説明

絶縁性薄膜、絶縁性薄膜の形成用溶液、絶縁性薄膜の製造方法、電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置

【課題】低温で塗布形成可能で高い絶縁性と誘電率を有し、かつ表面処理可能な絶縁性薄膜の形成用溶液、それを用いて形成した絶縁性薄膜、絶縁性薄膜をゲート絶縁層として用いることで優れた性能を有する電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に形成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成された高分子と、高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に離間して形成されたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極間に形成された半導体と、を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性薄膜、絶縁性薄膜の形成用溶液、絶縁性薄膜の製造方法、電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置に関する。特に、高い絶縁性と誘電率を有する絶縁性薄膜、絶縁性薄膜の形成用溶液、絶縁性薄膜の製造方法、電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般に普及している液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び電気泳動型ディスプレイ等の表示装置の多くは薄膜トランジスタ(TFT)を表示スイッチングデバイスとしたアクティブマトリックス型の駆動装置を利用している。このような表示スイッチとしてのTFTには、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極−ドレイン電極、ソース電極−ドレイン電極間に配置された半導体からなる電界効果型トランジスタ(FET)が利用されている。FETの駆動原理は、ゲート電極に電圧を印加することにより半導体中の電子またはホールからなるチャージキャリア量をコントロールし、ソース電極−ドレイン電極間のチャージ移動、すなわち電流を制御するもので、このような作用によりスイッチの役割を果たしている。
【0003】
以上のようなTFTアレイの半導体には、従来、アモルファスもしくは多結晶の薄膜シリコンを半導体として利用したものが使われているが、一般的に、薄膜シリコンTFTの電極や半導体、絶縁層等の各層は真空プロセス及び300℃以上の高温プロセスが必要で、更にパターニングにはフォトリソグラフィ法を用いるなど、比較的煩雑で高コストなプロセスにより形成されている。
【0004】
これに対して近年では、電極材料には溶液分散型ナノ金属粒子、半導体には有機半導体、絶縁材料には有機高分子等の溶媒に可溶または分散可能な材料を用いることが提案され、インクジェット、スピンコートやフレキソ印刷等の塗布方式を用いた方法が数多く報告されるようになり、これによってプロセスの低温化、高速化、低コスト化が実現可能となってきた。
【0005】
溶媒に可溶または分散可能な塗布型材料を用いたゲート絶縁層の形成には、従来より有機高分子材料や、有機金属化合物を用いた有機無機ハイブリッド材料(特許文献1〜4参照)、金属酸化物微粒子を混合したコンポジット材料(特許文献5、非特許文献1、2参照)等が検討され、塗布形成することでFETのゲート絶縁層材料として利用可能であることが実証されてきた。有機高分子材料から得られたゲート絶縁層は十分な絶縁性を示すが、通常2.5から3.8程度の低い比誘電率を示すことから、FET特性が不十分であることが多く、誘電率の高い材料が求められていた。そのような中で、有機無機ハイブリッド材料や有機無機コンポジット材料は、高い誘電率を示す金属酸化物材料を添加することで有機材料のみでは得られない高い誘電率を得ることが可能であるため、その利用が種々検討されている。
【0006】
しかしながら、有機金属化合物を利用する有機無機ハイブリッド材料は、酸やアルカリを用いた加水分解過程を経た後、塗布することで薄膜を形成するため、膜中に残留した酸やアルカリの影響で十分な絶縁性が得られず、高いリーク電流が発生するなど新たな問題が生じた。また、有機無機コンポジット材料は、微粒子を添加するため、膜中における微粒子の分散ばらつきや微粒子の形状から生じる表面凹凸によって、FET特性は再現性に乏しいものとなった。
【0007】
また、従来技術の有機無機ハイブリッド材料や有機無機コンポジット材料は、シリコン酸化物を用いることで材料特性の安定化を図っているが、安定性を獲得する代わりに反応性に乏しいため比較的高温焼成を必要とし、さらに薄膜形成後には絶縁性薄膜の表面処理などの後処理に対する耐性が強いため、強い処理工程により表面形状や化学的性質に変化が生じることで、FET特性の劣化が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−120371号公報
【特許文献2】特開2006−070029号公報
【特許文献3】特開2008−147410号公報
【特許文献4】特開2008−166764号公報
【特許文献5】特開2004−055649号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Am.Chem. Soc. 127,14655 (2005).
