真空蒸着装置および半導体装置の製造方法
【課題】膜を形成する基板の温度制御を安定して行なう真空蒸着装置を提供する。
【解決手段】真空蒸着装置100は、基板20の上に膜を形成する真空蒸着装置であって、基板ホルダ103と、ホルダ加熱部105と、基板20上に形成する膜の原料をその内部に収容する原料保持部と、第1遮断部111と、第2遮断部112と、を備えている。第1遮断部111は、前記原料保持部側から見て、基板ホルダ103よりも外周が外側に位置することが可能である。第2遮断部112は、第1遮断部111と選択的に、前記原料保持部側から見て、基板ホルダ103よりも外周が外側に位置することが可能であり、開口部112aを有する。第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径は、基板20の外接円の半径の1.5倍以下である。
【解決手段】真空蒸着装置100は、基板20の上に膜を形成する真空蒸着装置であって、基板ホルダ103と、ホルダ加熱部105と、基板20上に形成する膜の原料をその内部に収容する原料保持部と、第1遮断部111と、第2遮断部112と、を備えている。第1遮断部111は、前記原料保持部側から見て、基板ホルダ103よりも外周が外側に位置することが可能である。第2遮断部112は、第1遮断部111と選択的に、前記原料保持部側から見て、基板ホルダ103よりも外周が外側に位置することが可能であり、開口部112aを有する。第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径は、基板20の外接円の半径の1.5倍以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空蒸着装置および半導体装置の製造方法に関し、より特定的にはMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)装置およびこの装置により製造される半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を構成する膜を形成するために、真空蒸着装置が用いられている。真空蒸着装置は、高真空中で原料を加熱して蒸発させ、気体分子となった原料が基板に衝突および付着することによって、基板上に膜を形成する装置である。このような真空蒸着装置として、たとえば特開平6−326295号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、基板と原料蒸発源との間で、原料蒸発源から基板への原料ビームの通過経路に出入りし、かつ原料ビームの一部が通過できる穴もしくはスリットのいずれかを有するビーム強度可変シャッタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−326295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図15および図16は、上記特許文献1に開示のビーム強度可変シャッタの正面図である。上記特許文献1のビーム強度可変シャッタは、瞬時にビーム強度を変化させるために、図15に示す櫛型または図16に示す多孔形が適当であることが開示されている。このため、上記特許文献1のビーム強度可変シャッタを用いることで、原料の分子流の全体的な量を減少させることは可能である。しかし、ビーム強度可変シャッタの全体にほぼ均一に穴もしくはスリットが形成されているので、分子流の範囲を制限することはできない。このため、上記特許文献1では、基板を保持するホルダ上にも気体分子となった原料が付着する。したがって、ホルダで保持する基板の温度制御が難しいという問題がある。基板の温度制御が十分にできないと、所定の温度で膜を成長できないことや、基板面内での膜の成長のばらつきが生じることなどにより膜の品質が低下してしまう。膜の品質が低下すると、この膜を備える半導体装置の品質も低下してしまう。
【0006】
したがって、本発明の一の目的は、膜を形成する基板の温度制御を安定して行なう真空蒸着装置を提供することである。本発明の他の目的は、品質を向上できる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空蒸着装置は、基板の上に膜を形成する真空蒸着装置であって、ホルダと、加熱部と、原料保持部と、第1遮断部と、第2遮断部とを備えている。ホルダは、基板を載置する。加熱部は、ホルダを加熱する。原料保持部は、基板上に形成する膜の原料を内部に収容する。第1遮断部は、原料保持部側から見て、ホルダよりも外周が外側に位置することが可能である。第2遮断部は、第1遮断部と選択的に、原料保持部側から見て、ホルダよりも外周が外側に位置することが可能であり、開口部を有する。第2遮断部の開口部の内接円の半径は、基板の外接円の半径の1.5倍以下である。
【0008】
本発明の真空蒸着装置によれば、第2遮断部の開口部の内接円の半径が基板の外接円の半径の1.5倍以下であるので、膜を形成する際に、第2遮断部の開口部の中心と基板の外接円の中心とを一致させて、第2遮断部で基板を覆うと、開口部を通る原料が基板上に選択的に到達し、ホルダに原料が付着することを低減できる。これにより、ホルダに原料が堆積することを抑制できるので、膜を形成する際に、ホルダの伝導率、放射率などの変動を抑制することができる。ホルダに載置した基板の温度はホルダの表面状態に大きく影響を受けるので、ホルダの変動を抑制することにより、ホルダに載置した膜を形成する基板の温度の制御を安定して行なうことができる。
【0009】
上記真空蒸着装置において好ましくは、第2遮断部は、基板の上に形成する膜を構成する種類の数以上配置される。
【0010】
膜を構成する材料の種類に応じて原料が変わるので、使用する原料毎に第2遮断部を使い分けることで、第2遮断部の放射熱を安定化させることができる。このため、ホルダへの影響をより低減できるので、ホルダに載置した基板の温度の制御をより安定して行なうことができる。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記真空蒸着装置を用いて、基板上に膜を形成する。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、基板の温度制御を安定して行なうことができるので、基板上に形成する膜の品質を向上することができる。膜の品質を向上できるので、この膜を備える半導体装置の品質も向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の真空蒸着装置によれば、膜を形成する基板の温度制御を安定して行なうことができる。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における真空蒸着装置を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態における第1および第2遮断部を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態における第2遮断部を概略的に示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態における別の第2遮断部を概略的に示す上面図である。
【図6】本発明の実施の形態における基板を概略的に示す上面図である。
【図7】本発明の実施の形態における別の基板を概略的に示す上面図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法により製造された積層状態を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における効果を説明するための図であり、比較例を示す。
【図11】本発明の実施の形態における効果を説明するための図であり、比較例を示す。
【図12】本発明の実施の形態における効果を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態における効果を説明するための図である。
【図14】実施例2において、加熱部の温度と、基板の温度との関係を示す図である。
【図15】特許文献1のシャッタを示す正面図である。
【図16】特許文献1のシャッタを示す正面図である。
【図17】実施例2の本発明例2におけるエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図18】実施例2の本発明例2における半導体装置の製造方法により製造された積層状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1を参照して、本実施の形態における半導体装置について説明する。本実施の形態では、半導体装置としてpnダイオード10を例に挙げて説明する。図1に示すように、本実施の形態におけるpnダイオード10は、GaN(窒化ガリウム)基板11と、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14と、p+GaN層15と、p型電極16と、n型電極17とを備えている。n-GaN層12は、GaN基板11上に形成されている。p-GaN層13は、n-GaN層12上に形成されている。p+GaN層14は、p-GaN層13上に形成されている。p+GaN層15は、p+GaN層14上に形成されている。p型電極16は、p+GaN層15上に形成され、たとえばAu(金)からなる。n型電極17は、GaN基板においてn-GaN層12が形成された面と反対側の面に形成され、たとえばTi(チタン)/Al(アルミニウム)からなる。
【0017】
続いて、図2〜図8を参照して、本実施の形態における真空蒸着装置100を説明する。真空蒸着装置100は、基板の上に膜を形成する。本実施の形態の真空蒸着装置100は、図1に示す半導体装置を製造するための装置であり、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)装置である。
