樹脂成形品の成形方法及び成形装置
【課題】ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体の内部に発泡樹脂が充填され、外観性、軽量性、剛性に優れた樹脂成形品を成形型内での樹脂成形品の冷却遅延を抑制して効率よく生産する。
【解決手段】パリソンPを成形型20で挟んでブロー成形を行い中空のブロー成形体を形成するブロー成形手段、ブロー成形体を成形型20内に残した状態で溶融発泡性樹脂をブロー成形体内に射出する射出手段、発泡性樹脂の射出後、成形型20を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることによりブロー成形体の膨張と並行してブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填手段、及び、ブロー成形体の形成動作の終了時から成形型20の所定量の開き動作の終了時までの間に成形型20の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を延伸部分と比べてより冷却する冷却手段を備える。
【解決手段】パリソンPを成形型20で挟んでブロー成形を行い中空のブロー成形体を形成するブロー成形手段、ブロー成形体を成形型20内に残した状態で溶融発泡性樹脂をブロー成形体内に射出する射出手段、発泡性樹脂の射出後、成形型20を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることによりブロー成形体の膨張と並行してブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填手段、及び、ブロー成形体の形成動作の終了時から成形型20の所定量の開き動作の終了時までの間に成形型20の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を延伸部分と比べてより冷却する冷却手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関し、樹脂成形の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品を自動車部品に用いることがあり、特に、外観性、軽量性、剛性の観点から、内部が発泡樹脂からなり、表層部がソリッド樹脂(非発泡樹脂)からなる樹脂成形品を、例えば自動車の内外装部材に使用することがある。この点、特許文献1には、発泡層を有する中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して、該発泡体片をスチーム等の加熱媒体により加熱して該発泡体片を相互に融着させることにより表皮付発泡成形体を得ることが開示されている。
【特許文献1】特開2004−284149(段落0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記技術は、既に発泡済みの樹脂片同士を加熱融着させることにより、中空成形体の表皮で覆われた発泡成形体を得るものであるため、加熱融着時に気泡が潰れて、発泡の程度が低下し、その結果、軽量性や剛性の点で十分満足のいくものが得られない、という問題がある。また、表層部が発泡層を有するものであるため、表層部に気泡が現れて、外観性の点でも十分満足のいくものが得られない、という問題もある。
【0004】
そこで、一次中空成形体の良好な成形性を確保し、かつ最終成形品の良好な外観性や剛性を確保するために、ソリッド樹脂をブロー成形して中空のブロー成形体を形成し、このブロー成形体の内部に発泡性樹脂を射出して、その発泡時及び充填時に成形型を所定量開くことが考えられる。しかし、この場合、成形型の所定量の開き動作によって、ブロー成形体が膨張し、部分的に延伸されるので、その延伸部分の良好な延伸性を確保するために、ブロー成形体をブロー成形する前の前駆体であるパリソンの初期設定温度を、そのような成形型の開き動作をしないときに比べて、高めに設定することとなる。しかも、得られる樹脂成形品の表層部が、ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体で構成されるから、このブロー成形体が断熱作用を奏し、樹脂成形品全体が冷め難くなる。そして、これらのことが相俟って、成形型内での樹脂成形品の冷却が遅延し、ブロー成形体の膨張及び発泡性樹脂の充填が終了してから型開きするまでの時間が長くかかり、生産サイクルが長引いて、生産効率が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体の内部に発泡樹脂が充填されて、外観性、軽量性、剛性に優れた樹脂成形品を、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延を抑制して、効率よく生産することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明では、次のような手段を用いる。
【0007】
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形方法であって、ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形工程と、このブロー成形工程で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出工程と、前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填工程とを含み、前記ブロー成形工程の終了時から前記充填工程における成形型の開き動作の終了時までの間に、該充填工程で膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却することを特徴とする。
【0008】
なお、ブロー成形体の非延伸部分を延伸部分と比べてより冷却するのであるから、ブロー成形体の非延伸部分も延伸部分もどちらも冷却するのであるが、非延伸部分の冷却の度合いのほうが延伸部分の冷却の度合いよりも強い場合と、延伸部分は冷却せず、非延伸部分のみ冷却する場合との両方が含まれる。
【0009】
次に、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法であって、前記冷却は、ブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って行うことを特徴とする。
【0010】
次に、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法であって、前記冷却は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより行うことを特徴とする。
【0011】
次に、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の樹脂成形品の成形方法であって、前記成形型として、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有するものを用い、第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、ブロー成形工程及び前記射出工程では、前記内部型を第2成形型に近接する方向に移動させた状態で、成形型を型締めし、充填工程では、成形型を型締めした状態で、前記内部型を第2成形型から離反する方向に移動させると共に、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0012】
次に、本願の請求項5に記載の発明は、内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形装置であって、ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形手段と、このブロー成形手段で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出手段と、この射出手段による前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填手段と、前記ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から前記充填手段による成形型の開き動作の終了時までの間に、該成形型の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却する冷却手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
なお、この場合も、冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分を延伸部分と比べてより冷却するのであるから、ブロー成形体の非延伸部分も延伸部分もどちらも冷却するのであるが、非延伸部分を冷却する度合いのほうが延伸部分を冷却する度合いよりも強い場合と、延伸部分は冷却せず、非延伸部分のみ冷却する場合との両方が含まれる。
【0014】
次に、本願の請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の樹脂成形品の成形装置であって、前記冷却手段は、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から充填手段による成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って前記冷却を行うことを特徴とする。
【0015】
次に、本願の請求項7に記載の発明は、前記請求項5又は6に記載の樹脂成形品の成形装置であって、前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより前記冷却を行うことを特徴とする。
【0016】
次に、本願の請求項8に記載の発明は、前記請求項7に記載の樹脂成形品の成形装置であって、前記成形型は、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有し、第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成時及び射出手段による発泡性樹脂の射出時には、前記内部型が第2成形型に近接する方向に移動した状態で、成形型が型締めし、充填手段による発泡性樹脂の充填時には、成形型が型締めした状態で、前記内部型が第2成形型から離反する方向に移動すると共に、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0017】
次に、本願の請求項9に記載の発明は、前記請求項7又は8に記載の樹脂成形品の成形装置であって、ブロー成形手段、射出手段及び充填手段のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段が備えられ、前記冷却手段は、このタイミング検出手段の検出結果に基いて、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする。
【0018】
