説明

運転者安否確認システム

【課題】地震発生の際に運転者の安否を精度よく予測することが可能な運転者安否確認システムを提供する。
【解決手段】運転者安否確認システム1は、車両に搭載されるナビゲーション装置2と、基地局4に接続される移動通信網6上の管理サーバ3とからなり、このうち、ナビゲーション装置2が、携帯電話機2aを介して、管理サーバ3からの送信要求信号を受信すると、車両がおかれている状態を表す状態情報を管理サーバ3に送信する。一方、管理サーバ3は、インターネット通信網7を介して、地震解析装置5からの災害予測情報と災害発生情報とを受信した場合に、それぞれ送信要求信号をナビゲーション装置2に送信すると共に、各送信要求信号に対してナビゲーション装置2から送信される状態情報の差分に基づき、地震発生前と発生後における車両の高低差や傾きが大きいと判断した場合、運転者が被災していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時に運転者の安否を確認するための運転者安否確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気象庁などの地震情報センタにより地震発生エリアが特定されると、移動通信網に接続されているサーバ(以下、管理サーバという)が、地震発生エリア内に位置する携帯電話機との無線通信によって、地震による被災者の安否を確認し、その確認結果を被災者の家族や会社などに報告する安否確認システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この安否確認システムでは、管理サーバが、当該システムの加入者の携帯電話機に割り当てられた電話番号またはメールアドレス(以下、加入者連絡先という)と、その加入者の家族や会社といった加入者が緊急時に連絡を必要とする連絡先(以下、緊急時連絡先という)とを記憶し、地震発生時に最初に行う加入者連絡先との無線通信によって、携帯電話機の位置情報を取得する。
【0004】
そして、管理サーバは、携帯電話機から取得した位置情報に基づき、加入者の現在位置が地震発生エリア内であると判定すると、加入者に携帯電話機の入力操作を求めるための安否入力要求を送信し、この安否入力要求を受信した携帯電話機から返信された安否情報によって地震発生エリア内にいる加入者の安否を確認し、その確認結果を緊急時連絡先に送信するように構成されている。
【特許文献1】特開2005−258638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話機の利用者が車両を運転している際に地震が発生した場合、その地震により直接被害を受ける一次的な事故の他に、他車両の運転者の急なハンドル操作やブレーキ操作に起因して間接被害を受ける二次的な事故(例えば、衝突や横転など)が起こり得るため、特に、地震発生エリア内を走行中の運転者に対する安否確認を行うためのシステムの確立が要請されている。
【0006】
しかし、従来の安否確認システムで運転者の安否を確認しようとすると、最終的に運転者自身による入力操作を必要とするように構成されているため、車両が重大な事故にあって運転者が重傷を負ってしまい、携帯電話機の入力操作が困難な状況になった場合に、運転者が地震による被害を受けたのかどうかを確認することが困難になってしまうという問題があった。
【0007】
即ち、携帯電話機から管理サーバに安否情報が送られてこない場合、運転者が被災に遭ったケースの他に、運転者が、単に携帯電話機の入力操作を怠っているケースや、携帯電話機の着信に気づかないケース等が考えられ、管理サーバは、これらのケースを全て運転者の安否が不明であるという同一のレベルで処理しなければならなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために、地震発生の際に運転者の安否を精度よく予測することが可能な運転者安否確認システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の運転者安否確認システムは、エリア情報取得手段が、地震の発生地域である災害エリアを示すエリア情報を取得し、状態情報取得手段が、エリア情報取得手段により取得したエリア情報が示す災害エリアに位置する車両から、地震発生時と地震終了時とで車両がおかれている状態(以下、車両状態ともいう)をそれぞれ表す第1状態情報と第2状態情報とを取得する。そして、安否判定手段が、状態情報取得手段により取得した第1状態情報と第2状態情報との差分に基づいて、車両の運転者の安否を判定するように構成されている。
【0010】
このように構成された運転者安否確認システムでは、地震の発生地域に位置する車両から、その車両の運転者による入力操作を介することなく、安否を判定するための判定材料としての車両状態を表す状態情報(第1状態情報および第2状態情報)を取得する。
