薄膜構造の特性評価を含む、偏光解析、反射光測定および散乱光測定のための干渉計法
【課題】 薄膜構造の特性評価を含む、偏光解析、反射光測定および散乱光測定のための干渉計法を提供する。
【解決手段】検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像することであって、テスト光および参照光は共通の光源から生成される。それぞれの角度毎に、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間にいて、光源から検出器までの光路長差を同時に変更すること、および、それぞれの角度毎に光路長差を変更しながら、テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定することからなる方法。
【解決手段】検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像することであって、テスト光および参照光は共通の光源から生成される。それぞれの角度毎に、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間にいて、光源から検出器までの光路長差を同時に変更すること、および、それぞれの角度毎に光路長差を変更しながら、テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定することからなる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜あるいは異種材料からなるハイブリッド構造を有する物体の表面トポグラフィ測定に関する。そのような測定は、フラットパネルディスプレイ部品の特性評価、半導体ウェーハの計測、ならびに薄膜および異種材料のその場解析に関連する。
【背景技術】
【0002】
偏光解析法は複雑な表面の光学特性を解析するために用いられる。偏光解析法は、或る傾斜角、たとえば60°で照明されたときの表面の複素反射率の差を基にするが、可変の角度あるいは複数の波長が用いられる場合がある。当該技術分野において、数多くのタイプの偏光解析装置が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の偏光解析装置において容易に達成され得る分解能よりもさらに高い分解能を達成するために、超小型偏光解析装置によって、物体の後部焦点面において位相および/または強度分布が測定される。これは瞳面としても知られており、種々の照明角度が視野位置にマッピングされる。そのようなデバイスは、歴史的には結晶学および鉱物学に関連した、交差偏光子およびベルトランレンズを用いて複屈折材料の瞳面を解析する、従来の偏光顕微鏡あるいは「コノスコープ」を現代風に改変したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、少なくとも部分的には、干渉計の種々の入射角(たとえば、高いNAの対物レンズを有する)が、干渉計に対してテストサンプルあるいは参照ミラーを走査する(たとえば、テストサンプルあるいは参照ミラー上に光を集束するために用いられる対物レンズに対して上下に動かす)ことによって生成される干渉縞が、対応する空間周波数により区別できるという方法に基づく。それゆえ、そのような干渉縞を数学的に空間周波数分解することにより、サンプル表面から反射される(あるいは散乱される)光の相対的な振幅および位相を角度の関数として求めることができる。これによって得られた情報は、対物レンズの瞳面の照明分布の較正および瞳面を横切る照明の偏光状態とともに、検出器アレイ上に瞳面を直に結像させることを必要とすることなく、視野内のピクセル毎に多角度の反射(あるいは散乱)振幅および位相情報を与える。これらの多角度データを用いて、表面高のプロファイル情報と同時に、薄膜厚および/または複素屈折率のようなサンプル表面特性が、ピクセル毎に高い横方向分解能で得られる。
【0005】
本発明の実施形態は典型的には干渉計、たとえばミロー(Mirau)型、リンニク(Linnik)型、マイケルソン(Michelson)型などの干渉対物レンズを備える干渉顕微鏡を含む。対物レンズはサンプル表面を照明し、その表面からの光を、或る範囲の入射角φにわたって収集する。たとえば、約0.75の開口数(NA)を有する干渉対物レンズの場合、φ=0〜50°である。照明の偏光には、ラジアル偏光、直線偏光、円偏光、視野に依存する偏光あるいは調整可能な偏光を用いることができる。典型的には、その装置はさらに、電子カメラでサンプル上の視野位置に対応するピクセルのアレイのための干渉強度データを収集しながら、対物レンズの光軸に対して平行な軸に沿ってサンプル表面を動かす(あるいは、それに相当するように、サンプルに対して対物レンズを動かす)ための機械式スキャナも備える。別法では、干渉計の参照経路(reference leg)
を走査することもできる。その結果として、サンプルからの一連の対物レンズ距離に対してピクセル毎に強度対サンプル位置データがコンピュータメモリに記憶される。
【0006】
いくつかの実施形態では、コンピュータが、ピクセル毎の干渉データを、たとえばフーリエ解析によって周波数領域に変換し、干渉データ内に存在する空間周波数成分の大きさおよび位相を回復する。コンピュータはこのデータを解析し、その大きさおよび位相を、サンプルの入射角、偏光および/または波長に依存する光学特性を含む、サンプルの表面構造を表すモデルと比較する。この解析により、表面高あるいは薄膜厚のようなパラメータが特定される。
【0007】
いくつかの実施形態では、干渉計への波長を選択するか、あるいは複数の波長を干渉計に送り、材料の光学特性の角度依存性を解析するほかに、波長の関数として材料の光学特性の詳細な解析を実行する。いくつかの実施形態では、サンプルから散乱される光を解析して、入射角および波長の関数としての表面の回折および散乱特性によって表面構造情報を特定する。
【0008】
本発明の実施形態は数多くの利点を含む。たとえば、それらの実施形態は、干渉対物レンズに対してサンプルを垂直方向に走査することによって生成される干渉縞を周波数領域で分解することにより、たとえばピクセル毎に、その光学特性と表面トポグラフィとを同時に得るために表面構造を解析するための手段を与えることができる。そのような手法によって、機器の瞳面を直に利用しなくても、反射された光からの振幅および位相情報の両方を用いて、その表面の角度に依存する光学特性および波長に依存する光学特性を入手することができる。
【0009】
ここで、本発明の1つ以上の実施形態の種々の態様および特徴を包括的に要約する。
一般的に、一態様において、本発明の特徴は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像することであって、テスト光および参照光は共通の光源から生成される。それぞれの角度において、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間において、光源から検出器までの光路長差を同時に変更すること、および、角度毎に光路長差を変更しながら、テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定する。
【0010】
本方法の実施形態は以下の特徴のいずれかを含み得る。
入射角の範囲は0.7よりも大きな、またはより好ましくは0.9よりも大きな開口数に対応し得る。
【0011】
検出器は複数の検出器素子を有するカメラであってもよく、結像は、テスト物体の種々の場所から出射するテスト光をカメラ上の対応する場所に結像することからなる。さらに、光学特性の角度依存性を特定することは、テスト物体の種々の場所毎に光学特性の角度依存性を特定することを含む。
【0012】
光学特性の角度依存性は、テスト物体上に入射するテスト光の角度の関数としての光学特性の変化に関連付けられてもよい。その方法は、テスト光が入射角の範囲にわたって複数の場所のそれぞれに入射するように、テスト光でテスト物体の複数の場所を照明することをさらに含み得る。このような場合、照明することおよび結像することは共通の対物レンズを使用することを含み得る。さらに、共通の光源は空間的に延長された光源であり得る。
【0013】
他の実施形態において、光学特性の角度依存性は、テスト物体から散乱される(すなわち回折される)テスト光の角度の関数としての光学特性の変化に関連する。方法は、テスト物体への均一な入射角を有するテスト光でテスト物体の複数の場所を照明することをさ
らに含み、結像は、テスト物体の各場所から、或る範囲の角度にわたって散乱されるテスト光を検出器上の対応する場所に結像することを含み得る。このような場合、照明および結像すは共通の対物レンズを使用することを含み得る。さらに、共通の光源は点光源であり得る。
【0014】
結像は、結像に関係する光学系の瞳面においてテスト光を偏光することをさらに含み得る。
その方法は、テスト光でテスト物体を照明すること、および、テスト物体を照明するために用いられる光学系の瞳面においてテスト光を偏光することをさらに含み得る。
【0015】
共通の光源は単色であり得る。たとえば、共通の光源は或る中心波長と、中心波長の2%未満のスペクトル帯域幅とを有し得る。
角度毎に光路長差を同時に変更することは、テストサンプルから出射するテスト光を収集するために用いられる対物レンズに対してテスト物体を動かすことを含み得る。
【0016】
角度毎に光路長差を同時に変更することは、参照ミラー上に参照光を集束するために用いられる対物レンズに対して、参照光を反射するために用いられる参照ミラーを動かすことを含み得る。
【0017】
角度毎に光路長差を同時に変更することは、ミロー型干渉対物レンズ内に配置されるビームスプリッタを動かすことを含み得る。
角度毎に光路長差を同時に変更することは空間コヒーレンス長を規定してもよく、角度のうちの少なくとも1つのための光路長差は、空間コヒーレンス長よりも大きな範囲にわたって変更されてもよい。
【0018】
光学特性の角度依存性を特定することは、光路長差が角度毎に同時に変更されるのに応じて、検出器からの干渉信号を測定すること、および、角度毎に光路長差に直線的に比例する座標に対して干渉信号を変換することであって、それによって、座標への共役変数に依存する、変換された信号を生成する、変換することを含み得る。たとえば、共役変数は空間周波数であり得る。
【0019】
共役変数はテスト物体上に入射するテスト光、あるいはテスト物体から出射するテスト光の角度への直接マッピングを与え得る。たとえば、共役変数が空間周波数Kである場合、空間周波数と角度φとの間の直接マッピングはK(φ)∝cos(φ)/λによって与えられることができ、ただしλはテスト光の波長である。たとえば、出射した光がテストサンプルから反射されると、空間周波数と角度との間の直接マッピングはK(φ)=4πcos(φ)/λによって与えられる。
【0020】
変換された信号は、光学特性の角度依存性への直接マッピングを与え得る。たとえば、変換はフーリエ変換に対応し得る。
光学特性はテスト物体の複素反射率に関連する。たとえば、光学特性はテスト物体の複素反射率の大きさに関連する。また、光学特性はテスト物体の複素反射率の位相に関連する。
【0021】
光学特性の角度依存性は、光路長差が角度毎に変更されるときのテスト光と参照光との間の干渉と、結像に関係する光学系の予め較正された角度に依存する特性とに基づいて特定され得る。
【0022】
方法は、光路長差が変更されるときのテスト光と参照光との間の干渉に基づいてテスト物体の表面高プロファイルを特定することをさらに含み得る。 方法は、テスト光と参照
光との間の干渉から特定される光学特性の角度依存性の変化と、テスト物体のためのモデルの角度依存性の変化とを比較することをさらに含み得る。たとえば、テスト物体は基板上にある少なくとも1つの薄膜を含んでもよく、また方法は、比較に基づいて薄膜の厚みを特定することをさらに含み得る。
【0023】
このような一実施形態において、光学特性はテストサンプルの複素反射率の角度依存性の大きさを含み、薄膜の厚みの特定は、複素反射率の角度依存性の大きさとモデルの角度依存性の大きさとを比較することに基づく。さらに、本実施形態は、比較に基づいて、テスト物体のための表面高プロファイルを特定することを含み得る。たとえば、光学特性はさらに、テストサンプルの複素反射率の角度依存性の位相を含んでもよく、表面高プロファイルの特定は、薄膜の特定された厚みと、複素反射率の角度依存性の位相と特定された厚みの場合のモデルの角度依存性の位相とを比較することとに基づく。
【0024】
最後に、テスト光および参照光は第1の波長を有してもよく、方法は、第1の波長とは異なる第2の波長を有するテスト光および参照光の場合に、結像すること、変更すること、および特定することを繰り返すことをさらに含み得る。
【0025】
一般的に、別の態様において、本発明は、テスト物体のための走査式(scanning:スキャニング)干渉法データに基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定することを含む方法を特徴とする。
【0026】
この方法はさらに、第1の方法に関連して上述された特徴のいずれかを含み得る。
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像することであって、テスト光および参照光は共通の単色光源から生成され、テスト物体は基板上にある少なくとも1つの薄膜を含む。角度毎に、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更すること、および、角度毎に光路長差を変更しながら、テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、薄膜の厚みを特定することを含む方法を特徴とする。
