説明

汎用内燃機関

【課題】機関の出力軸の回転に伴って出力を生じるコイルの断線を検知するようにした汎用内燃機関を提供する。
【解決手段】パワーコイルが生じる機関回転数を示す出力とパルサコイルが生じる点火時期を示す出力をECUに入力し、パワーコイルとパルサコイルのそれぞれが出力を生じているか否か判断する(S14,S16)と共に、パルサコイルが出力を生じている一方、パワーコイルが出力を生じていないと判断されるとき、パワーコイルが断線していると判定する(S26)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汎用内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や農業機械など、様々な用途で駆動源として使用される汎用内燃機関において、近年、スロットル開度をアクチュエータで調節することが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載される技術にあっては、機関の出力軸の回転に伴って出力を生じるコイルを複数個備えている。その中の1個は機関回転数を示す出力を生じるコイルであり、かかるコイルの出力などに基づいて前記アクチュエータの動作を制御することで、スロットル開度を調節している。
【特許文献1】特開2005−76522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、機関回転数を示す出力を生じるコイルが断線して機関回転数を検出できなくなると、スロットル開度の調節を行うことができなくなり、オーバーラン(過回転)などの不具合を招くおそれがある。そこで、かかる不具合の発生を防止するために、コイルの断線を検知することが望まれていた。
【0004】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、機関の出力軸の回転に伴って出力を生じるコイルの断線を検知するようにした汎用内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、汎用内燃機関の出力軸の回転に伴って出力を生じる複数個のコイルを備えた汎用内燃機関において、前記複数個のコイルが生じる前記出力を入力し、前記複数個のコイルのそれぞれが前記出力を生じているか否か判断する判断手段と、前記複数個のコイルの一部が前記出力を生じていないと判断されるとき、前記一部のコイルが断線していると判定する判定手段とを備えるように構成した。
【0006】
また、請求項2に係る汎用内燃機関にあっては、前記複数個のコイルの中に機関回転数を示す出力を生じるコイルが含まれるように構成した。
【0007】
また、請求項3に係る汎用内燃機関にあっては、さらに、前記一部のコイルが断線していると判定されたとき、前記汎用内燃機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行する動作実行手段を備えるように構成した。
【0008】
また、請求項4にあっては、汎用内燃機関の出力軸の回転に伴って機関回転数を示す出力を生じる第1のコイルと、前記出力軸の回転に伴って前記汎用内燃機関の点火時期を示す出力を生じる第2のコイルとを備えた汎用内燃機関において、前記第1のコイルと前記第2のコイルが生じる前記出力を入力し、前記第1のコイルと前記第2のコイルのそれぞれが前記出力を生じているか否か判断する判断手段と、前記第2のコイルが前記出力を生じている一方、前記第1のコイルが前記出力を生じていないと判断されるとき、前記第1のコイルが断線していると判定する判定手段とを備えるように構成した。
【0009】
また、請求項5に係る汎用内燃機関にあっては、前記判定手段は、前記第2のコイルが前記出力を所定回数生じる間に前記第1のコイルが前記出力を生じなかったとき、前記第1のコイルが断線していると判定するように構成した。
【0010】
また、請求項6に係る汎用内燃機関にあっては、さらに、前記第1のコイルが断線していると判定されたとき、前記汎用内燃機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行する動作実行手段を備えるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る汎用内燃機関にあっては、複数個のコイルが生じる出力を入力し、複数個のコイルのそれぞれが出力を生じているか否か判断すると共に、複数個のコイルの一部が出力を生じていないと判断されるとき、出力を生じていないコイルが断線していると判定するように構成したので、コイルの断線を検知することができる。
【0012】
また、請求項2に係る汎用内燃機関にあっては、複数個のコイルの中に機関回転数を示す出力を生じるコイルが含まれるように構成したので、機関回転数を示す出力を生じるコイルの断線を検知することができ、機関にオーバーランなどの不具合が発生するのを防止できる。