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett. 85, 3295 (2004).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低温で塗布形成可能で高い絶縁性と誘電率を有し、かつ表面処理可能な絶縁性薄膜の形成用溶液、それを用いて形成した絶縁性薄膜、絶縁性薄膜をゲート絶縁層として用いることで優れた性能を有する電界効果型トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、高分子と、高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子と、を含むことを特徴とする絶縁性薄膜としたものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、金属原子と高分子の単量体の含有比が1:1以上1:5以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、金属原子と有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、炭素原子の含有数が金属原子に対して5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、比誘電率が3.9以上6.0以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0016】
本発明の請求項6に係る発明は、絶縁性薄膜の一方の面に自己組織化単分子膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0017】
本発明の請求項7に係る発明は、絶縁性薄膜上の自己組織化単分子膜の被覆率が90%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0018】
本発明の請求項8に係る発明は、自己組織化単分子膜がシラン化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の絶縁性薄膜としたものである。
【0019】
本発明の請求項9に係る発明は、基板と、基板上に形成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成された高分子と、高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に離間して形成されたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極間に形成された半導体と、を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタとしたものである。
【0020】
本発明の請求項10に係る発明は、基板と、基板上に形成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成された高分子と、高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に形成された半導体と、半導体の間に形成されたソース電極及びドレイン電極と、を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタとしたものである。
【0021】
本発明の請求項11に係る発明は、ゲート絶縁膜の一方の面に形成された自己組織化単分子膜と、を備えることを特徴とする請求項9または10に記載の電界効果型トランジスタとしたものである。
【0022】
本発明の請求項12に係る発明は、ヒドロキシル基を有する高分子と、有機金属化合物と、反応性置換基を有する有機分子と、有機溶媒を混合して得られる溶液であり、有機金属化合物の金属原子が、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれることを特徴とする絶縁性薄膜の形成用溶液としたものである。
【0023】
本発明の請求項13に係る発明は、金属原子と高分子の単量体の含有比が1:1以上1:5以下であることを特徴とする請求項12に記載の絶縁性薄膜の形成用溶液としたものである。
【0024】
本発明の請求項14に係る発明は、金属原子と有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の絶縁性薄膜の形成用溶液としたものである。
【0025】
本発明の請求項15に係る発明は、請求項12乃至請求項14のいずれかに記載の絶縁性薄膜の形成用溶液を基板上に塗布し、絶縁性薄膜の形成用溶液を乾燥し、絶縁性薄膜の形成用溶液を焼成することを特徴とする絶縁性薄膜の製造方法としたものである。
【0026】
本発明の請求項16に係る発明は、基板を準備し、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上に、高分子と、高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に離間してソース電極及びドレイン電極を形成し、ソース電極及びドレイン電極間に半導体を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0027】
本発明の請求項17に係る発明は、基板を準備し、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上に、高分子と、高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に半導体を形成し、半導体の間にソース電極及びドレイン電極を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0028】
本発明の請求項18に係る発明は、ゲート絶縁層を形成する工程は、ヒドロキシル基を有する高分子と、有機金属化合物と、反応性置換基を有する有機分子と、有機溶媒を混合して得られる溶液をゲート電極上に塗布する工程と、塗膜を焼成する工程と、を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0029】
本発明の請求項19に係る発明は、ゲート絶縁層の一方の面に自己組織化単分子膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0030】
本発明の請求項20に係る発明は、ゲート絶縁層の一方の面に自己組織化単分子膜を形成する工程の前に、絶縁性薄膜に表面処理を施して、該絶縁性薄膜表面にヒドロキシル基を表出させる工程を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法としたものである。
【0031】
本発明の請求項21に係る発明は、請求項9または10に記載の電界効果型トランジスタを用いた画像表示装置としたものである。
【0032】
