車両の障害物表示装置
【課題】前方障害物の危険性を運転者が瞬時に判断することができる。
【解決手段】障害物表示装置は、自車両と前方障害物との位置関係を検出し(ステップS2)、その位置関係に基づいて、当該前方障害物の自車両に対する衝突可能性を判定し(ステップS3〜ステップS5)、衝突可能性ありと判定した前方障害物について予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を撮像画像に重畳して画像表示する(ステップS6、ステップS7)。
【解決手段】障害物表示装置は、自車両と前方障害物との位置関係を検出し(ステップS2)、その位置関係に基づいて、当該前方障害物の自車両に対する衝突可能性を判定し(ステップS3〜ステップS5)、衝突可能性ありと判定した前方障害物について予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を撮像画像に重畳して画像表示する(ステップS6、ステップS7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両に対する障害物の存在を運転者に画像表示により報知する車両の障害物表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の障害物表示装置として、赤外線カメラにより撮像した障害物に関する撮像画像と、レーダで検出した当該障害物と自車両との位置関係とをディスプレイに表示するものがある(例えば特許文献1参照)。この車両の障害物表示装置では、具体的には、ディスプレイ上で車線区分線の輪郭を強調表示したり、障害物の移動方向を矢印にて表示したりすることで、当該ディスプレイ表示から運転者が障害物の位置を容易に判別できるようにしている。例えば、障害物の移動方向を矢印で表示することで、自車両に対して危険性のある障害物を運転者が容易に判別できるようになる。
【特許文献1】特開2001−101596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の障害物表示装置では、障害物の移動方向を矢印で表示しているだけなので、当該障害物について危険性(衝突可能性)があるのか否かを運転者は瞬時に判断できない。また、障害物が複数存在すれば、各障害物毎に移動方向に矢印を表示することになる。しかし、これでは、各障害物について運転者がその危険性を瞬時に判断することが困難となる。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、障害物の危険性を運転者が瞬時に判断することができる障害物表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の車両の障害物表示装置は、自車両と衝突可能性のある障害物を含む自車両周囲の撮像画像に、当該障害物の予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を重畳して、画像表示する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の車両の障害物表示装置によれば、障害物の危険性を運転者が瞬時に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
第1の実施形態は、本発明に係る車両の障害物表示装置を搭載した車両である。
この車両は、車両の障害物表示装置として、図1に示すように、カメラ1、レーダ2、ナビゲーション装置3、車速センサ4、ヨーレイトセンサ5、ステアリングセンサ6、ターンシグナル7、コントローラ8、表示装置9及び警報装置(音声出力装置)10を備えている。
【0007】
図2は、コントローラ8で行う演算処理手順を示す。演算処理は、例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって実行される。なお、この図2に示す処理内には通信処理を設けていないが、演算処理によって得られた情報は随時記憶装置に更新記憶されると共に、必要な情報は随時記憶装置から読出される。
先ずステップS1において、各種データを読み込む。具体的には、自車両周囲のデータとして、カメラ2から自車両前方の撮像画像、レーダ(特に前方レーダ)1から前方車両等の障害物(以下、前方障害物という。)との相対距離や相対速度、ナビゲーション装置から走行路形状等の各種データを検出し、自車両の走行状態のデータとして、車速センサ4から自車速、ヨーレイトセンサ5から自車両のヨーレイト、ステアリングセンサ6から舵角、ターンシグナル7から進路変更等の各種データを検出する。
【0008】
なお、前方障害物には、自車レーンの前方に存在する障害物の他に、自車レーン外(例えば隣接走行レーン)に存在する障害物をも含むものとする。
続いてステップS2において、前方障害物を検出する。ここでは、前記撮像画像又はレーダ1の検出結果に基づいて、前方障害物を検出する。ここで、前方障害物を検出した場合、ステップS3に進み、前方障害物を検出できない場合、当該図2に示す処理を終了する。
【0009】
ステップS3では、前記ステップS2で検出した前方障害物の進路を予測する。具体的には、レーダ2で検出した前方障害物の位置(又は相対距離)及び速度(又は相対速度)のデータを蓄積しておき、その蓄積した時系列データを直線近似等して前方障害物の進路を自車両との対比で予測する。すなわち、自車両100に対して視野角θ及び相対距離Dの位置に前方障害物(前方車両)101があるとき、自車両100に対する前方障害物101の横相対距離X及び縦相対距離Yを下記(1)式で算出できる(図3参照)。
X=D・sinθ
Y=D・cosθ
・・・(1)
【0010】
そして、このように定義する横相対距離X及び縦相対距離Yについて、今回のn回目の相対距離のデータ(Xn,Yn)と、前回のn−1回目の相対距離のデータ(Xn−1,Yn−1)とに基づいて、現時点からt時間後における予測相対距離(X,Y)を下記(2)式により算出できる。
X=(Xn−Xn−1)/T*t+Xn
Y=(Yn−Yn−1)/T*t+Yn
・・・(2)
ここで、Tは相対距離Dの検出周期(算出周期)である。
【0011】
ここで、図4を用いて、予測相対距離(X,Y)を説明する。
この図4に示すように、自車両100及び前方障害物(先行車両)101とは、ある時点からT1時間後、さらにその後のT2時間後に、それぞれある位置を走行することになり、その各時点T1,T2における自車両100の位置と前方障害物101の位置との差分が当該各時点における相対距離Dになる。
なお、過去数回分の相対距離のデータに基づいて相対加速度を算出し、その算出した相対加速度をt時間後の相対距離の予測に反映させても良い。また、過去数回分の相対距離のデータをスプライン関数等で近似してt時間後の相対距離を予測しても良い。これにより、相対距離の予測の精度を上げることができる。
【0012】
また、レーダ2に換えて、複数のカメラからなるいわゆるステレオカメラを用いて、前方障害物との相対距離を検出しても良い。例えば、2台のカメラからなるステレオカメラを用いるとすれば、各カメラの画像の対応点(エッジなど)を抽出し、その抽出した対応点から視差Pdを求める。そして、その視差Pdを用いて、下記(3)式により、前方障害物との相対距離Dを算出する。
D=L・Z/Pd ・・・(3)
ここで、Lはカメラ間の距離であり、Zは焦点距離である。
【0013】
続いてステップS4において、自車両の進路を予測する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだ車速センサ4が検出した自車速、ヨーレイトセンサ5が検出した自車両のヨーレイト、ステアリングセンサ6が検出した舵角等の自車両の走行状態のデータに基づいて、現時点からt時間(前記ステップS3で予測相対距離の算出に用いたのと同じ時間)後の自車両の位置を予測する。
【0014】
例えば、前記図4における自車両100は一定速度Vで走行しているものであり、よって、例えば、自速度Vと時間tとの乗算値V・tは走行距離を示すものとなる。
続いてステップS5において、前記ステップS3で得た前方障害物の予測進路(予測相対距離)と、前記ステップS4で得た自車両の予測進路とに基づいて、将来(前記t時間後)における自車両と前方障害物とが衝突する可能性があるか否かを判定する。
【0015】
具体的には、前記ステップS3で算出したt時間後における横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方又はいずれか一方が0となる場合、衝突可能性あり(又は衝突可能性が高い)と判定する。そして、このとき、前記ステップS4において検出した自車両の進路予測結果を参照し、その進路予測結果が、自車両と前方障害物とが衝突しない方向、すなわち横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方が0にならないように、自車両が回避操作等で進路変更している場合には、衝突可能性がない(又は衝突可能性が低い)と判定する。
【0016】
例えば、図4に示すように、時間T2に横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方が0になる場合であり、この場合、時間T1と時間T2との時間間隔が前記相対距離の算出に用いた時間tであれば、時間T1の時点で、衝突可能性ありと判定することになる。
また、このように時間T2に横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方が0になる場合でも、前記ステップS4の検出結果から時間T2時点の自車両100の進路が変更すると予測した場合には、衝突可能性がないと判定する。
【0017】
このステップS5において、衝突可能性があると判定した場合(又は衝突可能性が高い場合)、ステップS6に進み、衝突可能性がないと判定した場合(又は衝突可能性が低い場合)、当該図2に示す処理を終了する。
ステップS6では、前方障害物について画像処理を行う。具体的には、図5に示すように、自車両と前方障害物との予測衝突位置(予測接触位置)を示す情報をなす図形(以下、予測衝突位置報知情報という。)D1、さらに前方障害物の予測進路D2を示す情報をなす図形(以下、予測進路報知情報という。)D2を、カメラ1で撮像した撮像画像(特に当該撮像画像内の前方障害物)に重畳した画像D0を作成する。
【0018】
ここで、予測進路報知情報D2は、運転者の認知のし易さの観点から、矢印等、単純化したものにする。また、前方障害物を示す図形(以下、前方障害物報知情報という。)D3は、その輪郭の輝度を変えたり、当該前方障害物を図形で囲ったりする(四角形の図形で囲ったりする)。また、前方障害物付近に文字表示(例えば、「注意!」といった文字表示D4)を表示する。さらに、危険度や接近距離に応じて、前方障害物報知情報D3や文字表示を変化させる。例えば、危険度が高くなるほど、又は相対距離が小さくなるほど、黄色点灯、赤色点灯、赤色点滅といった順番で変化させていく。
【0019】
なお、予測進路、予測衝突位置及び前方障害物を示すものとして、具体的な図形を挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、運転者が認識又は運転者に注意喚起できるものであれば、他の方法、例えば図形、文字情報等を用いても良い。
続いてステップS7において、前記ステップS6で作成した画像を表示装置9により表示する。これにより、表示装置9には、カメラ1の撮像画像が表示されるとともに、その画像中に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報が表示される。例えば、表示装置9は、車内で運転者が見やすい位置に設置されている。
【0020】
続いてステップS8において、警報装置10により警報(警報音)を出力する。このとき、前記表示装置9への画像出力と同時に警報出力をしても良いが、これに限定されない。例えば、警報出力前に、ターンシグナル7がONになったり、ヨーレイトセンサ5やステアリングセンサ6等の検出結果から運転者が回避操作をしていると判定できたりした場合、警報出力を行わない。
【0021】
以上の処理による一連の動作は次のようになる。
先ず、各種データを読み込み、さらに前方障害物を検出する(前記ステップS1、ステップS2)。続いて、将来(t時間後)の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3、ステップS4)、それら前方障害物、自車両それぞれの予測進路に基づいて、自車両と前方障害物との衝突可能性を判定する(前記ステップS5)。ここで、自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳して画像を作成して、その作成画像を表示装置9に表示する(前記ステップS6、ステップS7)。さらに、必要に応じて警報装置10により警報(警報音)を出力する(前記ステップS8)。
【0022】
次に第1の実施形態における効果を説明する。
前述したように、将来の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3及びステップS4)、それら前方障害物、自車両の予測進路に基づいて将来において自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合(前記ステップS5)、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳した画像を表示装置9に表示している(前記ステップS6及びステップS7)。これにより、表示装置9の表示画像中に、撮像画像中の前方障害物に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報が対応して表示されるので、その表示により、運転者は、その前方障害物についての危険性(衝突可能性)を瞬時に判断できるようになる。
【0023】
ここで、前方障害物が複数存在する場合には、それら全ての前方障害物について予測進路報知情報及び予測衝突位置情報を画像表示するようにする。このとき、自車両と衝突可能性がある前方障害物に限定して、その予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示しても良く、衝突可能性が一番高い前方障害物だけに限定してその予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示しても良い。これにより、前方障害物が複数存在する場合でも、どの前方障害物が衝突可能性のあるかを運転者が瞬時に判断することができるようになる。
【0024】
次に第2の実施形態を説明する。
この第2の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、本発明に係る車両の障害物表示装置を搭載した車両である。この第2の実施形態では、自車両と前方障害物とが衝突する可能性がある場合に、運転者の制動操作や操舵操作でその衝突を回避できるときには、その衝突回避方法を運転者に表示により報知している。
【0025】
図6は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第1の実施形態における図2の処理に対応するものである。
