説明

放電電極及び放電方法

【課題】ターゲットが磁性体・非磁性体であるに関わらず、ターゲット上に均一な平行磁場分布を形成し、均一なエロージョンが得られ、ターゲットの広幅化やスパッタ薄膜形成速度向上あるいはCVD成膜速度向上の効果が得られる放電電極及び放電方法を提供する。
【解決手段】平板ターゲットを有する放電電極において、前記平板ターゲットの表面側の両側縁に沿うように設けられ、前記平板ターゲットを隔てて対向する磁性体と、該磁性体を隔てて前記平板ターゲットの反対側に前記磁性体と組み合わせて設けられ前記平板ターゲットを隔てて異極性の関係であるターゲット上部磁石を有することを特徴とする放電電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空中にてプラズマ放電を行うプラズマ放電電極及びプラズマ放電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ放電とは、一般に低真空雰囲気で正極と負極の間に電圧を印加し気体電離を発生させる放電形態であり、スパッタリング、プラズマCVD、プラスチック基材の表面処理など様々な形で利用されている。なかでもスパッタリングはプラズマの陽イオンをカソードと呼ばれる負極に設置されたターゲットに衝突させ、衝突によりスパッタされた粒子が基板に付着して薄膜を生成する方法であり、組成制御や装置の操作が比較的簡単であることから、広く成膜過程に使用されている。しかし、従来スパッタリング法は真空蒸着法などに比べ薄膜生成速度が遅いという欠点を有していた。このため、永久磁石や電磁石を磁気回路として用いてターゲット付近に磁場を形成するマグネトロンスパッタリング法が考案され、薄膜の形成速度が向上し、半導体部品や電子部品などの製造工程においてスパッタリング法による薄膜形成の量産化を可能にした。しかしながら通常のマグネトロンスパッタリング装置ではターゲット下面側にターゲット下部磁石のみを設置し、ターゲット表面へ露出した磁場を利用するため、磁場がターゲット表面で垂直方向に向けて円弧状に形成され、スパッタリングに寄与する平行磁場分布に大きな偏りが発生してしまう。この平行磁場分布の偏りによりターゲットエロージョンの偏りが避けられず、ターゲット利用効率に限界があった。例えば特許文献6,非特許文献2では、通常の平板型マグネトロン電極において、前記のエロージョンの偏りのために、ターゲット利用効率が20〜30%(あるいは通常25%)にとどまることが記載されており、その改善のために回転ターゲット方式を採用している。また非特許文献1では通常のターゲット利用効率(20〜40%)を改善するために、磁石自体を回転させる技術が記載されている。さらに非特許文献3では磁性体であるNiターゲットにおいてターゲット利用効率が12%まで減少してしまうことが記載されており、その改善のために非特許文献1と同様に磁石を回転させ、ターゲット利用効率を改善している。つまり従来のマグネトロンスパッタリングにおいてはターゲットを移動させるか磁石を移動させないとターゲット利用効率が上がらずターゲットコストが高くなってしまうという問題があった。一方プラズマ放電をCVD装置へ適用する場合も問題は同様であり、平行磁場分布で示される高密度プラズマの閉じ込め領域が偏ってしまうため、効率の良いガス分解・重合を妨げてしまうという問題があった。そこで前記問題に対しターゲットの側面や上面へ磁石を配置し、磁気回路を改善することでターゲット表面の平行磁場を強める構成とした、特許文献1、特許文献2、特許文献3などの取り組みがある。前記公報はターゲット下部磁石とターゲット上部磁石を同極性とし、両磁場の反発によりターゲット上の平行磁場を増やしている。また特許文献4もターゲット材をヨークの一部として使用し、磁石をターゲット表面あるいは側面へ配置し、ターゲット表面の平行磁場を強めている。
【0003】
また特許文献5ではターゲット側面へ補助ターゲットと述べる磁性体部品を設置し、ターゲット裏面側の磁力線を吸引・放出することでターゲット表面へ形成する平行磁場を強める取り組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−124567号公報
【特許文献2】特開平7−228971号公報
【特許文献3】特開平8−176817号公報
【特許文献4】特公昭59−52957号公報
【特許文献5】特開2005−509091号公報
【特許文献6】WO2009−005068号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ELSEVIER社2010年出版のVACUUM84 P1372からP1376,「Completely Flat erosion magnetron sputtering using a rotating asymmetrical yoke magnet」
【非特許文献2】ELSEVIER社2009年出版のVACUUM83 P518からP521,「New target materials for innovative applications on glass」
【非特許文献3】ELSEVIER社2009年出版のVACUUM83 P470からP474,「Wide erosion nickel magnetron sputtering using an eccentrically Rotating center magnet」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしターゲットの側面や表面へ直接磁石を配置した、特許文献1、特許文献2、特許文献4の構成では磁石を安定的に活用することに問題があり、薄膜形成速度の向上も充分ではない。
【0007】
例えば特許文献1の構成にてスパッタリングを行った場合を図11へ示す。ターゲット下部磁石82間の磁力線84は磁性体であるターゲット80の内部に吸収され、ターゲット上部磁石81間の磁力線83の作用によりマグネトロンスパッタを実施している。ところが陽イオン85はターゲット80へ衝突し、ターゲット材料であるターゲット粒子86を弾き出すと共に、ターゲット上部磁石81へも衝突する。この陽イオン85の衝突衝撃によりターゲット上部磁石81は急速に高温状態となる。これにより磁石自身がキュリー点を超えてしまい減磁するため、マグネトロンスパッタリングとしての機能が充分得られない状況となるか、高温化を防ぐために投入電力を下げ、薄膜形成速度を下げなければならない状況となる。よって磁界発生手段であるターゲット上部磁石81を直接、プラズマ発生領域であるターゲット80表面の側縁へ設置する構成は、良好なスパッタ機能を発揮できなかった。
【0008】
同様に特許文献2も特許文献1と同じ問題を有している。さらに隣り合う磁石同士が逆極性になるよう定めているため、スパッタを行うメカニズム自体が本発明とは異なっている。
【0009】
一方、特許文献4はターゲット上部に設置された磁石がスパッタされないよう磁石カバーを設置する構成としているが、結局磁石カバーが陽イオンの衝撃を受け発熱し、磁石カバーからの伝熱により磁石が高温となるため、特許文献1と同じく磁石が減磁してしまい、スパッタ機能が得られなくなる。
【0010】
一方、特許文献3は図12で示すとおり、ターゲット90とターゲット上部磁石93、94の間に非接触で絶縁された冷却シールド92を設置し、ターゲット上部磁石93,94をターゲット90から遠ざけるという工夫を行っている。また特許文献1の構成と同じく、ターゲット下部磁石95,96も備えている。しかしこの構成では磁石は保護できるものの、ターゲット90と離れてしまうためターゲット上部磁石93,94から放出された磁力線98はターゲット中央部に近づくほど減衰し、ターゲット幅を広くすることができないという問題がある。更に図13で示すとおり、ターゲットが磁性体ターゲット110の場合は、磁力線111の多くがターゲット端面から吸収され、よりターゲット表面に均一磁場を形成することは困難となるため適用することは難しい。つまり磁力線放出部品である磁石をターゲット近傍へ配置すればターゲット表面への平行磁場形成に有利であるが磁石自身が損壊してしまい、磁石を保護するためにターゲットから遠ざければ充分に磁場形成の効果が得られないという課題があった。
