説明

真空処理装置

【課題】 タクトタイムを短縮して、生産性を向上させるとともに、安価な真空処理装置を提供する。
【解決手段】 基板を真空処理する真空処理室と、基板を載置して搬送する基板キャリア12、14と、基板を大気側と真空側との間で搬入、搬出するためにL/UL室30とを具備した真空処理装置10において、真空処理装置10の大気側の基板搬送を行う大気側基板キャリア12と、真空処理装置10の真空側の基板搬送を行う真空側基板キャリア14と、大気側基板キャリア12及び真空側基板キャリア14相互間で、基板を受け渡しする基板受け渡し機構とを備えた構成とした。
また、タクトタイムを短縮するには、大気側基板キャリア12をL/UL室30の基板入れ替え口の前面に2以上配置可能な構成とすると一層効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるインライン式の真空処理装置に係り、特に、低コストで、タクトタイムを短縮し生産性を向上させた、1m級以上の大型基板用の縦型方式の真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイに用いられる大型ガラス基板を加工するには、真空下において、所望の温度まで昇温させる加熱工程や、スパッタリングやCVDなどの成膜工程、或いは、エッチング等の加工手段が必要である。
【0003】
ここで、以下、これら真空下における複数層の成膜工程の他、この成膜工程に付随する加熱工程等の真空下における処理工程を総括的に真空処理と呼び、また、真空槽にスパッタリング装置、CVD、エッチングの他、加熱等の真空処理機構を具備し、基板を真空処理する機能を有する真空室を真空処理室と総括的に呼ぶこととする。
【0004】
特許文献1に示されるように、従来より、種々の真空処理装置が実用に供されている。
この特許文献1記載の真空処理装置の特徴について、図9を用いて簡単に説明する。
図9は第1の従来例の真空処理装置の概略構成を示す平面図で、特許文献1の図10に相当するものである。
【0005】
特許文献1のインライン型スパッタリング装置90は、基板92はローディング室94の搬送手段に装着され、成膜室96内で成膜処理されて、アンローディング室98で回収されるワンスルータイプである。
【0006】
一方、第2の従来例の真空処理装置として、特許文献1とは異なる真空リターンタイプの縦型の真空処理装置を図10及び図11を用いて説明する。
図10は、従来の真空処理装置の主要構成を示す平面図である。
図11は、基板キャリアの構造を示す外観斜視図である。
【0007】
図10及び図11に示すように、従来の真空処理装置100は、基板着脱部110、複数(図示のものでは3)の真空処理室130、132、134と、基板112を載置して搬送する基板キャリア140と、基板112を基板キャリア140に載せた状態で大気側と真空側間との間で搬入、搬出するための予備室120とを備えている。
また、同図において、150は真空排気装置である。
【0008】
なお、基板112を、大気側と真空側との間で搬入、搬出するための予備室120A、120Bについては、以下、単に「予備室」、「ロード/アンロード室」、或いは、単に「L/UL室」という場合がある。
【0009】
また、図10に示すように、各真空処理室130、132、134内には、基板キャリア140が下流側に搬送される往路となる第1の搬送経路160と、上流側に搬送される復路となる第2の搬送経路162の2つの搬送経路が設けられている。
更に、従来の真空処理装置100は、最後部(図中右端)の第3の真空処理室134が、基板キャリア140を往路から復路に、この2つの搬送経路160、162に対して横方向に移動させて移載する移載機構(図示せず)を備えている。
【0010】
以上の構成において、次に、従来の真空処理装置100の基本動作について、図10を用いて説明する。
先ず、基板着脱部110では、移載ロボット(図示せず)が、基板着脱部110内の所定位置にストックされた未処理基板112を取り込み、基板キャリア140に移載する。
基板着脱部110で、基板キャリア140に基板112が載置されると、この基板キャリア140は、ロード/アンロード室(L/UL室)120に搬入される。
【0011】
L/UL室120に基板キャリア140が入室すると、このL/UL室120が真空排気され、高真空化された後に、第1の真空処理室130内に用意されている往路となる第1の搬送経路160に搬出される。
基板キャリア140は、往路160を搬送されながら、第1乃至第3の真空処理室130、132、134において、載置された基板が加熱や成膜等の真空処理が施される。
【0012】
第3の真空処理室134で基板が真空処理された後は、基板キャリア140は復路となる第2の搬送経路162に、図示しない移載機構により移載され、第3乃至第1の真空処理室134、132、130においてそれぞれ成膜等の真空処理がなされて、基板キャリア140は、真空処理された基板112を載置した状態で、L/UL室120を経て、基板着脱部110で基板112が取り外される。
