まえた具体的な各実施形態−
次に、上述した本発明の概要を踏まえた具体的な各実施形態について説明を行う。
【0042】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る三次元画像撮像装置100の概略構成の一例を示す模式図である。なお、図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付し、また、以下の説明では、図2に示す三次元画像撮像装置100を三次元画像撮像装置100−1Aとして記載する。
【0043】
図2に示す三次元画像撮像装置100−1Aは、第1の撮像手段210と、第2の撮像手段220と、距離算出手段130と、偏光解析手段140と、形状復元手段230と、距離画像生成手段150を有して構成されている。
【0044】
第1の撮像手段210は、結像光学系211と、ビームスプリッタ212と、フィルタ213と、第1の受光素子113と、投光部214と、飛行時間計測部215を有して構成され、距離計測のための画像を撮像するものである。
【0045】
また、第2の撮像手段220は、結像光学系211と、ビームスプリッタ212と、フィルタ221と、偏光光学系122と、第2の受光素子123を有して構成され、偏光成分計測のための画像を撮像するものである。
【0046】
このように、図2に示す第1の撮像手段210及び第2の撮像手段220では、結像光学系211とビームスプリッタ212とが両方に共通して構成されている。即ち、図2に示す三次元画像撮像装置100−1Aは、図1に示す第1の結像光学系111と第2の結像光学系121を1つの結像光学系211によって兼ねて構成し、光軸を同一とするものとなっている。
【0047】
距離計測のための第1の撮像手段210としては、例えば、特許文献2などで一般的に用いられているTOF方式と同様のものを用いるものとする。
【0048】
図2に示す三次元画像撮像装置100−1Aにおいて、距離画像106を生成するまでの流れは、以下のようになる。
【0049】
まず、第1の撮像手段210の投光部214から撮像対象に対して、変調した照射光201を投光する。そして、撮像対象から反射して戻ってきた入力光a及びb(101a及び101b)を結像光学系211で集光し、ビームスプリッタ212で分割してその一部の光を距離測定のための第1の撮像手段210の内部に導く。
【0050】
第1の撮像手段210の内部に導かれた光は、照射光201の帯域のみ通過させるフィルタ213に通された後に、第1の受光素子113に結像する。飛行時間計測部215は、投光部214からの参照波形202と、第1の受光素子113で受光した光の変調波形203とを第1の受光素子113の画素ごとに比較し、照射光201が撮像対象に到達して当該撮像装置に戻るまでの飛行時間情報204を算出する。その後、距離算出手段130は、飛行時間情報204から撮像対象との距離に係る距離情報103を算出する。
【0051】
なお、照射光201の波長は、一般的に用いられる撮像素子(受光素子)に感受性があって人間には感受性のない近赤外光が望ましいが、他の波長やレーザー光でもよいし、複数の波長を組み合わせたものでもよい。また、変調の方法としては、強度を変調した光を用いてもよいし、周波数変調した光を用いてもよいし、パルス変調した光を用いてもよい。
【0052】
ビームスプリッタ212は、一定の割合の光を偏光成分計測のための第2の撮像手段220の内部に導く。ここで、ビームスプリッタ212として、無偏光ビームスプリッタを用い、透過前と透過後で偏光状態が変わらないことが望ましい。
【0053】
第2の撮像手段220の内部に導かれた光は、フィルタ221によって照射光201に由来する入力光a(101a)の帯域が遮断され、主に環境光に由来する入力光b(101b)がフィルタ221を通過する。
【0054】
図3は、図2に示す第2の撮像手段220の内部の偏光光学系122及び第2の受光素子123の詳細な構成の一例を示す模式図である。
【0055】
図3に示すように、偏光光学系122には、偏光の方位の異なる微小領域である複数の直線偏光の偏光子301がアレイ状に配接されている。図3に示す例では、受光素子123の4画素(302a〜303d)を1ブロック単位とし、この1ブロック単位に、それぞれ、0度、45度、90度、135度の偏光方位の異なる4種の直線偏光子301a〜301dが設けられている。このように、特定の方向の偏光子301に対応する画素302のみから信号を読み出すことで、4種類のうちの任意の一種類の偏光成分の画像を得ることができる。なお、偏光光学系122における偏光子アレイの配列の規則は、図3に示すものに限定されるものではなく、他の配列であっても、また規則性のないものでもよく、その場合には偏光成分の画像(偏光画像)に干渉縞が生じるのを防ぐ効果がある。また、後述する偏光解析を行うためには、一般に3方向以上の異なる種類の偏光子301があればよい。
【0056】
続いて、偏光解析手段140は、第2の撮像手段220でこのようにして得られた偏光成分データ104に基づいて、偏光状態の解析処理を行って、解析結果を偏光解析情報105として出力する。形状復元手段230は、偏光解析手段140から出力された偏光解析情報105に基づいて、撮像対象の表面形状の復元処理を行って、復元処理結果を表面形状情報205として出力する。そして、距離画像生成手段150は、距離算出手段130で算出された距離情報103と、形状復元手段230から出力された表面形状情報205に基づいて、これらを統合して、撮像対象との距離を表す距離画像106を生成する。
【0057】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る三次元画像撮像装置100の概略構成の他の例を示す模式図である。なお、図1及び図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付し、また、以下の説明では、図4に示す三次元画像撮像装置100を三次元画像撮像装置100−1Bとして記載する。
【0058】
図4に示す三次元画像撮像装置100−1Bでは、図2に示すビームスプリッタ212(更にはフィルタ)を設けずに、距離計測用の第1の撮像手段410と偏光成分計測の第2の撮像手段420との光路を完全に同一とする構成である。
【0059】
即ち、第1の撮像手段410は、結像光学系211、偏光光学系421、受光素子422、投光部214及び飛行時間計測部215を有して構成され、第2の撮像手段420は、結像光学系211、偏光光学系421及び受光素子422を有して構成されている。その他の構成は、図2に示す三次元画像撮像装置100−1Aと同様である。
【0060】
図5は、図4に示す第1の撮像手段410及び第2の撮像手段420の内部の偏光光学系421及び受光素子422の詳細な構成の一例を示す模式図である。
図4に示す三次元画像撮像装置100−1Bの場合には、例えば、図5(a)に示すような偏光光学系421及び受光素子422の態様を採る。図5(a)に示す態様では、偏光成分の画素502(502a〜502d)と、飛行時間を計測する測距用の画素503とが、受光素子422の同一面上に、一定の規則で配列されて混在している。ここで、偏光成分の画素502(502a〜502d)と測距用の画素503とは、複数存在するうちの一組のみを図5(a)中に指し示している。偏光成分の画素502a〜502dは、それぞれ、偏光光学系421の偏光子501a〜501dを通過した入力光を受光する。また、測距用の画素503は、偏光成分の画素502a〜502dの中心の位置に配置され、偏光子501a〜501dを通過した入力光を均等に受光する。図5(a)に示す態様では、各画素当たりの受光量は低下するが、1つの受光素子422を設けるだけでよく、装置を小型化できる効果がある。
【0061】
また、図4に示す三次元画像撮像装置100−1Bの場合には、例えば、図5(b)に示すような偏光光学系421及び受光素子422の別の態様を採ることもできる。
図5(b)に示す態様では、偏光光学系421が偏光子511a〜511c及び測距用の光学素子512からなり、それに対応して、受光素子422が偏光成分の画素513a〜513c及び測距用の画素514が構成されている。ここで、偏光成分の画素513(513a〜513d)と測距用の画素514とは、複数存在するうちの一組のみを図5(b)中に指し示している。
【0062】
図5(b)に示す態様では、偏光子511a〜511cを通る入力光は、偏光子で偏光されて、それぞれ、偏光成分の画素513a〜513dで受光される。また、残りの入力光は、測距用の光学素子512を通過して偏光されずに、測距用の画素514で受光される。測距用の光学素子512は、測距用の照射光の帯域のみを通すフィルタであってもよいし、単なる空隙でもよい。なお、図5(b)に示す様態における偏光子511は、3方向のみであるが、偏光解析は3方向の偏光成分があれば行うことが可能である。
【0063】
また、図4に示す三次元画像撮像装置100−1Bにおいては、飛行時間の計測と偏光成分の計測の両方を一種類の受光素子422で行うものである。例えば、両者の計測を異なるタイミングで交互に行うことができる。この場合、例えば、最初の1フレームの撮影では、強度や周波数を変調した照射光201を撮像対象に投光して受光素子422で受光する。飛行時間計測部215は、受光素子の画素ごとに、受光素子422で計測された変調波形401と参照波形202との位相差を比較して、飛行時間情報204を算出する。そして、距離算出手段130は、飛行時間情報204から、受光素子の画素ごとに撮像対象までの距離に係る距離情報103を算出する。この最初の1フレームでは、偏光光学系421のどの偏光子を通過した変調光も区別なく扱う。そして、次の1フレームでは、投光部214による照射光201の照明は行わず、環境光を用いて偏光光学系421を通過した偏光成分を受光素子422で受光し、偏光解析手段140によって偏光の解析を行う。以上のようにして、計測動作を交互に繰り返して行うことで、一種類の受光素子422で飛行時間の計測と偏光成分の計測が可能である。
【0064】
また、飛行時間の計測と偏光成分の計測の両方を一種類の受光素子422で同時に行うこともできる。この場合、変調した照射光201を撮像対象に投光して、その入力光を受光素子422で受光する。受光素子422で計測した信号は偏光方向の区別をせずに変調波形401として飛行時間計測部215に送られ、飛行時間計測部215において、この変調波形401と参照波形202とを比較して、飛行時間情報204を算出する。そして、距離算出手段130は、飛行時間情報204から撮像対象までの距離に係る距離情報103を算出する。また、同時に、受光素子422から変調波形401を偏光成分データとして偏光解析手段140に送る。この際、偏光解析手段140の内部に、波形積分器(図4では不図示)を設けておき、偏光解析手段140では、受光素子422の画素ごとに、変調波形401の単位時間の平均値を算出し、算出した値を元に、後述する偏光解析を行う。このように、飛行時間の計測と偏光成分の計測を同時に行うことで、撮像対象及び三次元画像撮像装置100−1Bの動きやずれによる誤差を低減する効果が得られる。
【0065】
次に、距離情報103と偏光成分データ104とを統合して、距離画像106を生成するまでの手順について詳細に説明する。
【0066】
<距離情報の取得>
TOF方式における距離算出手段130によって得られた距離情報103の分布をD(x,y)とする。Dには、散乱や多重反射による誤差が含まれている。なお、計算の便宜上、観測中の最大距離Dmaxを用いてD´を以下の(1)式と定義する。
【0067】
【数1】

