説明

液状半導体封止剤、及びこれを用いて封止した半導体装置

【課題】信頼性の高い半導体装置を得ることのできる液状半導体封止剤、さらには信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、及び(C)ケチミン構造を含有する化合物を含み、(C)成分が0.01〜10重量%である、液状半導体封止剤。さらに(D)硬化促進剤を含有する。(B)成分が酸無水物系硬化剤であり、(D)成分がアミン系硬化促進剤である液状半導体封止剤。該液状半導体封止剤を使用して封止された半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状半導体封止剤、特にチップオンフィルム(COF)実装用封止剤、及びこの封止剤を用いて封止した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の基板材料は、従来のリジッドなガラス布−エポキシ基板等から、フレキシブルなフィルム基板へ移行しており、フィルム基板を使用した場合の実装方式として、COF実装が盛んに採用されている。COF実装は、一般に、フィルム基板上の導体配線に、半導体チップの電極のAuバンプを接続し、その後、フィルム基板と半導体チップとの隙間に封止剤を流し込み、硬化させることにより行なわれる。
【0003】
一方、フィルム基板上の導体配線は、半導体装置における多出力化に対応すべく、ファインピッチ化が進んでおり、また導体配線に負荷される電圧は高くなってきている。しかしながら、高圧化・ファインピッチ化は同時に、導体配線のマイグレーションを発生させやすくする、という問題があった。マイグレーションは、高湿度下で、向かい合う導体配線に電圧が印加された場合、電気化学反応により導体配線の金属がイオン化して溶出し、本来、配線が存在しない場所に析出する現象であり、導体配線間の短絡につながる。
【0004】
導体配線のマイグレーションを防ぐために、半導体封止剤に金属イオン結合剤を配合する技術が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、耐マイグレーション性については一層の改善が求められていた。
【特許文献1】特開2005−333085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、導体配線のマイグレーションを抑制し、信頼性の高い半導体装置を得ることのできる液状半導体封止剤、特にCOF実装用封止剤、さらには信頼性の高い半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、液状半導体封止剤にケチミン構造を含む化合物を配合することが、液状半導体封止剤で封止された半導体装置において導体配線のマイグレーションの防止に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)ケチミン構造を含有する化合物を含み、(C)成分が0.01〜10重量%である、液状半導体封止剤に関する。本明細書において、液状とは、10〜35℃で流動性を有することをいう。
【0008】
液状半導体封止剤に(C)成分を特定量で配合することにより、液状半導体封止剤の硬化性や硬化後の耐熱性に影響を与えることなく、液状半導体封止剤で封止された半導体装置において導体配線のマイグレーションを効果的に防止することができる。
【0009】
さらに、本発明は、上記のいずれかの液状半導体封止剤を使用して封止された半導体装置、特に液晶表示体駆動用の半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液状半導体封止剤によれば、導体配線のマイグレーションの抑制に優れ、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)エポキシ樹脂
(A)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基をするエポキシ化合物であれば、特に限定されない。エポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであっても、他の液状のエポキシ樹脂又は希釈剤により希釈し、液状を示すようにして用いることができる。
【0012】
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エーテル系又はポリエーテル系エポキシ樹脂、オキシラン環含有ポリブタジエン、シリコーンエポキシコポリマー樹脂等が例示される。
【0013】
特に、液状であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p−グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4−シクロヘキセン)ジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)5,1−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−m−ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3−ジグリシジル−5−メチル−5−エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。
【0014】
常温で固体ないし超高粘性のエポキシ樹脂を併用することも可能であり、そのようなエポキシ樹脂として、高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が例示される。これらは、常温で液体であるエポキシ樹脂及び/又は希釈剤と組み合わせて、流動性を調節して使用することができる。
【0015】
常温で固体ないし超高粘性であるエポキシ樹脂を用いる場合、低粘度のエポキシ樹脂、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等と組み合わせることが好ましい。
【0016】
希釈剤を用いる場合、非反応性希釈剤及び反応性希釈剤のいずれをも使用することができるが、反応性希釈剤が好ましい。本明細書において、反応性希釈剤は、1個のエポキシ基を有する、常温で比較的低粘度の化合物をいうこととし、目的に応じて、エポキシ基以外に、他の重合性官能基、たとえばビニル、アリル等のアルケニル基;又はアクリロイル、メタクリロイル等の不飽和カルボン酸残基を有していてもよい。このような反応性希釈剤としては、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−s−ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、α−ピネンオキシドのようなモノエポキシド化合物;アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジル、1−ビニル−3,4−エポキシシクロヘキサンのような他の官能基を有するモノエポキシド化合物等が例示される。
【0017】
エポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂自体が、常温で液状であることが好ましい。中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ、液状アミノフェノール型エポキシ、シリコーン変性エポキシ、ナフタレン型エポキシである。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンである。
【0018】
(B)硬化剤
(B)成分は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、フェノール樹脂、酸無水物系硬化剤、芳香族アミン類、イミダゾ−ル類等が挙げられる。
【0019】
良好な反応性が得られ、また液状半導体封止剤にしたときに適切な粘度に調整しやすい点から、酸無水物系硬化剤が好ましく、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が例示される。中でも、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、ジエチルグルタル酸無水物から選ばれる酸無水物が好ましい。
【0020】
硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0021】
(C)成分
(C)成分は、ケチミン構造を含有する化合物である。具体的には、式(1):
【0022】
【表3】