次に、本願の請求項10に記載の発明は、前記請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置であって、所定温度の第1の流体を成形型に供給する第1流体供給手段と、前記第1の流体より低い温度の第2の流体を成形型に供給する第2流体供給手段とが備えられ、前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部に、前記第1流体供給手段から第1の流体が供給される状態から、前記第2流体供給手段から第2の流体が供給される状態へ切り替えることにより、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
まず、請求項1又は請求項5に記載の発明によれば、一次中空成形体の良好な成形性を確保し、かつ最終成形品の良好な外観性や剛性を確保するために、ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、得られた中空のブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出し、この発泡性樹脂の射出後に、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させるようにしたから、発泡樹脂の発泡が十分促進され、軽量性や剛性の向上が図られる。さらに、表層部をソリッド樹脂(非発泡樹脂)で構成したから、表層部に気泡が現れず、外観性の向上も図られる。
【0020】
そのうえで、請求項1に記載の発明においては、ブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型の開き動作の終了時までの間に、充填工程で膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却するようにしたから、また、請求項5に記載の発明においては、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から充填手段による成形型の開き動作の終了時までの間に、成形型の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却するようにしたから、いずれの場合も、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延が抑制され、樹脂成形品の生産性が向上することとなる。
【0021】
すなわち、成形型の所定量の開き動作がまだ行われている段階で、成形型内のブロー成形体の非延伸部分を延伸部分よりも強く冷却するようにしたから(前述したように、非延伸部分の冷却度合いを延伸部分の冷却度合いよりも強くする場合と、非延伸部分のみ冷却する場合との両方を含む)、成形型内のブロー成形体が比較的早い時期に部分的に強く冷却されることとなり、その結果、たとえブロー成形体の前駆体であるパリソンの初期設定温度が高めに設定されたり、中空のブロー成形体の断熱作用によって樹脂成形品全体が冷め難い状態であっても、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延が抑制され、樹脂成形品の生産性が向上することとなる。
【0022】
しかも、その場合に、ブロー成形体の延伸部分は、成形型の所定量の開き動作がまだ行われている段階では強く冷却されないから(前述したように、まったく冷却されない場合を含む)、その延伸部分の良好な延伸性ないし成形性が確保される。
【0023】
また、前記冷却が、ブロー成形工程が終了するまで(請求項1の場合)、又はブロー成形体の形成動作が終了するまで(請求項5の場合)は開始されないから、ブロー成形における中空のブロー成形体の賦形性ないし成形性が確保される。
【0024】
次に、請求項2又は請求項6に記載の発明によれば、前記冷却が、可能な限り長い時間行われるから、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延がより一層抑制され、樹脂成形品の生産性がより一層向上することとなる。
【0025】
次に、請求項3又は請求項7に記載の発明によれば、前記冷却が、ブロー成形体が当接する成形型の型面部の温度を低くすることによって行われるから、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延の抑制が簡単な構成で確実に達成されることとなる。
【0026】
次に、請求項4又は請求項8に記載の発明によれば、成形型が相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有し、第1成形型が外周型と内部型とを含み、第2成形型が外周合せ面と凹部とを備える構成である場合に、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部が、内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び/又は、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面であると規定されるから、前記冷却が、ブロー成形体に対して良好な位置精度で行われることとなる。
【0027】
次に、請求項9に記載の発明によれば、前記冷却が、ブロー成形手段、射出手段及び充填手段のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段の検出結果に基いて行われるから、前記冷却が、ブロー成形体に対して良好なタイミング精度で行われることとなる。
【0028】
次に、請求項10に記載の発明によれば、前記冷却が、相対的に高温の流体と低温の流体とを用いて簡単な構成で確実に達成されることとなる。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本実施形態に係る樹脂成形品の成形装置10を示す概略説明図である。この成形装置10は、成形型20と、射出機30と、温度調整装置40とを備えている。
【0030】
成形型20は、相互に対接する第1成形型21と第2成形型24とを有し、第1成形型21は、型締め時に第2成形型24と対接する外周型22と、この外周型22の内側に位置し、外周型22に対して第2成形型24に近接する方向(図1において右方向)及び第2成形型24から離反する方向(同、左方向)に相対移動自在の内部型23とを含んでいる。一方、第2成形型24は、前記外周型22が対接する外周合せ面25と、この外周合せ面25の内側で第1成形型21から離反する方向(図1において右方向)に窪む凹部26とを備えている。第2成形型24には、型締めした成形型20内に加圧流体を供給するためのブローピン27が凹部26に対して進退自在に設けられている。
【0031】
射出機30は、型締めした成形型20内に、発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂を射出するもので、シリンダ内に基材樹脂を投入するためのホッパ31と、シリンダ内で混錬された溶融状態の基材樹脂に対して超臨界状態の流体を混入するための噴出装置32とを備えている。超臨界状態の流体は、後述するように、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスのボンベ34から超臨界流体発生装置33を介して生成される。これにより、基材樹脂に発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂が得られる。この発泡性樹脂は、第2成形型24に形成された連通路37及び凹所38を経て、型締めした成形型20内に射出される。その場合に、連通路37と凹所38との間には、例えば電磁弁等の駆動部35で進退移動されるブロック体36が介在している。
【0032】
温度調整装置40は、この成形装置10においては、全部で5つ備えられている。そのうち、第1温度調整装置(No.1)は、第2成形型24に設けられた通路51を介して、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向(図1において横方向)に直交する型面部の温度を調整するものである。同様に、第2温度調整装置(No.2)は、第2成形型24に設けられた通路51を介して、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向に平行な型面部の温度を調整するものである。一方、第3温度調整装置(No.3)は、外周型22に設けられた通路51を介して、外周型22の型面部(内部型23の移動方向に平行な面)の温度を調整するものであり、第4温度調整装置(No.4)は、内部型23に設けられた通路51を介して、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界近傍の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)の温度を調整するものであり、第5温度調整装置(No.5)は、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界から所定量内側の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)の温度を調整するものである。
【0033】
図1に第2温度調整装置(No.2)を例示したように、温度調整装置40は、比較的高温の水を供給する温水供給機41と、比較的低温の水を供給する冷水供給機42とを有している。温水供給機41から供給された温水は、温水供給ホース43、供給切替弁47及び共通供給ホース49を経て、成形型20に導入される。成形型20に導入された温水は、通路51を通過して、共通排出ホース50、排出切替弁48及び温水排出ホース44を経て、温水供給機41に戻る。同様に、冷水供給機42から供給された温水は、冷水供給ホース45、供給切替弁47及び共通供給ホース49を経て、成形型20に導入される。成形型20に導入された冷水は、通路51を通過して、共通排出ホース50、排出切替弁48及び冷水排出ホース46を経て、冷水供給機42に戻る。
【0034】
供給切替弁47及び排出切替弁48を切り替えることにより、成形型20に温水が導入されているときは、その型面部が保温され、成形型20に冷水が導入されているときは、その型面部が冷却される。
【0035】
図2に示すように、この成形装置10のコントロールユニット100は、成形型20の駆動部20a、ブローピン27の駆動部27a、ブロック体36の駆動部35及び射出機30と、相互に、制御信号や、状態検出信号等を授受し合い、その結果に応じて、第1〜第5温度調整装置40…40に、供給切替弁47及び排出切替弁48の切替制御信号や水温調整信号等を出力する。
【0036】
そして、コントロールユニット100は、図3に示すように、この成形装置10がブロー成形工程を行っている間は、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を保温し、射出工程及び充填工程を行っている間は、第1及び第5温度調整装置40,40が成形型20の型面部の温度を低くし、そして、充填工程が終了してから型開きまでの間は、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を低くするように制御を行う。
【0037】
次に、本実施形態に係る樹脂成形品の成形方法を説明する。図4に示すように、本実施形態に係る樹脂成形品Aは、例えば自動車の内外装部材に用いられるもので、ソリッド樹脂Nからなる表層部の内部に発泡樹脂(発泡した後の樹脂)Mが充填された構造を有し、外観性、軽量性、剛性に優れるものである。
【0038】