即ち、この従来例は、真空中で基板112がL/UL室120に帰還してくる真空リターン方式である点に特徴を有している。
【0013】
なお、図示による説明は省略するが、上記従来例では、基板着脱部においては、基板を移載ロボットにより基板キャリアに移載する構成のもので説明したが、これとは異なり、移載ロボットにより、基板キャリアを介さずに、直接、L/UL室に設けた基板入れ替え機構に基板が載置される構成のものも存在する。
【0014】
【特許文献1】特開2000−129436
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、一般に、L/UL室では、基板キャリアの搬入、搬出の他に、真空排気と大気圧開放が行われる。
従来の真空処理装置では、基板キャリアが大気側と真空側とを往復し、大気に晒されるため、基板キャリアが真空側に水分を持ち込み、クライオポンプ等の水素に対する排気能力に優れた排気系と、十分な排気時間が不可欠で、コストの増大、タクトタイムが長くなって生産効率が低減するという問題を備えていた。
【0016】
また、移載ロボットにより、直接、L/UL室の基板受け渡し機構に基板が載置される構成の従来の真空処理装置では、基板着脱部では、1台の移載ロボットが処理済み基板の移載が完了してから、未処理基板をL/UL室に移載するようにしているため、ブランクタイムが発生し、真空処理装置のタクトが長く、生産効率が低下するという問題を備えていた。
この対策として、移載ロボットを2台配置すると、真空処理装置のコストが過大になるという新たな問題が発生する。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決し、タクトタイムを短縮して、生産性を向上させるとともに、安価な真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の真空処理装置は、請求項1に記載のものでは、基板を真空処理する真空処理室と、前記基板を載置して搬送する基板キャリアと、前記基板を大気側と真空側との間で搬入、搬出すための予備室とを具備した真空処理装置において、前記真空処理装置の大気側の基板搬送を行う大気側基板キャリアと、前記真空処理装置の真空側の基板搬送を行う真空側基板キャリアと、前記大気側基板キャリア及び前記真空側基板キャリア相互間で、前記基板を受け渡しする基板受け渡し機構とを備えた構成とした。
【0019】
請求項2に記載の真空処理装置は、上記大気側基板キャリアを上記予備室の基板入れ替え口の前面に2以上配置可能としている構成とした。
【0020】
請求項3に記載の真空処理装置は、上記予備室が上記基板受け渡し機構を具備している構成とした。
【0021】
請求項4に記載の真空処理装置は、上記予備室が具備している基板受け渡し機構は、先端部にフックを有するとともに、回転自在な内側軸と、先端部にピンを有する外側軸と、前記内側軸の回転を制御するロータリーアクチュエーターとを備えた1又は2以上のロッドと、前記内側軸の位置制御を行う内側軸位置制御プレートと、前記外側軸の位置制御を行う外側軸位置制御プレートと、を備えている構成とした。
【0022】
請求項5に記載の真空処理装置は、上記基板受け渡し機構において、上記予備室の下側に配置される上記ロッドの内側軸の断面形状は、カム状とした構成とした。
【0023】
請求項6に記載の真空処理装置は、基板を略直立させた状態で真空処理を行う縦型方式である構成とした。
【発明の効果】
【0024】
本発明の真空処理装置は、上述のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように構成すると、真空側基板キャリアは大気に晒されることはないので、排気系によるコストが増大するという問題や、タクトタイムが長くなって生産効率が低減するという問題を回避することができる。
【0025】
(2)請求項2に記載したように構成すると、一つの大気側基板キャリアが真空側基板キャリアと基板の受け渡しをしている間に、他の大気側基板キャリアは、他の基板の着脱が行え、ブランクタイムが短くなるので、生産効率が低下するという問題を回避できる。
(3)また、高価な移載ロボットの複数台分の働きを、桁違いに廉価な基板キャリアが行うことで、真空処理装置のコストが過大になる問題も解決できる。
【0026】
(4)請求項3に記載したように構成すると、基板の受け渡しを予備室で行うことができ、基板受け渡しの効率化が図れ、生産効率が向上する。
【0027】
(5)請求項4に記載したように構成すると、安定度が高く、確実な基板の受け渡しが可能になる。
【0028】
