説明

車載通信システム,車載通信器及び車両用ナビゲーション装置

【課題】ユーザが、提供を受けられるサービスに対応する適切なICカードを、事前に余裕を以って接続することができる車載通信システムを提供する。
【解決手段】ETC車載器4の全体制御部19は、ナビゲーション装置1において案内経路が検索されると、その案内経路上でDSRC通信により提供されるサービスの種類を車両の乗員に対して報知し、それらの内、乗員によって指定されたサービスの内容とその時点でETC車載器4に接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する車載通信器と、車両用ナビゲーション装置とを備えた車載通信システム,及びそのシステムに使用される車載通信器及び車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばETC(Electronic Toll Collection system)は、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)のような近距離無線通信を利用して車載器と通信を行い、高速道路を通行した車両に対して通行料金を自動的に徴収するシステムであるが、近年、上記の車載器を利用して、その他の各種サービスを車両側に提供することが考案されている。例えば、車載器に、ETC用のICカードに替えてクレジットカードを挿入してクレジット決済を行ったり、電子マネー機能用のカード等を挿入して支払いを行なうことなどが考えられる。
【0003】
以上のように車載器を利用して運転者が多様なサービスの提供を受けることを想定すると、運転者は、夫々のサービスの提供が受けられる地点に接近する際に、各サービスに対応したカードを選択して適切なタイミングで挿入する必要が生じる。しかしながら、運転者は、運転経路上のどの地点においてどのようなサービスが受けられるのかが判らないことから、混乱を生じるおそれがある。
例えば、ETCでは、ETC用ゲート手前の路側にゲート予告アンテナが設置されておおり、車両が間もなくETC用ゲートを通過することが車載器によって報知されるが、その時点で車載器に異なる種類のカードが挿入されていると、ETC用のカードに差し替えを行うための時間的な余裕は無い。
【0004】
上記のような問題に対処する技術として、特許文献1には、車載器に予め複数異種類のカードを挿入可能な構成としておき、提供されるサービスに応じたカードを車載器側で自動的に選択するものが開示されている。また、特許文献2には、ETC用ゲートにある程度近付いた時点で、車載器にETC用カードが差し込まれていなければ報知を行うようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3630059号公報
【特許文献2】特許第3214238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、車載器に複数のカードを挿入する時点で、以降に提供を受けられるサービスに対応しないカードを挿入してしまうおそれがある。また、特許文献2に開示されている技術では、カードが挿入されていないことを前提として報知を行うので、提供を受けられるサービスに対応しないカードを挿入していた場合は何の報知も行われないことになり、問題の解決にはならない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが、提供を受けられるサービスに対応する適切なICカードを、事前に余裕を以って接続することができる車載通信システム,車載通信器及び車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の車載通信システムによれば、制御手段は、車両用ナビゲーション装置において設定された目的地に応じて案内経路が検索されると、その案内経路上で近距離無線通信により提供されるサービスの種類を車両の乗員に対して報知する。そして、それらの内、乗員によって指定されたサービスの内容と、その時点で車載通信器に接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知する。従って、乗員は、これから受ける予定のサービスに対応したICカードが車載通信器に接続されているかどうかを事前に確認することができ、接続するICカードの種類をサービス提供地点に接近した時点で変更するような事態の発生を回避ができる。
【0008】
請求項2記載の車載通信システムによれば、制御手段は、乗員によって指定されたサービスが提供される地点が複数ある場合は、各地点を通過する毎に、その次の地点で提供されるサービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断するので、乗員は、複数のサービスを連続して受ける予定の場合も、各サービスに対応したICカードが車載通信器に接続されているかどうかを事前に確認することができる。
【0009】