【0018】
図2に示すように、真空蒸着装置100は、チャンバ101と、ホルダ103と、加熱部105と、基板用の遮断部110と、原料セル121〜124と、原料セル用の遮断部125〜128とを備えている。基板用の遮断部110は、図3に示すように、第1遮断部111と、第2遮断部112、113と、接続部114と、軸115とを含んでいる。
【0019】
チャンバ101の内部に収容されたホルダ103は、基板を載置する。本実施の形態では、基板としてエピタキシャルウエハ20(図8参照)を載置する。
【0020】
加熱部105は、ホルダ103を介して基板11を加熱する。加熱部105はチャンバ101の内部に配置される。加熱部105は、たとえば抵抗加熱ヒータを用いる。温度制御のために、加熱部105は熱電対をさらに含んでいてもよい。加熱部105は、固定式ヒータであることが好ましい。
【0021】
真空ポンプ107は、チャンバ101に接続され、チャンバ101の内部を真空にすることが可能である。
【0022】
遮断部110の第1遮断部111および第2遮断部112、113は、ホルダ103と原料セル121〜124との間に配置される。図3に示すように、第1遮断部111および第2遮断部112、113は、接続部114を介して、固定された軸115に接続されている。つまり、軸115を中心として、第1遮断部111および第2遮断部112、113は、円弧を描くように移動可能である。第1遮断部111および第2遮断部112、113の回転角度によってそれぞれ使い分けることが可能であるので、第1遮断部111および第2遮断部112、113は、選択的に使用可能である。
【0023】
第1遮断部111は、ホルダ103の全体を覆うことが可能である。言い換えると、第1遮断部111の外周は、原料セル121〜124側から見て、ホルダ103よりも外側に位置することが可能である。さらに言い換えると、ホルダ103は、加熱部105側(原料セル121〜124と反対側)から見て、ホルダ103を第1遮断部111の表面に投影した全ての領域を含む。つまり、第1遮断部111は、原料セル121〜124からホルダ103への原料の分子流の全てを実質的に遮ることが可能である。
【0024】
図2および図3に示すように、第2遮断部112、113の各々は、開口部112a、113aを有する。第2遮断部112、113の各々は、ホルダ103の全体を覆うことが可能である。言い換えると、第2遮断部112、113の外周は、原料セル121〜124側から見て、ホルダ103よりも外側に位置することが可能である。さらに言い換えると、ホルダ103は、加熱部105側(原料セル121〜124と反対側)から見て、ホルダ103を第2遮断部112、113の表面に投影した全ての領域を含む。ただし、第2遮断部112、113は開口部112a、113aを有しているので、この開口部112a、113aを介して、原料セル121〜124からホルダ103へ向けて原料の分子流が到達することが可能である。つまり、第2遮断部112、113は、開口部112a、113aにより、原料を分子流の範囲を絞ることができる。第2遮断部112、113の開口部112a、113aの形状については、後述する。
【0025】
原料セル121〜124は、基板11上に形成する膜の原料を内部に収容する原料保持部である。原料セル121〜124は、膜を構成する各原料を保持する。本実施の形態では、原料セル121〜124は、Ga(ガリウム)、p型電極の材料であるAu、ドーパントの材料であるMg(マグネシウム)、およびN2(窒素)ラジカル源を内部に収容している。
【0026】
原料セル用の遮断部125〜128の各々は、原料セル121〜124を覆うことが可能である。原料セル用の遮断部125〜128は、原料セル121〜124の内部に収容されている原料を供給するときには、原料セル121〜124を覆わず、原料を供給しないときには、原料セル121〜124の全体を覆う。つまり、原料セル用の遮断部125〜128は、原料の供給を制御するための部材である。
【0027】
ここで、図1〜図7を参照して、基板用の遮断部110の第2遮断部112、113について説明する。第2遮断部112、113は、互いにほぼ等しい形状であるので、第2遮断部112を例に挙げて説明する。主に図4〜図7を参照して、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の半径R1は、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の半径の1.5倍以下である。
【0028】
第2遮断部112の開口部112aが図4に示すように円形である場合には、内接円の半径は開口部112aの半径R1である。第2遮断部112の開口部112aが図5に示すように矩形の場合には、内接円C1の半径R1は、矩形の内部にあり、かつ矩形の少なくとも2つの辺に接する最大の円の半径であり、言い換えると、矩形の内部に半径のある最大面積の円の半径である。
【0029】
エピタキシャルウエハ20が図6に示すように円形である場合には、外接円の半径はエピタキシャルウエハ20の半径R2である。エピタキシャルウエハ20が図7に示すように矩形の場合には、外接円C2の半径R2は、矩形のすべての頂点を通る円の半径であり、言い換えると、矩形の外部にある最小面積の円の半径である。
【0030】
第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の半径R1は、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の半径の1.5倍以下であれば、特に限定されないが、1.1倍以下であることが好ましく、エピタキシャルウエハ20上に膜を形成できる面積を確保する観点から0.5倍以上であることが好ましい。
【0031】
また、第2遮断部112、113の開口部112a、113aは、エピタキシャルウエハ20の外形と類似形であり、エピタキシャルウエハ20の大きさの1.5倍以下であることが好ましい。
【0032】
第2遮断部112、113は、基板の上に形成する膜の種類数以上配置されることが好ましい。本実施の形態では、基板として、GaN基板11と、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14とを備えたエピタキシャルウエハ20とし、基板の上に形成する膜として、p+GaN層14およびp型電極16の2種類としている。このため、第2遮断部112はp+GaN層14を形成する際に用いられ、第2遮断部113はp型電極16を形成する際に用いられる。なお、第2遮断部は、1枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
【0033】
続いて、図1〜図9を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態では、図2に示す真空蒸着装置100を用いて、半導体装置として図1に示すpnダイオード10を製造する。
【0034】
まず、図8に示すように、エピタキシャルウエハ20を準備する。エピタキシャルウエハ20は、たとえば以下のように形成する。具体的には、まず基板11を準備し、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法により、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14とをこの順で形成する。
【0035】
次に、このエピタキシャルウエハ20を真空蒸着装置100のホルダ103に載置する。また、基板用の遮断部110の第1遮断部111で、ホルダ103全体を覆う。
【0036】
また、Ga、Au、Mg、およびN2ラジカル源を収容した原料セル121〜124を準備する。これらの原料セル121〜124を完全に覆うように原料セル用の遮断部125〜128を配置する。また、真空ポンプ107で、チャンバ101の内部を真空にする。真空とは、たとえばチャンバ101内の圧力が1×10-12Torr以上1.0×10-5Torr以下である。
【0037】
次に、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部112の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置する。このとき、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置する。
【0038】
次に、加熱部105でエピタキシャルウエハ20を加熱する。また、Ga、Mgを収容した原料セル121、123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124の遮断部125、127、128を開けて、原料であるGa、MgおよびN2ラジカルの分子流を、第2遮断部112の開口部112aを介して、ホルダ103に載置されたエピタキシャルウエハ20上に到達させる。原料がエピタキシャルウエハ20の表面に衝突および付着することにより、エピタキシャルウエハ20のp+GaN層14上に、p+GaN層15を成膜することができる。
【0039】
次に、第2遮断部112をホルダ103上から移動させて、原料セル121〜124側から見て第1遮断部111の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置する。また、p+GaN層15の原料セル121、123、124用の遮断部125、127、128で原料セル121、123、124を覆って、Ga、MgおよびNの供給を停止する。これにより、p+GaN層15が形成されたエピタキシャルウエハ20の成膜を停止する。
【0040】
