説明

避難誘導システム

【課題】災害警報が発令された場合に、歩行者に対して避難場所までの経路案内を確実に行うことのできる避難誘導システムの提供。
【解決手段】ラジオ局28からの災害情報を受信すると、車載装置1の制御装置2は災害情報から緊急に避難する必要があるかを判定する。緊急に避難する必要があると判定すると、位置検出器3が検出した現在位置と、制御装置2が検索した避難場所とを含む地図データを携帯電話27に送信する。続いて、現在位置から制御装置2が検索した駐車場所まで車両の経路案内を行い、駐車場所と制御装置2が検索した避難場所とをつなぐ徒歩経路を携帯電話27に送信する。送信された徒歩経路に従って、携帯電話27において降車後の歩行者の避難場所までの進路を案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害警報発生時にユーザを避難場所まで誘導する避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震、津波等の発生が予測され災害警報が発令された場合に、車両の乗員あるいは歩行者に警報の発生を通知するシステムに関する従来技術があった。例えば、緊急放送を受信すると、走行中の車両においてラジオにて緊急放送を強制的に受信可能にするもの(例えば、特許文献1参照)、あるいは走行中の車両において緊急放送を受信すると、車両において音楽、映像等を再生中であっても、緊急放送を割り込ませるもの(例えば、特許文献2参照)があった。
【0003】
また、車両において緊急情報を受信すると、車載ナビゲーション装置において安全な避難経路を形成して、避難場所までの経路案内を行うもの(例えば、特許文献3参照)、または、緊急時に周囲の地形や建物の築年数から危険が発生すると思われる場所を推定し、車載ナビゲーション装置の画面に表示するもの(例えば、特許文献4参照)もあった。
【0004】
さらに、受信した緊急警報放送から危険地域を特定する情報を取得し、携帯電話の位置情報と危険地域情報とを比較して、携帯電話が危険地域内にあればユーザに緊急警報放送を報知するもの(例えば、特許文献5参照)もあった。これらの従来技術は、車両の乗員あるいは歩行者に対して、警報発生を周知させて危険回避のための経路情報を提供するという点において、一定の効果を有するものである。
【特許文献1】特開2006−237959号公報
【特許文献2】特開2006−38766号公報
【特許文献3】特開2002−190084号公報
【特許文献4】特開2006−145705号公報
【特許文献5】特開2007−81516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、その一方で上述した従来技術においては、車両を降車した後の歩行者に対して、避難場所までの避難経路を案内可能にするものではなかった。上述した特許文献3および特許文献4においては、車両の現在位置から避難場所までの経路案内を車載装置にて行っているため、降車した後の歩行者は車載装置の案内画面を見ることができず、避難場所までの経路は車載装置の画面を見た歩行者の記憶に頼らざるを得ない。したがって、災害発生前を目前に避難するという歩行者にとって心理的に過酷な状況において、確実に避難場所に到達するためには不完全な技術であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、災害警報が発令された場合に、歩行者に対して避難場所までの経路案内を確実に行うことのできる避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の避難誘導システムによれば、災害警報が発令された場合に、検出されたユーザの現在位置の周辺にある避難場所を地図データ上において検索し、ユーザの現在位置と検索された避難場所とをつなぐように、地図データ上においてユーザが避難する避難経路を形成し、形成された避難経路をユーザが所持する携帯電話に送信し、送信された避難経路に従って携帯電話においてユーザの進路を案内する。
これにより、災害警報が発令された場合、ユーザは携帯電話を用いて経路案内されながら、徒歩によって避難場所まで避難できるため、ユーザが迅速に非難できるとともに、避難時のユーザの負担を軽減することができる。
【0007】
請求項2記載の避難誘導システムによれば、車載ナビゲーション装置は、情報施設からの災害警報情報を受信した場合、形成した車両避難経路に従って、ユーザが乗車した車両の進路を検索された駐車場所まで案内するとともに、形成した歩行者避難経路を携帯電話に送信し、駐車場所において車両が駐車しユーザが降車した後、送信された歩行者避難経路に従って、携帯電話において避難場所までのユーザの進路が案内される。
