説明

車両用減速制御装置及び車両用減速制御方法

【課題】カーブに対する車両の減速制御を適切に行う。
【解決手段】車両用減速制御装置は、測位部14aが測位した車両位置と記憶媒体14cに記憶された地図情報とを基に、地図情報の地図上の車両位置を特定するマップマッチングを行うマップマッチング部14bと、マップマッチング部14bが特定した地図上の車両位置と地図情報とから、車両前方のカーブ曲率を検出し、検出したカーブ曲率の大きさを基に算出した目標減速度を基に、車両を減速制御する制駆動力コントロールユニット8と、を備える。制駆動力コントロールユニット8は、マップマッチング部14bによるマップマッチングの確度を算出し、算出したマップマッチングの確度が低いほど、目標減速度が小さくなるように補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者にカーブの存在を知らせたり、カーブ内を最適速度で走行させたりする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、ナビゲーション装置や交通インフラ(例えば路車間通信)からの情報を基に自車両前方のカーブを検出し、検出したカーブに進入する前に自車両を減速制御するシステムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−329299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交通インフラ(例えば路車間通信)からの情報を基にカーブに対する減速制御をする場合、カーブ毎に設備が必要になり、設備費が過大となる。
これに対して、ナビゲーション装置からの情報を基にカーブに対する減速制御する技術であれば、地図データベースだけで、どのカーブでも減速制御を作動させることが可能となる。
しかしながら、ナビゲーション装置からの情報を基にカーブに対する減速制御を行う場合には、ナビゲーション装置が、実際に走行する道路ではない道路上に車両が走行している情報を出力してしまう場合もある。例えば、新設の道路を車両が走行すると、ナビゲーション装置が、その新設の道路の周辺道路上を車両があたかも走行しているような情報を出力してしまう。このような場合に、ナビゲーション装置から実際の走行路と異なるカーブの情報を得てしまうと、そのカーブを制御対象として制動制御が作動することになり、不必要に制動制御が作動してしまうことになる。
本発明は、カーブに対する車両の減速制御を適切に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、マップマッチングにより特定した地図上の車両位置と地図情報とから検出した車両前方のカーブ曲率の大きさを基に減速制御の目標減速度を算出し、マップマッチングの確度が低いほど、算出した目標減速度が小さくなるように補正し、目標減速度を基に、車両を減速制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マップマッチングの確度を基に、地図情報を基に行うカーブに対する減速制御の目標減速度を補正することで、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を抑制できる。
したがって、本発明によれば、地図情報を基に行うカーブに対する減速制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態の車両用減速制御装置を搭載した車両を示す概略構成図である。
【図2】車両用減速制御装置を構成する制駆動力コントロールユニットの処理内容を示すフローチャートである。
【図3】各ノード点(ノード点番号)の旋回半径Rj(図中●印)を示す図である。
【図4】制駆動力コントロールユニットの許容横加速度設定で用いる許容横加速度算出係数Ksの特性を示す特性図である。
【図5】ナビゲーション装置の地図上で、実際に走行している道路上に車両が走行しているように表示されない例を示す図である。
【図6】実際に走行する道路とは別の道路に車両を走行しているように表示し易い表示例を示す図である。
【図7】制駆動力コントロールユニットによる処理内容を示すフローチャートである。
【図8】道路種別と数値との対応付けしたものを示す図である。
【図9】道路種別対応値の差分とカウントアップ単位とを対応付けしたものを示す図である。
【図10】道路種別対応値の差分とカウントダウン単位とを対応付けしたものを示す図である。
【図11】第2の実施形態において、実道路走行確度kdの設定に用いたものであり、誤差距離とカウントダウン単位とを対応付けしたものを示す図である。
【図12】第3の実施形態における実道路走行確度kdの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】道路種別対応値の差分と実道路走行確度kdとを対応付けしたものを示す図である。
【図14】第4の実施形態における実道路走行確度kdの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】誤差距離と実道路走行確度kdとを対応付けしたものを示す図である。
【図16】第5の実施形態における実道路走行確度kdの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】第6の実施形態における実道路走行確度kdの設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】第7の実施形態における制駆動力コントロールユニットによる処理内容を示すフローチャートである。
【図19】第7の実施形態における動作、作用の説明に使用した図である。
【図20】第7の実施形態における動作、作用の説明に使用した他の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
第1の実施形態は、本発明に係る車両用減速制御装置を搭載した後輪駆動車両である。この後輪駆動車両は、自動変速機とコンベンショナルディファレンシャルギヤとを搭載し、前後輪とも左右輪の制動力を独立制御可能な制動装置を搭載している。
図1は、第1の実施形態を示す概略構成図である。同図中の符号1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスタシリンダ、4はリザーバである。この構成により、車両用減速制御装置は、通常、運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じて、マスタシリンダ3で制動流体圧を昇圧し、昇圧した制動流体圧を各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給する。また、車両用減速制御装置では、マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間に制動流体圧制御部7を介装している。
【0009】
制動流体圧制御部7は、例えばアンチスキッド制御やトラクション制御に用いられる制動流体圧制御部を利用した構成をなす。制動流体圧制御部7は、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御する。そして、制動流体圧制御部7は、単独でその制動流体圧を制御できる。また、制動流体圧制御部7は、後述する制駆動力コントロールユニット8から制動流体圧指令値が入力された場合には、その制動流体圧指令値に応じて制動流体圧を制御することもできる。例えば、制動流体圧制御部7は、液圧供給系としてアクチュエータを有する。例えば、アクチュエータは、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能な比例ソレノイド弁である。
【0010】
また、この車両は、駆動トルクコントロールユニット12を搭載している。駆動トルクコントロールユニット12は、エンジン9の運転状態、自動変速機10の選択変速比及びスロットルバルブ11のスロットル開度を制御して、駆動輪である後輪5RL,5RRへの駆動トルクを制御する。この駆動トルクコントロールユニット12は、燃料噴射量や点火時期を制御したり、同時にスロットル開度を制御したりすることで、エンジン9の運転状態を制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、単独で後輪5RL,5RRの駆動トルクを制御することもできる。また、駆動トルクコントロールユニット12は、制駆動力コントロールユニット8から駆動トルク指令値が入力された場合には、その駆動トルク指令値に応じて駆動輪トルクを制御することもできる。駆動トルクコントロールユニット12は、制御に使用した駆動トルクTwの値を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0011】
また、この車両は、先行車検知用の外界認識センサ13を搭載している。外界認識センサ13は、ミリ波レーダ13a及びミリ波レーダコントローラ13bを備える。ミリ波レーダコントローラ13bは、ミリ波レーダ13aの検出結果を基に、先行車両までの車間距離Lxを検出する。外界認識センサ13は、ミリ波レーダコントローラ13bが検出した車間距離Lxを制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0012】
また、この車両は、ナビゲーション装置14を搭載している。ナビゲーション装置14は、GPS(Global Positioning System)を利用して自車両位置を計測(測位)する。ナビゲーション装置14は、測位部14aにより自車両位置を計測(測位)する。さらに、ナビゲーション装置14は、自車両位置と、予め記憶している地図情報(電子地図)とに基づいて、GPSで計測した自車両位置に対応する地図上の位置、すなわち地図上の自車両位置(X0,Y0)を特定するマップマッチングを行う。ナビゲーション装置14は、マップマッチング部14bによりマップマッチングを行う。そして、ナビゲーション装置14は、特定した地図上の自車両位置と記憶している地図情報とを基に、自車両の前方道路情報を検索する。
【0013】
自車両の前方道路情報は、いわゆるノード情報であり、地図情報として予め記憶されている情報である。ノード情報は、Xj、Yj、Lj(j=1〜n、nは整数)とからなる。Xj、Yjは、ノード点Njの位置情報である。Ljは、自車両位置(X0,Y0)からノード点Njの位置(Xj,Yj)までの距離(地図上の距離を実際の距離に変換した距離)である。
なお、ナビゲーション装置14は一般的なナビゲーション装置と同様に、ハードディスクやCD−ROM等の記憶媒体(地図情報記憶手段)14cに予め地図情報を記憶している。
ナビゲーション装置14は、ノード情報等を基に、モニタ等の出力部に地図表示と現在の自車両位置等を出力して表示する。
【0014】
また、この車両は、警告用モニタ15を搭載している。警告用モニタ15は、音声やブザー音を発生するためのスピーカを内蔵している。制駆動力コントロールユニット8が、警告用モニタ15の動作を制御する。
また、この車両は、前後加速度Yg及び横加速度Xgを検出する加速度センサ16、並びにヨーレイトφ´を検出するヨーレイトセンサ17を搭載している。
また、この車両は、アクセルペダルの踏込み量、すなわちアクセル開度θtを検出するアクセル開度センサ18、及びステアリングホイール21の操舵角δを検出する操舵角センサ19を搭載している。
【0015】
また、この車両は、マスタシリンダ3の出力圧、すなわちマスタシリンダ液圧Pmを検出するマスタシリンダ圧センサ20を搭載している。
また、この車両は、各車輪5FL〜5RRの回転速度、所謂車輪速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)を検出する車輪速度センサ22FL〜22RRを搭載している。
また、この車両は、設定旋回横加速度(旋回横加速度設定値Xgsselect)を選択するための選択スイッチ23を搭載している。例えば、この車両は、ステアリングホイール21に選択スイッチ23を有している。
以上の車両が搭載しているセンサ等は、検出した検出信号、旋回横加速度設定値Xgsselect等を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0016】
次に、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理を説明する。図2は、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理手順を示す。制駆動力コントロールユニット8は、例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって演算処理を実行する。なお、制駆動力コントロールユニット8は、演算処理によって得た情報を随時記憶装置に更新記憶すると共に、必要な情報を随時記憶装置から読み出す。
【0017】
図2に示すように、処理を開始すると、先ずステップS1において、制駆動力コントロールユニット8は、前記各センサやコントローラ、コントロールユニット等から各種データを読み込む。
具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、ナビゲーション装置14が得た自車両位置(X0,Y0)、検索して特定した前方道路のノード情報(Xj,Yj,Lj)を読み込む。また、制駆動力コントロールユニット8は、各センサ等が検出した、各車輪速度Vwi、操舵角δ、アクセル開度θt、マスタシリンダ液圧Pm、旋回横加速度設定値Xgsselect、及び駆動トルクコントロールユニット12からの駆動トルクTwを読み込む。
【0018】
続いてステップS2において、制駆動力コントロールユニット8は、車速Vを算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS1で読み込んだ車輪速度Vwiを基に、下記(1)式により車速Vを算出する。
前輪駆動の場合
V=(Vwrl+Vwrr)/2
後輪駆動の場合
V=(Vwfl+Vwfr)/2
・・・(1)
ここで、Vwfl,Vwfrは左右前輪それぞれの車輪速度である。Vwrl,Vwrrは左右後輪それぞれの車輪速度である。この(1)式では、従動輪の車輪速の平均値として車速Vを算出している。本実施形態では、後輪駆動の車両であるので、制駆動力コントロールユニット8は、後者の式、すなわち前輪の車輪速度により車速Vを算出する。
【0019】
また、制駆動力コントロールユニット8は、このように算出した車速Vを、好ましくは通常走行時に用いる。また、ABS(Anti-lock Brake System)制御等が作動している場合には、制駆動力コントロールユニット8が、そのABS制御内で推定している推定車体速度を前記車速Vとして用いることもできる。また、制駆動力コントロールユニット8が、ナビゲーション装置14でナビゲーション情報に利用している値を前記車速Vとして用いることもできる。
【0020】
続いてステップS3において、制駆動力コントロールユニット8は、自車両前方の各ノード点の旋回半径を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS1で読み込んだ前方道路のノード情報である各ノード点の座標(Xj,Yj)を基に、各ノード点の旋回半径(すなわちカーブ曲率)を算出する。旋回半径の算出方法をいくつか挙げることができる。本実施形態では、制駆動力コントロールユニット8は、下記(2)式により、連続する3つのノード点の座標(Xj-1,Yj-1)、(Xj,Yj)、(Xj+1,Yj+1)から、旋回半径Rjを算出する。
j=f1(Xj-1,Yj-1,Xj,Yj,Xj+1,Yj+1) ・・・(2)
【0021】
ここで、関数f1は、3つのノード点の座標から旋回半径を算出するための関数である。旋回半径Rjが負値の場合、左旋回を示し、旋回半径Rjが正値の場合、右旋回を示す。
