説明

車載受信装置

【課題】 移動体において地上デジタル放送に含まれる緊急情報を受信した際に、移動体の走行に適切な情報を表示する。
【解決手段】 車載受信装置は、放送局から送出されるデジタル放送中に含まれているTMCC信号において、災害情報に代表される緊急情報が発生した際、デジタル放送で受信した緊急情報に関するデータ放送をナビゲーション装置に送りモニタに出力する。モニタの出力画面をナビゲーション画面からデータ放送画面に自動的に切り替えてもよい。また、データ放送画面とナビゲーション画面の2種類の画面を同時に表示してもよい。また、GPSによる自車両の位置と、位置を算出したときの時刻、ならびに該車両を識別するための情報と、車両の異常に関する情報と、車両周辺の状況を撮像したデータを、災害情報を管理するサーバ装置に送信するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載受信装置に関し、とくに移動体向けのデジタル放送受信機、ならびにナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、デジタル放送から災害などの緊急情報を受信した場合に、受信した緊急情報を表示する放送受信装置が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−336411号公報
【特許文献2】特開2003−288658号公報
【特許文献3】特開2003−209761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜3の技術は、車両のように現在位置が変化する移動体においてデジタル放送を受信することを考慮していない。
【0005】
本発明の目的は、移動体において地上デジタル放送に含まれる緊急情報を受信した場合に、移動体の走行に適切な情報を表示する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の車載受信装置は、放送局から送出されるデジタル放送中に含まれている緊急状態が発生したことを通知する情報、例えば日本国内のデジタル放送におけるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号において、災害情報に代表される緊急情報が通知された際、デジタル放送で受信した緊急情報に関するデータ放送をナビゲーション装置のモニタに出力する。
【0007】
例えば、本発明の車載受信装置は、放送電波を受信してその受信した信号をそれぞれ復調、TS処理し、その結果作成されるデジタルデータをデコードするデジタル放送受信装置と、地図データとGPS衛星からの位置情報をもとに自車両の位置を算出し出力装置に表示するナビゲーション装置とを備える車載受信装置である。そして、前記デジタル放送受信装置は、受信したデータ中に重畳されている緊急警報放送用フラグデータを検出し、該緊急警報放送用フラグデータの設定値を前記ナビゲーション装置に送信する手段を備えている。
【0008】
また、放送されている緊急情報に関するデータ放送画面を前記ナビゲーション装置に送信する手段を備えていてもよい。そして、前記出力装置の出力画面を前記デジタル放送受信装置から受信したデータ放送画面に切り替える手段を備えていてもよい。
【0009】
また、前記ナビゲーション装置は、前記出力装置に前記データ放送画面とナビゲーション画面の2種類の画面を同時に表示する手段を備えていてもよい。
【0010】
また、前記ナビゲーション装置は、自車両に設置されているセンサの情報を元に、車両の異常を検出する車両異常検出手段と、該車両の周辺の状況を撮像する撮像手段と、前記デジタル放送受信装置にて受信したデータ中に緊急警報放送用フラグデータが重畳されている場合、自車両の位置と、位置を算出したときの時刻、ならびに該車両を識別するための情報と、前記車両異常検出手段にて検出された車両の異常に関する情報と、該車両周辺の状況を撮像したデータの1つ以上を含む情報を、災害情報を管理するサーバ装置に送信する手段とを備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態> 図1は、第1実施形態にかかる車載受信装置100の概略構成図である。車載受信装置100は、IRD(Integrated Receiver and Decoder)と呼ばれるデジタル放送を受信する装置101と、デジタル放送を受信するアンテナ105と、ナビゲーション装置(以下、「ナビ装置」という)102と、GPSアンテナ106と、表示モニタ103と、を備えている。
【0013】
IRD101及びナビ装置102は、通信線108により接続されている。ナビ装置102及びモニタ103は、映像信号に代表されるデータを通信する通信線109により接続されている。
【0014】
図2は、IRD101の概略構成図である。IRD101は、デジタル放送電波を受信してデジタルデータに復調するチューナ部201と、復調されたデジタルデータから所望のデジタルデータを取り出すためのトランスポートストリーム処理部202と、トランスポートストリーム処理部202にて取得したデジタルデータにて、スクランブルに代表される暗号化処理が行われている場合に、その暗号をはずす処理を行うデスクランブル部203と、ナビ装置102とのインターフェース(後述する外部I/F209)ならびにIRD101中のさまざまなデータの流れを制御する制御部204と、トランスポートストリーム処理部202にて抽出されたデジタルデータの中から、音声と映像に関するデータをデコードする音声・映像デコード部205と、トランスポートストリーム処理部202にて抽出されたデジタルデータの中から、データ放送、特にナビゲーションに関するデータをデコードするナビデータデコード部206と、制御部204にてチャンネル情報に代表されるシステム情報を表示するデータを作成する表示部207と、映像・音声デコード部205、ナビデータデコード部206および表示部207にて生成されたデータ統合して表示する表示統合部208と、IRD101から外部に出すデータを送受する外部I/F209と、IRD101に対してコマンド指令を発行するためのキー入力部210と、を備えている。
【0015】
図3は、チューナ部201の概略構成図である。図3では、チューナ部201に、ダイバシチ受信方式を用いた場合の例を示している。チューナ部201は、受信アンテナ105−a、105−bと、受信モジュール302−a、302−bからなるRFモジュール301と、復調合成部303と、からなる。各受信モジュール302で受信したRF信号は、通信線357を介して、復調合成部303に入力される。
【0016】
復調合成部303は、各RF信号のレベルに応じて、たとえば最大比合成法を用いて、最良の信号状態を確保した後に復調を行い、復調した該デジタルデータを、通信線354を介して、トランスポートストリーム処理部202に送信する。
【0017】
ここで生成されたデジタルデータ中に、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)と呼ばれる信号が含まれている。TMCC信号は、日本国内の電波産業会(ARIB)が策定する規格により定義されている。TMCC信号の概要を、図4に示す。TMCC信号は、204バイトからなるパケットであり、この中のB26に示した領域に、緊急警報放送用フラグが定義されている。このフラグの値が、0の場合は、特に後段にて処理は発生しないものの、このフラグの値が1に設定されている場合には、緊急警報が発令されているときで、IRD101に特別な処理を行わせることが可能である。