【0068】
以降、このDの符号の反転したD´を距離情報Dとして用いる。
【0069】
<偏光解析>
ここでは、偏光解析を行って撮像対象の表面形状を推定する手順について述べる。
まず、偏光解析手段140は、偏光成分データ104の偏光解析により、偏光方位角と偏光度を求める。この偏光方位角と偏光度を求める方法としては、いくつか知られているが、本実施形態では、4方向の偏光成分データを用いた一般的な方法について説明する。
【0070】
まず、偏光解析手段140は、計測された偏光成分データ104を受光素子の種類ごとにまとめることにより、4枚の偏光成分画像を生成する。この偏光成分画像は、それぞれ直線偏光の方位が0度、45度、90度、135度の偏光成分の強度の分布画像であり、この分布をP0(x,y)、P45(x,y)、P90(x,y)、P135(x,y)とする。ここで、距離情報103のD(x,y)と、Pi(x,y)とを比べたときに、どちらかのデータ点列が他方に対して疎であるときは、線形補完を行ってデータ点列が同数となるようにしておく。
【0071】
<偏光方位角の算出>
次に、下記の(2)式によって偏光方位角θを求める。ここで、詳細は、例えば、非特許文献1及び非特許文献2による方法を用いることができる。
【0072】
【数2】

【0073】
計測誤差が無ければ、偏光方位角θは、計測面の法線の方位と一致する。
図6は、撮像対象の物体表面の法線の方位角及び傾きの一例を示す模式図である。
ここで、計測面の法線の方位というのは、図6(a)に示すように、撮像対象602aの表面の法線nを三次元画像撮像装置100の結像面601aに透視投影したときの結像面上のn´の方位角θである。
【0074】
図7は、三次元物体について偏光方位角と偏光度の観測例を示す模式図である。また、図8は、計測された距離情報103と偏光解析情報105とに基づいて、距離画像106を生成した結果の一例を示す模式図である。
【0075】
ここで、三次元物体について偏光方位角を観測した観測例を図7(a)に示す。ここでは、偏光方位角を画像の輝度で表示している。なお、図7(a)は、図8(a)で示される形状の物体を直上から観測した例である。
【0076】
なお、一般に光源などの映り込みや光沢反射は、距離画像106の計測において誤差を起こす要因の1つであるが、偏光方位角の情報には、ほとんど影響を与えない特性がある。そのため、偏光方位角を用いれば、映り込みや反射に影響されずに表面の法線の方位を計測することが可能である。
【0077】
<偏光度の算出>
次に、下記の(3)式によって偏光度ρ(直線偏光度)を求める。ここで、詳細は、例えば、非特許文献2による方法を用いることができる。
【0078】
【数3】

【0079】
ここで、偏光度の観測例を図7(b)に示す。ここでは、偏光度の大きさを画像の輝度で表示している。
【0080】
<傾斜角の推定>
図9は、撮像対象の物体表面の法線の傾きの一例を示す模式図である。
図6(b)と図9に図示するように、観測面の法線の傾きをφと定める。このとき、観測面の法線の傾きφと偏光度ρの間には、以下の(4)式に示す関係があることが知られている。
【0081】
【数4】

【0082】
ただし、(4)式のnは、撮像対象の表面の素材の屈折率である。撮像対象が非透明物体の場合、屈折率nではなく複素屈折率n^=n−ikを用いる必要がある。ここでkは、減衰係数である。もし複素屈折率が充分に大きく、|n^|2=n2+k2>>1と見なせるときは、以下の(5)式に示す、性質のよい近似式が存在することが、例えば非特許文献1で示されている。
【0083】
【数5】

