説明

無段変速機の変速制御装置およびその変速制御方法

【課題】変速ショックを低減し、かつ、加速応答性を向上させることが可能な無段変速機の変速制御装置および無段変速機の変速制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジン出力トルクを駆動輪に伝達する無段変速機の変速制御装置において、ECU50は、アクセルONを検出した場合に、回転慣性による損失トルクを推定し、推定した回転慣性による損失トルクTlossを補償するエンジン補償トルク制御を開始し、また、エンジン出力トルクTegが推定した回転慣性による損失トルクTlossよりも大きくなった場合に、無段変速機30(油圧制御装置40)に変速開始を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機の変速制御装置および変速制御方法に関し、詳細には、無段変速機の変速ショックを低減することが可能な無段変速機の変速制御装置および変速制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機や、トロイダル型無段変速機に代表される無段変速機は、例えばエンジン要求負荷および車速から目標変速比を求め、実変速比がこの目標変速比になるように変速制御する。従って、例えば運転者がアクセルペダルを踏み込んで、エンジン要求負荷を増すような加速時や、駆動力不足で車速が低下するような車速低下時は、目標変速比が大きくなる(低速側の変速比になる)よう変更され、無段変速機は当該大きくされた目標変速比へダウンシフト変速される。
【0003】
このような変速は、変速比が変わることにともなってエンジン回転数(エンジン回転イナーシャ)の変化を生じさせ、エンジン回転数を上昇させるダウンシフト変速時は、エンジントルクが負のイナーシャトルク(回転慣性による損失トルク)分だけ低下されることによる、トルクの引き込み感を伴った変速ショックを生ずる。
【0004】
かかる変速ショックを緩和するために、例えば、特許文献1では、無段変速機の変速比変化速度から、変速にともなうイナーシャトルクを演算し、該イナーシャトルクが相殺されるように、エンジンの出力トルクを修正する無段変速機搭載車の変速ショック軽減装置を提案されている。
【0005】
しかしながら、同文献では、イナーシャトルク分をエンジン補正トルクで相殺するものであるが、変速とエンジントルク補正のタイミングの関係については何ら言及されていない。実エンジントルクが十分出ていない状態で変速を開始した場合には、車両加速度が落ち込み、加速応答性が悪化するという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−20512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、変速ショックを低減し、かつ、加速応答性を向上させることが可能な無段変速機の変速制御装置および無段変速機の変速制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、エンジン出力トルクを駆動輪に伝達する無段変速機の変速制御装置において、アクセル状態を検出する検出手段と、前記検出手段でアクセルONを検出した場合に、回転慣性による損失トルクを推定する損失トルク推定手段と、前記損失トルク推定手段で推定した損失トルクを補償するエンジン補償トルク制御を開始するエンジントルク制御手段と、前記エンジン出力トルクが前記推定した損失トルクよりも大きくなった場合に、前記無段変速機に変速開始を指示する変速制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記エンジントルク制御手段は、前記無段変速機の変速が終了した場合には、前記エンジン補償トルク制御を停止することが望ましい。
【0010】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、エンジン出力トルクを駆動輪に伝達する無段変速機の変速制御方法において、アクセル状態を検出する検出工程と、前記検出工程でアクセルONを検出した場合に、回転慣性による損失トルクを推定する損失トルク推定工程、前記推定した損失トルクを補償するエンジン補償トルク制御を開始するエンジントルク制御工程と、前記エンジン出力トルクが損失トルクよりも大きくなった場合に、前記無段変速機に変速開始を指示する変速制御工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジン出力トルクを駆動輪に伝達する無段変速機の変速制御装置において、アクセル状態を検出する検出手段と、前記検出手段でアクセルONを検出した場合に、回転慣性による損失トルクを推定する損失トルク推定手段と、前記損失トルク推定手段で推定した損失トルクを補償するエンジン補償トルク制御を開始するエンジントルク制御手段と、前記エンジン出力トルクが前記推定した損失トルクよりも大きくなった場合に、前記無段変速機に変速開始を指示する変速制御手段と、を備えているので、アクセルがONされた場合には、エンジン補償トルク制御を行って、目標エンジントルクを増大させて回転慣性による損失トルクを相殺することにより、回転慣性による損失トルクに起因する変速ショックを軽減することができ、また、エンジン出力トルク>回転慣性による損失トルクとなった場合に変速を開始し、エンジン出力トルクが十分な状態で変速を行っているので、加速応答性を向上させることが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係る無段変速機の変速制御装置および変速制御方法を適用した車両のパワートレーンおよびその制御系の概略構成図を示している。