【0018】
まず、TMCC信号の受信に関して、IRD101が図3に示したダイバーシチ受信を行っている場合について説明する。ダイバーシチ受信を行っている場合、アンテナの使い方によって最大比合成方式、切り替え方式の受信方法がある。
【0019】
まず、最大比合成方式で受信している場合について説明する。この例では受信の前提として、ある1チャンネルの番組を受信しているものとし、そのチャンネル中に、緊急情報フラグが記述されているとする。最大比合成方式は、複数のアンテナ105及びRFモジュール301の組み合わせからなる受信モジュール302からの出力を合成することにより、最良の信号状態を確保する方式である。この場合は、前記したRFモジュール301から出力されるトランスポートストリーム中にTMCC信号が入るために、通信線354を介してトランスポートストリーム処理部202に該信号が入力される。
【0020】
トランスポートストリーム処理部202は、TMCC信号中の前記したB26の領域に、緊急情報フラグ1が設定されていた場合は、まず該トランスポートストリーム中に含まれているDMSCCセクションと呼ばれるデータを抽出する。次に、トランスポートストリーム処理部202は、該トランスポートストリームから、緊急情報とタグ付けされたデータを抽出する。この場合、DSMCCセクションの中に含まれているprivate_data_byteと呼ばれる領域に、あらかじめ緊急情報の記述と定義された値が記述されているか、あるいはTitle記述子に緊急情報に関する特定のモジュール記述子が記述されているかを判定する。そして、該当する記述があれば、その記述を含むトランスポートストリームから抽出したデータを、緊急情報に関するデータと認識して、該データを、通信線108を介して、ナビ装置102に送信する。
【0021】
次に、切り替え方式で受信している場合について説明する。切り替え方式は、各受信モジュール302中で、前記した指標に基づいた電波品質が最もよいモジュールの電波入力を選択、復調して、トランスポートストリームを出力する方式である。
【0022】
選択ダイバーシチ受信方式のチューナ部201について、図5を用いて説明する。図5は、図3の最大比合成方式のダイバシチチューナと構成はほぼ同じであるものの、復調合成部303の中身の構造が異なっている。選択ダイバーシチ受信方式では、復調器361−a、361−bにて入力された信号を復調し、電波品質の優れているダイバシチモジュールからの信号を選択装置362にて選択し、後段の処理にデータを送信する。
【0023】
この場合、選択されなかったダイバーシチ受信モジュール302が、ある一定の閾値以上の電波品質を維持している場合、チューナ部201は、現在選択しているチャンネル以外のチャンネルを周期的にサーチしているものとする。この自動チャンネルサーチに関する設定は、ユーザからリモコン(図示しない)を介して受け付けることにより行うことができる。例えば、制御部204は、表示部207を介して、モニタ103に、図6に示すような設定画面を表示する。表示画面には、「自動設定」、「手動設定」、「自動チャンネルサーチを行わない」の選択肢が表示される。制御部204は、リモコンを介して選択されたいずれかの選択肢に相当するモードに設定する(図6の例では手動設定を選択した例)。
【0024】
このような選択ダイバーシチ受信方式において、選択しているチャンネルにおいてTMCC信号が入った緊急放送がなされた場合、前述したように、トランスポートストリーム処理部202は、TMCC信号中の前記したB26の領域に緊急情報フラグ1が設定されていることを認識する。その後の処理は最大比合成ダイバーシチ受信方式の場合と同様である。
【0025】
一方、選択していないチャンネルにおいてTMCC信号が入った緊急放送がなされた場合について説明する。なお、かかる場合は、言い換えれば、切り替えダイバーシチ受信方式で、ダイバーシチ受信モジュール中で最も前記した指標に基づいた電波品質がよいモジュールの電波入力を選択、復調してトランスポートストリームを出力する状態であるものの、選択されていないモジュールでは現在、選択されたメインチャンネル以外のチャンネルを周期的にサーチしていて、その受信しているチャンネル以外のチャンネルにて、現在受信しているメインチャンネルよりも先に緊急情報を受信した場合である。
【0026】
ここでは、図5にてメインチャンネルではアンテナ105-a、受信モジュール302-a、復調器361-aと切り替え器362を経由して放送を受信しているものとする。そして、105-b、302-b、361-bを経由して受信しているチャンネルにて、TMCC信号に緊急情報フラグが入っていることを、メインのチャンネルよりも先にチューナ201で検出したとする。切り替え気362は、電波品質がその時点で放送を受信するのに必要な一定量(たとえば電界強度が60dBμV/m)を超えている場合には、メインのチャンネルを強制的に105-b、302-b、361-bを経由して受信しているチャンネルのほうに切り替える。画面表示も同様に切り替えられる。その際、切り替わった先のチャンネルの情報を表示画面に表示する。ここで表示統合部208が表示するチャンネル情報は、105-b、302-b、361-bを経由して受信しているチャンネルの電波から復調されて生成されたトランスポートストリーム中に多重されているNITと呼ばれるシステム情報(ARIB規格にて規定)から抽出され、該当する放送局名、チャンネル番号、の少なくともどちらか一方を含む情報である。この表示処理が終了した後は、105-b、302-b、361-bを経由して受信しているチャンネルをメインチャンネルと設定し、105-a、302-a、361-aを経由して放送を受信しているモジュールのほうで、チャンネルスキャンを周期的に実施する。緊急情報フラグを受信した以後の処理はこれまで述べてきた手順と同様である。
【0027】
図2に戻って説明する。デスクランブル部203は、B−CASと呼ばれるICカード中に設定されているデータに基づいて、取り出したデジタルデータの暗号を解く。
【0028】
制御部204は、ナビ装置102とIRD101間の制御信号を授受し、あるいはIRD101におけるキー入力部210に入力された情報、外部I/F209のデータの送受信をつかさどる装置である。
【0029】
音声・映像デコード部205は、トランスポートストリーム処理部202からのデータから抜き出された、映像、音声に関するデジタルデータを、たとえば映像の場合はMPEG−2と呼ばれる映像フォーマットで、音声の場合はAACと呼ばれる音声フォーマットに基づいて複合化する。
【0030】
ナビデータデコード部206は、同様に、多重化されていたデジタルデータの中からナビゲーションに関するデータを複号化する。
【0031】
表示統合部208は、前記の映像、音声データ、ナビデータ、ならびに必要である場合にはシステム情報を制御部204から入手し、それらのデータをOSD(On Screen Display)上に統合表示するためのデータを生成する。また、表示統合部208は、作成したデータを、通信線109を介して、ナビ装置102に送信する。
【0032】
次に、ナビ装置102について説明する。図7は、ナビ装置102の概略構成図である。
【0033】