【0008】
これにより、災害警報情報を受信した時に車両に乗車していたユーザも、迅速かつ安全に避難場所まで避難することができる。
請求項3記載の避難誘導システムによれば、車載ナビゲーション装置が情報施設からの災害警報情報を受信した場合、携帯電話に対し歩行者避難経路を送信する以前に地図データを送信することにより、地図データのデータ量が多くても、歩行者避難経路を演算する間には送信し終わるため、携帯電話における避難場所までの進路案内が滞ることがない。
【0009】
請求項4記載の避難誘導システムによれば、車載ナビゲーション装置は車両の駐車後、歩行者避難経路を携帯電話に送信した後に電源がオフされることにより、車両の駐車後に車両電源がオフされても、歩行者避難経路の携帯電話への送信が確実に実行される。
請求項5記載の避難誘導システムによれば、車載ナビゲーション装置は避難判定手段が緊急に避難する必要性が無いと判定した場合、形成された帰宅経路に従って、ユーザが乗車した車両の進路を案内することにより、災害発生まで時間的な余裕がある場合には、ユーザを自宅まで安全に帰宅させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、図1乃至図3に基づいて、本発明の実施形態1による避難誘導システムについて説明する。図1は、避難誘導システムの全体構成を示したブロック図である。車両に搭載されたオーディオ一体型車載装置1(本発明の車載ナビゲーション装置に該当し、以下、車載装置1と言う)は、マイコンを主体として構成された制御装置2(本発明の地図データ記憶手段、避難場所検索手段、避難経路探索手段、駐車場所検索手段、車両経路探索手段、歩行者経路探索手段、帰宅経路探索手段および避難判定手段に該当する)、車両(図示せず)の現在位置を検出するための位置検出器3(本発明の現在地検出手段に該当する)、地図データ入力器4、操作スイッチ群5、オーディオ装置6、外部メモリ7、カラー液晶ディスプレイ等からなる表示装置8(本発明の車両経路案内手段に該当する)、スピーカ9(本発明の車両経路案内手段に該当する)が接続された音声コントローラ10、マイクロホン11から入力された音声を認識する音声認識装置12、リモコン13との間でコマンド等の送受信を行うリモコンセンサ14、エンジンキーにより作動されるアクセサリスイッチ15、車両に搭載した携帯電話27(本発明の経路案内手段、現在地検出手段、自宅位置記憶手段に該当する)との間で送受信を行う送受信部16(本発明の避難経路送信手段、歩行者避難経路送信手段に該当する)から構成されている。
【0011】
位置検出器3は、車両方位を検出する地磁気センサ17、車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ18、車両の走行距離を検出する距離センサ19、人工衛星からの送信電波に基づいて車両(自車)の現在位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機20を有している。各センサ17〜20は、それぞれ性質の異なる誤差を有している。このため、制御装置2は、各センサ17〜20の検出値を補間しながら用いることにより、車両の現在位置、進行方向、速度、走行距離、現在時刻等を高精度で検出するようになっている。なお、精度によっては、位置検出器3を上述したセンサ17〜20の一部のみで構成してもよい。
【0012】
地図データ入力器4は、いくつものノードおよびノード同士をつなぐリンクにより形成された道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ入力器4により読み出された地図データは、制御装置2のメモリ26内に記憶される。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。
【0013】
操作スイッチ群5は、表示装置8の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチや、表示装置8の画面上に設けられるタッチパネルスイッチを含んで構成されている。ユーザは、この操作スイッチ群5を用いて、車両の目的地、表示装置8の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、音量調整等)を行う各種のコマンドの入力を行い、車載装置1を作動させることができる。
【0014】
一方、リモコン13には複数の操作スイッチが設けられており、スイッチ操作によりリモコン13からリモコンセンサ14を介して各種の指令信号が制御装置2に送信される。なお、操作スイッチ群5とリモコン13は、何れの操作によっても制御装置2に同様の機能を実行させることができる。