図1に示すように、内燃機関としてのエンジン10には、トルクコンバータ20を介して無段変速機(CVT)30が連結されている。エンジン10のエンジン出力トルク(駆動力)は、トルクコンバータ20を介して無段変速機30に入力され、デファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して駆動輪90に伝達される。
【0014】
無段変速機30は、公知のベルト式無段変速機で構成されており、エンジン側に設けられ、トルクコンバータ20の出力軸70に連結したプライマリプーリ31と、デファレンシャルギヤに接続される出力軸80に連結したセカンダリプーリ32と、これらの間に掛け渡されたベルト33とを備えている。油圧制御装置40は、ECU50から入力される変速比変更指令に応じて、無段変速機30の変速比を変更する。この油圧制御装置40は、プライマリプーリ側アクチュエータへの変速圧、及びセカンダリプーリ側アクチュエータへのライン圧を調整することにより、プーリ比を変化させて、変速比を無段階に変化させることができる。
【0015】
また、無段変速機30には、プライマリプーリ31の回転数(プライマリ回転数)Npriを検出するプライマリプーリ回転センサ34と、セカンダリプーリ32の回転数(セカンダリ回転数)Nsecを検出するセカンダリプーリ回転センサ35が設けられており、検出されたプライマリ回転数Npriおよびセカンダリ回転数Nsecは、ECU50に出力される。
【0016】
トルクコンバータ20は、無段変速機30とエンジン10とを接続しており、公知のロックアップ機構が備えられており、結合及び開放が可能な動力断続手段であるロックアップクラッチ付きのトルクコンバータとなっている。このロックアップクラッチは、エンジン10と無段変速機30との結合(ロックアップ状態)または開放(コンバータ状態)を行う。また、トルクコンバータ20の入力軸60には、この入力軸60の回転数を検出する回転センサ21が設けられており、検出された入力軸回転数NtcがECU50に出力される。
【0017】
また、車両には、エンジン10や無段変速機30などを制御するECU(電子制御ユニット)50が設けられており、このECU50はエンジン10、トルクコンバータ20、及び無段変速機30(油圧制御装置40)の総合的な制御を行う。ECU50は、入出力装置、制御マップや制御プログラムなどを記憶する記憶手段(ROM、RAM等)、CPU(中央処理装置)、A/D変換器、D/A変換器、および通信ドライバ回路等で構成されている。ECU50は、CPUで制御プログラムを実行することにより、損失トルク推定手段、エンジントルク制御手段、および変速制御手段として機能する。
【0018】
さらに、車両には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ11が設けられており、検出したアクセル開度はECU50に出力される。エンジン10の吸気管12には電子スロットルバルブ13が設けられており、この電子スロットルバルブ13はスロットルアクチュエータ14により開閉可能となっている。ECU50はこのスロットルアクチュエータ14により電子スロットルバルブ13を駆動し、スロットル開度がアクセル開度に応じたものとなるように制御する。この電子スロットルバルブ13の全閉状態(アイドル状態)及びスロットル開度を検出するアイドルスイッチ付スロットルポジションセンサ15が設けられており、検出したアイドル信号及びスロットル開度はECU50に出力される。
【0019】
吸気管12には、電子スロットルバルブ13の上流側には吸入空気量を検出するエアフローセンサ16が設けられており、検出した吸入空気量はECU50に出力される。さらに、エンジン10には、エンジン回転数(エンジン回転速度)を検出するエンジン回転数センサ17が設けられると共に、燃焼圧を検出する燃焼圧センサ18が設けられており、検出したエンジン回転数や燃焼圧はECU50に出力される。
【0020】
また、車両には、車両の走行速度を検出する車速センサ51が設けられていると共に、運転者が操作するシフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサ52が設けられており、検出した車速やシフトポジションはECU50に出力される。
【0021】