ナビ装置102は、外部I/F501と、現在位置検出部502と、制御部503と、地図データ記憶部504と、表示統合部505と、を備えている。
【0034】
外部I/F501は、IRD101から通信線108を介して、緊急警報放送用フラグ、画面表示データ等を受信する。また、外部I/F501は、ナビ装置102のリモコン(図示しない)からの入力情報(リモコン情報)も受信する。ここでの通信線108は、I2C、IEEE1394、USBに代表される一般的に用いられている通信線である。
【0035】
現在位置検出部502は、一般的によく知られている複数のGPS衛星の信号からナビ装置102を搭載している車両の自車位置(緯度経度)を検出する。
【0036】
制御部503は、経路探索・案内部506と、地点算出部506とを備えている。経路探索・案内部506は、現在位置検出部502の情報、ならびに外部I/F501を通じて入力された使用者が希望する目的地設定情報をもとに、経路探索を行い、誘導経路を算出する。地点算出部507は、GPS情報と、経路探索・案内部506にて算出した目的地までの経路、ならびにそれぞれの区分位置、をナビゲーション地図上に表示するための座標を算出する。
【0037】
表示統合部505は、地点算出部507で算出された座標を、ナビゲーションのための地図と重畳することにより、画面上にナビゲーションのための表示を行う。
【0038】
[動作の説明]
次に、ナビ装置102が、IRD101から緊急警報放送用フラグを受信した場合の動作について、モニタ103の表示画面の遷移にしたがって説明する。
【0039】
図6は、モニタ103の通常の表示画面601である。この状態は、IRD101側でデジタル放送を受信しているものの、画面表示の設定がナビゲーション表示モードになっているために、モニタ103に、ナビ装置102からの画面(以下、「ナビ画面」という)が表示されている状態である。この状態において、IRD101は、データ放送、TMCC信号を取得する処理を継続している。矢印603は、GPSにより取得した車両の現在位置を示している。
【0040】
この状態において、IRD101が、緊急警報放送用フラグを検知し、緊急情報に関するデジタルデータ放送を受信したとする。そして、IRD101が、外部I/F108を通じて、ナビ装置102に、緊急警報放送用フラグを出力したとする、
かかる場合、ナビ装置102の表示統合部505は、表示するデータを、IRD101から送られてくるデジタル放送の緊急情報に関する放送データに切り替える。これにより、図8に示すように、モニタ103には、緊急情報画面602が全画面表示される。万一、デジタル放送の緊急情報に関するデータの受信がIRD101にて間に合わなかった場合には、表示統合部505は、画面上に「緊急情報発生」のメッセージを表示する。
【0041】
かかる緊急警報放送用フラグを受信した場合の画面表示方法は、図8に示した全画面表示に限られない。
【0042】
図9に示すように、表示統合部505は、画面を2つに分割して、緊急放送に関するデータ放送画面701−aと、ナビ画面を表示する画面701−nとを同一の画面701に表示してもよい。
【0043】
また、図10に示すように、L字表示と呼ばれている表示方法で表示してもよい(801(a)、801(b)参照)。図10では、ナビ画面801−nが左下(画面801(a))、左上(画面801(b))に表示される例について示しているが、画面の右下、右上にナビ画面を縮小して詰めて表示することも可能である。
【0044】
このように、全画面表示にするか、あるいは2画面表示にするか、あるいはL字型表示にするかどうかは、表示統合部505により、予め設定されている。例えば、あらかじめナビ装置102のリモコンを介してユーザから設定を受け付けておく。または、緊急警報放送フラグをIRD101から受信したときに、表示統合部505が、表示の仕方に関するメニューを画面上に表示して、ユーザに選択させるようにしてもよい。
【0045】
また、ナビ画面を縮尺する割合に関しては、表示すべき緊急情報の文字数、あるいは緊急情報の種類によって決定することも可能である。図11に、緊急情報のフォーマットの一例を示す。緊急情報フォーマットの項目としては、発生時間811、その時刻に発生した災害の内容(地震、大火、洪水、落雷)812、その発生災害の事象の詳細(たとえば地震の場合、震度、震源地、マグニチュード)813、発生位置情報814、広域の災害発生地域(都道府県、支庁、地方レベル)815、詳細の災害発生地域(市町村、区、地区レベル)816、放送エリア内の地域中への情報(たとえば、発令された警報、対処情報、交通情報、予想情報、特記事項)817が任意の組み合わせで含まれている。
【0046】
例えば、図11に示す緊急情報に関するデータフォーマットに示すデータが、IRD101からナビ装置102に送られてきた場合、表示統合部505は、図10に示す上部の横長の領域801−cに発生時間、地震、事象詳細情報を表示し、ナビ画面801−nの横の領域801−dに発令警報、対処、交通情報、予想、特記事項、に代表される詳細情報を表示する。
【0047】
また、例えば、概要情報が1行で収まる場合、表示統合部505は、ナビ画面の表示中に、座標を計算して、領域801−cに1行の文章を表示するためのエリアを確保する。また、概要情報が1行で収まらない情報の場合、表示統合部505は、ナビ画面表示中に、座標を計算し、領域801−cに2行の文章を表示できるエリアを確保する。このときの座標点801−e、801−f、801−gは、表示エリア801−cを計算する際に同時に算出する。これらの座標が計算された後に、表示統合部505は、ナビ画面601を、全画面表示から縮小画面表に切り替えて、801(a)又は801(b)に示したようにナビ画面801−nを縮小する。ナビ画面801−nを縮小して緊急情報を表示する際には、ナビ画面801−nと同一プレーンに緊急情報を同時に表示することも可能であるし、ナビ画面801−nの表示プレーンと、緊急情報の表示プレーンを別プレーンに表示し、それらを重ね合わせた結果を画面上に表示することも可能である。
【0048】
また、ナビ画面(地図など)と緊急情報の両方を表示する際に、緊急情報が領域801−cに収まらない場合、表示統合部505は、表示するフォントを縮小させて表示することも可能である。その際は、まず緊急情報を表示する領域の広さを決定し、801−e、801−f、801−gの座標を決定する。その後、前記した領域に表示することが可能となる文字数に応じたナビ装置102に装備されているサイズのフォントを選択して、そのフォントを用いて緊急情報の概略情報を領域801−cに表示する。ナビ画面801−nの横の領域801−dに表示する緊急情報データについても、表示領域が、デフォルトで設定されているフォントで表示したい情報が表示しきれない場合は、表示統合部505は、前記したのと同様にフォントのサイズを変更して表示することが可能となる。
【0049】
また、例えば、表示すべき緊急情報が、初期の情報であって、概略の情報しか含まれていない場合、表示統合部505は、図12に示すようにナビ画面を上下方向に縮小するのみで、デジタルデータ放送で受信したデータを画面上部、あるいは画面下部に帯状に表示する。また、画面の横幅に収まらない文字数の場合は、左右に動的にスクロールさせる形で表示することも可能である。
【0050】