【0027】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、薄膜と薄膜を支持する基板とを含むテスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、テスト物体上の薄膜の厚みを特定することを含む方法を特徴とする。
【0028】
上述された第3および第4の方法の実施形態は、第1の方法に関連して上述された特徴のいずれかをさらに含み得る。
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、光源と、検出器と、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計であって、テスト光および参照光は光源から生成され、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成される、走査式干渉計と、検出器および走査式干渉計に結合される電子プロセッサであって、検出器によって測定される場合に光路長差が角度毎に変更されるときの、テスト光と参照光との間の干渉に基づいてテスト物体の光学特性の角度依存性を特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0029】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、単色光源と、検出器と、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計であって、テスト光および参照光は単色光源から生成され、角度毎に、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依
存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成される、走査式干渉計と、検出器および走査式干渉計に結合される電子プロセッサであって、光路長差が角度毎に変更されるときの、テスト光と参照光との間の干渉に基づいてテスト物体上の薄膜の厚みを特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0030】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、走査式干渉法システムと、走査式干渉法システムに結合される電子プロセッサであって、走査式干渉法システムによって生成されるテスト物体のための走査式干渉法データに基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0031】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、単色光走査式干渉法システムと、走査式干渉法システムに結合される電子プロセッサであって、テスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、テスト物体上の薄膜の厚みを特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0032】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計を備える装置であって、テスト光および参照光は共通の光源から生成され、角度毎に、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成され、干渉計は、テスト物体から出射するテスト光を収集するために配置される対物レンズと、対物レンズの瞳面に配置される少なくとも1つの偏光光学系とを備える、装置を特徴とする。
【0033】
たとえば、少なくとも1つの偏光光学系は瞳面を横切って変化する偏光を付与し得る。
また、少なくとも1つの偏光光学系は、偏光子と、少なくとも1つの波長板とを備え得る。たとえば、少なくとも1つの偏光光学系は、瞳面の異なる位置に配置される2つの波長板を備え得る。
【0034】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計を備える装置であって、テスト光および参照光は共通の光源から生成され、角度毎に、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成され、干渉計は、概ねコリメートされた光でテスト物体を照明するように構成される光源モジュールを備える、装置を特徴とする。たとえば、装置は共通の光源をさらに含んでもよく、共通の光源は単色光源であってもよい。
【0035】
さらに、これまでに説明された本発明の装置のうちの任意の装置の実施形態は、第1の方法に関連して上述された対応する特徴のいずれかを含むことができる。他に規定されなければ、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者によって広く理解されているのと同じ意味を有する。本明細書にて言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、その全体を参照して援用される。抵触がある場合には、定義を含む、本明細書が優先するであろう。
【0036】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下に記載される詳細な説明から明らかになるであろう。
種々の図面における同じ参照番号は共通の構成要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】リンニク型走査式干渉法システムの概略図。
【図2】対物レンズを通してテストサンプルを照明することを示す図。
【図3】薄膜構造の図。
【図4】550nm単色光および0.9NAリンニク型対物レンズを用いてシミュレートされた、Si上に1.8μmのSiO2を積層する図3に示される構造のための干渉縞I(ζ,h)で、両方の表面からの干渉信号が混合されている図。
【図5】図4と比較するための、簡単な単一表面SiO2サンプルの(すなわち薄膜が存在しない)場合のシミュレートされた干渉縞I(ζ,h)の図。
【図6】図3の薄膜構造を垂直方向に走査することによって生成される、図4の信号のフーリエ変換の大きさQ(φ,h)を示し、空間周波数は式(4)に従って入射角に関連する図。
【図7】単一表面サンプルの場合の図5の信号のフーリエ変換の大きさQ(φ,h)を示し、下側の空間周波数において大きさが増加するのは、浅い入射角において反射率が増加する結果である、グラフ。
【図8】0.02μmだけ厚みが増していく3つの薄膜厚の場合の図3の、Si上にSiO2がある薄膜構造のためのP(φ)V0(φ)(Z(φ))1/2の予想される結果を比較するグラフ(式(9)を参照)。
【図9】図3の薄膜構造を垂直方向に走査することによって生成される図4の信号のための、空間周波数の関数としての位相αQ(φ,h)し、空間周波数は式(4)に従って入射角に関連付けられ、図10のより簡単な単一表面反射と比較して、位相の勾配だけでなく、際立った非線形性を示すグラフ。
【図10】図9と比較するための、単一表面パターンの場合の図5の信号のための空間周波数の関数としての位相αQ(φ,h)のグラフ。
【図11】ミロー型走査式干渉法システムの概略図。
【図12】瞳面のラジアル偏光を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、リンニク型の走査式干渉計を示す。光源(図示せず)からの照明光102が、一部がビームスプリッタ104によって透過されて参照光106を規定し、一部がビームスプリッタ104によって反射されて測定光108を規定する。測定光は測定対物レンズ110によってテストサンプル112(たとえば、1つの材料からなる単層薄膜あるいは複数の異種の材料からなる多層薄膜を含むサンプル)上に集束される。同様に、参照光は参照対物レンズ114によって参照ミラー116上に集束される。測定および参照対物レンズは、共通の光学特性(たとえば、同じ開口数)を有することが好ましい。テストサンプル112から反射される(あるいは散乱または回折される)測定光は、測定対物レンズ110を通って戻され、ビームスプリッタ104によって透過されて、結像レンズ118によって検出器120上に結像される。同様に、参照ミラー116から反射される参照光も参照対物レンズ114を通って戻され、ビームスプリッタ104によって反射されて、結像レンズ118によって検出器120上に結像され、測定光と干渉する。
【0039】
簡単にするために、図1は、それぞれテストサンプルおよび参照ミラー上の特定の点に集束し、その後、検出器上の対応する点において干渉する測定光および参照光を示す。そのような光は、干渉計の測定経路および参照経路のための瞳面に対して垂直に伝搬する照明光の部分に対応する。照明光の他の部分は最終的には、テストサンプルおよび参照ミラー上の他の点を照明し、その後、検出器上の対応する点において結像される。図1では、これは破線122によって示されており、それは、テストサンプル上の種々の点から出射し、検出器上の対応する点に対して結像される主光線に対応する。主光線は、測定対物レンズ110の後部焦点面である、測定経路の瞳面124の中心を横切る。主光線の角度とは異なる角度においてテストサンプルから出射する光は、瞳面124の異なる場所を横切
る。
【0040】
好ましい実施形態では、検出器120は複数の構成要素からなる(すなわちマルチピクセル)カメラであり、テストサンプルおよび参照ミラー上の種々の点に対応する測定光と参照光との間の干渉を個別に測定する(すなわち、干渉縞のための空間分解能を与える)。
【0041】
テストサンプル112に結合される走査ステージ126が、図1において走査座標ζによって示されるように、測定対物レンズ110に対してテストサンプルの位置を走査する。たとえば、走査ステージは圧電変換器(PZT)を基にすることができる。検出器120は、テストサンプルの相対的な位置が走査されているときに、検出器の1つ以上のピクセルにおいて光学干渉の強度を測定し、その情報を解析するためにコンピュータ128に送る。
【0042】
走査は、測定光がテストサンプル上に集束されている領域において行われるので、その走査は、テストサンプルに入射する測定光およびテストサンプルから出射する測定光の角度に応じて別々に、光源から検出器への測定光の光路長を変更する。結果として、測定光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路差(OPD)は、テストサンプルに入射する測定光およびテストサンプルから出射する測定光の角度に応じて、異なる走査座標ζに対応する。本発明の他の実施形態では、参照対物レンズ114に対して参照ミラー116の位置を走査することにより(測定対物レンズ110に対してテストサンプル112を走査する代わりに)、同じ結果を達成することができる。
【0043】
OPDが走査座標ζとともに変化する態様のこの差は、検出器の各ピクセルにおいて測定される干渉信号に、制限されたコヒーレンス長を導入する。たとえば、干渉信号(走査座標の関数)は通常、約λ/2(NA)2の空間コヒーレンス長を有する包絡線によって変調される。ただし、λは照明光の公称波長であり、NAは測定および参照対物レンズの開口数である。後にさらに説明されるように、干渉信号の変調は、テストサンプルの反射率についての、角度に依存する情報を与える。制限された空間コヒーレンスを高めるために、走査式干渉計内の対物レンズは大きな開口数、たとえば0.7よりも大きな開口数を規定することが好ましい(あるいは0.9よりも大きいことがさらに好ましい)。
【0044】
干渉信号は、照明源からの空間帯域幅に関連付けられる、制限された時間コヒーレンス長によってさらに変調されることができる。しかしながら、この説明の場合に、照明源は名目上、単色光であり、時間コヒーレンスの制限は、制限された空間コヒーレンスに対して小さいものと仮定される。たとえば、照明源は、その中心波長の約2%未満の帯域幅を有することができる。
【0045】
再び図1のリンニク型干渉計を参照すると、測定対物レンズ110はテストサンプルの表面を照明し、或る範囲の入射角φにわたってその表面を観測する。ここで、単色光照明であるものと仮定して、簡略化されたモデルを用いて、干渉効果が数学的に計算されるであろう。その後、干渉縞を、その角度に依存する寄与に数学的に分解することによって、サンプル表面の光学特性が如何に見つけられるかが説明されるであろう。
【0046】
テストサンプルの表面の複素振幅反射率はz(φ)であり、対応する強度反射率Z(φ)は以下の通りである。
【0047】
【数1】
【0048】
サンプル表面のための反射時の位相変化(PCOR)は以下の通りである。
【0049】
【数2】
【0050】
ただし式(2)の「arg」は複素振幅反射率の位相をもたらす。
入射角毎に個別に干渉効果を考慮する簡略化されたスカラー(非偏光)モデルでは、単一のサンプル点あるいはカメラピクセルのための干渉縞は以下の式に比例する。
【0051】
【数3】
【0052】
ただしζは走査位置(PZTによって動かされる)であり、hはサンプル表面の高さプロファイルである。パラメータR0(φ)、V0(φ)およびα0(φ)は、テストサンプル112とは無関係である、参照ミラー116を含む干渉計光学系の特性を示すDCレベル、コントラストおよび位相値である。後にさらに説明されるように、或る較正手順によって、既知の光学特性の既知のアーティファクトを用いて、これらのパラメータが特定される。R0(φ)、V0(φ)およびα0(φ)パラメータは、必要に応じて、機器の光学特性を調整するための視野依存性も含むことができる。
【0053】
干渉効果の空間周波数K(φ)は、以下の式に従って、角度φの関数として減少する。
【0054】