次に、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部113の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置する。このとき、第2遮断部113の開口部113aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置する。
【0041】
次に、加熱部105でエピタキシャルウエハ20を加熱する。また、Auを内部に収容した原料セル124の遮断部128を開けて、原料であるAuの分子流を、第2遮断部113の開口部113aを介して、ホルダ103に載置されたp+GaN層15上に到達させる。原料がp+GaN層15の表面に衝突および付着することにより、p+GaN層15上にp型電極16としてのAu膜を形成することができる。これにより、図9に示すように、p型電極16がさらに形成されたpnダイオード用のウエハを形成することができる。このようにp型電極16を形成することで、p+GaN層15とp型電極16との清浄な界面を形成することができる。
【0042】
次に、p+GaN層15およびp型電極16が形成されたエピタキシャルウエハ20を真空蒸着装置100から取り出す。その後、基板11においてn-GaN層12を形成した面と反対側にn型電極17を形成する。n型電極17の形成方法は特に限定されないが、たとえば図2に示す真空蒸着装置100により形成してもよい。つまり、ホルダ103にGaN基板11が原料セルと対応するように配置して、n型電極17の原料を供給することによりn型電極17を形成する。このとき、第2遮断部を用いることが好ましい。
【0043】
以上の工程を実施することにより、図1に示す半導体装置としてのpnダイオード10を製造することができる。
【0044】
続いて、図10〜図12を参照して、本実施の形態における真空蒸着装置100の効果について、比較例と比較して説明する。
【0045】
比較例の真空蒸着装置は、基本的には本実施の形態の真空蒸着装置100と同様の構成を備えているが、第2遮断部112を備えていない点において異なる。比較例の真空蒸着装置において、エピタキシャルウエハ20を加熱して、エピタキシャルウエハ20上に位置しないように第1遮断部111を移動させてホルダ103全体が露出した状態で、成膜を始める。ホルダ103を介してエピタキシャルウエハ20を加熱すると、成膜当初には図10に示す矢印のように熱が移動する。
【0046】
しかし、エピタキシャルウエハ20の成膜を進めると、原料はエピタキシャルウエハ20上およびホルダ103上に到達するので、エピタキシャルウエハ20上およびホルダ103上に堆積する。このため、図11に示すように、ホルダ103を介してエピタキシャルウエハ20を加熱した熱は、ホルダ103上に堆積した堆積物21を通る。エピタキシャルウエハ20はホルダ103に接しており、原料は特有の熱伝導率および放射率を有しているので、堆積物21の状態により、エピタキシャルウエハ20に到達する熱量は変化してしまうため、エピタキシャルウエハ20の温度を安定して制御することは難しい。
【0047】
一方、本実施の形態の真空蒸着装置100は、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の半径R1がエピタキシャルウエハ20の外接円C2の半径の1.5倍以下であるので、第2遮断部112の開口部112aの中心O1とエピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とを一致させて、第2遮断部112でエピタキシャルウエハ20を覆うと、成膜当初のエピタキシャルウエハ20を加熱した時点では、図12に示す矢印のように熱は移動する。
【0048】
エピタキシャルウエハ20上に成膜を開始しても、ホルダ103上の第2遮断部112に堆積物21が形成されるので、原料はエピタキシャルウエハ20上に選択的に到達し、エピタキシャルウエハ20を保持しているホルダ103に原料が付着することを低減できる。これにより、ホルダ103に原料が堆積することを抑制でき、ホルダ103においてエピタキシャルウエハ20が載置されていない領域上の第2遮断部112上に堆積物21が堆積する。このため、図13に示すように、ホルダ103を介してエピタキシャルウエハ20を加熱した熱は、成膜中に堆積物21の影響を受けにくくなる。したがって、堆積物21に起因したホルダの伝導率、放射率、輻射熱などの変動を抑制することができる。ホルダ103の熱の変動を抑制することにより、ホルダ103に載置した膜を形成するエピタキシャルウエハ20の温度の制御を安定して行なうことができる。特に、ホルダ103を何度使用しても、ホルダ103に堆積物21の付着を抑制できることから、ホルダ103の表面状態の変化を抑制できるので、ホルダ103の長期使用が可能になる。
【0049】
以上のように、本実施の形態における真空蒸着装置100を用いることにより、エピタキシャルウエハ20の温度制御を安定して行なうことができる。このため、このエピタキシャルウエハ20上に形成する膜の品質を向上できる。したがって、真空蒸着装置100により製造される半導体装置の品質も向上できる。
【0050】
ここで、本実施の形態では、基板として複数層のエピタキシャル層を有するエピタキシャルウエハ20を用いたが、本発明で用いる基板は、1層以上のエピタキシャル層を有するエピタキシャルウエハであってもよく、エピタキシャル層が形成されていない、つまりGaN基板11のみであってもよい。また、基板およびエピタキシャル層の材料はGaN系の材料に限定されない。
【0051】
また、本実施の形態では、真空蒸着装置100で成膜する膜の材料は、半導体および金属を例に挙げて説明したが、特に限定されず、絶縁体などを形成してもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、真空蒸着装置としてMBE装置を例に挙げて説明したが、真空中で基板上に膜を形成する装置であれば特に限定されず、たとえばEB(Electron-Beam:電子ビーム)装置、スパッタ装置などであってもよい。分子流のみが支配的となる高真空下での成膜に本発明が特に有効であるという観点から、真空蒸着装置としてMBE装置を用いることが好ましい。
【実施例1】
【0053】
(本発明例1)
本発明例1は、上述した本発明の実施の形態で説明した真空蒸着装置100を用いて、成膜した。
【0054】
具体的には、図3に示す遮断部110を備えた図2に示す真空蒸着装置100としてMBE装置を準備した。遮断部110は、第1遮断部111と、第2遮断部112、113とを有していた。第2遮断部112、113の開口部112a、113aは半径が11.5mmの円とした。また、加熱部105としては、熱源である抵抗加熱ヒータを用い、抵抗加熱ヒータの温度の制御は抵抗加熱ヒータに設置されている熱電対を使用して行なった。
【0055】
また、図8に示すように、GaN基板11上に、MOCVD法により、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14とをこの順で形成して、エピタキシャルウエハ20を準備した。GaN基板11の平面形状は、長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形であった。このため、準備したエピタキシャルウエハ20の平面形状も長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形とした。このエピタキシャルウエハ20の外接円の半径は、11.2mmであった。このエピタキシャルウエハ20をホルダ103に載置した。準備室で350℃30分間のプリベークを実施した後、エピタキシャルウエハ20を載置したホルダ103を真空蒸着装置100へ搬送した。次いで、基板用の遮断部110の第1遮断部111で、ホルダ103全体を覆った。
【0056】
また、Ga、Au、Mgを収容した原料セル121〜123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124を準備した。原料セル121〜124を完全に覆うように原料セル用の遮断部125〜128を配置した。また、真空ポンプ107で、チャンバ101の内部を1.0×10-11Torrにした。
【0057】
次に、加熱部105の温度を820℃まで昇温し、第1遮断部111をGaN成長用の第2遮断部112に切り替えた。つまり、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部112の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。このとき、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置した。
【0058】
また、Gaを収容した原料セル121、Mgを収容した原料セル123、N2ラジカル源を収容した原料セル124の遮断部125、127、128を開けて、原料であるGa、NおよびMgの分子流を、第2遮断部112の開口部112aを介して、ホルダ103に載置されたエピタキシャルウエハ20上に到達させた。各原料セルの条件としては、Gaフラックス量が1.4×10-6Torrで、Mgフラックス量が3.0×10-7Torrで、N2ラジカルの流量が1.3sccmで、N2プラズマ投入電力が250Wであった。成長時間を15分とした。これにより、エピタキシャルウエハ20のp+GaN層14上に、50nmの厚みのp+GaN層15を成膜した。
【0059】
次に、Ga、Mgの原料セル121、123、およびN2ラジカルの原料セル124を遮断部125、127、128で閉めた。また、第2遮断部112をホルダ103上から移動させて、原料セル121〜124側から見て第1遮断部111の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。これにより、Ga、NおよびMgの供給を停止した。
