説明

薄膜の膜厚測定方法、多結晶半導体薄膜の形成方法、半導体デバイスの製造方法、およびその製造装置、並びに画像表示装置の製造方法

【課題】 薄膜の膜厚を1分間に1万点以上の測定を基板全面にわたって行う検査を可能とする。
【解決手段】 透明基板2上に形成された薄膜3に対してレーザ光を照射し、基板の測定領域全体に渡って基板内の多数の同一ポイントでの透過強度を透過光強度モニタ4、反射光強度を反射光強度モニタ5で測定する。反射率をRとし透過率をTとしてA=1−(R+T)の値からA値と膜厚の関係から膜厚を測定し評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に成膜された薄膜の膜厚を高速に測定する膜厚測定方法、この膜厚測定方法を用いた多結晶半導体薄膜の形成方法と半導体装置の製造方法および製造装置、並びに表示装置の製造方法に関する。
【0002】
さらに、詳しくは、非晶質半導体薄膜を多結晶半導体薄膜に改質するための半導体薄膜の改質する方法および改質する前の非晶質半導体薄膜の膜厚の測定による評価方法、その半導体薄膜で形成した薄膜トランジスタ並びにこの薄膜トランジスタを用いて構成した回路を有するフラットパネル型の画像表示装置を含む半導体装置の製造方法とその装置に好適なものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、薄膜の膜厚を測定する方法、特に光学多層薄膜を評価するための膜厚を測定する方法としては、「非特許文献1」に示されている様に、エリプソメトリ法が知られている。この方法は、入射光の偏光状態を変化させて被計測面に光を照射し、その反射光の偏光状態を計測して、測定データのパラメータフィッティングを行うことにより光学定数と薄膜の厚さを導出するものである。このエリプソメトリ法は、半導体デバイス製造プロセスの薄膜形成工程の検査装置としてよく用いられている。
【0004】
特に、液晶表示パネルに代表される平板型の画像表示装置(所謂、フラットパネルディスプレイ:FPD、以下ディスプレイとも称する)を構成する絶縁基板(通常はガラス基板)のサイズは年々巨大化している。このようなガラス基板に、例えば一般に薄膜成膜に用いられるCVD装置を用いて薄膜を成膜した場合、当該薄膜は、ガラス基板が大きくなるにつれて面内膜厚変動幅(ガラス基板の成膜面の異なる部分での膜厚分布の変化量、薄膜の面内膜厚変動)が大きくなる。それ故に、ガラス基板の面内に測定ポイント数を多くとり、詳細な面内膜厚変動の分布を測定してガラス基板の面内での膜厚変動幅を管理する必要が生じてきている。
【0005】
その理由は、例えばガラス基板上に成膜される薄膜がシリコン膜である場合、その面内膜厚変動が、当該シリコン膜に形成される半導体デバイスの特性に大きな影響があるためである。例として、FPDに用いられる低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)基板(以下、TFT基板とも称する)の製造ラインについて以下に説明する。
【0006】
このようなTFT基板は、ガラスを好適とする絶縁基板(以下、単に基板とも称する)上に成膜したシリコン半導体薄(以下、単に半導体とも称する)膜に作り込んだ画素回路や駆動回路を有する。画素回路や駆動回路を構成する駆動素子として、薄膜トランジスタ(TFT)が多く用いられる。この薄膜トランジスタの活性層として、非晶質半導体薄膜(典型的には非晶質シリコン膜、あるいはa−Si膜とも表記する)に代えて多結晶半導体薄膜(同じく、典型的にはポリシリコン膜、あるいはpoly‐Si膜とも表記する)を用いることで高精細で高画質の画像表示を得ることができる。
【0007】
その理由は、多結晶シリコン半導体薄膜は、非晶質シリコン半導体薄膜に比較してキャリア(nチャネルでは電子、pチャネルでは正孔)の移動度が高いことを挙げることができる。その結果、セルサイズ(画素サイズ、ピクセルサイズ)を小さくできることによる高精細化が可能となる。さらに、通常のポリシリコン半導体薄膜で形成した薄膜トランジスタの形成には、1000°C以上の高温プロセスが必要であるが、レーザ光によるシリコン層のみのアニールにより半導体薄膜を担持する基板が高温にならない低温ポリシリコン半導体薄膜形成技術では、安価なガラス基板の使用が可能な低温プロセスにおいて、移動度の高い薄膜トランジスタ(TFT)の形成が可能となる。