【0084】
図10は、(5)式において、n=1.6、k=5としたときの偏光度ρと物体表面の法線の傾きφとの関係の一例を示す模式図である。
撮像手段に対して物体の表面が正対しているとき(撮像手段の撮像面と観測面が並行に位置し、観測面の法線と撮像手段の光軸とが一致しているとき)の偏光度は、ρ(0)=0である。そして、観測面の傾斜角φの増加と共に偏光度ρは増加する。偏光度ρは、ある角度で最大値に達した後に減少して90度でρ(90)=0に至る。上記最大値の角度φ0のことをブリュースター角と呼ぶ。一般に、偏光度ρに対する傾斜角φは、図10に示すように二価の関数であり、一意に決まらずに、1つのρに対してφ+とφ-の2つの値が対応する。
【0085】
<表面形状の復元>
次に、以下に、偏光解析結果から撮像対象の表面形状を推定する方法を述べる。
一般に、事前に撮像対象の観測表面の複素屈折率を知ることはできないため、適当な値を推定して複素屈折率の値として代表する。ここでは、例えば、n=1.6、k=5とおく。このときのブリュースター角φ0は、79.39である。なお、後述するように、距離情報Dと偏光度ρから、屈折率の光学パラメーターn、kを推定する方法も考えられる。また、二価関数の多価性を回避するために、偏光度を下記の(6)式のように近似して一価の関数とする。
【0086】
【数6】

【0087】
ここで(6)式において、αは適当な正の係数である。次に、逆関数ρ-1を数値的に解いて参照テーブルを用意する。これによって任意の偏光度ρに対する物体表面の法線の傾きφを算出可能にする。
【0088】
続いて、物体表面のx方向とy方向の傾きを(v,w)とすると、法線の傾きφと法線の方位θから、下記の(7)式を計算することができる。
【0089】
【数7】

【0090】
正負の符合があるのは、方位θにおいて法線がとりうる方向には1方向あり、一意には決まらないからである。ただし、これは、距離情報の勾配Dx(x,y),Dy(x,y)の符合から容易にどちらかに決定できる。もしくは、(Dx,y)と(v,w)の内積を計算し、その符号から決定してもよい。このように法線の方位θの推定の曖昧性をなくすことができるのは、距離情報103と偏光解析情報105の両方を扱う本実施形態に係る三次元画像撮像装置100の利点の1つである。
【0091】
続いて、受光素子の画素ごとに得られている(v,w)の値から撮像対象の全体としての表面の形状を推定する。
【0092】
(v,w)を画像の全領域で積分することで、撮像対象の相対的な高さの分布H(x,y)を復元することができるが、この方法ではノイズに対して弱いので、以下の(8)式に示すエネルギー関数を最小化するような分布を求めてH(x,y)とする。
【0093】
【数8】

【0094】
(8)式に示すエネルギー関数を最小化する方法として、以下の(9)式を用いた緩和法による解法が知られている(詳細は、例えば、非特許文献3を参照)。
【0095】
【数9】

【0096】
これを一定回数もしくは値が収束するまで計算してH(x,y)を得る。以上が、偏光解析による表面形状の推定になる。
【0097】
図11は、本発明の第1の実施形態を示し、偏光解析手段140による偏光解析処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0098】
偏光解析手段140は、上述したように、以下のステップS101〜S104を行う。
まず、ステップS101において、偏光成分データ104から、偏光度ρ(x,y)と偏光方位角θ(x,y)を求める。続いて、ステップS102において、関数ρ(φ)を利用して偏光度ρから観測面の法線の傾きφを求める。続いて、ステップS103において、求めた観測面の法線の傾きφと偏光方位角θから、物体表面のx方向とy方向の傾きである(v,w)を求める。続いて、ステップS104において、(v,w)から緩和法により観測対象の相対的な高さの分布H(x,y)を求める。
【0099】
なお、法線の傾きφと偏光度ρについては、前述したように、一価関数で近似することなく、例えば、二価の関数を用いて形状を復元する方法も考えられる。例えば、上述した(8)式の緩和法の計算中に、下記の(10)式のような関数の最小化も行ってHの値を逐次更新するようにしてもよい。
【0100】
【数10】

【0101】
ただし、(10)式におけるφ-、φ+は、偏光度ρに対応する二価の観測表面の法線の傾きである。H(φ-),H(φ+)は、それぞれ法線の角度をφ+として求めたときの高さHと、法線の角度をφ-として求めたときの高さHを示す。
【0102】
<距離情報と偏光解析情報の統合>
次に、偏光解析によって得られた相対的な高さの分布、即ち、物体の表面形状情報であるH(x,y)と、距離情報D(x,y)とを統合する方法について述べる。
【0103】
<外乱成分の除去>
例えば距離画像生成手段150は、光沢面などを測定する際に、距離情報103に0次反射成分などに由来する外れ値が混入することがあるため、まず、これを除去する。この場合、偏光方位角θの情報については、反射成分の影響が小さいので、距離情報103にのみ不連続性が現れ、偏光方位角θは連続的である。この性質を利用し、ここでは、例えば、非特許文献4に記載のGermanらの線過程を利用した方法により外乱成分を除く方法を述べる。
【0104】
一例として、エネルギー関数を下記の(11)式のように置く。
【0105】
【数11】

【0106】
ここで、式(11)のD^は、Dから外乱成分を除いた距離の推定値である。また、l={0,1}で、これは画素が外乱成分のときは1を、外乱成分でないときは0をとるような不連続性を表す状態変数である。また、λ1,λ2,λ3は各正則項の正の係数である。正則項は、それぞれ左から、推定値D^がDと同一になるようにする項、表面形状が滑らかなときに外乱と判別しやすくする項、外乱と判別する頻度を抑える項である。なお、∇2は、ラプラシアン作用素であり、二階微分値を用いて、下記の(12)式と定義する。
【0107】
【数12】

【0108】
また、この(12)式を最小化するには、状態変数1を連続関数として、下記の(13)式のように近似する。
【0109】
【数13】

【0110】
そして、下記の(14)式及び(15)式のようにuとD^の動作式を定め、繰り返し計算を行ってエネルギー最小値を与えるuおよび距離D^を求める。
【0111】
【数14】

【0112】
ただし、ηは動作式の速度を決める係数、τはシグモイド連続関数の係数であり、それぞれ適当な値を決める。また、より簡易で計算コストの低い他の方法の一例として、以下のような方法も挙げられる。D(x,y)とH(x,y)の二階微分値を用いて、下記の(16)式のように画素ごとのエネルギー関数を定義する。
【0113】
【数15】

【0114】
そして、このエネルギー関数の値を、下記の(17)式に示す閾値δと比較して外乱か否かを判定する。
【0115】
【数16】

【0116】
そして、外乱と判別された領域を除去し、周囲の画素情報の中央値で充填(補完)する。もしくは、周囲の画素情報を用いて線形補完を行ってもよい。なお、表面形状情報Hが外乱により誤差を含み、距離情報Dは、外乱による影響を受けないような状況にも対応できるように、判別関数を下記の(18)式のようにしてもよい。
【0117】
【数17】