【0015】
オーディオ装置6は、アンテナに接続されラジオ局28(本発明の情報施設に該当する)からのラジオ放送番組を受信するラジオチューナー21と、ラジオチューナー21に接続され、ラジオチューナー21からの信号を増幅して制御装置2に入力するアンプ22と、MD(Mini Disc)プレイヤー23およびDVD(Digital Versatile Disc)プレイヤー24を備えている。ラジオチューナー21はラジオ局28からラジオ放送番組以外に、緊急情報(本発明の災害警報情報に該当する)を受信できる。
外部メモリ7は、例えば着脱可能なフラッシュメモリカード等から構成されている。表示装置8の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)が表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示される。
【0016】
音声認識装置12は、マイクロホン11を介して入力した音声と内部に記憶する認識用の辞書データとを照合し、入力された音声を認識する。音声コントローラ10は、音声認識装置12を制御して音声認識結果を制御装置2に出力するとともに、認識された音声はスピーカ9を介してトークバック出力する。また、制御装置2からの音声出力指令に基づいて音声出力信号をスピーカ9に出力する。スピーカ9から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、盗難防止機能の動作中であることを報知する音声、音声認識結果に応じたトークバック音声などである。
アクセサリスイッチ15は、車両のエンジン(図示せず)の停止および起動を検出するために代用されているものであり、運転者がエンジンキーを操作させることによって発生するオンあるいはオフ信号を制御装置2へ送信している。
【0017】
送受信部16は車両に搭載した携帯電話27との間で、例えばブルーツゥース通信等により送受信を行い、車載装置1から地図データを携帯電話27に送信したり、携帯電話27からのデータを受信して制御装置2に入力する。携帯電話27は、通常、車両の運転者(ユーザ)の近傍に置かれており、表示画面29、操作スイッチ、図示しないコントローラ、携帯電話27を所有するユーザの自宅住所(自宅位置)を記憶するメモリおよびGPS受信機を備えている。携帯電話27は、車載装置1から送信された地図データおよび歩行者避難経路に基づき、周辺地図を表示画面29に表示してユーザに対する経路案内を実行する。尚、車載装置1と携帯電話27との間は、このように無線によるばかりでなく、有線によって接続されていてもよい。
【0018】
制御装置2を構成するマイコンはCPU25、メモリ(RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等)26、I/O(図示せず)などを備えており、メモリ26内には地図データおよび地図データ上のユーザの自宅位置が記憶される。制御装置2は、走行経路に沿って移動可能なように、表示装置8の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ね合わせて表示する。この場合、車両の走行に伴って現在地の表示は地図上を移動し、地図は車両の位置に応じてスクロール表示される。このとき、車両の現在地を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
また、制御装置2は位置検出器3により検出された車両の現在地と、操作スイッチ群5により入力された車両の目的地あるいは中継地点とをつなぐように、地図データ上において車両が走行する誘導経路を形成し、形成された誘導経路に従って、表示装置8上の画像およびスピーカ9からの音声により車両の進路を案内する。
【0019】
次に、図2および図3に基づいて、本実施形態による災害からの避難誘導の方法について説明する。最初にユーザにより車両のエンジンが起動されると、アクセサリスイッチ15がオンされる。これにより、車載装置1のラジオチューナー21、アンプ22および制御装置2の電源も同時にオンされる(ステップS201)。本実施形態においては、ユーザが乗車時に車載装置1に携帯電話27を接続すると、制御装置2が携帯電話27内のメモリからユーザの自宅位置を読み取り、メモリ26に当該自宅位置を記憶するものとする。
【0020】