【0013】
また、請求項3に係る汎用内燃機関にあっては、コイルが断線していると判定されたとき、機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行するように構成したので、オーバーランなどの不具合の発生をより効果的に防止することができる。
【0014】
また、請求項4にあっては、第1のコイルが生じる機関回転数を示す出力と第2のコイルが生じる点火時期を示す出力を入力し、第1のコイルと第2のコイルのそれぞれが出力を生じているか否か判断すると共に、第2のコイルが出力を生じている一方、第1のコイルが出力を生じていないと判断されるとき、第1のコイルが断線していると判定するように構成したので、機関回転数を示す出力を生じる第1のコイルの断線を検知することができ、機関にオーバーランなどの不具合が発生するのを防止できる。
【0015】
また、請求項5に係る汎用内燃機関にあっては、第2のコイルが出力を所定回数生じる間に第1のコイルが出力を生じなかったとき、第1のコイルが断線していると判定するように構成したので、第1のコイルの断線をより精度良く検知することができる。
【0016】
また、請求項6に係る汎用内燃機関にあっては、第1のコイルが断線していると判定されたとき、機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行するように構成したので、オーバーランなどの不具合の発生をより効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に即してこの発明に係る汎用内燃機関を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、この発明の第1実施例に係る汎用内燃機関の全体図である。
【0019】
図1において、符号10は汎用内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は空冷4サイクルの単気筒OHV型エンジン(排気量は例えば400cc)であり、発電機や農業機械など、様々な用途で駆動源として使用される。
【0020】
エンジン10のシリンダ(シリンダブロック)12には、ピストン14が往復動自在に収容される。シリンダ12の上部にはシリンダヘッド16が取り付けられ、シリンダヘッド16にはピストン14の頂部を臨む位置に形成された燃焼室18と、燃焼室18に連通される吸気ポート20および排気ポート22が設けられる。また、シリンダヘッド16には、燃焼室18と吸気ポート20の間を開閉する吸気バルブ24と、燃焼室18と排気ポート22の間を開閉する排気バルブ26とが設けられると共に、エンジン10の温度を示す出力を生じる温度センサ28が設けられる。
【0021】
シリンダ12の下部にはクランクケース30が取り付けられる。クランクケース30にはクランクシャフト(出力軸)32が回転自在に収容される。クランクシャフト32は、コンロッド34を介してピストン14の下部に連結される。
【0022】
クランクシャフト32の一端には、発電機などの図示しない負荷が接続される一方、他端には、フライホイール36と冷却ファン38とリコイルスタータ40とが取り付けられる。
【0023】
フライホイール36は筒型を呈し、その内方にはパワーコイル42(第1のコイル)が配置される。パワーコイル42は、フライホイール36の内周面に取り付けられたマグネット44と共に多極発電機を構成し、クランクシャフト32の回転に同期した出力(エンジン回転数を示す出力。具体的には、クランクシャフト32(フライホイール36)が1回転する間に3周期する交流電流)を生じる。
【0024】
また、フライホイール36の外方にはパルサコイル46(第2のコイル)が配置される。パルサコイル46は、その付近をフライホイール36の外周面に取り付けられたマグネット48が通過するごとにエンジン10の点火時期を示す出力(クランクシャフト32が1回転するごとに1回の出力)を生じる。また、図1で図示は省略するが、フライホイール36の内方にはフューエルカット・ソレノイドバルブ用コイル(以下「FSコイル」という)が配置される。FSコイルも、クランクシャフト32の回転に同期した出力(所定の周波数の交流電流)を出力する。
【0025】
クランクケース30には、さらにカムシャフト50が回転自在に収容される。カムシャフト50は、クランクシャフト32の軸線と平行に配置されると共に、ギヤ機構52を介してクランクシャフト32に連結される。カムシャフト50は吸気側カム54と排気側カム56とを備え、図示しないプッシュロッドとロッカーアーム58,60を介して前記した吸気バルブ24と排気バルブ26を開閉駆動する。