まず、前記図1に示したように、図外のパリソン成型機の押出ヘッドXから垂下したソリッド樹脂でなるパリソンPを、成形型20で挟む(ブロー成形工程の開始)。次いで、図5に示すように、ブローピン27が成形型20内に進出し、パリソンPの内部に加圧エアを吹き込む。膨らんだパリソンPは、成形型20の型面部に押し付けられ、所定形状に賦形されて、中空のブロー成形体Bが形成される。ブロー成形体Bの一部は凹所38に入り込み、薄く引き延ばされ、ブロック体36に当接する。この段階では、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を保温している。
【0039】
次いで、図6に示すように、ブロック体駆動部35によりブロック体36が凹所38から退避する。これにより、薄く引き延ばされていたブロー成形体Bの一部が破裂し、ブロー成形体B内に連通路37を介して溶融状態の発泡性樹脂を射出するための穴が生成する(ブロー成形工程の終了)。このブロー成形工程の終了時点まで、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を保温している。
【0040】
次いで、図7に示すように、得られたブロー成形体Bを成形型20内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂(発泡する前の樹脂)M’を該ブロー成形体B内に射出する(射出工程)。この射出工程の開始時点から、第1及び第5温度調整装置40,40が成形型20の型面部の温度を低くする。より具体的には、前述したように、第1温度調整装置(No.1)は、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向に直交する型面部の温度を低くし、第5温度調整装置(No.5)は、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界から所定量内側の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)の温度を低くする。
【0041】
ここで、図7、図8及び図11に、「×」で示した部分は、後述する充填工程で膨張するブロー成形体Bの延伸部分であり、「▽」で示した部分は、非延伸部分である。つまり、第1及び第5温度調整装置40,40が前記型面部の温度を低くすることにより、ブロー成形体Bの非延伸部分が、延伸部分に比べて、より冷却されることとなる。なお、この段階では、ブローピン27は成形型20内から退避している。
【0042】
次いで、図8に示すように、溶融状態の発泡性樹脂M’の射出後に、成形型20を所定量開きつつ発泡性樹脂M’を発泡させることにより、ブロー成形体Bの膨張と並行して該ブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を充填させる(充填工程)。すなわち、図5〜図7のブロー成形工程及び射出工程では、内部型23を第2成形型24に近接する方向(図中において右方向)に移動させた状態で成形型20を型締めしていたが、図8の充填工程では、成形型20を型締めした状態で(つまり外周型22と第2成形型24とが対接した状態で)、内部型23を第2成形型24から離反する方向(図中において左方向)に所定量移動させる(つまりコアバックさせる)のである。このコアバックにより、成形品A(図4参照)の厚みが大きくなり、比重が小さくなる他、発泡樹脂Mの発泡が促進されて、成形品A内部に微細な気泡が均一に分散され、これにより、成形品Aの剛性向上及び軽量化が図られる。
【0043】
また、このコアバックにより、ブロー成形体Bにおいて、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向(図8において横方向)に平行な型面部に当接する部分、外周型22の型面部(内部型23の移動方向に平行な面)に当接する部分、及び、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界近傍の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)に当接する部分が延伸されることとなる。しかし、これらの各型面部は、この充填工程において、第2〜第4温度調整装置40…40により温度が保温されているから、ブロー成形体Bの前記延伸部分は良好な延伸性ないし成形性が確保されている。一方、この充填工程においても、第1及び第5温度調整装置40,40は引き続き成形型20の型面部の温度を低くしている。
【0044】
なお、この充填工程では、成形型20内から退避したブローピン27を介してブロー成形体B内のエア抜きが行われる。
【0045】
そして、図9に示すように、充填工程が終了すると、成形型20が型開きされるまでの間は、全ての温度調整装置40…40が型面部の温度を低くする。以上により、図4に示したような、内部が発泡樹脂Mからなり、表層部がソリッド樹脂Nからなる樹脂成形品Aが最終的に得られることとなる。
【0046】
以上のように、本実施形態においては、一次中空成形体の良好な成形性を確保し、かつ最終成形品Aの良好な外観性や剛性を確保するために、ソリッド樹脂NでなるパリソンPを成形型20で挟んでブロー成形を行い、得られた中空のブロー成形体Bを成形型20内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂M’を該ブロー成形体B内に射出し、この発泡性樹脂M’の射出後に、成形型20を所定量開きつつ発泡性樹脂M’を発泡させることにより、ブロー成形体Bの膨張と並行して該ブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を充填させるようにしたから、発泡樹脂Mの発泡が十分促進され、軽量性や剛性の向上が図られる。さらに、表層部をソリッド樹脂N(非発泡樹脂)で構成したから、表層部に気泡が現れず、外観性の向上も図られる。
【0047】
そのうえで、図3に示したように、ブロー成形工程の終了時から、充填工程の終了時、より詳しくは、充填工程における成形型20の所定量の開き動作(コアバック)の終了時までの間に、充填工程で膨張するブロー成形体Bの延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却するようにしたから(第1温度調整装置及び第5温度調整装置が「冷」、第2温度調整装置〜第4温度調整装置が「温」)、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延が抑制され、樹脂成形品Aの生産性が向上することとなる。
【0048】
すなわち、成形型20のコアバックがまだ行われている段階で、成形型20内のブロー成形体Bの非延伸部分を延伸部分よりも強く冷却するようにしたから(第1温度調整装置及び第5温度調整装置が「冷」)、成形型20内のブロー成形体Bが比較的早い時期に部分的に強く冷却されることとなり、その結果、たとえブロー成形体Bの前駆体であるパリソンPの初期設定温度が高めに設定されたり、中空のブロー成形体Bの断熱作用によって樹脂成形品A全体が冷め難い状態であっても、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延が抑制され、樹脂成形品Aの生産性が向上することとなる。
【0049】
しかも、その場合に、ブロー成形体Bの延伸部分は、成形型20のコアバックがまだ行われている段階では強く冷却されないから(第2温度調整装置〜第4温度調整装置が「温」)、その延伸部分の良好な延伸性ないし成形性が確保される。
【0050】
また、前記冷却が、ブロー成形工程が終了するまでは開始されないから(全温度調整装置が「温」)、ブロー成形における中空のブロー成形体Bの賦形性ないし成形性が確保される。
【0051】
また、前記冷却が、可能な限り長い時間行われるから(第1温度調整装置及び第5温度調整装置がブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型20のコアバック終了時までの全期間に亘って「冷」)、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延がより一層抑制され、樹脂成形品Aの生産性がより一層向上することとなる。
【0052】
また、前記冷却が、ブロー成形体Bが当接する成形型20の型面部の温度を低くすることによって行われるから、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延の抑制が簡単な構成で確実に達成されることとなる。
【0053】
また、成形型20が相互に対接する第1成形型21及び第2成形型24を有し、第1成形型24が外周型22と内部型23とを含み、第2成形型24が外周合せ面25と凹部26とを備える構成である場合に、ブロー成形体Bの非延伸部分が当接する型面部が、内部型23と外周型22との境界から所定量内側の内部型23の面、及び/又は、内部型23の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型24の凹部26の面であると規定されるから、前記冷却が、ブロー成形体Bに対して良好な位置精度で行われることとなる。
【0054】
また、前記冷却が、ブロー成形手段(図2の成形型駆動部20a及びブローピン駆動部27a)、射出手段(同、ブロック体駆動部35及び射出機30)及び充填手段(同、成形型駆動部20a)のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段(コントロールユニット100)の検出結果に基いて行われるから、前記冷却が、ブロー成形体Bに対して良好なタイミング精度で行われることとなる。
【0055】
また、図1に示した温度調整装置40のように、所定温度の第1の流体を成形型20に供給する第1流体供給手段(温水供給機41)と、前記第1の流体より低い温度の第2の流体を成形型20に供給する第2流体供給手段(冷水供給機42)とを備え、供給切替弁47及び排出切替弁48を制御することにより、ブロー成形体Bの非延伸部分が当接する型面部に、前記第1流体供給手段41から温水が供給される状態から、前記第2流体供給手段42から冷水が供給される状態へ切り替え、これにより、ブロー成形体Bの非延伸部分が当接する型面部の温度が低くされるから、前記冷却が、相対的に高温の流体と低温の流体とを用いて簡単な構成で確実に達成されることとなる。
【0056】
ここで、発泡性樹脂M’に、例えばガラスファイバ等の補強繊維を含有しておくことが好ましい。成形型20をコアバックする際に、補強繊維のスプリングバック現象が起き、これにより、発泡樹脂Mの発泡がより一層促進される。
【0057】
また、発泡性樹脂M’は、物理発泡剤を含有することが好ましい。物理発泡剤の効果により、成形品Aの内部の発泡セル径を小さな径に揃えることができ、樹脂成形品Aの剛性がより一層向上する。
【0058】
また、その場合に、物理発泡剤としては、超臨界状態の流体を用いることが好ましい。超臨界状態の流体の機能により、成形品Aの内部の発泡セル径をより微細な径に揃えることができ、樹脂成形品Aの剛性がなお一層向上する。
【0059】
ここで、超臨界状態の流体とは、気体と液体とが共存できる限界の温度(臨界温度)及び圧力(臨界圧力)を超えた状態にある流体のことで、前記臨界温度は、例えば二酸化炭素で31℃、窒素でマイナス147℃であり、前記臨界圧力は、例えば二酸化炭素で7.4MPa、窒素で3.4MPaである。超臨界状態にある流体は、密度が液体に近似し、流動性が気体に類似する。その結果、溶融樹脂中を活発に移動して、樹脂分子の奥深くまで均一に拡散、浸透し、微細発泡の種になり得る。
【0060】