【0011】
したがって、本発明の運転者安否確認システムによれば、車両が重大な事故にあって運転者が重傷を負ってしまい、運転者自身による入力操作が困難な状況になった場合であっても、車両から送られてくる状態情報に基づき、車両状態の地震発生時と地震終了時との変化から、運転者が被災に遭っているかどうかが判定可能となり、ひいては地震発生の際に運転者の安否を精度よく予測することができる。
【0012】
或いは、運転者安否確認システムは、請求項2に記載のように、車両に搭載される車載装置と、該車載装置と無線通信を行う管理装置とからなり、このうち、車載装置が、管理装置との無線通信によって、管理装置から送られてくる送信要求信号を受信すると、車両がおかれている状態を表す状態情報を管理装置に送信する状態情報送信手段を備える。
【0013】
一方、管理装置は、エリア情報取得手段が、地震の発生地域である災害エリアを示すエリア情報を取得し、状態情報取得手段が、エリア情報取得手段により取得したエリア情報が示す災害エリアに位置する車載装置に対して、地震発生時と地震終了時に送信要求信号を送信することによって、地震発生時と地震終了時との状態情報である第1状態情報と第2状態情報とを取得する。そして、安否判定手段が、状態情報取得手段により取得した第1状態情報と第2状態情報との差分に基づいて、車両の運転者の安否を判定する。
【0014】
このように構成された運転者安否確認システムによれば、管理装置から送信要求信号が送られてくると状態情報を送信するように車載装置を設計しておけばよいため、車載装置に対して複雑な装置設計を必要とせず、簡易な構成によって運転者の安否を精度よく予測することができる。
【0015】
また、運転者安否確認システムは、請求項3に記載のように、車載装置が、車両の現在位置の高度を検出する高度検出手段を備えることによって、その高度検出手段により検出した現在位置の高度を状態情報として送信し、安否判定手段が、地震発生時の現在位置の高度と地震終了時の現在位置の高度との差分が、予め設定された高低差閾値を超える場合、車両の運転者が被災していると判定することが望ましい。
【0016】
このように構成された運転者安否確認システムによれば、地震発生時と地震終了時との現在位置の高低差に基づき、地震発生の際に車両が転落しているかどうかを確認することが可能となり、その確認結果を用いて運転者の安否を判定することができる。
【0017】
或いは、運転者安否確認システムは、請求項4に記載のように、車載装置が、車両の進行方向および車幅方向を軸とする回転角を検出する回転角検出手段を備えることによって、その回転角検出手段により検出した回転角を状態情報として送信し、安否判定手段が、地震発生時の回転角と地震終了時の回転角との差分が、予め設定された角度差閾値を超える場合、車両の運転者が被災していると判定することが望ましい。
【0018】
このように構成された運転者安否確認システムによれば、地震発生時と地震終了時とのピッチまたはロールの角度差に基づいて、地震発生の際に車両が乗り上げや横転しているかどうかを確認することが可能となり、その確認結果を用いて運転者の安否を判定することができる。
【0019】
また、安否判定手段は、請求項5に記載のように、地震終了時から所定期間経過しても、状態情報取得手段により第2状態情報を取得できない場合、車両の運転者が被災していると判定することが望ましい。
【0020】
この場合、地震終了後に車両からの通信が途絶えたかどうかを確認することが可能となり、その確認結果を用いて運転者の安否を判定することができる。
なお、管理装置は、請求項6に記載のように、車載装置と無線通信を行うための複数の基地局に接続されたネットワーク上のサーバであり、状態情報取得手段が、エリア情報が示す災害エリアの少なくとも一部を通信エリア内に収容する一または複数の基地局を介して、送信要求信号を送信することが望ましい。
【0021】
この場合、管理装置が、送信要求信号を車両毎に送信するのではなく地震の発生地域に一括して送信することが可能となるため、状態情報を速やかに収集することができ、ひいては地震発生の際に運転者の安否を効率よく予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<運転者安否確認システムの全体構成>
図1は、本発明が適用された運転者安否確認システム1の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、運転者安否確認システム1は、車両に搭載される車載装置であるナビゲーション装置2と、ナビゲーション装置2を搭載している車両(以下、対象車両という)の運転者の安否確認を地震発生時に行う管理装置である管理サーバ3とからなる。
【0024】