【0026】
また、吸気ポート20には、キャブレタ64が接続される。キャブレタ64は、吸気路66と、モータケース68と、キャブレタ・アシー70とを一体的に備える。吸気路66にはスロットルバルブ72とチョークバルブ74が配置される。また、モータケース68には、スロットルバルブ72を開閉させるスロットル用電動モータ76と、チョークバルブ74を開閉させるチョーク用電動モータ78とが収容される。スロットル用電動モータ76とチョーク用電動モータ78は、具体的にはステッピングモータであり、コイルが巻回されたステータとロータとを備える。スロットル用電動モータ76とチョーク用電動モータ78は、マイクロ・コンピュータからなる電子制御ユニット(以下「ECU」という)80によって動作が制御される。
【0027】
キャブレタ・アシー70は、図示しない燃料タンクに接続されて燃料の供給を受け、スロットルバルブ72とチョークバルブ74の開度に応じた量の燃料を噴射して混合気を生成する。尚、図で符号82はフューエルカット・ソレノイドバルブを示す。フューエルカット・ソレノイドバルブ82は、コイル(後述の図2に示す)に通電されたときに閉弁して燃料タンクからの燃料の供給を遮断し、フューエルカットを行う。
【0028】
キャブレタ64で生成された混合気は吸気ポート20と吸気バルブ24を通って燃焼室18に吸入される。燃焼室18に吸入された混合気は、点火プラグ(後述の図2に示す)によって点火されて燃焼し、よって生じた燃焼ガスは排気バルブ26と排気ポート22と図示しない消音器などを介してエンジン10の外部に排出される。
【0029】
また、操作者によって操作自在な位置には、回転数設定ボリューム84とコンビネーション・スイッチ86が配置される。回転数設定ボリューム84は、操作者の操作に応じて目標エンジン回転数を示す出力を生じる。温度センサ28、パワーコイル42、パルサコイル46および回転数設定ボリューム84の出力は、ECU80に入力される。
【0030】
また、エンジン10は、バッテリ90とスタータモータ92とLED(発光ダイオード)94とを備える。バッテリ90は、コンビネーション・スイッチ86を介してECU80とスタータモータ92に接続され、それらに12Vの直流電流を供給する。LED94は、操作者が目視可能な位置に配置されると共に、ECU80に接続される。
【0031】
図2は、ECU80などの構成を表す説明図である。
【0032】
図2に示すように、ECU80は、整流回路100と、NE(エンジン回転数)検出回路102と、制御回路104とを備える。パワーコイル42の出力は、導電線106を介して整流回路100に入力され、全波整流されるなどして12Vの直流電流に変換される。
【0033】
また、パワーコイル42の出力はNE検出回路102にも入力され、半波整流されるなどしてパルス信号に変換される。NE検出回路102で生成されたパルス信号は、制御回路104に入力される。パワーコイル42が発電する交流電流の周波数はクランクシャフト32の回転数に比例することから、制御回路104は、パワーコイル42の出力から生成されたパルス信号に基づいてエンジン回転数を検出することができる。尚、前述したように、パワーコイル42の出力はクランクシャフト32が1回転する間に3周期する交流電流である。従って、NE検出回路102からは、クランクシャフト32が1回転する間にパルス信号が3回出力される。
【0034】
ECU80は、さらに信号成形回路108と点火回路110とを備える。パルサコイル46の出力は、導電線112を介して信号成形回路108に入力され、そこでクランクシャフト32の回転に同期した点火信号(パルス信号)が生成される。信号成形回路108で生成された点火信号は、点火回路110と制御回路104に入力される。尚、前述したように、パルサコイル46はクランクシャフト32が1回転するごとに1回の出力を生じることから、信号成形回路108からは、クランクシャフト32が1回転するごとにパルス信号が1回出力される。
【0035】
コンビネーション・スイッチ86は、第1のスイッチ86aと第2のスイッチ86bと第3のスイッチ86cとを備える。第1のスイッチ86aは、FSコイル114とフューエルカット・ソレノイドバルブ(具体的にはそのコイル)82を接続する導電線116に配置され、導電線116を流れる電流を導通あるいは遮断させる。第2のスイッチ86bは、導電線118に配置され、導電線118を流れる電流を導通あるいは遮断させる。第3のスイッチ86cは、導電線120に配置され、導電線120を流れる電流を導通あるいは遮断させる。バッテリ90は、導電線120を介し、ECU80に設けられたPNP型のトランジスタ122のエミッタに接続される。トランジスタ122のベースは制御回路104に接続されると共に、コレクタは導電線118に接続される。
【0036】