請求項3記載の車載通信システムによれば、制御手段は、車両用ナビゲーション装置において設定された目的地に応じて案内経路が検索されると、その案内経路上において、近距離無線通信により最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知する。従って、乗員は、案内経路上で最初に提供を受けるサービスに対応したICカードが車載通信器に接続されているかどうかを事前に確認することができ、接続するICカードの種類をサービス提供地点に接近した時点で変更するような事態の発生を回避ができる。
【0010】
請求項4記載の車載通信システムによれば、制御手段は、車両用ナビゲーション装置側で案内経路が変更されると、その変更された案内経路上において、近距離無線通信により最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断するので、運転の途中で案内経路が変更された場合でも、請求項3と同様の効果が得られる。
【0011】
請求項5記載の車載通信システムによれば、制御手段は、案内経路上に、近距離無線通信によるサービスの提供地点が複数存在している場合は、各地点を通過する毎に、その次の地点で提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断するので、請求項3又は4の構成について、請求項2と同様の効果が得られる。
【0012】
請求項6記載の車載通信システムによれば、制御手段は、提供されるサービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応していない場合は、前記サービスの内容に対応したICカードの接続を促す旨を報知するので、乗員は、何れのICカードを接続すれば良いのかを認識することができる。
【0013】
請求項7記載の車載通信システムによれば、制御手段は、提供されるサービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応していない場合に行う報知のタイミングを、車両の走行状態に応じて決定する。即ち、上記の報知が行われると、乗員は、直ちに適切なICカードを接続する必要があると思い込むおそれがあり、車両の走行状態によっては、上記の操作を行うのが不適切な場合もある。そこで、車両の走行状態が上記操作を行うのに十分な余裕があるタイミングで、適切に報知を行うようにする。
【0014】
請求項8記載の車載通信システムによれば、制御手段は、上記の報知を、具体的には車両の走行速度が設定した閾値以下に低下した場合に行うので、車両が低速で走行しており、安全性が高いと推定される場合に報知を行うことができる。
【0015】
請求項9記載の車載通信システムによれば、制御手段は、上記の報知を、車両が停車状態となって一定時間が経過した場合に行うので、車両が停車している状態が継続している場合に報知を行うことができる。尚、ここでの「停車」には、車両のエンジンが停止した状態も含むものとする。
【0016】
請求項10記載の車載通信システムによれば、制御手段は、上記の報知を、具体的には車両のイグニッションスイッチがオンされた場合に行うので、車両が停車している状態からエンジンが始動された場合に報知を行うことができる。
【0017】
請求項11記載の車載通信システムによれば、制御手段は、上記の報知を、車両のパーキングブレーキが作動した場合に行うので、車両が確実に停車した場合に報知を行うことができる。
【0018】
請求項12記載の車載通信システムによれば、制御手段は、上記の報知を、ICカードが接続された時点で行うので、乗員は、ICカードの適否を直ちに確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図2は、車両用ナビゲーション装置を中心として、車載通信システムの構成を示す機能ブロック図である。ナビゲーション装置1は、車両I/F回路部2を介して車内LAN(Local Area Network)3に接続されている。この車内LAN3にはETC車載器(車載通信器)4の他、図示しない車載機器が接続されている。
ナビゲーション装置1は、経路案内や位置情報などの演算処理を行う制御回路5を主体として構成されている。位置検出器6は、車速センサ7、ジャイロスコープ8、距離センサ9、GPS(Global Positioning System)受信装置10などから構成され、自車両の位置を認識する。地図データ入力器11は、CD−ROMやDVD、或いはハードディスクなどの地図データを記録した媒体から情報を読み込み制御回路5に出力する。
【0020】
また、本実施例では、上記の記録媒体には、DSRC通信(近距離無線通信)を用いて各種のサービスを提供する地点の情報も記録されている。そのサービスとは、ETCのみならず、例えば特定の店舗等におけるクレジットカードによるクレジット決済や、電子マネー用或いはプリペイドカードによる決済などのサービスであり、乗員は、それらのサービスを乗車した状態のまま享受できるようになっている。
【0021】
操作スイッチ群12は、経路案内のための入力や各種設定を行うために使用者が操作するためのものである。送受信機13は、VICS(登録商標)情報や種々の情報を無線通信により授受するためのものである。外部メモリ14は、各種設定情報や必要な情報を記憶するためのものであり、不揮発性メモリあるいはハードディスクなどがある。
