説明

枚葉式基板処理装置

【課題】 被処理基板を挟持部材付近からの液跳ねを最少にして被処理基板の処理能力を上げると共に、高品質の処理ができる枚葉式基板処理装置を提供すること。
【解決手段】
枚葉式基板処理装置は、被処理基板を挟持する複数本のチャックピン15が外周囲に所定間隔で配設された円盤状の回転テーブル3と、この回転テーブル3に挟持された被処理基板Wを覆う回り込み防止部材16と、回転テーブル3に連結されてこのテーブルを回転させる駆動回動機構4と、被処理基板に処理液を供給する処理液供給管6とを備えている。
チャックピン15は、被処理基板Wを挟持するクランプ部15bと、このクランプ部15bの頂部から延びた円錐状に尖った針状部15cとで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ及び液晶表示装置用ガラス基板などの各種基板を回転させながら各種の処理を行う枚葉式基板処理装置に係り、特に回転する半導体ウェーハ等の被処理基板を挟持する挟持手段を改良した枚葉式基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種半導体素子は、半導体ウェーハ(以下、ウェーハという)表面に各種の成膜を施す工程、成膜した薄膜から不要な部分を除去するエッチング工程、ウェーハを洗浄する洗浄工程及び乾燥する乾燥工程等の各種工程を経て、ウェーハ面に微細パターンを形成することによって製造されている。
これらの製造工程では、ウェーハ自体の面及びウェーハ面に形成された薄膜を常に清浄に保たなければならないので、工程中に各種の洗浄処理が行なわれている。例えば、薄膜を研磨剤により研磨すると、研磨剤(スラリー)がウェーハ表面に残留するので、洗浄によりスラリーを除去している。
【0003】
また、不要となった膜を除去する工程において、剥離した膜片が処理済みのウェーハに再付着してパーティクルの原因となる。
【0004】
このような洗浄及びエッチングは、特に高い洗浄度を要求される場合、ウェーハを1枚ずつ回転させながら処理する基板処理装置、いわゆる枚葉式基板処理装置によって行われている。
図6は、従来技術の代表的な枚葉式基板処理装置を示し、図6(a)はその基板処理装置の概略断面図、図6(b)は支持ピンの斜視図、図6(c)はチャックピンの斜視図である。
この枚葉式基板処理装置30は、図6に示すように、ウェーハWをほぼ水平に保持して回転するスピンチャック31と、このスピンチャックの回転テーブル32に載置されたウェーハWの表面へ処理液が回り込むのを防止する回り込み防止部材36と、を備え、回転テーブル32に固定された回転軸40内の処理液供給管39から処理液を噴射ノズル39aへ供給し、この噴射ノズル39aからウェーハWの裏面へ処理液を噴射してウェーハ裏面の処理を行っている。
【0005】
このような装置は、ウェーハ裏面の処理中に処理液がウェーハ表面へ回り込むのを阻止するために、ウェーハ表面に対向する位置に回り込み防止部材36が配設され、この回り込み防止部材36の中心部に設けられた噴射ノズル39aから不活性ガス、例えば窒素ガスがウェーハ表面と回り込み防止部材36との間に供給して、処理液がウェーハ表面へ回り込むのを防止している。しかしながら、ウェーハ裏面からの処理液をガスによって押え込むには質量差があるため、より多くより速い流速でウェーハ表面にガスを供給する必要が出てくる。この時、速い流れによりウェーハ表面に負圧が生じ(ベルヌーイの法則)、ウェーハが浮き上がってしまうトラブルが起こってしまう。このため、速い流速を形成するといっても限度があった。
また、回転テーブル32には、その外周縁にほぼ等間隔にウェーハ挟持部材33が配設され、この挟持部材33は、ウェーハWを支持する支持ピン34と、ウェーハを挟持するチャックピン35とで構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような枚葉式基板処理装置は、ウェーハWの表面がドライ状態のままでウェーハWの裏面処理中に、回り込み防止部材36とウェーハWとの間に不活性ガスを供給して、ウェーハ表面への処理液の回り込みを防止するようになっているが、それでもウェーハ表面が処理液で汚染されることがある。この汚染は、ウェーハWの回転に伴って処理液がウェーハ挟持部材33に衝突し、この挟持部材付近から液滴が跳ね上がり、回り込み防止部材36等の装置を構成する部材に付着して溜り、その溜った液滴の一部が雫となってウェーハ表面に落下することによって起こっている。
また、このような汚染は、処理中のウェーハだけでなく未処理のウェーハにも発生することがある。その原因は、跳ね上がった液滴が回り込み防止部材等の装置部材に付着して溜り、この溜った液滴が新たにセットされた未処理のウェーハの処理中に回転による風等の作用により、ウェーハに滴下することによって起こっている。
【0007】
このようなウェーハ汚染は、既に処理済みのウェーハに発生すると不良の原因となり品質が低下することになる。この対策として、未処理のウェーハに対しては、回り込み防止部材等の装置部材に付着した液滴を装置の運転を停止して拭き取ることによってなくすことができるが、そうすると、この拭き取り作業が必要となってウェーハの処理能率が大幅に低下し、連続運転ができなくなる。また、処理中のウェーハに対しては未だ有効な対策が見つかっていない。