【数4】
【0055】
ただし、λは照明波長であり、測定光はテストサンプルから反射される(すなわち、測定光は、それがテストサンプル上に入射した角度に等しい角度でテストサンプルから出射
する)ものと仮定される。式(4)は、走査が行われた場合に、測定光(あるいは反射光)が或る範囲の角度にわたって伝搬し、それゆえ測定光および参照光の干渉する部分の間のOPDが、テストサンプル上に入射する測定光の角度に応じて、異なる走査座標ζに対応するという事実を基にする。結果として、式(4)は、干渉信号の空間周波数と入射角との間の固有の関係を示している。
【0056】
光源からの光が瞳面を横切って空間的に完全にインコヒーレントであり、単色光であるものと仮定すると、角度に依存する全ての寄与の干渉現象への正味の効果は、インコヒーレントな重ね合わせの積分によって与えられる。
【0057】
【数5】
【0058】
ただし、φMAX=arcsin(NA)であり、以下の例では、以下の重み関数が用いられる。
【0059】
【数6】
【0060】
その重み関数は光で均一に照明される瞳面の場合に適しており、それは図2に示される図について考えてみると明らかである(その図では、角度はφではなく、ψによって表される)。
【0061】
ピクセル毎に、電子カメラおよびコンピュータコントロールが、或る範囲の走査位置ζにわたって干渉縞I(ζ,h)を測定する。高さhおよび実効反射率z(φ)は視野にわたって変化し、ピクセル毎に異なる場合がある。
空間周波数と入射角との間の固有の関係は、積分された縞I(ζ,h)に対する個々の寄与g(φ,ζ,h)を回復する手段を与える。第1のステップは、たとえばフーリエ変換によって、完成した干渉縞の分解を実行することである。
【0062】
【数7】
【0063】
或る限られた走査の実際の要件によって、式(7)の全てのζにわたる積分が、正確な結果を得るために必要とされる程度の干渉信号を含む、或る限られた範囲の値で打ち切ら
れる。同じように干渉縞を分解する任意の他の変換を用いることもできる。空間周波数領域への変換は一般的に、周波数領域解析(FDA)と呼ばれる。
【0064】
分解q[K(φ),h]は以下のように解釈されることができる。零空間周波数あるいはDC項は角度φの関数として分離することができないので、以下の式が成り立つ。
【0065】
【数8】
【0066】
その積分の中で実際に有することができる範囲よりもはるかに小さな空間周期を有する全ての他の空間周波数成分の場合に、q[K(φ),h]の大きさおよび複素位相はそれぞれ以下の通りである。
【0067】
【数9】
【0068】
本発明の一実施形態では、光学系の特性α0(φ)、P(φ)、V0(φ)は、従来の較正、たとえば式(3)に伴って本文に示されたように、既知のアーティファクトサンプルによって特定されている。たとえば、その測定は、光学系の特性が式(9)および(10)から引き出されることができるように、既知の表面高および反射率を有するテストサンプルで行われることができる。光学系の特性が予め決定されている場合、式(9)および(10)は、表面高と、入射角φの範囲にわたるその表面の2つの光学特性Z(φ)およびαZ(φ)とに関する情報を与える。光学特性Z(φ)およびαZ(φ)は、材料および薄膜の既知の光学特性のような、多くの場合に根本原理によって薄膜厚のような特定の表面パラメータに結び付けられる光学特性そのものである。それゆえ、表面高とともに3つのパラメータが、q[K(φ),h]の測定位相αQ(φ,h)および大きさQ(φ,h)に最も良く適合するように調整されることができる。
【0069】
一例として、図3の薄膜構造について考える。この構造の実効反射率は以下の式によって与えられる。
【0070】
【数10】
【0071】
ただし、r1(φ)、r2(φ’)はそれぞれ上側および下側表面の反射率であり、φ’はφおよびスネルの法則から計算される下側表面への入射角である。薄膜の式(11)は、K(φ)に大きく依存する際立った干渉効果を生み出す。
【0072】
この例を定量的に例示するために、シリコン(Si;屈折率n2=3.96+0.03i)上にある二酸化シリコン(SiO2;屈折率n1=1.46)の1.8ミクロン薄膜、および550nmの照明波長について考える。実効反射率z(φ)は、式(11)および界面の反射率を得るためのフレネルの式から求められる。干渉対物レンズに対してこのサンプル表面を走査することにより、図4の場合のような信号が生成される。比較するために、図5は、簡単な単一表面のSiO2サンプル(すなわち、薄膜層がないSiO2の厚いサンプル)の場合のシミュレートされた干渉縞I(ζ,h)を示す。
【0073】
データを取得した後に、コンピュータは、図4の信号に類似の信号を画像ピクセル毎に周波数領域に変換する。表面トポグラフィ、光学系パラメータおよび薄膜厚が実際に変化することに起因して、信号および変換はピクセル毎に異なる場合がある。図6は、図4の信号への各空間周波数成分への寄与の大きさ(この場合には振幅)を示す。この結果は、図5に示される干渉信号を有する簡単な単一表面構造によって生成される、図7に示される周波数領域の大きさと比べて、非常に際立った特徴を示す。
【0074】
たとえば、較正として図7を用いて、図6を図7と比較すると、薄膜の存在が明白に特定される。さらに、SiO2およびSiの特性がわかっているものと仮定すると、図6とサンプルの実効反射率に基づく理論的な予想とを比較することにより、コンピュータは、たとえば薄膜の厚みを特定することができる。これが図8によって例示され、それは3つの異なる薄膜の予想される結果を比較しており、そのうちの1つのみ(1.80μm)が図6のフーリエ変換された干渉データと良好に一致する。
【0075】
類似の解析はフーリエ変換の位相の場合にも有用である。図9および図10は、或る薄膜構造と、簡単な同種の単一表面サンプルとの間の差を示す。図9において明らかな非線形性は、薄膜効果の明らかな特徴である。ここで再び、測定と理論との間の比較は、式(10)に基づいて、重要な薄膜情報を与える。さらに、振幅情報から導出される厚み情報を用いて、式(11)からαZ(φ)を特定し、式(10)においてそれを用いて、種々のピクセルの中の表面高の変化hを引き出すことができる。
【0076】
他の実施形態では、図1とは異なる干渉法システムを用いて、カメラの各ピクセルにおける走査式干渉データI(ζ,h)を与えることができる。たとえば、その干渉法システムには、図11に示されるようなミロー型干渉計を用いることができる。
【0077】
図11を参照すると、光源モジュール205が照明光206をビームスプリッタ208に与え、ビームスプリッタ208はその光をミロー型干渉対物レンズアセンブリ210に誘導する。アセンブリ210は、対物レンズ211と、その小さな中央部に反射コーティングを有し、参照ミラー215を画定する参照平面212と、ビームスプリッタ213とを備える。動作中に、対物レンズ211が、参照平面212を通して、テストサンプル220に向かって照明光を集束する。ビームスプリッタ213が集束した光の第1の部分を参照ミラー215に反射して参照光222を規定し、集束した光の第2の部分をテストサ
ンプル220に透過して測定光224を規定する。その後、ビームスプリッタ213は、テストサンプル220から反射された(あるいは散乱された)測定光を参照ミラー215から反射された参照光と再合成し、対物レンズ211および結像レンズ230が合成された光を結像して検出器(たとえば、マルチピクセルカメラ)240上で干渉を引き起こす。図1のシステムと同様に、検出器からの測定信号(1つあるいは複数)がコンピュータ(図示せず)に送られる。
【0078】
図11の実施形態の走査は、ミロー型干渉対物レンズアセンブリ210に結合された圧電変換器(PZT)260を含み、それは対物レンズ211の光軸に沿ってテストサンプル220に対してアセンブリ210を全体として走査し、カメラの各ピクセルにおいて走査式干渉法データI(ζ,h)を与えるように構成される。別法では、PZTアクチュエータ270によって示されるように、PZTはアセンブリ210ではなく、テストサンプルに結合され、その間に相対的な動きを与えることができる。さらに別の実施形態では、走査は、対物レンズ211の光軸に沿って対物レンズ211に対して参照ミラー215およびビームスプリッタ213のうちの一方あるいは両方を動かすことにより与えられることができる。
【0079】
光源モジュール205は、空間的に延長された光源201と、レンズ202および203によって形成される望遠鏡と、レンズ202の前部焦点面(それはレンズ203の後部焦点面と一致する)内に配置される絞り204とを備える。この配列は、空間的に延長された光源をミロー型干渉対物レンズアセンブリ210の瞳面245上に結像し、それはケーラー照明による結像の一例である。絞りのサイズはテストサンプル220上の照明野のサイズを制御する。他の実施形態では、光源モジュールは、空間的に延長された光源がテストサンプル上に直に結像される配列を含むことができ、それはクリティカル照明による結像として知られている。いずれのタイプの光源モジュールも、図1のリンニク型走査式干渉法システムとともに用いることができる。
【0080】
さらに別の実施形態では、走査式干渉計はマイケルソン型からなることができる。
本発明のさらに別の実施形態では、走査式干渉法システムを用いて、テストサンプルについての、角度に依存する散乱あるいは回折情報、すなわち散乱光測定(スキャタロメトリ)のための情報を特定することができる。たとえば、走査式干渉法システムを用いて、非常に狭い範囲の入射角(たとえば、概ね垂直な入射、あるいはそうでなければコリメートされた入射)のみにわたるテスト入射でテストサンプルを照明することができ、その後、テストサンプルによって散乱あるいは回折されることができる。サンプルから出射する光はカメラに結像されて、先に説明されたように参照光と干渉する。先に説明された実施形態の反射された光の場合と同様に、走査式干渉法信号内の各成分の空間周波数は、テストサンプルから出射するテスト光の角度に大きく依存するであろう。概ね垂直な入射の場合、空間周波数は以下の式に従って変化する。
【0081】
【数11】
【0082】
その式は、垂直な入射であるために、式(4)とは2倍だけ異なる。
しかしながら、数学的な解析の他の部分に変わりはなく、散乱あるいは回折するテストサンプルからの走査式干渉法データI(ζ,h)は、式(7)〜(10)に従って解析され、テストサンプルのための、角度に依存しない位相および振幅散乱/回折係数を与えることができる。こうして、垂直方向への走査(すなわち、対物レンズの光軸に沿った走査
)と、それに続くフーリエ解析によって、対物レンズの後部焦点面を直に利用することなく、あるいは結像することなく、出射する角度の関数として回折および/または散乱された光を測定できるようになる。さらに、上記のように、そのような光学特性の角度依存性は、結像システムの分解能およびカメラピクセルサイズに基づいて、テストサンプルのエリアにわたって局部的に特定されることができる。たとえば、概ね垂直に入射する照明を与えるために、光源モジュールは、瞳面に点光源を結像するように、あるいは別の方法で、照明光が測定対物レンズの開口数を占める度合いを減らすように構成されることができる。散乱光測定技法は、格子ライン、エッジ、あるいは全体的な表面粗さのような、光をより大きな角度で回折および/または散乱することができる、サンプル表面内の離散的な構造を解明するために有用な場合がある。
【0083】
上記の実施形態では、瞳面の光の偏光状態がランダムである、すなわちs(入射面に対して直交する)偏光およびp(入射面に対して直交する)偏光の両方が概ね等しい量からなるものと仮定している。瞳面(たとえば、リンニク型干渉計の場合の測定対物レンズの後部焦点面およびミロー型干渉計の場合の共通対物レンズの後部焦点面)内に配置されるラジアル偏光子によって実現されることができるような、純粋なs偏光を含む、別の偏光も実現可能である。そのようなラジアル偏光が図12に示される。他の実現可能な偏光は、ラジアルp偏光、円偏光、および偏光解析測定のための変調(たとえば、2状態であり、一方の状態が他方の状態に後続する)偏光を含む。言い換えると、テストサンプルの光学特性が、その角度依存性に関してだけでなく、その偏光依存性に関して、あるいは選択された偏光に関しても解明されることができる。そのような情報を用いて、薄膜構造の特性評価の精度を改善することもできる。
【0084】
そのような偏光解析測定を実現するために、走査式干渉法システムは、瞳面内に固定あるいは可変の偏光子を含むことができる。再び図11を参照すると、たとえば、ミロー型干渉法システムは、テストサンプル上に入射する光、およびテストサンプルから出射する光のための所望の偏光を選択するために、瞳面内に偏光光学系280を備える。さらに、その偏光光学系は、選択された偏光を変更するように構成変更可能にされることができる。その偏光光学系は、所与の偏光を選択するために、偏光子、波長板、アポディゼーション絞りおよび/または変調素子を含む1つ以上の素子を備えることができる。さらに、偏光光学系は、エリプソメータに類似のデータを生成するために、固定されるか、構造化されるか、あるいは構成変更可能にされることができる。たとえば、ラジアルに偏光された瞳面でs偏光のための第1の測定が行われ、その後、ラジアルに偏光された瞳面でp偏光のための測定が行われる。別の例では、線形に偏光された光でアポダイズされた瞳面、たとえば、任意の所望の線形偏光状態を物体に誘導するように瞳面において回転することができるスリットあるいは光学くさび、あるいは液晶ディスプレイのような構成変更可能なスクリーンを用いることができる。
【0085】
さらに、偏光光学系は、瞳面を横切って可変の偏光を与えることができる(たとえば、複数の偏光子あるいは空間変調器を備えることによる)。こうして、たとえば、浅い角度よりも大きな入射角の場合に異なる偏光を与えることにより、空間周波数に従って偏光状態を「タグ付け」することができる。