ここでは、3点の座標(Xj-1,Yj-1)、(Xj,Yj)、(Xj+1,Yj+1)から旋回方半径を算出する方法を示した。しかし、制駆動力コントロールユニット8が、前後するノード点を結ぶ直線のなす角度を用いて、旋回半径を算出することもできる。また、ここでは、制駆動力コントロールユニット8は、各ノード点の座標に基づいて旋回半径を算出している。しかし、制駆動力コントロールユニット8が、地図データ内のノード情報として各ノード点の旋回半径を記憶し、このステップS3でその値を検索することもできる。
【0022】
続いてステップS4において、制駆動力コントロールユニット8は、目標ノード点を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、自車両前方に存在する複数のノード点の中から、前記ステップS3で算出した旋回半径Rjを基に制御の対象となる目標ノード点を算出する。
ここで、本実施形態では、車両用減速制御装置による制御により、実際のカーブの旋回半径から設定される目標の車速以上の車速で、該カーブを運転者が車両を走行させようとするのを防止することを目的としている。例えば、運転者の推測ミスにより、実際のカーブの旋回半径から設定される目標の車速以上の車速で、カーブを運転者が走行させようとしてしまう場合がある。このような目的から、目標ノード点は、自車両から直近で旋回半径Rjが極小値となるノード点にする。
【0023】
図3は、各ノード点(ノード点番号)の旋回半径Rj(図中●印)を示す。図3に示すように、目標ノード点は、自車両前方の旋回半径Rjで最初に極小値となるノード点Rmになる。
続いてステップS5において、制駆動力コントロールユニット8は、路面μ推定値を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、下記(3)式に示すように、各輪に作用する制駆動力と各輪に発生するスリップ率との関係を基に、路面μ値Kμを算出する。
Kμ=f2(各輪の制駆動力,各輪のスリップ率) ・・・(3)
【0024】
ここで、関数f2は、各輪に作用する制駆動力と各輪に発生するスリップ率との関係を基に、路面μ値Kμを算出するための関数である。例えば、関数f2は、実験値、理論値又は経験値を基に構築した関数である。
なお、制駆動力コントロールユニット8が、カーブ手前のインフラからカーブ情報として、路面μ値情報を入手することもできる。また、運転者が、選択切り替えスイッチにより路面μ値を選択することもできる。この場合は、例えば、高g=0.8g相当、中g=0.6g相当、低g=0.4g相当等の大まかな値を選択可能にする等、運転者が路面μ値を選択し易くする工夫をする。
【0025】
続いてステップS6において、制駆動力コントロールユニット8は、許容横加速度Yglmitを設定する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、ステップS5で算出した路面μ値Kμを用いて、下記(4)式により許容横加速度Yglimtを算出する。
Yglimt=Ks・Kμ ・・・(4)
ここで、Ksは許容横加速度算出係数であり、例えば0.8等で固定値である。また、図4に示すように、制駆動力コントロールユニット8が、車速を基に許容横加速度算出係数Ksを設定することもできる。この場合、低速域で、許容横加速度算出係数Ksは大きい値になる。さらに、車速がある値になると、車速Vが増加するのに対して許容横加速度算出係数Ksは減少する。その後、ある車速に達すると、許容横加速度算出係数Ksは小さい値で一定値となる。すなわち、概略として、高速になるほど許容横加速度算出係数Ksは小さくなる。
【0026】
続いてステップS7において、制駆動力コントロールユニット8は、目標車速を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS4で算出した目標ノード点の旋回半径Rj及び前記ステップS6で算出した許容横加速度Yglimtを用いて、下記(5)式により目標車速Vrを算出する。
Vr=√(Yglimt・|Rj|) ・・・(5)
この(5)式によれば、許容横加速度Yglimtが大きくなるほど、目標車速Vrは大きくなる。
【0027】
続いてステップS8において、制駆動力コントロールユニット8は、目標減速度を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS2で算出した車速V、前記ステップS7で算出した目標車速Vr及びナビゲーション装置14で得た現在位置から目標ノード点までの距離Ljを用いて、下記(6)式により目標減速度Xgsを算出する。
Xgs=(V2−Vr2)/(2・Lj
=(V2−Yglmit・|Rj|)/(2・Lj) ・・・(6)
ここで、距離Ljは、目標車速Vrを算出した目標ノード点までの距離になる。また、目標減速度Xgsは減速側で正値となる。この(6)式によれば、目標車速Vrが大きくなるほど、又は許容横加速度Yglimtが大きくなるほど、目標減速度Xgsは小さくなる。
【0028】
続いてステップS9において、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS8で算出した目標減速度Xgsを補正する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、確度(確信度)kdを用いて、下記(7)式により、補正後の目標減速度(左辺の値)Xgsを算出する。
Xgs=Xgs・kd ・・・(7)
ここで、確度kdは、ナビゲーション装置14で地図上の道路を走行する表示がされている車両が実際に該道路を走行しているたしからしさであり、すなわちマップマッチングの確度(たしからしさ)を表わす値である。この確度(以下、実道路走行確度という。)kdは、0〜1の間で変化し、車両が地図上の道路を実際に走行している可能性が高くなるほど大きい値になる。
【0029】
ここで、ナビゲーション装置14は、通常、地図上で、実際に走行している道路上に車両が走行しているような表示をする。しかし、ナビゲーション装置14では、地図上に、実際に走行している道路上に車両が走行しているように表示されない場合がある。
詳述すると、一般的なナビゲーション装置は、マップマッチングを行なっている。このマップマッチングでは、GPSで計測した自車両位置を地図上の位置に変換し、該変換した位置に最も近い道路までの距離が所定距離以内である場合には自車両位置をその道路上の位置に特定する。また、このマップマッチングでは、変換した位置に最も近い道路までの距離が所定距離より大きい場合には、変換した位置をそのまま自車両位置として特定する。
【0030】
マップマッチングのこのような処理により、例えば雲の影響等による一時的なGPSの計測誤差の発生などに起因して、計測した自車両位置を地図上の位置に変換した際に、自車両が実際に走行している道路上に自車両位置がマッチングされない、いわゆるマッチングフリー(マッチングオフ)状態が発生したり、自車両が実際に走行している道路ではない他の道路上に自車両位置がマッチングされる、いわゆる誤マッチングが生じたりする。
【0031】
図5は、地図上で、実際に走行している道路上に車両が走行しているように表示されない例を示す。図5(a)は、地図上で、実際に走行している道路201から外れた車両100の表示例を示す。この表示例は、マッチングフリー状態の例である。また、図5(b)は、地図上で、実際に走行している道路(図5の左側の道路)201と併走する道路(図5の右側の道路)202を車両100が走行する表示例を示す。すなわち、図5(b)の表示例は、誤マッチングの表示例である。
【0032】
図6は、実際に走行する道路212とは別の道路211に車両100が走行しているように表示し易い表示例を示す。図6(a)は、既存の道路211を示し、図6(b)は、その既存の道路211上を通過する道路(新設道路)212が建設された場合を示す。例えば、図6(b)は、道路212が、延長されて、市街地の道路211上を通過する高速道やバイパス道となった場合の例である。
【0033】
このような場合に、ナビゲーション装置14の地図情報に道路212の情報がないと、ナビゲーション装置14は、既存の道路211に入る前は何ら問題なく道路212上に車両100を表示する。しかし、既存の道路211上の道路212を走行すると、図6(b)に示すように、ナビゲーション装置14は、車両100がその既存の道路211をあたかも走行しているようかのように表示してしまう。
【0034】
本実施形態では、以上の例のように表示される場合に、マッチングカウンタを用いて、実道路走行確度kdを得ている。図1に示すように、制駆動力コントロールユニット8が、マッチングカウンタ8aを備える。図7は、実道路走行確度kdを取得するための制駆動力コントロールユニット8の処理手順を示す。
図7に示すように、処理を開始すると、制駆動力コントロールユニット8は、先ずステップS31において、マッチングフリー状態か否かを判定する。このとき、制駆動力コントロールユニット8は、マッチング状態情報を基に、マッチングフリー状態か否かを判定する。
【0035】
マッチング状態情報は、ナビゲーション装置14が地図上で道路から車両が外れるように表示したとき、OFFになる。また、マッチング状態情報は、ナビゲーション装置14が地図上で道路上に車両を表示しているとき(以下、マッチングオン状態という。)、ONとなる。よって、マッチング状態情報は、ナビゲーション装置14が地図上で道路から車両が外れるように表示されている、マッチングフリー状態から、再び同地図上で道路上に車両が表示されたときにも、ONとなる。
【0036】
ここで、制駆動力コントロールユニット8は、マッチング状態情報がOFFであるとき、マッチングフリー状態と判定し、ステップS32に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、そうでない場合、すなわちマッチング状態情報がON(マッチングオン状態、マッチングしている状態)であるとき、ステップS36に進む。
ステップS32では、制駆動力コントロールユニット8は、カウントアップする走行条件を満たすか否かを判定する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前回の処理(前回のカウントアップ又は前回のカウントダウン)から、所定の走行時間が経過したか否かを判定する。すなわち、制駆動力コントロールユニット8は、カウントアップ間隔を判定する。ここでいう所定の走行時間は、実験値、経験値又は理論値により設定した値である。
【0037】
例えば、所定の走行時間が該処理のサンプリングタイム相当であれば、該処理を実行しているということは、該所定の走行時間が経過していることになるので、該ステップS32の判定処理は不要となる。
ここで、制駆動力コントロールユニット8は、所定の走行時間が経過していると判定すれば、カウントアップする走行条件を満たすとして、ステップS33に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、所定の走行時間が経過していなければ、カウントアップする走行条件を満たしていないとして、ステップS36に進む。
【0038】
ステップS33では、制駆動力コントロールユニット8は、上限値制限の走行条件を満たすか否かを判定する。制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態を必要以上に評価しないように、上限値制限の走行条件を満たすか否かを判定する。例えば、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態になった時点から所定時間(例えば1分)が経過した場合、上限値制限の走行条件を満たすと判定する。制駆動力コントロールユニット8は、上限値制限の走行条件を満たす場合、カウントアップしないようにするため、ステップS36に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、上限値制限の走行条件を満たさない場合、ステップS34に進む。ここでいう所定時間は、実験値、経験値又は理論値により設定した値である。
【0039】
ステップS34では、制駆動力コントロールユニット8は、カウントアップ率を補正する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、カウントアップする単位を設定する。ここでは、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別(道路属性)の差異を基に、カウントアップする単位を設定する。
先ず、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別の差異を次のように取得する。
【0040】
図8は、道路種別と数値とを対応付けしたものを示す。図8では、各道路に、0〜7の値(以下、道路種別対応値という。)を対応付けている。この対応付けによれば、ある道路間で道路種別対応値の差分が大きくなるほど、該道路間で道路の種別(属性)が大きく異なるものとなる。
制駆動力コントロールユニット8は、この図8(テーブル等)を基に、該図7の処理で前回(直近)にマッチングオン状態にあると判定した場合の道路種別に対応する道路種別対応値を取得する。さらに、制駆動力コントロールユニット8は、この図8(テーブル等)を基に、同処理で前々回にマッチングオン状態にあると判定した場合の道路種別に対応する道路種別対応値を取得する。
【0041】
例えば、制駆動力コントロールユニット8は、該図7の処理において、メモリ8b(図1参照)等の記憶手段に道路種別情報を履歴として記憶している。すなわち、制駆動力コントロールユニット8は、地図上で走行していると表示されている道路(地図上で車両位置と一致する道路)の道路種別を記憶している。さらに、制駆動力コントロールユニット8は、地図上でマッチングフリー状態から道路上に車両が位置するようになった場合、該道路の道路種別を記憶している。
【0042】
前記図5に示すような、地図上で、実際に走行している道路(図5の左側の道路)201上から、併走する道路(図5の右側の道路)202上に車両100の表示が移動する場合を例として説明する。
この場合、制駆動力コントロールユニット8は、実際に走行していた道路の道路種別を記憶して、続いて併走する道路202の道路種別を記憶する。例えば、前記併走する道路202からマッチングフリー状態(実際に走行している道路上にも位置しない状態)になったときには、次に道路上に車両が表示されるまで、道路種別情報の変更履歴中の最新(直近)の道路種別情報は、該併走する道路202のものとなる。
【0043】
制駆動力コントロールユニット8は、以上のような道路種別情報の変更履歴を参照して、前回のマッチングオン状態時の道路種別及び前々回のマッチングオン状態時の道路種別を取得する。そして、制駆動力コントロールユニット8は、取得した前回のマッチングオン状態時の道路種別及び前々回のマッチングオン状態時の道路種別にそれぞれ対応する道路種別対応値の差分(絶対値)を取得する。ここで、道路種別情報の変更履歴中、前回のマッチングオン状態時の道路種別情報は、最新の道路種別情報となる。そして、同変更履歴中、前々回のマッチングオン状態時の道路種別は、該最新の道路種別情報の1つ前の道路種別情報となる。
【0044】
続いて、制駆動力コントロールユニット8は、その道路種別対応値の差分を基に、カウントアップする単位を設定する。
図9は、道路種別対応値の差分とカウントアップ単位とを対応付けしたものを示す。図9に示すように、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、すなわち道路種別の差異が大きくなるほど、カウントアップ単位が大きくなる(カウントアップ率が大きくなる)。
制駆動力コントロールユニット8は、このような図9(テーブル等)を用いて、道路種別の差異(道路種別対応値の差分)を基に、カウントアップ単位を設定する。