表示器(報知手段)15は、経路を表示したり、各種の情報を表示したりするためのもので、例えば液晶パネルを用いている。前述した操作スイッチ群12は、この表示器15の前面に設けるタッチパネルにより構成することもできる。音声案内/音声認識装置16は、経路案内や各種情報を音声合成により図示しないスピーカから出力したり、使用者が口頭で指示する内容を音声認識により入力したりするためのものである。
【0022】
図1は、ETC車載器4の構成を中心とする図2相当図である。ETC車載器4は、アンテナ(近距離無線通信手段)17、無線部(近距離無線通信手段)18、全体制御部(制御手段,通信制御部)19、ICカード制御部(カードインターフェイス)20、ICカードコネクタ(カードインターフェイス)21、外部機器接続部22、記憶部23、表示部(報知手段)24、スピーカ(報知手段)25、入力操作部26、電源部27から構成される。アンテナ17は、ETCゲートに設置された路上機28との間で例えばDSRCにより無線通信を行うためのものである。無線部18は、アンテナ17の受信信号を信号処理して全体制御部19に出力したり、全体制御部19からの送信データを信号処理して送信信号に変換し、路上機28へアンテナ17を介して送信したりするためのものである。
【0023】
全体制御部19は、無線部18を通じて路上機28と無線通信を行い、料金課金の際に必要となる情報の送受信を行う。この全体制御部19は、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等から構成されるコンピュータ手段であり、ETC車載器4で行われる通信や情報取得等の処理を制御したり、イグニッションスイッチ29のACCスイッチのオン状態で路上機28との間で通信処理を行うことにより、課金処理を行ったりするようになっている。このとき、課金情報はICカード制御部20を介してICカード(ETCカード)30に書き込み処理が行われると共に、必要に応じて記憶部23にも書き込み処理が行われるようになっている。
【0024】
ICカード制御部20は、ETCシステムを利用する際に必要となるICカード30がICカードコネクタ21に差し込まれた状態で、路上機28との間で必要な情報の読み書きを行うものである。記憶部23は、セットアップ時にセットアップ情報が書き込まれると共に、通常運用時にはETC車載器4の設定情報やユーザの設定情報などの必要な情報が書き込まれるようになっている。ICカード30は、CPUを主体とする制御部31と記憶部32とから構成されている。ETC車載器4にセットアップ時に記憶されるセットアップ情報としては、ナンバープレート情報(自動車検査証に記載されている自動車登録番号及び車両番号)、車検証(自動車検査証)情報(車両のサイズ、重量等)等が登録される。
【0025】
表示部24は周知のLCD(Liquid Crystal Display)やLED(Light Emitting Diode)等によって構成され、課金情報や設定情報などが表示される表示装置である。スピーカ25は、音声により情報の報知を行うものである。電源部27は、イグニッションスイッチ29のACCスイッチのオン状態で電源としての車両用バッテリ33から給電される。
【0026】
路上機28は、料金所アンテナ34と制御部35とからなり、ETC車載器4から送信された情報に基づいて所定の認証手続きを完了したときは、ゲートを開放して車両の通過を許可する。路上機28は、ETCを管理しているETC制御センタ内のETCサーバに接続されている。
そして、本実施例のETC車載器4は、ETCシステムに対応するのみならず、その他のシステムについても対応可能となっている。即ち、ICカードコネクタ21に接続されたICカードの種類を判別し、その種類に対応してDSRC通信により提供されるサービスについても処理できるように、全体制御部19並びにICカード制御部20の制御プログラム等が構成されている。
【0027】
また、全体制御部19は、外部機器接続部22,並びにナビゲーション装置1側の車両インターフェイス2を介して、制御回路5と通信するようになっており、ナビゲーション装置1側よりナビゲーションに関する情報を取得可能となっている。更に、全体制御部19は、車両のパーキングブレーキ(サイドブレーキ又はフットブレーキ)36の作動状態に関する情報も、車内LAN3及び外部機器接続部22を介して取得可能となっている。
【0028】
図3は、ナビゲーション装置1の制御回路5、並びにETC車載器4の全体制御部19によって実行される処理内容を示すフローチャートである。また、図4は、処理の流れの一具体例を示すフローである。ここで、運転者が利用する予定のサービスの種類については、運転者により予め設定されているものとする。先ず、ナビゲーション装置1の制御回路5は、起動すると、表示器15に車両の現在位置とその周辺を含む地図を表示すると共に、その表示範囲内で、DSRC通信によってサービスが提供される地点も表示する(ステップS1)。
【0029】
図5には、ステップS1における表示画面イメージの一例を示す。この例では、駐車場(P)では、クレジット決済のサービスが提供され、ファーストフード店、ガソリンスタンド(GS)では、クレジット及びプリペイドカード(引き落とし)決済のサービスが提供されるようになっている。また、高速道路のインターチェンジ(IC)では、ETCサービスが提供される。