【0008】
このような汚染原因となる液跳ね現象は、回転テーブル、ウェーハを挟持する挟持部材、回り込み防止部材、或いはこれらの部材を収容する処理カップ等の構造、及びウェーハの回転速度、処理液の供給量等の処理条件などに起因するものと想定されるが、本発明者は、これらの部材の構造及び処理条件の中から、挟持部材を構成するチャックピンが最も大きく影響していることを突き止めた。
【0009】
すなわち、この種のチャックピンは、図6(c)に示すように、通常、合成樹脂材(例えば、ポリエーテル・エーテル・ケトン)で作られ所定の機械的強度を確保するために、太い基部と、この基部から段部を経て直径が細くなったピン部とで構成され、基部が取付け台に打ち込まれ、ピン部でウェーハを挟持するようになっている。このチャックピンは、通常、基部の直径が約4.00mm、ピン部の直径が約2.00mmとなっている。
【0010】
ところがこのような段付のチャックピンを使用すると、高速回転しているウェーハの処理面の裏面に処理液が噴射された際に、処理液がウェーハのほぼ中心部で渦気流となって中心部から外周縁へ拡散され、ウェーハの外周縁に達すると、チャックピンに衝突して、このチャックピン付近で複雑な流れに変化、すなわち乱気流となる。このような乱気流が発生すると、気流に含まれている液滴がチャックピン付近から跳ね上がり、回り込み防止部材等に付着しそのまま溜ってしまう。しかし、本発明者は、チャックピンの形状を工夫したところ、回り込み防止部材等への付着が殆どなくなることを突き止めて本発明の完成に至ったものである。
【0011】
そこで、本発明の目的は、被処理基板を挟持部材付近からの液跳ねを最少にして被処理基板の処理能力を上げると共に、高品質の処理ができる枚葉式基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、被処理基板を挟持する複数本のチャックピンが外周囲に所定間隔で配設された円盤状の回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる駆動回動機構と、被処理基板に処理液を供給する処理液供給手段とを備えた枚葉式基板処理装置において、
前記チャックピンは、被処理基板を挟持するクランプ部と、該クランプ部の頂部から延びた円錐状に尖った針状部とで形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の枚葉式基板処理装置において、前記チャックピン頂部の円錐角は、20度〜90度の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の枚葉式基板処理装置において、前記チャックピンは、合成樹脂材で形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1に記載の枚葉式基板処理装置において、前記枚葉式基板処理装置は、さらに前記回転テーブルに挟持された被処理基板を覆い非処理基板面への処理液の回り込みを防止する回り込み防止部材を備え、前記回り込み防止部材は、所定幅長を有する円環の周囲に複数個の噴射穴がほぼ等間隔に設けられたノズル環と、該ノズル環の中心部に位置して円環を支持する主軸管とを備え、前記ノズル環と主軸管とは、複数本の支軸管で連結されていることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の枚葉式基板処理装置において、前記主軸管及び支軸管は、それぞれ中空管で形成され、前記主軸管から前記支軸管を経て前記ノズル環に不活性ガスが供給されるようになっていることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項6にかかる発明は、請求項4又は5に記載の枚葉式基板処理装置において、前記ノズル環には、その外周囲に跳ね避け防止部材が立設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、処理中に処理液がチャックピンに衝突して液滴が跳ね上がっても、チャックピンの先端部が針状に尖っているので、従来のチャックピン側面とチャックピン上面の平坦面との間の直角部分によって起こる乱気流が抑制され、また本願チャックピンの円錐面により起こる気流は、回り込み防止部材から離れる方向となっているので、跳ね上がった液滴は、殆どが回り込み防止部材から離れた方向へ飛び散り回り込み防止部材及び被処理基板方向への飛散が極めて少なくなり、また飛散した液滴も極少量なので直ちに蒸発し、回り込み防止部材等に付着して溜ることがなくなる。
