車両の制御方法及び制御装置
【課題】キャニスタの圧力損失の影響を受けることなく精度の良い大気圧の計測を可能とする。
【解決手段】所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、エンジンが、キャニスタ(54)と、パージ通路(56)と、パージコントロールバルブ(61)と、ドレンカットバルブ(62)と、圧力検出手段(63)とを備え、リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ(61)、ドレンカットバルブ(62)及び圧力検出手段(63)を用いてリークがあるか否かの診断を行うリーク診断処理手順と、エンジンの自動停止時にパージコントロールバルブ(61)を開く開弁処理手順と、この開弁処理手順によりパージコントロールバルブ(61)を開いたとき、圧力検出手段(63)により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込む処理手順とを含む。
【解決手段】所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、エンジンが、キャニスタ(54)と、パージ通路(56)と、パージコントロールバルブ(61)と、ドレンカットバルブ(62)と、圧力検出手段(63)とを備え、リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ(61)、ドレンカットバルブ(62)及び圧力検出手段(63)を用いてリークがあるか否かの診断を行うリーク診断処理手順と、エンジンの自動停止時にパージコントロールバルブ(61)を開く開弁処理手順と、この開弁処理手順によりパージコントロールバルブ(61)を開いたとき、圧力検出手段(63)により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込む処理手順とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御方法及び制御装置、特にリーク診断に用いる圧力センサにより大気圧を計測するものに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジン(内燃機関)において、エンジンの制御に必要となる大気圧を検出するセンサを新たに設けるのではコストアップを招くため、リーク診断に用いる圧力センサにより大気圧を計測するようにしたものがある(特許文献1参照)。これは、エンジンの運転中にパージコントロールバルブが全閉状態にあるときには、キャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路が大気開放口を介して大気に開放されるため、パージコントロールバルブが全閉状態のときに、圧力センサにより検出される流路圧力を大気圧計測値として取り込むものである。
【特許文献1】特開2003−35216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うこの同じエンジンが、特にモータとエンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させる、いわゆるハイブリッド車両に用いられる場合には、キャニスタの圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できない事態が生じることが新たに判明している。すなわち、圧力センサにより大気圧を計測するには、パージンコントロールバルブが全閉状態となる機会を捕らえることである。しかしながら、ハイブリッド車両に用いられるエンジンでは、エンジンのみを動力源とする車両と相違して、車両の走行中にエンジンが運転される機会が少ない。そのためハイブリッド車両に用いられるエンジンにおいては、エンジンの運転中にキャニスタからの燃料蒸気(ガソリン粒子)のパージのためパージコントロールバルブが開き放しといってもいいほどとなり、パージコントロールバルブが全閉状態となる機会がなかなか訪れないのである。それでも、大気圧を計測しようとすると、パージコントロールバルブが全閉状態となっていない状態、つまり低パージ流量時の圧力を大気圧計測値として取り込むことである。しかしながら、低パージ流量時(パージ中)であるということは、活性炭にガソリン粒子が吸着されていればキャニスタに圧力損失が生じることを意味しているので、低パージ流量時にモニターした圧力を大気圧計測値としたのでは、キャニスタの圧力損失分の誤差が大気圧計測値に生じてしまう。
【0004】
一方、ハイブリッド車両には、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有しているので、エンジンの自動停止時にはパージコントロールバルブが全閉状態となる。このため、エンジンの自動停止時にモニターした圧力を大気圧計測値とすることも考え得るが、活性炭にガソリン粒子が吸着されてキャニスタに圧力損失が生じる場合には、エンジンの自動停止時になったからといって、キャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路の圧力が直ぐには大気圧にならず、応答遅れをもってキャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路の圧力が大気圧へと収束してゆく。従って、この応答遅れ時間をディレイ時間として設定しておき、エンジンの自動停止時になってからこのディレイ時間経過後の圧力を大気圧計測値として取り込むことで、精度の良い大気圧計測値を得るようにすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、この方法では、活性炭に吸着されているガソリン粒子が多くなるほど、キャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路の圧力が大気圧に収束するまでの応答遅れ時間が長くなるので、この長くなる応答遅れ時間より短いディレイ時間を設定していれば、大気圧計測値に誤差が生じてしまう。かといって、ディレイ時間を長くしたのでは、エンジンの自動停止時間が短い場合に大気圧計測値を取り込めない事態が生じ得る。
【0006】
このように、キャニスタを介してパージコントロールバルブまでの流路に大気を導入している特許文献1の方法にこだわる限り、特にエンジンが運転される機会の少ないハイブリッド車両においてキャニスタの圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できないのである。
【0007】
そこで本発明は、特にエンジンが運転される機会の少ないハイブリッド車両においてもキャニスタの圧力損失の影響を受けることなく、簡易にかつ精度の良い大気圧の計測を可能とする車両の制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、前記エンジンが、燃料タンクで発生する燃料蒸気を導いて吸着させるキャニスタと、このキャニスタとスロットル弁下流の吸気管とを連通するパージ通路と、このパージ通路を開閉するパージコントロールバルブと、前記キャニスタの大気開放口を開閉するドレンカットバルブと、前記燃料タンクより前記パージコントロールバルブまでの流路の圧力を検出する圧力検出手段とを備え、リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ、ドレンカットバルブ及び圧力検出手段を用いてリークがあるか否かの診断を行う一方で、エンジンの前記自動停止時に前記パージコントロールバルブを開き、パージコントロールバルブを開いたときに、前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込むように構成する。
【発明の効果】
【0009】
パージコントロールバルブよりキャニスタの大気開放口までの流路には圧力損失の要因となるキャニスタが存在するのに対して、パージコントロールバルブより吸気管上流のエアクリーナまでの流路には圧力損失の要因となるものが存在しないため、エンジンの自動停止時にパージコントロールバルブより吸気管上流のエアクリーナまでの流路の圧力は大気圧になっている。本発明によれば、エンジンの自動停止時にパージコントロールバルブを開いて、パージコントロールバルブより吸気管上流のエアクリーナまでの流路に存在する大気圧を導くので、圧力検出手段が直ぐに大気圧に接することになり、簡易にかつ精度良く大気圧を求めることができる。エンジンの自動停止時になるたびに、誤差の少ない大気圧計測値を取得できる。言い換えると、パージ通路は、キャニスタの大気開放口を介して大気に連通しているだけでなく、吸気管を介しても大気に連通しているのであるから、吸気管からの大気の導入を行わせることによって、キャニスタの圧力損失に関係なく、簡易にかつ誤差の少ない大気圧を取得できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は車両の制御方法の実施に直接使用する車両の制御装置の概略構成図、図2は同車両の制御系統の概略構成図を示している。
【0012】
図示の車両は、モータとエンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させる、いわゆるハイブリッド車両であり、本発明は、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンを、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有するハイブリッド車両に適用した点に特徴があり、ハイブリッド車両の構成そのものに本発明の特徴はないので、ハイブリッド車両の構成については概説する。
【0013】
図1、図2において、2はエンジン、4は無段自動変速機であり、これらの間にはモータジェネレータ3が配置される。エンジン2またはモータジェネレータ3の回転が無段自動変速機4からドライブシャフト5、ディファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7(後輪)に伝達される。
【0014】
無段自動変速機4は例えばトルクコンバータと、前後進切換機構と、可変プーリ間に掛け回した金属ベルトから構成され、可変プーリのプーリ比を変えることにより、金属ベルトを介して伝達される速度比が変化する。無段自動変速機4の目標変速比が運転状態に応じて設定され、これが実際の入力回転速度と出力回転速度の比である変速比と一致するように、可変プーリを駆動するためのプライマリ油圧とセカンダリ油圧とが制御される。
【0015】
前後進切換機構は前進時と後進時とで出力回転の方向を逆転させるもので、またトルクコンバータは入力回転トルクを流体力を介して出力側に伝達し、入力側の極低速回転時など出力側の回転の停止を許容できる。
【0016】
前記モータジェネレータ3はエンジン2のクランクシャフトに直結もしくはベルトやチェーンを介して連結され、エンジン2と同期して回転する。モータジェネレータ3は電動機あるいは発電機として機能する。モータジェネレータ3がエンジン2の出力を補って電動機として、あるいはエンジン2を始動するために電動機として機能するときは、バッテリ(42Vバッテリ)8からの電流がインバータ9を介して供給され、また車両の走行エネルギを回収すべく発電機として機能するときは、インバータ9を介して発生した電流によりバッテリ8が充電される。
【0017】
一方、もう一つのモータジェネレータ11が設けられ、こちらのモータジェネレータ11の回転は減速ギヤ12、ドライブシャフト13、ディファレンシャルギヤ14を介して駆動輪15(前輪)に伝達される。モータジェネレータ11も電動機あるいは発電機として機能する。モータジェネレータ11についても電動機として機能するときにはバッテリ8からの電流がインバータ16を介して供給され、また車両の走行エネルギを回収すべく発電機として機能するときにはインバータ16を介して発生した電流によりバッテリ8が充電される。
【0018】
以下では、モータジェネレータ3、11を単に「モータ」と称する。
【0019】
このため、ハイブリッドコントローラ21(図2参照)にはアクセルセンサ31、車速センサからの信号が入力し、ハイブリッドコントローラ21ではこれらに基づいてエンジンコントローラ22、トランスミッションコントローラ23、バッテリコントローラ24、モータコントローラ25と協力しつつ加速時、定速時、減速時の制御を行う。なお、実際には車速センサは設けておらず、エンジン回転速度センサ32により検出されるエンジン回転速度と変速機4の変速比等に基づいて車速を演算している。
【0020】
ここで、前輪15と後輪7に対して別々に駆動トルクを伝達すれば4WD走行が可能となるので、車室内に設けてある4WDスイッチ33をONにしたとき、ハイブリッドコントローラ21ではクリープ走行状態からの車両の発進を4WD走行で行わせる。
【0021】
また、必要なときには所定の加速感が得られるように、車室内にアシストスイッチ34を備える。このアシストスイッチ34をドライバーがONにしたとき、ハイブリッドコントローラ21ではモータ11により駆動力をアシストさせる。
【0022】
一方、車両の走行中に所定の運転条件(アイドルストップ許可条件)が成立したときにエンジン2を自動的に停止(アイドルストップ)し、その後に別の所定の運転条件が成立したとき(アイドルストップ許可条件が成立しなくなったとき)にエンジン2を自動的に再始動させるため、ハイブリッドコントローラ21では車両の走行中に所定の運転条件が成立したときにエンジン2の作動を停止させ、またその後に別の所定の運転条件が成立したときにモータ3によりエンジン2を始動させるようになっている。後述する〔1〕〜〔5〕の条件をみればわかるように、アイドルストップ許可条件として、車速=0km/hかつブレーキが作用していること、という条件は入っていない。つまり、車両の走行中を主としてエンジンが自動停止され、エンジン自動停止後の再始動も車両の走行中に行われる。
【0023】
このため、ハイブリッドコントローラ21には、アクセルセンサ31、エンジン回転速度センサ32以外にも、無段変速機4のシフトポジションセンサ36、吸気圧センサ38、舵角センサ39などからの信号が入力し、これらに基づいて、エンジンコントローラ22を介しエンジン2の自動停止と再始動の制御を行う。
【0024】
エンジンコントローラ22では、エンジン2の運転中は、アクセル開度とエンジン回転速度に応じてスロットル弁42の開度を制御し、燃料噴射弁43からの燃料噴射量と、燃料噴射の時期を制御し、さらには点火プラグ44が点火火花を飛ばす時期である点火時期を制御し、これによって要求の駆動力が得られるエンジン出力を発生させているが、ハイブリッドコントローラ21よりエンジン自動停止の指令を受けると、燃料噴射弁43と点火プラグ44の作動を停止し、その後にハイブリッドコントローラ21よりエンジン再始動の指令を受けると、再び燃料噴射弁43と点火プラグ44の作動を再開する。
【0025】
図3はエンジン2が備える蒸発燃料処理装置の制御系統の概略構成図を示している。
【0026】
図3において、蒸発燃料処理装置は、主に、第1通路52、キャニスタ54、第2通路56(パージ通路)、パージコントロールバルブ61とを備えている。
【0027】
燃料タンク51上部の燃料蒸気(ベーパ)は、第1通路52を介してキャニスタ54に導かれ、燃料粒子(ガソリン粒子)だけがキャニスタ54内の活性炭54aに吸着され、残りの空気はキャニスタ54の鉛直下部(図ではキャニスタ54の上部に示している)に設けた大気開放口55より外部に放出される。
【0028】
キャニスタ54は、スロットル弁42下流の吸気管57と第2通路56で連通され、この第2通路56にステップモータで駆動される常閉のパージコントロールバルブ61が設けられる。一定の条件(たとえばエンジン暖機完了後の低負荷域)で、エンジンコントローラ22からの信号を受けてパージコントロールバルブ61が開かれると、スロットル弁42下流に大きく発達する、大気圧より小さな圧力によりキャニスタ54の大気開放口55から新気がキャニスタ54内に導かれる。この新気で活性炭54aからガソリン粒子が新気とともに第2通路56を介して吸気管57内に導入され、燃料噴射弁43からの噴射燃料と共に燃焼室で燃やされる。
【0029】
上記の第2通路56はキャニスタ54からパージコントロールバルブ61までの通路56aと、パージコントロールバルブ61から吸気管57出口までの通路56bとからなるので、以下では、キャニスタ54からパージコントロールバルブ61までの通路を「キャニスタ側第2通路」56a、パージコントロールバルブ61から吸気管57までの通路を「吸気管側側第2通路」56bという。
【0030】
一方、キャニスタ54の大気開放口55に常開のドレンカットバルブ62が設けられる。このドレンカットバルブ62は、リーク診断時に閉じて、パージコントロールバルブ161より燃料タンク51までの流路を閉空間とするために必要となるものである。
【0031】
また、キャニスタ側第2通路56aに圧力センサ63(圧力検出手段)が設けられ、この圧力センサ63はリーク診断時に閉空間とされた流路の圧力(絶対圧)に比例した電圧を出力する。
【0032】
マイコンからなるエンジンコントローラ22では、上記2つのバルブ(パージコントロールバルブ61とドレンカットバルブ62)と圧力センサ63とを用いて、燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路にリークがあるか否かの診断をエンジンの運転中に行う。すなわち、ドレンカットバルブ62とパージコントロールバルブ61とを全閉状態として燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした閉空間とし、かつその閉空間を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした後の圧力変化をみればリークの有無がわかることから、吸気圧(スロットル42弁下流の吸気管圧力)を利用して燃料タンク51より吸気管57までの流路を一定圧まで減圧するプルダウン処理と、そのプルダウン処理後に燃料タンク51より吸気管57までの流路を閉空間として減圧した状態で保持するリークダウン処理とを続けて行い、リークダウン処理時に圧力センサ63を用いて燃料タンク51より吸気管57までの流路の圧力をサンプリングし、この圧力サンプリング値に基づいてリークがあるか否かの判定を行う。
【0033】
ただし、高地走行により大気圧が大きく低下している場合には、リークがあるか否かの判定に診判定が生じる。例えば、リークがあるときには燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を大気圧よりも低い圧力状態とした閉空間に大気が侵入するため、燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を閉空間としたときより所定時間後の圧力が、閉空間としたときの圧力より所定値を超えて大きくなることを期待している。ところが、大気圧の大幅な低下により、閉空間の圧力と大気圧とがあまり変わらなくなる。すると、リークがあっても、大気が閉空間にあまり侵入せず、閉空間としたときより所定時間後の圧力が、閉空間としたときの圧力より所定値を超えて大きくならない場合が生じ得る。この場合には、リークがあるにも拘わらずリークはないと誤判定されてしまう。
【0034】