【0023】
(ここで、
及びRは、それぞれ独立して、C1〜6アルキルであり、
は、C1〜6アルキレンであり、
は、それぞれ独立して、水素又はメチルであり、好ましくは水素であり、
は、それぞれ独立して、メチル又はエチルであり、好ましくはメチルであり、
nは、0〜2の整数であり、好ましくは0である)で示されるケチミン化合物又はその加水分解縮合物が挙げられる。
【0024】
及びRについてのC1〜6アルキルは、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられる。R及びRは、好ましくは、C1〜4アルキルであり、特にR及びRの一方がブチル、とりわけイソブチルであり、他方がメチルであることが好ましい。
【0025】
についてのC1〜6アルキレンは、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メチレン、エチレン、エチリデン、トリメチレン、プロピレン、プロピリデン等が挙げられる。Rは、好ましくは、トリメチレンである。
【0026】
式(1)で示されるケチミン化合物の例としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロピルアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−(トリメトキシシリル)−1−プロピルアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、並びにそれらの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0027】
また、(C)成分としては、ポリオキシアルキレンジアミンとケトン化合物との反応で得られるケチミン化合物も挙げられる。
【0028】
ポリオキシアルキレンジアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等が挙げられる。中でも、ポリオキシプロピレンジアミンが好ましい。ポリオキシアルキレンジアミンは、オキシアルキレン単位数1〜12のものを使用することができ、例えばポリオキシプロピレンジアミン(オキシプロピレン単位数1〜10)が挙げられる。
【0029】
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、フェニルメチルケトン、メチルヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、アセトフェノン、ケトン樹脂等が挙げられる。中でも、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンが好ましい。
【0030】
上記ポリオキシアルキレンジアミン及びケトン化合物の反応の条件は、特に限定されないが、通常、ポリオキシアルキレンジアミン1モルに対して、ケトン化合物2モル以上となる量で、第三級アミン類、スルホン酸類等の触媒の存在下で、場合により溶媒中で行うことができる。
【0031】
具体的には、式(2):
【0032】
【表4】