なお、表示統合部505は、緊急情報が初期の情報で概略の情報しか含まれていないか否かの判定を、図11に示した緊急情報フォーマットの情報中、発生時間811、内容812、事象詳細803の欄に該当するデータが埋め込まれていて、それ以外の欄にはデータが空欄のままである、あるいはデータが入っていないことを示すデータが入っているかどうかで判定する。
【0051】
詳細情報の表示に関しては、図11に示した緊急情報フォーマットの一例にある位置情報814と、地図データの各地域の位置情報と、ナビ装置102に装備されているGPSからの位置データを参照して、それらと自車位置の直線距離を算出し、最も小さい直線距離を持つ地域の詳細情報を、図10の801−dに示す領域に表示する。
【0052】
なお、ナビ画面801−nを左下に表示する態様(801(a))について主に説明したが、左上に表示する態様(801(b))の場合も、同様に表示を行うことできる。
【0053】
さらに、具体的に説明する。図13は、IRD101にて緊急警報フラグを検知し、ナビ装置102側でそのフラグを受信した際の具体的な画面遷移例を示している。この例では海岸線を走行中に、地震が発生した際の画面遷移について示している。
【0054】
緊急警報放送フラグを受信した際、トランスポートストリーム処理部202は、デジタル放送に多重化されている、発生した緊急情報に関するデータを抽出する。データデコード部206は、デコードを行い、そのデコード後のデータを表示統合部208に送る。表示統合部208は、その画面情報を、通信線108を介して、ナビ装置102に送信する。制御部204は、IRD101にて受信した緊急警報放送フラグを通信線108を介してナビ装置102に送信する。
【0055】
IRD101からデータを受信したナビ装置102は、予め設定されている画面表示モードにしたがって、ナビゲーション用の地図(以下、「ナビ地図」という)とデータ放送に関する画面を表示する。
【0056】
図13の例では、画面左側の領域901に、緊急警報放送フラグを受信した際に同時に流れていた緊急情報に関係するデータ放送画面を表示し、画面右側の領域902に、ナビ地図を縮小した形で表示したところを示している。表示統合部505は、画面902のナビ画面に、画面901にて表示していた自車位置を、縮小した画面902に表示する。また、図13の例では、地震発生時に大津波警報が発令された例であり、この場合に、もし、本発明の車載受信装置100を搭載している車両が海岸線を走行している場合、表示統合部505は、ナビ地図上に大津波警報が発令された地域を表示する。この場合、ナビ地図上に表示される大津波警報の情報は、前記したIRD101で受信したデータ放送中にある、大津波警報が発令された位置情報に関するデータであり、通信線108を介してナビ装置102が取得した情報である。その位置フォーマット、ならびにそれをナビ画面上に表示する方法としては、たとえばSVG(Scalable Vector Graphics)と呼ばれている標準的なフォーマットにナビ装置102側で変換して表示する、あるいはIRD101側でナビ装置102に該データを送信する際に変換する、あるいはデータ放送を送出する放送局側であらかじめSVG形式に変換して送出するという方法のいずれかの方法を用いるとよい。
【0057】
画面左側のデータ放送の表示領域901に表示する内容としては、図に示すように、地震発生の際には、地震発生に付随して発生する災害、たとえば津波、余震に関する情報、津波が発生する可能性がある際にはその到着様相時間、ならびに適切な対処のガイダンスなどである。もちろん、地震そのものの震源地、マグニチュード、該当地域の震度を表示することも可能である。災害の内容が気象災害の場合には、表示統合部505は、データ放送の表示領域901に、気象警報、最高気温、最低気温、天候状況、湿度、それに付随して発生する土砂災害、河川決壊の恐れに代表される情報を表示するように設定することも可能である。また、テロ発生情報、戒厳令発令、全土非常事態宣言、夜間外出禁止令等に関する情報も緊急情報として表示することが可能である。
【0058】
図13の例では、画面を左右に分割し、片方に緊急情報に関するテキスト情報を、片方にナビ地図情報を示す形の例について説明した。これに限らず、表示統合部505は、各緊急情報の発生を示す情報(図11に示した情報)がテキスト表示される大きさの領域をテキスト表示エリアとして確保するようにしてもよい。また、テキスト表示しきれない場合は、デフォルトで設定してある表示の際のフォントサイズを変更して、テキスト情報をすべて表示するようにしてもよい。
【0059】
以上の本発明の第1実施形態について説明した。本実施形態によれば、デジタル放送で受信した緊急警報放送受信フラグと、その緊急情報に付随する放送データとがナビ装置に送信される。ナビ装置は、そのデータをあらかじめ設定した表示形式で画面上に表示することが可能となる。したがって、ユーザは、発生した緊急警報の内容を迅速に車両走行中に把握することが可能となる。
【0060】
<第2実施形態> 次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、ナビ装置102の制御部503は、経路探索・案内部506と、地点算出装置507とを備えていた。第2の実施形態では、図14に示すように、ナビ装置102の制御部503は、さらに、経路の旅行時間を算出する旅行時間予測部1001を備えている。
【0061】
本実施形態では、ナビ装置102は、緊急事態が発生した地点と、車両の現在位置との間の距離を算出する。そして、車両が、緊急事態が発生した周辺を通過する予定の場合、緊急事態が発生した地点までの到着予想時間を算出し、その地点周辺を回避してできるだけ安全に目的地に到達するための迂回路を算出し、モニタ103の画面上に表示する。
【0062】
ナビ装置102は、ここでの緊急車両が発生した地点までの到着予想時間の算出に関し、たとえば、ナビ装置102にて搭載されているルートガイダンス機能に用いる現在位置から目的地への所要時間概算機能に加え、災害発生時には発生箇所の周辺にて多くの場合渋滞が発生する可能性が高いので、前記の所要時間概算により算出された時間に、渋滞予測係数を乗ずることにより算出する。
【0063】
ここでの渋滞係数とは、現在位置と目的地間の移動時間を計算するときに使われる係数である。移動時間は、道路を制限速度で走行しようと仮定したときの移動時間に、渋滞係数を乗じることによって計算する。渋滞係数は、道路混雑などにより制限速度で走行できないことを表現し、0から1の範囲で車両が移動できない状態から渋滞なく走行できる状態までを表現する。この渋滞係数は、現在位置から目的地まで簡易的に一律の値としてもよい。また、ナビ装置102で算出した迂回路の交差点ごとの区間ごとに、予めナビ装置102に装備してある記憶装置に蓄積してある渋滞履歴データを基に、渋滞係数を算出してもよい。また、あらかじめ解析してある災害発生時の道路交通の詳細渋滞発生モデルをもとに、前記したナビ装置中に蓄積してある渋滞履歴データをもとに旅行時間予測部1001にて詳細な予測時間を算出する方法も可能である。ここでの詳細渋滞発生モデルは、主要渋滞ポイントの抽出に用いる情報に、カーナビなどで利用されているVICSデータを拡充して、より統計的・客観的に特徴を抽出する方法で渋滞頻発の様子を簡易に再現するモデルのことをさす。なお、前記した渋滞履歴データは、道路交通情報センターが一般的なナビゲーション端末に対して配信を行っている渋滞情報、あるいは民間でインターネットを利用して配信している渋滞情報データ、その他のメディアから取得することが可能となる渋滞情報データを用いることが可能である。渋滞情報は、渋滞が発生した道路の区間、その区間内でどこから渋滞が始まって、長さがどれくらいかの情報、そのときの渋滞の情報(自然渋滞、事故渋滞、その他)、予想される旅行時間、渋滞発生時刻、のいずれかの組み合わせを少なくとも含むデータから構成される。