第2の実施形態では、この図6に示すように、ステップS7で障害物の予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を表示した後に、ステップS10として衝突回避方法表示処理を行っている。図7は、その処理の処理手順の一例を示す。
【0026】
先ずステップS11において、運転者の制動操作(ブレーキペダル操作)により衝突回避可能か否かを判定する。ここで、例えば衝突回避判定用テーブルを用いて、その判定を行う。このステップS11で運転者の制動操作により衝突回避可能であると判定した場合、ステップS13に進み、運転者の制動操作により衝突回避不可能と判定した場合、ステップS12に進む。
【0027】
ステップS12では、運転者の制動操作で衝突回避可能な周囲環境か否かの判定を行う。周囲環境として、例えば、後続車両がいるか否か、さらにその後続車両との車間距離や相対速度等を検出する。そして、その検出結果に基づいて、運転者の制動操作で衝突回避可能か否かを判定する。
このステップS12で運転者の制動操作で衝突回避可能な周囲環境であると判定した場合には、ステップS15に進み、そうではない場合、例えば、車間距離や相対速度から後続車両が自車両に接近状態にあると判定した場合、当該図6の示す処理(ステップS10)を終了する。
【0028】
なお、周囲環境の情報については、ナビゲーション情報、画像情報、車車間通信等により取得する。例えば、後続車両についての接近情報を当該後続車両との車車間通信により取得する。
ステップS13では、運転者の操舵操作により衝突回避可能か否かを判定する。ここで、例えば衝突回避判定用テーブルを用いて、その判定を行う。このステップS13で操舵操作により衝突回避可能であると判定した場合、ステップS14に進み、運転者の操舵操作により衝突回避不可能と判定した場合、当該図6の示す処理(ステップS10)を終了する。
【0029】
ステップS14では、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境か否かの判定を行う。周囲環境として、例えば、後続車両、特に、前方障害物との衝突を操舵操作で回避する方向(右側又は左側のいずれか一方)に関し、隣接車線を走行する後続車両や自車両を追い越そうとしている後続車両がいるか否かを検出し、さらには、その後続車両との車間距離や相対速度等をも検出する。そして、その検出結果に基づいて、運転者の操舵操作で衝突回避可能か否かを判定する。
【0030】
このステップS14で運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境であると判定した場合には、ステップS15に進み、そうではない場合、例えば、操舵操作により衝突を回避する方向の隣接車線を走行する後続車両が自車両に接近状態にあり、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境にない場合、当該図6の示す処理(ステップS10)を終了する。
なお、周囲環境の情報については、ナビゲーション情報、画像情報、車車間通信等により取得する。例えば、隣接車線を走行する後続車両や自車両を追い越そうとしている後続車両についての接近情報を、当該後続車両との車車間通信により取得する。
【0031】
また、周囲環境の情報として前述したような後続車両の存在の有無を用いることに限定されるものではなく、他の情報、例えば、ナビゲーション情報として得た走行路の車線数を周囲環境の情報としても用いても良い。この場合、隣接車線が追い越し車線であれば、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境にあると判定し、隣接車線が追い越し車線ではない場合、例えば、隣接車線が対向車線の場合、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境にないと判定する。
【0032】
ステップS15では、衝突回避方法を画像表示する。具体的には、前記ステップS11及びステップS12で運転者の制動操作により衝突回避可能と判定した場合、その旨を示す画像を作成して、その作成した画像を表示装置9にて表示する。例えば、図8に示すように、運転者の制動操作による衝突回避が可能な旨を示す情報をなす「ブレーキ!」といった文字表示(以下、制動回避可能報知情報という。)D5をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像D0を表示する。
【0033】
また、前記ステップS13及びステップS14で運転者の操舵操作により衝突回避可能と判定した場合、その旨を示す画像を作成して、その作成した画像を表示装置9にて表示する。例えば、図9に示すように、運転者の操舵操作による衝突回避が可能な旨を示す情報をなす操舵方向を示す矢印の図形(以下、操舵回避可能方向報知情報という。)D6をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像D0を表示する。このとき、操舵方向を示す矢印の方向は、前記ステップS14の判定結果に基づき、自車両に接近する又は衝突可能性のある後続車両が存在しない方向を示すものとなる。
【0034】
なお、前述したように、前方障害物報知情報が、前方障害物を四角形の図形で囲う図形D3の場合、この図8及び図9に示すようになる。
また、前記衝突回避判定用テーブルについては、例えば特開2003−175809号公報に記載の技術を用いることができる。例えば、図10(同公報の図10)及び図11(同公報の図11)に示す衝突回避判定用テーブルを用いる。図10及び図11の概要は次のようになる。
【0035】
図10は、前方障害物との相対速度Vr及び相対距離d(D)に基づいて、制動操作及び操舵操作による衝突回避(接触回避)の可能性を判定するために用いる特性図である。
一方、図11中、曲線L11は、運転者の制動操作により衝突回避が可能な相対距離dの限界(以下、制動回避限界という。)を示し、この曲線L11の特性によれば、制動回避限界は、相対速度Vrが増加するにつれて大きくなり且つ相対速度Vrが大きいほどその変化度合いが大きくなる。また、同図中、直線L12は、運転者の操舵操作により衝突回避が可能な相対距離Lの限界(以下、操舵回避限界という。)を示し、この直線L12の特性によれば、操舵回避限界は、相対速度Vrが増加するにつれてこれに比例して大きくなる。
【0036】
そして、この図11に示す制動回避限界及び操舵回避限界の特性から、図10に示すように、制動操作及び操舵操作による衝突回避が共に不可となる限界は、相対速度Vrが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とが一致する一致相対速度Vr*以下の場合、制動回避限界L11、相対速度VrがVr*以上の場合、操舵回避限界L12となる、特性線L1で表される。
【0037】
また、規定時間(所定時間)TcB及びTcS経過後に制動操作及び操舵操作による衝突回避が共に不可となると予測される相対距離dを表す特性線L2は、相対速度Vrが一致相対速度Vr*よりも大きい領域では、特性線L1よりも規定時間TcSに相当する距離だけ離れた相対距離d、相対速度Vrが一致相対速度Vr*よりも小さい領域では、特性線L1よりも規定時間TcBに相当する距離だけ離れた相対距離dとなる。
【0038】
以上のように定義される図10及び図11を用いて判定を行う。すなわち、相対速度Vr及び相対距離dが、図10に示す特性線L2と特性線L1で挟まれる領域になった場合、規定時間TcB及びTcS経過後に制動操作及び操舵操作による衝突回避が共に不可となると予測されると判定する。
そして、この予測判定時に、当該相対速度Vrが一致相対速度Vr*以下の場合で、かつ相対速度Vr及び相対距離dが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とで挟まれる領域になっている場合には、前記ステップS11において、運転者の制動操作により衝突回避可能と判定して、ステップS12に進む。そして、前述したように、ステップS12では、自車両の周囲環境に基づいて、運転者の制動操作により衝突回避可能か否かをさらに判定し、ここで、運転者の制動操作により衝突回避可能と判定した場合、ステップS15に進む。
【0039】
一方、前述したように、衝突回避が共に不可となると予測されると判定された場合において、当該相対速度Vrが一致相対速度Vr*よりも大きい場合で、かつ相対速度Vr及び相対距離dが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とで挟まれる領域になっている場合には、前記ステップS13において、運転者の操舵操作により衝突回避可能と判定して、ステップS14に進む。そして、前述したように、ステップS14では、自車両の周囲環境に基づいて、運転者の操舵操作により衝突回避可能か否かをさらに判定し、ここで、運転者の操舵操作により衝突回避可能と判定した場合、ステップS15に進む。
【0040】
このような図10や図11に示すような衝突回避判定用テーブルを用いることで、所定時間経過後には運転者が運転操作しても前方障害物に対する衝突を回避できなくなると判定した場合、衝突回避方法が画像表示される(ステップS9)。すなわち、運転者が運転操作しても前方障害物に対する衝突を回避できなくなる所定時間前に、衝突回避方法が画像表示される。
【0041】
これにより、自車両及前方障害物の予測進路に基づいて前方障害物と衝突可能性ありと判定し、かつ所定時間経過後には運転者が運転操作しても当該前方障害物に対して自車両が衝突を回避できなくなると判定した場合に、最適な衝突回避方法が画像表示される。衝突可能性の判定に着目して言い換えれば、前方障害物に対して運転者の運転操作により衝突回避可能とされる所定期間内に、当該前方障害物についてその予測進路に基づいて衝突可能性を判定し、その判定結果に基づいて、最適な衝突回避方法を画像表示しているとも言える。
【0042】
以上の処理による一連の動作は次のようになる。
前記第1の実施形態と同様に、先ず、各種データを読み込み、さらに前方障害物を検出する(前記ステップS1、ステップS2)。続いて、将来(t時間後)の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3、ステップS4)、それら前方障害物、自車両それぞれの予測進路に基づいて、自車両と前方障害物との衝突可能性を判定する(前記ステップS5)。ここで、自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳して画像を作成して、表示装置9に画像表示している(前記ステップS6、ステップS7)。さらに、必要に応じて警報装置10により警報(警報音)を出力する(前記ステップS8)。
【0043】
さらに、第2の実施形態では、衝突回避方法表示を行っている(前記ステップS10)。すなわち、運転者の制動操作により衝突回避可能であり、かつその運転者の制動操作による衝突回避が可能な周囲環境にあると判定した場合、その旨を示す制動回避可能報知情報(例えば「ブレーキ!」の文字表示)をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を作成して、表示装置9に画像表示している(前記ステップS11、ステップS12、ステップS15)。また、運転者の操舵操作により衝突回避可能であり、かつその運転者の操舵操作による衝突回避が可能な周囲環境にあると判定した場合、その旨を示す操舵回避可能方向報知情報(例えば、操舵方向を示す矢印の図形)をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を作成して、表示装置9にて表示する(前記ステップS13〜ステップS15)。
【0044】
次に第2の実施形態における効果を説明する。
前述したように、将来において自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合(前記ステップS5)、周囲環境に基づいて、運転者の制動操作や操舵操作で衝突回避が可能か否かを判定して(前記ステップS11〜ステップS14)、運転者の運転操作による衝突回避が可能な場合には、その可能な運転操作を示す情報(制動回避可能報知情報や操舵回避可能方向報知情報)をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を表示装置9に表示している(前記ステップS15、ステップS10)。これにより、表示装置9の表示画像中に、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を表示するとともに、制動回避可能報知情報や操舵回避可能方向報知情報として衝突回避方法が表示されるので、その表示により、運転者は、その前方障害物についての危険性(衝突可能性)と、さらには、その衝突回避方法とを瞬時に判断できるようになる。
【0045】
また、前述したように、運転者の操舵操作により衝突回避が可能と判定した場合には、その操舵操作による回避方向を表示している(前記図9参照)。これにより、運転者が操舵操作による衝突回避をする場合でも、最適な回避方向を運転者が瞬時に判断することができる。
また、前述したように、前方障害物との相対距離や相対速度に基づいて、運転者による制動操作や操舵操作で衝突回避が可能と判定した場合でも、後続車両の存在の有無等の周囲環境に基づいて、最終的にその判定を確定している(前記ステップS12、ステップS14)。
【0046】
このように、自車両の周囲環境に基づいて最終的に運転操作による衝突回避方法を決定することで、運転者は、後続車両等との接触や急接近を防止しつつ、前方障害物との衝突を回避するための衝突回避方法を瞬時に判断することができる。
また、前述したように、衝突回避判定用テーブルとして、図10や図11に示すものを用いることで、所定時間経過後には運転者が運転操作しても前方障害物に対して衝突回避不可能となることを条件に、衝突回避方法を判定している。すなわち、所定時間経過後の衝突回避可能性を基準に、衝突回避方法を判定している。これにより、より最適な条件、タイミングで衝突回避方法が画像表示されるようになる。これにより、運転者が衝突回避のための運転操作を不要に行ってしまうのを防止し、かつ運転者による衝突回避のための運転操作が遅れてしまうのを防止できる。
【0047】
なお、前記第2の実施形態では、運転者の運転操作による衝突回避方法として、制動操作(ブレーキペダル操作)と操舵操作とを挙げて説明した。しかし、これに限定されるものではない。例えば、運転者のシフトダウンによるエンジンブレーキ等の他の運転者の運転操作による衝突回避方法であっても良い。
また、前記第2の実施形態では、運転者の運転操作による衝突回避方法として制動操作と操舵操作のいずれか一方を選択しているが、制動操作と操舵操作との両方で衝突回避が可能であれば、それら両方により衝突回避が可能である画像表示をするようにしても良い。
【0048】
また、前記第2の実施形態では、前述したように、所定時間経過後には運転者が運転操作しても前方障害物に対して衝突回避不可能となることを条件に、衝突回避方法を判定している。すなわち、衝突回避方法の判定のために、所定時間経過後における運転者の運転操作による衝突回避可能性の条件を用いている。しかし、これに限定されるものではない。