【0011】
一方、図14で示す特許文献5では、磁性体121,122(本公報では補助ターゲット)を用いてターゲット120表面へ磁力線125を誘導する点では同様であるが、本発明者らの知見によれば、ターゲット下部磁石123を配置し、ターゲット表面側へ磁石を有しない点について本発明とは根本的にメカニズムが異なる。また、特許文献5の構成では磁石損壊は発生しないが、ターゲット120が磁性体ターゲットである場合、ターゲット下部磁石123の磁場をターゲット表面側へ吸引・誘導するために、ターゲット裏面側磁石に近接させるべく図14のようにターゲット側面位置へ磁性体121,122を配置する必要がある。これは例えば図15のようにターゲット130の表面へ磁性体131、132を配置した場合、磁性体であるターゲット130内に磁力線133がほとんど吸収されてしまい、磁性体131,132の設置がターゲット表面の平行磁場向上に効果を発揮しなくなるためである。つまり特許文献5では磁性体131,132をターゲットの側面へ設置する事を特徴としているため、ターゲットの上方両側縁へ磁性体を配置することを特徴とする本発明とはメカニズムが異なる。また図14に示す特許文献5の構成を用いても、ターゲット裏面側磁石123から発生した磁力線125は全て磁性体へ向かうわけではなく、多くが磁性体であるターゲット120内へ吸収されるため、ターゲット表面に形成される平行磁場強度は充分ではなく改善の程度は限定的である。
【0012】
本発明は上記のこれらの問題を解決し、ターゲットが磁性体・非磁性体であるに関わらず、ターゲット上に均一な平行磁場分布を形成し、均一なエロージョンが得られ、ターゲット利用効率の向上やスパッタ薄膜形成速度向上あるいはCVD成膜速度向上の効果が得られるプラズマ放電電極及び放電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、平板ターゲットを有する放電電極において、前記平板ターゲットの表面側の両側縁に沿うように設けられ、前記平板ターゲットを隔てて対向する磁性体と、該磁性体を隔てて前記平板ターゲットの反対側に前記磁性体と組み合わせて設けられ前記平板ターゲットを隔てて異極性の関係であるターゲット上部磁石を有する放電電極が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記磁性体の下面が前記平板ターゲットの表面と略同一か上方にある放電電極が提供される。
【0015】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記平板ターゲットの長手方向に垂直な断面において、前記磁性体間の対向面は前記平板ターゲット表面の法線方向に対して外側に角度θで傾斜し、θは0°<θ≦45°の範囲である放電電極が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記平板ターゲットの厚み方向において前記平板ターゲットを隔てて前記磁性体と対向する位置である前記平板ターゲットの裏面側位置にターゲット下部磁石を有し、前記ターゲット下部磁石の磁力線放出の向きが前記平板ターゲットの厚み方向であって、前記磁性体と前記ターゲット下部磁石の磁極性が同極性である放電電極が提供される。
【0017】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記平板ターゲットの表面側磁界と裏面側磁界がループを形成している放電電極が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記磁性体、前記ターゲット上部磁石、前記ターゲット下部磁石は温度制御手段を有する放電電極が提供される。
【0019】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記平板ターゲットがFe、Co、またはNiを主成分とする磁性体材料である放電電極が提供される。
【0020】
また、本発明の別の形態によれば、平板ターゲットの表面へ形成した磁界を用いて放電を発生させる放電方法であって、前記平板ターゲットの表面側の両側縁に沿うように設けられ、前記平板ターゲットを隔てて対向する磁性体と、該磁性体を隔てて前記平板ターゲットの反対側に前記磁性体と組み合わせて設けられたターゲット上部磁石と、前記平板ターゲットの厚み方向において前記平板ターゲットを隔てて前記磁性体と対向する位置である前記平板ターゲットの裏面側位置にターゲット下部磁石を有し、前記ターゲット上部磁石同士の対向する磁極性は異極性であり、ターゲット厚み方向を隔てて対向するターゲット上部磁石とターゲット下部磁石との磁極性は同極性とすることにより、ターゲット表面の磁性体間に略平行な磁界を形成し、前記磁界を用いて放電を発生させる除電方法が提供される。
【0021】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記磁性体間の幅Wの中心から±0.35Wの幅と、前記磁性体の高さHに対する2Hで定義される磁界形成領域における平行磁束密度の分布を、幅方向位置がWの中心位置で高さ方向が0から2Hの範囲の任意の高さh位置の平行磁束密度Bcを基準としてBc±20%以内に形成し、その平行磁束を用いて放電を発生させる除電方法が提供される。
【0022】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記平行磁束密度Bcが10mTから500mTの範囲である除電方法が提供される。
【0023】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記放電電極をスパッタ源として有するスパッタリング装置が提供される。
【0024】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記スパッタリング装置にガスを導入してターゲットをスパッタし薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法が提供される。
【0025】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記放電電極を原料ガス反応源として有することを特徴とするCVD装置が提供される。
【0026】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記原料ガスが炭化水素ガス、珪素化合物ガス、あるいはフッ素化合物ガスであるCVD装置が提供される。
【0027】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記CVD装置に原料ガスとして炭化水素ガス、珪素化合物ガスあるいはフッ素化合物ガスを導入してCVD薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ターゲットが磁性体・非磁性体であるに関わらず、ターゲット上に均一な平行磁場分布を形成し、均一なエロージョンが得られるため、ターゲット利用効率が大幅に向上し、スパッタ薄膜形成速度向上あるいはCVD成膜速度向上の効果が得られる放電電極及び放電方法を提供できる。またターゲットや磁石の移動機構を必要としないため、簡易で安価な放電電極によりその効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる第一の実施形態による放電電極の単一放電断面概略図。
【図2】本発明にかかる第二の実施形態による放電電極の単一放電断面概略図。
【図3】本発明にかかる第三の実施形態による放電電極の単一放電断面概略図。
【図4】第三の実施形態による放電電極を用いた成膜装置を示す概略図。
【図5】第一の実施形態による放電電極において、ターゲット上の平行磁束密度分布をグラフ化した図。
【図6】第二の実施形態による放電電極において、ターゲット上の平行磁束密度分布をグラフ化した図。
【図7】第三の実施形態による放電電極において、ターゲット上の平行磁束密度分布をグラフ化した図。
【図8】比較例1の放電電極形態による単一放電断面概略図。