このため、大気圧が所定値以上であることをリーク診断許可条件の一つとしており、大気圧が所定値未満であるときには、リーク診断許可条件にないとしてリーク診断を禁止するようにしている。ここで、大気圧が所定値となるときの高度は2400m程度である。
【0035】
このように、大気圧は、リーク診断許可条件であるか否かの判定に用いられている。
【0036】
リーク診断はエンジン制御に含まれるものであり、大気圧がエンジン制御に用いられるのはこの場合に限られず、エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、燃料噴射パルス幅(燃料噴射量)の補正にも用いられる。
【0037】
これについて説明すると、図3においてエンジン2への燃料供給ラインは、燃料タンク51に戻すラインのない、いわゆるリターンレス方式である。このリターンレス方式の燃料供給ラインは、特開2001−107776号公報により公知であるので、簡単に説明すると、燃料タンク51内に燃料ポンプユニット71が設けられている。この燃料ポンプユニット71は、燃料ポンプ、燃料フィルタ及び燃料圧力レギュレータを一体化したもので、燃料タンク51内の燃料は燃料ポンプにより燃料配管72を介して燃料噴射弁43へと供給される。燃料圧力レギュレータは、燃料噴射弁43に供給される燃料を規定圧の高圧状態に維持するための調節弁の働きをするもので、燃料配管72の燃料圧力が規定圧を超えると、燃料配管72内の高圧燃料がこの燃料レギュレータを介して燃料タンク51に戻される。このようにして、燃料圧力レギュレータにより、燃料配管72の燃料圧力がタンク内圧に対し一定の圧力に維持される。
【0038】
このようなリターンレス方式の燃料供給ラインによれば、燃料噴射弁43から噴射される一回の噴射当たり供給燃料量は、燃料噴射弁43の開弁パルス幅が一定であれば、燃料圧力と吸気圧(スロットル弁42下流の吸気管圧力)との圧力差、具体的には燃料タンク51内の圧力としての大気圧と、吸気圧との圧力差に比例する。つまり、燃料噴射弁43の開弁パルス幅が一定であっても、低負荷時のように吸気圧が大気圧よりも低いときには、高負荷時のように吸気圧が大気圧に近いときよりも、一回の噴射当たり供給燃料量が大きくなり、吸気圧の相違で燃料噴射弁43から噴射される一回の噴射当たり供給燃料量が異なってしまう。
【0039】
そこで、大気圧と吸気圧との圧力差に応じた補正係数KBSTを導入し、この補正係数KBSTで次式のように燃料噴射パルス幅を補正している。
【0040】
Ti=(Tp×Tfbya+Kathos)×(α+αm−1)
×KBST×2+Ts …(1)
ただし、Ti :燃料噴射パルス幅、
Tp :基本噴射パルス幅、
Tfbya :目標当量比、
Kathos:過渡補正量、
α :空燃比フィードバック補正係数、
αm :空燃比学習値、
Ts :無効噴射パルス幅、
例えば、補正係数KBSTは図10に示したような特性であり、吸気圧が大気圧と等しいときに1.0となり、このとき、燃料噴射パルス幅の補正は行われない。つまり、基本噴射パルス幅Tpは、吸気圧が大気圧と等しいときに適合していることになる。
【0041】
吸気圧が大気圧よりも小さくて一回の噴射当たり供給燃料量が大きくなる低負荷時には、補正係数KBSTが1.0より小さな正の値となり、燃料噴射パルス幅が減量側に補正される。また、吸気圧が大気圧に近づく高負荷時には、補正係数KBSTが1.0より小さいが1.0に近い正の値となり、燃料噴射パルス幅が減量側に補正されるけれども、低負荷時ほどは減量補正されない。これにより、燃料噴射弁43の開弁パルス幅が一定であれば、エンジン負荷の状態によらず一回の噴射当たり供給燃料量は変わらないことになる。
【0042】
このように、エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、大気圧が燃料噴射パルス幅(燃料噴射量)の補正にも用いられている。
【0043】
さて、リーク診断許可条件であるか否かを判定するには、またリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うにも、大気圧を計測することが必要となる。
【0044】
この場合に、大気圧を検出するセンサを新たに設けるのでは、コストアップとなるので、エンジンのみを動力源とする車両では、リーク診断に用いる圧力センサ63により、大気圧を検出することが行われている(特開2003−35216号公報参照)。エンジンの運転中にパージコントロールバルブ61が全閉状態にあるときには、キャニスタ側第2通路56aが大気開放口55を介して大気に開放されるため、パージコントロールバルブ61が全閉状態になっているときに、圧力センサ63により検出される流路圧力を大気圧計測値として取り込むのである。
【0045】
このように、エンジンのみを動力源とする車両では、圧力センサ63により大気圧を計測し得るが、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うこの同じエンジンがハイブリッド車両に用いられる場合には、キャニスタ54の圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できない事態が生じることが新たに判明している。すなわち、圧力センサ63により大気圧を計測するには、パージンコントロールバルブ61が全閉状態となる機会を捕らえることである。しかしながら、ハイブリッド車両に用いられるエンジンでは、エンジンのみを動力源とする車両と相違して、車両の走行中にエンジンが運転される機会が少なく、そのためにハイブリッド車両に用いられるエンジンにおいては、エンジンの運転中にキャニスタ54からのガソリン粒子のパージのためパージコントロールバルブ61が開き放しといってもいいほどとなり、パージコントロールバルブ61が全閉状態となる機会がなかなか訪れないのである。それでも、大気圧を計測しようとすると、パージコントロールバルブ61が全閉状態となっていない状態、つまり低パージ流量時の圧力を大気圧計測値として取り込むことである。しかしながら、低パージ流量時(パージ中)であるということは、活性炭54aにガソリン粒子が吸着されていればそれが流路抵抗となりキャニスタ54に圧力損失が生じることを意味しているので、低パージ流量時にモニターした圧力を大気圧計測値としたのでは、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が大気圧計測値に生じてしまう。
【0046】
一方、ハイブリッド車両には、車両の走行中にアイドルストップ許可条件が成立したときにエンジン2を自動的に停止(アイドルストップ)し、その後にアイドルストップ許可条件が成立しなくなったときにエンジン2を自動的に再始動させる機能を有しているので、エンジンの運転が自動停止されるアイドルストップ時にはパージコントロールバルブ61が全閉状態となる。このため、アイドルストップ時(パージ停止中)にモニターした圧力を大気圧計測値とすることも考え得るが、活性炭54aにガソリン粒子が吸着されてキャニスタ54に圧力損失が生じる場合には、アイドルストップ時になったからといって、キャニスタ側第2通路56aの圧力が直ぐには大気圧にならず、応答遅れをもってキャニスタ側第2通路56aの圧力が大気圧へと収束してゆく。従って、この応答遅れ時間をディレイ時間として設定しておき、アイドルストップ時になってからこのディレイ時間経過後の圧力を大気圧計測値として取り込むことで、精度の良い大気圧計測値を得るようにすることが考えられる。
【0047】
しかしながら、この方法では、活性炭54aに吸着されているガソリン粒子が多くなるほど、キャニスタ側第2通路56aの圧力が大気圧に収束するまでの応答遅れ時間が長くなるので、この長くなる応答遅れ時間より短いディレイ時間を設定していれば、大気圧計測値に誤差が生じてしまう。かといって、ディレイ時間を長くしたのでは、アイドルストップ時間が短い場合に大気圧計測値を取り込めない事態が生じる。
【0048】
このように、キャニスタ54を介してパージコントロールバルブ61までの流路に大気を導入する方法にこだわる限り、エンジンが運転される機会の少ないハイブリッド車両においてはキャニスタ54の圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できないのである。
【0049】
そこで本実施形態では、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)に大気圧計測値を取り込むようにする点は同じであるが、アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61を開き、このときの流路圧力を大気圧計測値として取り込む。アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61よりエアクリーナ74までの流路には圧力損失の要因となるものが存在しないため、アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61よりエアクリーナ74までの流路の圧力は大気圧になっている。詳細には、エアクリーナ74やスロットル弁42が若干の圧力損失を生じさせるものの、圧力損失としては微小であり問題ないレベルにある。従って、アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61を開くだけで第2通路56が大気圧となり、このとき圧力センサ63によりモニターした流路圧力を大気圧計測値として取り込めば、簡易にかつ誤差の少ない大気圧を取得できることとなる。
【0050】
エンジンコントローラ21で実行されるこの制御を以下のフローチャートに基づいて詳述する。
【0051】
図4はエンジン回転中に大気圧を計測するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0052】
ステップ001では圧力センサ63により検出される流路圧力Pを読み込む。
【0053】
ステップ002ではパージコントロールバルブ開度(図では「パージ弁開度」で略記)と閾値を比較する。
【0054】
パージコントロールバルブ61が開かれるのは、主にスロットル弁下流42が大気圧より小さくなる領域(低負荷域)である。この領域でパージコントロールバルブ開度が運転条件に応じて定められている。
【0055】
閾値は、エンジンのみを動力源とする車両ではパージコントロールバルブ61が全閉状態にあるか否かをみるための値であるが、ここでは、ハイブリッド車両に適用されたエンジンであるので、低パージ流量の上限の値とする。従って、パージコントロールバルブ61が全閉状態とならなくても、低パージ流量時であればエンジン回転中大気圧計測値を取り込むことができる。このように、エンジン回転中大気圧計測値を取り込む条件を低パージ流量時にまで拡大したのは、エンジン回転中大気圧計測値を取り込む機会を拡大するためである。この低パージ流量時にはパージ流量がゼロのとき、つまりパージコントロールバルブ61が全閉状態となるときを含んでいる。
【0056】
低パージ流量の上限を定める閾値をどれくらいにするかは適合により定める。せっかく閾値を定めても、車両運転中にパージコントロールバルブ開度が閾値未満に一度もなることがなければ、ステップ007でのエンジン回転中大気圧計測値が得られず、後述する図8ステップ213でのエンジン回転中大気圧を求めることができなくなる、つまりエンジン回転中には大気圧を計測することができなくなってしまう。このため、車両の運転終了までの間に少なくとも一度は、パージコントロールバルブ開度が閾値未満になるように、閾値を定めることが必要である。
【0057】
ただし、低パージ流量時にエンジン回転中大気圧計測値を取り込むこととすると、このときのエンジン回転中大気圧計測値には、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が生じることとなるが、これは後述する大気圧補正量学習値を導入することによって解消することができる。
【0058】
パージコントロールバルブ開度が閾値未満であるときには低パージ流量時にあると判断し、ステップ003に進んで前回はパージコントロールバルブ開度が閾値未満であったか否かをみる。前回はパージコントロールバルブ開度が閾値以上であった、つまり今回パージコントロールバルブ開度が閾値未満となったときには低パージ流量時に切換わったと判断し、ステップ004に進み、大気圧計測ディレイタイマ1を起動する(大気圧計測ディレイタイマ1値=0)。この大気圧計測ディレイタイマ1は、低パージ流量時に切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0059】
ステップ003で前回もパージコントロールバルブ開度が閾値未満であった、つまり継続してパージコントロールバルブ開度が閾値未満であるときにはステップ003よりステップ005に進み、大気圧計測ディレイタイマ1値とディレイ時間1を比較することにより大気圧計測ディレイ条件を満たしているか否かをみる。前回に大気圧計測ディレイタイマ1が起動され、今回、ステップ005に進んできたときには大気圧計測ディレイタイマ1値はディレイ時間1未満である(つまり大気圧計測ディレイ条件を満たしていない)ので、ステップ006に進み、大気圧計測ディレイタイマ1値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0060】
その後も連続してパージコントロールバルブ開度が閾値未満であるときにはステップ006の操作を繰り返すことになり、やがてステップ005において大気圧計測ディレイタイマ1値がディレイ時間1以上となる(大気圧計測ディレイ条件を満たす)。このときにはステップ005よりステップ007に進んで、流路圧力Pをエンジン回転中大気圧計測値に移し、そのエンジン回転中大気圧計測値を所定のメモリにストアする。
【0061】
ディレイ時間1を設けている理由は、次の通りである。すなわち、低パージ流量時に切換わる前には、吸気圧(スロットル弁42下流の圧力)が第2通路56に導かれており、従って低パージ流量時へと切換わった直後にはキャニスタ側パージ通路56aの圧力が安定せず、安定するまでに所定時間を有するので、この所定時間をディレイ時間1として設けているのである。
【0062】
これでエンジン回転中の大気圧の計測を終了するので、ステップ008では大気圧計測終了フラグ1(エンジン始動時にゼロに初期設定)=1とする。
【0063】
一方、ステップ002でパージコントロールバルブ開度が閾値以上となったときにはステップ009に進み、大気圧計測ディレイタイマ1をクリアし(大気圧計測ディレイタイマ1値=0)、エンジン回転中大気圧計測値の取り込みを中止する。
【0064】
このように、低パージ流量時に切換わってから所定のディレイ時間1が経過した後の流路圧力をエンジン回転中大気圧計測値としてストアする。
【0065】
図5はエンジン回転中の大気圧を計測したタイミングからの経過時間を計測するタイマを生成するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。図5のフローは図4のフローに続けて実行する。
【0066】
ステップ111では、図4のフローにより設定されている大気圧計測終了フラグ1をみる。大気圧計測終了フラグ1=1であるときにはステップ112に進み、前回は大気圧計測終了フラグ1=1であったか否かをみる。前回は大気圧計測終了フラグ1=0であった、つまり今回、大気圧計測終了フラグ1=1に切換わったときにはステップ113に進み、大気圧計測後経過時間タイマを起動する(大気圧計測後経過時間タイマ値=0)。大気圧計測後経過時間タイマはエンジン回転中の大気圧を計測したタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0067】
ステップ112で前回も大気圧計測終了フラグ1=1であった、つまり続けて大気圧計測終了フラグ1=1であるときにはステップ112よりステップ114に進み、大気圧計測後経過時間タイマ値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0068】
一方、ステップ111で大気圧計測終了フラグ1=0であるときにはステップ115に進み、大気圧計測後経過時間タイマをクリアする(大気圧計測後経過時間タイマ値=0)。
【0069】
このようにして、大気圧計測後経過時間タイマ値により、エンジン回転中の大気圧を計測したタイミングからの経過時間を計測する。
【0070】
図6はアイドルストップ時に大気圧を計測するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0071】
ステップ101では圧力センサ63により検出される流路圧力Pを読み込む。
【0072】
ステップ102ではアイドルストップ許可条件であるか否かをみる。アイドルストップ許可条件は、例えば次の〔1〕〜〔5〕の全ての条件を満たすことである(特開2004−076599公報参照)。
【0073】
〔1〕水温センサ37により検出されるエンジンの冷却水温が適正な範囲にあること( 例えば暖機完了後)。
【0074】
〔2〕充電要求が出ていないこと。
【0075】
〔3〕吸気圧センサ38により検出されるマスターバック(商標)の圧力が所定値以下 であること。
【0076】
〔4〕舵角センサ39により検出される舵角が大きくないこと。
【0077】
〔5〕シフトポジションセンサ36により検出される変速機のシフト位置がRレンジで ないこと。
【0078】
このように、アイドルストップ許可条件として、車速=0km/hかつブレーキが作用していること、という条件は入っていない。つまり、車両の走行中を主としてエンジン2が自動停止され、エンジン自動停止後の再始動も車両の走行中に行われる。
【0079】
〔1〕〜〔5〕の全ての条件を満たすときにはアイドルストップ許可条件であると判断してステップ103に進み、前回はアイドルストップ許可条件であったか否かをみる。前回はアイドルストップ許可条件でなかった、つまり今回初めてアイドルストップ許可条件になったときにはステップ104に進み、エンジン停止後タイマを起動する(エンジン停止後タイマ値=0)。このエンジン停止後タイマは、アイドルストップ許可条件に切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0080】
ステップ105では、大気圧補正量学習値演算済フラグ=0とする。大気圧補正量学習値演算済フラグは後述する図7のフローにおいて必要となるフラグである。アイドルストップ許可条件に切換わったタイミングで大気圧補正量学習値演算済フラグ=0とするのは、アイドルストップ毎に、後述する大気圧補正量学習値を更新するためである(図7参照)。
【0081】
ステップ103で前回もアイドルストップ許可条件であった、つまり継続してアイドルストップ許可条件であるときにはステップ103よりステップ106に進み、エンジン停止後タイマ値とディレイ時間2を比較することによりエンジン停止後ディレイ条件を満たしているか否かをみる。前回にエンジン停止後タイマが起動され、今回、ステップ106に進んできたときにはエンジン停止後タイマ値はディレイ時間2未満である(つまりエンジン停止後ディレイ条件を満たしていない)ので、ステップ107に進み、エンジン停止後タイマ値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0082】