【0064】
表示統合部505は、この旅行時間予測部1001にて算出した予測旅行時間、ならびに迂回ルートを、前述したようにあらかじめ設定された表示方法により、ナビ画面に表示する。その表示例を図15に示す。
【0065】
図15は、目的地までのルートを表示中に、ナビ装置102が、緊急警報放送フラグとそれに付随する放送データを、IRD101から受信した場合の画面の遷移例である。なお、目的地への走行予定ルート上に、災害発生地点があるとする。
【0066】
緊急警報放送フラグに付随してナビ装置102に送信されてきた放送データ中に、災害発生地点の位置情報が記述されている場合には、表示統合部505は、ナビ画面1103上に災害発生地点1104を表示する。また、表示統合部505は、緊急情報の表示領域1102を設け、緊急事態が発生した種別、現状、今後予想される事態、今後の対処方法、旅行時間予測部1001で算出した到着予定時間と、当初の予定からの遅れ時間(当初の予定到着時間との差分)を表示する。また、表示統合部505は、ナビ画面1103に、自車位置1106と、目的地1107と、迂回ルート1105とを表示する。
【0067】
以上、第2実施形態について説明した。本実施形態によれば、デジタル放送で受信した緊急警報放送受信フラグと、その緊急情報に付随する放送データがナビ装置に送信される。そして、ナビ装置は、現在位置と災害発生地点、目的地までの到着遅延時間情報、迂回ルートをナビ画面上に表示することが可能となる。したがって、ユーザは、災害発生地点を回避して、最短に目的地に到達することができる。
【0068】
<第3実施形態> 次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、図16に示すように、ナビ装置102の制御部503は、さらに、IRD101から取得した放送データの表示の優先度を決定する優先度設定部1201を備えている。そして、表示統合部505は、緊急情報を表示する際、優先度設定部1201により設定された優先度の大きい緊急情報から優先的に表示する。
【0069】
自家用車に代表される車両でデジタル放送を受信する場合、その受信内容は日本国内の場合、県単位、支庁単位、あるいは地域単位で同一となる。例えば、図17の1302,1304に示すように、海に面して南北方向に長く、東西方向にも長い地域の場合で、その地域の海側で大きな地震が発生したとする。この場合、海岸付近では地震と同様に津波の情報が必要であるものの、内陸地の場合は地震そのものの情報と余震に関する情報の必要性が高い状況が発生する。すなわち、海岸線を走行している車両と内陸を走行している車両とでは、異なる種類の災害情報を表示する必要がある。
【0070】
優先度設定部1201は、IRD101から受信した、緊急警報放送フラグと付随して放送データ中に存在する緊急情報に、複数地域に関する緊急情報が入っている場合、車両の位置情報と災害発生地点の位置情報を用いて、取得した複数の緊急情報に対して、表示の際の優先度を設定する。
【0071】
例えば、図17の地域1302、1304に示してある地域にて、地域放送局がその県庁所在地であるほぼ中央に存在していた場合、この放送局は、緊急情報として、たとえば海側の地域、内陸の地域、北部の地域、南部の地域に関する緊急情報を放送する必要がある。しかし、海岸の地域を走行している車両には内陸の緊急情報の優先度は低く、海岸の地域の緊急情報の優先度が高いので、この優先順位に従って緊急情報を表示することが必要である。
【0072】
優先度設定部1201は、図11に示した緊急情報データのフォーマットにある地域Aの現状情報、地域Bの現状情報、地域Cの現状情報、地域Dの現在情報の中から、それらのデータ中にある位置情報を用いて、上記A〜Dの中から最適な情報を優先して表示されるように優先度を設定する。具体的には、自車の現在位置と各地域の位置情報から算出した直線距離の小さい順番に、優先度を高めるスコアをそれぞれのデータにひも付けしておく。表示統合部505は、ナビ画面に最もそのスコアの値が高い(優先度が高い)緊急情報データを画面上に表示する。それ以外の地域に関する緊急情報に関しては、表示統合部505は、ユーザからナビ装置102のリモコンを介して、優先度が2番目以後の情報の閲覧を要求された場合に、順番にそれらの緊急情報に関するデータを表示する。ナビ装置102にてGPSを介して取得した自車位置と、IRD101から得た災害発生地域の位置を比較し、例えば自車位置から予め設定した半径内の地域内にある災害情報を優先して表示するようにする。具体的には、この半径が20kmに設定されれば、海岸の地域を走行している車両にて、1303に示すように、海岸の地域における災害情報と、ナビ画面上に表示された災害地域を表示するようになり、内陸の地域の災害情報が優先的に表示されるという可能性が少なくなる。また、その逆の場合である内陸の地域を走行している車両においては、1303のように同じく地震が発生した場合でも、1305に示すように走行中の道路陥没に代表される情報に関して、ナビ画面上に表示されるようになる。また、表示する際には、優先度の高い災害情報に関する画面を自動的に表示するものの、そのほかの優先順位が高くない災害情報に関しては、図面中では省略したもののナビ画面中に表示するためのボタンを設け、災害発生時の遠隔地域に関する情報も手動で表示することが可能となる。
【0073】
なお、上記では、優先度設定部1201で自車位置と緊急情報データに含まれる位置情報からナビ装置102側で、送られてきた複数の緊急情報の優先度を決めて表示の優先度を決定した。これに対し、緊急情報に関するデータを放送局から放送する際に、放送局側で表示する優先度をあらかじめ決定しておいてもよい。例えば、テロ等の人為的な災害が発生した際に、放送局側で強制的に複数の詳細緊急情報に対し、表示の優先順位をつけていてもよい。この場合は、放送局から送信される緊急情報データの中に定義されているprivate_data_byteと呼ばれる領域にあらかじめ設定した優先度に関するフラグ(たとえば最優先の場合は0xAAAA、その次の優先度を持たせたい場合は0xBBBBというように)が設定されることになる。優先度設定部1201は、このフラグを表示統合部505が認識しやすい優先度のデータに変換する。表示統合部505は、この優先度にしたがって緊急情報を表示する。
【0074】
以上、第3実施形態について説明した。本実施形態によれば、デジタル放送で受信した緊急警報放送受信フラグと、その緊急情報に付随する放送データが通信線を介してナビ装置に送信される。ナビ装置は、放送データ中に含まれる複数地域に関する災害情報の中から優先度の高い緊急情報を表示する。また、優先度の低いその他の情報に関してはユーザの指示に従って表示する。したがって、ユーザは、災害発生時により最適な災害情報を把握することができる。
【0075】
<第4実施形態> 次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、図18に示すように、ナビ装置102は、さらに、通信部1401を備えている。
【0076】