その結果、回り込み防止部材等に液滴が溜り雫となって被処理基板に落下することがなくなり被処理基板の汚染を防止できる。また、回り込み防止部材等の装置に付着した液滴の拭き取りも不要になるので、連続運転が可能となり処理能率を上げることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、チャックピン頂部の円錐角は、20度〜90度の範囲にすることにより、処理中に跳ね上がった液滴は殆ど回り込み防止部材から離れた方向へ飛散され回り込み防止部材に付着し溜ることがなくなる。
【0020】
請求項3の発明によれば、処理液に対する防食効果がありチャックピンの形成が簡単、安値にできる。
【0021】
請求項4の発明によれば、回り込み防止部材を回転させることなく、回転テーブルに載置・挟持された被処理基板端部と回り込み防止部材との間に不活性ガスを供給して、被処理基板の非処理面への処理液の回り込みを防止できる。また、ウェーハ端部にのみガスを供給するので、ウェーハ表面に負圧が発生することがなく、ウェーハが浮き上がるようなトラブルを防止できる。
【0022】
請求項5の発明によれば、主軸管及び支軸管でノズル環を支持すると共に、不活性ガス供給路として使用できるので、新たな供給管が不要となり回り込み防止部材の構成が簡単になる。
【0023】
請求項6の発明によれば、跳ね避け防止部材により、処理中に処理液が跳ねてもノズル環の中心部へ飛散を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための枚葉式基板処理装置を例示するものであって、本発明をこの枚葉式基板処理装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る枚葉式基板処理装置の概略断面図、図2は図1の処理装置に使用される回転テーブルの上面図、図3は図2の挟持部材を示し、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のAーA線の断面図、図3(c)は支持ピンの斜視図、図3(d)はチャックピンの斜視図、図4は回り込み防止部材を示し、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のC部を反対側(下面側)からみた拡大図、図4(c)は図4(a)のB−B拡大断面図である。
枚葉式基板処理装置1は、図1に示すように、ウェーハWをほぼ水平に保持して回転するスピンチャック2と、このスピンチャックの回転テーブル3にウェーハWを載置・挟持した後にウェーハ表面への処理液の回り込みを防止する回り込み防止部材16と、ウェーハの裏面へ処理液を供給する処理液供給管6と、を備え、スピンチャック2及び回り込み防止部材16等は処理カップ8に収容された構成を有している。
【0026】
回転テーブル3は、図2に示すように、ウェーハWより若干大きい円盤状をなし、その上面の外周縁にウェーハWを挟持する複数個(この実施形態では6個)の挟持部材10がほぼ等間隔に配設されている。スピンチャック2は、図1に示すように、回転駆動機構4により回転される回転軸5と、この回転軸5の上端からほぼ水平方向に延びた回転テーブル3と、この回転テーブル3上に配設された複数個の挟持部材10とを有し、回転軸5は、中空軸で形成されてその内部に処理液等が供給される処理液供給管6が挿通され、この処理液供給管の先端に噴射ノズル7が結合され、この噴射ノズル7からウェーハWの裏面へ処理液が噴射されるようになっている。これらの挟持部材10は、回転テーブル3に立設されたピン9に係止される。
【0027】
各挟持部材10は、それぞれ同じ構造を有している。そのうちの1個を図3に示すように、回転テーブル3上に載置されるウェーハWを支持する支持ピン14と、ウェーハWを挟持するチャックピン15と、を有し、これらのピン14、15は、取付け台11に所定の間隔をあけて立設されている。
取付け台11は、基台の下部にピン9と嵌合される取付け穴12a、両側にねじ取付け穴12b、12c、及び上面に各ピン14、15の取付け穴13a、13bがそれぞれ形成されている。
【0028】
支持ピン14は、その直径が約1.0mmで合成樹脂、例えばポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)で形成されている。
【0029】
また、チャックピン15は、図3(b)、図3(d)に示すように、一端が取付け台11の穴13bに挿入される装着基部15aと、ウェーハWに当接されてウェーハを挟持するクランプ部15bと、このクランプ部の先端から延びて先端が円錐状に尖った針状部15cとからなり、合成樹脂(例えば、ポリエーテル・エーテル・ケトン)により一体成形されている。装着基部15aとクランプ部15bとの境には段部が形成されている。
このチャックピン15の針状部の高さHは例えば3.0mmとなり、この大きさでは、針状部15c頂部の角度は、37度である。
このチャックピンの長さ、直径等は、上記の値に限定されず、処理するウェーハの口径との関係において合成樹脂で作製した場合、機械的強度が得られるものが選定される。そしてまた、針状部15c頂部の角度は、20度〜90度の範囲にあり、このうち30度〜45度の範囲が好ましい。
【0030】