【0118】
(18)式は、DもしくはHのどちらか一方に不連続値があり、他方が滑らかであった場合に大きな値を取る関数である。
【0119】
<領域分割>
一般に、三次元画像撮像装置100から見えない鉛直及び鉛直以上の傾きの面については、偏光解析を行うことができない。このため、偏光解析によって復元される表面形状情報Hは、図8(c)のように、物体間の高低差の無い表面形状のみを表すような情報となっている。そこで、距離画像生成手段150では、画像中の領域を分割し、領域ごとに表面形状情報205と距離情報103の統合を行うことで表面形状Hの高さの補正を行う。
【0120】
この際、領域分割は、HおよびDの不連続点で分割するのが望ましい。領域分割の方法には多数の方法があるが、1つの例として、例えば、非特許文献5に示すようなグラフカット法を用いることが挙げられる。
【0121】
グラフカット法は、最大流量最小カット問題を解くことによって、領域を分割する方法である。グラフカット法では、画素iと画素jをグラフのノードとしてノード間の辺の重みを定義する必要がある。例えば、ノードiとノードjとの間の辺の重みを画素間の高低差及び画素間の空間距離を用いて、下記の(19)式のように定義する。
【0122】
【数18】

【0123】
なお、(19)式に示すλ1とλ2は、適当な係数である。また、dist(i,j)は、画素iと画素jの空間的な距離であり、例えば、画素間のユークリッド距離とする。これに基づいて、グラフカット法で解けば全体として高低差の大きな境界で領域が切断されるようなセグメンテーションが実行される。
【0124】
図12は、本発明の第1の実施形態を示し、領域分割処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。例えば、距離画像生成手段150は、以下のステップS201〜S205に係る領域分割処理を行う。
【0125】
まず、ステップS201において、最も距離の遠い画素とその周辺領域(近傍領域)を背景領域のシードとする。続いて、ステップS202において、未分割の画素領域のうち、最も距離の近い画素とその近傍を前景領域のシードとしてセグメンテーションを行う。続いて、ステップS203において、グラフカットアルゴリズムによって、背景領域と前景領域とを分割する。続いて、ステップS204において、前景領域として分割された領域をi番目の領域として記憶して、画像からその領域を除外する。続いて、ステップS205において、全ての画素の領域が分割されたか否かを判断し、全ての画素の領域については分割されていない場合には、i←i+1として、ステップS202に戻り、ステップS202以降の処理を再度行う。一方、ステップS205の判断の結果、全ての画素の領域が分割された場合には、図12に示すフローチャートの処理を終了する。
【0126】
また、他の領域分割手法の例としては、外乱成分の除去で上述した線過程を用いる方法でもよい。またグラフカットの代わりに、例えば、非特許文献6に示すバイラテラルフィルタを複数回適応して距離情報Dを量子化する方法でもよい。
【0127】
<表面形状情報に対する高さの補正>
本実施形態に係る三次元画像撮像装置100−1A及び100−1Bの場合、上述したような方法で分割された領域D={D1,D2,…,Dn}ごとに領域の平均的な高さを求める。一例として領域の中央値を用いる。Hについても同様に、各領域H={H1,H2,…,Hn}について領域ごとに中央値を計算する。これらを用いて高さを補正した領域iの表面形状H〜i(x,y)を下記の(20)式を用いて求める。
【0128】
【数19】

【0129】
これを全ての領域Hについて行う。ただし、medは中央値をとることを意味する。以上の計算により、絶対的な高さ情報を含んでいないH(x,y)から高さの情報が付与されたH〜i(x,y)が得られる。
【0130】
なお、ここでは領域の中央値を用いて高さの補正を行ったが、例えば、非特許文献7に示すロバスト推定のM−estimatorの手法を用いて、下記の(21)式のエネルギー関数を最小化するようなフィッティングを行ってもよい。
【0131】
【数20】

【0132】
ここで、(21)式のq(e)は、e=0で唯一の最小値を持つ正定値偶関数である。もし、q(e)=e2ならば、(21)式は、最小二乗法と等しくなる。関数qとして、例えば、下記の(22)式を用いれば、フィッティングにおいて外れ値の影響を低減させることができる。
【0133】
【数21】

【0134】
ここで、(22)式のkは定数である。また、関数qについて、エネルギー関数を最小とするhiが解析的に求められる場合は求める。一方、エネルギー関数を最小とするhiが解析的に求められない場合は、下記の(23)式を用いて、微分動作式の繰り返し計算によってエネルギー関数の最小化を行ってhiを求める。ここで、ηは適当な係数である。
【0135】
【数22】

【0136】
<距離情報と表面形状情報の統合>
次に、距離画像生成手段150は、距離情報D(103)と高さ補正後の表面形状情報H〜(205)の統合を行う。この際、例えば、非特許文献7に示すロバスト推定のM−estimatorの方法を用いて、画像上の各点ごとに、下記の(24)式に示すエネルギー関数の最小値を与えるような推定値D^を求める。
【0137】
【数23】

【0138】
ただし、(24)式のqは上述の正定値偶関数である。また、エネルギー関数の最小化の方法は、上述した方法と同じである。また、関数gは、D^の不連続性を抑制する正則項である。関数gの例としては、下記の(25)式が考えられる。
【0139】
【数24】

【0140】
また、例えば、関数gの例としては、下記の(26)式も考えられる。
【0141】
【数25】

【0142】
なお、ここで用いたロバスト推定の方法以外の態様の例としては、最小二乗誤差を用いて求めてもよい。また、別の態様の例としては、単純に距離情報Dと表面形状情報H〜の幾何平均もしくは算術平均の結果を距離の推定値D^としてもよい。また、別の態様の例としては、表面形状情報H〜の値をそのまま距離の推定値D^としてもよい。また、別の態様の例としては、距離情報Dと表面形状情報H〜を信頼度で重みづけした平均値を距離の推定値D^としてもよい。ここで、信頼度としては、例えば、距離情報の連続性を用いて、連続性の高い側の値に高い信頼度の重みを与えてもよい。一例として、下記の(27)式のようになる。
【0143】
【数26】

【0144】
以上のような方法によって、距離画像生成手段150は、推定したD^を距離画像106として出力する。上述したように、生成された距離画像106の一例は、図8に示されている。図8(a)は、撮像対象の元の三次元形状であり、図8(b)は、TOFによって計測された距離情報D(103)、図8(c)は、偏光解析によって得られた表面形状情報H(205)である。また、図8(d)は、外乱の除去と領域分割を行い、領域ごとに表面形状情報Hの高さを推定してH〜を求めた後に、距離情報Dと表面形状情報Hを統合して復元された距離画像である。この図8(d)では、図8(b)に示す距離情報Dにあるような誤差や外乱が除去され、表面形状が復元されていることがわかる。
【0145】
図13は、本発明の第1の実施形態を示し、距離画像生成手段150による距離情報D(103)と表面形状情報H(205)との統合処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0146】
距離画像生成手段150は、上述したように、以下のステップS301〜S304を行う。
まず、ステップS301において、線過程を用いて、距離情報Dの外乱を除く。続いて、ステップS302において、距離情報Dと表面形状情報Hの不連続点で領域を分割する。続いて、ステップS303において、領域ごとに、表面形状情報Hを距離情報Dにフィッティングさせる。続いて、ステップS304において、例えば、ロバスト推定により、表面形状情報Hと距離情報Dの両方にフィットする値を求めて、これを統合結果(即ち、距離画像106)とする。
【0147】
<領域分割を行わない形状の統合>
距離情報D(103)を推定する方法において、より計算コストの少ない派生的な別の一態様として、領域分割を行わない方法について以下に説明する。ここでは、外乱成分の除去の方法として、(11)式〜(15)式にかけて示した線過程と同じ枠組みを用いる。
【0148】
まず、距離情報D(x,y)と表面形状情報H(x,y)をフィッティングし、高さの差h(x,y)を求める。ここで、画素が不連続な境界に位置するか否かを示す状態変数をl(x,y)とする。h(x,y)が滑らかな値を採るときには、低いエネルギーの値を与え、不連続な境界を跨ぐ時は滑らかさの制約をキャンセルする。さらに、不連続点と見なされる画素は、なるべく少なくするような制約を置く。一例として、エネルギー関数を下記の(28)式のように定義する。
【0149】
【数27】