【0030】
再び、図3を参照する。続いて、制御回路5は、運転者(乗員)による経路案内要求があるか否かを判断し(ステップS2)、運転者が目的地を設定すると(要求有り)、その目的地に応じた案内経路を検索し、決定する(ステップS3)。それから、その案内経路上に、運転者が利用する予定のDSRCサービスの提供地点があるか否かを判断し(ステップS4)、提供地点がない場合は処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS4において提供地点がある場合、制御回路5は、提供されるサービスの種類等の情報をETC車載器4の全体制御部19に送信し、全体制御部19は、その情報をスピーカ25から音声によって出力し、運転者に報知する(ステップS5)。続いて、現段階で、案内経路上で最も早く訪れる予定のDSRCサービス提供地点に対応するICカードを、スロットに挿入するように音声メッセージを出力する(ステップS6)。
上記のステップS4,S5の処理は、図4では(A)に対応しており、例えば、「この先ETC決済と、クレジットカード決済と、クレジットカード又は電子マネーによる決済があります。まずはクレジットカードを挿入してください」といったメッセージを出力する。
【0032】
次に、全体制御部19は、ナビゲーション装置1の制御回路5が、車両が途中で案内経路を逸脱したり、運転者が目的地の設定を変更するなどしたため経路の再計算を行ったか否かを判断し(ステップS7)、再計算が行われていなければ(無し)、その時点で、最も早く訪れる予定のDSRCサービス提供地点に対応するICカードが、スロットに挿入されている(ICカードコネクタ21に接続されている)か否かを判断する(ステップS8)。そして、サービスに対応したICカードが挿入されていれば(有り)、そのサービス提供地点(DSRCゲート)を通過して路上機との間で通信を行い、その通信内容に応じた処理を実行する(ステップS9)。それから、経路上に、未だこれから通過するサービス提供地点があるか否かを判断し(ステップS10)、提供地点があればステップS6に戻る。
【0033】
一方、ステップS7において、ナビゲーション装置1側で経路の再計算が行われた場合は(有り)、その再計算された経路によってDSRCサービス提供地点に変更が生じたか否かを判断し(ステップS11)、変更がなければステップS8に、変更があればステップS4に夫々移行する。
【0034】
また、ステップS8において、最も早く訪れる予定のDSRCサービス提供地点に対応するICカードがスロットに挿入されていない場合、全体制御部19は、その時点の車両の走行状態を参照する。そして、その走行状態が一定の条件を満たす場合に、上記サービスに対応するICカードの挿入を促すように、音声メッセージを出力する(ステップS12)。その条件とは、例えば、(1)車両が踏切り待ちや信号待ちなどで停車している,(2)イグニッションスイッチ29がオンになった(エンジン始動時),(3)パーキングブレーキ36が作動した,(4)ICカードが挿入された,等である。
即ち、上記の条件を満たす場合は、車両が確実に停車している場合、若しくはその可能性が極めて高い場合であるから、そのように安全性が確保されている状況下でのみ報知を行うようにする。それから、ステップS7に戻る。
【0035】
ここで、図4に即して説明すると、最初にガソリンスタンドに立ち寄って給油を行う予定であり、上記(A)での報知を行ったにもかかわらず、運転者がETC車載器4に(1)クレジットカードを挿入していなかった、若しくは(2)クレジットカード以外のICカードを挿入していたとする。
【0036】
この場合、スタート地点からガソリンスタンドに到着するまでの間において車両が例えば踏切り待ちなどで一旦停止し、その状態が例えば5秒以上継続すると、全体制御部19は、ケース(1)であれば「カードが未挿入です。クレジットカードを挿入してください」という音声メッセージを出力する。また、ケース(2)であれば「挿入されているカードが違います。クレジットカードを挿入してください」という音声メッセージを出力する(B,ステップS12)。
即ち、上記のような報知が行われると、運転者は、直ちに適切なICカードを接続する必要があると思い込むおそれがあり、車両の走行状態によっては、上記の操作を行うのが不適切な場合もある。そこで、車両の走行状態が上記操作を行うのに十分な余裕があるタイミングで報知を行うようにする。
【0037】
その後、ガソリンスタンドに到着した段階でも、カードの未挿入や誤挿入が解消されていなかった場合は、車両がガソリンスタンドで停止した際に(B)と同様の通知を行う(C)。そして、クレジットカードが挿入され、ガソリンスタンドでの給油代金が、DSRC通信を利用してETC車載器4によりクレジット決済されると、次のサービス提供地点は高速道路の料金所(ETCゲート)となる。従って、全体制御部19は、「次はETCカードを挿入して下さい」という音声メッセージを出力する(D)。
【0038】