回り込み防止部材16は、図1、図4に示すように、所定幅長を有する円環の周囲に複数個の噴射穴がほぼ等間隔に設けられたノズル環17と、このノズル環の中心部に位置して円環を支持する主軸管20とを備え、ノズル環17と主軸管20とは、複数本(例えば4本)の支軸管21a〜21dで連結されている。
主軸管20及び支軸管21a〜21dは、それぞれ所定の肉厚を有する中空管で形成され、これらの中空管を通してノズル環17に不活性ガス、例えば窒素ガスが供給されるようになっている。
ノズル環17は、所定幅長を有し外周縁に位置する第1円環17aと、この第1円環より外形が小さく第1円環に嵌め込まれる第2円環17bとからなり、第1、第2円環17a、17bのそれぞれの対向面が上方から下面に向かってに傾斜面18a、18bが形成され、これらの傾斜面18a、18bのうち、傾斜面18bに所定幅長及び深さを有する凹状溝19が等間隔に複数個形成され、これらの凹状溝19が不活性ガス吹付けの噴射ノズルとなっている。この凹状溝19は、傾斜面18bに設けたが、他の傾斜面18aに設けてもよく、また双方に設けてもよい。
主軸管20は、不活性ガス供給源に接続されると共に、昇降機構22に連結され、回転テーブルへのウェーハの載置の際に上下動できるようになっている。
また、この主軸管とノズル環とは、4本の支軸管で結合され、各支軸管間に空間が形成されるので、この空間を利用して、装置の天井に配設されたエア供給装置(図示省略)からクリーンエアがウェーハへ供給される。
更に、ノズル環17には、処理液が跳ねてノズル環の中央への侵入を防止する処理液の跳ね避け部材23が設けられる。この跳ね避け部材23は、所定の高さを有する筒状体からなり、ノズル環17の第1円環17aに設けられる。
【0031】
この構成によると、回り込み防止部材を回転させることなく、回転テーブルに載置・挟持された被処理基板端部と回り込み防止部材との間に不活性ガスを供給して、被処理基板の非処理面への処理液の回り込みを防止できる。さらに、ウェーハ端部にのみガスを供給するので、ベルヌーイの法則による負圧がウェーハ基板表面に発生することがなく、ウェーハが浮き上がるようなトラブルを防止できる。
また、主軸管及び支軸管でノズル環を支持すると共に、不活性ガス供給路として使用できるので、新たな供給管が不要となり回り込み防止部材の構成が簡単になる。
更に、跳ね避け防止部材により、処理中に処理液が跳ねてもノズル環の中心部へ飛散を防止できる。
【0032】
次に、この枚葉式基板処理装置を使用したウェーハの処理法について説明する。図5は、先端を針状に尖らせたチャックピンを使用したときの液跳ね現象を模式して示した一部断面図である。
回転軸5内の処理液供給管6を通して噴射ノズル7から回転するウェーハWの裏面に処理液が供給されると、処理液は、渦流となってウェーハWの裏面中央部から外周縁へ拡散され、ウェーハWの外周縁でチャックピン15へ衝突する。液滴がチャックピン15に衝突すると、図5に示すように、チャックピン15の先端が針状に尖っていると、衝突した液滴の殆どが針状部15cを伝って矢印で示した外方へ飛散され、回り込み防止部材16及び跳ね避け防止部材23への飛散は殆ど無く、飛散してもサイズの小さい僅か2〜3滴程度になる。そして、このような2〜3滴の液滴は、飛散後に直ちに蒸発し回り込み防止部材16及び跳ね避け防止部材23へ付着して溜るようなことはない。
【0033】
このような液跳ねは、以下の理由によるものと考えられる。チャックピン15は、回転テーブル3に立設されている。この立設されたチャックピンのほぼ真横から処理液が衝突すると、衝突した処理液は、ピン頂部が平坦になっている(図6(c)参照)と、この平坦面から離れ、平坦面とピン側面の間の直角部によって起こる乱気流によりできる渦流に乗ってウェーハ方向へ流れ円環ノズル及び跳ね避け部材へ付着する。しかし、図3(d)に示すように、ピン頂部が針状に尖っていると、この針状面、すなわち円錐面とピン側面が直角よりも大きい角度でつながっているので、乱気流が抑えられピンから離れた液体は円錐面に沿って流れ上記の乱気流が発生し難くなり円環ノズル及び跳ね避け部材へ付着がなくなる。
【0034】
このような回り込み防止部材及び跳ね避け部材への液滴の付着は、表1の条件でウェーハを処理し、表2の評価結果が得られたことで確認された。
表1は、直径200mmのウェーハをHF処理、リンス洗浄及び乾燥処理における処理条件を示したものであり、また、表2は、表1の条件で処理したときの本実施例と比較例とを対比した評価結果である。比較例は、図6(c)に示したチャックピンを使用したものである。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
直径200mmのウェーハを表1に示す条件で処理する。その手順は、ステップ1におけるHF処理では、常温(R.T.)のHF50%を用い、処理時間20sec、ウェーハ回転数1600rpm、流量0.8L/min、不活性ガス(N2)流量50L/minである。次のステップ2におけるリンス洗浄処理は、常温(R.T.)の純水を用い、処理時間60sec、ウェーハ回転数500rpm、流量1.0L/min、不活性ガス(N2)の流量50L/minである。
【0038】