通信部1401は、災害発生時に、現在位置検出部502で取得した車両の現在位置を、災害情報を管理する事業者が運営している災害情報サーバに送信する。
【0077】
IRD101は、緊急警報放送フラグを受信し、それを通信線108を介してナビ装置102に送信する。ナビ装置102の制御部503は、その信号を認識し、その後、現在位置検出部502を介して取得した現在位置、GPSから得ることが出来る時刻、ならびに記憶装置に予め記憶してある車両識別番号、あるいはナンバーに関する情報を少なくとも含み、そのほかにも搭乗者の氏名に代表される個人情報を、通信部1401を介して災害情報サーバに送信する。災害情報サーバは、その情報(個人災害情報)を自身の記憶装置に蓄積する。
【0078】
災害情報サーバに蓄積される個人災害情報のデータフォーマットの一例を図22に示す。図示するように、個人災害情報は、車両を識別する情報(登録番号)、車検証記載利用者、車載受信装置100から災害情報サーバにデータが発信された時刻、その発信の際の車両の位置、発信回数、車体識別番号。車検証記載の住所、利用者識別番号などを含んでいる。
【0079】
この災害情報サーバに蓄積された情報を基に、車両が走行しているか否かが判断でき、当該車両の関係者の安否を確認することが可能となる。また、災害情報サーバに安否情報が登録された時点で、関係者にメール配信を行うサービスを災害情報サーバを運営する業者で実施してもよい。
【0080】
図19を用いて、より具体的に説明する。図1に示した車載受信装置100を搭載した車両2100には、通信機器2101が搭載されている。地上デジタル放送局2102から緊急情報フラグが入ったデータ放送が送出される。IRD101は、その放送波を受信し、その中の緊急情報フラグを検出したとする。IRD101は、検出した緊急情報フラグをナビ装置102に送信する。ナビ装置102は、その緊急情報フラグを検出する。ナビ装置102の制御部503は、現在位置検出部502から取得した、現在のクルマの位置、GPSから取得する時刻と、あらかじめナビ装置102の記憶装置に記録されている車検証記載の車両識別番号、使用者、使用者の住所に代表される個人情報を、たとえば図20に示すデータフォーマットに整形し、必要があれば本データをバイナリ化、暗号化して、通信部1401(通信機器2101)を通じて災害情報サーバ2103に送信する。
【0081】
通信部1401は、車載受信装置100が緊急情報フラグを受信している間、災害情報サーバ2103にデータ送信を継続する。
【0082】
データ送信の周期は、例えば、はじめて緊急情報フラグを受信した直後は30秒から60秒という比較的短周期で送信し、緊急情報が継続して放送局から送信され、時間があらかじめ決められた時間(たとえば3分)以後は、3分周期でデータを前記サーバーに対して送出する。このように、送信周期を時間の経過と共に変化させて送信する。最も、一定周期で緊急情報フラグの送信がなくなるまでデータを送出することも可能である。
【0083】
災害情報サーバ2103は、ユーザごとに登録されている利用者識別番号ごとに、受信したデータを整理し記憶する。記憶された情報は、緊急情報が発せられた後の車両の動き、すなわち安否の確認に利用される。例えば、次のように利用される。
【0084】
車両2100に乗車している人の関係者(例えば、親族など)は、災害情報サーバ2103にて蓄積されたデータを、外部から通信機器を介して参照することが可能である。この場合、サービスを受けようとする関係者(例えば、親族など)は、対象となる車両2100を識別する情報(図20の識別番号)を少なくとも携帯端末2104に入力し、安否の検索要求を行う。携帯端末2104は、携帯電話などのモバイル端末機である。
【0085】
図21は、安否検索の際の画面の遷移例である。携帯端末2104は、入力画面2301を表示する。携帯端末2104は、入力画面2301にて、あらかじめ登録されている検索対象のユーザに関する識別番号の入力を受け付ける。また、個人情報保護、プライバシーの観点から、災害情報サーバ2103にアクセスするための暗証番号の入力を受け付けるようにしてもよい。携帯端末2104は、以上の情報の入力を受け付けた後に、画面2301中の送信ボタンが押されると、災害情報サーバ2103に安否の検索要求を送信する。
【0086】
災害情報サーバ2103は、受信した情報、検索要求に基づいて、検索対象の車両に関する個人災害情報を検索する。そして、検索した個人災害情報を、携帯端末2104に送信する。携帯端末2104は、受信した結果を表示する。携帯端末2104は、図21の画面2302に示すように、車載受信装置100から安否に関するデータが発信された時刻、データが発信された場所、データが発信された期間などの情報を表示する。
【0087】
なお、携帯端末2104は、自身の記憶装置に、緯度経度と住所とを対応つけた情報を記憶している。そして、車載受信装置100から災害情報サーバ2103にデータが発信された場所として、GPSが出力した緯度経度を取得した場合、対応する住所を検索し、検索した住所を表示する。ただし、これに限らず、住所データベースの代わりに地図データを有する携帯端末であれば、地図上に災害情報サーバ2103からのGPSデータをマッピングし、地図上に、車両2100の現在位置を表示することも可能である。地図上に災害情報サーバ2103からのGPSデータをマッピングするようにすれば、ユーザは、検索対象者の移動軌跡も確認することができる。そして、検索対象者がどちらの方向に向かっているかを判断でき、仮に道路が寸断されている方向に車両2100が向かっていることが認識されれば、その情報を携帯電話に代表される通信機器を別途用いることにより、遠隔にて移動方向を指示することが可能となる。
【0088】
以上、第4実施形態について説明した。本実施形態によれば、デジタル放送で受信した緊急警報放送受信フラグが通信線を介してナビ装置に送信される。ナビ装置は、車両位置、車両の識別情報をはじめとした車両に関する情報を通信装置を介して車両外部に送信することが可能になる。したがって、災害発生時における車両の安否状態を自動的に外部に伝えることが可能となる。
【0089】
<第5実施形態> 次に、第5実施形態について説明する。本実施形態は、図22に示すように、ナビ装置102は、車両の異常を検出する車両異常検出部1501を備えている。
【0090】
車両異常検出部1501は、車両内に設置されているさまざまなセンサから蓄積した車両の稼動情報を検出し稼動状態の履歴を蓄積する。また、複数の時系列状態の履歴データから、車両の状態を細かく分類し、収集したセンサの履歴データから車両の現在の状態を推定する診断処理を行う。
【0091】
IRD101から緊急警報放送フラグを検出した場合、異常検出部1501は、災害発生時の車両の周囲環境の変化に合わせた適切な診断を行う。通信部1401は、その診断結果を災害情報の管理を行っている業者が運用しているサーバ装置に送信する。
【0092】
車両異常検出部1501の詳細を図23を用いて説明する。車両異常検出部1501は、診断部2402とCAN I/F 2403から構成される。CAN I/F2403は、車両中に張り巡らされているネットワークで、そのネットワーク中にはElectric Control Unitと呼ばれる車両の制御ユニット2404が接続されている。このユニットはさまざまなセンサ、たとえば車速、エンジン回転数、燃費に代表される車両の物理量をもとに、車両の制御を行っているコントロールユニットである。
【0093】