【0008】
この移動度が高いという効果はTFTのサイズを小さくすることができるメリットを生む。このメリットは、FPD用として画素領域内の画素回路を構成するTFT構造以外の開口部の面積を大きくすることができるという開口率増大化によって得られる高輝度、高精細画質の向上につながる。以上の低温ポリシリコンTFT製造工程で、非晶質シリコン膜の膜厚変動の影響を受ける工程はレーザを用いたアニール工程である。
【0009】
例えば、パルスエキシマレーザでアニールする場合、結晶する多結晶シリコンの粒径(平均粒径)がレーザエネルギ密度でどの様に変化するのか調べてみると、多結晶シリコンの粒径はレーザエネルギを上げると大きくなる傾向がある。しかし、ある一定のエネルギ閾値以上(過剰側)では微結晶になる。このことは図7を用いて後述する。
【0010】
多結晶シリコン粒径のレーザエネルギ依存性は、シリコン薄膜の膜厚によって変化し、膜厚が厚いとその分だけレーザエネルギが不足となり、薄いと過剰となる方向に変化する。したがって、膜厚分布が多結晶シリコンの粒径の面内分布や基板毎の平均粒径の差の原因となり、最終的にTFT特性の変動の原因となる。「特許文献1」には、レーザアニール前の非晶質リシコン基板は、量産ロットの最初の基板のみ予めエリプソメトリ法で測定した非晶質シリコン膜厚によって、薄膜改質に必要なエネルギを調節してレーザアニールを行う様にすることが記載されている。
【0011】
次に、エリプソメトリ法以外の膜厚測定方法について説明する。「非特許文献2」には、R,T,t法と呼ばれる膜厚測定方法が述べられている。この方法は、単層の薄膜の光学定数が、垂直入射光の透過率と反射率とで測定した膜厚データによって決定されるというものであり、膜厚を決定するという方法ではない。「特許文献2」には、多波長の光を照射し、その反射スペクトルを測定することによって膜厚を評価する方法が記載されている。これもパラメータフィッティングにより膜厚を求める方法である。「特許文献3」には、BPR法と呼ばれる方法が記載されている。この方法は、多数の入射角度の照射系を用いて、反射光強度の反射角度依存性を測定することによって膜厚を評価する方法である。この方法もパラメータフィッティングによって膜厚を求める方法である。
【非特許文献1】JOSA,Volume 58(1968),526
【非特許文献2】Applied Optics 23 (1984) 3571−3596
【特許文献1】特開2003−258349号公報
【特許文献2】特開2002−81916号公報
【特許文献3】特許第3337252号公報
【特許文献4】特開2003−109902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように、一般に、光学多層薄膜の計測にはエリプソメトリ法が用いられている。これは入射光の偏光状態を変化させて照射し、反射光の偏光状態を計測して、その測定データのパラメータフィッティングをする事により複素屈折率と厚さを導出する方法である。この方法の欠点は同一測定点に静止した状態で異なる偏光状態を時間的に変化させて光を照射し、それによって時間的に変化する反射光の偏光状態を測定する方法をとる事である。このため、ステップアンドリピートによる測定モードが必須であり、高速スキャンしながら測定することが不可能であるため、大型サイズの画像表示装置用の大面積ガラス基板等の短時間測定には適さない。
【0013】
エリプソメトリ法以外の上記従来方法については、スキャンしながらの測定が可能であるが、やはりパラメータフィッティングによる膜厚の導出の課程は測定時間を長くする要因になっている。いずれにしても、1メートル四方のような大型基板上の非晶質シリコン膜厚の面内分布を全体にわたって測定時間が1分以内で1万点以上の測定ポイントで評価することは従来方法では実現しているものは無い。