【0086】
さらに別の実施形態では、選択可能な偏光が、偏光の関数として位相シフトと組み合わせられることができる。たとえば、偏光光学系は、瞳面内に配置される直線偏光子と、それに後続する、その瞳面の向かい合った象限内に2つの波長板(たとえば1/8波長板)とを含むことができる。直線偏光の結果として、対物レンズの入射面に対して最大範囲の偏光角度が生成される。波長板が、たとえば支配的なs偏光された光が或る一定の位相シフトを有するように位置合わせされる場合には、ラジアルs偏光およびp偏光の両方の光が同時に存在するが、干渉計が基本信号としてこれら2つの偏光状態間の差を実効的に検
出しているように、互いに対して、たとえばπだけ位相がシフトされる。
【0087】
上記のように、瞳面内に偏光光学系を配置することにより、種々の角度分解されたタイプの偏光を測定できるようになる。しかしながら、さらに別の実施形態では、偏光光学系は装置内の他の場所に配置されることもできる。たとえば、直線偏光は、システム内のどの場所においても達成されることができる。
【0088】
さらに別の実施形態では、上記の反射光測定、散乱光測定および偏光解析技法のうちの任意のものが種々の波長の場合に順に繰り返されて、対象のサンプル光学特性の波長依存性を与えることができる。そのような情報は、さらに複雑な表面モデルに一致させるために用いることができる。
【0089】
本発明の他の実施形態は広帯域照明を含むことができる。たとえば、その照明は、たとえば白色光干渉顕微鏡において一般的であるように広帯域にすることができる。これにより、コンピュータが複雑な表面モデルに最も良く適合するものを見つけることができる情報の量が増える。
【0090】
走査式干渉法システムのための光源には、たとえば、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、フィルタリングされた白熱光源およびアーク灯のうちの任意のものを用いることができる。
【0091】
上記の方法およびシステムは、半導体への応用形態の場合に特に有用である可能性がある。本発明のさらに別の実施形態は、後に説明される半導体への応用形態のうちの任意のものに対処するために上記の測定技法のうちの任意のものを適用することを含む。
【0092】
半導体産業では、現在、表面トポグラフィの定量的な測定を行うことが大きな関心を集めている。通常のチップフィーチャのサイズが小さいことに起因して、これらの測定を行うために用いられる機器は通常、チップ表面に対して平行および垂直の両方において高い空間分解能を有さなければならない。技術者および科学者は工程管理のために、そして特にエッチング、研磨、洗浄およびパターニングのような工程の結果として、製造過程において生じる欠陥を検出するために、表面トポグラフィ測定システムを利用する。
【0093】
工程管理および欠陥検出において特に実用的であるためには、表面トポグラフィ測定システムは、通常の表面フィーチャの横方向サイズに相当する横方向分解能と、許容された最も低い表面段差高に相当する縦方向分解能とを有さなければならない。通常、これは、1ミクロン未満の横方向分解能と、1ナノメートル未満の縦方向分解能とを要求する。また、そのようなシステムは、チップの表面を変更するか、あるいは欠陥を導入するのを避けるために、チップの表面に接触するか、あるいは接触しない場合でも、表面に損傷を与える可能性がある力を加えることなく、その測定を行うことが好ましい。さらに、チップ形成において用いられる数多くの工程の影響が、パターン密度およびエッジ近接のような局部的な要因に大きく依存することがよく知られているので、表面トポグラフィ測定システムは、高い測定スループット、および1つあるいは多くの対象の表面フィーチャを含むことができる領域内の大きな面積にわたって細かくサンプリングする能力を有することも重要である。
【0094】
チップメーカの間では、チップの種々の部分の間の電気的な配線を形成するために、いわゆる「デュアルダマシン銅」配線工程を用いることが一般的になってきている。これは、適当な表面トポグラフィシステムを用いて実効的に特徴を抽出されることができる工程の一例である。デュアルダマシン工程は5つの部分、すなわち(1)誘電体材料(たとえばポリマーあるいはガラス)の層がウェーハ(複数の個別のチップを含む)の表面上に堆
積される、層間誘電体(ILD)堆積)、(2)高精度の光学リソグラフィのために適した滑らかな表面を作り出すために誘電体層が研磨される、化学機械研磨(CMP)、(3)ウェーハ表面に対して平行に延在する狭いトレンチ、およびトレンチの底部から下側の(以前に画定された)導電層まで延在する小さなバイアを含む複雑な回路網が作製される、リソグラフィパターニングおよび反応性イオンエッチングステップの組み合わせ、(4)結果としてトレンチおよびバイアが溢れるまで銅で満たされる、金属堆積ステップの組み合わせ、(5)余分な銅が除去され、誘電体材料によって囲まれる、銅で満たされたトレンチ(そして、おそらくバイア)からなる回路網を残す、最終的な化学機械研磨(CMP)ステップを有すると考えるができる。
【0095】
通常、トレンチエリア内の銅の厚み(すなわちトレンチの深さ)、およびそれを取り囲む誘電体の厚みは、0.2〜0.5ミクロンの範囲内にある。結果として形成されるトレンチの幅は、100〜100,000ナノメートルの範囲を有することができ、各チップ内の銅領域は、或る領域では、平行な線のアレイのような規則的なパターンを形成することができ、他の領域では、明らかなパターンを有さない場合がある。同様に、或る領域内では、その表面は銅領域で高密度に覆われることができ、他の領域では、銅領域は疎らな場合がある。研磨速度、それゆえ研磨後に残される銅(および誘電体)の厚みが、研磨条件(たとえば、パッド圧および研磨スラリー組成)に、ならびに銅およびそれを取り囲む誘電体領域の局部的な細かい配列(すなわち、向き、近接性および形状)に、大きく、しかも複雑な態様で依存することを理解することが重要である。
【0096】
この「位置に依存する研磨速度」は、多くの横方向の長さのスケールにおいて、多様な表面トポグラフィを引き起こすことが知られている。たとえば、それは、全体としてウェーハのエッジ付近に配置されるチップが中央付近に配置されるチップよりも短時間で研磨され、エッジ付近において所望の厚みよりも薄く、中央において所望の厚みよりも厚い銅領域が作製されることを意味するであろう。これは、「ウェーハスケール」の工程不均一性、すなわちウェーハの直径に相当する長さのスケールにおいて生じる不均一性の一例である。また、高密度の銅トレンチを有する領域が、銅線の密度が低い領域の近くよりも速く研磨されることも知られている。この結果として、高密度の銅領域において「CMPによって引き起こされる浸食」として知られている現象が生じる。これは、「チップスケール」の工程不均一性、すなわち、単一のチップの直線寸法に相当する(そしてそれよりもはるかに小さい場合がある)長さのスケールにおいて生じる不均一性の一例である。「ディッシング」として知られている、別のタイプのチップスケール不均一性は、単一の銅で満たされたトレンチ領域内で生じる(それは、取り囲む誘電体材料よりも速く研磨される傾向がある)。幅が数ミクロンよりも大きなトレンチの場合、ディッシングの結果として、影響を及ぼされた線が後に過大な電気抵抗を示し、チップ破損に繋がる場合があるので、深刻になる。
【0097】
CMPによって引き起こされるウェーハおよびチップスケールの工程不均一性は、本質的に予測するのは難しく、それらは、CMP処理システム内の条件が徐々に変わるのに応じて、時間とともに変化する傾向がある。任意の不均一性が確実に許容可能な限度内に入るようにする目的で、工程条件を実効的にモニタし、適当に調整するために、工程技術者が、多数の、かつ多種多様な場所においてチップの非接触表面トポグラフィ測定を頻繁に行うことが重要である。これは、上記の干渉法技法の実施形態を用いて実現可能である。
【0098】
より一般的には、上記の干渉法技法は、以下の表面解析の問題のうちの任意のもの、すなわち、単純な薄膜、多層の薄膜、回折あるいはそれ以外の複雑な干渉効果を引き起こす鋭いエッジおよび表面フィーチャ、分解能以下の表面粗さ、分解能以下の表面フィーチャ、たとえばその溝がなければ滑らかであるような表面上にある、波長よりも短い幅の溝、異種の材料、表面の偏光に依存する特性、および結果として入射角に依存する干渉現象の
摂動を生じる表面あるいは変形し得る表面フィーチャの反り、振動あるいは動きに対して用いることができる。単純な薄膜の場合には、対象となる可変パラメータとして、薄膜厚、薄膜の屈折率、基板の屈折率あるいはそのいくつかの組み合わせを用いることができる。たとえば、異種の材料の場合には、その表面は薄膜および固体金属の組み合わせを含むことができ、角度に依存する表面特性を両方の表面構造タイプを含む理論的な予測値のライブラリに適合させる操作が行われ、対応する干渉強度信号に対して一致させることにより、薄膜あるいは固体金属が自動的に特定されるであろう。
【0099】
上記のコンピュータ解析法の任意のものがハードウエアまたはソフトウエア、あるいは両方の組み合わせで実施されることができる。その方法は、本明細書において説明される方法および図に従って、標準的なプログラミング技法を用いてコンピュータプログラムにおいて実施されることができる。プログラムコードが入力データに適用されて、本明細書に記載される関数が実行され、出力情報が生成される。その出力情報は、ディスプレイモニタのような1つ以上の出力デバイスに与えられる。各プログラムは、コンピュータシステムとやり取りするための高水準の手続き形あるいはオブジェクト指向プログラミング言語において実現されることができる。しかしながら、所望により、そのプログラムは、アセンブリあるいは機械語において実現されることもできる。いずれの場合でも、言語にはコンパイル済みあるいは翻訳済みの言語を用いることができる。さらに、そのプログラムは、その目的を果たすためにプログラミングされた専用の集積回路上で実行されることができる。
【0100】
そのような各コンピュータプログラムは、コンピュータによって読み取られ、本明細書に記載される手順を実行する際に、コンピュータを構成しかつ動作させるための、汎用あるいは専用のプログラム可能コンピュータによって読取り可能な記憶媒体あるいはデバイス(たとえば、ROMあるいは磁気ディスケット)に記憶されることが好ましい。コンピュータプログラムは、プログラム実行中にキャッシュあるいはメインメモリ内に存在することもできる。その解析方法は、コンピュータプログラムで構成される、コンピュータ読取り可能記憶媒体として実現されることもでき、その場合には、そのように構成される記憶媒体によって、コンピュータが特定の、かつ予め決められた態様で動作し、本明細書に記載される関数を実行する。
【0101】
本発明の複数の実施形態が説明されてきた。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされることができることは理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜あるいは異種材料からなるハイブリッド構造を有する物体の表面トポグラフィ測定に関する。そのような測定は、フラットパネルディスプレイ部品の特性評価、半導体ウェーハの計測、ならびに薄膜および異種材料のその場解析に関連する。
【背景技術】
【0002】
偏光解析法は複雑な表面の光学特性を解析するために用いられる。偏光解析法は、或る傾斜角、たとえば60°で照明されたときの表面の複素反射率の差を基にするが、可変の角度あるいは複数の波長が用いられる場合がある。当該技術分野において、数多くのタイプの偏光解析装置が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の偏光解析装置において容易に達成され得る分解能よりもさらに高い分解能を達成するために、超小型偏光解析装置によって、物体の後部焦点面において位相および/または強度分布が測定される。これは瞳面としても知られており、種々の照明角度が視野位置にマッピングされる。そのようなデバイスは、歴史的には結晶学および鉱物学に関連した、交差偏光子およびベルトランレンズを用いて複屈折材料の瞳面を解析する、従来の偏光顕微鏡あるいは「コノスコープ」を現代風に改変したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、少なくとも部分的には、干渉計の種々の入射角(たとえば、高いNAの対物レンズを有する)が、干渉計に対してテストサンプルあるいは参照ミラーを走査する(たとえば、テストサンプルあるいは参照ミラー上に光を集束するために用いられる対物レンズに対して上下に動かす)ことによって生成される干渉縞が、対応する空間周波数により区別できるという方法に基づく。それゆえ、そのような干渉縞を数学的に空間周波数分解することにより、サンプル表面から反射される(あるいは散乱される)光の相対的な振幅および位相を角度の関数として求めることができる。これによって得られた情報は、対物レンズの瞳面の照明分布の較正および瞳面を横切る照明の偏光状態とともに、検出器アレイ上に瞳面を直に結像させることを必要とすることなく、視野内のピクセル毎に多角度の反射(あるいは散乱)振幅および位相情報を与える。これらの多角度データを用いて、表面高のプロファイル情報と同時に、薄膜厚および/または複素屈折率のようなサンプル表面特性が、ピクセル毎に高い横方向分解能で得られる。
【0005】