診断部2402は、CAN I/F2403からの情報をもとに、取得した車両の物理量、ならびにコントロールユニット2404の異常を検知して、異常が見られる物理量のみをフィルタリング、あるいは、異常が見られる物理量に関係する、あらかじめ登録されている要因と異常が見られる物理量のみをフィルタリングする。フィルタリングの手順を図24に示す。図示するように、診断部2402は、車両異常検知部1501に蓄積されている履歴データ2602と、前記の車両からのフィルタリングされたデータ2601をもとに、その異常発生原因を分析エンジン2603により分析する。分析エンジン2603は、履歴データから各要因と発生する事象の関数関係を2605に示すような形で関数関係として求め、入力された車両からのデータ2601をもとに、発生する事象2606を求める。なお、各要因に関する変数をあらかじめ正規化して関数関係を求めやすくしておくことも可能である。この後に、算出した結果を一時的に記録し、その結果を表示統合部505に送信する。表示統合部505は、たとえば地震の急激な揺れ、あるいは凹凸の大きな路面を高速で通過したときに発生する車両の異常、たとえばタイヤの破損、ブレーキの破損に代表される障害が発生した可能性があることを運転中のドライバーに表示により通知する。なお、前記した車両の異常を検知するための要因の例としては、車速、走行距離、エンジンの回転数、燃費、アクセル踏量、エンジンルームの温度、NOxセンサ信号、O2センサ信号、エアコン作動状況、排ガス計測値がその代表例である。
【0094】
なお、本実施形態では、車載受信装置100内に設けた車両異常検出部1501にて診断まで行った例を説明したが、状況に応じては車両異常検出部1501からの診断結果よりもより高度な診断サービス、たとえば発生した障害を修理するためのサービスステーションまでの誘導、あるいはサービスステーションでの修理の予約をはじめとしたサービスを支援するために、外部のサービスセンタにて診断、あるいは行動支援を行わせることも可能である。
【0095】
その際には、ナビ装置102の通信部1401は、通信網2406を介してサービスセンタサーバ装置2407にアクセスする。サービスセンタサーバ装置2407は、診断、支援結果を通信網2406を介して車載受信装置100に送信する。ナビ装置102の表示統合部505は受信した情報を表示する。
【0096】
この処理の大まかな流れを図25を用いて説明する。まず、放送局2102から緊急情報フラグを含んだ放送波が送出された場合、IRD101は、その緊急情報を検知し、I/F209を介してナビ装置102に送信する。ナビ装置102の異常検出部1501は、CAN I/F2403を介してさまざまな車両情報を収集する(S10)。診断部2402は、診断を実行する(S12)。通信部1401は、診断の結果、異常があると判定された場合は(S14でYes)、そのデータを通信網2406を介してサービスセンタサーバ装置2407に送信する(S16)。該データを受信したサービスセンタサーバ装置2407は、その結果を元に行動支援システムを起動させる(S18〜S19)。
【0097】
この行動支援システムは、履歴データから生成される図24に示した方法と同様に要因間の関数関係と送られてきたデータを元に支援結果を算出する。この要因間の関数関係を求める方法としては、その関係が多次元にわたり、物理的にその要因を表現できない場合はニューラルネットワークを用いる方法に代表されるヒューリスティクな手法により求めることが可能であるし、要因間の物理関係が数式で表現できる場合は最小二乗法を用いる方法、あるいは回帰分析、線形計画法に代表される方法を用いることが可能である。
【0098】
サービスセンタサーバ装置2407は、その結果をもとに、最寄のサービスステーションに誘導する場合は、車両のGPSデータから検出する位置情報をもとに、もよりのサービスステーションに誘導するための誘導情報を送信する(S20)。ナビ装置102は、誘導情報を受信し、誘導情報をモニタ103に表示する(S22)。また、モニタ103に表示するのみならず、サービスセンタサーバ装置2407は、車両に搭乗している運転者に向けて、携帯電話、あるいはインターネットのメールを用いて必要なガイダンスを行うことが可能となる。
【0099】
以上の第5実施形態について説明した。本実施形態によれば、デジタル放送で受信した緊急警報放送受信フラグが通信線を介してナビ装置に送信される。ナビ装置は、災害発生時に生じた車両の故障状態をもとに、遠隔地からその状況に応じたガイダンスを受けることが可能になる。したがって、災害発生時における車両の安全な運転を支援できる。
【0100】
<第6実施形態> 次に、第6実施形態について、図26を用いて説明する。本実施形態では、ナビ装置102は、図22に示した第5実施形態の構成に、さらに、撮影装置1601を備えている。
【0101】
ナビ装置102の制御部503は、IRD101から緊急警報放送フラグを受信すると、災害発生時の車両周辺の映像や画像のデータを、通信部1401を介して、サービスセンタサーバ装置2407に送信する。制御部503は、ユーザからリモコンを介して撮像要求を受けつけた後に、撮像装置1601に撮像指示を出力し、撮像して得た画像データを取得するようにしてもよい。
【0102】
また、制御部503は、走行していた車両が大きなダメージを部分的に被った場合に、その部分をユーザからのリモコンによる指示に従って、あるいは自動で撮影し、そのデータを前記したセンタサーバ装置2407に送信する。ここでの車両にダメージを被った場合に車両周辺を撮影する場合は、あらかじめ車両の撮影位置を登録しておき、その撮影位置ごとに映像を撮影する。そして、通信部1401は、撮影位置と撮像画像をセットにして、センタサーバ装置2407に送信する。
【0103】
以上、第6実施形態について説明した。本実施形態によれば、デジタル放送で受信した緊急警報放送受信フラグが通信線を介してナビ装置に送信される。ナビ装置は、撮影装置にて撮像した車両の画像をサービスセンタのサーバ装置に送信する。サービスセンタでは、車両の損傷などが容易に把握できるので、災害発生時に生じた車両の故障状態をもとに、遠隔地からその状況に応じたガイダンスを車載受信装置のユーザに与えることができる。したがって、ユーザは、災害発生時における車両のより安全な運転をすることができる。また、災害発生時の車両周辺の被害状況も同時に遠隔地にて把握可能となるため、災害発生後の復旧作業の迅速化に貢献することが可能となる。
【0104】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではない。上記実施形態は、本発明の要旨の範囲内で様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1実施形態の車載受信装置の概略構成図である。
【図2】IRDの概略構成図である。
【図3】チューナ部の概略構成図である。
【図4】TMCC信号の構成を示す図である。
【図5】チューナ部の概略構成図である。
【図6】画面表示例である。
【図7】ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図8】画面表示例である。
【図9】画面表示例である。
【図10】画面表示例である。
【図11】緊急情報の構成を示す図である。
【図12】画面表示例である。
【図13】画面表示例である。
【図14】第2実施形態のナビゲーション装置の概略構成図である。