【0014】
次に、膜厚計測が必要な製造ラインにおける課題について説明する。非晶質シリコン膜から多結晶シリコン膜に改質するレーザアニール工程では、非晶質シリコン膜の膜厚の変動の影響を受けるので予めその膜厚を計測する必要がある。その計測方法としては上述のエリプソ法がある。この方法による730mm×920mmサイズ以上の大型基板の膜厚検査が可能な装置としてはフランスのソプラ社の製品がある。この装置による測定時間はステージ走査移動を含めて測定点1点当り約10秒程度である。この測定スループットは、画像表示装置用大型基板の全面を10000点測定する場合を考えると、約28時間/基板となる。レーザアニール工程のスループットは約7分/基板であるので、全数検査を行うためには測定点数を1/240倍、即ち約42点以下に減らす必要がある。しかし、この測定点数では膜厚の面内分布の評価としては不足である。
【0015】
本発明の目的は、1分間に1万点以上の測定を基板全面にわたって行う検査を可能とした薄膜の膜厚測定方法と多結晶半導体薄膜の形成方法、半導体デバイスの製造方法およびその製造装置、並びに画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による透明基板上に成膜された光吸収性の薄膜の膜厚を高速に計測する方法を図1で説明する。図1は、本発明の測定光学系の説明図である。図1において、参照符号1はレーザ、2は透明基板であるガラス基板、3は上記光吸収性の薄膜である非晶質シリコン薄膜、4は透過光強度モニタ、5は反射光強度モニタ、6はハーフミラー、7はレンズを示す。ここでは、図1に示すように、ガラス基板2上に形成された非晶質シリコン薄膜3に、当該薄膜3の光吸収帯内の波長の光を照射し、その膜厚を測定する手段を説明する。
【0017】
レーザ1からの光をレンズ7で絞り、ガラス基板2上に成膜された非晶質シリコン薄膜3に対して垂直に照射光として照射し、照射光またはガラス基板2を相対移動させて走査しながらガラス基板2内に設定された多数の同一のポイントでの透過強度と反射光強度との測定を該ガラス基板2の測定領域全体に渡って行う。透過強度は透過光強度モニタ4で、反射光強度は反射光強度モニタ5で行う。なお、非晶質シリコン薄膜3の反射光はハーフミラー6で取り出す。
【0018】
次に、反射率をRとし透過率をTとして、A=1−(R+T)の値を求め、A値と膜厚の関係から膜厚を測定して評価する。一般的には、A値は照射光エネルギの透過と反射以外による減衰率、即ち、吸収率と散乱率の和を示す。鏡面のガラス基板上にCVDによって形成した非晶質シリコン薄膜の場合は非晶質シリコン薄膜の表面も鏡面であり、ラフネスによる散乱は一般的に無視でき、非晶質シリコン膜ではA値は吸収率に等しくなる。さらに、吸収率は膜厚と膜の複素屈折率の関数となるが、測定対象がたとえば非晶質シリコン膜であれば複素屈折率は固定パラメータとして設定し、A値から膜厚を求めることができる。
【0019】
図2は、数値シミュレーションによって求めた非晶質シリコン薄膜の厚さとA値との関係の説明図である。図2では非晶質シリコンの複素屈折率を4.4−0.8iとした場合を示し、横軸は非晶質シリコン薄膜の膜厚(nm)、縦軸は吸収率(%)である。図2に示すように、非晶質シリコン薄膜の膜厚に対する吸収率は単調増加関数となり、このことからA値より膜厚を決定することができる。
【0020】
図3は、本発明の測定法の精度を説明する図であり、ガラス基板上に非晶質シリコン薄膜が形成された同一サンプル基板の面内複数箇所の測定結果をT+Rとエリプソ法による膜厚の測定結果を比較したものである。横軸はエリプソ計測によるa−Siの膜厚、縦軸はT+R(任意スケール)である。図3に示されたように、測定精度Δは±0.5nmが得られる。この測定原理のメリットとしては、反射光強度と透過光強度の計測が高速スキャンしながら実行でき、パラメータフィッティングというデータ処理過程が無いのでエリプソメトリ法に比べ10000倍以上高速であり、10000点以上の測定点で膜厚分布を1分以内で計測することができることである。