【0150】
なお、(28)式のλ1、λ2、λ3は、各正則項の正の係数である。これを最小化するパラメーターh(x,y)とl(x,y)を求めるためには、l(x,y)を(13)式で述べたように連続値で近似し、エネルギー関数をそれぞれのパラメーターで偏微分して動作式を立て、繰り返し法で求めればよい。なお、(28)式に境界同士の相互作用の項を加えて、境界の孤立点や不要な枝分かれが生成されるのを防ぐようにしてもよい。
【0151】
図14は、本発明の第1の実施形態を示し、距離画像生成手段150による距離情報D(103)と表面形状情報H(205)との統合処理の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【0152】
本例では、距離画像生成手段150は、上述したように、以下のステップS401〜S402を行う。
まず、ステップS401において、線過程を用いて、連続性が保存され、不連続点では高さのギャップを許すように、表面形状情報Hを距離情報Dにフィッティングさせる。続いて、ステップS402において、距離情報Dにフィッティングした表面形状情報Hをもって、距離情報Dと表面形状情報Hとの統合結果(即ち、距離画像106)とする。
【0153】
<表面形状の推定を行わない距離情報の推定>
また、本実施形態において、距離情報と偏光解析結果から距離画像106を推定する際に、より計算コストの少ない派生的な別の一態様として、領域分割及び偏光解析による表面形状の推定を行わない方法も考えられる。具体的な手順としては、距離情報D(103)が不連続で偏光解析情報が連続的であるような領域を検知し、外乱として除去して補完する。この方法は、計算コストが低く、主に反射成分による外乱を除去する効果がある。一例として、下記の(29)式のように、距離情報Dの連続性の評価値を設ける。
【0154】
【数28】

【0155】
そして、この(29)式に示す評価値が所定の閾値を超える領域については、外乱と判定して除去し、周囲の距離情報の中央値で補填する。そして、最終的に、得られた距離情報Dを距離画像106として出力する。
【0156】
<偏光度と距離情報からの屈折率の推定>
上述した例では、撮像対象の物体表面の複素屈折率は、適当な値を所与のものとして採用するとしたが、一方で偏光度ρと距離情報Dから複素屈折率を推定する態様も考えられる。その場合、まず、グラフカット等の方法で領域分割を行い、領域中の複素屈折率は、一様であると仮定する。ここで、(4)式から(5)式にかけて説明したように、光学パラメーターはnとkの二つの値であるため、領域中の2点の偏光度ρと距離情報Dの値を代入して解けば複素屈折率が解析的に求まる。しかしながら、この方法では、測定誤差の影響を強く受けるために、領域中の複数点についての計測値の複数の組(ρi,Di)を用いて、以下の(30)式により最小化を行う。
【0157】
【数29】

【0158】
ただし、φ^iは、距離情報Dから求められる画素iにおける物体表面の法線の傾き、φiは、偏光度がρiであるときの物体表面の法線の傾きである。(30)式の最小化を行う方法の一例としては、例えば(φ^i−φi2=0と置き、所定の数Fだけρiとφ^iの値を観測中の領域からランダムサンプリングし、F組のnとkの関係式を立てる。そして、得られた2つの変数の解を用いて二次元空間に投票(反映)する。これによって、最多投票を得た値のnとkを推定値とする。
【0159】
また、この際、非特許文献8に示すLMedS推定の手法を用いてもよい。この場合は、上述した推定値の算出をN回繰り返し、N個の推定値のうち、下記の(31)式のLMedS基準によって光学パラメーター値n、kを評価し、最良のパラメーター値(最も低い基準値を与える値)をn、kとして選択すればよい。
【0160】
【数30】

【0161】
ただし、(31)式において、medは中央値をとる操作を表す。これによりノイズに対して頑健に光学パラメーターの推定を行うことができる。
【0162】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図15は、本発明の第2の実施形態に係る三次元画像撮像装置100の概略構成の一例を示す模式図である。なお、図15において、第1の実施形態における三次元画像撮像装置100と同様の構成については同じ符号を付し、また、以下の説明では、図15に示す三次元画像撮像装置100を三次元画像撮像装置100−2として記載する。
【0163】
第2の実施形態の三次元画像撮像装置100−2は、パターン光方式で測定した撮像対象の距離情報103と、偏光光学系によって測定した偏光成分データ104とを統合して、距離画像106を得るものである。
【0164】
図15に示す三次元画像撮像装置100−2は、第1の撮像手段1510と、第2の撮像手段220と、距離算出手段130と、欠落領域記憶手段1520と、偏光解析手段140と、形状復元手段230と、距離画像生成手段150を有して構成されている。
【0165】
第1の撮像手段1510は、結像光学系211と、ビームスプリッタ212と、フィルタ213と、第1の受光素子113と、パターン生成部1511と、投光部1512と、変調解析部1513を有して構成され、距離計測のための画像を撮像するものである。
【0166】
また、第2の撮像手段220は、結像光学系211と、ビームスプリッタ212と、フィルタ221と、偏光光学系122と、第2の受光素子123を有して構成され、偏光成分計測のための画像を撮像するものである。このように、図15に示す第1の撮像手段1510及び第2の撮像手段220では、結像光学系211とビームスプリッタ212とが両方に共通して構成されている。
【0167】
本実施形態において、パターン光方式の距離測定の方法は、一般的なパターン光方式と同様の方法を用いることができる。第1の撮像手段1510のパターン生成部1511では、所定の変調パターン1501を生成する。ここで、変調の方法としては、三角関数を複数重ね合わせて強度変調を行ったものや、パルス変調したもの、或いは、例えば、非特許文献9に示すde_Bruijn系列でコード化したものなど様々な態様が考えられる。
【0168】
ここで、本例では、2値のde_Bruijn系列に従うビット列[c1,c2,…,cn](c∈{0,1})をコード列として用いる。パターン光の投光部1512で各ビットを光の強度に対応させた縦縞状のパターン光1502を生成して撮像対象に投光する。例えば、その照射光の強度の範囲を[0〜1]とした場合、ビットの0と1を光の強度の0.5と1に対応させる。投光部1512は、結像光学系211に対して視差を設けている。
【0169】
結像光学系211を通って集光した入力光a及びb(101a及び101b)を無偏光のビームスプリッタ212で2つに分け、第1の撮像手段1510のフィルタ213を通して照射光の波長のみを通過させて第1の受光素子113に結像させる。
【0170】
そして、変調解析部1513において、参照波形1503を参照しながら、第1の受光素子113で撮像した画像の変調波形203に相同なパターン(ビット列)があるかどうかを調べて、1行ずつ復号する。この際、変調解析部1513は、各行の各画素[x1,x2,…,xm]の1つ1つにその位置で検出されたコード{c1,c2,…,cn}のいずれかの番号を記録して、これを検出パターン位置情報1504として、距離算出手段130に出力する。
【0171】
このとき、撮像対象の形状によっては、照射光の当たらない陰の部分ができる。前述のように、パターン光のビットの0と1を光の強度の0.5と1に対応させていれば、陰の部分を輝度値がある所定の閾値以下の領域として検出することができる。そして、変調解析部1513は、この部分を欠落領域情報1505として欠落領域記憶手段1520に記憶する。そして、画像の全範囲でこのような復号を行う。
【0172】
次に、距離算出手段130は、撮像対象上で観測されたパターン光の分布から、撮像対象までの距離を算出する。具体的に、距離算出手段130は、コードが検出された位置を元に三角測量の原理により撮像対象までの距離を算出する。
【0173】
図16は、本発明の第2の実施形態を示し、距離算出手段130において、パターン光による三角測量の距離算出の原理を説明する模式図である。
図16では、適当な面を基準面1601とする。また、図16において、画像上の位置1602を示す。投光部1512から、あるパターン光1502のコード(図16ではc3)を角度θで投光するとする。ここで、撮像対象が存在しないときに、基準面1601に投光して観測されるコードの位置と、撮像対象の表面上で観測されるコードの位置のx方向のズレをΔxとする。この際、基準面1601からの撮像対象の高さΔzは、以下の(32)式で求まる。
【0174】
【数31】