導電線118は、バッテリ90から供給された、あるいはパワーコイル42の出力から生成された12Vの直流電流をECU80から出力し、第2のスイッチ86bを介してECU80に再入力させる。ECU80に再入力された電流は、制御回路104とDC/DCコンバータ124に入力される。尚、制御回路104には、図示しない回路を介し、バッテリ90から供給された、あるいはパワーコイル42の出力から生成された12Vの直流電流が、5Vの直流電流に変換されて動作電流として供給される。
【0037】
DC/DCコンバータ124に入力された電流は、昇圧されてコンデンサ126に充電される。コンデンサ126は、イグニッション・コイル128の1次コイルに接続される。イグニッション・コイル128の2次コイルには、点火プラグ130が接続される。また、DC/DCコンバータ124とコンデンサ126の途中は、サイリスタ132を介して接地させられる。
【0038】
前記した点火回路110は、信号成形回路108または制御回路104から入力された点火信号に従い、サイリスタ132のゲートに通電する。これにより、コンデンサ126が放電してイグニッション・コイル128の1次コイルに電流が流れ、2次コイルに高電圧が発生して点火プラグ130が火花を生じる。
【0039】
また、制御回路104には、上記した温度センサ28、回転数設定ボリューム84およびLED94が接続される。制御回路104は、温度センサ28、回転数設定ボリューム84およびNE検出回路102の出力に基づいてスロットルバルブ72とチョークバルブ74の目標開度を決定すると共に、決定した目標開度に応じた制御信号をモータドライバ134,136に出力してスロットル用電動モータ76とチョーク用電動モータ78を動作させ、各バルブ72,74を開閉させてエンジン回転数を調節する。また、制御回路104は、各種入力に基づいて点火時期の調節なども行う。
【0040】
また、制御回路104は、パワーコイル42の出力(具体的には、その出力から生成されたエンジン回転数を示すパルス信号)とパルサコイル46の出力(具体的には、その出力から生成された点火信号(パルス信号))を入力し、パワーコイル42とパルサコイル46のそれぞれが出力を生じているか否か判断することで、パワーコイル42の断線を検知する。尚、この動作については後述する。
【0041】
コンビネーション・スイッチ86は、操作者によってスタート・ポジションとオン・ポジションとオフ・ポジションとに操作自在とされる。図2で、コンビネーション・スイッチ86がオフ・ポジションに操作されたときのスイッチ86a,86b,86cを実線で示し、オン・ポジションに操作されたときのそれらを想像線で示す。
【0042】
コンビネーション・スイッチ86がオン・ポジションに操作されると、第1のスイッチ86aがオフされ、フューエルカット・ソレノイドバルブ82への動作電流の供給が遮断される。フューエルカット・ソレノイドバルブ82はノーマルオープン型であり、動電流の供給が遮断されているときはキャブレタ64の燃料噴射を可能とする。一方、第2のスイッチ86bはオンされ、導電線118を流れる電流を導通させる。
【0043】
また、第3のスイッチ86cがオンされ、バッテリ90とトランジスタ122のエミッタの間が導通される。これにより、導電線120(スイッチ86c)、トランジスタ122および導電線118(スイッチ86b)を介し、バッテリ90から点火系(DC/DCコンバータ124やコンデンサ126など)と制御回路104に12Vの直流電流が供給される。また、図示しない回路を介し、バッテリ90から制御回路104に5Vの直流電流(動作電流)が供給される。
【0044】
コンビネーション・スイッチ86がオン・ポジションを超えてスタート・ポジションまで操作されると、第3のスイッチ86cを介し、バッテリ90からスタータモータ92に動作電流が供給される。スタータモータ92は、動作電流が供給されることによって動作し、エンジン10を始動させる。
【0045】
制御回路104は、エンジン回転数などに基づいてエンジン10の始動を検知すると、トランジスタ122をオフしてバッテリ90からの電流の供給を遮断する。これにより、点火系と制御回路104への12Vの直流電流の供給源、および制御回路104への5Vの直流電流(動作電流)の供給源がバッテリ90からパワーコイル42に切り替えられる。
【0046】
尚、コンビネーション・スイッチ86がオン・ポジションにあるときにリコイルスタータ40が操作されると、クランクシャフト32の回転に伴ってパワーコイル42とパルサコイル46が出力を生じ、12Vの直流電流と点火信号が生成される。従って、リコイルスタータ40の手動操作でもECU80(制御回路104)とエンジン10を始動させることができる。
【0047】