(6)請求項5に記載したように構成すると、基板の受け渡しの際に、基板を一旦基板キャリアから浮き上がらせることができるので、基板受け渡しの安定度が一層向上する。
【0029】
(7)請求項6に記載したように構成すると、大型基板に容易に対応可能となり、真空処理装置の設置スペースを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の真空処理装置の第1及び第2の各実施の形態を、図1乃至図9を用いて、順次説明する。
第1の実施の形態:
先ず、本発明の真空処理装置の第1の実施の形態を図1乃至図7を用いて説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態の真空処理装置の全体構成を示す平面図である。
図2は、本実施の形態の真空処理装置の主要部を示す要部平面図である。
図3は、本実施の形態の真空処理装置に用いるL/UL室の外観構成を示す斜視図である。
図4は、本実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構の要部を示す一部裁断斜視図である。
【0032】
図5は、本実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構の要部拡大斜視図である。
図6は、本実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構の主要構成を示す一部裁断斜視図である。
図7は、本実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構による基板の受け渡し工程を説明するための一部拡大側面図である。
【0033】
先ず、本実施の形態の真空処理装置10の主要構成を図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、本実施の形態の真空処理装置10は、従来の真空処理装置100同様に、基板着脱部20、L/UL室30、複数(図示のものでは3)の真空処理室130、132、134と、基板16の移載ロボット114とを備えている。
また、同図において、150は真空排気装置である。
【0034】
次に、本実施の形態の真空処理装置10の構成上の特徴について、図1及び図2を用いて説明する。
図2には、図1において、基板着脱部20とL/UL室30近辺の主要構成が図示されている。
本実施の形態の真空処理装置10の構成上の特徴は、図2に示すように、第1に、大気側の基板搬送を行う大気側基板キャリア12と、真空処理装置の真空側の基板搬送を行う真空側基板キャリア14を有していることである。
また、第2に、U/UL室30が、大気側基板キャリア12及び真空側基板キャリア14相互間で、基板16を受け渡しする基板受け渡し機構40(図3参照)を具備していることである。
なお、真空処理室130、132、134の構成については、従来の真空処理装置100と同様なのでその説明は省略する。
【0035】
次に、以上の構成において、本実施の形態の真空処理装置10の基本動作を図1及び図2を用い、図3と図11を参照して説明する。
なお、以下、大気側基板キャリア12と真空側基板キャリア14間での基板16の受け渡しを中心に説明し、真空処理室130、132、134については、従来の真空処理装置100と同様の真空処理が行われるので、その基本動作に関する説明は省略する
【0036】
先ず、基板着脱部20では、移載ロボット114が、基板着脱部20内の所定位置にストックされた未処理基板16を取り込み、大気側基板キャリア12に移載する。
図1に示すように、この移載の方法は、基板着脱部20において、大気側基板キャリア12が水平に倒れると、この状態で基板着脱部20内に横積みされている基板16を、移載ロボット114により大気側基板キャリア12に移載し、移載後は大気側基板キャリア12が垂直に立ち上がり、大気側基板キャリア12は、略直立した状態で基板16を搬送する(図11参照)。
【0037】
大気側基板キャリア12は、従来の真空処理装置100同様、基板着脱部20において、未処理基板16を移載ロボット114から移載されると、大気開放されているL/UL室30に入室する。
一方、本実施の形態の真空処理装置10では、この大気側基板キャリア12は、L/UL室30に入室すると、L/UL室30に設けられている基板受け渡し機構40(図3参照)に未処理基板を受け渡し、その後、L/UL室30から退室する。
即ち、図1の矢印で示すように、大気側基板キャリア12は、基板着脱部20とL/UL室30との間で往復し、真空処理室130、132、134には入室しない。
なお、基板受け渡し機構40の基本構成と動作については、説明の都合上、後に詳細に説明する。
【0038】
大気側基板キャリア12がL/UL室30から退室すると、L/UL室30では、大気側基板キャリア12から受け渡された基板16を受け渡し機構40で保持したまま真空排気され、所定の真空度になったところで、真空処理室130側に待機していた真空側基板キャリア14が、L/UL室30に入室する。