【0175】
図17は、本発明の第2の実施形態を示し、距離算出手段130において、パターン光による距離算出の際の欠落領域の一例を示す模式図である。図17に示すように、パターン光1502の投光部1512と第1の撮像手段1510との視差により、パターン光1502の欠落領域1701が生じている。
【0176】
ここで、偏光光学系122の構成、及び、偏光成分を解析して撮像対象の表面形状を復元する方法については、第1実施形態で説明した構成と同一である。
【0177】
次に、距離画像生成手段150は、距離情報103と表面形状情報205を統合して、距離画像106を生成する。この距離情報103と表面形状情報205との統合については、第1実施形態で説明したものと同様の処理で行われる。ただし、第2の実施形態の場合には、図17で示したような視差による欠落領域1701が生じることがあるため、欠落領域記憶手段1520に欠落領域情報1505が記憶されている場合には、この欠落領域情報1505を用いて、欠落領域1701の補完を行う。
【0178】
この際、偏光成分の計測には視差がないために、視差による欠落領域1701は、表面形状情報205を用いて補完することが可能である。本実施形態では、補完の方法の一例として、以下のような方法を用いる。
【0179】
本実施形態では、まず、距離情報D(x,y)の欠落領域1701の近傍の画素nのみを対象にしてH(x,y)をz方向に動かして、距離情報D(x,y)にフィットさせる。そして、フィットした結果より、距離情報Dと高さHの差hを求める。続いて、欠落領域1701をH(x,y)+hによって補完する。具体的には、下記の(33)式に示す処理を行う。
【0180】
【数32】