一方、コンビネーション・スイッチ86がオフ・ポジションに操作されると、第2のスイッチ86bがオフされ、導電線118を流れる12Vの直流電流が遮断される。制御回路104は、導電線118を介して入力される電流が遮断されたとき、点火カットを行ってエンジン10を停止させる。また、第1のスイッチ86aがオンしてFSコイル114とフューエルカット・ソレノイドバルブ82の間が導通される。点火カットを行ってもクランクシャフト32の回転は直ちには停止しないため、FSコイル114の発電は継続される。そのため、コンビネーション・スイッチ86がオフ・ポジションに操作された後、所定期間、フューエルカット・ソレノイドバルブ82はFSコイル114から動作電流の供給を受けて閉弁する。これにより、点火カットと同時にフューエルカットが実行される。
【0048】
次いで、ECU80の制御回路104で実行される、パワーコイル42の断線検知処理について説明する。図3は、その処理を表すフローチャートである。
【0049】
以下説明すると、先ずS10でパルサコイル46が出力を生じているか(パルサコイル46からの入力があるか)否か判断する。尚、S10の判断は、パルサコイル46の出力から生成された点火信号(パルス信号)、即ち、信号成形回路108の出力の有無を確認することによって行われる。以下、パルサコイル46の出力とは、信号成形回路108で生成されたパルス信号を意味するものとする。
【0050】
S10で否定されるときは再度S10の処理を実行する一方、S10で肯定されるときはS12に進んでパワーコイル42の出力の計測を開始する。尚、計測されるパワーコイル42の出力とは、具体的には、パワーコイル42の出力から生成されたパルス信号、即ち、NE検出回路102の出力である。以下、パワーコイル42の出力とは、NE検出回路102で生成されたパルス信号を意味するものとする。
【0051】
次いでS14に進み、S10と同様にパルサコイル46が出力を生じたか(パルサコイル46からの入力があったか)否か判断する。S14で否定されるときはS12の処理に戻ってパワーコイル42の出力の計測を続行する一方、S14で肯定されるときはS16に進み、パワーコイル42が出力を生じているか否か判断する。S16の判断は、S12の処理でパワーコイル42の出力が計測されたか否か判断することで行われる。
【0052】
図4および図5は、パワーコイル42の出力とパルサコイル46の出力を示すタイム・チャートである。
【0053】
パワーコイル42とパルサコイル46が共に断線していなければ、図4に示すように、パルサコイル46が出力を生じてから次回の出力を生じるまでの間(即ち、クランクシャフト32が1回転するまでの間)にパワーコイル42から3回の出力が生じる。この場合、図3フローチャートのS16で肯定されてS18に進み、パワーコイル42が正常であると判定すると共に、S20に進んで異常判定カウンタ(後述)の値をリセットし、S12の処理に戻る。
【0054】
他方、パワーコイル42が断線している場合、図5に示すように、パワーコイル42からは出力が生じない。そこで、図3フローチャートのS16で否定されるとき(パワーコイル42が出力を生じていないとき)は、パワーコイル42の出力が異常であると判定してS22に進み、パワーコイル42の異常判定カウンタの値(初期値0)を1つインクリメントする。
【0055】
次いでS24に進み、パワーコイル42の異常判定が所定回数(例えば10回)連続したか、具体的には、異常判定カウンタの値が所定値(10)に達したか否か判断する。S24で否定されるときはS12の処理に戻る一方、S24で肯定されるときはS26に進み、パワーコイル42が断線していると判定(確定)する。即ち、パルサコイル46が所定回数出力を生じる間にパワーコイル42が出力を1度も生じなかった場合に、パワーコイル42が断線していると判定する。尚、異常判定が所定回数連続したときにパワーコイル42の断線と判定するのは、クランクシャフト32が逆転(エンジン10の始動時や停止時に起こる圧縮力不足による逆転)した際に生じる各コイルの出力タイミングのずれに起因する断線検知の誤判定を防止するためである。
【0056】
パワーコイル42が出力を生じていないとき、即ち、パワーコイル42の断線が検知されたときは、操作者への報知動作とエンジン10の停止動作を行う。具体的には、S28でLED94を点灯させて(より詳しくは、所定回数(例えば6回)点滅させて)パワーコイル42が断線していることを操作者に報知した後、S30で点火カットを行って(点火回路110に点火カット信号を送って)エンジン10を停止させる。
【0057】
このように、この発明の第1実施例に係る汎用内燃機関にあっては、エンジン10のクランクシャフト32の回転に伴って出力を生じる複数個(具体的には2個)のコイル(パワーコイル42とパルサコイル46)の出力をECU80に入力し、複数個のコイルのそれぞれが出力を生じているか否か判断すると共に、複数個のコイルの一部が出力を生じていないと判断されるとき、出力を生じていないコイルが断線していると判定するように構成したので、コイルの断線を検知することができる。