また、運転者安否確認システム1では、管理サーバ3が、移動通信網6及びインターネット通信網7に接続されており、このうち、移動通信網6及びその先に接続された基地局4を介して、ナビゲーション装置2と無線通信を行い、インターネット通信網7を介して、気象庁などの地震情報センタに設置されている地震解析装置5と有線通信を行うように構成されている。
【0025】
なお、ナビゲーション装置2と基地局4との間で行われる無線通信には、ナビゲーション装置2本体と近距離での無線通信を行うBluetooth(登録商標)対応の携帯電話機2aが利用され、この携帯電話機2aは、ナビゲーション装置2本体と無線で接続されることにより、いわゆるハンズフリーフォンとしての機能も実現するように構成されている。
【0026】
また、移動通信網6は、当該移動通信網6の通信サービスエリア内に所在する携帯電話機2aに対して、通話サービスを提供するためのネットワークである移動電話網6aと、データ通信サービスを提供するためのネットワークである移動パケット通信網6bとからなる。
【0027】
基地局4は、移動通信網6の通信サービスエリア内に多数設置されており、自局4がカバーする通信エリアに在圏している携帯電話機2aと無線通信を行うと共に、基地局4毎に割り当てられた基地局IDが含まれる無線信号(以下、基地局識別信号という)を、自局4の通信エリアに常時ブロードキャストする。また、本実施形態の基地局4は、管理サーバ3から移動通信網6を介して、後述する第1送信要求信号を受信すると、その受信信号を基地局識別信号と共に自局4の通信エリアにブロードキャストするように構成されている。
【0028】
地震解析装置5は、全国各地に設けられた地震計による検出情報に基づき、地震波の震源地や規模などを特定すると共に、その特定した震源地を中心として大規模な地震の発生(例えば、震度5以上)が予測される地域(以下、災害予測エリアという)と、その災害予測エリアに地震波が到達するまでの時間(以下、地震波到達時間という)とを算出する。そして、その算出結果である災害予測エリアと地震波到達時間とを含む災害予測情報や、その災害予測エリア内の地震計により地震が観測されると直ちにその地震発生を連絡するための災害発生情報を、管理サーバ3にインターネット通信網7を介して送信するように構成されている。
【0029】
<管理サーバの構成>
図2は、本実施形態における管理サーバ3の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、管理サーバ3は、基地局4及び地震解析装置5との間で各種情報の授受を行うための移動通信部11及びインターネット通信部(以下、IP通信部という)12と、ナビゲーション装置2(携帯電話機2aを含む)やその利用者に関する各種情報が登録される利用者データベース(以下、利用者DBという)13と、地図データを記憶する地図座標データベース(以下、地図座標DBという)14と、各部11〜14からの入力に応じて通信部11,12の制御および利用者DB13の更新を行う制御部15とを備えている。
【0030】
このうち、制御部15は、CPU,ROM,RAM,I/O及びバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、CPUが、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、地震予測エリア内に位置する対象車両の運転者が被災しているかどうかを判定してその運転者の安否を確認するための安否確認処理(後述する)を実行する。
【0031】
なお、地図座標DB14には、地図データの他に、基地局4毎の通信エリアを表す通信座標データが基地局IDに対応づけられて記憶されている。
一方、利用者DB13には、図3に示すように、ナビゲーション装置2の識別番号13aと、ナビゲーション装置2の利用者(又は、対象車両の運転者ともいう)が所持する携帯電話機2a毎に割り当てられた電話番号やメールアドレス等(以下、利用者連絡先という)13bと、利用者の家族や会社といったその利用者が緊急時に連絡を必要とする連絡先(以下、緊急時連絡先という)13cとが対応づけられて記憶されている。
【0032】
また、利用者DB13には、ナビゲーション装置2から送信される状態情報のうち、地震発生時および地震終了時の状態情報である第1状態情報13dおよび第2状態情報13eを記憶するための領域(以下、状態記憶領域という)や、安否確認処理による判定結果13fを記憶するための領域(以下、判定記憶領域という)が設けられている。
【0033】
<ナビゲーション装置の構成>