本発明の請求項22に係る発明は、画像表示装置が液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパのいずれかであることを特徴とする請求項21に記載の画像表示装置としたものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、低温で塗布形成可能で高い絶縁性と誘電率を有し、かつ表面処理可能な絶縁性薄膜の形成用溶液、それを用いて形成した絶縁性薄膜、絶縁性薄膜をゲート絶縁層として用いることで優れた性能を有する電界効果型トランジスタ及びその製造方法、並びに電界効果型トランジスタを用いた画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜の化学的構造を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜の形成用溶液を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタを示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像表示装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する。
【0036】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜は、高分子と、金属原子、及び有機分子からなる絶縁性薄膜であり、高分子と金属原子は酸素原子を介して結合を有し、有機分子と金属原子は酸素原子または窒素原子を介して結合を有することを特徴としている。図1に金属原子が酸素原子を介して高分子と結合した本発明の絶縁性薄膜の一実施形態の化学的構造の模式図を示した。Mは金属原子であり、Rは有機分子を表す。図1のように本発明の絶縁性薄膜は、高分子が酸素又は窒素原子を介して金属原子と結合することにより、架橋されている。
【0037】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜に用いる金属原子は、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫から選ばれる金属であり、シリコン原子を含まないことを特徴とする。以上の金属の化合物を高分子及び有機分子と反応させることによって、本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜を形成する。具体的な金属化合物としては、アルコキシド化合物、ハロゲン化化合物、アルキル化化合物、シクロペンタジエニル化合物、アミノ化合物、アセチルアセトナート化合物、イソシアネ−ト化合物等を用いることができる。より具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンテトラキスアセチルアセトナート、塩化チタン、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテート、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、塩化ジルコニア、オクタン酸ジルコニウム、テトラキスジメチルアミノジルコニウム、テトラプロピルハフネート、テトラブチルハフネート、ハフニウムテトラキスアセチルアセトナート、塩化ハフニウム、ペンタエチルニオベート、ペンタブトキシニオベート、塩化ニオブ、ペンタエチルタンタレート、ペンタブチルタンタレート、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化亜鉛、しゅう酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、塩化アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、インジウムトリスアセチルアセトナート、塩化インジウム、塩化錫、塩化ブチル錫、等があげられるがこの限りではない。
【0038】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜で用いる高分子は、絶縁性薄膜の内部において酸素結合を介して金属原子と結合を有している。高分子と金属原子が結合を有することで、金属原子添加による誘電率の向上のみならず、高分子材料間を架橋し絶縁性薄膜の膜構造を安定化させ、更には遊離した極性置換基の数を最小限に留めることで高い絶縁性を得ることができる。
【0039】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜に用いる高分子は、上記した金属化合物等と反応し、酸素原子を介して結合を有する高分子を選択する必要がある。例えばヒドロキシル基やアルコール基、カルボキシル基、エポキシ基、あるいはそれらの置換基に変換可能な前駆体となりうる官能基を有する高分子化合物が望ましい。すなわち、当該高分子のモノマー単位に例示したような官能基が各単位、一定間隔あるいはランダムに含まれることが望ましい。具体的な高分子材料としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、アセチルセルロース、エポキシ樹脂、ヒドロキシアルキルアクリレート等を用いたアクリル樹脂あるいはブロック共重合体、アクリルポリオール樹脂、エステルポリオール樹脂、等が挙げられるがこの限りではない。
【0040】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜で用いる有機分子は、絶縁性薄膜の内部において酸素原子または窒素原子を介して金属原子と結合を有している。有機分子が金属原子と結合を有するのは、架橋による絶縁性薄膜の膜構造安定化と、高い絶縁性を得るためであり、更には、反応性の高い金属化合物に安定性を付与する効果と、これらの混合によって得られた絶縁性薄膜の形成用材料に溶解性を付与することで絶縁性薄膜の形成用溶液を提供することにある。以上により、本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜の形成用溶液は、簡易な塗布あるいは印刷工程により絶縁性薄膜を形成できる。
【0041】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜に用いる有機分子は、上記金属化合物と反応して、酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子を選択する必要がある。また、有機分子の反応性置換基は、前記高分子と結合を有することがより好ましい。例えば、ヒドロキシル基やアルコール基、アルデヒド基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアノ基、イミノ基、アクリル基、エステル基、スルホン酸基、あるいはそれらの置換基に変換可能な前駆体となりうる官能基を有する有機分子が望ましい。より具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グルコース、尿素、グアニジン、フェノール、クレゾール、カテコール、カテコールアミン、メラミン、ヒドロキシエチルアクリレート、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、あるいはこれらの類似化合物、等が挙げられるがこの限りではない。