【0181】
ここで、(33)式において、medは中央値をとることを意味し、nは欠落領域1701の所定の距離内の画素である。ただし、nは欠落領域1701を含まない。また、nullは、欠落領域1701の画素である。
【0182】
図18は、本発明の第2の実施形態を示し、距離画像生成手段150による距離情報D(103)と表面形状情報H(205)との統合処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0183】
距離画像生成手段150は、上述したように、以下のステップS501〜S505を行う。ここで、ステップS501〜S503は、基本的に、図13に示すステップS301〜S303と同様の処理であり、また、ステップS505は、基本的に、図13に示すステップS304と同様の処理である。
まず、ステップS501において、線過程を用いて、距離情報Dの外乱を除く。続いて、ステップS502において、距離情報Dと表面形状情報Hの不連続点で領域を分割する。続いて、ステップS503において、領域ごとに、表面形状情報Hを距離情報Dにフィッティングさせる。続いて、ステップS504において、距離情報Dに欠落領域1701があるときには、表面形状情報Hを用いて、欠落領域1701の補完を行う。続いて、ステップS505において、例えば、ロバスト推定により、表面形状情報Hと距離情報Dの両方にフィットする値を求めて、これを統合結果(即ち、距離画像106)とする。
【0184】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図19は、本発明の第3の実施形態に係る三次元画像撮像装置100の概略構成の一例を示す模式図である。なお、図19において、第1の実施形態における三次元画像撮像装置100と同様の構成については同じ符号を付し、また、以下の説明では、図19に示す三次元画像撮像装置100を三次元画像撮像装置100−3として記載する。
【0185】
第3の実施形態の三次元画像撮像装置100−3は、測距センサ方式で測定した撮像対象の距離情報103と、偏光光学系122によって測定した偏光成分データ104とを統合して、距離画像106を得るものである。ここで、本実施形態における測距センサは、例えば、特許文献3で示されているような一般的な測距センサの構成からなるものである。
【0186】
図19に示す三次元画像撮像装置100−3は、第1の撮像手段1910と、第2の撮像手段1920と、距離算出手段130と、偏光解析手段140と、形状復元手段230と、距離画像生成手段150を有して構成されている。
【0187】
第1の撮像手段1910は、結像光学系1911と、ビームスプリッタ1912と、セパレータレンズ1913と、第1の受光素子1914a及び1914bと、視差検出部1915を有して構成され、距離計測のための画像を撮像するものである。ここで、セパレータレンズ1913は、例えば、測距用光学系を構成する。図19に示す例では、セパレータレンズ1913は、2つの像を結ぶ光学系(1913a及び1913b)で構成されているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、2つ以上の像の光学系で構成されていればよい。また、視差検出部1915は、例えば、当該2つ以上の像の結像位置から視差情報1904を検出する。
【0188】
また、第2の撮像手段1920は、結像光学系1911と、ビームスプリッタ1912と、偏光光学系122と、第2の受光素子123を有して構成され、偏光成分計測のための画像を撮像するものである。このように、図19に示す第1の撮像手段1910及び第2の撮像手段1920では、結像光学系1911と、ビームスプリッタ1912とが両方に共通して構成されている。
【0189】
<測距センサの原理>
ここで、測距センサの原理について図19及び図20を用いて説明する。
図20は、本発明の第3の実施形態を示し、測距センサの原理の一例を示す模式図である。
【0190】
撮像対象を観測すると、結像光学系1911で集光された入力光1901は、ビームスプリッタ1912で分割されて第1の撮像手段1910の測距センサへと導かれる。続いて、第1の撮像手段1910に導かれた光は、セパレータレンズ1913の各セパレータレンズ1913及び1913bによってレンズの右側及び左側を通った光に分けられる。そして、セパレータレンズ1913によって2つに分けられた光は、それぞれ、第1の受光素子1914a及び1914b上に像として結像する。
【0191】
そして、第1の受光素子1914a及び1914bで検出された2つの受光信号1903a及び1903bのうち、本例では、受光信号1903aを基準信号とし、受光信号1903bを参照信号とする。今、基準信号1903aが第1の受光素子1914aのCの位置で計測されているとする。この際、撮像対象が焦点面に位置するならば、参照信号1903bも第1の受光素子1914b上のCの位置で検出される。
【0192】
また、撮像対象が焦点面の後方にある場合、参照信号1903bは、第1の受光素子1914b上のA側(図20)にずれた位置で検出される。また、撮像対象が焦点面の前方にある場合、参照信号1903bは、第1の受光素子1914b上のE側(図20)にずれた位置で検出される。視差検出部1915では、この視差量を受光素子1914上の各画素個々について求めれば、第2の受光素子123で撮像された画像中のA〜Eに対応する個々の位置において焦点面からの相対的な奥行きを得ることができる。ただし、測距センサは、基線長がレンズの直径以下に制限されること、焦点面から大きく外れると受光信号がボケて視差量の計測が難しくなることなどから、一般に検出の精度は限定される。
【0193】
ここで、図20について説明する。
まず、結像光学系1911の焦点を撮像対象に合わせる。ここでは、一般に広く用いられているような自動焦点機構を用いて自動的に焦点を合わせてもよいし、手動で合わせてもよい。続いて、ビームスプリッタ1912により、第1の撮像手段1910と第2の撮像手段1920とに、それぞれ光を分割して導く。
【0194】
図20において、各セパレータレンズ1913a及び1913bによって、各受光素子1914a及び1915b上に複数の像が結像される。そして、各受光素子1914a及び1915bで受光した受光信号1903a及び1903bは、視差検出部1915に送られ、そこで視差が検出される。視差検出部1915では、2つの受光信号(1903a及び1903b)から適当な波長の交流成分を抽出した後、波形を比較して視差として位相差を検出する。なお、この際、視差検出部1915において、交流成分の抽出をせずに、相互相関を計算して位相差を求めてもよい。
【0195】
そして、距離算出手段130では、視差検出部1915で検出された視差(位相差)に係る視差情報1904に基づいて、焦点面からの相対距離を算出する。ここで、距離算出手段130は、結像光学系1911のレンズ繰り出し量1902と、焦点面までの距離情報との対応表を予め記憶しておく。距離算出手段130は、この対応表を用いて、レンズ繰り出し量1902から現在の焦点位置までの距離情報を算出する。そして、距離算出手段130は、算出した距離情報と、視差情報1904から求めた相対距離情報とを足すことによって、撮像対象における画素ごとの絶対距離である距離情報103を算出する。
【0196】
また、第2の撮像手段1920による偏光成分の計測と、偏光解析手段140による偏光解析に関しては、第1の実施形態で示したものと同一の方法を行う。また、反射成分による外乱を取り除く方法についても、第1の実施形態で示したものと同一のものを行う。
【0197】
そして、距離画像生成手段150は、偏光解析情報105に基づく表面形状情報205と、距離算出手段130で求められた距離情報103とを統合して距離画像106を生成する。この距離画像106の具体的な生成方法についても、第1の実施形態で説明した方法と同一の方法を用いる。
【0198】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図21は、本発明の第4の実施形態に係る三次元画像撮像装置100の概略構成の一例を示す模式図である。なお、図21において、第1の実施形態等における三次元画像撮像装置100と同様の構成については同じ符号を付し、また、以下の説明では、図21に示す三次元画像撮像装置100を三次元画像撮像装置100−4Aとして記載する。
【0199】
図21に示す三次元画像撮像装置100−4Aは、ステレオ方式で測定した撮像対象の距離情報103と、偏光光学系122によって測定した偏光成分データ104とを統合して、距離画像106を得るものである。
【0200】
図21に示す三次元画像撮像装置100−4Aは、第1の撮像手段2110と、第2の撮像手段2120(120)と、視差検出手段2130と、欠落領域記憶手段2140と、距離算出手段130と、偏光解析手段140と、形状復元手段230と、距離画像生成手段150を有して構成されている。
【0201】
第1の撮像手段2110は、第1の結像光学系111と、第1の受光素子113を有して構成される。また、第2の撮像手段2120は、第2の結像光学系121と、偏光光学系122と、第2の受光素子123を有して構成される。
【0202】
第1の結像光学系111によって集光された入力光a(101a)は、第1の受光素子113で受光される。そして、第1の受光素子113で検出した輝度情報2101aは、ステレオ法による距離計測のための基準画像となる。偏光成分の計測、更には距離計測
を兼ねる第2の結像光学系121によって集光された入力光b(101b)は、偏光光学系122を通過した後、第2の受光素子123に結像する。第2の受光素子123で計測した信号のうち、偏光成分データ104は、偏光解析手段140に送られる。同時に、第2の受光素子123において、偏光成分を平均化した画像を輝度情報2101bとして、視差検出手段2130に送られる。この偏光成分を平均化した画像(輝度情報2101b)は、ステレオ法による距離計測のための参照画像となる。
【0203】
続いて、視差検出手段2130は、第1の撮像手段2110から出力された輝度情報2101aと、第2の撮像手段2120から出力された輝度情報2101bとを比較して対応する点を求め、画素ごとに視差を算出(検出)する。ここで、対応点の探索の方法は、一般的なステレオ法の手法を用いることができる。視差検出手段2130は、輝度コントラストが存在しない或いは変化が緩やかで対応点が検出されなかった領域やステレオ法に特有な視差による遮蔽が存在する領域に関しては、欠落領域1701として欠落領域記憶手段2140に欠落領域情報2103を記憶する。
【0204】
続いて、距離算出手段130は、視差検出手段2130からの視差情報2102に基づいて、撮像対象との距離に係る距離情報103を算出する。なお、偏光解析手段140による偏光解析情報105及び形状復元手段230による表面形状情報205の生成や、距離情報103と表面形状情報205を統合するための方法については、第1の実施形態と同様の方法を用いることができる。また、欠落領域情報2103に基づく欠落領域1701の補完の方法については、第2の実施形態と同様の方法を用いることができる。
【0205】
図22は、本発明の第4の実施形態に係る三次元画像撮像装置100の概略構成の他の例を示す模式図である。なお、図21に示す構成と同様の構成については同じ符号を付し、また、以下の説明では、図22に示す三次元画像撮像装置100を三次元画像撮像装置100−4Bとして記載する。
図21に示す三次元画像撮像装置100−4Aは、第1の撮像手段2210と第2の撮像手段2220の双方に偏光光学系を備えるものである。
【0206】
図22に示す三次元画像撮像装置100−4Bは、第1の撮像手段2210と、第2の撮像手段2220と、偏光解析手段140a及び140bと、視差検出手段2230と、欠落領域記憶手段2140と、距離算出手段130と、偏光解析手段140と、形状復元手段230と、距離画像生成手段150を有して構成されている。
【0207】
図22に示す三次元画像撮像装置100−4Bでは、2つの撮像手段(2210及び2220)で計測された偏光成分データ104a及び104bのそれぞれについて、偏光解析手段140a及び140bで偏光解析を行う。そして、偏光解析手段140a及び140bでは、それぞれ、偏光度ρ(x,y)及び偏光方位角φ(x,y)を求めて偏光解析情報105a及び105bを生成し、これを視差検出手段2230に送る。
【0208】