【0049】
例えば、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示するために行う前方障害物との衝突可能性の判定に、当該条件を用いても良い。すなわち、自車両、前方障害物の予測進路に基づいて前方障害物との衝突可能性を判定するとともに、所定時間経過後における運転者の運転操作による衝突回避可能性を判定して、それら判定結果に基づいて、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示する。このようにすることで、自車両、前方障害物の予測進路に基づいて前方障害物との衝突可能性があり、かつ所定時間経過後に運転者が運転操作しても衝突回避が可能性となると判定した場合、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示することがきる。
これにより、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を不要に画像表示してしまうのを防止して、運転者が不要に衝突回避行動を採ってしまうのを防止できる。
【0050】
次に第3の実施形態を説明する。
この第3の実施形態は、車両の障害物回避報知装置を搭載した車両である。この第3の実施形態では、車両の障害物回避報知装置により、自車両と前方障害物とが衝突する可能性がある場合において、自車両の後側方に存在する障害物(以下、後側方障害物という。)を考慮して、前方障害物に対する最適な衝突回避方向(操舵回避方向又は衝突回避進路)を運転者に報知している。
【0051】
この車両は、車両の障害物回避報知装置として、図12に示すように、カメラ1、レーダ2、ナビゲーション装置3、車速センサ4、ヨーレイトセンサ5、ステアリングセンサ6、ターンシグナル7、コントローラ8、表示装置9及び警報装置(音声出力装置)10を備えている。さらに、車両の障害物回避報知装置は、後方センサ(後方レーダ)11、後側方センサ(後側方レーダ)12、ブレーキコントローラ13及びステアリングコントローラ14を備えている。
【0052】
図13は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第1の実施形態における図2の処理に対応するものである。この図13に示すように、ステップS5で前方障害物に対する衝突可能性の判定をした後に、ステップS20として衝突回避方向判定処理を行い、さらに、ステップS7で予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を表示した後に、ステップS30として衝突回避方向表示処理を行っている。図14は、ステップS20の衝突回避方向判定処理の処理手順の一例を示す。
【0053】
先ずステップS21において、後側方障害物を検出する。ここでは、後側方センサ12の検出結果に基づいて、後側方障害物を検出する。ここで、後側方障害物を検出した場合、ステップS22に進み、後側方障害物を検出できない場合、ステップS24に進む。
ステップS22では、後側方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。例えば、後側方センサ12の検出結果に基づいて、自車両と後側方障害物との相対距離、相対速度を算出して、その算出結果に基づいて、後側方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。例えば、後側方センサ12による後側方障害物102の検出領域は、図15に示すように、自車両100の左右後側方の領域(同図中のハッチング領域)Aになる。
【0054】
このステップS22で後側方障害物が自車両に接近中と判定した場合、ステップS23に進み、後側方障害物が自車両に接近中ではないと判定した場合、ステップS24に進む。
ステップS23では、前方障害物に対する衝突回避方向を決定する。具体的には、前記ステップS22で判定した接近中の後側方障害物が存在しない側を衝突回避方向又は衝突回避進路として決定する。
また、ステップS24では、前方障害物に対する衝突回避方向は任意である決定をする(衝突回避方向の決定はしない)。
以上のように衝突回避方向判定を行っている。
【0055】
続いて、前記第1の実施形態と同様に、ステップS6で前方障害物の画像処理を行い(画像を作成し)、続くステップS7で撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳した画像を表示装置9に表示する。
そして、ステップS30として衝突回避方向表示を画像表示する。すなわち、ステップS30では、前記ステップS20の衝突回避方向判定で衝突回避方向を決定している場合(前記ステップS23)、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。例えば、図16に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす衝突回避方向を示す矢印の図形D7を重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0056】
また、前記ステップS20の衝突回避方向判定で衝突回避方向が任意であるとする決定した場合(前記ステップS24)、その旨を示す情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に画像表示する。例えば、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす左右両方向を示す矢印の図形を重畳した画像を表示装置9に表示する。
【0057】
なお、このとき、後側方障害物についても、前方障害物について行っていると同様に、図16に示すように、その予測進路報知情報をなす図形(例えば矢印の図形)D8及び予測衝突位置報知情報をなす図形D9を撮像画像に重畳して画像表示しても良い。例えば、後側方障害物との予測衝突位置については、前方障害物との衝突回避のために当該後側方障害物が走行する車線側に運転者が操舵操作したならば、当該後側方障害物に自車両が衝突すると予測される位置である。
【0058】
また、図16に示すように、前方障害物101や後側方障害物102といった複数の障害物が存在している場合に、それら障害物それぞれに予測進路報知情報をなす図形D2,D8や予測衝突位置報知情報をなす図形D1,D9を画像表示してしまうと、却って運転者に与える情報が多くなってしまい、情報を提供することの効果が却って減少してしまう。例えば、衝突回避方向を示す表示の認知度合いが低下してしまう。
このようなことから、運転者に与える情報が多くなった場合には、図17に示すように、障害物についての予測進路や予測衝突位置よりも運転者の情報利用価値が高い操舵回避可能方向報知情報をなす矢印の図形D7のみを画像表示する。
【0059】
以上の処理による一連の動作は次のようになる。
前記第1の実施形態と同様に、先ず、各種データを読み込み、さらに前方障害物を検出する(前記ステップS1、ステップS2)。続いて、将来(t時間後)の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3、ステップS4)、それら前方障害物、自車両それぞれの予測進路に基づいて、自車両と前方障害物との衝突可能性を判定する(前記ステップS5)。ここで、自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳して画像を作成して、その作成画像を表示装置9に表示する(前記ステップS6、ステップS7)。さらに、必要に応じて警報装置10により警報(警報音)を出力する(前記ステップS8)。
【0060】
さらに、第3の実施形態では、後側方障害物の有無に基づいて衝突回避方向判定を行い、その衝突回避方向判定で衝突回避方向を決定した場合、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を作成し、表示装置9に画像表示する(前記ステップS20、ステップS30)。
これにより、図15に示すように、将来において自車両100が前方障害物101に衝突する可能性がある状況下で、自車両100に右後方から後側方障害物102が接近している場合、図16に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす左方向を示す矢印の図形D7が重畳された画像D0が表示装置9に表示される。
【0061】
次に第3の実施形態における効果を説明する。
前述したように、将来において自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合(前記ステップS5)、さらに、後側方障害物に基づいて衝突回避方向判定を行い、その衝突回避方向判定で衝突回避方向を決定した場合、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を表示装置9に表示している(前記ステップS20、ステップS30)。これにより、表示装置9の表示画像中に、自車両に接近する後側方障害物を考慮した操舵回避可能方向報知情報が表示されるので、それに応じて運転者が操舵操作することで、自車両と前方障害物との衝突の回避をするとともに、自車両が後側方障害物に急接近してしまうのを防止できる。
なお、前記第3の実施形態では、操舵回避可能方向報知情報が撮像画像に重畳する図形である場合を説明した。しかし、これに限定されるものではない。すなわち、操舵回避可能方向報知情報は音声によるものであっても良い。
【0062】
次に第4の実施形態を説明する。
この第4の実施形態は、前記第3の実施形態と同様に、車両の障害物回避報知装置を搭載した車両である。この第4の実施形態では、前方障害物に対する衝突回避方向に衝突回避アシスト制御している。
図18は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第3の実施形態における図13の処理に対応するものである。この図18に示すように、ステップS30で衝突回避方向表示をした後に、ステップS31として衝突回避アシスト制御を行っている。
【0063】
衝突回避アシスト制御では、コントローラ8から前記図12に示すステアリングコントローラ14に制御指令値を出力し、ステアリングコントローラ14により電動ステアリング等のステアリングアクチュエータの動作を制御している。このとき、前記ステップS20で決定した衝突回避方向に所定のアシスト力が発生するように、すなわち補舵となるように、ステアリングアクチュエータの動作を制御している。
【0064】
なお、衝突回避アシスト制御をステアリング制御により行うことに限定されるものではない。例えば、衝突回避アシスト制御をブレーキ制御により行っても良い。この場合、コントローラ8から図12に示すブレーキコントローラ13に制御指令値を出力し、ブレーキコントローラ13によりブレーキアクチュエータの動作を制御する。このとき、前記ステップS20で決定した衝突回避方向に旋回するようなヨーモーメントが自車両に付与されるように左右輪に制動力差を発生させる。
【0065】
また、衝突回避アシスト制御として、前記ステアリング制御と前記ブレーキ制御との両方を行っても良い。
また、このような衝突回避アシスト制御(ステップS31)と操舵回避可能方向報知情報の表示(ステップS30)とを選択的に行うようにしても良い。すなわち、運転者の認識可能性(例えば視覚又は体感による認識可能性)等の所定の条件に応じて、衝突回避アシスト制御と操舵回避可能方向報知情報の表示とを選択的に行うようにする。
【0066】
次に第4の実施形態における効果を説明する。
前述したように、補舵や自車両にヨーモーメントを付与することで衝突回避アシスト制御を行っている。これにより、運転者は、衝突回避可能な方向をより早く知ることができ、すなわち、補舵や自車両にヨーモーメントを付与による衝突回避アシストが、運転者による操舵操作を促し、これが衝突回避方向を報知する手段として作用し、これにより、運転者は、速やかに衝突回避方向への操舵行動に移ることができる。例えば、運転者が表示装置9を見ていない状況下では、操舵回避可能方向報知情報の画像表示(前記ステップS30)を運転者が認識できないから、衝突回避アシスト制御による衝突回避方向の報知はより効果的なものとなる。
【0067】
次に第5の実施形態を説明する。
この第5の実施形態は、前記第3の実施形態と同様に、車両の障害物回避報知装置を搭載した車両である。この第5の実施形態では、自車両の後方の障害物の状況を考慮して、制動操作により前方障害物に対する衝突回避を促す報知をしている。
図19は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第3の実施形態における図13の処理に対応するものである。この図19に示すように、ステップS5で前方障害物について衝突可能性を判定した後(衝突可能性ありと判定した場合)、ステップS40として衝突回避方法を判定している。図20は、その処理の処理手順の一例を示す。
【0068】
先ずステップS41において、自車両の後方の障害物(以下、後方障害物という。)を検出する。ここでは、後方障害物には、自車レーン内で自車両の後方にある障害物の他に、前記図15に示すように、自車両の後側方にある障害物102(前記第3及び第4の実施形態における検出対象)をも含むものとする。
そして、後方センサ11及び後側方センサ12の検出結果に基づいて、後方障害物を検出する。ここで、後方障害物を検出した場合、ステップS42に進み、後方障害物を検出できない場合、ステップS49に進む。
【0069】
ステップS42では、後方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。例えば、後方センサ11及び後方センサ12の検出結果に基づいて、自車両と後方障害物との相対距離、相対速度を算出して、その算出値に基づいて、後方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。
このステップS42で後方障害物が自車両に接近中と判定した場合、ステップS43に進み、後方障害物が自車両に接近中ではないと判定した場合、ステップS49に進む。
【0070】
ステップS43では、後方障害物が接近していても運転者の操舵操作により前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定する。ここで、前記衝突回避が可能な場合、ステップS44に進み、前記衝突回避が不可能な場合、ステップS47に進む。例えば、運転者が操舵操作により前方障害物に対する衝突回避行動を採ったとしたならば、後側方センサ12で検出した後方障害物(後側方障害物)と接触する可能性がある場合、前記衝突回避が不可能と判定する。
【0071】
ステップS44では、後方障害物が接近中であっても運転者の制動操作により前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定する。ここで、前記衝突回避が可能な場合、ステップS45に進み、前記衝突回避が不可能な場合、ステップS46に進む。例えば、運転者が制動操作(減速操作)により前方障害物に対する衝突回避行動を採ったとしたならば、後方センサ11で検出した後方障害物(自車レーン内の後方障害物)と接触する可能性がある場合、前記衝突回避が不可能と判定する。