車両がETCゲートを通過すると、路上機29とETC車載器4との通信により入場処理が行われる。ここで、高速道路のサービスリア内にある例えばファーストフードの店舗(ドライブスルー方式)において、DSRC通信を利用して購入代金をクレジット決済又は電子マネー決済するサービスを提供しており、運転者がその店舗の利用を予定していたとする。その場合、ETCゲートにおける入場処理の後に、全体制御部19は、「次はクレジットカード又は電子マネーカードを挿入して下さい」という音声メッセージを出力する(E)。ETCゲートを通過する際の走行速度は20km/h以下が推奨されているので、この段階ではICカードを入れ替える余裕がある。
【0039】
(E)の段階でクレジットカードや電子マネーカードが挿入されないまま車両が走行したとしても、高速道路を通常の速度で走行している間は通知を行わず、渋滞などが発生しており、車両が極めて低速で走行している場合にだけカードの入れ替えを通知する。そして、車両がサービスエリアに入場すると、上記店舗における注文待ちや、注文後の受け取り待ちで停止状態となった場合に、「カードが挿入されていません。クレジットカード又は電子マネーカードを挿入して下さい」という音声メッセージを出力する(F)。
【0040】
上記店舗における購入代金の決済が終了すると、次はETCゲートを通過して高速道路を降りる際に通行料金を決済することになる。そこで、購入代金の決済処理後に、全体制御部19は、「次はETCカードを挿入して下さい」という音声メッセージを出力する(G)。その後、車両がサービスエリア内を移動して例えば駐車場で停車した場合にも、ETCカードが未挿入であれば「カードが未挿入です。ETCカードを挿入して下さい」という音声メッセージを出力する(H)。そして、ETC車載器4にETCカードが挿入されて、車両が高速道路出口のETCゲートを通過すれば、DSRC通信により通行料金の決済が行われる(I)。
【0041】
以上のように本実施例によれば、ETC車載器4の全体制御部19は、ナビゲーション装置1において案内経路が検索されると、その案内経路上でDSRC通信により提供されるサービスの種類を車両の運転者に対して報知し、それらの内、運転者によって指定されたサービスの内容とその時点でETC車載器4に接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知する。従って、運転者は、これから受ける予定のサービスに対応したICカードがETC車載器4に接続されているかどうかを事前に確認して、接続するICカードの種類をサービス提供地点に接近した時点で変更するような事態の発生を回避ができる。
【0042】
また、全体制御部19は、運転者によって指定されたサービスの地点が複数ある場合は、各地点を通過する毎に、その次の地点で提供されるサービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断するので、運転者は、複数のサービスを連続して受ける予定の場合も、各サービスに対応したICカードがETC車載器4に接続されているかどうかを事前に確認することができる。
更に、全体制御部19は、案内経路が変更されると、その変更された案内経路上でDSRC通信により最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断するので、運転の途中で案内経路が変更された場合でも、上記と同様の効果が得られる。
【0043】
加えて、全体制御部19は、提供されるサービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応していない場合は、前記サービスの内容に対応したICカードの接続を促す旨を報知するので、運転者は、何れのICカードを接続すれば良いのかを認識することができる。また、全体制御部19は、提供されるサービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応していない場合に行う報知のタイミングを、車両の走行状態に応じて決定するので、車両の走行状態が上記操作を行うのに十分な余裕があるタイミングで、適切に報知を行うことができる。
【0044】
そして、全体制御部19は、上記の報知を、具体的には車両の走行速度が設定した閾値以下に低下した場合や、車両が停車状態となって一定時間が経過した場合、車両のイグニッションスイッチがオンされた場合、車両のパーキングブレーキが作動した場合などに行うので、車両が低速で走行しており安全性が高いと推定される場合、停車状態が継続している場合、両が停車している状態からエンジンが始動された場合、車両が確実に停車した場合などに報知を行うことができる。
また、全体制御部19は、上記の報知をICカードが接続された時点で行うので、運転者は、上記時点でカードの適否を直ちに確認することができる。そして、ICカードを最初に接続するのは運転を開始する前であることが多いので、その時点でカードの適否が確認できれば、運転中にICカードを入れ替える操作を行う必要がなくなる。
【0045】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
乗員が利用する予定のサービスを予め指定する処理は必要に応じて行えばよく、乗員の指定がない場合には、順次利用する可能性があるサービスの提供地点についてICカードの種類との比較を行えば良い。
近距離無線通信手段はDSRC通信に限ることなく、例えば、無線LANなどであっても良い。
図3の処理の全てを、ナビゲーション装置1の制御回路5で行っても良い。