その後も連続してエンジン停止後タイマ値がディレイ時間2未満であるときにはステップ107の操作を繰り返すことになり、やがてステップ106においてエンジン停止後タイマ値がディレイ時間2以上となる(エンジン停止後ディレイ条件を満たす)。このときにはステップ106よりステップ108に進んで、前回はエンジン停止後ディレイ条件を満たしたか否かをみる。前回はエンジン停止後ディレイ条件を満たしていなかった、つまり今回、エンジン停止後ディレイ条件を満たしたときにはステップ109、110に進み、パージコントロールバルブ61を全開状態(あるいは所定のパージコントロールバルブ開度状態)とする要求を出力すると共に、大気圧計測ディレイタイマ2を起動する(大気圧計測ディレイタイマ2値=0)。この大気圧計測ディレイタイマ2は、パージコントロールバルブ61が全開状態に切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0083】
このようにして、アイドルストップ許可条件が成立してからディレイ時間2の経過後に、パージコントロールバルブ61を全閉状態より全開状態へと切換える。
【0084】
アイドルストップ許可条件が成立したタイミングでパージコントロールバルブ61を全開状態とするのでなく、ディレイ時間2だけ待つようにしている理由は、次の通りである。すなわち、アイドルストップ許可条件が成立する前には、エンジンを運転しており、このエンジン運転中に吸気圧が第2通路56に導かれている。従って、アイドルストップ許可条件が成立してエンジンを自動停止させると共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態とした直後にはまだキャニスタ側第2通路56aは大気圧より低い圧力状態にある。この場合に、活性炭54aにたくさんのガソリン粒子が吸着されていたり活性炭54aに汚れが生じていたりして、キャニスタ54に大きな圧力損失が生じていれば、キャニスタ側第2通路56aの圧力が応答遅れをもって大気圧へと戻るので、この応答遅れ時間をディレイ時間2として設けているのである。応答遅れ時間は、キャニスタ54の状態(活性炭54aに吸着されているガソリン粒子の量や活性炭54aの汚れの程度)に依存するので、最適な値をディレイ時間2として設定する。この結果、アイドルストップ許可条件が成立してからディレイ時間2の経過後には、キャニスタ側第2通路56aは大気圧状態となっている。
【0085】
ステップ108で前回もエンジン停止後タイマ値がディレイ時間2以上である(エンジン停止後ディレイ条件を満たしていた)ときにはステップ108よりステップ111に進み、大気圧計測ディレイタイマ2値とディレイ時間3を比較することにより大気圧計測ディレイ条件を満たしているか否かをみる。前回に大気圧計測ディレイタイマ2が起動され、今回、ステップ108、111と進んできたときには大気圧計測ディレイタイマ2値はディレイ時間3未満である(つまり大気圧計測ディレイ条件を満たしていない)ので、ステップ112に進み、大気圧計測ディレイタイマ2値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0086】
その後も連続して大気圧計測ディレイタイマ2値がディレイ時間3未満であるときにはステップ111、112の操作を繰り返すことになり、やがてステップ111において大気圧計測ディレイタイマ2値がディレイ時間3以上となる(大気圧計測ディレイ条件を満たす)。このときにはステップ111よりステップ113に進んで、流路圧力Pをアイドルストップ時大気圧計測値に移し、そのアイドルストップ時大気圧計測値を所定のメモリにストアする。
【0087】
このようにして、パージコントロールバルブ61を全開状態としてからディレイ時間3の経過後の流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込む。
【0088】
パージコントロールバルブ61を全開状態としたタイミングでの流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込むのでなく、ディレイ時間3だけ待った後の流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込むようにしている理由は、次の通りである。すなわち、エンジンを自動停止させた後に、キャニスタ側第2通路56aの圧力が大気圧へと戻ったタイミングでパージコントロールバルブ61を全開状態としても、エアクリーナ74よりパージコントロールブルブ61までの流路の圧力が直ぐには大気圧に戻らない場合があることが理論的には考え得る(例えばエアクリーナ74の目詰まりなど)。この場合には、エアクリーナ74よりパージコントロールブルブ61までの流路の圧力が応答遅れをもって大気圧へと戻るので、この応答遅れ時間をディレイ時間3として設けているのである。ディレイ時間3としては適当な値を設定しておく。この結果、パージコントロールバルブ61を全開状態としてからディレイ時間3の経過後には、第2通路56は大気圧状態となっており、このときの流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込んでいる。
【0089】
ただし、エアクリーナ74よりパージコントロールブルブ61までの流路に、考慮しなければならないほどの圧力損失が生じる場合は希であり、この希な場合を無視できるとすれば、ディレイ時間3=0とすればよい。
【0090】
これでアイドルストップ時の大気圧の計測を終了するので、ステップ114、115では大気圧計測終了フラグ2(エンジン始動時にゼロに初期設定)=1とすると共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態とする要求を出力する。
【0091】
一方、ステップ102でアイドルストップ許可条件でないときにはステップ116、117、118に進み、エンジン停止後タイマと大気圧計測ディレイタイマ2をクリアする(エンジン停止後タイマ値=0、大気圧計測ディレイタイマ2値=0)と共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態とする要求を出力する。また、途中でアイドルストップ許可条件でなくなったときにも、ステップ102よりステップ116、118の操作を実行して、アイドルストップ時大気圧計測値の取り込みを中止する。
【0092】
このように、アイドル許可条件が成立してエンジンを自動停止させると共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態としたタイミングよりディレイ時間2が経過したとき、パージコントロールバルブ61を全開状態(または所定のパージコントロールバルブ開度状態)に切換え、かつパージコントロールバルブ61を全開状態に切換えてからディレイ時間3が経過したタイミングでの流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値としてメモリにストアする。
【0093】
図7は大気圧補正量学習値を演算するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。図7のフローは図6のフローに続けて実行する。
【0094】
ステップ121では、大気圧補正量学習値演算済フラグをみる。この大気圧補正量学習値演算済フラグは、車両の運転に際してイグニッションスイッチをOFFよりONへと切換えたときにゼロに初期設定されるフラグである。ここでは、大気圧補正量学習値演算済フラグ=0であるとして、ステップ122以降に進む。
【0095】
ステップ122〜125では次の〈1〉〜〈4〉の4つの条件を満たすか否かをみる。次の〈1〉〜〈4〉の4つの条件を全て満たすときには大気圧補正量学習値の更新条件(学習条件)が成立したと判断してステップ126以降に進み、これに対して次の4つの条件のうちいずかでも満たさないときには大気圧補正量学習値の更新条件が成立していないと判断しそのまま今回の処理を終了する。
【0096】
〈1〉アイドルストップ許可条件であること(ステップ122)。
【0097】
〈2〉図5のフローにおいて生成されている大気圧計測後経過時間タイマ値が学習許可 時間未満であること(ステップ123)。
【0098】
〈3〉大気圧計測終了フラグ1=1であること(ステップ124)。
【0099】
〈4〉大気圧計測終了フラグ2=1であること(ステップ125)。
【0100】
上記〈3〉、〈4〉を条件とするのは、今回のアイドルストップ時にエンジン回転中大気圧計測値、アイドルストップ時大気圧計測値の両方を得ていることを確かめるものである。上記〈2〉を条件とするのは次の理由からである。すなわち、エンジン回転中大気圧計測値及びアイドルストップ時大気圧計測値の両方を得ていても、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングと、アイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングとの間に大きな時間差があればその間に、車両状態や環境条件(高度)が大きく変化していることが有り得る。例えば大気圧は高度の影響を大きく受けるため、車両状態が同じでも、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングの後に車両が急勾配の坂を上ったり下ったりしてアイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングに達していれば、2つのタイミングの間の高度差の分だけアイドルストップ時大気圧計測値に誤差が生じる。そこで、学習許可時間としてあまり長くならない時間を設定しておけば、2つの大気圧計測値を得たタイミングでの車両状態や環境条件(高度)がほぼ同じであるとみなせるためである。言い換えると、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングの直ぐ後にアイドルストップに移行し、このアイドルストップ時にアイドルストップ時大気圧計測値を得たときに〈2〉の条件が成立してステップ126以降に進むことになる。
【0101】
ステップ126では、図4のステップ007で得ているエンジン回転中大気圧計測値と、図6のステップ113で得ているアイドルストップ時大気圧計測値とを用いて、次式により大気圧補正量を演算する。
【0102】
大気圧補正量=アイドルストップ時大気圧計測値−エンジン回転中大気圧計測値
…(2)
上記のように、図4のステップ002、003の閾値には低パージ流量の上限の値を採用しているため、(2)式右辺のエンジン回転中大気圧計測値には、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が生じている。従って、(2)式により、そのときのキャニスタ54の圧力損失分を大気圧補正量として求めていることとなる。また、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングと、アイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングとの間に、車両状態や環境条件(高度)が大きく変化していることはないので、(2)式によりキャニスタ54の圧力損失分としての大気圧補正量を精度良く求めることができている。
【0103】
ステップ127では、この大気圧補正量の加重平均値を大気圧補正量学習値として、つまり次式により大気圧補正量学習値を演算し、その演算した大気圧補正量学習値がアイドルストップを終了してエンジンを自動的に再始動させた後にも消失しないように、ステップ128においてEEPROMなどの所定のメモリにストアする。
【0104】
大気圧補正量学習値=大気圧補正量学習値(前回値)×(1−学習係数)
+大気圧補正量×学習係数 …(3)
ただし、大気圧補正量学習値(前回値):大気圧補正量学習値の前回値、
学習係数 :0〜1までの間の定数、
ここで、大気圧補正量学習値(前回値)の初期値としては適当な値を入れておく。
【0105】
これで大気圧補正量学習値の演算を終了するので、次回のアイドルストップ時に備えるため、ステップ129で大気圧補正量学習値演算済フラグ=1とする。この大気圧補正量学習値演算済フラグ=1により、次回よりステップ121よりステップ122以降に進むことができない。すなわち、イグニッションスイッチをONにして車両の運転を開始し、その後のアイドルストップ時に大気圧補正量学習値を得た後は、次のアイドルストップ時になるまで、その大気圧補正量学習値を保持しておく。そして、次のアイドルストップ時になったときには図6のステップ105で大気圧補正量学習値演算済フラグ=0とされるために、図7においてステップ121よりステップ122以降に進むことが可能となり、ステップ122〜125の条件を全て満たしていれば、ステップ126、127で大気圧補正量学習値が更新される。
【0106】
このように、アイドルストップ時になるたびに、大気圧補正量を演算し、大気圧補正量が演算されたときに大気圧補正量学習値に加重平均していくことで、キャニスタ54の現在の圧力損失に応じた大気圧補正量学習値を得ることができる。
【0107】
図8は大気圧を演算するためのもので、エンジン回転中、アイドルストップ時に関係なく、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0108】
ステップ211ではエンジン回転中であるか否かをみる。エンジン回転中であるときにはステップ212に進み、大気圧計測終了フラグ1をみる。大気圧計測終了フラグ1=1であればエンジン回転中大気圧計測値が得られているので、ステップ213に進み、そのエンジン回転中大気圧計測値に、図7のステップ128でメモリに格納されている大気圧補正量学習値を加算した値を大気圧として、つまり次式により大気圧を算出する。
【0109】
大気圧=エンジン回転中大気圧計測値+大気圧補正量学習値
…(4)
上記したところを繰り返すと、図4のステップ002、003の閾値には低パージ流量の上限の値を採用しているため、エンジン回転中大気圧計測値には、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が生じている。従って、上記(2)式により、そのときのキャニスタ54の圧力損失分を大気圧補正量として求めていることとなる。また、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングと、アイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングとの間に、車両状態や環境条件(高度)が大きく変化していることはないので、上記(2)式によりキャニスタ54の圧力損失分としての大気圧補正量を精度良く求めることができている。
【0110】
従って、エンジン回転中大気圧計測値にキャニスタ54の圧力損失分の誤差があっても、(4)式のように、このキャニスタ54の圧力損失分の誤差があるエンジン回転中大気圧計測値に、キャニスタ54の圧力損失分としての大気圧補正量学習値を加算することで、エンジン回転中においても精度良く大気圧を得ることができる。
【0111】
ステップ212で大気圧計測終了フラグ1=0であるときにはエンジン回転中大気圧計測値がまだ得られていないので、そのまま処理を終了する。
【0112】
ステップ211でエンジン回転中でない(つまりアイドルストップ時である)ときにはステップ214に進み、大気圧計測終了フラグ2をみる。大気圧計測終了フラグ2=1であればアイドルストップ時大気圧計測値が得られているので、ステップ215に進み、そのアイドルストップ時大気圧計測値を大気圧とする。アイドルストップ時には、パージコントロールバルブ61を開くことで、吸気管57を介してキャニスタ側第2通路56aに大気圧を導入し、このときの流路圧力を大気圧計測値(アイドルストップ時大気圧計測値)として取り込んでいるので、キャニスタ54の圧力損失の影響を受けることがなく、従って、アイドルストップ時にも、精度良く大気圧を得ることができている。
【0113】
ステップ215で大気圧計測終了フラグ2=0であるときにはアイドルストップ時大気圧計測値がまだ得られていないので、そのまま処理を終了する。
【0114】
このようにして、エンジン回転中とアイドルストップ時のそれぞれにおいて大気圧が精度良く得られることとなった。こうして得られる大気圧は、直ぐ後に述べるエンジン制御(燃料噴射パルス幅の演算とリーク診断許可フラグの設定)に用いる。
【0115】
図9は燃料噴射パルス幅Tiを演算するためのもので、エンジンコントローラ22がバックグランドジョブで一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0116】
ステップ301ではエンジン回転中であるか否かをみる。エンジン回転中であるときにはステップ302に進み、吸気圧センサ38により検出されている吸気圧と、図8のフローにより演算されている大気圧とを読み込む。このときの大気圧は、図8のステップ213で得られている大気圧である。
【0117】
ステップ303ではこれら吸気圧、大気圧から次式により圧力差を演算し、この圧力差からステップ304において図10を内容とするテーブルを検索して補正係数KBSTを演算する。
【0118】
圧力差=大気圧−吸気圧 …(5)
ステップ305ではこの補正係数KBSTを用いて、例えば上記(1)式によりシーケンシャル噴射時の燃料噴射パルス幅Tiを演算する。
【0119】
図10に示したように、低負荷時には吸気圧が大気圧よりも小さな値となるため、補正係数KBSTは、1.0より小さな正の値となり、これに対して高負荷には吸気圧が大気圧に近い値となるため、補正係数KBSTは、低負荷時よりも1.0に近い正の値となる。つまり、低負荷時、高負荷時とも1.0より小さな正の値である補正係数KBSTにより基本噴射パルス幅Tpが減量補正されるのであるが、低負荷時のほうが補正係数KBSTが小さい分だけ基本噴射パルス幅Tpの減量補正量が大きくなっている。
【0120】
一方、エンジン回転中でないとき(アイドルストップ時)にはエンジンを自動停止するためステップ306に進み、無効噴射パルス幅Tsを燃料噴射パルス幅Tiとする。このとき、燃料噴射弁43より燃料が噴射されない。
【0121】
上記(1)式のTp、Tfbya、Kathos、α、αm、Tsは周知の値である。主な値について簡単に説明すると、基本噴射パルス幅Tpはエアフローメータ73(図3参照)により検出される吸入空気量Qaをエンジン回転速度で除算した値に定数Kを乗算して得られる値で、この基本噴射パルス幅Tpにより基本空燃比(ほぼ理論空燃比に等しい)の混合気が得られる。実際にはエアフローメータ73の流量特性や燃料噴射弁43の流量特性に製作バラツキや経時劣化が生じ、空燃比が理論空燃比を外れてバラツク。このバラツキを抑えるための値が、排気の空燃比を検出する酸素センサ75(図3参照)出力に基づいて演算される空燃比フィードバック補正係数αで、排気の空燃比が理論空燃比よりリッチ側になっていれば、この空燃比フィードバック補正係数αが1.0より小さくなって、基本噴射パルス幅Tpを減量補正することにより、空燃比を理論空燃比の近傍へと戻す。この逆に、排気の空燃比が理論空燃比よりリーン側になっていれば、この空燃比フィードバック補正係数αが1.0より大きくなって、基本噴射パルス幅Tpを増量補正することにより、空燃比を理論空燃比の近傍へと戻す。
【0122】