【0021】
図4は、図1の光学系を計測のスループットをさらに向上させるためにマルチビーム系とした測定装置の光学系の説明図である。図中、図1と同一参照符号は同一機能部分に対応し、8は反射ミラー、9は分岐用ハーフミラーである。測定装置をマルチビーム系とすることにより、シングルビーム系に比較して、設置するマルチビームの系統数だけ走査数が少なくなくなるので、測定のスループットを向上することができる。図4は6系統とした例である。
【0022】
図5は、図4のマルチビーム系によって730mm×920mmサイズのガラス基板上に形成した非晶質シリコン薄膜の膜厚の面内分布を計測した例を説明する図である。この例では、計測時間2分で38万点の測定点からなる面内分布が得られた。図中、濃い部分は膜厚が厚い部分、淡い部分は膜厚が薄い部分である。膜厚の範囲は53nm−49nmである。製造ラインにおいてこの計測法を適用する方法を以下に説明する。
【0023】
図6は、低温ポリシリコンTFT液晶表示装置用の基板を製造する工程に本発明の膜厚測定方法を適用したものである。ガラス基板上に非晶質シリコン(a−Si)薄膜の成膜工程はCVD装置で行う。1枚当たりの基板処理時間が数分である。この工程で成膜されたa−Si薄膜の検査として本発明の方法による全数検査を行う。この全数検査では、膜厚の最小値と最大値が管理範囲以内であるか否かを膜厚の測定結果で評価する。少なくとも管理範囲から外れると(NG)成膜条件にフィードバックを行う。また、管理範囲から膜厚が外れないように基板毎に成膜条件のフィードバックも行うのが望ましい。
【0024】
膜厚分布が管理範囲内にあれば(OK)、非晶質シリコン薄膜をエキシマレーザを用いたアニール(エキシマレーザアニーリング:ELA)工程によって多結晶シリコン膜へと改質する。このレーザアニール工程では、非晶質シリコン薄膜の膜厚によってレーザエネルギを調整しなければならない。この理由は以下の通りである。一般に、多結晶シリコン半導体薄膜の結晶の粒径が大きいほど移動度が高いので、レーザアニールは粒径が最大になる条件で行う。
【0025】
図7は、波長308ナノメートルのパルスエキシマレーザでアニールする場合に結晶する多結晶シリコンの粒径(平均粒径)がレーザエネルギ密度でどの様に変化するのかを模式的に表した図である。図7において、横軸はレーザエネルギ密度(相対値)を、縦軸は多結晶シリコンの粒径(相対値)を示す。図7に示されたように、不足側として示したレーザエネルギが少ない領域では多結晶シリコンの粒径はレーザエネルギを上げると大きくなる傾向がある。しかし、ある一定のエネルギ閾値以上(過剰側)では微結晶になる。
【0026】
粒径は、レーザエネルギを上げると大きくなる傾向があるが、あるエネルギ閾値以上で微結晶になる。しかし、この高エネルギ側の微結晶閾値はレーザ照射前の非晶質シリコン薄膜の厚さによって変化し、膜厚が薄い場合は低エネルギ側にシフトする。膜厚が基板全体(面内)で一様ではないので、基板面内膜厚分布をレーザアニール処理前に知り、レーザエネルギが基板全体で粒径が下限(管理基準)以上になる様に調整しなければならない。
【0027】
図6に戻り、レーザアニール処理によって非晶質シリコン薄膜を多結晶シリコン薄膜に改質した後に多結晶シリコンの粒径検査によって、その処理条件のレーザエネルギが不足していたのか過剰であったのかを判定して、これを次の基板の処理条件にフィードバックすることが出来る。この判定方法を次に述べる。
【0028】
図8は、レーザエネルギが不足していた場合と過剰であった場合の非晶質シリコン薄膜の膜厚に対する粒径の変化を示す図である。判定結果が図7に示したエネルギ不足側である場合は、膜厚が厚いほどさらにエネルギ不足となる。この場合は図8(A)の不足側の場合に示すように、膜厚が厚いほど粒径が小さくなる(傾きはマイナス)。
【0029】