【0039】
真空側基板キャリア14が、L/UL室30に入室すると、L/UL室30の基板受け渡し機構40から未処理基板16が受け渡される。
真空側基板キャリア14は、未処理基板16を受け渡されると、真空処理室130に退出し、上述した従来の真空処理装置100同様に、各真空処理室130、132、134に基板16を搬送し、基板16が成膜等の真空処理が施される。
【0040】
基板16の真空処理が完了すると、真空側基板キャリア14はL/UL室30に入室し、基板受け渡し機構40により、L/UL室30の基板受け渡し機構40に処理基板16を受け渡す。
【0041】
真空側基板キャリア14がL/UL室30から退室すると、L/UL室30は大気開放され、大気側基板キャリア12がL/UL室30に入室し、基板受け渡し機構40から処理済み基板16が受け渡される。
大気側基板キャリア12は、この処理済み基板16を基板着脱部20まで搬送して、移載ロボット114により処理基板16が取り外され、処理基板16は所定のポジションに移載される。
【0042】
処理済み基板16が外された大気側基板キャリア12には、移載ロボット114により次の未処理基板16が移載され、上記した工程により、基板着脱部20内の未処理基板16は、順次、成膜等の真空処理が施される。
【0043】
即ち、本実施の形態の真空処理装置10では、真空側基板キャリア14は、本実施の形態の真空処理装置10が稼働中は、大気に晒されることがないので、真空側基板キャリア14が真空側に水分やその他の不純物を持ち込むことはなく、排気能力に優れた高価な排気系が必ずしも必要ではなく、真空排気時間が長くなり生産効率が低減するという従来装置の問題を回避することができる。
【0044】
次に、本実施の形態の真空処理装置10に用いられる基板受け渡し機構40について、図3乃至図7を用いて、詳細に説明する。
【0045】
先ず、本実施の形態の基板受け渡し機構40の基本構成を図3乃至図6を用いて説明する。
本実施の形態の基板受け渡し機構40は、図3に示すように、大別すると、L/UL室30の側面に垂直に挿入されるロッド50と、L/UL室30側面に取り付けられる2つのプレート42、44から構成される。
【0046】
図4に示すように、ロッド50は、先端部にフック51が取り付けられ、回転自在の内側軸52と、先端部に1対のピン53が取り付けられた外側軸54と、内側軸52を回転させるロータリーアクチュエータ55を備えている。
【0047】
ロッド50の内側軸52及び外側軸54は共に、L/UL室30の側面の垂直方向に位置制御可能で、内側軸52は、上述した2つのプレートのうち、内側軸位置制御プレート42により位置制御される。
【0048】
また、外側軸54は、外側軸位置制御プレート44により位置制御される。
内側軸位置制御プレート42及び外側軸位置制御プレート44は、図3に示すように、プレート駆動モータ46、47とボールネジ48の組み合わせで、図4の矢印に示すように、L/UL室30の側面に対して平行を保持しながら垂直方向に位置制御され、これに連動して、複数のロッド50の内側軸52及び外側軸54は位置制御される。
【0049】
また、ロッド50の内側軸52はロータリーアクチュエーター55により回転制御される。
なお、図4において、56はベローズ、57はフェローシールである。
また、30bは、L/UL室30のチャンバー側壁である。
【0050】
以上の構成で、基板受け渡し機構40による基板16の受け渡しについて、図7を用い、図5及び図6を参照して説明する。
なお、以下、説明の便宜上、大気側基板キャリア12と真空側基板キャリア14については、基板キャリア12(14)と総称する。
図7において、(A)は、基板受け渡し機構40の下側に配置されるロッド50の外側軸54に取り付けたピン53と基板キャリア12(14)との関係を示す工程図であり、(B)は、同じく、ロッド50の内側軸52及び外側軸54と、基板16との関係を示す工程図である。
また、(C)は、同じく、ロッド50の内側軸52の断面カム状の軸断面の基本動作を示す工程図である。
【0051】
図7において、工程1は、基板16の受け渡しの初期状態を示す。
この状態では、基板16は、基板キャリア12(14)の基板保持トレイに保持され、内側軸52及び外側軸54も基板キャリア12(14)の基板16から離れた位置に位置制御されている。
【0052】
次に、工程2に示すように、内側軸位置制御プレート42及び外側軸位置制御プレート44により、内側軸52及び外側軸54が基板キャリア12(14)側に挿入され、内側軸52先端のフック51は基板16の反対側に回り込む。
また、外側軸54のピン53は、基板キャリア12(14)のクランプ12a(14a)に接近する(図5参照)
【0053】