【図15】画面表示例である。
【図16】第3実施形態のナビゲーション装置の概略構成図である。
【図17】画面表示例である。
【図18】第4実施形態のナビゲーション装置の概略構成図である。
【図19】システム全体の構成図である。
【図20】個人災害情報の構成を示す図である。
【図21】画面表示例である。
【図22】第5実施形態のナビゲーション装置の概略構成図である。
【図23】診断処理を説明する図である。
【図24】診断処理を説明する図である。
【図25】行動支援システムの処理の流れを示す図である。
【図26】第6実施形態のナビゲーション装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0106】
100:車載受信装置、101:IRD、102:ナビ装置、103:モニタ:105:アンテナ、106:アンテナ、201:チューナ、202:トランスポートストリーム処理部、203:デスクランブル部、204:制御部、205:音声、映像デコード部、206:ナビデータデコード部、207:表示部、208:表示統合部、209:外部I/F、210:キー入力部、501:外部I/F、502:現在位置検出部、503:制御部、504:地図データ記憶部、505:表示統合部、506:経路探索、案内部、507:地点算出部、1001:旅行時間予測部、1201:優先度設定部、1401:通信部、1501:車両異常検出部、1601:撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送電波を受信してその受信した信号をそれぞれ復調、TS処理し、その結果作成されるデジタルデータをデコードするデジタル放送受信装置と、地図データとGPS衛星からの位置情報をもとに自車両の位置を算出し出力装置に表示するナビゲーション装置とを備える車載受信装置であって、
前記デジタル放送受信装置は、
受信したデータ中に重畳されている緊急警報放送用フラグデータを検出し、該緊急警報放送用フラグデータの設定値を前記ナビゲーション装置に送信する手段を備える
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項2】
放送電波を受信してその受信した信号をそれぞれ復調、TS処理し、その結果作成されるデジタルデータをデコードするデジタル放送受信装置と、地図データとGPS衛星からの位置情報をもとに自車両の位置を算出し出力装置に表示するナビゲーション装置とを備える車載受信装置であって、
前記デジタル放送受信装置は、
受信したデータ中に重畳されている緊急警報放送用フラグデータを検出し、放送されている緊急情報に関するデータ放送画面を前記ナビゲーション装置に送信する手段を備え、
前記ナビゲーション装置は、
前記出力装置の出力画面を前記デジタル放送受信装置から受信したデータ放送画面に切り替える手段を備える
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項3】
放送電波を受信してその受信した信号をそれぞれ復調、TS処理し、その結果作成されるデジタルデータをデコードするデジタル放送受信装置と、地図データとGPS衛星からの位置情報をもとに自車両の位置を算出し出力装置にナビゲーション画面として表示するナビゲーション装置とを備える車載受信装置であって、
前記デジタル放送受信装置は、
受信したデータ中に重畳されている緊急警報放送用フラグデータを検出し、
放送されている緊急情報に関するデータ放送画面を前記ナビゲーション装置に送信する手段とを備え、
前記ナビゲーション装置は、
前記出力装置に前記データ放送画面とナビゲーション画面の2種類の画面を同時に表示する手段を備える
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車載受信装置であって、
前記ナビゲーション画面上に、緊急事態が発生した場所を表示し、
前記データ放送画面上に、該緊急事態に関する種別、現状、今後の推移予想、適切な対処方法、及び目的地への到着予想時間の少なくとも1つを表示する
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の車載受信装置であって、
緊急事態が発生した地点を回避する目的地への経路を探索し、
前記ナビゲーション画面上に、探索した経路を表示する
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の車載受信装置であって、
前記ナビゲーション装置は、
緊急情報に関する、位置情報と関連付けられた複数種類の画面情報を、自車両位置に応じて表示するための優先順位を設定する手段を備える
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車載受信装置であって、
前記ナビゲーション装置は、
最も高い優先順位の緊急情報を表示する
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項8】
放送電波を受信してその受信した信号をそれぞれ復調、TS処理し、その結果作成されるデジタルデータをデコードするデジタル放送受信装置と、地図データとGPS衛星からの位置情報をもとに自車両の位置を算出し出力装置に表示するナビゲーション装置とを備える車載受信装置であって、
前記ナビゲーション装置は、
前記デジタル放送受信装置にて受信したデータ中に緊急警報放送用フラグデータが重畳されている場合、自車両の位置と、位置を算出したときの時刻、ならびに該車両を識別するための情報とを少なくとも含む情報を、災害情報を管理するサーバ装置に送信する送信手段と備える
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車載受信装置であって、
前記ナビゲーション装置は、
自車両に設置されているセンサの情報を元に、車両の異常を検出する車両異常検出手段を備え、
前記送信手段は、
前記デジタル放送受信装置にて受信したデータ中に緊急警報放送用フラグデータが重畳されている場合、自車両の位置と、位置を算出したときの時刻、ならびに該車両を識別するための情報と、前記車両異常検出手段にて検出された車両の異常に関する情報とを少なくとも含む情報を、災害情報を管理するサーバ装置に送信する
ことを特徴とする車載受信装置。
【請求項10】
請求項8に記載の車載受信装置であって、
前記ナビゲーション装置は、
自車両に設置されているセンサの情報を元に、車両の異常を検出する車両異常検出手段と、該車両の周辺の状況を撮像する撮像手段とを備え、
前記送信手段は、
前記デジタル放送受信装置にて受信したデータ中に緊急警報放送用フラグデータが重畳されている場合、自車両の位置と、位置を算出したときの時刻、ならびに該車両を識別するための情報と、前記車両異常検出手段にて検出された車両の異常に関する情報と、該車両周辺の状況を撮像したデータとを少なくとも含む情報を、災害情報を管理するサーバ装置に送信する
ことを特徴とする車載受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−60489(P2007−60489A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245744(P2005−245744)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】