一方、図7のエネルギ過剰側である場合は、膜厚が厚いほどエネルギ過剰が緩和される。つまり、図8(B)の過剰の場合で示すように膜厚が厚いほど粒径が大きくなる(傾きはプラス)。したがって、粒径の膜厚依存性を調べ、その傾きがプラスかマイナスかでエネルギ過剰かエネルギ不足を判断することができる。これによって、図6の判定で粒径が下限以下の場合(NG)は、ELA工程にフィードバックをかけてレーザエネルギの調整を実施する。
【0030】
なお、以上の方法では、本発明の膜厚の高速計測方法と同様に粒径の高速計測方法が必要であるが、本発明者の以前の発明である特許文献4に記載の方法を粒径検査方法として用いれば良い。但し、粒径検査方法としてはこの方法に限定されるものではない。
【0031】
上記の透明基板上への半導体デバイスを製造する方法を実施する製造ライン、例えば、ガラス基板上に表示デバイスを製造する製造ラインでは、その製造ライン中に非晶質半導体薄膜形成装置と少なくとも同台数の膜厚計測装置と、レーザアニール装置と少なくとも同台数の多結晶シリコン粒径検査装置とを設置する。これによって膜厚面内分布の全数検査と粒径面内分布の全数検査を行い、レーザアニール工程の基板単位のフィードバックを実施する。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、従来法に比べ高スループットの膜厚計測が可能となる。さらに、この評価方法を半導体装置や画像表示装置用の基板の製造ラインに適用することで、非晶質半導体当の薄膜の膜厚の面内分布情報に十分な測定点による全数検査が可能となり、効率の高い製造方法が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、高速の薄膜厚さの評価方法を可能とし、さらにこれによって大型透明基板上に半導体デバイスを効率よく製造することが可能となる。以下の実施例にはまず薄膜の厚さの高速計測方法と半導体デバイス製造方法への応用例を記述する。
【実施例1】
【0034】
図1〜図5を参照して実施例1を説明する。厚さが約O.5mmのガラス基板2の表面上にはCVD装置によって形成された厚さ約50nmの窒素化シリコン膜と厚さ約100nmのシリコン酸化膜の下地層が形成されている。この下地層の上に約厚さ50nmの非晶質シリコン薄膜3をCVD装置によって成膜したサンプル基板を用意する。このサンプル基板1に、波長532nmのレーザ光1を裏面より垂直に照射する。この波長のレーザ光は非晶質シリコン薄膜3のみが吸収する。レーザのビーム径はレンズ7によって約200ミクロンに絞っている。
【0035】
サンプル基板1からの反射光はハーフミラー6によって照射光軸から分岐させて反射光強度モニタ5で強度を測定する。透過光強度は透過強度モニタ4で測定する。この測定によって、1−(T+R)の値を各測定ポイントで求める。この量をマッピングしたものが図5である。このマップの基板サイズは730mm× 920mmであり、測定ポイント数は38万点で、測定時間は2分である。図5の測定を行う光学系は、図4に示すように、図1の光学系をマルチビーム系とすることで、大型基板の測定領域を各検出系で分割し並列計測をすることによって、計測をさらに高速にしたものである。マルチビーム光学系は、ハーフミラー9によって各照射光学系にビームを分岐する。レーザ光源1から見て最終段の系はハーフミラー9ではなく、反射ミラー8である。
【実施例2】
【0036】
図6を用いて、低温ポリシリコンTFT液晶基板用の基板を製造する工程に本発明の評価法の適応した実施例2を示す。図6に示すように、この製造ラインには非晶質シリコン薄膜の成膜工程の後にレーザアニールによる結晶化工程がある。非晶質シリコン薄膜の成膜工程は、1枚当たりの基板処理時間が数分である。この工程の検査として本発明の方法による膜厚の全数検査を行う。図6に示すように、この全数検査では膜厚の最小値と最大値が管理範囲以内であるか否かを検査する。少なくとも管理範囲から外れると成膜条件にフィードバックを行う。さらに、管理範囲から膜厚が外れないように基板毎にフィードバックも行う。
【0037】