【0045】
続いてステップS35において、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS34で補正したカウントアップ率(設定したカウントアップ単位)により、マッチングカウンタ8aをカウントアップする。そして、制駆動力コントロールユニット8は、ステップS41に進む。
一方、前記ステップS31でマッチング状態情報がON(マッチングオン状態)であると判定した場合等に進むステップS36では、制駆動力コントロールユニット8は、カウントダウンする走行条件を満たすか否かを判定する。すなわち、制駆動力コントロールユニット8は、カウントダウン間隔を判定する。
【0046】
具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS32と同様に、前回の処理(前回のカウントアップ又は前回のカウントダウン)から、所定の走行時間が経過したか否かを判定する。
例えば、所定の走行時間が該処理のサンプリングタイム相当であれば、該処理を実行しているということは、該所定の走行時間が経過していることになるので、該ステップS36の判定処理は不要となる。
【0047】
ここで、制駆動力コントロールユニット8は、所定の走行時間が経過していると判定すれば、カウントダウンする走行条件を満たすとして、ステップS37に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、所定の走行時間が経過していなければ、カウントダウンする走行条件を満たしていないとして、ステップS41に進む。
ステップS37では、制駆動力コントロールユニット8は、カウントダウン率を補正する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、カウントダウンする単位を設定する。ここでは、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別の差異を基に、カウントダウンする単位を設定する。
【0048】
先ず、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別と道路種別対応値とを対応付けする前記図8(テーブル等)を用いて、現在マッチングオン状態にあると判定した道路の道路種別に対応する道路種別対応値を取得する。さらに、制駆動力コントロールユニット8は、同処理で前回にマッチングオン状態にあると判定した場合の道路種別に対応する道路種別対応値を取得する。ここで、制駆動力コントロールユニット8は、例えば、前記ステップS35の処理と同様にして、道路種別情報の変更履歴を参照して過去の道路種別の情報を取得する。
【0049】
そして、制駆動力コントロールユニット8は、取得した現在マッチングオン状態にある道路の道路種別及び前回のマッチングオン状態時の道路種別にそれぞれ対応する道路種別対応値の差分(絶対値)を取得する。ここで、道路種別情報の変更履歴中、現在マッチングオン状態にある道路の道路種別情報は、最新の道路種別情報となり、前回のマッチングオン状態時の道路種別は、該最新の道路種別情報の1つ前の道路種別情報となる。
【0050】
続いて、制駆動力コントロールユニット8は、取得した道路種別対応値の差分を基に、カウントダウンする単位を設定する。
図10は、道路種別対応値の差分とカウントダウン単位とを対応付けしたものを示す。図10に示すように、道路種別対応値の差分が小さくなるほど、カウントダウン単位が大きくなる(カウントダウン率が大きくなる)。
制駆動力コントロールユニット8は、このような図10(テーブル等)を用いて、道路種別の差異(道路種別対応値の差分)を基に、カウントダウン単位を設定する。
【0051】
続いてステップS38において、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS37で補正したカウントダウン率(設定したカウントダウン単位)により、マッチングカウンタ8aをカウントダウンする。そして、制駆動力コントロールユニット8は、ステップS39に進む。
ステップS39では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が零未満か否かを判定する。制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が零未満の場合(カウンタ値<0)、ステップS40に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が零でない場合(カウンタ値≧0)、ステップS41に進む。
【0052】
ステップS40では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値を零に設定する(カウンタ値=0)。そして、制駆動力コントロールユニット8は、ステップS41に進む。
ステップS41では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が所定のしきい値未満か否かを判定する。制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が所定のしきい値未満の場合(カウンタ値<しきい値)、ステップS42に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が所定のしきい値以上の場合(カウンタ値≧しきい値)、ステップS43に進む。ここで、所定のしきい値は、実験値、経験値又は理論値により設定した値である。
【0053】
ステップS42では、制駆動力コントロールユニット8は、実道路走行確度kdに1を設定する(kd=1)。また、ステップS43では、制駆動力コントロールユニット8は、実道路走行確度kdに零を設定する(kd=0)。そして、制駆動力コントロールユニット8は、このステップS42又はステップS43の処理後、再びステップS31からの処理を行う。
【0054】
以上のステップS9の処理により、確信度kdが1であれば、補正後の目標減速度(前記(7)式の左辺の値)Xgsは補正前の値になる。また、確信度kdが零であれば、補正後の目標減速度(前記(7)式の左辺の値)Xgsは零になる。
続いてステップS10において、制駆動力コントロールユニット8は、警報作動開始判断を行う。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS9で算出した目標減速度Xgsを用いて、下記(8)式及び(9)式により警報作動開始の判断を行う。
警報非作動状態(Fwarn=OFF)
Xgs≧Xgswarn ・・・(8)
警報作動状態(Fwarn=ON)
Xgs≧Xgswarn−Khwarn ・・・(9)
【0055】
ここで、Fwarnは、警報の作動状態を示すフラグである。フラグFwarnは、(8)式又は(9)式の成立時にONになり、(8)式及び(9)式の両式が共に不成立になる時にOFFになる。Khwarnは、警報のON/OFFのハンチングを防ぐためのヒステリシスである。Khwarnは、例えば0.03g等で、固定値である。Xgswarnは警報開始判断設定値である。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、下記(10)式により警報開始判断設定値Xgswarnを算出する。
Xgswarn=Xgswarn0 ・・・(10)
【0056】
ここで、Xgswarn0は、警報開始判断設定値である。なお、警報用モニタ15は、警報として、表示及び音声又はブザー音を出力する。
続いてステップS11において、制駆動力コントロールユニット8は、制御作動開始判断(自動減速制御開始判断)を行う。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS9で算出した目標減速度Xgsを用いて、下記(11)式及び(12)式により制御作動開始判断を行う。
【0057】
制御非作動時(Fgensoku=OFF)
Xgs≧Xgsstart ・・・(11)
制御作動時(Fgensoku=ON)
Xgs≧Xgsstart−Khstart ・・・(12)
【0058】
ここで、Fgensokuは、制御の作動状態を示すフラグである。フラグFgensokuは、(11)式又は(12)式が成立時にONになり、(11)式及び(12)式の両式が共に不成立時にOFFになる。Khstartは、警報のON/OFFのハンチングを防ぐためのヒステリシスである。Khstartは、例えば0.05g等で、固定値である。Xgsstartは、制御判断設定値である。制御判断設定値Xgsstartは、警報開始判断設定値Xgswarn(Xgswarn0)と連動する値である。例えば、目標減速度Xgsが大きくなっていく場合に自動減速制御の開始前に警報を作動させるためには、制御判断設定値Xgsstartが、警報開始判断設定値Xgswarnよりも大きい値になる。
【0059】
続いてステップS12において、制駆動力コントロールユニット8は、各輪の目標制動液圧を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、制御の開始判断をした場合(Fgensoku=ON)に、前記ステップS9で算出した目標減速度Xgsを用いて目標制御液圧を算出する。本実施形態では、運転者のブレーキ操作を考慮して目標制動液圧を算出する例を示す。
先ず、制駆動力コントロールユニット8は、制御の開始判断をした場合(Fgensoku=ON)、前記ステップS9で算出した目標減速度Xgs(補正後の目標減速度Xgs)を用いて、下記(13)式により制御目標液圧Pcを算出する。
Pc=Kb・Xgs ・・・(13)
【0060】
ここで、Kbはブレーキ諸元等より定まる定数である。この(13)式によれば、目標減速度Xgsが大きくなるほど、制御目標液圧Pcが大きくなる。そして、制駆動力コントロールユニット8は、算出した制御目標液圧Pcに、運転者のブレーキ操作を加味して、各輪の目標制動液圧を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、先ず、前輪用目標制動液圧Psfrを下記(14)式により算出する。
Psfr=max(Pm,Pc) ・・・(14)
【0061】
ここで、関数max(m1,m2)は、m1及びm2のうちの大きい方の値を選択するための関数である。すなわち、制駆動力コントロールユニット8は、制御目標液圧Pcと運転者の制動による液圧Pmとからセレクトハイにより前輪用目標制動液圧Psfrを選定する。そして、制駆動力コントロールユニット8は、この(14)式により算出した前輪用目標制動液圧Psfrを用いて、下記(15)式により後輪用目標制動液圧Psrrを算出する。
Psrr=f3(Psfr) ・・・(15)
ここで関数f3(Psfr)は、最適な前後制動力配分となるように前輪の制動液圧Psfrから後輪の目標制動液圧Psrrを算出するための関数である。
以上のようにして、制駆動力コントロールユニット8は、前後輪の目標制動液圧Psfr,Psrrを算出する。
【0062】
続いてステップS13において、制駆動力コントロールユニット8は、駆動輪の駆動力を算出する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS12で算出した制御目標液圧Pc及びアクセル開度Accを用いて、下記(16)式及び(17)式により目標駆動トルクTrqdsを算出する。
制御作動時(Fgensoku=ON)
Trqds=f4(Acc)−f5(Pc) ・・・(16)
制御非作動時(Fgensoku=OFF)
Trqds=f4(Acc) ・・・(17)
【0063】
ここで、関数f4(Acc)は、アクセル開度Accに応じて目標駆動トルクTrqdsを算出するための関数である。関数f5(Pc)は、制御目標液圧Pcにより発生が予想させる制動トルクを算出するための関数である。
制駆動力コントロールユニット8は、自動減速制御が作動している場合、(16)式により、アクセル開度Accと自動減速制御の制御量g(Pc)に応じて、目標駆動トルクTrqdsを算出する。これにより、制駆動力コントロールユニット8は、算出した目標駆動トルクTrqdsにより、自動減速制御の作動中に運転者がアクセル操作してもエンジン出力を絞って加速できないようにしている。
【0064】
また、制駆動力コントロールユニット8は、自動減速制御が作動していない場合、(17)式により、アクセル開度Accに応じて目標駆動トルクTrqdsを算出する。
続いてステップS14において、制駆動力コントロールユニット8は、目標制動液圧Psi(Psfr、Psrr)及び目標駆動トルクTrqdsを基に、制動流体圧制御部7及び駆動トルクコントロールユニット12に制御信号を出力する。ここで、目標制動液圧Psi(Psfr、Psrr)は、前記ステップS12で算出した値である。また、目標駆動トルクTrqdsは、前記ステップS13で算出した値である。
制駆動力コントロールユニット8は、このステップS14の処理により、制動力及び駆動力を制御する。また、制駆動力コントロールユニット8は、警告用モニタ15を駆動する制御信号を出力する。
【0065】
(動作及び作用)
車両走行中、車両用減速制御装置は、ナビゲーション装置14のノード情報等を基に、警報及び自動減速制御を行う。
すなわち、車両用減速制御装置は、各センサ等から各種データを読み込みつつ、その各種データを基に、車速V、自車両前方の各ノード点の旋回半径Rj及び目標ノード点を算出する(前記ステップS1〜ステップS4)。
また、車両用減速制御装置は、路面μ推定値Kμを算出し、その算出した路面μ推定値Kμを基に、許容横加速度Yglmitを設定する(前記ステップS5、ステップS6)。車両用減速制御装置は、設定した許容横加速度Yglmitを基に、目標車速Vrを算出し、目標減速度Xgsを算出する(前記ステップS7、ステップS8)。
【0066】
そして、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを取得し、取得した実道路走行確度kdを基に、目標減速度Xgsを補正する(前記ステップS9)。そして、車両用減速制御装置は、補正後の目標減速度Xgsを基に、警報作動開始判断及び制御作動開始判断をする(前記ステップS10、ステップS11)。
このとき、車両用減速制御装置は、制御作動開始判断に基づいて目標制動液圧を算出する(前記ステップS12)。また、車両用減速制御装置は、駆動輪の駆動力を算出する(前記ステップS13)。そして、車両用減速制御装置は、警報作動開始判断に基づいて警報出力をする。また、車両用減速制御装置は、制動作動開始判断に基づいて制動力及び駆動力を制御する(前記ステップS14)。
【0067】
以上にように、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを基に、目標減速度Xgsを補正している。車両用減速制御装置は、そのために次のような処理を行っている。
車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態であり、カウントアップする走行条件が成立し、かつ上限値制限の走行条件が成立していない場合、カウントアップ率を補正(カウントアップ単位を設定)する(前記ステップS31〜ステップS34)。
【0068】
そして、車両用減速制御装置は、補正したカウントアップ率を基に、マッチングカウンタ8aをカウントアップする(前記ステップS35)。また、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態でない場合、カウントアップする走行条件が成立しない場合、又は上限値制限の走行条件が成立する場合、マッチングカウンタ8aのカウントアップを行わない。
【0069】