【図9】比較例1の放電電極において、ターゲット上の平行磁束密度分布をグラフ化した図。
【図10】比較例2の放電電極において、ターゲット上の平行磁束密度分布をグラフ化した図。
【図11】従来技術(特許文献1)の構成における放電断面概略図。
【図12】従来技術(特許文献3)で非磁性体ターゲットにて構成した場合の放電断面概略図。
【図13】従来技術(特許文献3)で磁性体ターゲットにて構成した場合の放電断面概略図。
【図14】従来技術(特許文献5)の構成における放電断面概略図。
【図15】従来技術(特許文献5)の構成において磁性体をターゲット上へ設置した場合の放電断面概略図。
【図16】本発明の実施形態に関わる放電電極の単一放電断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図16を用いて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0031】
図16は放電電極205においてターゲット140の長手方向に垂直な断面を示している。本発明は平板ターゲット140を有する放電電極205において、前記平板ターゲット140の表面側の両側縁に沿うように設けられ、前記平板ターゲットを隔てて対向する磁性体143,151と、該磁性体143,151を隔てて前記平板ターゲット140の反対側に前記磁性体143,151と組み合わせて設けられ、前記平板ターゲット140を隔てて異極性の関係であるターゲット上部磁石141,152とを有することを特徴とする。また前記磁性体143,151の下面が前記平板ターゲット140の表面と略同一か上方にあることが好ましい。
【0032】
ここで放電電極205を上から見た状態において平板ターゲット140は平板であれば直方体でもドーナツ形状、楕円形状でも良く、放電電極の形態に合わせた形状を選択できる。一般には中央部をくり抜いた長円形状が多い。また1個で放電電極205に必要な平板ターゲット形状を形成しても、多数個を合わせて平板ターゲット形状を形成しても良い。また厚みや表面粗度なども任意に選択できる。
【0033】
またターゲット表面側とは放電面のことであり、放電電極205がスパッタ電極であれば陽イオン144で平板ターゲット140がスパッタされる側のターゲット面を指す。ターゲット表面側の両側縁とは放電電極205を断面で見た図16において、平板ターゲット140の放電面側の2箇所の角部を指し、本発明は該2箇所の角部へ近接するように磁性体143、151を配置したことを特徴とする。該磁性体の断面形状は角形でも丸形でも多角形でも良い。該磁性体143,151は平板ターゲット140を隔てて対向するように設け、ターゲット角部に沿ってその外側へ設置する必要があり、平板ターゲット上に乗り上げないことが好ましいが、多少の乗り上げは許容できる。また、磁性体下面が多少平板ターゲット表面より下側へ設置することも許容できる。ここで、磁性体下面とは、ターゲット角部に沿うように設置した磁性体143、151のターゲット厚み方向の面である。対向する該磁性体143、151のそれぞれ反ターゲット側にはターゲット上部磁石141、152が設けられ、放出する磁力線により該磁性体143、151と吸着させ組み合わせる。該ターゲット上部磁石141,152のそれぞれの磁極性は磁性体143、151、平板ターゲット140を隔てて対向する面で異極性とし、一方がN極であれば他方はS極に設定する。さらに本発明において磁性体下面が平板ターゲット表面と同一線上にあるか、より上方にあることが好ましい。上方とはターゲット厚み方向において平板ターゲットから離れる方向(高さ方向)を指す。本構成においてターゲット上部磁石141から放出された磁力線は磁性体143の反ターゲット面から吸収され、対向面から再び放出される。放出された磁力線146は平板ターゲット140を隔てて対向するもう一方の磁性体151へ吸収され該磁性体151を貫流して反ターゲット側のもう一方のターゲット上部磁石152へ吸収される。よって対向する磁性体間においてターゲット平面方向へ強い磁力線146が略平行に形成される。このようにターゲット表面へ強い平行磁束を形成することにより、平行磁束へトラップされる電子の量が飛躍的に増大するため、平板ターゲット上の広い範囲に安定な強い放電が得られマグネトロン放電の効率が向上する。また前記の効果で平板ターゲット上に衝突する陽イオン144の量が磁性体143,151間においておおよそ均一となるため、エロージョンが平板ターゲット表面に対しターゲット厚み方向へ略平行に進行し、局部的なエロージョンが解消され、ターゲット使用効率が飛躍的に向上する。また磁性体から磁石の磁力線を全て放出すべく、組み合わせたターゲット上部磁石141は磁性体143と同じ厚みか若干薄いことが好ましい。また磁性体下面がターゲット表面より下方にある場合、例えば平板ターゲット140の側面へ設置した場合は、磁性体から放出された磁力線の多くは平板ターゲット140内部を通過する為、ターゲット表面側の平行磁束が減少し、マグネトロン放電の効率向上が充分得られず効果は不十分となる。よって磁性体下面がターゲット表面と同一線上にあるかより上方にあることが好ましい。
【0034】
更に本発明は図16において、前記磁性体143、151間の対向面が前記平板ターゲット140表面の法線方向に対して外側に角度θで傾斜し、θは0°<θ≦45°の範囲であることを特徴とする。
【0035】
ここで述べる角度θとは放電電極205を断面方向から見て、平板ターゲット140を隔てた磁性体143,151の対向面と、平板ターゲット140表面の法線方向(垂直方向)との交点における角度を示しており、90°から磁性体対向面の先端角度引いた角度を指している。この角度θは0°以上45°未満であればよいが、特に20〜30°が好適である。これは磁性体143の傾斜面から磁力線146が放出することにより、ターゲット上の平行磁束分布について平板ターゲットの法線方向(垂直方向、上方)に向かった減衰勾配が良好となるためである。具体的には磁性体143、151間の平行磁束密度の均一性は傾斜のない磁性体と同じく良好な状態で、更に平板ターゲット140の表面付近の平行磁束密度を最大として、法線方向に向かうほど緩やかに平行磁束密度が下がっていく勾配が得られる。このとき角度θが0°以上45°未満であれば、ターゲットから法線方向に遠ざかっても平行磁束密度の減衰量が急激に下がりすぎることなく、マグネトロン放電に充分な平行磁束密度の領域を広く維持できる。つまりマグネトロン放電を行う領域であるターゲット上エリアの法線方向の平行磁束密度の減衰勾配を整えた効果により、傾斜のない磁性体を用いたものよりさらに放電状態が安定し良好となる。この平行磁束密度を法線方向に整えた効果により、安定して高電力が投入出来るようになるため、さらにスパッタレートが向上し、ターゲット利用効率も向上する。また傾斜効果によりターゲットから飛翔したスパッタ粒子145が磁性体対向面に衝突して付着、堆積する量が大幅に低減するため、スパッタレートも向上する。また磁性体対向面へスパッタ粒子の堆積が増えると、アーク放電が発生しやすくなるが、本問題も回避できる。
【0036】
またさらに本発明では前記磁性体143,151と、ターゲット厚み方向においてターゲット厚みを隔てて対向するターゲット裏面側位置にターゲット下部磁石142、153を配置し、前記ターゲット下部磁石142、153の磁力線放出の向きはターゲット厚み方向であって、ターゲット厚みを隔てて対向する前記磁性体143とターゲット下部磁石142、または磁性体151とターゲット下部磁石153の磁極性が同極性であることを特徴とする。
【0037】