さらに、非晶質シリコン薄膜をレーザアニールによって多結晶シリコン薄膜へと改質する工程では、非晶質シリコン薄膜の膜厚によってレーザエネルギを調整しなければならない。この理由は以下の通りである。一般に、多結晶シリコン半導体薄膜の結晶の粒径が大きいほど移動度が高く、粒径が小さい場合は移動度が小さい。したがって、TFTの特性を一定以上に維持するためには、レーザアニールは粒径がある値以上の値になる条件で行う必要がある。
【0038】
しかし、図7に示す様に、粒径はレーザエネルギを上げると大きくなる傾向があるが、あるエネルギ閾値以上で微結晶になる。この粒径のレーザエネルギ依存性は膜厚によってシフトする。膜厚が厚いとその分だけレーザエネルギが不足となり、薄いと過剰となる方向にシフトする。そのシフト量は平均膜厚50nmを中心とした膜厚変動1nmあたり約0.7%である。
【0039】
この様に、レーザエネルギが不足しても、また過剰であっても粒径が小さくなるが、その過不足の状況はレーザが非常に安定でエネルギが変化しなくとも膜厚変動により変化するという困難さがある。この困難さを克服するためには、粒径の面内分布を全数検査が必要となる。この粒径の検査方法としては、前記した特許文献4に記載の方法を粒径の全数検査法として用いる。粒径検査方法は、これに限定されるものではなく、基板全面の全数検査が出来る程度の能力を有すれば良い。この検査が図6に示す粒径検査工程である。
【0040】
次に、粒径のレーザエネルギ依存性と非晶質シリコン薄膜の膜厚依存性により、レーザエネルギが最適条件に対して過剰なのか不足なのかを判断する方法を図7と図8を用いて説明する。図7で示したエネルギ不足側である場合は、膜厚が厚いほどさらにエネルギ不足となるので、図8(A)の不足側の場合で示すように膜厚が厚いほど粒径が小さくなる。一方、図7で示したエネルギ過剰側である場合は、膜厚が厚いほどエネルギ過剰が緩和されるので、図8(B)の過剰の場合で示すように膜厚が厚いほど粒径が大きくなる。したがって、粒径の膜厚依存性を調べ、その傾きがプラスかマイナスかでエネルギ過剰かエネルギ不足を判断することができる。これによって、レーザエネルギの調整を実施する。
【0041】
図9は、本発明による画像表示装置の一例としてのアクティブ・マトリクス型の液晶表示装置の要部構成例を説明する断面図である。この液晶表示装置は次のように構成されている。即ち、薄膜トランジスタ25、カラーフィルタ20及び画素電極21を備えるガラス基板11と、対向電極23を有する対向ガラス基板24との対向間隙に液晶22を介在させて封止している。なお、液晶22と各基板の境界には配向制御膜が成膜されるが、図示を省略した。ガラス基板11が前記の各実施例で説明した半導体薄膜を成膜したガラス基板に相当する。
【0042】
ガラス基板11の表面には、下地層(窒化シリコンと酸化シリコンの積層膜)12が形成され、その上に非晶質シリコン半導体層が形成されて、本発明に係るレーザアニールにより多結晶シリコン薄膜の層に改質されている。このレーザアニールにより得た多結晶シリコン薄膜の層に薄膜トランジスタ25が作り込まされている。即ち、多結晶シリコン半導体薄膜からなる半導体層13の両側に不純物をドープすることにより、多結晶シリコン半導体薄膜のソース側半導体層14aおよび多結晶シリコンのドレイン側半導体層14bが形成され、その上にゲート酸化膜(ゲート絶縁層)15を介してゲート電極16が形成されている。
【0043】
ソース/ドレイン電極18が、層間絶縁膜17に形成された接続孔(コンタクトホール)を介して、それぞれソース側半導体層14aおよびドレイン側半導体層14bに接続され、その上に保護膜19が形成されている。そして、保護膜19上にカラーフィルタ20及び画素電極21が形成されている。
【0044】
この薄膜トランジスタ25は液晶表示装置の画素回路を構成し、図示しない走査線駆動回路からの選択信号で選択され、図示しない信号線駆動回路から供給される画像信号で画素電極511が駆動される。駆動された画素電極511と、対向ガラス基板514の内面に有する対向電極513の間に電界が形成される。この電界により、液晶512の分子配向方向が制御されて表示がなされる。図9に示した液晶表示装置では、薄膜トランジスタ25を形成したガラス基板11側にカラーフィルタ20を設けているが、このカラーフィルタを対向電極23を有する対向ガラス基板24側に設けることもできる。その場合は、各カラーフィルタ間に遮光膜(ブラックマトリクス)を形成するのが望ましい。