【0072】
また、ステップS47でも同様に、後方障害物が接近中であっても運転者の制動操作により前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定する。ここで、前記衝突回避が可能な場合、ステップS48に進み、前記衝突回避が不可能な場合、当該図20に示す処理(ステップS40)を終了する。
ステップS45、すなわち、後方障害物が接近中であっても運転者の操舵操作及び制動操作により前方障害物に対する衝突回避が可能であると判定した場合、操舵操作と制動操作とにより衝突回避が可能であると決定する。さらに、操舵操作による衝突回避方向を決定する。ここで、前記ステップS42で判定した接近中の後方障害物(後側方障害物)が存在しない側を衝突回避方向として決定する。
【0073】
また、ステップS46、すなわち、後方障害物(特に自車レーン内の後方障害物)が接近しているから、運転者の操舵操作のみにより前方障害物に対する衝突回避が可能であると判定した場合、その衝突回避方向(操舵操作回避方向)を決定する。
また、ステップS48、すなわち、後方障害物(特に後側方障害物)が接近しているから、運転者の制動操作のみにより前方障害物に対する衝突回避が可能であると判定した場合、制動操作による衝突回避が可能であることを決定する。
【0074】
また、ステップS49、すなわち、後方障害物を検出していなく、又は後方障害物を検出したが、当該後方障害物が自車両に接近していない場合、操舵操作及び制動操作のどれでも前方障害物に対する衝突回避が可能であるから、操舵操作と制動操作とによる衝突回避が可能であることを決定する。ここで、操舵操作による衝突回避方向は、左右任意の方向であると決定する。
【0075】
以上のように衝突回避方法判定を行っている。
続いて、前記第3の実施形態と同様に、ステップS6で前方障害物の画像処理を行い、続くステップS7で撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳した画像を常時装置9に表示する。
そして、ステップS50として、前記ステップS40の衝突回避方法判定における決定事項に基づいて、衝突回避方法を報知する。
【0076】
具体的には、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、操舵操作による衝突回避方向を決定した場合(前記ステップS46)、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。前記図16に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす衝突回避方向を示す矢印の図形D7を重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0077】
また、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、制動操作による衝突回避が可能であることを決定した場合(前記ステップS48)、制動回避可能報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。例えば、前記図8に示すように、撮像画像に制動回避可能報知情報をなす「ブレーキ!」といった文字表示D5を重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0078】
また、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、後方障害物が接近しているが、操舵操作と制動操作とによる衝突回避が可能であることを決定した場合(前記ステップS45)、操舵回避可能方向報知情報及び制動回避可能報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。例えば、図21に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす衝突回避方向を示す矢印の図形D7と制動回避可能報知情報をなす「ブレーキ!」といった文字表示D5とを重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0079】
また、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、後方障害物が接近していないことで、操舵操作と制動操作とによる衝突回避が可能であることを決定した場合(前記ステップS49)、操舵回避可能方向報知情報及び制動回避可能報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。ここで、操舵回避可能方向報知情報については、前記図21に示す矢印の図形D7を左右両側を指す矢印の図形に変更したものにする。
なお、操舵回避可能方向報知情報と制動回避可能報知情報とを同時に同一画面に表示すると、運転者に煩わしさを与える可能性もあるので、そのような煩わしさを与えない表示態様にすることが好ましい。
【0080】
なお、運転者の制動操作により衝突回避が可能と判定した場合には(前記ステップS45、ステップS48又はステップS49)、自動制動制御により自車両に制動力を付与して減速させるようにしても良い。このとき、自車両に付与する制動力は、運転者自身の制動操作により衝突が回避可能であることを報知することを目的として、運転者に違和感を与えない程度の小さい制動力を付与することが好ましい。
また、このような自動制動制御と制動回避可能報知情報の表示とを選択的に行うようにしても良い。すなわち、運転者の認識可能性(例えば視覚又は体感による認識可能性)等の所定の条件に応じて、自動制動制御と制動回避可能報知情報の表示とを選択的に行うようにする。
【0081】
また、運転者の操舵操作により衝突回避が可能と判定した場合には(前記ステップS45、ステップS46又はステップS49)、前記第4の実施形態のように、補舵や自車両にヨーモーメントを付与する衝突回避アシスト制御を行っても良い。
また、このような衝突回避アシスト制御と操舵回避可能方向報知情報の表示とを選択的に行うようにしても良い。すなわち、運転者の認識可能性(例えば視覚又は体感による認識可能性)等の所定の条件に応じて、自動制動制御と操舵回避可能方向報知情報の表示とを選択的に行うようにする。
【0082】
次に第5の実施形態における効果を説明する。
前述したように、後方障害物に基づいて、運転者の制動操作で前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定し、運転者の制動操作で前方障害物に対する衝突が回避可能な場合、その旨(制動回避可能報知情報)を運転者に報知している(前記ステップS40、ステップS50)。これにより、前方障害物に対する運転者による衝突回避方法の選択性を向上させることができる。すなわち、前方障害物に対して運転者の操舵操作により衝突回避が不可能な場合でも、制動操作により衝突回避が可能であることを運転者が知ることができる。
【0083】
また、前述したように、運転者の制動制御により衝突回避を可能と判定した場合、自動制動制御を行っている。これにより、運転者は、制動操作により前方障害物との衝突を回避可能であることをより早く知ることができ、すなわち、自動制動制御が、運転者による制動操作を促し、これが制動操作により衝突回避が可能であることを報知する手段として作用し、これにより、運転者は、速やか衝突回避のための制動操作行動に移ることができる。例えば、運転者が表示装置9を見ていない状況下では、制動回避可能報知情報の画像表示を運転者が認識できないから、自動制動制御による報知はより効果的なものとなる。
【0084】
なお、前記実施形態の説明において、カメラ1は、障害物を含む自車両周囲を撮像する撮像手段を実現しており、コントローラ8のステップS6及びステップS7の処理並びに表示装置9は、前記撮像手段で撮像した撮像画像を表示する表示手段を実現しており、レーダ2及びコントローラ8のステップS2の処理は、自車両と障害物との位置関係を検出する位置関係検出手段を実現しており、コントローラ8のステップS3〜ステップS5の処理は、前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物の自車両に対する衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段を実現している。
【0085】
また、前記実施形態の説明において、コントローラ8のステップS11〜ステップS14の処理は、前記衝突可能性判定手段が前記衝突可能性ありと判定した場合、前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物に対して、運転者の運転操作により可能な自車両の衝突回避方法を決定する衝突回避方法決定手段を実現している。
また、前記実施形態の説明において、コントローラ8のステップS12及びステップS14における周囲環境情報の取得処理は、自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出手段を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態の車両が備える車両の障害物表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における車両の障害物表示装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】自車両に対する障害物の横相対距離X及び縦相対距離Yの説明に使用した図である。
【図4】自車両及び障害物の予測進路並びに自車両と障害物との予測衝突位置の説明に使用した図である。
【図5】障害物の予測進路を示す図形と障害物との予測衝突位置を示す図形とを重畳した画像の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態における車両の障害物表示装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態におけるコントローラの衝突回避方法表示の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】運転者による制動操作により衝突回避が可能と判定した場合の画像の一例を示す図である。
【図9】運転者による操舵操作により衝突回避が可能と判定した場合の画像の一例を示す図である。
【図10】衝突回避方法の衝突回避判定用テーブルの例を示す特性図である。
【図11】衝突回避方法の衝突回避判定用テーブルの例を示す特性図である。
【図12】第3の実施形態の車両が備える車両の障害物回避報知装置の構成を示すブロック図である。
【図13】第3の実施形態における車両の障害物回避報知装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図14】第3の実施形態におけるコントローラの衝突回避方向判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】後側方センサを備える車両の後側方に後側障害物がある場合の説明に使用した図である。
【図16】操舵回避方向を示す図形を重畳した画像の一例を示す図である。
【図17】操舵回避方向を示す図形を重畳した他の画像の一例を示す図である。
【図18】第4の実施形態における車両の障害物回避報知装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図19】第5の実施形態における車両の障害物回避報知装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図20】第5の実施形態におけるコントローラの衝突回避方法判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図21】操舵回避方向を示す図形と操舵操作により衝突回避が可能である旨を示す画像とを重畳した画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 カメラ
2 レーダ
3 ナビゲーション装置
4 車速センサ
5 ヨーレイトセンサ
6 ステアリングセンサ
7 ターンシグナル
8 コントローラ
9 表示装置
10 警報装置
11 後方センサ
12 後側方センサ
13 ブレーキコントローラ
14 ステアリングコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両に対する障害物の存在を運転者に画像表示により報知する車両の障害物表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の障害物表示装置として、赤外線カメラにより撮像した障害物に関する撮像画像と、レーダで検出した当該障害物と自車両との位置関係とをディスプレイに表示するものがある(例えば特許文献1参照)。この車両の障害物表示装置では、具体的には、ディスプレイ上で車線区分線の輪郭を強調表示したり、障害物の移動方向を矢印にて表示したりすることで、当該ディスプレイ表示から運転者が障害物の位置を容易に判別できるようにしている。例えば、障害物の移動方向を矢印で表示することで、自車両に対して危険性のある障害物を運転者が容易に判別できるようになる。
【特許文献1】特開2001−101596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の障害物表示装置では、障害物の移動方向を矢印で表示しているだけなので、当該障害物について危険性(衝突可能性)があるのか否かを運転者は瞬時に判断できない。また、障害物が複数存在すれば、各障害物毎に移動方向に矢印を表示することになる。しかし、これでは、各障害物について運転者がその危険性を瞬時に判断することが困難となる。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、障害物の危険性を運転者が瞬時に判断することができる障害物表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の車両の障害物表示装置は、自車両と衝突可能性のある障害物を含む自車両周囲の撮像画像に、当該障害物の予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を重畳して、画像表示する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の車両の障害物表示装置によれば、障害物の危険性を運転者が瞬時に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
第1の実施形態は、本発明に係る車両の障害物表示装置を搭載した車両である。
この車両は、車両の障害物表示装置として、図1に示すように、カメラ1、レーダ2、ナビゲーション装置3、車速センサ4、ヨーレイトセンサ5、ステアリングセンサ6、ターンシグナル7、コントローラ8、表示装置9及び警報装置(音声出力装置)10を備えている。
【0007】