次に、工程3(A)に示すように、外側軸位置制御プレート44により外側軸54が更に送り込まれると、外側軸54の先端に取り付けられたピン53が基板キャリア12(14)のクランプ12a(14a)を引き倒し、また、工程3(B)に示すように、同時に、ロータリーアクチュエーター55により内側軸52を180度回転させる。
すると、カム状に形成された内側軸52により、基板16が基板キャリア12(14)のクランプ12a(14a)より浮き上がらせると同時に、基板16は、フック51の内側に取り込まれる。
【0054】
最後に、工程4では、ロッド50の内側軸52及び外側軸54で基板16を挟持して、基板受け渡し機構40が基板16を基板キャリア12(14)より取り込む。
この状態では、基板キャリア12(14)のクランプ12a(14a)は、バネ12b(14b)の弾性力により、元の位置に復元している。
このとき、基板16が、基板受け渡し機構40に取り込まれた状態を図5に示す。
図6に示されるように、基板16の下側のロッド50の内側軸52により基板16を下方より支持すると共に、両サイド及び上側の外側軸54のピン53と各内側軸52のフック51によりタイトに固定保持される。
従って、本実施の形態の基板受け渡し機構40を用いると、安定に基板16を受け渡しすることができる。
【0055】
上記では、基板16を基板キャリア12(14)から取り込む工程を説明したが、逆に、基板受け渡し機構40から基板16を基板キャリア12(14)に受け渡す際は、概ね、上述した工程とは逆の工程を行えばよい。
【0056】
また、本実施の形態では、基板受け渡し機構40の下側のロッド50の内側軸52の断面形状はカム状になっており(図7(C)参照)、カム状の内側軸52が基板16を浮き上がらせるので、キャリア12(14)のクランプ12a(14a)から安定して受け渡すことができる。
【0057】
第2の実施の形態:
次に、本発明の真空処理装置の第2の実施の形態を図8を用いて説明する。
図8は、本発明の真空処理装置の第2の実施の形態の主要部の概略を説明する平面図である。
【0058】
図8に示すように、本実施の形態の真空処理装置60は、第1の実施の形態の真空処理装置10同様に、基板着脱部20、L/UL室30を備えている。
なお、複数の真空処理室及び真空排気装置に関しては、従来の真空処理装置100と同様なのでその図示は省略している。
また、基板着脱部20、L/UL室30及び基板受け渡し機構については、第1の実施の形態と同様である。
【0059】
一方、本実施の形態の真空処理装置60は、L/UL室30の基板入れ替え口30a(図3参照)の前面側に、大気側基板キャリアが複数(図示のものは2)12A、12B、配置されていることに特徴を有している。
【0060】
以上の構成において、次に、本実施の形態の真空処理装置60の基本動作を図8を用いて説明する。
本実施の形態の真空処理装置60では、複数(図示のものは2)12A、12Bの内の一つの大気側基板キャリア12A(B)は、基板着脱部20において、未処理基板を移載ロボットから移載され、大気開放されているL/UL室30に入室し、第1の実施の形態のもの同様の手順で、L/UL室30に取り付けられた基板受け渡し機構(図示せず)を介して、大気側基板キャリア12A(B)から、真空側基板キャリア(図示せず)の相互間で基板の受け渡しが行われる。
【0061】
一方、本実施の形態の真空処理装置60の特徴として、大気側基板キャリア12A、12Bが複数(図示のものは2)L/UL室30の基板入れ替え口30a前面に配置されているために、一つの大気側基板キャリア12A(B)が、基板の受け渡しをしている際に、一方の大気側基板キャリア12B(A)では、移載ロボットにより未処理基板を移載することができる。
【0062】
従って、従来の真空処理装置では、1台の移載ロボットが処理済み基板の移載が完了してから、未処理基板をL/UL室に移載するため、ブランクタイムが発生し、真空処理装置のタクトが長く、生産効率が低下するという問題があったが、本実施の形態によるとその問題を解消することができる。
【0063】
また、移載ロボットである産業用多軸ロボットに比べて、図8に示す基板キャリア12A、12Bは桁違いに廉価であり、L/UL室30に複数(図示のものは2)基板キャリア12A、12Bを配置することにより、移載ロボットを複数配置したのとほぼ同様の移載が行えるので、移載ロボットを複数配置することにより、コストが過大になるという問題も回避することができる。
【0064】
従って、本実施の形態の真空処理装置60によると、第1の実施の形態と同様に、真空側基板キャリアは、大気に晒されることがないので、コストの増大を抑えながら大幅にタクトタイムを短縮でき、その上、上述した効果を有するので、生産効率を更に向上することが可能となる。
【0065】