本構成は平板ターゲット140がFe、Co、またはNiを主成分とする磁性体材料である場合、より好適な効果を示すものであるが、非磁性体ターゲットにも適用できる。前記ターゲット裏面側とは放電面である表面側に対する裏面を指しており、ターゲット幅の内側に範囲を限定するものではなく、ターゲットの裏面と同一線上か裏面より反ターゲット側(下方)の範囲全体を指している。該ターゲット裏面側位置に配置したターゲット下部磁石142、153はターゲット厚み方向を隔てて対向する磁性体143、151とそれぞれ同極性とし、その磁力線放出面は対向する磁性体143方向(ターゲット厚み方向)へ向けるものとする。ターゲット下部磁石142の磁力線放出面は磁性体143の磁力線放出面に対して、ターゲットを隔てた直下の位置が望ましいが、磁性体143に対向していれば問題はない。本構成によりターゲット下部磁石同士は異極性となり磁石間の空間及びターゲット内部へ磁力線147が流れ、磁界が形成される。特に図16は磁性体ターゲットの場合を示しており、ターゲット内部へ多くの磁力線147が吸収される。そして本磁力線147はターゲット表面側の磁力線146と同極性(同方向性)であるため磁界間に反発力が発生し、ターゲット表面側の磁力線を押し上げる効果が生まれる。通常、磁性体ターゲットの場合、ターゲット表面側の両側縁に沿うように磁性体143を設けても、磁性体143から放出された磁力線146は若干平板ターゲット140へ吸収され、ターゲット表面の平行磁束密度全体が下がる傾向にある。しかし本構成を用いると、前記反発効果により磁性体ターゲットにおいてもターゲット表面へ強い平行磁束が形成でき、安定にマグネトロン放電が形成できる。また従来、磁性体ターゲットではターゲット使用効率が悪くなることが知られているが、本構成を用いれば飛躍的にターゲット使用効率を高めることが可能となる。平板ターゲット140内部を貫流した磁力線147は、もう一方の端面付近にてターゲット下部磁石153に吸収される。
【0038】
また本発明は前記のターゲット下部磁石142、153を有する構成において、ターゲット表面側磁界とターゲット裏面側磁界がそれぞれループを形成していることを特徴としている。ここで述べる磁界のループとは、一方の磁石から放出した磁力線が他方の磁石へ吸収され、他方の磁石の逆極性側からヨーク部材等を介して、最初の磁石の逆極性側へ磁気的に接続されるような、磁力線の流れが開放形ではなくループ状に収束していることを指している。
【0039】
具体的には、ターゲット上部磁石141から放出された磁力線は磁性体143内を貫流し、平板ターゲット140の表面側に磁力線146として形成された後、磁性体151を貫流してターゲット上部磁石152へ吸収される。しかしそこで磁力線の流れに終端を形成せず、ターゲット上部磁石152からヨーク148内部を貫流して、再度ターゲット上部磁石141へ戻る、いわゆる磁界のループ構成を形成することを特徴としている。前記はターゲットを囲む形状の磁界の流れを示すが、平板ターゲット140下面に設置される磁界も同様である。すなわち、ターゲット下部磁石142から放出された磁力線は平板ターゲット140内部へ磁力線147の状態で貫流し、ターゲット下部磁石153へ吸収されるが、さらにターゲット下部磁石153からヨーク149を貫流し、再びターゲット下部磁石142へ戻る磁界のループを形成することを特徴としている。つまりターゲット表面磁界の大きな磁界ループの内部に、ターゲット裏面磁界の小さな磁界ループを有する2重の磁界ループを形成することを特徴としている。前記の通り二重の磁界のループを形成することにより、不要な位置へ終端部の漏洩磁界を形成してしまうことなく、より強い磁界を効率よくターゲット表面へ形成することが可能となる。
【0040】
また本発明は磁性体、ターゲット上部磁石およびターゲット下部磁石が温度制御手段を有することを特徴としている。
平板ターゲット140表面付近の放電領域へ接する部材は陽イオン144の衝突衝撃で全て加熱されるが、磁性体143、151が加熱され高温となると熱伝導によりターゲット上部磁石141、152も高温となるため、キュリー点を超えて磁石が減磁損傷してしまう。これを回避するため磁性体や磁石を温度制御することを特徴とする。温度制御方法は冷却水を通水し温度制御することが簡易であり好ましいが、冷媒は水でなくともオイルや気体冷媒のようなものでも良く、ペルチェ素子のような接触冷却方式でも良い。図16では磁性体143に冷却水150を通水し、磁性体143およびターゲット上部磁石141の温度制御を行うことを示している。またターゲット下部磁石142,153は図示しない冷却水槽の中に設置されていることが望ましい。
[第一の実施形態]
次に第一の実施形態について詳細を述べる。
【0041】
第1図は第一の実施形態による放電電極の単一放電断面概略図を示す。放電電極200のカソード1において10は生成すべき膜によって材料が選択されるターゲットであり、このターゲット10の表面側の両側縁に沿うようにターゲット10を隔てて磁性体11a、11bが設けられる。磁性体11a、11bの下面はターゲット10の表面と略同一か上方位置に設置される。そして磁性体11a、11bのターゲット10との反対面にはそれぞれターゲット上部磁石12a、12bが組み合わされており、ターゲット上部磁石12a、12bは磁性体11a、11b及びターゲット10を挟んで逆極性で対向している。ターゲット10はターゲット押さえ20とねじ21によってバッキングプレート22へ押さえつけられ、バッキングプレート22とターゲット押さえ20は共に水冷ケース23へねじ21によって固定されている。水冷ケース23の内部は温度制御された冷却水24が循環しており、バッキングプレート22を介してターゲット10を冷却する。バッキングプレート22と水冷ケース23の接触面にはOリング25が設置され、冷却水24をシールする。
【0042】
一方、ターゲット上部磁石12a、12bの反ターゲット面には磁性体材料からなるヨーク部品13、補助磁石14、ヨーク部品15、ヨーク板16を接触接続し、ターゲット上部磁石12a、12bを磁気的に接合させる。よって前記の部品を介してターゲット上部磁石12a,12bはターゲット10や水冷ケース23の外周で磁界ループを形成する。本発明における磁界ループとは環状に収束する磁界の流れを指している。すなわち第1図においてターゲット上部磁石12aのN極から磁性体11aを介して磁力線28が放出され、ターゲット上を略平行に横切り、ターゲット表面のもう一方の側縁に設置された磁性体11bへ吸収され、磁性体11bと組み合わせたもう一方のターゲット上部磁石12bのS極へと吸収される。ターゲット上部磁石12bのN極磁力線はヨーク部品13、補助磁石14、ヨーク部品15、ヨーク板16の部材を貫流し、再びターゲット上部磁石12aのS極へ吸収され、磁束ループを終端させる。つまり本発明は、磁性体11a,11bをターゲット10表面の両側縁に設置し、またターゲット10を環状に囲むような磁界の流れを形成することにより、ターゲット10上に強く均一な平行磁束領域を形成できることが特徴である。特に磁性体11a,11b間の対向距離Wの中心Cに対し±0.35Wの幅と、磁性体11a,11bの高さHに対する2Hで定義される磁界形成領域における平行磁束密度の分布を、幅方向位置がWの中心位置で高さ方向が0から2Hの範囲の任意の高さh位置の平行磁束密度Bcを基準としてBc±20%以内に均一化できることが特徴である。このとき平行磁束密度Bcは10mTから500mTの範囲に設定する。このターゲット10上の強い平行磁束領域に電子が捕獲されて、マグネトロン放電が発生し、マグネトロンスパッタの放電状態が安定し、高電力の投入ができるため、スパッタレートが向上する。またターゲット10上に均一な平行磁束領域が形成できるため、ターゲット10の利用効率が飛躍的に向上する。一方、磁性体11a、11bの下面がターゲット表面より下にある場合(ターゲット側面にある場合)、磁性体11aから放出されるN極磁力線はその一部、あるいは大半がターゲット10の内部を通過し、磁性体11bへ吸収され、ターゲット10の表面に形成すべき平行磁束が減少してしまうこととなる。この状態はターゲット10の材料が磁性体材料であった場合、特に顕著となる。その結果、マグネトロンスパッタの放電状態が著しく不安定な状態となるか、低電力しか投入できず、低いスパッタレートしか得られない状態となり、ターゲット利用効率も減少する。すなわち、磁性体11a,11bがターゲット10の表面側両側縁に位置することにより、前記の効果が得られることとなる。また前記の磁束ループが形成されていない場合もターゲット10表面に形成すべき平行磁束が減少してしまい、不安定な放電や低スパッタレート、低ターゲット利用効率となる。また磁性体11a、11bの内部には冷却水19が循環しており、磁性体11a,11bが陽イオンの衝撃を受けても高温にならないよう温度制御を行う。つまりマグネトロンスパッタリングの効率を高めるためにターゲット10表面の両縁部から強力な磁力線を放出できる構成としながら、その磁力線放出部品がターゲット上部磁石12a.12bではなく温度制御された磁性体11a,11bとすることにより、高温化による磁石能力の損壊を防止し、安定な磁力線放出によるマグネトロン放電が可能となる。