【0060】
Ga、Mgの原料セル121、123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124を遮断部125、127、128で閉めた後、加熱部105の温度を300℃とし、第1遮断部111をAu成長用の第2遮断部113に切り替えた。つまり、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部113の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。このとき、第2遮断部113の開口部113aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置した。
【0061】
次に、Auを内部に収容した原料セル122の遮断部126を開けて、原料であるAuの分子流を、第2遮断部113の開口部113aを介して、ホルダ103に載置されたp+GaN層15上に到達させた。Auの原料セルの条件としては、Auフラックス量が3.0×10-7Torrであった。成長時間を2時間とした。これにより、p+GaN層15上にp型電極として200nmの厚みのAu膜を形成して、図9に示す積層膜を形成した。
【0062】
このように、本発明例1の半導体装置の製造方法によれば、半導体と電極とを連続して成長することで清浄な電極/半導体界面が得られた。
【実施例2】
【0063】
本実施例では、第2遮断部112、113の開口部112a、113aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の1.5倍以下であることの効果について調べた。
【0064】
(本発明例2)
本発明例2は、上述した本発明の実施の形態で説明した真空蒸着装置100を用いて、成膜した。
【0065】
具体的には、図3に示す遮断部110を備えた図2に示す真空蒸着装置100としてMBE装置を準備した。遮断部110は、第1遮断部111と、第2遮断部112、113とを有していた。第2遮断部112、113の開口部112a、113aは半径が11.5mmの円とした。また、加熱部105としては、熱源である抵抗加熱ヒータを用い、抵抗加熱ヒータの温度の制御は抵抗加熱ヒータに設置されている熱電対を使用して行なった。
【0066】
また、図17に示すように、サファイア基板18上に、MOCVD法により、n-GaN層12を形成して、エピタキシャルウエハ19を準備した。サファイア基板18の平面形状は、長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形であった。このため、準備したエピタキシャルウエハ19の平面形状も長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形とした。このエピタキシャルウエハ19の外接円の半径は、11.2mmであった。このエピタキシャルウエハ19をホルダ103に載置した。準備室で350℃30分間のプリベークを実施した後、エピタキシャルウエハ19を載置したホルダ103を真空蒸着装置100へ搬送した。次いで、基板用の遮断部110の第1遮断部111で、ホルダ103全体を覆った。
【0067】
また、Ga、Au、Mgを収容した原料セル121〜123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124を準備した。原料セル121〜124を完全に覆うように原料セル用の遮断部125〜128を配置した。また、真空ポンプ107で、チャンバ101の内部を1.0×10-11Torrにした。
【0068】
次に、加熱部105の温度を820℃まで昇温し、第1遮断部111をGaN成長用の第2遮断部112に切り替えた。つまり、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部112の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。このとき、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ19の外接円C2の中心O2とが一致するように配置した。
【0069】
また、Gaを収容した原料セル121、およびN2ラジカル源の原料セル124の遮断部125、128を開けて、原料であるGa、Nの分子流を、第2遮断部112の開口部112aを介して、ホルダ103に載置されたエピタキシャルウエハ20上に到達させた。各原料セルの条件としては、Gaフラックス量が1.4×10-6Torrで、N2ラジカルの流量が1.3sccmで、N2プラズマ投入電力が250Wであった。成長時間を4時間とした。これにより、図18に示すように、エピタキシャルウエハ19のn-GaN層12上に、1μmの厚みのGaN層22を成膜した。
【0070】
次に、Gaの原料セル121、およびN2ラジカルの原料セル124を遮断部125、128で閉めた。また、第2遮断部112をホルダ103上から移動させて、原料セル121〜124側から見て第1遮断部111の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。これにより、Ga、Nの供給を停止した。
【0071】
さらに、図17に示す構造の別のエピタキシャルウエハ19を準備して、GaN層22を同様に形成すること(図18に示す積層膜形成すること)を5回繰り返した。この成膜においてエピタキシャルウエハ19の温度は、パイロメータによるサファイア基板18の温度により確認した。エピタキシャルウエハ19の温度と、加熱部の温度との関係を図14に示す。
【0072】
(比較例1)
比較例1の真空蒸着装置は、基本的には本発明例2の真空蒸着装置100と同様の構成を備えていたが、第2遮断部112の開口部112aが22.4mmの半径を有していた点において異なっていた。つまり、比較例1では、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の2倍であった。
【0073】
比較例1の成膜においても、本発明例2と同様にエピタキシャルウエハの温度を測定した。比較例1のエピタキシャルウエハの温度と加熱部の温度との関係を図14に示す。
【0074】
(比較例2)
比較例2の真空蒸着装置は、基本的には本発明例1の真空蒸着装置100と同様の構成を備えていたが、第2遮断部112、113を備えていない点において異なっていた。つまり、GaN層22を成膜する際には、遮断部がホルダ103上に配置していなかった。
【0075】
比較例2の成膜においても、本発明例2と同様にエピタキシャルウエハの温度を測定した。比較例2のエピタキシャルウエハの温度と加熱部の温度との関係を図14に示す。
【0076】
(測定結果)
図14に示すように、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の2倍であった比較例1、および、第2遮断部112が配置されない状態でGaN層22を成膜した比較例2は、成膜を進めるにつれて、加熱部の温度に対して、エピタキシャルウエハの加熱温度が低下していった。このため、比較例1および2の真空蒸着装置を用いるとエピタキシャルウエハの加熱温度が安定しないので、製造する膜の品質が低下することがわかった。
【0077】
一方、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の1.5倍以下であった本発明例2は、成膜を進めても、加熱部の温度に対してエピタキシャルウエハの加熱温度を一定に保つことができた。
【0078】
詳細には、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の2倍であった比較例1は、第2遮断部112を備えていない比較例2と同様にエピタキシャルウエハの加熱温度が安定しなかったが、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径を1.0倍にすることによって、ホルダ103へ堆積物が付着することを抑制できたので、エピタキシャルウエハの加熱温度が安定した。この点から、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径を、基板の外接円の半径の1.5倍以下にすることにより、本発明例2と同様の効果が得られると考えられる。
【0079】
以上説明したように、本実施例によれば、第2遮断部112、113の開口部112a、113aの内接円の半径を、基板の外接円の半径の1.5倍以下にすることにより、膜を形成する基板の温度制御を安定して行なうことができることが確認できた。
【0080】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
10 pnダイオード、11 GaN基板、12 n-GaN層、13 p-GaN層、14 p+GaN層、15 p+GaN層、16 p型電極、17 n型電極、18 サファイア基板、19,20 エピタキシャルウエハ、21 堆積物、22 GaN層、100 真空蒸着装置、101 チャンバ、103 ホルダ、105 加熱部、107 真空ポンプ、110 遮断部、111 第1遮断部、112,113 第2遮断部、112a,113a 開口部、114 接続部、115 軸、121〜124 原料セル、125〜128 遮断部、C1 内接円、C2 外接円、O1,O2 中心、R1,R2 半径。
【技術分野】
【0001】