図4は、本実施形態におけるナビゲーション装置2の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、ナビゲーション装置2は、携帯電話機2aを用いて対象車両の外部との無線通信を行う移動通信部21と、対象車両の現在位置等を検出する位置検出部22と、地図データを入力する地図データ入力部23と、各種画像を表示するための表示部24と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部25と、各部21〜23からの入力に応じて各種処理を実行し、移動通信部21,表示部24,及び音声出力部25を制御する制御部26とを備えている。
【0034】
このうち、位置検出部22は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波(即ち、GPS信号)をGPSアンテナ31aを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機31と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ32と、3軸方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ33と、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサ34とを備えている。そして、これら各センサ31〜34は、車両の現在位置やその現在位置の高度などを算出するための各検出信号を出力する。
【0035】
なお、本実施形態の位置検出部22は、GPS受信機31により4つ以上のGPS用の人工衛星からGPS信号を受信できない場合にも、ジャイロスコープ32,距離センサ33,及び地磁気センサ34により、車両の移動方向および移動距離などから現在位置の高度をいわゆる自律航法により算出するための各検出信号を出力する。また、ジャイロスコープ32は、車両の進行方向および車幅方向を軸とする回転角を検出し、その検出結果を示す検出信号を出力するように構成されている。
【0036】
地図データ入力部23は、図示は省略するが、ハードディスクやDVD−RAM等の書き込み可能な地図記憶媒体に記憶されている地図データや案内用の音声データ等の各種データを入力するための装置である。また、表示部24は、カラー表示装置であり、周知の半透過型の液晶ディスプレイ,一般的な液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,CRT,ヘッドアップディスプレイなどがあるが、そのいずれを用いてもよい。
【0037】
制御部26は、CPU,ROM,RAM,I/O及びバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、このうち、CPUが、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、以下の状態情報送信処理を実行する。また、制御部26は、位置検出部22から入力される各検出信号に基づき、座標および進行方向の組として車両の現在位置を算出する位置算出処理や、現在位置から目的地までの最適な経路を自動的に求める経路計算を行い、この経路計算に基づいた経路案内を表示部24及び音声出力部25を介して行う経路案内処理を、状態情報送信処理と並列実行するように構成されている。
【0038】
<状態情報送信処理>
ここで、ナビゲーション装置2の制御部26(CPU)が実行する状態情報送信処理を、図5に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、本処理は、車両のイグニションスイッチがON状態にされると起動されて、同スイッチがOFF状態にされるまで実行される。
【0039】
まず、本処理が起動されると、S110では、移動通信部21を介して管理サーバ3からの送信要求信号(後述する)を受信したか否かを判断し、肯定判断した場合にはS120に進み、否定判断した場合には、その送信要求信号を受信するまで待機する。
【0040】
S120では、位置検出部22から入力される検出信号に基づいて、対象車両の現在位置およびその現在位置の高度を算出し、その算出したデータである座標データを取得(RAMに記憶)する。
【0041】
続くS130では、ジャイロスコープ32から入力される検出信号に基づいて、対象車両の進行方向および車幅方向を軸とする回転角を算出し、その算出したデータである回転角データを取得(RAMに記憶)する。
【0042】
続くS140では、先のS120及びS130でRAMに記憶した座標データと回転角データとからなり、対象車両がおかれている状態を表す状態情報を、移動通信部21を介して管理サーバ3に送信し、S110を再実行する。なお、ここで送信する状態情報には、ナビゲーション装置2の識別番号13a(図3参照)と、携帯電話機2aが受信する基地局識別信号に基づく基地局IDとが付加されている。
【0043】
<安否確認処理>