本発明の実施形態は典型的には干渉計、たとえばミロー(Mirau)型、リンニク(Linnik)型、マイケルソン(Michelson)型などの干渉対物レンズを備える干渉顕微鏡を含む。対物レンズはサンプル表面を照明し、その表面からの光を、或る範囲の入射角φにわたって収集する。たとえば、約0.75の開口数(NA)を有する干渉対物レンズの場合、φ=0〜50°である。照明の偏光には、ラジアル偏光、直線偏光、円偏光、視野に依存する偏光あるいは調整可能な偏光を用いることができる。典型的には、その装置はさらに、電子カメラでサンプル上の視野位置に対応するピクセルのアレイのための干渉強度データを収集しながら、対物レンズの光軸に対して平行な軸に沿ってサンプル表面を動かす(あるいは、それに相当するように、サンプルに対して対物レンズを動かす)ための機械式スキャナも備える。別法では、干渉計の参照経路(reference leg)
を走査することもできる。その結果として、サンプルからの一連の対物レンズ距離に対してピクセル毎に強度対サンプル位置データがコンピュータメモリに記憶される。
【0006】
いくつかの実施形態では、コンピュータが、ピクセル毎の干渉データを、たとえばフーリエ解析によって周波数領域に変換し、干渉データ内に存在する空間周波数成分の大きさおよび位相を回復する。コンピュータはこのデータを解析し、その大きさおよび位相を、サンプルの入射角、偏光および/または波長に依存する光学特性を含む、サンプルの表面構造を表すモデルと比較する。この解析により、表面高あるいは薄膜厚のようなパラメータが特定される。
【0007】
いくつかの実施形態では、干渉計への波長を選択するか、あるいは複数の波長を干渉計に送り、材料の光学特性の角度依存性を解析するほかに、波長の関数として材料の光学特性の詳細な解析を実行する。いくつかの実施形態では、サンプルから散乱される光を解析して、入射角および波長の関数としての表面の回折および散乱特性によって表面構造情報を特定する。
【0008】
本発明の実施形態は数多くの利点を含む。たとえば、それらの実施形態は、干渉対物レンズに対してサンプルを垂直方向に走査することによって生成される干渉縞を周波数領域で分解することにより、たとえばピクセル毎に、その光学特性と表面トポグラフィとを同時に得るために表面構造を解析するための手段を与えることができる。そのような手法によって、機器の瞳面を直に利用しなくても、反射された光からの振幅および位相情報の両方を用いて、その表面の角度に依存する光学特性および波長に依存する光学特性を入手することができる。
【0009】
ここで、本発明の1つ以上の実施形態の種々の態様および特徴を包括的に要約する。
一般的に、一態様において、本発明の特徴は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像することであって、テスト光および参照光は共通の光源から生成される。それぞれの角度において、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間において、光源から検出器までの光路長差を同時に変更すること、および、角度毎に光路長差を変更しながら、テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定する。
【0010】
本方法の実施形態は以下の特徴のいずれかを含み得る。
入射角の範囲は0.7よりも大きな、またはより好ましくは0.9よりも大きな開口数に対応し得る。
【0011】
検出器は複数の検出器素子を有するカメラであってもよく、結像は、テスト物体の種々の場所から出射するテスト光をカメラ上の対応する場所に結像することからなる。さらに、光学特性の角度依存性を特定することは、テスト物体の種々の場所毎に光学特性の角度依存性を特定することを含む。
【0012】
光学特性の角度依存性は、テスト物体上に入射するテスト光の角度の関数としての光学特性の変化に関連付けられてもよい。その方法は、テスト光が入射角の範囲にわたって複数の場所のそれぞれに入射するように、テスト光でテスト物体の複数の場所を照明することをさらに含み得る。このような場合、照明することおよび結像することは共通の対物レンズを使用することを含み得る。さらに、共通の光源は空間的に延長された光源であり得る。
【0013】
他の実施形態において、光学特性の角度依存性は、テスト物体から散乱される(すなわち回折される)テスト光の角度の関数としての光学特性の変化に関連する。方法は、テスト物体への均一な入射角を有するテスト光でテスト物体の複数の場所を照明することをさ
らに含み、結像は、テスト物体の各場所から、或る範囲の角度にわたって散乱されるテスト光を検出器上の対応する場所に結像することを含み得る。このような場合、照明および結像すは共通の対物レンズを使用することを含み得る。さらに、共通の光源は点光源であり得る。
【0014】
結像は、結像に関係する光学系の瞳面においてテスト光を偏光することをさらに含み得る。
その方法は、テスト光でテスト物体を照明すること、および、テスト物体を照明するために用いられる光学系の瞳面においてテスト光を偏光することをさらに含み得る。
【0015】
共通の光源は単色であり得る。たとえば、共通の光源は或る中心波長と、中心波長の2%未満のスペクトル帯域幅とを有し得る。
角度毎に光路長差を同時に変更することは、テストサンプルから出射するテスト光を収集するために用いられる対物レンズに対してテスト物体を動かすことを含み得る。
【0016】
角度毎に光路長差を同時に変更することは、参照ミラー上に参照光を集束するために用いられる対物レンズに対して、参照光を反射するために用いられる参照ミラーを動かすことを含み得る。
【0017】
角度毎に光路長差を同時に変更することは、ミロー型干渉対物レンズ内に配置されるビームスプリッタを動かすことを含み得る。
角度毎に光路長差を同時に変更することは空間コヒーレンス長を規定してもよく、角度のうちの少なくとも1つのための光路長差は、空間コヒーレンス長よりも大きな範囲にわたって変更されてもよい。
【0018】
光学特性の角度依存性を特定することは、光路長差が角度毎に同時に変更されるのに応じて、検出器からの干渉信号を測定すること、および、角度毎に光路長差に直線的に比例する座標に対して干渉信号を変換することであって、それによって、座標への共役変数に依存する、変換された信号を生成する、変換することを含み得る。たとえば、共役変数は空間周波数であり得る。
【0019】
共役変数はテスト物体上に入射するテスト光、あるいはテスト物体から出射するテスト光の角度への直接マッピングを与え得る。たとえば、共役変数が空間周波数Kである場合、空間周波数と角度φとの間の直接マッピングはK(φ)∝cos(φ)/λによって与えられることができ、ただしλはテスト光の波長である。たとえば、出射した光がテストサンプルから反射されると、空間周波数と角度との間の直接マッピングはK(φ)=4πcos(φ)/λによって与えられる。
【0020】
変換された信号は、光学特性の角度依存性への直接マッピングを与え得る。たとえば、変換はフーリエ変換に対応し得る。
光学特性はテスト物体の複素反射率に関連する。たとえば、光学特性はテスト物体の複素反射率の大きさに関連する。また、光学特性はテスト物体の複素反射率の位相に関連する。
【0021】
光学特性の角度依存性は、光路長差が角度毎に変更されるときのテスト光と参照光との間の干渉と、結像に関係する光学系の予め較正された角度に依存する特性とに基づいて特定され得る。
【0022】
方法は、光路長差が変更されるときのテスト光と参照光との間の干渉に基づいてテスト物体の表面高プロファイルを特定することをさらに含み得る。 方法は、テスト光と参照
光との間の干渉から特定される光学特性の角度依存性の変化と、テスト物体のためのモデルの角度依存性の変化とを比較することをさらに含み得る。たとえば、テスト物体は基板上にある少なくとも1つの薄膜を含んでもよく、また方法は、比較に基づいて薄膜の厚みを特定することをさらに含み得る。
【0023】
このような一実施形態において、光学特性はテストサンプルの複素反射率の角度依存性の大きさを含み、薄膜の厚みの特定は、複素反射率の角度依存性の大きさとモデルの角度依存性の大きさとを比較することに基づく。さらに、本実施形態は、比較に基づいて、テスト物体のための表面高プロファイルを特定することを含み得る。たとえば、光学特性はさらに、テストサンプルの複素反射率の角度依存性の位相を含んでもよく、表面高プロファイルの特定は、薄膜の特定された厚みと、複素反射率の角度依存性の位相と特定された厚みの場合のモデルの角度依存性の位相とを比較することとに基づく。
【0024】
最後に、テスト光および参照光は第1の波長を有してもよく、方法は、第1の波長とは異なる第2の波長を有するテスト光および参照光の場合に、結像すること、変更すること、および特定することを繰り返すことをさらに含み得る。
【0025】
一般的に、別の態様において、本発明は、テスト物体のための走査式(scanning:スキャニング)干渉法データに基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定することを含む方法を特徴とする。
【0026】
この方法はさらに、第1の方法に関連して上述された特徴のいずれかを含み得る。
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像することであって、テスト光および参照光は共通の単色光源から生成され、テスト物体は基板上にある少なくとも1つの薄膜を含む。角度毎に、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更すること、および、角度毎に光路長差を変更しながら、テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、薄膜の厚みを特定することを含む方法を特徴とする。
【0027】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、薄膜と薄膜を支持する基板とを含むテスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、テスト物体上の薄膜の厚みを特定することを含む方法を特徴とする。
【0028】
上述された第3および第4の方法の実施形態は、第1の方法に関連して上述された特徴のいずれかをさらに含み得る。
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、光源と、検出器と、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計であって、テスト光および参照光は光源から生成され、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成される、走査式干渉計と、検出器および走査式干渉計に結合される電子プロセッサであって、検出器によって測定される場合に光路長差が角度毎に変更されるときの、テスト光と参照光との間の干渉に基づいてテスト物体の光学特性の角度依存性を特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0029】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、単色光源と、検出器と、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計であって、テスト光および参照光は単色光源から生成され、角度毎に、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依
存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成される、走査式干渉計と、検出器および走査式干渉計に結合される電子プロセッサであって、光路長差が角度毎に変更されるときの、テスト光と参照光との間の干渉に基づいてテスト物体上の薄膜の厚みを特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0030】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、走査式干渉法システムと、走査式干渉法システムに結合される電子プロセッサであって、走査式干渉法システムによって生成されるテスト物体のための走査式干渉法データに基づいて、テスト物体の光学特性の角度依存性を特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0031】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、単色光走査式干渉法システムと、走査式干渉法システムに結合される電子プロセッサであって、テスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、テスト物体上の薄膜の厚みを特定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置を特徴とする。
【0032】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計を備える装置であって、テスト光および参照光は共通の光源から生成され、角度毎に、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成され、干渉計は、テスト物体から出射するテスト光を収集するために配置される対物レンズと、対物レンズの瞳面に配置される少なくとも1つの偏光光学系とを備える、装置を特徴とする。
【0033】
たとえば、少なくとも1つの偏光光学系は瞳面を横切って変化する偏光を付与し得る。
また、少なくとも1つの偏光光学系は、偏光子と、少なくとも1つの波長板とを備え得る。たとえば、少なくとも1つの偏光光学系は、瞳面の異なる位置に配置される2つの波長板を備え得る。
【0034】