本発明は真空蒸着装置および半導体装置の製造方法に関し、より特定的にはMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)装置およびこの装置により製造される半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を構成する膜を形成するために、真空蒸着装置が用いられている。真空蒸着装置は、高真空中で原料を加熱して蒸発させ、気体分子となった原料が基板に衝突および付着することによって、基板上に膜を形成する装置である。このような真空蒸着装置として、たとえば特開平6−326295号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、基板と原料蒸発源との間で、原料蒸発源から基板への原料ビームの通過経路に出入りし、かつ原料ビームの一部が通過できる穴もしくはスリットのいずれかを有するビーム強度可変シャッタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−326295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図15および図16は、上記特許文献1に開示のビーム強度可変シャッタの正面図である。上記特許文献1のビーム強度可変シャッタは、瞬時にビーム強度を変化させるために、図15に示す櫛型または図16に示す多孔形が適当であることが開示されている。このため、上記特許文献1のビーム強度可変シャッタを用いることで、原料の分子流の全体的な量を減少させることは可能である。しかし、ビーム強度可変シャッタの全体にほぼ均一に穴もしくはスリットが形成されているので、分子流の範囲を制限することはできない。このため、上記特許文献1では、基板を保持するホルダ上にも気体分子となった原料が付着する。したがって、ホルダで保持する基板の温度制御が難しいという問題がある。基板の温度制御が十分にできないと、所定の温度で膜を成長できないことや、基板面内での膜の成長のばらつきが生じることなどにより膜の品質が低下してしまう。膜の品質が低下すると、この膜を備える半導体装置の品質も低下してしまう。
【0006】
したがって、本発明の一の目的は、膜を形成する基板の温度制御を安定して行なう真空蒸着装置を提供することである。本発明の他の目的は、品質を向上できる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空蒸着装置は、基板の上に膜を形成する真空蒸着装置であって、ホルダと、加熱部と、原料保持部と、第1遮断部と、第2遮断部とを備えている。ホルダは、基板を載置する。加熱部は、ホルダを加熱する。原料保持部は、基板上に形成する膜の原料を内部に収容する。第1遮断部は、原料保持部側から見て、ホルダよりも外周が外側に位置することが可能である。第2遮断部は、第1遮断部と選択的に、原料保持部側から見て、ホルダよりも外周が外側に位置することが可能であり、開口部を有する。第2遮断部の開口部の内接円の半径は、基板の外接円の半径の1.5倍以下である。
【0008】
本発明の真空蒸着装置によれば、第2遮断部の開口部の内接円の半径が基板の外接円の半径の1.5倍以下であるので、膜を形成する際に、第2遮断部の開口部の中心と基板の外接円の中心とを一致させて、第2遮断部で基板を覆うと、開口部を通る原料が基板上に選択的に到達し、ホルダに原料が付着することを低減できる。これにより、ホルダに原料が堆積することを抑制できるので、膜を形成する際に、ホルダの伝導率、放射率などの変動を抑制することができる。ホルダに載置した基板の温度はホルダの表面状態に大きく影響を受けるので、ホルダの変動を抑制することにより、ホルダに載置した膜を形成する基板の温度の制御を安定して行なうことができる。
【0009】
上記真空蒸着装置において好ましくは、第2遮断部は、基板の上に形成する膜を構成する種類の数以上配置される。
【0010】
膜を構成する材料の種類に応じて原料が変わるので、使用する原料毎に第2遮断部を使い分けることで、第2遮断部の放射熱を安定化させることができる。このため、ホルダへの影響をより低減できるので、ホルダに載置した基板の温度の制御をより安定して行なうことができる。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記真空蒸着装置を用いて、基板上に膜を形成する。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、基板の温度制御を安定して行なうことができるので、基板上に形成する膜の品質を向上することができる。膜の品質を向上できるので、この膜を備える半導体装置の品質も向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の真空蒸着装置によれば、膜を形成する基板の温度制御を安定して行なうことができる。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における真空蒸着装置を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態における第1および第2遮断部を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態における第2遮断部を概略的に示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態における別の第2遮断部を概略的に示す上面図である。
【図6】本発明の実施の形態における基板を概略的に示す上面図である。
【図7】本発明の実施の形態における別の基板を概略的に示す上面図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法により製造された積層状態を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における効果を説明するための図であり、比較例を示す。
【図11】本発明の実施の形態における効果を説明するための図であり、比較例を示す。
【図12】本発明の実施の形態における効果を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態における効果を説明するための図である。
【図14】実施例2において、加熱部の温度と、基板の温度との関係を示す図である。
【図15】特許文献1のシャッタを示す正面図である。
【図16】特許文献1のシャッタを示す正面図である。
【図17】実施例2の本発明例2におけるエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図18】実施例2の本発明例2における半導体装置の製造方法により製造された積層状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1を参照して、本実施の形態における半導体装置について説明する。本実施の形態では、半導体装置としてpnダイオード10を例に挙げて説明する。図1に示すように、本実施の形態におけるpnダイオード10は、GaN(窒化ガリウム)基板11と、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14と、p+GaN層15と、p型電極16と、n型電極17とを備えている。n-GaN層12は、GaN基板11上に形成されている。p-GaN層13は、n-GaN層12上に形成されている。p+GaN層14は、p-GaN層13上に形成されている。p+GaN層15は、p+GaN層14上に形成されている。p型電極16は、p+GaN層15上に形成され、たとえばAu(金)からなる。n型電極17は、GaN基板においてn-GaN層12が形成された面と反対側の面に形成され、たとえばTi(チタン)/Al(アルミニウム)からなる。
【0017】
続いて、図2〜図8を参照して、本実施の形態における真空蒸着装置100を説明する。真空蒸着装置100は、基板の上に膜を形成する。本実施の形態の真空蒸着装置100は、図1に示す半導体装置を製造するための装置であり、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)装置である。
【0018】
図2に示すように、真空蒸着装置100は、チャンバ101と、ホルダ103と、加熱部105と、基板用の遮断部110と、原料セル121〜124と、原料セル用の遮断部125〜128とを備えている。基板用の遮断部110は、図3に示すように、第1遮断部111と、第2遮断部112、113と、接続部114と、軸115とを含んでいる。
【0019】
チャンバ101の内部に収容されたホルダ103は、基板を載置する。本実施の形態では、基板としてエピタキシャルウエハ20(図8参照)を載置する。
【0020】
加熱部105は、ホルダ103を介して基板11を加熱する。加熱部105はチャンバ101の内部に配置される。加熱部105は、たとえば抵抗加熱ヒータを用いる。温度制御のために、加熱部105は熱電対をさらに含んでいてもよい。加熱部105は、固定式ヒータであることが好ましい。
【0021】
真空ポンプ107は、チャンバ101に接続され、チャンバ101の内部を真空にすることが可能である。
【0022】
遮断部110の第1遮断部111および第2遮断部112、113は、ホルダ103と原料セル121〜124との間に配置される。図3に示すように、第1遮断部111および第2遮断部112、113は、接続部114を介して、固定された軸115に接続されている。つまり、軸115を中心として、第1遮断部111および第2遮断部112、113は、円弧を描くように移動可能である。第1遮断部111および第2遮断部112、113の回転角度によってそれぞれ使い分けることが可能であるので、第1遮断部111および第2遮断部112、113は、選択的に使用可能である。
【0023】