【0045】
なお、上記した走査線駆動回路や信号線駆動回路を構成する薄膜トランジスタも上記画素回路と同様の多結晶シリコン半導体薄膜で形成することもできる。また、本発明は液晶表示装置に限らず、アクティブ・マトリクス型の他の表示装置、例えば有機EL表示装置などの画像表示装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の測定光学系の説明図である。
【図2】数値シミュレーションによって求めた非晶質シリコン薄膜の厚さとA値との関係の説明図である。
【図3】本発明の測定法の精度を説明する図であり、ガラス基板上に非晶質シリコン薄膜が形成された同一サンプル基板の面内複数箇所の測定結果をT+Rとエリプソ法による膜厚の測定結果を比較したものである。
【図4】図1の光学系を計測のスループットをさらに向上させるためにマルチビーム系とした測定装置の光学系の説明図である。
【図5】図4のマルチビーム系によって730mm×920mmサイズのガラス基板上に形成した非晶質シリコン薄膜の膜厚の面内分布を計測した例を説明する図である。
【図6】低温ポリシリコンTFT液晶表示装置用の基板を製造する工程に本発明の膜厚測定方法を適用したものである。
【図7】波長308ナノメートルのパルスエキシマレーザでアニールする場合に結晶する多結晶シリコンの粒径(平均粒径)がレーザエネルギ密度でどの様に変化するのかを模式的に表した図である。
【図8】レーザエネルギが不足していた場合と過剰であった場合の非晶質シリコン薄膜の膜厚に対する粒径の変化を示す図である。
【図9】本発明による画像表示装置の一例としてのアクティブ・マトリクス型の液晶表示装置の要部構成例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1:レーザ
2:ガラス基板
3:非晶質シリコン薄膜
4:透過光強度モニタ
5:反射光強度モニタ
6:ハーフミラー
7:レンズ
8:反射ミラー
9:ハーフミラー
11:ガラス基板
12:下地層(窒化シリコンと酸化シリコンの積層膜)
13:半導体層
14a:ソース側半導体層
14b:ドレイン側半導体層
15:ゲート酸化膜(ゲート絶縁層)
16:ゲート電極
17:層間絶縁膜
18:ソース/ドレイン電極
19:保護膜
20:カラーフィルタ
21:画素電極
22:液晶
23:対向電極
24:対向基板
25:薄膜トランジスタ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成された薄膜を測定対象とする薄膜の膜厚測定方法であって、
前記薄膜に、当該薄膜の吸収帯にある単一波長の光を照射し、その反射光強度および透過光強度を測定し、
両者の線形和から前記薄膜の光吸収量を求め、
前記光吸収量を用いて当該薄膜の厚さを評価することを特徴とする薄膜の膜厚測定方法。
【請求項2】
測定された前記反射光強度および前記透過光強度から前記薄膜の反射率と透過率を得、
前記反射率と透過率および当該薄膜を構成する物質の前記照射した光の波長の光学定数を用いて当該薄膜の厚さを導出することを特徴とする請求項1に記載の薄膜の膜厚測定方法。
【請求項3】
前記透明基板はガラス基板で、前記測定対象とする薄膜は非晶質シリコン薄膜であり
前記照射光の波長として、前記ガラス基板では吸収されずに前記非晶質シリコン薄膜で吸収される範囲の波長をもつレーザ光を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記透明基板はガラス基板で、前記測定対象とする薄膜は多層薄膜であり、
前記測定対象とする多層薄膜以外の吸収がゼロか無視できる波長の光を前記照射光として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜の膜厚測定方法。
【請求項5】