一般的に、さらに別の態様において、本発明は、検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計を備える装置であって、テスト光および参照光は共通の光源から生成され、角度毎に、走査式干渉計はさらに、テスト光がテスト物体から出射する角度に依存する速度で、テスト光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路長差を同時に変更するように構成され、干渉計は、概ねコリメートされた光でテスト物体を照明するように構成される光源モジュールを備える、装置を特徴とする。たとえば、装置は共通の光源をさらに含んでもよく、共通の光源は単色光源であってもよい。
【0035】
さらに、これまでに説明された本発明の装置のうちの任意の装置の実施形態は、第1の方法に関連して上述された対応する特徴のいずれかを含むことができる。他に規定されなければ、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者によって広く理解されているのと同じ意味を有する。本明細書にて言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、その全体を参照して援用される。抵触がある場合には、定義を含む、本明細書が優先するであろう。
【0036】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下に記載される詳細な説明から明らかになるであろう。
種々の図面における同じ参照番号は共通の構成要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】リンニク型走査式干渉法システムの概略図。
【図2】対物レンズを通してテストサンプルを照明することを示す図。
【図3】薄膜構造の図。
【図4】550nm単色光および0.9NAリンニク型対物レンズを用いてシミュレートされた、Si上に1.8μmのSiO2を積層する図3に示される構造のための干渉縞I(ζ,h)で、両方の表面からの干渉信号が混合されている図。
【図5】図4と比較するための、簡単な単一表面SiO2サンプルの(すなわち薄膜が存在しない)場合のシミュレートされた干渉縞I(ζ,h)の図。
【図6】図3の薄膜構造を垂直方向に走査することによって生成される、図4の信号のフーリエ変換の大きさQ(φ,h)を示し、空間周波数は式(4)に従って入射角に関連する図。
【図7】単一表面サンプルの場合の図5の信号のフーリエ変換の大きさQ(φ,h)を示し、下側の空間周波数において大きさが増加するのは、浅い入射角において反射率が増加する結果である、グラフ。
【図8】0.02μmだけ厚みが増していく3つの薄膜厚の場合の図3の、Si上にSiO2がある薄膜構造のためのP(φ)V0(φ)(Z(φ))1/2の予想される結果を比較するグラフ(式(9)を参照)。
【図9】図3の薄膜構造を垂直方向に走査することによって生成される図4の信号のための、空間周波数の関数としての位相αQ(φ,h)し、空間周波数は式(4)に従って入射角に関連付けられ、図10のより簡単な単一表面反射と比較して、位相の勾配だけでなく、際立った非線形性を示すグラフ。
【図10】図9と比較するための、単一表面パターンの場合の図5の信号のための空間周波数の関数としての位相αQ(φ,h)のグラフ。
【図11】ミロー型走査式干渉法システムの概略図。
【図12】瞳面のラジアル偏光を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、リンニク型の走査式干渉計を示す。光源(図示せず)からの照明光102が、一部がビームスプリッタ104によって透過されて参照光106を規定し、一部がビームスプリッタ104によって反射されて測定光108を規定する。測定光は測定対物レンズ110によってテストサンプル112(たとえば、1つの材料からなる単層薄膜あるいは複数の異種の材料からなる多層薄膜を含むサンプル)上に集束される。同様に、参照光は参照対物レンズ114によって参照ミラー116上に集束される。測定および参照対物レンズは、共通の光学特性(たとえば、同じ開口数)を有することが好ましい。テストサンプル112から反射される(あるいは散乱または回折される)測定光は、測定対物レンズ110を通って戻され、ビームスプリッタ104によって透過されて、結像レンズ118によって検出器120上に結像される。同様に、参照ミラー116から反射される参照光も参照対物レンズ114を通って戻され、ビームスプリッタ104によって反射されて、結像レンズ118によって検出器120上に結像され、測定光と干渉する。
【0039】
簡単にするために、図1は、それぞれテストサンプルおよび参照ミラー上の特定の点に集束し、その後、検出器上の対応する点において干渉する測定光および参照光を示す。そのような光は、干渉計の測定経路および参照経路のための瞳面に対して垂直に伝搬する照明光の部分に対応する。照明光の他の部分は最終的には、テストサンプルおよび参照ミラー上の他の点を照明し、その後、検出器上の対応する点において結像される。図1では、これは破線122によって示されており、それは、テストサンプル上の種々の点から出射し、検出器上の対応する点に対して結像される主光線に対応する。主光線は、測定対物レンズ110の後部焦点面である、測定経路の瞳面124の中心を横切る。主光線の角度とは異なる角度においてテストサンプルから出射する光は、瞳面124の異なる場所を横切
る。
【0040】
好ましい実施形態では、検出器120は複数の構成要素からなる(すなわちマルチピクセル)カメラであり、テストサンプルおよび参照ミラー上の種々の点に対応する測定光と参照光との間の干渉を個別に測定する(すなわち、干渉縞のための空間分解能を与える)。
【0041】
テストサンプル112に結合される走査ステージ126が、図1において走査座標ζによって示されるように、測定対物レンズ110に対してテストサンプルの位置を走査する。たとえば、走査ステージは圧電変換器(PZT)を基にすることができる。検出器120は、テストサンプルの相対的な位置が走査されているときに、検出器の1つ以上のピクセルにおいて光学干渉の強度を測定し、その情報を解析するためにコンピュータ128に送る。
【0042】
走査は、測定光がテストサンプル上に集束されている領域において行われるので、その走査は、テストサンプルに入射する測定光およびテストサンプルから出射する測定光の角度に応じて別々に、光源から検出器への測定光の光路長を変更する。結果として、測定光および参照光の干渉する部分の間の、光源から検出器までの光路差(OPD)は、テストサンプルに入射する測定光およびテストサンプルから出射する測定光の角度に応じて、異なる走査座標ζに対応する。本発明の他の実施形態では、参照対物レンズ114に対して参照ミラー116の位置を走査することにより(測定対物レンズ110に対してテストサンプル112を走査する代わりに)、同じ結果を達成することができる。
【0043】
OPDが走査座標ζとともに変化する態様のこの差は、検出器の各ピクセルにおいて測定される干渉信号に、制限されたコヒーレンス長を導入する。たとえば、干渉信号(走査座標の関数)は通常、約λ/2(NA)2の空間コヒーレンス長を有する包絡線によって変調される。ただし、λは照明光の公称波長であり、NAは測定および参照対物レンズの開口数である。後にさらに説明されるように、干渉信号の変調は、テストサンプルの反射率についての、角度に依存する情報を与える。制限された空間コヒーレンスを高めるために、走査式干渉計内の対物レンズは大きな開口数、たとえば0.7よりも大きな開口数を規定することが好ましい(あるいは0.9よりも大きいことがさらに好ましい)。
【0044】
干渉信号は、照明源からの空間帯域幅に関連付けられる、制限された時間コヒーレンス長によってさらに変調されることができる。しかしながら、この説明の場合に、照明源は名目上、単色光であり、時間コヒーレンスの制限は、制限された空間コヒーレンスに対して小さいものと仮定される。たとえば、照明源は、その中心波長の約2%未満の帯域幅を有することができる。
【0045】
再び図1のリンニク型干渉計を参照すると、測定対物レンズ110はテストサンプルの表面を照明し、或る範囲の入射角φにわたってその表面を観測する。ここで、単色光照明であるものと仮定して、簡略化されたモデルを用いて、干渉効果が数学的に計算されるであろう。その後、干渉縞を、その角度に依存する寄与に数学的に分解することによって、サンプル表面の光学特性が如何に見つけられるかが説明されるであろう。
【0046】
テストサンプルの表面の複素振幅反射率はz(φ)であり、対応する強度反射率Z(φ)は以下の通りである。
【0047】
【数1】
【0048】
サンプル表面のための反射時の位相変化(PCOR)は以下の通りである。
【0049】
【数2】
【0050】
ただし式(2)の「arg」は複素振幅反射率の位相をもたらす。
入射角毎に個別に干渉効果を考慮する簡略化されたスカラー(非偏光)モデルでは、単一のサンプル点あるいはカメラピクセルのための干渉縞は以下の式に比例する。
【0051】
【数3】
【0052】
ただしζは走査位置(PZTによって動かされる)であり、hはサンプル表面の高さプロファイルである。パラメータR0(φ)、V0(φ)およびα0(φ)は、テストサンプル112とは無関係である、参照ミラー116を含む干渉計光学系の特性を示すDCレベル、コントラストおよび位相値である。後にさらに説明されるように、或る較正手順によって、既知の光学特性の既知のアーティファクトを用いて、これらのパラメータが特定される。R0(φ)、V0(φ)およびα0(φ)パラメータは、必要に応じて、機器の光学特性を調整するための視野依存性も含むことができる。
【0053】
干渉効果の空間周波数K(φ)は、以下の式に従って、角度φの関数として減少する。
【0054】
【数4】
【0055】
ただし、λは照明波長であり、測定光はテストサンプルから反射される(すなわち、測定光は、それがテストサンプル上に入射した角度に等しい角度でテストサンプルから出射
する)ものと仮定される。式(4)は、走査が行われた場合に、測定光(あるいは反射光)が或る範囲の角度にわたって伝搬し、それゆえ測定光および参照光の干渉する部分の間のOPDが、テストサンプル上に入射する測定光の角度に応じて、異なる走査座標ζに対応するという事実を基にする。結果として、式(4)は、干渉信号の空間周波数と入射角との間の固有の関係を示している。
【0056】
光源からの光が瞳面を横切って空間的に完全にインコヒーレントであり、単色光であるものと仮定すると、角度に依存する全ての寄与の干渉現象への正味の効果は、インコヒーレントな重ね合わせの積分によって与えられる。
【0057】
【数5】
【0058】
ただし、φMAX=arcsin(NA)であり、以下の例では、以下の重み関数が用いられる。
【0059】
【数6】
【0060】
その重み関数は光で均一に照明される瞳面の場合に適しており、それは図2に示される図について考えてみると明らかである(その図では、角度はφではなく、ψによって表される)。
【0061】
ピクセル毎に、電子カメラおよびコンピュータコントロールが、或る範囲の走査位置ζにわたって干渉縞I(ζ,h)を測定する。高さhおよび実効反射率z(φ)は視野にわたって変化し、ピクセル毎に異なる場合がある。
空間周波数と入射角との間の固有の関係は、積分された縞I(ζ,h)に対する個々の寄与g(φ,ζ,h)を回復する手段を与える。第1のステップは、たとえばフーリエ変換によって、完成した干渉縞の分解を実行することである。
【0062】
【数7】
【0063】
或る限られた走査の実際の要件によって、式(7)の全てのζにわたる積分が、正確な結果を得るために必要とされる程度の干渉信号を含む、或る限られた範囲の値で打ち切ら
れる。同じように干渉縞を分解する任意の他の変換を用いることもできる。空間周波数領域への変換は一般的に、周波数領域解析(FDA)と呼ばれる。
【0064】
分解q[K(φ),h]は以下のように解釈されることができる。零空間周波数あるいはDC項は角度φの関数として分離することができないので、以下の式が成り立つ。
【0065】
【数8】
【0066】
その積分の中で実際に有することができる範囲よりもはるかに小さな空間周期を有する全ての他の空間周波数成分の場合に、q[K(φ),h]の大きさおよび複素位相はそれぞれ以下の通りである。
【0067】
【数9】
【0068】
本発明の一実施形態では、光学系の特性α0(φ)、P(φ)、V0(φ)は、従来の較正、たとえば式(3)に伴って本文に示されたように、既知のアーティファクトサンプルによって特定されている。たとえば、その測定は、光学系の特性が式(9)および(10)から引き出されることができるように、既知の表面高および反射率を有するテストサンプルで行われることができる。光学系の特性が予め決定されている場合、式(9)および(10)は、表面高と、入射角φの範囲にわたるその表面の2つの光学特性Z(φ)およびαZ(φ)とに関する情報を与える。光学特性Z(φ)およびαZ(φ)は、材料および薄膜の既知の光学特性のような、多くの場合に根本原理によって薄膜厚のような特定の表面パラメータに結び付けられる光学特性そのものである。それゆえ、表面高とともに3つのパラメータが、q[K(φ),h]の測定位相αQ(φ,h)および大きさQ(φ,h)に最も良く適合するように調整されることができる。
【0069】
一例として、図3の薄膜構造について考える。この構造の実効反射率は以下の式によって与えられる。
【0070】
【数10】
【0071】
ただし、r1(φ)、r2(φ’)はそれぞれ上側および下側表面の反射率であり、φ’はφおよびスネルの法則から計算される下側表面への入射角である。薄膜の式(11)は、K(φ)に大きく依存する際立った干渉効果を生み出す。