第1遮断部111は、ホルダ103の全体を覆うことが可能である。言い換えると、第1遮断部111の外周は、原料セル121〜124側から見て、ホルダ103よりも外側に位置することが可能である。さらに言い換えると、ホルダ103は、加熱部105側(原料セル121〜124と反対側)から見て、ホルダ103を第1遮断部111の表面に投影した全ての領域を含む。つまり、第1遮断部111は、原料セル121〜124からホルダ103への原料の分子流の全てを実質的に遮ることが可能である。
【0024】
図2および図3に示すように、第2遮断部112、113の各々は、開口部112a、113aを有する。第2遮断部112、113の各々は、ホルダ103の全体を覆うことが可能である。言い換えると、第2遮断部112、113の外周は、原料セル121〜124側から見て、ホルダ103よりも外側に位置することが可能である。さらに言い換えると、ホルダ103は、加熱部105側(原料セル121〜124と反対側)から見て、ホルダ103を第2遮断部112、113の表面に投影した全ての領域を含む。ただし、第2遮断部112、113は開口部112a、113aを有しているので、この開口部112a、113aを介して、原料セル121〜124からホルダ103へ向けて原料の分子流が到達することが可能である。つまり、第2遮断部112、113は、開口部112a、113aにより、原料を分子流の範囲を絞ることができる。第2遮断部112、113の開口部112a、113aの形状については、後述する。
【0025】
原料セル121〜124は、基板11上に形成する膜の原料を内部に収容する原料保持部である。原料セル121〜124は、膜を構成する各原料を保持する。本実施の形態では、原料セル121〜124は、Ga(ガリウム)、p型電極の材料であるAu、ドーパントの材料であるMg(マグネシウム)、およびN2(窒素)ラジカル源を内部に収容している。
【0026】
原料セル用の遮断部125〜128の各々は、原料セル121〜124を覆うことが可能である。原料セル用の遮断部125〜128は、原料セル121〜124の内部に収容されている原料を供給するときには、原料セル121〜124を覆わず、原料を供給しないときには、原料セル121〜124の全体を覆う。つまり、原料セル用の遮断部125〜128は、原料の供給を制御するための部材である。
【0027】
ここで、図1〜図7を参照して、基板用の遮断部110の第2遮断部112、113について説明する。第2遮断部112、113は、互いにほぼ等しい形状であるので、第2遮断部112を例に挙げて説明する。主に図4〜図7を参照して、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の半径R1は、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の半径の1.5倍以下である。
【0028】
第2遮断部112の開口部112aが図4に示すように円形である場合には、内接円の半径は開口部112aの半径R1である。第2遮断部112の開口部112aが図5に示すように矩形の場合には、内接円C1の半径R1は、矩形の内部にあり、かつ矩形の少なくとも2つの辺に接する最大の円の半径であり、言い換えると、矩形の内部に半径のある最大面積の円の半径である。
【0029】
エピタキシャルウエハ20が図6に示すように円形である場合には、外接円の半径はエピタキシャルウエハ20の半径R2である。エピタキシャルウエハ20が図7に示すように矩形の場合には、外接円C2の半径R2は、矩形のすべての頂点を通る円の半径であり、言い換えると、矩形の外部にある最小面積の円の半径である。
【0030】
第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の半径R1は、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の半径の1.5倍以下であれば、特に限定されないが、1.1倍以下であることが好ましく、エピタキシャルウエハ20上に膜を形成できる面積を確保する観点から0.5倍以上であることが好ましい。
【0031】
また、第2遮断部112、113の開口部112a、113aは、エピタキシャルウエハ20の外形と類似形であり、エピタキシャルウエハ20の大きさの1.5倍以下であることが好ましい。
【0032】
第2遮断部112、113は、基板の上に形成する膜の種類数以上配置されることが好ましい。本実施の形態では、基板として、GaN基板11と、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14とを備えたエピタキシャルウエハ20とし、基板の上に形成する膜として、p+GaN層14およびp型電極16の2種類としている。このため、第2遮断部112はp+GaN層14を形成する際に用いられ、第2遮断部113はp型電極16を形成する際に用いられる。なお、第2遮断部は、1枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
【0033】
続いて、図1〜図9を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態では、図2に示す真空蒸着装置100を用いて、半導体装置として図1に示すpnダイオード10を製造する。
【0034】
まず、図8に示すように、エピタキシャルウエハ20を準備する。エピタキシャルウエハ20は、たとえば以下のように形成する。具体的には、まず基板11を準備し、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法により、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14とをこの順で形成する。
【0035】
次に、このエピタキシャルウエハ20を真空蒸着装置100のホルダ103に載置する。また、基板用の遮断部110の第1遮断部111で、ホルダ103全体を覆う。
【0036】
また、Ga、Au、Mg、およびN2ラジカル源を収容した原料セル121〜124を準備する。これらの原料セル121〜124を完全に覆うように原料セル用の遮断部125〜128を配置する。また、真空ポンプ107で、チャンバ101の内部を真空にする。真空とは、たとえばチャンバ101内の圧力が1×10-12Torr以上1.0×10-5Torr以下である。
【0037】
次に、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部112の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置する。このとき、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置する。
【0038】
次に、加熱部105でエピタキシャルウエハ20を加熱する。また、Ga、Mgを収容した原料セル121、123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124の遮断部125、127、128を開けて、原料であるGa、MgおよびN2ラジカルの分子流を、第2遮断部112の開口部112aを介して、ホルダ103に載置されたエピタキシャルウエハ20上に到達させる。原料がエピタキシャルウエハ20の表面に衝突および付着することにより、エピタキシャルウエハ20のp+GaN層14上に、p+GaN層15を成膜することができる。
【0039】
次に、第2遮断部112をホルダ103上から移動させて、原料セル121〜124側から見て第1遮断部111の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置する。また、p+GaN層15の原料セル121、123、124用の遮断部125、127、128で原料セル121、123、124を覆って、Ga、MgおよびNの供給を停止する。これにより、p+GaN層15が形成されたエピタキシャルウエハ20の成膜を停止する。
【0040】
次に、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部113の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置する。このとき、第2遮断部113の開口部113aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置する。
【0041】
次に、加熱部105でエピタキシャルウエハ20を加熱する。また、Auを内部に収容した原料セル124の遮断部128を開けて、原料であるAuの分子流を、第2遮断部113の開口部113aを介して、ホルダ103に載置されたp+GaN層15上に到達させる。原料がp+GaN層15の表面に衝突および付着することにより、p+GaN層15上にp型電極16としてのAu膜を形成することができる。これにより、図9に示すように、p型電極16がさらに形成されたpnダイオード用のウエハを形成することができる。このようにp型電極16を形成することで、p+GaN層15とp型電極16との清浄な界面を形成することができる。
【0042】
次に、p+GaN層15およびp型電極16が形成されたエピタキシャルウエハ20を真空蒸着装置100から取り出す。その後、基板11においてn-GaN層12を形成した面と反対側にn型電極17を形成する。n型電極17の形成方法は特に限定されないが、たとえば図2に示す真空蒸着装置100により形成してもよい。つまり、ホルダ103にGaN基板11が原料セルと対応するように配置して、n型電極17の原料を供給することによりn型電極17を形成する。このとき、第2遮断部を用いることが好ましい。
【0043】
以上の工程を実施することにより、図1に示す半導体装置としてのpnダイオード10を製造することができる。
【0044】
続いて、図10〜図12を参照して、本実施の形態における真空蒸着装置100の効果について、比較例と比較して説明する。