【0043】
次に構成部材の詳細について述べる。ターゲット10は銅などの非磁性体材料が好ましいが、磁性体材料でも適用できる。ターゲットの厚みは1mm程度から30mm程度まで任意に選択でき、ターゲット幅W2も10mm程度から100mm程度まで任意に選択できる。磁性体11a、11bの材質は磁性体であれば問題ないが、耐蝕性を有するSUS430やニッケルなどが好適である。またターゲット10が磁性体材料の場合、同じ材料を用いることが好ましい。第1図において磁性体11a、11bの形状は角形としているが多角形や丸形でも良い。磁性体11a,11b間の対向距離Wはターゲット幅W2と同幅か、あるいはやや狭く設定することがターゲット利用効率の点から望ましい。ターゲット上部磁石12a,12bは磁力強度の高いものが好適であり、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などが良い。ただし、フェライト磁石のような磁力が低いものもスパッタレートは下がるが使用することはできる。ヨーク部品13、15は磁性体材料で耐蝕性の良いSUS430やニッケルが好適であり、補助磁石14もターゲット上磁石12a,12bと同様に磁力強度の高い磁石が好適である。磁石の強度が強すぎる場合やヨーク設計との兼ね合いの問題で、ターゲット上部磁石12a,12bおよび補助磁石14のところに不要な意図しない磁束ループが形成されることがあり、それによって不要な意図しないマグネトロンプラズマ放電を誘発する場合がある。その場合は、意図しない材料がスパッタリングされることによってコンタミネーションの原因となったり、不要なプラズマ放電に電力が消費されるため成膜効率が低下したり、冷却を考慮していない部材が不要なプラズマにより加熱され磁石や樹脂等の構成部材が熱損傷を受けたり、異常放電の起点となったり、さまざまなトラブルの要因となることがある。このような不要な意図しないマグネトロンプラズマ放電を発生させないためには、不要な意図しない磁束ループが形成されている部分を覆い隠すように磁性体を用いて製作された磁気シールドを設けるか、不要な意図しない放電が生じる部分の電極表面に絶縁体カバーを設けるのが好ましい。特に磁石の周りは、磁石自身が磁束ループを形成しやすいため、ターゲット上部磁石12a,12bおよび補助磁石14の近傍を磁気シールドするのがより好ましい。磁石の周りとは、たとえば、図1で示すと、カバー17、カバー18のことを示す。このことはほかの実施形態においても同じことが言える。なお、補助磁石14はターゲット上部磁石12a,12bの反ターゲット側磁力線を偏向・吸引する為にあるので、フェライト磁石などの磁力の弱いものでも良く、磁石でなくとも磁性体でも適用可能である。ヨーク板16も磁性体材料であればよいがSUS430やニッケルが好適である。ターゲット押さえ20及びバッキングプレート22は非磁性体材料が望ましく、熱伝導率がよい銅などの材料が望ましい。ねじ21はSUS304などの非磁性体材料で耐蝕性の良いものが好ましい。水冷ケース23は非磁性体材料で耐蝕性の高いものが好ましく、SUS304が好適である。本構成ではターゲット押さえ20とねじ21によってターゲット10をバッキングプレート22へ接触させ冷却しているが、ターゲット押さえ20を用いず、ターゲット10を直接バッキングプレート22へボンディングによって接合することや、バッキングプレート22を用いず、水冷ケース23と同じ幅のターゲットを直接水冷ケース23へねじ止めしても良い。また、ターゲット10とバッキングプレート22の界面にカーボンシートなどの熱伝導補助素材を挟み込んでもよい。ターゲット上部磁石12a,12bの上面にはカバー17を設置し、補助磁石14の反ターゲット方向の面にもカバー18を設置する。カバー17,18は非磁性体材料でも良いが、磁性体材料を用いると、磁界シールド効果もあり、より放電が安定する。カソード1の周囲にはカソードを囲むような形でアノード27が形成されている。アノード27とカソード10との間隙は絶縁部材からなるスペーサ26を介して一定に保たれるものとする。カソード1はアノード27に対し、スペーサ26によってお互い電気的に絶縁されている。アノード27は非磁性体材料で耐蝕性を有するSUS304が好適であり、その開口部は磁性体11間の距離Wと同一かより広いことが好ましい。また図示しないが、温度制御された冷却水管などを接合し、アノード27も温度制御することが更に望ましい。
[第二の実施形態]
第2図は本発明にかかる第二の実施形態による放電電極の単一放電断面概念図を示す。放電電極201の部品構成は第1図に示す第1の実施形態と同様であるが、ターゲット10表面の両縁部に沿うように設けられ対向する磁性体が傾斜磁性体30a,30bであり、その対向面がθの角度で対称形に傾斜する。ここで述べる角度θとは放電電極201を断面方向から見て、平板ターゲット10を隔てた磁性体30a,30bの対向面と、平板ターゲット10表面の法線方向(垂直方向)との交点における角度を示しており、90°から磁性体対向面の先端角度引いた角度を指している。この角度θは0°以上45°未満であればよいが、特に20〜30°が好適である。これは磁性体30aの傾斜面から磁力線31が放出することにより、ターゲット上の平行磁束分布について平板ターゲットの法線方向(垂直方向、上方)に向かった減衰勾配が良好となるためである。
具体的には磁性体30a,30b間距離Wの平行磁束密度の均一性は第一の実施形態と同じく良好な状態で、更にターゲット10の表面付近の平行磁束密度を最大として、垂直方向に向かうほど緩やかに平行磁束密度が下がっていく勾配が得られる。すなわち垂直方向の平行磁束密度の減衰勾配を整えた本効果により、垂直方向の部分的な磁束密度の強弱で放電が乱されることなく第一の実施形態よりさらに放電状態が安定し良好となる。この平行磁束密度を垂直方向に整えた効果により、第一の実施形態と比較し、さらにターゲット利用効率が向上する。また傾斜磁性体30a,30bの傾斜効果によりターゲット10から飛翔したスパッタ粒子が磁性体対向面に衝突して付着、堆積する量が大幅に低減するため、第一の実施形態よりもスパッタレートが向上する。また磁性体対向面へのスパッタ粒子堆積が増えると、アーク放電が発生しやすくなるが、本問題も回避できる。ただし、傾斜磁性体30a,30bの角度θが45°以上の場合、ターゲット表面から垂直方向へ向かうほど磁力線放出面の距離(傾斜面同士の距離)がお互い遠ざかることとなる。これにより垂直方向の平行磁束密度の減衰量が大きくなり、ターゲット上方の平行磁束密度が低くなりすぎるため、マグネトロン放電を形成できるエリアが狭まることとなる。これにより低電力投入しかできず、スパッタレートが低下し、ターゲット利用効率も減少することとなってしまう。
[第三の実施形態]