気象庁が地震、津波等の災害の発生を予測して災害警報を発令すると、ラジオ局28から緊急情報が発信される。ラジオチューナー21が緊急情報を受信すると(ステップS202)、制御装置2は車載装置1の主電源をオンし、ラジオチューナー21、アンプ22、制御装置2以外の構成も起動させる(ステップS203)。受信した緊急情報に含まれる識別信号から、発生が予測される災害からの避難措置についての緊急性が判定され(ステップS204)、例えば、数時間以内に災害が発生すると予想されるため、避難の緊急性が高いと判定されると、車載装置1の送受信部16から、携帯電話27に対して起動信号が送信される(ステップS205)。
携帯電話27の図示しない受信部は常に起動されているため、車載装置1からの起動信号を受信可能である(ステップS217)。起動信号を受信した携帯電話27は、その主電源がオンされ、その他の構成も作動可能になる(ステップS218)。
【0021】
起動信号を送信した車載装置1は、位置検出器3により検出された車両の現在位置(図3においてAにより示す)から、その周辺にある避難場所(図3においてBにより示す)を地図データ上において検索し、現在位置Aと避難場所Bを含んだ地図データを携帯電話27に対して送信する(ステップS206)。車載装置1の送受信部16から発信された地図データは、携帯電話27により受信が開始される(ステップS219)。地図データを送信した車載装置1は、表示装置8またはスピーカ9もしくは双方により、ユーザに対して緊急性の高い災害警報が発令されたことを通知する(ステップS207)。車載装置1は、直ちに安全な場所に車両を駐車して、徒歩にて避難場所Bまで避難するように警告する。
【0022】
次に、ステップS208において、車両が未だ駐車していないと判定されると、車載装置1は位置検出器3により検出された車両の現在位置Aから、その周辺にある安全な駐車場所(図3においてCにより示す)を地図データ上において検索し、現在位置Aと駐車場所Cとをつなぐように、車両を駐車場所Cまで避難させる車両避難経路(本発明の車両避難経路に該当する)が地図データ上において演算される(ステップS215)。車両避難経路は、沿道に老朽化した建築物あるいは倒壊しやすい高層ビルがある地域や、過去に発生した災害時における被害エリア等の危険な地域を通過する道路を避けて形成される。車載装置1は表示装置8において、地図上に形成された車両避難経路(図3においてDにより示す)と車両(ユーザ)の現在位置Aを表示することにより、ユーザが乗車した車両の進路を検索された駐車場所Cまで案内する(ステップS216)。
【0023】
ステップS208に戻って車両が駐車したと判定されると、位置検出器3により現在位置として検出される駐車場所Cと、先に検索された避難場所Bとをつなぐように、車両を降車したユーザが徒歩で避難するための徒歩経路(本発明の歩行者避難経路に該当し、図3においてEにより示す)が地図データ上において演算される(ステップS209)。徒歩経路を形成する場合、車両避難経路を形成する場合と同様に、危険な地域を通過する道路を避けて形成される一方、車両通行止めの道路を経路に含めたり、一方通行の規制のある道路を逆方向に進行する経路は許可される。
また、車両の駐車を検出する方法は特に限定されるものではなく、例えば、アクセサリスイッチがオフされたことを検出して行う、または車両のパーキングブレーキスイッチ(図示せず)がオンされたことを検出して行う、もしくは車速が低下した時に車両のドアが開放されたことを検出して行う等が考えられる。
【0024】
形成された徒歩経路Eはユーザが所持する携帯電話27に向けて送信され(ステップS210)、徒歩経路Eを受信した携帯電話27は(ステップS220)、表示画面29において地図上に徒歩経路Eとユーザの現在位置を表示することにより、受信した徒歩経路Eに従って、降車したユーザに対し避難場所Bまでの進路を案内する(ステップS221)。車載装置1は、携帯電話27に対して徒歩経路Eを送信した後に、すべての電源が自動的にオフされる(ステップS211)。
【0025】
また、上述したステップS204において、受信した緊急情報から、例えば、災害が発生するまでには数日かかると予想されるため、緊急に避難する必要性がないと判定されると、車載装置1の表示装置8またはスピーカ9もしくは双方により、ユーザに対して緊急性のやや低い災害警報が発令されたことを通知し、帰宅するように警告する(ステップS212)。
【0026】
制御装置2は、位置検出器3により検出された車両の現在位置Aと記憶されたユーザの自宅位置とをつなぐように、ユーザを車両により自宅まで帰宅させる帰宅経路(本発明の帰宅経路に該当し図示せず)が地図データ上において演算される(ステップS213)。車載装置1は表示装置8において、地図上に形成された帰宅経路と車両(ユーザ)の現在位置Aとを表示することにより、形成された帰宅経路に従って、ユーザが乗車した車両の自宅までの進路を案内する(ステップS214)。