前記多層薄膜の膜構造は、前記ガラス基板上に形成されたシリコン窒化膜と、このシリコン窒化膜の上に形成されたシリコン酸化膜との積層膜を有し、この積層膜の上に非晶質シリコン膜を成膜されてなり、
前記照射光として、波長450ナノメートルから波長600ナノメートルの範囲の光を照射して、前記非晶質シリコンの膜厚を計測することを特徴とする請求項5に記載の薄膜の膜厚測定方法。
【請求項6】
透明基板上の非晶質半導体薄膜をレーザアニールすることにより改質して多結晶半導体薄膜を得る多結晶半導体薄膜の形成方法であって、
前記非晶質半導体薄膜は、前記ガラス基板上に形成されたシリコン窒化膜と、このシリコン窒化膜の上に形成されたシリコン酸化膜との積層膜を有し、この積層膜の上に非晶質シリコン膜を成膜されてなり、
前記非晶質半導体薄膜に波長450ナノメートルから波長600ナノメートルの範囲の光を照射して、その膜厚を測定し、
測定した膜厚でアニール用レーザ光のフルエンスを調整することにより、前記非晶質半導体薄膜をアニールすることを特徴とする多結晶半導体薄膜の形成方法。
【請求項7】
300mm×400mmより大きいサイズの透明基板上に成膜された非晶質半導体薄膜をレーザを用いたアニールにより多結晶シリコン半導体薄膜に改質する半導体装置の製造方法であって、
前記非晶質半導体薄膜が成膜された透明基板に対して、1分間に10000点以上の膜厚を計測する能力を有し、前記非晶質半導体薄膜の成膜工程に設置される成膜装置と同数以上設置された膜厚測定装置により前記非晶質半導体薄膜の膜厚を測定し、
前記測定した膜厚データで前記アニール用のレーザ光のフルエンスを調整することにより、前記非晶質半導体薄膜をアニールして多結晶シリコン半導体薄膜に改質することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
300mm×400mmより大きいサイズの透明基板上成膜された非晶質半導体薄膜をレーザを用いたアニール装置により多結晶シリコン半導体薄膜に改質する半導体デバイスの製造装置であって、
前記非晶質半導体薄膜が成膜された透明基板に対して、1分間に10000点以上の膜厚を計測する能力を有し、前記非晶質半導体薄膜の成膜工程に設置される成膜装置と同数以上設置された膜厚測定装置を備え、
前記膜厚測定装置で測定された前記非晶質半導体薄膜の膜厚データでフルエンスを調整した前記アニール装置のレーザ光を前記非晶質半導体薄膜に照射することで多結晶シリコン半導体薄膜に改質することを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項9】
300mm×400mmより大きいサイズの透明基板上に成膜された非晶質半導体薄膜をレーザを用いたアニールにより多結晶シリコン半導体薄膜に改質して画素回路の薄膜トランジスタを形成する画像表示装置の製造方法であって、
前記透明基板は下地層を有するガラス基板であり、前記下地層上に成膜された前記非晶質半導体薄膜の膜厚を1分間に10000点以上の膜厚を計測する能力を有し、前記非晶質半導体薄膜の成膜工程に設置される成膜装置と同数以上設置された膜厚測定装置により測定して、その測定結果で前記アニール用のレーザ光のフルエンスを調整することにより、前記非晶質半導体薄膜をアニールして多結晶シリコン半導体薄膜に改質し、改質された多結晶シリコン半導体薄膜に前記画素回路の薄膜トランジスタを形成することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記下地層は、前記ガラス基板の表面に窒化シリコンと酸化シリコンがこの順で形成された多層膜であることを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−300811(P2006−300811A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124830(P2005−124830)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】