【0042】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜の形成用溶液は、上記金属原子から少なくとも一種選択し、金属原子に対応する金属化合物を溶媒中に溶解し、更に、上記した高分子、及び有機分子を適宜選択した上でそれぞれ同溶媒、あるいは別種の溶媒に溶解した上で、適宜条件を勘案した後に混合することで得ることができる。図2に本発明の絶縁性薄膜の形成用溶液の模式図を示した。金属化合物のみの場合、金属化合物の反応性が早く、常温でも重合が進むことから、高分子の架橋に用いる際に一定量を超えると、凝集し、溶媒中で沈殿してしまう。そこで金属化合物の一部に有機分子を結合しておくことにより、溶解性を制御することができ、安定した溶液となる。金属原子と高分子の単量体の含有比は1:1以上1:5以下であることが好ましく、金属原子と有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることが好ましい。この時、絶縁性薄膜中の炭素原子の含有数が金属原子に対して5倍以上であり、絶縁性薄膜中の元素組成比はXPS(X線光電子分光)等の元素分析手法より求めることができる。金属原子の混入量が高分子や有機分子に対して多すぎる場合、金属化合物の反応性の速さから、非常に早い硬化が起こってしまい溶解性が得られなくなってしまう他、絶縁性も低くなってしまう傾向にある。また、金属原子の混入量が高分子や有機分子に対して少なすぎる場合、金属化合物の添加の効果が得られず、誘電率が向上しなくなってしまう。金属化合物、高分子及び有機分子の最終的な混合物は全て溶液中に溶解していることが好ましく、不溶物が発生した場合はPTFEフィルタ等でろ過することにより除去することが好ましい。金属化合物、高分子、及び有機分子を溶解させる溶媒は、それぞれの物性に合わせて急な反応促進の無いように適宜選択する必要があり、水、アルコール、有機溶媒等を用いることができる。より具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、ノルマルペンタノール、ノルマルヘキサノール、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、アニソール、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン等が挙げられるがこの限りではない。溶媒は単一の溶媒であってもよいし、複数種を混合してもよい。
【0043】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜は、上述した絶縁性薄膜の形成用溶液を塗布、あるいは印刷し、乾燥または焼成することにより形成することができる。具体的な形成方法としては、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート等既存のウエットコーティング法を用いることができる。焼成温度は、用いた溶媒がほぼ完全に蒸発し、得られた薄膜が再溶解せず、また基板への十分な密着性を得ることを満たすように適宜選択し、耐熱性の基板を用いている場合は60℃から250℃の間、フィルム基板等の耐熱性の低い基板を用いている場合は、60℃から200℃程度で選択することが好ましい。また乾燥及び焼成に当たっては、真空下で行ってもよい。
【0044】
本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜は、表面に自己組織化単分子膜が形成されていてもよい。自己組織化単分子膜を形成する化合物として、末端に(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン基、(モノ、ジ、トリ)クロロシラン基、ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、アミノ基、ハライド基、カルボン酸、ヒドロキシル基、チオール基、ジスルフィド基、アジ基、アセチレン基、ビニル基、ニトロ基、シアノ基等の官能基を有し、分子内にアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、フルオレン環、エーテル、エチレン基、アセチレン基の少なくともいずれか一つを含む炭素数2以上の置換基を有するものが挙げられる。主骨格は、好ましくは分岐しておらず、例えば直鎖状のノルマルアルキル(n−アルキル)基や、フェニル基が三個直列に配置されたter−フェニル基や、フェニル基のパラ位の両側にn−アルキル基が配置されたような構造が良い。また、アルキル鎖の中にエーテル結合を含めても良いし、炭素−炭素の二重結合や三重結合を含めても良い。自己組織化単分子膜は分子の一方の反応性置換基が、対応する基材表面の反応性部位と相互作用、あるいは反応し、結合を形成することにより、基材上に単分子層を形成するものである。分子がより緻密に充填されることにより、自己組織化単分子膜の表面は、より平滑で均質な表面を与えることから、分子の主骨格は直線状であり、分子長が揃っていることが望ましい。以上のことから自己組織化単分子膜の被覆率は90%以上であることが好ましい。
【0045】
自己組織化単分子膜31を形成する前に、ゲート絶縁層30表面にコロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良い。本発明の絶縁性薄膜の表面にこのような表面処理を施すことにより、酸素と金属原子との結合が一部切断してヒドロキシル基を表出させることができる。このため、ゲート絶縁膜(絶縁性薄膜)上に従来よりも緻密な自己組織化膜を形成することが可能となる。
【0046】
自己組織化単分子膜31の形成方法は、自己組織化単分子を形成する化合物を真空下で対応する基板に蒸着する方法、化合物の溶液中に基板を浸漬する方法、Langmuir−Blodgett法などを用いることができるが、これらに限るものではない。しかしながら、例えば、化合物がより緻密で確実に自己組織化単分子膜31のみを得る方法として、Langmuir 19, 1159 (2003).及びJ. Phys. Chem. B 110, 21101 (2006).に記載の方法を用いることがより好ましい。
【0047】
本発明の実施の形態において、上述した絶縁性薄膜の比誘電率は3.9以上6.0以下であることが好ましい。絶縁性薄膜の比誘電率が3.9以上6.0以下の範囲だと、リーク電流が発生せず、後述する絶縁性薄膜を電界効果型トランジスタに用いた場合に良好な特性を得ることができる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜を電界効果型トランジスタ100のゲート絶縁層30に用いた際の詳細を説明する。
【0049】
図3乃至図6は、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100を示す概略断面図である。図3の電界効果型トランジスタ100は、半導体60をソース電極40及びドレイン電極50が挟んだ構造であり、図4の電界効果型トランジスタ100は、半導体60上にパターニングしたソース電極40、ドレイン電極50を離間した構造であり、図5の電界効果型トランジスタ100は、ゲート絶縁膜30と半導体60の間に自己組織化単分子膜31、自己組織化単分子膜31と半導体60をソース電極40及びドレイン電極50が挟んだ構造であり、図6の電界効果型トランジスタ100は、ゲート絶縁膜30上に自己組織化単分子膜31、自己組織化単分子膜31上に半導体60、半導体60上にパターニングしたソース電極40、ドレイン電極50を離間した構造である。
【0050】
図3乃至図6に示すように、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は、基板10、ゲート電極20、ゲート絶縁膜30、ソース電極40、ドレイン電極50及び半導体60を有し、さらに、ゲート絶縁膜30と半導体60との間に自己組織化単分子膜31を有している。