図2は、コントローラ8で行う演算処理手順を示す。演算処理は、例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって実行される。なお、この図2に示す処理内には通信処理を設けていないが、演算処理によって得られた情報は随時記憶装置に更新記憶されると共に、必要な情報は随時記憶装置から読出される。
先ずステップS1において、各種データを読み込む。具体的には、自車両周囲のデータとして、カメラ2から自車両前方の撮像画像、レーダ(特に前方レーダ)1から前方車両等の障害物(以下、前方障害物という。)との相対距離や相対速度、ナビゲーション装置から走行路形状等の各種データを検出し、自車両の走行状態のデータとして、車速センサ4から自車速、ヨーレイトセンサ5から自車両のヨーレイト、ステアリングセンサ6から舵角、ターンシグナル7から進路変更等の各種データを検出する。
【0008】
なお、前方障害物には、自車レーンの前方に存在する障害物の他に、自車レーン外(例えば隣接走行レーン)に存在する障害物をも含むものとする。
続いてステップS2において、前方障害物を検出する。ここでは、前記撮像画像又はレーダ1の検出結果に基づいて、前方障害物を検出する。ここで、前方障害物を検出した場合、ステップS3に進み、前方障害物を検出できない場合、当該図2に示す処理を終了する。
【0009】
ステップS3では、前記ステップS2で検出した前方障害物の進路を予測する。具体的には、レーダ2で検出した前方障害物の位置(又は相対距離)及び速度(又は相対速度)のデータを蓄積しておき、その蓄積した時系列データを直線近似等して前方障害物の進路を自車両との対比で予測する。すなわち、自車両100に対して視野角θ及び相対距離Dの位置に前方障害物(前方車両)101があるとき、自車両100に対する前方障害物101の横相対距離X及び縦相対距離Yを下記(1)式で算出できる(図3参照)。
X=D・sinθ
Y=D・cosθ
・・・(1)
【0010】
そして、このように定義する横相対距離X及び縦相対距離Yについて、今回のn回目の相対距離のデータ(Xn,Yn)と、前回のn−1回目の相対距離のデータ(Xn−1,Yn−1)とに基づいて、現時点からt時間後における予測相対距離(X,Y)を下記(2)式により算出できる。
X=(Xn−Xn−1)/T*t+Xn
Y=(Yn−Yn−1)/T*t+Yn
・・・(2)
ここで、Tは相対距離Dの検出周期(算出周期)である。
【0011】
ここで、図4を用いて、予測相対距離(X,Y)を説明する。
この図4に示すように、自車両100及び前方障害物(先行車両)101とは、ある時点からT1時間後、さらにその後のT2時間後に、それぞれある位置を走行することになり、その各時点T1,T2における自車両100の位置と前方障害物101の位置との差分が当該各時点における相対距離Dになる。
なお、過去数回分の相対距離のデータに基づいて相対加速度を算出し、その算出した相対加速度をt時間後の相対距離の予測に反映させても良い。また、過去数回分の相対距離のデータをスプライン関数等で近似してt時間後の相対距離を予測しても良い。これにより、相対距離の予測の精度を上げることができる。
【0012】
また、レーダ2に換えて、複数のカメラからなるいわゆるステレオカメラを用いて、前方障害物との相対距離を検出しても良い。例えば、2台のカメラからなるステレオカメラを用いるとすれば、各カメラの画像の対応点(エッジなど)を抽出し、その抽出した対応点から視差Pdを求める。そして、その視差Pdを用いて、下記(3)式により、前方障害物との相対距離Dを算出する。
D=L・Z/Pd ・・・(3)
ここで、Lはカメラ間の距離であり、Zは焦点距離である。
【0013】
続いてステップS4において、自車両の進路を予測する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだ車速センサ4が検出した自車速、ヨーレイトセンサ5が検出した自車両のヨーレイト、ステアリングセンサ6が検出した舵角等の自車両の走行状態のデータに基づいて、現時点からt時間(前記ステップS3で予測相対距離の算出に用いたのと同じ時間)後の自車両の位置を予測する。
【0014】
例えば、前記図4における自車両100は一定速度Vで走行しているものであり、よって、例えば、自速度Vと時間tとの乗算値V・tは走行距離を示すものとなる。
続いてステップS5において、前記ステップS3で得た前方障害物の予測進路(予測相対距離)と、前記ステップS4で得た自車両の予測進路とに基づいて、将来(前記t時間後)における自車両と前方障害物とが衝突する可能性があるか否かを判定する。
【0015】
具体的には、前記ステップS3で算出したt時間後における横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方又はいずれか一方が0となる場合、衝突可能性あり(又は衝突可能性が高い)と判定する。そして、このとき、前記ステップS4において検出した自車両の進路予測結果を参照し、その進路予測結果が、自車両と前方障害物とが衝突しない方向、すなわち横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方が0にならないように、自車両が回避操作等で進路変更している場合には、衝突可能性がない(又は衝突可能性が低い)と判定する。
【0016】
例えば、図4に示すように、時間T2に横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方が0になる場合であり、この場合、時間T1と時間T2との時間間隔が前記相対距離の算出に用いた時間tであれば、時間T1の時点で、衝突可能性ありと判定することになる。
また、このように時間T2に横予測相対位置X及び縦横予測相対距離Yの両方が0になる場合でも、前記ステップS4の検出結果から時間T2時点の自車両100の進路が変更すると予測した場合には、衝突可能性がないと判定する。
【0017】
このステップS5において、衝突可能性があると判定した場合(又は衝突可能性が高い場合)、ステップS6に進み、衝突可能性がないと判定した場合(又は衝突可能性が低い場合)、当該図2に示す処理を終了する。
ステップS6では、前方障害物について画像処理を行う。具体的には、図5に示すように、自車両と前方障害物との予測衝突位置(予測接触位置)を示す情報をなす図形(以下、予測衝突位置報知情報という。)D1、さらに前方障害物の予測進路D2を示す情報をなす図形(以下、予測進路報知情報という。)D2を、カメラ1で撮像した撮像画像(特に当該撮像画像内の前方障害物)に重畳した画像D0を作成する。
【0018】
ここで、予測進路報知情報D2は、運転者の認知のし易さの観点から、矢印等、単純化したものにする。また、前方障害物を示す図形(以下、前方障害物報知情報という。)D3は、その輪郭の輝度を変えたり、当該前方障害物を図形で囲ったりする(四角形の図形で囲ったりする)。また、前方障害物付近に文字表示(例えば、「注意!」といった文字表示D4)を表示する。さらに、危険度や接近距離に応じて、前方障害物報知情報D3や文字表示を変化させる。例えば、危険度が高くなるほど、又は相対距離が小さくなるほど、黄色点灯、赤色点灯、赤色点滅といった順番で変化させていく。
【0019】
なお、予測進路、予測衝突位置及び前方障害物を示すものとして、具体的な図形を挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、運転者が認識又は運転者に注意喚起できるものであれば、他の方法、例えば図形、文字情報等を用いても良い。
続いてステップS7において、前記ステップS6で作成した画像を表示装置9により表示する。これにより、表示装置9には、カメラ1の撮像画像が表示されるとともに、その画像中に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報が表示される。例えば、表示装置9は、車内で運転者が見やすい位置に設置されている。
【0020】
続いてステップS8において、警報装置10により警報(警報音)を出力する。このとき、前記表示装置9への画像出力と同時に警報出力をしても良いが、これに限定されない。例えば、警報出力前に、ターンシグナル7がONになったり、ヨーレイトセンサ5やステアリングセンサ6等の検出結果から運転者が回避操作をしていると判定できたりした場合、警報出力を行わない。
【0021】
以上の処理による一連の動作は次のようになる。
先ず、各種データを読み込み、さらに前方障害物を検出する(前記ステップS1、ステップS2)。続いて、将来(t時間後)の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3、ステップS4)、それら前方障害物、自車両それぞれの予測進路に基づいて、自車両と前方障害物との衝突可能性を判定する(前記ステップS5)。ここで、自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳して画像を作成して、その作成画像を表示装置9に表示する(前記ステップS6、ステップS7)。さらに、必要に応じて警報装置10により警報(警報音)を出力する(前記ステップS8)。
【0022】
次に第1の実施形態における効果を説明する。
前述したように、将来の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3及びステップS4)、それら前方障害物、自車両の予測進路に基づいて将来において自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合(前記ステップS5)、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳した画像を表示装置9に表示している(前記ステップS6及びステップS7)。これにより、表示装置9の表示画像中に、撮像画像中の前方障害物に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報が対応して表示されるので、その表示により、運転者は、その前方障害物についての危険性(衝突可能性)を瞬時に判断できるようになる。
【0023】
ここで、前方障害物が複数存在する場合には、それら全ての前方障害物について予測進路報知情報及び予測衝突位置情報を画像表示するようにする。このとき、自車両と衝突可能性がある前方障害物に限定して、その予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示しても良く、衝突可能性が一番高い前方障害物だけに限定してその予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示しても良い。これにより、前方障害物が複数存在する場合でも、どの前方障害物が衝突可能性のあるかを運転者が瞬時に判断することができるようになる。
【0024】
次に第2の実施形態を説明する。
この第2の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、本発明に係る車両の障害物表示装置を搭載した車両である。この第2の実施形態では、自車両と前方障害物とが衝突する可能性がある場合に、運転者の制動操作や操舵操作でその衝突を回避できるときには、その衝突回避方法を運転者に表示により報知している。
【0025】
図6は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第1の実施形態における図2の処理に対応するものである。
第2の実施形態では、この図6に示すように、ステップS7で障害物の予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を表示した後に、ステップS10として衝突回避方法表示処理を行っている。図7は、その処理の処理手順の一例を示す。
【0026】
先ずステップS11において、運転者の制動操作(ブレーキペダル操作)により衝突回避可能か否かを判定する。ここで、例えば衝突回避判定用テーブルを用いて、その判定を行う。このステップS11で運転者の制動操作により衝突回避可能であると判定した場合、ステップS13に進み、運転者の制動操作により衝突回避不可能と判定した場合、ステップS12に進む。
【0027】
ステップS12では、運転者の制動操作で衝突回避可能な周囲環境か否かの判定を行う。周囲環境として、例えば、後続車両がいるか否か、さらにその後続車両との車間距離や相対速度等を検出する。そして、その検出結果に基づいて、運転者の制動操作で衝突回避可能か否かを判定する。
このステップS12で運転者の制動操作で衝突回避可能な周囲環境であると判定した場合には、ステップS15に進み、そうではない場合、例えば、車間距離や相対速度から後続車両が自車両に接近状態にあると判定した場合、当該図6の示す処理(ステップS10)を終了する。
【0028】
なお、周囲環境の情報については、ナビゲーション情報、画像情報、車車間通信等により取得する。例えば、後続車両についての接近情報を当該後続車両との車車間通信により取得する。
ステップS13では、運転者の操舵操作により衝突回避可能か否かを判定する。ここで、例えば衝突回避判定用テーブルを用いて、その判定を行う。このステップS13で操舵操作により衝突回避可能であると判定した場合、ステップS14に進み、運転者の操舵操作により衝突回避不可能と判定した場合、当該図6の示す処理(ステップS10)を終了する。
【0029】
ステップS14では、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境か否かの判定を行う。周囲環境として、例えば、後続車両、特に、前方障害物との衝突を操舵操作で回避する方向(右側又は左側のいずれか一方)に関し、隣接車線を走行する後続車両や自車両を追い越そうとしている後続車両がいるか否かを検出し、さらには、その後続車両との車間距離や相対速度等をも検出する。そして、その検出結果に基づいて、運転者の操舵操作で衝突回避可能か否かを判定する。
【0030】
このステップS14で運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境であると判定した場合には、ステップS15に進み、そうではない場合、例えば、操舵操作により衝突を回避する方向の隣接車線を走行する後続車両が自車両に接近状態にあり、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境にない場合、当該図6の示す処理(ステップS10)を終了する。
なお、周囲環境の情報については、ナビゲーション情報、画像情報、車車間通信等により取得する。例えば、隣接車線を走行する後続車両や自車両を追い越そうとしている後続車両についての接近情報を、当該後続車両との車車間通信により取得する。
【0031】
また、周囲環境の情報として前述したような後続車両の存在の有無を用いることに限定されるものではなく、他の情報、例えば、ナビゲーション情報として得た走行路の車線数を周囲環境の情報としても用いても良い。この場合、隣接車線が追い越し車線であれば、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境にあると判定し、隣接車線が追い越し車線ではない場合、例えば、隣接車線が対向車線の場合、運転者の操舵操作で衝突回避可能な周囲環境にないと判定する。
【0032】