次に、管理サーバ3の制御部15(CPU)が実行する安否確認処理を、図6に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、本処理は、管理サーバ3に電源が投入されると起動される。
【0044】
まず、本処理が開始されると、S210では、災害予測エリア内における地震発生時の状態情報である第1状態情報13dの送信をナビゲーション装置2に要求するための第1要求送信処理を起動し、S220に進む。
【0045】
次に、S220では、災害予測エリア内における地震終了時の状態情報である第2状態情報13eの送信をナビゲーション装置2に要求するための第2要求送信処理を起動し、S230に進む。
【0046】
そして、S230では、地震予測エリア内に位置する対象車両の運転者が被災しているかどうかを判定するための安否判定処理を起動し、本処理を終了する。
《第1要求送信処理》
次に、先の安否確認処理のS210で実行される第1要求送信処理を、図7に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0047】
まず、本処理が開始されると、S310では、IP通信部12を介して地震解析装置からの災害予測情報を受信したか否かを判断し、肯定判断した場合にはS320に進み、否定判断した場合には、災害予測情報を受信するまで待機する。
【0048】
S320では、S310で受信した災害予測情報に含まれている災害予測エリアに基づいて、地図座標DB14を参照し、災害予測エリアの少なくとも一部を通信エリア内に収容する一または複数の基地局4(即ち、基地局ID)を選択し、S330に進む。
【0049】
S330では、S310で受信した災害予測情報に含まれている地震波到達時間に基づいて、災害予測エリア内における地震発生時に、第1状態情報の送信を要求するための送信要求信号である第1送信要求信号を、S320で選択した基地局IDに対応する基地局4に、移動通信部11を介して送信し、S310を再実行する。
【0050】
《第2要求送信処理》
次に、先の安否確認処理のS220で実行される第2要求送信処理を、図8に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0051】
まず、本処理が開始されると、S410では、移動通信部11を介してナビゲーション装置2からの第1状態情報13dを受信したか否かを判断し、肯定判断した場合にはS420に進み、否定判断した場合には、第1状態情報13dを受信するまで待機する。
【0052】
S420では、S410で受信した第1状態情報13dに含まれている座標データと、先の第1要求送信処理のS310で受信した災害予測情報に含まれている災害予測エリアとに基づいて、対象車両の現在位置が災害予測エリア内であるか否かを判断し、肯定判断した場合にはS430に進み、否定判断した場合にはS410を再実行する。
【0053】
S430では、S410で受信した第1状態情報13dに付加されている識別番号13a(図3参照)に基づいて、その識別番号13aに対応する利用者DB13の状態記憶領域に、S410で受信した第1状態情報13dを記憶し、S440に進む。
【0054】
S440では、災害予測エリア内における地震終了時に、第2状態情報の送信を要求するための送信要求信号である第2送信要求信号を、S410で受信した第1状態情報13dに付加されている識別番号13aに対応する利用者DB13の利用者連絡先13bに、移動通信部11を介して送信し、S410を再実行する。なお、ここでの第2送信要求信号の送信タイミングは、先の第1要求送信処理のS310で受信した災害予測情報(地震波到達時間)、又は、地震解析装置5から送られてくる災害発生情報のうち少なくとも一方に基づいて決定される。
【0055】
《安否判定処理》
次に、先の安否確認処理のS230で実行される安否判定処理を、図9に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、本処理は、先の第2要求送信処理のS420で利用者DB13に第1状態情報13dを記憶した全ての運転者(利用者)を対象として実行される。
【0056】
まず、本処理が開始されると、S510では、移動通信部11を介してナビゲーション装置2からの第2状態情報13eを受信したか否かを判断し、肯定判断した場合にはS520に進み、否定判断した場合にはS515に進む。
【0057】
S515では、先の第2要求送信処理のS440で第2送信要求信号を送信してから所定期間(例えば、3分間)経過したか否かを判断し、肯定判断した場合にはS550に進み、否定判断した場合にはS510を再実行する。
【0058】