上記ECU50は、エンジン回転数、吸入空気量、スロットル開度などのエンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタや点火プラグなどを制御する。また、ECU50は、変速マップを有しており、スロットル開度、車速などに基づいて、無段変速機30の変速比を決定し、この決定された変速比を成立させるように油圧制御装置40を制御する。
【0022】
かかるECU50は、通常のエンジントルク制御では、アクセル開度に応じた目標スロットル開度を決定し、決定した目標スロットル開度をスロットルアクチュエータ14に指令する。これに応じて、スロットルアクチュエータ14は、実スロットル開度を目標スロットル開度に一致させるように電子スロットルバルブ13の開度制御を行う。また、ECU50は、回転慣性による損失トルク(変速時の変速比の変化に伴う負のイナーシャトルク)Tlossによる変速ショックを低減するために、エンジン補償トルク制御を実行する。エンジン補償トルク制御では、回転慣性による損失トルクTlossを補償(相殺)するエンジン補償トルクTegcを算出し、アクセル開度に応じた目標スロットル開度をエンジン補償トルクTegcに対応した開度だけ増加し、増加した目標スロットル開度をスロットルアクチュエータ14に指令する。すなわち、変速ショック軽減用のエンジン補償トルクTegcを算出し、エンジントルクが修正されるようなスロットル制御を行って変速ショックを軽減する。
【0023】
また、上述したように、エンジン出力トルクTeg(実エンジントルク)が十分でない状態、すなわち、損失トルクTlossがエンジン出力トルクTegより大きい状態で変速を開始すると、車両加速度が落ち込んで加速応答性が悪化するという問題がある。そこで、本実施例では、ECU50は、エンジン出力トルクTegが回転慣性による損失トルクTlossよりも大きくなった場合に、変速開始指令を油圧制御装置40に出力し、変速動作を開始している。
【0024】
図2は、ECU50の変速時の制御を説明するためのフローチャート、図3〜図6は、変速時の制御におけるタイミングチャートを示している。
【0025】
図2において、ECU50は、アクセルポジションセンサ11から入力されるアクセル開度に基づいて、アクセルがONされたか否かを判断し(ステップS1)、アクセルがONされた場合には(ステップS1の「Yes」)、変速条件等に基づいて、回転慣性による損失トルクTlossを推定する(ステップS2)。回転慣性による損失トルクTlossは、例えば、下式(1)で算出することができる。
【0026】
【数1】

【0027】
ω1、ω2、ω3は、それぞれ、入力軸回転数Ntc、プライマリ回転数Npri、セカンダリ回転数Nsecに基づいて算出することができる。
【0028】
なお、回転慣性による損失トルクTlossを上記式(1)で算出することとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、入力(エンジントルク)と出力(駆動トルク)の差分、駆動系を含む車両モデルによるモデルベース、運転条件によるマップ適合や、上述の特許文献1の算出方法を使用して回転慣性による損失トルクTlossを推定することにしてもよい。
【0029】
この後、ECU50は、エンジン補償トルク制御を開始する(ステップS3)。具体的には、ECU50は、回転慣性による損失トルクTlossを補償(相殺)するエンジン補償トルクTegcを算出し、アクセル開度に応じた目標スロットル開度をエンジン補償トルクTegcに対応した開度だけ増加し、増加した目標スロットル開度をスロットルアクチュエータ14に指令する。スロットルアクチュエータ14は、実スロットル開度を目標スロットル開度に一致させるように電子スロットルバルブ13の開度制御を行う。このスロットル開度制御によるエンジントルクの変更で、回転慣性による損失トルクTlossを相殺することができ、当該損失トルクTlossに起因して生ずる変速ショックを軽減することができる。
【0030】
つぎに、ECU50は、エンジン出力トルクTeg(実エンジントルク)>回転慣性による損失トルクTlossであるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、エンジン出力トルクTegは、例えば、燃焼圧センサ18から入力される燃焼圧に基づいて推定することができる。燃焼圧とエンジン出力トルクTegは一定の関係があることが分かっているので、例えば、換算式やマップを使用して、検出した燃焼圧に基づいて、現在のエンジン出力トルクTegを推定することができる。
【0031】
ECU50は、エンジン出力トルクTeg>回転慣性による損失トルクTlossである場合には(ステップS4の「Yes」)、変速開始指令(変速比変更指令)を油圧制御装置40に出力する(ステップS5)。これに応じて、油圧制御装置40では、無段変速機30の変速比の変更を開始する。
【0032】