【0058】
具体的には、パワーコイル42が生じる機関回転数を示す出力とパルサコイル46が生じる点火時期を示す出力を入力し、パワーコイル42とパルサコイル46のそれぞれが出力を生じているか否か判断すると共に、パルサコイル46が出力を生じている一方、パワーコイル42が出力を生じていないと判断されるとき、パワーコイル42が断線していると判定するように構成したので、パワーコイル42の断線を検知することができ、エンジン10にオーバーランなどの不具合が発生するのを防止できる。
【0059】
また、パルサコイル46が出力を所定回数生じる間にパワーコイル42が出力を生じなかったとき(異常判定が所定回数連続したとき)、パワーコイル42が断線していると判定するように構成したので、パワーコイル42の断線をより精度良く検知することができる。
【0060】
また、パワーコイル42が断線していると判定されたとき、操作者への報知動作とエンジン10の停止動作を実行するように構成したので、オーバーランなどの不具合の発生をより効果的に防止することができる。
【0061】
尚、パルサコイル46の断線を検知しないのは、パルサコイル46が断線すれば点火信号が生成されずにエンジン10が停止するため、オーバーランなどの不具合が発生するおそれがないためである。
【0062】
また、パワーコイル42が断線していると判定されたとき、操作者への報知動作とエンジン10の停止動作を実行するようにしたが、いずれか一方のみ行うようにしてもよい。
【0063】
以上の如く、この発明の第1実施例にあっては、汎用内燃機関(エンジン10)の出力軸(クランクシャフト32)の回転に伴って出力を生じる複数個(2個)のコイル(パワーコイル42、パルサコイル46)を備えた汎用内燃機関において、前記複数個のコイルが生じる前記出力を入力し、前記複数個のコイルのそれぞれが前記出力を生じているか否か判断する判断手段(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS14,S16)と、前記複数個のコイルの一部(パワーコイル42)が前記出力を生じていないと判断されるとき、前記一部のコイルが断線していると判定する判定手段(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS26)とを備えるように構成した。
【0064】
これにより、コイルの断線を検知することができる。
【0065】
また、前記複数個のコイルの中に機関回転数を示す出力を生じるコイル(パワーコイル42)が含まれるように構成した。
【0066】
これにより、機関にオーバーランなどの不具合が発生するのを防止できる。
【0067】
さらに、前記一部のコイルが断線していると判定されたとき、前記汎用内燃機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行する動作実行手段(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS28,S30)を備えるように構成した。
【0068】
これにより、オーバーランなどの不具合の発生をより効果的に防止することができる。
【0069】
より詳しくは、汎用内燃機関(エンジン10)の出力軸(クランクシャフト32)の回転に伴って機関回転数を示す出力を生じる第1のコイル(パワーコイル42)と、前記出力軸の回転に伴って前記汎用内燃機関の点火時期を示す出力を生じる第2のコイル(パルサコイル46)とを備えた汎用内燃機関において、前記第1のコイルと前記第2のコイルが生じる前記出力を入力し、前記第1のコイルと前記第2のコイルのそれぞれが前記出力を生じているか否か判断する判断手段(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS14,S16)と、前記第2のコイルが前記出力を生じている一方、前記第1のコイルが前記出力を生じていないと判断されるとき、前記第1のコイルが断線していると判定する判定手段(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS26)とを備えるように構成した。
【0070】
これにより、機関回転数を示す出力を生じる第1のコイルの断線を検知することができ、機関にオーバーランなどの不具合が発生するのを防止できる。
【0071】
また、前記判定手段は、前記第2のコイルが前記出力を所定回数生じる間に前記第1のコイルが前記出力を生じなかったとき、前記第1のコイルが断線していると判定する(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS24,S26)ように構成した。