目標当量比Tfbyaは、理論空燃比よりもリーン側の空燃比でエンジンを運転する場合に必要となる値で、例えばリーン運転域では、目標当量比Tfbyaが1.0より小さな正の値となり、この1.0より小さな正の値の目標当量比Tfbyaにより、基本噴射パルス幅Tpが減量補正される。燃料噴射弁43からの噴射燃料はその全部が気流に乗って燃焼室に流入するのではなく、一部が吸気ポートや吸気弁傘裏部に付着して壁流燃料を形成し、ゆっくりと燃焼室へ流入する。この壁流燃料の量が過渡時に大きな応答遅れを有し、そのために空燃比が影響を受けるので、この壁流燃料の過渡時における燃焼室への供給遅れを補正するための値が過渡補正量Kathosである。燃料噴射弁43の実際の開弁幅はバッテリ電圧の影響を受け、同じ基本噴射パルス幅Tpを指示しても、バッテリ電圧の低下時には実際の開弁幅が小さくなり、望みの空燃比が得られなくなるので、バッテリ電圧が低下したときにも望みの空燃比が得られるようにするための値が無効噴射パルス幅Tsである。
【0123】
図11はリーク診断許可フラグを設定するためのもので、エンジンコントローラ22が一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0124】
ステップ401、402は、図9のステップ301、302と同様である。すなわち、ステップ401ではエンジン回転中であるか否かをみる。エンジン回転中であるときにはステップ402に進み、基本噴射パルス幅Tpと、水温センサ37により検出される冷却水温Twと、図8のフローにより演算されている大気圧とを読み込む。このときの大気圧は、図8のステップ213で得られている大気圧である。
【0125】
ステップ403〜405では、次の〈5〉〜〈7〉の3つの条件を満たすか否かをみる。次の〈5〉〜〈7〉の3つの条件を全て満たすときにはリーク診断許可条件が成立したと判断し、ステップ406に進んでリーク診断許可フラグ=1とし、これに対して次の3つの条件のうちいずかでも満たさないときにはリーク診断許可条件が成立していないと判断し、ステップ407に進んでリーク診断許可フラグ=0(リーク診断禁止)とする。
【0126】
〈4〉基本噴射パルス幅Tpが所定値1以下であること(ステップ403)。
【0127】
〈5〉冷却水温Twが所定値2以上であること(ステップ404)。
【0128】
〈6〉大気圧が所定値3以上、つまり大略2400mを超える高地にないこと(ステッ プ405)。
【0129】
〈4〉で基本噴射パルス幅Tpが所定値1以下、つまり低負荷時である(吸気圧が大気圧よりも低い圧力状態となる)ことを条件とするのは、活性炭54aに吸着されているガソリン粒子を吸気管57に導くには、第2通路56を大気圧よりも低い圧力状態とする必要があるためである。〈5〉で冷却水温Twが所定値2未満、つまりエンジン暖機完了後の状態にないときを条件としないのは、次の理由からである。すなわち、エンジン暖機完了後の状態になく、もともと燃焼が不安定であるときに、ガソリン粒子の混じった新気(パージガス)を導入したのでは、燃焼をさらに悪化させてしまうためである。〈6〉で大気圧が所定値3未満であるときを条件としないのは、リークが生じているか否かの判定に誤判定が生じるのを避けるためである。
【0130】
このようにして設定したリーク診断許可フラグは図示しないリーク診断のルーチンにおいて用いられる。リーク診断許可フラグ=1であるときには、ドレンカットバルブ62とパージコントロールバルブ61とを閉じて燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした閉空間とし、かつその閉空間を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした後の圧力変化に基づいてリークがあるか否かの診断が行われる。こうしたリーク診断の途中で、車両が2400mを超える高地に移動したときには、リーク診断許可フラグ=0となるため、リーク診断の途中であってもリーク診断が禁止される。
【0131】
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
【0132】
パージコントロールバルブ61よりキャニスタ54の大気開放口55までの流路には圧力損失の要因となるキャニスタ54が存在するのに対して、パージコントロールバルブ61より吸気管57上流のエアクリーナ74までの流路には圧力損失の要因となるものが存在しないため、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)にパージコントロールバルブ61より吸気管57上流のエアクリーナ74までの流路の圧力は大気圧になっている。本実施形態(請求項1、9に記載の発明)によれば、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)にパージコントロールバルブ61を開いて、パージコントロールバルブ61より吸気管57上流のエアクリーナ74までの流路に存在する大気圧をパージ通路56に導くので(図6のステップ109参照)、圧力センサ63(圧力検出手段)が直ぐに大気圧に接することになり、簡易にかつ精度良く大気圧を求めることができる。アイドルストップ時になるたびに、誤差の少ない大気圧計測値を取得できる。言い換えると、第2通路56aは、キャニスタ54の大気開放口55を介して大気に連通しているだけでなく、吸気管57を介しても大気に連通しているのであるから、吸気管57からの大気の導入を行わせることによって、キャニスタ54の圧力損失に関係なく、簡易にかつ誤差の少ない大気圧を取得できるのである。
【0133】
本実施形態(請求項3、11に記載の発明)によれば、エンジン回転中の低パージ流量時の流路圧力をエンジン回転中大気圧計測値として記憶することで(図4のステップ002、003、005、007参照)、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンがハイブリッド車両に用いられる場合においても、エンジン回転中での大気圧圧計測値の取り込みの機会が拡大する。
【0134】
ただし、低パージ流量時(パージ中)であるということは、活性炭54aにガソリン粒子が吸着されていればキャニスタ54に圧力損失が生じることを意味しているので、低パージ流量時にモニターした圧力を、そのまま大気圧計測値としたのでは、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が大気圧計測値に生じてしまうのであるが、本実施形態(請求項3、11に記載の発明)によれば、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)にアイドルストップ時大気圧計測値(エンジン自動停止時大気圧計測値)とエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出しており(図7のステップ122、126参照)、この大気圧補正量はキャニスタ54の圧力損失分を表している。従って、算出した大気圧補正量をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出することで(図8のステップ211、212、213参照)、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンがハイブリッド車両に用いられる場合において、エンジン回転中の低パージ流量時での大気圧計測値の取り込みの機会がある限り、エンジン回転中においても大気圧を精度良く求めることができる。
【0135】
本実施形態(請求項4、12に記載の発明)によれば、アイドルストップ時毎(エンジンの自動停止時毎)に大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算し(図7のステップ127参照)、この大気圧補正量学習値をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するので(図8のステップ211、212、213参照)、キャニスタ54からのガソリン粒子のパージが進んでキャニスタ54の圧力損失分が小さくなる側に変化していく場合にも、その変化していく圧力損失分をアイドルストップ時毎(エンジンの自動停止時毎)に大気圧補正量学習値に反映させることが可能となり、エンジンの運転中にキャニスタ54の圧力損失分が小さくなる側に変化していく場合であっても、精度の良い大気圧を得ることができる。
【0136】
エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、エンジン回転中の大気圧計測値に計測誤差があれば、その大気圧計測値の計測誤差に応じた誤差が燃料噴射パルス幅Ti(燃料噴射量)に生じてしまうのであるが、本実施形態(請求項7、15に記載の発明)によれば、エンジン回転中の大気圧を燃料噴射パルス幅の補正に用いるので(図9のステップ301、302、303、304、305参照)、リターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合においても、大気圧計測値の計測誤差に伴う燃料噴射量の誤差を防止できる。
【0137】
本実施形態(請求項8、16に記載の発明)によれば、エンジン回転中の大気圧をリーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いるので(図11のステップ401、405、406、407参照)、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンにおいて、リーク診断に用いる圧力センサ63により大気圧を計測する場合においても、リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に誤判定が生じることを避けることができる。
【0138】
実施形態では、モータとエンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させるハイブリッド車両の場合で説明したが、エンジンのみを駆動源とする車両であって、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両にも本発明の適用がある(請求項1、9に記載の発明)。
【0139】
実施形態では、エンジンの自動停止時毎(アイドルストップ時毎)に大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算し、この大気圧補正量学習値をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出する場合で説明したが、大気圧補正量学習値を導入することなく、エンジンの自動停止時毎にエンジン自動停止時大気圧計測値とエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出し、この算出した大気圧補正量をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するようにしてもかまわない(請求項3、11に記載の発明)。
【0140】
実施形態では、エンジン回転中にはエンジン回転中大気圧を大気圧として、またアイドルストップ時にはアイドルストップ時大気圧計測値を大気圧として設定しているが、こうした用い方に限られるものでなく、環境条件(高度)が殆ど同じであるとみなせる場合には、アイドルストップ時大気圧計測値をエンジン回転中の大気圧として用いることができる(請求項5、6、13、14に記載の発明)。または、エンジン回転中大気圧計測値に大気圧補正量学習値(あるいは大気圧補正量)を加算した値をアイドルストップ時の大気圧として用いることができる。また、アイドルストップ時大気圧計測値のほうを優先して使用することも考えられる。
【0141】
請求項1に記載のリーク診断処理手順はエンジンコントローラ22により、開弁処理手順は図6のステップ102、109により、エンジン自動停止時大気圧計測値取込処理手順は図6のステップ102、113によりそれぞれ果たされている。
【0142】
請求項7に記載のリーク診断手段の機能はエンジンコントローラ22により、開弁手段の機能は図6のステップ102、109により、エンジン自動停止時大気圧計測値取込手段の機能は図6のステップ102、113によりそれぞれ果たされている。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1実施形態の車両の制御装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1実施形態の車両の制御系統の概略構成図。
【図3】エンジンが備える蒸発燃料処理装置の制御系統の概略構成図。
【図4】エンジン回転中の大気圧の計測を説明するためのフローチャート。
【図5】エンジン回転中大気圧計測後経過時間タイマの生成を説明するためのフローチャート。
【図6】アイドルストップ時の大気圧の計測を説明するためのフローチャート。
【図7】大気圧補正量学習値の演算を説明するためのフローチャート。
【図8】大気圧の演算を説明するためのフローチャート。
【図9】燃料噴射パルス幅の演算を説明するためのフローチャート。
【図10】補正係数の特性図。
【図11】リーク診断許可フラグの設定を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0144】
2 エンジン
22 エンジンコントローラ
51 燃料タンク
54 キャニスタ
56 第2通路(パージ通路)
57 吸気管
61 パージコントロールバルブ
62 ドレンカットバルブ
63 圧力センサ(圧力検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御方法及び制御装置、特にリーク診断に用いる圧力センサにより大気圧を計測するものに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジン(内燃機関)において、エンジンの制御に必要となる大気圧を検出するセンサを新たに設けるのではコストアップを招くため、リーク診断に用いる圧力センサにより大気圧を計測するようにしたものがある(特許文献1参照)。これは、エンジンの運転中にパージコントロールバルブが全閉状態にあるときには、キャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路が大気開放口を介して大気に開放されるため、パージコントロールバルブが全閉状態のときに、圧力センサにより検出される流路圧力を大気圧計測値として取り込むものである。
【特許文献1】特開2003−35216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うこの同じエンジンが、特にモータとエンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させる、いわゆるハイブリッド車両に用いられる場合には、キャニスタの圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できない事態が生じることが新たに判明している。すなわち、圧力センサにより大気圧を計測するには、パージンコントロールバルブが全閉状態となる機会を捕らえることである。しかしながら、ハイブリッド車両に用いられるエンジンでは、エンジンのみを動力源とする車両と相違して、車両の走行中にエンジンが運転される機会が少ない。そのためハイブリッド車両に用いられるエンジンにおいては、エンジンの運転中にキャニスタからの燃料蒸気(ガソリン粒子)のパージのためパージコントロールバルブが開き放しといってもいいほどとなり、パージコントロールバルブが全閉状態となる機会がなかなか訪れないのである。それでも、大気圧を計測しようとすると、パージコントロールバルブが全閉状態となっていない状態、つまり低パージ流量時の圧力を大気圧計測値として取り込むことである。しかしながら、低パージ流量時(パージ中)であるということは、活性炭にガソリン粒子が吸着されていればキャニスタに圧力損失が生じることを意味しているので、低パージ流量時にモニターした圧力を大気圧計測値としたのでは、キャニスタの圧力損失分の誤差が大気圧計測値に生じてしまう。
【0004】
一方、ハイブリッド車両には、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有しているので、エンジンの自動停止時にはパージコントロールバルブが全閉状態となる。このため、エンジンの自動停止時にモニターした圧力を大気圧計測値とすることも考え得るが、活性炭にガソリン粒子が吸着されてキャニスタに圧力損失が生じる場合には、エンジンの自動停止時になったからといって、キャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路の圧力が直ぐには大気圧にならず、応答遅れをもってキャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路の圧力が大気圧へと収束してゆく。従って、この応答遅れ時間をディレイ時間として設定しておき、エンジンの自動停止時になってからこのディレイ時間経過後の圧力を大気圧計測値として取り込むことで、精度の良い大気圧計測値を得るようにすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、この方法では、活性炭に吸着されているガソリン粒子が多くなるほど、キャニスタの大気開放口からパージコントロールバルブまでの流路の圧力が大気圧に収束するまでの応答遅れ時間が長くなるので、この長くなる応答遅れ時間より短いディレイ時間を設定していれば、大気圧計測値に誤差が生じてしまう。かといって、ディレイ時間を長くしたのでは、エンジンの自動停止時間が短い場合に大気圧計測値を取り込めない事態が生じ得る。
【0006】
このように、キャニスタを介してパージコントロールバルブまでの流路に大気を導入している特許文献1の方法にこだわる限り、特にエンジンが運転される機会の少ないハイブリッド車両においてキャニスタの圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できないのである。
【0007】
そこで本発明は、特にエンジンが運転される機会の少ないハイブリッド車両においてもキャニスタの圧力損失の影響を受けることなく、簡易にかつ精度の良い大気圧の計測を可能とする車両の制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、前記エンジンが、燃料タンクで発生する燃料蒸気を導いて吸着させるキャニスタと、このキャニスタとスロットル弁下流の吸気管とを連通するパージ通路と、このパージ通路を開閉するパージコントロールバルブと、前記キャニスタの大気開放口を開閉するドレンカットバルブと、前記燃料タンクより前記パージコントロールバルブまでの流路の圧力を検出する圧力検出手段とを備え、リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ、ドレンカットバルブ及び圧力検出手段を用いてリークがあるか否かの診断を行う一方で、エンジンの前記自動停止時に前記パージコントロールバルブを開き、パージコントロールバルブを開いたときに、前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込むように構成する。
【発明の効果】
【0009】