ステップS12で行う報知のタイミングは、個別の設計に応じて適当と思われるものを適宜選択すれば良い。
また、上記報知タイミングの(1)のように、必ずしも車両が停止している状態に限らず、走行速度が減速している過程で、例えば10km/h以下のように極めて低速になった段階で報知を行っても良い。
【0046】
乗員に対して、提供される予定のサービスとICカードの種類とが相違している旨のみを報知しても良い。
カードインターフェイスを、複数枚のICカードを同時に接続可能とするように構成しても良く、その場合、提供される予定のサービスに、接続されているICカードの何れかが対応しているか否かを判定すれば良い。
車載通信器は、必ずしもETC車載器として構成されている必要は無い。また、DSRC通信によって提供されるサービスの種類は、実施例において提示したものに限らない。
ナビゲーション装置に車載通信器の機能も持たせて、両者を一体に構成しても良い。またその場合、ナビゲーション装置側の制御回路に、通信制御部並びに制御手段の機能を持たせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例であり、ETC車載器を中心とする車載通信システムの構成を示す機能ブロック図
【図2】ナビゲーション装置を中心とする図1相当図
【図3】ナビゲーション装置の制御回路、並びにETC車載器の全体制御部によって実行される処理内容を示すフローチャート
【図4】処理の流れの一具体例を示すフロー図
【図5】図3のステップS1における表示画面イメージの一例を示す図
【符号の説明】
【0048】
図面中、1は車両用ナビゲーション装置、4はETC車載器(車載通信器)、17はアンテナ(近距離無線通信手段)、18は無線部(近距離無線通信手段)、19は全体制御部(制御手段,通信制御部)、20はICカード制御部(カードインターフェイス)、21はICカードコネクタ(カードインターフェイス)、29はイグニッションスイッチ、30はICカード(ETCカード)、36はパーキングブレーキを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信手段と、複数種類のICカードが接続可能なカードインターフェイスとを備え、前記近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する車載通信器と、車両用ナビゲーション装置とで構成される車載通信システムであって、
前記車両用ナビゲーション装置において車両の走行目的地が設定され、前記目的地に応じた案内経路が検索されると、当該案内経路上において、近距離無線通信によって提供されるサービスの種類を前記車両の乗員に対して報知し、それらの内、前記乗員によって指定されたサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする車載通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記乗員によって指定されたサービスが提供される地点が複数ある場合は、各地点を通過する毎に、その次の地点で提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の車載通信システム。
【請求項3】
近距離無線通信手段と、複数種類のICカードが接続可能なカードインターフェイスとを備え、前記近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する車載通信器と、車両用ナビゲーション装置とで構成される車載通信システムであって、
前記車両用ナビゲーション装置において車両の走行目的地が設定され、前記目的地に応じた案内経路が検索されると、当該案内経路上において、近距離無線通信によって最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする車載通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記車両用ナビゲーション装置において前記案内経路が変更されると、その変更された案内経路上において、近距離無線通信によって最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断することを特徴とする請求項3記載の車載通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記案内経路上に、前記近距離無線通信によりサービスが提供される地点が複数存在している場合は、各地点を通過する毎に、その次の地点で提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断することを特徴とする請求項3又は4記載の車載通信システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記サービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応していない場合は、前記サービスの内容に対応したICカードの接続を促す旨を報知することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