【0072】
この例を定量的に例示するために、シリコン(Si;屈折率n2=3.96+0.03i)上にある二酸化シリコン(SiO2;屈折率n1=1.46)の1.8ミクロン薄膜、および550nmの照明波長について考える。実効反射率z(φ)は、式(11)および界面の反射率を得るためのフレネルの式から求められる。干渉対物レンズに対してこのサンプル表面を走査することにより、図4の場合のような信号が生成される。比較するために、図5は、簡単な単一表面のSiO2サンプル(すなわち、薄膜層がないSiO2の厚いサンプル)の場合のシミュレートされた干渉縞I(ζ,h)を示す。
【0073】
データを取得した後に、コンピュータは、図4の信号に類似の信号を画像ピクセル毎に周波数領域に変換する。表面トポグラフィ、光学系パラメータおよび薄膜厚が実際に変化することに起因して、信号および変換はピクセル毎に異なる場合がある。図6は、図4の信号への各空間周波数成分への寄与の大きさ(この場合には振幅)を示す。この結果は、図5に示される干渉信号を有する簡単な単一表面構造によって生成される、図7に示される周波数領域の大きさと比べて、非常に際立った特徴を示す。
【0074】
たとえば、較正として図7を用いて、図6を図7と比較すると、薄膜の存在が明白に特定される。さらに、SiO2およびSiの特性がわかっているものと仮定すると、図6とサンプルの実効反射率に基づく理論的な予想とを比較することにより、コンピュータは、たとえば薄膜の厚みを特定することができる。これが図8によって例示され、それは3つの異なる薄膜の予想される結果を比較しており、そのうちの1つのみ(1.80μm)が図6のフーリエ変換された干渉データと良好に一致する。
【0075】
類似の解析はフーリエ変換の位相の場合にも有用である。図9および図10は、或る薄膜構造と、簡単な同種の単一表面サンプルとの間の差を示す。図9において明らかな非線形性は、薄膜効果の明らかな特徴である。ここで再び、測定と理論との間の比較は、式(10)に基づいて、重要な薄膜情報を与える。さらに、振幅情報から導出される厚み情報を用いて、式(11)からαZ(φ)を特定し、式(10)においてそれを用いて、種々のピクセルの中の表面高の変化hを引き出すことができる。
【0076】
他の実施形態では、図1とは異なる干渉法システムを用いて、カメラの各ピクセルにおける走査式干渉データI(ζ,h)を与えることができる。たとえば、その干渉法システムには、図11に示されるようなミロー型干渉計を用いることができる。
【0077】
図11を参照すると、光源モジュール205が照明光206をビームスプリッタ208に与え、ビームスプリッタ208はその光をミロー型干渉対物レンズアセンブリ210に誘導する。アセンブリ210は、対物レンズ211と、その小さな中央部に反射コーティングを有し、参照ミラー215を画定する参照平面212と、ビームスプリッタ213とを備える。動作中に、対物レンズ211が、参照平面212を通して、テストサンプル220に向かって照明光を集束する。ビームスプリッタ213が集束した光の第1の部分を参照ミラー215に反射して参照光222を規定し、集束した光の第2の部分をテストサ
ンプル220に透過して測定光224を規定する。その後、ビームスプリッタ213は、テストサンプル220から反射された(あるいは散乱された)測定光を参照ミラー215から反射された参照光と再合成し、対物レンズ211および結像レンズ230が合成された光を結像して検出器(たとえば、マルチピクセルカメラ)240上で干渉を引き起こす。図1のシステムと同様に、検出器からの測定信号(1つあるいは複数)がコンピュータ(図示せず)に送られる。
【0078】
図11の実施形態の走査は、ミロー型干渉対物レンズアセンブリ210に結合された圧電変換器(PZT)260を含み、それは対物レンズ211の光軸に沿ってテストサンプル220に対してアセンブリ210を全体として走査し、カメラの各ピクセルにおいて走査式干渉法データI(ζ,h)を与えるように構成される。別法では、PZTアクチュエータ270によって示されるように、PZTはアセンブリ210ではなく、テストサンプルに結合され、その間に相対的な動きを与えることができる。さらに別の実施形態では、走査は、対物レンズ211の光軸に沿って対物レンズ211に対して参照ミラー215およびビームスプリッタ213のうちの一方あるいは両方を動かすことにより与えられることができる。
【0079】
光源モジュール205は、空間的に延長された光源201と、レンズ202および203によって形成される望遠鏡と、レンズ202の前部焦点面(それはレンズ203の後部焦点面と一致する)内に配置される絞り204とを備える。この配列は、空間的に延長された光源をミロー型干渉対物レンズアセンブリ210の瞳面245上に結像し、それはケーラー照明による結像の一例である。絞りのサイズはテストサンプル220上の照明野のサイズを制御する。他の実施形態では、光源モジュールは、空間的に延長された光源がテストサンプル上に直に結像される配列を含むことができ、それはクリティカル照明による結像として知られている。いずれのタイプの光源モジュールも、図1のリンニク型走査式干渉法システムとともに用いることができる。
【0080】
さらに別の実施形態では、走査式干渉計はマイケルソン型からなることができる。
本発明のさらに別の実施形態では、走査式干渉法システムを用いて、テストサンプルについての、角度に依存する散乱あるいは回折情報、すなわち散乱光測定(スキャタロメトリ)のための情報を特定することができる。たとえば、走査式干渉法システムを用いて、非常に狭い範囲の入射角(たとえば、概ね垂直な入射、あるいはそうでなければコリメートされた入射)のみにわたるテスト入射でテストサンプルを照明することができ、その後、テストサンプルによって散乱あるいは回折されることができる。サンプルから出射する光はカメラに結像されて、先に説明されたように参照光と干渉する。先に説明された実施形態の反射された光の場合と同様に、走査式干渉法信号内の各成分の空間周波数は、テストサンプルから出射するテスト光の角度に大きく依存するであろう。概ね垂直な入射の場合、空間周波数は以下の式に従って変化する。
【0081】
【数11】
【0082】
その式は、垂直な入射であるために、式(4)とは2倍だけ異なる。
しかしながら、数学的な解析の他の部分に変わりはなく、散乱あるいは回折するテストサンプルからの走査式干渉法データI(ζ,h)は、式(7)〜(10)に従って解析され、テストサンプルのための、角度に依存しない位相および振幅散乱/回折係数を与えることができる。こうして、垂直方向への走査(すなわち、対物レンズの光軸に沿った走査
)と、それに続くフーリエ解析によって、対物レンズの後部焦点面を直に利用することなく、あるいは結像することなく、出射する角度の関数として回折および/または散乱された光を測定できるようになる。さらに、上記のように、そのような光学特性の角度依存性は、結像システムの分解能およびカメラピクセルサイズに基づいて、テストサンプルのエリアにわたって局部的に特定されることができる。たとえば、概ね垂直に入射する照明を与えるために、光源モジュールは、瞳面に点光源を結像するように、あるいは別の方法で、照明光が測定対物レンズの開口数を占める度合いを減らすように構成されることができる。散乱光測定技法は、格子ライン、エッジ、あるいは全体的な表面粗さのような、光をより大きな角度で回折および/または散乱することができる、サンプル表面内の離散的な構造を解明するために有用な場合がある。
【0083】
上記の実施形態では、瞳面の光の偏光状態がランダムである、すなわちs(入射面に対して直交する)偏光およびp(入射面に対して直交する)偏光の両方が概ね等しい量からなるものと仮定している。瞳面(たとえば、リンニク型干渉計の場合の測定対物レンズの後部焦点面およびミロー型干渉計の場合の共通対物レンズの後部焦点面)内に配置されるラジアル偏光子によって実現されることができるような、純粋なs偏光を含む、別の偏光も実現可能である。そのようなラジアル偏光が図12に示される。他の実現可能な偏光は、ラジアルp偏光、円偏光、および偏光解析測定のための変調(たとえば、2状態であり、一方の状態が他方の状態に後続する)偏光を含む。言い換えると、テストサンプルの光学特性が、その角度依存性に関してだけでなく、その偏光依存性に関して、あるいは選択された偏光に関しても解明されることができる。そのような情報を用いて、薄膜構造の特性評価の精度を改善することもできる。
【0084】
そのような偏光解析測定を実現するために、走査式干渉法システムは、瞳面内に固定あるいは可変の偏光子を含むことができる。再び図11を参照すると、たとえば、ミロー型干渉法システムは、テストサンプル上に入射する光、およびテストサンプルから出射する光のための所望の偏光を選択するために、瞳面内に偏光光学系280を備える。さらに、その偏光光学系は、選択された偏光を変更するように構成変更可能にされることができる。その偏光光学系は、所与の偏光を選択するために、偏光子、波長板、アポディゼーション絞りおよび/または変調素子を含む1つ以上の素子を備えることができる。さらに、偏光光学系は、エリプソメータに類似のデータを生成するために、固定されるか、構造化されるか、あるいは構成変更可能にされることができる。たとえば、ラジアルに偏光された瞳面でs偏光のための第1の測定が行われ、その後、ラジアルに偏光された瞳面でp偏光のための測定が行われる。別の例では、線形に偏光された光でアポダイズされた瞳面、たとえば、任意の所望の線形偏光状態を物体に誘導するように瞳面において回転することができるスリットあるいは光学くさび、あるいは液晶ディスプレイのような構成変更可能なスクリーンを用いることができる。
【0085】
さらに、偏光光学系は、瞳面を横切って可変の偏光を与えることができる(たとえば、複数の偏光子あるいは空間変調器を備えることによる)。こうして、たとえば、浅い角度よりも大きな入射角の場合に異なる偏光を与えることにより、空間周波数に従って偏光状態を「タグ付け」することができる。
【0086】
さらに別の実施形態では、選択可能な偏光が、偏光の関数として位相シフトと組み合わせられることができる。たとえば、偏光光学系は、瞳面内に配置される直線偏光子と、それに後続する、その瞳面の向かい合った象限内に2つの波長板(たとえば1/8波長板)とを含むことができる。直線偏光の結果として、対物レンズの入射面に対して最大範囲の偏光角度が生成される。波長板が、たとえば支配的なs偏光された光が或る一定の位相シフトを有するように位置合わせされる場合には、ラジアルs偏光およびp偏光の両方の光が同時に存在するが、干渉計が基本信号としてこれら2つの偏光状態間の差を実効的に検
出しているように、互いに対して、たとえばπだけ位相がシフトされる。
【0087】
上記のように、瞳面内に偏光光学系を配置することにより、種々の角度分解されたタイプの偏光を測定できるようになる。しかしながら、さらに別の実施形態では、偏光光学系は装置内の他の場所に配置されることもできる。たとえば、直線偏光は、システム内のどの場所においても達成されることができる。
【0088】
さらに別の実施形態では、上記の反射光測定、散乱光測定および偏光解析技法のうちの任意のものが種々の波長の場合に順に繰り返されて、対象のサンプル光学特性の波長依存性を与えることができる。そのような情報は、さらに複雑な表面モデルに一致させるために用いることができる。
【0089】
本発明の他の実施形態は広帯域照明を含むことができる。たとえば、その照明は、たとえば白色光干渉顕微鏡において一般的であるように広帯域にすることができる。これにより、コンピュータが複雑な表面モデルに最も良く適合するものを見つけることができる情報の量が増える。
【0090】
走査式干渉法システムのための光源には、たとえば、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、フィルタリングされた白熱光源およびアーク灯のうちの任意のものを用いることができる。
【0091】
上記の方法およびシステムは、半導体への応用形態の場合に特に有用である可能性がある。本発明のさらに別の実施形態は、後に説明される半導体への応用形態のうちの任意のものに対処するために上記の測定技法のうちの任意のものを適用することを含む。
【0092】
半導体産業では、現在、表面トポグラフィの定量的な測定を行うことが大きな関心を集めている。通常のチップフィーチャのサイズが小さいことに起因して、これらの測定を行うために用いられる機器は通常、チップ表面に対して平行および垂直の両方において高い空間分解能を有さなければならない。技術者および科学者は工程管理のために、そして特にエッチング、研磨、洗浄およびパターニングのような工程の結果として、製造過程において生じる欠陥を検出するために、表面トポグラフィ測定システムを利用する。
【0093】
工程管理および欠陥検出において特に実用的であるためには、表面トポグラフィ測定システムは、通常の表面フィーチャの横方向サイズに相当する横方向分解能と、許容された最も低い表面段差高に相当する縦方向分解能とを有さなければならない。通常、これは、1ミクロン未満の横方向分解能と、1ナノメートル未満の縦方向分解能とを要求する。また、そのようなシステムは、チップの表面を変更するか、あるいは欠陥を導入するのを避けるために、チップの表面に接触するか、あるいは接触しない場合でも、表面に損傷を与える可能性がある力を加えることなく、その測定を行うことが好ましい。さらに、チップ形成において用いられる数多くの工程の影響が、パターン密度およびエッジ近接のような局部的な要因に大きく依存することがよく知られているので、表面トポグラフィ測定システムは、高い測定スループット、および1つあるいは多くの対象の表面フィーチャを含むことができる領域内の大きな面積にわたって細かくサンプリングする能力を有することも重要である。