一方、車両用減速制御装置は、マッチングオン状態であり、かつカウントダウンする走行条件が成立する場合、先ず、カウントダウン率を補正(カウントダウン単位を設定)する(前記ステップS31、ステップS36、ステップS37)。そして、車両用減速制御装置は、補正したカウントダウン率を基に、マッチングカウンタ8aをカウントダウンする。このとき、車両用減速制御装置は、カウンタ値が零未満にならないように制限をかける(前記ステップS39、ステップS40)。また、車両用減速制御装置は、カウントダウンする走行条件が成立しない場合、マッチングカウンタ8aのカウントダウンを行わない。
【0070】
車両用減速制御装置は、以上のような処理を繰り返し、カウントアップ又はカウントダウンを繰り返すことで、カウンタ値を増加又は減少させていく。そして、車両用減速制御装置は、カウンタ値が所定のしきい値未満であれば、実道路走行確度kdに1を設定し、カウンタ値が所定のしきい値以上であれば、実道路走行確度kdに零を設定する(前記ステップS41〜ステップS43)。
なお、カウンタ値は、マッチングしている状態の指標となるマッチング状態量とマッチングフリーの状態の指標となるマッチングフリー状態量との差分又は比較結果(比較値)を示す値となる。
【0071】
これにより、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態での走行時間が長く、カウントアップによりカウンタ値が所定のしきい値以上になると、実道路走行確度kdを零に設定する。このとき、道路種別情報の変更履歴を基に得た道路種別対応値の差分(道路種別の差異)が大きくなるほど、カウントアップ率が大きくなるため、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを零に設定し易くなる。
【0072】
一方、車両用減速制御装置は、マッチングオン状態での走行時間が長く、カウントダウンによりカウンタ値が所定のしきい値未満になると、実道路走行確度kdを1に設定する。このとき、道路種別情報の変更履歴を基に得た道路種別対応値の差分が大きくなるほど、カウントダウン率が小さくなる。そのため、たとえマッチングオン状態でも、道路種別対応値の差分が大きければ、カウントダウン率が小さくなり、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを1に設定し難くなる、又は零に設定し易くなる。
【0073】
そして、車両用減速制御装置は、以上のようにして算出した実道路走行確度kdを用いて、前記(7)式により、目標減速度Xgsを補正している。
これにより、実道路走行確度kdが1、すなわち、ナビゲーション装置14で地図上の道路を走行する表示がされている車両が実際に該道路を走行している確度が高ければ、車両用減速制御装置は、目標減速度Xgsを維持する(補正はしない)。また、実道路走行確度kdが零、すなわち、ナビゲーション装置14で地図上の道路を走行する表示がされている車両が実際に該道路を走行している確度が低ければ、車両用減速制御装置は、目標減速度Xgsを零にする。
【0074】
ところで、本実施形態では、目標減速度Xgsを用いて、警報作動開始判断及び制御報作動開始判断を行っている(前記(8)式、(9)式、(11)式、(12)式)。具体的には、車両用減速制御装置は、目標減速度Xgsが所定のしきい値(警報開始判断設定値Xgswarn、制御判断設定値Xgsstart)以上になると、警報を作動開始させる判断をし、又は自動減速制御を開始させる判断をしている。このようなことから、目標減速度Xgsが小さくなり易くなると、警報は、作動し難くなる。その一方で、目標減速度Xgsが大きくなり易くなると、警報は、作動し易くなる。このような目標減速度Xgsとの関係は、自動減速制御の開始判断でも同様である。
【0075】
このようなことから、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdが1であれば、目標減速度Xgsを補正することなく維持するため、通常通り、警報作動開始判断及び制御報作動開始判断を行うようになる。すなわち、車両用減速制御装置は、ナビゲーション装置14で地図上の道路を走行する表示がされている車両が実際に該道路を走行している確度が高ければ、通常通り、警報作動開始判断及び制御報作動開始判断を行うようになる。
【0076】
その一方で、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdが零であれば、目標減速度Xgsを零に補正して、警報や自動減速制御を作動させ難くしている。すなわち、車両用減速制御装置は、ナビゲーション装置14で地図上の道路を走行する表示がされている車両が実際に該道路を走行している確度が低ければ、警報や自動減速制御を作動させ難くしている。すなわち、車両用減速制御装置は、警報や自動減速制御の介入タイミングを遅くしている。
【0077】
また、本実施形態では、車両用減速制御装置は、目標減速度Xgsを基に、自動減速制御のための制御目標液圧Pcを算出している(前記(13)式)。ここで、具体的には、制御目標液圧Pcは、目標減速度Xgsが大きくなるほど大きくなる。このようなことから、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdが1であれば、目標減速度Xgsを補正することなく維持するため、通常通りに制御目標液圧Pcを算出することになる。
以上のように動作する結果、前記図5(a)に示すような、実際に走行している道路201から車両100が外れて表示されている例の場合、カウントアップにより、カウンタ値が所定のしきい値以上になったとき、実道路走行確度kdが零になる。これにより、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
【0078】
また、前記図5(b)や図6(b)に示すような、実際に走行している道路201,212ではない他の道路202,211を車両100が走行して表示される例の場合、その道路間の道路種別の差異が大きくなるほど、カウントアップ率が大きくなる。又は、カウントダウン率が小さくなる。そのため、カウンタ値が大きくなり易くなる。これにより、実道路走行確度kdが零になり易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。よって、たとえ他の道路202,211に制御対象となるカーブを検出した場合でも、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
【0079】
なお、第1の実施形態では、ナビゲーション装置14(測位部14a)は測位手段に対応する。ナビゲーション装置14(記憶媒体14c)は地図情報記憶手段に対応する。ナビゲーション装置14(マップマッチング部14b)はマップマッチング手段に対応する。制駆動力コントロールユニット8のステップS3〜ステップS6の処理は、前方カーブ検出手段に対応する。制駆動力コントロールユニット8のステップS7〜ステップS8の処理は目標減速度算出手段に対応する。制駆動力コントロールユニット8のステップS11〜ステップS14の処理は車速制御手段に対応する。制駆動力コントロールユニット8の図7の処理は確度算出手段に対応する。制駆動力コントロールユニット8のステップS9の処理は補正手段に対応する。
【0080】
また、制駆動力コントロールユニット8の図7の処理はマッチング状態量算出手段及びマッチングフリー状態量算出手段に対応する。
また、制駆動力コントロールユニット8の図7の処理やマッチングカウンタ8は経過時間対応計数手段及び距離対応計数手段に対応する。
また、メモリ8bは履歴情報格納手段に対応する。制駆動力コントロールユニット8のステップS9の処理は道路履歴対応状態量補正手段に対応する。
【0081】
(第1の実施形態の効果)
(1)マップマッチング手段は、測位手段が測位した車両位置と、地図情報記憶手段に記憶された地図情報とを基に、地図情報の地図上の車両位置を特定するマップマッチングを行う。
さらに、目標減速度算出手段は、マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置と地図情報とから検出した車両前方のカーブ曲率の大きさを基に、目標減速度を算出する。車速制御手段は、目標減速度を基に、車両を減速制御する。
そして、確度算出手段は、マップマッチング手段によるマップマッチングの確度を算出する。補正手段は、確度算出手段が算出したマップマッチングの確度が低いほど、目標減速度が小さくなるように補正する。
【0082】
これにより、車両用減速制御装置は、マップマッチングの確度を基に、地図情報を基に行うカーブに対する減速制御の目標減速度を補正することで、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を抑制できる。
したがって、車両用減速制御装置は、地図情報を基に行うカーブに対する減速制御を適切に行うことができる。すなわち、車両用減速制御装置は、不用意に減速制御を作動させてしまうのを防止できる。
【0083】
(2)マッチング状態量算出手段は、地図上の道路の位置と、マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態(マッチング状態、マッチングオン状態)の指標となるマッチング状態量を算出する。また、マッチングフリー状態量算出手段は、地図上の道路の位置と、マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態(マッチングフリー状態)の指標となるマッチングフリー状態量を算出する。
そして、確度算出手段は、マッチング状態量算出手段が算出したマッチング状態量とマッチングフリー状態量算出手段が算出したマッチングフリー状態量との差分を基に、マップマッチングの確度を算出する。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチング状態とマッチングフリー状態とを定量化した上で比較し、その比較結果として、マップマッチングの確度を算出できる。
(3)確度算出手段は、マッチング状態量がマッチングフリー状態量に対して小さいほど、マップマッチングの確度を低く算出する。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチング状態量とマッチングフリー状態量との関係に対応させてマップマッチングの確度を算出できる。
この結果、車両用減速制御装置は、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御がなされる可能性が高いときに、より確実にその減速制御を抑制できる。
【0084】
(3)カウンタである経過時間対応計数手段は、マッチング状態量として、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している時間の経過に応じて減数し、マッチングフリー状態量として、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない時間の経過に応じて加数する。
そして、確度算出手段は、経過時間対応計数手段により減数及び加数されたカウンタの計数値が大きいほど、マップマッチングの確度を低く算出する。
このように、車両用減速制御装置は、マッチング状態及びマッチングフリー状態の時間の経過に応じてマップマッチングの確度を算出している。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチング状態及びマッチングフリー状態の時間の経過に応じて車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性を判定できる。
【0085】
(4)履歴情報格納手段は、マップマッチング手段が特定した地図上での車両位置と一致する道路の道路種別の変更履歴を格納する。
そして、道路履歴対応状態量補正手段は、履歴情報格納手段が格納する変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、マッチング状態量算出手段が算出したマッチング状態量とマッチングフリー状態量算出手段が算出したマッチングフリー状態量との差分を補正する。
【0086】
具体的には、道路履歴対応状態量補正手段は、マッチングフリー状態時には、前回のマッチングオン状態時の道路種別及び前々回のマッチングオン状態時の道路種別との差異(道路種別対応値の差分)を基にカウントアップ率を設定することで、前記差分を補正する。
また、道路履歴対応状態量補正手段は、マッチングオン状態時には、現在マッチングオン状態における道路の道路種別及び前回のマッチングオン状態時の道路種別との差異(道路種別対応値の差分)を基にカウントダウン率を設定することで、前記差分を補正する。
【0087】
これにより、車両用減速制御装置は、道路種別が大きく変化する場合や道路種別が頻繁に変化する場合には、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
例えば、一定時間内に道路種別が頻繁に繰り返されるような場合、地図上で実際に走行していない道路上に車両が表示される可能性が高くなる。このような場合に、車両用減速制御装置は、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
【0088】
(5)履歴情報格納手段は、マップマッチング手段が特定した地図上での車両位置と一致する道路の道路種別の変更履歴を格納する。
そして、道路履歴対応計数値補正手段は、履歴情報格納手段が格納する変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、計数値を補正する。
これにより、車両用減速制御装置は、車両用減速制御装置は、道路種別が大きく変化する場合や道路種別が頻繁に変化する場合には、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
また、車両用減速制御装置は、計数値を補正するだけといった簡単な処理により、そのような減速制御の抑制を実現できる。
【0089】
(6)道路履歴対応計数値補正手段は、地図上で道路の位置とマップマッチング手段が特定した車両位置とが一致していないときには、変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、加数割合を補正する。
具体的には、道路履歴対応計数値補正手段は、マッチングフリー状態時には、前回のマッチングオン状態時の道路種別及び前々回のマッチングオン状態時の道路種別との差異となる道路種別対応値の差分が大きいとき、該差分が小さいときよりも、加数割合を大きくしている。
これにより、車両用減速制御装置は、道路種別が大きく変化する場合には、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
【0090】
(7)計数手段は、制限値内で計数する。具体的には、計数手段は、マッチングフリー状態において、上限値制限の走行条件となった場合、計数値を増加させないようにしている。
これにより、車両用減速制御装置は、計数値が大きくなりすぎて、マッチングオン状態でカウントダウンしても、計数値が小さくなり難くなることの弊害を防止できる。例えば、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態後のマッチングオン状態において、減速制御が作動し難くなってしまうのを防止できる。
【0091】
(第1の実施形態の変形例)
(1)第1の実施形態では、時間経過(走行時間の経過)を基準にカウントアップ又はカウントダウンする走行条件を判定している。これに対して、第1の実施形態では、自車両の走行距離を基準にカウントアップする走行条件を判定することもできる。この場合、第1の実施形態では、例えば、前回の処理(前回のカウントアップ又は前回のカウントダウン)から所定距離走行していれば、カウントアップ又はカウントダウンする走行条件を満たすとして、カウントアップ又はカウントダウンを実施する。