の車載通信システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記サービスの内容とその時点で接続されているICカードとが対応していない場合に行う報知のタイミングを、前記車両の走行状態に応じて決定することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の車載通信システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記報知を、前記車両の走行速度が設定した閾値以下に低下した場合に行うことを特徴とする請求項7記載の車載通信システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記報知を、前記車両が停車状態となって一定時間が経過した場合に行うことを特徴とする請求項8記載の車載通信システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記報知を、前記車両のイグニッションスイッチがオンされた場合に行うことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の車載通信システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記報知を、前記車両のパーキングブレーキが作動した場合に行うことを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の車載通信システム。
【請求項12】
前記制御手段は、前記報知を、前記ICカードが接続された時点で行うことを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の車載通信システム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかに記載の車載通信システムに使用されることを特徴とする車載通信器。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れかに記載の車載通信システムに使用されることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項15】
近距離無線通信手段と、複数種類のICカードが接続可能なカードインターフェイスとを備え、前記近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する車載通信器であって、
車両用ナビゲーション装置において車両の走行目的地が設定され、前記目的地に応じた案内経路が検索されると、当該案内経路上において、近距離無線通信によって提供されるサービスの種類を前記車両の乗員に対して報知し、それらの内、前記乗員によって指定されたサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする車載通信器。
【請求項16】
近距離無線通信手段と、
複数種類のICカードが接続可能なカードインターフェイスと、
前記近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する通信制御部と、
車両の走行目的地が設定され、前記目的地に応じた案内経路が検索されると、当該案内経路上において、近距離無線通信によって提供されるサービスの種類を前記車両の乗員に対して報知し、それらの内、前記乗員によって指定されたサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項17】
近距離無線通信手段と、複数種類のICカードが接続可能なカードインターフェイスとを備え、前記近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する車載通信器であって、
車両用ナビゲーション装置において車両の走行目的地が設定され、前記目的地に応じた案内経路が検索されると、当該案内経路上において、近距離無線通信によって最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする車載通信器。
【請求項18】
近距離無線通信手段と、
複数種類のICカードが接続可能なカードインターフェイスと、
前記近距離無線通信手段により外部と通信を行うことで、当該通信内容及びその時点で接続されているICカードに応じたアプリケーションを実行する通信制御部と、
車両の走行目的地が設定され、前記目的地に応じた案内経路が検索されると、当該案内経路上において、近距離無線通信によって最初に提供されるサービスの内容と、その時点で接続されているICカードとが対応しているか否かを判断し、両者が対応していない場合はその旨を報知するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−170218(P2008−170218A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2324(P2007−2324)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】