パージコントロールバルブよりキャニスタの大気開放口までの流路には圧力損失の要因となるキャニスタが存在するのに対して、パージコントロールバルブより吸気管上流のエアクリーナまでの流路には圧力損失の要因となるものが存在しないため、エンジンの自動停止時にパージコントロールバルブより吸気管上流のエアクリーナまでの流路の圧力は大気圧になっている。本発明によれば、エンジンの自動停止時にパージコントロールバルブを開いて、パージコントロールバルブより吸気管上流のエアクリーナまでの流路に存在する大気圧を導くので、圧力検出手段が直ぐに大気圧に接することになり、簡易にかつ精度良く大気圧を求めることができる。エンジンの自動停止時になるたびに、誤差の少ない大気圧計測値を取得できる。言い換えると、パージ通路は、キャニスタの大気開放口を介して大気に連通しているだけでなく、吸気管を介しても大気に連通しているのであるから、吸気管からの大気の導入を行わせることによって、キャニスタの圧力損失に関係なく、簡易にかつ誤差の少ない大気圧を取得できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は車両の制御方法の実施に直接使用する車両の制御装置の概略構成図、図2は同車両の制御系統の概略構成図を示している。
【0012】
図示の車両は、モータとエンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させる、いわゆるハイブリッド車両であり、本発明は、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンを、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有するハイブリッド車両に適用した点に特徴があり、ハイブリッド車両の構成そのものに本発明の特徴はないので、ハイブリッド車両の構成については概説する。
【0013】
図1、図2において、2はエンジン、4は無段自動変速機であり、これらの間にはモータジェネレータ3が配置される。エンジン2またはモータジェネレータ3の回転が無段自動変速機4からドライブシャフト5、ディファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7(後輪)に伝達される。
【0014】
無段自動変速機4は例えばトルクコンバータと、前後進切換機構と、可変プーリ間に掛け回した金属ベルトから構成され、可変プーリのプーリ比を変えることにより、金属ベルトを介して伝達される速度比が変化する。無段自動変速機4の目標変速比が運転状態に応じて設定され、これが実際の入力回転速度と出力回転速度の比である変速比と一致するように、可変プーリを駆動するためのプライマリ油圧とセカンダリ油圧とが制御される。
【0015】
前後進切換機構は前進時と後進時とで出力回転の方向を逆転させるもので、またトルクコンバータは入力回転トルクを流体力を介して出力側に伝達し、入力側の極低速回転時など出力側の回転の停止を許容できる。
【0016】
前記モータジェネレータ3はエンジン2のクランクシャフトに直結もしくはベルトやチェーンを介して連結され、エンジン2と同期して回転する。モータジェネレータ3は電動機あるいは発電機として機能する。モータジェネレータ3がエンジン2の出力を補って電動機として、あるいはエンジン2を始動するために電動機として機能するときは、バッテリ(42Vバッテリ)8からの電流がインバータ9を介して供給され、また車両の走行エネルギを回収すべく発電機として機能するときは、インバータ9を介して発生した電流によりバッテリ8が充電される。
【0017】
一方、もう一つのモータジェネレータ11が設けられ、こちらのモータジェネレータ11の回転は減速ギヤ12、ドライブシャフト13、ディファレンシャルギヤ14を介して駆動輪15(前輪)に伝達される。モータジェネレータ11も電動機あるいは発電機として機能する。モータジェネレータ11についても電動機として機能するときにはバッテリ8からの電流がインバータ16を介して供給され、また車両の走行エネルギを回収すべく発電機として機能するときにはインバータ16を介して発生した電流によりバッテリ8が充電される。
【0018】
以下では、モータジェネレータ3、11を単に「モータ」と称する。
【0019】
このため、ハイブリッドコントローラ21(図2参照)にはアクセルセンサ31、車速センサからの信号が入力し、ハイブリッドコントローラ21ではこれらに基づいてエンジンコントローラ22、トランスミッションコントローラ23、バッテリコントローラ24、モータコントローラ25と協力しつつ加速時、定速時、減速時の制御を行う。なお、実際には車速センサは設けておらず、エンジン回転速度センサ32により検出されるエンジン回転速度と変速機4の変速比等に基づいて車速を演算している。
【0020】
ここで、前輪15と後輪7に対して別々に駆動トルクを伝達すれば4WD走行が可能となるので、車室内に設けてある4WDスイッチ33をONにしたとき、ハイブリッドコントローラ21ではクリープ走行状態からの車両の発進を4WD走行で行わせる。
【0021】
また、必要なときには所定の加速感が得られるように、車室内にアシストスイッチ34を備える。このアシストスイッチ34をドライバーがONにしたとき、ハイブリッドコントローラ21ではモータ11により駆動力をアシストさせる。
【0022】
一方、車両の走行中に所定の運転条件(アイドルストップ許可条件)が成立したときにエンジン2を自動的に停止(アイドルストップ)し、その後に別の所定の運転条件が成立したとき(アイドルストップ許可条件が成立しなくなったとき)にエンジン2を自動的に再始動させるため、ハイブリッドコントローラ21では車両の走行中に所定の運転条件が成立したときにエンジン2の作動を停止させ、またその後に別の所定の運転条件が成立したときにモータ3によりエンジン2を始動させるようになっている。後述する〔1〕〜〔5〕の条件をみればわかるように、アイドルストップ許可条件として、車速=0km/hかつブレーキが作用していること、という条件は入っていない。つまり、車両の走行中を主としてエンジンが自動停止され、エンジン自動停止後の再始動も車両の走行中に行われる。
【0023】
このため、ハイブリッドコントローラ21には、アクセルセンサ31、エンジン回転速度センサ32以外にも、無段変速機4のシフトポジションセンサ36、吸気圧センサ38、舵角センサ39などからの信号が入力し、これらに基づいて、エンジンコントローラ22を介しエンジン2の自動停止と再始動の制御を行う。
【0024】
エンジンコントローラ22では、エンジン2の運転中は、アクセル開度とエンジン回転速度に応じてスロットル弁42の開度を制御し、燃料噴射弁43からの燃料噴射量と、燃料噴射の時期を制御し、さらには点火プラグ44が点火火花を飛ばす時期である点火時期を制御し、これによって要求の駆動力が得られるエンジン出力を発生させているが、ハイブリッドコントローラ21よりエンジン自動停止の指令を受けると、燃料噴射弁43と点火プラグ44の作動を停止し、その後にハイブリッドコントローラ21よりエンジン再始動の指令を受けると、再び燃料噴射弁43と点火プラグ44の作動を再開する。
【0025】
図3はエンジン2が備える蒸発燃料処理装置の制御系統の概略構成図を示している。
【0026】
図3において、蒸発燃料処理装置は、主に、第1通路52、キャニスタ54、第2通路56(パージ通路)、パージコントロールバルブ61とを備えている。
【0027】
燃料タンク51上部の燃料蒸気(ベーパ)は、第1通路52を介してキャニスタ54に導かれ、燃料粒子(ガソリン粒子)だけがキャニスタ54内の活性炭54aに吸着され、残りの空気はキャニスタ54の鉛直下部(図ではキャニスタ54の上部に示している)に設けた大気開放口55より外部に放出される。
【0028】
キャニスタ54は、スロットル弁42下流の吸気管57と第2通路56で連通され、この第2通路56にステップモータで駆動される常閉のパージコントロールバルブ61が設けられる。一定の条件(たとえばエンジン暖機完了後の低負荷域)で、エンジンコントローラ22からの信号を受けてパージコントロールバルブ61が開かれると、スロットル弁42下流に大きく発達する、大気圧より小さな圧力によりキャニスタ54の大気開放口55から新気がキャニスタ54内に導かれる。この新気で活性炭54aからガソリン粒子が新気とともに第2通路56を介して吸気管57内に導入され、燃料噴射弁43からの噴射燃料と共に燃焼室で燃やされる。
【0029】
上記の第2通路56はキャニスタ54からパージコントロールバルブ61までの通路56aと、パージコントロールバルブ61から吸気管57出口までの通路56bとからなるので、以下では、キャニスタ54からパージコントロールバルブ61までの通路を「キャニスタ側第2通路」56a、パージコントロールバルブ61から吸気管57までの通路を「吸気管側側第2通路」56bという。
【0030】
一方、キャニスタ54の大気開放口55に常開のドレンカットバルブ62が設けられる。このドレンカットバルブ62は、リーク診断時に閉じて、パージコントロールバルブ161より燃料タンク51までの流路を閉空間とするために必要となるものである。
【0031】
また、キャニスタ側第2通路56aに圧力センサ63(圧力検出手段)が設けられ、この圧力センサ63はリーク診断時に閉空間とされた流路の圧力(絶対圧)に比例した電圧を出力する。
【0032】
マイコンからなるエンジンコントローラ22では、上記2つのバルブ(パージコントロールバルブ61とドレンカットバルブ62)と圧力センサ63とを用いて、燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路にリークがあるか否かの診断をエンジンの運転中に行う。すなわち、ドレンカットバルブ62とパージコントロールバルブ61とを全閉状態として燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした閉空間とし、かつその閉空間を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした後の圧力変化をみればリークの有無がわかることから、吸気圧(スロットル42弁下流の吸気管圧力)を利用して燃料タンク51より吸気管57までの流路を一定圧まで減圧するプルダウン処理と、そのプルダウン処理後に燃料タンク51より吸気管57までの流路を閉空間として減圧した状態で保持するリークダウン処理とを続けて行い、リークダウン処理時に圧力センサ63を用いて燃料タンク51より吸気管57までの流路の圧力をサンプリングし、この圧力サンプリング値に基づいてリークがあるか否かの判定を行う。
【0033】
ただし、高地走行により大気圧が大きく低下している場合には、リークがあるか否かの判定に診判定が生じる。例えば、リークがあるときには燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を大気圧よりも低い圧力状態とした閉空間に大気が侵入するため、燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を閉空間としたときより所定時間後の圧力が、閉空間としたときの圧力より所定値を超えて大きくなることを期待している。ところが、大気圧の大幅な低下により、閉空間の圧力と大気圧とがあまり変わらなくなる。すると、リークがあっても、大気が閉空間にあまり侵入せず、閉空間としたときより所定時間後の圧力が、閉空間としたときの圧力より所定値を超えて大きくならない場合が生じ得る。この場合には、リークがあるにも拘わらずリークはないと誤判定されてしまう。
【0034】
このため、大気圧が所定値以上であることをリーク診断許可条件の一つとしており、大気圧が所定値未満であるときには、リーク診断許可条件にないとしてリーク診断を禁止するようにしている。ここで、大気圧が所定値となるときの高度は2400m程度である。
【0035】
このように、大気圧は、リーク診断許可条件であるか否かの判定に用いられている。
【0036】
リーク診断はエンジン制御に含まれるものであり、大気圧がエンジン制御に用いられるのはこの場合に限られず、エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、燃料噴射パルス幅(燃料噴射量)の補正にも用いられる。
【0037】
これについて説明すると、図3においてエンジン2への燃料供給ラインは、燃料タンク51に戻すラインのない、いわゆるリターンレス方式である。このリターンレス方式の燃料供給ラインは、特開2001−107776号公報により公知であるので、簡単に説明すると、燃料タンク51内に燃料ポンプユニット71が設けられている。この燃料ポンプユニット71は、燃料ポンプ、燃料フィルタ及び燃料圧力レギュレータを一体化したもので、燃料タンク51内の燃料は燃料ポンプにより燃料配管72を介して燃料噴射弁43へと供給される。燃料圧力レギュレータは、燃料噴射弁43に供給される燃料を規定圧の高圧状態に維持するための調節弁の働きをするもので、燃料配管72の燃料圧力が規定圧を超えると、燃料配管72内の高圧燃料がこの燃料レギュレータを介して燃料タンク51に戻される。このようにして、燃料圧力レギュレータにより、燃料配管72の燃料圧力がタンク内圧に対し一定の圧力に維持される。
【0038】
このようなリターンレス方式の燃料供給ラインによれば、燃料噴射弁43から噴射される一回の噴射当たり供給燃料量は、燃料噴射弁43の開弁パルス幅が一定であれば、燃料圧力と吸気圧(スロットル弁42下流の吸気管圧力)との圧力差、具体的には燃料タンク51内の圧力としての大気圧と、吸気圧との圧力差に比例する。つまり、燃料噴射弁43の開弁パルス幅が一定であっても、低負荷時のように吸気圧が大気圧よりも低いときには、高負荷時のように吸気圧が大気圧に近いときよりも、一回の噴射当たり供給燃料量が大きくなり、吸気圧の相違で燃料噴射弁43から噴射される一回の噴射当たり供給燃料量が異なってしまう。
【0039】
そこで、大気圧と吸気圧との圧力差に応じた補正係数KBSTを導入し、この補正係数KBSTで次式のように燃料噴射パルス幅を補正している。
【0040】
Ti=(Tp×Tfbya+Kathos)×(α+αm−1)
×KBST×2+Ts …(1)
ただし、Ti :燃料噴射パルス幅、
Tp :基本噴射パルス幅、
Tfbya :目標当量比、
Kathos:過渡補正量、
α :空燃比フィードバック補正係数、
αm :空燃比学習値、
Ts :無効噴射パルス幅、
例えば、補正係数KBSTは図10に示したような特性であり、吸気圧が大気圧と等しいときに1.0となり、このとき、燃料噴射パルス幅の補正は行われない。つまり、基本噴射パルス幅Tpは、吸気圧が大気圧と等しいときに適合していることになる。
【0041】
吸気圧が大気圧よりも小さくて一回の噴射当たり供給燃料量が大きくなる低負荷時には、補正係数KBSTが1.0より小さな正の値となり、燃料噴射パルス幅が減量側に補正される。また、吸気圧が大気圧に近づく高負荷時には、補正係数KBSTが1.0より小さいが1.0に近い正の値となり、燃料噴射パルス幅が減量側に補正されるけれども、低負荷時ほどは減量補正されない。これにより、燃料噴射弁43の開弁パルス幅が一定であれば、エンジン負荷の状態によらず一回の噴射当たり供給燃料量は変わらないことになる。
【0042】
このように、エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、大気圧が燃料噴射パルス幅(燃料噴射量)の補正にも用いられている。
【0043】
さて、リーク診断許可条件であるか否かを判定するには、またリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うにも、大気圧を計測することが必要となる。
【0044】
この場合に、大気圧を検出するセンサを新たに設けるのでは、コストアップとなるので、エンジンのみを動力源とする車両では、リーク診断に用いる圧力センサ63により、大気圧を検出することが行われている(特開2003−35216号公報参照)。エンジンの運転中にパージコントロールバルブ61が全閉状態にあるときには、キャニスタ側第2通路56aが大気開放口55を介して大気に開放されるため、パージコントロールバルブ61が全閉状態になっているときに、圧力センサ63により検出される流路圧力を大気圧計測値として取り込むのである。
【0045】
このように、エンジンのみを動力源とする車両では、圧力センサ63により大気圧を計測し得るが、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うこの同じエンジンがハイブリッド車両に用いられる場合には、キャニスタ54の圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できない事態が生じることが新たに判明している。すなわち、圧力センサ63により大気圧を計測するには、パージンコントロールバルブ61が全閉状態となる機会を捕らえることである。しかしながら、ハイブリッド車両に用いられるエンジンでは、エンジンのみを動力源とする車両と相違して、車両の走行中にエンジンが運転される機会が少なく、そのためにハイブリッド車両に用いられるエンジンにおいては、エンジンの運転中にキャニスタ54からのガソリン粒子のパージのためパージコントロールバルブ61が開き放しといってもいいほどとなり、パージコントロールバルブ61が全閉状態となる機会がなかなか訪れないのである。それでも、大気圧を計測しようとすると、パージコントロールバルブ61が全閉状態となっていない状態、つまり低パージ流量時の圧力を大気圧計測値として取り込むことである。しかしながら、低パージ流量時(パージ中)であるということは、活性炭54aにガソリン粒子が吸着されていればそれが流路抵抗となりキャニスタ54に圧力損失が生じることを意味しているので、低パージ流量時にモニターした圧力を大気圧計測値としたのでは、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が大気圧計測値に生じてしまう。
【0046】
一方、ハイブリッド車両には、車両の走行中にアイドルストップ許可条件が成立したときにエンジン2を自動的に停止(アイドルストップ)し、その後にアイドルストップ許可条件が成立しなくなったときにエンジン2を自動的に再始動させる機能を有しているので、エンジンの運転が自動停止されるアイドルストップ時にはパージコントロールバルブ61が全閉状態となる。このため、アイドルストップ時(パージ停止中)にモニターした圧力を大気圧計測値とすることも考え得るが、活性炭54aにガソリン粒子が吸着されてキャニスタ54に圧力損失が生じる場合には、アイドルストップ時になったからといって、キャニスタ側第2通路56aの圧力が直ぐには大気圧にならず、応答遅れをもってキャニスタ側第2通路56aの圧力が大気圧へと収束してゆく。従って、この応答遅れ時間をディレイ時間として設定しておき、アイドルストップ時になってからこのディレイ時間経過後の圧力を大気圧計測値として取り込むことで、精度の良い大気圧計測値を得るようにすることが考えられる。
【0047】
しかしながら、この方法では、活性炭54aに吸着されているガソリン粒子が多くなるほど、キャニスタ側第2通路56aの圧力が大気圧に収束するまでの応答遅れ時間が長くなるので、この長くなる応答遅れ時間より短いディレイ時間を設定していれば、大気圧計測値に誤差が生じてしまう。かといって、ディレイ時間を長くしたのでは、アイドルストップ時間が短い場合に大気圧計測値を取り込めない事態が生じる。
【0048】
このように、キャニスタ54を介してパージコントロールバルブ61までの流路に大気を導入する方法にこだわる限り、エンジンが運転される機会の少ないハイブリッド車両においてはキャニスタ54の圧力損失の影響を大きく受けることとなり、大気圧を簡易にかつ精度良く計測できないのである。