【0051】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100の基板10としては、表面に絶縁性がありシート状で、表面が平坦であれば何でも用いることができ、例えば、ソーダライムガラス、石英ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリルレートなどを使用することができる。また、ステンレスシート、アルミ箔、銅箔、シリコンウェハ等の導電性あるいは半導体性の基材であっても、表面に絶縁性、例えば高分子材料あるいは金属酸化物などを塗布または蒸着することにより用いることができる。更に、上述した基板10は表面に易接着層等の表面処理層を形成しても良いし、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良い。
【0052】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100のゲート電極20、ソース電極40、及びドレイン電極50としては、Al、Cr、Mo、Cu、Au、Pt、Pd、Fe、Mn、Agなどの金属をPVD法やCVD法、めっき等の方法で成膜した後にフォトリソグラフィ法などを用いて形成できる。また、インジウム・錫酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等、透明導電性材料や、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリチオフェン等、有機導電性材料等を用いることもできるが、これらを用いた時に比較的高い配線抵抗を有する場合は金属バス電極を用いて抵抗の軽減を図ることがより好ましい。また、以上の金属、透明酸化物、有機導電性高分子等の導電性材料あるいはそれらの前駆体を、溶液、ペースト、ナノ粒子分散液等に加工した後、印刷法で塗工し、乾燥、焼成、光硬化あるいはエージング等によって形成することもできる。用いられる印刷方法は、特に限定されることはないが、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ等のパターニング可能な印刷方法を用いることが工程の簡略化、低コスト化、高速化を達成できることから、より好ましい。また、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等とフォトリソグラフィ等のパターニング手法を組み合わせても良い。さらに、以上の印刷法を組み合わせて用いても良い。
【0053】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100のゲート絶縁層30としては、上述した本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜を用いることができ、形成方法は上述した通りである。また、本発明の実施の形態に係る絶縁性薄膜と有機高分子化合物を積層して用いても良い。積層に用いる材料は、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ブタジエンゴム等の有機高分子化合物、またはこれらの混合物、またはアルコキシシラン基やビニル基、アクリル酸エステル、エポキシ基など反応性置換基を有する化合物との混合物を用いることができ、更には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化インジウム、酸化ハフニウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、酸窒化物なども用いることができるが、十分な絶縁性を有し、膜厚1μm以下の薄膜を形成可能であればこれらに限定されるものではない。
【0054】
これら有機高分子化合物の形成方法としては、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート等既存のウエットコーティング法を用いることができる。また、無機酸化物、酸窒化物等の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング、CVDなどの真空成膜法を用いることができ、また成膜中に任意のガスを用いたプラズマやイオン銃、ラジカル銃などを併用してもよい。また、それぞれの金属酸化物に対応する前駆体、具体的には塩化物、臭化物などの金属ハロゲン化物や金属アルコキシド、金属水酸化物等を、アルコールや水中で塩酸、硫酸、硝酸などの酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基と反応させて加水分解することにより形成してもよい。このような溶液系のプロセスを用いる場合、マイクログラビアコート、ディップコート、スクリーンコート、ダイコート、スピンコート等既存のウエットコーティング法を用いることができる。以上のゲート絶縁層30は、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理等の表面処理を施しても良いが、処理による表面粗さが粗くならないように注意する必要がある。ゲート絶縁層30の表面は比較的平滑でピンホールや突起、起伏が無いことが好ましい。
【0055】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100のゲート絶縁層30は表面に自己組織化単分子膜31を形成しても良い。自己組織化単分子膜をゲート絶縁層と半導体60の間に形成することにより、ゲート絶縁層表面の濡れ性や表面エネルギーを制御することができ、特性の優れた電界効果型トランジスタを作製することができる。自己組織化膜の形成方法は、前述の絶縁性薄膜に記載の方法が適用される。本発明のゲート絶縁層においては、半導体60との界面に緻密な自己組織化膜を形成することができるため、特性の優れた電界効果型トランジスタを作製できる。
【0056】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100の半導体60としては、半導体性を示すπ共役有機高分子、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)類などや、π共役系を持つ低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類などを用いることができるがこの限りではない。また、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、カドミウムテルル、セレン化亜鉛、窒化ガリウム、窒化アルミニウムのような無機半導体、及び酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)や酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなどの酸化物半導体を用いても良い。
【0057】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100の半導体60の形成方法は、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、溶液を用いた印刷法等を用いることができるが、生産性、低コスト化等の観点から溶媒に可溶な半導体60を用いて塗工する方法を用いることがより好ましい。印刷法を用いる場合は、特に限定されることはないが、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等を用いることができ、以上の印刷法を組み合わせて用いても良い。