ステップS15では、衝突回避方法を画像表示する。具体的には、前記ステップS11及びステップS12で運転者の制動操作により衝突回避可能と判定した場合、その旨を示す画像を作成して、その作成した画像を表示装置9にて表示する。例えば、図8に示すように、運転者の制動操作による衝突回避が可能な旨を示す情報をなす「ブレーキ!」といった文字表示(以下、制動回避可能報知情報という。)D5をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像D0を表示する。
【0033】
また、前記ステップS13及びステップS14で運転者の操舵操作により衝突回避可能と判定した場合、その旨を示す画像を作成して、その作成した画像を表示装置9にて表示する。例えば、図9に示すように、運転者の操舵操作による衝突回避が可能な旨を示す情報をなす操舵方向を示す矢印の図形(以下、操舵回避可能方向報知情報という。)D6をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像D0を表示する。このとき、操舵方向を示す矢印の方向は、前記ステップS14の判定結果に基づき、自車両に接近する又は衝突可能性のある後続車両が存在しない方向を示すものとなる。
【0034】
なお、前述したように、前方障害物報知情報が、前方障害物を四角形の図形で囲う図形D3の場合、この図8及び図9に示すようになる。
また、前記衝突回避判定用テーブルについては、例えば特開2003−175809号公報に記載の技術を用いることができる。例えば、図10(同公報の図10)及び図11(同公報の図11)に示す衝突回避判定用テーブルを用いる。図10及び図11の概要は次のようになる。
【0035】
図10は、前方障害物との相対速度Vr及び相対距離d(D)に基づいて、制動操作及び操舵操作による衝突回避(接触回避)の可能性を判定するために用いる特性図である。
一方、図11中、曲線L11は、運転者の制動操作により衝突回避が可能な相対距離dの限界(以下、制動回避限界という。)を示し、この曲線L11の特性によれば、制動回避限界は、相対速度Vrが増加するにつれて大きくなり且つ相対速度Vrが大きいほどその変化度合いが大きくなる。また、同図中、直線L12は、運転者の操舵操作により衝突回避が可能な相対距離Lの限界(以下、操舵回避限界という。)を示し、この直線L12の特性によれば、操舵回避限界は、相対速度Vrが増加するにつれてこれに比例して大きくなる。
【0036】
そして、この図11に示す制動回避限界及び操舵回避限界の特性から、図10に示すように、制動操作及び操舵操作による衝突回避が共に不可となる限界は、相対速度Vrが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とが一致する一致相対速度Vr*以下の場合、制動回避限界L11、相対速度VrがVr*以上の場合、操舵回避限界L12となる、特性線L1で表される。
【0037】
また、規定時間(所定時間)TcB及びTcS経過後に制動操作及び操舵操作による衝突回避が共に不可となると予測される相対距離dを表す特性線L2は、相対速度Vrが一致相対速度Vr*よりも大きい領域では、特性線L1よりも規定時間TcSに相当する距離だけ離れた相対距離d、相対速度Vrが一致相対速度Vr*よりも小さい領域では、特性線L1よりも規定時間TcBに相当する距離だけ離れた相対距離dとなる。
【0038】
以上のように定義される図10及び図11を用いて判定を行う。すなわち、相対速度Vr及び相対距離dが、図10に示す特性線L2と特性線L1で挟まれる領域になった場合、規定時間TcB及びTcS経過後に制動操作及び操舵操作による衝突回避が共に不可となると予測されると判定する。
そして、この予測判定時に、当該相対速度Vrが一致相対速度Vr*以下の場合で、かつ相対速度Vr及び相対距離dが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とで挟まれる領域になっている場合には、前記ステップS11において、運転者の制動操作により衝突回避可能と判定して、ステップS12に進む。そして、前述したように、ステップS12では、自車両の周囲環境に基づいて、運転者の制動操作により衝突回避可能か否かをさらに判定し、ここで、運転者の制動操作により衝突回避可能と判定した場合、ステップS15に進む。
【0039】
一方、前述したように、衝突回避が共に不可となると予測されると判定された場合において、当該相対速度Vrが一致相対速度Vr*よりも大きい場合で、かつ相対速度Vr及び相対距離dが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とで挟まれる領域になっている場合には、前記ステップS13において、運転者の操舵操作により衝突回避可能と判定して、ステップS14に進む。そして、前述したように、ステップS14では、自車両の周囲環境に基づいて、運転者の操舵操作により衝突回避可能か否かをさらに判定し、ここで、運転者の操舵操作により衝突回避可能と判定した場合、ステップS15に進む。
【0040】
このような図10や図11に示すような衝突回避判定用テーブルを用いることで、所定時間経過後には運転者が運転操作しても前方障害物に対する衝突を回避できなくなると判定した場合、衝突回避方法が画像表示される(ステップS9)。すなわち、運転者が運転操作しても前方障害物に対する衝突を回避できなくなる所定時間前に、衝突回避方法が画像表示される。
【0041】
これにより、自車両及前方障害物の予測進路に基づいて前方障害物と衝突可能性ありと判定し、かつ所定時間経過後には運転者が運転操作しても当該前方障害物に対して自車両が衝突を回避できなくなると判定した場合に、最適な衝突回避方法が画像表示される。衝突可能性の判定に着目して言い換えれば、前方障害物に対して運転者の運転操作により衝突回避可能とされる所定期間内に、当該前方障害物についてその予測進路に基づいて衝突可能性を判定し、その判定結果に基づいて、最適な衝突回避方法を画像表示しているとも言える。
【0042】
以上の処理による一連の動作は次のようになる。
前記第1の実施形態と同様に、先ず、各種データを読み込み、さらに前方障害物を検出する(前記ステップS1、ステップS2)。続いて、将来(t時間後)の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3、ステップS4)、それら前方障害物、自車両それぞれの予測進路に基づいて、自車両と前方障害物との衝突可能性を判定する(前記ステップS5)。ここで、自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳して画像を作成して、表示装置9に画像表示している(前記ステップS6、ステップS7)。さらに、必要に応じて警報装置10により警報(警報音)を出力する(前記ステップS8)。
【0043】
さらに、第2の実施形態では、衝突回避方法表示を行っている(前記ステップS10)。すなわち、運転者の制動操作により衝突回避可能であり、かつその運転者の制動操作による衝突回避が可能な周囲環境にあると判定した場合、その旨を示す制動回避可能報知情報(例えば「ブレーキ!」の文字表示)をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を作成して、表示装置9に画像表示している(前記ステップS11、ステップS12、ステップS15)。また、運転者の操舵操作により衝突回避可能であり、かつその運転者の操舵操作による衝突回避が可能な周囲環境にあると判定した場合、その旨を示す操舵回避可能方向報知情報(例えば、操舵方向を示す矢印の図形)をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を作成して、表示装置9にて表示する(前記ステップS13〜ステップS15)。
【0044】
次に第2の実施形態における効果を説明する。
前述したように、将来において自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合(前記ステップS5)、周囲環境に基づいて、運転者の制動操作や操舵操作で衝突回避が可能か否かを判定して(前記ステップS11〜ステップS14)、運転者の運転操作による衝突回避が可能な場合には、その可能な運転操作を示す情報(制動回避可能報知情報や操舵回避可能方向報知情報)をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を表示装置9に表示している(前記ステップS15、ステップS10)。これにより、表示装置9の表示画像中に、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を表示するとともに、制動回避可能報知情報や操舵回避可能方向報知情報として衝突回避方法が表示されるので、その表示により、運転者は、その前方障害物についての危険性(衝突可能性)と、さらには、その衝突回避方法とを瞬時に判断できるようになる。
【0045】
また、前述したように、運転者の操舵操作により衝突回避が可能と判定した場合には、その操舵操作による回避方向を表示している(前記図9参照)。これにより、運転者が操舵操作による衝突回避をする場合でも、最適な回避方向を運転者が瞬時に判断することができる。
また、前述したように、前方障害物との相対距離や相対速度に基づいて、運転者による制動操作や操舵操作で衝突回避が可能と判定した場合でも、後続車両の存在の有無等の周囲環境に基づいて、最終的にその判定を確定している(前記ステップS12、ステップS14)。
【0046】
このように、自車両の周囲環境に基づいて最終的に運転操作による衝突回避方法を決定することで、運転者は、後続車両等との接触や急接近を防止しつつ、前方障害物との衝突を回避するための衝突回避方法を瞬時に判断することができる。
また、前述したように、衝突回避判定用テーブルとして、図10や図11に示すものを用いることで、所定時間経過後には運転者が運転操作しても前方障害物に対して衝突回避不可能となることを条件に、衝突回避方法を判定している。すなわち、所定時間経過後の衝突回避可能性を基準に、衝突回避方法を判定している。これにより、より最適な条件、タイミングで衝突回避方法が画像表示されるようになる。これにより、運転者が衝突回避のための運転操作を不要に行ってしまうのを防止し、かつ運転者による衝突回避のための運転操作が遅れてしまうのを防止できる。
【0047】
なお、前記第2の実施形態では、運転者の運転操作による衝突回避方法として、制動操作(ブレーキペダル操作)と操舵操作とを挙げて説明した。しかし、これに限定されるものではない。例えば、運転者のシフトダウンによるエンジンブレーキ等の他の運転者の運転操作による衝突回避方法であっても良い。
また、前記第2の実施形態では、運転者の運転操作による衝突回避方法として制動操作と操舵操作のいずれか一方を選択しているが、制動操作と操舵操作との両方で衝突回避が可能であれば、それら両方により衝突回避が可能である画像表示をするようにしても良い。
【0048】
また、前記第2の実施形態では、前述したように、所定時間経過後には運転者が運転操作しても前方障害物に対して衝突回避不可能となることを条件に、衝突回避方法を判定している。すなわち、衝突回避方法の判定のために、所定時間経過後における運転者の運転操作による衝突回避可能性の条件を用いている。しかし、これに限定されるものではない。
【0049】
例えば、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示するために行う前方障害物との衝突可能性の判定に、当該条件を用いても良い。すなわち、自車両、前方障害物の予測進路に基づいて前方障害物との衝突可能性を判定するとともに、所定時間経過後における運転者の運転操作による衝突回避可能性を判定して、それら判定結果に基づいて、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示する。このようにすることで、自車両、前方障害物の予測進路に基づいて前方障害物との衝突可能性があり、かつ所定時間経過後に運転者が運転操作しても衝突回避が可能性となると判定した場合、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を画像表示することがきる。
これにより、予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を不要に画像表示してしまうのを防止して、運転者が不要に衝突回避行動を採ってしまうのを防止できる。
【0050】
次に第3の実施形態を説明する。
この第3の実施形態は、車両の障害物回避報知装置を搭載した車両である。この第3の実施形態では、車両の障害物回避報知装置により、自車両と前方障害物とが衝突する可能性がある場合において、自車両の後側方に存在する障害物(以下、後側方障害物という。)を考慮して、前方障害物に対する最適な衝突回避方向(操舵回避方向又は衝突回避進路)を運転者に報知している。
【0051】
この車両は、車両の障害物回避報知装置として、図12に示すように、カメラ1、レーダ2、ナビゲーション装置3、車速センサ4、ヨーレイトセンサ5、ステアリングセンサ6、ターンシグナル7、コントローラ8、表示装置9及び警報装置(音声出力装置)10を備えている。さらに、車両の障害物回避報知装置は、後方センサ(後方レーダ)11、後側方センサ(後側方レーダ)12、ブレーキコントローラ13及びステアリングコントローラ14を備えている。
【0052】
図13は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第1の実施形態における図2の処理に対応するものである。この図13に示すように、ステップS5で前方障害物に対する衝突可能性の判定をした後に、ステップS20として衝突回避方向判定処理を行い、さらに、ステップS7で予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を表示した後に、ステップS30として衝突回避方向表示処理を行っている。図14は、ステップS20の衝突回避方向判定処理の処理手順の一例を示す。
【0053】
先ずステップS21において、後側方障害物を検出する。ここでは、後側方センサ12の検出結果に基づいて、後側方障害物を検出する。ここで、後側方障害物を検出した場合、ステップS22に進み、後側方障害物を検出できない場合、ステップS24に進む。
ステップS22では、後側方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。例えば、後側方センサ12の検出結果に基づいて、自車両と後側方障害物との相対距離、相対速度を算出して、その算出結果に基づいて、後側方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。例えば、後側方センサ12による後側方障害物102の検出領域は、図15に示すように、自車両100の左右後側方の領域(同図中のハッチング領域)Aになる。
【0054】
このステップS22で後側方障害物が自車両に接近中と判定した場合、ステップS23に進み、後側方障害物が自車両に接近中ではないと判定した場合、ステップS24に進む。
ステップS23では、前方障害物に対する衝突回避方向を決定する。具体的には、前記ステップS22で判定した接近中の後側方障害物が存在しない側を衝突回避方向又は衝突回避進路として決定する。