パリソンPの原料であるソリッド樹脂N及び成形品A内部の原料である発泡樹脂Mは、それぞれ熱可塑性樹脂が良好に用いられ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ナイロン樹脂等が好適である。
【0061】
なお、前記実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の修正や変更を施してよいことはいうまでもない。
【0062】
例えば、図10に例示するように、ブロー成形体Bの非延伸部分の冷却は、前記ブロー成形工程の終了時から、前記充填工程における成形型20のコアバックの終了時までの間に、一時的に行ってもよい。その場合、第1温度調整装置40と、第5温度調整装置40とで、冷却のタイミングが異なっていてもよいし、冷却時間が相違していても構わない。
【0063】
また、例えば、第1温度調整装置40及び第5温度調整装置40が冷却を行うとき、第2温度調整装置40〜第4温度調整装置40も冷却を行い、その場合に、第1温度調整装置40及び第5温度調整装置40の冷却の度合いのほうを、第2温度調整装置40〜第4温度調整装置40の冷却の度合いよりも強くすれば、第1温度調整装置40及び第5温度調整装置40のみが冷却を行う場合と同様の効果が得られる。
【0064】
また、例えば、図11に例示するように、第2成形型24だけでなく、第1成形型21のほうにも凹部(外周型22の内側で第2成形型24から離反する方向(図11において左方向)に窪む凹部)を形成した成形型20も、本発明で使用可能な成形型である。
【0065】
さらに、ブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を射出するための穴をブロー成形体Bに形成する別の方法を図12及び図13に示す(前述と同じ又は類似の部材には同じ符号を用いる)。図12は、第2成形型24の凹所38の周囲に突起部24aを立ち上がらせて、ブロー成形体Bの一部を蛇行させて薄肉にし(図12(a)の状態)、さらに、ブロック体36を後退することにより(図12(b)の状態)、ブロー成形体Bの一部をより確実に破裂させて、生成した穴や連通路37を介してブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を射出するようにしたものである。図13は、同じ考え方であるが、図12の場合は、ブロー成形体Bの一部を、図12(a)の状態と図12(b)の状態とで同じ方向に引き延ばして破裂させるのに対し、図14の場合は、ブロック体36の先端部を突起部24aから突出させて、ブロー成形体Bの一部を、図13(a)の状態と図13(b)の状態とで逆方向に引き延ばして破裂させる点が異なっている。
【0066】
また、発泡性樹脂M’の発泡、充填時にブロー成形体B内のエア抜きを行うための穴をブロー成形体Bに形成する方法を図14、図15及び図16に示す(前述と同じ又は類似の部材には同じ符号を用いる)。図14は、第2成形型24に、エア排出路61と、突出ピン63…63を有する移動体62とを内蔵させて、ブロー成形体B内にブローピン27で気体を吹き込むときに前記突出ピン63…63をキャビティ内に突出させてブロー成形体Bに穴をあけ(図14(a)の状態)、発泡性樹脂M’の射出時〜充填時には、移動体62を後退させて突出ピン63…63をキャビティから退避させて(図14(b)の状態)、ブロー成形体Bに生成した穴やピン63…63の貫通孔64…64ないしエア排出路61を介してブロー成形体B内のエア抜きを行うようにしたものである。
【0067】
一方、図15及び図16は、いずれも、エア排出路形成用孔71又はエア排出路形成用凹部81を成形型(図例では第2成形型24)の外周合せ面部に設けるようにしたものである。図15の場合は、エア排出路形成用孔71に中子柱状体72に挿入し(図15(a)の状態)、この状態で、型締め〜エアブローを行い(図15(b)の状態)、発泡性樹脂M’の射出時に中子柱状体72を抜いて(図15(c)の状態)、その抜け穴からエア抜きを行うようにしている。これに対し、図16の場合は、エア排出路形成用凹部81の上面部にピン体82…82を差し込んでおき(図16(a)の状態)、この状態で、型締め〜エアブローを行い(図16(b)の状態)、発泡性樹脂M’の射出時にピン体82…82を抜いて(図16(c)の状態)、その抜け穴及びピン貫通孔83…83からエア抜きを行うようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体の内部に発泡樹脂が充填されて、外観性、軽量性、剛性に優れた樹脂成形品を、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延を抑制して、効率よく生産することが可能な技術であるから、樹脂成形の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置10を示す概略説明図である。
【図2】前記成形装置10の制御システム図である。
【図3】前記成形装置10の温度調整装置40…40の動作パターンの1例を示すタイムチャートである。
【図4】前記成形装置10で成形する樹脂成形品Aの構造を示す一部切り欠きの斜視図である。
【図5】前記成形装置10による前記樹脂成形品Aの成形方法を段階的に説明するための要部縦断面図であって、ブロー成型工程を示すものである。
【図6】同じく、ブロー成型工程の終了時を示すものである。。
【図7】同じく、射出工程を示すものである。
【図8】同じく、充填工程を示すものである。
【図9】同じく、充填工程の終了後、型開きまでを示すものである。
【図10】前記成形装置10の温度調整装置40…40の動作パターンの別の例を示す図3と類似のタイムチャートである。
【図11】前記成形装置10の成形型20の別の例を示す図5と類似の要部縦断面図である。
【図12】ブロー成形体B内に発泡性樹脂を射出するための穴をブロー成形体Bに形成する別の方法の説明図である。
【図13】図12と同様の説明図である。
【図14】発泡性樹脂の発泡、充填時にブロー成形体B内のエア抜きを行うための穴をブロー成形体Bに形成する方法の説明図である。
【図15】図14と同様の説明図である。
【図16】図14と同様の説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 樹脂成形品の成形装置
20 成形型
30 射出機
40 温度調整装置
100 コントロールユニット
A 樹脂成形品
B ブロー成形体
M 発泡樹脂
N ソリッド樹脂
P パリソン
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関し、樹脂成形の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品を自動車部品に用いることがあり、特に、外観性、軽量性、剛性の観点から、内部が発泡樹脂からなり、表層部がソリッド樹脂(非発泡樹脂)からなる樹脂成形品を、例えば自動車の内外装部材に使用することがある。この点、特許文献1には、発泡層を有する中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して、該発泡体片をスチーム等の加熱媒体により加熱して該発泡体片を相互に融着させることにより表皮付発泡成形体を得ることが開示されている。
【特許文献1】特開2004−284149(段落0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記技術は、既に発泡済みの樹脂片同士を加熱融着させることにより、中空成形体の表皮で覆われた発泡成形体を得るものであるため、加熱融着時に気泡が潰れて、発泡の程度が低下し、その結果、軽量性や剛性の点で十分満足のいくものが得られない、という問題がある。また、表層部が発泡層を有するものであるため、表層部に気泡が現れて、外観性の点でも十分満足のいくものが得られない、という問題もある。
【0004】
そこで、一次中空成形体の良好な成形性を確保し、かつ最終成形品の良好な外観性や剛性を確保するために、ソリッド樹脂をブロー成形して中空のブロー成形体を形成し、このブロー成形体の内部に発泡性樹脂を射出して、その発泡時及び充填時に成形型を所定量開くことが考えられる。しかし、この場合、成形型の所定量の開き動作によって、ブロー成形体が膨張し、部分的に延伸されるので、その延伸部分の良好な延伸性を確保するために、ブロー成形体をブロー成形する前の前駆体であるパリソンの初期設定温度を、そのような成形型の開き動作をしないときに比べて、高めに設定することとなる。しかも、得られる樹脂成形品の表層部が、ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体で構成されるから、このブロー成形体が断熱作用を奏し、樹脂成形品全体が冷め難くなる。そして、これらのことが相俟って、成形型内での樹脂成形品の冷却が遅延し、ブロー成形体の膨張及び発泡性樹脂の充填が終了してから型開きするまでの時間が長くかかり、生産サイクルが長引いて、生産効率が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体の内部に発泡樹脂が充填されて、外観性、軽量性、剛性に優れた樹脂成形品を、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延を抑制して、効率よく生産することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明では、次のような手段を用いる。
【0007】
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形方法であって、ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形工程と、このブロー成形工程で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出工程と、前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填工程とを含み、前記ブロー成形工程の終了時から前記充填工程における成形型の開き動作の終了時までの間に、該充填工程で膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却することを特徴とする。
【0008】
なお、ブロー成形体の非延伸部分を延伸部分と比べてより冷却するのであるから、ブロー成形体の非延伸部分も延伸部分もどちらも冷却するのであるが、非延伸部分の冷却の度合いのほうが延伸部分の冷却の度合いよりも強い場合と、延伸部分は冷却せず、非延伸部分のみ冷却する場合との両方が含まれる。
【0009】
次に、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法であって、前記冷却は、ブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って行うことを特徴とする。
【0010】
次に、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法であって、前記冷却は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより行うことを特徴とする。
【0011】