視差検出手段2230では、偏光度と偏光方位角の偏光解析情報105a及び105bを用いて、2つの画像の対応点を探し、視差を検出する。そして、視差検出手段2230は、検出した視差に係る視差情報2102を距離算出手段130に送信する。なお、距離算出手段130において、視差情報2102から距離情報103を算出する方法、並びに、距離画像生成手段150において、距離情報103と偏光解析による表面形状情報205との統合の方法は、図21で説明した方法と同一である。
【0209】
図22に示す三次元画像撮像装置100−4Bでは、輝度の変化に乏しいが偏光成分には大きな変化があるような表面特性を持つ撮像対象や、反射率が高くて映りこみが存在するような撮像対象に対して、距離計測の精度を向上させる効果がある。具体的には、このような撮像対象に対して、視差検出のための正しい対応点の手がかりを増やすことで、距離計測の精度を向上させる効果がある。なお、本実施形態では、偏光度と偏光方位角のみで対応点を探索して視差を検出したが、偏光成分を平均化して得られる輝度情報も手掛かりとして加えて視差を検出してもよい。
【0210】
(本発明の他の実施形態)
前述した本発明の各実施形態に係る三次元画像撮像装置100の制御方法を示す図11〜図14及び図18の各ステップは、例えば、コンピュータのCPUがRAMやROMなどに記憶されたプログラムを実行することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0211】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0212】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図11〜図14及び図18に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システム或いは装置に直接、或いは遠隔から供給するものを含む。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合も本発明に含まれる。
【0213】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0214】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0215】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RWなどがある。また、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などもある。
【0216】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、若しくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0217】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0218】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、ダウンロードした鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0219】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0220】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【0221】
なお、前述した各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明に係る三次元画像撮像装置100は、例えば、製造工程の自動化において必要となる部品の三次元計測装置としての利用可能性がある。また、距離画像を動画として記録するような構成が可能なため、セキュリティカメラとしての利用可能性もある。
【符号の説明】
【0223】
100:三次元画像撮像装置、101a,101b:入力光、102:計測データ、103:距離情報、104:偏光成分データ、105:偏光解析情報、106:距離画像、110:第1の撮像手段、111:第1の結像光学系、112:測距用光学系、113:第1の受光素子、120:第2の撮像手段、121:第2の結像光学系、122:偏光光学系、123:第2の受光素子、130:距離算出手段、140:偏光解析手段、150:距離画像生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象との距離を計測するための画像を撮像する第1の撮像手段と、
前記第1の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、前記撮像対象までの距離を算出する距離算出手段と、
偏光成分を計測するための画像を撮像する第2の撮像手段と、
前記第2の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、偏光状態の解析処理を行う偏光解析手段と、
前記距離算出手段で算出された距離に係る距離情報と、前記偏光解析手段で解析処理された偏光状態に係る偏光解析情報とに基づいて、前記撮像対象の距離画像を生成する距離画像生成手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1の撮像手段は、第1の結像光学系と、第1の受光素子を含み構成されており、
前記第2の撮像手段は、第2の結像光学系と、偏光光学系と、第2の受光素子を含み構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の撮像手段は、測距用光学系を更に含み構成されていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記偏光光学系は、偏光方向の異なる微小領域である複数の偏光子を有して構成され、かつ、前記第2の結像光学系と前記第2の受光素子との間に配置されており、
前記複数の偏光子は、前記第2の結像光学系からの光をそれぞれ異なった偏光方向に偏光して、前記第2の受光素子に導くことを特徴とする請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の結像光学系と前記第2の結像光学系は、1つの光学系によって兼ねられ、光軸を同一とすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子とが同一の面上に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子が一種類の受光素子によって兼ねられることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記偏光光学系は、偏光方向の異なる微小領域である複数の偏光子を有して構成され、前記偏光子と、前記測距用光学系における測距用の光学素子とが同一の面上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の撮像手段は、前記撮像対象に照射光を投光する投光部と、前記投光部から投光された照射光が前記撮像対象に反射して前記第1の受光素子に至るまでの飛行時間を計測する飛行時間計測部を更に含み構成されており、
前記距離算出手段は、前記飛行時間に基づいて、前記撮像対象までの距離を算出することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の撮像手段は、前記撮像対象にパターン光を投光する投光部を更に含み構成されており、
前記距離算出手段は、前記撮像対象で観測された前記パターン光の分布から前記撮像対象までの距離を算出することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1の撮像手段は、前記測距用光学系として2つ以上の像を結ぶ光学系を有し、かつ、前記2つ以上の像の結像位置から視差情報を検出する視差検出部を更に含み構成されており、
前記距離算出手段は、前記視差情報および前記第1の結像光学系の焦点面までの距離情報に基づいて、前記撮像対象までの距離を算出することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記第1の撮像手段で撮像された画像の輝度情報と、前記第2の撮像手段で撮像された画像の輝度情報とから視差情報を得る視差検出手段を更に有し、
前記距離算出手段は、前記視差情報に基づいて、前記撮像対象までの距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記第1の撮像手段は、前記偏光光学系を更に含み構成されており、
前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段で撮像された画像に基づく偏光成分データに基づいて、視差情報を検出する視差検出手段を更に有し、
前記距離算出手段は、前記視差情報に基づいて、前記撮像対象までの距離を算出することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記偏光解析情報を用いて前記撮像対象の表面形状を復元する形状復元手段を更に有し、
前記距離画像生成手段は、前記形状復元手段で復元された表面形状に係る表面形状情報と、前記距離情報と統合することにより、前記距離画像を生成することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記距離画像生成手段は、前記距離情報の不連続性を表す状態変数を有し、前記状態変数を推定した結果に基づいて、前記距離情報と前記偏光解析情報とを統合することにより、前記距離画像を生成することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記距離画像生成手段は、前記距離画像を生成する際に、前記距離情報と、前記第2の撮像手段で撮像された画像に基づく偏光成分データとの2つの情報を比較することにより外乱成分を除去することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記距離情報に欠落領域が生じたときにその欠落領域情報を記憶する欠落領域記憶手段を更に有し、
前記距離画像生成手段は、前記距離画像を生成する際に、前記欠落領域を前記偏光成分データで補完することを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記距離画像生成手段は、画像を複数の領域に分割し、領域ごとに前記距離情報と前記偏光解析情報を統合することにより、前記距離画像を生成することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記距離画像生成手段は、前記距離情報と前記偏光解析情報とについて、信頼度に基づく重み付けを行って、前記距離画像を生成することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記距離画像生成手段は、前記距離情報と前記偏光解析情報に基づいて、前記撮像対象の屈折率を推定し、当該推定した屈折率を用いて前記偏光解析情報から前記撮像対象の表面形状を復元して、前記距離画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項21】
前記距離画像を動画として連続して記録する記録手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項22】
撮像対象との距離を計測するための画像を撮像する第1の撮像手段と、偏光成分を計測するための画像を撮像する第2の撮像手段を備える撮像装置の制御方法であって、
前記第1の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、前記撮像対象までの距離を算出する距離算出ステップと、
前記第2の撮像手段で撮像された画像に基づくデータを用いて、偏光状態の解析処理を行う偏光解析ステップと、
前記距離算出ステップで算出された距離に係る距離情報と、前記偏光解析ステップで解析処理された偏光状態に係る偏光解析情報とに基づいて、前記撮像対象の距離画像を生成する距離画像生成ステップと
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−256138(P2010−256138A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105602(P2009−105602)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】