一方、ナビゲーション装置2からの第2状態情報13eを受信した場合に進むS520では、S510で受信した第2状態情報13eに付加されている識別番号13a(図3参照)に基づいて、その識別番号13aに対応する利用者DB13の状態記憶領域に、S510で受信した第2状態情報13eを記憶し、S530に進む。
【0059】
S530では、利用者DB13を参照して、先の第2要求送信処理のS430で状態記憶領域に記憶した第1状態情報13dに含まれている座標データと、S520で状態記憶領域に記憶した第2状態情報13eに含まれている座標データとの差分が、第1状態情報13dと第2状態情報13eとの受信間隔に応じて予め設定された高低差閾値(例えば、1m〜3m)を超えているか否かを判断する。ここで、肯定判断した場合にはS550に進み、否定判断した場合にはS540に進む。
【0060】
S540では、同様に利用者DB13を参照して、第1状態情報13dに含まれている回転角データと、第2状態情報13eに含まれている回転角データとの差分が、第1状態情報13dと第2状態情報13eとの受信間隔に応じて予め設定された角度差閾値(例えば、10°〜30°)を超えているか否かを判断し、肯定判断した場合にはS550に進み、否定判断した場合にはS555に進む。
【0061】
S550では、対象車両の運転者の可否を表す判定フラグを、対象車両の運転者が被災していること(又は、被災している可能性が大きいこと)を表す1に設定し、その設定した判定フラグを、S510で受信した第2状態情報13eに付加されている識別番号13aに対応する利用者DB13の判定記憶領域に記憶し、S560に進む。
【0062】
一方、S555では、前述した判定フラグを、対象車両の運転者が被災していないこと(又は、被災していない可能性が大きいこと)を表す0に設定し、その設定した判定フラグを、S510で受信した第2状態情報13eに付加されている識別番号13aに対応する利用者DB13の判定記憶領域に記憶し、S560に進む。
【0063】
S560では、先のS550又はS555で判定記憶領域に記憶した判定フラグに基づく判定結果13f(図3参照)を、S510で受信した第2状態情報13eに付加されている識別番号13aに対応する利用者DB13の緊急時連絡先13cに、移動通信部11(又は、IP通信部12)を介して送信し、S510を再実行する。
【0064】
<動作例>
このように構成された運転者安否確認システム1では、図10に示すように、管理サーバ3が、気象庁により地震の発生地域(以下、災害エリアという)が予測されると、その予測された災害エリアの少なくとも一部を通信エリア内に収容する複数の基地局4に、管理サーバ3の連絡先(以下、サーバ連絡先という)3aを付加した第1送信要求信号を送信する。
【0065】
そして、この第1送信要求信号を受信した基地局4が、その受信信号が示す内容を表すデータ(第1送信要求データ)を基地局識別信号に重畳して自局4の通信エリアに送信し、この通信エリア内に位置する対象車両(ナビゲーション装置2)が、管理サーバ3に第1状態情報を含む信号(第1状態信号)を送信する。なお、ここでの第1状態信号の送信では、第1送信要求データに含まれているサーバ連絡先3aにより通信先が特定されているため、管理サーバ3との間で形成された通信路を介して行われる。
【0066】
次に、管理サーバ3が、気象庁により災害エリアが確定されて所定期間(例えば、30秒)が経過すると、災害エリア内に位置する対象車両に対して、第2送信要求信号を送信し、この第2送信要求信号を受信した対象車両(ナビゲーション装置2)が、管理サーバ3との間で形成された通信路を介して、第2状態情報を含む信号(第2状態信号)を送信する。
【0067】
最後に、管理サーバ3が、対象車両(ナビゲーション装置2)からの受信信号に含まれている第1状態情報と第2状態情報との差分に基づいて、地震発生前と発生後における対象車両の高低差や傾きが大きいと判断した場合に、対象車両の運転者が被災していると判定し、その判定結果を緊急時連絡先に送信する。
【0068】
なお、上記実施形態において、位置検出部22が高度検出手段、ジャイロスコープ32が回転角検出手段、状態情報送信処理が状態情報送信手段、S310がエリア情報取得手段、S320〜S520が状態情報取得手段、S530〜S555が安否判定手段に相当する。
【0069】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の運転者安否確認システム1では、管理サーバ3が、地震予測エリアを走行中の車両に搭載されているナビゲーション装置2に対して、地震発生前と地震発生後にそれぞれ送信要求信号を無線送信し、その送信要求信号を受信したナビゲーション装置2から自動送信される状態情報に基づいて、その車両の運転者の安否を判定する。
【0070】