【0049】
そこで本実施形態では、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)に大気圧計測値を取り込むようにする点は同じであるが、アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61を開き、このときの流路圧力を大気圧計測値として取り込む。アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61よりエアクリーナ74までの流路には圧力損失の要因となるものが存在しないため、アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61よりエアクリーナ74までの流路の圧力は大気圧になっている。詳細には、エアクリーナ74やスロットル弁42が若干の圧力損失を生じさせるものの、圧力損失としては微小であり問題ないレベルにある。従って、アイドルストップ時にパージコントロールバルブ61を開くだけで第2通路56が大気圧となり、このとき圧力センサ63によりモニターした流路圧力を大気圧計測値として取り込めば、簡易にかつ誤差の少ない大気圧を取得できることとなる。
【0050】
エンジンコントローラ21で実行されるこの制御を以下のフローチャートに基づいて詳述する。
【0051】
図4はエンジン回転中に大気圧を計測するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0052】
ステップ001では圧力センサ63により検出される流路圧力Pを読み込む。
【0053】
ステップ002ではパージコントロールバルブ開度(図では「パージ弁開度」で略記)と閾値を比較する。
【0054】
パージコントロールバルブ61が開かれるのは、主にスロットル弁下流42が大気圧より小さくなる領域(低負荷域)である。この領域でパージコントロールバルブ開度が運転条件に応じて定められている。
【0055】
閾値は、エンジンのみを動力源とする車両ではパージコントロールバルブ61が全閉状態にあるか否かをみるための値であるが、ここでは、ハイブリッド車両に適用されたエンジンであるので、低パージ流量の上限の値とする。従って、パージコントロールバルブ61が全閉状態とならなくても、低パージ流量時であればエンジン回転中大気圧計測値を取り込むことができる。このように、エンジン回転中大気圧計測値を取り込む条件を低パージ流量時にまで拡大したのは、エンジン回転中大気圧計測値を取り込む機会を拡大するためである。この低パージ流量時にはパージ流量がゼロのとき、つまりパージコントロールバルブ61が全閉状態となるときを含んでいる。
【0056】
低パージ流量の上限を定める閾値をどれくらいにするかは適合により定める。せっかく閾値を定めても、車両運転中にパージコントロールバルブ開度が閾値未満に一度もなることがなければ、ステップ007でのエンジン回転中大気圧計測値が得られず、後述する図8ステップ213でのエンジン回転中大気圧を求めることができなくなる、つまりエンジン回転中には大気圧を計測することができなくなってしまう。このため、車両の運転終了までの間に少なくとも一度は、パージコントロールバルブ開度が閾値未満になるように、閾値を定めることが必要である。
【0057】
ただし、低パージ流量時にエンジン回転中大気圧計測値を取り込むこととすると、このときのエンジン回転中大気圧計測値には、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が生じることとなるが、これは後述する大気圧補正量学習値を導入することによって解消することができる。
【0058】
パージコントロールバルブ開度が閾値未満であるときには低パージ流量時にあると判断し、ステップ003に進んで前回はパージコントロールバルブ開度が閾値未満であったか否かをみる。前回はパージコントロールバルブ開度が閾値以上であった、つまり今回パージコントロールバルブ開度が閾値未満となったときには低パージ流量時に切換わったと判断し、ステップ004に進み、大気圧計測ディレイタイマ1を起動する(大気圧計測ディレイタイマ1値=0)。この大気圧計測ディレイタイマ1は、低パージ流量時に切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0059】
ステップ003で前回もパージコントロールバルブ開度が閾値未満であった、つまり継続してパージコントロールバルブ開度が閾値未満であるときにはステップ003よりステップ005に進み、大気圧計測ディレイタイマ1値とディレイ時間1を比較することにより大気圧計測ディレイ条件を満たしているか否かをみる。前回に大気圧計測ディレイタイマ1が起動され、今回、ステップ005に進んできたときには大気圧計測ディレイタイマ1値はディレイ時間1未満である(つまり大気圧計測ディレイ条件を満たしていない)ので、ステップ006に進み、大気圧計測ディレイタイマ1値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0060】
その後も連続してパージコントロールバルブ開度が閾値未満であるときにはステップ006の操作を繰り返すことになり、やがてステップ005において大気圧計測ディレイタイマ1値がディレイ時間1以上となる(大気圧計測ディレイ条件を満たす)。このときにはステップ005よりステップ007に進んで、流路圧力Pをエンジン回転中大気圧計測値に移し、そのエンジン回転中大気圧計測値を所定のメモリにストアする。
【0061】
ディレイ時間1を設けている理由は、次の通りである。すなわち、低パージ流量時に切換わる前には、吸気圧(スロットル弁42下流の圧力)が第2通路56に導かれており、従って低パージ流量時へと切換わった直後にはキャニスタ側パージ通路56aの圧力が安定せず、安定するまでに所定時間を有するので、この所定時間をディレイ時間1として設けているのである。
【0062】
これでエンジン回転中の大気圧の計測を終了するので、ステップ008では大気圧計測終了フラグ1(エンジン始動時にゼロに初期設定)=1とする。
【0063】
一方、ステップ002でパージコントロールバルブ開度が閾値以上となったときにはステップ009に進み、大気圧計測ディレイタイマ1をクリアし(大気圧計測ディレイタイマ1値=0)、エンジン回転中大気圧計測値の取り込みを中止する。
【0064】
このように、低パージ流量時に切換わってから所定のディレイ時間1が経過した後の流路圧力をエンジン回転中大気圧計測値としてストアする。
【0065】
図5はエンジン回転中の大気圧を計測したタイミングからの経過時間を計測するタイマを生成するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。図5のフローは図4のフローに続けて実行する。
【0066】
ステップ111では、図4のフローにより設定されている大気圧計測終了フラグ1をみる。大気圧計測終了フラグ1=1であるときにはステップ112に進み、前回は大気圧計測終了フラグ1=1であったか否かをみる。前回は大気圧計測終了フラグ1=0であった、つまり今回、大気圧計測終了フラグ1=1に切換わったときにはステップ113に進み、大気圧計測後経過時間タイマを起動する(大気圧計測後経過時間タイマ値=0)。大気圧計測後経過時間タイマはエンジン回転中の大気圧を計測したタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0067】
ステップ112で前回も大気圧計測終了フラグ1=1であった、つまり続けて大気圧計測終了フラグ1=1であるときにはステップ112よりステップ114に進み、大気圧計測後経過時間タイマ値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0068】
一方、ステップ111で大気圧計測終了フラグ1=0であるときにはステップ115に進み、大気圧計測後経過時間タイマをクリアする(大気圧計測後経過時間タイマ値=0)。
【0069】
このようにして、大気圧計測後経過時間タイマ値により、エンジン回転中の大気圧を計測したタイミングからの経過時間を計測する。
【0070】
図6はアイドルストップ時に大気圧を計測するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0071】
ステップ101では圧力センサ63により検出される流路圧力Pを読み込む。
【0072】
ステップ102ではアイドルストップ許可条件であるか否かをみる。アイドルストップ許可条件は、例えば次の〔1〕〜〔5〕の全ての条件を満たすことである(特開2004−076599公報参照)。
【0073】
〔1〕水温センサ37により検出されるエンジンの冷却水温が適正な範囲にあること( 例えば暖機完了後)。
【0074】
〔2〕充電要求が出ていないこと。
【0075】
〔3〕吸気圧センサ38により検出されるマスターバック(商標)の圧力が所定値以下 であること。
【0076】
〔4〕舵角センサ39により検出される舵角が大きくないこと。
【0077】
〔5〕シフトポジションセンサ36により検出される変速機のシフト位置がRレンジで ないこと。
【0078】
このように、アイドルストップ許可条件として、車速=0km/hかつブレーキが作用していること、という条件は入っていない。つまり、車両の走行中を主としてエンジン2が自動停止され、エンジン自動停止後の再始動も車両の走行中に行われる。
【0079】
〔1〕〜〔5〕の全ての条件を満たすときにはアイドルストップ許可条件であると判断してステップ103に進み、前回はアイドルストップ許可条件であったか否かをみる。前回はアイドルストップ許可条件でなかった、つまり今回初めてアイドルストップ許可条件になったときにはステップ104に進み、エンジン停止後タイマを起動する(エンジン停止後タイマ値=0)。このエンジン停止後タイマは、アイドルストップ許可条件に切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0080】
ステップ105では、大気圧補正量学習値演算済フラグ=0とする。大気圧補正量学習値演算済フラグは後述する図7のフローにおいて必要となるフラグである。アイドルストップ許可条件に切換わったタイミングで大気圧補正量学習値演算済フラグ=0とするのは、アイドルストップ毎に、後述する大気圧補正量学習値を更新するためである(図7参照)。
【0081】
ステップ103で前回もアイドルストップ許可条件であった、つまり継続してアイドルストップ許可条件であるときにはステップ103よりステップ106に進み、エンジン停止後タイマ値とディレイ時間2を比較することによりエンジン停止後ディレイ条件を満たしているか否かをみる。前回にエンジン停止後タイマが起動され、今回、ステップ106に進んできたときにはエンジン停止後タイマ値はディレイ時間2未満である(つまりエンジン停止後ディレイ条件を満たしていない)ので、ステップ107に進み、エンジン停止後タイマ値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0082】
その後も連続してエンジン停止後タイマ値がディレイ時間2未満であるときにはステップ107の操作を繰り返すことになり、やがてステップ106においてエンジン停止後タイマ値がディレイ時間2以上となる(エンジン停止後ディレイ条件を満たす)。このときにはステップ106よりステップ108に進んで、前回はエンジン停止後ディレイ条件を満たしたか否かをみる。前回はエンジン停止後ディレイ条件を満たしていなかった、つまり今回、エンジン停止後ディレイ条件を満たしたときにはステップ109、110に進み、パージコントロールバルブ61を全開状態(あるいは所定のパージコントロールバルブ開度状態)とする要求を出力すると共に、大気圧計測ディレイタイマ2を起動する(大気圧計測ディレイタイマ2値=0)。この大気圧計測ディレイタイマ2は、パージコントロールバルブ61が全開状態に切換わったタイミングからの経過時間を計測するためのものである。
【0083】
このようにして、アイドルストップ許可条件が成立してからディレイ時間2の経過後に、パージコントロールバルブ61を全閉状態より全開状態へと切換える。
【0084】
アイドルストップ許可条件が成立したタイミングでパージコントロールバルブ61を全開状態とするのでなく、ディレイ時間2だけ待つようにしている理由は、次の通りである。すなわち、アイドルストップ許可条件が成立する前には、エンジンを運転しており、このエンジン運転中に吸気圧が第2通路56に導かれている。従って、アイドルストップ許可条件が成立してエンジンを自動停止させると共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態とした直後にはまだキャニスタ側第2通路56aは大気圧より低い圧力状態にある。この場合に、活性炭54aにたくさんのガソリン粒子が吸着されていたり活性炭54aに汚れが生じていたりして、キャニスタ54に大きな圧力損失が生じていれば、キャニスタ側第2通路56aの圧力が応答遅れをもって大気圧へと戻るので、この応答遅れ時間をディレイ時間2として設けているのである。応答遅れ時間は、キャニスタ54の状態(活性炭54aに吸着されているガソリン粒子の量や活性炭54aの汚れの程度)に依存するので、最適な値をディレイ時間2として設定する。この結果、アイドルストップ許可条件が成立してからディレイ時間2の経過後には、キャニスタ側第2通路56aは大気圧状態となっている。
【0085】
ステップ108で前回もエンジン停止後タイマ値がディレイ時間2以上である(エンジン停止後ディレイ条件を満たしていた)ときにはステップ108よりステップ111に進み、大気圧計測ディレイタイマ2値とディレイ時間3を比較することにより大気圧計測ディレイ条件を満たしているか否かをみる。前回に大気圧計測ディレイタイマ2が起動され、今回、ステップ108、111と進んできたときには大気圧計測ディレイタイマ2値はディレイ時間3未満である(つまり大気圧計測ディレイ条件を満たしていない)ので、ステップ112に進み、大気圧計測ディレイタイマ2値を演算周期(100ms)の分だけインクリメントする。
【0086】
その後も連続して大気圧計測ディレイタイマ2値がディレイ時間3未満であるときにはステップ111、112の操作を繰り返すことになり、やがてステップ111において大気圧計測ディレイタイマ2値がディレイ時間3以上となる(大気圧計測ディレイ条件を満たす)。このときにはステップ111よりステップ113に進んで、流路圧力Pをアイドルストップ時大気圧計測値に移し、そのアイドルストップ時大気圧計測値を所定のメモリにストアする。
【0087】
このようにして、パージコントロールバルブ61を全開状態としてからディレイ時間3の経過後の流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込む。
【0088】
パージコントロールバルブ61を全開状態としたタイミングでの流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込むのでなく、ディレイ時間3だけ待った後の流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込むようにしている理由は、次の通りである。すなわち、エンジンを自動停止させた後に、キャニスタ側第2通路56aの圧力が大気圧へと戻ったタイミングでパージコントロールバルブ61を全開状態としても、エアクリーナ74よりパージコントロールブルブ61までの流路の圧力が直ぐには大気圧に戻らない場合があることが理論的には考え得る(例えばエアクリーナ74の目詰まりなど)。この場合には、エアクリーナ74よりパージコントロールブルブ61までの流路の圧力が応答遅れをもって大気圧へと戻るので、この応答遅れ時間をディレイ時間3として設けているのである。ディレイ時間3としては適当な値を設定しておく。この結果、パージコントロールバルブ61を全開状態としてからディレイ時間3の経過後には、第2通路56は大気圧状態となっており、このときの流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値として取り込んでいる。
【0089】
ただし、エアクリーナ74よりパージコントロールブルブ61までの流路に、考慮しなければならないほどの圧力損失が生じる場合は希であり、この希な場合を無視できるとすれば、ディレイ時間3=0とすればよい。
【0090】
これでアイドルストップ時の大気圧の計測を終了するので、ステップ114、115では大気圧計測終了フラグ2(エンジン始動時にゼロに初期設定)=1とすると共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態とする要求を出力する。
【0091】
一方、ステップ102でアイドルストップ許可条件でないときにはステップ116、117、118に進み、エンジン停止後タイマと大気圧計測ディレイタイマ2をクリアする(エンジン停止後タイマ値=0、大気圧計測ディレイタイマ2値=0)と共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態とする要求を出力する。また、途中でアイドルストップ許可条件でなくなったときにも、ステップ102よりステップ116、118の操作を実行して、アイドルストップ時大気圧計測値の取り込みを中止する。
【0092】
このように、アイドル許可条件が成立してエンジンを自動停止させると共に、パージコントロールバルブ61を全閉状態としたタイミングよりディレイ時間2が経過したとき、パージコントロールバルブ61を全開状態(または所定のパージコントロールバルブ開度状態)に切換え、かつパージコントロールバルブ61を全開状態に切換えてからディレイ時間3が経過したタイミングでの流路圧力をアイドルストップ時大気圧計測値としてメモリにストアする。
【0093】
図7は大気圧補正量学習値を演算するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。図7のフローは図6のフローに続けて実行する。
【0094】
ステップ121では、大気圧補正量学習値演算済フラグをみる。この大気圧補正量学習値演算済フラグは、車両の運転に際してイグニッションスイッチをOFFよりONへと切換えたときにゼロに初期設定されるフラグである。ここでは、大気圧補正量学習値演算済フラグ=0であるとして、ステップ122以降に進む。
【0095】
ステップ122〜125では次の〈1〉〜〈4〉の4つの条件を満たすか否かをみる。次の〈1〉〜〈4〉の4つの条件を全て満たすときには大気圧補正量学習値の更新条件(学習条件)が成立したと判断してステップ126以降に進み、これに対して次の4つの条件のうちいずかでも満たさないときには大気圧補正量学習値の更新条件が成立していないと判断しそのまま今回の処理を終了する。
【0096】
〈1〉アイドルストップ許可条件であること(ステップ122)。
【0097】
〈2〉図5のフローにおいて生成されている大気圧計測後経過時間タイマ値が学習許可 時間未満であること(ステップ123)。
【0098】
〈3〉大気圧計測終了フラグ1=1であること(ステップ124)。
【0099】
〈4〉大気圧計測終了フラグ2=1であること(ステップ125)。
【0100】