【0045】
比較例の真空蒸着装置は、基本的には本実施の形態の真空蒸着装置100と同様の構成を備えているが、第2遮断部112を備えていない点において異なる。比較例の真空蒸着装置において、エピタキシャルウエハ20を加熱して、エピタキシャルウエハ20上に位置しないように第1遮断部111を移動させてホルダ103全体が露出した状態で、成膜を始める。ホルダ103を介してエピタキシャルウエハ20を加熱すると、成膜当初には図10に示す矢印のように熱が移動する。
【0046】
しかし、エピタキシャルウエハ20の成膜を進めると、原料はエピタキシャルウエハ20上およびホルダ103上に到達するので、エピタキシャルウエハ20上およびホルダ103上に堆積する。このため、図11に示すように、ホルダ103を介してエピタキシャルウエハ20を加熱した熱は、ホルダ103上に堆積した堆積物21を通る。エピタキシャルウエハ20はホルダ103に接しており、原料は特有の熱伝導率および放射率を有しているので、堆積物21の状態により、エピタキシャルウエハ20に到達する熱量は変化してしまうため、エピタキシャルウエハ20の温度を安定して制御することは難しい。
【0047】
一方、本実施の形態の真空蒸着装置100は、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の半径R1がエピタキシャルウエハ20の外接円C2の半径の1.5倍以下であるので、第2遮断部112の開口部112aの中心O1とエピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とを一致させて、第2遮断部112でエピタキシャルウエハ20を覆うと、成膜当初のエピタキシャルウエハ20を加熱した時点では、図12に示す矢印のように熱は移動する。
【0048】
エピタキシャルウエハ20上に成膜を開始しても、ホルダ103上の第2遮断部112に堆積物21が形成されるので、原料はエピタキシャルウエハ20上に選択的に到達し、エピタキシャルウエハ20を保持しているホルダ103に原料が付着することを低減できる。これにより、ホルダ103に原料が堆積することを抑制でき、ホルダ103においてエピタキシャルウエハ20が載置されていない領域上の第2遮断部112上に堆積物21が堆積する。このため、図13に示すように、ホルダ103を介してエピタキシャルウエハ20を加熱した熱は、成膜中に堆積物21の影響を受けにくくなる。したがって、堆積物21に起因したホルダの伝導率、放射率、輻射熱などの変動を抑制することができる。ホルダ103の熱の変動を抑制することにより、ホルダ103に載置した膜を形成するエピタキシャルウエハ20の温度の制御を安定して行なうことができる。特に、ホルダ103を何度使用しても、ホルダ103に堆積物21の付着を抑制できることから、ホルダ103の表面状態の変化を抑制できるので、ホルダ103の長期使用が可能になる。
【0049】
以上のように、本実施の形態における真空蒸着装置100を用いることにより、エピタキシャルウエハ20の温度制御を安定して行なうことができる。このため、このエピタキシャルウエハ20上に形成する膜の品質を向上できる。したがって、真空蒸着装置100により製造される半導体装置の品質も向上できる。
【0050】
ここで、本実施の形態では、基板として複数層のエピタキシャル層を有するエピタキシャルウエハ20を用いたが、本発明で用いる基板は、1層以上のエピタキシャル層を有するエピタキシャルウエハであってもよく、エピタキシャル層が形成されていない、つまりGaN基板11のみであってもよい。また、基板およびエピタキシャル層の材料はGaN系の材料に限定されない。
【0051】
また、本実施の形態では、真空蒸着装置100で成膜する膜の材料は、半導体および金属を例に挙げて説明したが、特に限定されず、絶縁体などを形成してもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、真空蒸着装置としてMBE装置を例に挙げて説明したが、真空中で基板上に膜を形成する装置であれば特に限定されず、たとえばEB(Electron-Beam:電子ビーム)装置、スパッタ装置などであってもよい。分子流のみが支配的となる高真空下での成膜に本発明が特に有効であるという観点から、真空蒸着装置としてMBE装置を用いることが好ましい。
【実施例1】
【0053】
(本発明例1)
本発明例1は、上述した本発明の実施の形態で説明した真空蒸着装置100を用いて、成膜した。
【0054】
具体的には、図3に示す遮断部110を備えた図2に示す真空蒸着装置100としてMBE装置を準備した。遮断部110は、第1遮断部111と、第2遮断部112、113とを有していた。第2遮断部112、113の開口部112a、113aは半径が11.5mmの円とした。また、加熱部105としては、熱源である抵抗加熱ヒータを用い、抵抗加熱ヒータの温度の制御は抵抗加熱ヒータに設置されている熱電対を使用して行なった。
【0055】
また、図8に示すように、GaN基板11上に、MOCVD法により、n-GaN層12と、p-GaN層13と、p+GaN層14とをこの順で形成して、エピタキシャルウエハ20を準備した。GaN基板11の平面形状は、長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形であった。このため、準備したエピタキシャルウエハ20の平面形状も長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形とした。このエピタキシャルウエハ20の外接円の半径は、11.2mmであった。このエピタキシャルウエハ20をホルダ103に載置した。準備室で350℃30分間のプリベークを実施した後、エピタキシャルウエハ20を載置したホルダ103を真空蒸着装置100へ搬送した。次いで、基板用の遮断部110の第1遮断部111で、ホルダ103全体を覆った。
【0056】
また、Ga、Au、Mgを収容した原料セル121〜123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124を準備した。原料セル121〜124を完全に覆うように原料セル用の遮断部125〜128を配置した。また、真空ポンプ107で、チャンバ101の内部を1.0×10-11Torrにした。
【0057】
次に、加熱部105の温度を820℃まで昇温し、第1遮断部111をGaN成長用の第2遮断部112に切り替えた。つまり、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部112の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。このとき、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置した。
【0058】
また、Gaを収容した原料セル121、Mgを収容した原料セル123、N2ラジカル源を収容した原料セル124の遮断部125、127、128を開けて、原料であるGa、NおよびMgの分子流を、第2遮断部112の開口部112aを介して、ホルダ103に載置されたエピタキシャルウエハ20上に到達させた。各原料セルの条件としては、Gaフラックス量が1.4×10-6Torrで、Mgフラックス量が3.0×10-7Torrで、N2ラジカルの流量が1.3sccmで、N2プラズマ投入電力が250Wであった。成長時間を15分とした。これにより、エピタキシャルウエハ20のp+GaN層14上に、50nmの厚みのp+GaN層15を成膜した。
【0059】
次に、Ga、Mgの原料セル121、123、およびN2ラジカルの原料セル124を遮断部125、127、128で閉めた。また、第2遮断部112をホルダ103上から移動させて、原料セル121〜124側から見て第1遮断部111の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。これにより、Ga、NおよびMgの供給を停止した。
【0060】
Ga、Mgの原料セル121、123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124を遮断部125、127、128で閉めた後、加熱部105の温度を300℃とし、第1遮断部111をAu成長用の第2遮断部113に切り替えた。つまり、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部113の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。このとき、第2遮断部113の開口部113aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ20の外接円C2の中心O2とが一致するように配置した。
【0061】
次に、Auを内部に収容した原料セル122の遮断部126を開けて、原料であるAuの分子流を、第2遮断部113の開口部113aを介して、ホルダ103に載置されたp+GaN層15上に到達させた。Auの原料セルの条件としては、Auフラックス量が3.0×10-7Torrであった。成長時間を2時間とした。これにより、p+GaN層15上にp型電極として200nmの厚みのAu膜を形成して、図9に示す積層膜を形成した。
【0062】
このように、本発明例1の半導体装置の製造方法によれば、半導体と電極とを連続して成長することで清浄な電極/半導体界面が得られた。
【実施例2】
【0063】
本実施例では、第2遮断部112、113の開口部112a、113aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の1.5倍以下であることの効果について調べた。
【0064】
(本発明例2)
本発明例2は、上述した本発明の実施の形態で説明した真空蒸着装置100を用いて、成膜した。