【0033】
(ここで
11、R12、R15及びR16は、それぞれ独立して、C1〜6アルキルであり、
13及びR14は、それぞれ独立して、C2〜4アルキレンであり、好ましくはR13及びR14は、同一であり、
mは、1〜12の整数であり、好ましくは1〜10の整数である)で示されるケチミン化合物が挙げられる。
【0034】
11、R12、R15及びR16についてのC1〜6アルキルは、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル等が挙げられる。R11、R12、R15及びR16は、好ましくは、C1〜4アルキルであり、特にR11及びR15が同一であり、R12及びR16が同一であることが好ましい。
【0035】
13及びR14についてのC2〜4アルキレンは、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、(C)成分は、単独でも、2種以上併用してもよく、液状半導体封止剤の全量中、0.01〜10重量%となるように配合する。このような配合量とすることにより、封止剤としての適切な粘度、硬化性を保ちつつ、導体配線のマイグレーションを抑制することができる。(C)成分の好ましい配合量は、0.05〜6.0重量%であり、マイグレーション抑制及び保存中の粘度変化抑制の点からは、0.5〜5.5重量%であることが特に好ましい。
【0037】
(A)成分と(B)成分の配合割合は、特に限定されず、(A)成分のエポキシ基1当量に対して、(B)成分の硬化剤が0.3〜1.5当量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.9当量である。
【0038】
(D)硬化促進剤
本発明の液状半導体封止剤は、適切な硬化性を得るために、(D)硬化促進剤を配合することができる。(D)成分は、エポキシ樹脂の硬化促進剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤等が挙げられる。
【0039】
アミン系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン等のトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。中でも、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが好ましい。また、リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂等でアダクトされたアダクト型であっても、マイクロカプセル型であってもよい。
【0040】
(B)成分として酸無水物系硬化剤を使用する場合には、硬化性、保存安定性の点から、(D)成分として、アミン系硬化促進剤を使用することが好ましい。
【0041】
(D)成分の配合量は、液状半導体封止剤の全量中、3.0重量%以下であることが好ましく、配合による効果を効率的に得るためには、例えば、0.5〜2.5重量%とすることができる。
【0042】
本発明の液状半導体封止剤は、(E)無機充填剤を、熱膨張係数を低下させるために、含有することができる。(E)成分としては、例えば、非非晶質シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、チッ化アルミニウム、チッ化ケイ素等が挙げられる。低粘度化の観点からは、中でも真球状の非晶質シリカが望ましい。(E)成分は、シランカップリング剤等で表面処理が施されたものであってもよいが、表面処理が施されていなくもよい。これら無機充填剤の平均粒径は0.1〜20μmで、最大粒径が50μm以下、特に20μm以下のものが好ましい。平均粒径が、この範囲にあると粘度が高くなりすぎることもなく、また、半導体チップとフィルム基板への注入性も適切である。(E)成分の配合量は液状半導体封止剤の全量中、75重量%以下であることが好ましく、配合による効果を効率的に得るためには、例えば5〜60重量%とすることができ、流動性の点から5〜50重量%が好ましい。
【0043】
本発明の液状半導体封止剤には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、着色剤(例えば、カーボンブラック、染料等)、難燃剤、イオントラップ剤、消泡剤、レべリング剤等を含有させてもよい。また、基板への接着性を向上させるために、3−グリシドキシプロプルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等のシランカップリング剤を含有させてもよい。
【0044】
本発明の液状半導体封止剤は、粘度(25℃、E型粘度計、回転数10rpm)が、約100〜20000mPa・sであることが、封止における浸入性等の点から好ましい。
【0045】
本発明の液状半導体封止剤の製造方法は、特に限定されず、各成分を、所定の配合で、流星型攪拌機、ディソルバー、ビーズミル、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合して、製造することができる。
【0046】
本発明の液状半導体封止剤は、COF実装用封止剤として有用であり、例えば、フィルム基板上に半導体チップを搭載し、半導体チップと基板との隙間にディスペンサ等を用いて、横から注入し、硬化させて封止することができる。注入は、25〜130℃の温度範囲で行うことができる。
【0047】
硬化の条件は、幅広く変更させることができる。例えば、本硬化は、120〜170℃程度の温度で行うことができるが、硬化するのであれば、この硬化温度には限られず、より低温(例えば、65℃以上)でもよい。
【0048】
本発明の液状半導体封止剤で封止された半導体装置は、表示体駆動用、特に液晶表示体駆動用の半導体装置として適しており、液晶表示モジュールに使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。表示は、断りのない限り、重量部である。
【0050】
下記表1に示す成分を、三本ロールミルを用いて混合し、均一にした後、その後、真空脱泡機を用いて樹脂中の気泡を除くことにより実施例及び比較例の液状半導体封止剤を得た。
【0051】
【表5】