上記〈3〉、〈4〉を条件とするのは、今回のアイドルストップ時にエンジン回転中大気圧計測値、アイドルストップ時大気圧計測値の両方を得ていることを確かめるものである。上記〈2〉を条件とするのは次の理由からである。すなわち、エンジン回転中大気圧計測値及びアイドルストップ時大気圧計測値の両方を得ていても、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングと、アイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングとの間に大きな時間差があればその間に、車両状態や環境条件(高度)が大きく変化していることが有り得る。例えば大気圧は高度の影響を大きく受けるため、車両状態が同じでも、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングの後に車両が急勾配の坂を上ったり下ったりしてアイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングに達していれば、2つのタイミングの間の高度差の分だけアイドルストップ時大気圧計測値に誤差が生じる。そこで、学習許可時間としてあまり長くならない時間を設定しておけば、2つの大気圧計測値を得たタイミングでの車両状態や環境条件(高度)がほぼ同じであるとみなせるためである。言い換えると、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングの直ぐ後にアイドルストップに移行し、このアイドルストップ時にアイドルストップ時大気圧計測値を得たときに〈2〉の条件が成立してステップ126以降に進むことになる。
【0101】
ステップ126では、図4のステップ007で得ているエンジン回転中大気圧計測値と、図6のステップ113で得ているアイドルストップ時大気圧計測値とを用いて、次式により大気圧補正量を演算する。
【0102】
大気圧補正量=アイドルストップ時大気圧計測値−エンジン回転中大気圧計測値
…(2)
上記のように、図4のステップ002、003の閾値には低パージ流量の上限の値を採用しているため、(2)式右辺のエンジン回転中大気圧計測値には、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が生じている。従って、(2)式により、そのときのキャニスタ54の圧力損失分を大気圧補正量として求めていることとなる。また、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングと、アイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングとの間に、車両状態や環境条件(高度)が大きく変化していることはないので、(2)式によりキャニスタ54の圧力損失分としての大気圧補正量を精度良く求めることができている。
【0103】
ステップ127では、この大気圧補正量の加重平均値を大気圧補正量学習値として、つまり次式により大気圧補正量学習値を演算し、その演算した大気圧補正量学習値がアイドルストップを終了してエンジンを自動的に再始動させた後にも消失しないように、ステップ128においてEEPROMなどの所定のメモリにストアする。
【0104】
大気圧補正量学習値=大気圧補正量学習値(前回値)×(1−学習係数)
+大気圧補正量×学習係数 …(3)
ただし、大気圧補正量学習値(前回値):大気圧補正量学習値の前回値、
学習係数 :0〜1までの間の定数、
ここで、大気圧補正量学習値(前回値)の初期値としては適当な値を入れておく。
【0105】
これで大気圧補正量学習値の演算を終了するので、次回のアイドルストップ時に備えるため、ステップ129で大気圧補正量学習値演算済フラグ=1とする。この大気圧補正量学習値演算済フラグ=1により、次回よりステップ121よりステップ122以降に進むことができない。すなわち、イグニッションスイッチをONにして車両の運転を開始し、その後のアイドルストップ時に大気圧補正量学習値を得た後は、次のアイドルストップ時になるまで、その大気圧補正量学習値を保持しておく。そして、次のアイドルストップ時になったときには図6のステップ105で大気圧補正量学習値演算済フラグ=0とされるために、図7においてステップ121よりステップ122以降に進むことが可能となり、ステップ122〜125の条件を全て満たしていれば、ステップ126、127で大気圧補正量学習値が更新される。
【0106】
このように、アイドルストップ時になるたびに、大気圧補正量を演算し、大気圧補正量が演算されたときに大気圧補正量学習値に加重平均していくことで、キャニスタ54の現在の圧力損失に応じた大気圧補正量学習値を得ることができる。
【0107】
図8は大気圧を演算するためのもので、エンジン回転中、アイドルストップ時に関係なく、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0108】
ステップ211ではエンジン回転中であるか否かをみる。エンジン回転中であるときにはステップ212に進み、大気圧計測終了フラグ1をみる。大気圧計測終了フラグ1=1であればエンジン回転中大気圧計測値が得られているので、ステップ213に進み、そのエンジン回転中大気圧計測値に、図7のステップ128でメモリに格納されている大気圧補正量学習値を加算した値を大気圧として、つまり次式により大気圧を算出する。
【0109】
大気圧=エンジン回転中大気圧計測値+大気圧補正量学習値
…(4)
上記したところを繰り返すと、図4のステップ002、003の閾値には低パージ流量の上限の値を採用しているため、エンジン回転中大気圧計測値には、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が生じている。従って、上記(2)式により、そのときのキャニスタ54の圧力損失分を大気圧補正量として求めていることとなる。また、エンジン回転中大気圧計測値を得たタイミングと、アイドルストップ時大気圧計測値を得たタイミングとの間に、車両状態や環境条件(高度)が大きく変化していることはないので、上記(2)式によりキャニスタ54の圧力損失分としての大気圧補正量を精度良く求めることができている。
【0110】
従って、エンジン回転中大気圧計測値にキャニスタ54の圧力損失分の誤差があっても、(4)式のように、このキャニスタ54の圧力損失分の誤差があるエンジン回転中大気圧計測値に、キャニスタ54の圧力損失分としての大気圧補正量学習値を加算することで、エンジン回転中においても精度良く大気圧を得ることができる。
【0111】
ステップ212で大気圧計測終了フラグ1=0であるときにはエンジン回転中大気圧計測値がまだ得られていないので、そのまま処理を終了する。
【0112】
ステップ211でエンジン回転中でない(つまりアイドルストップ時である)ときにはステップ214に進み、大気圧計測終了フラグ2をみる。大気圧計測終了フラグ2=1であればアイドルストップ時大気圧計測値が得られているので、ステップ215に進み、そのアイドルストップ時大気圧計測値を大気圧とする。アイドルストップ時には、パージコントロールバルブ61を開くことで、吸気管57を介してキャニスタ側第2通路56aに大気圧を導入し、このときの流路圧力を大気圧計測値(アイドルストップ時大気圧計測値)として取り込んでいるので、キャニスタ54の圧力損失の影響を受けることがなく、従って、アイドルストップ時にも、精度良く大気圧を得ることができている。
【0113】
ステップ215で大気圧計測終了フラグ2=0であるときにはアイドルストップ時大気圧計測値がまだ得られていないので、そのまま処理を終了する。
【0114】
このようにして、エンジン回転中とアイドルストップ時のそれぞれにおいて大気圧が精度良く得られることとなった。こうして得られる大気圧は、直ぐ後に述べるエンジン制御(燃料噴射パルス幅の演算とリーク診断許可フラグの設定)に用いる。
【0115】
図9は燃料噴射パルス幅Tiを演算するためのもので、エンジンコントローラ22がバックグランドジョブで一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0116】
ステップ301ではエンジン回転中であるか否かをみる。エンジン回転中であるときにはステップ302に進み、吸気圧センサ38により検出されている吸気圧と、図8のフローにより演算されている大気圧とを読み込む。このときの大気圧は、図8のステップ213で得られている大気圧である。
【0117】
ステップ303ではこれら吸気圧、大気圧から次式により圧力差を演算し、この圧力差からステップ304において図10を内容とするテーブルを検索して補正係数KBSTを演算する。
【0118】
圧力差=大気圧−吸気圧 …(5)
ステップ305ではこの補正係数KBSTを用いて、例えば上記(1)式によりシーケンシャル噴射時の燃料噴射パルス幅Tiを演算する。
【0119】
図10に示したように、低負荷時には吸気圧が大気圧よりも小さな値となるため、補正係数KBSTは、1.0より小さな正の値となり、これに対して高負荷には吸気圧が大気圧に近い値となるため、補正係数KBSTは、低負荷時よりも1.0に近い正の値となる。つまり、低負荷時、高負荷時とも1.0より小さな正の値である補正係数KBSTにより基本噴射パルス幅Tpが減量補正されるのであるが、低負荷時のほうが補正係数KBSTが小さい分だけ基本噴射パルス幅Tpの減量補正量が大きくなっている。
【0120】
一方、エンジン回転中でないとき(アイドルストップ時)にはエンジンを自動停止するためステップ306に進み、無効噴射パルス幅Tsを燃料噴射パルス幅Tiとする。このとき、燃料噴射弁43より燃料が噴射されない。
【0121】
上記(1)式のTp、Tfbya、Kathos、α、αm、Tsは周知の値である。主な値について簡単に説明すると、基本噴射パルス幅Tpはエアフローメータ73(図3参照)により検出される吸入空気量Qaをエンジン回転速度で除算した値に定数Kを乗算して得られる値で、この基本噴射パルス幅Tpにより基本空燃比(ほぼ理論空燃比に等しい)の混合気が得られる。実際にはエアフローメータ73の流量特性や燃料噴射弁43の流量特性に製作バラツキや経時劣化が生じ、空燃比が理論空燃比を外れてバラツク。このバラツキを抑えるための値が、排気の空燃比を検出する酸素センサ75(図3参照)出力に基づいて演算される空燃比フィードバック補正係数αで、排気の空燃比が理論空燃比よりリッチ側になっていれば、この空燃比フィードバック補正係数αが1.0より小さくなって、基本噴射パルス幅Tpを減量補正することにより、空燃比を理論空燃比の近傍へと戻す。この逆に、排気の空燃比が理論空燃比よりリーン側になっていれば、この空燃比フィードバック補正係数αが1.0より大きくなって、基本噴射パルス幅Tpを増量補正することにより、空燃比を理論空燃比の近傍へと戻す。
【0122】
目標当量比Tfbyaは、理論空燃比よりもリーン側の空燃比でエンジンを運転する場合に必要となる値で、例えばリーン運転域では、目標当量比Tfbyaが1.0より小さな正の値となり、この1.0より小さな正の値の目標当量比Tfbyaにより、基本噴射パルス幅Tpが減量補正される。燃料噴射弁43からの噴射燃料はその全部が気流に乗って燃焼室に流入するのではなく、一部が吸気ポートや吸気弁傘裏部に付着して壁流燃料を形成し、ゆっくりと燃焼室へ流入する。この壁流燃料の量が過渡時に大きな応答遅れを有し、そのために空燃比が影響を受けるので、この壁流燃料の過渡時における燃焼室への供給遅れを補正するための値が過渡補正量Kathosである。燃料噴射弁43の実際の開弁幅はバッテリ電圧の影響を受け、同じ基本噴射パルス幅Tpを指示しても、バッテリ電圧の低下時には実際の開弁幅が小さくなり、望みの空燃比が得られなくなるので、バッテリ電圧が低下したときにも望みの空燃比が得られるようにするための値が無効噴射パルス幅Tsである。
【0123】
図11はリーク診断許可フラグを設定するためのもので、エンジンコントローラ22が一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
【0124】
ステップ401、402は、図9のステップ301、302と同様である。すなわち、ステップ401ではエンジン回転中であるか否かをみる。エンジン回転中であるときにはステップ402に進み、基本噴射パルス幅Tpと、水温センサ37により検出される冷却水温Twと、図8のフローにより演算されている大気圧とを読み込む。このときの大気圧は、図8のステップ213で得られている大気圧である。
【0125】
ステップ403〜405では、次の〈5〉〜〈7〉の3つの条件を満たすか否かをみる。次の〈5〉〜〈7〉の3つの条件を全て満たすときにはリーク診断許可条件が成立したと判断し、ステップ406に進んでリーク診断許可フラグ=1とし、これに対して次の3つの条件のうちいずかでも満たさないときにはリーク診断許可条件が成立していないと判断し、ステップ407に進んでリーク診断許可フラグ=0(リーク診断禁止)とする。
【0126】
〈4〉基本噴射パルス幅Tpが所定値1以下であること(ステップ403)。
【0127】
〈5〉冷却水温Twが所定値2以上であること(ステップ404)。
【0128】
〈6〉大気圧が所定値3以上、つまり大略2400mを超える高地にないこと(ステッ プ405)。
【0129】
〈4〉で基本噴射パルス幅Tpが所定値1以下、つまり低負荷時である(吸気圧が大気圧よりも低い圧力状態となる)ことを条件とするのは、活性炭54aに吸着されているガソリン粒子を吸気管57に導くには、第2通路56を大気圧よりも低い圧力状態とする必要があるためである。〈5〉で冷却水温Twが所定値2未満、つまりエンジン暖機完了後の状態にないときを条件としないのは、次の理由からである。すなわち、エンジン暖機完了後の状態になく、もともと燃焼が不安定であるときに、ガソリン粒子の混じった新気(パージガス)を導入したのでは、燃焼をさらに悪化させてしまうためである。〈6〉で大気圧が所定値3未満であるときを条件としないのは、リークが生じているか否かの判定に誤判定が生じるのを避けるためである。
【0130】
このようにして設定したリーク診断許可フラグは図示しないリーク診断のルーチンにおいて用いられる。リーク診断許可フラグ=1であるときには、ドレンカットバルブ62とパージコントロールバルブ61とを閉じて燃料タンク51よりパージコントロールバルブ61までの流路を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした閉空間とし、かつその閉空間を大気圧に対して相対的に圧力差のある状態とした後の圧力変化に基づいてリークがあるか否かの診断が行われる。こうしたリーク診断の途中で、車両が2400mを超える高地に移動したときには、リーク診断許可フラグ=0となるため、リーク診断の途中であってもリーク診断が禁止される。
【0131】
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
【0132】
パージコントロールバルブ61よりキャニスタ54の大気開放口55までの流路には圧力損失の要因となるキャニスタ54が存在するのに対して、パージコントロールバルブ61より吸気管57上流のエアクリーナ74までの流路には圧力損失の要因となるものが存在しないため、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)にパージコントロールバルブ61より吸気管57上流のエアクリーナ74までの流路の圧力は大気圧になっている。本実施形態(請求項1、9に記載の発明)によれば、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)にパージコントロールバルブ61を開いて、パージコントロールバルブ61より吸気管57上流のエアクリーナ74までの流路に存在する大気圧をパージ通路56に導くので(図6のステップ109参照)、圧力センサ63(圧力検出手段)が直ぐに大気圧に接することになり、簡易にかつ精度良く大気圧を求めることができる。アイドルストップ時になるたびに、誤差の少ない大気圧計測値を取得できる。言い換えると、第2通路56aは、キャニスタ54の大気開放口55を介して大気に連通しているだけでなく、吸気管57を介しても大気に連通しているのであるから、吸気管57からの大気の導入を行わせることによって、キャニスタ54の圧力損失に関係なく、簡易にかつ誤差の少ない大気圧を取得できるのである。
【0133】
本実施形態(請求項3、11に記載の発明)によれば、エンジン回転中の低パージ流量時の流路圧力をエンジン回転中大気圧計測値として記憶することで(図4のステップ002、003、005、007参照)、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンがハイブリッド車両に用いられる場合においても、エンジン回転中での大気圧圧計測値の取り込みの機会が拡大する。
【0134】
ただし、低パージ流量時(パージ中)であるということは、活性炭54aにガソリン粒子が吸着されていればキャニスタ54に圧力損失が生じることを意味しているので、低パージ流量時にモニターした圧力を、そのまま大気圧計測値としたのでは、キャニスタ54の圧力損失分の誤差が大気圧計測値に生じてしまうのであるが、本実施形態(請求項3、11に記載の発明)によれば、アイドルストップ時(エンジンの自動停止時)にアイドルストップ時大気圧計測値(エンジン自動停止時大気圧計測値)とエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出しており(図7のステップ122、126参照)、この大気圧補正量はキャニスタ54の圧力損失分を表している。従って、算出した大気圧補正量をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出することで(図8のステップ211、212、213参照)、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンがハイブリッド車両に用いられる場合において、エンジン回転中の低パージ流量時での大気圧計測値の取り込みの機会がある限り、エンジン回転中においても大気圧を精度良く求めることができる。
【0135】
本実施形態(請求項4、12に記載の発明)によれば、アイドルストップ時毎(エンジンの自動停止時毎)に大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算し(図7のステップ127参照)、この大気圧補正量学習値をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するので(図8のステップ211、212、213参照)、キャニスタ54からのガソリン粒子のパージが進んでキャニスタ54の圧力損失分が小さくなる側に変化していく場合にも、その変化していく圧力損失分をアイドルストップ時毎(エンジンの自動停止時毎)に大気圧補正量学習値に反映させることが可能となり、エンジンの運転中にキャニスタ54の圧力損失分が小さくなる側に変化していく場合であっても、精度の良い大気圧を得ることができる。
【0136】
エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、エンジン回転中の大気圧計測値に計測誤差があれば、その大気圧計測値の計測誤差に応じた誤差が燃料噴射パルス幅Ti(燃料噴射量)に生じてしまうのであるが、本実施形態(請求項7、15に記載の発明)によれば、エンジン回転中の大気圧を燃料噴射パルス幅の補正に用いるので(図9のステップ301、302、303、304、305参照)、リターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合においても、大気圧計測値の計測誤差に伴う燃料噴射量の誤差を防止できる。