次に、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の樹脂成形品の成形方法であって、前記成形型として、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有するものを用い、第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、ブロー成形工程及び前記射出工程では、前記内部型を第2成形型に近接する方向に移動させた状態で、成形型を型締めし、充填工程では、成形型を型締めした状態で、前記内部型を第2成形型から離反する方向に移動させると共に、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0012】
次に、本願の請求項5に記載の発明は、内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形装置であって、ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形手段と、このブロー成形手段で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出手段と、この射出手段による前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填手段と、前記ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から前記充填手段による成形型の開き動作の終了時までの間に、該成形型の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却する冷却手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
なお、この場合も、冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分を延伸部分と比べてより冷却するのであるから、ブロー成形体の非延伸部分も延伸部分もどちらも冷却するのであるが、非延伸部分を冷却する度合いのほうが延伸部分を冷却する度合いよりも強い場合と、延伸部分は冷却せず、非延伸部分のみ冷却する場合との両方が含まれる。
【0014】
次に、本願の請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の樹脂成形品の成形装置であって、前記冷却手段は、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から充填手段による成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って前記冷却を行うことを特徴とする。
【0015】
次に、本願の請求項7に記載の発明は、前記請求項5又は6に記載の樹脂成形品の成形装置であって、前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより前記冷却を行うことを特徴とする。
【0016】
次に、本願の請求項8に記載の発明は、前記請求項7に記載の樹脂成形品の成形装置であって、前記成形型は、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有し、第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成時及び射出手段による発泡性樹脂の射出時には、前記内部型が第2成形型に近接する方向に移動した状態で、成形型が型締めし、充填手段による発泡性樹脂の充填時には、成形型が型締めした状態で、前記内部型が第2成形型から離反する方向に移動すると共に、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0017】
次に、本願の請求項9に記載の発明は、前記請求項7又は8に記載の樹脂成形品の成形装置であって、ブロー成形手段、射出手段及び充填手段のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段が備えられ、前記冷却手段は、このタイミング検出手段の検出結果に基いて、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする。
【0018】
次に、本願の請求項10に記載の発明は、前記請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置であって、所定温度の第1の流体を成形型に供給する第1流体供給手段と、前記第1の流体より低い温度の第2の流体を成形型に供給する第2流体供給手段とが備えられ、前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部に、前記第1流体供給手段から第1の流体が供給される状態から、前記第2流体供給手段から第2の流体が供給される状態へ切り替えることにより、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
まず、請求項1又は請求項5に記載の発明によれば、一次中空成形体の良好な成形性を確保し、かつ最終成形品の良好な外観性や剛性を確保するために、ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、得られた中空のブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出し、この発泡性樹脂の射出後に、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させるようにしたから、発泡樹脂の発泡が十分促進され、軽量性や剛性の向上が図られる。さらに、表層部をソリッド樹脂(非発泡樹脂)で構成したから、表層部に気泡が現れず、外観性の向上も図られる。
【0020】
そのうえで、請求項1に記載の発明においては、ブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型の開き動作の終了時までの間に、充填工程で膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却するようにしたから、また、請求項5に記載の発明においては、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から充填手段による成形型の開き動作の終了時までの間に、成形型の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却するようにしたから、いずれの場合も、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延が抑制され、樹脂成形品の生産性が向上することとなる。
【0021】
すなわち、成形型の所定量の開き動作がまだ行われている段階で、成形型内のブロー成形体の非延伸部分を延伸部分よりも強く冷却するようにしたから(前述したように、非延伸部分の冷却度合いを延伸部分の冷却度合いよりも強くする場合と、非延伸部分のみ冷却する場合との両方を含む)、成形型内のブロー成形体が比較的早い時期に部分的に強く冷却されることとなり、その結果、たとえブロー成形体の前駆体であるパリソンの初期設定温度が高めに設定されたり、中空のブロー成形体の断熱作用によって樹脂成形品全体が冷め難い状態であっても、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延が抑制され、樹脂成形品の生産性が向上することとなる。
【0022】
しかも、その場合に、ブロー成形体の延伸部分は、成形型の所定量の開き動作がまだ行われている段階では強く冷却されないから(前述したように、まったく冷却されない場合を含む)、その延伸部分の良好な延伸性ないし成形性が確保される。
【0023】
また、前記冷却が、ブロー成形工程が終了するまで(請求項1の場合)、又はブロー成形体の形成動作が終了するまで(請求項5の場合)は開始されないから、ブロー成形における中空のブロー成形体の賦形性ないし成形性が確保される。
【0024】
次に、請求項2又は請求項6に記載の発明によれば、前記冷却が、可能な限り長い時間行われるから、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延がより一層抑制され、樹脂成形品の生産性がより一層向上することとなる。
【0025】
次に、請求項3又は請求項7に記載の発明によれば、前記冷却が、ブロー成形体が当接する成形型の型面部の温度を低くすることによって行われるから、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延の抑制が簡単な構成で確実に達成されることとなる。
【0026】
次に、請求項4又は請求項8に記載の発明によれば、成形型が相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有し、第1成形型が外周型と内部型とを含み、第2成形型が外周合せ面と凹部とを備える構成である場合に、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部が、内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び/又は、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面であると規定されるから、前記冷却が、ブロー成形体に対して良好な位置精度で行われることとなる。
【0027】
次に、請求項9に記載の発明によれば、前記冷却が、ブロー成形手段、射出手段及び充填手段のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段の検出結果に基いて行われるから、前記冷却が、ブロー成形体に対して良好なタイミング精度で行われることとなる。
【0028】
次に、請求項10に記載の発明によれば、前記冷却が、相対的に高温の流体と低温の流体とを用いて簡単な構成で確実に達成されることとなる。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本実施形態に係る樹脂成形品の成形装置10を示す概略説明図である。この成形装置10は、成形型20と、射出機30と、温度調整装置40とを備えている。
【0030】
成形型20は、相互に対接する第1成形型21と第2成形型24とを有し、第1成形型21は、型締め時に第2成形型24と対接する外周型22と、この外周型22の内側に位置し、外周型22に対して第2成形型24に近接する方向(図1において右方向)及び第2成形型24から離反する方向(同、左方向)に相対移動自在の内部型23とを含んでいる。一方、第2成形型24は、前記外周型22が対接する外周合せ面25と、この外周合せ面25の内側で第1成形型21から離反する方向(図1において右方向)に窪む凹部26とを備えている。第2成形型24には、型締めした成形型20内に加圧流体を供給するためのブローピン27が凹部26に対して進退自在に設けられている。
【0031】
射出機30は、型締めした成形型20内に、発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂を射出するもので、シリンダ内に基材樹脂を投入するためのホッパ31と、シリンダ内で混錬された溶融状態の基材樹脂に対して超臨界状態の流体を混入するための噴出装置32とを備えている。超臨界状態の流体は、後述するように、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスのボンベ34から超臨界流体発生装置33を介して生成される。これにより、基材樹脂に発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂が得られる。この発泡性樹脂は、第2成形型24に形成された連通路37及び凹所38を経て、型締めした成形型20内に射出される。その場合に、連通路37と凹所38との間には、例えば電磁弁等の駆動部35で進退移動されるブロック体36が介在している。