【0027】
本実施形態によれば、災害警報が発令された場合に、検出されたユーザの現在位置の周辺にある避難場所Bを地図データ上において検索し、ユーザの現在位置と検索された避難場所Bとをつなぐように、地図データ上においてユーザが避難する徒歩経路Eを形成し、形成された徒歩経路Eをユーザが所持する携帯電話27に送信し、送信された徒歩経路Eに従って携帯電話27においてユーザの進路を案内する。
これにより、災害警報が発令された場合、ユーザは携帯電話27を用いて経路案内されながら、徒歩によって避難場所Bまで避難できるため、ユーザが迅速に非難できるとともに、避難時のユーザの負担を軽減することができる。
【0028】
また、車載装置1は、ラジオ局28からの緊急情報を受信した場合、形成した車両避難経路Dに従って、ユーザが乗車した車両の進路を駐車場所Cまで案内するとともに、形成した徒歩経路Eを携帯電話27に送信し、駐車場所Cにおいて車両が駐車しユーザが降車した後、送信された徒歩経路Eに従って、携帯電話27において避難場所Bまでのユーザの進路が案内される。
【0029】
これにより、緊急情報を受信した時に車両に乗車していたユーザも、迅速かつ安全に避難場所Bまで避難することができる。
また、車載装置1がラジオ局28からの緊急情報を受信した場合、携帯電話27に対し徒歩経路Eを送信する以前に地図データを送信することにより、地図データのデータ量が多くても、徒歩経路Eを演算する間には送信し終わるため、携帯電話27における避難場所Bまでの進路案内が滞ることがない。
【0030】
また、車載装置1は車両の駐車後、徒歩経路Eを携帯電話27に送信した後に電源がオフされることにより、車両の駐車後に車両電源がオフされても、徒歩経路Eの携帯電話27への送信が確実に実行される。
また、車載装置1は緊急に避難する必要性が無いと判定された場合、形成された帰宅経路に従って、ユーザが乗車した車両の進路を案内することにより、災害発生まで時間的な余裕がある場合には、ユーザを自宅まで安全に帰宅させることができる。
【0031】
<実施形態2>
図4乃至図6に基づいて、本発明の実施形態2による災害からの避難誘導の方法を説明する。本実施形態において、実施形態1と同様の携帯電話27(本発明の現在地検出手段、経路案内手段に該当する)は、電話局30(本発明の避難経路送信手段に該当する)を介してセンタ31(本発明の地図データ記憶手段、避難場所検索手段、避難経路探索手段に該当する)と通信可能である(図4示)。センタ31は、地図データを記憶するメモリと、避難場所の検索およびユーザが避難するための徒歩経路を演算する制御装置(いずれも図示せず)を備えている。
【0032】
図5において、気象庁が災害警報を発令してセンタ31が緊急情報を発信すると(ステップS501)、センタ31から携帯電話27に対して起動信号が送信される(ステップS502)。携帯電話27の図示しない受信部は常に起動されているため、車載装置1からの起動信号を受信可能である(ステップS518)。起動信号を受信した携帯電話27は、その主電源がオンされ、その他の構成も作動可能になる(ステップS519)。
【0033】
次に、受信した緊急情報に含まれる識別信号から、発生が予測される災害からの避難についての緊急性が判定され(ステップS503)、例えば、数時間以内に災害が発生すると予想されるため、避難の緊急性が高いと判定されると、センタ31は携帯電話27に対して警告信号を送信する(ステップS504)。センタ31からの警告信号を受信した携帯電話27は(ステップS520)、表示画面29またはスピーカもしくは双方を使用して、ユーザに対して緊急性の高い災害警報が発令されたことを通知し、徒歩にて避難場所まで避難するように警告する(ステップS521)。
【0034】
ユーザに対して警告を実行した携帯電話27は、GPS受信機により検出した携帯電話27(ユーザ)の現在位置(図6においてFにより示す)をセンタ31へと送信する(ステップS522)。ユーザの現在位置Fを受信したセンタ31は(ステップS505)、ユーザの現在位置Fから、その周辺にある避難場所(図6においてGにより示す)を地図データ上において検索し、現在位置Fと避難場所Gを含んだ地図データを、電話局30を介して携帯電話27に対して送信し(ステップS506)、送信された地図データは携帯電話27により受信される(ステップS523)。センタ31は現在位置Fと避難場所Gとをつなぐように、ユーザが徒歩で避難するための徒歩経路(本発明の避難経路に該当し、図6においてJにより示す)を地図データ上において演算する(ステップS507)。
【0035】