【0065】
具体的には、図3に示す遮断部110を備えた図2に示す真空蒸着装置100としてMBE装置を準備した。遮断部110は、第1遮断部111と、第2遮断部112、113とを有していた。第2遮断部112、113の開口部112a、113aは半径が11.5mmの円とした。また、加熱部105としては、熱源である抵抗加熱ヒータを用い、抵抗加熱ヒータの温度の制御は抵抗加熱ヒータに設置されている熱電対を使用して行なった。
【0066】
また、図17に示すように、サファイア基板18上に、MOCVD法により、n-GaN層12を形成して、エピタキシャルウエハ19を準備した。サファイア基板18の平面形状は、長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形であった。このため、準備したエピタキシャルウエハ19の平面形状も長辺が10mmで、短辺が5mmの長方形とした。このエピタキシャルウエハ19の外接円の半径は、11.2mmであった。このエピタキシャルウエハ19をホルダ103に載置した。準備室で350℃30分間のプリベークを実施した後、エピタキシャルウエハ19を載置したホルダ103を真空蒸着装置100へ搬送した。次いで、基板用の遮断部110の第1遮断部111で、ホルダ103全体を覆った。
【0067】
また、Ga、Au、Mgを収容した原料セル121〜123、およびN2ラジカル源を収容した原料セル124を準備した。原料セル121〜124を完全に覆うように原料セル用の遮断部125〜128を配置した。また、真空ポンプ107で、チャンバ101の内部を1.0×10-11Torrにした。
【0068】
次に、加熱部105の温度を820℃まで昇温し、第1遮断部111をGaN成長用の第2遮断部112に切り替えた。つまり、ホルダ103の全体を覆っている第1遮断部111をホルダ103上に位置しないように移動し、原料セル121〜124側から見て第2遮断部112の外周をホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。このとき、第2遮断部112の開口部112aの内接円C1の中心O1と、エピタキシャルウエハ19の外接円C2の中心O2とが一致するように配置した。
【0069】
また、Gaを収容した原料セル121、およびN2ラジカル源の原料セル124の遮断部125、128を開けて、原料であるGa、Nの分子流を、第2遮断部112の開口部112aを介して、ホルダ103に載置されたエピタキシャルウエハ20上に到達させた。各原料セルの条件としては、Gaフラックス量が1.4×10-6Torrで、N2ラジカルの流量が1.3sccmで、N2プラズマ投入電力が250Wであった。成長時間を4時間とした。これにより、図18に示すように、エピタキシャルウエハ19のn-GaN層12上に、1μmの厚みのGaN層22を成膜した。
【0070】
次に、Gaの原料セル121、およびN2ラジカルの原料セル124を遮断部125、128で閉めた。また、第2遮断部112をホルダ103上から移動させて、原料セル121〜124側から見て第1遮断部111の外周がホルダ103の外周よりも外側に位置するように配置した。これにより、Ga、Nの供給を停止した。
【0071】
さらに、図17に示す構造の別のエピタキシャルウエハ19を準備して、GaN層22を同様に形成すること(図18に示す積層膜形成すること)を5回繰り返した。この成膜においてエピタキシャルウエハ19の温度は、パイロメータによるサファイア基板18の温度により確認した。エピタキシャルウエハ19の温度と、加熱部の温度との関係を図14に示す。
【0072】
(比較例1)
比較例1の真空蒸着装置は、基本的には本発明例2の真空蒸着装置100と同様の構成を備えていたが、第2遮断部112の開口部112aが22.4mmの半径を有していた点において異なっていた。つまり、比較例1では、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の2倍であった。
【0073】
比較例1の成膜においても、本発明例2と同様にエピタキシャルウエハの温度を測定した。比較例1のエピタキシャルウエハの温度と加熱部の温度との関係を図14に示す。
【0074】
(比較例2)
比較例2の真空蒸着装置は、基本的には本発明例1の真空蒸着装置100と同様の構成を備えていたが、第2遮断部112、113を備えていない点において異なっていた。つまり、GaN層22を成膜する際には、遮断部がホルダ103上に配置していなかった。
【0075】
比較例2の成膜においても、本発明例2と同様にエピタキシャルウエハの温度を測定した。比較例2のエピタキシャルウエハの温度と加熱部の温度との関係を図14に示す。
【0076】
(測定結果)
図14に示すように、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の2倍であった比較例1、および、第2遮断部112が配置されない状態でGaN層22を成膜した比較例2は、成膜を進めるにつれて、加熱部の温度に対して、エピタキシャルウエハの加熱温度が低下していった。このため、比較例1および2の真空蒸着装置を用いるとエピタキシャルウエハの加熱温度が安定しないので、製造する膜の品質が低下することがわかった。
【0077】
一方、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の1.5倍以下であった本発明例2は、成膜を進めても、加熱部の温度に対してエピタキシャルウエハの加熱温度を一定に保つことができた。
【0078】
詳細には、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径の2倍であった比較例1は、第2遮断部112を備えていない比較例2と同様にエピタキシャルウエハの加熱温度が安定しなかったが、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径が、基板の外接円の半径を1.0倍にすることによって、ホルダ103へ堆積物が付着することを抑制できたので、エピタキシャルウエハの加熱温度が安定した。この点から、第2遮断部112の開口部112aの内接円の半径を、基板の外接円の半径の1.5倍以下にすることにより、本発明例2と同様の効果が得られると考えられる。
【0079】
以上説明したように、本実施例によれば、第2遮断部112、113の開口部112a、113aの内接円の半径を、基板の外接円の半径の1.5倍以下にすることにより、膜を形成する基板の温度制御を安定して行なうことができることが確認できた。
【0080】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
10 pnダイオード、11 GaN基板、12 n-GaN層、13 p-GaN層、14 p+GaN層、15 p+GaN層、16 p型電極、17 n型電極、18 サファイア基板、19,20 エピタキシャルウエハ、21 堆積物、22 GaN層、100 真空蒸着装置、101 チャンバ、103 ホルダ、105 加熱部、107 真空ポンプ、110 遮断部、111 第1遮断部、112,113 第2遮断部、112a,113a 開口部、114 接続部、115 軸、121〜124 原料セル、125〜128 遮断部、C1 内接円、C2 外接円、O1,O2 中心、R1,R2 半径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に膜を形成する真空蒸着装置であって、
前記基板を載置するホルダと、
前記ホルダを加熱する加熱部と、
前記基板上に形成する前記膜の原料を内部に収容する原料保持部と、
前記原料保持部側から見て、前記ホルダよりも外周が外側に位置することが可能な第1遮断部と、
前記第1遮断部と選択的に、前記原料保持部側から見て、前記ホルダよりも外周が外側に位置することが可能であり、開口部を有する第2遮断部と備え、
前記第2遮断部の前記開口部の内接円の半径は、前記基板の外接円の半径の1.5倍以下である、真空蒸着装置。
【請求項2】
前記第2遮断部は、前記基板の上に形成する前記膜の種類の数以上配置される、請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空蒸着装置を用いて、前記基板上に前記膜を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板の上に膜を形成する真空蒸着装置であって、
前記基板を載置するホルダと、
前記ホルダを加熱する加熱部と、
前記基板上に形成する前記膜の原料を内部に収容する原料保持部と、
前記原料保持部側から見て、前記ホルダよりも外周が外側に位置することが可能な第1遮断部と、
前記第1遮断部と選択的に、前記原料保持部側から見て、前記ホルダよりも外周が外側に位置することが可能であり、開口部を有する第2遮断部と備え、
前記第2遮断部の前記開口部の内接円の半径は、前記基板の外接円の半径の1.5倍以下である、真空蒸着装置。
【請求項2】
前記第2遮断部は、前記基板の上に形成する前記膜の種類の数以上配置される、請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空蒸着装置を用いて、前記基板上に前記膜を形成する、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−104510(P2012−104510A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248803(P2010−248803)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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