また、ステップS24では、前方障害物に対する衝突回避方向は任意である決定をする(衝突回避方向の決定はしない)。
以上のように衝突回避方向判定を行っている。
【0055】
続いて、前記第1の実施形態と同様に、ステップS6で前方障害物の画像処理を行い(画像を作成し)、続くステップS7で撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳した画像を表示装置9に表示する。
そして、ステップS30として衝突回避方向表示を画像表示する。すなわち、ステップS30では、前記ステップS20の衝突回避方向判定で衝突回避方向を決定している場合(前記ステップS23)、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。例えば、図16に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす衝突回避方向を示す矢印の図形D7を重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0056】
また、前記ステップS20の衝突回避方向判定で衝突回避方向が任意であるとする決定した場合(前記ステップS24)、その旨を示す情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に画像表示する。例えば、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす左右両方向を示す矢印の図形を重畳した画像を表示装置9に表示する。
【0057】
なお、このとき、後側方障害物についても、前方障害物について行っていると同様に、図16に示すように、その予測進路報知情報をなす図形(例えば矢印の図形)D8及び予測衝突位置報知情報をなす図形D9を撮像画像に重畳して画像表示しても良い。例えば、後側方障害物との予測衝突位置については、前方障害物との衝突回避のために当該後側方障害物が走行する車線側に運転者が操舵操作したならば、当該後側方障害物に自車両が衝突すると予測される位置である。
【0058】
また、図16に示すように、前方障害物101や後側方障害物102といった複数の障害物が存在している場合に、それら障害物それぞれに予測進路報知情報をなす図形D2,D8や予測衝突位置報知情報をなす図形D1,D9を画像表示してしまうと、却って運転者に与える情報が多くなってしまい、情報を提供することの効果が却って減少してしまう。例えば、衝突回避方向を示す表示の認知度合いが低下してしまう。
このようなことから、運転者に与える情報が多くなった場合には、図17に示すように、障害物についての予測進路や予測衝突位置よりも運転者の情報利用価値が高い操舵回避可能方向報知情報をなす矢印の図形D7のみを画像表示する。
【0059】
以上の処理による一連の動作は次のようになる。
前記第1の実施形態と同様に、先ず、各種データを読み込み、さらに前方障害物を検出する(前記ステップS1、ステップS2)。続いて、将来(t時間後)の前方障害物、自車両のそれぞれの進路を予測し(前記ステップS3、ステップS4)、それら前方障害物、自車両それぞれの予測進路に基づいて、自車両と前方障害物との衝突可能性を判定する(前記ステップS5)。ここで、自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合、カメラ1で撮像した撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳して画像を作成して、その作成画像を表示装置9に表示する(前記ステップS6、ステップS7)。さらに、必要に応じて警報装置10により警報(警報音)を出力する(前記ステップS8)。
【0060】
さらに、第3の実施形態では、後側方障害物の有無に基づいて衝突回避方向判定を行い、その衝突回避方向判定で衝突回避方向を決定した場合、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を作成し、表示装置9に画像表示する(前記ステップS20、ステップS30)。
これにより、図15に示すように、将来において自車両100が前方障害物101に衝突する可能性がある状況下で、自車両100に右後方から後側方障害物102が接近している場合、図16に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす左方向を示す矢印の図形D7が重畳された画像D0が表示装置9に表示される。
【0061】
次に第3の実施形態における効果を説明する。
前述したように、将来において自車両と前方障害物とが衝突可能性ありと判定した場合(前記ステップS5)、さらに、後側方障害物に基づいて衝突回避方向判定を行い、その衝突回避方向判定で衝突回避方向を決定した場合、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳した画像を表示装置9に表示している(前記ステップS20、ステップS30)。これにより、表示装置9の表示画像中に、自車両に接近する後側方障害物を考慮した操舵回避可能方向報知情報が表示されるので、それに応じて運転者が操舵操作することで、自車両と前方障害物との衝突の回避をするとともに、自車両が後側方障害物に急接近してしまうのを防止できる。
なお、前記第3の実施形態では、操舵回避可能方向報知情報が撮像画像に重畳する図形である場合を説明した。しかし、これに限定されるものではない。すなわち、操舵回避可能方向報知情報は音声によるものであっても良い。
【0062】
次に第4の実施形態を説明する。
この第4の実施形態は、前記第3の実施形態と同様に、車両の障害物回避報知装置を搭載した車両である。この第4の実施形態では、前方障害物に対する衝突回避方向に衝突回避アシスト制御している。
図18は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第3の実施形態における図13の処理に対応するものである。この図18に示すように、ステップS30で衝突回避方向表示をした後に、ステップS31として衝突回避アシスト制御を行っている。
【0063】
衝突回避アシスト制御では、コントローラ8から前記図12に示すステアリングコントローラ14に制御指令値を出力し、ステアリングコントローラ14により電動ステアリング等のステアリングアクチュエータの動作を制御している。このとき、前記ステップS20で決定した衝突回避方向に所定のアシスト力が発生するように、すなわち補舵となるように、ステアリングアクチュエータの動作を制御している。
【0064】
なお、衝突回避アシスト制御をステアリング制御により行うことに限定されるものではない。例えば、衝突回避アシスト制御をブレーキ制御により行っても良い。この場合、コントローラ8から図12に示すブレーキコントローラ13に制御指令値を出力し、ブレーキコントローラ13によりブレーキアクチュエータの動作を制御する。このとき、前記ステップS20で決定した衝突回避方向に旋回するようなヨーモーメントが自車両に付与されるように左右輪に制動力差を発生させる。
【0065】
また、衝突回避アシスト制御として、前記ステアリング制御と前記ブレーキ制御との両方を行っても良い。
また、このような衝突回避アシスト制御(ステップS31)と操舵回避可能方向報知情報の表示(ステップS30)とを選択的に行うようにしても良い。すなわち、運転者の認識可能性(例えば視覚又は体感による認識可能性)等の所定の条件に応じて、衝突回避アシスト制御と操舵回避可能方向報知情報の表示とを選択的に行うようにする。
【0066】
次に第4の実施形態における効果を説明する。
前述したように、補舵や自車両にヨーモーメントを付与することで衝突回避アシスト制御を行っている。これにより、運転者は、衝突回避可能な方向をより早く知ることができ、すなわち、補舵や自車両にヨーモーメントを付与による衝突回避アシストが、運転者による操舵操作を促し、これが衝突回避方向を報知する手段として作用し、これにより、運転者は、速やかに衝突回避方向への操舵行動に移ることができる。例えば、運転者が表示装置9を見ていない状況下では、操舵回避可能方向報知情報の画像表示(前記ステップS30)を運転者が認識できないから、衝突回避アシスト制御による衝突回避方向の報知はより効果的なものとなる。
【0067】
次に第5の実施形態を説明する。
この第5の実施形態は、前記第3の実施形態と同様に、車両の障害物回避報知装置を搭載した車両である。この第5の実施形態では、自車両の後方の障害物の状況を考慮して、制動操作により前方障害物に対する衝突回避を促す報知をしている。
図19は、コントローラ8による処理を示し、例えば前記第3の実施形態における図13の処理に対応するものである。この図19に示すように、ステップS5で前方障害物について衝突可能性を判定した後(衝突可能性ありと判定した場合)、ステップS40として衝突回避方法を判定している。図20は、その処理の処理手順の一例を示す。
【0068】
先ずステップS41において、自車両の後方の障害物(以下、後方障害物という。)を検出する。ここでは、後方障害物には、自車レーン内で自車両の後方にある障害物の他に、前記図15に示すように、自車両の後側方にある障害物102(前記第3及び第4の実施形態における検出対象)をも含むものとする。
そして、後方センサ11及び後側方センサ12の検出結果に基づいて、後方障害物を検出する。ここで、後方障害物を検出した場合、ステップS42に進み、後方障害物を検出できない場合、ステップS49に進む。
【0069】
ステップS42では、後方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。例えば、後方センサ11及び後方センサ12の検出結果に基づいて、自車両と後方障害物との相対距離、相対速度を算出して、その算出値に基づいて、後方障害物が自車両に接近中か否かを判定する。
このステップS42で後方障害物が自車両に接近中と判定した場合、ステップS43に進み、後方障害物が自車両に接近中ではないと判定した場合、ステップS49に進む。
【0070】
ステップS43では、後方障害物が接近していても運転者の操舵操作により前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定する。ここで、前記衝突回避が可能な場合、ステップS44に進み、前記衝突回避が不可能な場合、ステップS47に進む。例えば、運転者が操舵操作により前方障害物に対する衝突回避行動を採ったとしたならば、後側方センサ12で検出した後方障害物(後側方障害物)と接触する可能性がある場合、前記衝突回避が不可能と判定する。
【0071】
ステップS44では、後方障害物が接近中であっても運転者の制動操作により前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定する。ここで、前記衝突回避が可能な場合、ステップS45に進み、前記衝突回避が不可能な場合、ステップS46に進む。例えば、運転者が制動操作(減速操作)により前方障害物に対する衝突回避行動を採ったとしたならば、後方センサ11で検出した後方障害物(自車レーン内の後方障害物)と接触する可能性がある場合、前記衝突回避が不可能と判定する。
【0072】
また、ステップS47でも同様に、後方障害物が接近中であっても運転者の制動操作により前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定する。ここで、前記衝突回避が可能な場合、ステップS48に進み、前記衝突回避が不可能な場合、当該図20に示す処理(ステップS40)を終了する。
ステップS45、すなわち、後方障害物が接近中であっても運転者の操舵操作及び制動操作により前方障害物に対する衝突回避が可能であると判定した場合、操舵操作と制動操作とにより衝突回避が可能であると決定する。さらに、操舵操作による衝突回避方向を決定する。ここで、前記ステップS42で判定した接近中の後方障害物(後側方障害物)が存在しない側を衝突回避方向として決定する。
【0073】
また、ステップS46、すなわち、後方障害物(特に自車レーン内の後方障害物)が接近しているから、運転者の操舵操作のみにより前方障害物に対する衝突回避が可能であると判定した場合、その衝突回避方向(操舵操作回避方向)を決定する。
また、ステップS48、すなわち、後方障害物(特に後側方障害物)が接近しているから、運転者の制動操作のみにより前方障害物に対する衝突回避が可能であると判定した場合、制動操作による衝突回避が可能であることを決定する。
【0074】
また、ステップS49、すなわち、後方障害物を検出していなく、又は後方障害物を検出したが、当該後方障害物が自車両に接近していない場合、操舵操作及び制動操作のどれでも前方障害物に対する衝突回避が可能であるから、操舵操作と制動操作とによる衝突回避が可能であることを決定する。ここで、操舵操作による衝突回避方向は、左右任意の方向であると決定する。
【0075】
以上のように衝突回避方法判定を行っている。
続いて、前記第3の実施形態と同様に、ステップS6で前方障害物の画像処理を行い、続くステップS7で撮像画像に予測進路報知情報及び予測衝突位置報知情報を重畳した画像を常時装置9に表示する。
そして、ステップS50として、前記ステップS40の衝突回避方法判定における決定事項に基づいて、衝突回避方法を報知する。
【0076】
具体的には、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、操舵操作による衝突回避方向を決定した場合(前記ステップS46)、その衝突回避方向を示す操舵回避可能方向報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。前記図16に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす衝突回避方向を示す矢印の図形D7を重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0077】
また、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、制動操作による衝突回避が可能であることを決定した場合(前記ステップS48)、制動回避可能報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。例えば、前記図8に示すように、撮像画像に制動回避可能報知情報をなす「ブレーキ!」といった文字表示D5を重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0078】
また、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、後方障害物が接近しているが、操舵操作と制動操作とによる衝突回避が可能であることを決定した場合(前記ステップS45)、操舵回避可能方向報知情報及び制動回避可能報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。例えば、図21に示すように、撮像画像に操舵回避可能方向報知情報をなす衝突回避方向を示す矢印の図形D7と制動回避可能報知情報をなす「ブレーキ!」といった文字表示D5とを重畳した画像D0を表示装置9に表示する。