本発明の真空処理装置は上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、上記各実施の形態の真空処理装置では、L/UL室に基板受け渡し機構を備えた構成のもので説明したが、本発明の特徴は、基板キャリアを大気側と真空側に使い分けることにより、真空側基板キャリアが大気に晒されることを防止することであるので、必ずしも、基板受け渡し機構は、L/UL室に取り付けなければならないものではない。
また、基板受け渡し機構についても、基板を安定かつ確実に受け渡されるものであれば良いので、上述したものに限定されない。
【0066】
上記実施の形態では、ロッドの内側軸の断面形状は、カム状としたが、これは、内側軸を180度回転させたときに、基板を下方から持ち上げるためのものであるが、L/UL室の両サイド及び上側に配置されるロッドの内側軸の断面形状は、この形状である必要はないのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態の真空処理装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の真空処理装置の主要構成を示す要部平面図である。
【図3】第1の実施の形態の真空処理装置に用いるL/UL室の外観構成を示す斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構の要部を示す一部裁断斜視図である。
【図5】第1の実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構の要部拡大斜視図である。
【図6】第1の実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構の主要構成を示す一部裁断斜視図である。
【図7】第1の実施の形態の真空処理装置に用いる基板受け渡し機構による基板の受け渡し工程を説明するための一部拡大側面図である。
【図8】本発明の真空処理装置の第2の実施の形態の主要部の概略を説明する平面図である。
【図9】第1の従来例の真空処理装置の構成を示す平面図である。
【図10】第2の従来例の真空処理装置の構成を示す平面図である。
【図11】基板キャリアの構造を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10、60:真空処理装置
12、12A、12B:大気側基板キャリア
14:真空側基板キャリア
20:基板着脱部
30:L/UL室(予備室)
40:基板受け渡し機構
42:内側軸位置制御プレート
44:外側軸位置制御プレート
50:ロッド
51:フック
52:内側軸
53:ピン
54:外側軸
112:基板
114:移載ロボット
130、132、134:真空処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を真空処理する真空処理室と、前記基板を載置して搬送する基板キャリアと、前記基板を大気側と真空側との間で搬入、搬出すための予備室とを具備した真空処理装置において、
前記真空処理装置の大気側の基板搬送を行う大気側基板キャリアと、
前記真空処理装置の真空側の基板搬送を行う真空側基板キャリアと、
前記大気側基板キャリア及び前記真空側基板キャリア相互間で、前記基板を受け渡しする基板受け渡し機構とを備えたことを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
上記大気側基板キャリアを上記予備室の基板入れ替え口の前面に2以上配置可能とされていることを特徴とする請求項1記載の真空処理装置。
【請求項3】
上記予備室が上記基板受け渡し機構を具備していることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
上記予備室が具備している基板受け渡し機構は、
先端部にフックを有するとともに、回転自在な内側軸と、先端部にピンを有する外側軸と、前記内側軸の回転を制御するロータリーアクチュエーターとを備えた1又は2以上のロッドと、
前記内側軸の位置制御を行う内側軸位置制御プレートと、
前記外側軸の位置制御を行う外側軸位置制御プレートと、
を備えていることを特徴とする請求項3に記載の真空処理装置。
【請求項5】
上記基板受け渡し機構において、
上記予備室の下側に配置される上記ロッドの内側軸の断面形状は、カム状としたこと特徴とする請求項4に記載の真空処理装置。
【請求項6】
上記真空処理装置は、基板を略直立させた状態で真空処理を行う縦型方式であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−114675(P2006−114675A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300114(P2004−300114)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】