【0032】
温度調整装置40は、この成形装置10においては、全部で5つ備えられている。そのうち、第1温度調整装置(No.1)は、第2成形型24に設けられた通路51を介して、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向(図1において横方向)に直交する型面部の温度を調整するものである。同様に、第2温度調整装置(No.2)は、第2成形型24に設けられた通路51を介して、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向に平行な型面部の温度を調整するものである。一方、第3温度調整装置(No.3)は、外周型22に設けられた通路51を介して、外周型22の型面部(内部型23の移動方向に平行な面)の温度を調整するものであり、第4温度調整装置(No.4)は、内部型23に設けられた通路51を介して、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界近傍の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)の温度を調整するものであり、第5温度調整装置(No.5)は、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界から所定量内側の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)の温度を調整するものである。
【0033】
図1に第2温度調整装置(No.2)を例示したように、温度調整装置40は、比較的高温の水を供給する温水供給機41と、比較的低温の水を供給する冷水供給機42とを有している。温水供給機41から供給された温水は、温水供給ホース43、供給切替弁47及び共通供給ホース49を経て、成形型20に導入される。成形型20に導入された温水は、通路51を通過して、共通排出ホース50、排出切替弁48及び温水排出ホース44を経て、温水供給機41に戻る。同様に、冷水供給機42から供給された温水は、冷水供給ホース45、供給切替弁47及び共通供給ホース49を経て、成形型20に導入される。成形型20に導入された冷水は、通路51を通過して、共通排出ホース50、排出切替弁48及び冷水排出ホース46を経て、冷水供給機42に戻る。
【0034】
供給切替弁47及び排出切替弁48を切り替えることにより、成形型20に温水が導入されているときは、その型面部が保温され、成形型20に冷水が導入されているときは、その型面部が冷却される。
【0035】
図2に示すように、この成形装置10のコントロールユニット100は、成形型20の駆動部20a、ブローピン27の駆動部27a、ブロック体36の駆動部35及び射出機30と、相互に、制御信号や、状態検出信号等を授受し合い、その結果に応じて、第1〜第5温度調整装置40…40に、供給切替弁47及び排出切替弁48の切替制御信号や水温調整信号等を出力する。
【0036】
そして、コントロールユニット100は、図3に示すように、この成形装置10がブロー成形工程を行っている間は、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を保温し、射出工程及び充填工程を行っている間は、第1及び第5温度調整装置40,40が成形型20の型面部の温度を低くし、そして、充填工程が終了してから型開きまでの間は、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を低くするように制御を行う。
【0037】
次に、本実施形態に係る樹脂成形品の成形方法を説明する。図4に示すように、本実施形態に係る樹脂成形品Aは、例えば自動車の内外装部材に用いられるもので、ソリッド樹脂Nからなる表層部の内部に発泡樹脂(発泡した後の樹脂)Mが充填された構造を有し、外観性、軽量性、剛性に優れるものである。
【0038】
まず、前記図1に示したように、図外のパリソン成型機の押出ヘッドXから垂下したソリッド樹脂でなるパリソンPを、成形型20で挟む(ブロー成形工程の開始)。次いで、図5に示すように、ブローピン27が成形型20内に進出し、パリソンPの内部に加圧エアを吹き込む。膨らんだパリソンPは、成形型20の型面部に押し付けられ、所定形状に賦形されて、中空のブロー成形体Bが形成される。ブロー成形体Bの一部は凹所38に入り込み、薄く引き延ばされ、ブロック体36に当接する。この段階では、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を保温している。
【0039】
次いで、図6に示すように、ブロック体駆動部35によりブロック体36が凹所38から退避する。これにより、薄く引き延ばされていたブロー成形体Bの一部が破裂し、ブロー成形体B内に連通路37を介して溶融状態の発泡性樹脂を射出するための穴が生成する(ブロー成形工程の終了)。このブロー成形工程の終了時点まで、全ての温度調整装置40…40が成形型20の型面部の温度を保温している。
【0040】
次いで、図7に示すように、得られたブロー成形体Bを成形型20内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂(発泡する前の樹脂)M’を該ブロー成形体B内に射出する(射出工程)。この射出工程の開始時点から、第1及び第5温度調整装置40,40が成形型20の型面部の温度を低くする。より具体的には、前述したように、第1温度調整装置(No.1)は、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向に直交する型面部の温度を低くし、第5温度調整装置(No.5)は、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界から所定量内側の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)の温度を低くする。
【0041】
ここで、図7、図8及び図11に、「×」で示した部分は、後述する充填工程で膨張するブロー成形体Bの延伸部分であり、「▽」で示した部分は、非延伸部分である。つまり、第1及び第5温度調整装置40,40が前記型面部の温度を低くすることにより、ブロー成形体Bの非延伸部分が、延伸部分に比べて、より冷却されることとなる。なお、この段階では、ブローピン27は成形型20内から退避している。
【0042】
次いで、図8に示すように、溶融状態の発泡性樹脂M’の射出後に、成形型20を所定量開きつつ発泡性樹脂M’を発泡させることにより、ブロー成形体Bの膨張と並行して該ブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を充填させる(充填工程)。すなわち、図5〜図7のブロー成形工程及び射出工程では、内部型23を第2成形型24に近接する方向(図中において右方向)に移動させた状態で成形型20を型締めしていたが、図8の充填工程では、成形型20を型締めした状態で(つまり外周型22と第2成形型24とが対接した状態で)、内部型23を第2成形型24から離反する方向(図中において左方向)に所定量移動させる(つまりコアバックさせる)のである。このコアバックにより、成形品A(図4参照)の厚みが大きくなり、比重が小さくなる他、発泡樹脂Mの発泡が促進されて、成形品A内部に微細な気泡が均一に分散され、これにより、成形品Aの剛性向上及び軽量化が図られる。
【0043】
また、このコアバックにより、ブロー成形体Bにおいて、第2成形型24の凹部26の面のうち、内部型23の移動方向(図8において横方向)に平行な型面部に当接する部分、外周型22の型面部(内部型23の移動方向に平行な面)に当接する部分、及び、内部型23の面のうち、内部型23と外周型22との境界近傍の型面部(内部型23の移動方向に直交する面)に当接する部分が延伸されることとなる。しかし、これらの各型面部は、この充填工程において、第2〜第4温度調整装置40…40により温度が保温されているから、ブロー成形体Bの前記延伸部分は良好な延伸性ないし成形性が確保されている。一方、この充填工程においても、第1及び第5温度調整装置40,40は引き続き成形型20の型面部の温度を低くしている。
【0044】
なお、この充填工程では、成形型20内から退避したブローピン27を介してブロー成形体B内のエア抜きが行われる。
【0045】
そして、図9に示すように、充填工程が終了すると、成形型20が型開きされるまでの間は、全ての温度調整装置40…40が型面部の温度を低くする。以上により、図4に示したような、内部が発泡樹脂Mからなり、表層部がソリッド樹脂Nからなる樹脂成形品Aが最終的に得られることとなる。
【0046】
以上のように、本実施形態においては、一次中空成形体の良好な成形性を確保し、かつ最終成形品Aの良好な外観性や剛性を確保するために、ソリッド樹脂NでなるパリソンPを成形型20で挟んでブロー成形を行い、得られた中空のブロー成形体Bを成形型20内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂M’を該ブロー成形体B内に射出し、この発泡性樹脂M’の射出後に、成形型20を所定量開きつつ発泡性樹脂M’を発泡させることにより、ブロー成形体Bの膨張と並行して該ブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を充填させるようにしたから、発泡樹脂Mの発泡が十分促進され、軽量性や剛性の向上が図られる。さらに、表層部をソリッド樹脂N(非発泡樹脂)で構成したから、表層部に気泡が現れず、外観性の向上も図られる。
【0047】
そのうえで、図3に示したように、ブロー成形工程の終了時から、充填工程の終了時、より詳しくは、充填工程における成形型20の所定量の開き動作(コアバック)の終了時までの間に、充填工程で膨張するブロー成形体Bの延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却するようにしたから(第1温度調整装置及び第5温度調整装置が「冷」、第2温度調整装置〜第4温度調整装置が「温」)、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延が抑制され、樹脂成形品Aの生産性が向上することとなる。
【0048】
すなわち、成形型20のコアバックがまだ行われている段階で、成形型20内のブロー成形体Bの非延伸部分を延伸部分よりも強く冷却するようにしたから(第1温度調整装置及び第5温度調整装置が「冷」)、成形型20内のブロー成形体Bが比較的早い時期に部分的に強く冷却されることとなり、その結果、たとえブロー成形体Bの前駆体であるパリソンPの初期設定温度が高めに設定されたり、中空のブロー成形体Bの断熱作用によって樹脂成形品A全体が冷め難い状態であっても、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延が抑制され、樹脂成形品Aの生産性が向上することとなる。
【0049】