このように、車両用減速制御装置は、マッチング状態及びマッチングフリー状態の走行距離に応じてマップマッチングの確度を算出している。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチング状態及びマッチングフリー状態の走行距離に応じて車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性を判定できる。
【0092】
(2)第1の実施形態では、時間を基準に上限値制限の走行条件を判定している。これに対して、走行距離を基準に上限値制限の走行条件を判定することもできる。この場合、第1の実施形態では、例えば、マッチングフリー状態になった時点から所定距離を走行した場合、上限値制限の走行条件を満たすと判定する。ここで、所定距離は、1〜2km程度である。例えば、100km/hの車速で1分間継続して走行することは考えにくいことから(100(km/h)/60(min)≒1.7(km))、これを考慮して、所定距離を1〜2km程度とする。
これにより、車両用減速制御装置は、走行時間の他に走行距離の観点からも、不用意なカウントアップを防止できる。
【0093】
(3)第1の実施形態では、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が所定のしきい値未満の場合、実道路走行確度kdを1に設定し、同カウンタ値が所定のしきい値以上の場合、実道路走行確度kdを零に設定している(前記ステップS41〜ステップS43)。
【0094】
これに対して、第1の実施形態では、カウンタ値に連動させて実道路走行確度kdを設定することもできる。この場合、第1の実施形態では、実道路走行確度kdを、0〜1の間の範囲で、カウンタ値が大きくなるほど、小さくなるように設定する。これにより、第1の実施形態では、実道路走行確度kdを連続的に変化する値として設定できる。この結果、第1の実施形態では、例えば、目標減速度Xgsを連続的に補正することができる(前記(7)式参照)。
【0095】
これにより、第1の実施形態では、例えば、警報や自動減速制御の介入タイミングを遅くする場合に、その介入タイミングを連続的に変化させることができる。具体的には、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが小さくなるほど、介入タイミングが遅くなるようにすることができる。また、第1の実施形態では、自動減速制御が介入したときの減速度(制動力、制御量)を、連続的に変化させることができる。具体的には、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが小さくなるほど、自動減速制御の減速度を小さくすることができる。
【0096】
(4)第1の実施形態では、マッチングフリー状態において、マッチングカウンタ8aをカウントアップし、マッチングオン状態において、マッチングカウンタ8aをカウントダウンしている。これに対して、第1の実施形態では、その反対に、マッチングフリー状態において、マッチングカウンタ8aをカウントダウンし、マッチングオン状態において、マッチングカウンタ8aをカウントアップすることもできる。この場合、第1の実施形態では、その他の処理もこのようなマッチングカウンタ8aの処理に合致させるようにする。すなわち例えば、第1の実施形態では、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が大きくなるほど、実道路走行確度kdを大きくするようにし、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が小さくなるほど、実道路走行確度kdを小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチングカウンタ8aを適応性の高いものとすることができる。
【0097】
(5)第1の実施形態では、実道路走行確度kdを基に、目標減速度Xgsを補正している。これに対して、第1の実施形態では、実道路走行確度kdを基に、警報や自動減速制御の作動に影響を与える他の値を補正することもできる。例えば、第1の実施形態では、実道路走行確度kdを基に、許容横加速度Yglmitを補正する。この場合、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが1のときには、許容横加速度Yglmitを補正することなく維持し、実道路走行確度kdが零のときに、許容横加速度Yglmitを大きくする補正をする。これにより、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが零のときには、目標減速度Xgsが小さく補正されるため、警報や自動減速制御を作動開始させる判断をし難くなる(前記(5)式、(6)式、(8)式〜(12)式等参照)。
これにより、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを基に目標減速度Xgs以外の値を補正して、警報や自動減速制御の作動を抑制できる。
【0098】
(6)第1の実施形態では、実道路走行確度kdを基に、目標車速Vrを補正することもできる。この場合、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが1のときには、目標車速Vrを補正することなく維持し、実道路走行確度kdが零のときに、目標車速Vrを大きくする補正をする。これにより、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが零のときには、目標減速度Xgsが小さく補正されるため、警報や自動減速制御を作動開始させる判断をし難くなる(前記(6)式、(8)式〜(12)式等参照)。
これにより、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを基に目標車速Vrを補正して、警報や自動減速制御の作動を抑制できる。
【0099】
(7)第1の実施形態では、実道路走行確度kdを基に、警報作動開始判断及び制御報作動開始判断のための所定のしきい値(警報開始判断設定値Xgswarn、制御判断設定値Xgsstart)を補正することもできる。この場合、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが1のときには、所定のしきい値を補正することなく維持し、実道路走行確度kdが零のときに、所定のしきい値を大きくする補正をする。これにより、第1の実施形態では、実道路走行確度kdが零のときには、警報や自動減速制御を作動開始させる判断をし難くなる(前記(8)式〜(12)式等参照)。
これにより、車両用減速制御装置は、実道路走行確度kdを基にしきい値を補正して、警報や自動減速制御の作動を抑制できる。
【0100】
(第2の実施形態)
(構成)
第2の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、車両用減速制御装置を搭載した車両である。第2の実施形態の車両の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一である。また、第2の実施形態における処理内容は、基本的には前記図2及び図7に示した第1の実施形態における処理内容と同一である。
しかし、第2の実施形態では、カウントダウン率の補正(カウントダウン単位の設定)を異なる基準で行っている。
【0101】
以下の説明で、特に言及がない限りは、第2の実施形態の構成及び処理内容は、前記第1の実施形態の構成及び処理内容と同一である。
第2の実施形態では、GPS情報による自車両の位置(以下、測位位置という。)とナビゲーション装置14の地図上で表示する自車両の位置(以下、表示位置という。)との差分を基準に、カウントダウンする単位を設定している。ここで、表示位置は、マップマッチングにより特定した地図上の車両位置である。
【0102】
先ず、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分を算出する。例えば、制駆動力コントロールユニット8は、一般的な測地線長(2点間の誤差距離)Sの算出式となる下記(18)式により測位位置と表示位置との差分を算出する。
S=√((x2−x12+(y2−y12)/(s/S)
s/S=m0(1+(y12+y1・y2+y22)/(6・R02・m02))
0=α・√(1−e2)/(1−e2・sin2・φ0
・・・(18)
【0103】
ここで、(x1,y1)は、ある一の測点の座標であり、(x2,y2)は、他の測点の座標である。例えば、測点(x1,y1)が測位位置となり、測点(x2,y2)が表示位置となる。m0は、座標系の原点における縮尺係数を意味する(例えば、m0=0.9999)。R0は、平均曲率半径である。αは、長半径である(日本測地系によりα=6377397m)。eは、第1離心率である(日本測地系によりe=0.081697)。φ0は、座標系の原点の緯度である(国土交通省告示第九号 表参照)。例えば、神奈川県の場合、φ0=9であり、自車両のGPS座標(測位位置)(x1,y1)=(10,30)とし、自車位置表示地図座標(表示位置)(x2,y2)=(20,50)とした場合、測地線長Sは、22.363mになる。なお、以上のように、平面直角座標系を用いることに限定されるものではなく、他の算出方法により測位位置と表示位置との差分を算出することもできる。
【0104】
続いて、制駆動力コントロールユニット8は、以上のようにして算出した測位位置と表示位置との差分を基に、カウントダウンする単位を設定する。
図11は、測位位置と表示位置との差分(誤差距離)とカウントダウン単位とを対応付けしたものを示す。図11に示すように、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、カウントダウン単位が小さくなる。
制駆動力コントロールユニット8は、このような図11(テーブル等)を用いて、測位位置と表示位置との差分を基に、カウントダウン単位を設定する。
【0105】
(動作及び作用)
特に、第2の実施形態の場合では、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分(誤差距離)を基に、カウントダウン単位を設定している。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、カウントダウン単位を小さくしている(カウントダウン率を小さくしている)。この結果、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が大きくなり易くなる。これにより、実道路走行確度kdが零に設定され易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
【0106】
なお、制駆動力コントロールユニット8が、測位位置と表示位置との差分を基に、マッチングフリー状態時のカウントアップ単位を設定することもできる。この場合、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、カウントアップ単位を大きくする(カウントアップ率を大きくする)。この結果、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が大きくなり易くなる。これにより、実道路走行確度kdが零に設定され易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
なお、この第2の実施形態において、制駆動力コントロールユニット8(その一の機能)は、位置差分対応状態量補正手段に実現している。
【0107】
(第2の実施形態の効果)
(1)位置差分対応状態量補正手段は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分を基に、マッチング状態量算出手段が算出したマッチング状態量とマッチングフリー状態量算出手段が算出したマッチングフリー状態量との差分を補正する。
具体的には、位置差分対応状態量補正手段は、測位位置と表示位置との差分が大きいとき、該差分が小さいときよりも、マッチングオン状態時のカウントダウン単位を小さくしている(カウントダウン率を小さくしている)。又は、位置差分対応状態量補正手段は、測位位置と表示位置との差分が大きいとき、該差分が小さいといよりも、マッチングフリー状態時のカウントアップ単位を大きくしている(カウントアップ率を大きくしている)。
これにより、車両用減速制御装置は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分が大きい場合には、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
【0108】
(2)位置差分対応計数値補正手段は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分が大きいほど、計数値を大きくする補正をする。
これにより、車両用減速制御装置は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分が大きい場合には、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
また、車両用減速制御装置は、計数値を補正するだけといった簡単な処理により、そのような減速制御の抑制を実現できる。
【0109】
(第3の実施形態)
(構成)
第3の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、車両用減速制御装置を搭載した車両である。第3の実施形態の車両の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一である。また、第3の実施形態における処理内容は、基本的には前記図2に示した第1の実施形態における処理内容と同一である。
しかし、第3の実施形態では、前述の実施形態とは異なる基準で実道路走行確度kdを設定している。
以下の説明で、特に言及がない限りは、第3の実施形態の構成及び処理内容は、前記第1の実施形態の構成及び処理内容と同一である。
第3の実施形態では、マッチングカウンタ8aを用いることなく、実道路走行確度kdを設定している。具体的には、第3の実施形態では、道路種別の差異(道路種別対応値の差分)を基に、実道路走行確度kdを設定している。
【0110】
図12は、その設定処理の処理手順を示す。図12に示すように、先ずステップS61において、制駆動力コントロールユニット8は、最新の道路種別を取得する。
続いてステップS62において、制駆動力コントロールユニット8は、該最新の道路種別の1つ前の道路種別を取得する。例えば、現時点でマッチングフリー状態であれば、最新の道路種別は、前回のマッチングオン状態時の道路種別情報となり、最新の道路種別の1つ前の道路種別は、前々回のマッチングオン状態時の道路種別となる。また、現時点でマッチングオン状態であれば、最新の道路種別は、現在マッチングオン状態にある道路の道路種別となり、最新の道路種別の1つ前の道路種別は、前回のマッチングオン状態時の道路種別となる。ここで、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別情報の変更履歴を参照して道路種別を取得する。
【0111】
続いてステップS63において、制駆動力コントロールユニット8は、実道路走行確度kdを設定する。そのため、制駆動力コントロールユニット8は、先ず、前記図8を基に、前記ステップS61で得た最新の道路種別に対応する道路種別対応値、及び前記ステップS62で得た最新の道路種別の1つ前の道路種別に対応する道路種別対応値を取得する。さらに、制駆動力コントロールユニット8は、取得した最新の道路種別に対応する道路種別対応値と最新の道路種別の1つ前の道路種別に対応する道路種別対応値との差分(絶対値)を取得する。そして、制駆動力コントロールユニット8は、取得した道路種別対応値の差分を基に、実道路走行確度kdを設定する。