ECU50は、変速が終了した場合には(ステップS6の「Yes」)、エンジン補償トルク制御を停止する(ステップS7)。この後は、通常のエンジントルク制御を行う。
ここで、変速終了タイミングで、エンジン補償トルク制御を停止し、通常のエンジントルク制御に戻しているのは、変速終了後にエンジン補償トルク制御を継続すると、変速終了のタイミングでショックが発生する場合があるからである(図3参照)。
【0033】
なお、トルクコンバータ20がコンバータ状態である場合は、そのトルク変動吸収機能により、変速ショックがロックアップ状態のときほど問題にならないため、エンジン補償トルク制御を実行しないことにしてもよい。具体的には、ECU50は、トルクコンバータ20がロックアップ状態か、コンバータ状態かを判断し、ロックアップ状態の場合には、エンジン補償トルク制御を実行し、コンバータ状態の場合は、エンジン補償トルク制御を実行しないで、通常のエンジントルク制御を行うことにしてもよい。
【0034】
ここで、上述した変速制御における各種操作量の変化を図3〜図6のタイムチャートに基づいて説明する。同図において、(a)はアクセル開度、(b)はエンジントルク指令値(目標エンジントルク)、(c)はエンジン出力トルクTeg(実エンジントルク)、(d)は回転慣性による損失トルクTloss、(e)は変速指令値、(f)は車両加速度を示しており、実線は本実施例によるエンジン補償トルク制御をおこなった場合、点線はエンジン補償トルク制御を行なわない場合を示している。ここでは、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に伴うダウンシフト操作について説明する。
【0035】
図3において、まず、(a)に示すように、運転者がアクセルペダルを踏み込んで、アクセル開度を増大させてエンジン要求負荷を増すような加速時は、目標変速比が大きくなる(低速側の変速比になる)ように変更され、無段変速機30は当該大きくされた目標変速比へダウンシフト変速される。
【0036】
このような変速は、変速比が変わることにともなってエンジン回転数の変化を生じさせ、エンジン回転数を上昇させるダウンシフト変速時は、エンジン出力トルクTegが、(d)に示す回転慣性による損失トルクTloss分だけ低下されることによる、トルクの引き込み感を伴った変速ショックを生ずる。
【0037】
そこで、本実施例では、アクセルONを検出すると(t1)、エンジン補償トルク制御を行って、(b)に示すように、エンジントルク指令値(目標エンジントルク)を実線のように増大し、回転慣性による損失トルクTlossを相殺する。これにより、損失トルクTlossに起因して生ずる変速ショックを軽減することができる。
【0038】
また、エンジン出力トルクTegが十分でない状態で変速を開始すると、(f)の一点鎖線で示すように、車両加速度が落ち込み、加速応答性が悪化する。そこで、本実施例では、エンジン出力トルクTeg>回転慣性による損失トルクTlossとなった場合に(t2)、(e)に示すように、変速を開始し、エンジン出力トルクTegが十分な状態で変速を行う。これにより、(f)の実線に示すように、加速応答性を向上させることができる。また、変速が終了した場合には(t3)、(b)に示すように、エンジン補償トルク制御を停止する。これにより、変速終了時のショックを防止することができる。この場合、急激にトルクを変更すると、急激なトルク変更に伴うショックが発生する場合があるので、(b)に示すように、エンジン補償トルク制御の停止は瞬時に行うのではなく緩やかに停止させる。
【0039】
図4は、変速時にエンジントルクを早く立ち上げた場合のタイミングチャートを示している。同図において、(b)に示すように、エンジントルクを早く立ち上げると、(f)に示すように、加速応答性を向上させることができる。
【0040】
図5は、変速速度を速くした場合のタイミングチャートを示している。同図において、(e)に示すように、変速速度を速くすると、(d)に示すように、損失トルクTlossが大きくなる。このため、(b)に示すように、この損失トルクTlossを補償するために大きなエンジン補償トルクTegcが必要となるので、変速速度を必要以上に速くしないことが望ましい。
【0041】
図6は、変速終了のタイミングでエンジン補償トルク制御を停止した場合と停止しない場合のタイミングチャートを示している。同図において、(b)の一点鎖線に示すように、変速終了のタイミングでエンジン補償トルク制御を停止しないと、(f)の一点鎖線に示すように、損失トルクTlossが減少することによる加速度変化が発生する。ドライバは、この加速度変化を変速ショックや加速応答遅れと感じる場合がある。したがって、(b)の実線で示すように、変速終了のタイミングでエンジン補償トルク制御を停止することが有効である。
【0042】
以上説明したように、本実施例によれば、ECU50は、アクセルONを検出した場合に、変速に伴う回転慣性による損失トルクTlossを推定し、損失トルクTlossを補償するエンジン補償トルク制御を開始し、また、エンジン出力トルクTegが損失トルクTlossよりも大きくなった場合に、無段変速機30に変速開始を指示することとしたので、変速に伴う変速ショックを低減できるとともに、加速応答性を向上させることが可能となる。