【0058】
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は、さらに保護層、層間絶縁層、上部画素電極を形成して用いても良い。以上、一画素の構造に沿って本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100の詳細を説明したが、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ100は、高い絶縁性と誘電率とを有しているため、画素をアレイ状に配列させることにより、画像表示装置の画素点灯装置として用いることができる。保護層や層間絶縁層には、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ブタジエンゴム等の有機高分子化合物、またはこれらの混合物、またはアルコキシシラン基やビニル基、アクリル酸エステル、エポキシ基など反応性置換基を有する化合物との混合物を用いることができ、更には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化インジウム、酸化ハフニウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、酸窒化物なども用いることができる。
【0059】
図7に本発明の電界効果型トランジスタを画素点灯装置として用いた画像表示装置の例を示した。本発明の画像表示装置は、上記電界効果型トランジスタを画素ごとに少なくとも一つ配置した電界効果型トランジスタレイとし、画像表示媒体303と接続する。画像表示媒体の例としては、電気泳動方式の表示媒体(電子ペーパー)や、液晶表示媒体、有機EL、無機EL等が挙げられる。
【0060】
図7の本発明の画像表示装置の例では、電界効果型トランジスタを形成した基板上に層間絶縁膜301が形成され、ソース電極105又はドレイン電極106と画素電極302が接続され、当該画素電極と対向電極304で画像表示媒体303を挟持する構成となっている。本発明の電界効果型トランジスタは、材料の選択によって透明とすることができるため、対向電極側、電界効果型トランジスタ側のいずれから視認できるようにしても良い。図7の画像表示装置の例では、層間絶縁膜301上の全面に画素電極302を配置できる。その上に例えば対向電極302を形成した電気泳動方式の表示媒体を貼り合わせることにより、画像表示装置を作製することができる。
【0061】
また本発明の画像表示装置の別の例として、電界効果型トランジスタ上に画素を区画する隔壁を形成し、ソース電極105又はドレイン電極106から延長された画素電極302上に画像表示媒体を形成した構成としても良い。例えば、インクジェット法や印刷法を用いて形成した有機ELを表示媒体として用いることができる。
【実施例1】
【0062】
以下、具体的な実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は説明を目的としたもので、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
金属化合物としてテトラ−n−ブチルチタネート((BuO)Ti)1gを、高分子としてポリビニルフェノール(PVP)1.5gを、有機分子としてメチロールメラミン2gを選択し、それぞれn−ブタノール、トルエン/n−ブタノール、トルエン/n−ブタノール溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合し、オレンジ色溶液を得た。更に得られたオレンジ色溶液を0.2μmのPTFEフィルタに通すことで、透明なオレンジ色溶液として絶縁性薄膜の形成用溶液を得た。
【0064】
得られた絶縁性薄膜の形成用溶液の2mLをガラス基板にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに120℃で1時間焼成することにより膜厚800nmの絶縁性薄膜を得た。
【0065】
得られた絶縁性薄膜をXPSで分析した。Arイオンビームで10秒間エッチングすることで絶縁性薄膜の内部を分析した。チタンとPVPのモノマーの含有比は1:5であり、チタンとメチロールメラミンの含有比は1:2であった。またチタン原子と炭素原子の組成比は1:30であった。
【0066】
得られた絶縁性薄膜の絶縁性と誘電率とを、絶縁性薄膜の上下に1cm角のアルミ電極を形成することで求めた。一方の電極に60Vを印加し流れた電流値から得られた抵抗率は2×1014Ω・cmであり、また、LCRメータを用いて周波数75kHzで測定したキャパシタンスから求めた比誘電率は4.5で、高い絶縁性と比誘電率が得られた。
【実施例2】
【0067】
実施例1で得られた絶縁性薄膜の表面にオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の自己組織化単分子膜31を形成した。まず、実施例1の絶縁性薄膜をUV/オゾン照射装置を用いて5分間表面処理を行い、表面を親水化した。得られた表面の純水の接触角は5.4°であった。更に表面親水化した絶縁性薄膜をOTSの乾燥トルエン溶液に1晩浸漬することにより、自己組織化単分子膜31を得た。得られた自己組織化単分子膜31表面の純水の接触角は103°であった。表面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところOTSの被覆率は100%であった。
【実施例3】
【0068】
金属化合物としてチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)80%溶液1gを、高分子としてポリビニルアルコール(PVA)1gを、有機分子として3−アミノ−1,2,4−トリアゾール2gを選択し、それぞれ水に溶解させ、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合し、無色溶液を得た。更に得られた無色溶液を0.2μmのPTFEフィルタに通すことで、透明溶液として絶縁性薄膜の形成用溶液を得た。
【0069】
得られた絶縁性薄膜の形成用溶液の2mLをガラス基板にスピンコートし、90℃で10分間乾燥、さらに150℃で1時間焼成することにより膜厚1000nmの絶縁性薄膜を得た。
【0070】
得られた絶縁性薄膜をXPSで分析した。Arイオンビームで10秒間エッチングすることで絶縁性薄膜の内部を分析した。チタンとPVAのモノマーの含有比は1:4であり、チタンと−アミノ−1,2,4−トリアゾールの含有比は1:3であった。またチタン原子と炭素原子の組成比は1:20であった。
【0071】
得られた絶縁性薄膜の絶縁性と誘電率を、絶縁性薄膜の上下に1cm角のアルミ電極を形成することで求めた。一方の電極に60Vを印加し流れた電流値から得られた抵抗率は1×1014Ω・cmであり、また、LCRメータを用いて周波数75kHzで測定したキャパシタンスから求めた比誘電率は4.8で、高い絶縁性と比誘電率が得られた。
【実施例4】
【0072】