しかも、その場合に、ブロー成形体Bの延伸部分は、成形型20のコアバックがまだ行われている段階では強く冷却されないから(第2温度調整装置〜第4温度調整装置が「温」)、その延伸部分の良好な延伸性ないし成形性が確保される。
【0050】
また、前記冷却が、ブロー成形工程が終了するまでは開始されないから(全温度調整装置が「温」)、ブロー成形における中空のブロー成形体Bの賦形性ないし成形性が確保される。
【0051】
また、前記冷却が、可能な限り長い時間行われるから(第1温度調整装置及び第5温度調整装置がブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型20のコアバック終了時までの全期間に亘って「冷」)、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延がより一層抑制され、樹脂成形品Aの生産性がより一層向上することとなる。
【0052】
また、前記冷却が、ブロー成形体Bが当接する成形型20の型面部の温度を低くすることによって行われるから、成形型20内での樹脂成形品Aの冷却遅延の抑制が簡単な構成で確実に達成されることとなる。
【0053】
また、成形型20が相互に対接する第1成形型21及び第2成形型24を有し、第1成形型24が外周型22と内部型23とを含み、第2成形型24が外周合せ面25と凹部26とを備える構成である場合に、ブロー成形体Bの非延伸部分が当接する型面部が、内部型23と外周型22との境界から所定量内側の内部型23の面、及び/又は、内部型23の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型24の凹部26の面であると規定されるから、前記冷却が、ブロー成形体Bに対して良好な位置精度で行われることとなる。
【0054】
また、前記冷却が、ブロー成形手段(図2の成形型駆動部20a及びブローピン駆動部27a)、射出手段(同、ブロック体駆動部35及び射出機30)及び充填手段(同、成形型駆動部20a)のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段(コントロールユニット100)の検出結果に基いて行われるから、前記冷却が、ブロー成形体Bに対して良好なタイミング精度で行われることとなる。
【0055】
また、図1に示した温度調整装置40のように、所定温度の第1の流体を成形型20に供給する第1流体供給手段(温水供給機41)と、前記第1の流体より低い温度の第2の流体を成形型20に供給する第2流体供給手段(冷水供給機42)とを備え、供給切替弁47及び排出切替弁48を制御することにより、ブロー成形体Bの非延伸部分が当接する型面部に、前記第1流体供給手段41から温水が供給される状態から、前記第2流体供給手段42から冷水が供給される状態へ切り替え、これにより、ブロー成形体Bの非延伸部分が当接する型面部の温度が低くされるから、前記冷却が、相対的に高温の流体と低温の流体とを用いて簡単な構成で確実に達成されることとなる。
【0056】
ここで、発泡性樹脂M’に、例えばガラスファイバ等の補強繊維を含有しておくことが好ましい。成形型20をコアバックする際に、補強繊維のスプリングバック現象が起き、これにより、発泡樹脂Mの発泡がより一層促進される。
【0057】
また、発泡性樹脂M’は、物理発泡剤を含有することが好ましい。物理発泡剤の効果により、成形品Aの内部の発泡セル径を小さな径に揃えることができ、樹脂成形品Aの剛性がより一層向上する。
【0058】
また、その場合に、物理発泡剤としては、超臨界状態の流体を用いることが好ましい。超臨界状態の流体の機能により、成形品Aの内部の発泡セル径をより微細な径に揃えることができ、樹脂成形品Aの剛性がなお一層向上する。
【0059】
ここで、超臨界状態の流体とは、気体と液体とが共存できる限界の温度(臨界温度)及び圧力(臨界圧力)を超えた状態にある流体のことで、前記臨界温度は、例えば二酸化炭素で31℃、窒素でマイナス147℃であり、前記臨界圧力は、例えば二酸化炭素で7.4MPa、窒素で3.4MPaである。超臨界状態にある流体は、密度が液体に近似し、流動性が気体に類似する。その結果、溶融樹脂中を活発に移動して、樹脂分子の奥深くまで均一に拡散、浸透し、微細発泡の種になり得る。
【0060】
パリソンPの原料であるソリッド樹脂N及び成形品A内部の原料である発泡樹脂Mは、それぞれ熱可塑性樹脂が良好に用いられ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ナイロン樹脂等が好適である。
【0061】
なお、前記実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の修正や変更を施してよいことはいうまでもない。
【0062】
例えば、図10に例示するように、ブロー成形体Bの非延伸部分の冷却は、前記ブロー成形工程の終了時から、前記充填工程における成形型20のコアバックの終了時までの間に、一時的に行ってもよい。その場合、第1温度調整装置40と、第5温度調整装置40とで、冷却のタイミングが異なっていてもよいし、冷却時間が相違していても構わない。
【0063】
また、例えば、第1温度調整装置40及び第5温度調整装置40が冷却を行うとき、第2温度調整装置40〜第4温度調整装置40も冷却を行い、その場合に、第1温度調整装置40及び第5温度調整装置40の冷却の度合いのほうを、第2温度調整装置40〜第4温度調整装置40の冷却の度合いよりも強くすれば、第1温度調整装置40及び第5温度調整装置40のみが冷却を行う場合と同様の効果が得られる。
【0064】
また、例えば、図11に例示するように、第2成形型24だけでなく、第1成形型21のほうにも凹部(外周型22の内側で第2成形型24から離反する方向(図11において左方向)に窪む凹部)を形成した成形型20も、本発明で使用可能な成形型である。
【0065】
さらに、ブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を射出するための穴をブロー成形体Bに形成する別の方法を図12及び図13に示す(前述と同じ又は類似の部材には同じ符号を用いる)。図12は、第2成形型24の凹所38の周囲に突起部24aを立ち上がらせて、ブロー成形体Bの一部を蛇行させて薄肉にし(図12(a)の状態)、さらに、ブロック体36を後退することにより(図12(b)の状態)、ブロー成形体Bの一部をより確実に破裂させて、生成した穴や連通路37を介してブロー成形体B内に発泡性樹脂M’を射出するようにしたものである。図13は、同じ考え方であるが、図12の場合は、ブロー成形体Bの一部を、図12(a)の状態と図12(b)の状態とで同じ方向に引き延ばして破裂させるのに対し、図14の場合は、ブロック体36の先端部を突起部24aから突出させて、ブロー成形体Bの一部を、図13(a)の状態と図13(b)の状態とで逆方向に引き延ばして破裂させる点が異なっている。
【0066】
また、発泡性樹脂M’の発泡、充填時にブロー成形体B内のエア抜きを行うための穴をブロー成形体Bに形成する方法を図14、図15及び図16に示す(前述と同じ又は類似の部材には同じ符号を用いる)。図14は、第2成形型24に、エア排出路61と、突出ピン63…63を有する移動体62とを内蔵させて、ブロー成形体B内にブローピン27で気体を吹き込むときに前記突出ピン63…63をキャビティ内に突出させてブロー成形体Bに穴をあけ(図14(a)の状態)、発泡性樹脂M’の射出時〜充填時には、移動体62を後退させて突出ピン63…63をキャビティから退避させて(図14(b)の状態)、ブロー成形体Bに生成した穴やピン63…63の貫通孔64…64ないしエア排出路61を介してブロー成形体B内のエア抜きを行うようにしたものである。
【0067】
一方、図15及び図16は、いずれも、エア排出路形成用孔71又はエア排出路形成用凹部81を成形型(図例では第2成形型24)の外周合せ面部に設けるようにしたものである。図15の場合は、エア排出路形成用孔71に中子柱状体72に挿入し(図15(a)の状態)、この状態で、型締め〜エアブローを行い(図15(b)の状態)、発泡性樹脂M’の射出時に中子柱状体72を抜いて(図15(c)の状態)、その抜け穴からエア抜きを行うようにしている。これに対し、図16の場合は、エア排出路形成用凹部81の上面部にピン体82…82を差し込んでおき(図16(a)の状態)、この状態で、型締め〜エアブローを行い(図16(b)の状態)、発泡性樹脂M’の射出時にピン体82…82を抜いて(図16(c)の状態)、その抜け穴及びピン貫通孔83…83からエア抜きを行うようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、ソリッド樹脂からなる中空のブロー成形体の内部に発泡樹脂が充填されて、外観性、軽量性、剛性に優れた樹脂成形品を、成形型内での樹脂成形品の冷却遅延を抑制して、効率よく生産することが可能な技術であるから、樹脂成形の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置10を示す概略説明図である。
【図2】前記成形装置10の制御システム図である。
【図3】前記成形装置10の温度調整装置40…40の動作パターンの1例を示すタイムチャートである。
【図4】前記成形装置10で成形する樹脂成形品Aの構造を示す一部切り欠きの斜視図である。
【図5】前記成形装置10による前記樹脂成形品Aの成形方法を段階的に説明するための要部縦断面図であって、ブロー成型工程を示すものである。
【図6】同じく、ブロー成型工程の終了時を示すものである。。
【図7】同じく、射出工程を示すものである。
【図8】同じく、充填工程を示すものである。
【図9】同じく、充填工程の終了後、型開きまでを示すものである。
【図10】前記成形装置10の温度調整装置40…40の動作パターンの別の例を示す図3と類似のタイムチャートである。
【図11】前記成形装置10の成形型20の別の例を示す図5と類似の要部縦断面図である。
【図12】ブロー成形体B内に発泡性樹脂を射出するための穴をブロー成形体Bに形成する別の方法の説明図である。
【図13】図12と同様の説明図である。
【図14】発泡性樹脂の発泡、充填時にブロー成形体B内のエア抜きを行うための穴をブロー成形体Bに形成する方法の説明図である。
【図15】図14と同様の説明図である。
【図16】図14と同様の説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 樹脂成形品の成形装置
20 成形型
30 射出機
40 温度調整装置
100 コントロールユニット
A 樹脂成形品
B ブロー成形体
M 発泡樹脂
N ソリッド樹脂
P パリソン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形方法であって、
ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形工程と、
このブロー成形工程で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出工程と、
前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填工程とを含み、