【0094】
チップメーカの間では、チップの種々の部分の間の電気的な配線を形成するために、いわゆる「デュアルダマシン銅」配線工程を用いることが一般的になってきている。これは、適当な表面トポグラフィシステムを用いて実効的に特徴を抽出されることができる工程の一例である。デュアルダマシン工程は5つの部分、すなわち(1)誘電体材料(たとえばポリマーあるいはガラス)の層がウェーハ(複数の個別のチップを含む)の表面上に堆
積される、層間誘電体(ILD)堆積)、(2)高精度の光学リソグラフィのために適した滑らかな表面を作り出すために誘電体層が研磨される、化学機械研磨(CMP)、(3)ウェーハ表面に対して平行に延在する狭いトレンチ、およびトレンチの底部から下側の(以前に画定された)導電層まで延在する小さなバイアを含む複雑な回路網が作製される、リソグラフィパターニングおよび反応性イオンエッチングステップの組み合わせ、(4)結果としてトレンチおよびバイアが溢れるまで銅で満たされる、金属堆積ステップの組み合わせ、(5)余分な銅が除去され、誘電体材料によって囲まれる、銅で満たされたトレンチ(そして、おそらくバイア)からなる回路網を残す、最終的な化学機械研磨(CMP)ステップを有すると考えるができる。
【0095】
通常、トレンチエリア内の銅の厚み(すなわちトレンチの深さ)、およびそれを取り囲む誘電体の厚みは、0.2〜0.5ミクロンの範囲内にある。結果として形成されるトレンチの幅は、100〜100,000ナノメートルの範囲を有することができ、各チップ内の銅領域は、或る領域では、平行な線のアレイのような規則的なパターンを形成することができ、他の領域では、明らかなパターンを有さない場合がある。同様に、或る領域内では、その表面は銅領域で高密度に覆われることができ、他の領域では、銅領域は疎らな場合がある。研磨速度、それゆえ研磨後に残される銅(および誘電体)の厚みが、研磨条件(たとえば、パッド圧および研磨スラリー組成)に、ならびに銅およびそれを取り囲む誘電体領域の局部的な細かい配列(すなわち、向き、近接性および形状)に、大きく、しかも複雑な態様で依存することを理解することが重要である。
【0096】
この「位置に依存する研磨速度」は、多くの横方向の長さのスケールにおいて、多様な表面トポグラフィを引き起こすことが知られている。たとえば、それは、全体としてウェーハのエッジ付近に配置されるチップが中央付近に配置されるチップよりも短時間で研磨され、エッジ付近において所望の厚みよりも薄く、中央において所望の厚みよりも厚い銅領域が作製されることを意味するであろう。これは、「ウェーハスケール」の工程不均一性、すなわちウェーハの直径に相当する長さのスケールにおいて生じる不均一性の一例である。また、高密度の銅トレンチを有する領域が、銅線の密度が低い領域の近くよりも速く研磨されることも知られている。この結果として、高密度の銅領域において「CMPによって引き起こされる浸食」として知られている現象が生じる。これは、「チップスケール」の工程不均一性、すなわち、単一のチップの直線寸法に相当する(そしてそれよりもはるかに小さい場合がある)長さのスケールにおいて生じる不均一性の一例である。「ディッシング」として知られている、別のタイプのチップスケール不均一性は、単一の銅で満たされたトレンチ領域内で生じる(それは、取り囲む誘電体材料よりも速く研磨される傾向がある)。幅が数ミクロンよりも大きなトレンチの場合、ディッシングの結果として、影響を及ぼされた線が後に過大な電気抵抗を示し、チップ破損に繋がる場合があるので、深刻になる。
【0097】
CMPによって引き起こされるウェーハおよびチップスケールの工程不均一性は、本質的に予測するのは難しく、それらは、CMP処理システム内の条件が徐々に変わるのに応じて、時間とともに変化する傾向がある。任意の不均一性が確実に許容可能な限度内に入るようにする目的で、工程条件を実効的にモニタし、適当に調整するために、工程技術者が、多数の、かつ多種多様な場所においてチップの非接触表面トポグラフィ測定を頻繁に行うことが重要である。これは、上記の干渉法技法の実施形態を用いて実現可能である。
【0098】
より一般的には、上記の干渉法技法は、以下の表面解析の問題のうちの任意のもの、すなわち、単純な薄膜、多層の薄膜、回折あるいはそれ以外の複雑な干渉効果を引き起こす鋭いエッジおよび表面フィーチャ、分解能以下の表面粗さ、分解能以下の表面フィーチャ、たとえばその溝がなければ滑らかであるような表面上にある、波長よりも短い幅の溝、異種の材料、表面の偏光に依存する特性、および結果として入射角に依存する干渉現象の
摂動を生じる表面あるいは変形し得る表面フィーチャの反り、振動あるいは動きに対して用いることができる。単純な薄膜の場合には、対象となる可変パラメータとして、薄膜厚、薄膜の屈折率、基板の屈折率あるいはそのいくつかの組み合わせを用いることができる。たとえば、異種の材料の場合には、その表面は薄膜および固体金属の組み合わせを含むことができ、角度に依存する表面特性を両方の表面構造タイプを含む理論的な予測値のライブラリに適合させる操作が行われ、対応する干渉強度信号に対して一致させることにより、薄膜あるいは固体金属が自動的に特定されるであろう。
【0099】
上記のコンピュータ解析法の任意のものがハードウエアまたはソフトウエア、あるいは両方の組み合わせで実施されることができる。その方法は、本明細書において説明される方法および図に従って、標準的なプログラミング技法を用いてコンピュータプログラムにおいて実施されることができる。プログラムコードが入力データに適用されて、本明細書に記載される関数が実行され、出力情報が生成される。その出力情報は、ディスプレイモニタのような1つ以上の出力デバイスに与えられる。各プログラムは、コンピュータシステムとやり取りするための高水準の手続き形あるいはオブジェクト指向プログラミング言語において実現されることができる。しかしながら、所望により、そのプログラムは、アセンブリあるいは機械語において実現されることもできる。いずれの場合でも、言語にはコンパイル済みあるいは翻訳済みの言語を用いることができる。さらに、そのプログラムは、その目的を果たすためにプログラミングされた専用の集積回路上で実行されることができる。
【0100】
そのような各コンピュータプログラムは、コンピュータによって読み取られ、本明細書に記載される手順を実行する際に、コンピュータを構成しかつ動作させるための、汎用あるいは専用のプログラム可能コンピュータによって読取り可能な記憶媒体あるいはデバイス(たとえば、ROMあるいは磁気ディスケット)に記憶されることが好ましい。コンピュータプログラムは、プログラム実行中にキャッシュあるいはメインメモリ内に存在することもできる。その解析方法は、コンピュータプログラムで構成される、コンピュータ読取り可能記憶媒体として実現されることもでき、その場合には、そのように構成される記憶媒体によって、コンピュータが特定の、かつ予め決められた態様で動作し、本明細書に記載される関数を実行する。
【0101】
本発明の複数の実施形態が説明されてきた。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされることができることは理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を、検出器上で参照光と干渉するように結像させる方法であって、前記テスト光および前記参照光は共通の単色光源から生成され、前記テスト物体は基板上にある少なくとも1つの薄膜を含み、
前記テスト物体から出射する前記テスト光の出射角度の変化に対応して、前記テスト光と参照光との干渉する部分の間において、前記光源から前記検出器までの光路長差を変更する工程と、
前記テスト光の出射光の角度の変更に対応して光路長差を変更しながら、前記テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、前記薄膜の厚みを決定する工程と、を含む方法。
【請求項2】
テスト物体のための走査式(scanning:スキャニング)干渉法データに基づいて、該テスト物体の光学特性の出射光の角度依存性を決定する工程を含む方法。
【請求項3】
薄膜と同薄膜を支持する基板とを含む前記テスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、該テスト物体上の薄膜の厚みを決定する工程を含む方法。
【請求項4】
単色光源と、
検出器と、
該検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の出射角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計であって、
該テスト光および参照光は単色光源から生成され、
前記出射角度毎に、該走査式干渉計はさらに、前記テスト光がテスト物体から出射する出射光の角度の変化に対応して、前記テスト光および前記参照光の干渉する部分の間の、前記光源から前記検出器までの光路長差を変更するように構成される走査式干渉計と、
前記検出器および前記走査式干渉計に結合される電子プロセッサであって、前記光路長差が前記出射角度毎に変更されるときの、前記テスト光と参照光との間の干渉に基づいて前記テスト物体上の薄膜の厚みを決定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置。
【請求項5】
走査式干渉法システムと、
該走査式干渉法システムに結合されて、前記走査式干渉法システムによって生成されるテスト物体のための走査式干渉法データに基づいて、該テスト物体の光学特性の出射角度依存性を決定するように構成される電子プロセッサと、を備える装置。
【請求項6】
単色光走査式干渉法システムと、
該走査式干渉法システムに結合されて、テスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、該テスト物体上の薄膜の厚みを決定するように構成される電子プロセッサと、を備える装置。
【請求項1】
或る範囲の角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を、検出器上で参照光と干渉するように結像させる方法であって、前記テスト光および前記参照光は共通の単色光源から生成され、前記テスト物体は基板上にある少なくとも1つの薄膜を含み、
前記テスト物体から出射する前記テスト光の出射角度の変化に対応して、前記テスト光と参照光との干渉する部分の間において、前記光源から前記検出器までの光路長差を変更する工程と、
前記テスト光の出射光の角度の変更に対応して光路長差を変更しながら、前記テスト光と参照光との間の干渉に基づいて、前記薄膜の厚みを決定する工程と、を含む方法。
【請求項2】
テスト物体のための走査式(scanning:スキャニング)干渉法データに基づいて、該テスト物体の光学特性の出射光の角度依存性を決定する工程を含む方法。
【請求項3】
薄膜と同薄膜を支持する基板とを含む前記テスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、該テスト物体上の薄膜の厚みを決定する工程を含む方法。
【請求項4】
単色光源と、
検出器と、
該検出器上で参照光と干渉するように、或る範囲の出射角度にわたってテスト物体から出射するテスト光を結像するように構成される走査式干渉計であって、
該テスト光および参照光は単色光源から生成され、
前記出射角度毎に、該走査式干渉計はさらに、前記テスト光がテスト物体から出射する出射光の角度の変化に対応して、前記テスト光および前記参照光の干渉する部分の間の、前記光源から前記検出器までの光路長差を変更するように構成される走査式干渉計と、
前記検出器および前記走査式干渉計に結合される電子プロセッサであって、前記光路長差が前記出射角度毎に変更されるときの、前記テスト光と参照光との間の干渉に基づいて前記テスト物体上の薄膜の厚みを決定するように構成される、電子プロセッサとを備える装置。
【請求項5】
走査式干渉法システムと、
該走査式干渉法システムに結合されて、前記走査式干渉法システムによって生成されるテスト物体のための走査式干渉法データに基づいて、該テスト物体の光学特性の出射角度依存性を決定するように構成される電子プロセッサと、を備える装置。
【請求項6】
単色光走査式干渉法システムと、
該走査式干渉法システムに結合されて、テスト物体のための単色光走査式干渉法データに基づいて、該テスト物体上の薄膜の厚みを決定するように構成される電子プロセッサと、を備える装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−197398(P2010−197398A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61341(P2010−61341)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【分割の表示】特願2004−534816(P2004−534816)の分割
【原出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願人】(598176743)ザイゴ コーポレーション (39)
【氏名又は名称原語表記】ZYGO CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【分割の表示】特願2004−534816(P2004−534816)の分割
【原出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願人】(598176743)ザイゴ コーポレーション (39)
【氏名又は名称原語表記】ZYGO CORPORATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]