第3図は本発明にかかる第三の実施形態による放電電極の概念図を示す。本構成ではターゲット10に非磁性体材料を用いても良いが、Fe、Ni、Co等の磁性体材料においてより好適な結果を示すものである。放電電極202におけるカソード1においてターゲット10の上部から磁力線を形成する構成は第二の実施形態と同様であるが、傾斜磁性体30a,30bとターゲット厚み方向を隔て対向する位置である水冷ケース23の内部にターゲット下部磁石40a,40bを有する。図3に示すようにターゲット下部磁石40a,40bの磁力線放出面は、ターゲットを隔てて対向する傾斜磁性体30a,30bの方向へ向けることが好ましく、その磁気極性は対向する傾斜磁性体30a,30bと同一極性とする。また水冷ケース23内のターゲット下部磁石40a,40bの磁力線放出面同士はお互い異極性で対向し、磁力線放出面と逆側にてヨーク板41と組み合わされ、磁束ループを形成する。水冷ケース23内は温度制御された冷却水24が通水され、バッキングプレート22、水冷ケース23及びターゲット下部磁石40a,40bを冷却する。第一、第二の実施形態において、ターゲット10が磁性体材料である場合、磁性体11aや傾斜磁性体30aから放出された磁力線28,31は、ターゲット10内に若干吸収され、ターゲット表面の平行磁束密度の全体レベルが下がってしまう場合があるが、本構成によればターゲット下部磁石40aから放出された磁力線42の多くがターゲット内を通過し、さらに同極性である傾斜磁性体30aから放出された磁力線43を反発力により持ち上げる効果があるため、磁力線43のターゲット10へ吸収される量が大幅に低減し、ターゲット表面へより強い磁力線が略平行に形成される。さらに第一、第二の実施形態の場合、磁性体ターゲットにおいてはターゲット表面の平行磁束密度は磁性体間距離Wの中央部分にて僅かに下がる傾向があるが、本構成ではターゲット10を通過してターゲット表面へ漏れ出たターゲット下部磁石40からの磁力線42がターゲット中央部の平行磁束を補完するため、ターゲット上の平行磁束密度分布を更に均一化できるようになる。ターゲット下部磁石40a,40bはターゲット10が磁性体である場合、ターゲット厚みが厚いほど強力な磁力のものが好ましく、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などが好適である。ただし、磁性体ターゲットが1〜2mmと薄い場合や、非磁性体材料を用いている場合はフェライト磁石などの低磁力のものでも問題はない。
【0044】
第4図は本発明にかかる第三の実施形態の放電電極を用いた成膜装置300を示す概略図である。ただし、本図では例として第三の実施形態である放電装置202を用いているが、成膜装置としては第一、第二の実施形態の放電電極200,201を用いて成膜することに問題はない。本図における本発明の放電装置を用いた成膜装置は、真空チャンバー50が排気ポンプ51に接続され真空チャンバー50内を排気する。真空チャンバー50内部には基板ホルダー52,53により基板54が支持され、基板54の正面へ対向する位置に放電電極203が設置される。基板54はガラス基板やシリコンウェハー等が用いられるが、プラスチックフィルムや金属板でも良い。また、プラスチックフィルムの場合はフィルム搬送機構を設けたウェブコーター形式の真空チャンバーでも良い。第一から第三の実施形態における放電電極200〜202は放電部分断面の単一形状を模式的に示したが、実際の断面は本図のように放電面を2箇所有する対称形断面となり、上から見た平面方向の放電面がドーナツ状の円形、あるいはレーストラック状の長円形でループを形成する。これにより平行磁束で捕捉した電子の旋回回数を増やすことができ、放電効率を向上させることができる。放電電極103においてカソード1とアノード27とはスペーサ26を介して電気的に絶縁され、カソード1はプラズマ電源56に接続される。アノード27は本構成では接地としているが、真空チャンバー50から電気絶縁を設けた支持構成とし、プラズマ電源のアノード極性側へ接続することでも問題ない。プラズマ電源は直流電源、交流電源、高周波電源、パルス電源など一般的なプラズマ電源が適用できる。またカソード1には第三の実施形態にて述べた冷却水が通水される。(図4では図示省略)基板54と放電電極203の側面周囲には防着板ホルダー57にて支持された防着板58を設け、真空チャンバー50内にスパッタ粒子が付着する事を低減させる。また防着板58を貫通してガス管55が接続される。ガス管55は制御弁60とプラズマガス供給源59へ接続され、放電電極203の表面にプラズマガスを供給する。前記プラズマガス供給状態でカソード1へプラズマ電源56から電圧を印可し放電電極203のターゲット表面へマグネトロン放電を発生させる。本放電によってガスをイオン化し、ターゲットをスパッタすることによって基板54へ成膜を行う。プラズマガスは不活性ガスであるアルゴンやヘリウムが好適であるが、窒素や酸素などの活性ガスでもスパッタできる。その場合はターゲット材料を窒化あるいは酸化した膜が成膜できる。またCVD成膜の場合、プラズマガス供給源59に合わせ、反応性のCVD用ガス供給源61を設け、制御弁62を操作し、反応性のCVD用ガスをプラズマガスと合わせてチャンバー内へ導入し、ガスを分解・重合することにより、基板54へのCVD成膜を行う。CVDガスは炭化水素ガス、珪素化合物ガスあるいはフッ素化合物ガスが好適である。前記炭化水素ガスとしてはメタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン類や、エチレン、プロピレン、ブテン等のアルケン類や、アセチレン等のアルキン類が挙げられる。珪素化合物ガスとしてはシラン、ジシラン、ポリシラン、シロキサン、シラノール、TEOSなどが好適である。ただしその他の有機珪素化合物ガスやSi系水素化合物やハロゲン化物でも良い。またフッ素化合物ガスとしてはテトラフルオロメタン(CF4)、六フッ化エタン(C2F6)、トリフルオロメタン(CHF3)、オクタフルオロシクロブテン(C4F8)等のフッ化炭素水素及びその誘導体のほか、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)等のガスが好適である。
【実施例】
【0045】
次に本発明の実施例について詳細に説明する。背景技術で述べたとおり、一般に非磁性体ターゲットにおけるターゲット利用効率は20〜30%程度であり、磁性体ターゲットでは10〜15%前後にとどまる。本発明では磁石、ターゲット固定方式でありながら通常より2倍程度ターゲット利用効率が向上できることを目的とした。また以下実施例における平行磁束密度はカネテック株式会社製テスラメータ(形式:TM-701)を用いて計測した。
(実施例1)
図1に示すような放電電極を以下のとおり構成した。ターゲット10の材料は銅を使用し、ターゲット幅W2は42mm、ターゲット厚みは10mmとした。磁性体11の高さH及び幅は15mm角で材料はSUS430とし、磁性体11a,11b間の対向距離Wは40mmとした。ターゲット上部磁石12a,12bは断面形状が10mm角のネオジム磁石を用い、補助磁石14は断面形状が幅10mm高さ20mmのネオジム磁石を用いた。ヨーク部品13,15及びヨーク板16はSUS430で構成した。またターゲット押さえ20、バッキングプレート22は銅で構成し、水冷ケース23及びねじ21はSUS304にて構成した。そこで本構成における放電電極100のターゲット表面平行磁束密度分布を幅W高さ2Hの範囲において計測した。その結果を図5に示す。縦軸を平行磁束密度とし、横軸を磁性体11間の距離Wとした上で、Wの中心C上にあり、高さ2Hの範囲における任意の点における平行磁束密度Bcに対し、Bcと同じ高さで±0.35W幅の範囲における平行磁束密度分布は−5%〜+15%となり、ターゲット10上に±20%以内の均一な平行磁束密度分布が形成できていることを確認した。また傾向として高さ1.0H部分の平行磁束密度が平均的に高くなることを確認した。
【0046】
そこで図4に示すような成膜装置にて本実施例の放電電極を用いてスパッタ成膜を行った。すなわち成膜装置300において放電電極203部分に放電電極200を用いた構成とした。放電電極はドーナツ状に放電エリアを有する構成とし外周直径は250mmを用いた。放電電極の水冷ケース23及び磁性体11へは冷却水24,19を通水し、冷却後の水温が50℃以下となるように、図示しない給水手段と温度制御手段を用いて水量と制御温度を調節した。プラズマ電源56は10KW容量のDC電源を用いた。真空ポンプ51はロータリーポンプを用いて排気し、図示しない圧力制御手段で真空チャンバー50内の圧力を1Paに制御した。基板54は250mm径の円形ガラス基板を用い、放電電極103と基板54との距離は100mmとした。スパッタ成膜においてプラズマガス供給源59はアルゴンガスを用い、ガス流量は200sccmとした。本構成によりDC電源を6KWにて出力しスパッタ成膜を実施したところ、基板には均一な膜厚にて銅薄膜が形成できた。次に前記同様の設備構成でCVD成膜を行った。CVD用ガス供給源61はHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)を用い、制御弁62を操作してガス流量を150sccmとし、プラズマガス供給源59のアルゴンガスを50sccmとして、両ガスを混合して真空チャンバー50内に導入した。本条件でCVD成膜したところ、基板54の表面にSiO2を主体としたCVD膜が均一に成膜できた。ただし前記2様の成膜ともアーク放電など放電異常は磁性体11の角部にて若干観測され、磁性体11の対向面にスパッタ滓やCVD膜が若干付着したが成膜に影響はなかった。また前記スパッタ成膜を継続しターゲットエロージョン深さが9mmまで進行したところでターゲット利用効率を測定したところ、ターゲット利用効率は50%であった。