実施例3で得られた絶縁性薄膜の表面にオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の自己組織化単分子膜31を形成した。まず、実施例1の絶縁性薄膜をUV/オゾン照射装置を用いて5分間表面処理を行い、表面を親水化した。得られた表面の純水の接触角は4.5°であった。更に表面親水化した絶縁性薄膜をOTSの乾燥トルエン溶液に1晩浸漬することにより、自己組織化単分子膜31を得た。得られた自己組織化単分子膜31表面の純水の接触角は102°であった。表面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところOTSの被覆率は100%であった。
【実施例5】
【0073】
金属化合物としてテトラ−n−ブチルジルコネート((BuO)Zr)1gを、高分子としてポリビニルフェノール(PVP)1.5gを、有機分子としてメチロールメラミン2gを選択し、実施例1と同様に混合することで、透明溶液として絶縁性薄膜の形成用溶液を得た。
【0074】
得られた絶縁性薄膜の絶縁性と誘電率を、絶縁性薄膜の上下に1cm角のアルミ電極を形成することで求めた。一方の電極に60Vを印加し流れた電流値から得られた抵抗率は2×1014Ω・cmであり、また、LCRメータを用いて周波数75kHzで測定したキャパシタンスから求めた比誘電率は4.0で、高い絶縁性と比誘電率が得られた。
【実施例6】
【0075】
図3に示す電界効果型トランジスタ100を作製した。絶縁基板10として0.7mm厚のガラスを用い、ゲート電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィ法及びエッチングによってパターニングした。続いてゲート絶縁層30として実施例1の絶縁性薄膜を積層し、金を真空蒸着法により膜厚50nmで形成し、フォトリソグラフィ法及びエッチングにより、ソース電極40、ドレイン電極50となる電極パターンを形成した。この時、金とゲート絶縁層30の密着性を上げる為に金を蒸着する前にクロムを3nm程度積層した。
【0076】
続いて半導体60としてポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)をフレキソ印刷により塗工し、120℃、30分で乾燥することにより形成し、電界効果型トランジスタ100を得た。
【0077】
以上より得られた電界効果型トランジスタ100の伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、移動度は0.014cm/Vs、on/offは10、閾値電圧は−2Vであった。
【実施例7】
【0078】
図3に示す電界効果型トランジスタ100を作製した。絶縁基板10として150μm厚のポリエチレンナフタレート(PEN)を用い、ゲート電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィ法及びエッチングによってパターニングした。続いてゲート絶縁層30として実施例3の絶縁性薄膜を積層し、金を真空蒸着法により膜厚50nmで形成し、フォトリソグラフィ法及びエッチングにより、ソース電極40、ドレイン電極50となる電極パターンを形成した。この時、金とゲート絶縁層30の密着性を上げる為に金を蒸着する前にクロムを3nm程度積層した。
【0079】
続いて半導体60としてポリ(6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン)(TIPS−ペンタセン)をフレキソ印刷により塗工し、90℃、30分で乾燥することにより形成し、電界効果型トランジスタ100を得た。
【0080】
以上より得られた電界効果型トランジスタ100の伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、移動度は0.7cm/Vs、on/offは10、閾値電圧は−1Vであった。
【実施例8】
【0081】
図6に示す電界効果型トランジスタ100を作製した。絶縁基板10として0.7mm厚のガラスを用い、ゲート電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nm形成したのちフォトリソグラフィ法及びエッチングによってパターニングした。続いてゲート絶縁層30として実施例5の絶縁性薄膜を積層し、実施例2と同様にOTS自己組織化単分子膜31を形成した。続いて半導体60としてペンタセンを60℃で40nmに蒸着し、ソース電極40、ドレイン電極50となる電極パターンに対応したマスクをかぶせた後に金を真空蒸着法により膜厚50nmで形成することで電界効果型トランジスタ100を得た。
【0082】
以上より得られた電界効果型トランジスタ100の伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、移動度は2.5cm/Vs、on/offは10、閾値電圧は−6Vであった。
【0083】
[比較例1]
金属化合物としてテトラ−n−ブチルチタネート((BuO)Ti)1gを、高分子としてポリビニルフェノール(PVP)1.5gを、それぞれn−ブタノール、トルエン/n−ブタノール溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下で攪拌しながら慎重に滴下することで混合すると、オレンジ色沈殿物が得られた。得られた沈殿物は更に1日攪拌を続けても溶媒に溶解せずに沈殿物として残り、溶液状にはならず、絶縁性薄膜を形成できなかった。
【0084】
[比較例2]
比較例1において金属化合物としてテトラ−n−ブチルジルコネート((BuO)Zr)を用いた場合は白色沈殿物が得られたが、同様に溶液状にはならず、絶縁性薄膜を形成できなかった。
【0085】
[比較例3]
実施例6と同様に図3に示すように、基板10を用意し、ゲート電極20、ゲート絶縁層30、ソース電極40、ドレイン電極50を形成した。ただし、ゲート絶縁層30の材料には、PVPとメチロールメラミンの10:1混合物を用いた。抵抗率は、5×1014Ω・cm、比誘電率は3.8であった。続いて、実施例6と同様に半導体60を形成し、電界効果型トランジスタ100を得た。
【0086】
以上より得られた電界効果型トランジスタ100の伝達特性をゲート電圧−20Vから40V、ソース電圧−40Vで測定したところ、移動度は0.006cm/Vs、on/offは10、閾値電圧は+3Vであった。
【0087】
実施例と比較例とに係る電界効果型トランジスタ100を比較すると、実施例に係る電界効果型トランジスタ100は、高い絶縁性と誘電率を有している絶縁性薄膜であるゲート絶縁膜30を用いているため、特性の劣化がない電界効果型トランジスタ100を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、絶縁性薄膜、及び自己組織化単分子膜を形成した絶縁性薄膜、及びそれらをゲート絶縁層として作製した薄膜トランジスタ(TFT)、及びそれを用いたアクティブマトリックス型のTFTアレイを背面板として有する液晶表示素子、有機EL、電子ペーパ等の表示素子に利用される。
【符号の説明】
【0089】
10…基板、20…ゲート電極、30…ゲート絶縁層、31…自己組織化単分子膜、40…ソース電極、50…ドレイン電極、60…半導体、100…電界効果型トランジスタ、101…基板、102…ゲート電極、103…ゲート絶縁層、104…半導体層、105…ソース電極、106…ドレイン電極、107…保護層、301…層間絶縁層、302…画素電極、303…画像表示媒体、304…対向電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子と、