【0043】
また、ECU50は、無段変速機30の変速が終了した場合には、エンジン補償トルク制御を停止して通常のエンジントルク制御を行うこととしたので、エンジン補償トルク制御に伴う変速終了時の加速度変化によるショックを防止することが可能となる。
【0044】
なお、上記実施例では、無段変速機としてベルト式無段変速機を使用することとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、トロイダル型無段変速機や電子式無段変速機等を使用することにしてもよい。また、上記実施例では、電子制御式スロットル装置(電子スロットルバルブ23とスロットルアクチュエータ24)を制御してエンジントルク制御を行う場合について説明したが、これに限らず、例えば、燃料噴射装置による噴射量の増加や過給機の作動であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明に係る無段変速機の変速制御装置および変速制御方法は、変速ショックの低減し、かつ変速時の加速応答性を向上させる場合に有用であり、ベルト式無段変速機、トロイダル無段変速機、および電子式無段変速機等の各種無段変速機に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係る無段変速機の変速制御装置および変速制御方法を適用した車両のパワートレーンおよびその制御系の概略構成図である。
【図2】本実施例の無段変速機の変速制御装置による変速時の制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】変速時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図4】変速時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図5】変速時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図6】変速時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 エンジン
11 アクセルポジションセンサ
12 吸気管
13 電子スロットルバルブ
14 スロットルアクチュエータ
15 アイドルスイッチ付スロットルポジションセンサ
16 エアフローセンサ
17 エンジン回転数センサ
18 燃焼圧センサ
20 トルクコンバータ
30 無段変速機
31 プライマリプーリ
32 セカンダリプーリ
33 ベルト
34 プライマリプーリ回転センサ
35 セカンダリプーリ回転センサ
40 油圧制御装置
50 ECU
51 車速センサ
52 シフトポジションセンサ
60、70、80 軸
90 駆動輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン出力トルクを駆動輪に伝達する無段変速機の変速制御装置において、
アクセル状態を検出する検出手段と、
前記検出手段でアクセルONを検出した場合に、回転慣性による損失トルクを推定する損失トルク推定手段と、
前記損失トルク推定手段で推定した回転慣性による損失トルクを補償するエンジン補償トルク制御を開始するエンジントルク制御手段と、
前記エンジン出力トルクが前記推定した回転慣性による損失トルクよりも大きくなった場合に、前記無段変速機に変速開始を指示する変速制御手段と、
を備えたことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
【請求項2】
前記エンジントルク制御手段は、前記無段変速機の変速が終了した場合には、前記エンジン補償トルク制御を停止することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項3】
エンジン出力トルクを駆動輪に伝達する無段変速機の変速制御方法において、
アクセル状態を検出する検出工程と、
前記検出工程でアクセルONを検出した場合に、回転慣性による損失トルクを推定する損失トルク推定工程、
前記推定した回転慣性による損失トルクを補償するエンジントルク制御を開始するエンジントルク制御工程と、
前記エンジン出力トルクが損失トルクよりも大きくなった場合に、前記無段変速機に変速開始を指示する変速制御工程と、
を含むことを特徴とする無段変速機の変速制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−249017(P2008−249017A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90794(P2007−90794)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】