したがって、本実施形態の運転者安否確認システム1によれば、運転者が被災に遭っているかどうかを判定する際に、その運転者による通信操作を介する必要がないため、車両が重大な事故にあって運転者が重傷を負ってしまった場合であっても、その車両状態に基づく判定が可能となり、ひいては地震発生の際に運転者の安否を精度よく予測することができる。
【0071】
また、本実施形態の運転者安否確認システム1では、ナビゲーション装置2が携帯電話機2aを介して管理サーバ3と無線通信を行うように構成されているため、ナビゲーション装置2の利用者が携帯電話に加入していれば新たな利用者連絡先を設ける必要がなく、ひいては本システムに係る利用者の負担(コストや管理作業など)を抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態のナビゲーション装置2は、GPS受信機31により4つ以上のGPS用の人工衛星からGPS信号を受信できない場合にも、ジャイロスコープ32,距離センサ33,及び地磁気センサ34により、車両の移動方向および移動距離などから現在位置の高度をいわゆる自律航法により算出するための各検出信号を出力するように構成されている。このため、車両が建物等の遮蔽物が密集する地域の走行時にその遮蔽物によってGPS信号が受信できない場合であっても、座標データを管理サーバ3に送信することが可能となる。
【0073】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態の安否判定処理では、判定フラグを1に設定するための条件が、座標データの差分が高低差閾値を超えていること(高低差条件)、又は、回転角データの差分が角度差閾値を超えていること(角度差条件)を満たす場合であるが、これに限らず、両者の条件(高低差条件および角度差条件)を満たす場合のみに適用してもよい。
【0075】
また、上記実施形態の安否判定処理では、利用者毎に個別の判定結果13fを直ちに緊急時連絡先13cに送信しているが、これに限定されるものではなく、例えば会社側が複数の社員を管理する場合などのように、複数の利用者に対して共通の緊急時連絡先13cが存在する場合は、その複数の利用者の判定結果13fを一括して緊急時連絡先13cに送信するようにしてもよい。
【0076】
そして、上記実施形態の状態情報送信処理では、管理サーバ3からの送信要求信号を受信すると、状態情報を管理サーバ3に送信しているが、これに限定されるものではない。
例えば、地震解析装置5からの災害予測情報を受信すると第1状態情報を管理サーバ3に送信し、地震解析装置5からの災害発生情報を受信すると第2状態情報を管理サーバ3に送信するようにしてもよい。この場合、地震解析装置5は、移動通信網6に接続されていればよい。
【0077】
或いは、地震解析装置5からの災害予測情報または災害発生情報のいずれかを受信すると、その受信情報に基づく送信タイミングで、第1状態情報と第2状態情報とを同時に管理サーバ3に送信するようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置2は、所謂ドライブレコーダ等の記録装置を搭載し、所定回数の座標データと回転角データとを保持しておくように構成されていればよい。
【0078】
また、上記実施形態のナビゲーション装置2は、携帯電話機2aを用いて対象車両の外部との無線通信を行うように構成されているが、これに限定されずに、ナビゲーション装置2本体に無線通信機能を実現するためのモジュールが搭載された通信モジュール内蔵型装置として構成されていてもよい。この場合、携帯電話機2aの電源が切れている場合であっても、車両のイグニッションスイッチがON状態であれば、確実に状態情報を送信することができる。
【0079】
なお、上記実施形態の運転者安否確認システム1では、基地局4が、管理サーバ3からの第1送信要求信号を受信すると、その受信信号を基地局識別信号と共に自局4の通信エリアにブロードキャストするように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、管理サーバ3が、携帯電話機2aが現在収容されている通信エリアを把握しておき、第1送信要求信号を携帯電話機2a宛に個別に送信してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明が適用された運転者安否確認システム1の構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態における管理サーバ3の構成を示すブロック図。
【図3】管理サーバ3により記憶されている利用者DB13の登録内容を示す一覧表。
【図4】本実施形態におけるナビゲーション装置2の構成を示すブロック図。
【図5】ナビゲーション装置2の制御部26が実行する状態情報送信処理の詳細を示すフローチャート。
【図6】管理サーバ3の制御部15が実行する安否確認処理の詳細を示すフローチャート。