前記高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、
前記金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子と、
を含むことを特徴とする絶縁性薄膜。
【請求項2】
前記金属原子と前記高分子の単量体の含有比が1:1以上1:5以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁性薄膜。
【請求項3】
前記金属原子と前記有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁性薄膜。
【請求項4】
炭素原子の含有数が前記金属原子に対して5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の絶縁性薄膜。
【請求項5】
比誘電率が3.9以上6.0以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の絶縁性薄膜。
【請求項6】
前記絶縁性薄膜の一方の面に自己組織化単分子膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の絶縁性薄膜。
【請求項7】
前記絶縁性薄膜上の前記自己組織化単分子膜の被覆率が90%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の絶縁性薄膜。
【請求項8】
前記自己組織化単分子膜がシラン化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の絶縁性薄膜。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された高分子と、前記高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、前記金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に離間して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に形成された半導体と、
を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された高分子と、前記高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、前記金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に形成された半導体と、
前記半導体の間に形成されたソース電極及び前記ドレイン電極と、
を備えることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項11】
前記ゲート絶縁膜の一方の面に形成された自己組織化単分子膜と、を備えることを特徴とする請求項9または10に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項12】
ヒドロキシル基を有する高分子と、有機金属化合物と、反応性置換基を有する有機分子と、有機溶媒を混合して得られる溶液であり、前記有機金属化合物の金属原子が、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれることを特徴とする絶縁性薄膜の形成用溶液。
【請求項13】
前記金属原子と前記高分子の単量体の含有比が1:1以上1:5以下であることを特徴とする請求項12に記載の絶縁性薄膜の形成用溶液。
【請求項14】
前記金属原子と前記有機分子の含有比が1:1以上1:6以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の絶縁性薄膜の形成用溶液。
【請求項15】
請求項12乃至請求項14のいずれかに記載の前記絶縁性薄膜の形成用溶液を基板上に塗布し、
前記絶縁性薄膜の形成用溶液を乾燥し、
前記絶縁性薄膜の形成用溶液を焼成することを特徴とする絶縁性薄膜の製造方法。
【請求項16】
基板を準備し、
前記基板上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上に、高分子と、前記高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、前記金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に離間してソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に半導体を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項17】
基板を準備し、
前記基板上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上に、高分子と、前記高分子と酸素原子を介して結合を有し第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、亜鉛、錫のうちから選ばれる金属原子と、前記金属原子と酸素原子または窒素原子を介して結合を有する有機分子とを含む絶縁性薄膜からなるゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に半導体を形成し、
前記半導体の間にソース電極及び前記ドレイン電極を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記ゲート絶縁層を形成する工程は、ヒドロキシル基を有する高分子と、有機金属化合物と、反応性置換基を有する有機分子と、有機溶媒を混合して得られる溶液をゲート電極上に塗布する工程と、
該塗膜を焼成する工程と、を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項19】
前記ゲート絶縁層の一方の面に自己組織化単分子膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項20】
前記ゲート絶縁層の一方の面に自己組織化単分子膜を形成する工程の前に、前記絶縁性薄膜に表面処理を施して、該前記絶縁性薄膜表面にヒドロキシル基を表出させる工程を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の電界効果型トランジスタの製造方法。
【請求項21】
請求項9または10に記載の電界効果型トランジスタを用いた画像表示装置。
【請求項22】
前記画像表示装置が液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパのいずれかであることを特徴とする請求項21に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−267657(P2010−267657A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115547(P2009−115547)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】