【0112】
図13は、道路種別対応値の差分と実道路走行確度kdとを対応付けしたものを示す。図13に示すように、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが小さくなる。このとき、実道路走行確度kdは、道路種別対応値に応じて、0〜1の間で変化する。
制駆動力コントロールユニット8は、このような図13(テーブル等)を用いて、道路種別の差異(道路種別対応値の差分)を基に、実道路走行確度kdを設定する。
【0113】
(動作及び作用)
特に、第3の実施形態の場合では、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別対応値の差分を基に、実道路走行確度kdを設定している。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdを小さくしている。この結果、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが零に設定され易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
なお、この第3の実施形態において、制駆動力コントロールユニット8による図12の処理は確度算出手段に対応する。
【0114】
(第3の実施形態の効果)
(1)履歴情報格納手段は、マップマッチング手段が特定した地図上での前記車両位置と一致する道路の道路種別の変更履歴を格納する。
そして、確度算出手段は、変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、確度を補正(設定)する。
具体的には、確度算出手段は、道路種別対応値の差分が大きいとき、該差分が小さいときよりも、実道路走行確度kdを小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、道路種別が大きく変化する場合や道路種別が頻繁に変化する場合には、車両が実際に走行していない道路に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
【0115】
(第4の実施形態)
(構成)
第4の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、車両用減速制御装置を搭載した車両である。第4の実施形態の車両の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一である。また、第4の実施形態における処理内容は、基本的には前記図2に示した第1の実施形態における処理内容と同一である。
しかし、第4の実施形態では、前述の実施形態とは異なる基準で実道路走行確度kdを設定している。
以下の説明で、特に言及がない限りは、第4の実施形態の構成及び処理内容は、前記第1の実施形態の構成及び処理内容と同一である。
第4の実施形態では、前記第3の実施形態と同様に、マッチングカウンタ8aを用いることなく、実道路走行確度kdを設定している。具体的には、第4の実施形態では、測位位置と表示位置との差分を基に、実道路走行確度kdを設定している。
【0116】
図14は、その設定処理の処理手順を示す。図14に示すように、先ずステップS71において、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置を検出する。
続いてステップS72において、制駆動力コントロールユニット8は、表示位置を検出する。例えば、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態における測位位置及び表示位置を検出する。
【0117】
続いてステップS73において、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS71及びステップS72でそれぞれ検出した測位位置と表示位置との差分を基に、実道路走行確度kdを設定する。
図15は、測位位置と表示位置との差分と実道路走行確度kdとを対応付けしたものを示す。図15に示すように、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが小さくなる。このとき、実道路走行確度kdは、測位位置と表示位置との差分に応じて、0〜1の間で変化する。
制駆動力コントロールユニット8は、このような図15(テーブル等)を用いて、測位位置と表示位置との差分を基に、実道路走行確度kdを設定する。
【0118】
(動作及び作用)
特に、第4の実施形態の場合では、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分を基に、実道路走行確度kdを設定している。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdを小さくしている。この結果、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが零に設定され易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
なお、この第4の実施形態において、制駆動力コントロールユニット8による図14の処理は確度算出手段に対応する。
【0119】
(第4の実施形態の効果)
(1)確度算出手段は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分を基に、確度を補正(設定)する。
具体的には、確度算出手段は、測位位置と表示位置との差分が大きいとき、該差分が小さいときよりも、実道路走行確度kdを小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、測位位置と表示位置との差分が大きい場合には、車両が実際に走行していない道路形状に基づく減速制御を行う可能性が高いとして、減速制御を抑制できる。
【0120】
(第5の実施形態)
(構成)
第5の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、車両用減速制御装置を搭載した車両である。第5の実施形態の車両の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一である。また、第5の実施形態における処理内容は、基本的には前記図2に示した第1の実施形態における処理内容と同一である。
しかし、第5の実施形態では、前述の実施形態とは異なる基準で実道路走行確度kdを設定している。
【0121】
以下の説明で、特に言及がない限りは、第5の実施形態の構成及び処理内容は、前記第1の実施形態の構成及び処理内容と同一である。
第5の実施形態では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aを用いて得た実道路走行確度kdと、マッチングカウンタ8aとは別に得た実道路走行確度kdとを用いて、実道路走行確度kdを設定している。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、前記第1又は第2の実施形態のようにマッチングカウンタ8aにより取得した実道路走行確度kdと、前記第3の実施形態のように道路種別の差異を基に取得した実道路走行確度kdとを基に、実道路走行確度kdを設定している。
【0122】
なお、前記第1の実施形態では、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別の差異を基に、マッチングカウンタ8aのカウントアップ又はカウントダウンをしている。また、前記第2の実施形態では、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分を基に、マッチングカウンタ8aのカウントアップ又はカウントダウンをしている。
【0123】
図16は、第5の実施形態における実道路走行確度kdの設定処理の処理手順を示す。図16に示すように、先ずステップS81において、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値を基に実道路走行確度kd(以下、第1実道路走行確度kd1という。)を設定する(前記図7参照)。
続いてステップS82において、制駆動力コントロールユニット8は、道路種別の差異(道路種別対応値の差分)を基に、実道路走行確度kd(以下、第2実道路走行確度kd2という。)を設定する(前記図12参照)。
それから、ステップS83において、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS81及びステップS82で設定した第1及び第2実道路走行確度kd1,kd2を基に、最終的な実道路走行確度kdを設定する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、下記(19)式を用いて、最終的な実道路走行確度kdを算出する。
kd=kd1・kd2 ・・・(19)
【0124】
(動作及び作用)
特に、第5の実施形態の場合、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、カウントアップ率が大きくなり、又はカウントダウン率が小さくなるため、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が大きくなり易くなる。また、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが小さくなり易くなる。その結果、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが零に設定され易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
なお、この第5の実施形態において、制駆動力コントロールユニット8による図16の処理は確度算出手段に対応する。
【0125】
(第5の実施形態の効果)
(1)確度算出手段は、変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、確度を補正する。
すなわち、第5の実施形態では、車両用減速制御装置は、マッチングカウンタ8aにより取得した実道路走行確度kdと、道路種別の差異を基に取得した実道路走行確度kdとを基に、最終的に実道路走行確度kdを設定している。これにより、車両用減速制御装置は、変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に行う確度の補正を実現している。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチングカウンタ8aから得た実道路走行確度kdに道路種別対応値の差分から得た実道路走行確度kdを加味して(補正結果として)、最終的に実道路走行確度kdを設定できるようになる。
【0126】
(第6の実施形態)
(構成)
第6の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、車両用減速制御装置を搭載した車両である。第5の実施形態の車両の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一である。また、第6の実施形態における処理内容は、基本的には前記図2に示した第1の実施形態における処理内容と同一である。
しかし、第6の実施形態では、前述の実施形態とは異なる基準で実道路走行確度kdを設定している。
以下の説明で、特に言及がない限りは、第6の実施形態の構成及び処理内容は、前記第1の実施形態の構成及び処理内容と同一である。
第6の実施形態では、前記第5の実施形態と同様に、マッチングカウンタ8aを用いて得た実道路走行確度kdと、マッチングカウンタ8aとは別に得た実道路走行確度kdとを用いて、実道路走行確度kdを設定している。
【0127】
しかし、第6の実施形態では、前記第1又は第2の実施形態のようにマッチングカウンタ8aにより取得した実道路走行確度kdと、前記第4の実施形態のように測位位置と表示位置との差分を基に取得した実道路走行確度kdとを基に、実道路走行確度kdを設定している。
図17は、第6の実施形態における実道路走行確度kdの設定処理の処理手順を示す。図17に示すように、先ずステップS91において、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値を基に実道路走行確度kd(第1実道路走行確度kd1)を設定する(前記図7参照)。
【0128】
続いてステップS92において、制駆動力コントロールユニット8は、測位位置と表示位置との差分を基に、実道路走行確度kd(以下、第3実道路走行確度kd3という。)を設定する(前記図14参照)。
それから、ステップS93において、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS91及びステップS92で設定した第1及び第3実道路走行確度kd1,kd3を基に、最終的な実道路走行確度kdを設定する。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、下記(20)式を用いて、最終的な実道路走行確度kdを算出する。
kd=kd1・kd3 ・・・(20)
【0129】
(動作及び作用)
特に、第6の実施形態の場合、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、カウントアップ率が大きくなり、又はカウントダウン率が小さくなるため、マッチングカウンタ8aのカウンタ値が大きくなり易くなる。また、測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが小さくなり易くなる。この結果、道路種別対応値の差分が大きくなるほど、さらには測位位置と表示位置との差分が大きくなるほど、実道路走行確度kdが零に設定され易くなるため、警報及び自動減速制御は、作動し難くなる。
なお、この第6の実施形態において、制駆動力コントロールユニット8による図17の処理は確度算出手段に対応する。
【0130】
(第6の実施形態の効果)
(1)確度算出手段は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分を基に、確度を補正する。
すなわち、第6の実施形態では、車両用減速制御装置は、マッチングカウンタ8aにより取得した実道路走行確度kdと、測位位置と表示位置との差分を基に取得した実道路走行確度kdとを基に、最終的に実道路走行確度kdを設定している。これにより、車両用減速制御装置は、測位手段が測位した車両位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分を基に行う確度の補正を実現している。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチングカウンタ8aから得た実道路走行確度kdに測位位置と表示位置との差分から得た実道路走行確度kdを加味して(補正結果として)、最終的に実道路走行確度kdを設定できるようになる。
【0131】
(第7の実施形態)
(構成)
第7の実施形態は、前記第1の実施形態と同様に、車両用減速制御装置を搭載した車両である。第7の実施形態の車両の構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一である。また、第7の実施形態における処理内容は、基本的には前記図2に示した第1の実施形態における処理内容と同一である。
しかし、第7の実施形態では、第1の実施形態における図7の処理の一部が異なる。以下の説明で、