【0072】
これにより、第1のコイルの断線をより精度良く検知することができる。
【0073】
さらに、前記第1のコイルが断線していると判定されたとき、前記汎用内燃機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行する動作実行手段(ECU80、制御回路104、図3フローチャートのS28,S30)を備えるように構成した。
【0074】
これにより、オーバーランなどの不具合の発生をより効果的に防止することができる。
【0075】
尚、上記において、パワーコイル42の断線を検知するようにしたが、同様な手法でパルサコイル46の断線を検知してもよい。また、FSコイル114の出力を制御回路104に入力し、FSコイルの断線を検知するようにしてもよい。
【0076】
また、パワーコイル42の断線をLED94を点灯させることによって操作者に報知するようにしたが、他の表示装置や音声を使用して報知してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の第1実施例に係る汎用内燃機関の全体図である。
【図2】図1に示す電子制御ユニットなどの構成を表す説明図である。
【図3】図2に示す電子制御ユニット(制御回路)で実行される、パワーコイルの断線検知処理を表すフローチャートである。
【図4】図2に示すパワーコイルの出力(NE検出回路で生成されたパルス信号)とパルサコイルの出力(信号成形回路で生成されたパルス信号)を表すタイム・チャートである。
【図5】図2に示すパワーコイルの出力とパルサコイルの出力を表す、図4と同様なタイム・チャートである。
【符号の説明】
【0078】
10:汎用内燃機関(エンジン)、32:クランクシャフト(出力軸)、42:パワーコイル(コイル、機関回転数を示す出力を生じるコイル、第1のコイル)、46:パルサコイル(コイル、第2のコイル)、80:ECU(判断手段、判定手段、動作実行手段)、104:制御回路(判断手段、判定手段、動作実行手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用内燃機関の出力軸の回転に伴って出力を生じる複数個のコイルを備えた汎用内燃機関において、前記複数個のコイルが生じる前記出力を入力し、前記複数個のコイルのそれぞれが前記出力を生じているか否か判断する判断手段と、前記複数個のコイルの一部が前記出力を生じていないと判断されるとき、前記一部のコイルが断線していると判定する判定手段とを備えることを特徴とする汎用内燃機関。
【請求項2】
前記複数個のコイルの中に機関回転数を示す出力を生じるコイルが含まれることを特徴とする請求項1記載の汎用内燃機関。
【請求項3】
さらに、前記一部のコイルが断線していると判定されたとき、前記汎用内燃機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行する動作実行手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の汎用内燃機関。
【請求項4】
汎用内燃機関の出力軸の回転に伴って機関回転数を示す出力を生じる第1のコイルと、前記出力軸の回転に伴って前記汎用内燃機関の点火時期を示す出力を生じる第2のコイルとを備えた汎用内燃機関において、前記第1のコイルと前記第2のコイルが生じる前記出力を入力し、前記第1のコイルと前記第2のコイルのそれぞれが前記出力を生じているか否か判断する判断手段と、前記第2のコイルが前記出力を生じている一方、前記第1のコイルが前記出力を生じていないと判断されるとき、前記第1のコイルが断線していると判定する判定手段とを備えることを特徴とする汎用内燃機関。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第2のコイルが前記出力を所定回数生じる間に前記第1のコイルが前記出力を生じなかったとき、前記第1のコイルが断線していると判定することを特徴とする請求項4記載の汎用内燃機関。
【請求項6】
さらに、前記第1のコイルが断線していると判定されたとき、前記汎用内燃機関の停止動作および操作者への報知動作の少なくともいずれかを実行する動作実行手段を備えることを特徴とする請求項4または5記載の汎用内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−23839(P2007−23839A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204865(P2005−204865)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】