センタ31において形成された徒歩経路Jは、電話局30を介してユーザが所持する携帯電話27に向けて送信され(ステップS508)、徒歩経路Jを受信した携帯電話27は(ステップS524)、表示画面29において、地図上に徒歩経路Jとユーザの現在位置Fを表示することにより、受信した徒歩経路Jに従って、ユーザに対し避難場所Gまでの進路を案内する(ステップS525)。
【0036】
また、上述したステップS503において、受信した災害警報から、例えば、災害が発生するまでには数日かかると予想されるため緊急性がやや低いと判定されると、センタ31は受信した災害警報に含まれる識別信号から、公共交通機関の運行が継続されるか否かを判定する(ステップS509)。公共交通機関の運行が継続されると判定されると、センタ31は携帯電話27に対して警告信号を送信する(ステップS510)。センタ31からの警告信号を受信した携帯電話27は(ステップS520)、表示画面29またはスピーカもしくは双方を使用して、ユーザに対して緊急性のやや低い災害警報が発令されたことを通知し、公共交通機関を利用して帰宅するように警告する(ステップS521)。
【0037】
ユーザに対して警告を実行した携帯電話27は、GPS受信機により検出した携帯電話27(ユーザ)の現在位置Fおよびメモリ内に記憶された自宅位置(図示せず)をセンタ31へと送信する(ステップS522)。ユーザの現在位置Fおよび自宅位置を受信したセンタ31は(ステップS511)、ユーザの現在位置Fおよび自宅位置から、帰宅するための最寄のN駅を地図データ上において検索し、現在位置FとN駅を含んだ地図データを携帯電話27に対して送信する(ステップS512)。センタ31から発信された地図データは、携帯電話27により受信される(ステップS523)。
【0038】
地図データを送信したセンタ31は、現在位置FとN駅とをつなぐように、ユーザが徒歩で避難するための帰宅経路(図6においてKにより示す)を地図データ上において演算する(ステップS513)。形成された帰宅経路Kは携帯電話27に向けて送信され(ステップS508)、帰宅経路Kを受信した携帯電話27は(ステップS524)、表示画面29において、地図上に帰宅経路Kとユーザの現在位置Fを表示することにより、ユーザに対しN駅までの進路を案内する(ステップS525)。
【0039】
また、上述したステップS509において、公共交通機関の運行が継続されないと判定されると、センタ31は携帯電話27に対して警告信号を送信する(ステップS514)。センタ31からの警告信号を受信した携帯電話27は(ステップS520)、表示画面29またはスピーカもしくは双方を使用して、ユーザに対して緊急性のやや低い災害警報が発令されたことを通知し、公共交通機関を利用できないため徒歩にて帰宅するように警告する(ステップS521)。
【0040】
ユーザに対して警告を実行した携帯電話27は、GPS受信機により検出した携帯電話27(ユーザ)の現在位置Fおよびメモリ内に記憶された自宅位置をセンタ31へと送信する(ステップS522)。ユーザの現在位置Fおよび自宅位置を受信したセンタ31は(ステップS515)、ユーザの現在位置Fおよび自宅位置を含んだ地図データを携帯電話27に対して送信する(ステップS516)。センタ31から発信された地図データは、携帯電話27により受信される(ステップS523)。
【0041】
地図データを送信したセンタ31は、現在位置Fと自宅位置とをつなぐように、ユーザが徒歩で避難するための帰宅経路(図示せず)を地図データ上において演算する(ステップS517)。形成された帰宅経路は携帯電話27に向けて送信され(ステップS508)、帰宅経路を受信した携帯電話27は(ステップS524)、表示画面29において、地図上に帰宅経路とユーザの現在位置Fを表示することにより、ユーザに対し自宅位置までの進路を案内する(ステップS525)。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
車載装置1に対し緊急情報を発信する情報施設は、VICS(Vehicle Information & Communication System:VICSは登録商標)センタ、テレビジョン放送局等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態1による避難誘導システムの構成を示すブロック図
【図2】実施形態1による災害からの避難誘導の方法を示したフローチャート
【図3】図2による避難誘導の方法を説明する簡略図
【図4】実施形態2による避難誘導システムの構成を示すブロック図
【図5】実施形態2による災害からの避難誘導の方法を示したフローチャート
【図6】図5による避難誘導の方法を説明する簡略図
【符号の説明】
【0044】