【図7】安否確認処理で実行される第1要求送信処理の詳細を示すフローチャート。
【図8】安否確認処理で実行される第2要求送信処理の詳細を示すフローチャート。
【図9】安否確認処理で実行される安否判定処理の詳細を示すフローチャート。
【図10】運転者安否確認システム1の動作例を示すシーケンス図。
【符号の説明】
【0081】
1…運転者安否確認システム、2…ナビゲーション装置、2a…携帯電話機、3…管理サーバ、4…基地局、5…地震解析装置、6…移動通信網、7…インターネット通信網、11…移動通信部、12…IP通信部、13…利用者DB、14…地図座標DB、15…制御部、21…移動通信部、22…位置検出部、23…地図データ入力部、24…表示部、25…音声出力部、26…制御部、31…GPS受信機、32…ジャイロスコープ、33…距離センサ、34…地磁気センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の安否を確認するための運転者安否確認システムであって、
地震の発生地域である災害エリアを示すエリア情報を取得するエリア情報取得手段と、
前記エリア情報取得手段により取得したエリア情報が示す災害エリアに位置する前記車両から、地震発生時と地震終了時とで前記車両がおかれている状態をそれぞれ表す第1状態情報と第2状態情報とを取得する状態情報取得手段と、
前記状態情報取得手段により取得した第1状態情報と第2状態情報との差分に基づいて、前記車両の運転者の安否を判定する安否判定手段と、
を備えることを特徴とする運転者安否確認システム。
【請求項2】
車両に搭載される車載装置と、該車載装置と無線通信を行う管理装置とからなり、前記車両の運転者の安否を確認する運転者安否確認システムであって、
前記車載装置は、
前記管理装置との無線通信によって、前記管理装置から送られてくる送信要求信号を受信すると、前記車両がおかれている状態を表す状態情報を前記管理装置に送信する状態情報送信手段を備え、
前記管理装置は、
地震の発生地域である災害エリアを示すエリア情報を取得するエリア情報取得手段と、
前記エリア情報取得手段により取得したエリア情報が示す災害エリアに位置する車載装置に対して、地震発生時と地震終了時に前記送信要求信号を送信することによって、地震発生時と地震終了時との前記状態情報である第1状態情報および第2状態情報を取得する状態情報取得手段と、
前記状態情報取得手段により取得した第1状態情報と第2状態情報との差分に基づいて、前記車両の運転者の安否を判定する安否判定手段と、
を備えることを特徴とする運転者安否確認システム。
【請求項3】
前記車載装置は、前記車両の現在位置の高度を検出する高度検出手段を備え、
前記状態情報は、前記高度検出手段により検出した前記現在位置の高度であり、
前記安否判定手段は、地震発生時の前記現在位置の高度と地震終了時の前記現在位置の高度との差分が、予め設定された高低差閾値を超える場合、前記車両の運転者が被災していると判定することを特徴とする請求項2に記載の運転者安否確認システム。
【請求項4】
前記車載装置は、前記車両の進行方向および車幅方向を軸とする回転角を検出する回転角検出手段を備え、
前記状態情報は、前記回転角検出手段により検出した前記回転角であり、
前記安否判定手段は、地震発生時の前記回転角と地震終了時の前記回転角との差分が、予め設定された角度差閾値を超える場合、前記車両の運転者が被災していると判定することを特徴とする請求項2に記載の運転者安否確認システム。
【請求項5】
前記安否判定手段は、地震終了時から所定期間経過しても、前記状態情報取得手段により前記第2状態情報を取得できない場合、前記車両の運転者が被災していると判定することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の運転者安否確認システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記車載装置と無線通信を行うための複数の基地局に接続されたネットワーク上のサーバであり、
前記状態情報取得手段は、前記エリア情報が示す災害エリアの少なくとも一部を通信エリア内に収容する一または複数の基地局を介して、前記送信要求信号を送信することを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の運転者安否確認システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−265981(P2009−265981A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115335(P2008−115335)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】