【0137】
本実施形態(請求項8、16に記載の発明)によれば、エンジン回転中の大気圧をリーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いるので(図11のステップ401、405、406、407参照)、蒸発燃料処理装置を備えリーク診断を行うエンジンにおいて、リーク診断に用いる圧力センサ63により大気圧を計測する場合においても、リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に誤判定が生じることを避けることができる。
【0138】
実施形態では、モータとエンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させるハイブリッド車両の場合で説明したが、エンジンのみを駆動源とする車両であって、所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両にも本発明の適用がある(請求項1、9に記載の発明)。
【0139】
実施形態では、エンジンの自動停止時毎(アイドルストップ時毎)に大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算し、この大気圧補正量学習値をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出する場合で説明したが、大気圧補正量学習値を導入することなく、エンジンの自動停止時毎にエンジン自動停止時大気圧計測値とエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出し、この算出した大気圧補正量をエンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するようにしてもかまわない(請求項3、11に記載の発明)。
【0140】
実施形態では、エンジン回転中にはエンジン回転中大気圧を大気圧として、またアイドルストップ時にはアイドルストップ時大気圧計測値を大気圧として設定しているが、こうした用い方に限られるものでなく、環境条件(高度)が殆ど同じであるとみなせる場合には、アイドルストップ時大気圧計測値をエンジン回転中の大気圧として用いることができる(請求項5、6、13、14に記載の発明)。または、エンジン回転中大気圧計測値に大気圧補正量学習値(あるいは大気圧補正量)を加算した値をアイドルストップ時の大気圧として用いることができる。また、アイドルストップ時大気圧計測値のほうを優先して使用することも考えられる。
【0141】
請求項1に記載のリーク診断処理手順はエンジンコントローラ22により、開弁処理手順は図6のステップ102、109により、エンジン自動停止時大気圧計測値取込処理手順は図6のステップ102、113によりそれぞれ果たされている。
【0142】
請求項7に記載のリーク診断手段の機能はエンジンコントローラ22により、開弁手段の機能は図6のステップ102、109により、エンジン自動停止時大気圧計測値取込手段の機能は図6のステップ102、113によりそれぞれ果たされている。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1実施形態の車両の制御装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1実施形態の車両の制御系統の概略構成図。
【図3】エンジンが備える蒸発燃料処理装置の制御系統の概略構成図。
【図4】エンジン回転中の大気圧の計測を説明するためのフローチャート。
【図5】エンジン回転中大気圧計測後経過時間タイマの生成を説明するためのフローチャート。
【図6】アイドルストップ時の大気圧の計測を説明するためのフローチャート。
【図7】大気圧補正量学習値の演算を説明するためのフローチャート。
【図8】大気圧の演算を説明するためのフローチャート。
【図9】燃料噴射パルス幅の演算を説明するためのフローチャート。
【図10】補正係数の特性図。
【図11】リーク診断許可フラグの設定を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0144】
2 エンジン
22 エンジンコントローラ
51 燃料タンク
54 キャニスタ
56 第2通路(パージ通路)
57 吸気管
61 パージコントロールバルブ
62 ドレンカットバルブ
63 圧力センサ(圧力検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、
前記エンジンが、
燃料タンクで発生する燃料蒸気を導いて吸着させるキャニスタと、
このキャニスタとスロットル弁下流の吸気管とを連通するパージ通路と、
このパージ通路を開閉するパージコントロールバルブと、
前記キャニスタの大気開放口を開閉するドレンカットバルブと、
前記燃料タンクより前記パージコントロールバルブまでの流路の圧力を検出する圧力検出手段と
を備え、
リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ、ドレンカットバルブ及び圧力検出手段を用いてリークがあるか否かの診断を行うリーク診断処理手順と、
エンジンの前記自動停止時に前記パージコントロールバルブを開く開弁処理手順と、
この開弁処理手順によりパージコントロールバルブを開いたとき、前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込むエンジン自動停止時大気圧計測値取込処理手順と
を含むことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
モータを備え、このモータと前記エンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
エンジン回転中の低パージ流量時に前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン回転中大気圧計測値として記憶するエンジン回転中大気圧計測値記憶処理手順と、
エンジンの前記自動停止時に前記エンジン自動停止時大気圧計測値とこのエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出する大気圧補正量算出処理手順と、
この算出した大気圧補正量を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出処理手順と
を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
エンジンの前記自動停止時毎に前記大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算する大気圧補正量学習値演算処理手順と、
この大気圧補正量学習値を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出処理手順と
を含むことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン自動停止時大気圧計測値を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項6】
前記エンジン自動停止時大気圧計測値を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項7】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン回転中の大気圧を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項3または4に記載の車両の制御方法。
【請求項8】
前記エンジン回転中の大気圧を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項3または4に記載の車両の制御方法。
【請求項9】
所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、
前記エンジンが、
燃料タンクで発生する燃料蒸気を導いて吸着させるキャニスタと、
このキャニスタとスロットル弁下流の吸気管とを連通するパージ通路と、
このパージ通路を開閉するパージコントロールバルブと、
前記キャニスタの大気開放口を開閉するドレンカットバルブと、
前記燃料タンクより前記パージコントロールバルブまでの流路の圧力を検出する圧力検出手段と
を備え、
リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ、ドレンカットバルブ及び圧力検出手段を用いてリークがあるか否かの診断を行うリーク診断手段と、
エンジンの前記自動停止時に前記パージコントロールバルブを開く開弁手段と、
この開弁手段によりパージコントロールバルブを開いたとき、前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込むエンジン自動停止時大気圧計測値取込手段と
を含むことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項10】
モータを備え、このモータと前記エンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させることを特徴とする請求項9に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
エンジン回転中の低パージ流量時に前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン回転中大気圧計測値として記憶するエンジン回転中大気圧計測値記憶手段と、
エンジンの前記自動停止時に前記エンジン自動停止時大気圧計測値とこのエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出する大気圧補正量算出手段と、
この算出した大気圧補正量を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出手段と
を含むことを特徴とする請求項10に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
エンジンの前記自動停止時毎に前記大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算する大気圧補正量学習値演算手段と、
この大気圧補正量学習値を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出手段と
を含むことを特徴とする請求項11に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン自動停止時大気圧計測値を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項9または10に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
前記エンジン自動停止時大気圧計測値を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項9または10に記載の車両の制御装置。
【請求項15】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン回転中の大気圧を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項11または12に記載の車両の制御装置。
【請求項16】
前記エンジン回転中の大気圧を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項11または12に記載の車両の制御装置。
【請求項1】
所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、
前記エンジンが、
燃料タンクで発生する燃料蒸気を導いて吸着させるキャニスタと、
このキャニスタとスロットル弁下流の吸気管とを連通するパージ通路と、
このパージ通路を開閉するパージコントロールバルブと、
前記キャニスタの大気開放口を開閉するドレンカットバルブと、
前記燃料タンクより前記パージコントロールバルブまでの流路の圧力を検出する圧力検出手段と
を備え、
リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ、ドレンカットバルブ及び圧力検出手段を用いてリークがあるか否かの診断を行うリーク診断処理手順と、
エンジンの前記自動停止時に前記パージコントロールバルブを開く開弁処理手順と、
この開弁処理手順によりパージコントロールバルブを開いたとき、前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込むエンジン自動停止時大気圧計測値取込処理手順と
を含むことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
モータを備え、このモータと前記エンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
エンジン回転中の低パージ流量時に前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン回転中大気圧計測値として記憶するエンジン回転中大気圧計測値記憶処理手順と、
エンジンの前記自動停止時に前記エンジン自動停止時大気圧計測値とこのエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出する大気圧補正量算出処理手順と、
この算出した大気圧補正量を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出処理手順と
を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
エンジンの前記自動停止時毎に前記大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算する大気圧補正量学習値演算処理手順と、
この大気圧補正量学習値を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出処理手順と
を含むことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン自動停止時大気圧計測値を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項6】
前記エンジン自動停止時大気圧計測値を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項7】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン回転中の大気圧を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項3または4に記載の車両の制御方法。
【請求項8】
前記エンジン回転中の大気圧を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項3または4に記載の車両の制御方法。
【請求項9】
所定の運転条件が成立したときにエンジンを自動停止し、別の所定の運転条件が成立したときエンジンを自動的に再始動する機能を有する車両において、
前記エンジンが、
燃料タンクで発生する燃料蒸気を導いて吸着させるキャニスタと、
このキャニスタとスロットル弁下流の吸気管とを連通するパージ通路と、
このパージ通路を開閉するパージコントロールバルブと、
前記キャニスタの大気開放口を開閉するドレンカットバルブと、
前記燃料タンクより前記パージコントロールバルブまでの流路の圧力を検出する圧力検出手段と
を備え、
リーク診断許可条件が成立したとき、これらパージコントロールバルブ、ドレンカットバルブ及び圧力検出手段を用いてリークがあるか否かの診断を行うリーク診断手段と、
エンジンの前記自動停止時に前記パージコントロールバルブを開く開弁手段と、
この開弁手段によりパージコントロールバルブを開いたとき、前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン自動停止時大気圧計測値として取り込むエンジン自動停止時大気圧計測値取込手段と
を含むことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項10】
モータを備え、このモータと前記エンジンの少なくとも1つを用いて車両を駆動させることを特徴とする請求項9に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
エンジン回転中の低パージ流量時に前記圧力検出手段により検出される流路の圧力をエンジン回転中大気圧計測値として記憶するエンジン回転中大気圧計測値記憶手段と、
エンジンの前記自動停止時に前記エンジン自動停止時大気圧計測値とこのエンジン回転中大気圧計測値との圧力差を大気圧補正量として算出する大気圧補正量算出手段と、
この算出した大気圧補正量を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出手段と
を含むことを特徴とする請求項10に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
エンジンの前記自動停止時毎に前記大気圧補正量に基づいて大気圧補正量学習値を演算する大気圧補正量学習値演算手段と、
この大気圧補正量学習値を前記エンジン回転中大気圧計測値に加算した値をエンジン回転中の大気圧として算出するエンジン回転中大気圧算出手段と
を含むことを特徴とする請求項11に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン自動停止時大気圧計測値を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項9または10に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
前記エンジン自動停止時大気圧計測値を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項9または10に記載の車両の制御装置。
【請求項15】
前記エンジンがリターンレス方式の燃料供給ラインを用いて燃料噴射制御を行うエンジンである場合に、前記エンジン回転中の大気圧を燃料噴射量の補正に用いることを特徴とする請求項11または12に記載の車両の制御装置。
【請求項16】
前記エンジン回転中の大気圧を前記リーク診断許可条件が成立したか否かの判定に用いることを特徴とする請求項11または12に記載の車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−239549(P2007−239549A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61365(P2006−61365)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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