(実施例2)
図2に示すような放電電極を以下のとおり構成した。傾斜磁性体30a,30bの角度θは70°とし、他の部材の形状、材質などは実施例1と同様とした。その結果、図6に示すとおり、任意の点の平行磁束密度Bcに対し、Bcと同じ高さで±0.35W幅の範囲における平行磁束密度分布は実施例1と同じく−5%〜+15%以内となり、ターゲット10上にBc±20%以内の均一な平行磁束密度分布が形成できていることを確認した。また図5と比較すると判るように、磁性体11の角部に対応する高さ1.0H位置の平行磁束密度の集中が無くなり、ターゲット10の表面から高さ2Hに至るまで徐々に平行磁束密度が弱まっていく、垂直方向にバランスの良い分布が得られた。
【0047】
そこで図4に示すような成膜装置にてスパッタ成膜及びCVD成膜を行った。すなわち成膜装置300における放電電極203部分に放電電極201の構成を用いた構成とした。傾斜磁性体30a、30bの傾斜形状以外は実施例1と同様の条件にて構成した。その結果実施例1と同様に、スパッタ成膜、CVD成膜共、基板には均一な薄膜が形成でき、さらにアーク放電など放電異常は全く発生しなかった。また傾斜磁性体30a、30bの対向面(傾斜面)へのスパッタ滓やCVD膜付着も大きく低減し、実施例1より成膜レートが向上したことを確認した。本スパッタ成膜を継続しターゲットエロージョン深さが9mmまで進行したところでターゲット利用効率を測定したところ、ターゲット利用効率は60%となり実施例1よりさらにターゲット利用効率が向上したことを確認した。
(実施例3)
図3に示すような放電電極を以下のとおり構成した。本実施例においてターゲット10は磁性体であるニッケルを用い、ターゲット形状は実施例1,2と同様とした。また水冷ケース23内のターゲット下部磁石40a、40bはネオジム磁石とし、傾斜磁性体30a、30bとの対向面を磁力線放出面とし、その磁石幅は10mmとした。また磁力線放出面の磁極性は対向する傾斜磁性体30a、30bと同極性とした。ターゲット下部磁石40a、40bの高さは20mmとし、ターゲット10と逆側の磁石面はSUS430にて形成したヨーク板41で磁石同士を結合し、磁束ループを形成した。また他の構成は実施例2と同様とした。その結果、図7に示すとおり、ターゲットが磁性体であるにもかかわらず、平均的な磁束密度レベルが約2倍に向上し、任意の点の平行磁束密度Bcに対し、Bcと同じ高さで±0.35W幅の範囲における平行磁束密度分布も−10%〜+5%となり、ターゲット10上にBc±20%以内の均一な平行磁束密度分布が形成できていることを確認した。
【0048】
そこで図4に示すような成膜装置にてスパッタ成膜及びCVD成膜を行った。すなわち成膜装置300における放電電極203部分に放電電極202の構成を用いた構成とした。そしてターゲット10がニッケルであること、ターゲット下部磁石40a、40b、ヨーク板41を設けたこと以外は実施例2と同様の条件にて構成した。その結果、スパッタ成膜ではニッケル膜が、CVD成膜ではSiO2主体の薄膜が基板上に均一に形成でき、さらにアーク放電など放電異常は全く発生しなかった。本スパッタ成膜を継続しターゲットエロージョン深さが9mmまで進行したところでターゲット利用効率を測定したところ、40%であった。
(比較例1)
図8に示すとおりターゲットの下部のみに磁石を有する一般的な放電電極204を用い、非磁性体ターゲットをスパッタした場合の比較例を示す。放電電極204においてカソード72は実施例3のターゲット上部磁気回路部材(傾斜磁性体30a,30bやターゲット上部磁石12a,12b等)が無い構成のものと同形状とし、カソード72の周囲は絶縁部材であるスペーサ26を隔てて、アノード70で覆われる構成とした。ターゲット10の形状も実施例1から3と同様とし、材質は銅を用いた。よってターゲット10の表面磁界はターゲット下部磁石40a,40bとヨーク板41で形成される磁界ループのみにより形成される。そこで前記実施例と同様にターゲット表面の平行磁束密度分布を測定した結果を図9に示す。その結果、任意の点の平行磁束密度Bcに対し、Bcと同じ高さで±0.35W幅の範囲における平行磁束密度分布のバラツキは0%〜−70%となり、ターゲット10上が非常に不均一な平行磁束密度分布となっていることを確認した。さらに図4に示すような成膜装置にてスパッタ成膜及びCVD成膜を行った。すなわち成膜装置300における放電電極203部分に放電電極204の構成を用いた構成とした。放電電極204は実施例1〜3と同様にドーナツ状に放電エリアを有する構成とし外周直径は250mm程度とした。またプラズマガスやCVDガスも実施例1〜3と同様とした。その結果、スパッタ成膜時の銅薄膜やCVD成膜時のSiO2主体の薄膜はターゲット10の中心Cに対応する部分へ最も厚く基板へ堆積し、不均一な膜厚状態となった。また本スパッタ成膜を継続しターゲットエロージョン深さが9mmまで進行したところでターゲット利用効率を測定したところ、25%であった。
(比較例2)
比較例1で示した図8に示す一般的な放電電極204を用い、磁性体ターゲットをスパッタした場合の比較例を示す。ターゲット材料はニッケルとした。この場合ターゲット厚みが実施例3と同様の10mmではターゲット上にはほとんど平行磁束が形成できないため、ここでは平行磁束が形成できる程度までターゲットを薄くすることとし、ターゲット10厚みを3mmとし、それ以外は比較例1と同様の構成とした。よってターゲット10の表面磁界はターゲット下部磁石40a,40bとヨーク板41で形成される磁束ループのみにより形成される。そこで前記実施例と同様にターゲット表面の平行磁束密度分布を測定した結果を図10に示す。その結果、任意の点の平行磁束密度Bcに対し、Bcと同じ高さで±0.35W幅の範囲における平行磁束密度分布は0%〜−80%となり、非常に不均一な平行磁束密度分布となっていることを確認した。さらに図4に示すような成膜装置にてスパッタ成膜およびCVD成膜を行った。すなわち成膜装置300における放電電極203部分に放電電極204の構成を用い、ターゲット10は3mm厚みのニッケルを用いた構成とした。放電電極204は実施例1〜3と同様にドーナツ状に放電エリアを有する構成とし外周直径は250mm程度とした。その結果、スパッタ成膜時のニッケル薄膜、CVD成膜時のSiO2薄膜はターゲット10の中心Cに対応する部分へ最も厚く堆積し、非常に不均一な膜厚状態となった。また本スパッタ成膜を継続しターゲットエロージョン深さが2mmまで進行したところでターゲット利用効率を測定したところ、15%であった。
以下に本実施例及び比較例で示した結果を表にして示す。
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例4)
図3に示す電極を実施例3に記載の通り構成し、図4に示す成膜装置においてスパッタリング法による成膜実験を実施した。この際、カバー211は3mm厚のSUS304板を用いていたところ、カバー211表面にごく小さなマグネトロンプラズマ放電が発生した。このごく小さなマグネトロンプラズマ放電は本来意図していない不要な放電ではあるが、成膜機能への影響は見られなかった。
(実施例5)