図面中、1はオーディオ一体型車載装置(車載ナビゲーション装置)、2は制御装置(地図データ記憶手段、避難場所検索手段、避難経路探索手段、駐車場所検索手段、車両経路探索手段、歩行者経路探索手段、帰宅経路探索手段、避難判定手段)、3は位置検出器(現在地検出手段)、8は表示装置(車両経路案内手段)、9はスピーカ(車両経路案内手段)、16は送受信部(避難経路送信手段、歩行者避難経路送信手段)、27は携帯電話(経路案内手段、現在地検出手段、自宅位置記憶手段)、28はラジオ局(情報施設)、30は電話局(避難経路送信手段)、31はセンタ(地図データ記憶手段、避難場所検索手段、避難経路探索手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
ユーザの現在位置を検出する現在地検出手段と、
災害警報が発令された場合に、検出されたユーザの現在位置の周辺にある避難場所を前記地図データ上において検索する避難場所検索手段と、
検出されたユーザの現在位置と検索された避難場所とをつなぐように、前記地図データ上においてユーザが避難する避難経路を形成する避難経路探索手段と、
形成された避難経路をユーザが所持する携帯電話に送信する避難経路送信手段と、
送信された避難経路に従って、前記携帯電話においてユーザの進路を案内する経路案内手段とを備えたことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
災害警報が発令された場合に情報施設が発信する災害警報情報を受信可能であるとともに、前記携帯電話と通信可能な車載ナビゲーション装置を備え、
前記車載ナビゲーション装置は、前記地図データ記憶手段、前記現在地検出手段、前記避難場所検索手段、前記避難経路探索手段および前記避難経路送信手段を具備するとともに、前記情報施設からの災害警報情報を受信した場合、前記現在地検出手段により検出された現在位置の周辺にある駐車場所を前記地図データ上において検索する駐車場所検索手段と、検出されたユーザの現在位置と検索された駐車場所とをつなぐように、前記地図データ上において車両が避難する車両避難経路を形成する車両経路探索手段と、形成された車両避難経路に従って、車両の進路を案内する車両経路案内手段と、前記駐車場所と前記避難場所検索手段により検索された避難場所とをつなぐように、前記地図データ上において歩行者が避難する歩行者避難経路を形成する歩行者経路探索手段と、形成された歩行者避難経路を前記携帯電話に送信する歩行者避難経路送信手段とを有し、
前記情報施設からの災害警報情報を受信した場合、前記車両経路探索手段により形成された車両避難経路に従い、前記車両経路案内手段がユーザが乗車した車両の進路を検索された駐車場所まで案内するとともに、駐車場所において車両が駐車しユーザが降車した後、前記歩行者避難経路送信手段により送信された歩行者避難経路に従って、前記携帯電話において避難場所までのユーザの進路が案内されることを特徴とする請求項1記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記車載ナビゲーション装置は前記情報施設からの災害警報情報を受信した場合、前記携帯電話に対し歩行者避難経路を送信する以前に前記地図データを送信することを特徴とする請求項2記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記車載ナビゲーション装置は車両の駐車後、歩行者避難経路を前記携帯電話に送信した後に電源がオフされることを特徴とする請求項2または3記載の避難誘導システム。
【請求項5】
前記車載ナビゲーション装置は、前記地図データ上のユーザの自宅位置を記憶する自宅位置記憶手段と、検出されたユーザの現在位置と記憶された自宅位置とをつなぐように、前記地図データ上においてユーザが帰宅する帰宅経路を形成する帰宅経路探索手段と、受信した災害警報情報により、緊急に避難する必要性の有無を判定する避難判定手段とを備え、
前記避難判定手段が緊急に避難する必要性が無いと判定した場合、形成された帰宅経路に従って、ユーザが乗車した車両の進路を案内することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の避難誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−175033(P2009−175033A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14879(P2008−14879)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】