前記ブロー成形工程の終了時から前記充填工程における成形型の開き動作の終了時までの間に、該充填工程で膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記冷却は、ブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って行うことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記冷却は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより行うことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記成形型として、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有するものを用い、
第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、
第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、
ブロー成形工程及び前記射出工程では、前記内部型を第2成形型に近接する方向に移動させた状態で、成形型を型締めし、
充填工程では、成形型を型締めした状態で、前記内部型を第2成形型から離反する方向に移動させると共に、
ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、
内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形装置であって、
ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形手段と、
このブロー成形手段で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出手段と、
この射出手段による前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填手段と、
前記ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から前記充填手段による成形型の開き動作の終了時までの間に、該成形型の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却する冷却手段とを備えていることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
前記冷却手段は、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から充填手段による成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って前記冷却を行うことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項7】
前記請求項5又は6に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより前記冷却を行うことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
前記成形型は、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有し、
第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、
第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、
ブロー成形手段によるブロー成形体の形成時及び射出手段による発泡性樹脂の射出時には、前記内部型が第2成形型に近接する方向に移動した状態で、成形型が型締めし、
充填手段による発泡性樹脂の充填時には、成形型が型締めした状態で、前記内部型が第2成形型から離反する方向に移動すると共に、
ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、
内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
前記請求項7又は8に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
ブロー成形手段、射出手段及び充填手段のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段が備えられ、
前記冷却手段は、このタイミング検出手段の検出結果に基いて、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
所定温度の第1の流体を成形型に供給する第1流体供給手段と、
前記第1の流体より低い温度の第2の流体を成形型に供給する第2流体供給手段とが備えられ、
前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部に、前記第1流体供給手段から第1の流体が供給される状態から、前記第2流体供給手段から第2の流体が供給される状態へ切り替えることにより、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項1】
内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形方法であって、
ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形工程と、
このブロー成形工程で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出工程と、
前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填工程とを含み、
前記ブロー成形工程の終了時から前記充填工程における成形型の開き動作の終了時までの間に、該充填工程で膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記冷却は、ブロー成形工程の終了時から充填工程における成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って行うことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記冷却は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより行うことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記成形型として、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有するものを用い、
第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、
第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、
ブロー成形工程及び前記射出工程では、前記内部型を第2成形型に近接する方向に移動させた状態で、成形型を型締めし、
充填工程では、成形型を型締めした状態で、前記内部型を第2成形型から離反する方向に移動させると共に、
ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、
内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
内部が発泡樹脂でなり、表層部がソリッド樹脂でなる樹脂成形品の成形装置であって、
ソリッド樹脂でなるパリソンを成形型で挟んでブロー成形を行い、中空のブロー成形体を形成するブロー成形手段と、
このブロー成形手段で形成された前記ブロー成形体を成形型内に残した状態で、溶融状態の発泡性樹脂を該ブロー成形体内に射出する射出手段と、
この射出手段による前記発泡性樹脂の射出後、成形型を所定量開きつつ発泡性樹脂を発泡させることにより、前記ブロー成形体の膨張と並行して該ブロー成形体内に発泡性樹脂を充填させる充填手段と、
前記ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から前記充填手段による成形型の開き動作の終了時までの間に、該成形型の開き動作により膨張するブロー成形体の延伸部分を除く非延伸部分を、延伸部分と比べて、より冷却する冷却手段とを備えていることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
前記冷却手段は、ブロー成形手段によるブロー成形体の形成動作の終了時から充填手段による成形型の開き動作の終了時までの全期間に亘って前記冷却を行うことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項7】
前記請求項5又は6に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する成形型の型面部の温度を、延伸部分が当接する型面部の温度よりも低くすることにより前記冷却を行うことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
前記成形型は、相互に対接する第1成形型及び第2成形型を有し、
第1成形型が、型締め時に第2成形型と対接する外周型と、この外周型の内側に位置し、外周型に対して第2成形型に近接する方向又は第2成形型から離反する方向に相対移動自在の内部型とを含み、
第2成形型が、前記外周型が対接する外周合せ面と、この外周合せ面の内側で第1成形型から離反する方向に窪む凹部とを備えるものであり、
ブロー成形手段によるブロー成形体の形成時及び射出手段による発泡性樹脂の射出時には、前記内部型が第2成形型に近接する方向に移動した状態で、成形型が型締めし、
充填手段による発泡性樹脂の充填時には、成形型が型締めした状態で、前記内部型が第2成形型から離反する方向に移動すると共に、
ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部は、
内部型と外周型との境界から所定量内側の内部型の面、及び、内部型の移動方向にほぼ沿う面を除く第2成形型の凹部の面の少なくともいずれかであることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
前記請求項7又は8に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
ブロー成形手段、射出手段及び充填手段のいずれが動作しているかを検出するタイミング検出手段が備えられ、
前記冷却手段は、このタイミング検出手段の検出結果に基いて、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置であって、
所定温度の第1の流体を成形型に供給する第1流体供給手段と、
前記第1の流体より低い温度の第2の流体を成形型に供給する第2流体供給手段とが備えられ、
前記冷却手段は、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部に、前記第1流体供給手段から第1の流体が供給される状態から、前記第2流体供給手段から第2の流体が供給される状態へ切り替えることにより、ブロー成形体の非延伸部分が当接する型面部の温度を低くすることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−18470(P2009−18470A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182033(P2007−182033)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]