実施例4に示す内容の成膜実験を、カバー211を5mm厚のSUS430板に変更して実施したところ、不要な意図しないマグネトロンプラズマ放電は発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は放電電極としてスパッタ成膜装置やCVD成膜装置に利用に限らず、プラズマを利用した表面処理装置やエッチング装置などにも適用でき、さらにこれらの適用範囲に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 カソード
10 ターゲット
11a 磁性体
11b 磁性体
12a ターゲット上部磁石
12b ターゲット上部磁石
13 ヨーク部品
14 補助磁石
15 ヨーク部品
16 ヨーク板
17 カバー
18 カバー
19 冷却水
20 ターゲット押さえ
21 ねじ
22 バッキングプレート
23 水冷ケース
24 冷却水
25 Oリング
26 スペーサ
27 アノード
30a 傾斜磁性体
30b 傾斜磁性体
31 磁力線
40 ターゲット下部磁石
41 ヨーク板
42 磁力線
43 磁力線
50 真空チャンバー
51 真空ポンプ
52 基板ホルダー
53 基板ホルダー
54 基板
55 ガス管
56 プラズマ電源
57 防着板ホルダー
58 防着板
59 プラズマガス供給源
60 制御弁
61 CVD用ガス供給源
62 制御弁
70 アノード
71 磁力線
72 カソード
80 ターゲット
81 ターゲット上部磁石
82 ターゲット下部磁石
83 磁力線
84 磁力線
85 陽イオン
86 スパッタ粒子
90 ターゲット
91 バッキングプレート
92 冷却シールド
93 ターゲット上部磁石
94 ターゲット上部磁石
95 ターゲット下部磁石
96 ターゲット下部磁石
97 ヨーク
98 磁力線
99 磁力線
110 ターゲット
111 磁力線
112 磁力線
120 ターゲット
121 磁性体
122 磁性体
123 ターゲット下部磁石
124 ヨーク
125 磁力線
130 ターゲット
131 磁性体
132 磁性体
133 磁力線
140 平板ターゲット
141 ターゲット上部磁石
142 ターゲット下部磁石
143 磁性体
144 陽イオン
145 スパッタ粒子
146 磁力線
147 磁力線
148 ヨーク
149 ヨーク
150 冷却水
151 磁性体
152 ターゲット上部磁石
153 ターゲット下部磁石
200 放電電極
201 放電電極
202 放電電極
203 放電電極
204 放電電極
205 放電電極
211 カバー
300 成膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板ターゲットを有する放電電極において、前記平板ターゲットの表面側の両側縁に沿うように設けられ、前記平板ターゲットを隔てて対向する磁性体と、該磁性体を隔てて前記平板ターゲットの反対側に前記磁性体と組み合わせて設けられ前記平板ターゲットを隔てて異極性の関係であるターゲット上部磁石を有することを特徴とする放電電極。
【請求項2】
前記磁性体の下面が前記平板ターゲットの表面と略同一か上方にあることを特徴とする請求項1に記載の放電電極。
【請求項3】
前記平板ターゲットの長手方向に垂直な断面において、前記磁性体間の対向面は前記平板ターゲット表面の法線方向に対して外側に角度θで傾斜し、θは0°<θ≦45°の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の放電電極。
【請求項4】
前記平板ターゲットの厚み方向において前記平板ターゲットを隔てて前記磁性体と対向する位置である前記平板ターゲットの裏面側位置にターゲット下部磁石を有し、前記ターゲット下部磁石の磁力線放出の向きが前記平板ターゲットの厚み方向であって、前記磁性体と前記ターゲット下部磁石の磁極性が同極性であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の放電電極。
【請求項5】
前記平板ターゲットの表面側磁界がループを形成していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の放電電極。
【請求項6】
前記平板ターゲットの表面側の磁束ループは、前記ターゲット上部磁石とヨークとを少なくとも備えた表面側磁気回路により生成されており、前記平板ターゲットの放電面側の表面を除いた表面側磁気回路の構成部材の少なくとも一部に、前記構成部材の外側に磁性材料からなる磁気シールドを備えたことを特徴とする請求項5に記載の放電電極。
【請求項7】
前記磁気シールドを前記ターゲット上部磁石の周りに備えたことを特徴とする請求項6に記載の放電電極。
【請求項8】
前記平板ターゲットの放電面側の表面を除いた、電極構成部材の最外周面の少なくとも一部に絶縁体のカバーを備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の放電電極。
【請求項9】
前記平板ターゲットの裏面側磁界がループを形成していることを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の放電電極。
【請求項10】
前記磁性体、前記ターゲット上部磁石は温度制御手段を有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の放電電極。
【請求項11】
前記ターゲット下部磁石は温度制御手段を有することを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の放電電極。
【請求項12】
前記平板ターゲットがFe、Co、またはNiを主成分とする磁性体材料であることを特徴とする請求項4に記載の放電電極。
【請求項13】
平板ターゲットの表面へ形成した磁界を用いて放電を発生させる放電方法であって、前記平板ターゲットの表面側の両側縁に沿うように設けられ、前記平板ターゲットを隔てて対向する磁性体と、該磁性体を隔てて前記平板ターゲットの反対側に前記磁性体と組み合わせて設けられたターゲット上部磁石と、前記平板ターゲットの厚み方向において前記平板ターゲットを隔てて前記磁性体と対向する位置である前記平板ターゲットの裏面側位置にターゲット下部磁石を有し、前記ターゲット上部磁石同士の対向する磁極性は異極性であり、ターゲット厚み方向を隔てて対向するターゲット上部磁石とターゲット下部磁石との磁極性は同極性とすることにより、ターゲット表面の磁性体間に略平行な磁界を形成し、前記磁界を用いて放電を発生させることを特徴とする放電方法。
【請求項14】
前記磁性体間の幅Wの中心から±0.35Wの幅と、前記磁性体の高さHに対する2Hで定義される磁界形成領域における平行磁束密度の分布を、幅方向位置がWの中心位置で高さ方向が0から2Hの範囲の任意の高さh位置の平行磁束密度Bcを基準としてBc±20%以内に形成し、その平行磁束を用いて放電を発生させることを特徴とする請求項13に記載の放電方法。
【請求項15】
前記平行磁束密度Bcが10mTから500mTの範囲であることを特徴とする請求項14に記載の放電方法。
【請求項16】
請求項1から12のいずれかの放電電極をスパッタ源として有することを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項17】
請求項16のスパッタリング装置にガスを導入してターゲットをスパッタし薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項18】
請求項1から12のいずれかの放電電極を原料ガス反応源として有することを特徴とするCVD装置。
【請求項19】
前記原料ガスが炭化水素ガス、珪素化合物ガス、あるいはフッ素化合物ガスであることを特徴とする請求項18に記載のCVD装置。
【請求項20】
請求項18のCVD装置に原料ガスとして炭化水素ガス、珪素化合物ガスあるいはフッ素化合物ガスを導入してCVD薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−62573(P2012−62573A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178851(P2011−178851)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】