その結果は、表2に示すように、比較例では、回り込み防止部材の側面に多くの液滴が付着したのに対して、実施例では、回り込み防止部材及び跳ね避け防止部材に付着した液滴は、2〜3滴、しかもそのサイズは直径が1.0mm以下のものであった。そして、この液滴は、直ぐ蒸発してしまうことが目視により確認できた。
また、ウェーハへの液跳ね及び端面エッチングは、比較例及び実施例とも液跳ねによるエッチング痕は見受けられず、裏面及び端面とも綺麗にエッチングされていた。
更に、ウェーハ表面のパーティクルを計測したところ、3回の平均値において、比較例では、回転数1600rpm、500rpmで378、890個であるのに対して、この実施例では106、36に激減していた。
【0039】
この評価結果から、比較例においては、ウェーハの連続処理を行うには、装置を停止して回り込み防止部材及び跳ね避け防止部材に付着した液滴を拭き取る作業が必要となるが、実施例では、付着する液滴の数が少なく直ぐ蒸発してしまうのでこの作業が不要になる。また、パーティクルも格段に減少するので高品質の処理が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る枚葉式基板処理装置の概略断面図、
【図2】図2は、図1の処理装置に使用されている回転テーブルの上面図、
【図3】図3は、図2の挟持部材を示し、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のAーA線の断面図、図3(c)は支持ピンの側面図、図3(d)チャックピンの側面図、
【図4】図4は、回り込み防止部材を示し、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のC部を反対側(下面側)からみた拡大図、図4(c)は図4(a)のB−B拡大断面図、
【図5】図5は、液跳ね現象を模式して示した一部断面図、
【図6】図6は、従来技術の基板処理装置を示し、図6(a)は装置の概略断面図、図6(b)は支持ピンの側面図、図6(d)チャックピンの側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 枚葉式基板処理装置
2 スピンチャック
3 回転テーブル
5 回転軸
6 処理液供給管
7 噴射ノズル
4 回転駆動機構
8 処理カップ
10 挟持部材
11 取付け台
14 支持ピン
15 チャックピン
15b クランプ部
15c 針状部
16 回り込み防止部材
17 ノズル環
19 凹状溝
20 主軸管
21a〜21d 支軸管
23 跳ね避け防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を挟持する複数本のチャックピンが外周囲に所定間隔で配設された円盤状の回転テーブルと、前記回転テーブルを回転させる駆動回動機構と、被処理基板に処理液を供給する処理液供給手段とを備えた枚葉式基板処理装置において、
前記チャックピンは、被処理基板を挟持するクランプ部と、該クランプ部の頂部から延びた円錐状に尖った針状部とで形成されていることを特徴とする枚葉式基板処理装置。
【請求項2】
前記チャックピンの頂部の円錐角は、20度〜90度の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の枚葉式基板処理装置。
【請求項3】
前記チャックピンは、合成樹脂材で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の枚葉式基板処理装置。
【請求項4】
前記枚葉式基板処理装置は、さらに前記回転テーブルに挟持された被処理基板を覆い非処理基板面への処理液の回り込みを防止する回り込み防止部材を備え、前記回り込み防止部材は、所定幅長を有する円環の周囲に複数個の噴射穴がほぼ等間隔に設けられたノズル環と、該ノズル環の中心部に位置して円環を支持する主軸管20とを備え、前記ノズル環と主軸管とは、複数本の支軸管で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の枚葉式基板処理装置。
【請求項5】
前記主軸管及び支軸管は、それぞれ中空管で形成され、前記主軸管から前記支軸管を経て前記ノズル環に不活性ガスが供給されるようになっていることを特徴とする請求項4に記載の枚葉式基板処理装置。
【請求項6】
前記ノズル環には、その外周囲に跳ね避け防止部材が立設されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の枚葉式基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−36066(P2007−36066A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219656(P2005−219656)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(391060395)エス・イー・エス株式会社 (46)
【Fターム(参考)】