【0052】
エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165)
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180)
酸無水物系硬化剤:3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
アミン系硬化促進剤:2−フェニル−4−メチルイミダゾール
シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ケチミン化合物1:ポリオキシプロピレンジアミン(ポリオキシプロピレン単位数1〜10)とメチルイソブチルケトンとの反応生成物
ケチミン化合物2:N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン
【0053】
実施例1〜2及び比較例1〜2の液状半導体封止剤について、耐イオンマイグレーション性の効果を確認するため高温高湿バイアス試験(THB試験)を実施した。試験方法は、以下のとおりである。スズメッキ(0.2±0.05μm)された銅配線(パターン幅15μm、線間幅15μm、パターンピッチ30μm)を持つポリイミドテープ基材上(図1)に、実施例1〜2及び比較例1〜2の液状半導体封止剤を20μm厚みで塗布し、150℃で30分間処理し、封止剤を硬化させて試験片を作製した。この試験片についてイオンマイグレーション評価システム(ESPEC社製)を用いて、85℃/湿度85%の条件下で、DC40Vの電圧を印加したときの抵抗値の変化を測定し、銅配線のマイグレーションを評価した。結果を図2−1〜2−4に示す。
【0054】
実施例1、3及び比較例1の液状半導体封止剤については、以下の物性値の測定を行った。結果を表1に示す。
粘度は、液状半導体封止剤の調整直後にEMD型粘度計(トキメック社製、機器名:TV-22、回転数10rpm)を用いて25℃で測定した値である。
増粘倍率は、密閉容器中にて25℃、湿度50%の環境にて24時間保管した後の粘度をEMD型粘度計にて同条件での測定を行い、測定値を記式に代入して求めたものである。
増粘倍率=(24時間経時後の粘度)/(経時前の粘度)
ゲルタイムは、150℃の熱板上に、液状半導体封止剤5mg±1mgを供給し、攪拌棒によって円を描くようにして攪拌し、供給時から、攪拌しながら攪拌棒を持ち上げて引き離した場合に糸引きが5mm以下となるまでの時間である。
体積抵抗率は、約0.35mmの膜厚の硬化物を作製し(硬化条件:150度、30分)、絶縁計で測定(1分値・500V)し算出した値である。初期値と、プレッシャークッカー試験(条件:121℃、2気圧、飽和、20時間)後の値を測定し、算出を行った。
【0055】
ケチミン化合物を配合した液状半導体封止剤は、実施例1〜2から、試験片の抵抗値が変化せず、銅配線のマイグレーションが抑制されていることがわかった(図2−3、2−4)。また、実施例1、3から、硬化物自体としても抵抗値が良好で、かつ液状半導体封止剤として適切な粘度を有し、硬化性においても優れていることがわかった。一方、ケチミン化合物を配合していない比較例1及びケチミン化合物に代えてベンゾトリアゾールを配合した比較例2では、試験片の抵抗値が低下し、銅配線のマイグレーションが生じていることがわかった。特に、比較例1は、硬化物自体の抵抗値は良好であるが、マイグレーションの抑制に劣ることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】高温高湿バイアス試験に使用したスズメッキされた銅配線を持つポリイミドテープ基材の模式図である。
【図2−1】比較例1についての高温高湿バイアス試験の結果を示すグラフである。
【図2−2】比較例2についての高温高湿バイアス試験の結果を示すグラフである。
【図2−3】実施例1についての高温高湿バイアス試験の結果を示すグラフである。
【図2−4】実施例2についての高温高湿バイアス試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)ケチミン構造を含有する化合物を含み、(C)成分が0.01〜10重量%である、液状半導体封止剤。
【請求項2】
さらに(D)硬化促進剤を含有する、液状半導体封止剤。
【請求項3】
(B)成分が酸無水物系硬化剤であり、(D)成分がアミン系硬化促進剤である、請求項2記載の液状半導体封止剤。
【請求項4】
(C)成分が、式(1):
【表1】


(ここで、R及びRは、それぞれ独立して、C1〜6アルキルであり、
は、C1〜6アルキレンであり、
は、それぞれ独立して、水素又はメチルであり、
は、それぞれ独立して、メチル又はエチルであり、
nは、0〜2の整数である)で示されるケチミン化合物又はその加水分解縮合物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の液状半導体封止剤。
【請求項5】
(C)成分が、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロピルアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−(トリメトキシシリル)−1−プロピルアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、並びにそれらの加水分解縮合物からなる群より選択される1種以上である、請求項4記載の液状半導体封止剤。
【請求項6】
(C)成分が、ポリオキシアルキレンジアミンとケトン化合物との反応で得られるケチミン化合物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の液状半導体封止剤。
【請求項7】
(C)成分が、式(2):
【表2】


(ここで
11、R12、R15及びR16は、それぞれ独立して、C1〜6アルキルであり、
13及びR14は、それぞれ独立して、C2〜4アルキレンであり、
mは、1〜12の整数である)で示されるケチミン化合物である、請求項6記載の液状半導体封止剤。
【請求項8】
さらに、(E)無機充填剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の液状半導体封止剤。
【請求項9】
COF実装用である、請求項1〜8のいずれか1項記載の液状半導体封止剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに1項記載の液状半導体封止剤を使用して封止された半導体装置。
【請求項11】
液晶表示体駆動用の請求項10記載の半導体装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【公開番号】特開2008−248099(P2008−248099A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91376(P2007−91376)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】