特に言及がない限りは、第7の実施形態の構成及び処理内容は、前記第1の実施形態の構成及び処理内容と同一である。
【0132】
図18は、前記図7に対応する処理手順であり、第7の実施形態における制駆動力コントロールユニット8の処理手順を示す。
図18に示すように、前記図7の処理に対して、新たにステップS61〜ステップS64の処理を設けている。
図18に示すように、ステップS31において、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態か否かを判定する。ここで、制駆動力コントロールユニット8は、マッチング状態情報がOFFであるとき、マッチングフリー状態と判定し、前記第1の実施形態と同様に、ステップS32に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、そうでない場合、すなわちマッチング状態情報がONであるとき、ステップS61に進む。
【0133】
ステップS61では、制駆動力コントロールユニット8は、自車両の現在走行位置が高速道路のサービスエリア(SA)又はパーキングエリア(PA)か否かを判定する。制駆動力コントロールユニット8は、ナビゲーション装置14から地図情報としてサービスエリア及びパーキングエリアの情報を取得し、GPSで計測した自車両位置を地図上の位置に変換した位置が、高速道路のサービスエリア(SA)又はパーキングエリア(PA)上であるか否かを判定する。
【0134】
なお、通常高速道路のサービスエリア(SA)又はパーキングエリア(PA)と高速道路本線(走行路)との距離はGPSの計測誤差に対して大きく、GPSに計測誤差が発生したとしても自車両が高速道路のサービスエリア(SA)又はパーキングエリア(PA)上であるか否かを判定することは可能である。
ここで、制駆動力コントロールユニット8は、自車両の現在走行位置がサービスエリア又はパーキングエリアの場合、ステップS62に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、そうでない場合、すなわち、自車両の現在走行位置が、サービスエリアでもパーキングエリアでもない場合、前記ステップS36に進む。
【0135】
ステップS62では、制駆動力コントロールユニット8は、自車速Vが速度しきい値以下、又はアクセル開度θtが開度しきい値以下か否かを判定する。例えば、速度しきい値や開度しきい値は、実験値、経験値又は理論値により設定した値である。速度しきい値や開度しきい値は、運転者に加速意思はないが運転者が自車両を低速走行させているときの車両の走行状態を判定するための値である。本実施形態では、速度しきい値を60km/hとし、開度しきい値を5%とする。
【0136】
ここで、制駆動力コントロールユニット8は、自車速Vが60km/h以下の場合(V≦60km/h)、又はアクセル開度θtが5%以下の場合(θt≦5%)、自動減速制御が不要な制御不要状態であるとして、前記ステップS32に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、そうでない場合(V>60km/hかつθt>5%)、前記ステップS36に進む。
【0137】
前記ステップS32では、制駆動力コントロールユニット8は、前記第1の実施形態と同様に、カウントアップする走行条件が満たされているか否かを判定する。ここで、制駆動力コントロールユニット8は、カウントアップする走行条件が満たされている場合、ステップS63に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、カウントアップする走行条件が満たされていない場合、前記ステップS36に進む。
ステップS63では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態において、前記ステップS62と同様に、自車速Vが60km/h(速度しきい値)以下、又はアクセル開度θtが5%(開度しきい値)以下か否かを判定する。
【0138】
具体的には、ステップS63では、制駆動力コントロールユニット8は、先ず、前記ステップS31でマッチングフリー状態との判定結果を得て、該ステップS63に進んできているか否かを判定する。制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS31でマッチングフリー状態との判定結果を得ていない場合、ステップS65に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS31でマッチングフリー状態との判定結果を得ている場合には、自車速Vが60km/h以下、又はアクセル開度θtが5%以下か否かを判定する。ここで、制駆動力コントロールユニット8は、自車速Vが60km/h(速度しきい値)以下の場合、又はアクセル開度θtが5%(開度しきい値)以下の場合、ステップS64に進む。制駆動力コントロールユニット8は、そうでない場合、ステップS65に進む。
【0139】
ステップS64では、制駆動力コントロールユニット8は、カウンタ値の上限値を設定する。上限値は、マッチングカウンタ8aのカウンタ値の増加を制限する値である。具体的には、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングカウンタ8aがカウントダウンを始めてから15秒経過後に、カウント値が上限値から所定のしきい値に達するような、該上限値の設定をする。すなわち、制駆動力コントロールユニット8は、カウントダウンを開始してから15秒経過後に、実道路走行確度kd1が1になるように、又は自動減速制御の抑制が解除されるように、上限値の設定をする。
なお、この上限値の設定を、予め設定してある値(初期設定の上限値(例えば16秒以上の上限値))を減少させる補正をすることで実現することもできる。
【0140】
制駆動力コントロールユニット8は、以上のような上限値の設定をした後、前記ステップS34に進む。
ステップS65では、制駆動力コントロールユニット8は、前記ステップS33と同様な処理として、上限値制限の走行条件を満たすか否かを判定する。例えば、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態になった時点から所定時間(例えば1分)が経過した場合、上限値制限の走行条件を満たすと判定する。ここで、制駆動力コントロールユニット8は、上限値制限の走行条件を満たす場合、カウントアップしないようにするため、前記ステップS36に進む。また、制駆動力コントロールユニット8は、上限値制限の走行条件を満たさない場合、前記ステップS34に進む。
【0141】
(動作及び作用)
特に、第7の実施形態では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングオン状態でも、自車両の現在走行位置がサービスエリア又はパーキングエリアであり、かつ自車速Vが60km/h以下又はアクセル開度θtが5%以下の場合、カウントアップしている。このときの処理の順序は、ステップS31、ステップS61、ステップS62、ステップS32、ステップS64、ステップS65、ステップS35、ステップS36となる。
【0142】
制駆動力コントロールユニット8は、このようなカウントアップにより、自動減速制御の作動を抑制する。
図19は、サービスエリア内等での自動減速制御の作動状態を説明する図である。
ここで、運転者は、通常、サービスエリア内等では、加速意思なく比較的低速で自車両を走行させる傾向にある。このようなことから、運転者が加速意思なく、自車速Vを60km/h以下にして自車両を走行させていると、図19に示すように、車両用減速制御装置は、サービスエリア内等における各カーブに対して自動減速制御の作動を抑制する。これにより、運転者は、サービスエリア内等で自車両を円滑に走行させることができる。
【0143】
また、運転者が加速意思なく、アクセル開度θtを5%以下にして自車両を走行させているようなときにも、図19に示すように、車両用減速制御装置は、サービスエリア内等の道路の各カーブに対して自動減速制御の作動を抑制する。
なお、図19に示すように、高速道路で本線からサービスエリア等への進入直後に、自車速Vが60km/hよりも大きく、かつアクセル開度θtが5%よりも大きいと、車両用減速制御装置は、自動減速制御を通常通り作動させる。これにより、車両用減速制御装置は、サービスエリア等への進入直後のカーブに対して自動減速制御を通常通り作動させる。
【0144】
このように、車両用減速制御装置は、自車速Vが60km/h以下であったり、アクセル開度θtが5%以下であったりすることを要件としたことで、サービスエリア内等で十分に速度が落ちた時点で、自動減速制御の作動を抑制できる。すなわち、車両用減速制御装置は、不必要に自動減速制御が作動するのを防止できる。
また、第7の実施形態では、制駆動力コントロールユニット8は、マッチングフリー状態において、自車速Vが60km/h以下であったり、アクセル開度θtが5%以下であったりすると、上限値の設定をしている(前記ステップS63→ステップS64)。
制駆動力コントロールユニット8は、このような上限値の設定により、自動減速制御を不用意に抑制してしまうのを防止している。
【0145】
図20は、駐車場走行中、及び該駐車場に隣接の道路を再び走行開始したときのマッチング状態の例を示す。
図20に示すように、一般道路に隣接する駐車場内を自車両が走行することでマッチングフリー状態になる場合がある。通常、ナビゲーション装置14の地図情報では、一般道に隣接する駐車場を道路として扱われていない。そのため、駐車場内で車両が走行すると、ナビゲーション装置14では、マッチングフリー状態になってしまう。
また、運転者は、通常、駐車場では、加速意思なく比較的低速で自車両を走行させる傾向にある。
【0146】
これにより、運転者が、駐車場であることで、加速意思なく、自車速Vを60km/h以下にして自車両を走行させていると、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態になっている場合には、上限値の設定をする。また、運転者が、駐車場であることで、加速意思なく、アクセル開度θtを5%以下にして自車両を走行させていても、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態になっている場合には、上限値の設定をする。
【0147】
一方、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態であることで、駐車場を走行中、走行時間や走行距離に応じてカウントアップする(前記ステップS35)。本例では、このカウントアップによりカウンタ値が上限値に達したと仮定する。
そして、その後、車両が駐車場から出たことで、図20に示すように、ナビゲーション装置14では、その駐車場に隣接する道路に対し再びマッチングオン状態になったとする。すると、車両用減速制御装置は、該道路を車両が走行し続けると、カウントダウンにより、カウント値を上限値から15秒程度で所定のしきい値以下にする。
【0148】
ここで、例えば、前記ステップS32で、所定の走行時間を基準とした判定をし、その所定の走行時間が1秒であり、カウントダウン率が1であると仮定する。そのように仮定した場合、制駆動力コントロールユニット8が前記図18の処理を15回繰り返すことで、カウント値は、15秒間で上限値から所定のしきい値に達する。
このようにカウント値が所定のしきい値に達すると、車両用減速制御装置は、自動減速制御を通常の作動可能状態にする。
【0149】
以上のようなことから、たとえ、駐車場の走行中にマッチングフリー状態になっていたとしても、運転者が、駐車場であることで、加速意思はないが走行意思をもって自車両を走行させていると、増加するカウンタ値は、設定された上限値で停止する。そして、その後、車両が駐車場を出て隣接する道路の走行を開始してナビゲーション装置14で再びマッチングオン状態になると、車両用減速制御装置は、15秒経過後に自動減速制御を通常の作動可能状態に復帰させる。この結果、車両用減速制御装置は、制御対象のカーブを検出した場合には、該カーブに対して自動減速制御を通常通り作動させる。このように、車両用減速制御装置は、自動減速制御を不用意に抑制してしまうのを防止している。
【0150】
また、駐車場を出た直後に、ナビゲーション装置14が該駐車場に隣接する道路ではなく他の道路に対してマッチングオン状態としてしまう場合がある。しかし、通常のナビゲーション装置14は、一般道の場合、比較的短時間で、車両が走行する本来の道路にマッチングオン状態にすることができる。その一方で、車両用減速制御装置は、カウンタ値が所定のしきい値に達するまでの少なくとも15秒間、自動減速制御の作動を抑制することになる。この結果、車両用減速制御装置は、駐車場を出た後の比較的短時間内で起きる誤マッチング状態で、自動減速制御が作動してしまうのを防止できる。
なお、第7の実施形態において、制駆動力コントローラ8のステップS64の処理は、上限値設定手段に対応する。
【0151】
(第7の実施形態の効果)
(1)経過時間対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車速が予め設定した車速しきい値以下であると判定すると、マッチング状態量として、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している時間に応じて、減数に替えて加数する。
そして、確度算出手段は、経過時間対応計数手段により減数及び加数されたカウンタの計数値が大きいほど、マップマッチングの確度を低く算出し、目標減速度を小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、運転者が加速意思はないが走行意思をもってサービスエリア内等で自車両を走行させているようなときには、マッチングオン状態でも、目標減速度を小さくして、不必要に自動減速制御を作動させてしまうのを防止できる。
【0152】
(2)経過時間対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車両のアクセル開度が予め設定した開度しきい値以下であると判定すると、マッチング状態量として、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している時間に応じて、減数に替えて加数する。
そして、確度算出手段は、経過時間対応計数手段により減数及び加数されたカウンタの計数値が大きいほど、マップマッチングの確度を低く算出し、目標減速度を小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、運転者が加速意思はないが走行意思をもってサービスエリア内等で自車両を走行させているようなときには、マッチングオン状態でも、目標減速度を小さくして、不必要に自動減速制御を作動させてしまうのを防止できる。
【0153】
(3)距離対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車速が予め設定した車速しきい値以下であると判定すると、マッチング状態量として、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態での該車両の走行距離に応じて、減数に替えて加数する。
そして、確度算出手段は、距離対応計数手段により減数及び加数されたカウンタの計数値が大きいほど、マップマッチングの確度を低く算出し、目標減速度を小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、運転者が加速意思はないが走行意思をもってサービスエリア内等で自車両を走行させているようなときには、マッチングオン状態でも、目標減速度を小さくして、不必要に自動減速制御を作動させてしまうのを防止できる。
【0154】