【0079】
また、前記ステップS40の衝突回避方法判定で、後方障害物が接近していないことで、操舵操作と制動操作とによる衝突回避が可能であることを決定した場合(前記ステップS49)、操舵回避可能方向報知情報及び制動回避可能報知情報をカメラ1で撮像した撮像画像に重畳して画像を作成し、その作成画像を表示装置9に表示する。ここで、操舵回避可能方向報知情報については、前記図21に示す矢印の図形D7を左右両側を指す矢印の図形に変更したものにする。
なお、操舵回避可能方向報知情報と制動回避可能報知情報とを同時に同一画面に表示すると、運転者に煩わしさを与える可能性もあるので、そのような煩わしさを与えない表示態様にすることが好ましい。
【0080】
なお、運転者の制動操作により衝突回避が可能と判定した場合には(前記ステップS45、ステップS48又はステップS49)、自動制動制御により自車両に制動力を付与して減速させるようにしても良い。このとき、自車両に付与する制動力は、運転者自身の制動操作により衝突が回避可能であることを報知することを目的として、運転者に違和感を与えない程度の小さい制動力を付与することが好ましい。
また、このような自動制動制御と制動回避可能報知情報の表示とを選択的に行うようにしても良い。すなわち、運転者の認識可能性(例えば視覚又は体感による認識可能性)等の所定の条件に応じて、自動制動制御と制動回避可能報知情報の表示とを選択的に行うようにする。
【0081】
また、運転者の操舵操作により衝突回避が可能と判定した場合には(前記ステップS45、ステップS46又はステップS49)、前記第4の実施形態のように、補舵や自車両にヨーモーメントを付与する衝突回避アシスト制御を行っても良い。
また、このような衝突回避アシスト制御と操舵回避可能方向報知情報の表示とを選択的に行うようにしても良い。すなわち、運転者の認識可能性(例えば視覚又は体感による認識可能性)等の所定の条件に応じて、自動制動制御と操舵回避可能方向報知情報の表示とを選択的に行うようにする。
【0082】
次に第5の実施形態における効果を説明する。
前述したように、後方障害物に基づいて、運転者の制動操作で前方障害物に対する衝突回避が可能か否かを判定し、運転者の制動操作で前方障害物に対する衝突が回避可能な場合、その旨(制動回避可能報知情報)を運転者に報知している(前記ステップS40、ステップS50)。これにより、前方障害物に対する運転者による衝突回避方法の選択性を向上させることができる。すなわち、前方障害物に対して運転者の操舵操作により衝突回避が不可能な場合でも、制動操作により衝突回避が可能であることを運転者が知ることができる。
【0083】
また、前述したように、運転者の制動制御により衝突回避を可能と判定した場合、自動制動制御を行っている。これにより、運転者は、制動操作により前方障害物との衝突を回避可能であることをより早く知ることができ、すなわち、自動制動制御が、運転者による制動操作を促し、これが制動操作により衝突回避が可能であることを報知する手段として作用し、これにより、運転者は、速やか衝突回避のための制動操作行動に移ることができる。例えば、運転者が表示装置9を見ていない状況下では、制動回避可能報知情報の画像表示を運転者が認識できないから、自動制動制御による報知はより効果的なものとなる。
【0084】
なお、前記実施形態の説明において、カメラ1は、障害物を含む自車両周囲を撮像する撮像手段を実現しており、コントローラ8のステップS6及びステップS7の処理並びに表示装置9は、前記撮像手段で撮像した撮像画像を表示する表示手段を実現しており、レーダ2及びコントローラ8のステップS2の処理は、自車両と障害物との位置関係を検出する位置関係検出手段を実現しており、コントローラ8のステップS3〜ステップS5の処理は、前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物の自車両に対する衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段を実現している。
【0085】
また、前記実施形態の説明において、コントローラ8のステップS11〜ステップS14の処理は、前記衝突可能性判定手段が前記衝突可能性ありと判定した場合、前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物に対して、運転者の運転操作により可能な自車両の衝突回避方法を決定する衝突回避方法決定手段を実現している。
また、前記実施形態の説明において、コントローラ8のステップS12及びステップS14における周囲環境情報の取得処理は、自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出手段を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態の車両が備える車両の障害物表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における車両の障害物表示装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】自車両に対する障害物の横相対距離X及び縦相対距離Yの説明に使用した図である。
【図4】自車両及び障害物の予測進路並びに自車両と障害物との予測衝突位置の説明に使用した図である。
【図5】障害物の予測進路を示す図形と障害物との予測衝突位置を示す図形とを重畳した画像の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態における車両の障害物表示装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態におけるコントローラの衝突回避方法表示の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】運転者による制動操作により衝突回避が可能と判定した場合の画像の一例を示す図である。
【図9】運転者による操舵操作により衝突回避が可能と判定した場合の画像の一例を示す図である。
【図10】衝突回避方法の衝突回避判定用テーブルの例を示す特性図である。
【図11】衝突回避方法の衝突回避判定用テーブルの例を示す特性図である。
【図12】第3の実施形態の車両が備える車両の障害物回避報知装置の構成を示すブロック図である。
【図13】第3の実施形態における車両の障害物回避報知装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図14】第3の実施形態におけるコントローラの衝突回避方向判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】後側方センサを備える車両の後側方に後側障害物がある場合の説明に使用した図である。
【図16】操舵回避方向を示す図形を重畳した画像の一例を示す図である。
【図17】操舵回避方向を示す図形を重畳した他の画像の一例を示す図である。
【図18】第4の実施形態における車両の障害物回避報知装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図19】第5の実施形態における車両の障害物回避報知装置のコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図20】第5の実施形態におけるコントローラの衝突回避方法判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図21】操舵回避方向を示す図形と操舵操作により衝突回避が可能である旨を示す画像とを重畳した画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 カメラ
2 レーダ
3 ナビゲーション装置
4 車速センサ
5 ヨーレイトセンサ
6 ステアリングセンサ
7 ターンシグナル
8 コントローラ
9 表示装置
10 警報装置
11 後方センサ
12 後側方センサ
13 ブレーキコントローラ
14 ステアリングコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と衝突可能性のある障害物を含む自車両周囲の撮像画像に、当該障害物の予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を重畳して、画像表示することを特徴とする車両の障害物表示装置。
【請求項2】
障害物を含む自車両周囲を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した撮像画像を表示する表示手段と、自車両と障害物との位置関係を検出する位置関係検出手段と、を備える車両の障害物表示装置であって、
前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物の自車両に対する衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段を備えており、
前記表示手段は、前記衝突可能性判定手段が衝突可能性ありと判定した障害物について予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を前記撮像画像に重畳し、画像表示することを特徴とする車両の障害物表示装置。
【請求項3】
前記衝突可能性判定手段が前記衝突可能性ありと判定した場合、前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物に対して、運転者の運転操作により可能な自車両の衝突回避方法を決定する衝突回避方法決定手段を備えており、前記表示手段は、前記衝突回避方法決定手段が決定した衝突回避方法の情報を前記撮像画像に重畳し、画像表示することを特徴とする請求項2記載の車両の障害物表示装置。
【請求項4】
前記衝突回避方法決定手段は、運転者による制動操作及び運転者による操舵操作のうちの少なくとも一方を前記衝突回避方法として決定することを特徴とする請求項3記載の車両の障害物表示装置。
【請求項5】
前記衝突回避方法決定手段は、運転者による操舵操作を前記衝突回避方法として決定した場合、その衝突回避方向も決定しており、前記表示手段は、前記衝突回避方法決定手段が決定した前記衝突回避方向の情報を前記撮像画像に重畳し、画像表示することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両の障害物表示装置。
【請求項6】
前記衝突可能性判定手段は、所定時間経過後には運転者が運転操作しても障害物に対して自車両が衝突を回避できなくなると判定した場合、前記衝突可能性の判定を行うことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の車両の障害物表示装置。
【請求項7】
自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出手段を備えており、前記衝突回避方法決定手段は、前記周囲環境検出手段の検出結果に基づいて、前記衝突回避方法を決定することを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の車両の障害物表示装置。
【請求項8】
自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出手段を備えており、前記衝突回避方法決定手段は、前記周囲環境検出手段の検出結果に基づいて、前記衝突回避方向を決定することを特徴とする請求項5記載の車両の障害物表示装置。
【請求項1】
自車両と衝突可能性のある障害物を含む自車両周囲の撮像画像に、当該障害物の予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を重畳して、画像表示することを特徴とする車両の障害物表示装置。
【請求項2】
障害物を含む自車両周囲を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した撮像画像を表示する表示手段と、自車両と障害物との位置関係を検出する位置関係検出手段と、を備える車両の障害物表示装置であって、
前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物の自車両に対する衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段を備えており、
前記表示手段は、前記衝突可能性判定手段が衝突可能性ありと判定した障害物について予測進路及び自車両との予測衝突位置の情報を前記撮像画像に重畳し、画像表示することを特徴とする車両の障害物表示装置。
【請求項3】
前記衝突可能性判定手段が前記衝突可能性ありと判定した場合、前記位置関係検出手段が検出した前記位置関係に基づいて、当該障害物に対して、運転者の運転操作により可能な自車両の衝突回避方法を決定する衝突回避方法決定手段を備えており、前記表示手段は、前記衝突回避方法決定手段が決定した衝突回避方法の情報を前記撮像画像に重畳し、画像表示することを特徴とする請求項2記載の車両の障害物表示装置。
【請求項4】
前記衝突回避方法決定手段は、運転者による制動操作及び運転者による操舵操作のうちの少なくとも一方を前記衝突回避方法として決定することを特徴とする請求項3記載の車両の障害物表示装置。
【請求項5】
前記衝突回避方法決定手段は、運転者による操舵操作を前記衝突回避方法として決定した場合、その衝突回避方向も決定しており、前記表示手段は、前記衝突回避方法決定手段が決定した前記衝突回避方向の情報を前記撮像画像に重畳し、画像表示することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両の障害物表示装置。
【請求項6】
前記衝突可能性判定手段は、所定時間経過後には運転者が運転操作しても障害物に対して自車両が衝突を回避できなくなると判定した場合、前記衝突可能性の判定を行うことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の車両の障害物表示装置。
【請求項7】
自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出手段を備えており、前記衝突回避方法決定手段は、前記周囲環境検出手段の検出結果に基づいて、前記衝突回避方法を決定することを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の車両の障害物表示装置。
【請求項8】
自車両の周囲環境を検出する周囲環境検出手段を備えており、前記衝突回避方法決定手段は、前記周囲環境検出手段の検出結果に基づいて、前記衝突回避方向を決定することを特徴とする請求項5記載の車両の障害物表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−34684(P2007−34684A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217207(P2005−217207)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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