(4)距離対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車両のアクセル開度が予め設定した開度しきい値以下であると判定すると、マッチング状態量として、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態での該車両の走行距離に応じて、減数に替えて加数する。
そして、確度算出手段は、距離対応計数手段により減数及び加数されたカウンタの計数値が大きいほど、マップマッチングの確度を低く算出し、目標減速度を小さくする。
これにより、車両用減速制御装置は、運転者が加速意思はないが走行意思をもってサービスエリア内等で自車両を走行させているようなときには、マッチングオン状態でも、目標減速度を小さくして、不必要に自動減速制御を作動させてしまうのを防止できる。
【0155】
(5)上限値設定手段は、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態であり、かつ車速が予め設定した車速しきい値以下であると判定すると、計数値の上限値の設定をする。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態でも、運転者が加速意思はないが走行意思をもって駐車場を自車両を走行させているようなときには、計数値の増加を制限する。
この結果、車両用減速制御装置は、駐車場を出て再び一般道を走行開始した場合に、必要以上に自動減速制御の作動を抑制してしまうのを防止できる。
【0156】
(6)上限値設定手段は、地図上の道路の位置とマップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態であり、かつ車両のアクセル開度が予め設定した開度しきい値以下であると判定すると、計数値の上限値の設定をする。
これにより、車両用減速制御装置は、マッチングフリー状態でも、運転者が加速意思はないが走行意思をもって駐車場を自車両を走行させているようなときには、計数値の増加を制限する。
この結果、車両用減速制御装置は、駐車場を出て再び一般道を走行開始した場合に、必要以上に自動減速制御の作動を抑制してしまうのを防止できる。
【0157】
(第7の実施形態の変形例)
(1)第7の実施形態では、マッチングカウンタ8aがカウントダウンを始めてから15秒経過後に、カウント値が所定のしきい値に達するように、上限値の設定をしている。すなわち、走行時間を基準に上限値の設定をしている。これに対して、走行距離を基準に上限値の設定もできる。具体的には、マッチングカウンタ8aがカウントダウンを始めてから、走行距離が150mに達したとき、カウント値が所定のしきい値に達するように、上限値の設定をする。例えば、この150mの距離は、30km/hの車速で15秒間継続して走行している間に((30(km/h)/60(min))/4=125(m))、カウント値が所定のしきい値に達するようにするための値である。
【0158】
例えば、前記ステップS32で、所定の走行距離を基準とした判定をし、その所定の走行距離が10mであり、カウントダウン率が1であると仮定する。そのように仮定した場合、制駆動力コントロールユニット8が前記図18の処理を15回繰り返すことで、車両が150m走行したときに、カウント値が所定のしきい値に達するようになる。
これにより、車両用減速制御装置は、走行距離を指標としても、駐車場を出て再び一般道を走行開始した場合に、必要以上に自動減速制御の作動を抑制してしまうのを防止できる。
【0159】
(2)第7の実施形態では、前記ステップS31でマッチングフリー状態であり、かつ自車速Vが60km/h以下、又はアクセル開度θtが5%以下である要件を満たす場合、前記ステップS64で上限値を設定している。これに対して、制駆動力コントロールユニット8が、該要件を満たす場合には、前記ステップS34に進むことで、マッチングカウンタ8aのカウントアップを禁止することによる上限値制限をすることもできる。
これにより、車両用減速制御装置は、駐車場であることで、加速意思なく、例えば自車速Vを60km/h以下にして自車両を走行させていると、カウントアップを停止する。この結果、車両用減速制御装置は、上限値を設定する場合と同様な効果により、駐車場を出て再び一般道を走行開始した場合に、必要以上に自動減速制御の作動を抑制してしまうのを防止できる。
【符号の説明】
【0160】
6FL〜6RR ホイールシリンダ、7 制動流体圧制御部、8 制駆動力コントロールユニット、8a マッチングカウンタ、9 エンジン、12 駆動トルクコントロールユニット、13 外界認識センサ、14 ナビゲーション装置、15 警告用モニタ、16 加速度センサ、17 ヨーレイトセンサ、18 アクセル開度センサ、19 操舵角センサ、20 マスタシリンダ圧センサ、22FL〜22RR 車輪速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両位置を測位する測位手段と、
予め地図情報を記憶した地図情報記憶手段と、
前記測位手段が測位した車両位置と、前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報とを基に、前記地図情報の地図上の車両位置を特定するマップマッチングを行うマップマッチング手段と、
前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置と前記地図情報とから、車両前方のカーブ曲率を検出する前方カーブ検出手段と、
前記前方カーブ検出手段が検出したカーブ曲率の大きさを基に、目標減速度を算出する目標減速度算出手段と、
前記目標減速度を基に、前記車両を減速制御する車速制御手段と、
前記マップマッチング手段によるマップマッチングの確度を算出する確度算出手段と、
前記確度算出手段が算出したマップマッチングの確度が低いほど、前記目標減速度が小さくなるように補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする車両用減速制御装置。
【請求項2】
前記地図上の道路の位置と、前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態の指標となるマッチング状態量を算出するマッチング状態量算出手段と、
前記地図上の道路の位置と、前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態の指標となるマッチングフリー状態量を算出するマッチングフリー状態量算出手段と、を備え、
前記確度算出手段は、前記マッチング状態量算出手段が算出したマッチング状態量と前記マッチングフリー状態量算出手段が算出したマッチングフリー状態量との差分を基に、前記マップマッチングの確度を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用減速制御装置。
【請求項3】
前記確度算出手段は、前記マッチング状態量が前記マッチングフリー状態量に対して小さいほど、前記マップマッチングの確度を低く算出することを特徴とする請求項2に記載の車両用減速制御装置。
【請求項4】
前記マッチング状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している時間の経過に応じて減数し、前記マッチングフリー状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない時間の経過に応じて加数するカウンタである経過時間対応計数手段を備え、
前記確度算出手段は、前記経過時間対応計数手段により減数及び加数された前記カウンタの計数値が大きいほど、前記マップマッチングの確度を低く算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用減速制御装置。
【請求項5】
前記マッチング状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態での該車両の走行距離に応じて減数し、前記マッチングフリー状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態での該車両の走行距離に応じて加数するカウンタである距離対応計数手段として構成され、
前記確度算出手段は、前記距離対応計数手段により減数及び加数された前記カウンタの計数値が大きいほど、前記マップマッチングの確度を低く算出することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項6】
前記マップマッチング手段が特定した前記地図上での前記車両位置と一致する道路の道路種別の変更履歴を格納する履歴情報格納手段を備え、
前記確度算出手段は、さらに、前記変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、前記確度を補正することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項7】
前記確度算出手段は、さらに、前記測位手段が測位した車両位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分を基に、前記確度を補正することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項8】
前記マップマッチング手段が特定した地図上での前記車両位置と一致する道路の道路種別の変更履歴を格納する履歴情報格納手段と、前記履歴情報格納手段が格納する変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、前記マッチング状態量算出手段が算出したマッチング状態量と前記マッチングフリー状態量算出手段が算出したマッチングフリー状態量との差分を補正する道路履歴対応状態量補正手段と、を備えることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項9】
前記マップマッチング手段が特定した地図上での前記車両位置と一致する道路の道路種別の変更履歴を格納する履歴情報格納手段と、前記履歴情報格納手段が格納する変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、前記計数値を補正する道路履歴対応計数値補正手段と、を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用減速制御装置。
【請求項10】
前記道路履歴対応計数値補正手段は、前記地図上で道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した車両位置とが一致していないときには、前記変更履歴中の最新の道路種別と該最新の道路種別の1つ前の道路種別との差異を基に、前記加数割合を補正することを特徴とする請求項9に記載の車両用減速制御装置。
【請求項11】
前記測位手段が測位した車両位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分を基に、前記マッチング状態量算出手段が算出したマッチング状態量と前記マッチングフリー状態量算出手段が算出したマッチングフリー状態量との差分を補正する位置差分対応状態量補正手段と、を備えることを特徴とする請求項2〜10の何れか1項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項12】
前記測位手段が測位した車両位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置との差分が大きいほど、前記計数値を大きくする補正をする位置差分対応計数値補正手段と、を備えることを特徴とする請求項4又は5の何れか1項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項13】
前記計数手段は、制限値内で計数することを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用減速制御装置。
【請求項14】
前記経過時間対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車速が予め設定した車速しきい値以下であると判定すると、前記マッチング状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している時間に応じて、前記減数に替えて加数することを特徴とする請求項4に記載の車両用減速制御装置。
【請求項15】
前記経過時間対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車両のアクセル開度が予め設定した開度しきい値以下であると判定すると、前記マッチング状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している時間に応じて、前記減数に替えて加数することを特徴とする請求項4又は14に記載の車両用減速制御装置。
【請求項16】
前記距離対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車速が予め設定した車速しきい値以下であると判定すると、前記マッチング状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態での該車両の走行距離に応じて、前記減数に替えて加数することを特徴とする請求項5に記載の車両用減速制御装置。
【請求項17】
前記距離対応計数手段は、車両が高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアを走行しており、かつ車両のアクセル開度が予め設定した開度しきい値以下であると判定すると、前記マッチング状態量として、前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致している状態での該車両の走行距離に応じて、前記減数に替えて加数することを特徴とする請求項5又は16に記載の車両用減速制御装置。
【請求項18】
前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態であり、かつ車速が予め設定した車速しきい値以下であると判定すると、前記計数値の上限値の設定をする上限値設定手段を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用減速制御装置。
【請求項19】
前記地図上の道路の位置と前記マップマッチング手段が特定した地図上の車両位置とが一致していない状態であり、かつ車両のアクセル開度が予め設定した開度しきい値以下であると判定すると、前記計数値の上限値の設定をする上限値設定手段を備えることを特徴とする請求項4、5又は18に記載の車両用減速制御装置。
【請求項20】
測位手段が測位した車両位置と、地図情報記憶手段に予め記憶された地図情報とを基に、前記地図情報の地図上の車両位置を特定するマップマッチングを行う第1ステップと、
特定した地図上の車両位置と前記地図情報とから、車両前方のカーブ曲率を検出するとともに、前記マップマッチングの確度を算出する第2ステップと、
検出した前記カーブ曲率の大きさを基に、目標減速度を算出し、前記マップマッチングの確度が低いほど、算出した前記目標減速度が小さくなるように補正する第3ステップと、
前記目標減速度を基に、前記車両を減速制御する第4ステップと、
を有することを特徴とする車両用減速制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−52727(P2010−52727A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175509(P2009−175509)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】